説明

画像形成装置

【課題】本発明は、クリーニングブレードの『もげ状損傷』、あるいはエッジ摩耗損傷(欠け)によるクリーニング不良の発生を防止でき、クリーニングブレードの交換周期を長期化することを可能にする画像形成装置を提供することを目的にする。
【解決手段】本発明に係る画像形成装置は、複数のクリーニングブレードから選択したクリーニングブレードを像担持体に圧接させ、選択したクリーニングブレード以外のクリーニングブレードを像担持体に離間する圧接離間手段と、像担持体上に画像形成された画像データの平均印字率に基づき、圧接離間手段を制御して平均印字率に適した材質のクリーニングブレードを像担持体に圧接させる制御手段と、を有することによって、上記目的を達成可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングブレードにより像担持体上のトナーを除去するクリーニング装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真タイプの画像形成装置を軽印刷分野等の用途に用いる傾向が増大しており、電子写真部品の長寿命化、及びサービスマン等によるメンテナンス周期の長期化に関する要求が増大している。このような要求に応えて、複数のクリーニング装置、あるいはクリー複数のクリーニングを予め備えて置き、自動的に交換してメンテナンス周期を長期化する画像形成装置が提案されている(特許文献1及び2に記載の画像形成装置)。
【0003】
特許文献1に記載の画像形成装置は、先のメンテナンスから後のメンテナンスまでの期間における前半には通常材質のクリーニングブレードを用いて感光体をクリーニングし、後半には通常より低硬度のクリーニングブレードを用いて感光体をクリーニングするものである。
【0004】
特許文献2に記載の画像形成装置は、クリーニングブレードを用いたブレードクリーニング装置と、ファーブラシを用いたファーブラシクリーニング装置と、を自動交換可能に装置内に備え、感光体から転写体、あるいは記録材に転写される画像の密度情報に基づき、ブレードクリーニング装置及びファーブラシクリーニング装置を選択し、選択されたクリーニング装置で感光体上の残トナーをクリーニングするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−169437号公報
【特許文献2】特開2006−243607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の画像形成装置では、確かにメンテナンスの周期は概ね2倍程度に増大可能であるが、通常材質のクリーニングブレードを用いて高濃度の画像を連続して多量の用紙に画像形成した場合に、例えば、平均印字率が30%以上である画像データを連続して1000枚規模の用紙に画像形成した場合に、クリーニングブレードの切断面が局所的に破断される『もげ状損傷』によるクリーニング不良が発生した。
【0007】
また、軟質のクレーニングブレードを用いて低濃度の画像を連続して多量の用紙に画像形成した場合に、例えば、平均印字率が0.3%未満の画像データを連続して3000枚規模の用紙に画像形成した場合に、クリーニングブレードのエッジ摩擦損傷(欠け)によるクリーニング不良が発生した。
【0008】
特許文献2に記載の画像形成装置でも、同様に、高濃度の画像を連続して多量に画像形成した場合に、『もげ状損傷』によるクリーニング不良が発生した。また、ブレードクリーニング装置の他に容積の大きなファーブラシクリーニング装置を感光体の周辺に配設するために、画像形成部、あるいは画像形成装置が大型になり、レイアウト上に大きな制約を生じるという課題を有する。
【0009】
本発明は、クリーニングブレードの『もげ状損傷』、あるいはクレーニングブレードのエッジ摩耗損傷(欠け)によるクリーニング不良の発生を防止でき、クリーニングブレードの交換周期を長期化することを可能にする画像形成装置を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、下記構成の発明により達成できる。
【0011】
1.回動する像担持体と、
互いに異なる材質で構成され、前記像担持体上に圧接して前記像担持体上の残留トナーを除去する複数のクリーニングブレードと、
前記複数のクリーニングブレードから選択したクリーニングブレードを前記像担持体に圧接させ、選択したクリーニングブレード以外のクリーニングブレードを前記像担持体に離間する圧接離間手段と、
