説明

画像形成装置

【課題】生産性を低下させずに、適切に空吐出を行うことができる。
【解決手段】記録媒体に画像形成するために液滴を吐出する、または、該画像形成に寄与しない液滴を空吐出する画像形成部と、前記記録媒体を搬送し、前記空吐出されることが可能な空吐出領域を有する搬送部と、前記記録媒体が、前記空吐出領域に乗せられるか否かを判断する判断部と、前記判断部が、前記記録媒体が前記空吐出領域に位置すると判断すると、前記記録媒体が前記空吐出領域に位置しないように、前記記録媒体の向きを変更して、前記搬送部に乗せる変更部と、を有することを特徴とする画像形成装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に具備されている記録ヘッドのノズル面は、長時間、インクを吐出しない場合には、インクが乾燥してしまい、インク濃度が上がることで、インク粘度が増加し、インクを吐出できなくなるという問題が生じる。そこで、画像形成に寄与しないインクを空吐出することで、この問題を解決することができる。
【0003】
特許文献1記載の技術は、搬送ベルトの所定領域のみに、空吐出用の貫通孔を設ける。また、この技術では、搬送ベルトを帯電させて用紙を固定させる。そして、記録ヘッドは、当該貫通孔を通過するように、インクを空吐出を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1(A)〜(C)に、搬送ベルト8に、用紙501が搬送されている様子を真上から見た図を示す。図1(A)に示すように、搬送ベルト8には、空吐出用の複数の貫通孔が設けられている空吐出領域30(ハッチング部分)が設けられている。該記録ヘッドの真下に空吐出領域30が位置したときに、記録ヘッドは当該空吐出領域30に対して空吐出を行う。
【0005】
しかし、図1(B)に示すように、用紙501の一部501A(または、直前用紙501の全部)が、空吐出領域30上に位置する場合には、記録ヘッドは空吐出できない。なぜなら、空吐出したインクが、用紙501の一部501Aまたは全部に吐出されるからである。また、空吐出領域30の直前にある用紙を直前用紙501とし、空吐出領域30の直後にある用紙を直後用紙502という。また、直前用紙501と直後用紙502との間隔を紙間間隔dとする。
【0006】
また、図1(C)に示すように、全ての空吐出領域30に、用紙が位置しないように、用紙を乗せることも考えられる。しかし、全ての空吐出領域に用紙を位置させないようにすると、直前用紙501と直後用紙502の紙間間隔d'は紙間間隔dよりも大きくなる。従って、図1(C)の場合には、図1(B)の場合と比較して、生産性が低下するという問題がある。更に、図1(C)の場合には、図1(B)の場合と比較して、インクが吐出されない期間が長くなることので、更なるノズル面の乾燥を招くという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような問題を鑑みて、生産性を低下させずに、適切に空吐出を行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、記録媒体に画像形成するために液滴を吐出する、または、該画像形成に寄与しない液滴を空吐出する画像形成部と、前記記録媒体を搬送し、前記空吐出されることが可能な空吐出領域を有する搬送部と、前記記録媒体が、前記空吐出領域に乗せられるか否かを判断する判断部と、前記判断部が、前記記録媒体が前記空吐出領域に位置すると判断すると、前記記録媒体が前記空吐出領域に位置しないように、前記記録媒体の向きを変更して、前記搬送部に乗せる変更部と、を有することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成装置によれば、生産性を低下させずに、適切に空吐出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】搬送ベルトと、搬送ベルトに乗せられた用紙との位置関係を示した図。
【図2】本実施例の画像形成装置のハードウェア機能構成例を示した図。
【図3】本実施例の画像形成装置の要部の機能構成例を示した図。
【図4】本実施例の空吐出領域を示した図。
【図5】本実施例の用紙の向きが変更されたことを示す図。
【図6】本実施例の用紙の向きを変更する処理フローを示した図。
【図7】本実施例のCPUの機能構成例を示した図。
【図8】本実施例の表示部に示される画面を示した図(その1)。
【図9】本実施例の操作部に示される画面を示した図(その1)。
【図10】本実施例の操作部に示される画像を示した図(その2)。
【図11】本実施例の用紙向き変更モードまたは用紙向き固定モードに変更する処理フローを示した図。
【図12】本実施例の表示部に示される画像を示した図(その2)。
【図13】本実施例の操作部に示される画像を示した図(その3)。
【図14】本実施例のテーブル表の一例を示した図。
【図15】別の実施形態の画像形成装置の要部の機能構成例を示した図。
【図16】別の実施形態の用紙の向きを変更する処理フローを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[用語の説明]
実施例の説明の前に、用語の説明を行う。
【0012】
画像形成装置とは例えば、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機などである。
【0013】
また、記録媒体は、例えば、紙、糸、繊維、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなどの媒体である。以下では、記録媒体を用紙として説明する。
【0014】
画像形成とは、文字や図形、パターンなどの画像を記録媒体に付与すること、液滴(インク)を記録媒体に着弾させることを意味する。
【0015】
また、液滴には、インク、記録液、定着処理液、画像形成を行うことができる液体、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料などからなるものを含む。以下では、液滴をインクとして説明する。
【0016】
また、簡単に空吐出について説明する。インクが水性インクのような乾燥しやすい性質の場合、ノズルからインクを吐出させない状態が続くと、記録ヘッドのノズル面付近、および記録ヘッドのインク収容部内のインク濃度が上がり、インクの粘度が増加し、適切にインク吐出できなくなる(以下、「吐出不良」という。)。そこで、画像形成に寄与しないインクを所定のタイミングで吐出することで吐出不良を回避しうる。この吐出を空吐出(または、予備吐出、パージ、フラッシング)という。
[実施形態1]
[ハードウェア構成]
図2に本実施例の画像形成装置1000のハードウェア構成例を示す。図2に示すようには、本実施例の画像形成装置1000は、CPU206、主記憶部312、補助記憶部313、外部記憶装置I/F部314、ネットワークI/F部316、操作部317、表示部318、エンジン部319を含む。これらの構成部は、バス500により接続されている。
【0017】
