説明

画像形成装置

【課題】 定着装置のニップ部へシートを搬送するためのガイドの帯電の抑制を図った画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 画像形成装置100の2次転写ローラー44から定着装置70までの間の搬送経路80には,ガイド200が配置されている。ガイド200は,上流部材210と下流部材220とに分割されている。下流部材220には,シリンダー230が設けられている。上流部材210は,画像形成装置100の本体に固定されており,下流部材220は,その接触面222と,上流部材210の接触面212とで段差のない第1の位置と,第1の位置よりシートの搬送経路から遠い第2の位置との間で移動することができるようになっている。シートが定着装置70のニップ部Nに突入した後には,上流部材210の接触面212と,第2の位置に位置する下流部材220の接触面222との2箇所により,シートを支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像形成装置に関する。さらに詳細には,転写部材から定着装置までの間に位置するガイドを有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置は一般に,感光体表面に形成した静電潜像にトナーを付与して現像し,トナー像をシートに転写して定着することでシート上に画像を形成するものである。そのために,画像形成装置は,画像形成部と,転写装置と,定着装置とを有している。
【0003】
転写装置によりトナー像を転写されたシートは,定着装置によりトナー像を定着される。定着装置にシートを好適に搬送するために,転写装置から定着装置までの間にガイドが設けられていることが一般的である。このガイドにおいてシートと接触するガイド面と,定着装置のニップ部との位置関係は,好適に定着を行う上で重要である。ガイドの部品精度や取付精度が悪いと,紙皺や未定着のトナー像の乱れが発生するおそれがある(特許文献1の2頁目第2段落,3頁目第1段落参照)。
【0004】
そこで,紙皺や像乱れの抑制を図った画像形成装置が開発されてきている。例えば,特許文献1には,用紙前端が定着装置に進入する前に,ガイドの定着装置側端部を加熱ローラー側に配置し,用紙前端が定着装置に進入した後には,ガイドの定着装置側端部を加圧ローラー側に配置する定着装置が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲および4頁目参照)。これにより,ガイドの部品精度や取付精度を高めることなく,用紙前端の紙皺を防止するとともに,用紙後端の跳ね上がりを防止して未定着の像乱れを防止するとしている(特許文献1の3頁目から4頁目参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−271784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,定着装置のニップ部に突入したシートは,湾曲することがある。定着装置の搬送速度が,転写装置の搬送速度よりも遅いからである。そのため,シートにたるみが生じて湾曲するのである。このシートの湾曲が生ずると,ニップ部より上流の位置にもシートの湾曲の効果が及ぶ。これにより,シートの湾曲箇所がガイドの下流側の先端に強く接触することがある。この強い接触により,ガイドの先端が摩擦帯電する。これにより,ガイドの先端の電位の絶対値は大きいものとなる。このようにガイドに強く帯電している箇所があると,その箇所をシートが通過するときに未定着のトナー像に乱れが生じることがある。トナーは帯電しているからである。
【0007】
一方,特許文献1に記載の定着装置のように(特許文献1の8頁目の第2段落および第1図参照),シートの搬送途中でガイドの面の角度を変更すると,湾曲したシートがガイドの先端に,より接触しやすい(特許文献1の第4図参照)。そのため,シートとガイドとの接触によるガイドの強い帯電は起こりやすい。これにより,未定着のトナー像の乱れが生じやすくなるおそれがある。
【0008】
本発明は,前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,定着装置のニップ部へシートを搬送するためのガイドの帯電の抑制を図った画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の一態様における画像形成装置は,トナー像を形成するための画像形成部と,画像形成部により形成されたトナー像をシートに転写する転写部と,転写部によりトナー像を転写されたシートにそのトナー像を定着させる定着装置と,トナー像を転写済みのシートを定着装置に搬送するためのガイドとを有するものである。そして,ガイドは,シートの搬送経路の上流側に位置する第1のガイド部材と,第1のガイド部材よりシートの搬送経路の下流側に位置する第2のガイド部材と,第2のガイド部材を,シートの搬送経路と対面する第1の位置と,第1の位置よりシートの搬送方向から離れた第2の位置との間で移動させるガイド部材移動部とを有する。かかる画像形成装置では,未定着のトナー像を担持するシートを定着装置のニップ部に搬送する際に,定着装置の上流に位置するガイドが,第1のガイド部材と,第1の位置もしくは第2の位置に位置する第2のガイド部材とにより,シートを支持することができる。シートの接触箇所が分散することにより,ガイドが帯電しすぎるおそれがほとんどない。したがって,ガイドの帯電に起因する画像乱れはほとんど起きない。
