説明

画像形成装置

【課題】印加可能な交流定電圧値を複数持ち、それぞれを切り替えて印加した際に流れる交流電流値を検知し、基準電流を上回りかつ最小となる交流定電圧値を画像形成時の帯電交流ピーク間電圧として採用し、さらには画像形成時の帯電交流ピーク間電圧より一段階低い電圧を画像形成時の前回転動作時に印加し画像形成時の電圧を決定する画像形成装置において、プロセススピードを切り替えて使う場合にも帯電不良が発生しにくいような画像形成装置を提供する。
【解決手段】プロセススピードが高くなった場合には、画像形成時の前回転動作時に印加する交流定電圧値を選択されている交流定電圧値もしくはそれよりも高い交流定電圧値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式を採用するプリンタや複写機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用するレーザビームプリンタや複写機などの画像形成装置は、一様に帯電させた電子写真感光体に、画像情報に対応した光(レーザ光など)を照射することで静電潜像を形成する。そして、この静電潜像に現像手段により現像剤(トナー)を供給して現像剤像(トナー像)として顕像化し、更に感光体から紙に代表される記録材へ像を転写することで、記録材上に画像を形成し、出力している。
【0003】
感光体の帯電装置としては、ローラ型、ブレード型などの帯電部材を感光ドラム表面に接触させ、該接触帯電部材に電圧を印加して感光ドラム表面の帯電を行う接触帯電方式が広く採用されている。特に、ローラ型の帯電部材(帯電ローラ)を用いた接触帯電方式は、長期にわたって、安定した帯電を行うことができる点で優れている。
【0004】
接触帯電部材としての帯電ローラに対しては、帯電バイアス印加手段から帯電バイアス電圧が印加される。該帯電バイアス電圧は直流電圧のみでも良いが、特許文献1のように、所望のドラム上暗電位Vdに相当する直流電圧Vdcに、直流電圧印加時放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧(Vpp)をもつ交流電圧を重畳したバイアス電圧が用いられる場合が多い。この帯電方法は、感光ドラム上を均一帯電するのに優れており、直流電圧に対して交流電圧を重畳印加することによって感光ドラム上の局所的な電位ムラが解消され、感光ドラム表面の帯電電位Vdは、直流印加電圧値Vdcに均一に収束する。
【0005】
一方、交流ピーク間電圧を大きくしすぎると、感光ドラム表面の荒れが大きくなって画像上に縦スジが発生するなどの点から、帯電不良が発生しない程度の必要最小の交流ピーク間電圧を印加するのが好ましい。なかでも、特許文献2、特許文献3に記載の方法は、電源回路の低コスト化とより適した帯電バイアス印加を両立できる、優れた方法である。この方法は、複数の交流ピーク間電圧を印加して、感光ドラムに流れる交流電流を検知して、基準電流以上かつ最も小さい電流値となる交流ピーク間電圧を画像形成時の帯電バイアスとして選択するものである。
【0006】
一方、電子写真方式を採用する画像形成装置においては、装置自体の静音化や多彩なメディア対応など様々な観点から、動作可能なプロセススピードを複数備えたものも増えてきている。このような画像形成装置において、交流電圧を重畳したバイアス電圧を印加する接触帯電方式を用いる場合、帯電ムラが画像に現れないようにする必要がある。そのため、特許文献4のように、プロセススピードが速いほど印加する交流電圧の周波数を大きくしているのが普通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−149669号公報
【特許文献2】特許第3902973号公報
【特許文献3】特許第3902974号公報
【特許文献4】特開2002−091097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2、特許文献3の方法を用いる際、動作可能な複数のプロセススピードを切り替えて使う場合、以下に述べるようなことが起こり得る。即ち、直流に交流ピーク間電圧を重畳した帯電バイアスを印加する場合、先にも述べたようにプロセススピードが速いほど高い帯電周波数を用いるのが普通である。しかし、遅いプロセススピードから速いプロセススピードに切り替えたときに、遅いプロセススピード時に選択された交流ピーク間電圧のままでは、帯電不良が発生しない充分な交流電流が得られない可能性がある。これを防ぐためには、プロセススピードが切り替わったときに、新たに検知シーケンスを設けることが考えられるが、その検知シーケンスの分だけ時間がかかることになり不便になってしまう。
【0009】
