説明

画像形成装置

【課題】厚紙等の剛性の高い用紙が使用される場合であっても、二次転写ニップを通過中の用紙の後端が中間転写ベルトを押し上げることによる画像不良を効果的に防止することができる画像形成装置を提供する
【解決手段】二次転写対向ローラー71aを含む複数の張架ローラーにより張架された中間転写ベルト6上のトナー画像を、二次転写ローラー71bと二次転写対向ローラー71aとの間に形成された二次転写ニップに搬送される用紙Sに転写する二次転写部を有し、二次転写ニップに進入する中間転写ベルト6と二次転写ローラー71b及び二次転写対向ローラー71aの両回転軸を含む平面とに挟まれた角度が90°未満である画像形成装置であって、転写ニップに搬送される用紙Sの後端部分に中間転写ベルト6から離反する方向のカールを生成するカール生成手段(レジストローラー22)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写ベルト上のトナー画像を用紙に転写する二次転写部を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンターやコピー機等の多くの画像形成装置は、感光体ドラム上のトナー画像が転送される中間転写ベルト、及び中間転写ベルトを張架する複数のローラーに含まれる二次転写対向ローラーに中間転写ベルトを介して対向する二次転写ローラーを有する二次転写部を備えており、二次転写対向ローラーと二次転写ローラーとの間に形成されるニップに用紙を通過させることにより中間転写ベルト表面のトナー画像を用紙に転写している。
【0003】
ここで、上記構造を有する画像形成装置において厚紙等の剛性の高い用紙が使用される場合、ニップを通過する用紙の後端が中間転写ベルトを押し上げることにより用紙の後端部分と中間転写ベルトとの間に空隙が形成されるという問題が生じる。このような空隙は放電現象による画像不良を引き起こす虞がある。
【0004】
これに関連して、以下の特許文献1には、中間転写ベルトを内側から二次転写ローラー側に押し下げることによりニップをベルト移動方向の上流側に広げておき、ガイド板に沿ってニップに進入する用紙の後端がガイド板から離間するタイミングで中間転写ベルトの押し下げを解除することで、用紙の後端と中間転写ベルトとの衝突による画像不良を軽減することができる二次転写部が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1のような二次転写装置を採用したとしても、中間転写ベルトと両ローラーの回転軸を含む平面とに挟まれた角(図2中の「θ」参照)の大きさが90°未満である場合は、結局、ニップを通過中の用紙の後端が中間転写ベルトを押し上げることとなり、上述したような画像不良が発生する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−139603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、厚紙等の剛性の高い用紙が使用される場合であっても、二次転写ニップを通過中の用紙の後端が中間転写ベルトを押し上げることによる画像不良を効果的に防止することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)二次転写対向ローラーを含む複数の張架ローラーにより張架された中間転写ベルト上のトナー画像を、前記中間転写ベルトに隣接する二次転写ローラーと前記二次転写対向ローラーとの間に形成された二次転写ニップに搬送される用紙に転写する二次転写部を有し、前記二次転写ニップに進入する前記中間転写ベルトと前記二次転写ローラー及び前記二次転写対向ローラーの両回転軸を含む平面とに挟まれた角度が90°未満である画像形成装置であって、前記転写ニップに搬送される前記用紙の後端部分に前記中間転写ベルトから離反する方向のカールを生成するカール生成手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【0010】
(2)前記カール生成手段は、前記用紙を前記転写ニップに向けて順次送り出す複数の搬送手段のうち前記用紙を最後に送り出す搬送手段に含まれることを特徴とする上記(1)に記載の画像形成装置。
【0011】
(3)前記カール生成手段は、前記用紙を前記転写ニップに向けて順次送り出す複数の搬送手段のうち前記用紙を最後に送り出す搬送手段と前記転写ニップとの間に設けられることを特徴とする上記(1)に記載の画像形成装置。
【0012】