前記像担持体上に画像形成された画像データの平均印字率に基づき、前記圧接離間手段を制御して、前記平均印字率に適した材質のクリーニングブレードを前記像担持体に圧接させる制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【0012】
2.前記制御手段は、前記平均印字率が予め設定された第1基準値以上の場合に、第1材質のクリーニングブレードを前記像担持体に圧接させ、前記平均印字率が予め設定された第2基準値未満の場合に、前記第1材質より硬い第2材質のクリーニングブレードを前記像担持体に圧接させることを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0013】
3.前記第1材質は、67°(JIS A)以下の硬度を有するウレタンエラストーマであることを特徴とする前記2に記載の画像形成装置。
【0014】
4.前記第2材質は、60kN/m以上の引裂強度を有するウレタンエラストーマであることを特徴とする前記2に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、クリーニングブレードの『もげ状損傷』、あるいはエッジ摩耗損傷(欠け)によるクリーニング不良の発生を防止でき、クリーニングブレードの交換周期を長期化することを可能にする画像形成装置の提供を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】は本実施形態に係る画像形成装置における画像形成部の概略構成例を示す構成図である。
【図2】は本実施形態に係るクリーニング装置37の概略構成例を示す構成図である。
【図3】は圧接離間手段373の作動による複数のクリーニングブレード371の圧接離間動作を示す模式図である。
【図4】は画像形成装置の制御部100における本発明に係る主要な構成を示す制御ブロック図である。
【図5】は、画像形成中にABCプログラムPG1の実行に移行するための前段制御を示すフローチャートである。
【図6】はABCプログラムPG1の実施形態を示すフローチャートである。
【図7】はクリーニングブレード371の圧接条件を示す模式図である。
【図8】はクリーニングブレード371先端の切断面Ahを拡大した、『もげ状損傷』、または『エッジ摩擦損傷(欠け)』の典型的形態を示す模式図である。
【図9】は、0p〜20kpのランニング期間において、感光体31に圧接されるクリーニングブレード371選択の推移と、感光体31に画像形成される画像データの平均印字率MRの推移を示す、模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施形態について図1を基にして説明するが、本発明の適用はこの実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は本発明に係る画像形成装置の実施形態の構成及び動作について説明するための概略構成図である。
【0019】
画像形成装置Gは、本体の上部に自動原稿送り装置Fを有し、本体は、読取手段1、書込手段2、画像形成部3、操作表示手段4、給紙搬送手段5、排紙再給紙手段6、定着手段7、及び制御手段としての制御部100等から構成されている。
【0020】
自動原稿送り装置Fは、原稿載置台11に載置された原稿を原稿分離手段12によって一枚ずつ原稿搬送手段13に送り出し、原稿搬送手段13は送られた原稿を原稿排紙手段14に搬送し、原稿排紙手段14は送られた原稿を原稿排紙台15に排紙する。原稿画像は、原稿搬送路に配設され読取手段1の原稿画像読み取り位置であるスリット21にて読み取りがなされる。
【0021】
原稿の両面画像を読み取る場合には、一対のローラを有する原稿反転手段16によって、第1面を読み取られた原稿が表裏反転され、再度、原稿搬送手段13に送り出されることにより第2面の読み取りがなされる。読み取りが終了した原稿は原稿排紙台15に排紙される。
【0022】
読取手段1は、原稿画像から画像データを得る手段であり、スリット21の位置にて、ランプ231により光照射された原稿画像を第1ミラーユニット23と、第2ミラーユニット24と、結像レンズ25とによりライン状CCDの撮像素子26に結像させている。撮像素子26から出力された信号は、制御手段としての制御部100の画像処理部においてA/D変換され、シェーディング補正、画像圧縮等の処理がなされてメモリMに画像データとして保存される。
【0023】
書込手段2は、メモリMから読み出された画像データに基づき変調されたレーザー光を、帯電手段32によって一様に帯電され回転する像担持体としての感光体31上に走査する。この走査により、画像データに対応した静電潜像が感光体31上に形成される。