【0010】
上記に記載の画像形成装置において,ガイド部材移動部は,トナー像を転写済みのシートが定着装置のニップ部に突入する前には,第2のガイド部材を第1の位置に配置するとともに,トナー像を転写済みのシートが定着装置のニップ部に突入した後には,第2のガイド部材を第2の位置に配置するものであるとよい。トナー像を転写済みのシートが定着装置のニップ部に突入した後に,第1のガイド部材の接触面と第2のガイド部材の接触面との2箇所により,そのシートを支持することができる。シートの搬送を好適に行うとともに,ガイドの帯電を抑制することができる。
【0011】
上記に記載の画像形成装置において,ガイド部材移動部は,トナー像を転写済みのシートの後端がガイドを通過した後に,第2のガイド部材を第2の位置から第1の位置に戻すとよい。その次に転写部から搬送されてくるシートを好適に定着装置のニップ部に搬送することができるからである。
【0012】
上記に記載の画像形成装置において,第1のガイド部材および第2のガイド部材には,リブ部が設けられており,第2のガイド部材のリブ部の幅方向の位置は,第1のガイド部材のリブ部の幅方向の位置とは異なっているとよい。シートのうちの同じ箇所がガイドに2回以上接触することがほとんどないからである。そのため,シートに画像乱れがより生じにくい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば,定着装置のニップ部へシートを搬送するためのガイドの帯電の抑制を図った画像形成装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る画像形成装置を説明するための概略構成図である。
【図2】実施形態に係る画像形成装置のガイドの構成を説明するための図(その1)である。
【図3】実施形態に係る画像形成装置のガイドの構成を説明するための図(その2)である。
【図4】実施形態に係る画像形成装置のガイドを説明するための斜視図である。
【図5】実施形態に係る画像形成装置におけるシートが定着装置のニップ部に突入する前のガイドの状態を説明する図である。
【図6】実施形態に係る画像形成装置におけるシートが定着装置のニップ部に突入した後のガイドの状態を説明する図である。
【図7】従来の画像形成装置におけるシートが定着装置のニップ部に突入した後のガイドの状態を説明する図である。
【図8】従来の画像形成装置のガイドを説明するための斜視図(その1)である。
【図9】図8のガイドを有する画像形成装置で画像形成したシートに表れる画像乱れを例示する図である。
【図10】従来の画像形成装置のガイドを説明するための斜視図(その2)である。
【図11】図10のガイドを有する画像形成装置で画像形成したシートに表れる画像乱れを例示する図である。
【図12】実施形態に係る画像形成装置の別のガイドを説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,カラーコピー機について,本発明を具体化したものである。
【0016】
1.画像形成装置
画像形成装置100は,図1に示すように,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像形成部30Y,30M,30C,30Kを備えるタンデム型のカラーコピー機である。画像形成装置100は,自動原稿搬送装置ADFと,画像読取部10と,給紙カセット20と,画像形成部30Y,30M,30C,30Kと,転写部40と,定着装置70と,搬送経路80と,排紙トレイ81と,制御部90と,ガイド200とを有している。
【0017】
自動原稿搬送装置ADFは,画像イメージを読み取るための原稿を,原稿束から1枚ずつ順次送り出すとともに,画像読取部10に搬送するためのものである。画像読取部10は,自動原稿搬送装置ADFにより1枚ずつ搬送される原稿を読み取るためのものである。給紙カセット20は,シートPの束を載置するためのものである。
【0018】