従って、本発明の目的は、プロセススピードが切り替わった場合においても速やかに適切な帯電バイアス印加を可能にする画像形成装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、切り替わったプロセススピードに応じてそれぞれ適切な帯電バイアス印加を可能にする画像形成装置を提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、帯電バイアス電源回路の低コスト化が図れる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、異なるスピードの少なくとも2種類以上のプロセススピードの内の選択されたプロセススピードで画像形成動作が可能な画像形成装置であって、潜像担持体と、前記潜像担持体に接触する接触帯電手段と、1つの電圧昇圧手段で、n(n≧3)段階の交流ピーク間電圧Vpp−(1)、・・・、Vpp−(n)(但し、Vpp−(1)<・・・<Vpp−(n))の1つと直流電圧(Vdc)との重畳バイアス電圧を帯電バイアスとして前記接触帯電手段に印加する帯電バイアス電源回路と、前記接触帯電手段に対する帯電バイアス印加時に前記潜像担持体に流れる交流電流を検知する帯電交流電流検知手段と、を有し、非画像形成時の少なくとも一部で、前記接触帯電手段に対して前記帯電バイアス電源回路により前記n(n≧3)段階の交流ピーク間電圧を順次に印加した時に前記潜像担持体に流れる帯電交流電流を検知し、必要最小電流以上であり、なおかつ最も小さな値を検出した交流ピーク間電圧を画像形成時の帯電交流電圧として選択し、画像形成前の準備回転動作の少なくとも一部で、前回選択された交流ピーク間電圧よりも一段階低い交流ピーク間電圧を印加し、必要最小交流電流を満たすか否かの判定を行う画像形成装置において、プロセススピードがそれまでのスピードよりも速いスピードに切り替わった際には、準備回転動作の少なくとも一部で印加する交流ピーク間電圧を前回選択された交流ピーク間電圧かそれよりも大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プロセススピードが切り替わった場合においても、特に、プロセススピードがそれまでのスピードよりも速いスピードに切り替わった際に、速やかに適切な帯電バイアス印加が可能である。即ち、画像形成装置のプロセススピードが遅い場合から速い場合に切り替わった場合でも、画像形成前に帯電バイアスが適切か否かをより確実に判断できるので、より帯電不良が発生しにくい帯電バイアスを印加出来る画像形成装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1において、前回のプロセススピードがVx1であった場合の帯電バイアス印加のフローチャートを示したものである。
【図2】(a)は実施例1の画像形成装置の概略図、(b)は装置の動作工程図である。
【図3】(a)は帯電バイアス電源回路の概略図、(b)は印加可能な交流ピーク間電圧と、出力可能な直流電圧との関係を示した相関図である。
【図4】(a)は電圧−電流特性及び帯電不良が発生しなくなる基準電流値を模式的に示した図、(b)はプロセススピード、帯電周波数の違いで電圧−電流特性、及び帯電不良が発生しなくなる基準電流値が変わることを説明した図である。
【図5】電源投入時に行う帯電バイアス決定シーケンスを示したフローチャートである。
【図6】(a)は帯電バイアス決定シーケンスにおける、帯電バイアス選択の様子を表した図、(b)は画像形成動作を行う際の帯電及び駆動シーケンスを示した図である。
【図7】前回のプロセススピードがVx2であった場合の帯電バイアス印加のフローチャートを示したものである。
【図8】実施例2において、前回のプロセススピードがVx1であった場合の帯電バイアス印加のフローチャートを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施例1]
(画像形成装置の概要)
図2の(a)は本実施例における画像形成装置100の断面模式図を示したものである。この装置100は転写式電子写真プロセスを用いた、プロセスカートリッジ着脱方式のレーザプリンタである。即ち、ホスト装置200からエンジンコントローラ(制御回路部)101に入力する電気的な画像情報に基づいてシート状の記録材Pに画像を形成して出力することができる。コントローラ101は装置100の動作を統括的に制御しており、ホスト装置200や操作部102からのプリント指令に応じて所定の画像形成シーケンスに従って装置100の画像形成動作を実行する。本実施例の装置100は、後述するように、異なるスピードの少なくとも2種類以上のプロセススピードの内の選択されたプロセススピードで画像形成動作が可能である。ホスト装置200はコントローラ101にインターフェイスを介して接続されたパソコン、イメージリーダー、ファクシミリ装置などである。