(4)前記カール生成手段により生成される前記カールの長さは、前記用紙に転写された前記トナー画像に含まれる画像不良の長さに応じて可変であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0013】
(5)前記カール生成手段により生成される前記カールの長さは、前記転写ニップに向けて搬送される前記用紙と前記中間転写ベルトとの間に介在するガイド部材から前記二次転写ニップまでの距離よりも小さいことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0014】
(6)前記カール生成手段により生成される前記カールの曲率は、前記用紙に転写された前記トナー画像に含まれる画像不良の長さに応じて可変であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0015】
(7)前記カール生成手段により生成される前記カールの曲率は、前記二次転写ローラーの曲率に合わせて調整されることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0016】
(8)前記カール生成手段は、前記画像形成装置内部の温度及び湿度の少なくとも一方が所定値以下である場合のみ前記カールを生成することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0017】
(9)前記カール生成手段は、前記用紙の坪量が所定値以上である場合のみ前記カールを生成することを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0018】
(10)前記カール生成手段は、第1ローラーと、前記第1ローラーよりも硬度の大きい材質からなり前記第1ローラーに対向する第2ローラーと、第1ローラー及び第2ローラーの少なくとも一方をもう一方に向かって付勢することにより前記第2ローラーを前記第1ローラーに対して押圧する付勢手段と、を有し、前記付勢手段により押圧された前記第2ローラーが前記第1ローラーを凹ませることにより形成される凸形状のニップに前記用紙を通過させることにより前記カールを生成することを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0019】
(11)前記カール生成手段は、第1ローラーと、前記第1ローラーよりも外径が小さく前記第1ローラーに対向する第2ローラーと、を有し、前記第1ローラー及び前記第2ローラーの曲率の差により形成される凸形状のニップに前記用紙を通過させることにより前記カールを生成することを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、二次転写ニップに搬送される用紙の後端部分を中間転写ベルトから離反する方向にカールさせることにより、二次転写ニップを通過中の用紙の後端が中間転写ベルトを押し上げることを防止することができる。よって、本発明によると、厚紙等の剛性の高い用紙が使用される場合であっても、二次転写ニップを通過中の用紙の後端が中間転写ベルトを押し上げることによる画像不良を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る二次転写部を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るカール生成手段によりカールされた用紙を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るカール生成手段を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るレジストローラーの一例を示す概略図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るレジストローラーの他の例を示す概略図である。
【図7】用紙上に生成された画像不良を示す概略図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るカール生成手段によるカール長さの上限値を示す概略図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るカール生成手段を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置Aの構成を示す概略図である。なお、本実施形態に係る画像形成装置Aは、タンデム型カラー画像形成装置と称されるものであり、4組の画像形成部によりカラー画像形成を行う。
