画像形成装置
【課題】黒画像形成部で画像流れが生じ易い場合でも、画像不良の発生を低減できる構造を実現する。
【解決手段】黒画像形成部の感光ドラムの画像流れを検知すべく、帯電ローラに−500Vの電圧を印加し、帯電ローラから感光ドラムに流れる電流値Idcを検知する。そして、電流値Idcの絶対値が2μA以上の場合に、黒画像形成部で形成する黒画像の、複数のカラー画像形成部で形成するプロセスブラック画像に対する比率(UCR比率)α´を0とし、黒色の画像をプロセスブラック画像のみにより形成する。即ち、画像流れが生じ易い条件である、電流値Idcの絶対値が2μA以上の場合に、黒画像形成部を使用せずに、画像流れが発生しにくい複数のカラー画像形成部を使用して黒色の画像を形成する。これにより、黒色の画像不良の発生を低減できる。
【解決手段】黒画像形成部の感光ドラムの画像流れを検知すべく、帯電ローラに−500Vの電圧を印加し、帯電ローラから感光ドラムに流れる電流値Idcを検知する。そして、電流値Idcの絶対値が2μA以上の場合に、黒画像形成部で形成する黒画像の、複数のカラー画像形成部で形成するプロセスブラック画像に対する比率(UCR比率)α´を0とし、黒色の画像をプロセスブラック画像のみにより形成する。即ち、画像流れが生じ易い条件である、電流値Idcの絶対値が2μA以上の場合に、黒画像形成部を使用せずに、画像流れが発生しにくい複数のカラー画像形成部を使用して黒色の画像を形成する。これにより、黒色の画像不良の発生を低減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、レーザビームプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の画像形成部を有するタンデム方式のカラー画像形成装置は、使用可能な記録材の種類が豊富であり、フルカラー画像の品質も高く、高速度でフルカラー画像を得ることができる、という優れた特質を備える。しかしながら、画像形成における用途の多くは黒画像(モノクロ画像)が占めると考えられ、その場合、黒色の現像剤により黒画像を形成する黒画像形成部の感光体においては、他の画像形成部の感光体よりも削れが増大する。そして、黒画像形成部の感光体の摩耗による画像不良が発生し易い。
【0003】
このため、黒画像形成部の感光体については、従来一般的に利用されているOPC感光体よりも高硬度化するなどして、高耐久化を図ることが求められている。例えば、黒画像形成部の感光体のみをアモルファスシリコン系感光体として、黒画像形成部の感光体の高耐久化を図る構造が知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−333393号公報
【特許文献2】特開平11−24358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1、2のように、アモルファスシリコン感光体など硬度の高い感光体を用いると、特に高湿環境下において、「画像流れ」と呼ばれる静電潜像のぼけが生じ易くなる。即ち、硬度の高い感光体を使用している黒画像形成部では、他の画像形成部に比べて画像流れが生じ易くなる。画像流れの発生原因は、以下のように考えられている。
【0006】
主に帯電手段によってオゾンやNOx等の放電生成物が発生し、感光体の表面に付着する。感光体の表面に付着した放電生成物は、転写後に感光体表面に残存している現像剤を除去するためのクリーニングブレードにより削り取られて除去されるが、感光体の表面の摩擦係数が低いため、この削り量は少なくなる。特に、感光体の表面硬度が高いと、この削り量が更に少なくなり、表面に付着した放電生成物が除去されにくくなる。
【0007】
感光体の表面に放電生成物が除去されずに残った場合、この放電生成物が高湿環境下で吸湿して、感光体の表面の電荷保持能力を低下させ、「画像流れ」と呼ばれる静電潜像のぼけを発生させる。したがって、特に感光体の硬度が高い場合には、付着した放電生成物はますます除去されにくくなり、画像流れが生じ易くなる。
【0008】
また、黒画像形成部は、一般的に定着装置から最も離れた位置に配置される場合が多く、この場合、黒画像形成部の感光体が最も温まりにくい。したがって、黒画像形成部の感光体に付着した放電生成物が水分を吸着し易く、この点からも画像流れが生じ易くなる。
【0009】
更に、画像形成における黒画像の形成比率が高いことから、黒画像形成部の使用頻度が他の画像形成部よりも高くなる。このため、他の画像形成部よりも黒画像形成部の感光体に放電生成物が多く蓄積されることになり、やはり、黒画像形成部で画像流れが生じ易い傾向となる。
【0010】
画像流れの対策としては、感光体の内部や感光体の近傍にヒータを設置し、感光体の表面の温度を上げることで感光体の表面を乾燥させることが一般的である。但し、電源投入直後など十分にこれらの手段の効果が得られない段階で画像形成されると、画像流れが発生してしまう場合がある。画像流れが生じると、画像がぼけたり、消えたりするなどして、出力物に画像不良が生じる可能性がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑み、黒画像形成部で画像流れが生じ易い場合でも、画像不良の発生を低減できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、黒色の現像剤により黒画像を形成する黒画像形成部と、それぞれ黒以外の色の現像剤により画像を形成し、各色を組み合わせることにより黒色或いは黒色に近い色のプロセスブラック画像を形成可能な複数のカラー画像形成部と、前記黒画像形成部及び前記複数のカラー画像形成部を制御する制御手段と、を備え、前記黒画像形成部及び前記複数のカラー画像形成部は、それぞれ、像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像担持体に静電潜像を形成する潜像形成手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像剤で現像する現像手段と、を有する画像形成装置において、前記黒画像形成部の画像流れに関する情報を検知する検知手段を有し、前記制御手段は、前記検知手段の検知結果に基づいて、黒色の画像を前記黒画像形成部のみを用いて形成する第1モードと、黒色の画像を前記複数のカラー画像形成部を用いて形成する第2モードとの何れかを実行する、ことを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検知手段の検知結果に基づいて、第1モードと第2モードとの何れかを選択して黒画像を形成するため、黒画像形成部で画像流れが生じ易い場合でも、画像不良の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】第1の実施形態の画像形成装置における画像信号の処理を示すブロック図。
【図3】画像信号のUCR処理を説明するために、(a)はUCR比率が100%の場合を、(b)はUCR比率が50%の場合を、それぞれ示す模式図。
【図4】黒画像部の画像信号のUCR処理を説明するために、(a)はUCR比率が100%の場合を、(b)はUCR比率が50%の場合を、それぞれ示す模式図。
【図5】第1の実施の形態における帯電ローラに対する帯電電圧印加の構成の、(a)は全色共通部分を、(b)は黒画像形成部の特徴的部分を、それぞれ示すブロック図。
【図6】帯電直流電圧と感光ドラムの表面電位との関係の一例を示すグラフ。
【図7】帯電直流電圧と測定回路に流れ込んだ直流電流値との関係の一例を、画像流れが発生している場合と、発生していない場合とで示すグラフ。
【図8】放電開始電圧未満の帯電直流電圧印加時に感光ドラム上に電荷が載るメカニズムを説明するための模式図。
【図9】測定回路に流れ込む直流電流値と、画像流れによる濃度低下の関係を示す図。
【図10】画像形成装置の動作シーケンスを説明するための図。
【図11】第1の実施形態における制御フローチャート。
【図12】本発明の第2の実施形態における、測定回路に流れ込む直流電流値と、黒画像部のUCR比率との関係を示す図。
【図13】第2の実施形態における制御フローチャート。
【図14】各相対湿度における、画像流れによる濃度低下が起こる直流電流値の閾値を示す図。
【図15】本発明の第3の実施形態における、各相対湿度での測定回路に流れ込む直流電流値と、黒画像部のUCR比率との関係を示す図。
【図16】第3の実施形態における制御フローチャート。
【図17】画像流れが発生した際の、(a)パッチ部、および(b)文字部における、潜像への影響を説明する模式図。
【図18】本発明の第4の実施形態の画像形成装置における画像信号の処理を示すブロック図。
【図19】第4の実施形態における、測定回路に流れ込む直流電流値と、黒文字以外の黒画像部および黒文字部のUCR比率と、の関係を示す図。
【図20】第4の実施形態における制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図11を用いて説明する。まず、図1により本実施形態の画像形成装置の全体構成について説明する。
【0016】
[画像形成装置]
画像形成装置のプリンタ部20は、複数の画像形成部P(Pa、Pb、Pc、Pd)を備えている。Paがイエロー、Pbがマゼンタ、Pcがシアン、Pdがブラック(黒色)を形成する画像形成部である。したがって、Pdが黒画像形成部、Pa、Pb、Pcが複数のカラー画像形成部に相当する。画像形成部Pdは、黒色の現像剤(ブラックのトナー)により黒画像を形成する。
【0017】
一方、その他の画像形成部Pa、Pb、Pcは、それぞれ黒以外の色の現像剤(イエロー、マゼンタ、シアンの各トナー)により各色の画像を形成する。また、画像形成部Pa、Pb、Pcは、各色を組み合わせることにより黒色或いは黒色に近い色のプロセスブラック画像を形成可能である。即ち、イエロー、マゼンタ、シアンのトナー像を全て重ねることにより、ほぼ黒色の画像が形成される。本実施形態では、このように画像形成部Pa、Pb、Pcにより形成されるほぼ黒色の画像をプロセスブラック画像と言う。
【0018】
なお、各画像形成部の共通部分を説明する場合には単に画像形成部Pと記載し、色を区別する際には、適宜、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdと記載する。他の装置、部材においても符号の記載方法は同様である。
【0019】
各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ、像担持体であるドラム状の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」という。)1を備える。即ち、それぞれ、イエロー用感光ドラム1a、マゼンタ用感光ドラム1b、シアン用感光ドラム1c、ブラック用感光ドラム1dを備えている。イエロー用感光ドラム1a、マゼンタ用感光ドラム1b、シアン用感光ドラム1c、ブラック用感光ドラム1dは、画像形成時には、それぞれ矢印方向に回転する。
【0020】
また、本実施形態の場合、イエロー用感光ドラム1a、マゼンタ用感光ドラム1b、シアン用感光ドラム1cは、帯電特性が負帯電性の有機光導電体(OPC)感光体としている。一方、ブラック用感光ドラム1dは、帯電特性が負帯電性のa−Si(アモルファスシリコン)感光体としている。
【0021】
a−Si感光体はOPC感光体と比較して高価であるが、硬度が高く、耐久性に優れている。その特性から、本実施形態では、モノクロ出力によって比較的画像出力の量が多いブラック用の感光ドラムとしてa−Siドラムを用いている。一方、比較的画像出力の量が少ないカラー(イエロー、マゼンタ、シアン)用の感光ドラムとして安価なOPCドラムを用いている。したがって、黒画像形成部である画像形成部Pdの感光ドラム1dの表面硬度は、複数のカラー画像形成部である画像形成部Pa、Pb、Pcの感光ドラム1a、1b、1cの表面硬度よりも高い。
【0022】
各々の感光ドラム1a、1b、1c、1d表面は、帯電手段としての帯電ローラ2(2a、2b、2c、2d)により一様に帯電される。そして、帯電した各感光ドラム1表面に、分解色毎に潜像形成手段である露光装置30Aにより光像3(3a、3b、3c、3d)が照射され、各感光ドラム1上にそれぞれ静電潜像が形成される。
【0023】
各感光ドラム1上に形成された各静電潜像は、各色の現像装置4、即ち、イエロー用現像装置4a、マゼンタ用現像装置4b、シアン用現像装置4c、ブラック用現像装置4dにより、それぞれ反転現像される。各現像装置4には、それぞれ各色の現像剤として、樹脂と顔料を基体としたトナーが充填されており、感光ドラム1a、1b、1c、1d上の各静電潜像はトナー像として現像される。静電潜像の現像時には、各現像装置4にそれぞれ現像バイアスが印加される。
【0024】
本実施形態では、現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれ非磁性トナーと磁性キャリアを混合させて用いる二成分現像剤が装填されているが、トナーのみの一成分現像剤でも問題はない。また、現像装置4a、4b、4c、4d内のトナーは、各色毎のトナー収納部(ホッパー)(図示せず)から、現像装置4内のトナー比率(或いはトナー量)を一定に保つように、所望のタイミングにて随時補給される。
【0025】
感光ドラム1a、1b、1c、1d上に形成された各トナー像は、一次転写部T1(T1a、T1b、T1c、T1d)にて一次転写される。一次転写手段である一次転写ローラ5a、5b、5c、5dは、感光ドラム1a、1b、1c、1d上に形成された各トナー像を転写媒体としての中間転写体(中間転写ベルト)12上に重ねて転写する。このとき、一次転写ローラ5a、5b、5c、5dに一次転写バイアスが印加される。その結果、中間転写ベルト12上にそれぞれのトナー像が順次重ねられてフルカラートナー像が形成される。
【0026】
その後、転写媒体である中間転写ベルト12上のフルカラートナー像は、二次転写部T2にて記録材Sに一括して二次転写される。記録材Sは、収納部13から1枚ずつ搬送され、所望のタイミングにて中間転写ベルト12上のトナー像を記録材に転写する二次転写手段である二次転写ローラ11と中間転写ベルト12との間の二次転写部T2に搬送される。そして、上述のように二次転写部T2にて記録材S上にトナー像が転写される。次いで、記録材Sは搬送部を通り、定着装置(熱ローラ定着器)9にてトナー像を定着され、排紙トレイ或いは用紙後処理装置(不図示)に排紙される。
【0027】
一方、中間転写ベルト12へのトナー像の転写後の感光ドラム1a、1b、1c、1d上に付着した転写残トナーは、それぞれ、クリーニング装置6a、6b、6c、6dのクリーニングブレードにより摺擦され、除去される。これにより、感光ドラム1a、1b、1c、1dの表面が清浄化され、繰り返して画像形成に供される。
【0028】
また、本実施形態では、プリンタ部20は、各感光ドラム1の回転方向(表面移動方向)において、それぞれクリーニング装置6より下流、且つ、帯電ローラ2よりも上流の位置に、前露光装置7を配置している。各感光ドラム1の表面に光照射する前露光手段としての前露光装置7a、7b、7c、7dは、転写工程後に感光ドラム1a、1b、1c、1dの表面に残っている残留電荷を光照射によって除電処理する。そして、帯電工程前の感光ドラム1a、1b、1c、1dの表面電位をゼロ近傍に一定とする。
【0029】
プリンタ部20には、原稿を読み取る原稿読取手段であるリーダ部30、或いは、コンピュータ、ファクシミリなどの外部機器40から画像信号が送出されてくる。それらの画像信号は、画像処理部50において、所定の画像処理(色変換、色分解)を終えた後、分解色毎に露光装置30Aより、光像3a、3b、3c、3dを照射し、各々の感光ドラム1上に静電像を形成する。また、制御手段である制御回路100では、各画像形成部Pを制御するなど、このようなプリンタ部20に係る画像形成の全般を制御している。
【0030】
[画像信号処理]
次に、画像信号の処理について詳しく説明する。図2は、画像処理部50における信号処理を模式的に示したブロック図である。リーダ部30、或いは、コンピュータ、ファクシミリなどの外部機器40から送られてくるRGBの画像信号情報は、画像処理部50において、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の信号に色変換される。
【0031】
まず、LOG変換部51は、入力されたRGB画像信号を設定されたパラメータに基づきYMC画像信号(図中Y1、M1、C1)に変換する輝度濃度変換を行う。一方、黒画像判定部52は、RGB画像信号に基づき彩度判定を行う。ここでは、無彩色であると判定された領域が黒色の画像(黒画像部)として判定され、黒画像判定部52が、次述する下色除去処理(UCR)の係数を制御する信号を出力する。
【0032】
この後、UCR部53において、CMYの3色の信号をK(ブラック)信号とする下色除去処理(Under Color Removal)(以下、「UCR処理」という。)が以下の式にしたがって行われる。
Y2=Y1−α×min(Y1、M1、C1)
M2=M1−α×min(Y1、M1、C1)
C2=C1−α×min(Y1、M1、C1)
K2=α×min(Y1、M1、C1)
ここで、αはUCR比率、即ち、黒画像部を構成する黒画像(画像形成部Pdにより形成される黒色の画像)のプロセスブラック画像(画像形成部Pa、Pb、Pcにより形成されるほぼ黒色の画像)に対する比率(黒画像比率)である。また、0≦α≦1となる。
【0033】