【0024】
静電潜像は画像形成部3の現像手段34により反転現像され、感光体31上にトナー画像が形成される。
【0025】
静電潜像の形成タイミングに対応して、手差し給紙搬送手段55、もしくは、カセットやトレイを有する給紙搬送手段5から記録紙Pを給送させ、搬送ローラ56で搬送させ、一旦レジストローラ57で停止させる。その後、所定時間が経過したタイミングでレジストローラ57を回転させて、記録紙Pを転写領域に送り出し感光体上のトナー画像にレジストさせる。
【0026】
感光体31上のトナー画像は、転写領域において、転写手段35により反対極性に帯電された記録紙Pに転写される。トナー画像を担持した記録紙Pは、分離手段36によって感光体31から分離され、定着手段7に送られる。更に、定着手段7によりトナー画像が定着された記録紙は、排出ローラ63により装置外に排出される。
【0027】
また、記録紙Pの両面に画像形成をする場合には、第1面の定着を終えた記録紙Pを、切換ガイド62により排紙再給紙手段6に導き、反転部65にて反転させた後、給紙のための搬送路66に送り出し、第2面の画像形成に供する。
【0028】
一方、記録紙Pへのトナー画像の転写を終えた感光体31の表面は、クリーニング装置37により残留トナーが除去されて次なる画像形成に向けての準備がなされる。
【0029】
《クリーニング装置》
図2は、本実施形態に係るクリーニング装置37の概略構成例を示す構成図である。
【0030】
クリーニング装置37はクリーニング部37Aとトナー回収部37Bとを有し、両部の構成について以下説明する。
【0031】
<クリーニング部37A>
クリーニング部37Aは、像担持体としての感光体31の表面に圧接され感光体31上の残留トナーを除去する複数のクリーニングブレード371と、複数のクリーニングブレード371を支持し複数のクリーニングブレード371から選択したクリーニングブレード371を感光体31に圧接させ、選択したクリーニングブレード371以外のクリーニングブレード371を感光体31に離間させる圧接離間手段373とを有する。
【0032】
複数のクリーニングブレード371は、先端に反対する他端側がブレード支持軸373dの長手方向の中央部にネジ止めされた取付軸BS1で支持された固定板372aに固着され、固定板372a及び固定部材372bと一体に交換可能である。
【0033】
取付軸BS1の外径と固定部材372bの嵌合穴には微小な間隙が設けられているために、クリーニングブレード371は図示の軸zを中心にて矢印θの方向に回転可能であり、その先端が感光体31の長手方向における全領域に対し自ら圧接されるようにブレード支持軸373dに支持される。
【0034】
複数のクリーニングブレード371は、高印字率の画像データが画像形成されている場合に適合した材質の第1クリーニングブレード371aと、低印字率の画像データが平均的に画像形成されている場合に適合した材質の第2クレーニングブレード371bとで構成され、図示のようにブレード支持軸373dに支持される。
【0035】
ここでは、第1クリーニングブレード371a及び第2クレーニングブレード371bでなる2つのクリーニングブレード371を有しているが、これに限定されるものではなく、2つの第1クリーニングブレード371aと2つの第2クリーニングブレード371bでなる4つのクリーニングブレード371を支持する構成であっても構わない。
【0036】
第1クリーニングブレード371aに用いる材質(第1材質MT1)は、通常より軟質なウレタンエラストーマである。そして、第2クリーニングブレード371bに用いる材質(第2材質MT2)は、第1材質MT1より硬く通常用いられるウレタンエラストーマである。
【0037】
圧接離間手段373は、クリーニング部37Aの各部材を全体的に支持する筐体373aと、クリーニング部37Aの各部を感光体31に向けて移動、あるいは感光体31から離間させる近接解除機構と、図示のPcを中心にしてクリーニングブレード371を矢印cの方向に回動させるシフト機構と、で構成される。
【0038】
近接解除機構は、支持軸373bを支点にして矢印aの方向に回動可能に支持された筐体373aと、筐体373aを感光体31に向けて変位されるための付勢部材374と、付勢部材374による付勢力に抗して筐体373aを感光体31から離間させるように筐体373aに作用する非図示の解除手段(カム等で成る)と、で構成される。
【0039】