CPU206は、コンピュータの中で、各装置の制御やデータの演算、加工を行うものである。また、CPU206は、主記憶部312に記憶されたプログラムを実行する演算装置であり、入力装置や記憶装置からデータを受け取り、演算、加工した上で、出力装置や記憶装置に出力する。
【0018】
主記憶部312は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などであり、CPU206が実行する基本ソフトウェアであるOSやアプリケーションソフトウェアなどのプログラムやデータを記憶又は一時保存する記憶装置である。
【0019】
補助記憶部313は、HDD(Hard Disk Drive)などであり、アプリケーションソフトウェアなどに関連するデータを記憶する記憶装置である。外部記憶装置I/F部314は、USB(Universal Serial Bus)などのデータ伝送路を介して接続された記憶媒体315(例えば、フラッシュメモリなど)と画像形成装置1000とのインタフェースである。
【0020】
また、記憶媒体315に、所定のプログラムを格納し、この記憶媒体315に格納されたプログラムは外部記憶装置I/F部314を介して画像形成装置にインストールされ、インストールされた所定のプログラムは画像形成装置により実行可能となる。
【0021】
ネットワークI/F部316は、有線及び/又は無線回線などのデータ伝送路により構築されたLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などのネットワークを介して接続された通信機能を有する周辺機器と画像形成装置1000とのインタフェースである。
【0022】
操作部317や表示部318は、キースイッチ(ハードキー)とタッチパネル機能(GUIのソフトウェアキーを含む:Graphical User Interface)を備えたLCD(Liquid Crystal Display)とから構成され、画像形成装置が有する機能を利用する際のUI(User Interface)として機能する。なお、操作部317には、第1操作部3170、第2操作部3172、第3操作部3176が含まれる。また、表示部318には、第1表示部3182および第2表示部3184が含まれる。また、第1操作部3170、第2操作部3172、第3操作部3176を一体化して、操作部317としてもよい。また、第1表示部3182、第2表示部3184を一体化して、表示部318としてもよい。
【0023】
エンジン部319は、画像形成に係る処理を行うプロッタ、スキャナ等の機構部分や、各モータなどを駆動させる箇所である。
【0024】
[要部の機能構成]
図3の本実施例の画像形成装置1000の要部の機能構成例の簡略図を示す。図3では、カラー印刷可能な画像形成装置1000を図示している。図3中の、画像形成装置1000の上流側には、第1収容部1が配置されている。また、下流側には、排出トレイ15が配置されている。以下の説明では、第1収容部1から排出トレイまでの経路を用紙経路という。
【0025】
第1収容部1には、複数の第1用紙3が収容されている。第2収容部101には、複数の第2用紙301が収容されている。第2収容部101については後述する。なお、以下の説明では、参照符号を付さない用紙が登場するが、これは、第1用紙3、第2用紙301、直前用紙501、直後用紙502と物理的には同一のものをいう。詳細に説明すると、参照符号を付さない用紙は、第1収容部1、第2収容部101から供給された用紙であり、直前用紙501、直後用紙502のように、空吐出領域30の直前、直後でなくてもよい。
【0026】
第1収容部1のすぐ下流側には、一対の用紙送りローラ5と一対のレジストローラ2が備えられている。そして、複数の第1用紙3から1枚の第1用紙3が分離され、該分離された1枚の第1用紙3は一対の用紙送りローラ5および一対のレジストローラ2に矜持されながら、搬送部8まで搬送される。
【0027】
また、第2収容部101のすぐ下流側には、一対の用紙送りローラ505と一対のレジストローラ(図示せず)が備えられている。そして、複数の第2用紙301から1枚の第2用紙301が分離され、該分離された1枚の第2用紙301は一対の用紙送りローラ505および一対のレジストローラに矜持されながら、搬送部8まで搬送される。
【0028】
搬送部8は用紙を搬送するものであり、例えば、搬送ベルトを含みうる。以下では、搬送部8が搬送ベルト8である場合について説明する。搬送ベルト8はループ(無端)状である。搬送ベルト8は、ベルトローラ6、ベルトローラ7に掛け渡されている。搬送ベルト8は、用紙を搬送する上側経路8Xと、上側経路8Xと反対に移動する下側経路8Yと、を有している。搬送ベルト8の表面は絶縁層である。帯電装置(図示せず)は、搬送ベルト8の表面もしくは用紙の表面、または、搬送ベルト8の表面および用紙の表面に電荷注入する。従って、搬送ベルト8の表面と用紙の裏面とが静電吸着され、用紙が搬送ベルト上に固定される。
【0029】
また、画像形成部4は、搬送ベルト8の上側経路8Xの表面に対向して配置される。画像形成部4とは、各色(例えば、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の記録ヘッド18Y、18M、18C、18Kとを含むものである。画像形成部4は、画像データについての画像を用紙に画像形成するものである。また、画像形成部4は、画像形成に寄与しないインクを空吐出するものである。以下では、これらの記録ヘッドをまとめて、記録ヘッド18という。各記録ヘッド18Y、18M、18C、18Kは、搬送ベルト8の用紙搬送方向αに沿って並べられている。また、各記録ヘッド18Y、18M、18C、18Kはノズル面18Ya、18Ma、18Ca、18Kaを有する。ノズル面18Ya、18Ma、18Ca、18Kaには、インクを搬送ベルト8の表面に向けて吐出するノズル孔(図示せず)が設けられている。該ノズル孔は、搬送ベルト8の搬送方向と直交する方向に多数並べられている。各ノズル面18Ya、18Ma、18Ca、18Kaと、搬送ベルト8上の表面との間には、隙間部分が設けられていることから、第1用紙3は、記録ヘッド18Y、18M、18C、18Kの下方を通過できる。
【0030】
そして、搬送ベルト8の表面に固定された第1用紙3は記録ヘッド18Y、18M、18C、18Kの下方を順に通過し、同時に、該第1用紙3の上面(印字面)に向けてノズル孔から各色のインクを吐出することで所望のカラー画像が形成される。画像形成された第1用紙3は、排出トレイ15に収容される。
【0031】
また、搬送ベルト8中の所定の領域である空吐出領域には、記録ヘッド18から空吐出されたインクを通過させるための空吐出孔(貫通孔)が設けられている。更にその下方には空吐出されたインクを収容する空吐出インク受け22が設けられている。
【0032】
また、第1用紙検出部9は、第1用紙3の位置および大きさを読み取る。記録位置検出部10は第1用紙3へのインク吐出タイミングを決定し、第1用紙3の後端の検知も兼ねる。第2用紙検出部11は第1用紙3の位置を読み取る。用紙終端検出部14は第1用紙3の紙詰まりや次紙の供給タイミングを決定する。
[印刷の流れ]