図3に示す様に、Y、M、Cの信号(トナー比率)が異なる有彩色の画像を形成する場合に、UCR処理の可能領域が黒画像部に相当する。したがって、図3(a)に示す様に、α=1のときを100%UCRと呼び、YMCの3色で作成するプロセスブラック画像が、すべてK1色(単色)の黒画像に置き換えられる。同様に、図3(b)に示す様に、例えば、α=0.5のときを50%UCRと呼び、YMCの3色で作成するプロセスブラック画像のうち、50%が単色の黒画像に置き換えられる。
【0034】
次に、図4により、黒画像判定部52で黒画像部であると判定された領域(無彩色の画像)のUCR処理について説明する。UCR処理後の黒画像部のYMCK信号を、それぞれ、Y2’、M2’、C2’、K2’とすると、
Y2’=Y1−α’×min(Y1、M1、C1)
M2’=M1−α’×min(Y1、M1、C1)
C2’=C1−α’×min(Y1、M1、C1)
K2’=α’×min(Y1、M1、C1)
ここで、α’は、上述のαと同様に、黒画像部におけるUCR比率であり、0≦α’≦1となる。また、黒画像と認識される領域は無彩色であるため、一般的に、
Y1=M1=C1=min(Y1、M1、C1)
である。書き換えると、
Y2’=(1−α’)Y1
M2’=(1−α’)Y1
C2’=(1−α’)Y1
K2’=α’×Y1
と表現できる。
【0035】
したがって、図4(a)に示す様に、α’=1のとき、YMCの3色で作成するプロセスブラック画像がすべて単色の黒画像に置き換えられる。このとき、YMCの信号はすべて0となり、Kのみの画像信号となる。同様に、図4(b)に示す様に、例えば、α’=0.5のとき、YMCの3色で作成するプロセスブラック画像のうち、50%が単色の黒画像に置き換えられる。
【0036】
ここで、黒画像部におけるUCR処理の効果について説明する。上述したように、プロセスカラー印刷では、黒やグレーはCMY(シアン、マゼンタ、イエロー)の3色、またはCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4色のトナーを混ぜても表現できる。しかし、K(ブラック)だけで印刷することが可能なので、ブラック(黒色)の部分から略等量のCMYの3色を取り除き、その分、Kトナーの量を増やすという方法を取る。また、グレーの部分からもCMYの3色を取り除き、Kトナーに置き換えることも行う。
【0037】
このようなUCR処理を行うことで、黒文字や細線を高品位に出力することが可能である。また、UCR処理は、絵柄のグレーをよりニュートラルに表現したいときなどに使われている。その他、CMYを重ねるよりもカラーバランスなどのことをさほど気にせずに使用できる、などのメリットがある。
【0038】
このため、本実施形態では、画像流れが発生していない通常状態においては、黒画像部でα’=1(α=1)、即ち、100%UCRの処理を行い、すべて単色の黒画像で画像形成を行う。UCR部53でUCR処理されたY2、M2、C2、K2(黒画像部ではY2’、M2’、C2’、K2’)の信号は、調整処理を行われ、プリンタ部20に送出される。そして、それぞれの信号に基づいて各画像形成部Pで画像形成が行われる。
【0039】
[帯電電圧印加の構成]
次に、各画像形成部Pで、帯電ローラ2に帯電電圧を印加して感光ドラム1を帯電させる帯電電圧印加の構成について、図5を用いて説明する。図5(a)に示す様に、帯電電源60から直流電圧に周波数fの交流電圧を重畳した所定の振動電圧(Vdc+Vac)が芯金201を介して帯電ローラ2に印加されることで、回転する感光ドラム1の周面が所定の電位に帯電処理される。
【0040】
このために、帯電ローラ2に対する電圧印加手段である帯電電源60は、直流(DC)電源61と交流(AC)電源62とを有している。制御回路100は、帯電電源S1のDC電源61とAC電源62とを制御して、帯電ローラ2に直流電圧と交流電圧のどちらか、若しくはその両方の重畳電圧を印加させることができる。
【0041】
また、図5(b)に示すように、ブラックの画像形成部Pdにおいては、帯電ローラ2dから感光ドラム1dに流れる直流電流値を測定するための電流検知手段である直流電流値測定回路(電流検出器;以下、単に「測定回路」という。)63を有する。測定回路63から制御手段としての制御回路100に、測定された直流電流値Idcの情報が入力される。
【0042】
制御手段としての制御回路100は、測定回路63から入力される直流電流値の情報から、画像流れを起し得る状態か否かを判別し、それに応じて後述の画像信号処理を制御する機能を有する。本実施形態では、測定回路63が画像流れに関する情報を検知する検知する検知手段であり、画像流れに関する情報は電流値である。
【0043】
また、環境検知手段としての環境センサ64は、プリンタ部20の中(又は周囲)の相対湿度を検知し、その検知した相対湿度の情報を制御回路100に伝達する。また、使用量検知手段としての耐久枚数検知手段(カウンタ)65は、プリンタ部20に搭載された感光ドラム1の使用開始からのA4用紙の枚数に換算した耐久枚数(画像形成枚数)を検知し、その枚数の情報を制御回路100へ伝達する。なお、使用量検知手段は、感光ドラムの駆動時間或いは駆動距離を検知しても良く、更には、この感光ドラムの駆動時間或いは駆動距離のうち、帯電などのバイアスが印加されていた時間或いは印加されている間の感光ドラムの駆動距離を検知しても良い。
【0044】
[画像流れ検知]
次に、ブラックの画像形成部Pdにおける、画像流れを検知するシステムについて説明する。なお、以下の説明において、電圧値、電流値の大小関係について言及する場合は、便宜上、その絶対値についての大小関係を言うものとする。
【0045】
図6は、帯電ローラ2dに印加した直流電圧と感光ドラム1dの表面電位との関係を、温度23℃、相対湿度50%の環境で測定した結果を示すグラフである。印加する直流電圧を大きくしていくと、感光ドラム1d上の表面電位が始めはまったく増加しないが、ある電圧値から表面電位が増加し始める。ここが放電開始電圧Vthとなる。本実施形態では−550Vが放電開始電圧Vthとなる。
【0046】
放電開始電圧Vthは、帯電ローラ2dと感光ドラム1dとの空隙や、感光体層厚み、感光体層比誘電率から決定される。放電開始電圧Vth以上の電圧を帯電ローラ2dに印加すると、パッシェンの法則に基づいて上記空隙での放電現像が発生し、感光ドラム1dに電荷が載る。
【0047】
また、図7は、ブラックの画像形成部Pdにおける、帯電ローラ2dに印加した直流電圧と、測定回路63に流れこんだ直流電流値との関係を示す。図7では、画像流れが発生していない感光ドラム1dと、画像流れが発生している感光ドラム1dとについて、図6の場合と同じ条件で測定した結果を示している。
【0048】
図7より、画像流れが発生していない感光ドラム1dは、放電開始電圧Vthよりも低い印加電圧では、測定回路63によって直流電流値はほとんど検出されないことが分かる。これに対して、画像流れが発生している感光ドラム1dでは、放電開始電圧Vthよりも低い印加電圧でも、測定回路63によって直流電流値が検出されることが分かる。
【0049】
この現象は、以下のメカニズムで発生している。即ち、帯電処理を行うことで感光ドラム1dの表面に放電生成物が蓄積し、その放電生成物が感光ドラム1d上にあり続けると、それが空気中の水分を吸着し、感光ドラム1dの表面の電気抵抗が低下し、画像流れが生じる。このような画像流れが発生する感光ドラム1dは、パッシェンの法則に基づく放電開始電圧Vth未満の直流電圧(所定の電圧、本実施形態では−500V)を印加した場合においても、微小に電荷が載り始める。これは、感光ドラム1dの表面の電気抵抗が低下することによって「注入帯電」することによる。図8は、このメカニズムを模式的に示すものである。
【0050】
画像流れを起さない通常状態では、帯電ローラ2dに−500Vの直流電圧を印加した場合、図8(a)に示す様に、帯電ローラ2dの通過前後において、感光ドラム1dの表面電位の変化は起こらない。即ち、帯電ローラ2dから感光ドラム1dへの電荷移動は起こらない。そのため、このような通常状態では電流は流れず、測定回路63によって直流電流値は検出されないか、検出されてとしても極めて小さい値である。一方、このような画像流れを起こさない通常状態でも、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth以上の直流電圧を印加すると、図8(b)に示す様に、帯電ローラ2dの通過前後において、感光ドラム1dに電荷が載る。
【0051】
しかし、画像流れが生じる状態では、表面の電気抵抗が下がっているため、放電開始電圧Vth未満でもわずかに注入帯電してしまう。このため、図8(c)に示す様に、帯電ローラ2dの下流側において感光ドラム1の表面にわずかに電荷が載る。この結果、帯電ローラ2dの前後に電位差が生じ、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧である所定の電圧を印加した場合にも直流電流が流れ、測定回路63によって直流電流値が検出される。
【0052】
本実施形態では、このような現象を利用して、感光ドラム1dが画像流れを発生させ得る状態であるか否かを判別することとした(即ち、画像流れ検知を行うこととした)。具体的には、相対湿度50%の環境下において、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧である−500V(所定の電圧)を印加し、その時の直流電流値Idcを測定回路63によって測定する。そして、測定回路63により検知した電流値Idcが所定の値以上であるか、未満であるかにより、感光ドラム1d上に画像流れの度合いを判別する。
【0053】
図9は、検知された直流電流値Idc(絶対値)と、出力される画像上における画像流れの発生との関係を示したものである。ここでは、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを出力し、画像パッチの濃度の低下率を測定している。即ち、ブラックの画像形成部Pdにより、反射濃度が0.5となるようなハーフトーン画像を出力し、実際に形成された画像の濃度を測定し、その低下率を求めた。なお、反射濃度は、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite(株)製)により測定した。
【0054】
そして、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5の画像パッチの濃度が0.4以下、つまり濃度の低下率が80%以下になった時点で、画像流れによる画像不良(濃度低下)が発生と判断した。図9より、測定回路63が測定した直流電流値Idcの絶対値が2μA以上であるとき、画像流れによる濃度低下発生の虞があることがわかる。このため、本実施形態では、画像流れの度合いを判別するための所定の値を2μAとしている。即ち、帯電ローラに所定の電圧(−500V)を印加した時に、測定回路63により検知した電流の絶対値が、所定の値(2μA)以上であるか否かにより、後述するように、制御のモードを変更するようにしている。
【0055】
[動作シーケンス]
ここで、本実施形態の画像形成装置の動作シーケンスについて、図10を用いて説明する。
【0056】
a.初期回転動作(前多回転工程)
プリンタ部20の起動時の始動動作期間(起動動作期間、ウォーミング期間)である。電源スイッチのオンにより、感光ドラム1を回転駆動させ、又定着装置9の所定温度への立ち上げ等、所定のプロセス機器の準備動作を実行させる。
【0057】
b.印字準備回転動作(前回転工程)
プリント信号のオンから実際に画像形成(印字)工程動作がなされるまでの間の画像形成前の準備回転動作期間であり、初期回転動作中にプリント信号が入力したときには初期回転動作に引き続いて実行される。プリント信号の入力がないときには初期回転動作の終了後にメインモータの駆動が一旦停止されて感光ドラム1の回転駆動が停止され、プリンタ部20はプリント信号が入力されるまでスタンバイ(待機)状態に保たれる。プリント信号が入力すると印字準備回転動作が実行される。
【0058】
本実施形態では、この印字準備回転動作期間において、画像形成部Pd(黒画像形成部)における画像流れを起し得る状態か否かを判別し、画像流れが発生する虞がある場合には、画像信号処理を変更する。これについては後述する。
【0059】
c.印字工程(画像形成工程、作像工程)、転写工程
所定の印字準備回転動作が終了すると、引き続いて感光ドラム1に対する作像プロセスが実行される。そして、感光ドラム1の表面に形成されたトナー像の中間転写ベルト12への転写、記録材Sへの転写、定着装置9によるトナー像の定着処理がなされて、画像形成物が装置外に出力される。連続印字(連続プリント)モードの場合は、上記の印字工程が所定の設定プリント枚数n分繰り返して実行される。
【0060】
d.紙間工程
連続印字モードにおいて、一の記録材Sの後端部が二次転写部T2を通過した後、次の記録材Sの先端部が二次転写部T2に到達するまでの間の、二次転写部T2における記録材Sの非通過状態期間である。
【0061】
e.後回転動作
最後の記録材Sの印字工程が終了した後もしばらくの間メインモータの駆動を継続させて感光ドラム1を回転駆動させ、所定の後動作を実行させる期間である。
【0062】
f.スタンバイ
所定の後回転動作が終了すると、メインモータの駆動が停止されて感光ドラム1の回転駆動が停止され、プリンタ部20は次のプリントスタート信号が入力するまでスタンバイ状態に保たれる。1枚だけのプリントの場合は、そのプリント終了後、プリンタ部20は後回転動作を経てスタンバイ状態になる。スタンバイ状態において、プリントスタート信号が入力すると、プリンタ部20は前回転工程に移行する。
【0063】
なお、上記cの印字工程時が画像形成時であり、上記aの初期回転動作、上記bの前回転動作、上記dの紙間工程、上記eの後回転動作が非画像形成時である。
【0064】
[黒画像部の画像形成モード]
本実施形態の場合、制御回路100は、黒色の画像を画像形成部Pd(黒画像形成部)のみを用いて形成する第1モードと、黒色の画像を画像形成部Pa、Pb、Pc(複数のカラー画像形成部)を用いて形成する第2モードとの何れかを実行する。即ち、第1モードとは、前述のUCR比率α、α´が1の場合であり、黒画像部を画像形成部Pdのみにより形成するモードである。一方、第2モードとは、UCR比率α、α´が1未満或いは0の場合であり、黒画像部を画像形成部Pdと画像形成部Pa、Pb、Pcとにより形成する、或いは、画像形成部Pa、Pb、Pcのみにより形成するモードである。
【0065】
そして、本実施形態では、画像流れに関する情報、即ち、帯電ローラ2に所定の電圧を印加した時に、測定回路63により検知される電流値(検知結果)に基づいて、第1モードと第2モードとの何れかを実行するようにしている。具体的には、測定回路63により検知した電流の絶対値が、所定の値未満である場合に第1モードを実行し、所定の値以上である場合に第2モードを実行する。本実施形態では、帯電ローラ2dに−500Vを印加し、測定回路63により検知した電流の絶対値が2μA未満である場合にα、α´を1とし、2μA以上である場合にα、α´を0としている。
【0066】
[制御フロー]
このような本実施形態の制御フローについて、図11を用いて説明する。図11は、上述のような画像流れ検知を行い、黒画像形成部Pdにおいて画像流れが発生する虞がある場合に、無彩色(前述の図4)の場合の黒画像部のUCR比率を変更する制御のフローチャートの一例である。なお、有彩色(前述の図3)の場合も、α´をαに置き換えるだけで、ほぼ同様の制御となる。
【0067】
まず、制御回路100は、画像形成の信号が入力された際に、画像流れ検知のタイミングであるか否かを判断する(S01)。例えば、前述の印字準備回転動作期間であるか否かを判断する。なお、画像流れ検知のタイミングは、印字準備回転動作に必ず実行することが、画像流れをより確実に低減する上では好ましい。しかし、画像形成装置の出力物の量産性などを考慮すると、以下の条件の何れか或いは組み合わせを満たす場合に、実行するようにしても良い。即ち、電源ON直後の画像形成前には必ず実行する。環境センサ64が所定の相対湿度(例えば30%)以上を検知した場合に実行する。前回の画像流れの検知から画像形成枚数がN枚以上回転した後(感光ドラムがM回以上回転した後)、即ち、耐久枚数検知手段65が所定の値以上を検知したときに実行する。
【0068】
また、これらの条件を満たせば、印字準備回転動作期間以外の非画像形成時、例えば、初期回転動作時、紙間工程時、後回転動作時、更には、これらのうちの複数の非画像形成時に実行するようにしても良い。このように、非画像形成時の何れかで実行する場合として、例えば、スタンバイ中に画像形成装置が置かれている部屋の温湿度が、その部屋の空調のON或いはOFFなどにより大きく変化した場合がある。
【0069】
次に、画像流れ検知のタイミングでなければ(S01のNO)、そのままの状態で画像形成が開始される(S07)。一方、画像流れ検知のタイミングであれば(S01のYES)、感光ドラム1dを回転させ、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧(所定の電圧)、本実施形態では−500Vの直流電圧を印加する。この時、前露光装置7dはON、露光装置3dはOFF、現像電圧及び転写電圧はいずれもOFFとする(S02)。このような電圧設定にすることで、画像流れが発生し得る感光ドラム1dならば、放電開始電圧Vth未満の直流電圧が印加された場合でも、帯電ローラ2dから感光ドラム1dへ電荷が注入される。この状態で、測定回路63によって直流電流値Idcを検知する(S03)。