【0024】
画像読取装置SCは、原稿台上に載置された原稿画像を走査露光装置の光学系により走査露光し、ラインイメージセンサーに読み込む。読み込まれた原稿画像は光電変換により画像情報信号に変換され、画像処理部(非図示)によるアナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を施された後に、画像形成部の光書込部に入力される。
【0025】
4組の画像形成部は、イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Y、マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10M、シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10C、黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kであり、それぞれ共通する符号10の後に形成する色をあらわす符号Y、M、C、Kを付して表記する。
【0026】
画像形成部10Yは、感光体ドラム1Y及びその周囲に配置された帯電部2Y、光書込部3Y、現像装置4Y、及びドラムクリーナー5Yを有する。同様に、画像形成部10Mは、感光体ドラム1Mの周囲に配置された帯電部2M、光書込部3M、現像装置4M、及びドラムクリーナー5Mを、画像形成部10Cは、感光体ドラム1Cの周囲に配置された帯電部2C、光書込部3C、現像装置4C、及びドラムクリーナー5Cを、画像形成部10Kは、感光体ドラム1Kの周囲に配置された帯電部2K、光書込部3K、現像装置4K、及びドラムクリーナー5Kを有する。
【0027】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kの感光体ドラム1Y、1M、1C、1K、帯電部2Y、2M、2C、2K、光書込部3Y、3M、3C、3K、現像装置4Y、4M、4C、4K、及びドラムクリーナー5Y、5M、5C、5Kは、それぞれ共通する内容の構成である。以下、特に区別が必要な場合を除き符号Y、M、C、Kを付さずに表記することにする。
【0028】
画像形成部10は、光書込部3により画像情報信号を感光体ドラム1に書き込み、感光体ドラム1に画像情報信号に基づく潜像を形成する。そして、形成された潜像は、現像装置4により現像され、感光体ドラム1上に可視画像であるトナー画像が形成される。すなわち、画像形成部10Y、10M、10C、10Kの感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに、それぞれ、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、黒(K)色の画像が形成される。
【0029】
中間転写ベルト6は、駆動ローラーを含む複数の張架ローラーにより張架されており、駆動ローラーの駆動力により走行可能である。画像形成部10Y、10M、10C、10Kにより形成された各色のトナー画像は、一次転写部7Y、7M、7C、7Kにより中間転写ベルト6上に逐次転写される。これにより中間転写ベルト6上に、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の各色層が重畳したカラー画像が形成される。
【0030】
用紙搬送部20は、複数の搬送ローラーにより用紙Sを二次転写部7Aに搬送する。用紙Sは給紙トレイ291、292、293に収容されており、第1給紙部21により給紙された後に、複数の搬送ローラーにより二次転写部7Aに向けて順次送り出される。二次転写部7Aに送り出された用紙Sには二次転写部7Aにより中間転写ベルト6上のトナー画像が転写される。この点についてはさらに後述する。
【0031】
ここで、用紙搬送部20に設けられた複数の搬送ローラーのうち用紙Sを最後に送り出すローラーは特にレジストローラー22と称される。レジストローラー22は、用紙Sの先端と中間転写ベルト6上のトナー画像の先端とを一致させる機能や、用紙Sの搬送方向に対する傾きを補正する機能等を備えている。二次転写部7Aにより用紙Sに転写されたトナー画像は、定着装置30での加熱及び加圧により用紙S上に定着される。トナー画像定着後の用紙Sは排紙ローラー25により画像形成装置Aの外部に排出される。
【0032】