次に、印刷処理の流れについて説明する。印刷すべき画像データがホストコンピュータ(図示せず)からネットワークI/F部316(図2参照)を介して入力され、主記憶部312に記憶される。CPU206はエンジン部319を駆動することにより、一対の用紙送りローラ5を駆動し、図1に示した積層された第1用紙3の最上に位置する1枚の第1用紙3の分離を行い、一対のレジストローラ2に向けて搬送する。また、CPU206は、エンジン部319を介して、所定のタイミングによってベルトローラ6を駆動させることにより、搬送ベルト8の搬送動作(回転動作)を開始する。
【0033】
CPU206は、第1用紙検出部9による検出信号を受信すると、所定のタイミング後、エンジン部319を介して一対のレジストローラ対2を駆動し、第1用紙3を搬送ベルト8の上側経路8Xの表面へ搬送して乗せる。第1用紙3を上側経路8Xの表面へ乗せることを、以下の説明では、「レジスト再開」という。
【0034】
また、主記憶部312に記憶された画像データはプリント制御部(図示せず)に送信され、ヘッドドライバ(図示せず)を介して各色ごとのドットデータに変換される。ヘッドドライバはこのドットデータを取り込み、記録ヘッド18の駆動制御信号を生成する。ヘッドドライバで生成された駆動制御信号が記録ヘッド18のノズルに加えられることによって、ノズルからインクが第1用紙3に吐出される。
記録位置検出部10は、該記録位置検出部10の下方を第1用紙3の先端が通過した場合には、用紙先端通過情報をCPU206に送信する。CPU206が、用紙先端通過情報を受信すると、該受信結果を基に所定のタイミングで、第1用紙3に対して記録ヘッド18に印字を行わせる。
【0035】
[空吐出領域について]
次に、空吐出領域について説明する。図4に、搬送ベルト8の空吐出領域30等を示す。図4に示すように、用紙搬送方向αに直交する方向において記録ヘッド18を合わせた長さは、第1用紙3の紙幅に対応する。各記録ヘッド18は、搬送ベルト8の幅方向に沿って千鳥状に配置された、いわゆるライン型ヘッドとして構成されている。また、ノズル21も搬送ベルト8の幅方向に沿って配置されている。
【0036】
次に、空吐出領域30について説明する。上記のように、搬送ベルト8の所定の領域(一部の領域)に空吐出領域30は設けられる。図4の例では、空吐出領域30には、複数の空吐出孔32が設けられる。複数の空吐出孔32は、全てのノズル21と対向する位置を通過するように設けられる。図4では、空吐出孔列A1〜A5、B1〜B4が搬送下流側方向(図4では右から左方向)に、所定の間隔を設けて配置されている。また、図4に示すように、A列、B列ともに、空吐出孔32の中心が用紙搬送方向に対して所定の角度θを有する仮想線分X上に配置される。また、それぞれの空吐出孔は、用紙搬送方向αと直交する方向に所定の間隔で配置される。
【0037】
また、図4の例では、A1列を基準孔列とし、この基準孔列の位置に、ベルト基準穴列認識マーカー17が搬送ベルトの側端部に付されている。そして、ベルト基準穴列検知センサ16は該ベルト基準穴列認識マーカー17を認識することで、認識信号を生成し、CPU206に送信する。CPU206が、認識信号を受信することで、空吐出領域30上の基準孔列A1が、ベルト基準穴列検知センサ16の下方を通過したことを認識する。
【0038】
また、記録ヘッド18が画像形成するためのインクを吐出していない時間が所定時間に到達したとき、または、記録ヘッド18が、画像形成するために、インクを所定回数吐出したときに、空吐出処理は、CPU206の制御により行われる。
【0039】
図4に示すように、搬送中の直前用紙501の後端19と、次に搬送される直後用紙502の先端20との間(紙間)に、空吐出領域30が位置されたときに、記録ヘッド18は空吐出領域30に対して空吐出を行う。また、直前用紙501のサイズと直後用紙502のサイズは同一である。なお、空吐出時における各記録ヘッド18の移動のタイミングは、通常印字時における各記録ヘッド18の移動のタイミングと変わらない。
【0040】
[印刷生産性について]
次に、印刷生産性について説明する。印刷生産性とは、単位時間当たりの画像形成枚数(印刷枚数)をいう。換言すれば、印刷生産性が高いほど、より多くの用紙に印刷できるということである。印刷生産性は、画像形成装置の設計時に決められる。また、レジスト再開の(搬送ベルト8に用紙をのせる)タイミングは、画像形成装置の印刷生産性に関係する。そして、図1(B)に示すように、空吐出する際は、空吐出孔32を含む空吐出領域30には用紙の一部または全部が位置してはいけない。何故なら、用紙により、空吐出領域30が塞がれると、空吐出されたインクがこの用紙に付着してしまうからである。また、空吐出領域30自体に紙の用紙吸着機能がないこともある。何故なら、空吐出孔32は帯電しないからである。
【0041】
その為、用紙は搬送ベルト8の空吐出領域30以外の領域に乗せられる(レジスト再開される)必要がある。また、CPU206は、ベルト基準穴列検知センサ16からの認識信号を受信することにより、空吐出領域30の位置を把握できる。従って、CPU206は、用紙を搬送ベルト8の空吐出領域30以外の領域に乗せるよう制御することが出来る。
【0042】
ところで、印刷生産性Gは、以下の式(1)で表すことができる。ここで、Gは、単位時間(ここでは、1分間)当たりの印刷枚数である。vは、搬送ベルト8の、用紙搬送方向α(図4参照)への移動速度を示す。また、図1(C)に示すように、Lpは搬送ベルト8に乗せられた直前用紙501の用紙搬送方向αの長さとする。図1(B)に示すように、紙間間隔dは搬送ベルト8の乗せられた隣接する用紙の、直前用紙501の後端19と直後用紙502の前端20との距離とする。ただし、図1や図5に示すように、搬送ベルト8に乗せられた用紙で、空吐出領域30の直前(空吐出領域30の直近の下流)にある用紙を直前用紙501とし、直後(空吐出領域30の直近の上流)にある用紙を直後用紙502とする。また、上流、下流とは、用紙搬送方向α(図1参照)についての上流、下流をいう。
【0043】
60/G=(Lp+d)/v
従って、
G=60v/(Lp+d) (1)
また、d/vを紙間時間という。式(1)のうち、Lpは固定値である。従って、Gの値はv/dの値から定まることになり、vの値が大きく、かつ、dの値が小さい場合には、Gの値は、大きくなる。しかし、CPU206の制御限界や駆動限界などから、紙間間隔dの値または紙間時間v/dの値を極端に大きくすることはできない。
【0044】
また、図1(C)や式(1)に示すように、dの値を大きくすると、直前用紙501、502は、空吐出領域30上には、位置しないようになるが、生産性Gが低下する。画像形成装置の当初から規格されている生産性を規格生産性G1といい、規格生産性G1の場合の紙間間隔dを規定紙間間隔Dという。紙間間隔dが規定紙間間隔Dよりも大きくなる場合には、生産性は低下することになる。
【0045】
そこで、本実施例の画像形成装置は、図5に示すように、画像形成領域30上に用紙が位置しないように、乗せる用紙の向きを変更する。従って、規定紙間間隔Dを保ちつつ、つまり、規格生産性G1を保ちつつ、空吐出領域30上に直前用紙501、直後用紙502を位置させないようにすることができる。