【0016】
Cはプロセスカートリッジであり、装置本体100A内のカートリッジ装着機構部(不図示)に対して取り外し可能に装着されている。本実施例におけるカートリッジCは、カートリッジ枠体6に対して、潜像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体1と、それに作用するプロセス手段としての、接触帯電装置2、現像装置4、クリーニング装置5を所定の配置関係をもって組付けたものである。接触帯電装置2は回転する電子写真感光体(以下、ドラムと記す)1に接触してドラム表面を所定の極性・電位に一様に帯電する接触帯電手段であり、本実施例ではドラム1の回転に従動して回転する帯電ローラを用いている。現像装置4はドラムに形成された静電潜像を現像剤(トナー)により現像剤像(トナー像)として現像(可視化)する現像手段であり、現像剤を担持してドラム1との対向部(現像部)に搬送してドラムの静電潜像を現像する現像ローラ(現像剤担持体)4aを有する。また、現像装置4は、現像剤(不図示)を収容した現像剤収容部4b、現像剤収容部4bの現像剤を攪拌しながら現像ローラ4aに供給する攪拌部材4c、現像ローラ4aに担持された現像剤の層厚を規制する現像ブレード4dなどを有している。クリーニング装置5は記録材Pに対するトナー像転写後のドラム1の表面から転写残トナーや紙粉等の付着残留物を除去してドラム面を清掃するクリーニング手段である。本実施例では、クリーニング部材としてクリーニングブレード5aを用いたブレードクリーニング装置である。ブレード5aによりドラム面から掻き落された転写残トナー等は廃トナー収容部5bに収容される。カートリッジCは装置本体100Aに対して所定に装着されている状態において、カートリッジ側駆動入力部(不図示)に装置本体側駆動出力部(不図示)が結合している。また、カートリッジ側バイアス入力部(不図示)に装置本体側バイアス出力部(不図示)が結合している。これにより、装置100は画像形成動作が可能となる。
【0017】
コントローラ101は、プリント開始信号の入力に基づいて、駆動源(メインモータ)Mを起動してドラム1を所定のプロセススピードにて矢印の時計方向に回転駆動(ドラム駆動−ON)する。そして、所定の制御タイミングにて、後述する帯電バイアス電源回路A(図3の(a))から帯電ローラ2に対して所定の帯電バイアスを印加する。これにより、ドラム1の表面が所定の極性・電位(暗部電位Vd)に一様に帯電される。また、コントローラ101は、所定の制御タイミングにて、ドラム1の帯電面に対して露光装置(露光手段)3による画像露光Lを行う。本実施例における露光装置3はレーザスキャナである。この装置は3、画像情報に基づいて変調されたレーザ光Lをドラム1に表面に照射(主走査露光)して照射部分の電荷を除去し、照射部分の明部電位Vlと非照射部分(非露光部分)の暗部電位Vdとの静電コントラストによりドラム面に静電潜像を形成する。そして、その静電潜像が現像装置4によりトナー像として現像される。画像形成方式としては、バックグランド露光方式と正規現像方式とによる方式と、イメージ露光方式と反転現像方式とによる方式とが有る。前者は、帯電したドラム表面に画像情報のバックグランド部に対応して露光し、バックグランド部以外の部分を現像する方式である。後者は、画像情報部に対応して露光し、非露光部分を現像する方式である。それぞれの特徴を生かして用いられている。
【0018】
ドラム1に形成されたトナー像は、転写装置(転写手段)としての転写ローラ7によって記録材Pに転写される。記録材Pは、給紙部8に積載して収納されている。給紙ローラ9が所定の制御タイミングで駆動されることで、給紙部8の記録材Pが一枚分離給送されてシートパス10を通ってレジストローラ11に至る。そして、その記録材Pは、ローラ11によりドラム1上のトナー像と同期をとってドラム1とローラ7との圧接部である転写ニップ部Nに導入されて挟持搬送される。ローラ7には記録材Pがニップ部Nを挟持搬送されている間、転写バイアス電源回路(不図示)からトナーの帯電極性とは逆極性で所定電位のDC電圧である転写バイアスが摺動接点を介して印加される。これにより、ドラム1上のトナー像が記録材P上に順次に静電転写される。ニップ部Nを出た記録材Pはドラム1から分離されて定着装置(定着手段)12へ搬送される。また、記録材分離後のドラム1は表面に残ったトナー・紙粉等の残留物がクリーニング装置5によって除去されて清掃され、繰り返して画像形成に供される。定着装置12に搬送された記録材Pは、定着ローラ12aと加圧ローラ12bとの圧接部である定着ニップ部で加熱、加圧を受けて、未定着トナー像が固着像として定着される。トナー像定着後の記録材Paは画像形成物(プリント、コピー)として排出ローラ13により装置本体外部の排紙トレイ14に排出される。
