説明

画像形成装置

【課題】画像形成時において除電電圧の印加に伴う転写電流への影響を低減し、小紙間制御時においても適正な転写電流を供給できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】除電電源8は、除電電源8に接続した除電手段9へ印加する電圧の基準となる除電電源基準点D3を有し、転写電源7は、転写電源7に接続する転写手段5へ印加する電圧の基準となる転写電源基準点A3を有し、転写電流検出部7cは、転写電源基準点A3に接続されており、除電電源基準点D3が転写電流検出部7cを介さずに直接に転写電源基準点A3に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成したトナー像を記録材上に転写する転写手段と、像担持体に静電吸着した記録材を像担持体から分離するための分離手段と、を有する転写方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のレーザビームプリンタ(LBP)や複写機等の画像形成装置は、画像情報を基に像担持体の表面にトナー像を形成担持し、その像を紙などの記録材に転写、定着することで画像形成物(コピー、プリント)として出力する。
【0003】
中でも、転写手段への定電圧印加によって画像形成を行うような画像形成装置では、画像転写に必要な電流値を転写手段へ印加する際に、転写手段に生じる電圧値を基に定めることがある。
【0004】
その手段は様々あるが、一つとして特許文献1中に示されている転写電圧接定方式がある。
【0005】
この方式は、非画像領域又は記録紙間において、転写手段としての転写ローラに印加する転写電流値が予め設定した値となるように、転写電源を制御するものである。この方式は、転写ローラの周囲環境変化等に伴う特性変化やその他の要因による変化が生じても、トナー像を転写するために適した電流を供給することができる。
【0006】
また、これらの制御に加えて、記録材を像担持体或いは中間転写体としての転写ベルト(転写ローラ)から分離するために、例えば除電針のような除電手段を設けている場合がある。特許文献2に示すように、記録材の搬送方向に対して下流側にコロナ放電器を用いた除電手段を配置し、転写部から排出された直後の記録材に、コロナ放電で発生させた荷電粒子を照射する画像形成装置も、その一つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−95581号公報
【特許文献2】特開2002−372874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示されるように転写部と除電部を備えた構成において、上記の転写電圧接定方式を適応できない場合がある。
【0009】
つまり、特許文献1に示された構成では、除電手段と転写手段が近接した配置にする必要がある。ここで、除電手段と転写手段にかける電圧は逆電位であることから、電位差はより大きなものとなる。そのため、除電手段で発生した荷電粒子の一部が転写手段へ流れ込むことで漏洩電流が発生し、本来転写手段で必要とする電流が得られなくなるため、印加する最適な電圧を印加することができない。
【0010】
図1は、電子写真方式の画像形成装置の全体構成図であり、図2は、従来構成における転写電源と除電電源の接続形態略図である。
【0011】
本例にて、像担持体としての電子写真感光体1は、表面に感光体層を設けた回転ドラム型(以下、「感光ドラム」という。)とされる。感光ドラム1の回りには、帯電装置2、転写手段としてローラ状の接触転写部材(以下、「転写ローラ」という。)5、除電手段として除電針9を備えており、更に、転写ローラ5と除電針9へ電圧を供給する高圧回路6が配置されている。そして、記録材としての記録紙Pが、感光ドラム1と転写ローラ5によって矢印の方向に挟持搬送される。
【0012】
図1に示すように、現状は転写電源7と除電電源8はそれぞれ独立して配置されている。この構成において、転写電源7、除電電源8に流れる電流の流れを、図2を用いて説明する。
【0013】