【0046】
次に、用紙の向きの変更手法、該変更手法の処理の流れについて説明する。図6に本実施形態の用紙の向きの変更手法の処理の流れを示す。また、図7にCPU206の機能構成例を示す。図7に示すように、本実施例のCPU206は、判断部2062と、変更部2064と制御部2066を有する。
【0047】
また、本実施例の画像形成装置100の機能構成例は、図3に示した通り、第1収容部1と、第2収容部101とを有する。ここで、第1収容部1に収容されている用紙を第1用紙3とし、第2収容部101に収容されている用紙を第2用紙301とする。
【0048】
第1用紙3と第2用紙301とはサイズは同一であるが、向きが異なる。この例では、第1用紙3と、第2用紙301とは、向きが略90度異なるが、他の角度分(例えば、80度)異なるようにしてもよい。従って、第1用紙3は、図5に示す直前用紙501の向きで搬送ベルト8上に乗せられ、第2用紙301は、図5に示す直後用紙502の向きで搬送ベルト8上に乗せられる。直前用紙501は、該直前用紙501の長手方向が用紙搬送方向αに沿うように乗せられたものである。直後用紙502は、該直後用紙502の短手方向が用紙搬送方向αに沿うように乗せられたものである。また、以下の説明では、「空吐出領域30の最上流位置」とは、図4に示すように、空吐出領域30の最上流の位置であるβの部分であるとする。
【0049】
[処理の流れ]
図6に示すように、まず、判断部2062が、搬送ベルト8上に乗せられる用紙が1枚目か否かを判断する(ステップS2)。
【0050】
判断部2062が、搬送ベルト8上の乗せられる用紙が1枚目であると判断すると(ステップS2のYes)、ステップS4に移行する。ステップS4では、第1収容部1から第1用紙3を給紙し、第1用紙3が、空吐出領域30上に、位置しないように、レジスト再開する。用紙が1枚目であるということは、紙間間隔dについては、考慮する必要がなく、つまり、生産性を考慮する必要がない。従って、第1用紙3が、空吐出領域30上に位置しないようにすれば良い。
【0051】
また、ステップS2において、判断部2062が搬送ベルト8上に乗せられる用紙が1枚目ではないと判断すると(ステップS2のNo)、つまり、2枚目以降の用紙が、搬送ベルト8上に乗せられると判断すると、ステップS6へ移行する。
【0052】
ステップS6では、判断部2062は、規定紙間間隔Dで、レジスト再開した場合(用紙を搬送ベルト8上の乗せた場合)、該用紙は空吐出領域に位置するか否かを判断する。
【0053】
ここで、ステップS6の判断手法として、以下の式(2)により判断することができる。
(Lp+d)・(N−1)+Lp>Lb−Ls 式(2)
ただし、Lpは、搬送ベルト8に乗せられた直前用紙501の用紙搬送方向αの長さとし、Lbは、搬送ベルト8の上側経路8Xの長手方向の長さ(図3参照)とし、用紙搬送方向α(長手方向)の長さであるとし、Lsは、空吐出領域の用紙搬送方向αの長さであるとする(図5参照)。そして、Nは搬送枚数である。搬送ベルト8上に一度に乗せることが可能な用紙の枚数をMとし、累積用紙枚数をmとすると、搬送枚数Nは以下のように定義できる。累積用紙枚数mとは、1枚目の用紙から現在搬送ベルト8に乗せられた用紙までの枚数である。
m<Mの場合
N=m
m≧Mの場合
N=M 式(3)
となる。
【0054】
式(2)が成立すると判断した場合には、直後用紙502が、空吐出領域30上に位置するということである。従って、判断部2062が、式(2)が成立すると、判断すると、直後用紙502が空吐出領域30上に位置すると判断する。
【0055】
判断部2062が、式(2)が成立しない、つまり、直後用紙502が空吐出領域30上に位置しないと判断すると、図5(B)に示すように、CPU206は、次の直後用紙502を第2収容部301から給紙させる。また、判断部2062による、用紙が空吐出領域30上に位置するか否かの判断は、式(2)を用いた例に限られない。
【0056】
一方、ステップS6で、判断部2062が上記式(2)が成り立たず、直後用紙502が空吐出領域30上に位置すると判断した場合には、ステップS10に移行する。そして、判断部2062が、同一サイズで、向きが変更された用紙でも空吐出領域30上に乗るか否かを判断する(ステップS10)。
【0057】
ここで、ステップS10の判断手法として、以下の式(4)により判断することができる。
(Lp+d)・(N−1)+Lpc>Lb−Ls 式(4)
ここで、図5に示すように、Lpcは、用紙の向きを変更した場合の用紙搬送方向αの長さであり、Lp>Lpcとなる。換言すれば、搬送ベルト8に乗せられた場合に、用紙搬送方向αの長さが、第1用紙が第2用紙より長くなるように、第1用紙3、第2用紙301はそれぞれ、第1収容部1、第2収容部101に収容されている。また、式(4)が成り立つということは、用紙の向きを変更したとしても、向きを変更された用紙は、空吐出領域30上に位置するということである。判断部2062が式(4)が成り立つと判断すると、ステップS12に移行する。
【0058】
ステップS12では、CPU206は、空吐出領域30が記録ヘッド18の下方を通過するように、搬送ベルト8を駆動する。また、空吐出領域30が、記録ヘッド18の下方を通過する際に、CPU206は、記録ヘッド18に空吐出をさせてもよい。空吐出領域30が、記録ヘッドの下方を通過した後に、空吐出領域30の最上流位置β(図4参照)以降に、直後用紙502の先端20が位置するように、レジスト再開する(ステップS12)。
【0059】
また、判断部2062が、式(4)が成り立たないと判断すると、ステップS14へ移行する。ステップS14では、判断部2062が、第2収容部101に用紙が収容されているか否かを判断する。判断部2062が、第2収容部101に用紙が収容されていないと判断するとステップS12に移行する。
【0060】
また、判断部2062が、第2収容部101に用紙が収容されていると判断すると(ステップS14のYes)、ステップS16へ移行する。ステップS16では、CPU206内の変更部2064は、第2収容部101から第2用紙301を給紙させて、搬送ベルト8上に乗せる。そうすると、図5に示すような状態となる。つまり、直後用紙502が、空吐出領域30上に乗ることなく、かつ、直前用紙501と直後用紙502との規定紙間間隔Dも保つことができる。
【0061】
つまり、ステップS6で判断部2062が、用紙が空吐出領域30に乗せられるか否かを判断する。そして、判断部2062が、用紙が空吐出領域30上に乗せられると判断すると、変更部2064が、用紙が空吐出領域30上に乗せられないように(ステップS10)、用紙の向きを変更して、搬送ベルト8に乗せる(ステップS16)。
【0062】
そして、変更部2064が、用紙の向きを変更するのであるが、この場合には、変更部2064は、該向きが変更された用紙に応じて、画像データの向きを変更する必要がある。上記の説明であると、用紙の向きを90度変更しているので、画像データについても、用紙の向きの変更方向と同一であり、かつ、変更角度を90度にする。
【0063】