【0019】
<装置100の動作工程>
図2の(b)に,コントローラ101が行う上記装置100の動作工程図を示した。
【0020】
1)前多回転動作(プレ回転):装置100の始動(起動)動作(ウォーミング)である。装置100のメイン電源スイッチのONにより、装置100のメインモータMを起動させて、所要のプロセス機器の準備回転動作を実行する。
【0021】
2)スタンバイ:所定の始動動作終了後、メインモータMの駆動を停止させて、プリントジョブ開始信号が入力されるまで装置100をスタンバイ(待機)状態に保持する。
【0022】
3)前回転動作:プリントジョブ開始信号の入力に基づいて、メインモータMを再駆動させて、所要のプロセス機器のプリントジョブ前動作(画像形成前の準備回転動作)を実行する。より実際的は、a:装置100がプリントジョブ開始信号を受信、b:フォーマッタで画像を展開(画像のデータ量やフォーマッタの処理速度により展開時間は変わる)、c:前回転動作開始、という順序になる。
【0023】
なお、前記1)の前多回転動作中にプリントジョブ開始信号が入力している場合は、前多回転動作の終了後、前記2)のスタンバイ無しに、引き続き前回転動作に移行する。
【0024】
4)プリントジョブ実行:所定の前回転工程が終了すると、引き続いて前記の画像形成プロセスが実行されて、画像形成済みの記録材が出力される。マルチプリントジョブ(連続プリントジョブ)の場合は前記の画像形成プロセスが繰返えされて所定枚数分の画像形成済みの記録材が順次に出力される。
【0025】
5)紙間:マルチプリントジョブの場合において、一の記録材Pの後端と次の記録材Pの先端との間隔工程であり、転写部や定着装置においては非通紙状態期間である。
【0026】
6)後回転動作:1枚だけのモノプリントジョブの場合にその画像形成済みの記録材が出力された後、あるいはマルチプリントジョブの場合に最後の画像形成済みの記録材が出力された後もメインモータを引き続き所定の時間駆動させる。これにより所要のプロセス機器のプリントジョブ後動作を実行する。
【0027】
7)スタンバイ:所定の後回転動作終了後、メインモータMの駆動が停止し、次のプリントジョブ開始信号が入力されるまで画像形成装置をスタンバイ状態に保持する。
【0028】
上記において、4)のプリントジョブ実行時が画像形成時であり、1)の前多回転動作、3)の前回転動作、6)の後回転動作が、非画像形成時である。また、4)のプリントジョブ実行時においてマルチプリントジョブの場合の紙間も非画像形成時である。
【0029】
(帯電バイアス印加方法)
本実施例の帯電バイアス印加方法について説明する。図3の(b)は帯電ローラ2に対して帯電バイアスを印加する帯電バイアス電源回路(高圧電源回路)Aの概略のブロック回路図である。回路Aは、1つの電圧昇圧手段T1で、n(n≧3)段階の交流ピーク間電圧Vpp−(1)、・・・、Vpp−(n)(但し、Vpp−(1)<・・・<Vpp−(n))の1つと直流電圧Vdcとの重畳バイアス電圧を帯電バイアスとして帯電ローラ2に印加する。より具体的には、本実施例の回路Aは、コントローラ101により制御される交流発振出力部21から4種類の交流ピーク間電圧Vpp(Vpp−(1)<Vpp−(2)<Vpp−(3)<Vpp−(4))を出力できるようにしている。交流発振出力部21から出力された出力電圧は、増幅回路22で増幅される。そして、オペアンプ・抵抗・コンデンサなどからなる正弦電圧変換回路23で正弦変換された後、コンデンサC1を介して直流成分をゼロにカットされ、交流電圧昇圧手段たる昇圧トランスT1に入力される。トランスT1に入力された電圧は、トランスの巻き数に応じた正弦電圧に昇圧される。
【0030】
他方、コンデンサC2には、前記の昇圧された正弦電圧が整流回路D1で整流された後、ピークチャージされる。これによって、ある一定の直流電圧Vdc1が発生する。さらに、コントローラ101により制御される直流発振出力部24からは、印字濃度になどによって決まる出力電圧が出力され、整流回路25で整流された後、一定電圧VaとしてオペアンプIC1のマイナス入力端子に入力される。また、同時にオペアンプIC1のプラス入力端子にはトランスT1の一方の端子電圧を抵抗R1と抵抗R2で分圧された電圧Vbが入力され、両者(VaとVb)の値が等しくなるようにトランジスタQ1を駆動する。これによって、抵抗R1と抵抗R2には電流が流れ電圧降下が生じ、直流電圧Vdc2が発生する。以上に説明した直流電圧Vdc1、Vdc2を足し合わせて所望の直流電圧Vdc(Vdc1+Vdc2)が得られる。この直流電圧Vdcが、トランスT1の2次側で前述した交流電圧(正弦電圧)と重畳された振動電圧が帯電バイアスとして帯電ローラ2に印加される。ここで説明した方式では、電圧昇圧手段であるトランスT1は1つで済むので、帯電バイアス電源回路Aのコストダウンが図れる。