電流の流れは、画像領域(印字動作時)と非画像領域(紙間或いは前回転)で異なる。印字動作時の転写電流は、転写正電源から転写ローラ5を示す抵抗118を通り、接地部、電流検出抵抗115、転写負電源基準点A1、転写負抵抗108、転写正電源基準点B1を経て、転写正電源へ戻る経路1がある。更に、転写電流には、転写正電源から挟持搬送されている記録紙Pを導電媒体として、搬送ガイド等を通り接地部へ流れる経路2がある。また、記録紙Pを導電媒体とした経路は除電電源8、転写ローラ5と除電針9間にも存在する。一つは、除電針9から記録紙Pを通り接地部、電流検出抵抗115、転写負電源基準点A1、転写負抵抗108、転写正電源基準点B1を経て、転写正電源へ戻る経路3である。更に、転写ローラ5から記録紙Pを媒体に除電電源8、除電電源基準点D1、転写負電源基準点A1、転写負抵抗108、転写正電源基準点B1を経て転写正電源へ戻る経路4である。
【0014】
次に、紙間における電流の流れである。転写電圧と除電電圧を同時に印加した場合、先に示した通り転写ローラ5と除電針9間には漏洩電流が発生することから、転写電流は転写正電源から転写ローラ5を示す抵抗118を通り、接地部、転写電流検出抵抗115、転写負電源基準点A1、転写負抵抗108、転写正電源基準点B1を経て、転写正電源へ戻る経路5と、転写正電源から除電針9への漏洩電流を示す疑似抵抗117を介し、除電抵抗112、除電電源基準点D1と接続した接地部、再度接地部より電流検出抵抗115、転写負電源基準点A1、転写負抵抗108、転写正電源基準点B1を経て、転写正電源へ戻る経路6の2種存在する。
【0015】
経路6は転写電流検出部、即ち、電流検出抵抗115を通っているため、転写回路に流れる電流の値は、転写ローラ5と除電針9間に発生した漏洩電流が加算されてしまう。また、漏洩電流が転写負抵抗108を通ることによる電圧降下も影響する。したがって、転写電圧接定方式が正しく適用できない。
【0016】
転写電圧接定方式の実施は時間を要する。その時間は、記録紙間隔と所定の周速度(プロセススピード)で決定される紙間時間よりも長くなることがある。この場合は、紙間を伸ばして実施するなどの方策をとることがあるが、単位時間あたりの印字量、即ちスループットを低下させなくてはならない。
【0017】
ここで、特許文献1に示されたように、電流検知を行うタイミングで除電電圧を下げ、漏洩電流の影響を小さくする方法も考えられる。しかしこの場合、近年の画像形成装置の高速化に伴い、記録紙間を詰めて生産力を向上させるという「小紙間制御」を実施すると、次のような問題がある。つまり、転写電圧接定方式は転写部位が非画像領域であり、且つ除電手段である除電針に印加される電圧レベルが低いタイミングにおいて実施するという制約がある。そのため、小紙間制御での記録紙分離性を向上させるための除電電圧を紙間で印加し続けなくてはならなくなり、漏洩電流増大の懸念から適用できない。
【0018】
本発明は、画像形成時において除電電圧の印加に伴う転写電流への影響を低減し、小紙間制御時においても適正な転写電流を供給できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、
像担持体に形成されたトナー像を記録材に転写する転写手段と、
前記記録材の移動方向に対して前記転写手段の下流に配置され、前記像担持体に静電吸着した前記記録材を除電し、分離するための除電手段と、
前記転写手段へ電圧を供給する転写電源と、
前記除電手段へ電圧を供給する除電電源と、
前記転写手段に流れる電流値を検出する転写電流検出部と、
前記転写電流検出部が検出した電流値に基づき、前記転写電源の電圧を制御する制御部と、
を有する画像形成装置において、
前記除電電源は、前記除電電源に接続した前記除電手段へ印加する電圧の基準となる除電電源基準点を有し、前記転写電源は、前記転写電源に接続する前記転写手段へ印加する電圧の基準となる転写電源基準点を有し、
前記転写電流検出部は、前記転写電源基準点に接続されており、
前記除電電源基準点が前記転写電流検出部を介さずに直接に前記転写電源基準点に接続されていることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、転写手段(例えば転写ローラ)と除電手段(例えば除電針)の間で漏洩電流が発生した場合においても、転写手段に与えるべき転写電流値を正確に検出することができることから、漏洩電流の発生の有無によらず、適切に転写電圧を設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成図である。