【0070】
次に、制御回路100は、測定回路63において検知された直流電流値Idcの絶対値が2μA未満か否かを判断する(S04)。制御回路100は、直流電流値Idcの絶対値が2μA未満であれば(S04のYES)、黒画像部におけるUCR比率α’=1として(S05)、画像形成を実行させる(S07)。一方、制御回路100は、直流電流値Idcの絶対値が2μA以上であれば(S04のNO)、黒画像部におけるUCR比率α’=0として(S06)、画像形成を実行させる(S07)。ここで決定されたα’の値は、制御回路100が記録部(図示せず)に記録し、画像流れ検知制御が再び行われるまで保存される。この制御フローの各種機器のコントロールは制御回路100にて行う。
【0071】
本実施形態によれば、測定回路63の検知結果に基づいて、第1モードと第2モードとの何れかを選択して黒画像を形成するため、黒画像形成部で画像流れが生じ易い場合でも、画像不良の発生を低減できる。即ち、測定回路63により検知した電流値が所定の値以上である場合、黒画像形成部である画像形成部Pdで画像流れが生じ易い状態である。これは、画像形成部Pdは、感光ドラム1dを表面硬度が高いアモルファスシリコンにより構成しているため、他の画像形成部よりも放電生成物が多く付着しているためである。これに対して、他の画像形成部の感光ドラムは、画像形成部Pdで画像流れが生じ易い状況でも、放電生成物の付着が少ないため、画像形成部Pdよりも画像流れが生じにくい。
【0072】
このため、本実施形態では、測定回路63の検知結果により、画像形成部Pdの感光ドラム1dに画像流れが生じ易いと判断した場合には、黒画像部を第2モードにより形成する。第2モードでは、他の画像形成部Pa、Pb、Pcによりプロセスブラック画像が形成され、これら他の画像形成部Pa、Pb、Pcは画像流れが生じにくいため、画像形成部Pdで画像流れが生じ易い場合でも、画像不良の発生を低減できる。
【0073】
なお、画像形成部Pdの感光ドラム1dを他の画像形成部の感光ドラムと同様に構成し、表面硬度を同じとしても、画像形成部Pdの感光ドラム1dは他の画像形成部よりも画像流れが生じ易い。これは、前述したように、黒色の画像を形成する画像形成部Pdの使用頻度が他の画像形成部よりも高いため、放電生成物が付着し易いためである。また、本実施形態のように、画像形成部Pdを定着装置9から最も離れた位置に配置した場合、他の画像形成部よりも画像形成部Pdの水分が蒸発しにくいため、やはり、他の画像形成部よりも放電生成物による画像流れが生じ易くなる。このような場合であっても、本実施形態のように、測定回路63の検知結果により感光ドラム1dで画像流れが生じ易いか否かを判断して、上述の制御を実行すれば、画像不良の発生を低減できる。
【0074】
[本実施形態の効果の確認]
上述のような本実施形態の効果を確認するために行った実験結果を、上述の制御を行って画像形成した場合を実施例1、行わずに画像形成した場合を比較例1として表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
ここでは、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、0〜−2.5μAとなるような状態の感光ドラム1dを用いた。即ち、使用期間や使用中の放電量などの使用状況が異なる複数の感光ドラム1dを用意した。例えば、使用期間が長い感光ドラムは、付着する放電生成物が多く、流れる電流値が多くなる。また、使用中の帯電ローラから印加される電圧が高いと、やはり、放電生成物が多くなり、流れる電流が多くなる。本実施形態では、このように表面に付着している放電生成物の量を異ならせて、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、0〜−2.5μAとなるような状態の複数の感光ドラム1dを用意した。
【0077】
このように用意した各感光ドラム1dに、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5で出力できる条件において出力した。そして、実際に形成された画像の濃度を測定し、その低下率を求めた。反射濃度は、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite(株)製)により測定した。なお、表1の丸印は濃度低下が殆どなかった場合を、三角印は濃度低下率が80%よりも大きい状態に抑えられた場合を、バツ印は濃度低下率が80%以下となった場合を、それぞれ示している。
【0078】
表1に示すように、比較例1では、Idcの絶対値が2μA以上になる状態であると、画像パッチの濃度が0.4以下まで低下し、画像流れによる画像不良(濃度低下)が発生していると認識されるレベルになった。一方、実施例1では、Idcの絶対値が2μA以上でも、パッチの濃度低下が80%よりも大きい状態に抑えられ、画像流れによる画像不良を低減できた。
【0079】
即ち、実施例1では、Idcの絶対値が2μA以上になる状態であると、上記制御により黒画像部のUCR比率がα’=0と変更され、黒画像部が全てプロセスブラック画像に置き換わる。プロセスブラック画像を形成する、イエロー、マゼンタ、シアンの画像形成部Pa、Pb、Pcにおいては、感光ドラムとして画像流れが発生しにくいOPCドラムを使用している。このため、置き換わったプロセスブラック画像は画像流れによる濃度低下の発生が少ないパッチ画像(実施例1では濃度0.5〜0.45)を出力することができる。
【0080】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図1及び図5を参照しつつ、図12及び図13を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧である−500Vを印加したときに、絶対値が2μA以上の直流電流値Idcが検出されるか否かで、UCR比率α’を0か1かに切り替えた。
【0081】
このような第1の実施形態の場合、必要以上に黒画像をプロセスブラック画像に置き換えることをしない構成であるという利点がある。一方、閾値の前後で急激にUCR比率α’が変更される構成であり、例えば、ある画像形成ジョブとそれに続く画像形成ジョブでUCR比率α’が1から0に変更される場合がある。そのような場合には、前後の画像形成ジョブで形成された画像を比較したときに、黒単色で形成した画像の色味と、プロセスブラックで形成した画像の色味と、の違いが目立ち易い。したがって、画像品質の点では、α’の値を段階的に変化させる構成が好ましい。
【0082】
そこで、本実施形態では、制御回路100は、第2モードで、測定回路63により検知した電流の絶対値が大きいほど、黒色の画像を構成する黒画像のプロセスブラック画像に対する黒画像比率を小さくしている。具体的には、図12の実線に示すように、検出される直流電流値Idcに応じて、α’の値を段階的に変化させる構成としている。即ち、検出される直流電流値Idcの絶対値が増加するにしたがって、α’の値が1から0に向けて減少していくように設定している。なお、図12では、直流電流値Idcを絶対値で示している。
【0083】
このような本実施形態の制御フローについて、図13を用いて説明する。まず、制御回路100は、画像形成の信号が入力された際に、画像流れ検知のタイミングであるか否かを判断する(S11)。このタイミングについては、図11のS01と同様である。画像流れ検知のタイミングでなければ(S11のNO)、そのままの状態で画像形成が開始される(S15)。
【0084】
一方、画像流れ検知のタイミングであれば(S11のYES)、感光ドラム1dを回転させ、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧(所定の電圧)、本実施形態では−500Vの直流電圧を印加させる。この時、前露光装置7dはON、露光装置3dはOFF、現像電圧及び転写電圧はいずれもOFFとする(S12)。このような電圧設定にすることで、画像流れが発生し得る感光ドラム1dならば、放電開始電圧Vth未満の直流電圧が印加された場合でも、帯電ローラ2dから感光ドラム1dへ電荷が注入される。この状態で、測定回路63によって直流電流値Idcを検知する(S13)。
【0085】
ここで、制御回路100は、測定回路63において測定された直流電流値Idcの絶対値に応じて、図12のようにα’の値を変更し(S14)、画像形成を実行させる(S15)。ここで決定されたα’の値は、制御回路100が記録部(図示せず)に記録し、画像流れ検知制御が再び行われるまで保存される。この制御フローの各種機器のコントロールは制御回路100にて行う。
【0086】
本実施形態によれば、測定回路63の検知結果に応じて、黒画像比率を変更しているため、感光ドラム1dの画像流れが生じる度合いに応じた制御が可能となる。このため、より画像品位を向上させられる。特に、画像形成ジョブを連続で行った場合に、前後の画像形成ジョブで色味の変化が抑えられる。その他の構造及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0087】
[本実施形態の効果の確認]
上述のような本実施形態の効果を確認するために行った実験結果を、上述の制御を行って画像形成した場合を実施例2、行わずに画像形成した場合を比較例2(比較例1と同等)として表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
ここでは、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、前述の表1の実験と同様に、0〜−2.5μAとなるような状態の複数の感光ドラム1dを用いた。また、このような各感光ドラム1dに、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5で出力できる条件において出力した。
【0090】
そして、実際に形成された画像の濃度を測定し、その低下率を求めた。反射濃度は、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite(株)製)により測定した。なお、表2の丸印は濃度低下が殆どなかった場合を、三角印は濃度低下率が80%よりも大きい状態に抑えられた場合を、バツ印は濃度低下率が80%以下となった場合を、それぞれ示している。
【0091】
表2に示すように、比較例2では、Idcの絶対値が2μA以上になる状態であると、画像パッチの濃度が0.4以下まで低下し、画像流れによる画像不良(濃度低下)が発生していると認識されるレベルになった。一方、実施例2では、Idcが何れの値であっても、濃度低下が殆どない良好な画像が得られた。
【0092】
即ち、実施例2では、Idcが検出される状態であると、上記制御により黒画像部のUCR比率α’が段階的に変更され、その比率に応じて黒画像部がプロセスブラック画像に置き換わる。実施例2では、Idcが増加していくほどα’が減少し、黒画像の比率が下がってプロセスブラック画像の比率が上がる構成である。
【0093】
プロセスブラック画像を形成する、イエロー、マゼンタ、シアンの画像形成部Pa、Pb、Pcにおいては、感光ドラムとして画像流れが発生しにくいOPCドラムを使用している。このため、置き換わったプロセスブラック画像は画像流れによる濃度低下の発生がないパッチ画像(濃度0.5)を出力することができる。
【0094】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図1及び図5を参照しつつ、図14ないし図16を用いて説明する。上述の第1、第2の実施形態では、相対湿度50%の環境下における、画像流れ検知とそれに基づくUCR比率α’の制御とを例として説明した。しかしながら、環境が変わると、帯電ローラ2dや感光ドラム1d自体の電気抵抗も変化する。そのため、例えば相対温度が上がった場合には、画像流れが発生し得る状態となった際に測定回路63によって検知される直流電流値Idcは増加する。
【0095】
図14は、環境センサ64によって検出されたプリンタ部20内の相対湿度と、画像流れによる画像不良(濃度低下)が発生する際に感光ドラム1dに流れる直流電流値Idc(絶対値)と、の関係を示した図である。ここで、濃度低下が発生しているか否かの判断は、第1、第2の実施形態と同様に、以下の基準によって判断した。即ち、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5で出力できる条件において出力した。そして、画像パッチの濃度が0.4以下まで低下したときに、画像流れによる画像不良(濃度低下)が発生していると判断した。
【0096】
図14から明らかなように、相対湿度の上昇に伴い、画像流れにより画像不良が発生するので、測定回路63により検知される電流値の絶対値が上昇する。したがって、より精密な制御のためには、感光ドラム1dが画像流れを発生し得る状態か否かを判断するための閾値である直流電流値Idcの設定を、環境に応じて可変にすることが好ましい。
【0097】
そこで、本実施形態では、制御回路100は、環境センサ64により検知した相対湿度が高いほど、測定回路63により検知した電流の絶対値の上昇に対する黒画像比率の減少率を小さくしている。具体的には、図15に示すように、検出される相対温度に応じて、測定回路63の電流値の絶対値の上昇に伴うα’減少率を段階的に変化させる構成としている。即ち、検出される直流電流値Idcが増加するにしたがって、どの相対湿度であってもα’の値は1から0に向けて減少していくが、検出される相対湿度が高いほど直流電流値Idcの上昇に対するα’の値の減少率が小さくなるように設定している。なお、図15では、直流電流値Idcを絶対値で示している。
【0098】
このような本実施形態の制御フローについて、図16を用いて説明する。まず、制御回路100は、画像形成の信号が入力された際に、画像流れ検知のタイミングであるか否かを判断する(S21)。このタイミングについては、図11のS01と同様である。画像流れ検知のタイミングでなければ(S21のNO)、そのままの状態で画像形成が開始される(S26)。
【0099】
一方、画像流れ検知のタイミングであれば(S21のYES)、まずプリンタ部20内の相対湿度を環境センサ64に検知させ、その情報を制御回路100に伝達させる(S22)。その後、制御回路100は、感光ドラム1dを回転させ、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧(所定の電圧)、本実施形態では−500Vの直流電圧を印加させる。この時、前露光装置7dはON、露光装置3dはOFF、現像電圧及び転写電圧はいずれもOFFとする(S23)。このような電圧設定にすることで、画像流れが発生し得る感光ドラム1dならば、放電開始電圧Vth未満の直流電圧が印加された場合でも、帯電ローラ2dから感光ドラム1dへ電荷が注入される。この状態で、測定回路63によって直流電流値Idcを検知する(S24)。
【0100】
ここで、制御回路100は、測定回路63において測定された直流電流値Idcと、環境センサ64によって検知された相対湿度と、に応じて、図15のようにα’の値を変更し(S25)、画像形成を実行させる(S26)。ここで決定されたα’の値は、制御回路100が記録部(図示せず)に記録し、画像流れ検知制御が再び行われるまで保存される。この制御フローの各種機器のコントロールは制御回路100にて行う。
【0101】
本実施形態によれば、環境センサ64により検知した相対湿度に応じて、測定回路63の電流値の絶対値の上昇に対する黒画像比率、即ち、UCR比率α´の減少率を変更しているため、環境に応じた制御が可能となる。したがって、画像形成装置が置かれている環境が変化しても、高品位な画像を安定して得られる。その他の構造及び作用は、上述の第2の実施形態と同様である。
【0102】
[本実施形態の効果の確認]
上述のような本実施形態の効果を確認するために行った実験結果を、上述のように環境センサ64に検知結果に応じた制御を行って画像形成した場合を実施例3、行わずに画像形成した場合を比較例3として表3に示す。この実験を行った環境では、環境センサ64により検知される相対湿度が20%であった。なお、比較例3では、相対湿度50%のときの、測定回路63の電流値の絶対値の上昇に対するUCR比率α´の減少率で実験を行った。
【0103】
【表3】
【0104】
ここでは、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、前述の表1の実験と同様に、0〜−2.5μAとなるような状態の複数の感光ドラム1dを用いた。また、このような各感光ドラム1dに、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5で出力できる条件において出力した。
【0105】
そして、実際に形成された画像の濃度を測定し、その低下率を求めた。反射濃度は、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite(株)製)により測定した。なお、表3の丸印は濃度低下が殆どなかった場合を、三角印は濃度低下率が80%よりも大きい状態に抑えられた場合を、それぞれ示している。
【0106】
表3に示すように、比較例3では、直流電流値Idcが−0.5〜−1.5μAになる状態のとき、画像不良(濃度低下)と認識されるレベルには至らないものの、画像パッチの濃度が低下した。一方、実施例3では、Idcが何れの値であっても、濃度低下が殆どない良好な画像が得られた。