【0031】
ここで、最も大きなピーク間電圧となるVpp−(4)に関しては、あらゆる場合においてドラム1の帯電不良の発生しないピーク間電圧としておく必要がある。一般には、ドラム1の電荷輸送層の膜厚が厚い状態である使用初期、かつ電流が流れにくくなる低温環境において、帯電ローラ2や印加ピーク間電圧のばらつきを考慮しても帯電不良を引き起こさないようなピーク間電圧をVpp−(4)として用いる必要がある。一方、耐久によりドラム1の電荷輸送層の膜厚が減少してくると大きな電流が流れるようになる。そのため、他のVpp−(1)、Vpp−(2)及びVpp−(3)では、Vpp−(4)よりも低いピーク間電圧として、ドラム1に大きな電流が流れつづけることがないようにしている。
【0032】
さらに、本方式では、交流電圧昇圧手段であるトランスT1を用いて直流電圧Vdc1を作製しているので、直流電圧Vdc1は交流ピーク間電圧Vppに対して従属の関係にある。つまり、所望の直流電圧Vdc’を得るためには、トランスT1によってコンデンサC2に一定水準の電荷をチャージさせる必要がある。図3の(b)に示されるように、所望の直流電圧Vdc’を得るためには、交流ピーク間電圧Vppは、2×|Vdc’|以上でなければならない。交流ピーク間電圧Vppが、2×|Vdc’|よりも小さい領域では、コンデンサC2は十分にチャージしきれないため所望の直流電圧Vdc’を得ることができない。そのため、ドラム上電位(ドラム表面電位、暗部電位)Vdを所望の値に帯電させることができなくなり、良好な画像を得ることができない。なお、ここは図3の(b)の説明なので、所望の直流電圧Vdc’と印加可能な直流電圧Vdcを区別する必要があり、Vdcに「’」を追加している。一般的な直流電圧VdcとVppの関係においてはVdc’という記載はしない。
【0033】
他方、コンデンサC2の静電容量を大きくすれば電荷チャージ量を多くして直流電圧Vdcを大きくとれる方向だが、コンデンサC2に電荷がチャージされる時間が長くなり、帯電波形が安定化するのに要する時間が長くなる。そのため、ドラム上電位Vdにムラが生じる場合がある。
【0034】
ゆえに、本例においては、交流ピーク間電圧Vppの出力できる範囲の最小値Vpp−(1)が、所望の直流電圧Vdcに対してVpp−(1)≧2×|Vdc|なる関係が成り立つように設定している。最も交流ピーク間電圧の値が小さいVpp−(1)は、重畳される直流電圧Vdcに対し、Vpp−(1)≧2×|Vdc|なる関係を満たすことで、電源回路の低コスト化を図れる画像形成装置とすることができる。
【0035】
(帯電交流電流値の測定)
続いて、帯電交流電流値の測定方法について図3の(a)を用いて説明する。回路Aは帯電ローラ2に対する帯電バイアス印加時にドラム1に流れる交流電流Iacを検知する交流電流検知回路(帯電交流電流検知手段)26を有する。コントローラ101は、非画像形成時の少なくとも一部で、帯電ローラ2に対して回路Aによりn(n≧3)段階の交流ピーク間電圧を順次に印加する。その時にドラム1に流れる帯電交流電流Iacを回路26で検知する。そして、コントローラ101は、必要最小電流以上であり、なおかつ最も小さな値を検出した交流ピーク間電圧Vppを画像形成時の帯電交流電圧として選択する。また、画像形成前の準備回転動作の少なくとも一部で、前回選択された交流ピーク間電圧よりも一段階低い交流ピーク間電圧を印加し、必要最小交流電流を満たすか否かの判定を行う。
【0036】
上記についてより具体的に説明する。帯電ローラ2に帯電バイアス電圧(振動電圧)が印加されると、交流電流Iacは帯電ローラ2、ドラム1を経て回路AのGNDに流れる。このとき、交流電流検知回路26は、この交流電流Iacを抵抗・コンデンサなどからなる不図示のフィルタ回路で帯電周波数に等しい周波数をもった交流電流のみを抽出し、これを電圧変換して、この電圧値をコントローラ101へ入力する。なお、この交流電流検知回路26は、抵抗、コンデンサ、ダイオードなどから構成することができるので、回路Aのコスト増加、および、スペース拡大の影響は少ない。この変換された電圧と交流電流の関係をあらかじめ調べておけば、測定された電圧を検知することで交流電流値の検知が可能になる。
【0037】