【図2】従来構成における転写電源と除電電源の接続形態を説明する概略図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の動作工程を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施例における転写電源と除電電源の接続形態概略図である。
【図5】転写電源回路図である。
【図6】除電電源回路図である。
【図7】長紙間搬送制御における転写電源及び除電電源の出力タイムチャートである。
【図8】小紙間搬送制御における転写電源及び除電電源の出力タイムチャートである。
【図9】本発明の第2の実施例における転写電源と除電電源の接続形態概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0023】
実施例1
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施例の全体構成を示す。本実施例にて画像形成装置は、電子写真プロセスを応用し、接触転写方式、ATVC方式、除電針による記録材の除電方式を用いている。
【0024】
(1)画像形成プロセス
図1を参照すると、本実施例にて画像形成装置は、上述したように、像担持体として表面に感光体層を設けた回転ドラム型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム1を備えている。感光ドラム1の周りには、帯電手段としてローラ状の帯電装置、即ち、帯電ローラ2と、現像手段として現像スリーブ4aを備えた現像装置4と、転写手段としてローラ状の接触転写部材、即ち、転写ローラ5と、除電手段として除電針9と、を備えている。更に、感光ドラム1の周りには、感光ドラム1のクリーニング手段としてのクリーニング装置12が配置されている。
【0025】
図1を参照して画像形成プロセスを説明する。感光ドラム1は、矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動され、以下の作像プロセス(a)〜(g)が適用される。
【0026】
(a)帯電:
回転駆動される感光ドラム1は、その表面が帯電装置(帯電ローラ)2によって所定の極性・電位に一様に帯電処理される。
【0027】
(b)露光:
次いで、その帯電処理面に画像情報書き込み手段として、不図示の画像露光手段による画像露光3がなされることで露光明部の帯電電位が減衰し、感光ドラム1の表面に露光画像情報に応じた静電潜像が形成される。画像露光手段は、画像変調されたレーザビームの走査露光装置、原稿画像の投影露光装置等とされる。
【0028】
(c)現像:
感光ドラム1の静電潜像が現像装置4の現像スリーブ4aにより、トナー像(顕画化像)として順次に可視画像化される。
【0029】
(d)転写:
本実施例における転写手段は、ローラ状の接触転写部材、即ち、転写ローラ5を用いた接触方式の転写手段である。トナー像は、転写部位T(転写ニップ部、感光ドラム1と転写ローラ5両者の圧接ニップ部)において転写ローラ5により記録材としての記録紙Pに転写される。
【0030】
転写ローラ5は、金属製の芯金5aと、該芯金周りにローラ状に成形した導電性の弾性層を有したものである。転写ローラ5は、感光ドラム1に弾性層の弾性に抗して所定の押圧力をもって圧接させて転写部位Tを形成させてあり、感光ドラム1の回転に順方向に、感光ドラム1の回転周速度と同じ周速度で回転する。
【0031】
記録紙Pは、不図示の給紙手段から給紙され、転写部位Tの手前側に配設した不図示のレジストローラ・転写ガイドを通って、転写部位Tに所定の制御タイミングにて給送される。レジストローラは、感光ドラム1の表面に形成されたトナー像の先端部が転写部位Tに到達したとき、記録紙Pの先端部も同時刻で転写部位Tに到達するように、記録紙Pを転写部位Tに給送させる。
【0032】
転写部位Tに給送された記録紙Pは、その表面が感光ドラム1に密着して転写部位Tを挟持搬送されていく。また、転写部位Tに記録紙Pの先端部が到達してから後端部が転写部位Tを抜け出るまでの間、転写ローラ5には芯金5aを介して、高圧電源6内の転写電源(転写バイアス印加手段)7から、所定の転写電圧が印加される。転写電圧は、トナー像の帯電極性と逆極性の電位とされる。記録紙Pが転写部位Tを挟持搬送されていく過程において、転写ローラ5によって形成される転写電界の作用及び転写部位Tにおける押圧力にて、感光ドラム1側のトナー像が記録紙P側に順次に転写されていく。
