説明

画像形成装置

【課題】目標トナー濃度を得る現像バイアス値を精度よく決める。
【解決手段】所定の作像条件にて感光体11上又は転写材21上に所定の画像パターンを形成する画像パターン形成手段と、感光体11上又は転写材21上の画像パターン濃度を光学的に検出する濃度検出手段SE1と、環境条件を検出の環境条件検出手段SE2と、感光体11の累積駆動時間を検出の累積駆動時間検出手段と、濃度検出手段SE1で検出の画像パターン濃度に基き、目標トナー濃度を得る現像バイアス値を決める制御手段50と、を備えた画像形成装置。制御手段50は、環境条件検出手段SE1で検出の環境条件と、累積駆動時間検出手段で検出の累積駆動時間とに基き、トナーが感光体11上に付着し始める現像バイアス値の現像立上がりポイントを算出し、現像立上がりポイントを基準として濃度検出手段SE1で検出の画像パターン濃度から目標トナー濃度を得る現像バイアス値を決める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、特に、画像データに基づいて感光体上に静電潜像を形成し、該静電潜像をトナーによってトナー像化し、該トナー像を転写材上に転写する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プロセスによる画像形成装置にあっては、所定の作像条件にて感光体上又は前記転写材上に所定の画像パターンを形成し、該画像パターンの濃度を光学的に検出し、その検出値に基づいて目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス値を決定するようにしていた。
【0003】
画像パターンの濃度を光学的に検出するセンサは一般に高濃度の検出にばらつきを生じる。特許文献1では、高濃度側の濃度を精度よく検出するために、濃度検出結果を255階調のテーブルに割り付け、144〜255階調の高濃度側の検出値を用いて現像バイアス値を決定するようにした制御方法が提案されている。通常、感光体上での画像濃度は現像剤自体のトナー濃度むらや感光体の帯電むらなどの影響を受けやすく、また、装置の環境条件(温度、湿度)や感光体の経時変化の影響もあり、目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス値を精度よく決定することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−139588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス値を精度よく決定することのできる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明の一形態である画像形成装置は、
画像データに基づいて感光体上に静電潜像を形成し、該静電潜像をトナーによってトナー像化し、該トナー像を転写材上に転写する画像形成装置において、
所定の作像条件にて前記感光体上又は前記転写材上に所定の画像パターンを形成する画像パターン形成手段と、
前記画像パターン形成手段によって前記感光体上又は前記転写材上に形成された画像パターンの濃度を光学的に検出する濃度検出手段と、
環境条件を検出する環境条件検出手段と、
感光体の累積駆動時間を検出する累積駆動時間検出手段と、
前記濃度検出手段によって検出された画像パターンの濃度に基づいて、目標とするトナー濃度を得るための現像バイアス値を決定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記環境条件検出手段によって検出された環境条件と、前記累積駆動時間検出手段によって検出された累積駆動時間とに基づいて、トナーが前記感光体上に付着し始める現像バイアス値である現像立ち上がりポイントを算出し、該現像立ち上がりポイントを基準として前記濃度検出手段によって検出された画像パターンの濃度から目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス値を決定すること、
を特徴とする。
【0007】
前記画像形成装置においては、環境条件と感光体の累積駆動時間とに基づいて現像立ち上がりポイントを算出し、該現像立ち上がりポイントを基準として濃度検出手段によって検出された画像パターンの濃度から目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス値を決定するため、現像剤自体のトナー濃度むらや感光体の帯電むらなどの影響、環境条件や感光体の経時変化の影響などにも拘わらず、目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス値を精度よく決定することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス値を精度よく決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施例である画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】前記画像形成装置の制御部の要部を示すブロック図である。