画像データの変更のタイミングとしては様々ある。例えば、変更部2064は、主記憶部312に記憶されている画像データの向きを変更するようにすればよい。このように、用紙の向き、画像データの向きは常に対応させておく必要がある。
【0064】
また、用紙の向きを変更する手法として、第1収容部1と第2収容部101とを具備させた例を説明した。その他の用紙の向きを変更する手法として、第2収容部101を具備させず、第1収容部1および用紙向き切替爪(図示せず)を具備させる。用紙向き切替爪は、第1収容部1から搬送ベルト8上に用紙を乗せるまでの搬送経路途中に、具備させる。そして、用紙の向きを変更するときには、CPU206からの制御により、用紙向き切替爪により用紙の向きを90度変更してから、搬送ベルト8上に乗せればよい。このようにすることで、第2収容部101を具備させる必要はない。
【0065】
本実施形態1のような構成であれば、用紙が空吐出領域30上に位置すると判断された場合であっても、用紙の向きを変えることで、搬送ベルト8の用紙搬送方向αの用紙の長さを短くすることができる。従って、隣接する用紙の紙間間隔を規定紙間間隔に保ちつつ、用紙を空吐出領域上に位置しないようにすることができる。また、紙間間隔が長くなると、インクを吐出しない時間が長くなり、インクの乾燥が生じ易くなる。従って、隣接する用紙の紙間間隔を規定の紙間間隔に保つことができれば、生産性も確保でき、かつ、インクの乾燥を生じ難くすることができる。
[実施形態2]
次に、実施形態2の画像形成装置について説明する。上述のように、変更部2064が、用紙の向きを変更する場合には、給紙する用紙を第1収容部1に収容された第1用紙3から、第2収容部101に収容された第2用紙301に変更する、と説明した。そして、図6に示すステップS14で判断部2062が、「第2収容部101に第2用紙301が収容されているか否か」を判断すると説明した。しかし、第2収容部101に第2用紙301が収容されていない場合がある。
【0066】
ここで、「第2収容部101に第2用紙301が収容されていない」ことには、(i)第2収容部101に用紙が収容されていたとしても、第2収容部101が、用紙の向きを変えて給紙されるような設定になっていないこと、(ii)第2収容部101に用紙が収容されていたとしても、第1収容部1の用紙と紙種や紙厚が異なる場合なども含む。つまり、「第2収容部101に第2用紙301が収容されていない」ということは、「第1用紙3と、サイズが同一であり向きが異なる第2用紙301が、第2収容部101に収容されていない」ということである。
【0067】
第2収容部101に第2用紙301が収容されていないことを示す情報を非収容情報という。非収容情報は第1表示部3182(図2参照)に表示される。つまり、図6に示すステップS14でNoと判断されると、非収容情報を第1表示部3182に表示した後に、ステップS12に移行する。
【0068】
非収容情報の表示例を図8に示す。図8では、第2収容部を第2トレイとして示す。
【0069】
表示の手法は様々あるが、例えば図8に示す画像を第1表示部3182に表示させてもよい。また第1表示部3182(図2参照)をスピーカとして機能させ、図8に示す内容を音声出力するようにしてもよい。また、図8に示す内容を用紙に印刷・排出して、ユーザに認識させてもよい。
【0070】
この実施形態2の画像形成装置では、第2収容部101に第2用紙301が収容されていないと、その旨を示す非収容情報を第1表示部3182に表示する。従って、ユーザは、第2収容部101に第2用紙301が収容されていないことを認識でき、第2収容部101に用紙を補充等することができる。
[実施形態3]
実施形態2では、第2収容部101に第2用紙301が収容されていないと、非収容情報を第1表示部3182に表示すると説明した。実施形態3の画像形成装置は、第1操作部3172(図2参照)を有する。そして、第2収容部101に第2用紙301が収容されていないと、「第2収容部101に用紙を収容する」または、「用紙の向きを固定したまま印刷を行う」かを、ユーザに選択させることが出来る。当該選択は、ユーザが操作部3172を操作することで行われる。「用紙の向きを固定したまま印刷を行う」というのは、第2収容部101内に第2用紙301が収容されていないまま、第1収容部1内の第1用紙3のみを使用して印刷を継続することである。また、「第2収容部101に用紙を収容する」とは、第2収容部101に用紙が収容されていない場合に用紙を補充することの他、第2収容部101に第2用紙301が補充されているが、第1収容部1の第1用紙1と紙種・紙厚が異なる場合に、第1用紙1と同じ紙種・紙厚の用紙を収容させることも含む。
【0071】
図9の例では、ユーザが、「第2収容部101に用紙を収容する」を選択(所望)する場合には、「用紙設定ボタン1202」を押下し、「用紙の向きを固定したまま印刷を行う」を選択(所望)する場合には、「印刷継続ボタン1204」を押下する。
【0072】
また、以下の説明では、実施形態1で説明した用紙の向きを変更するモードを「用紙向き変更モード」といい、用紙の向きを固定したままで印刷を継続するモードを「用紙向き固定モード」という。
【0073】
つまり、ユーザが、印刷継続ボタン1204を押下すると、印刷を継続する旨の信号がCPU206に送信され、「用紙向き固定モード」が設定される。また、ユーザが、用紙設定ボタン1202を押下し、かつ、第2トレイへの用紙設定をすると、用紙向き変更モードである旨の信号が、CPU206に送信され、「用紙向き変更モード」が設定される。
【0074】
この実施形態3の画像形成装置によれば、第2収容部101に第2用紙301が収容されていない場合でも、ユーザに対して、「第2収容部101に用紙設定する」か「用紙の向きを固定したまま印刷を行う」かの選択を促すことで(図9参照)、ユーザにとって、より使い勝手がよいものとなる。
【0075】
[実施形態4]
次に実施形態4の画像形成装置について説明する。実施形態4の画像形成装置は、第2操作部3174を有する。第2操作部3174に例えば、図10の表示をさせる。図10の表示は、第2収容部101に用紙が収容されていない場合の動作を選択させるものである。なお、図10の表示例では、第2収容部101を第2トレイであるとして示している。図10の例は、(i)非収容情報(実施形態2参照)を第1表示部3182に表示させて動作内容を選択させる(以下、「(i)のボタン1206」という。)、または、(ii)非収容情報を第1表示部3182に表示させずに、用紙向き固定モードで印刷継続する(つまり、用紙向き固定モード)(以下、「iiのボタン1208」という。)、のどちらかをユーザに選択させる。ここで、(i)の「動作内容を選択させる」とは、図9に示す動作を選択させる意味である。つまり、ユーザが(i)のボタン1206を押下して、第2トレイに用紙が無くなると、図9に示す画面が表示されるようになる。
【0076】
ユーザが(i)のボタン1206を押下すると、上記(i)で示した内容が行われる旨の信号が、CPU206に送信される。また、ユーザが(ii)のボタン1208を押下すると、上記(ii)で示した内容が行われる旨の信号が、CPU206に送信される。
【0077】