【0107】
即ち、実施例3では、Idcが検出される状態であると、環境を加味した上記制御により適切な黒画像部のUCR比率α’が算出され、その比率に応じて黒画像部がプロセスブラック画像に置き換わる。置き換わったプロセスブラック画像は画像流れによる濃度低下の発生がないパッチ画像(濃度0.5)を安定して出力することができる。
【0108】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態について、図1及び図5を参照しつつ、図17ないし図20を用いて説明する。上述の第1ないし第3の実施形態では、黒画像部における、画像流れ検知とそれに基づくUCR比率α’の制御を例として説明し、特に、黒画像として画像パッチの濃度を判断基準とした。但し、一般的に潜像の幅が広い画像パッチや写真画像などと比較して、潜像の幅の狭い文字や線(ライン)においては画像流れの影響を受け易く、濃度低下や画像消えが発生し易い傾向にある。そのメカニズムを図17に則して説明する。
【0109】
画像形成においては、先に説明したように、所定の電位(VD電位)に帯電された感光ドラム1上に、プリンタ部20に送出された画像信号に基づいて露光装置30Aにより光像3が照射され、図17中の実線で示すような静電潜像が形成される。光像3を照射された部分の電位(VL電位)は、現像装置の現像電位よりも絶対値が小さく、照射された位置では負極性に帯電したトナーが現像装置から供給されるため、トナー画像が形成され、最終的に出力物として出力される。
【0110】
ここで、画像流れが発生していない通常状態では、光像3が照射した形状どおりに画像が形成される。これに対して、画像流れが発生する状態では、図17中の点線のように潜像がエッジ部から非画像領域に鈍るため、特に潜像のエッジ部で画像がぼけたり、消えたりする。
【0111】
図17(a)に示すように、パッチのように比較的広い面積の潜像であれば、潜像の中心は比較的影響を受けにくいので、エッジ部で多少画像ぼけが生じるが、全体としては画像流れによる影響は小さい。一方、図17(b)に示すように、文字やラインのような面積(幅)の狭い潜像の場合は、エッジ部からの潜像ぼけの影響を受け易く、画像がぼけたり、画像が消えたりする。
【0112】
そこで、本実施形態では、制御回路100は、黒色の画像のうち、所定の画像パターンを有する部分とそれ以外の部分とで、黒画像比率の値を変更している。ここで、所定の画像パターンは、文字と線とのうちの少なくとも何れかである。本実施形態では、測定回路63により検知した電流の絶対値の上昇に対する黒画像比率の減少率を、所定の画像パターンの場合の方がそれ以外の部分の場合よりも大きくしている。
【0113】
このために本実施形態では、図18に示す様に、黒画像部のうち、黒文字或いは線(ライン)を検出する黒文字判定部54を設けている。黒画像判定部52によって無彩色であると判定された領域が黒画像部として判定された後、黒文字判定部54がRGB画像信号に基づき、文字の太さ判定、エッジ検出を行う。ここでは、文字或いは線であると判定された領域が黒文字部として判定され、黒文字判定部54がUCRの係数を制御する信号を出力する。
【0114】
上記のように、文字部においてはパッチや写真画像などの部分と比較して画像流れの影響を受け易い傾向があるので、本実施形態では、検出される直流電流値Idcに応じて、黒文字以外の黒画像部と黒文字部のα’の値をそれぞれ変更する構成としている。
【0115】
より具体的には、図19に示すように、相対湿度50%の環境において、黒文字以外の黒画像部におけるα’の値と黒文字部におけるα’の値とをそれぞれ段階的に変更させる。黒文字以外の黒画像部、黒文字部ともに検出される直流電流値が増加するにしたがって、α’の値が1から0に向けて減少していくが、黒文字部のほうが、直流電流値Idcの上昇に対するα’の値の減少率が大きくなるように設定している。なお、図19では、直流電流値Idcを絶対値で示している。
【0116】
このような本実施形態の制御フローについて、図20を用いて説明する。まず、制御回路100は、画像形成の信号が入力された際に、画像流れ検知のタイミングであるか否かを判断する(S31)。このタイミングについては、図11のS01と同様である。画像流れ検知のタイミングでなければ(S31のNO)、そのままの状態で画像形成が開始される(S35)。
【0117】
一方、画像流れ検知のタイミングであれば(S31のYES)、感光ドラム1dを回転させ、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧(所定の電圧)、本実施形態では−500Vの直流電圧を印加させる。この時、前露光装置7dはON、露光装置3dはOFF、現像電圧及び転写電圧はいずれもOFFとする(S32)。このような電圧設定にすることで、画像流れが発生し得る感光ドラム1dならば、放電開始電圧Vth未満の直流電圧が印加された場合でも、帯電ローラ2dから感光ドラム1dへ電荷が注入される。この状態で、測定回路63によって直流電流値Idcを検知する(S33)。
【0118】
ここで、制御回路100は、測定回路63において測定された直流電流値Idcに応じて、図19のように黒文字以外の黒画像部、および、黒文字部のα’の値をそれぞれ変更し(S34)、画像形成を実行させる(S35)。ここで決定されたα’の値は、制御回路100が記録部(図示せず)に記録し、画像流れ検知制御が再び行われるまで保存される。この制御フローの各種機器のコントロールは制御回路100にて行う。
【0119】
本実施形態によれば、画像流れによる影響が大きい文字や線の画像の場合に、測定回路63の電流値の絶対値の上昇に対する黒画像比率、即ち、UCR比率α´の減少率を大きくしているため、画像流れの影響を低減できる。即ち、文字や線の画像の倍に、それ以外の画像よりも、測定回路63の電流値の絶対値の上昇に対して、早い段階でプロセスブラック画像の比率が大きくしている。このため、線や文字とそれ以外の画像とで同じ制御をした場合に、それ以外の画像で画像ぼけが目立たないが、文字や線の画像がぼけたり、消えたりするような状況であっても、文字や線の画像のぼけの低減、この画像が消えることの防止を図れる。その他の構造及び作用は、前述の第2の実施形態と同様である。
【0120】
[本実施形態の効果の確認]
上述のような本実施形態の効果を確認するために行った実験結果を、上述のように黒文字以外の黒画像部と、黒文字部のα’をそれぞれ変更する制御を行って画像形成した場合を実施例4、行わずに画像形成した場合を比較例4して表4に示す。なお、比較例4で、前述の表2の実験の実施例2と同等である。
【0121】
【表4】
【0122】
ここでは、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、前述の表1の実験と同様に、0〜−2.5μAとなるような状態の複数の感光ドラム1dを用いた。また、このような各感光ドラム1dに、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5で出力できる条件において出力した。
【0123】
そして、実際に形成された黒文字以外の黒画像部の画像の濃度を測定して、その低下率を求めた(表4の上段)。反射濃度は、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite(株)製)により測定した。なお、表4の上段では、丸印は濃度低下が殆どなかった場合を、三角印は濃度低下率が80%よりも大きい状態に抑えられた場合を、バツ印は濃度低下率が80%以下となった場合を、それぞれ示している。
【0124】
表4の上段に示すように、比較例4及び実施例4は、黒文字部以外の黒画像部では良好な画像が得られた。即ち、比較例4、実施例4ともに、Idcが検出される状態であると、上記制御により黒画像部のUCR比率α’が段階的に変更され、その比率に応じて黒画像部がプロセスブラック画像に置き換わる。比較例4、実施例4では、Idcが増加していくほどα’が減少し、黒画像の比率が下がってプロセスブラック画像の比率が上がる構成である。
【0125】
プロセスブラック画像を形成する、イエロー、マゼンタ、シアンの画像形成部Pa、Pb、Pcにおいては、感光ドラムとして画像流れが発生しにくいOPCドラムを使用している。このため、置き換わったプロセスブラック画像は画像流れによる濃度低下の発生がないパッチ画像(濃度0.5)を出力することができる。
【0126】
次に、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、前述の表1の実験と同様に、0〜−2.5μAとなるような状態の複数の感光ドラム1dを用いた。このように用意した各感光ドラム1dに、3ポイント(pt)および5ポイント(pt)のサイズの黒文字を、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が1.2で出力できる条件において出力した。
【0127】
そして、黒文字部の画像状態を目視で判定した。なお、表4の下段では、丸印は画像が消えることも画像がぼけることもなかった場合を、三角印は画像は消えなかったが、画像ぼけが認識できた場合を、バツ印は画像が消えてしまった場合を、それぞれ示している。
【0128】
表4の下段に示すように、比較例4では、黒文字部の文字のサイズが3ポイント(pt)である場合に、画像ぼけが生じたり、画像が消えたりした。一方、実施例4では文字サイズに拘らず、画像が消えることはなかった。即ち、比較例4では、直流電流値Idcに対応するα’の値は、黒文字部と黒文字以外の黒画像部とで同等である。このため、直流電流値Idcが−0.5〜1.0μAになる状態のとき、3ポイントの黒文字が判読不可能となり、画像流れによる画像不良(文字消え)が発生した。
【0129】
一方、実施例4では、文字部であることを考慮した上記制御により適切な黒文字部のUCR比率α’が算出され、置き換わったプロセスブラック画像は画像流れによる文字消えの発生がない黒文字を安定して出力することができた。
【0130】
なお、上述の説明では、黒文字以外の黒画像部と、黒文字部とでUCR比率を変える制御を行った。但し、文字のサイズが小さいほど画像流れによる画像ボケや文字消えが発生し易いため、黒文字部の文字のサイズによって、さらにUCR比率を変更するような制御であっても良い。即ち、上述の説明では、所定の画像パターンとしての文字や線とそれ以外の画像とで区別して、α´の減少率を変更した。これに対して、所定の画像パターンを、所定のサイズ(例えば5ポイント)以下の文字と、所定の太さ(2ポイント)以下の線とのうちの少なくとも何れかとしても良い。
【0131】
具体的には、所定のサイズ以下の文字、或いは、所定の太さ以下の線と、それ以外の文字或いは線とで区別して、α´の減少率を変更するようにしても良い。この場合に、それ以外の文字或いは線と文字や線以外の画像とで区別して、α´の減少率を変更するようにしても良いし、変更しないようにしても良い。また、文字の書体によって、α´の減少率を変更するようにしても良い。例えば、同じポイントの文字でもゴシック体の文字よりも明朝体の文字の方が、α´の減少率を大きくする。
【0132】
また、上述の説明では、所定の画像パターンとそれ以外の画像パターンとで、α´の減少率を変更しているが、所定の画像パターンの場合には、一律にプロセスブラック画像により形成し、それ以外の画像は黒画像により形成するようにしても良い。即ち、所定の画像パターンではα´を0、それ以外の画像ではα´を1としても良い。
【0133】
<その他の実施形態>
以上、本発明を具体的な実施形態に則して説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではない。また、上述の各実施形態を適宜組み合わせて実施可能であり、例えば、第3の実施形態のような、環境センサ64により検知した相対湿度を考慮した制御を、他の実施形態に適用しても良い。また、上述の説明では、主としてα´を用いて説明したが、αを用いても、勿論同様のことが言える。
【0134】
また、上述の各実施形態では、画像流れ検知の際に印加する放電開始電圧Vth未満の所定の電圧を−500Vとしたが、印加する直流電圧は放電開始電圧Vth未満であれば良い。ただし、その際は、画像流れ発生電流値も変化する。
【0135】
また、上述の各実施形態では、画像流れ検知において、直流電流値を検知する際に、帯電前の電位を低く、また一定にするために、前露光装置をONとすることを説明した。しかし、露光以外にも、転写部の後に感光ドラム上に電圧を与える除電装置を用いることも可能である。
【0136】
また、上述の各実施形態では、画像流れに関する情報として感光ドラムに流れ込む直流電流値を利用したが、画像流れ検知は上述の手段に限定されるものではなく、環境や耐久枚数による画像流れ発生予測に基づいて行われても良い。例えば、環境センサ64が検知した相対湿度が所定の値(例えば30%以下)である場合に、本発明の制御を行い、所定の値を超える場合には、その湿度の上昇に応じてα、α´の比率を上げる。また、耐久枚数とは、感光ドラムの使用開始からの枚数、即ち、感光ドラムの使用量であるが、例えば、カウンタ65により検知する枚数に応じて、α、α´を変更する。なお、感光ドラムの使用量は、感光ドラムの駆動時間或いは駆動距離により検知しても良い。更には、この感光ドラムの駆動時間或いは駆動距離のうち、帯電などのバイアスが印加されていた時間或いは印加されている間の感光ドラムの駆動距離により検知しても良い。更に、α、α´を決定する上で、上述の電流値、相対湿度、耐久枚数の何れか或いは全てを組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0137】
1(1a、1b、1c、1d)・・・感光ドラム(像担持体)、2(2a、2b、2c、2d)・・・帯電ローラ(帯電手段)、20・・・プリンタ部、30A・・・露光装置(潜像形成手段)、52・・・黒画像判定部、53・・・UCR部、54・・・黒文字判定部、63・・・直流電流値測定回路(電流検知手段)、64・・・環境センサ(環境検知手段)、100・・・制御回路(制御手段)、Pa、Pb、Pc・・・画像形成部(カラー画像形成部)、Pd・・・画像形成部(黒画像形成部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、レーザビームプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の画像形成部を有するタンデム方式のカラー画像形成装置は、使用可能な記録材の種類が豊富であり、フルカラー画像の品質も高く、高速度でフルカラー画像を得ることができる、という優れた特質を備える。しかしながら、画像形成における用途の多くは黒画像(モノクロ画像)が占めると考えられ、その場合、黒色の現像剤により黒画像を形成する黒画像形成部の感光体においては、他の画像形成部の感光体よりも削れが増大する。そして、黒画像形成部の感光体の摩耗による画像不良が発生し易い。
【0003】
このため、黒画像形成部の感光体については、従来一般的に利用されているOPC感光体よりも高硬度化するなどして、高耐久化を図ることが求められている。例えば、黒画像形成部の感光体のみをアモルファスシリコン系感光体として、黒画像形成部の感光体の高耐久化を図る構造が知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−333393号公報
【特許文献2】特開平11−24358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1、2のように、アモルファスシリコン感光体など硬度の高い感光体を用いると、特に高湿環境下において、「画像流れ」と呼ばれる静電潜像のぼけが生じ易くなる。即ち、硬度の高い感光体を使用している黒画像形成部では、他の画像形成部に比べて画像流れが生じ易くなる。画像流れの発生原因は、以下のように考えられている。
【0006】
主に帯電手段によってオゾンやNOx等の放電生成物が発生し、感光体の表面に付着する。感光体の表面に付着した放電生成物は、転写後に感光体表面に残存している現像剤を除去するためのクリーニングブレードにより削り取られて除去されるが、感光体の表面の摩擦係数が低いため、この削り量は少なくなる。特に、感光体の表面硬度が高いと、この削り量が更に少なくなり、表面に付着した放電生成物が除去されにくくなる。
【0007】
感光体の表面に放電生成物が除去されずに残った場合、この放電生成物が高湿環境下で吸湿して、感光体の表面の電荷保持能力を低下させ、「画像流れ」と呼ばれる静電潜像のぼけを発生させる。したがって、特に感光体の硬度が高い場合には、付着した放電生成物はますます除去されにくくなり、画像流れが生じ易くなる。
【0008】
また、黒画像形成部は、一般的に定着装置から最も離れた位置に配置される場合が多く、この場合、黒画像形成部の感光体が最も温まりにくい。したがって、黒画像形成部の感光体に付着した放電生成物が水分を吸着し易く、この点からも画像流れが生じ易くなる。
【0009】
更に、画像形成における黒画像の形成比率が高いことから、黒画像形成部の使用頻度が他の画像形成部よりも高くなる。このため、他の画像形成部よりも黒画像形成部の感光体に放電生成物が多く蓄積されることになり、やはり、黒画像形成部で画像流れが生じ易い傾向となる。
【0010】