【0033】
本実施例では、特許文献1と同様の転写電圧設定を行う。具体的には、非画像領域又は記録紙間において、転写手段としての転写ローラに印加する転写電流値が予め設定した値となるように、転写電源を制御する方式である。以下、この方式をATVC方式として説明する。
【0034】
(e)分離:
転写部位Tを通った記録紙Pは、感光ドラム1の面に静電吸着している。そこで、転写部位Tの記録紙排出側に、即ち、記録紙Pの移動方向に対し転写ローラ5の下流に配置され、且つ、転写ローラ5に隣接させて記録材除電手段として除電針9を配設している。この除電針9によって転写部材位Tを通って感光ドラム1の面に静電吸着している記録紙Pの除電を行うことで、感光ドラム1から記録紙Pの分離を促進させている。
【0035】
除電針9の頂部は転写部位Tからやや下方に位置し、除電針9には所定の除電電圧(転写ローラ5に対する転写電圧と逆極性の電位)が印加される。除電電圧は高圧電源6内の除電電源(除電バイアス印加手段)8から供給される。
【0036】
(f)定着:
転写部位Tを出て、感光ドラム1の面から分離された記録紙Pは、搬送ガイド10に案内されて定着装置11に導入され、転写を受けたトナー像が永久固着画像として記録紙面に定着処理され、画像形成物(コピー、プリント)として排紙される。
【0037】
(g)クリーニング:
記録紙Pが分離された後の感光ドラム1表面は、クリーニング装置12によって残留トナーや紙粉等の付着物の除去を受けて清掃され、繰り返して画像形成に供される。
【0038】
画像形成方法として、例えば、帯電した感光体表面に画像情報のバックグラウンド部に対して露光し(バックグラウンド露光方式)、バックグラウンド部以外の部分を現像する正規現像方式がある。一方、逆に画像情報部に対して露光し(イメージ露光方式)、非露光部を現像する反転現像方式があり、それぞれの特徴を生かして用いられている。
【0039】
本実施例の画像形成装置において、像担持体である感光ドラム1の1次帯電装置2による帯電処理の極性は負である。そして、感光ドラム1の表面に形成させた静電潜像の現像装置4によるトナー現像は、感光ドラム1の帯電処理極性と同極性の負極性のトナー(ネガトナー)を用いた反転現像方式である。現像装置4に、回転自在に取り付けられた現像スリーブ4a上にトナーが薄層コートされており、現像スリーブ4aには不図示の外部電源(現像電圧印加電源)より所定の現像電圧が加えられる。これにより、現像スリーブ4a上のトナーが静電潜像に対して感光ドラム1側に選択的に転移して静電潜像がトナーで反転現像される。転写電圧は正電位、除電電圧は負電位である。転写電源7と除電電源8に関しては、後に説明する。
【0040】
(2)プリンタ動作工程
図3は、本実施例の画像形成装置、即ち、プリンタの動作図である。以下のA〜Gに、プリンタの動作工程を示す。
【0041】
A.前多回転行程:プリンタの電源投入後の所定時間、各アクチュエータを駆動させて、感光ドラム1を回転駆動させるとともに、所用のプロセス機器に準備動作をさせるための期間(プリンタウォームアップ期間)である。定着装置11はこの期間に所定の温度への立ち上げがなされる。
【0042】
B.レディ状態(スタンバイ制御):定着装置11が所定温度に立ち上がり、所定の前多回転行程が終了すると、プリントリクエストがなければ各アクチュエータの駆動が停止され、プリンタはプリントリクエストがあるまで待機するレディ状態となる。このレディ状態において、定着装置11はスタンバイ制御に入り、所定の待機温度に維持される。
【0043】
C.前回転行程:レディ状態からプリントリクエストがあると、各アクチュエータを再起動させて感光ドラム1を回転駆動させるとともに、プリント開始までの間、所用のプロセス機器にプリント前動作を実行させる期間である。この前回転行程において、定着装置11は定着可能な所定温度へ加熱される。
【0044】
D.プリント工程:前回転工程が終了すると、引き続き各アクチュエータが駆動され、一枚目のプリント動作が実行される。連続プリントモードの場合は、プリント動作が繰り返されて所定の設定枚数n分のプリント工程が順次行われる。
【0045】
E.紙間工程:連続プリントモードにおいて、例えば一枚目の記録紙P1の後端が転写部位Tを通過した後、次の記録紙P2の先端が転写部位Tに到達するまでの転写部における非通紙期間であり、プリント枚数に応じてP3、P4と続く。