この実施形態4の画像形成装置によれば、第2トレイ(第2収容部101)に第2用紙301が収容されていない場合に、その旨を通知し、動作内容を選択可能とするか(iのボタン1206)、その旨を通知せず、用紙向き固定で印刷を継続するか(iiのボタン1208)をユーザは選択することが出来る。従って、ユーザにとって必要のない非収容情報を表示させないため、非収容情報の表示コストを低減させることができる。
【0078】
なお、図10の表示のタイミングとして、画像形成装置の初期設定時か、印刷時毎に行えばよい。
【0079】
[実施形態5]
次に、実施形態5の画像形成装置について説明する。上述のように実施形態1では、搬送ベルト8上の用紙の向きを変えることで、規定紙間間隔を保ちつつ、用紙を空吐出領域上に位置しないようにすることができた。しかし、状況によっては、用紙の向きを変えたくない場合、つまり、用紙向き固定モードを選択すべき場合もある(つまり、図10記載のiiのボタン1208を押下した場合)。
<用紙向き固定モードを選択すべき場合(その1)>
用紙向き固定モードを選択すべき場合(その1)は、後処理機(例えば、フィニッシャ)によるステープル、パンチ、折り、リングバインド等の処理(以下、「後処理」という。)を行う場合であり、かつ、後処理機への紙送り過程で用紙の回転ができない場合である。ここで、後処理とは、用紙に印刷された後に行われる所定の処理である。この場合には、用紙の向きが変更されると、用紙の向きが縦横混在した用紙束が形成され、後処理が行えなくなる。従って、当該(1)の場合には、用紙の向きを固定すべきである。
<用紙向き固定モードを選択すべき場合(その2)>
また、[実施形態1]では、変更部2064が、用紙の向きに応じて、画像データの向きも変更すると説明した。しかし、画像形成装置が、画像データの変更処理機能を有していない場合、つまり、変更部2064が、画像データの向きの変更を行えない場合に、向きが変更された用紙に印刷されると、全ての画像を該用紙に適切に印刷できない(例えば、画像が切れる)場合がある。従って、画像形成装置が画像データの向きの画像データの変更処理機能を有していない場合には、用紙の向きを固定すべきである。
<用紙向き固定モードを選択すべき場合(その3)>
用紙向き固定モードを選択すべき(その3)として、電子ソートのように縦方向の印刷紙束、横方向の印刷紙束を重ねることで、1ビンのみの排紙口でもソートできるモードの時も、用紙の向きを固定すべきである。
【0080】
上記では、例として、用紙の向きを固定すべき場合として、3つの場合を説明したが、他の場合であっても、用紙向き固定モードが選択されてもよい。以下の説明では、これら3つの場合を「所定の場合」という。
【0081】
図11に、「用紙向き変更モード」「用紙向き固定モード」の設定処理の流れを示す。ステップS101で、制御部2066が、用紙向き固定か否かを判断する。制御部2066の判断基準として、制御部2066自身が、用紙向き固定か否かを判断しても良い。制御部2066が、上記用紙の向きを固定すべき場合(その1)〜(その3)などに該当すると判断した場合(所定の場合)には、用紙向き固定であると判断し(ステップS101のYes)、ステップS102に移行する。ステップS102では、CPU206は、用紙向き固定モードに設定する。用紙向き固定モードに設定された場合には、制御部2066は、変更部2064に、用紙の向きを変更させないようにする。
【0082】
一方、制御部2066が、上記用紙の向きを固定すべき場合(その1)〜(その3)などに該当しないと判断した場合には、用紙の向きを変更すると判断し(ステップS101のNo)、ステップS104に移行する。ステップS104では、CPU206は、用紙向き変更モードに設定する。
【0083】
[実施形態6]
実施形態5において、用紙向きを固定する場合がある旨を説明した。しかし、用紙向きを固定するとなると、図1(C)で示したとおり、紙間間隔dが大きくなり(紙間間隔d'となり)、生産性が低下する可能性がある。もし、生産性が低下することをユーザが認識できぬまま印刷を続行すると、生産性が低下していることをユーザが不審に感じる場合がある。そこで、実施形態6では、実施形態5で説明した「用紙向き固定モード」に設定される場合に、ユーザに画像形成(印刷)の生産性が低下する可能性がある旨の情報を第2表示部3184に表示させ、ユーザに認識させるものである。
【0084】
表示の手法は様々あるが、例えば図12に示す画像を第2表示部3184に表示させてもよい。また第2表示部3184(図2参照)をスピーカとして機能させ、図12に示す内容を音声出力するようにしてもよい。また、図12に示す内容を用紙に印刷・排出して、ユーザに認識させてもよい。
【0085】
この実施形態6のように、印刷の生産性が低下する可能性がある旨の情報を表示することで、ユーザは、用紙向き固定モードに設定されると、印刷の生産性が低下する可能性があることを認識することができる。
【0086】
次に、図16に、実施形態5、6をまとめた処理についての処理フローを示す。まず、判断部2062が、現在行っている印刷ジョブが、後処理を行なうジョブであるか否か(つまり、上記(その1)の場合であるか否か)を判断する(ステップS202)。判断部2062が上記後処理を行うジョブではない、と判断すると(ステップS202のNo)、ステップS204に移行する。また、判断部2062が後処理を行うジョブである、と判断すると(ステップS202のYes)、ステップS214に移行する。
【0087】
次に、ステップS204では、判断部2062が、画像形成装置1000は画像データの変更処理機能を有するか否か(つまり、上記(その2)の場合であるか否か)を判断する(ステップS204)。判断部2062が、画像データ変更処理機能を有している、と判断すると(ステップS204のYes)、ステップS206に移行する。また、判断部2062が、画像データ変更処理機能を有していない、と判断すると(ステップS204のNo)、ステップS214に移行する。画像データ変更処理機能を有するか否かの情報は、主記憶部312や補助記憶部313に予め記憶させておけばよい。そして、判断部2062が、当該記憶されている当該情報を参照して判断すれば良い。
【0088】
次に、ステップS206では、判断部2062が、現在ユーザに設定されているモードが電子ソートモードであるか否かを判断する(ステップS206)。判断部2062が、電子ソートモードでないと判断すると(ステップS206のNo)、ステップS208に移行する。また、判断部2062が、電子ソートモードであると判断すると(ステップS206のYes)ステップS214に移行する。
【0089】
つまり、ステップS202でNoであると判断され、かつ、ステップS204でYesであると判断され、かつ、ステップS206でNoと判断された場合には、ステップS208に移行する。また、ステップS202でYesであると判断され、または、ステップS204でNoであると判断され、または、ステップS206でYesであると判断された場合には、ステップS214に移行する。
【0090】