付勢部材374は、図示のように筐体373aとクリーニング装置37のケーシング379との間に配設され、クリーニングブレード371の先端を感光体31に所定の圧接荷重Faで圧接させるためのモーメント力をクリーニングブレード371の先端に与えている。
【0040】
シフト機構は、ブレード支持軸373dの中心Pcを支点にして第1クリーニングブレード371a及び第2クリーニングブレード371bを矢印cの方向に180°単位で回転させて、先端が当接位置P1、あるいは待機位置P2に位置するように第1クリーニングブレード371a及び第2クリーニングブレード371bの循環的に変位させるものである。
【0041】
シフト機構は、筐体373aの両端部に固設された軸受373eで回動可能に支持されたブレード支持軸373dと、筐体373aの外側でブレード支持軸373dに連結し、筐体373aに固設された非図示の駆動手段と構成される。非図示の駆動手段は後述の制御手段で制御され、例えば、停止センサ、歯車群及びモータで構成される。
【0042】
図3は、圧接離間手段373の作動による複数のクリーニングブレード371の圧接離間動作を示す模式図である。
【0043】
図3(a)は、第2クリーニングブレード371bが感光体31に圧接されている、図2の当接状態から、圧接解除機構によりa1で示す矢印の方向にクリーニング部37Aの各部が回動されて感光体31に離間した解除状態を示す。
【0044】
図3(b)は、図3(a)と同様の解除状態において、シフト機構によってブレード支持軸373dがc1で示す矢印の方向に回動されて、図3(a)で待機位置P2にあった第1クリーニングブレード371aの先端が当接位置P1に変位された当接状態を示す。
【0045】
図3(c)は、図3(b)の解除状態から、圧接解除機構によりa2で示す矢印の方向にクリーニング部37Aの各部が回動されて第1クリーニングブレード371aが感光体31に圧接された当接状態を示す。
【0046】
以上のように、圧接離間手段373の作動によって図3(a)から図3(c)の一連の動作を経て、感光体31に圧接するクリーニングブレード371を、図2に示す第2クリーニングブレード371bから図3(c)に示す第1クリーニングブレード371aに置換させている。
【0047】
<トナー回収部>
図2に戻り、トナー回収部37Bの構成を以下説明する。
【0048】
トナー回収部37Bは、クリーニング部37Aによって感光体31表面から除去されたトナーを回収しており、クリーニングブラシ375とフリッカローラ376とスクレーパ377、そして回収スクリュー378を有する。
【0049】
クリーニングブラシ375は、感光体31における当接位置P1より、感光体31の回動方向で上流側に配設され、所定速度で矢印dの方向に回転され、感光体31に対し所定幅で擦過しており、感光体31上のトナーを補充的に掻き取っている。
【0050】
更に、クリーニングブラシ375は、クリーニングブレード371の上流側へと掻き取られて降下したトナーを受けて感光体31に反対する側のフリッカローラ376に搬送する。
【0051】
フリッカローラ376は、クリーニングブラシ375に付着したトナーをクリーニングブラシ375から叩き離す、または自身に移し取る。叩き離されたトナーは落下して回収スクリュー378に回収される。
【0052】
フリッカローラ376はSUS製で、矢印eの方向に回転され、スクレーパ377が圧接している。
【0053】
フリッカローラ376の表面に移し取られたトナーは、スクレーパ377により掻き落とされ、トナー回収部の最底部にある回収スクリュー378に回収される。
【0054】
回収されたトナーは回収スクリュー378により軸方向に搬送され、図示しない容器等に貯留され、廃棄されるか、もしくは適当な処理の上、現像手段34へと供給され、補給トナー等として再利用される。
【0055】
図4は画像形成装置Gの制御部100における本発明に係る主要な構成を示す制御ブロック図である。
【0056】
制御部100は、画像形成装置の全体制御を司り、図示の本発明に係る画像形成部3の圧接離間手段373及び書込手段2のドット検出手段105も制御する。
【0057】
ドット検出手段105は、書込手段2のレーザー点灯信号を検出して各ページ毎に画像データの印字ドット数を計数し、計数された印字ドット数(印字画素数)をページ毎に制御部100に出力する。
【0058】
制御部100には、主制御部101とROM102とRAM103と不揮発メモリ104を有する。
【0059】