なお、定着装置30と排紙ローラー25との間には、定着装置30での加熱及び加圧により生じた用紙S上のカールを除去するためのデカーラー機構31が設けられている。デカーラー機構31は、用紙Sに水蒸気を噴射した後に、ローラーやベルト等を用いて用紙S上のカールと反対方向のカールを生成することにより用紙S上のカールを除去する。
【0033】
また、画像形成装置Aは用紙反転部24を備えており、トナー画像定着後の用紙Sを定着搬送ローラー23から用紙反転部24に導いて表裏を反転することにより、用紙Sの両面に画像形成を行なうことができる。
【0034】
画像形成装置Aの本体上部に設置された操作表示部80は、用紙Sのサイズや枚数等の画像形成に関する指示をユーザーから受け付ける。そして、制御部90は、ROMやHDD等に格納された制御プログラムに従って画像形成装置Aの各部の動作を制御する。
【0035】
続いて、図2は、図1中の二次転写部7Aを拡大して示す概略図である。図2のように、本実施形態に係る二次転写部7Aは、複数の張架ローラーにより張架される無端状の中間転写ベルト6、及び中間転写ベルト6に隣接する二次転写ローラー71bを有している。
【0036】
ここで、中間転写ベルト6の張架ローラーには、中間転写ベルト6を駆動する駆動ローラー72及び中間転写ベルト6を介して二次転写ローラー71bに対向する二次転写対向ローラー71aが含まれている。そして、二次転写ローラー71bと二次転写対向ローラー71aとの間には中間転写ベルト6上のトナー画像を用紙Sに転写するためのニップが形成されている。このニップのことを以下では「二次転写ニップ」と称する。二次転写ニップを通過した用紙Sには、中間転写ベルト6上のトナー画像が転写されることになる。
【0037】
また、本実施形態に係る二次転写部7Aは、用紙搬送部20により二次転写ニップに搬送される用紙Sをガイドする上ガイド板73及び下ガイド板74を有している。ここで、上ガイド板73は用紙Sと中間転写ベルト6との間に介在して用紙Sの表側(トナー画像が転写される面のこと。以下においても同様。)をガイドし、下ガイド板74は用紙Sの裏側をガイドする。
【0038】
図2のように、本実施形態に係る二次転写部7Aにおいて、二次転写ニップより上流側の中間転写ベルト6の表面と、二次転写ローラー71b及び二次転写対向ローラー71aの両回転軸を含む平面Pとに挟まれた角(図2中の「θ」参照)は90°未満であるものとする。このような構成においては、二次転写ニップに進入した用紙Sは平面Pに対して垂直に排出されるので、用紙Sの後端が中間転写ベルト6に接触する可能性がある。特に、用紙Sが剛性の高い厚紙等である場合には、二次転写ニップを通過中の用紙Sの後端により中間転写ベルト6が押し上げられる可能性がある。
【0039】
そこで、本実施形態に係る二次転写部7Aは、二次転写ニップに進入する用紙Sの後端部分に中間転写ベルト6から離反する方向のカールを生成するカール生成手段を有している。なお、本明細書において用紙Sの「後端部分」とは用紙Sの搬送方向の後端を含む側端部分のことを指すものとする。
【0040】
図3は、カール生成手段によりカールが生成された用紙Sが二次転写ニップを通過している状態を示す概略図である。図3のように、二次転写ニップに進入する用紙Sの後端部分は中間転写ベルト6から離反する方向にカールされているので、二次転写ニップを通過中の用紙Sの後端により中間転写ベルト6が押し上げられることはない。なお、カール生成手段により生成されたカールは、上述したデカーラー機構31によりトナー画像定着時のカールと併せて除去される。
【0041】
図4は、本実施形態に係るカール生成手段の構成を示す概略図である。図4のように、本実施形態に係るカール生成手段は、二次転写部7Aに向けて用紙Sを最後に送り出す搬送ローラーであるレジストローラー22に含まれている。このようにレジストローラー22にカール生成手段としての機能を持たせた場合には、画像形成装置の既存の部材や構成等を変更することで簡易かつ安価にカール生成手段を実現することができるという利点がある。
【0042】
図5は、本実施形態に係るカール生成手段としてのレジストローラー22の一例を示す概略図である。図5のように、本例によるレジストローラー22は、二次転写部7Aに搬送される用紙Sの表側(すなわち、トナー画像が転写される面のこと。以下においても同様。)に臨む第1ローラー22a、用紙Sの裏側に臨む第2ローラー22b、及び両ローラーを互いに近接する方向に付勢する付勢手段22cを有している。付勢手段22cはコイルばねや板ばね等の一般的な付勢手段であり、所定のタイミングで両ローラーの回転軸を互いに近接する方向に押圧する。
【0043】
