画像形成装置
【課題】画像形成装置に使用される定着加熱装置のヒータへの電力供給時の制御において、フリッカ、高調波電流歪及び、画像の光沢ムラを充分に低減できる技術を提供する。
【解決手段】交流電源から定着加熱装置のヒータへの電流の通電及び遮断を切替えることで、ヒータへの通電量を制御ための方式として、位相制御方式と、波数制御方式と、位相制御と波数制御を組合せた組合せ制御方式とを選択可能とする。記録媒体の特定の領域である特定画像領域におけるトナー濃度の程度を示す画像印字率を導出し、定着加熱装置が定着しようとする特定画像領域における画像印字率に応じて、ヒータへの通電量を制御する方式を選択する。
【解決手段】交流電源から定着加熱装置のヒータへの電流の通電及び遮断を切替えることで、ヒータへの通電量を制御ための方式として、位相制御方式と、波数制御方式と、位相制御と波数制御を組合せた組合せ制御方式とを選択可能とする。記録媒体の特定の領域である特定画像領域におけるトナー濃度の程度を示す画像印字率を導出し、定着加熱装置が定着しようとする特定画像領域における画像印字率に応じて、ヒータへの通電量を制御する方式を選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ装置、ファクシミリ装置、または、これらの複数の機能を備えた複合機などの画像形成装置に関し、特に、トナー像を記録媒体上に熱によって定着させる定着加熱装置を有し、そのヒータの電力制御を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真、静電記録、磁気記録等の作像プロセスを用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の様々な画像形成装置が存在する。これらの画像形成装置においては、記録用紙あるいはOHPシートなどの記録媒体に形成した未定着トナー像を永久像とするために、熱によりトナーを溶融して記録媒体に定着させる定着加熱装置が設けられている。この定着加熱装置として、例えばハロゲンヒータを熱源とする熱ローラ式の熱定着装置やセラミックヒータを熱源とするフィルム定着式の熱定着装置が用いられている。また、定着加熱装置としてはその他に、IH定着方式、フラッシュ加熱方式、オーブン加熱方式等の多様な方式および構成を有するものが実用化されている。
【0003】
中でも、熱容量の極めて小さな円筒状のフィルムを円筒の内側から加熱するフィルム定着方式の定着加熱装置は、エネルギー効率が高く昇温速度が速いため、電源オンから印字可能状態になるまでの時間が短く、プリント待機時の消費電力も大幅に抑えられる。
【0004】
ここで、一般に定着加熱装置のヒータはトライアック等のスイッチング素子を介して交流電源に接続されており、この交流電源により電力が供給される。例えば、セラミックヒータのオン/オフ制御は、交流電源の位相制御(例えば、特許文献1を参照)、波数制御(例えば、特許文献2を参照)、または位相制御と波数制御を組み合わせた制御(例えば、特許文献3を参照)により行われる。
【0005】
また、一般に、定着加熱装置には、サーミスタ感温素子などの温度検出素子が設けられている。この温度検出素子により定着加熱装置の温度が検出され、検出された温度情報をもとに、エンジンコントローラによってスイッチング素子のオン/オフが制御される。これにより、ヒータへの電力供給がオン/オフされ、定着加熱装置の温度が目標の温度に調整される。
【0006】
ここで、上記した位相制御は、交流電源からの入力電圧における各々の半波内の任意の位相角でヒータをオンすることでヒータに電力を供給する制御である。また、波数制御は、複数の半波からなる期間を一回の制御周期とし、ヒータのオン/オフを交流電源の半波単位で行う制御である。また、位相制御と波数制御とを組み合わせた制御は、複数の半波からなる期間を一回の制御周期とし、そのうちの一部の半波を波数制御し、残りを位相制御するものである。
【0007】
上記において、位相制御を選択する目的としては、照明機器のちらつき、所謂フリッカや、定着加熱装置の温度リップルを抑制することが挙げられる。ここでフリッカとは、交流電源の電圧の急激な変動により、同一の交流電源に接続されている周囲機器、例えば照明機器がちらついてしまう現象である。それに対し、位相制御においては半波ごとに電流が流れるため、電流の変化量および変化周期が小さく、フリッカの発生を抑制することができる。また、位相制御においては半波ごとに電力を制御できるため、定着加熱装置の温度制御の応答性が高く、定着加熱装置の温度リップルを低減することができる。
【0008】
一方、位相制御においては、交流電源を各々の半波内の任意の位相角でヒータをオンす
るため、ヒータをオンする際に急激な電流変動が生じるおそれがある。急激な電流変動が生じると、交流電源の基本周波数(例えば50Hzや60Hz)の逓倍周波数成分による高調波電流歪を多く含む電流波形となる。そして、この高調波電流歪により電子機器間の誤動作が発生し、または交流電源の電圧波形に歪が発生する虞がある。
【0009】
また、上記の波数制御を選択する目的としては、高調波電流歪の抑制が挙げられる。これは、波数制御においてはヒータのオン/オフ制御を必ず電源電圧が0V近傍(ゼロクロスポイント)で行うため急激な電流変動が少なく、電圧波形の半波の途中でヒータがオンする位相制御と比較し高調波電流歪が発生しづらいことによる。しかし、波数制御は、高調波電流歪の抑制には効果があるものの、半波毎の負荷電流の変動が大きいため、交流電源の電圧変動が大きくなり、フリッカが発生し易いという不都合がある。
【0010】
また、位相制御と波数制御を組み合わせた制御を選択する理由としては、位相制御のみを選択した場合と比較して高調波電流歪の抑制に有利であり、且つ、波数制御のみを選択した場合と比較してフリッカ抑制に有利であることが挙げられる。
【0011】
ここで、高調波電流歪の大きさは、使用するAC交流電源の電圧が高い方が、より大きくなる傾向がある。このことから、従来は、画像形成装置が使用される地域のAC交流電源の電圧に応じて、ヒータの制御を、位相制御または波数制御の何れかに固定することが一般的であった。例えば、100〜127VのAC交流電源電圧の地域向けにはフリッカに有利な位相制御を、220V〜240VのAC交流電源電圧の地域向けには高調波電流歪に有利な波数制御を採用することが考えられる。しかし、近年の画像形成装置の高速化による定着加熱装置のヒータ電力の増大に伴い、位相制御のみでは高調波電流歪を充分に抑制することが困難となり、また、波数制御のみではフリッカを充分に抑制することが困難となる場合があった。これに対し、位相制御と波数制御を組み合わせた制御は、高調波電流歪の抑制とフリッカの抑制の両方の効果を有する制御として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平09−106215号公報
【特許文献2】特開2000−268939号公報
【特許文献3】特開2003−123941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年の画像形成装置においては、フルカラー画像が形成されるようになり、また、プリント速度の高速化及び高画質化、ファーストプリントアウトタイム(プリント待機状態から最初の被記録媒体が排出されるまでの時間(FPOT))の短縮が要求されている。そのため、定着加熱装置のヒータ電力は増大する傾向にある。このヒータ電力の増大傾向は、換言すると、ヒータの抵抗値が減少する傾向にあることを意味するが、このヒータの抵抗値の減少により、ヒータに電力を供給する際の交流電源の電流が増大し、結果として高調波電流歪とフリッカが増大する傾向が顕著になっている。
【0014】
また、記録媒体が定着加熱装置を通過する間は、定着加熱装置は記録媒体に対してトナー画像を定着できる温度に制御されているところ、プリント速度の高速化に伴って、定着加熱装置の温度リップルが画像の光沢ムラとして現れ易くなってきている。このため、温度リップルをこれまで以上に抑制することが要求されている。
【0015】
上記のような状況においては、位相制御と波数制御を組み合わせたヒータ制御を用いただけでは、高調波電流歪、フリッカ、光沢ムラ(温度リップル)の全てを充分に抑制する
ことが困難になっている。本発明の目的は、上記の事情に鑑みなされたものであって、例えば画像形成装置に使用される定着加熱装置のヒータへの電力供給時の制御において、フリッカ、高調波電流歪及び、画像の光沢ムラの全てを充分に低減できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、
記録媒体上にトナー像を形成する画像形成手段と、
前記トナー像を加熱して前記記録媒体に定着させる定着加熱手段と、
交流電源からの電流の前記定着加熱手段の加熱源への通電及び遮断を切替えるスイッチ手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検知するゼロクロス検知手段と、
前記交流電源からの電流の通電及び遮断の切替えタイミングを格納した供給電力制御テーブルを複数種類記憶する記憶部と、
前記ゼロクロス検知手段によるゼロクロスのタイミング及び、前記記憶部が記憶する前記供給電力制御テーブルを用いて参照した前記切替えタイミングに基づいて、前記スイッチ手段に前記交流電源から前記定着加熱手段の加熱源への電流の通電及び遮断を切替えさせることで、前記加熱源への通電量を制御する制御手段と、
前記記録媒体の特定の領域である特定画像領域におけるトナー像のトナー濃度の程度を示す画像印字率を導出する画像印字率導出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記画像印字率導出手段によって導出された、前記定着加熱手段が定着する前記特定画像領域における前記画像印字率に応じて、前記切替えタイミングを参照する前記供給電力制御テーブルを選択することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、定着加熱装置のヒータ電力の制御において、電力の制御テーブルを複数記憶し、定着すべき画像に応じて最適なテーブルを選択して使用するので、フリッカ、高調波電流歪及び画像の光沢ムラを充分に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例における定着加熱装置の概略図である。
【図2】本発明の実施例における画像形成装置のヒータ駆動回路の概略図である。
【図3】本発明の実施例における位相制御によるヒータ電力制御の説明図である。
【図4】本発明の実施例における波数制御によるヒータ電力制御の説明図である。
【図5】位相制御と波数制御の組合せ制御によるヒータ電力制御の説明図である。
【図6】本発明の実施例における最小画像構成単位の説明図である。
【図7】本発明の実施例における定着画像の例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例1におけるヒータ電力制御テーブル切替えフローである。
【図9】実施例1のヒータ電力制御テーブル切替え制御の時系列説明図である。
【図10】実施例2における供給電力と高調波電流歪相対値の関係を示す図である。
【図11】実施例2における電力制御テーブル切替え制御のフローチャートである。
【図12】実施例2におけるテーブル3設定処理のフローチャートである。
【図13】実施例2における速度変更判定処理のフローチャートである。
【図14】実施例2におけるテーブル1選択処理のフローチャートである。
【図15】実施例2における速度ダウン処理のフローチャートである。
【図16】実施例2における速度復帰処理のフローチャートである。
【図17】実施例2におけるテーブル2設定処理のフローチャートである。
【図18】本発明の実施例における画像形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。
【0020】
<実施例1>
図18には、セラミックヒータを用いた定着加熱装置を有する画像形成装置の例を示す。但し、本発明は定着加熱装置を使用した装置全般に適用が可能であり、特に図18に示す画像形成装置に限定して適用されるものではない。
【0021】
まず、図18に示す画像形成装置において、装置の全体の動作について説明する。図18の画像形成装置100において、画像処理コントローラ120は、パーソナルコンピュータ等の外部装置から送信される画像情報及びプリント指示を受信して処理を行なう。制御手段である制御部113は画像処理コントローラ120に電気的に接続されており、画像処理コントローラ120からの指示に応じて画像形成装置100を構成する各部を制御する。画像処理コントローラ120が外部装置からプリント指示をうけると、以下の動作で画像形成処理が実行される。
【0022】
記録媒体101は、給送ローラ102で給送されて、中間転写体103に向けて搬送される。感光ドラム104は、図示しない駆動モータによって所定の速度で反時計回りに回転駆動され、その回転過程で一次帯電器105によって一様に帯電処理される。また、画像信号に対応して変調されたレーザ光がレーザビームスキャナ106から出力され、感光ドラム104上を選択的に走査露光することにより、感光ドラム104上に静電潜像が形成される。この静電潜像に対し、現像器107において現像体である粉体トナーが付着することで、静電潜像がトナー像(現像体像)として可視像化する。
【0023】
感光ドラム104上に形成されたトナー像は、感光ドラム104と接触して回転する中間転写体103上に一次転写される。その後、中間転写体103の回転と同期をとった適切なタイミングで搬送された記録媒体101が転写バイアスを印加された転写ローラ108によって中間転写体103に圧接されることで、中間転写体103上のトナー像が記録媒体101上に二次転写される。上記の感光ドラム104、一次帯電器105、レーザビームスキャナ106、現像器107はブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色に対してそれぞれ配置されており、4色分のトナー像が記録媒体101上に二次転写される。上記のように記録媒体101にトナー像を形成する構成は、本実施例において画像形成手段に相当する。
【0024】
定着加熱手段である定着加熱装置109は、加熱源であるセラミックヒータ110を内蔵したフィルムユニット111と、これに圧接される加圧ローラ112を備えている。このフィルムユニット111と加圧ローラ112とによって記録媒体101を加熱及び加圧することによりトナー像が記録媒体101に定着される。そして、トナー像が定着された記録媒体101は画像形成物として機外へ排出される。ここで制御部113は、記録媒体101の搬送路上の搬送センサ114、レジストセンサ115、定着前センサ116、定着排紙センサ117によって、記録媒体101の搬送状況を管理する。また、制御部113は、加熱定着装置109の温度制御プログラムおよび温度制御テーブルを記憶する記憶部を有している。
【0025】
交流電源118に接続された電源装置119は、加熱定着装置109への電力供給回路および交流から直流への整流回路を有しており、前述のプロセスで消費される電力は、電源装置119から画像形成装置100の各部へ供給される。
【0026】
次に、図1を用いて、本実施例に係る定着加熱装置について説明する。図1は、定着加
熱装置109の断面図である。ヒータホルダ200はセラミックヒータ110を保持するとともにフィルム201の内面をガイドする。このヒータホルダ200は、高い耐熱性・断熱性及び剛性を有する材質により形成されており、記録媒体101の搬送路を横断する方向(図面に垂直方向)を長手とする横長の部材である。
【0027】
セラミックヒータ110は、ヒータホルダ200の下面に長手方向に沿って形成された溝部に嵌入された上で、耐熱性接着剤で固定支持されており、転写材搬送路を横断する方向を長手とする横長の形状を有している。円筒状の耐熱性フィルム材201(以下、定着フィルム201と記す)は、セラミックヒータ110を取り付けたヒータホルダ200にルーズに外嵌されている。ステー202は図1の紙面に垂直な方向を長手とする高剛性の部材であり、ヒータホルダ200の内側に配設されている。
【0028】
一方、加圧ローラ112はセラミックヒータ110とともに定着フィルム201を挟んで圧接するように配置されている。矢印Nで示した範囲が加圧ローラ112とセラミックヒータ110が定着フィルム201を挟むことで形成される定着ニップ部である。加圧ローラ112は定着モータ(不図示)により矢印B方向に所定の周速度で回転駆動される。定着ニップ部Nにおいては、加圧ローラ112と定着フィルム201の外周との摩擦力により加圧ローラ112の回転力が定着フィルム201に直接的に作用する。そして、定着フィルム201がセラミックヒータ110の下面に圧接しつつ摺動することで、矢印C方向に回転駆動される。
【0029】
ヒータホルダ200は、前述のように定着フィルム201内面のガイド部材として機能しており、定着フィルム201の回転を容易にしている。また、定着フィルム201の内面とセラミックヒータ110の下面との摺動抵抗を低減するために、両者の間に耐熱性グリス等の潤滑剤を少量介在させることもできる。
【0030】
記録媒体101上への未定着画像の定着は以下の動作で実行される。加圧ローラ112の回転に従動して定着フィルム201が回転し、これと同時に、セラミックヒータ110の温度が、未定着画像を永久固着画像として熱圧定着可能な温度まで上昇される。そして、定着フィルム201と加圧ローラ112により形成される定着ニップ部Nに、定着すべき記録媒体101が導入されて挟持搬送される。定着ニップ部Nにおいて、セラミックヒータ110の熱が定着フィルム201を介して記録媒体101上の未定着画像に付与され、記録媒体101上の未定着画像が記録媒体101上に加熱定着される。
【0031】
定着ニップ部Nを通った記録媒体101は定着フィルム201及び加圧ローラ112から分離されて搬送される。なお、図1における矢印Aは記録媒体101の搬送方向を示す。また、定着加熱装置109はセラミックヒータ110の温度を検出するための感温素子であるサーミスタ203を有している。サーミスタ203は不図示のバネ等でセラミックヒータ110に常時感温可能な力で圧接されており、セラミックヒータ110の温度を検出する。
【0032】