ROM102は画像形成装置を制御するための各種プログラム及び種々の制御データを格納し、本発明に係るクリーニングブレード自動切替プログラム(略称ABCプログラム)PG1も格納している。電源が投入されると、ROM102に記憶されている各種プログラムがRAM103に展開される。そして、主制御部101はRAMに展開された各種プログラムに基づき画像形成装置の各部を制御して、非図示の操作表示手段4からの操作で指示された、原稿読取、印刷、複写等に関わる種々のジョブを実行する。
【0060】
不揮発メモリ104は各種プログラム実行に用いる可変データを保存する。例えば、本発明に係る累計印字ドット数Nt、及び平均印字率MR等も、制御部100によって演算された後に不揮発メモリ104に保存される。
【0061】
[クリーニングブレード自動切替プログラム]
図5は、画像形成中にABCプログラムPG1の実行に移行するための前段制御を示すフローチャートである。
【0062】
S1は、通常の画像形成処理工程であり、ここではページ単位の処理工程である。
【0063】
S2は、上記画像形成処理工程が実行される画像データ(ページ画像データ)の印字ドット数Ndをドット検出手段105から入力する行程である。
【0064】
S3は、累計印字ドット数Ntを演算する工程である。演算処理は次の(1)式に基づく。
【0065】
Nt=Nt+Nd・・・(1)
S4は、実行中のジョブが完了したか、あるいは中断されたかを判断する工程である。継続と判断される(Yesである)と、S5行程に移行し、NOであると、画像形成処理を終了する。
【0066】
S5は、印刷数Npが所定数Nr以上であるか否かを判定する工程であり、Yes、つまり、所定数Nr以上であると、S6の工程に移行する。Noの場合には、S1の工程に移行し、実行中の画像形成処理を継続させる。
【0067】
所定数Nrは、適宜定められた印刷数であり、『もげ状損傷』、または『エッジ摩擦損傷(欠け)』によるクリーニング不良の発生を未然に防止する観点から決められている。一般に、1000プリントから3000プリントまでの範囲が適正である。
【0068】
S6は、本発明に係るABCプログラムPG1の実行工程である。ABCプログラムPG1を実行すると、S7工程に移行する。S7工程は印刷数Np及び累計印字ドット数Ntをリセットする工程である。
【0069】
次に、ABCプログラムPG1の一例を示す。図6は、ABCプログラムPG1の実施形態を示すフローチャートである。
【0070】
S101は、平均印字率MR(%)を算出する工程である。平均印字率MRは、例えば、つぎの(2)及び(3)式に基づき算出される。
【0071】
MR=100×Nt/Ns・・・(2)
Ns=Nr×Sp×Ns・・・・(3)
Nrは、前述の所定数である。Spは記録紙Pの面積であり、Nsは用紙単位面積あたりの画素(ドット)数である。
【0072】
S102は、平均印字率MRが第1基準値R1以上であるか否かを判定する工程である。”Yes”の場合にS103工程に移行し、”No”の場合はS104工程に移行する。
【0073】
S103は、現設定のクリーニングブレード371が硬質タイプの第2クリーニングブレード371bであるか否かを調べる工程であり、”Yes”であると、現設定の硬質タイプの第2クリーニングブレード371を軟質タイプの第1クリーニングブレード371aに置き換えるためにS106工程に移行する。
【0074】
そして、”No”であると、既に第1クリーニングブレード371aが設定されているので、現設定のクリーニングブレード371の変更は必要なく、ABCプログラムPG1を終了する。
【0075】
S104は平均印字率MRが第2基準値R2未満であるか否かを判定する工程である。第2基準値R2は第1基準値R1以下の値であり、適宜設定される。
【0076】
”Yes”であると、S105工程に移行する。そして”No”であると、現設定のクリーニングブレード371を変更する必要がなく、ABCプログラムPG1を終了する。
【0077】
S105は、現設定のクリーニングブレード371が軟質タイプの第1クリーニングブレード371aであるか否かを調べる工程である。
【0078】
”Yes”の場合には、現設定の軟質タイプの第1クリーニングブレード371aを硬質タイプの第2クリーニングブレード371bに変更するためにS106工程に移行する。そして、”No”の場合には、第2クリーニングブレード371bが既に設定されていて、現設定のクリーニングブレード371の変更は必要なく、ABCプログラムPG1を終了する。
【0079】