各色の画像形成部30Y,30M,30C,30Kは,各色のトナー像を形成するためのものである。各色の画像形成部30Y,30M,30C,30Kは,いずれも同様の構成である。各色を代表して画像形成部30Yについて説明する。画像形成部30Yは,感光体ドラム31Yと,帯電装置32Yと,露光装置33Yと,現像装置34Yと,クリーナー35Yとを有している。
【0019】
感光体ドラム31Yは,露光装置33Yにより静電潜像を描かれるとともに,トナー像を担持するための像担持体である。帯電装置32Yは,感光体ドラム31Yの表面を一様に帯電するためのものである。露光装置33Yは,感光体ドラム31Yの表面を露光して静電潜像を書き込むためのものである。現像装置34Yは,感光体ドラム31Yの静電潜像にトナーを付与してトナー像を形成するためのものである。クリーナー35Yは,感光体ドラム31Y上の現像残トナーを回収するためのものである。
【0020】
転写部40は,画像形成部30Y,30M,30C,30Kにより形成されたトナー像をシートPに転写するためのものである。中間転写ベルト41と,1次転写ローラー42Y,42M,42C,42Kと,2次転写部43と,中間転写ベルト用クリーナー45とを有している。中間転写ベルト41では,各色の画像形成部30Y,30M,30C,30Kで形成されたトナー像が重ね合わせられてカラーのトナー像が形成される。1次転写ローラー42Y,42M,42C,42Kはそれぞれ,感光体ドラム31Y,31M,31C,31Kに形成された各色のトナー像を中間転写ベルト41上に転写するためのものである。2次転写部43は,中間転写ベルト41上に形成されたカラーのトナー像を,シートに転写するためのものである。そのために,2次転写部43は,2次転写ローラー44を有している。
【0021】
定着装置70は,転写部40によりトナー像を転写されたシートPにそのトナー像を定着させるためのものである。定着ローラー71と,加圧ローラー72とを有している。定着ローラー71は,トナー像を加熱するとともに,加圧ローラー72とともにトナー像をシートに定着させるためのものである。加圧ローラー72は,定着ローラー71とともにトナー像を形成されたシートを加圧するためのものである。
【0022】
搬送経路80は,給紙カセット20から引き出されたシートPを搬送するための経路である。排紙トレイ81は,画像を形成されたシートを排紙するためのトレイである。なお,図1には示されていないが,トナー像定着後のシートを裏返して裏面に画像形成を行うための両面印刷用の搬送経路が設けられていてもよい。ガイド200は,トナー像を転写されたシートを定着装置70に搬送するためのものである。ガイド200については,後に詳しく説明する。
【0023】
2.ガイドの構成
本形態の画像形成装置100は,搬送経路80における定着装置70の上流に位置するガイド200に特徴点を有している。ガイド200は,トナー像を転写済みのシートを定着装置70に搬送するためのものである。そこで以下,ガイド200について,詳細に説明する。図2は,ガイド200の構成を示す概略構成図である。
【0024】
図2に示すように,ガイド200は,単一部材ではなく,上流部材210と,下流部材220とに分かれている。上流部材210は,シートPの搬送経路における下流部材220より上流側の位置に配置されている第1のガイド部材である。下流部材220は,シートPの搬送経路における上流部材210より下流側の位置に配置されている第2のガイド部材である。上流部材210および下流部材220はともに,シートPの搬送経路に対面している。そして,下流部材220には,シリンダー230が設けられている。
【0025】
上流部材210は,画像形成装置100の本体に固定されている。下流部材220は,上流部材210に対して,図2の矢印Bの方向に移動することができるようになっている。シリンダー230は,下流部材220を矢印Bの方向に移動させるためのガイド部材移動部である。シリンダー230を動かすために,モーターを用いてもよい。また,エアを用いてもよい。
【0026】
また,上流部材210と下流部材220との間には対向面215がある。前述した下流部材220が移動する方向(図2の矢印参照)は,対向面215に平行である。
【0027】
図2に示すように,上流部材210および下流部材220にはそれぞれ,接触面212,222がある。接触面212,222は,シートPに接触するとともに,シートの進行方向を決定するものである。接触面212,222は,シートPの搬送経路に対面している。そして,図2では,接触面212と接触面222とでは,段差がない。この下流部材220の位置を第1の位置という。
【0028】
図3に,下流部材220が上流部材210に対して移動した場合の図を示す。図3では,下流部材220は,第1の位置よりシートPの搬送経路から離れた位置に位置している。図3における下流部材220の位置を第2の位置という。第2の位置は,下流部材220が退避している位置である。シリンダー230は,下流部材220を第1の位置と第2の位置との間で移動させるためのものである。