図2は、本実施例に係る定着加熱装置のヒータの駆動回路を示している。交流電源118は定着加熱装置109に接続される商用電源であり、制御部113からのヒータ駆動信号に応じて電力をヒータ110へ供給し、ヒータ110を発熱させる。ヒータ110に供給される電力の制御は、トライアック301の通電/遮断の切換えにより行われる。また、抵抗302及び303はバイアス抵抗であり、フォトトライアックカプラ304は一次側と二次側の沿面距離を確保するために設けられている。フォトトライアックカプラ304の発光ダイオード305に通電することによりトライアック301がオンとなる。なお、本実施例におけるスイッチ手段は、トライアック301を含んで構成される。
【0033】
トランジスタ307は、抵抗308を介して制御部113から与えられるヒータ駆動信号に従って動作する。トランジスタ307のオン/オフに応じてフォトトライアックカプラ304もオン/オフする。なお、抵抗306は、フォトトライアックカプラ304の電流を制限するために設けられている。また、交流電源118からの入力電源電圧は、ゼロクロス検知手段であるゼロクロス検知回路309にも入力される。
【0034】
交流電源118からの交流電圧は、整流器310、311により半波整流される。この半波整流された交流電圧は、抵抗312、313、コンデンサ314、抵抗315を介して、トランジスタ316のベースに入力される。これによれば、Neutral側の電位がHot側の電位よりも高い場合にトランジスタ316はオンとなり、Neutral側の電位がHot側の電位よりも低くなるとトランジスタ316はオフとなる。
【0035】
フォトカプラ317は、一次側と二次側の沿面距離を確保するための素子であり、抵抗318、319はフォトカプラ317に流れる電流を制限するために設けられている。Neutral側の電位がHot側の電位より高くなるとトランジスタ316がオンするため、フォトカプラ317の発光ダイオード320は消灯し、フォトトランジスタ321はオフしてフォトカプラ317の出力電圧はHighとなる。一方、Neutral側の電位がHot側の電位より低くなるとトランジスタ316はオフするのでフォトカプラ317の発光ダイオード320が発光し、フォトトランジスタ321はオンしてフォトカプラ317の出力電圧はLowとなる。
【0036】
フォトカプラ317の出力は、抵抗322を介してゼロクロス信号として制御部113に入力される。このゼロクロス信号は、その信号周期が交流電源の周波数と等しいパルス信号であり、交流電源の電位極性に応じて信号レベルが変化する。制御部113はこのゼロクロス信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検知し、任意のタイミングでトライアック301をオン/オフさせ、このことでヒータ110への電力供給を制御する。サーミスタ203によって検出される温度は、抵抗323とサーミスタ203との分圧として検出され、制御部113にTH信号としてA/Dポートに入力される。
【0037】
以上の構成において、定着加熱装置109の温度制御は次のようになされる。即ち、制御部113がTH信号をモニターした際に、未定着画像を永久固着画像として熱圧定着することが可能な温度に達した場合には、ヒータ駆動信号によってヒータ110ヘの通電を停止する。又、熱圧定着が可能な温度を下回ると、ヒータ110に通電する。このことによって定着加熱装置109の温度を一定に維持することが可能になっている。
【0038】
次に、ヒータへの電力供給時における電力の制御方法である位相制御、波数制御及び、位相制御と波数制御を組み合わせた制御について各々説明する。図3は、位相制御によるヒータ電力制御の例について説明するための図である。図3において、ゼロクロス信号は交流電源電圧波形の正から負、負から正に切り替わるポイントで論理が切り替わる。このゼロクロス信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジからTa時間後にヒータ駆動信号がオンする。そうすると、ヒータ印加電圧を示すグラフにおける斜線で示した部分でヒータが通電し電力が供給される。
【0039】
なお、この例では、ヒータがオンした後、次のゼロクロスポイントでヒータへの通電がオフされる。このため、再びゼロクロス信号のエッジから時間Ta後にヒータ駆動信号をオンすることにより、次の半波でもヒータに同じ電力が供給される。また、時間Taと異なる時間Tb後にヒータ駆動信号をオンするとヒータへの通電時間が変わるため、ヒータへの供給電力を変化させることができる。このように、半波ごとにゼロクロス信号のエッジからヒータ駆動信号をオンするまでの時間を変化させることでヒータへの供給電力を制御することができる。
【0040】
位相制御においては、図3に示すように交流電源波形の半波の途中でヒータへの通電をオンするためヒータに流れる電流が急激に立ち上がり、高調波電流が流れる。この高調波電流は電流の立ち上がり量が大きいほど多くなるので、位相角90°すなわち供給電力50%の時に最大になる。また、この電流の立ち上がりエッジが半波毎に発生するため多くの高調波電流が流れ、高調波規制への対応が必須となる。そのため位相制御においてはフィルタ等の回路部品が必要になる場合が多い。一方、位相制御においては、各半波における最大値より小さい電流が半波毎に流れるため半波毎の電流の変化量は小さく、さらに変化周期も早いため、フリッカへの影響が小さいことが特徴である。
【0041】
図4には、波数制御によるヒータの電力制御の例を示す。波数制御では交流電源の半波単位でオン/オフ制御を行う。従って、ゼロクロス信号のエッジと同期させてヒータ駆動信号をオンする。そして、例えば八つの連続する半波を制御の一周期(一制御周期)とし、一制御周期の中でオンする半波の数を変えていくことで、ヒータへの供給電力を制御する。図4では、八の半波のうち四の半波をオンしているため、ヒータへの供給電力は50%となる。このように、波数制御では、連続してオンさせる波数を変化させることで、ヒータ供給電力を0%から100%までの間の4段階(25%刻み)の通電制御パターンを予め定めておき、この通電制御パターンに基づいてヒータの電力制御が行なわれる。
【0042】
波数制御ではヒータのオン/オフが常にゼロクロスで行われるため位相制御のような電流の急激な立ち上がりエッジがなく高調波電流が少ないという特徴を有する。一方、電流は半波単位で流れるため、位相制御に比べて半波毎の電流の変化量は大きく、変化周期も長い。このため波数制御ではフリッカへの影響が大きくなる。また、定着フィルム201の温度リップルが大きくなりやすく画像の光沢ムラが生じ易い。
【0043】
図5には、位相制御と波数制御を組み合わせたヒータの電力制御の例を示す。図5の例では、八つの連続する半波を一制御周期とし、そのうち二半波を波数制御、二半波を位相制御で制御し、ヒータ供給電力比dを33.3%とした場合について示す。ここでは、一
波目と二波目の半波の電力dutyが33.3%になるように制御部113がトランジスタ307にTcのタイミングでオン信号を送信して位相制御を行う。そして、残りの六の半波のうち二半波を波数制御でオンし、その他の四半波は全てオフとすることで、一制御周期において約33.3%の電力が供給される。
【0044】
このようにヒータ供給電力の0%から100%までの間を任意のレベルに分割した通電制御パターンをあらかじめ定めておき、制御部113はその通電制御パターンを元にヒータ通電制御を行う。この制御では位相制御と波数制御の両方を含むため、波数制御のみを行なう場合と比較してフリッカが抑制され、且つ、位相制御のみを行なう場合と比較して高調波電流歪が抑制されるという特徴がある。
【0045】
次に、画像の光沢ムラについて説明する。光沢ムラは定着フィルム201の温度リップルが大きいほど生じやすく、位相制御よりも波数制御でヒータ電力制御を行う場合に発生し易い。位相制御と波数制御を組み合わせたヒータ電力制御では、波数制御を行なう部分で温度リップルが大きくなり、光沢ムラが生じる場合がある。また、画像によって光沢ムラのレベルが異なり、画像領域が広く、トナー量が多い画像において、より顕著に現れる傾向がある。
【0046】
逆に、テキスト画像などトナー量が少ない画像では光沢ムラのレベルは低くなり、ほとんど問題がなくなる場合が多い。本発明では、この傾向を利用して画像に応じた最適なヒータ電力制御を選択することで、画像の光沢ムラを抑制し、且つ、高調波電流歪およびフリッカを低減することとした。
【0047】
以下に、本実施例におけるヒータへの通電量を制御するヒータ制御シーケンスの詳細を説明する。制御部113内にある不図示の記憶部には、ヒータ電力制御テーブル(本実施例において供給電力制御テーブルに相当する。)が複数種類記憶されている。詳細には、テーブル1:位相制御用テーブル、テーブル2:波数制御用テーブル、テーブル3:位相制御と波数制御を組み合わせた組合せ制御用テーブルの三種類のヒータ電力制御テーブルが記憶されている。各々のテーブルには、ヒータのオン/オフのタイミングに関するデータも格納されている。本実施例においては、記録媒体101の定着ニップ部Nの通過時において、光沢ムラの生じ易い画像部分が定着ニップ部Nを通過する間はテーブル1を、光沢ムラの生じづらい画像部分に対してはテーブル3を用いる。
【0048】
位相制御のみであるテーブル1を光沢ムラの生じ易い画像部分に対してのみ使用することで、高調波電流歪を抑制しつつ、光沢ムラをより効率的に抑制することができる。一方、光沢ムラの生じづらい画像部分に対して位相制御と波数制御を組み合わせる制御のためのテーブル3を用いることで、高調波電流歪とフリッカの両方を必要十分なレベルに抑制することができる。また、同様の理由で定着加熱装置の立ち上げ時、前回転時及び後回転時にはテーブル3を用いる。更に、複数枚のプリント時には、高調波電流歪を更に低減するため、記録媒体101の搬送間隔(以下では紙間と呼ぶ)部分に対してテーブル2を用いる。
【0049】
テーブル2による波数制御は、先述のようにフリッカが生じやすい制御である。しかしながら、紙間におけるヒータ電力は、記録媒体101が定着ニップ部Nを通過する時より少なくて良いため、紙間においてテーブル2を用いても極端なフリッカ悪化を招くことはない。加えて、紙間で波数制御による温度リップルが生じても画像に対する影響はない。以上のように、本発明においては状況に応じてヒータ制御を切替えることで、光沢ムラ、高調波電流歪、フリッカを全て充分に抑制することが可能になる。
【0050】
次に、本実施例において、光沢ムラの生じやすい画像を判別する方法の一例について述べる。本実施例における画像形成装置では、3×3ドットのドット集合を画像形成の最小画像構成単位 (1画素)として用い、この1画素毎の画像濃度を既知の方法で制御するこ
とで全体としての画像が形成される。
【0051】
ここで、例えば、記録媒体101上の単位面積Aに形成される画像について考える。上記単位面積Aの記録媒体の搬送方向長さをAL、これと直交する方向の幅をAWとする。本実施例では単位面積Aに形成される画像が、光沢ムラの生じやすい画像か否かを判別して、ヒータ電力制御のテーブルを切替えることとする。従って、単位面積Aの搬送方向長さALと幅AWは、上記判別に適した値に設定する必要がある。例えば記録媒体の搬送速度が200mm/sec、交流電源118の周波数50Hzの場合、本実施例では搬送方向長さALを8mm(解像度600dpiで63画素に相当)に設定する。
【0052】
これは交流電源周波数の二波分に当たる長さであり、波数制御で一波をオン、一波をオフした場合に生じる光沢ムラの一周期に相当する。一方、単位面積Aの幅AWは、単純に光沢ムラが生じた場合の目立ち易さを目安に決めれば良く、本実施例では長さALと同じ8mmに設定する。本実施例では、画像形成領域内で選択可能なすべての単位面積A(Aの最小構成単位は1画素とする)について、そこに形成される画像が、光沢ムラの生じやすい画像か否かを判別する。
【0053】
図6に画像形成領域内に含まれる単位面積Aの概略図を示す。図6は、記録媒体101の左先端部の拡大図であり、画像形成領域先端、画像形成領域左端、画像形成の最小単位(最小画像構成単位)である一画素、複数の単位面積AXYが示されている。単位面積A
11(図中太実線の正方形)が画像形成領域の先端左端に形成される単位面積Aであり、搬送方向に一画素ずつ移動した位置に、A21、A31、A41、・・・・と単位面積Aを選択できる。
【0054】
同様にこれと直交する方向に一画素ずつ移動した位置に、A12、A13、A14・・・・と単位面積Aを選択することができる。上記それぞれの単位面積Aに含まれる総画素数をPTAとし、このうち実際に画像が形成される(実際にトナーがあり濃度(あるいはトナー濃度、トナー濃度の程度)が0ではない)イメージ画素数をPIAとする(上述の
設定ではPTA=63×63=3969)。このイメージ画素数PIAのうち、そのトナ
ー量が規定のトナー量D(0%<D≦100%)以上(規定濃度以上であることに相当する。)である高濃度画素数をPIA(D)とする。上記規定のトナー量Dは、外部装置から送信された画像を画像処理コントローラ120で処理した画像情報における、該当画素の画像濃度を意味し、本例ではD=75%に設定する。
【0055】
本実施例では、以下の(1)式で示す総画素数PTAに対する高濃度画素数PIA(D)の比率(割合)RIを印字率(または画像印字率)として参照する。
RI=PIA(D)/PTA・・・・・・(1)
ある単位面積Aにおいて上記の印字率RIが閾値RILIM以上(所定の閾値以上)であれば、その単位面積Aは光沢ムラの生じやすい画像であると判断する。本例では閾値RILIMの値を0.7に設定している。この値は画像形成装置の特性に合わせ、光沢ムラが目立ち始める値を選択すればよい。
【0056】
そして、印字率RIが閾値RILIM以上である単位面積Aが定着ニップ部Nを通過する時にのみ、テーブル1(位相制御)を用いる。なお、本実施例では、より確実に光沢ムラを防止するため上記の画像判別方法を用いたが、画像判別の制御を簡略化するため、単位面積Aの面積をより大きくしてもよい。また、印字率RIを単純に総画素数PTAの平均画像濃度(単位面積Aにおける平均画像濃度)としてもよい。また、印字率RIを、単純に総画素数PTAに対するイメージ画素数PIAの比率(画像存在比率)とする等の方法を用いても良い。
【0057】
画像処理コントローラ120は、外部装置から送信される画像情報から、図6で説明した全ての単位面積Aについて(1)式の印字率RIを算出し、制御部113に報知する。そして、制御部113が、印字率RIに応じたヒータ電力制御テーブルの選択および切替えを行う。従って、画像処理コントローラ120は、本実施例において画像印字率導出手段に相当する。
【0058】
図7には、本実施例におけるヒータ電力制御テーブル切替えの様子の一例として、記録媒体101上に形成された画像が模式的に示されている。ここでは説明を簡略化するため、単純な画像を例として挙げている。
【0059】
この画像は4つの部分IG-1〜IG-4から構成されており、IG-1とIG-4は文字(文章)であり、IG-1とIG-4の領域内にある単位面積Aの中には印字率RIが閾値RILIM以上であるものは無い。一方、IG-2とIG-3は例えば写真画像であり、IG-2とIG-3の領域内にある単位面積Aの全てにおいて印字率RIが閾値RILIM以上であるとする。このような画像を記録媒体101に定着する場合、上述したIG-1〜
IG-4に含まれる単位面積Aの印字率RIを参照した結果、本例では搬送方向で記録媒
体101が図7に示された区間1〜5に分割される。なお、IG-1〜IG-4は本実施例において特定画像領域に相当する。
【0060】
区間1〜5の分割は、その区間に印字率RIが閾値RILIM以上である単位面積Aが
含まれるか否かで決定されている。そして、次のようなヒータ電力制御テーブルの切替えが実行される。記録媒体101の先端部である区間1には光沢ムラの生じやすい画像が存在しないため、この部分が定着ニップ部N通過する時にはテーブル3が使用される。次の区間2には、光沢ムラの生じやすい画像であるIG-2が存在するため、区間2が定着ニ
ップ部Nに到達するタイミングでヒータ電力制御テーブルがテーブル3からテーブル1に切替えられる。
【0061】
次の区間3には光沢ムラの生じやすい画像が存在しないため、区間3が定着ニップ部Nに到達するタイミングでヒータ電力制御テーブルがテーブル1からテーブル3に戻される。同様に区間4に対してはテーブル1、区間5に対してはテーブル3が使用される。このように、本実施例では記録媒体101が定着ニップ部Nを通過している間に、画像に応じてヒータ電力制御のためのテーブルの切替えをおこなう。
【0062】
次に上記動作についてフローチャートを用いて説明する。図8には、本実施例におけるにプリントジョブ実行時のヒータ電力制御テーブル切替えフローを示す。図1のヒータ電力制御テーブル切替えフローでは、テーブル1〜3のいずれかが選択されるかが、ヒータ電力制御の一制御周期毎に毎回判断される。
【0063】
図8でプリントジョブが開始されると、まずS100において、制御部113が定着加熱装置の立上げ、前回転を行う際に使用するヒータ電力制御テーブルとして、テーブル3が選択される。これは、テーブル3は、位相制御と波数制御を組み合わせた通電制御パターンのテーブルであり、温度リップルに対しては不利なものの、高調波電流歪抑制とフリッカ抑制の両方に対して有利であることによる。具体的には、四波(八半波)を一制御周期とする位相制御と波数制御を組み合わせた通電制御パターンとし、サーミスタ203が検知するヒータ110の温度により、定着加熱装置109の温度制御が行なわれる。そして、制御部113は一制御周期(四波)毎に必要な電力レベルに応じた通電制御パターンをテーブル3から選択する。
【0064】
次に、S101において、次回の一制御周期(四波)内に一枚目の記録媒体101が定着ニップ部Nに到達するか否かが判定される。ここで、次回の一制御周期(四波)内に1枚目の記録媒体101が定着ニップ部Nに到達すると肯定判定された場合には、画像の印字率RIを判別するステップであるS103へ進む。一方、一制御周期(四波)内に一枚目の記録媒体101が定着ニップ部Nに到達しないと否定判定された場合にはS102へ進む。S102においては、定着加熱装置が立上げ、前回転中か否かが判定される。S102において、定着加熱装置の立ち上げ、前回転中であると肯定判定された場合には、S100の処理の前に戻る。そして、S100〜S102までの処理が、一枚目の記録媒体が定着ニップ部Nに到達するまで繰り返される。
【0065】