画像流れの対策としては、感光体の内部や感光体の近傍にヒータを設置し、感光体の表面の温度を上げることで感光体の表面を乾燥させることが一般的である。但し、電源投入直後など十分にこれらの手段の効果が得られない段階で画像形成されると、画像流れが発生してしまう場合がある。画像流れが生じると、画像がぼけたり、消えたりするなどして、出力物に画像不良が生じる可能性がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑み、黒画像形成部で画像流れが生じ易い場合でも、画像不良の発生を低減できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、黒色の現像剤により黒画像を形成する黒画像形成部と、それぞれ黒以外の色の現像剤により画像を形成し、各色を組み合わせることにより黒色或いは黒色に近い色のプロセスブラック画像を形成可能な複数のカラー画像形成部と、前記黒画像形成部及び前記複数のカラー画像形成部を制御する制御手段と、を備え、前記黒画像形成部及び前記複数のカラー画像形成部は、それぞれ、像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像担持体に静電潜像を形成する潜像形成手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像剤で現像する現像手段と、を有する画像形成装置において、前記黒画像形成部の画像流れに関する情報を検知する検知手段を有し、前記制御手段は、前記検知手段の検知結果に基づいて、黒色の画像を前記黒画像形成部のみを用いて形成する第1モードと、黒色の画像を前記複数のカラー画像形成部を用いて形成する第2モードとの何れかを実行する、ことを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検知手段の検知結果に基づいて、第1モードと第2モードとの何れかを選択して黒画像を形成するため、黒画像形成部で画像流れが生じ易い場合でも、画像不良の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図2】第1の実施形態の画像形成装置における画像信号の処理を示すブロック図。
【図3】画像信号のUCR処理を説明するために、(a)はUCR比率が100%の場合を、(b)はUCR比率が50%の場合を、それぞれ示す模式図。
【図4】黒画像部の画像信号のUCR処理を説明するために、(a)はUCR比率が100%の場合を、(b)はUCR比率が50%の場合を、それぞれ示す模式図。
【図5】第1の実施の形態における帯電ローラに対する帯電電圧印加の構成の、(a)は全色共通部分を、(b)は黒画像形成部の特徴的部分を、それぞれ示すブロック図。
【図6】帯電直流電圧と感光ドラムの表面電位との関係の一例を示すグラフ。
【図7】帯電直流電圧と測定回路に流れ込んだ直流電流値との関係の一例を、画像流れが発生している場合と、発生していない場合とで示すグラフ。
【図8】放電開始電圧未満の帯電直流電圧印加時に感光ドラム上に電荷が載るメカニズムを説明するための模式図。
【図9】測定回路に流れ込む直流電流値と、画像流れによる濃度低下の関係を示す図。
【図10】画像形成装置の動作シーケンスを説明するための図。
【図11】第1の実施形態における制御フローチャート。
【図12】本発明の第2の実施形態における、測定回路に流れ込む直流電流値と、黒画像部のUCR比率との関係を示す図。
【図13】第2の実施形態における制御フローチャート。
【図14】各相対湿度における、画像流れによる濃度低下が起こる直流電流値の閾値を示す図。
【図15】本発明の第3の実施形態における、各相対湿度での測定回路に流れ込む直流電流値と、黒画像部のUCR比率との関係を示す図。
【図16】第3の実施形態における制御フローチャート。
【図17】画像流れが発生した際の、(a)パッチ部、および(b)文字部における、潜像への影響を説明する模式図。
【図18】本発明の第4の実施形態の画像形成装置における画像信号の処理を示すブロック図。
【図19】第4の実施形態における、測定回路に流れ込む直流電流値と、黒文字以外の黒画像部および黒文字部のUCR比率と、の関係を示す図。
【図20】第4の実施形態における制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図11を用いて説明する。まず、図1により本実施形態の画像形成装置の全体構成について説明する。
【0016】
[画像形成装置]
画像形成装置のプリンタ部20は、複数の画像形成部P(Pa、Pb、Pc、Pd)を備えている。Paがイエロー、Pbがマゼンタ、Pcがシアン、Pdがブラック(黒色)を形成する画像形成部である。したがって、Pdが黒画像形成部、Pa、Pb、Pcが複数のカラー画像形成部に相当する。画像形成部Pdは、黒色の現像剤(ブラックのトナー)により黒画像を形成する。
【0017】
一方、その他の画像形成部Pa、Pb、Pcは、それぞれ黒以外の色の現像剤(イエロー、マゼンタ、シアンの各トナー)により各色の画像を形成する。また、画像形成部Pa、Pb、Pcは、各色を組み合わせることにより黒色或いは黒色に近い色のプロセスブラック画像を形成可能である。即ち、イエロー、マゼンタ、シアンのトナー像を全て重ねることにより、ほぼ黒色の画像が形成される。本実施形態では、このように画像形成部Pa、Pb、Pcにより形成されるほぼ黒色の画像をプロセスブラック画像と言う。
【0018】
なお、各画像形成部の共通部分を説明する場合には単に画像形成部Pと記載し、色を区別する際には、適宜、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdと記載する。他の装置、部材においても符号の記載方法は同様である。
【0019】
各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ、像担持体であるドラム状の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」という。)1を備える。即ち、それぞれ、イエロー用感光ドラム1a、マゼンタ用感光ドラム1b、シアン用感光ドラム1c、ブラック用感光ドラム1dを備えている。イエロー用感光ドラム1a、マゼンタ用感光ドラム1b、シアン用感光ドラム1c、ブラック用感光ドラム1dは、画像形成時には、それぞれ矢印方向に回転する。
【0020】
また、本実施形態の場合、イエロー用感光ドラム1a、マゼンタ用感光ドラム1b、シアン用感光ドラム1cは、帯電特性が負帯電性の有機光導電体(OPC)感光体としている。一方、ブラック用感光ドラム1dは、帯電特性が負帯電性のa−Si(アモルファスシリコン)感光体としている。
【0021】
a−Si感光体はOPC感光体と比較して高価であるが、硬度が高く、耐久性に優れている。その特性から、本実施形態では、モノクロ出力によって比較的画像出力の量が多いブラック用の感光ドラムとしてa−Siドラムを用いている。一方、比較的画像出力の量が少ないカラー(イエロー、マゼンタ、シアン)用の感光ドラムとして安価なOPCドラムを用いている。したがって、黒画像形成部である画像形成部Pdの感光ドラム1dの表面硬度は、複数のカラー画像形成部である画像形成部Pa、Pb、Pcの感光ドラム1a、1b、1cの表面硬度よりも高い。
【0022】
各々の感光ドラム1a、1b、1c、1d表面は、帯電手段としての帯電ローラ2(2a、2b、2c、2d)により一様に帯電される。そして、帯電した各感光ドラム1表面に、分解色毎に潜像形成手段である露光装置30Aにより光像3(3a、3b、3c、3d)が照射され、各感光ドラム1上にそれぞれ静電潜像が形成される。
【0023】
各感光ドラム1上に形成された各静電潜像は、各色の現像装置4、即ち、イエロー用現像装置4a、マゼンタ用現像装置4b、シアン用現像装置4c、ブラック用現像装置4dにより、それぞれ反転現像される。各現像装置4には、それぞれ各色の現像剤として、樹脂と顔料を基体としたトナーが充填されており、感光ドラム1a、1b、1c、1d上の各静電潜像はトナー像として現像される。静電潜像の現像時には、各現像装置4にそれぞれ現像バイアスが印加される。
【0024】
本実施形態では、現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれ非磁性トナーと磁性キャリアを混合させて用いる二成分現像剤が装填されているが、トナーのみの一成分現像剤でも問題はない。また、現像装置4a、4b、4c、4d内のトナーは、各色毎のトナー収納部(ホッパー)(図示せず)から、現像装置4内のトナー比率(或いはトナー量)を一定に保つように、所望のタイミングにて随時補給される。
【0025】
感光ドラム1a、1b、1c、1d上に形成された各トナー像は、一次転写部T1(T1a、T1b、T1c、T1d)にて一次転写される。一次転写手段である一次転写ローラ5a、5b、5c、5dは、感光ドラム1a、1b、1c、1d上に形成された各トナー像を転写媒体としての中間転写体(中間転写ベルト)12上に重ねて転写する。このとき、一次転写ローラ5a、5b、5c、5dに一次転写バイアスが印加される。その結果、中間転写ベルト12上にそれぞれのトナー像が順次重ねられてフルカラートナー像が形成される。
【0026】
その後、転写媒体である中間転写ベルト12上のフルカラートナー像は、二次転写部T2にて記録材Sに一括して二次転写される。記録材Sは、収納部13から1枚ずつ搬送され、所望のタイミングにて中間転写ベルト12上のトナー像を記録材に転写する二次転写手段である二次転写ローラ11と中間転写ベルト12との間の二次転写部T2に搬送される。そして、上述のように二次転写部T2にて記録材S上にトナー像が転写される。次いで、記録材Sは搬送部を通り、定着装置(熱ローラ定着器)9にてトナー像を定着され、排紙トレイ或いは用紙後処理装置(不図示)に排紙される。
【0027】
一方、中間転写ベルト12へのトナー像の転写後の感光ドラム1a、1b、1c、1d上に付着した転写残トナーは、それぞれ、クリーニング装置6a、6b、6c、6dのクリーニングブレードにより摺擦され、除去される。これにより、感光ドラム1a、1b、1c、1dの表面が清浄化され、繰り返して画像形成に供される。
【0028】
また、本実施形態では、プリンタ部20は、各感光ドラム1の回転方向(表面移動方向)において、それぞれクリーニング装置6より下流、且つ、帯電ローラ2よりも上流の位置に、前露光装置7を配置している。各感光ドラム1の表面に光照射する前露光手段としての前露光装置7a、7b、7c、7dは、転写工程後に感光ドラム1a、1b、1c、1dの表面に残っている残留電荷を光照射によって除電処理する。そして、帯電工程前の感光ドラム1a、1b、1c、1dの表面電位をゼロ近傍に一定とする。
【0029】
プリンタ部20には、原稿を読み取る原稿読取手段であるリーダ部30、或いは、コンピュータ、ファクシミリなどの外部機器40から画像信号が送出されてくる。それらの画像信号は、画像処理部50において、所定の画像処理(色変換、色分解)を終えた後、分解色毎に露光装置30Aより、光像3a、3b、3c、3dを照射し、各々の感光ドラム1上に静電像を形成する。また、制御手段である制御回路100では、各画像形成部Pを制御するなど、このようなプリンタ部20に係る画像形成の全般を制御している。
【0030】
[画像信号処理]
次に、画像信号の処理について詳しく説明する。図2は、画像処理部50における信号処理を模式的に示したブロック図である。リーダ部30、或いは、コンピュータ、ファクシミリなどの外部機器40から送られてくるRGBの画像信号情報は、画像処理部50において、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の信号に色変換される。
【0031】
まず、LOG変換部51は、入力されたRGB画像信号を設定されたパラメータに基づきYMC画像信号(図中Y1、M1、C1)に変換する輝度濃度変換を行う。一方、黒画像判定部52は、RGB画像信号に基づき彩度判定を行う。ここでは、無彩色であると判定された領域が黒色の画像(黒画像部)として判定され、黒画像判定部52が、次述する下色除去処理(UCR)の係数を制御する信号を出力する。
【0032】
この後、UCR部53において、CMYの3色の信号をK(ブラック)信号とする下色除去処理(Under Color Removal)(以下、「UCR処理」という。)が以下の式にしたがって行われる。
Y2=Y1−α×min(Y1、M1、C1)
M2=M1−α×min(Y1、M1、C1)
C2=C1−α×min(Y1、M1、C1)
K2=α×min(Y1、M1、C1)
ここで、αはUCR比率、即ち、黒画像部を構成する黒画像(画像形成部Pdにより形成される黒色の画像)のプロセスブラック画像(画像形成部Pa、Pb、Pcにより形成されるほぼ黒色の画像)に対する比率(黒画像比率)である。また、0≦α≦1となる。
【0033】
図3に示す様に、Y、M、Cの信号(トナー比率)が異なる有彩色の画像を形成する場合に、UCR処理の可能領域が黒画像部に相当する。したがって、図3(a)に示す様に、α=1のときを100%UCRと呼び、YMCの3色で作成するプロセスブラック画像が、すべてK1色(単色)の黒画像に置き換えられる。同様に、図3(b)に示す様に、例えば、α=0.5のときを50%UCRと呼び、YMCの3色で作成するプロセスブラック画像のうち、50%が単色の黒画像に置き換えられる。
【0034】
次に、図4により、黒画像判定部52で黒画像部であると判定された領域(無彩色の画像)のUCR処理について説明する。UCR処理後の黒画像部のYMCK信号を、それぞれ、Y2’、M2’、C2’、K2’とすると、
Y2’=Y1−α’×min(Y1、M1、C1)
M2’=M1−α’×min(Y1、M1、C1)
C2’=C1−α’×min(Y1、M1、C1)
K2’=α’×min(Y1、M1、C1)
ここで、α’は、上述のαと同様に、黒画像部におけるUCR比率であり、0≦α’≦1となる。また、黒画像と認識される領域は無彩色であるため、一般的に、
Y1=M1=C1=min(Y1、M1、C1)
である。書き換えると、
Y2’=(1−α’)Y1
M2’=(1−α’)Y1
C2’=(1−α’)Y1
K2’=α’×Y1
と表現できる。
【0035】
したがって、図4(a)に示す様に、α’=1のとき、YMCの3色で作成するプロセスブラック画像がすべて単色の黒画像に置き換えられる。このとき、YMCの信号はすべて0となり、Kのみの画像信号となる。同様に、図4(b)に示す様に、例えば、α’=0.5のとき、YMCの3色で作成するプロセスブラック画像のうち、50%が単色の黒画像に置き換えられる。
【0036】
ここで、黒画像部におけるUCR処理の効果について説明する。上述したように、プロセスカラー印刷では、黒やグレーはCMY(シアン、マゼンタ、イエロー)の3色、またはCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の4色のトナーを混ぜても表現できる。しかし、K(ブラック)だけで印刷することが可能なので、ブラック(黒色)の部分から略等量のCMYの3色を取り除き、その分、Kトナーの量を増やすという方法を取る。また、グレーの部分からもCMYの3色を取り除き、Kトナーに置き換えることも行う。
【0037】
このようなUCR処理を行うことで、黒文字や細線を高品位に出力することが可能である。また、UCR処理は、絵柄のグレーをよりニュートラルに表現したいときなどに使われている。その他、CMYを重ねるよりもカラーバランスなどのことをさほど気にせずに使用できる、などのメリットがある。
【0038】
このため、本実施形態では、画像流れが発生していない通常状態においては、黒画像部でα’=1(α=1)、即ち、100%UCRの処理を行い、すべて単色の黒画像で画像形成を行う。UCR部53でUCR処理されたY2、M2、C2、K2(黒画像部ではY2’、M2’、C2’、K2’)の信号は、調整処理を行われ、プリンタ部20に送出される。そして、それぞれの信号に基づいて各画像形成部Pで画像形成が行われる。
【0039】
[帯電電圧印加の構成]
次に、各画像形成部Pで、帯電ローラ2に帯電電圧を印加して感光ドラム1を帯電させる帯電電圧印加の構成について、図5を用いて説明する。図5(a)に示す様に、帯電電源60から直流電圧に周波数fの交流電圧を重畳した所定の振動電圧(Vdc+Vac)が芯金201を介して帯電ローラ2に印加されることで、回転する感光ドラム1の周面が所定の電位に帯電処理される。
【0040】
このために、帯電ローラ2に対する電圧印加手段である帯電電源60は、直流(DC)電源61と交流(AC)電源62とを有している。制御回路100は、帯電電源S1のDC電源61とAC電源62とを制御して、帯電ローラ2に直流電圧と交流電圧のどちらか、若しくはその両方の重畳電圧を印加させることができる。
【0041】
また、図5(b)に示すように、ブラックの画像形成部Pdにおいては、帯電ローラ2dから感光ドラム1dに流れる直流電流値を測定するための電流検知手段である直流電流値測定回路(電流検出器;以下、単に「測定回路」という。)63を有する。測定回路63から制御手段としての制御回路100に、測定された直流電流値Idcの情報が入力される。
【0042】
制御手段としての制御回路100は、測定回路63から入力される直流電流値の情報から、画像流れを起し得る状態か否かを判別し、それに応じて後述の画像信号処理を制御する機能を有する。本実施形態では、測定回路63が画像流れに関する情報を検知する検知する検知手段であり、画像流れに関する情報は電流値である。
【0043】