【0029】
ガイド200は,図2に示す第1の位置と,図3に示す第2の位置との2つの位置をとることとなる。後述するように,シートPを搬送する際のシートPの位置により,下流部材220は,第1の位置(図2参照)もしくは第2の位置(図3参照)をとる。
【0030】
図4に,ガイド200の斜視図を示す。図4では,シリンダー230が省略されている。図4に示すように,上流部材210および下流部材220にはそれぞれ,リブ211,221が設けられている。リブ211,221にはそれぞれ,接触面212,222がある。接触面212,222は,シートPの搬送において実際にシートPに接触して支持するとともに,シートPの搬送を補助する面である。
【0031】
先端部212a,222aは,接触面212,222の下流側の端部である。先端部212a,222aは,後述するように,下流部材220が第1の位置および第2の位置のいずれかの位置にあるときであっても,シートPを支持することとなる。
【0032】
3.シートの搬送とガイドの位置
本形態の画像形成装置100は,シートPが定着装置70のニップ部Nに突入する前と,突入した後とで,ガイド200の下流部材220を配置する位置を切り替えるものである。
【0033】
3−1.シートがニップ部に突入する前
図5に,シートPが定着装置70のニップ部Nに突入する前における,ガイド200およびシートPの形状を示す。トナー像を転写済みのシートPがニップ部Nに突入する前には,図5に示すように,ガイド200の下流部材220は,第1の位置に位置している。すなわち,接触面212と接触面222とは,揃っている。そして,トナー像を転写済みのシートPは,接触面212の中間付近の位置に当たる。そして,シートPは接触面212,222に沿う方向に進行方向を変える。つまり,ガイド200は,通常のガイドと同じように,接触面212,222にわたってシートPを支持するとともに,シートPの搬送を補助している。そして,シートPは,ガイド200に沿って搬送されており,湾曲していない。
【0034】
3−2.シートがニップ部に突入した後
図6に,シートPが定着装置70のニップ部Nに突入した後における,ガイド200およびシートPの形状を示す。トナー像を転写済みのシートPがニップ部Nに突入した後には,図6に示すように,ガイド200の下流部材220は,第2の位置に位置している。つまり,シートの搬送経路から遠ざかるように退避している。このとき,ガイド200の接触面212と接触面222とは,同一平面上にはない。
【0035】
このとき,シートPは,加圧ローラー72の側(図6中下側)に凸をなすように湾曲している。そして,シートPは,上流部材210の接触面212と,下流部材220の接触面222との2箇所で支持されることとなる。ガイド200は,2箇所でシートPを支持しつつ,シートPの搬送を補助する。つまり,シートPとガイド200との摩擦箇所は,2箇所に分散している。そのため,ガイド200の先端部222a(図4参照)が強く帯電しすぎることはほとんどない。詳しくは後述する。
【0036】
なお,トナー像を担持しているシートPの後端がガイド200の箇所を通過した後に,下流部材220を第2の位置から第1の位置に戻すこととすればよい。これにより,続いて搬送されてくるシートPを,好適に定着装置70に搬送することができる。
【0037】
4.本形態のガイドと従来のガイドとの比較
4−1.従来のガイドにおける表面電位分布と画像乱れ
本形態のガイド200との比較について説明する前に,従来のガイドにおいて生じる問題点について説明する。図7は,従来のガイド1100を有する画像形成装置のうち,ガイド1100および定着装置70の周辺を抜き出して描いた図である。
【0038】
図7は,シートPが定着装置70のニップ部Nに突入した後を示している。そのため,シートPが加圧ローラー72の側(図7中の下側)に凸をなすように湾曲している。そして,湾曲しているシートPは,先端部1111の箇所に強く押し付けられている。そのため,後述するように,ガイド1100の先端部1111は,強く帯電することとなる。この帯電している先端部1111の箇所を通過することにより,シートPに転写されている未定着のトナー像が乱れることがある。
【0039】
図8に,従来のガイド1100の斜視図を示す。ガイド1100には,複数のリブ1110が設けられている。シートPは,これらの複数のリブ1110に接触しつつ,搬送されることとなる。そのため,リブ1110は,シートPとの摩擦により帯電する。リブ1110における下流側の先端部1111では,正に強く帯電している。先端部1111の帯電電位は,+500〜+700Vである。リブ1110における搬送方向の中央付近に位置する中央部1112では,それほど帯電していない。中央部1112の帯電電位は,0〜+50Vである。