ここで、あらかじめ図4の(a)のような電圧−電流特性を調べておき、さらに帯電不良が消える電流と画像の対応を取っておくことにより、帯電不良が発生しないような基準の電流値(図中でのIac−x)を定めることができる。本実施例では、このようにして定めた基準電流を元に帯電バイアスの制御を行っている。また、電圧−電流特性で線形性から外れる図のΔIcにあたる部分の電流は、放電による電流(以下、放電電流と記す)と考えられ、帯電性と強い相関が見られることが知られている。
【0038】
(帯電バイアス制御方法)
次に、実際の帯電バイアス制御方法を説明する。本実施例の装置100においては、異なるスピードの少なくとも2種類以上のプロセススピードの内の選択されたプロセススピードで画像形成動作が可能である。プロセススピードの選択は、ホスト装置200あるいは操作部102で行うことができ、その選択信号がコントローラ101に入力する。コントローラ101は入力した選択信号に対応したプロセススピードにて画像形成動作を実行する。
【0039】
本実施例においては、動作可能なプロセススピードとしては、標準スピード(遅いスピード)Vx1と、それよりも速いスピードVx2(Vx1<Vx2)の2段階を持つものとする。帯電ムラが画像に現れないようにする必要があることから、それぞれのプロセススピードVx1、Vx2での帯電周波数fはそれぞれ、f1、f2(f1<f2)とする。プロセススピードが遅いときでも速いときの帯電周波数f2を用いることは可能であるが、一般に帯電周波数fを高くするとドラム表面が荒れやすくなるため、ここで示したようにプロセススピードに応じて帯電周波数fを変更する場合が多い。
【0040】
本例の場合は、それぞれのプロセススピードVx1、Vx2毎に、先に説明したように帯電不良が発生しない電流値以上となるような基準の交流電流値Iacを定める。実際、それぞれのプロセススピードVx1、Vx2、帯電周波数f1、f2で電圧−電流特性を取った結果を図5に示す。プロセススピードVx1−帯電周波数f1の時を細線で、プロセススピードVx2−帯電周波数f2の時を太線で示した。図4の(b)からも判るように、プロセススピード、帯電周波数が高い方(Vx2−f2)が、帯電不良が発生しなくなる基準電流値Iac−x2が大きくなることが判る。また、基準電流値における放電電流もプロセススピード、帯電周波数が高いほど大きくなっており、帯電性が厳しくなっていることが判る。それぞれ、プロセススピードVx1の時の基準電流値をIac−x1、プロセススピードVx2のときの基準電流値をIac−x2と定める。
【0041】
まず、電源投入時に行われる準備動作時である前多回転工程(プレ回転)における帯電バイアス制御フローチャートを図5に示した。このときのプロセススピードはVx2で行うものとする(ステップS1)。最も低い電圧であるVpp−(1)から印加していき、その時に流れる交流電流Iac(1)を測定する(ステップS2)。同様に、Vpp−(2)、Vpp−(3)、Vpp−(4)を印加し、それぞれ交流電流Iac(2)、Iac(3)、Iac(4)を得る(ステップS4、S6、S8)。それぞれのIac(1)、Iac(2)、Iac(3)、Iac(4)を、プロセススピードVx2時の基準電流値Iac−x2と比較する(ステップS3、S5、S7)。そして、Iac(n)≧Iac−x2、n=1、2、3、4、を満たす最小のVpp−(n)を交流電圧に決定する(ステップS11、S12、S13、S9)。図6の(a)に交流電圧選択の一例を示したが、この場合はVpp−(3)印加時のIac(3)が基準電流値Iac−x2を上回りかつ最小となるため、Vpp−(3)を画像形成動作時の交流電圧として選択することになる。
【0042】
次に、その直後に画像形成動作を行う際のシーケンスについて図6の(b)に示す。前回の画像形成動作で選択された交流電圧をVpp−(n)とする。このシーケンスの特徴としては、画像形成動作前の少なくとも一部において(以下、「画像形成前の準備回転」と記す)、前回選択された交流電圧Vpp−(n)よりも一段階低いVpp−(n−1)を印加する。そして、Vpp−(n−1)印加時に流れるIac(n−1)が基準電流値Iac−x以上であれば、画像形成時の交流電圧をVpp−(n−1)とし、Iac(n−1)が基準電流値Iax−xに満たなければ画像形成時の交流電圧をVpp−(n)とする。こうすることにより、画像形成動作時の交流電圧を徐々に下げていくことが可能になる。
【0043】
ここで、直前に図5のシーケンスが行われている場合は、前回のプロセススピードがVx2であり、その時選択された交流電圧が前回の交流電圧になる。一方、直前に前回の画像形成動作が行われている場合はその時のプロセススピード、交流電圧が、それぞれ前回のプロセススピード、交流電圧となる。
【0044】