【図3】現像バイアス電圧と感光体へのトナー付着量との関係(比較例での制御方法)を示すグラフである。
【図4】光学センサによるトナー濃度の検出形態を示す説明図である。
【図5】現像バイアス電圧と感光体へのトナー付着量との関係(本発明例での制御方法)を示すグラフである。
【図6】現像立ち上がりポイントを説明するためのグラフである。
【図7】環境条件による現像バイアス電圧と感光体へのトナー付着量との関係を示すグラフである。
【図8】トナー濃度の制御手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0011】
(画像形成装置の概略構成、図1参照)
一実施例である画像形成装置は、図1に示すように、タンデム方式の電子写真プリンタであり、概略、Y,M,C,Kの各色のトナー画像を形成するための作像ユニット10(10Y,10M,10C,10K)と、中間転写ユニット20と、記録シートを収容した給紙ユニット30と、定着ユニット35と、画像読取りユニット40と、で構成されている。
【0012】
作像ユニット10は、それぞれ、感光体ドラム11、帯電チャージャ12、現像器13、露光装置14などを配置したもので、露光装置14から照射される光によってそれぞれの感光体ドラム11上に描画される静電潜像を現像器13で現像して各色のトナー画像を形成する。画像データは、画像読取りユニット40からあるいはコンピュータから制御部50に転送されてくる。
【0013】
中間転写ユニット20は、矢印Z方向に無端状に回転駆動される中間転写ベルト21を備え、各感光体ドラム11と対向する転写チャージャ22から付与される電界にて、各感光体ドラム11上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト21上に1次転写して合成する。なお、このような電子写真法による画像形成プロセスは周知であり、詳細な説明は省略する。
【0014】
装置本体の下部には、記録シートを1枚ずつ給紙する給紙ユニット30が配置され、記録シートは給紙ローラ31から前記中間転写ベルト21と2次転写ローラ25とのニップ部に搬送され、ここでトナー画像(合成カラー画像)が記録シート上に2次転写される。その後、記録シートは定着ユニット35に搬送されてトナーの加熱定着を施され、装置本体の上面に配置されたトレイ部36に排出される。
【0015】
画像安定化制御(トナー付着量を調整するための現像バイアス電圧の制御や各色の形成位置を調整するためのレジスト制御)を行うための各色での画像パターンを検出するセンサSE1は、中間転写ベルト21の表面に、2次転写部の下流側で、対向して配置されている。このセンサSE1は光学式の反射型センサである(詳しくは図4を参照して以下に説明する)。なお、この種の光学センサSE1は、各感光体ドラム11上で画像パターンを検出するように配置されていてもよく、あるいは、2次転写後に記録シート上で画像パターンを検出するように配置されていてもよい。
【0016】
さらに、装置本体内には、環境条件(温度、湿度)を検出するためのセンサSE2が配置されている。
【0017】
(制御部、図2参照)
制御部50は、図2に示すように、CPU51を中心として構成され、CPU51は制御プログラムを格納したROM、ワークメモリなどを備え、センサSE1,SE2からの検出信号が入力される。また、感光体ドラム11の累積駆動時間を検出するカウンタC1からの検出信号が入力される。前記現像器13の現像ローラ13aには現像バイアスが電源回路E1から印加され、電源回路E1はCPU51によって印加電圧値を制御される。さらに、CPU51は、画像形成装置の動作を全体的に制御し、特に、以下に説明するように、感光体ドラム11へのトナー付着量を調整するための現像バイアス電圧の制御を行う。
【0018】
(トナー付着量調整制御、図3参照)
ここで、トナー付着量調整制御について説明する。この制御は、前記作像ユニット10、中間転写ユニット20を駆動しつつ、感光体帯電電圧、画像露光量、現像バイアス、1次転写電流などを所定の条件として、感光体ドラム11上に形成した画像パターンを中間転写ベルト21上に転写し、転写された画像パターンの濃度をセンサSE1で検出し、その検出結果に基づいて、目標とするトナー濃度を得るための現像バイアス電圧値を決定するものである。
【0019】