図5のように、第1ローラー22a及び第2ローラー22bの片方はモーター等の駆動手段により回転する駆動ローラーであり、もう一方は用紙Sを介して駆動ローラーに従動する従動ローラーである。本例による第2ローラー22bは第1ローラー22aよりも硬度の大きい材質で形成されている。そのため、付勢手段22cによる押圧力が加えられた場合、第2ローラー22bが第1ローラー22aを凹ませることにより両ローラー間に凸形状のニップが形成される。このようにして形成された凸形状のニップを用紙が通過することにより用紙Sの後端部分にカールが生成される。
【0044】
より具体的に、本例による画像形成装置Aは、用紙Sの後端部分が第1ローラー22a及び第2ローラー22b間に進入するタイミングで付勢手段22cを作動させることにより、両ローラー間に上述した凸形状のニップを形成する。そして、両ローラー間のニップを通過した用紙Sの後端部分には、第2ローラー22bから第1ローラー22aに向かう凸形状のカール(すなわち、中間転写ベルト6から離反する方向のカール)が生成される。
【0045】
続いて、図5に例示された付勢手段22cによる押圧力について説明する。以下の表1は、用紙Sの坪量と、付勢手段22cによる適切な押圧力との関係を例示している。一般に用紙の剛性は坪量に応じて増加するため、坪量の大きい用紙ほど中間転写ベルトの押し上げによる画像不良を生じやすいと考えられる。そのため、表1のように用紙Sの坪量に応じて付勢手段22cの押圧力を増加させることが好ましい。
【0046】
さらに、用紙S上のカールは用紙Sのハンドリング性を悪化させる場合があるため、用紙坪量が所定の下限値を下回る場合にはカールを生成せず、用紙坪量が下限値以上である場合のみカールを生成するように付勢手段22cを制御することが好ましい。表1においては用紙坪量の下限値として300gsmを採用しており、用紙坪量が下限値を下回る場合の押圧力として10Nを採用している。ここで、10Nという押圧力は、用紙Sを搬送するためには十分であるものの、用紙Sにカールを生成するには不十分であるか又は極めて小さいカールを生成するにすぎない押圧力であり、この点は以下の表2、3においても同様である。
【0047】
なお、本例による画像形成装置Aは、給紙トレイ291〜293等に設置された用紙センサーによる用紙坪量の測定結果に基づいて表1の押圧力を自動的に適用することもできるし、操作表示部80上でユーザーにより指定された押圧力を適用することもできる。
【0048】
【表1】

【0049】
また、以下の表2は、画像形成装置Aの内部温度と、付勢手段22cによる適切な押圧力との関係を例示している。一般に中間転写ベルトの押し上げによる画像不良は低温度環境下で生じやすいことが知られている。そのため、表2のように画像形成装置Aの内部温度の低下に伴い付勢手段22cによる押圧力を増加させることが好ましい。
【0050】
さらに、用紙S上のカールは用紙Sのハンドリング性を悪化させる場合があるため、画像形成装置Aの内部温度が所定の上限値を超える場合にはカールを生成せず、内部温度が上限値以下である場合のみカールを生成するように付勢手段22cを制御することが好ましい。表2においては内部温度の上限値として25℃を採用しており、内部温度が上限値を超える場合の押圧力として10Nを採用している。
【0051】
なお、本例による画像形成装置Aは、給紙トレイ291〜293等に設置された温度センサーによる温度測定結果に基づいて表2の押圧力を自動的に適用することもできるし、操作表示部80上でユーザーにより指定された押圧力を適用することもできる。
【0052】
【表2】

【0053】
また、以下の表3は、本例による画像形成装置Aの内部湿度と、付勢手段22cによる適切な押圧力との関係を例示している。一般に中間転写ベルトの押し上げによる画像不良は低湿度環境下で生じやすいことが知られている。そのため、表3のように画像形成装置Aの内部湿度の低下に伴い付勢手段22cによる押圧力を増加させることが好ましい。
【0054】
さらに、用紙S上のカールは用紙Sのハンドリング性を悪化させる場合があるため、画像形成装置Aの内部湿度が所定の上限値を超える場合にはカールを生成せず、内部湿度が上限値以下である場合のみカールを生成するように付勢手段22cを制御することが好ましい。表3においては内部湿度の上限値として30%を採用しており、内部湿度が上限値を超える場合の押圧力として10Nを採用している。
【0055】
なお、本例による画像形成装置Aは、給紙トレイ291〜293等に設定された湿度センサーによる湿度測定結果に基づいて表3の押圧力を自動的に適用することもできるし、操作表示部80上でユーザーにより指定された押圧力を適用することもできる。