そして、”Yes”の場合には現設定のクリーニングブレード371を変更する必要がなく、ABCプログラムPG1を終了する。”NO”の場合には、現設定の軟質タイプのクリーニングブレード371を硬質タイプに変更するためにS106工程に移行する。
【0080】
S106工程からS108工程までの工程は、現設定のクリーニングブレード371を異なる材質のクリーニングブレードに変更するものである。
【0081】
S106は、実行中のジョブを中断させる工程であり、少なくとも感光体31の回転は停止される。
【0082】
S107は、圧接離間手段373を作動させて、2つのクリーニングブレード371を当接位置P1から待機位置P2に、あるいは待機位置P2から当接位置P1に変位させて、2つのクリーニングブレード371の位置関係を置き換える工程である。
【0083】
S108は、中断中のジョブを再開させる工程である。ABCプログラムPG1はジョブを再開させた後に終了する。
【0084】
なお、上記の実施形態では第1基準値R1と第2基準値R2で成る複数レベルの基準値Rを設けているが、R1=R2しても目的は達成できる。そして、R1=R2とする実施形態の場合には制御が簡単になるという長所を有する。一方、R1>R2のような複数レベルの基準値Rを設ける実施形態の場合には、平均印字率MRが第1基準値R1と第2基準値R2の間に推移している状態下では複数のクリーニングブレード371を置き換えることがなく、クリーニングブレードを置き換える頻度が抑制できるという長所を有する。
【0085】
また、第1基準値R1及び第2基準値R2は、多量の画像形成において『もげ状損傷』及び『エッジ摩擦損傷(欠け)』によるクリーニング不良を発生させないような平均印字率MRに対応し、操作者、管理者等により適宜設定可能である。
【0086】
第1基準値R1を下げると、第1クリーニングブレード371aが使われる頻度がアップする。第2基準値R2が高くなると、第2クリーニングブレード371aが使われる頻度がアップする。この点は、R1=R2とする実施形態においても同様に成り立ち、基準値Rを下げると、第1クリーニングブレード371aが使われる頻度がアップし、基準値Rを上げると、第2クリーニングブレード371aが使われる頻度がアップする。
【0087】
実際に画像形成装置Gで処理される画像データの平均印字率は、用途、設置場所によって異なるものであり、この点からも各々のクリーングブレードの使用頻度に差異が生じることになる。
【0088】
また、第1材質MT1のクリーニングブレードは、第2材質MT2のクリーニングブレードに比較して、同一印刷数による先端エッジの摩耗量が多くなるという傾向もある。
【0089】
従って、操作者等によって基準値Rが適宜設定可能であれば、用途や設置場所等の実情に合わせて、各クリーニングブレード371の寿命バランスを均等にすることが可能となり、クリーニングブレードの長寿命化が一層図ることが出来る。
【0090】
[クリーニングブレード371の材質評価実験]
次に、本発明に係る実施形態に適するクリーニングブレード371の材質に関する検討実験を以下に詳しく説明する。
【0091】
《実験方法》
(1)表1に示す各材質のクリーニングブレード371を画像形成装置Gに装着する。
(2)クリーニングブレード371の材質評価実験のために、画像形成装置G内のABCプログラムは予め不作動に設定されている。また、感光体31の線速度は570mm/secで、ブレード圧接条件は表2に示す。
(3)上記設定が為された画像形成装置Gにおいて、『もげ状損傷』に対する強度を得るための第1テストランニングと、『エッジ摩擦損傷(欠け)』に対する強度を得るための第2テストランニングを実施する。
(4)テストランニング中のクリーニング不良の発生状況を調査し、更にランニング終了後に、クリーニングブレード371の先端を顕微鏡で観察し、『もげ状損傷』及び『エッジ摩擦損傷(欠け)』の度合いを評価した。
【0092】
表1は、上記実験に用いた4種類のウレタンエラストーマの物性値を示す。
【0093】
【表1】

【0094】
表2は、感光体31に対する圧接するクリーニングブレード371の圧接条件を示す。
【0095】
【表2】

【0096】
図7は、クリーニングブレード371の圧接条件を示す模式図である。
【0097】
Faは、付勢部材374の付勢力Fnによって支持軸373bを支点したクリーニングブレード371の先端に生じるモーメント力であり、クリーニングブレード371が感光体31に圧接する圧接荷重である。クリーニングブレード371の軸方向における単位メートルあたりの荷重(N/m)で示す。