S103においては、印字率RIが閾値RILIM以上となる画像が、次回一制御周期中に定着ニップ部Nを通過するか否かが判定される。ここで肯定判定された場合には、S104に進み、使用するヒータ電力制御テーブルは、光沢ムラが発生しにくいヒータ電力制御テーブルであるテーブル1へと切替えられる。従って、光沢ムラが発生しやすい画像に対しては、光沢ムラを抑制できるテーブル1(位相制御)の中から電力レベルに応じた通電制御パターンが選択される。その後、S104からS101の前へ戻り、現在定着ニップ部Nを通過中の記録媒体101が定着ニップ部Nを抜けるまで、印字率RIが閾値RILIM以上である画像が存在する区間はテーブル1(位相制御)から通電制御パターンが選択される制御が継続される。
【0066】
一方、S103において、次回の一制御周期において定着ニップ部Nに、印字率RIが閾値RILIM以上である画像が存在しないと否定判定された場合には、S105に進む
。S105においては、ヒータ電力制御のためのテーブルがテーブル1からテーブル3へ戻される。そして、S101の前に戻り、S101からのフローが継続される。
【0067】
その後、次回の一制御周期中に記録媒体101が定着ニップ部Nを抜けるタイミングになった場合には、S101からS102を経由してS106に進む。そして、S106においてはプリントが終了するか否か(現在定着ニップ部Nを通過中である記録媒体101がジョブの最終ページであるか)が判定される。
【0068】
S106においてプリント終了と肯定判定された場合には、S108に進み、ヒータ電力制御テーブルを後回転時に用いるテーブル3へ切替えた上でフロー終了とする。一方、S106でプリント終了でないと否定判定された場合、次回一制御周期で定着ニップ部Nにあるのは紙間部であると判断される。従って、その場合にはS107に進み、ヒータ電力制御テーブルを紙間用のテーブル2へ切替える。その後S101へ戻り、紙間中は次の記録媒体101が定着ニップ部Nに達するまで、テーブル2(波数制御)の中から電力レベルに応じた通電制御パターンが選択される。なお、本実施例においては、紙間部に対しテーブル2(波数制御)を用いることとしたが、フリッカを更に抑制したい場合には、テーブル2の代わりにテーブル3を用いても良い。
【0069】
次に、図9を用いて上記フローの一部を時系列で説明する。図9に、画像印字率に応じてヒータ電力制御のためのテーブルをテーブル3からテーブル1に切替える際のヒータ印加電圧の変化を示す。時間t2までの画像印字率RIは閾値RILIMよりも低くRI<RILIMが成立し、時間t2からの画像は画像印字率RIが閾値RILIM以上でありRI≧RILIMが成立するとする。このような画像印字率の変化に対し、本実施例のフローでは、時間t1でヒータ電力制御のためのテーブルの切替えが実行される。
【0070】
時間t1は高印字率画像部分が始まる時間t2よりtdだけ早いタイミングであり、時間t2においては既にヒータ電力制御テーブルが光沢ムラの抑制に有利なテーブル1(位相制御)に切替わっている。本実施例で用いる定着加熱装置109は熱容量が小さく熱応答性が良いので、高印字率画像部分が始まる時点でテーブル1に切替っていれば、高印字率画像部分の始めから光沢ムラのない良好な画像が得られる。
【0071】
以上のように本実施例においては、装置の高速化に伴い、熱応答性の高い定着加熱装置の温度リップル低減(光沢ムラ抑制)が要求される場合でも、高印字率の画像部分のみに位相制御を用いる。また、高印字率の画像以外の部分には波数制御または、位相制御と端数制御の組合せ制御を用いる。このことで、光沢ムラとフリッカの発生を抑制しつつ、同時に高調波電流歪を最少の状態に維持できる。
【0072】
なお、本実施例においては、記録部に保存してあるヒータ電力制御のためのテーブルが三種類である場合について説明したが、これは一例であって、2種類以上の複数のテーブルを記録部に保存してあれば応用が可能である。例えば、交流電源電圧が高い電圧(例えば220V〜240V)の場合は、フリッカ規格に対して比較的マージンがある場合が多い。従って、そのような場合にはテーブル3の位相制御と波数制御を組み合わせた制御を用いず、テーブル1及びテーブル2の二つのテーブルのみを使用しても良い。さらに、交流電源電圧が低い電圧(例えば100V〜127V)であるときは、高調波電流歪の規格に対して比較的マージンがある場合が多い。従って、そのような場合にはテーブル2の波数制御を用いず、テーブル1及びテーブル3の二つのテーブルのみを使用しても良い。
【0073】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2における画像形成装置の構成、ヒータ構成、位相制御、波数制御、位相制御と波数を組み合わせた制御、電力制御テーブル
などについては、実施例1で説明したものと同様のため、説明を省略する。実施例1では画像印字率RIに応じて電力制御テーブルの切替えを行ない、光沢ムラとフリッカを防止しつつ、高調波電流歪の抑制を実現した。しかしながら、閾値RILIMよりも画像印字率が高い画像ばかりが続いた場合、実施例1の電力制御テーブル切替えフローを続けると、非常に稀ではあるものの、高調波電流歪を要求されるレベル以下に抑制できなくなる可能性があった。実施例2はこのような事情に鑑みて、より確実に高調波電流歪とフリッカを抑制しつつ、光沢ムラの防止を実現可能とした例である。
【0074】
実施例2におけるヒータ電力制御テーブルの切替え制御の概略は以下のとおりである。画像印字率に応じたヒータ電力制御テーブルの切替え制御は、基本的には実施例1と同様であるが、実施例2においては、高調波電流歪を規定レベル以下に抑制できない虞がある場合には、これを回避するための処理が行われる。この処理のため、実施例2では以下に説明する電源波数カウントNWとテーブル選択波数カウントNT、位相制御実行指数PCC(NT)を用いて、ヒータ電力制御テーブルの切替えと記録媒体の搬送速度の変更を行う。
【0075】
電源波数カウントNWは画像形成装置が接続された交流電源の波数のカウント値であり、交流電源118の周波数と等しい周期及びタイミングでカウントアップされる。よって、50Hzの交流電源であれば、カウント開始から1秒後の値は50となり、2秒後の値は100となる。電源波数カウントNWは、画像形成装置の電源オン時にカウントが開始され、電源がオフされるまでカウントが継続される。
【0076】
次に、テーブル選択波数カウントNTは、本実施例のヒータ電力制御テーブル切替え制御における、ヒータ電力制御テーブルの制御フロー周期にあたるものである。テーブル選択波数カウントNTのカウントアップに伴って、使用するヒータ電力制御テーブルがテーブル1〜3の中から連続して選択されていく。テーブル選択波数カウントNTのカウント周期も交流電源118の周波数と等しいが、その値は電源波数カウントNWの値を元に、これよりわずかに先行した値に設定する。
【0077】
本実施例では、例えばテーブル選択波数カウントNT=nになった時にテーブル3が選択されたとすると、その後電源波数カウントNW=nになった時点で、この選択に従いテーブル3を用いたヒータ電力制御を実行するものとする。具体的な処理は以下の通りである。テーブル選択波数カウントNT=nにおいてテーブル3が選択されることと併せ、前述した定着加熱装置109の温度制御プログラムによりサーミスタ203の検出温度に応じたヒータ供給電力が決定される。
【0078】
そして、電源波数カウントNW=nになった時点で、テーブル3の中にある上記ヒータ供給電力に対応した波形パターンを用いてヒータ電力制御が実行される。ここで、上記温度制御プログラムがヒータ供給電力を決定するタイミングから、実際にそれがヒータ110へ供給されるまでのタイムラグをΔt、交流電源118の周波数におけるΔt相当の波数をΔnとする。このとき、本実施例におけるテーブル選択波数カウントNTは、電源波数カウントNWと上記波数Δnを用いて、NT=NW+Δnとなるように設定される。
【0079】
位相制御実行指数PCC(NT)は、テーブル選択波数カウントNTにおいて位相制御が選択された場合に、その一波におけるヒータ供給電力に応じて0≦PCC(NT)≦1の値となる指数であり、その他の制御が選択された場合は0に固定される。位相制御実行指数PCC(NT)は、各ヒータ電力制御方式における一制御周期単位(位相制御では一波単位、波数制御及び位相制御と波数を組み合わせた制御では四波単位)で設定される。また、ヒータへの電力供給をしない場合は一波単位で設定される。
【0080】
図10には、ヒータ供給電力(PWR)に対する高調波電流歪相対値(HLV(PWR))の関係を示す。前述したように、高調波電流は電流の立ち上がり量が大きいほど高調波電流歪は大きくなるので、位相角90°、すなわちヒータ101への供給電力50%の時に最大になる。図10では、このときの高調波電流歪を1として、供給電力が変化したときの高調波電流歪をこれに対する相対値として示している。
【0081】
本実施例では図10の関係に基づき位相制御実行指数PCC(NT)の値を決定する。すなわち、あるヒータ供給電力(PWR)に対する高調波電流歪相対値(HLV(PWR))を、そのヒータ供給電力を使用するテーブル選択波数カウントNTにおける位相制御実行指数PCC(NT)の値とする。本実施例では制御部113内にある不図示の記録部に、ヒータ供給電力(PWR)に対する高調波電流歪相対値(HLV(PWR))の対応テーブルを持たせておく。そして、これを参照してテーブル選択波数カウントNTにおける位相制御実行指数PCC(NT)の値が決定される。
【0082】
例えば、テーブル選択波数カウントNTにおけるヒータ供給電力(PWR)=50%のとき位相制御実行指数PCC(NT)=1.00、ヒータ供給電力(PWR)=30%及び70%では位相制御実行指数PCC(NT)=0.96となる。また、ヒータ供給電力(PWR)=10%及び90%では位相制御実行指数PCC(NT)=0.71となる。上記位相制御実行指数PCC(NT)を連続的にモニターすることで、プリント時の高調波電流歪レベルを予想することが可能である。
【0083】
本実施例では、規定の波数カウント区間(波数カウント数=X)において、位相制御実行指数PCC(NT)の平均値を求め、この値から高調波電流歪レベルを予想し、これに応じて記録媒体101の搬送速度を変更する。本例では、上記Xの値を例えば5分間相当の値(50Hzであれば15000、60Hzでは18000)に設定する。テーブル選択波数カウントNTにおける上記位相制御実行指数PCC(NT)の平均値を(2)式で示す高調波歪指数RPCC(NT)とする。
【数1】
【0084】
本実施例では、高調波歪指数RPCC(NT)が規定使用度合である閾値(LDとする)以上(規定使用度合以上)の値となったら、記録媒体101の搬送速度を通常速度の1/3に低下させる。そして通常速度の1/3の搬送速度においては、実施例1と異なり、画像印字率がその閾値RILIMよりも高い画像に対しても位相制御と波数制御を組み合わせた制御を用いる。画像印字率が高い画像に対して位相制御と波数制御を組み合わせた制御を実行した場合でも、搬送速度を低下させることによって、光沢ムラのピッチ間隔が短くなり目立たなくできるからである。このようにすることで、光沢ムラを抑制しつつ、規定区間における高調波電流歪の平均レベルを、低下させることが可能となる。
【0085】
ここで、上記の閾値LDは、規定区間での高調波電流歪を要求されるレベル以下にできる高調波歪指数の限界値に対し、記録媒体101の一枚分の画像長さ分以上の余裕を持たせた値に設定するのが良い。具体的には、高調波歪指数RPCC(NT)が閾値LDに到達した後、記録媒体一枚分の搬送方向画像長さ相当の波数分だけ位相制御を実行した場合でも、規定区間における高調波電流歪が要求されるレベル以下となるような値に閾値LDを設定するのが良い。これはプリント時において、定着ニップ部Nを記録媒体101が通過中に高調波歪指数RPCC(NT)が閾値LD以上の値となった時、その時点で搬送速度を変更することによって画像に影響(速度変更前後の光沢差等)が出るのを避けるためである。
【0086】
記録媒体101が定着ニップ部Nを抜けてから搬送速度の変更を実行しても、高調波電流歪を要求されるレベル以下に抑制可能とするため、上述のように閾値LDを設定するのが現実的である。上記を踏まえ、本実施例における閾値LDの値は0.55に設定する。
【0087】
本実施例では、上述のように搬送速度を低下させた状態では、高印字率画像に対しても位相制御と波数制御を組み合わせた制御を用いるので、高調波歪指数RPCC(NT)は時間の経過と共に減少する。そして、高調波歪指数RPCC(NT)が十分に低下したと判断された場合には、記録媒体101の搬送速度をプリント開始時の速度に復帰させ、画像印字率が閾値RILIMよりも高い画像に対して位相制御(テーブル1)の実行を許可する。
【0088】
ここで、高調波歪指数RPCC(NT)が十分に低下したと判断する閾値をLUとする。上記閾値LUは、搬送速度を低下させる際の判断に用いる閾値LDよりも十分小さい値に設定するのが好ましく、本例ではこの値は0.4に設定されている。これは、搬送速度の変速が短い周期で繰り返されることにより、長時間プリント時の生産性が更に低下するのを防止するためである。以上述べた搬送速度変更を繰り返し実行すれば、生産性の低下を最小限にすることができる。
【0089】
次に、本実施例におけるヒータ電力制御テーブルの切替え制御についての一例をフローチャートを用いて詳細に説明する。図11にプリントジョブ実行時における、本実施例のヒータ電力制御テーブル切替えフローを示す。図11は、テーブル選択波数カウントNTにおけるヒータ電力制御テーブルを、テーブル選択波数カウントNTのカウントアップに伴って順次設定する制御フローを示している。
【0090】
前述したように、この制御フローで設定されたヒータ電力制御テーブルを実際に使用するのは、電源波数カウントNWが、当該ヒータ電力制御テーブル設定時のテーブル選択波数カウントNTと等しい値になった時である。実施例2では、ここで設定したヒータ電力制御テーブルが、上述したタイミングで定着加熱装置109の温度制御に用いられる。
【0091】
プリントジョブが開始されると、まずS700において画像形成装置の電源オンの直後であるか否かが判定される。ここで、電源オンの直後でないと否定判定された場合は、S700から直接S702の処理に進む。一方、電源オンの直後であると肯定判定された場合は、S701で制御パラメータの初期化(テーブル選択波数カウントNTの初期化、SCR=0、速度フラグ=0(SCR、速度フラグについては後述))が行われる。ここで、テーブル選択波数カウントNTの初期化について説明する。図11のフローには記載されていないが、電源がオンされると、ヒータ110への電力供給が開始される前に電源波数カウントNWのカウントが開始される。そして、図11のフローとは関係なく、交流電源118の周波数と等しい周期で電源がオフされるまでカウントアップが継続される。
【0092】
S701におけるテーブル選択波数カウントNTの初期化とは、S701の時点における電源波数カウントNWを参照し、前述したΔn分だけ先行する値にテーブル選択波数カウントNTを設定する(NT=NW+Δn)処理である。また、上記の速度フラグとは、記録媒体101の搬送速度を示すフラグであり、通常の速度でプリント実行する場合の値は0、前述の説明のように速度を低下させた場合の値は1となる。また、SCRは記録媒体の搬送速度の変更要求の有無を示すフラグであり、記録媒体の搬送速度を低下または復帰させる条件が満たされると、SCR=1となり、速度変更が実施されるとSCR=0に戻る。
【0093】
その後S702において、制御部113は定着加熱装置109の立上げ、前回転を行う
際に使用するヒータ電力制御テーブルとして、位相制御と波数制御を組み合わせた制御であるテーブル3を選択する。
【0094】
図12には「テーブル3選択処理」のサブルーチンのフローチャートを示す。この処理においては、テーブル3の一制御周期四波分の位相制御実行指数PCC(NT)の値が設定される。「テーブル3選択処理」の処理がスタートすると、まずS800cにおいてテーブル3が選択される。本実施例でも、図9に示したようにテーブル3の一制御周期四波のうち、前半の二波は位相制御、後半の二波は波数制御とされているので、これに応じ、S801c以降で四波分のPCC(NT)の値を、NTのインクリメントに伴い一波分毎に設定する。
【0095】
このPCC(NT)値の設定回数を示す値をmとし、初期値m=3から最終値m=0まで、1回のPCC(n)値の設定毎にmがデクリメントされる。図12では前半の二波に対しては一波毎のヒータ供給電力に応じた前述の高調波電流歪相対値(HLV(PWR))が位相制御実行指数PCC(NT)の値として採用される。(S801c→S802c→S804c→S805c→S806c→S807c→S802c)また、後半の二波に対してはPCC(NT)の値が0に固定される(S802c→S803c→S805c→S806c→S807c→S802c)。以上が終了すると「テーブル3選択処理」から、図11におけるS703にリターンする。
【0096】
S703の速度変更判定処理では、前述の高調波歪指数RPCC(NT)を算出し、搬送速度の変更要否を判定する。図13に「速度変更判定処理」のフローチャートを示す。「速度変更判定処理」は、記録媒体101の搬送速度を変更する必要があるのかを判断する際に実行されるものであり、速度変更の要否に応じ、搬送速度変更要求フラグSCRの値を設定するまでの処理を行う。「速度変更判定処理」がスタートすると、S1000において、テーブル選択波数カウントNTが規定の波数カウント数Xに達したか否かが判定される。テーブル選択波数カウントNTが規定の波数カウント数Xに達しておらず否定判定された場合にはS1006へ進む。一方、テーブル選択波数カウントNTが規定の波数カウント数X以上の値であり肯定判定された場合には、S1001に進む。
【0097】
S1001においては、前述の(2)式で示された高調波歪指数RPCC(NT)が算出される。S1001で高調波歪指数RPCC(NT)が算出された後、S1002で速度フラグの値(現在の記録媒体搬送速度)が確認される。その際の速度フラグ値が0(通常速度)である場合は、S1003に進み、高調波歪指数RPCC(NT)が記録媒体101の搬送速度を通常速度の1/3に低下させる閾値LD以上であるかの判定が行われる
。一方、現在の速度フラグ値が1(記録媒体101の搬送速度が通常速度の1/3)であ
る場合には、S1004に進み、高調波歪指RPCC(NT)が記録媒体101の搬送速度を通常速度に復帰させる閾値LU以下であるか否かの判定が行われる。
【0098】