前回の画像形成動作時のプロセススピードがVx2であったときの、今回の画像形成動作時のフローチャートを図7に示す。今回のプロセススピードもVx2のとき(ステップS3のYes、ステップS18)、選択電圧がVpp−(1)であれば(ステップS19のYes)、画像形成前の準備回転時も画像形成時もVpp−(1)を交流電圧として用いる(ステップS28〜31)。Vpp−(1)以外であれば(ステップS19のNo)、先にも説明したように画像形成前の準備回転時に前回選択された電圧Vpp−(n)よりも一段低いVpp−(n−1)を印加し、流れる交流電流Iac(n−1)を検知する(ステップS20)。Iac(n−1)が、基準電流値Iac−x1よりも大きければ(ステップS21のYes)、画像形成時の交流電圧をVpp−(n−1)に下げることが可能になる(ステップS25〜27)。一方、基準電流値を下回れば(ステップS21のNo)、Vpp−(n)のままとすればよい(ステップS22〜24)。今回のプロセススピードがVx1の場合も(ステップS3のNo、S4)、基準電流値がIac−x2(ステップS7)になるだけで動作はほぼ同じである(ステップS4〜S17)。
【0045】
次に前回のプロセススピードがVx1であったときの画像形成動作時のフローチャートを図1に示す。今回(次)のプロセススピードがVx1のままであるならば(ステップS3のNo)、動作(ステップS4〜S17)は図7の場合(ステップS4〜S17)とほぼ変わらない。一方、プロセススピードが遅いスピードVx1から速いスピードVx2に変わったときは(ステップS3のYes、S18)、画像形成前の準備回転時に印加する交流電圧をVpp−(n−1)ではなく、Vpp−(n)としている(ステップS19)。これにより、画像形成時に印加する可能性がある交流電圧は、Vpp−(n)(ステップS24)およびVpp−(n+1)(ステップS21)としている。
【0046】
この理由について説明する。一般に、プロセススピードが高くなると、帯電ムラが画像上に現れないようにするために周波数も高くしており、その分だけでも同じ交流電圧を印加した際に流れる交流電流値は大きくなる。一方では、図4の(b)でも説明したように微小な帯電不良が起こりやすくなると考えられる。そのため、必要な放電電流値は大きくなることを考えると、プロセススピードVx1時に、プロセススピードVx2時で選択された交流電圧Vpp−(n)をそのまま印加したときに流れる電流Iac(n)が、基準電流値Iac−x1を上回らない可能性もある。これを解決するために、本実施例では画像形成前の準備回転時に通常のVpp−(n−1)よりも大きな交流電圧Vpp−(n)を印加する(ステップS19)。これにより、Vpp−(n)印加でIac(n)<Iac−x1となる場合(ステップS20のNo)に、画像形成時にVpp−(n+1)を印加出来るようにしている(ステップS21)。
【0047】
逆に、プロセススピードVx1時に、プロセススピードVx2時に選択された交流電圧Vpp−(m)を印加したときに流れる電流Iac(m)については、プロセススピードが低下することで少なくとも必要な放電電流値が大きくはならないと考えられる。そのため、同じVpp−(m)のままでも基準電流Iac−x2を下回る可能性は非常に小さく、Vpp−(m)のままで問題無いと考えられる。
【0048】
以上から、プロセススピードが上がった場合についてのみ画像形成前の準備回転時に印加する交流電圧を高い電圧にするような制御を行うことで、より帯電不良が発生しにくい構成とすることができる。なお、高い電圧を印加する必要がない場合も考えられるが、次の画像形成動作の際に、図1ないしは図7のシーケンスを行うことで、電圧を一段階下げることができるので、高い交流電圧を印加し続ける可能性は小さく、とくに問題はない。
【0049】
一方、プロセススピードが切り替わった際に、図5で示したような印加シーケンスを改めてそのプロセススピードで行うことも考えられる。しかし、本実施例は画像形成動作中に補正が可能であるのに対し、画像形成動作とは別に上記シーケンスが入ることで、画像形成動作完了まで余分に時間がかかってしまうことから、本実施例の方が優れているといえる。
【0050】
なお、本実施例では、電源投入時のシーケンス(図5)をプロセススピードVx2で行った場合について示したが、Vx1で行った場合についても今まで述べてきた構成で適用可能である。また、本実施例ではプロセススピードが高くなったとき、選択された交流電圧に対し、一段階高い値を選択したが、印加可能な交流ピーク間電圧同士の差分が小さい場合は、必要な放電電流値上昇に見合う電流値増加にならないことも考えられる。そこで、二段階以上上げることも可能であり、この場合はむしろ好適である。
【0051】
[実施例2]