【0098】
θは、クリーニングブレード371を剛体として仮定した場合における、当接位置P1において、クリーニングブレード371と感光体31の接線との間の角度であり、剛体当接角(°)と仮称する。
【0099】
Lは、クリーニングブレード371の自由長(mm)であり、クリーニングブレード371の先端と固定板372aの先端との距離である。tは、クリーニングブレード371の厚さ(mm)である。
【0100】
《ブレード破損の評価方法》
クリーニングブレードの先端エッジを顕微鏡などで観察して、『もげ状損傷』、または『エッジ摩擦損傷(欠け)』の発生状況を定量化する。
【0101】
図8は、クリーニングブレード371先端の切断面を拡大した、『もげ状損傷』、または『エッジ摩擦損傷(欠け)』の典型的形態を示す模式図である。
【0102】
S1が『もげ状損傷』であり、切断面Ahのエッジ近傍において軸方向に切断された溝状態になる。Wは溝の幅(μm)であり、Dpは溝の深さ(μm)である。『もげ状損傷』の度合いは、溝の幅Wと溝の深さDpとの積であるW×Dpに対応する。W×Dpの値が過大になると、『もげ状損傷』によるクリーニング不良が発生する。
【0103】
S2が、『エッジ摩擦損傷(欠け)』であり、感光体31の表面に付着している流動化剤(トナーに添加されているSi0等の微細粒子)が極度に減少した場合に発生するものである。つまり、感光体31によるクリーニングブレード371のエッジに作用する摩擦力が極度に増大し、エッジが図示のように破損するに至る現象である。
【0104】
《テストランニング》
表3は第1テストランニングと第2テストランニングを示す。
【0105】
【表3】

【0106】
表3の平均印字率MRと総プリント数(p)は、実用上の観点から画像形成装置Gの用途に耐え得るような過酷な条件として適宜設定され、これに限定されるものでない。なお、pは印刷数、プリント数、画像形成された記録紙の枚数を意味する。
【0107】
《実験結果》
<第1テストランニングの結果>
表4は、第1テストランニングで得られたクリーニング性の評価結果である。
【0108】
【表4】

【0109】
表5は、第1テストランニングで得られた『もげ状損傷』に関する評価結果である。
【0110】
【表5】

【0111】
表5の結果より、『もげ状損傷』の度合い(W×Dpに対応する)は、ウレタンエラストーマの硬度と強く相関する。更に表4の結果より、硬度(JIS A)が67°以下である材質が第1クリーニングブレード371aの第1材質MT1に適することが確認できた。
【0112】
<第2テストランニングの結果>
表6は、第2テストランニングで得られたクリーニング性の評価結果である。
【0113】
【表6】

【0114】
表6の結果より、『『エッジ損傷(欠け)』によるクリーニング不良はウレタンエラストーマの引裂強度(N/m)と強く相関し、引裂強度が60kN/m以上である材質が第2クリーニングブレード371bの第2材質MT2に適することが確認できた。
【0115】
上記の材質評価実験の結果より、以下の内容が確認できた。
【0116】
(1)平均印字率MRが0.3%である画像データを数kp規模で連続印刷しても『エッジ損傷(欠け)』によるクリーニング不良を発生させず、且つ平均印字率MRが30%である画像データを数kp規模で連続印刷しても『もげ状損傷』によるクリーニング不良を発生させない、クリーニングブレード371の材質は入手できなかった。
【0117】
(2)高平均印字率の画像データに適する第1材質MT1は硬度(JIS A)が67°以下であるウレタンエラストーマである。また、低平均印字率の画像データに適する第2材質MT2は、引裂強度が60kN/m以上であるウレタンエラストーマである。
【0118】
[本発明に係る実施形態の評価テスト]
次に、『ABCプログラムPG1』関連の制御が有効に作動するように設定された画像形成装置Gにおいて、平均印字率MRが30%である高印字率画像データを連続して5kp画像形成する第1ランニング期間と、平均印字率が0.3%である低印字率画像データを連続して5kp画像形成する第2ランニング期間と、を交互に繰り替えして総計100kPまで実施した。総計100kpに至るランニング中において『もげ状損傷』及び『エッジ損傷(欠け)』によるクリーニング不良の発生状況を調べた。
【0119】
なお、ABCプログラムPG1の各条件は次の表7に設定した。
【0120】
【表7】

【0121】