S1003またはS1004において、それぞれで設定された高調波歪指数RPCC(NT)と閾値の関係が満足しており肯定判定された場合には、S1005に進み、搬送速度変更要求フラグSCRの値を1に設定し、否定判定された場合にはS1006へ進む。S1006でNTが既に説明したタイミングでインクリメントされ、「速度変更判定処理」を抜けて図11のS704にリターンする。
【0099】
S704においては、搬送速度変更要求フラグSCRの値が1に設定されたか否かが判定される。ここでSCR=0であり否定判定された場合にはS708へ進み、SCR=1であり肯定判定された場合にはS705に進む。
【0100】
S705においては搬送速度の復帰(通常速度の1/3の速度から通常速度へ変更)の
実行予約がおこなわれる。具体的には、速度の復帰を実行する電源波数カウントNWを指定するため、S704におけるテーブル選択波数カウントNTの値をnuとして記憶部に記憶する処理が行われる。そして、画像形成装置は電源波数カウントNWの値が上記nuとなったら、通常速度の1/3の速度から通常速度への速度の変更を実行する。
【0101】
S704においてSCR=1と肯定判定された場合は、自動的に現在の搬送速度が通常速度の1/3であるものとして上記の処理が行われている。これは、定着加熱装置109の立上げ、前回転時において、高調波歪指数RPCC(NT)が記録媒体101の搬送速度を通常速度の1/3に低下させる閾値LD以上となることがないことに基づく処理であ
る。
【0102】
これは以下の理由によるものである。定着加熱装置の立上げ、前回転中はテーブル3を用いているので、一制御周期における位相制御実行指数PCC(NT)の平均値は最大で0.50にしかならない。従って、定着加熱装置の立ち上げ、前回転中の高調波歪指数RPCC(NT)もこの値0.50を超えることはなく、本実施例における閾値LD=0.55を超えることがない。よって、本実施例における定着加熱装置109の立ち上げ、前回転中には、通常速度から通常速度の1/3の速度への速度変更はあり得ない。但し、これはこれまでに説明した本実施例における閾値LDの値、定着加熱装置の立ち上げ、前回転中に用いるヒータ電力制御テーブルの種類、また、位相制御実行指数PCC(NT)、高調波歪指数RPCC(NT)の算出方法を用いた場合に成立するものである。これらの条件を異なる設定とする場合は、それに応じた制御フローを用いれば良く、本発明は図11の制御フローに限定されるものではない。
【0103】
以上のように、本実施例では制御を簡略化するため、S704においてSCR=1であり肯定判定された場合には、現在の速度の確認を省略し、S705で搬送速度の復帰の実行予約が行われる。S705で搬送速度の復帰予約が行われると、その後、S706で速度フラグの値が通常速度を示す0に変更され、S707で搬送速度変更要求フラグSCRの値が0へ戻された上でS708へ進む。
【0104】
S708においては、現在のテーブル選択波数カウントNTから始まる次の一制御周期中に、記録媒体が定着ニップ部Nを通過している時間が含まれるか(ここでは一枚目の記録媒体が定着ニップ部Nへ到達するか)が判定される。そして、記録媒体通過中の時間を含み肯定判定された場合はS710へ進む。一方、次の一制御周期中に記録媒体が定着ニップ部Nになく(ここでは一枚目の記録媒体が定着ニップ部Nへまだ到達しない)否定判定された場合にはS709へ進む。S709では定着加熱装置の立上げ、前回転中であるか否かが判定され、ここで肯定判定されると、S702からの処理フローが一枚目の記録媒体が定着ニップ部Nへ到達するタイミングまで繰り返される。
【0105】
S708で、次の一制御周期中に一枚目の記録媒体が定着ニップ部Nへ到達すると肯定判定された場合には、S710へ進み速度フラグの値が確認される。ここで、速度フラグの値が0(通常速度)であればS711に進み、さらにその一制御周期中に画像印字率が閾値RILIMよりも高い画像が到達するか否かが判断される。一方、S710において速度フラグの値が1(通常速度の1/3の速度)であれば、画像印字率の確認は行わずにS713に進み、前述した「テーブル3選択処理」が実行される。
【0106】
S711で画像印字率が閾値RILIMよりも高い画像が次の一制御周期中に存在すると肯定判定された場合はS712に進む。S712においては、通常の搬送速度で高印字率画像を定着する際に使用するヒータ電力制御テーブルとして、位相制御であるテーブル1を選択する処理が行われる。また、S711で画像印字率が閾値RILIMよりも高い画像が次の一制御周期中には無いと否定判定された場合には、S713に進み、前述した
「テーブル3選択処理」が実行される。
【0107】
次に、図14に「テーブル1選択処理」のフローチャートを示す。「テーブル1選択処理」の処理がスタートすると、S800aにおいてテーブル1が選択され、S801aにおいて位相制御実行指数PCC(NT)の値の設定が行われる。S801aの処理が終了すると図11のS714にリターンする。S800aではテーブル1が選択され、このテーブル内から必要なヒータ供給電力に対応する通電制御パターンが選択される。S801aでは、上記ヒータ供給電力に応じた前述の高調波電流歪相対値(HLV(PWR))が位相制御実行指数PCC(NT)の値として採用される。
【0108】
S712もしくはS713の処理がおこなわれた後に、S714において、前述した「速度変更判定処理」が実行される。そして、S715において、搬送速度変更要求フラグSCRの値が1となっているか否かが判定れる。搬送速度変更要求フラグSCR=0であり否定判定された場合にはS708に戻る。一方、S715において、搬送速度を変更する条件が満たされてSCR=1と肯定判定された場合には、まずS716で現在の搬送速度のフラグが1か否かが判定される。S716において、現在の搬送速度が通常速度(速度フラグ=0)であり否定判定された場合、S717で紙間において搬送速度を1/3に変更するための処理が実行される。
【0109】
図15には、図11のS717における「速度ダウン処理」のフローチャートを示す。「速度ダウン処理」では、現在定着ニップ部Nにある記録媒体が、定着ニップ部Nを通過してから、実際に記録媒体の搬送速度を低下させるための処理が行われる。まずS900aで、次の一制御周期中に記録媒体が定着ニップ部Nを抜けているかを判断する。その結果、次の一制御周期中に記録媒体がニップ部Nを通過して紙間になっていると否定判定された場合には、S905aで搬送速度を1/3にダウンするための実行予約が行われる。具体的には、速度ダウンを実行する電源波数カウントNWを指定するため、S905aにおけるテーブル選択波数カウントNTの値をndとして記憶部に記憶する処理を行う。そして、実施例2の画像形成装置100は電源波数カウントNWの値が上記ndとなったら、搬送速度を通常速度からその1/3の速度までダウンする速度変更を実行する。
【0110】
一方、S900aにおいて、次の一制御周期中にまだ記録媒体が定着ニップ部Nに存在すると肯定判定された場合は、S901aに進み、画像の印字比率が確認される。これまでと同様、画像印字率が閾値RILIM以上であり肯定判定された場合はテーブル1(S902a)が、否定判定された場合はテーブル3(S903a)を選択する処理が実行される。そして、S904aにおいて、既に説明したタイミングでNTがインクリメントされてS900aに戻る。そして、S905aで搬送速度を1/3にダウンするための実行予約が行われるまで上記フローが繰り返される。
【0111】
S905aで速速度ダウンの実行予約がおこなわれると、S906aで速度フラグ=1、S907aでSCR=0とされた後「速度ダウン処理」を抜けて図11のS719にリターンする。一方、S716において、現在の搬送速度が通常速度の1/3(速度フラグ=1)であると肯定判定された場合は、S718において、紙間で搬送速度を通常速度に復帰するための処理を実行する。
【0112】
次に、図16にS718の「速度復帰処理」のフローチャートを示す。「速度復帰処理」では、現在定着ニップ部Nにある記録媒体が、定着ニップ部Nを通過してから、記録媒体の搬送速度を通常速度に復帰させる処理を行う。まずS900bで、次の一制御周期中に記録媒体が定着ニップ部Nを抜けているかを判断する。ここで、記録媒体が定着ニップ部Nを通過して紙間になっており否定判定された場合には、S903bにおいて、通常速度への搬送速度復帰の実行予約が行われる。具体的には、速度復帰を実行する電源波数カ
ウントNWを指定するため、S903bにおけるテーブル選択波数カウントNTの値をnuとして記憶部に記憶する処理をおこなう。そして、実施例2の画像形成装置100は電源波数カウントNWの値が上記nuとなったら、搬送速度を通常速度の1/3から通常速度へ復帰させる速度復帰を実行する。
【0113】
S900bで次の一制御周期中にまだ記録媒体が定着ニップ部Nにあると肯定判定された場合は、S901bに進み、画像印字率に拘わらずテーブル3を選択する処理が実行される。そして、S902bでNTが既に説明したタイミングでインクリメントされた上でS900bに戻る。そして、S903bにおいて搬送速度復帰の実行予約が行われるまで上記フローが繰り返される。S903bで搬送速度復帰の実行予約が行われると、S904bにおいて速度フラグ=0、S905bにおいてSCR=0とされた後「速度復帰処理」を抜けて図11のS719へリターンする。
【0114】
S719でプリント終了のタイミングでないと否定判定されると、S720で紙間用のヒータ電力制御テーブルであるテーブル2(波数制御)を選択する処理が選択される。図17に「テーブル2選択処理」のフローチャートを示す。この処理では、テーブル2の一制御周期四波分のPCC(NT)の値を設定する。この処理がスタートすると、まずS800bでテーブル2が選択される。そして、S801b以降で四波分のPCC(NT)値を一波毎に0に設定してゆく。
【0115】
このPCC(NT)値設定回数を示す値をmとし、S801bにおいて初期値m=3として、1回のPCC(NT)値設定毎にmがデクリメントされる。そして、最終値m=0となるまでPCC(NT)の値を0に繰り返し設定する(S802b→S803b→S804b→S805b→S802b)。そして、S806bでNTが既に説明したタイミングでインクリメントされた後、「テーブル2選択処理」を抜けて、図11のS708にリターンする。そして、プリント終了のタイミングまで、以上述べたフローが繰り返される。S719においてプリントが終了したと肯定判断された場合には、S721へ進む。S721で、定着加熱装置の後回転を行う際に使用するヒータ電力制御テーブルとしてテーブル3を選択する処理が行われ、ヒータ電力制御テーブル切り替えフローは終了する。
【0116】
なお、実施例2における搬送速度の変更は、レーザビームスキャナ106、感光ドラム104、中間転写体103、転写ローラ108、加圧ローラ112、定着フィルム201、各部の搬送ローラ等の周速を目標速度へ変更するための既知の方法で実現できる。また例えば、九面のミラー面を持つポリゴンミラーを備えたレーザビームスキャナを用いる場合、ミラー面を二面飛ばしで使用すればポリゴンミラーの回転数を変更することなく記録媒体101の搬送速度を変更する方法も開示されている。このような方法を用いれば、ポリゴンミラーの回転数を変更する際に、変更後の規定回転数でポリゴンミラーの回転を安定させるための時間が不要である。このため、より迅速に搬送速度の変更を行うことが可能である。
【0117】
本実施例では以上説明した制御を実行することで、実施例1と同様に画質を低下させずに高調波電流歪及びフリッカの抑制が可能であり、これに加え、高印字率画像が長時間連続してプリントされる場合にもこの効果を維持することが可能となる。なお、上記説明では高印字率画像が長時間続いた場合、記録媒体の搬送速度を低下させることにより、高調波電流歪を継続的に要求レベル以下に維持する方法について述べた。しかしながら、搬送速度を変化させずに記録媒体の搬送間隔(紙間)を広げることでも同じ効果を得ることができる。
【0118】
搬送間隔(紙間)を広げていない状態で波数制御、または位相制御と波数制御を組み合わせた制御を行っていれば、記録媒体の搬送間隔(紙間)を広げるだけで、光沢ムラを抑
制しつつ位相制御の実行比率を下げることができる。この場合は上述した搬送速度を変更する場合と異なり、搬送間隔(紙間)を広げる前後でヒータ電力制御テーブルの選択方法を必ずしも変更させる必要は無い。記録媒体の搬送速度を低下させるか、記録媒体の搬送間隔(紙間)を広げるかは、装置の特性に応じて選択すれば良く、本発明はどちらかの方法に限定されるものではない。
【0119】
また、上記の実施例2についての説明では、位相制御を実行する場合の位相制御実行指数PCC(NT)の値にはヒータ供給電力に応じた値を用いたが、単純に位相制御実行時は位相制御実行指数PCC(NT)の値を1(固定値)としても良い。この場合は、ヒータ供給電力(PWR)に対する高調波電流歪相対値(HLV(PWR))の対応テーブルを備える必要がなくなり、これに必要な記憶部の容量が削減できる。その反面、高調波歪指数RPCC(NT)が規定区間における単純な位相制御の実行比率(=テーブル1の使用比率)を表すパラメータとなり、実際の高調波電流歪レベルを予測する際の精度が上記した方法より低下する場合がある。このため、要求されるレベルに対し、高調波電流歪に比較的余裕がある装置に用いることが望ましい。
【符号の説明】
【0120】
100・・・画像形成装置、104・・・感光ドラム、105・・・一次帯電器、106・・・レーザビームスキャナ、107・・・現像器、109・・・定着加熱装置、113・・・制御部、118・・・交流電源、119・・・電源装置、120・・・画像処理コントローラ、309・・・ゼロクロス検知回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ装置、ファクシミリ装置、または、これらの複数の機能を備えた複合機などの画像形成装置に関し、特に、トナー像を記録媒体上に熱によって定着させる定着加熱装置を有し、そのヒータの電力制御を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真、静電記録、磁気記録等の作像プロセスを用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の様々な画像形成装置が存在する。これらの画像形成装置においては、記録用紙あるいはOHPシートなどの記録媒体に形成した未定着トナー像を永久像とするために、熱によりトナーを溶融して記録媒体に定着させる定着加熱装置が設けられている。この定着加熱装置として、例えばハロゲンヒータを熱源とする熱ローラ式の熱定着装置やセラミックヒータを熱源とするフィルム定着式の熱定着装置が用いられている。また、定着加熱装置としてはその他に、IH定着方式、フラッシュ加熱方式、オーブン加熱方式等の多様な方式および構成を有するものが実用化されている。
【0003】
中でも、熱容量の極めて小さな円筒状のフィルムを円筒の内側から加熱するフィルム定着方式の定着加熱装置は、エネルギー効率が高く昇温速度が速いため、電源オンから印字可能状態になるまでの時間が短く、プリント待機時の消費電力も大幅に抑えられる。
【0004】
ここで、一般に定着加熱装置のヒータはトライアック等のスイッチング素子を介して交流電源に接続されており、この交流電源により電力が供給される。例えば、セラミックヒータのオン/オフ制御は、交流電源の位相制御(例えば、特許文献1を参照)、波数制御(例えば、特許文献2を参照)、または位相制御と波数制御を組み合わせた制御(例えば、特許文献3を参照)により行われる。
【0005】
また、一般に、定着加熱装置には、サーミスタ感温素子などの温度検出素子が設けられている。この温度検出素子により定着加熱装置の温度が検出され、検出された温度情報をもとに、エンジンコントローラによってスイッチング素子のオン/オフが制御される。これにより、ヒータへの電力供給がオン/オフされ、定着加熱装置の温度が目標の温度に調整される。
【0006】
ここで、上記した位相制御は、交流電源からの入力電圧における各々の半波内の任意の位相角でヒータをオンすることでヒータに電力を供給する制御である。また、波数制御は、複数の半波からなる期間を一回の制御周期とし、ヒータのオン/オフを交流電源の半波単位で行う制御である。また、位相制御と波数制御とを組み合わせた制御は、複数の半波からなる期間を一回の制御周期とし、そのうちの一部の半波を波数制御し、残りを位相制御するものである。
【0007】
上記において、位相制御を選択する目的としては、照明機器のちらつき、所謂フリッカや、定着加熱装置の温度リップルを抑制することが挙げられる。ここでフリッカとは、交流電源の電圧の急激な変動により、同一の交流電源に接続されている周囲機器、例えば照明機器がちらついてしまう現象である。それに対し、位相制御においては半波ごとに電流が流れるため、電流の変化量および変化周期が小さく、フリッカの発生を抑制することができる。また、位相制御においては半波ごとに電力を制御できるため、定着加熱装置の温度制御の応答性が高く、定着加熱装置の温度リップルを低減することができる。
【0008】
一方、位相制御においては、交流電源を各々の半波内の任意の位相角でヒータをオンす
るため、ヒータをオンする際に急激な電流変動が生じるおそれがある。急激な電流変動が生じると、交流電源の基本周波数(例えば50Hzや60Hz)の逓倍周波数成分による高調波電流歪を多く含む電流波形となる。そして、この高調波電流歪により電子機器間の誤動作が発生し、または交流電源の電圧波形に歪が発生する虞がある。
【0009】
また、上記の波数制御を選択する目的としては、高調波電流歪の抑制が挙げられる。これは、波数制御においてはヒータのオン/オフ制御を必ず電源電圧が0V近傍(ゼロクロスポイント)で行うため急激な電流変動が少なく、電圧波形の半波の途中でヒータがオンする位相制御と比較し高調波電流歪が発生しづらいことによる。しかし、波数制御は、高調波電流歪の抑制には効果があるものの、半波毎の負荷電流の変動が大きいため、交流電源の電圧変動が大きくなり、フリッカが発生し易いという不都合がある。
【0010】
また、位相制御と波数制御を組み合わせた制御を選択する理由としては、位相制御のみを選択した場合と比較して高調波電流歪の抑制に有利であり、且つ、波数制御のみを選択した場合と比較してフリッカ抑制に有利であることが挙げられる。
【0011】