【0046】
F.後回転工程:プリント動作工程が終了した後、しばらくの間は各アクチュエータの駆動を継続し、感光ドラム1のクリーニングを行う等、レディ状態へ移行するための動作を実行する期間である。
【0047】
G.レディ状態(スタンバイ制御):所定の後回転行程が終了すると、各アクチュエータの駆動が停止され、プリンタは次のプリントリクエストがあるまで待機するレディ状態となる。このとき、定着装置11はスタンバイ制御に入り、所定の待機温度に維持される。
【0048】
上記において、前多回転行程直後にプリントリクエストがある場合には、引き続き前回転工程へ移行し、そのままプリントを行う。
【0049】
(3)転写回路/除電回路
転写ローラ5に印加する転写電圧を生成する転写電源回路(転写回路)、及び除電針9に印加する除電電圧を生成する除電電源回路(除電回路)の構成を以下の1、2に説明する。図4は、本実施例における転写電源7と除電電源8の接続形態を示すものである。詳しくは後述するが、図4に示すように、本実施例にて、転写電源7は、正電圧を発生させる転写正電源7aと、負電圧を発生させる転写負電源7bと、を有している。また、転写正電源7aと転写負電源7bが転写手段(転写ローラ)5に対して、転写ローラ5、転写正電源7a、転写負電源7bの順に直列に接続されている。更に、転写負電源7bと転写正電源7aとの接続点電圧の基準となる転写負電源基準点A3が、転写電源7を流れる電流を検出する電流検出部7cと接続されている。
【0050】
1:転写回路
図5は、転写電源回路図である。転写電源7は、本実施例では、上述のように、転写正電源7aの転写正回路と、転写負電源7bの転写負回路で構成されており、出力端子205から転写電圧が出力される。出力端子205は転写ローラ5に接続されており、転写ローラ5に高圧バイアスを印加できる構成になっている。
【0051】
転写回路の構成を以下に説明する。
【0052】
回路は、制御部を構成するCPU13から出力される制御信号:CLK1/CLK2、CNT1/CNT2により制御され、所望のタイミングと所望のレベルで転写電圧を出力することができる。また、出力端子205から流れる転写電流のレベルに応じたアナログ信号:SNSが転写回路7から出力され、CPU13のアナログ/デジタル端子に入力されている。即ち、CPU13によって転写電流が検出できる構成となっている。
【0053】
昇圧トランス201の1次側巻線は後述するトランジスタ211によって調整された電圧が印加されている。CPU13から出力されるクロック:CLK1が出力されると、FET210のスイッチング動作により昇圧トランス201が駆動し、2次側巻線に高圧交流電圧が発生する。発生した高圧交流電圧は、ダイオード202とコンデンサ204及び抵抗219によって整流され、出力端子205には正極の直流電圧(転写正電圧)が発生する。出力端子205の電圧は抵抗203、217、218によって分圧され、オペアンプ214の負極入力に接続されている。これを、転写正回路(転写正電源)7aとする。
【0054】
また、CPU13から出力される制御信号:CLK2、CNT2により制御される回路の構成、動作は、上記と同様の動作を行うが、ダイオード202に対してダイオード202´を逆転させているため、負極の直流電圧(転写負電圧)が発生する。これを、転写負回路(転写負電源)7bとする。
【0055】
上述のように、転写正電源(転写正回路)7aと転写負電源(転写負回路)7bは、同様の構成及び動作をなすので、以下に、転写正電源7aの転写正回路を代表として説明する。
【0056】
CNT1信号はパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)されたパルス信号であり、抵抗216、コンデンサ215で構成されたローパスフィルタによって直流変換され、オペアンプ214の正極入力に入力される。オペアンプ214では、出力端子205の電圧レベルとCNT1信号のDUTY比によって設定される目標値との比較を行う。出力端子205の電圧レベルが目標値よりも低い場合は、オペアンプ214の出力端子電圧が上昇し、トランジスタ212のベース電流が大きくなることで、昇圧トランス201に印加される電圧が高くなる。これにより、出力端子205の電圧が上昇する。出力端子205の電圧レベルが目標値よりも高い場合は、オペアンプ214の出力端子の電圧が低下し、トランジスタ212のベース電流がだんだん小さくなることで、昇圧トランス201に印加される電圧が低くなる。これにより、出力端子205の電圧レベルが低下する。このような動作により、出力端子205の電圧レベルをCNT信号によって制御することができる。即ち、定電圧制御が可能である。