【0056】
【表3】

【0057】
また、上記の表1〜3は、それぞれ、用紙坪量、内部温度、及び内部湿度という個別のパラメーターに対する適切な押圧力を与えるものであるが、これらの表の代わりに、2種以上のパラメーターの組み合わせに対する適切な押圧力を与える表を準備することとしてもよい。
【0058】
続いて、図6は、本実施形態に係るレジストローラー22の他の例を示す概略図である。図6のように、本例によるレジストローラー22は、二次転写部7Aに搬送される用紙Sの表側に臨む第1ローラー22a、用紙Sの裏側に臨む第2ローラー22b、及び両ローラーを互いに近接する方向に付勢する付勢手段22cを有している。付勢手段22cはコイルばねや板ばね等の一般的な付勢手段であり、所定のタイミングで両ローラーの回転軸を互いに近接する方向に押圧する。
【0059】
図6のように、第1ローラー22a及び第2ローラー22bの片方はモーター等の駆動手段により回転する駆動ローラーであり、もう一方は用紙Pを介して駆動ローラーに従動する従動ローラーである。本例による第2ローラー22bの外径は第1ローラー22aの外径よりも小さい。そのため、付勢手段22cによる押圧力が加えられた場合、両ローラーの接触箇所には両ローラーの曲率の差により凸形状のニップが形成される。このようにして形成された凸形状のニップにより用紙Sの後端部分にカールが生成される。
【0060】
より具体的に、本例による画像形成装置Aは、用紙Sの後端部分が第1ローラー22a及び第2ローラー22b間に進入するタイミングで付勢手段22cを作動させることにより、両ローラー間に上述した凸形状のニップを形成する。そして、両ローラー間のニップを通過した用紙Sの後端部分には、第2ローラー22bから第1ローラー22aに向かう凸形状のカール(すなわち、中間転写ベルト6から離反する方向のカール)が生成される。
【0061】
続いて、カール生成手段により生成すべきカールの曲率について説明する。以下の表4は、本実施形態に係るレジストローラー22によるカールの曲率を漸次変化させた場合の画像不良の観察結果を示している。なお、本例では、二次転写ローラー71bとして直径が40mmであり、曲率が0.025であるものと使用し、用紙Sとして坪量が350gsmである厚紙を使用した。なお、上記の表1〜3は、曲率が0.030であるカールを生成するための適切な押圧力を示している。
【0062】
また、ここでいう「画像不良」とは用紙Sの後端部分におけるトナー画像の転写不良のことを指しており、本例では、画像不良の観察結果を、大きな画像不良が観察された場合(「あり」)、軽微な画像不良が観察された場合(「軽微」)、及び画像不良が観察されなかった場合(「なし」)の三段階で評価した。図7は、用紙S上に生じた画像不良を示す概略図である。
【0063】
【表4】

【0064】
表4のように、レジストローラー22によるカール曲率を二次転写ローラー71bの曲率である0.025以上とすることにより画像不良を解消することができた。これはカール曲率を二次転写ローラー71bの曲率以上とすることにより用紙Sの後端による中間転写ベルト6の押し上げが回避されたためであると考えられる。他方、カール曲率を二次転写ローラーの曲率を大幅に超える0.045以上とした場合には却って画像不良が生じることとなった。これはカールの曲率が中間転写ベルト6の曲率を大幅に超える場合には、用紙Sの後端による中間転写ベルト6の押し上げは回避されるが、大きくカールされた後端部分の凸形状により中間転写ベルト6が押し上げられるためであると考えられる。
【0065】
以上のように、カール生成手段により生成されるカールの曲率は二次転写ローラー71bの曲率に合わせて調整されることが好ましい。ここで、本実施形態に係る画像形成装置Aは、操作表示部80上で受け付けたユーザー指示に基づいてカール曲率を調整することもできるし、定着装置30の下流側に設置されたイメージセンサーにより取得した読取画像の解析結果に基づいて自動的にカール曲率を調整することもできる。後者の方法によりカール曲率を調整する場合には、例えば、用紙Sに生じた画像不良部分の用紙後端からの距離(図7中の「d」参照)に応じてカール曲率を大きくすることが好ましい。
【0066】