ここで、高調波電流歪の大きさは、使用するAC交流電源の電圧が高い方が、より大きくなる傾向がある。このことから、従来は、画像形成装置が使用される地域のAC交流電源の電圧に応じて、ヒータの制御を、位相制御または波数制御の何れかに固定することが一般的であった。例えば、100〜127VのAC交流電源電圧の地域向けにはフリッカに有利な位相制御を、220V〜240VのAC交流電源電圧の地域向けには高調波電流歪に有利な波数制御を採用することが考えられる。しかし、近年の画像形成装置の高速化による定着加熱装置のヒータ電力の増大に伴い、位相制御のみでは高調波電流歪を充分に抑制することが困難となり、また、波数制御のみではフリッカを充分に抑制することが困難となる場合があった。これに対し、位相制御と波数制御を組み合わせた制御は、高調波電流歪の抑制とフリッカの抑制の両方の効果を有する制御として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平09−106215号公報
【特許文献2】特開2000−268939号公報
【特許文献3】特開2003−123941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年の画像形成装置においては、フルカラー画像が形成されるようになり、また、プリント速度の高速化及び高画質化、ファーストプリントアウトタイム(プリント待機状態から最初の被記録媒体が排出されるまでの時間(FPOT))の短縮が要求されている。そのため、定着加熱装置のヒータ電力は増大する傾向にある。このヒータ電力の増大傾向は、換言すると、ヒータの抵抗値が減少する傾向にあることを意味するが、このヒータの抵抗値の減少により、ヒータに電力を供給する際の交流電源の電流が増大し、結果として高調波電流歪とフリッカが増大する傾向が顕著になっている。
【0014】
また、記録媒体が定着加熱装置を通過する間は、定着加熱装置は記録媒体に対してトナー画像を定着できる温度に制御されているところ、プリント速度の高速化に伴って、定着加熱装置の温度リップルが画像の光沢ムラとして現れ易くなってきている。このため、温度リップルをこれまで以上に抑制することが要求されている。
【0015】
上記のような状況においては、位相制御と波数制御を組み合わせたヒータ制御を用いただけでは、高調波電流歪、フリッカ、光沢ムラ(温度リップル)の全てを充分に抑制する
ことが困難になっている。本発明の目的は、上記の事情に鑑みなされたものであって、例えば画像形成装置に使用される定着加熱装置のヒータへの電力供給時の制御において、フリッカ、高調波電流歪及び、画像の光沢ムラの全てを充分に低減できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、
記録媒体上にトナー像を形成する画像形成手段と、
前記トナー像を加熱して前記記録媒体に定着させる定着加熱手段と、
交流電源からの電流の前記定着加熱手段の加熱源への通電及び遮断を切替えるスイッチ手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検知するゼロクロス検知手段と、
前記交流電源からの電流の通電及び遮断の切替えタイミングを格納した供給電力制御テーブルを複数種類記憶する記憶部と、
前記ゼロクロス検知手段によるゼロクロスのタイミング及び、前記記憶部が記憶する前記供給電力制御テーブルを用いて参照した前記切替えタイミングに基づいて、前記スイッチ手段に前記交流電源から前記定着加熱手段の加熱源への電流の通電及び遮断を切替えさせることで、前記加熱源への通電量を制御する制御手段と、
前記記録媒体の特定の領域である特定画像領域におけるトナー像のトナー濃度の程度を示す画像印字率を導出する画像印字率導出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記画像印字率導出手段によって導出された、前記定着加熱手段が定着する前記特定画像領域における前記画像印字率に応じて、前記切替えタイミングを参照する前記供給電力制御テーブルを選択することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、定着加熱装置のヒータ電力の制御において、電力の制御テーブルを複数記憶し、定着すべき画像に応じて最適なテーブルを選択して使用するので、フリッカ、高調波電流歪及び画像の光沢ムラを充分に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例における定着加熱装置の概略図である。
【図2】本発明の実施例における画像形成装置のヒータ駆動回路の概略図である。
【図3】本発明の実施例における位相制御によるヒータ電力制御の説明図である。
【図4】本発明の実施例における波数制御によるヒータ電力制御の説明図である。
【図5】位相制御と波数制御の組合せ制御によるヒータ電力制御の説明図である。
【図6】本発明の実施例における最小画像構成単位の説明図である。
【図7】本発明の実施例における定着画像の例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例1におけるヒータ電力制御テーブル切替えフローである。
【図9】実施例1のヒータ電力制御テーブル切替え制御の時系列説明図である。
【図10】実施例2における供給電力と高調波電流歪相対値の関係を示す図である。
【図11】実施例2における電力制御テーブル切替え制御のフローチャートである。
【図12】実施例2におけるテーブル3設定処理のフローチャートである。
【図13】実施例2における速度変更判定処理のフローチャートである。
【図14】実施例2におけるテーブル1選択処理のフローチャートである。
【図15】実施例2における速度ダウン処理のフローチャートである。
【図16】実施例2における速度復帰処理のフローチャートである。
【図17】実施例2におけるテーブル2設定処理のフローチャートである。
【図18】本発明の実施例における画像形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。
【0020】
<実施例1>
図18には、セラミックヒータを用いた定着加熱装置を有する画像形成装置の例を示す。但し、本発明は定着加熱装置を使用した装置全般に適用が可能であり、特に図18に示す画像形成装置に限定して適用されるものではない。
【0021】
まず、図18に示す画像形成装置において、装置の全体の動作について説明する。図18の画像形成装置100において、画像処理コントローラ120は、パーソナルコンピュータ等の外部装置から送信される画像情報及びプリント指示を受信して処理を行なう。制御手段である制御部113は画像処理コントローラ120に電気的に接続されており、画像処理コントローラ120からの指示に応じて画像形成装置100を構成する各部を制御する。画像処理コントローラ120が外部装置からプリント指示をうけると、以下の動作で画像形成処理が実行される。
【0022】
記録媒体101は、給送ローラ102で給送されて、中間転写体103に向けて搬送される。感光ドラム104は、図示しない駆動モータによって所定の速度で反時計回りに回転駆動され、その回転過程で一次帯電器105によって一様に帯電処理される。また、画像信号に対応して変調されたレーザ光がレーザビームスキャナ106から出力され、感光ドラム104上を選択的に走査露光することにより、感光ドラム104上に静電潜像が形成される。この静電潜像に対し、現像器107において現像体である粉体トナーが付着することで、静電潜像がトナー像(現像体像)として可視像化する。
【0023】
感光ドラム104上に形成されたトナー像は、感光ドラム104と接触して回転する中間転写体103上に一次転写される。その後、中間転写体103の回転と同期をとった適切なタイミングで搬送された記録媒体101が転写バイアスを印加された転写ローラ108によって中間転写体103に圧接されることで、中間転写体103上のトナー像が記録媒体101上に二次転写される。上記の感光ドラム104、一次帯電器105、レーザビームスキャナ106、現像器107はブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色に対してそれぞれ配置されており、4色分のトナー像が記録媒体101上に二次転写される。上記のように記録媒体101にトナー像を形成する構成は、本実施例において画像形成手段に相当する。
【0024】
定着加熱手段である定着加熱装置109は、加熱源であるセラミックヒータ110を内蔵したフィルムユニット111と、これに圧接される加圧ローラ112を備えている。このフィルムユニット111と加圧ローラ112とによって記録媒体101を加熱及び加圧することによりトナー像が記録媒体101に定着される。そして、トナー像が定着された記録媒体101は画像形成物として機外へ排出される。ここで制御部113は、記録媒体101の搬送路上の搬送センサ114、レジストセンサ115、定着前センサ116、定着排紙センサ117によって、記録媒体101の搬送状況を管理する。また、制御部113は、加熱定着装置109の温度制御プログラムおよび温度制御テーブルを記憶する記憶部を有している。
【0025】
交流電源118に接続された電源装置119は、加熱定着装置109への電力供給回路および交流から直流への整流回路を有しており、前述のプロセスで消費される電力は、電源装置119から画像形成装置100の各部へ供給される。
【0026】
次に、図1を用いて、本実施例に係る定着加熱装置について説明する。図1は、定着加
熱装置109の断面図である。ヒータホルダ200はセラミックヒータ110を保持するとともにフィルム201の内面をガイドする。このヒータホルダ200は、高い耐熱性・断熱性及び剛性を有する材質により形成されており、記録媒体101の搬送路を横断する方向(図面に垂直方向)を長手とする横長の部材である。
【0027】
セラミックヒータ110は、ヒータホルダ200の下面に長手方向に沿って形成された溝部に嵌入された上で、耐熱性接着剤で固定支持されており、転写材搬送路を横断する方向を長手とする横長の形状を有している。円筒状の耐熱性フィルム材201(以下、定着フィルム201と記す)は、セラミックヒータ110を取り付けたヒータホルダ200にルーズに外嵌されている。ステー202は図1の紙面に垂直な方向を長手とする高剛性の部材であり、ヒータホルダ200の内側に配設されている。
【0028】
一方、加圧ローラ112はセラミックヒータ110とともに定着フィルム201を挟んで圧接するように配置されている。矢印Nで示した範囲が加圧ローラ112とセラミックヒータ110が定着フィルム201を挟むことで形成される定着ニップ部である。加圧ローラ112は定着モータ(不図示)により矢印B方向に所定の周速度で回転駆動される。定着ニップ部Nにおいては、加圧ローラ112と定着フィルム201の外周との摩擦力により加圧ローラ112の回転力が定着フィルム201に直接的に作用する。そして、定着フィルム201がセラミックヒータ110の下面に圧接しつつ摺動することで、矢印C方向に回転駆動される。
【0029】
ヒータホルダ200は、前述のように定着フィルム201内面のガイド部材として機能しており、定着フィルム201の回転を容易にしている。また、定着フィルム201の内面とセラミックヒータ110の下面との摺動抵抗を低減するために、両者の間に耐熱性グリス等の潤滑剤を少量介在させることもできる。
【0030】
記録媒体101上への未定着画像の定着は以下の動作で実行される。加圧ローラ112の回転に従動して定着フィルム201が回転し、これと同時に、セラミックヒータ110の温度が、未定着画像を永久固着画像として熱圧定着可能な温度まで上昇される。そして、定着フィルム201と加圧ローラ112により形成される定着ニップ部Nに、定着すべき記録媒体101が導入されて挟持搬送される。定着ニップ部Nにおいて、セラミックヒータ110の熱が定着フィルム201を介して記録媒体101上の未定着画像に付与され、記録媒体101上の未定着画像が記録媒体101上に加熱定着される。
【0031】
定着ニップ部Nを通った記録媒体101は定着フィルム201及び加圧ローラ112から分離されて搬送される。なお、図1における矢印Aは記録媒体101の搬送方向を示す。また、定着加熱装置109はセラミックヒータ110の温度を検出するための感温素子であるサーミスタ203を有している。サーミスタ203は不図示のバネ等でセラミックヒータ110に常時感温可能な力で圧接されており、セラミックヒータ110の温度を検出する。
【0032】
図2は、本実施例に係る定着加熱装置のヒータの駆動回路を示している。交流電源118は定着加熱装置109に接続される商用電源であり、制御部113からのヒータ駆動信号に応じて電力をヒータ110へ供給し、ヒータ110を発熱させる。ヒータ110に供給される電力の制御は、トライアック301の通電/遮断の切換えにより行われる。また、抵抗302及び303はバイアス抵抗であり、フォトトライアックカプラ304は一次側と二次側の沿面距離を確保するために設けられている。フォトトライアックカプラ304の発光ダイオード305に通電することによりトライアック301がオンとなる。なお、本実施例におけるスイッチ手段は、トライアック301を含んで構成される。
【0033】
トランジスタ307は、抵抗308を介して制御部113から与えられるヒータ駆動信号に従って動作する。トランジスタ307のオン/オフに応じてフォトトライアックカプラ304もオン/オフする。なお、抵抗306は、フォトトライアックカプラ304の電流を制限するために設けられている。また、交流電源118からの入力電源電圧は、ゼロクロス検知手段であるゼロクロス検知回路309にも入力される。
【0034】
交流電源118からの交流電圧は、整流器310、311により半波整流される。この半波整流された交流電圧は、抵抗312、313、コンデンサ314、抵抗315を介して、トランジスタ316のベースに入力される。これによれば、Neutral側の電位がHot側の電位よりも高い場合にトランジスタ316はオンとなり、Neutral側の電位がHot側の電位よりも低くなるとトランジスタ316はオフとなる。
【0035】
フォトカプラ317は、一次側と二次側の沿面距離を確保するための素子であり、抵抗318、319はフォトカプラ317に流れる電流を制限するために設けられている。Neutral側の電位がHot側の電位より高くなるとトランジスタ316がオンするため、フォトカプラ317の発光ダイオード320は消灯し、フォトトランジスタ321はオフしてフォトカプラ317の出力電圧はHighとなる。一方、Neutral側の電位がHot側の電位より低くなるとトランジスタ316はオフするのでフォトカプラ317の発光ダイオード320が発光し、フォトトランジスタ321はオンしてフォトカプラ317の出力電圧はLowとなる。
【0036】
フォトカプラ317の出力は、抵抗322を介してゼロクロス信号として制御部113に入力される。このゼロクロス信号は、その信号周期が交流電源の周波数と等しいパルス信号であり、交流電源の電位極性に応じて信号レベルが変化する。制御部113はこのゼロクロス信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検知し、任意のタイミングでトライアック301をオン/オフさせ、このことでヒータ110への電力供給を制御する。サーミスタ203によって検出される温度は、抵抗323とサーミスタ203との分圧として検出され、制御部113にTH信号としてA/Dポートに入力される。
【0037】
以上の構成において、定着加熱装置109の温度制御は次のようになされる。即ち、制御部113がTH信号をモニターした際に、未定着画像を永久固着画像として熱圧定着することが可能な温度に達した場合には、ヒータ駆動信号によってヒータ110ヘの通電を停止する。又、熱圧定着が可能な温度を下回ると、ヒータ110に通電する。このことによって定着加熱装置109の温度を一定に維持することが可能になっている。
【0038】
次に、ヒータへの電力供給時における電力の制御方法である位相制御、波数制御及び、位相制御と波数制御を組み合わせた制御について各々説明する。図3は、位相制御によるヒータ電力制御の例について説明するための図である。図3において、ゼロクロス信号は交流電源電圧波形の正から負、負から正に切り替わるポイントで論理が切り替わる。このゼロクロス信号の立ち上がり及び立ち下がりのエッジからTa時間後にヒータ駆動信号がオンする。そうすると、ヒータ印加電圧を示すグラフにおける斜線で示した部分でヒータが通電し電力が供給される。
【0039】
なお、この例では、ヒータがオンした後、次のゼロクロスポイントでヒータへの通電がオフされる。このため、再びゼロクロス信号のエッジから時間Ta後にヒータ駆動信号をオンすることにより、次の半波でもヒータに同じ電力が供給される。また、時間Taと異なる時間Tb後にヒータ駆動信号をオンするとヒータへの通電時間が変わるため、ヒータへの供給電力を変化させることができる。このように、半波ごとにゼロクロス信号のエッジからヒータ駆動信号をオンするまでの時間を変化させることでヒータへの供給電力を制御することができる。
【0040】
位相制御においては、図3に示すように交流電源波形の半波の途中でヒータへの通電をオンするためヒータに流れる電流が急激に立ち上がり、高調波電流が流れる。この高調波電流は電流の立ち上がり量が大きいほど多くなるので、位相角90°すなわち供給電力50%の時に最大になる。また、この電流の立ち上がりエッジが半波毎に発生するため多くの高調波電流が流れ、高調波規制への対応が必須となる。そのため位相制御においてはフィルタ等の回路部品が必要になる場合が多い。一方、位相制御においては、各半波における最大値より小さい電流が半波毎に流れるため半波毎の電流の変化量は小さく、さらに変化周期も早いため、フリッカへの影響が小さいことが特徴である。
【0041】
図4には、波数制御によるヒータの電力制御の例を示す。波数制御では交流電源の半波単位でオン/オフ制御を行う。従って、ゼロクロス信号のエッジと同期させてヒータ駆動信号をオンする。そして、例えば八つの連続する半波を制御の一周期(一制御周期)とし、一制御周期の中でオンする半波の数を変えていくことで、ヒータへの供給電力を制御する。図4では、八の半波のうち四の半波をオンしているため、ヒータへの供給電力は50%となる。このように、波数制御では、連続してオンさせる波数を変化させることで、ヒータ供給電力を0%から100%までの間の4段階(25%刻み)の通電制御パターンを予め定めておき、この通電制御パターンに基づいてヒータの電力制御が行なわれる。
【0042】