【0040】
従来のガイド1100を用いた場合に,シートPに表れる画像乱れの例を図9に示す。図9は,長方形のベタ1150をシートPに印字した場合を示している。その場合,図9に示すように,画像形成後のシートPには,ベタ1150に対してシートPの後端に向かう向きに尾引き箇所1151が表れる。このような尾引き箇所1151は,リブ1110の先端部1111が強く帯電しているために生ずる。未定着のトナー像を担持しているシートPがリブ1110の先端部1111の上部を通過することにより,帯電状態のトナーが静電気による力を受ける。これにより,シートPの後端に向かう向きに尾引き箇所1151が生ずるのである。
【0041】
尾引き箇所1151が生じている画像の品質は,もちろん悪い。図9では,単なる画像であるが,文字を印字するような場合には,文字の判読が不可能となるおそれがある。
【0042】
図10に,図8に示した従来のガイド1100とは別の従来のガイド1200の斜視図を示す。図10に示すように,従来のガイド1200には,リブが設けられていない。この場合,未定着のトナー像を形成されたシートPは,シートPの幅方向にわたって均一にガイド1200と接触することとなる。
【0043】
そして,シートPは,ガイド1200の先端部1201の付近に強く接触する。したがって,図10に示すように,ガイド1200の先端部1201では,正に帯電している。先端部1201の帯電電位は,+300〜+500Vである。一方,ガイド1200の中央部1202では,それほど帯電していない。ガイド1200の中央部1202の帯電電位は,0〜+50Vである。
【0044】
従来のガイド1200を用いた場合に,シートPに表れる画像乱れの例を図11に示す。図11は,長方形のベタ1250をシートPに印字した場合を示している。その場合,図11に示すように,画像形成後のシートPには,シートPの幅方向の全体にわたって尾引き箇所1251が表れる。ガイド1200を用いた場合には,未定着のトナー像を形成されたシートPは,正に帯電している先端部1201の上部を通過する。これにより,負帯電状態のトナーが静電気による力を受けて,シートPの搬送方向Uの逆方向に尾引き箇所1251が生ずるのである。
【0045】
4−2.ガイドが帯電する原因
従来のガイド1100,1200において,画像乱れの生ずる原因は,前述のように,先端部1111,1201の摩擦帯電である。これは,特定の部位(先端部1111,1201)のみがシートPと強く接触しているからである。したがって,特定の部位のみならず,複数の箇所に分散して接触することとすればよい。接触箇所が増えれば,摩擦帯電の程度が小さいものとなるからである。
【0046】
4−3.本形態のガイドにおける表面電位分布
続いて,本形態のガイド200における表面電位分布について説明する。図4に示したように,上流部材210の先端部212aの帯電電位は,0〜+50Vである。これは,従来のガイド1100,1200の中央部1112,1202の帯電電位とほぼ同じである。また,下流部材220の先端部222aの帯電電位は,0〜+100Vである。このように,本形態のガイド200の先端部212aでは,従来のガイド1100,1200の先端部1111,1201に比べて,ほとんど帯電していないといえるレベルである。したがって,ガイド200の帯電に起因する画像乱れはほとんど生じない。図4に示したように,シートPはガイド200に2回接触することとなるが,従来に比べて画像乱れは起こりにくい。
【0047】
5.変形例
5−1.ガイド部材移動部
本形態では,シリンダー230により,下流部材220を平行移動させることとした。しかし,下流部材220を移動させるようなものであれば,これ以外の構成をとることができる。例えば,特許文献1のように,ソレノイドとコイルとを組み合わせることとしてもよい。また,その他のアクチュエーターを用いることができる。そして,下流部材220を退避させる位置に配置できれば,必ずしも平行移動でなくともよい。
【0048】
5−2.トナーの帯電量
本形態では,負に帯電した負帯電トナーを用いる画像形成装置100について説明した。しかし,正帯電トナーを用いる画像形成装置であっても,従来のガイド1100,1200を用いれば,画像乱れが生ずることに変わりない。そのため,本形態のガイド200を用いることで,同様に画像乱れを防止することができる。ガイド200の帯電量の絶対値は,前述のようにそれほど大きくないからである。よって,本発明は,トナーの帯電が正負のいずれであるかにかかわらず適用できる。
【0049】
5−3.リブ部の配置
本形態のガイド200では,下流部材220が第1の位置に配置されているときには,上流部材210のリブ211と下流部材220のリブ221とが連続的に並んでいる。しかし,図12に示すガイド300のように,上流部材210のリブ211の幅方向の位置と下流部材320のリブ321の幅方向の位置とが異なっていてもよい。