今までは、動作可能なプロセススピードが2種類での場合であったが、動作可能なプロセススピードが3種類以上であっても、同様に実施することが可能である。
【0052】
ここでは、プロセススピードがVx1<Vx2<Vx3の3段階とした場合について説明する。電源投入時のシーケンスについては、図5と同様に、あるプロセススピードで印加可能な交流電圧を印加し、その時に流れる交流電流を検知しながら画像形成時に用いる交流電圧を選択すればよいので、ここでは説明を省略する。
【0053】
よって、帯電交流電圧の選択結果が既にある場合について図8を用いて説明を行う。ここでは前回のプロセススピードがVx1であった場合(ステップS2)の電圧選択フローチャートを示した。本実施例では、プロセススピードがVx1からVx2になった場合は(ステップS19)は、画像形成前の準備回転時の交流電圧を一段階(ステップS20)大きくしている。また、Vx1からVx3になった場合は(ステップS28)、画像形成前の準備回転時の交流電圧を二段階(ステップS29)大きくしているのが特徴である。
【0054】
すなわち、プロセススピードの変化具合に応じて、画像形成前の準備回転時に印加する定電圧値の変化幅を変えることで、実施例1と同様の効果を動作可能なプロセススピードが3段階あっても発揮することが可能になる。つまり、プロセススピードがそれまでのスピードよりも速いスピードに切り替わったとき、その変化幅によって、準備回転動作の少なくとも一部で印加する交流ピーク間電圧の上げ幅を変える。これにより、プロセススピードの変化に応じて、より適切な帯電バイアスを印加出来る画像形成装置とすることができる。
【0055】
また、ここには特に図示しなかったが、プロセススピードがVx2からVx3になった場合は例えば一段階大きくすればよい。ここでも同様に、プロセススピードが上がったときに、画像形成前の準備回転時の交流電圧を何段階上げるかは印加可能な交流ピーク間電圧の差分や、プロセススピードの値などを考慮して決めれば良く、本例で示した様態に限られるものではない。
【符号の説明】
【0056】
100・・画像形成装置、1・・潜像担持体、2・・接触帯電手段、T1・・電圧昇圧手段、A・・帯電バイアス電源回路、26・・帯電交流電流検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるスピードの少なくとも2種類以上のプロセススピードの内の選択されたプロセススピードで画像形成動作が可能な画像形成装置であって、
潜像担持体と、
前記潜像担持体に接触する接触帯電手段と、
1つの電圧昇圧手段で、
n(n≧3)段階の交流ピーク間電圧Vpp−(1)、・・・、Vpp−(n)
(但し、Vpp−(1)<・・・<Vpp−(n))
の1つと直流電圧との重畳バイアス電圧を帯電バイアスとして前記接触帯電手段に印加する帯電バイアス電源回路と、
前記接触帯電手段に対する帯電バイアス印加時に前記潜像担持体に流れる交流電流を検知する帯電交流電流検知手段と、
を有し、非画像形成時の少なくとも一部で、前記接触帯電手段に対して前記帯電バイアス電源回路により前記n(n≧3)段階の交流ピーク間電圧を順次に印加した時に前記潜像担持体に流れる帯電交流電流を検知し、必要最小電流以上であり、なおかつ最も小さな値を検出した交流ピーク間電圧を画像形成時の帯電交流電圧として選択し、画像形成前の準備回転動作の少なくとも一部で、前回選択された交流ピーク間電圧よりも一段階低い交流ピーク間電圧を印加し、必要最小交流電流を満たすか否かの判定を行う画像形成装置において、
プロセススピードがそれまでのスピードよりも速いスピードに切り替わった際には、準備回転動作の少なくとも一部で印加する交流ピーク間電圧を前回選択された交流ピーク間電圧かそれよりも大きくすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
プロセススピードがそれまでのスピードよりも速いスピードに切り替わったとき、その変化幅によって、準備回転動作の少なくとも一部で印加する交流ピーク間電圧の上げ幅を変えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
最も交流ピーク間電圧の値が小さいVpp−(1)は、重畳される直流電圧Vdcに対し、Vpp−(1)≧2×|Vdc|なる関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−8448(P2012−8448A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146108(P2010−146108)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】