また、環境検知手段としての環境センサ64は、プリンタ部20の中(又は周囲)の相対湿度を検知し、その検知した相対湿度の情報を制御回路100に伝達する。また、使用量検知手段としての耐久枚数検知手段(カウンタ)65は、プリンタ部20に搭載された感光ドラム1の使用開始からのA4用紙の枚数に換算した耐久枚数(画像形成枚数)を検知し、その枚数の情報を制御回路100へ伝達する。なお、使用量検知手段は、感光ドラムの駆動時間或いは駆動距離を検知しても良く、更には、この感光ドラムの駆動時間或いは駆動距離のうち、帯電などのバイアスが印加されていた時間或いは印加されている間の感光ドラムの駆動距離を検知しても良い。
【0044】
[画像流れ検知]
次に、ブラックの画像形成部Pdにおける、画像流れを検知するシステムについて説明する。なお、以下の説明において、電圧値、電流値の大小関係について言及する場合は、便宜上、その絶対値についての大小関係を言うものとする。
【0045】
図6は、帯電ローラ2dに印加した直流電圧と感光ドラム1dの表面電位との関係を、温度23℃、相対湿度50%の環境で測定した結果を示すグラフである。印加する直流電圧を大きくしていくと、感光ドラム1d上の表面電位が始めはまったく増加しないが、ある電圧値から表面電位が増加し始める。ここが放電開始電圧Vthとなる。本実施形態では−550Vが放電開始電圧Vthとなる。
【0046】
放電開始電圧Vthは、帯電ローラ2dと感光ドラム1dとの空隙や、感光体層厚み、感光体層比誘電率から決定される。放電開始電圧Vth以上の電圧を帯電ローラ2dに印加すると、パッシェンの法則に基づいて上記空隙での放電現像が発生し、感光ドラム1dに電荷が載る。
【0047】
また、図7は、ブラックの画像形成部Pdにおける、帯電ローラ2dに印加した直流電圧と、測定回路63に流れこんだ直流電流値との関係を示す。図7では、画像流れが発生していない感光ドラム1dと、画像流れが発生している感光ドラム1dとについて、図6の場合と同じ条件で測定した結果を示している。
【0048】
図7より、画像流れが発生していない感光ドラム1dは、放電開始電圧Vthよりも低い印加電圧では、測定回路63によって直流電流値はほとんど検出されないことが分かる。これに対して、画像流れが発生している感光ドラム1dでは、放電開始電圧Vthよりも低い印加電圧でも、測定回路63によって直流電流値が検出されることが分かる。
【0049】
この現象は、以下のメカニズムで発生している。即ち、帯電処理を行うことで感光ドラム1dの表面に放電生成物が蓄積し、その放電生成物が感光ドラム1d上にあり続けると、それが空気中の水分を吸着し、感光ドラム1dの表面の電気抵抗が低下し、画像流れが生じる。このような画像流れが発生する感光ドラム1dは、パッシェンの法則に基づく放電開始電圧Vth未満の直流電圧(所定の電圧、本実施形態では−500V)を印加した場合においても、微小に電荷が載り始める。これは、感光ドラム1dの表面の電気抵抗が低下することによって「注入帯電」することによる。図8は、このメカニズムを模式的に示すものである。
【0050】
画像流れを起さない通常状態では、帯電ローラ2dに−500Vの直流電圧を印加した場合、図8(a)に示す様に、帯電ローラ2dの通過前後において、感光ドラム1dの表面電位の変化は起こらない。即ち、帯電ローラ2dから感光ドラム1dへの電荷移動は起こらない。そのため、このような通常状態では電流は流れず、測定回路63によって直流電流値は検出されないか、検出されてとしても極めて小さい値である。一方、このような画像流れを起こさない通常状態でも、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth以上の直流電圧を印加すると、図8(b)に示す様に、帯電ローラ2dの通過前後において、感光ドラム1dに電荷が載る。
【0051】
しかし、画像流れが生じる状態では、表面の電気抵抗が下がっているため、放電開始電圧Vth未満でもわずかに注入帯電してしまう。このため、図8(c)に示す様に、帯電ローラ2dの下流側において感光ドラム1の表面にわずかに電荷が載る。この結果、帯電ローラ2dの前後に電位差が生じ、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧である所定の電圧を印加した場合にも直流電流が流れ、測定回路63によって直流電流値が検出される。
【0052】
本実施形態では、このような現象を利用して、感光ドラム1dが画像流れを発生させ得る状態であるか否かを判別することとした(即ち、画像流れ検知を行うこととした)。具体的には、相対湿度50%の環境下において、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧である−500V(所定の電圧)を印加し、その時の直流電流値Idcを測定回路63によって測定する。そして、測定回路63により検知した電流値Idcが所定の値以上であるか、未満であるかにより、感光ドラム1d上に画像流れの度合いを判別する。
【0053】
図9は、検知された直流電流値Idc(絶対値)と、出力される画像上における画像流れの発生との関係を示したものである。ここでは、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを出力し、画像パッチの濃度の低下率を測定している。即ち、ブラックの画像形成部Pdにより、反射濃度が0.5となるようなハーフトーン画像を出力し、実際に形成された画像の濃度を測定し、その低下率を求めた。なお、反射濃度は、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite(株)製)により測定した。
【0054】
そして、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5の画像パッチの濃度が0.4以下、つまり濃度の低下率が80%以下になった時点で、画像流れによる画像不良(濃度低下)が発生と判断した。図9より、測定回路63が測定した直流電流値Idcの絶対値が2μA以上であるとき、画像流れによる濃度低下発生の虞があることがわかる。このため、本実施形態では、画像流れの度合いを判別するための所定の値を2μAとしている。即ち、帯電ローラに所定の電圧(−500V)を印加した時に、測定回路63により検知した電流の絶対値が、所定の値(2μA)以上であるか否かにより、後述するように、制御のモードを変更するようにしている。
【0055】
[動作シーケンス]
ここで、本実施形態の画像形成装置の動作シーケンスについて、図10を用いて説明する。
【0056】
a.初期回転動作(前多回転工程)
プリンタ部20の起動時の始動動作期間(起動動作期間、ウォーミング期間)である。電源スイッチのオンにより、感光ドラム1を回転駆動させ、又定着装置9の所定温度への立ち上げ等、所定のプロセス機器の準備動作を実行させる。
【0057】
b.印字準備回転動作(前回転工程)
プリント信号のオンから実際に画像形成(印字)工程動作がなされるまでの間の画像形成前の準備回転動作期間であり、初期回転動作中にプリント信号が入力したときには初期回転動作に引き続いて実行される。プリント信号の入力がないときには初期回転動作の終了後にメインモータの駆動が一旦停止されて感光ドラム1の回転駆動が停止され、プリンタ部20はプリント信号が入力されるまでスタンバイ(待機)状態に保たれる。プリント信号が入力すると印字準備回転動作が実行される。
【0058】
本実施形態では、この印字準備回転動作期間において、画像形成部Pd(黒画像形成部)における画像流れを起し得る状態か否かを判別し、画像流れが発生する虞がある場合には、画像信号処理を変更する。これについては後述する。
【0059】
c.印字工程(画像形成工程、作像工程)、転写工程
所定の印字準備回転動作が終了すると、引き続いて感光ドラム1に対する作像プロセスが実行される。そして、感光ドラム1の表面に形成されたトナー像の中間転写ベルト12への転写、記録材Sへの転写、定着装置9によるトナー像の定着処理がなされて、画像形成物が装置外に出力される。連続印字(連続プリント)モードの場合は、上記の印字工程が所定の設定プリント枚数n分繰り返して実行される。
【0060】
d.紙間工程
連続印字モードにおいて、一の記録材Sの後端部が二次転写部T2を通過した後、次の記録材Sの先端部が二次転写部T2に到達するまでの間の、二次転写部T2における記録材Sの非通過状態期間である。
【0061】
e.後回転動作
最後の記録材Sの印字工程が終了した後もしばらくの間メインモータの駆動を継続させて感光ドラム1を回転駆動させ、所定の後動作を実行させる期間である。
【0062】
f.スタンバイ
所定の後回転動作が終了すると、メインモータの駆動が停止されて感光ドラム1の回転駆動が停止され、プリンタ部20は次のプリントスタート信号が入力するまでスタンバイ状態に保たれる。1枚だけのプリントの場合は、そのプリント終了後、プリンタ部20は後回転動作を経てスタンバイ状態になる。スタンバイ状態において、プリントスタート信号が入力すると、プリンタ部20は前回転工程に移行する。
【0063】
なお、上記cの印字工程時が画像形成時であり、上記aの初期回転動作、上記bの前回転動作、上記dの紙間工程、上記eの後回転動作が非画像形成時である。
【0064】
[黒画像部の画像形成モード]
本実施形態の場合、制御回路100は、黒色の画像を画像形成部Pd(黒画像形成部)のみを用いて形成する第1モードと、黒色の画像を画像形成部Pa、Pb、Pc(複数のカラー画像形成部)を用いて形成する第2モードとの何れかを実行する。即ち、第1モードとは、前述のUCR比率α、α´が1の場合であり、黒画像部を画像形成部Pdのみにより形成するモードである。一方、第2モードとは、UCR比率α、α´が1未満或いは0の場合であり、黒画像部を画像形成部Pdと画像形成部Pa、Pb、Pcとにより形成する、或いは、画像形成部Pa、Pb、Pcのみにより形成するモードである。
【0065】
そして、本実施形態では、画像流れに関する情報、即ち、帯電ローラ2に所定の電圧を印加した時に、測定回路63により検知される電流値(検知結果)に基づいて、第1モードと第2モードとの何れかを実行するようにしている。具体的には、測定回路63により検知した電流の絶対値が、所定の値未満である場合に第1モードを実行し、所定の値以上である場合に第2モードを実行する。本実施形態では、帯電ローラ2dに−500Vを印加し、測定回路63により検知した電流の絶対値が2μA未満である場合にα、α´を1とし、2μA以上である場合にα、α´を0としている。
【0066】
[制御フロー]
このような本実施形態の制御フローについて、図11を用いて説明する。図11は、上述のような画像流れ検知を行い、黒画像形成部Pdにおいて画像流れが発生する虞がある場合に、無彩色(前述の図4)の場合の黒画像部のUCR比率を変更する制御のフローチャートの一例である。なお、有彩色(前述の図3)の場合も、α´をαに置き換えるだけで、ほぼ同様の制御となる。
【0067】
まず、制御回路100は、画像形成の信号が入力された際に、画像流れ検知のタイミングであるか否かを判断する(S01)。例えば、前述の印字準備回転動作期間であるか否かを判断する。なお、画像流れ検知のタイミングは、印字準備回転動作に必ず実行することが、画像流れをより確実に低減する上では好ましい。しかし、画像形成装置の出力物の量産性などを考慮すると、以下の条件の何れか或いは組み合わせを満たす場合に、実行するようにしても良い。即ち、電源ON直後の画像形成前には必ず実行する。環境センサ64が所定の相対湿度(例えば30%)以上を検知した場合に実行する。前回の画像流れの検知から画像形成枚数がN枚以上回転した後(感光ドラムがM回以上回転した後)、即ち、耐久枚数検知手段65が所定の値以上を検知したときに実行する。
【0068】
また、これらの条件を満たせば、印字準備回転動作期間以外の非画像形成時、例えば、初期回転動作時、紙間工程時、後回転動作時、更には、これらのうちの複数の非画像形成時に実行するようにしても良い。このように、非画像形成時の何れかで実行する場合として、例えば、スタンバイ中に画像形成装置が置かれている部屋の温湿度が、その部屋の空調のON或いはOFFなどにより大きく変化した場合がある。
【0069】
次に、画像流れ検知のタイミングでなければ(S01のNO)、そのままの状態で画像形成が開始される(S07)。一方、画像流れ検知のタイミングであれば(S01のYES)、感光ドラム1dを回転させ、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧(所定の電圧)、本実施形態では−500Vの直流電圧を印加する。この時、前露光装置7dはON、露光装置3dはOFF、現像電圧及び転写電圧はいずれもOFFとする(S02)。このような電圧設定にすることで、画像流れが発生し得る感光ドラム1dならば、放電開始電圧Vth未満の直流電圧が印加された場合でも、帯電ローラ2dから感光ドラム1dへ電荷が注入される。この状態で、測定回路63によって直流電流値Idcを検知する(S03)。
【0070】
次に、制御回路100は、測定回路63において検知された直流電流値Idcの絶対値が2μA未満か否かを判断する(S04)。制御回路100は、直流電流値Idcの絶対値が2μA未満であれば(S04のYES)、黒画像部におけるUCR比率α’=1として(S05)、画像形成を実行させる(S07)。一方、制御回路100は、直流電流値Idcの絶対値が2μA以上であれば(S04のNO)、黒画像部におけるUCR比率α’=0として(S06)、画像形成を実行させる(S07)。ここで決定されたα’の値は、制御回路100が記録部(図示せず)に記録し、画像流れ検知制御が再び行われるまで保存される。この制御フローの各種機器のコントロールは制御回路100にて行う。
【0071】
本実施形態によれば、測定回路63の検知結果に基づいて、第1モードと第2モードとの何れかを選択して黒画像を形成するため、黒画像形成部で画像流れが生じ易い場合でも、画像不良の発生を低減できる。即ち、測定回路63により検知した電流値が所定の値以上である場合、黒画像形成部である画像形成部Pdで画像流れが生じ易い状態である。これは、画像形成部Pdは、感光ドラム1dを表面硬度が高いアモルファスシリコンにより構成しているため、他の画像形成部よりも放電生成物が多く付着しているためである。これに対して、他の画像形成部の感光ドラムは、画像形成部Pdで画像流れが生じ易い状況でも、放電生成物の付着が少ないため、画像形成部Pdよりも画像流れが生じにくい。
【0072】
このため、本実施形態では、測定回路63の検知結果により、画像形成部Pdの感光ドラム1dに画像流れが生じ易いと判断した場合には、黒画像部を第2モードにより形成する。第2モードでは、他の画像形成部Pa、Pb、Pcによりプロセスブラック画像が形成され、これら他の画像形成部Pa、Pb、Pcは画像流れが生じにくいため、画像形成部Pdで画像流れが生じ易い場合でも、画像不良の発生を低減できる。
【0073】
なお、画像形成部Pdの感光ドラム1dを他の画像形成部の感光ドラムと同様に構成し、表面硬度を同じとしても、画像形成部Pdの感光ドラム1dは他の画像形成部よりも画像流れが生じ易い。これは、前述したように、黒色の画像を形成する画像形成部Pdの使用頻度が他の画像形成部よりも高いため、放電生成物が付着し易いためである。また、本実施形態のように、画像形成部Pdを定着装置9から最も離れた位置に配置した場合、他の画像形成部よりも画像形成部Pdの水分が蒸発しにくいため、やはり、他の画像形成部よりも放電生成物による画像流れが生じ易くなる。このような場合であっても、本実施形態のように、測定回路63の検知結果により感光ドラム1dで画像流れが生じ易いか否かを判断して、上述の制御を実行すれば、画像不良の発生を低減できる。
【0074】
[本実施形態の効果の確認]
上述のような本実施形態の効果を確認するために行った実験結果を、上述の制御を行って画像形成した場合を実施例1、行わずに画像形成した場合を比較例1として表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
ここでは、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、0〜−2.5μAとなるような状態の感光ドラム1dを用いた。即ち、使用期間や使用中の放電量などの使用状況が異なる複数の感光ドラム1dを用意した。例えば、使用期間が長い感光ドラムは、付着する放電生成物が多く、流れる電流値が多くなる。また、使用中の帯電ローラから印加される電圧が高いと、やはり、放電生成物が多くなり、流れる電流が多くなる。本実施形態では、このように表面に付着している放電生成物の量を異ならせて、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、0〜−2.5μAとなるような状態の複数の感光ドラム1dを用意した。
【0077】
このように用意した各感光ドラム1dに、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5で出力できる条件において出力した。そして、実際に形成された画像の濃度を測定し、その低下率を求めた。反射濃度は、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite(株)製)により測定した。なお、表1の丸印は濃度低下が殆どなかった場合を、三角印は濃度低下率が80%よりも大きい状態に抑えられた場合を、バツ印は濃度低下率が80%以下となった場合を、それぞれ示している。