【0050】
この場合,シートPのうち上流部材210に接触する箇所と,下流部材320に接触する箇所とは,幅方向に異なる位置である。したがって,シートPのうちの同じ箇所がガイド300に接触する回数は高々1回である。そのため,ガイド300を用いた場合には,ガイド200を用いた場合より,画像乱れが生じにくい。
【0051】
5−4.下流部材の第1の位置
本形態では,下流部材220の第1の位置を,接触面212と接触面222とで段差のない位置とした。しかし,下流部材220の接触面222が,段差のない位置よりもやや搬送経路から遠く離れた位置にあってもよい。例えば,下流部材220の接触面222が上流部材210の接触面212よりも搬送経路から0mm以上3mm以下の範囲内で離れた位置にあってもよい。
【0052】
6.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る画像形成装置100は,上流部材210と下流部材220とを有するものである。下流部材220は,上流部材210に対して,シートPの搬送経路から遠ざかる位置に退避できるようになっている。そのため,ガイド200の先端部222aが摩擦帯電により帯電しすぎるおそれがない。これにより,画像乱れ等の生じにくい画像形成装置が実現されている。
【0053】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置は,片面印刷のものであっても,両面印刷のものであってもよい。また,カラー印刷のものに限らない。そして,画像形成装置は,プリンターであってもよい。また,読み取った画像を印刷ジョブとして公衆回線により送信する画像形成装置に適用することができる。もちろん,複合機であってもよい。また,トナーの種類によらず適用できる。
【符号の説明】
【0054】
10…画像読取部
20…給紙カセット
30Y,30M,30C,30K…画像形成部
40…転写部
41…中間転写ベルト
42Y,42M,42C,42K…1次転写ローラー
43…2次転写部
44…2次転写ローラー
70…定着装置
71…定着ローラー
72…加圧ローラー
80…搬送経路
81…排紙トレイ
90…制御部
100…画像形成装置
200,300…ガイド
210…上流部材
211…リブ
212…接触面
212a…先端部
220,320…下流部材
221,321…リブ
222,322…接触面
222a,322a…先端部
230…シリンダー
N…ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成するための画像形成部と,
前記画像形成部により形成されたトナー像をシートに転写する転写部と,
前記転写部によりトナー像を転写されたシートにそのトナー像を定着させる定着装置と,
トナー像を転写済みのシートを前記定着装置に搬送するためのガイドとを有する画像形成装置であって,
前記ガイドは,
シートの搬送経路の上流側に位置する第1のガイド部材と,
前記第1のガイド部材よりシートの搬送経路の下流側に位置する第2のガイド部材と,
前記第2のガイド部材を,
シートの搬送経路と対面する第1の位置と,
前記第1の位置よりシートの搬送方向から離れた第2の位置との間で移動させるガイド部材移動部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって,
前記ガイド部材移動部は,
トナー像を転写済みのシートが前記定着装置のニップ部に突入する前には,
前記第2のガイド部材を前記第1の位置に配置するとともに,
トナー像を転写済みのシートが前記定着装置のニップ部に突入した後には,
前記第2のガイド部材を前記第2の位置に配置するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置であって,
前記ガイド部材移動部は,
トナー像を転写済みのシートの後端が前記ガイドを通過した後に,
前記第2のガイド部材を前記第2の位置から前記第1の位置に戻すことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の画像形成装置であって,
前記第1のガイド部材および前記第2のガイド部材には,リブ部が設けられており,
前記第2のガイド部材のリブ部の幅方向の位置は,前記第1のガイド部材のリブ部の幅方向の位置とは異なっていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−64841(P2013−64841A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203049(P2011−203049)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】