【0057】
次に、転写電流検出部7cについて説明する。
【0058】
転写電流検出は、昇圧トランス201の5番端子側に接続されたオペアンプ209、抵抗208、206、207で構成された回路(転写電流検出部)7cで検出される。
【0059】
オペアンプ209の正極入力には、電源電圧:Vccが抵抗206、207によって分圧された電圧:Vt(転写電圧)が入力されている。昇圧トランス201の駆動により、出力端子205の電圧が上昇すると、出力端子205から出力する電流と同等レベルの電流が抵抗208に流れる。これにより、抵抗208の両端に電圧が発生し、オペアンプ209の出力、即ちSNS信号は下記の電圧レベルとなる。
SNS=Vt+Rs×Io (式1)
ここで、Rsは抵抗R208の抵抗値、Ioは出力端子205から出力される電流値である。
【0060】
SNSの電圧レベルと出力端子205から出力する電流の関係はCPU13内の非図示の記憶装置内に予め記憶されている。SNS信号に応じてCNT信号を調整することで、定電圧制御が可能となる。
【0061】
2:除電回路
図6は、除電電源回路図である。除電電源8の回路(除電回路)の基本構成は上記した転写電源7の転写負回路(転写負電源)7bと同様とされ、回路動作も等しい。除電電源回路図では、転写電源7と同じ回路構成部品には400のオーダーで、転写電源7の回路構成部品と同じ二桁の参照番号が付されている。
【0062】
除電電源8の基本構成は、上述のように、転写負回路と同じであり、転写電源7と除電電源8は相反する電圧を発生させる。
【0063】
つまり、出力端子405から除電電圧が出力される。出力端子405は除電針9に接続されており、除電針9に高圧バイアスを印加できる構成になっている。除電回路はCPU13から出力される制御信号:CLK3、CNT3により制御され、所望のタイミングと所望のレベルで除電電圧を出力することができる。
【0064】
(4)転写電源制御/除電電源制御
1:長紙間時における制御
長紙間時における転写電源7と除電電源8の制御方法を、以下に説明する。図7は、長紙間制御時における図4の回路動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0065】
本実施例における画像形成装置では、導電性の転写ローラ5の製造時の抵抗ばらつきを抑えることが難しいうえ、雰囲気温度変化や耐久劣化によって抵抗値に変化が生じる。これに対して転写バイアスを定電流制御にした場合は、転写される画像の印字比率等によって転写電圧が変動してしまい、最適な転写が行われない。このため、ATVC方式を用いることで、この課題を回避している。
【0066】
ATVCは主に非画像形成時、且つ除電電圧を印加していない時(紙間:領域A)に行われる。転写ローラ5に流れる電流が、予め設定された定電流値I0となるように転写電源7を制御し(定電流モード)、この時の印加電圧Vt0を検出する。この検出した印加電圧Vt0の値より、転写電圧Vtを決定する。
【0067】
例えば、以下の算出式を用いて、転写電圧Vtを算出、決定させる。
Vt=a×Vto+b (式2)
式2中に記載のa、bは、電圧値を決定するための定数であって、CPU13内の非図示の記憶装置内に予め記憶されている。
【0068】
このような方式で、転写部位が画像領域(通紙時)において上記決定の転写電圧Vtを定電圧制御で転写ローラ5に印加し、感光ドラム1から記録紙Pへトナー像の転写を実行させる。
【0069】
プリントリクエストを受けた画像形成装置が前回転行程を始めると、転写電源7が定電流モードで立ち上げる(区間A1)。次いで、一枚目の記録紙P1の先端が転写部位Tへ到達する直前で転写電源7は定電圧モードで駆動し、このとき、記録紙P1の先端と転写ローラ5との分離性を向上させるために除電針9へ除電電圧を一時的に印加する(区間B)。記録紙P1に画像転写中においては、転写電圧を定電圧モードのまま最適な値まで上昇する(区間C1)。次区間(区間A2)において、画像転写が終了し、記録紙P1の後端へと差しかかったところで、転写電源7は定電流モードへと切り替え、記録紙P1の後端と転写ローラ5との分離性を向上させるために除電針9へ除電電圧を一時的に印加する。そして、記録紙P2の先端が転写部位Tへ到達する直前で、再度除電針9へと除電電圧を印加し、転写ローラ5との記録紙先端の分離性を高める。記録紙P2においても画像転写区間を経て、さらにはP3、P4と続いていく。