【0078】
表1に示すように、比較例1では、Idcの絶対値が2μA以上になる状態であると、画像パッチの濃度が0.4以下まで低下し、画像流れによる画像不良(濃度低下)が発生していると認識されるレベルになった。一方、実施例1では、Idcの絶対値が2μA以上でも、パッチの濃度低下が80%よりも大きい状態に抑えられ、画像流れによる画像不良を低減できた。
【0079】
即ち、実施例1では、Idcの絶対値が2μA以上になる状態であると、上記制御により黒画像部のUCR比率がα’=0と変更され、黒画像部が全てプロセスブラック画像に置き換わる。プロセスブラック画像を形成する、イエロー、マゼンタ、シアンの画像形成部Pa、Pb、Pcにおいては、感光ドラムとして画像流れが発生しにくいOPCドラムを使用している。このため、置き換わったプロセスブラック画像は画像流れによる濃度低下の発生が少ないパッチ画像(実施例1では濃度0.5〜0.45)を出力することができる。
【0080】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図1及び図5を参照しつつ、図12及び図13を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧である−500Vを印加したときに、絶対値が2μA以上の直流電流値Idcが検出されるか否かで、UCR比率α’を0か1かに切り替えた。
【0081】
このような第1の実施形態の場合、必要以上に黒画像をプロセスブラック画像に置き換えることをしない構成であるという利点がある。一方、閾値の前後で急激にUCR比率α’が変更される構成であり、例えば、ある画像形成ジョブとそれに続く画像形成ジョブでUCR比率α’が1から0に変更される場合がある。そのような場合には、前後の画像形成ジョブで形成された画像を比較したときに、黒単色で形成した画像の色味と、プロセスブラックで形成した画像の色味と、の違いが目立ち易い。したがって、画像品質の点では、α’の値を段階的に変化させる構成が好ましい。
【0082】
そこで、本実施形態では、制御回路100は、第2モードで、測定回路63により検知した電流の絶対値が大きいほど、黒色の画像を構成する黒画像のプロセスブラック画像に対する黒画像比率を小さくしている。具体的には、図12の実線に示すように、検出される直流電流値Idcに応じて、α’の値を段階的に変化させる構成としている。即ち、検出される直流電流値Idcの絶対値が増加するにしたがって、α’の値が1から0に向けて減少していくように設定している。なお、図12では、直流電流値Idcを絶対値で示している。
【0083】
このような本実施形態の制御フローについて、図13を用いて説明する。まず、制御回路100は、画像形成の信号が入力された際に、画像流れ検知のタイミングであるか否かを判断する(S11)。このタイミングについては、図11のS01と同様である。画像流れ検知のタイミングでなければ(S11のNO)、そのままの状態で画像形成が開始される(S15)。
【0084】
一方、画像流れ検知のタイミングであれば(S11のYES)、感光ドラム1dを回転させ、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧(所定の電圧)、本実施形態では−500Vの直流電圧を印加させる。この時、前露光装置7dはON、露光装置3dはOFF、現像電圧及び転写電圧はいずれもOFFとする(S12)。このような電圧設定にすることで、画像流れが発生し得る感光ドラム1dならば、放電開始電圧Vth未満の直流電圧が印加された場合でも、帯電ローラ2dから感光ドラム1dへ電荷が注入される。この状態で、測定回路63によって直流電流値Idcを検知する(S13)。
【0085】
ここで、制御回路100は、測定回路63において測定された直流電流値Idcの絶対値に応じて、図12のようにα’の値を変更し(S14)、画像形成を実行させる(S15)。ここで決定されたα’の値は、制御回路100が記録部(図示せず)に記録し、画像流れ検知制御が再び行われるまで保存される。この制御フローの各種機器のコントロールは制御回路100にて行う。
【0086】
本実施形態によれば、測定回路63の検知結果に応じて、黒画像比率を変更しているため、感光ドラム1dの画像流れが生じる度合いに応じた制御が可能となる。このため、より画像品位を向上させられる。特に、画像形成ジョブを連続で行った場合に、前後の画像形成ジョブで色味の変化が抑えられる。その他の構造及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0087】
[本実施形態の効果の確認]
上述のような本実施形態の効果を確認するために行った実験結果を、上述の制御を行って画像形成した場合を実施例2、行わずに画像形成した場合を比較例2(比較例1と同等)として表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
ここでは、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、前述の表1の実験と同様に、0〜−2.5μAとなるような状態の複数の感光ドラム1dを用いた。また、このような各感光ドラム1dに、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5で出力できる条件において出力した。
【0090】
そして、実際に形成された画像の濃度を測定し、その低下率を求めた。反射濃度は、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite(株)製)により測定した。なお、表2の丸印は濃度低下が殆どなかった場合を、三角印は濃度低下率が80%よりも大きい状態に抑えられた場合を、バツ印は濃度低下率が80%以下となった場合を、それぞれ示している。
【0091】
表2に示すように、比較例2では、Idcの絶対値が2μA以上になる状態であると、画像パッチの濃度が0.4以下まで低下し、画像流れによる画像不良(濃度低下)が発生していると認識されるレベルになった。一方、実施例2では、Idcが何れの値であっても、濃度低下が殆どない良好な画像が得られた。
【0092】
即ち、実施例2では、Idcが検出される状態であると、上記制御により黒画像部のUCR比率α’が段階的に変更され、その比率に応じて黒画像部がプロセスブラック画像に置き換わる。実施例2では、Idcが増加していくほどα’が減少し、黒画像の比率が下がってプロセスブラック画像の比率が上がる構成である。
【0093】
プロセスブラック画像を形成する、イエロー、マゼンタ、シアンの画像形成部Pa、Pb、Pcにおいては、感光ドラムとして画像流れが発生しにくいOPCドラムを使用している。このため、置き換わったプロセスブラック画像は画像流れによる濃度低下の発生がないパッチ画像(濃度0.5)を出力することができる。
【0094】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図1及び図5を参照しつつ、図14ないし図16を用いて説明する。上述の第1、第2の実施形態では、相対湿度50%の環境下における、画像流れ検知とそれに基づくUCR比率α’の制御とを例として説明した。しかしながら、環境が変わると、帯電ローラ2dや感光ドラム1d自体の電気抵抗も変化する。そのため、例えば相対温度が上がった場合には、画像流れが発生し得る状態となった際に測定回路63によって検知される直流電流値Idcは増加する。
【0095】
図14は、環境センサ64によって検出されたプリンタ部20内の相対湿度と、画像流れによる画像不良(濃度低下)が発生する際に感光ドラム1dに流れる直流電流値Idc(絶対値)と、の関係を示した図である。ここで、濃度低下が発生しているか否かの判断は、第1、第2の実施形態と同様に、以下の基準によって判断した。即ち、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5で出力できる条件において出力した。そして、画像パッチの濃度が0.4以下まで低下したときに、画像流れによる画像不良(濃度低下)が発生していると判断した。
【0096】
図14から明らかなように、相対湿度の上昇に伴い、画像流れにより画像不良が発生するので、測定回路63により検知される電流値の絶対値が上昇する。したがって、より精密な制御のためには、感光ドラム1dが画像流れを発生し得る状態か否かを判断するための閾値である直流電流値Idcの設定を、環境に応じて可変にすることが好ましい。
【0097】
そこで、本実施形態では、制御回路100は、環境センサ64により検知した相対湿度が高いほど、測定回路63により検知した電流の絶対値の上昇に対する黒画像比率の減少率を小さくしている。具体的には、図15に示すように、検出される相対温度に応じて、測定回路63の電流値の絶対値の上昇に伴うα’減少率を段階的に変化させる構成としている。即ち、検出される直流電流値Idcが増加するにしたがって、どの相対湿度であってもα’の値は1から0に向けて減少していくが、検出される相対湿度が高いほど直流電流値Idcの上昇に対するα’の値の減少率が小さくなるように設定している。なお、図15では、直流電流値Idcを絶対値で示している。
【0098】
このような本実施形態の制御フローについて、図16を用いて説明する。まず、制御回路100は、画像形成の信号が入力された際に、画像流れ検知のタイミングであるか否かを判断する(S21)。このタイミングについては、図11のS01と同様である。画像流れ検知のタイミングでなければ(S21のNO)、そのままの状態で画像形成が開始される(S26)。
【0099】
一方、画像流れ検知のタイミングであれば(S21のYES)、まずプリンタ部20内の相対湿度を環境センサ64に検知させ、その情報を制御回路100に伝達させる(S22)。その後、制御回路100は、感光ドラム1dを回転させ、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧(所定の電圧)、本実施形態では−500Vの直流電圧を印加させる。この時、前露光装置7dはON、露光装置3dはOFF、現像電圧及び転写電圧はいずれもOFFとする(S23)。このような電圧設定にすることで、画像流れが発生し得る感光ドラム1dならば、放電開始電圧Vth未満の直流電圧が印加された場合でも、帯電ローラ2dから感光ドラム1dへ電荷が注入される。この状態で、測定回路63によって直流電流値Idcを検知する(S24)。
【0100】
ここで、制御回路100は、測定回路63において測定された直流電流値Idcと、環境センサ64によって検知された相対湿度と、に応じて、図15のようにα’の値を変更し(S25)、画像形成を実行させる(S26)。ここで決定されたα’の値は、制御回路100が記録部(図示せず)に記録し、画像流れ検知制御が再び行われるまで保存される。この制御フローの各種機器のコントロールは制御回路100にて行う。
【0101】
本実施形態によれば、環境センサ64により検知した相対湿度に応じて、測定回路63の電流値の絶対値の上昇に対する黒画像比率、即ち、UCR比率α´の減少率を変更しているため、環境に応じた制御が可能となる。したがって、画像形成装置が置かれている環境が変化しても、高品位な画像を安定して得られる。その他の構造及び作用は、上述の第2の実施形態と同様である。
【0102】
[本実施形態の効果の確認]
上述のような本実施形態の効果を確認するために行った実験結果を、上述のように環境センサ64に検知結果に応じた制御を行って画像形成した場合を実施例3、行わずに画像形成した場合を比較例3として表3に示す。この実験を行った環境では、環境センサ64により検知される相対湿度が20%であった。なお、比較例3では、相対湿度50%のときの、測定回路63の電流値の絶対値の上昇に対するUCR比率α´の減少率で実験を行った。
【0103】
【表3】
【0104】
ここでは、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、前述の表1の実験と同様に、0〜−2.5μAとなるような状態の複数の感光ドラム1dを用いた。また、このような各感光ドラム1dに、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5で出力できる条件において出力した。
【0105】
そして、実際に形成された画像の濃度を測定し、その低下率を求めた。反射濃度は、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite(株)製)により測定した。なお、表3の丸印は濃度低下が殆どなかった場合を、三角印は濃度低下率が80%よりも大きい状態に抑えられた場合を、それぞれ示している。
【0106】
表3に示すように、比較例3では、直流電流値Idcが−0.5〜−1.5μAになる状態のとき、画像不良(濃度低下)と認識されるレベルには至らないものの、画像パッチの濃度が低下した。一方、実施例3では、Idcが何れの値であっても、濃度低下が殆どない良好な画像が得られた。
【0107】
即ち、実施例3では、Idcが検出される状態であると、環境を加味した上記制御により適切な黒画像部のUCR比率α’が算出され、その比率に応じて黒画像部がプロセスブラック画像に置き換わる。置き換わったプロセスブラック画像は画像流れによる濃度低下の発生がないパッチ画像(濃度0.5)を安定して出力することができる。
【0108】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態について、図1及び図5を参照しつつ、図17ないし図20を用いて説明する。上述の第1ないし第3の実施形態では、黒画像部における、画像流れ検知とそれに基づくUCR比率α’の制御を例として説明し、特に、黒画像として画像パッチの濃度を判断基準とした。但し、一般的に潜像の幅が広い画像パッチや写真画像などと比較して、潜像の幅の狭い文字や線(ライン)においては画像流れの影響を受け易く、濃度低下や画像消えが発生し易い傾向にある。そのメカニズムを図17に則して説明する。
【0109】
画像形成においては、先に説明したように、所定の電位(VD電位)に帯電された感光ドラム1上に、プリンタ部20に送出された画像信号に基づいて露光装置30Aにより光像3が照射され、図17中の実線で示すような静電潜像が形成される。光像3を照射された部分の電位(VL電位)は、現像装置の現像電位よりも絶対値が小さく、照射された位置では負極性に帯電したトナーが現像装置から供給されるため、トナー画像が形成され、最終的に出力物として出力される。
【0110】
ここで、画像流れが発生していない通常状態では、光像3が照射した形状どおりに画像が形成される。これに対して、画像流れが発生する状態では、図17中の点線のように潜像がエッジ部から非画像領域に鈍るため、特に潜像のエッジ部で画像がぼけたり、消えたりする。
【0111】
図17(a)に示すように、パッチのように比較的広い面積の潜像であれば、潜像の中心は比較的影響を受けにくいので、エッジ部で多少画像ぼけが生じるが、全体としては画像流れによる影響は小さい。一方、図17(b)に示すように、文字やラインのような面積(幅)の狭い潜像の場合は、エッジ部からの潜像ぼけの影響を受け易く、画像がぼけたり、画像が消えたりする。
【0112】
そこで、本実施形態では、制御回路100は、黒色の画像のうち、所定の画像パターンを有する部分とそれ以外の部分とで、黒画像比率の値を変更している。ここで、所定の画像パターンは、文字と線とのうちの少なくとも何れかである。本実施形態では、測定回路63により検知した電流の絶対値の上昇に対する黒画像比率の減少率を、所定の画像パターンの場合の方がそれ以外の部分の場合よりも大きくしている。
【0113】
このために本実施形態では、図18に示す様に、黒画像部のうち、黒文字或いは線(ライン)を検出する黒文字判定部54を設けている。黒画像判定部52によって無彩色であると判定された領域が黒画像部として判定された後、黒文字判定部54がRGB画像信号に基づき、文字の太さ判定、エッジ検出を行う。ここでは、文字或いは線であると判定された領域が黒文字部として判定され、黒文字判定部54がUCRの係数を制御する信号を出力する。
【0114】
上記のように、文字部においてはパッチや写真画像などの部分と比較して画像流れの影響を受け易い傾向があるので、本実施形態では、検出される直流電流値Idcに応じて、黒文字以外の黒画像部と黒文字部のα’の値をそれぞれ変更する構成としている。
【0115】
より具体的には、図19に示すように、相対湿度50%の環境において、黒文字以外の黒画像部におけるα’の値と黒文字部におけるα’の値とをそれぞれ段階的に変更させる。黒文字以外の黒画像部、黒文字部ともに検出される直流電流値が増加するにしたがって、α’の値が1から0に向けて減少していくが、黒文字部のほうが、直流電流値Idcの上昇に対するα’の値の減少率が大きくなるように設定している。なお、図19では、直流電流値Idcを絶対値で示している。
【0116】
このような本実施形態の制御フローについて、図20を用いて説明する。まず、制御回路100は、画像形成の信号が入力された際に、画像流れ検知のタイミングであるか否かを判断する(S31)。このタイミングについては、図11のS01と同様である。画像流れ検知のタイミングでなければ(S31のNO)、そのままの状態で画像形成が開始される(S35)。
【0117】