続いて、カール生成手段により生成すべきカールの長さについて説明する。なお、カールの「長さ」とはカールが生成された部分の用紙後端からの距離のことを指す。ここで、カール生成手段によるカールの長さは、用紙S上に生じた画像不良部分の用紙後端からの距離(図7中の「d」参照)に合わせて調整されることが好ましい。より具体的には、カールを生成することなく出力した用紙S上に生じた画像不良部分の用紙後端からの距離をカール長さの初期値とし、それ以降も画像不良部分が生じる場合には当該部分の距離に応じてカール長さを大きくすることが好ましい。
【0067】
なお、本実施形態に係る画像形成装置Aは、操作表示部80上で受け付けたユーザー指示に基づいてカール長さを調整することもできるし、定着装置30の下流側に設置されたイメージセンサーにより取得した読取画像の解析結果に基づいて自動的にカール長さを調整することもできる。ただし、二次転写ニップに搬送される用紙Sのハンドリング性を考慮すると、カール長さは所定の上限値以下とされることが好ましい。図8は、カール長さの上限値を示す概略図である。本例においては、カール長さの上限値として二次転写ニップから上ガイド板73までの距離(図8中の「D」参照)を採用している。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、本実施形態に係るカール生成手段の構成を示す概略図である。なお、本実施形態に係る画像形成装置の構成は、以下に述べる箇所を除き、上述した第1の実施形態と同様である。そのため、本実施形態においても上述した第1の実施形態と同一の符号を用いることとする。
【0069】
図9のように、本実施形態に係るカール生成手段は、レジストローラー22と二次転写ローラー71bとの間に配置されたカール生成ローラー26である。このようにレジストローラー22とは別途設けられたカール生成ローラー26によりカール生成手段を実現する場合には、上述したようなレジストローラー22が本来有する機能に影響を与えることなく、用紙Sの後端による中間転写ベルト6の押し上げを防止することができるという利点がある。
【0070】
本実施形態に係るカール生成ローラー26の具体的な構成は、上述した第1実施形態に係るレジストローラー22の構成と同様である(図5、図6参照)。また、用紙坪量、内部温度、及び内部湿度の各パラメーターと、カール生成ローラー26(付勢手段)による適切な押圧力との関係も、上述した第1実施形態に係るレジストローラー22によるものと同様である(表1〜3参照)。ただし、本実施形態においては、用紙坪量が下限値を下回る場合、及び内部温度又は内部湿度が上限値を超える場合の押圧力として表1〜3のように10Nを採用してもよいし、その代わりに0N(すなわち、ローラー対を離間させる)を採用してもよい。また、本実施形態に係るカール生成ローラー26により生成すべきカールの曲率及び長さも、上述した第1実施形態に係るレジストローラー22によるものと同様である(表4、図7、図8参照)。
【0071】
以上のように、本発明の上記実施形態に係る画像形成装置Aによると、二次転写ニップに搬送される用紙Sの後端部分を中間転写ベルト6から離反する方向にカールさせることにより、二次転写ニップを通過中の用紙Sの後端が中間転写ベルト6を押し上げることを防止することができる。よって、上記実施形態に係る画像形成装置Aによると、用紙Sとして剛性の高い厚紙等が使用される場合であっても、二次転写ニップを通過中の用紙Sの後端が中間転写ベルト6を押し上げることによる画像不良を効果的に防止することができる。
【0072】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲において種々改変することができる。例えば、上記実施形態に係るカール生成手段は付勢手段22cの押圧力によるニップに用紙Sを通過させることによりカールを生成するが(図5、図6参照)、本発明に係るカール生成手段によるカール生成方法はこれらの例に限定されない。例えば、互いに周速の異なる2つの駆動ローラー間に用紙Sの後端部分を通過させることによりカールを生成することも可能である。周速の異なる2つの駆動ローラーは、例えば、外径の異なる2つの駆動ローラーを同一の回転速度で回転させるか、又は外径の等しい2つの駆動ローラーを異なる回転速度で回転させることにより実現される。
【符号の説明】
【0073】
A 画像形成装置、
SC 画像読取装置、
10Y、10M、10C、10K 画像形成部、
6 中間転写ベルト、
7Y、7M、7C、7K 一次転写部、
7A 二次転写部、
71a 二次転写対向ローラー、
71b 二次転写ローラー、
72 駆動ローラー、
73 上ガイド板、
74 下ガイド板
20 用紙搬送部、
21 給紙部、
22 レジストローラー、
22a 第1ローラー、
22b 第2ローラー、