【0070】
次に、領域Aにおける転写電源7、除電電源8に流れる電流の流れを説明する。
【0071】
長紙間制御時は、紙間において除電電圧を印加しないことから、転写ローラ5と除電針9間に漏洩電流は流れないため、このタイミングにおいて転写回路に流れる電流を検出する。従って、転写電流は転写正電源7aから転写ローラ5を示す抵抗318を通り、接地部、電流検出抵抗315、転写負電源基準点A3、転写負抵抗308、転写正電源基準点B3を経て、転写正電源7aへ戻る経路7のみ存在する。プリント動作中に存在した記録紙Pを通って接地部へ流れる経路は、紙間であることから導電媒体が無くなるため存在しない。即ち、転写電流検出回路7cに流れる電流値は、転写ローラ5に流れる電流に応じた値となることから、所望のATVCの実施が可能となる。
【0072】
2:小紙間時における制御
小紙間時における転写電源7と除電電源8の制御方法を、以下に説明する。図8は、小紙間時における図4の回路動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0073】
基本的な制御方法としては、長紙間時における制御と変わりないが、長紙間制御と異なるのは、除電電源8の駆動方法である。
【0074】
小紙間制御時における紙間(区間A2)は、除電電圧レベルが高い状態を維持する。この様な制御を行う理由は、長紙間時において除電電圧を紙後端と紙先端それぞれのタイミングで印加していたのに対し、紙間が短くなったことにより除電電圧のオフ時間が失われるからである。このように、紙間において除電電圧を印加し続けていることから、転写ローラ5と除電針9間には漏洩電流が発生する。即ち、転写電源7に流れた電流の一部が、転写ローラ5に近接する除電針9へと流れ込む現象が発生している。小紙間時においては、このタイミング(領域B)において転写回路、即ち、転写電流検出部7cに流れる電流検出を行う。
【0075】
領域Bにおける転写電源7、除電電源8に流れる電流の流れを説明する。
【0076】
先に示した通り転写ローラ5と除電針9間には漏洩電流が発生することから、転写電流は転写正電源7aから転写ローラ5を示す抵抗318を通り、接地部、電流検出抵抗315、転写負電源基準点A3、転写負抵抗308、転写正電源基準点B3を経て、転写正電源へ戻る経路8と、転写正電源7aから除電針9への漏洩電流を示す疑似抵抗317を介し、除電抵抗312、除電電源基準点D3、転写負電源基準点A3、転写負抵抗308転写正電源基準点B3を経て、転写正電源7aへ戻る経路9の2種存在する。
【0077】
経路9は転写電源7と除電電源8を通るループ状の経路を辿るため、本例にて転写回路、即ち、転写電流検出部7cに流れる電流の値は、長紙間時と同様に、転写ローラ5に流れる電流に応じた値となることから、所望のATVCの実施が可能となる。
【0078】
このように、転写電源基準点A3と除電電源基準点D3を並列に接続することで、即ち、転写電流検出部7cを介さずに、除電電源基準点D3を直接に転写電源基準点A3に接続される。これにより、転写ローラ5と除電針9間で発生した漏洩電流が電流検出部7cを介さずに回路内で収束するため、転写ローラ5に与えるべき転写電流値を適切に検出することができ、小紙間制御時においてもATVCを適用することが可能となる。
【0079】
なお、印字動作時についての電流の流れについては課題で説明した通り4種の電流経路を持つが、印字動作時にはATVCを適応しないことから、記録紙を媒体にした経路で電流が流れたとしても、定電圧制御を行う。
【0080】
本実施例によれば、転写手段である転写ローラ5と除電手段である除電針9の間で漏洩電流が発生した場合においても、転写ローラ5に与えるべき転写電流値を正確に検出することができることから、漏洩電流の発生の有無によらず、適切にATVCを行うことが可能となる。
【0081】
実施例2
以下に、本発明の第2の実施例について説明する。
【0082】