波数制御ではヒータのオン/オフが常にゼロクロスで行われるため位相制御のような電流の急激な立ち上がりエッジがなく高調波電流が少ないという特徴を有する。一方、電流は半波単位で流れるため、位相制御に比べて半波毎の電流の変化量は大きく、変化周期も長い。このため波数制御ではフリッカへの影響が大きくなる。また、定着フィルム201の温度リップルが大きくなりやすく画像の光沢ムラが生じ易い。
【0043】
図5には、位相制御と波数制御を組み合わせたヒータの電力制御の例を示す。図5の例では、八つの連続する半波を一制御周期とし、そのうち二半波を波数制御、二半波を位相制御で制御し、ヒータ供給電力比dを33.3%とした場合について示す。ここでは、一
波目と二波目の半波の電力dutyが33.3%になるように制御部113がトランジスタ307にTcのタイミングでオン信号を送信して位相制御を行う。そして、残りの六の半波のうち二半波を波数制御でオンし、その他の四半波は全てオフとすることで、一制御周期において約33.3%の電力が供給される。
【0044】
このようにヒータ供給電力の0%から100%までの間を任意のレベルに分割した通電制御パターンをあらかじめ定めておき、制御部113はその通電制御パターンを元にヒータ通電制御を行う。この制御では位相制御と波数制御の両方を含むため、波数制御のみを行なう場合と比較してフリッカが抑制され、且つ、位相制御のみを行なう場合と比較して高調波電流歪が抑制されるという特徴がある。
【0045】
次に、画像の光沢ムラについて説明する。光沢ムラは定着フィルム201の温度リップルが大きいほど生じやすく、位相制御よりも波数制御でヒータ電力制御を行う場合に発生し易い。位相制御と波数制御を組み合わせたヒータ電力制御では、波数制御を行なう部分で温度リップルが大きくなり、光沢ムラが生じる場合がある。また、画像によって光沢ムラのレベルが異なり、画像領域が広く、トナー量が多い画像において、より顕著に現れる傾向がある。
【0046】
逆に、テキスト画像などトナー量が少ない画像では光沢ムラのレベルは低くなり、ほとんど問題がなくなる場合が多い。本発明では、この傾向を利用して画像に応じた最適なヒータ電力制御を選択することで、画像の光沢ムラを抑制し、且つ、高調波電流歪およびフリッカを低減することとした。
【0047】
以下に、本実施例におけるヒータへの通電量を制御するヒータ制御シーケンスの詳細を説明する。制御部113内にある不図示の記憶部には、ヒータ電力制御テーブル(本実施例において供給電力制御テーブルに相当する。)が複数種類記憶されている。詳細には、テーブル1:位相制御用テーブル、テーブル2:波数制御用テーブル、テーブル3:位相制御と波数制御を組み合わせた組合せ制御用テーブルの三種類のヒータ電力制御テーブルが記憶されている。各々のテーブルには、ヒータのオン/オフのタイミングに関するデータも格納されている。本実施例においては、記録媒体101の定着ニップ部Nの通過時において、光沢ムラの生じ易い画像部分が定着ニップ部Nを通過する間はテーブル1を、光沢ムラの生じづらい画像部分に対してはテーブル3を用いる。
【0048】
位相制御のみであるテーブル1を光沢ムラの生じ易い画像部分に対してのみ使用することで、高調波電流歪を抑制しつつ、光沢ムラをより効率的に抑制することができる。一方、光沢ムラの生じづらい画像部分に対して位相制御と波数制御を組み合わせる制御のためのテーブル3を用いることで、高調波電流歪とフリッカの両方を必要十分なレベルに抑制することができる。また、同様の理由で定着加熱装置の立ち上げ時、前回転時及び後回転時にはテーブル3を用いる。更に、複数枚のプリント時には、高調波電流歪を更に低減するため、記録媒体101の搬送間隔(以下では紙間と呼ぶ)部分に対してテーブル2を用いる。
【0049】
テーブル2による波数制御は、先述のようにフリッカが生じやすい制御である。しかしながら、紙間におけるヒータ電力は、記録媒体101が定着ニップ部Nを通過する時より少なくて良いため、紙間においてテーブル2を用いても極端なフリッカ悪化を招くことはない。加えて、紙間で波数制御による温度リップルが生じても画像に対する影響はない。以上のように、本発明においては状況に応じてヒータ制御を切替えることで、光沢ムラ、高調波電流歪、フリッカを全て充分に抑制することが可能になる。
【0050】
次に、本実施例において、光沢ムラの生じやすい画像を判別する方法の一例について述べる。本実施例における画像形成装置では、3×3ドットのドット集合を画像形成の最小画像構成単位 (1画素)として用い、この1画素毎の画像濃度を既知の方法で制御するこ
とで全体としての画像が形成される。
【0051】
ここで、例えば、記録媒体101上の単位面積Aに形成される画像について考える。上記単位面積Aの記録媒体の搬送方向長さをAL、これと直交する方向の幅をAWとする。本実施例では単位面積Aに形成される画像が、光沢ムラの生じやすい画像か否かを判別して、ヒータ電力制御のテーブルを切替えることとする。従って、単位面積Aの搬送方向長さALと幅AWは、上記判別に適した値に設定する必要がある。例えば記録媒体の搬送速度が200mm/sec、交流電源118の周波数50Hzの場合、本実施例では搬送方向長さALを8mm(解像度600dpiで63画素に相当)に設定する。
【0052】
これは交流電源周波数の二波分に当たる長さであり、波数制御で一波をオン、一波をオフした場合に生じる光沢ムラの一周期に相当する。一方、単位面積Aの幅AWは、単純に光沢ムラが生じた場合の目立ち易さを目安に決めれば良く、本実施例では長さALと同じ8mmに設定する。本実施例では、画像形成領域内で選択可能なすべての単位面積A(Aの最小構成単位は1画素とする)について、そこに形成される画像が、光沢ムラの生じやすい画像か否かを判別する。
【0053】
図6に画像形成領域内に含まれる単位面積Aの概略図を示す。図6は、記録媒体101の左先端部の拡大図であり、画像形成領域先端、画像形成領域左端、画像形成の最小単位(最小画像構成単位)である一画素、複数の単位面積AXYが示されている。単位面積A
11(図中太実線の正方形)が画像形成領域の先端左端に形成される単位面積Aであり、搬送方向に一画素ずつ移動した位置に、A21、A31、A41、・・・・と単位面積Aを選択できる。
【0054】
同様にこれと直交する方向に一画素ずつ移動した位置に、A12、A13、A14・・・・と単位面積Aを選択することができる。上記それぞれの単位面積Aに含まれる総画素数をPTAとし、このうち実際に画像が形成される(実際にトナーがあり濃度(あるいはトナー濃度、トナー濃度の程度)が0ではない)イメージ画素数をPIAとする(上述の
設定ではPTA=63×63=3969)。このイメージ画素数PIAのうち、そのトナ
ー量が規定のトナー量D(0%<D≦100%)以上(規定濃度以上であることに相当する。)である高濃度画素数をPIA(D)とする。上記規定のトナー量Dは、外部装置から送信された画像を画像処理コントローラ120で処理した画像情報における、該当画素の画像濃度を意味し、本例ではD=75%に設定する。
【0055】
本実施例では、以下の(1)式で示す総画素数PTAに対する高濃度画素数PIA(D)の比率(割合)RIを印字率(または画像印字率)として参照する。
RI=PIA(D)/PTA・・・・・・(1)
ある単位面積Aにおいて上記の印字率RIが閾値RILIM以上(所定の閾値以上)であれば、その単位面積Aは光沢ムラの生じやすい画像であると判断する。本例では閾値RILIMの値を0.7に設定している。この値は画像形成装置の特性に合わせ、光沢ムラが目立ち始める値を選択すればよい。
【0056】
そして、印字率RIが閾値RILIM以上である単位面積Aが定着ニップ部Nを通過する時にのみ、テーブル1(位相制御)を用いる。なお、本実施例では、より確実に光沢ムラを防止するため上記の画像判別方法を用いたが、画像判別の制御を簡略化するため、単位面積Aの面積をより大きくしてもよい。また、印字率RIを単純に総画素数PTAの平均画像濃度(単位面積Aにおける平均画像濃度)としてもよい。また、印字率RIを、単純に総画素数PTAに対するイメージ画素数PIAの比率(画像存在比率)とする等の方法を用いても良い。
【0057】
画像処理コントローラ120は、外部装置から送信される画像情報から、図6で説明した全ての単位面積Aについて(1)式の印字率RIを算出し、制御部113に報知する。そして、制御部113が、印字率RIに応じたヒータ電力制御テーブルの選択および切替えを行う。従って、画像処理コントローラ120は、本実施例において画像印字率導出手段に相当する。
【0058】
図7には、本実施例におけるヒータ電力制御テーブル切替えの様子の一例として、記録媒体101上に形成された画像が模式的に示されている。ここでは説明を簡略化するため、単純な画像を例として挙げている。
【0059】
この画像は4つの部分IG-1〜IG-4から構成されており、IG-1とIG-4は文字(文章)であり、IG-1とIG-4の領域内にある単位面積Aの中には印字率RIが閾値RILIM以上であるものは無い。一方、IG-2とIG-3は例えば写真画像であり、IG-2とIG-3の領域内にある単位面積Aの全てにおいて印字率RIが閾値RILIM以上であるとする。このような画像を記録媒体101に定着する場合、上述したIG-1〜
IG-4に含まれる単位面積Aの印字率RIを参照した結果、本例では搬送方向で記録媒
体101が図7に示された区間1〜5に分割される。なお、IG-1〜IG-4は本実施例において特定画像領域に相当する。
【0060】
区間1〜5の分割は、その区間に印字率RIが閾値RILIM以上である単位面積Aが
含まれるか否かで決定されている。そして、次のようなヒータ電力制御テーブルの切替えが実行される。記録媒体101の先端部である区間1には光沢ムラの生じやすい画像が存在しないため、この部分が定着ニップ部N通過する時にはテーブル3が使用される。次の区間2には、光沢ムラの生じやすい画像であるIG-2が存在するため、区間2が定着ニ
ップ部Nに到達するタイミングでヒータ電力制御テーブルがテーブル3からテーブル1に切替えられる。
【0061】
次の区間3には光沢ムラの生じやすい画像が存在しないため、区間3が定着ニップ部Nに到達するタイミングでヒータ電力制御テーブルがテーブル1からテーブル3に戻される。同様に区間4に対してはテーブル1、区間5に対してはテーブル3が使用される。このように、本実施例では記録媒体101が定着ニップ部Nを通過している間に、画像に応じてヒータ電力制御のためのテーブルの切替えをおこなう。
【0062】
次に上記動作についてフローチャートを用いて説明する。図8には、本実施例におけるにプリントジョブ実行時のヒータ電力制御テーブル切替えフローを示す。図1のヒータ電力制御テーブル切替えフローでは、テーブル1〜3のいずれかが選択されるかが、ヒータ電力制御の一制御周期毎に毎回判断される。
【0063】
図8でプリントジョブが開始されると、まずS100において、制御部113が定着加熱装置の立上げ、前回転を行う際に使用するヒータ電力制御テーブルとして、テーブル3が選択される。これは、テーブル3は、位相制御と波数制御を組み合わせた通電制御パターンのテーブルであり、温度リップルに対しては不利なものの、高調波電流歪抑制とフリッカ抑制の両方に対して有利であることによる。具体的には、四波(八半波)を一制御周期とする位相制御と波数制御を組み合わせた通電制御パターンとし、サーミスタ203が検知するヒータ110の温度により、定着加熱装置109の温度制御が行なわれる。そして、制御部113は一制御周期(四波)毎に必要な電力レベルに応じた通電制御パターンをテーブル3から選択する。
【0064】
次に、S101において、次回の一制御周期(四波)内に一枚目の記録媒体101が定着ニップ部Nに到達するか否かが判定される。ここで、次回の一制御周期(四波)内に1枚目の記録媒体101が定着ニップ部Nに到達すると肯定判定された場合には、画像の印字率RIを判別するステップであるS103へ進む。一方、一制御周期(四波)内に一枚目の記録媒体101が定着ニップ部Nに到達しないと否定判定された場合にはS102へ進む。S102においては、定着加熱装置が立上げ、前回転中か否かが判定される。S102において、定着加熱装置の立ち上げ、前回転中であると肯定判定された場合には、S100の処理の前に戻る。そして、S100〜S102までの処理が、一枚目の記録媒体が定着ニップ部Nに到達するまで繰り返される。
【0065】
S103においては、印字率RIが閾値RILIM以上となる画像が、次回一制御周期中に定着ニップ部Nを通過するか否かが判定される。ここで肯定判定された場合には、S104に進み、使用するヒータ電力制御テーブルは、光沢ムラが発生しにくいヒータ電力制御テーブルであるテーブル1へと切替えられる。従って、光沢ムラが発生しやすい画像に対しては、光沢ムラを抑制できるテーブル1(位相制御)の中から電力レベルに応じた通電制御パターンが選択される。その後、S104からS101の前へ戻り、現在定着ニップ部Nを通過中の記録媒体101が定着ニップ部Nを抜けるまで、印字率RIが閾値RILIM以上である画像が存在する区間はテーブル1(位相制御)から通電制御パターンが選択される制御が継続される。
【0066】
一方、S103において、次回の一制御周期において定着ニップ部Nに、印字率RIが閾値RILIM以上である画像が存在しないと否定判定された場合には、S105に進む
。S105においては、ヒータ電力制御のためのテーブルがテーブル1からテーブル3へ戻される。そして、S101の前に戻り、S101からのフローが継続される。
【0067】
その後、次回の一制御周期中に記録媒体101が定着ニップ部Nを抜けるタイミングになった場合には、S101からS102を経由してS106に進む。そして、S106においてはプリントが終了するか否か(現在定着ニップ部Nを通過中である記録媒体101がジョブの最終ページであるか)が判定される。
【0068】
S106においてプリント終了と肯定判定された場合には、S108に進み、ヒータ電力制御テーブルを後回転時に用いるテーブル3へ切替えた上でフロー終了とする。一方、S106でプリント終了でないと否定判定された場合、次回一制御周期で定着ニップ部Nにあるのは紙間部であると判断される。従って、その場合にはS107に進み、ヒータ電力制御テーブルを紙間用のテーブル2へ切替える。その後S101へ戻り、紙間中は次の記録媒体101が定着ニップ部Nに達するまで、テーブル2(波数制御)の中から電力レベルに応じた通電制御パターンが選択される。なお、本実施例においては、紙間部に対しテーブル2(波数制御)を用いることとしたが、フリッカを更に抑制したい場合には、テーブル2の代わりにテーブル3を用いても良い。
【0069】
次に、図9を用いて上記フローの一部を時系列で説明する。図9に、画像印字率に応じてヒータ電力制御のためのテーブルをテーブル3からテーブル1に切替える際のヒータ印加電圧の変化を示す。時間t2までの画像印字率RIは閾値RILIMよりも低くRI<RILIMが成立し、時間t2からの画像は画像印字率RIが閾値RILIM以上でありRI≧RILIMが成立するとする。このような画像印字率の変化に対し、本実施例のフローでは、時間t1でヒータ電力制御のためのテーブルの切替えが実行される。
【0070】
時間t1は高印字率画像部分が始まる時間t2よりtdだけ早いタイミングであり、時間t2においては既にヒータ電力制御テーブルが光沢ムラの抑制に有利なテーブル1(位相制御)に切替わっている。本実施例で用いる定着加熱装置109は熱容量が小さく熱応答性が良いので、高印字率画像部分が始まる時点でテーブル1に切替っていれば、高印字率画像部分の始めから光沢ムラのない良好な画像が得られる。
【0071】
以上のように本実施例においては、装置の高速化に伴い、熱応答性の高い定着加熱装置の温度リップル低減(光沢ムラ抑制)が要求される場合でも、高印字率の画像部分のみに位相制御を用いる。また、高印字率の画像以外の部分には波数制御または、位相制御と端数制御の組合せ制御を用いる。このことで、光沢ムラとフリッカの発生を抑制しつつ、同時に高調波電流歪を最少の状態に維持できる。
【0072】
なお、本実施例においては、記録部に保存してあるヒータ電力制御のためのテーブルが三種類である場合について説明したが、これは一例であって、2種類以上の複数のテーブルを記録部に保存してあれば応用が可能である。例えば、交流電源電圧が高い電圧(例えば220V〜240V)の場合は、フリッカ規格に対して比較的マージンがある場合が多い。従って、そのような場合にはテーブル3の位相制御と波数制御を組み合わせた制御を用いず、テーブル1及びテーブル2の二つのテーブルのみを使用しても良い。さらに、交流電源電圧が低い電圧(例えば100V〜127V)であるときは、高調波電流歪の規格に対して比較的マージンがある場合が多い。従って、そのような場合にはテーブル2の波数制御を用いず、テーブル1及びテーブル3の二つのテーブルのみを使用しても良い。
【0073】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2における画像形成装置の構成、ヒータ構成、位相制御、波数制御、位相制御と波数を組み合わせた制御、電力制御テーブル
などについては、実施例1で説明したものと同様のため、説明を省略する。実施例1では画像印字率RIに応じて電力制御テーブルの切替えを行ない、光沢ムラとフリッカを防止しつつ、高調波電流歪の抑制を実現した。しかしながら、閾値RILIMよりも画像印字率が高い画像ばかりが続いた場合、実施例1の電力制御テーブル切替えフローを続けると、非常に稀ではあるものの、高調波電流歪を要求されるレベル以下に抑制できなくなる可能性があった。実施例2はこのような事情に鑑みて、より確実に高調波電流歪とフリッカを抑制しつつ、光沢ムラの防止を実現可能とした例である。
【0074】
実施例2におけるヒータ電力制御テーブルの切替え制御の概略は以下のとおりである。画像印字率に応じたヒータ電力制御テーブルの切替え制御は、基本的には実施例1と同様であるが、実施例2においては、高調波電流歪を規定レベル以下に抑制できない虞がある場合には、これを回避するための処理が行われる。この処理のため、実施例2では以下に説明する電源波数カウントNWとテーブル選択波数カウントNT、位相制御実行指数PCC(NT)を用いて、ヒータ電力制御テーブルの切替えと記録媒体の搬送速度の変更を行う。
【0075】
電源波数カウントNWは画像形成装置が接続された交流電源の波数のカウント値であり、交流電源118の周波数と等しい周期及びタイミングでカウントアップされる。よって、50Hzの交流電源であれば、カウント開始から1秒後の値は50となり、2秒後の値は100となる。電源波数カウントNWは、画像形成装置の電源オン時にカウントが開始され、電源がオフされるまでカウントが継続される。