22c 付勢手段、
23 定着搬送ローラー、
24 用紙反転部、
25 排紙ローラー、
26 カール生成ローラー、
291、292、293 給紙トレイ、
30 定着装置、
31 デカーラー機構、
80 操作表示部、
90 制御部、
S 用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次転写対向ローラーを含む複数の張架ローラーにより張架された中間転写ベルト上のトナー画像を、前記中間転写ベルトに隣接する二次転写ローラーと前記二次転写対向ローラーとの間に形成された二次転写ニップに搬送される用紙に転写する二次転写部を有し、前記二次転写ニップに進入する前記中間転写ベルトと前記二次転写ローラー及び前記二次転写対向ローラーの両回転軸を含む平面とに挟まれた角度が90°未満である画像形成装置であって、
前記転写ニップに搬送される前記用紙の後端部分に前記中間転写ベルトから離反する方向のカールを生成するカール生成手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記カール生成手段は、前記用紙を前記転写ニップに向けて順次送り出す複数の搬送手段のうち前記用紙を最後に送り出す搬送手段に含まれることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記カール生成手段は、前記用紙を前記転写ニップに向けて順次送り出す複数の搬送手段のうち前記用紙を最後に送り出す搬送手段と前記転写ニップとの間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記カール生成手段により生成される前記カールの長さは、前記用紙に転写された前記トナー画像に含まれる画像不良の長さに応じて可変であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記カール生成手段により生成される前記カールの長さは、前記転写ニップに向けて搬送される前記用紙と前記中間転写ベルトとの間に介在するガイド部材から前記二次転写ニップまでの距離よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記カール生成手段により生成される前記カールの曲率は、前記用紙に転写された前記トナー画像に含まれる画像不良の長さに応じて可変であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記カール生成手段により生成される前記カールの曲率は、前記二次転写ローラーの曲率に合わせて調整されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記カール生成手段は、前記画像形成装置内部の温度及び湿度の少なくとも一方が所定値以下である場合のみ前記カールを生成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記カール生成手段は、前記用紙の坪量が所定値以上である場合のみ前記カールを生成することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記カール生成手段は、第1ローラーと、前記第1ローラーよりも硬度の大きい材質からなり前記第1ローラーに対向する第2ローラーと、第1ローラー及び第2ローラーの少なくとも一方をもう一方に向かって付勢することにより前記第2ローラーを前記第1ローラーに対して押圧する付勢手段と、を有し、前記付勢手段により押圧された前記第2ローラーが前記第1ローラーを凹ませることにより形成される凸形状のニップに前記用紙を通過させることにより前記カールを生成することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記カール生成手段は、第1ローラーと、前記第1ローラーよりも外径が小さく前記第1ローラーに対向する第2ローラーと、を有し、前記第1ローラー及び前記第2ローラーの曲率の差により形成される凸形状のニップに前記用紙を通過させることにより前記カールを生成することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−52963(P2013−52963A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191994(P2011−191994)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】