図9は、第2の実施例における転写電源7及び除電電源8の接続形態略図である。本実施例2の画像形成装置における高圧電源6の基本構成は、第1の実施例の構成と同じであり、転写電源7と除電電源8の接続形態のみが、第1の実施例と異なる。
【0083】
つまり、本実施例1の転写電源7及び除電電源8では、図4に示す実施例1においては回路構成部品には300のオーダーで二桁の参照番号が付されているが、本実施例2の転写電源7及び除電電源8では、同じ回路構成部品には500のオーダーで同じ二桁の参照番号が付されている。
【0084】
本実施例の構成は、転写正電源基準点B5と除電電源基準点D5とを接続する。このときの領域Bにおける転写電源7、除電電源8に流れる電流の流れを説明する。
【0085】
転写電流は転写正電源7aから転写ローラ5を示す抵抗518を通り、接地部、電流検出抵抗515、転写負電源基準点A5、転写負抵抗508、転写正電源基準点B5を経て、転写正電源7aへ戻る経路10と、転写正電源7aから除電針9への漏洩電流を示す疑似抵抗517を介し、除電抵抗512、除電電源基準点D5、転写正電源基準点B5を経て、転写正電源7aへ戻る経路11となる。
【0086】
このとき、経路11は転写負電源回路7bの抵抗508を介さないことから、第1の実施例の効果に加えて電圧降下による転写電流への影響も抑えることが可能となる。よって、転写回路7、即ち、転写電流検出部7cに流れる電流の値は、長紙間時と同様に、転写ローラ5に流れる電流に応じた値となることから、所望のATVCの実施が可能となる。
【0087】
本実施例によれば、転写負電源回路7bの抵抗に漏洩電流が流れ込まない構成とすることで、転写ローラに至る経路での電圧降下の影響を抑えることができ、転写ローラ5に与える転写電流に適切に検出することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 感光ドラム(像担持体)
2 帯電装置(帯電手段)
3 画像露光光
4 現像装置(現像手段)
5 転写ローラ(転写手段)
6 高圧電源
7 転写電源
7a 転写正電源
7b 転写負電源
7c 転写電流検出部
8 除電電源
9 除電針(除電手段)
13 CPU(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に形成されたトナー像を記録材に転写する転写手段と、
前記記録材の移動方向に対して前記転写手段の下流に配置され、前記像担持体に静電吸着した前記記録材を除電し、分離するための除電手段と、
前記転写手段へ電圧を供給する転写電源と、
前記除電手段へ電圧を供給する除電電源と、
前記転写手段に流れる電流値を検出する転写電流検出部と、
前記転写電流検出部が検出した電流値に基づき、前記転写電源の電圧を制御する制御部と、
を有する画像形成装置において、
前記除電電源は、前記除電電源に接続した前記除電手段へ印加する電圧の基準となる除電電源基準点を有し、前記転写電源は、前記転写電源に接続する前記転写手段へ印加する電圧の基準となる転写電源基準点を有し、
前記転写電流検出部は、前記転写電源基準点に接続されており、
前記除電電源基準点が前記転写電流検出部を介さずに直接に前記転写電源基準点に接続されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写電源は、正電圧を発生させる転写正電源と、負電圧を発生させる転写負電源と、を有し、
前記転写正電源と前記転写負電源が前記転写手段に対して、前記転写手段、前記転写正電源、前記転写負電源の順に直列に接続され、
前記転写負電源と前記転写正電源との接続点電圧の基準となる転写負電源基準点が前記電流検出部と接続されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記除電電源基準点が前記転写負電源基準点と接続されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記除電電源基準点が前記転写正電源基準点と接続されていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−41219(P2013−41219A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179843(P2011−179843)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】