ステップS208では、CPU206は、用紙向き変更モードに設定する。一方、ステップS214では、CPU206は、用紙向き固定モードに設定する。そして、ステップS214の処理終了後、CPU206が、生産性低下可能性情報(図12の説明参照)を第2表示部3184に表示させる(ステップS216)。
【0091】
ステップS208またはステップS216の処理終了後には、CPU206は、画像形成部4に空吐出をさせる(ステップS210)。そして、判断部2062は、現在処理されている印刷ジョブが終了したか否かを判断する(ステップS218)。判断部2062が、印刷ジョブが終了したと判断すると(ステップS218のYes)、処理が終了する。一方、判断部2062が、印刷ジョブが終了していないと判断すると(ステップS218のNo)、ステップS210に戻り、空吐出動作を引き続き行なう。
【0092】
また、図16に示すステップS202、ステップS204、ステップS206の判断処理は、この順番以外の順番で行ってもよく、また、これらの判断処理は並列的に行ってもよい。
【0093】
このように、実施形態5、6により、用紙向き変更モードまたは用紙向き固定モードが自動選択されて設定される。
【0094】
[実施形態7]
[実施形態5]では、制御部2066が、「用紙向き固定モード」または「用紙向き変更モード」のうち、どちらかを自動選択する実施形態を説明した。[用紙向き変更モード]では、印刷された用紙が、縦横混在の状態で排紙されるため、ユーザは、用紙の向きを揃える作業を行う必要があった。そこで、[実施形態7]では、「用紙向き固定モード」または「用紙向き変更モード」のうち一方を、ユーザが選択できる実施形態を説明する。
【0095】
例えば、第3操作部3176に表示される画面を図13に示す。図13の例では、「用紙向き固定モード」と「用紙向き変更モード」のうち、どちらかを、ユーザに選択させる画面である。
【0096】
ユーザが、「用紙向き固定モード」を所望するのであれば、「用紙向き固定モードボタン1210」を押下する。そうすると、用紙向き固定モードである旨の信号がCPU206に送信され、用紙向き固定モードが設定される。また、ユーザが、「用紙向き変更モード」を所望するのであれば、「用紙向き変更ボタン1212」を押下する。そうすると、用紙向き変更モードである旨の信号がCPU206に送信され、用紙向き変更モードが設定される。
【0097】
この実施形態7の画像形成装置のように、ユーザが、「用紙向き固定モード」または「用紙向き変更モード」を選択できる。従って、生産性を向上させたく、かつ、ユーザが用紙向き揃え作業を行ってもよい、という場合には、[用紙向き変更モード]を選択すればよい。また、ユーザが生産性は低下してもよいが、用紙向き揃え作業を行いたくない、という場合には、[用紙向き固定モード]を選択すればよい。
【0098】
[実施形態8]
次に、実施形態8の画像形成装置について図4を用いて説明する。図4において、空吐出領域30の最下流箇所をγとする。また、直前用紙501の後端19と最下流箇所γとの距離を記録媒体空吐出領域間距離Yとする。
【0099】
ここで、記録媒体空吐出領域間距離Yが極端に長いということは、直前用紙501に対して、インク吐出した時刻T1と、空吐出領域でインクを空吐出した時刻T2との非吐出時間間隔Tは長くなる。非吐出時間間隔Tは、インクが吐出されていない時間を示す。つまり、記録媒体空吐出領域間距離Yが長くなると、記録ヘッド18のノズル面が乾燥し易くなる。
【0100】
そこで、本実施形態の画像形成装置では、インクの空吐出量を空吐出領域30の下流箇所γと、該空吐出領域30の下流直近にある記録媒体501の後端19との距離(記録媒体空吐出領域間距離Y)に基づいて定めるようにする。例えば、図14に示すような、テーブル表が主記憶部312に記憶されている。図14に示すテーブル表は、記録媒体空吐出領域間距離Yと、記録ヘッド18の空吐出量Zとを対応させたものである。図14の例では、記録媒体空吐出領域間距離の値がYの場合には、空吐出量はZであり、記録媒体空吐出領域間距離の値がYの場合には、空吐出量はZであり(Y、Zについては図示せず)、・・・記録媒体空吐出領域間距離の値がY(nは、2以上の整数)の場合には、空吐出量はZである。
【0101】
また、Y<Y・・・<Yであり、Z<Z・・・<Zとする。
【0102】
そして、記録位置検出部10による直前用紙501の後端19の検知と、ベルト基準穴列検知センサ16による空吐出領域30の最下流箇所γの検知とから、記録媒体空吐出領域間距離Yは算出される。テーブル表に示されている記録媒体空吐出領域間距離Y〜Yのうち、算出された記録媒体空吐出領域間距離Yと最も近い値の記録媒体空吐出領域間距離と対応する空吐出量Zの値を求める。そして、CPU206が、記録ヘッド18に対して、求められた空吐出量Z分、空吐出させる。
【0103】
また、テーブル表を用いない、空吐出量の決定手法を説明する。上述のように、記録媒体空吐出領域間距離Yが長くなるにつれて、空吐出量Zは多くすべきである。従って、記録媒体空吐出領域間距離Yと空吐出量Zとの関係は大略して、比例関係にある。よって、予め、以下の式(5)を求めておく。
【0104】
Z=aY (5)
ただし、aは比例定数であり、実験的に求められるものである。この式を主記憶部312に格納させておく、そして、記録媒体空吐出領域間距離Yが算出されると、CPU206は式(5)を用いて、空吐出量Zを求める。そして、CPU206は、記録ヘッド18に求められた空吐出量Z分、空吐出させる。
【0105】
また、空吐出量Zを求めず、更に簡易的な空吐出手法について説明する。判断部2062が、記録媒体空吐出領域間距離Yが予め定められた所定値(閾値)yよりも大きい否かを判断する。記録媒体空吐出領域間距離Yが予め定められた所定値yよりも小さいということは、非吐出時間間隔Tが短いということであり、比較的インクは吐出(空吐出も含めて)されているということであり、ノズル面の乾燥なども生じがたいということである。また、この場合のインクの空吐出量を所定量Zという。判断部2062が、記録媒体空吐出領域間距離Yが予め定められた所定値yよりも小さいと判断すると、CPU206は、記録ヘッド18に、所定量Z分、空吐出させる。
【0106】
また、記録媒体空吐出領域間距離Yが予め定められた所定値y以上ということは、非吐出時間間隔Tが長いということであり、あまり、インクは吐出(空吐出も含めて)されていないということであり、ノズル面の乾燥なども生じ易いということである。従って、判断部2062が、記録媒体空吐出領域間距離Yが予め定められた所定値yよりも大きいと判断すると、CPU206は、記録ヘッド18に、所定量Zより多いインクを空吐出させる。
【0107】
この実施形態8の画像形成装置のように、記録媒体空吐出領域間距離Yが長い場合には、空吐出されるインクの量を多くする。従って、記録媒体空吐出領域間距離Yが長く、記録ヘッド18のノズル面が乾燥し易い状況であっても、空吐出されるインクの量を多くすることで、記録ヘッド18のノズル面の乾燥などを防ぐことができる。
【0108】
[実施形態9]
次に実施形態9の画像形成装置について説明する。図15に、本実施形態9の画像形成装置の機能構成例を示す。図15の画像形成装置は、図3の画像形成装置と比較して、第1排出トレイ15と第2排出トレイ151とを有する点で異なる。