一方、画像流れ検知のタイミングであれば(S31のYES)、感光ドラム1dを回転させ、帯電ローラ2dに放電開始電圧Vth未満の直流電圧(所定の電圧)、本実施形態では−500Vの直流電圧を印加させる。この時、前露光装置7dはON、露光装置3dはOFF、現像電圧及び転写電圧はいずれもOFFとする(S32)。このような電圧設定にすることで、画像流れが発生し得る感光ドラム1dならば、放電開始電圧Vth未満の直流電圧が印加された場合でも、帯電ローラ2dから感光ドラム1dへ電荷が注入される。この状態で、測定回路63によって直流電流値Idcを検知する(S33)。
【0118】
ここで、制御回路100は、測定回路63において測定された直流電流値Idcに応じて、図19のように黒文字以外の黒画像部、および、黒文字部のα’の値をそれぞれ変更し(S34)、画像形成を実行させる(S35)。ここで決定されたα’の値は、制御回路100が記録部(図示せず)に記録し、画像流れ検知制御が再び行われるまで保存される。この制御フローの各種機器のコントロールは制御回路100にて行う。
【0119】
本実施形態によれば、画像流れによる影響が大きい文字や線の画像の場合に、測定回路63の電流値の絶対値の上昇に対する黒画像比率、即ち、UCR比率α´の減少率を大きくしているため、画像流れの影響を低減できる。即ち、文字や線の画像の倍に、それ以外の画像よりも、測定回路63の電流値の絶対値の上昇に対して、早い段階でプロセスブラック画像の比率が大きくしている。このため、線や文字とそれ以外の画像とで同じ制御をした場合に、それ以外の画像で画像ぼけが目立たないが、文字や線の画像がぼけたり、消えたりするような状況であっても、文字や線の画像のぼけの低減、この画像が消えることの防止を図れる。その他の構造及び作用は、前述の第2の実施形態と同様である。
【0120】
[本実施形態の効果の確認]
上述のような本実施形態の効果を確認するために行った実験結果を、上述のように黒文字以外の黒画像部と、黒文字部のα’をそれぞれ変更する制御を行って画像形成した場合を実施例4、行わずに画像形成した場合を比較例4して表4に示す。なお、比較例4で、前述の表2の実験の実施例2と同等である。
【0121】
【表4】
【0122】
ここでは、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、前述の表1の実験と同様に、0〜−2.5μAとなるような状態の複数の感光ドラム1dを用いた。また、このような各感光ドラム1dに、1cm×1cmサイズのブラック単色のハーフトーン(HT)画像パッチを、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が0.5で出力できる条件において出力した。
【0123】
そして、実際に形成された黒文字以外の黒画像部の画像の濃度を測定して、その低下率を求めた(表4の上段)。反射濃度は、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite(株)製)により測定した。なお、表4の上段では、丸印は濃度低下が殆どなかった場合を、三角印は濃度低下率が80%よりも大きい状態に抑えられた場合を、バツ印は濃度低下率が80%以下となった場合を、それぞれ示している。
【0124】
表4の上段に示すように、比較例4及び実施例4は、黒文字部以外の黒画像部では良好な画像が得られた。即ち、比較例4、実施例4ともに、Idcが検出される状態であると、上記制御により黒画像部のUCR比率α’が段階的に変更され、その比率に応じて黒画像部がプロセスブラック画像に置き換わる。比較例4、実施例4では、Idcが増加していくほどα’が減少し、黒画像の比率が下がってプロセスブラック画像の比率が上がる構成である。
【0125】
プロセスブラック画像を形成する、イエロー、マゼンタ、シアンの画像形成部Pa、Pb、Pcにおいては、感光ドラムとして画像流れが発生しにくいOPCドラムを使用している。このため、置き換わったプロセスブラック画像は画像流れによる濃度低下の発生がないパッチ画像(濃度0.5)を出力することができる。
【0126】
次に、測定回路63において測定される直流電流値Idcが、前述の表1の実験と同様に、0〜−2.5μAとなるような状態の複数の感光ドラム1dを用いた。このように用意した各感光ドラム1dに、3ポイント(pt)および5ポイント(pt)のサイズの黒文字を、画像上に画像流れのない状態で反射濃度が1.2で出力できる条件において出力した。
【0127】
そして、黒文字部の画像状態を目視で判定した。なお、表4の下段では、丸印は画像が消えることも画像がぼけることもなかった場合を、三角印は画像は消えなかったが、画像ぼけが認識できた場合を、バツ印は画像が消えてしまった場合を、それぞれ示している。
【0128】
表4の下段に示すように、比較例4では、黒文字部の文字のサイズが3ポイント(pt)である場合に、画像ぼけが生じたり、画像が消えたりした。一方、実施例4では文字サイズに拘らず、画像が消えることはなかった。即ち、比較例4では、直流電流値Idcに対応するα’の値は、黒文字部と黒文字以外の黒画像部とで同等である。このため、直流電流値Idcが−0.5〜1.0μAになる状態のとき、3ポイントの黒文字が判読不可能となり、画像流れによる画像不良(文字消え)が発生した。
【0129】
一方、実施例4では、文字部であることを考慮した上記制御により適切な黒文字部のUCR比率α’が算出され、置き換わったプロセスブラック画像は画像流れによる文字消えの発生がない黒文字を安定して出力することができた。
【0130】
なお、上述の説明では、黒文字以外の黒画像部と、黒文字部とでUCR比率を変える制御を行った。但し、文字のサイズが小さいほど画像流れによる画像ボケや文字消えが発生し易いため、黒文字部の文字のサイズによって、さらにUCR比率を変更するような制御であっても良い。即ち、上述の説明では、所定の画像パターンとしての文字や線とそれ以外の画像とで区別して、α´の減少率を変更した。これに対して、所定の画像パターンを、所定のサイズ(例えば5ポイント)以下の文字と、所定の太さ(2ポイント)以下の線とのうちの少なくとも何れかとしても良い。
【0131】
具体的には、所定のサイズ以下の文字、或いは、所定の太さ以下の線と、それ以外の文字或いは線とで区別して、α´の減少率を変更するようにしても良い。この場合に、それ以外の文字或いは線と文字や線以外の画像とで区別して、α´の減少率を変更するようにしても良いし、変更しないようにしても良い。また、文字の書体によって、α´の減少率を変更するようにしても良い。例えば、同じポイントの文字でもゴシック体の文字よりも明朝体の文字の方が、α´の減少率を大きくする。
【0132】
また、上述の説明では、所定の画像パターンとそれ以外の画像パターンとで、α´の減少率を変更しているが、所定の画像パターンの場合には、一律にプロセスブラック画像により形成し、それ以外の画像は黒画像により形成するようにしても良い。即ち、所定の画像パターンではα´を0、それ以外の画像ではα´を1としても良い。
【0133】
<その他の実施形態>
以上、本発明を具体的な実施形態に則して説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではない。また、上述の各実施形態を適宜組み合わせて実施可能であり、例えば、第3の実施形態のような、環境センサ64により検知した相対湿度を考慮した制御を、他の実施形態に適用しても良い。また、上述の説明では、主としてα´を用いて説明したが、αを用いても、勿論同様のことが言える。
【0134】
また、上述の各実施形態では、画像流れ検知の際に印加する放電開始電圧Vth未満の所定の電圧を−500Vとしたが、印加する直流電圧は放電開始電圧Vth未満であれば良い。ただし、その際は、画像流れ発生電流値も変化する。
【0135】
また、上述の各実施形態では、画像流れ検知において、直流電流値を検知する際に、帯電前の電位を低く、また一定にするために、前露光装置をONとすることを説明した。しかし、露光以外にも、転写部の後に感光ドラム上に電圧を与える除電装置を用いることも可能である。
【0136】
また、上述の各実施形態では、画像流れに関する情報として感光ドラムに流れ込む直流電流値を利用したが、画像流れ検知は上述の手段に限定されるものではなく、環境や耐久枚数による画像流れ発生予測に基づいて行われても良い。例えば、環境センサ64が検知した相対湿度が所定の値(例えば30%以下)である場合に、本発明の制御を行い、所定の値を超える場合には、その湿度の上昇に応じてα、α´の比率を上げる。また、耐久枚数とは、感光ドラムの使用開始からの枚数、即ち、感光ドラムの使用量であるが、例えば、カウンタ65により検知する枚数に応じて、α、α´を変更する。なお、感光ドラムの使用量は、感光ドラムの駆動時間或いは駆動距離により検知しても良い。更には、この感光ドラムの駆動時間或いは駆動距離のうち、帯電などのバイアスが印加されていた時間或いは印加されている間の感光ドラムの駆動距離により検知しても良い。更に、α、α´を決定する上で、上述の電流値、相対湿度、耐久枚数の何れか或いは全てを組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0137】
1(1a、1b、1c、1d)・・・感光ドラム(像担持体)、2(2a、2b、2c、2d)・・・帯電ローラ(帯電手段)、20・・・プリンタ部、30A・・・露光装置(潜像形成手段)、52・・・黒画像判定部、53・・・UCR部、54・・・黒文字判定部、63・・・直流電流値測定回路(電流検知手段)、64・・・環境センサ(環境検知手段)、100・・・制御回路(制御手段)、Pa、Pb、Pc・・・画像形成部(カラー画像形成部)、Pd・・・画像形成部(黒画像形成部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色の現像剤により黒画像を形成する黒画像形成部と、それぞれ黒以外の色の現像剤により画像を形成し、各色を組み合わせることにより黒色或いは黒色に近い色のプロセスブラック画像を形成可能な複数のカラー画像形成部と、前記黒画像形成部及び前記複数のカラー画像形成部を制御する制御手段と、を備え、
前記黒画像形成部及び前記複数のカラー画像形成部は、それぞれ、像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像担持体に静電潜像を形成する潜像形成手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像剤で現像する現像手段と、を有する画像形成装置において、
前記黒画像形成部の画像流れに関する情報を検知する検知手段を有し、
前記制御手段は、前記検知手段の検知結果に基づいて、黒色の画像を前記黒画像形成部のみを用いて形成する第1モードと、黒色の画像を前記複数のカラー画像形成部を用いて形成する第2モードとの何れかを実行する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2モードで、黒色の画像を、前記黒画像形成部と前記複数のカラー画像形成部とを用いて形成し、前記検知手段の検知結果に基づいて、黒色の画像を構成する前記黒画像の前記プロセスブラック画像に対する黒画像比率を変更する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、黒色の画像のうち、所定の画像パターンを有する部分とそれ以外の部分とで、前記黒画像比率の値を変更する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記所定の画像パターンは、文字と線とのうちの少なくとも何れかである、
ことを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記所定の画像パターンは、所定のサイズ以下の文字と、所定の太さ以下の線とのうちの少なくとも何れかである、
ことを特徴とする、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記検知手段は、前記帯電手段に所定の電圧を印加した時に、前記帯電手段から前記像担持体に流れる電流を検知する電流検知手段であり、
前記電流検知手段により検知した電流の絶対値が、所定の値未満である場合に前記第1モードを実行し、所定の値以上である場合に前記第2モードを実行する、
ことを特徴とする、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第2モードで、黒色の画像を、前記黒画像形成部と前記複数のカラー画像形成部とを用いて形成し、前記電流検知手段により検知した電流の絶対値が大きいほど、黒色の画像を構成する前記黒画像の前記プロセスブラック画像に対する黒画像比率を小さくする、
ことを特徴とする、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置の中又は周囲の相対湿度を検知する環境検知手段を有し、
前記制御手段は、前記環境検知手段により検知した相対湿度が高いほど、前記電流検知手段により検知した電流の絶対値の上昇に対する前記黒画像比率の減少率を小さくする、
ことを特徴とする、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記黒画像形成部の前記像担持体の表面硬度が、前記複数のカラー画像形成部の前記像担持体の表面硬度よりも高い、
ことを特徴とする、請求項1ないし8のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
黒色の現像剤により黒画像を形成する黒画像形成部と、それぞれ黒以外の色の現像剤により画像を形成し、各色を組み合わせることにより黒色或いは黒色に近い色のプロセスブラック画像を形成可能な複数のカラー画像形成部と、前記黒画像形成部及び前記複数のカラー画像形成部を制御する制御手段と、を備え、
前記黒画像形成部及び前記複数のカラー画像形成部は、それぞれ、像担持体と、前記像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像担持体に静電潜像を形成する潜像形成手段と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像剤で現像する現像手段と、を有する画像形成装置において、
前記黒画像形成部の画像流れに関する情報を検知する検知手段を有し、
前記制御手段は、前記検知手段の検知結果に基づいて、黒色の画像を前記黒画像形成部のみを用いて形成する第1モードと、黒色の画像を前記複数のカラー画像形成部を用いて形成する第2モードとの何れかを実行する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2モードで、黒色の画像を、前記黒画像形成部と前記複数のカラー画像形成部とを用いて形成し、前記検知手段の検知結果に基づいて、黒色の画像を構成する前記黒画像の前記プロセスブラック画像に対する黒画像比率を変更する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、黒色の画像のうち、所定の画像パターンを有する部分とそれ以外の部分とで、前記黒画像比率の値を変更する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記所定の画像パターンは、文字と線とのうちの少なくとも何れかである、
ことを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記所定の画像パターンは、所定のサイズ以下の文字と、所定の太さ以下の線とのうちの少なくとも何れかである、
ことを特徴とする、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記検知手段は、前記帯電手段に所定の電圧を印加した時に、前記帯電手段から前記像担持体に流れる電流を検知する電流検知手段であり、
前記電流検知手段により検知した電流の絶対値が、所定の値未満である場合に前記第1モードを実行し、所定の値以上である場合に前記第2モードを実行する、
ことを特徴とする、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第2モードで、黒色の画像を、前記黒画像形成部と前記複数のカラー画像形成部とを用いて形成し、前記電流検知手段により検知した電流の絶対値が大きいほど、黒色の画像を構成する前記黒画像の前記プロセスブラック画像に対する黒画像比率を小さくする、
ことを特徴とする、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置の中又は周囲の相対湿度を検知する環境検知手段を有し、
前記制御手段は、前記環境検知手段により検知した相対湿度が高いほど、前記電流検知手段により検知した電流の絶対値の上昇に対する前記黒画像比率の減少率を小さくする、
ことを特徴とする、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記黒画像形成部の前記像担持体の表面硬度が、前記複数のカラー画像形成部の前記像担持体の表面硬度よりも高い、
ことを特徴とする、請求項1ないし8のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−54110(P2013−54110A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190726(P2011−190726)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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