現像バイアス電圧値に対する感光体ドラム11へのトナー付着量は、予め設計値として直線Aとして設定されている。一方、実際の制御では、センサSE1によって星印で示す複数の位置で画像パターンの濃度を検出し、結果として直線A’に示す検出結果を得ることになる。センサSE1は高濃度領域では感度が悪く、また、低濃度領域では現像ばらつきが大きい。センサSE1で精度よく検出できるのは中間調領域(シート上への2次転写後の付着量とし1.0〜3.5g/m2)のみである。それゆえ、センサSE1による検出結果(直線A’)は、正規の直線Aに対して誤差を持つことになり、そのままでは目標とするトナー濃度aを得るための現像バイアス電圧値がV1であるのに対して高い目のV1’に設定されてしまう。
【0020】
(光学センサ、図4参照)
光学センサSE1は、図4に示すように、発光素子からの発光B1の中間転写ベルト21上での反射光B2が受光素子に入力した値を検出値としている。ベルト21上には画像パターン(トナー)Tが形成されている。反射光B2は正反射波であり、ベルト21と画像パターンTとの面積比率を測定していることになり、画像パターンTの高さ方向の感度がなく、高濃度側での付着量の検出精度が低い。
【0021】
(トナー付着量の制御、図5〜図8参照)
図5に示す直線Aは、図3に示した直線Aと同じく、本来的に設定された、現像バイアス電圧値と感光体ドラム11へのトナー付着量との関係を示している。本実施例では、センサSE1の検出感度が高い中間調(シート上への2次転写後の付着量とし1.0〜3.5g/m2)での複数の画像パターンの濃度を検出し(☆印参照)、それらの検出値に基づいて目標とするトナー濃度を得るための現像バイアス電圧値を決定する際、現像立ち上がりポイントPを考慮することとしている。現像立ち上がりポイントPとは、トナーが感光体ドラム11上に付着し始める現像バイアス電圧値(□印参照)である。つまり、図5に示すように、☆印で示す複数の検出値と□印で示す現像立ち上がりポイントPを結ぶと直線Aが算出される。従って、中間調での検出値が若干ばらついたとしても、目標とするトナー濃度aを得るための現像バイアス電圧値V1を精度よく決定することができる。なお、現像立ち上がりポイントPは感光体の特性によっても異なるが、この特性は所与の条件として予め図5の特性に含まれている。
【0022】
さらに、本実施例では、前記センサSE2によって検出された環境条件(温度、湿度)、及び、前記カウンタC1によって検出された感光体ドラム11の累積駆動時間に基づいて、現像立ち上がりポイントPを算出する。現像立ち上がりポイントPは図6に示す特性に基づいて算出する。つまり、感光体ドラム11の累積駆動時間に比例して高くなり、かつ、絶対湿度に比例して高くなる。ここで、LL環境とは温度が10℃で湿度が15%程度を意味し、NN環境とは温度が23℃で湿度が65%程度を意味し、HH環境とは温度が30℃で湿度が85%程度を意味する。現像立ち上がりポイントPに関しては、以下の表1に示すテーブルが予めCPU51のメモリに格納されている。表1は、環境(絶対湿度)を5ステップ、駆動時間を12ステップに割り付けたテーブルを一例として示している。
【0023】
【表1】

【0024】
そして、算出された現像立ち上がりポイントPを基準として、前記センサSE1によって検出された画像パターンの濃度から目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス電圧値を決定する。現像バイアス電圧値に対する感光体ドラム11へのトナー付着量は、図7のグラフに示すように、環境条件に応じて変化するが、複数の中間調での画像パターンの濃度をセンサSE1で検出することで現像バイアス電圧値に対するトナー付着量の特性を正確に認識することができる。また、現像バイアス電圧値に対するトナー付着量は、トナーの帯電量や現像剤中のトナー濃度(キャリアとトナーの混合物に対するトナー比率)によって変化するが、これらは所与の条件として予め図7の特性に含まれている。
【0025】
ここで、トナー濃度を制御する手順について図8のフローチャートを参照して説明する。CPU51は、まず、センサSE1による温度・湿度情報から絶対湿度を検出し(ステップS1)、カウンタからの情報にて感光体ドラム11の累積駆動時間を検出する(ステップS2)。次に、これらの検出結果に基づいて、前記表1のテーブルを参照して現像立ち上がりポイントPを算出する(ステップS3)。
【0026】
次に、所定の作像条件(特に、現像バイアス電圧値に関しては複数に設定される)で複数の中間調の画像パターンを感光体ドラム11上に形成し、中間転写ベルト21上に転写し(ステップS4)、その濃度をセンサSE1によって検出する(ステップS5)。次に、現像立ち上がりポイントPと濃度検出結果に基づいて、目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス電圧値を決定する(ステップS6)。