【0109】
上述した[用紙向き変更モード]で印刷をすると、印刷された用紙の向きが縦横混在した状態で排出されることになり、ユーザは用紙の向きを揃える作業をしなければならない。そこで、本実施形態9の画像形成装置は、用紙の向きに応じた、印刷された用紙を収容する排紙トレイを具備する。図15の例では、例えば、第1排出トレイ15には、横向きの印刷後用紙が収容され、第2排出トレイ151には、縦向きの印刷後用紙が収容される。換言すれば、第1収容部1に収容されていた第1用紙3が、印刷されると、第1排出トレイ15に収容され、第2収容されていた第2用紙301が、印刷されると、第2排出トレイ151に収容される。図15の例では、印刷された用紙の排紙先を第1排出部15に排出するか、第2排出部151にするかを切り替えるための排紙先切替爪31が具備されている。CPY206が排紙先切替爪31を制御することにより、印刷された用紙の排出先を切り替える。
【0110】
実施形態7の画像形成装置では、「生産性を低下させない」または「ユーザが用紙向き揃え作業を行わない」のうち、どちらかを選択しなければならなかった。しかし、本実施形態9の画像形成装置であれば、用紙の向きに応じた排出トレイを具備させることで、印刷された用紙が、縦横混在した状態で排出されることはない。従って、この実施形態9の画像形成装置であれば、生産性を低下させずに、かつ、ユーザが用紙向き揃え作業を行う必要ないという効果を奏する。
[その他の変形例]
ここまでの実施例において、空吐出領域30(図4参照)には複数の空吐出孔32が設けられると説明した、しかし、空吐出領域30の箇所がクリーニング可能な素材でり、該空吐出領域30をクリーニングできるクリーニング機構が具備させれば、搬送ベルト8上に空吐出孔32を設けずに、搬送ベルト8上へ空吐出してもよい。また、上記では、静電吸着機構により搬送ベルト8に用紙を吸着させる例を説明したが、搬送ベルト8に無数の吸引孔を設け、エア吸引機構(例:ファン)を具備させ、該エア吸引機構によりエア吸引して、搬送ベルト8に用紙を吸引させてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1・・・第1収容部
2・・・レジストローラ対
4・・・画像形成部
5・・・用紙送りローラ
6・・・ベルトローラ
7・・・ベルトローラ
8・・・搬送部
8X・・・搬送ベルトにおける上側経路
8Y・・・搬送ベルトにおける下側経路
9・・・第1の用紙検出部
10・・・記録位置検出部
11・・・第2の用紙検出部
14・・・用紙終端検出部
15・・・排出トレイ
16・・・ベルト基準穴列検知センサ
17・・・ベルト基準穴列認識マーカー
18・・・ヘッド本体
18Y・・・記録ヘッド(イエロー)
18M・・・記録ヘッド(マゼンタ)
18C・・・記録ヘッド(シアン)
18K・・・記録ヘッド(ブラック)
19・・・先行用紙の後端
20・・・後続用紙の先端
21・・・ノズル
22・・・空吐出インク受け
30・・・空吐出領域
31・・・排紙先切替爪
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開2010−094814号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像形成するために液滴を吐出する、または、該画像形成に寄与しない液滴を空吐出する画像形成部と、
前記記録媒体を搬送し、前記空吐出されることが可能な空吐出領域を有する搬送部と、
前記記録媒体が、前記空吐出領域に位置するか否かを判断する判断部と、
前記判断部が、前記記録媒体が前記空吐出領域に位置すると判断すると、前記記録媒体が前記空吐出領域に位置しないように、前記記録媒体の向きを変更して、前記搬送部に乗せる変更部と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記録媒体を収容する第1収容部と、
前記第1収容部に収容されている前記記録媒体とは、サイズは同一であり向きが異なる記録媒体を収容する第2収容部と、を有し、
前記変更部は、前記搬送部に乗せる記録媒体を、前記第1収容部に収容されている記録媒体から、前記第2収容部に収容されている記録媒体に変更することで、前記記録媒体の向きを変更することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2収容部に記録媒体が収容されていない場合には、前記第2収容部に記録媒体が収容されていない旨の非収容情報を表示する第1表示部を有することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1表示部に前記非収容情報を表示した後に、前記画像形成の処理を続行するか、または、前記第2収容部に前記記録媒体を収容させるかを、ユーザに選択させる第1操作部を有することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記非収容情報を前記第1表示部に表示するか、または、前記非収容情報を前記第1表示部に表示させずに前記変更部に前記記録媒体の向きを変更させずに前記画像形成部に画像形成させるか、をユーザに選択させる第2操作部を有することを特徴とする請求項3または4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記録媒体の向きの変更とは、略90度変更することを特徴とする請求項1〜5何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記変更部に前記記録媒体の向きを変更させるか否かを制御する制御部を有することを特徴とする請求項1〜6何れかに1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部が、前記変更部に前記記録媒体の向きを変更させないと制御すると、前記画像形成の生産性が低下する可能性がある旨の情報を表示する第2表示部を有することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
ユーザからの操作に基づいて、前記制御部は、前記変更部に前記記録媒体の向きを変更させるか否かを制御することを特徴とする請求項7または8記載の画像形成装置。
【請求項10】
空吐出される液滴の量は、上記空吐出領域の下流箇所と、該空吐出領域の下流直近にある記録媒体の後端との距離に基づいて定まることを特徴とする請求項1〜9何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
記録媒体の向きに応じた、前記画像形成された記録媒体を収容する排紙トレイを有することを特徴とする請求項1〜10何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−30576(P2012−30576A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128266(P2011−128266)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】