【0076】
次に、テーブル選択波数カウントNTは、本実施例のヒータ電力制御テーブル切替え制御における、ヒータ電力制御テーブルの制御フロー周期にあたるものである。テーブル選択波数カウントNTのカウントアップに伴って、使用するヒータ電力制御テーブルがテーブル1〜3の中から連続して選択されていく。テーブル選択波数カウントNTのカウント周期も交流電源118の周波数と等しいが、その値は電源波数カウントNWの値を元に、これよりわずかに先行した値に設定する。
【0077】
本実施例では、例えばテーブル選択波数カウントNT=nになった時にテーブル3が選択されたとすると、その後電源波数カウントNW=nになった時点で、この選択に従いテーブル3を用いたヒータ電力制御を実行するものとする。具体的な処理は以下の通りである。テーブル選択波数カウントNT=nにおいてテーブル3が選択されることと併せ、前述した定着加熱装置109の温度制御プログラムによりサーミスタ203の検出温度に応じたヒータ供給電力が決定される。
【0078】
そして、電源波数カウントNW=nになった時点で、テーブル3の中にある上記ヒータ供給電力に対応した波形パターンを用いてヒータ電力制御が実行される。ここで、上記温度制御プログラムがヒータ供給電力を決定するタイミングから、実際にそれがヒータ110へ供給されるまでのタイムラグをΔt、交流電源118の周波数におけるΔt相当の波数をΔnとする。このとき、本実施例におけるテーブル選択波数カウントNTは、電源波数カウントNWと上記波数Δnを用いて、NT=NW+Δnとなるように設定される。
【0079】
位相制御実行指数PCC(NT)は、テーブル選択波数カウントNTにおいて位相制御が選択された場合に、その一波におけるヒータ供給電力に応じて0≦PCC(NT)≦1の値となる指数であり、その他の制御が選択された場合は0に固定される。位相制御実行指数PCC(NT)は、各ヒータ電力制御方式における一制御周期単位(位相制御では一波単位、波数制御及び位相制御と波数を組み合わせた制御では四波単位)で設定される。また、ヒータへの電力供給をしない場合は一波単位で設定される。
【0080】
図10には、ヒータ供給電力(PWR)に対する高調波電流歪相対値(HLV(PWR))の関係を示す。前述したように、高調波電流は電流の立ち上がり量が大きいほど高調波電流歪は大きくなるので、位相角90°、すなわちヒータ101への供給電力50%の時に最大になる。図10では、このときの高調波電流歪を1として、供給電力が変化したときの高調波電流歪をこれに対する相対値として示している。
【0081】
本実施例では図10の関係に基づき位相制御実行指数PCC(NT)の値を決定する。すなわち、あるヒータ供給電力(PWR)に対する高調波電流歪相対値(HLV(PWR))を、そのヒータ供給電力を使用するテーブル選択波数カウントNTにおける位相制御実行指数PCC(NT)の値とする。本実施例では制御部113内にある不図示の記録部に、ヒータ供給電力(PWR)に対する高調波電流歪相対値(HLV(PWR))の対応テーブルを持たせておく。そして、これを参照してテーブル選択波数カウントNTにおける位相制御実行指数PCC(NT)の値が決定される。
【0082】
例えば、テーブル選択波数カウントNTにおけるヒータ供給電力(PWR)=50%のとき位相制御実行指数PCC(NT)=1.00、ヒータ供給電力(PWR)=30%及び70%では位相制御実行指数PCC(NT)=0.96となる。また、ヒータ供給電力(PWR)=10%及び90%では位相制御実行指数PCC(NT)=0.71となる。上記位相制御実行指数PCC(NT)を連続的にモニターすることで、プリント時の高調波電流歪レベルを予想することが可能である。
【0083】
本実施例では、規定の波数カウント区間(波数カウント数=X)において、位相制御実行指数PCC(NT)の平均値を求め、この値から高調波電流歪レベルを予想し、これに応じて記録媒体101の搬送速度を変更する。本例では、上記Xの値を例えば5分間相当の値(50Hzであれば15000、60Hzでは18000)に設定する。テーブル選択波数カウントNTにおける上記位相制御実行指数PCC(NT)の平均値を(2)式で示す高調波歪指数RPCC(NT)とする。
【数1】
【0084】
本実施例では、高調波歪指数RPCC(NT)が規定使用度合である閾値(LDとする)以上(規定使用度合以上)の値となったら、記録媒体101の搬送速度を通常速度の1/3に低下させる。そして通常速度の1/3の搬送速度においては、実施例1と異なり、画像印字率がその閾値RILIMよりも高い画像に対しても位相制御と波数制御を組み合わせた制御を用いる。画像印字率が高い画像に対して位相制御と波数制御を組み合わせた制御を実行した場合でも、搬送速度を低下させることによって、光沢ムラのピッチ間隔が短くなり目立たなくできるからである。このようにすることで、光沢ムラを抑制しつつ、規定区間における高調波電流歪の平均レベルを、低下させることが可能となる。
【0085】
ここで、上記の閾値LDは、規定区間での高調波電流歪を要求されるレベル以下にできる高調波歪指数の限界値に対し、記録媒体101の一枚分の画像長さ分以上の余裕を持たせた値に設定するのが良い。具体的には、高調波歪指数RPCC(NT)が閾値LDに到達した後、記録媒体一枚分の搬送方向画像長さ相当の波数分だけ位相制御を実行した場合でも、規定区間における高調波電流歪が要求されるレベル以下となるような値に閾値LDを設定するのが良い。これはプリント時において、定着ニップ部Nを記録媒体101が通過中に高調波歪指数RPCC(NT)が閾値LD以上の値となった時、その時点で搬送速度を変更することによって画像に影響(速度変更前後の光沢差等)が出るのを避けるためである。
【0086】
記録媒体101が定着ニップ部Nを抜けてから搬送速度の変更を実行しても、高調波電流歪を要求されるレベル以下に抑制可能とするため、上述のように閾値LDを設定するのが現実的である。上記を踏まえ、本実施例における閾値LDの値は0.55に設定する。
【0087】
本実施例では、上述のように搬送速度を低下させた状態では、高印字率画像に対しても位相制御と波数制御を組み合わせた制御を用いるので、高調波歪指数RPCC(NT)は時間の経過と共に減少する。そして、高調波歪指数RPCC(NT)が十分に低下したと判断された場合には、記録媒体101の搬送速度をプリント開始時の速度に復帰させ、画像印字率が閾値RILIMよりも高い画像に対して位相制御(テーブル1)の実行を許可する。
【0088】
ここで、高調波歪指数RPCC(NT)が十分に低下したと判断する閾値をLUとする。上記閾値LUは、搬送速度を低下させる際の判断に用いる閾値LDよりも十分小さい値に設定するのが好ましく、本例ではこの値は0.4に設定されている。これは、搬送速度の変速が短い周期で繰り返されることにより、長時間プリント時の生産性が更に低下するのを防止するためである。以上述べた搬送速度変更を繰り返し実行すれば、生産性の低下を最小限にすることができる。
【0089】
次に、本実施例におけるヒータ電力制御テーブルの切替え制御についての一例をフローチャートを用いて詳細に説明する。図11にプリントジョブ実行時における、本実施例のヒータ電力制御テーブル切替えフローを示す。図11は、テーブル選択波数カウントNTにおけるヒータ電力制御テーブルを、テーブル選択波数カウントNTのカウントアップに伴って順次設定する制御フローを示している。
【0090】
前述したように、この制御フローで設定されたヒータ電力制御テーブルを実際に使用するのは、電源波数カウントNWが、当該ヒータ電力制御テーブル設定時のテーブル選択波数カウントNTと等しい値になった時である。実施例2では、ここで設定したヒータ電力制御テーブルが、上述したタイミングで定着加熱装置109の温度制御に用いられる。
【0091】
プリントジョブが開始されると、まずS700において画像形成装置の電源オンの直後であるか否かが判定される。ここで、電源オンの直後でないと否定判定された場合は、S700から直接S702の処理に進む。一方、電源オンの直後であると肯定判定された場合は、S701で制御パラメータの初期化(テーブル選択波数カウントNTの初期化、SCR=0、速度フラグ=0(SCR、速度フラグについては後述))が行われる。ここで、テーブル選択波数カウントNTの初期化について説明する。図11のフローには記載されていないが、電源がオンされると、ヒータ110への電力供給が開始される前に電源波数カウントNWのカウントが開始される。そして、図11のフローとは関係なく、交流電源118の周波数と等しい周期で電源がオフされるまでカウントアップが継続される。
【0092】
S701におけるテーブル選択波数カウントNTの初期化とは、S701の時点における電源波数カウントNWを参照し、前述したΔn分だけ先行する値にテーブル選択波数カウントNTを設定する(NT=NW+Δn)処理である。また、上記の速度フラグとは、記録媒体101の搬送速度を示すフラグであり、通常の速度でプリント実行する場合の値は0、前述の説明のように速度を低下させた場合の値は1となる。また、SCRは記録媒体の搬送速度の変更要求の有無を示すフラグであり、記録媒体の搬送速度を低下または復帰させる条件が満たされると、SCR=1となり、速度変更が実施されるとSCR=0に戻る。
【0093】
その後S702において、制御部113は定着加熱装置109の立上げ、前回転を行う
際に使用するヒータ電力制御テーブルとして、位相制御と波数制御を組み合わせた制御であるテーブル3を選択する。
【0094】
図12には「テーブル3選択処理」のサブルーチンのフローチャートを示す。この処理においては、テーブル3の一制御周期四波分の位相制御実行指数PCC(NT)の値が設定される。「テーブル3選択処理」の処理がスタートすると、まずS800cにおいてテーブル3が選択される。本実施例でも、図9に示したようにテーブル3の一制御周期四波のうち、前半の二波は位相制御、後半の二波は波数制御とされているので、これに応じ、S801c以降で四波分のPCC(NT)の値を、NTのインクリメントに伴い一波分毎に設定する。
【0095】
このPCC(NT)値の設定回数を示す値をmとし、初期値m=3から最終値m=0まで、1回のPCC(n)値の設定毎にmがデクリメントされる。図12では前半の二波に対しては一波毎のヒータ供給電力に応じた前述の高調波電流歪相対値(HLV(PWR))が位相制御実行指数PCC(NT)の値として採用される。(S801c→S802c→S804c→S805c→S806c→S807c→S802c)また、後半の二波に対してはPCC(NT)の値が0に固定される(S802c→S803c→S805c→S806c→S807c→S802c)。以上が終了すると「テーブル3選択処理」から、図11におけるS703にリターンする。
【0096】
S703の速度変更判定処理では、前述の高調波歪指数RPCC(NT)を算出し、搬送速度の変更要否を判定する。図13に「速度変更判定処理」のフローチャートを示す。「速度変更判定処理」は、記録媒体101の搬送速度を変更する必要があるのかを判断する際に実行されるものであり、速度変更の要否に応じ、搬送速度変更要求フラグSCRの値を設定するまでの処理を行う。「速度変更判定処理」がスタートすると、S1000において、テーブル選択波数カウントNTが規定の波数カウント数Xに達したか否かが判定される。テーブル選択波数カウントNTが規定の波数カウント数Xに達しておらず否定判定された場合にはS1006へ進む。一方、テーブル選択波数カウントNTが規定の波数カウント数X以上の値であり肯定判定された場合には、S1001に進む。
【0097】
S1001においては、前述の(2)式で示された高調波歪指数RPCC(NT)が算出される。S1001で高調波歪指数RPCC(NT)が算出された後、S1002で速度フラグの値(現在の記録媒体搬送速度)が確認される。その際の速度フラグ値が0(通常速度)である場合は、S1003に進み、高調波歪指数RPCC(NT)が記録媒体101の搬送速度を通常速度の1/3に低下させる閾値LD以上であるかの判定が行われる
。一方、現在の速度フラグ値が1(記録媒体101の搬送速度が通常速度の1/3)であ
る場合には、S1004に進み、高調波歪指RPCC(NT)が記録媒体101の搬送速度を通常速度に復帰させる閾値LU以下であるか否かの判定が行われる。
【0098】
S1003またはS1004において、それぞれで設定された高調波歪指数RPCC(NT)と閾値の関係が満足しており肯定判定された場合には、S1005に進み、搬送速度変更要求フラグSCRの値を1に設定し、否定判定された場合にはS1006へ進む。S1006でNTが既に説明したタイミングでインクリメントされ、「速度変更判定処理」を抜けて図11のS704にリターンする。
【0099】
S704においては、搬送速度変更要求フラグSCRの値が1に設定されたか否かが判定される。ここでSCR=0であり否定判定された場合にはS708へ進み、SCR=1であり肯定判定された場合にはS705に進む。
【0100】
S705においては搬送速度の復帰(通常速度の1/3の速度から通常速度へ変更)の
実行予約がおこなわれる。具体的には、速度の復帰を実行する電源波数カウントNWを指定するため、S704におけるテーブル選択波数カウントNTの値をnuとして記憶部に記憶する処理が行われる。そして、画像形成装置は電源波数カウントNWの値が上記nuとなったら、通常速度の1/3の速度から通常速度への速度の変更を実行する。
【0101】
S704においてSCR=1と肯定判定された場合は、自動的に現在の搬送速度が通常速度の1/3であるものとして上記の処理が行われている。これは、定着加熱装置109の立上げ、前回転時において、高調波歪指数RPCC(NT)が記録媒体101の搬送速度を通常速度の1/3に低下させる閾値LD以上となることがないことに基づく処理であ
る。
【0102】
これは以下の理由によるものである。定着加熱装置の立上げ、前回転中はテーブル3を用いているので、一制御周期における位相制御実行指数PCC(NT)の平均値は最大で0.50にしかならない。従って、定着加熱装置の立ち上げ、前回転中の高調波歪指数RPCC(NT)もこの値0.50を超えることはなく、本実施例における閾値LD=0.55を超えることがない。よって、本実施例における定着加熱装置109の立ち上げ、前回転中には、通常速度から通常速度の1/3の速度への速度変更はあり得ない。但し、これはこれまでに説明した本実施例における閾値LDの値、定着加熱装置の立ち上げ、前回転中に用いるヒータ電力制御テーブルの種類、また、位相制御実行指数PCC(NT)、高調波歪指数RPCC(NT)の算出方法を用いた場合に成立するものである。これらの条件を異なる設定とする場合は、それに応じた制御フローを用いれば良く、本発明は図11の制御フローに限定されるものではない。
【0103】
以上のように、本実施例では制御を簡略化するため、S704においてSCR=1であり肯定判定された場合には、現在の速度の確認を省略し、S705で搬送速度の復帰の実行予約が行われる。S705で搬送速度の復帰予約が行われると、その後、S706で速度フラグの値が通常速度を示す0に変更され、S707で搬送速度変更要求フラグSCRの値が0へ戻された上でS708へ進む。
【0104】
S708においては、現在のテーブル選択波数カウントNTから始まる次の一制御周期中に、記録媒体が定着ニップ部Nを通過している時間が含まれるか(ここでは一枚目の記録媒体が定着ニップ部Nへ到達するか)が判定される。そして、記録媒体通過中の時間を含み肯定判定された場合はS710へ進む。一方、次の一制御周期中に記録媒体が定着ニップ部Nになく(ここでは一枚目の記録媒体が定着ニップ部Nへまだ到達しない)否定判定された場合にはS709へ進む。S709では定着加熱装置の立上げ、前回転中であるか否かが判定され、ここで肯定判定されると、S702からの処理フローが一枚目の記録媒体が定着ニップ部Nへ到達するタイミングまで繰り返される。
【0105】
S708で、次の一制御周期中に一枚目の記録媒体が定着ニップ部Nへ到達すると肯定判定された場合には、S710へ進み速度フラグの値が確認される。ここで、速度フラグの値が0(通常速度)であればS711に進み、さらにその一制御周期中に画像印字率が閾値RILIMよりも高い画像が到達するか否かが判断される。一方、S710において速度フラグの値が1(通常速度の1/3の速度)であれば、画像印字率の確認は行わずにS713に進み、前述した「テーブル3選択処理」が実行される。
【0106】
S711で画像印字率が閾値RILIMよりも高い画像が次の一制御周期中に存在すると肯定判定された場合はS712に進む。S712においては、通常の搬送速度で高印字率画像を定着する際に使用するヒータ電力制御テーブルとして、位相制御であるテーブル1を選択する処理が行われる。また、S711で画像印字率が閾値RILIMよりも高い画像が次の一制御周期中には無いと否定判定された場合には、S713に進み、前述した
「テーブル3選択処理」が実行される。
【0107】
次に、図14に「テーブル1選択処理」のフローチャートを示す。「テーブル1選択処理」の処理がスタートすると、S800aにおいてテーブル1が選択され、S801aにおいて位相制御実行指数PCC(NT)の値の設定が行われる。S801aの処理が終了すると図11のS714にリターンする。S800aではテーブル1が選択され、このテーブル内から必要なヒータ供給電力に対応する通電制御パターンが選択される。S801aでは、上記ヒータ供給電力に応じた前述の高調波電流歪相対値(HLV(PWR))が位相制御実行指数PCC(NT)の値として採用される。
【0108】
S712もしくはS713の処理がおこなわれた後に、S714において、前述した「速度変更判定処理」が実行される。そして、S715において、搬送速度変更要求フラグSCRの値が1となっているか否かが判定れる。搬送速度変更要求フラグSCR=0であり否定判定された場合にはS708に戻る。一方、S715において、搬送速度を変更する条件が満たされてSCR=1と肯定判定された場合には、まずS716で現在の搬送速度のフラグが1か否かが判定される。S716において、現在の搬送速度が通常速度(速度フラグ=0)であり否定判定された場合、S717で紙間において搬送速度を1/3に変更するための処理が実行される。
【0109】