【0027】
以上のごとく、本実施例においては、環境条件(絶対湿度)と感光体ドラム11の累積駆動時間とに基づいて現像立ち上がりポイントPを算出し、該現像立ち上がりポイントPを基準としてセンサSE1によって検出された画像パターンの濃度から目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス値を決定するため、現像剤自体のトナー濃度むらや感光体の帯電むらなどの影響、環境条件や感光体ドラム11の経時変化の影響などにも拘わらず、目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス値を精度よく決定することができる。
【0028】
現像バイアス電圧値の制御において中間調での画像パターンの濃度を検出することが好ましい。光学方式のセンサSE1は中間調の濃度を精度よく検出できるからである。センサSE1の感度が最も高い中間調は、用紙上でのトナー付着量で2.5〜3.0g/m2であり、1.0〜3.5g/m2程度の画像パターンであることが好ましい。
【0029】
また、複数の画像パターンの濃度を検出することにより、より正確な濃度を検出することができる。但し、制御に要する時間を短縮するために1種類の画像パターンでの検出結果に基づいてもよい。
【0030】
(他の実施例)
なお、本発明に係る画像形成装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0031】
特に、画像形成装置の基本的な態様(モノクロ機、カラー機、複写機、プリンタ、複合機)は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明は、画像形成装置に有用であり、特に、目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス電圧値を精度よく決定できる点で優れている。
【符号の説明】
【0033】
10…作像ユニット
11…感光体ドラム
13…現像器
14…露光装置
21…中間転写ベルト
51…CPU
SE1…画像パターン濃度検出用センサ
SE2…環境条件検出用センサ
C1…感光体累積駆動検出用カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて感光体上に静電潜像を形成し、該静電潜像をトナーによってトナー像化し、該トナー像を転写材上に転写する画像形成装置において、
所定の作像条件にて前記感光体上又は前記転写材上に所定の画像パターンを形成する画像パターン形成手段と、
前記画像パターン形成手段によって前記感光体上又は前記転写材上に形成された画像パターンの濃度を光学的に検出する濃度検出手段と、
環境条件を検出する環境条件検出手段と、
感光体の累積駆動時間を検出する累積駆動時間検出手段と、
前記濃度検出手段によって検出された画像パターンの濃度に基づいて、目標とするトナー濃度を得るための現像バイアス値を決定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記環境条件検出手段によって検出された環境条件と、前記累積駆動時間検出手段によって検出された累積駆動時間とに基づいて、トナーが前記感光体上に付着し始める現像バイアス値である現像立ち上がりポイントを算出し、該現像立ち上がりポイントを基準として前記濃度検出手段によって検出された画像パターンの濃度から目標とするトナー濃度が得られる現像バイアス値を決定すること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記濃度検出手段が検出する画像パターンは中間転写体上に形成されたものであること、を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記濃度検出手段は、中間調での画像パターンの濃度を検出すること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記中間調での画像パターンの濃度は、用紙上でのトナー付着量で1.0〜3.5g/m2であること、を特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記濃度検出手段は複数の画像パターンの濃度を検出すること、を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−101167(P2013−101167A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243435(P2011−243435)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】