表7に示すように、第1基準値R1と第2基準値R2とを同一値にし、基準値Rは10%に設定した。また、所定数Nrは、上述のようにABCプログラムPG1が実行される周期に対応するものであり、ここでは1kpに設定した。
【0122】
第1材質MT1は、材質番号=3で、硬度が65°(JIS硬度 A)のウレタンエラストーマである。そして、第2材質MT2は、材質番号=1で、引裂強度が68kN/mのウレタンエラストーマである。
【0123】
図9は、0p〜20kpのランニング期間において、感光体31に圧接されるクリーニングブレード371選択の推移と、感光体31に画像形成される画像データの平均印字率MRの推移を示す、模式図である。上部が平均印字率MRの推移、下部がクリーニングブレード371選択の推移である。
【0124】
下部縦軸の『第1』は第1クリーニングブレード371aが感光体31に圧接されている状態を示し、『第2』は第2クリーニングブレード371bが感光体31に圧接されている状態を示す。
【0125】
上部縦軸は対数値化されている。そして、一点鎖線は第1基準値R1(=第2基準値R2)を示す。ここでは10%である。
【0126】
図示で示すように、平均印字率の変化する時期より1kp遅れた時期にクリーニングブレード371が異なる材質のクリーニングブレード371に切り替えられている。
【0127】
《評価結果》
0p〜100kpの間に『もげ状損傷』及び『エッジ損傷(欠け)』によるクリーニング不良は発見できなかった。100kp後の両クリーニングブレード371を観察したが、十分使用可能であることも確認できた。
【0128】
上記の評価テストから、本発明に係る画像形成装置Gは、クリーニングブレードの『もげ状損傷』、あるいはクレーニングブレードのエッジ摩耗損傷(欠け)によるクリーニング不良の発生を未然に防止でき、且つクリーニングブレードの交換周期を長期化できることが確認された。
【0129】
なお、本発明は、平均印字率MRにおいて適用可能範囲が異なる複数の材質のクリーニングブレード371を備え、画像データの平均印字率MRに応じて、適正な材質のクリーニングブレード371を選択して感光体31に圧接させるものであり、複数の材質の各々に適用可能範囲を和した広い平均印字率MRの画像データを大量に連続印刷しても安定したクリーニング性能を維持できる、多種多様な原稿を大量に印刷出力できる画像形成装置の提供を可能にする。
【符号の説明】
【0130】
31 感光体(像担持体)
100 制御部(制御手段)
371 クリーニングブレード
371a 第1クリーニングブレード
371b 第2クリーニングブレード
373 圧接離間手段
R1 第1基準値
R2 第2基準値
MR 平均印字率
MT1 第1材質
MT2 第2材質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動する像担持体と、
互いに異なる材質で構成され、前記像担持体上に圧接して前記像担持体上の残留トナーを除去する複数のクリーニングブレードと、
前記複数のクリーニングブレードから選択したクリーニングブレードを前記像担持体に圧接させ、選択したクリーニングブレード以外のクリーニングブレードを前記像担持体に離間する圧接離間手段と、
前記像担持体上に画像形成された画像データの平均印字率に基づき、前記圧接離間手段を制御して、前記平均印字率に適した材質のクリーニングブレードを前記像担持体に圧接させる制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記平均印字率が予め設定された第1基準値以上の場合に、第1材質のクリーニングブレードを前記像担持体に圧接させ、前記平均印字率が予め設定された第2基準値未満の場合に、前記第1材質より硬い第2材質のクリーニングブレードを前記像担持体に圧接させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1材質は、67°(JIS A)以下の硬度を有するウレタンエラストーマであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2材質は、60kN/m以上の引裂強度を有するウレタンエラストーマであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−2842(P2012−2842A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134796(P2010−134796)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】