図15には、図11のS717における「速度ダウン処理」のフローチャートを示す。「速度ダウン処理」では、現在定着ニップ部Nにある記録媒体が、定着ニップ部Nを通過してから、実際に記録媒体の搬送速度を低下させるための処理が行われる。まずS900aで、次の一制御周期中に記録媒体が定着ニップ部Nを抜けているかを判断する。その結果、次の一制御周期中に記録媒体がニップ部Nを通過して紙間になっていると否定判定された場合には、S905aで搬送速度を1/3にダウンするための実行予約が行われる。具体的には、速度ダウンを実行する電源波数カウントNWを指定するため、S905aにおけるテーブル選択波数カウントNTの値をndとして記憶部に記憶する処理を行う。そして、実施例2の画像形成装置100は電源波数カウントNWの値が上記ndとなったら、搬送速度を通常速度からその1/3の速度までダウンする速度変更を実行する。
【0110】
一方、S900aにおいて、次の一制御周期中にまだ記録媒体が定着ニップ部Nに存在すると肯定判定された場合は、S901aに進み、画像の印字比率が確認される。これまでと同様、画像印字率が閾値RILIM以上であり肯定判定された場合はテーブル1(S902a)が、否定判定された場合はテーブル3(S903a)を選択する処理が実行される。そして、S904aにおいて、既に説明したタイミングでNTがインクリメントされてS900aに戻る。そして、S905aで搬送速度を1/3にダウンするための実行予約が行われるまで上記フローが繰り返される。
【0111】
S905aで速速度ダウンの実行予約がおこなわれると、S906aで速度フラグ=1、S907aでSCR=0とされた後「速度ダウン処理」を抜けて図11のS719にリターンする。一方、S716において、現在の搬送速度が通常速度の1/3(速度フラグ=1)であると肯定判定された場合は、S718において、紙間で搬送速度を通常速度に復帰するための処理を実行する。
【0112】
次に、図16にS718の「速度復帰処理」のフローチャートを示す。「速度復帰処理」では、現在定着ニップ部Nにある記録媒体が、定着ニップ部Nを通過してから、記録媒体の搬送速度を通常速度に復帰させる処理を行う。まずS900bで、次の一制御周期中に記録媒体が定着ニップ部Nを抜けているかを判断する。ここで、記録媒体が定着ニップ部Nを通過して紙間になっており否定判定された場合には、S903bにおいて、通常速度への搬送速度復帰の実行予約が行われる。具体的には、速度復帰を実行する電源波数カ
ウントNWを指定するため、S903bにおけるテーブル選択波数カウントNTの値をnuとして記憶部に記憶する処理をおこなう。そして、実施例2の画像形成装置100は電源波数カウントNWの値が上記nuとなったら、搬送速度を通常速度の1/3から通常速度へ復帰させる速度復帰を実行する。
【0113】
S900bで次の一制御周期中にまだ記録媒体が定着ニップ部Nにあると肯定判定された場合は、S901bに進み、画像印字率に拘わらずテーブル3を選択する処理が実行される。そして、S902bでNTが既に説明したタイミングでインクリメントされた上でS900bに戻る。そして、S903bにおいて搬送速度復帰の実行予約が行われるまで上記フローが繰り返される。S903bで搬送速度復帰の実行予約が行われると、S904bにおいて速度フラグ=0、S905bにおいてSCR=0とされた後「速度復帰処理」を抜けて図11のS719へリターンする。
【0114】
S719でプリント終了のタイミングでないと否定判定されると、S720で紙間用のヒータ電力制御テーブルであるテーブル2(波数制御)を選択する処理が選択される。図17に「テーブル2選択処理」のフローチャートを示す。この処理では、テーブル2の一制御周期四波分のPCC(NT)の値を設定する。この処理がスタートすると、まずS800bでテーブル2が選択される。そして、S801b以降で四波分のPCC(NT)値を一波毎に0に設定してゆく。
【0115】
このPCC(NT)値設定回数を示す値をmとし、S801bにおいて初期値m=3として、1回のPCC(NT)値設定毎にmがデクリメントされる。そして、最終値m=0となるまでPCC(NT)の値を0に繰り返し設定する(S802b→S803b→S804b→S805b→S802b)。そして、S806bでNTが既に説明したタイミングでインクリメントされた後、「テーブル2選択処理」を抜けて、図11のS708にリターンする。そして、プリント終了のタイミングまで、以上述べたフローが繰り返される。S719においてプリントが終了したと肯定判断された場合には、S721へ進む。S721で、定着加熱装置の後回転を行う際に使用するヒータ電力制御テーブルとしてテーブル3を選択する処理が行われ、ヒータ電力制御テーブル切り替えフローは終了する。
【0116】
なお、実施例2における搬送速度の変更は、レーザビームスキャナ106、感光ドラム104、中間転写体103、転写ローラ108、加圧ローラ112、定着フィルム201、各部の搬送ローラ等の周速を目標速度へ変更するための既知の方法で実現できる。また例えば、九面のミラー面を持つポリゴンミラーを備えたレーザビームスキャナを用いる場合、ミラー面を二面飛ばしで使用すればポリゴンミラーの回転数を変更することなく記録媒体101の搬送速度を変更する方法も開示されている。このような方法を用いれば、ポリゴンミラーの回転数を変更する際に、変更後の規定回転数でポリゴンミラーの回転を安定させるための時間が不要である。このため、より迅速に搬送速度の変更を行うことが可能である。
【0117】
本実施例では以上説明した制御を実行することで、実施例1と同様に画質を低下させずに高調波電流歪及びフリッカの抑制が可能であり、これに加え、高印字率画像が長時間連続してプリントされる場合にもこの効果を維持することが可能となる。なお、上記説明では高印字率画像が長時間続いた場合、記録媒体の搬送速度を低下させることにより、高調波電流歪を継続的に要求レベル以下に維持する方法について述べた。しかしながら、搬送速度を変化させずに記録媒体の搬送間隔(紙間)を広げることでも同じ効果を得ることができる。
【0118】
搬送間隔(紙間)を広げていない状態で波数制御、または位相制御と波数制御を組み合わせた制御を行っていれば、記録媒体の搬送間隔(紙間)を広げるだけで、光沢ムラを抑
制しつつ位相制御の実行比率を下げることができる。この場合は上述した搬送速度を変更する場合と異なり、搬送間隔(紙間)を広げる前後でヒータ電力制御テーブルの選択方法を必ずしも変更させる必要は無い。記録媒体の搬送速度を低下させるか、記録媒体の搬送間隔(紙間)を広げるかは、装置の特性に応じて選択すれば良く、本発明はどちらかの方法に限定されるものではない。
【0119】
また、上記の実施例2についての説明では、位相制御を実行する場合の位相制御実行指数PCC(NT)の値にはヒータ供給電力に応じた値を用いたが、単純に位相制御実行時は位相制御実行指数PCC(NT)の値を1(固定値)としても良い。この場合は、ヒータ供給電力(PWR)に対する高調波電流歪相対値(HLV(PWR))の対応テーブルを備える必要がなくなり、これに必要な記憶部の容量が削減できる。その反面、高調波歪指数RPCC(NT)が規定区間における単純な位相制御の実行比率(=テーブル1の使用比率)を表すパラメータとなり、実際の高調波電流歪レベルを予測する際の精度が上記した方法より低下する場合がある。このため、要求されるレベルに対し、高調波電流歪に比較的余裕がある装置に用いることが望ましい。
【符号の説明】
【0120】
100・・・画像形成装置、104・・・感光ドラム、105・・・一次帯電器、106・・・レーザビームスキャナ、107・・・現像器、109・・・定着加熱装置、113・・・制御部、118・・・交流電源、119・・・電源装置、120・・・画像処理コントローラ、309・・・ゼロクロス検知回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にトナー像を形成する画像形成手段と、
前記トナー像を加熱して前記記録媒体に定着させる定着加熱手段と、
交流電源からの電流の前記定着加熱手段の加熱源への通電及び遮断を切替えるスイッチ手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検知するゼロクロス検知手段と、
前記交流電源からの電流の通電及び遮断の切替えタイミングを格納した供給電力制御テーブルを複数種類記憶する記憶部と、
前記ゼロクロス検知手段によるゼロクロスのタイミング及び、前記記憶部が記憶する前記供給電力制御テーブルを用いて参照した前記切替えタイミングに基づいて、前記スイッチ手段に前記交流電源から前記定着加熱手段の加熱源への電流の通電及び遮断を切替えさせることで、前記加熱源への通電量を制御する制御手段と、
前記記録媒体の特定の領域である特定画像領域におけるトナー像のトナー濃度の程度を示す画像印字率を導出する画像印字率導出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記画像印字率導出手段によって導出された、前記定着加熱手段が定着する前記特定画像領域における前記画像印字率に応じて、前記切替えタイミングを参照する前記供給電力制御テーブルを選択することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像印字率は、前記特定画像領域を構成する、前記トナー像の画像濃度を制御する最小単位の画像領域である最小画像構成単位のうち、前記トナー濃度が規定濃度以上である最小画像構成単位が占める割合または、前記特定画像領域における平均画像濃度であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記憶部が記憶する複数種類の前記供給電力制御テーブルは、
前記ゼロクロスから所定の位相角のタイミングにおいて前記交流電源からの電流を通電させる位相制御を実行するための位相制御用テーブルと、
前記交流電源からの電流の通電及び遮断を、前記ゼロクロスに同期させ前記交流電源の半波単位で行う波数制御を実行するための波数制御用テーブルと、
前記位相制御と波数制御の両方を組合せて実行するための組合せ制御用テーブルのうち、少なくとも2種類以上の供給電力制御テーブルであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記憶部は前記位相制御用テーブルと、前記波数制御用テーブルと、前記組合せ制御用テーブルの三種類のテーブルを記憶しており。
前記制御手段は、前記画像印字率が所定の閾値以上となる前記特定画像領域を含む領域が前記定着加熱手段によって定着される場合には、前記位相制御用テーブルを選択し、
それ以外の領域が前記定着加熱手段によって定着される場合には、前記波数制御用テーブルまたは、前記組合せ制御用テーブルを選択することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記画像印字率導出手段によって導出された、前記定着加熱手段が定着する前記特定画像領域における前記画像印字率および、前記供給電力制御テーブルのうちの特定のテーブルの使用度合に応じて、
前記供給電力制御テーブルを選択するとともに前記記録媒体の搬送速度または搬送間隔を変更することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記特定のテーブルの使用度合を検知する際には、
前記特定のテーブルの使用比率または、前記定着加熱手段の加熱源への供給電力のうち
少なくとも一方を参照することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記特定のテーブルは、前記ゼロクロスから所定の位相角のタイミングにおいて前記交流電源からの電流を通電させる位相制御を実行するための位相制御用テーブルであって、
前記使用度合が予め定めた規定使用度合以上になった場合には、前記記録媒体の搬送速度を低下させ、
前記記録媒体の搬送速度を低下させた状態において、前記画像印字率が前記所定の閾値以上である前記特定画像領域を含む領域を前記定着加熱手段が定着する際には、前記制御手段は、前記交流電源からの電流の通電及び遮断を前記ゼロクロスに同期させ前記交流電源の半波単位で行う波数制御と前記位相制御の両方を組合せて実行するための組合せ制御用テーブルを選択することを特徴とする請求項5または6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記特定のテーブルは、前記ゼロクロスから所定の位相角のタイミングにおいて前記交流電源からの電流を通電させる位相制御を実行するための位相制御用テーブルであって、
前記使用度合が予め定めた規定使用度合以上になった場合には、前記記録媒体の搬送間隔を延ばし、
前記記録媒体の搬送間隔を延ばした状態において、前記記録媒体どうしの間の部分が定着加熱手段を通過中は、前記制御手段は、前記交流電源からの電流の通電及び遮断を前記ゼロクロスに同期させ前記交流電源の半波単位で行う波数制御を実行するための波数制御用テーブルまたは、前記位相制御と波数制御の両方を組合せて実行するための組合せ制御用テーブルを選択することを特徴とする請求項5または6に記載の画像形成装置。
【請求項1】
記録媒体にトナー像を形成する画像形成手段と、
前記トナー像を加熱して前記記録媒体に定着させる定着加熱手段と、
交流電源からの電流の前記定着加熱手段の加熱源への通電及び遮断を切替えるスイッチ手段と、
前記交流電源のゼロクロスを検知するゼロクロス検知手段と、
前記交流電源からの電流の通電及び遮断の切替えタイミングを格納した供給電力制御テーブルを複数種類記憶する記憶部と、
前記ゼロクロス検知手段によるゼロクロスのタイミング及び、前記記憶部が記憶する前記供給電力制御テーブルを用いて参照した前記切替えタイミングに基づいて、前記スイッチ手段に前記交流電源から前記定着加熱手段の加熱源への電流の通電及び遮断を切替えさせることで、前記加熱源への通電量を制御する制御手段と、
前記記録媒体の特定の領域である特定画像領域におけるトナー像のトナー濃度の程度を示す画像印字率を導出する画像印字率導出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記画像印字率導出手段によって導出された、前記定着加熱手段が定着する前記特定画像領域における前記画像印字率に応じて、前記切替えタイミングを参照する前記供給電力制御テーブルを選択することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像印字率は、前記特定画像領域を構成する、前記トナー像の画像濃度を制御する最小単位の画像領域である最小画像構成単位のうち、前記トナー濃度が規定濃度以上である最小画像構成単位が占める割合または、前記特定画像領域における平均画像濃度であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記憶部が記憶する複数種類の前記供給電力制御テーブルは、
前記ゼロクロスから所定の位相角のタイミングにおいて前記交流電源からの電流を通電させる位相制御を実行するための位相制御用テーブルと、
前記交流電源からの電流の通電及び遮断を、前記ゼロクロスに同期させ前記交流電源の半波単位で行う波数制御を実行するための波数制御用テーブルと、
前記位相制御と波数制御の両方を組合せて実行するための組合せ制御用テーブルのうち、少なくとも2種類以上の供給電力制御テーブルであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記憶部は前記位相制御用テーブルと、前記波数制御用テーブルと、前記組合せ制御用テーブルの三種類のテーブルを記憶しており。
前記制御手段は、前記画像印字率が所定の閾値以上となる前記特定画像領域を含む領域が前記定着加熱手段によって定着される場合には、前記位相制御用テーブルを選択し、
それ以外の領域が前記定着加熱手段によって定着される場合には、前記波数制御用テーブルまたは、前記組合せ制御用テーブルを選択することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記画像印字率導出手段によって導出された、前記定着加熱手段が定着する前記特定画像領域における前記画像印字率および、前記供給電力制御テーブルのうちの特定のテーブルの使用度合に応じて、
前記供給電力制御テーブルを選択するとともに前記記録媒体の搬送速度または搬送間隔を変更することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記特定のテーブルの使用度合を検知する際には、
前記特定のテーブルの使用比率または、前記定着加熱手段の加熱源への供給電力のうち
少なくとも一方を参照することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記特定のテーブルは、前記ゼロクロスから所定の位相角のタイミングにおいて前記交流電源からの電流を通電させる位相制御を実行するための位相制御用テーブルであって、
前記使用度合が予め定めた規定使用度合以上になった場合には、前記記録媒体の搬送速度を低下させ、
前記記録媒体の搬送速度を低下させた状態において、前記画像印字率が前記所定の閾値以上である前記特定画像領域を含む領域を前記定着加熱手段が定着する際には、前記制御手段は、前記交流電源からの電流の通電及び遮断を前記ゼロクロスに同期させ前記交流電源の半波単位で行う波数制御と前記位相制御の両方を組合せて実行するための組合せ制御用テーブルを選択することを特徴とする請求項5または6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記特定のテーブルは、前記ゼロクロスから所定の位相角のタイミングにおいて前記交流電源からの電流を通電させる位相制御を実行するための位相制御用テーブルであって、
前記使用度合が予め定めた規定使用度合以上になった場合には、前記記録媒体の搬送間隔を延ばし、
前記記録媒体の搬送間隔を延ばした状態において、前記記録媒体どうしの間の部分が定着加熱手段を通過中は、前記制御手段は、前記交流電源からの電流の通電及び遮断を前記ゼロクロスに同期させ前記交流電源の半波単位で行う波数制御を実行するための波数制御用テーブルまたは、前記位相制御と波数制御の両方を組合せて実行するための組合せ制御用テーブルを選択することを特徴とする請求項5または6に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−37084(P2013−37084A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171328(P2011−171328)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]