説明

画像形成装置

【課題】液滴を垂直方向上方に向けて吐出する記録ヘッドを備える場合に廃液が記録ヘッドの外周面を垂れ落ち、払拭動作で廃液が飛散する。
【解決手段】吸引キャップ71は、ノズル面124に押し当てられて周りの壁を形成する枠部171と、枠部171と分離可能であり、枠部171のノズル面側と反対側を覆う蓋部172材とを有し、枠部171をノズル面124に押し当て、蓋部172で枠部材171のノズル面124と反対側を覆うことで、ノズル面124との間に密閉空間80を形成可能であり、ワイパ部材73は、蓋部172が枠部171から離間している状態で、枠部171内に入り込んでノズル面124を払拭可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、液滴を垂直方向上方に向けて吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置、例えばインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
画像形成装置としては、垂直方向下向きに液滴を吐出する記録ヘッドを備え、記録ヘッドに対向して搬送される用紙上に液滴を吐出させて画像を形成する構成が一般的である。そして、記録ヘッドのノズルの吐出安定性を維持するため、ノズル内のインク乾燥、ノズル内への埃混入防止のため、記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、記録ヘッドのノズル面を払拭して清浄化するワイパ部材(ワイパブレード、ワイピングブレード、ブレードなどとも称される。)などを含む維持回復機構を備え、例えばノズルから増粘インクをキャップ内に排出した後、ノズル面をワイパ部材で払拭してノズルメニスカスを形成する回復動作などを行なう。
【0004】
また、吐出口からインクを重力に逆らって上向きに吐出して被記録媒体の下面に画像記録を行う記録ヘッドを備えるものも知られている(特許文献1、2)。
【0005】
従来、このように吐出口からインクを重力に逆らって上向きに吐出する記録ヘッドのインク吐出性能の維持および回復を図るために、予備吐出されたインクを受ける予備吐出受けを備え、予備吐出受け内に予備吐出されたインクが開口部から予備吐出受けの外に漏出することを防止するため、予備吐出受け上方に、水平方向に対して傾斜し、かつ、予備吐出受け内に予備吐出されたインクが付着するように配設された天井面を設けたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−341321号公報
【特許文献2】特開2007−210121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように液滴を垂直方向に沿う方向及び垂直方向に交差する方向で上方に向けて吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置にあっては、記録ヘッドのノズル面をキャップ部材でキャッピングしてキャップ部材内にノズルから液体を吸引排出させたとき、キャップ部材内は吸引された液体(廃液)で満たされているため、デキャップ時(キャップ部材をノズル面から離間したとき)に廃液が記録ヘッドの外周面から装置内に垂れ落ちることになる。
【0008】
この点を解決したとしても、記録ヘッドのノズル面にも残った廃液を払拭部材(ワイパ部材)で払拭したとき、払拭部材に転移した廃液が飛散して装置内が汚れるという課題がある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、液滴を垂直方向に沿う方向及び垂直方向に交差する方向で上方に向けて吐出する場合の維持回復動作に伴うヘッド周囲への液垂れ及び払拭動作による廃液の飛散を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を垂直方向に沿う方向又は垂直方向と交差する方向で上方に向けて吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ部材と、
前記ノズル面を払拭する払拭部材と、を備え、
被記録媒体を前記記録ヘッドの上方位置で搬送して前記記録ヘッドによって画像を形成する画像形成装置であって、
前記キャップ部材は、
前記ノズル面に押し当てられて周りの壁を形成する枠部材と、
前記枠部材と分離可能であり、前記枠部材の前記ノズル面側と反対側を覆う蓋部材と、を有し、
前記枠部材を前記ノズル面に押し当て、前記蓋部材で前記枠部材の前記ノズル面と反対側を覆うことで、前記ノズル面との間に密閉空間を形成可能であり、
前記払拭部材は、前記枠部材内に入り込んで前記ノズル面を払拭可能に設けられている
構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、垂直方向に沿う方向又は垂直方向と交差する方向で上方に向けて吐出する場合の維持回復動作に伴うヘッド周囲への液垂れ及び払拭動作による廃液の飛散を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例の要部側面説明図である。
【図2】同じく装置底面側から見た底面説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態をクリーニング動作とともに説明する模式的説明図である。
【図4】比較例をクリーニング動作とともに説明する模式的説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態をクリーニング動作とともに説明する模式的説明図である。
【図6】本発明の第3実施形態の一例の説明に供する吸引キャップの斜視説明図である。
【図7】同実施形態の他の例の説明に供する吸引キャップの斜視説明図である。
【図8】本発明の第4実施形態の説明に供する吸引キャップの断面説明図である。
【図9】本発明の第5実施形態の説明に供する吸引キャップの断面説明図である。
【図10】本発明の第6実施形態におけるワイパ部材の動きの説明に供する説明図である。
【図11】本発明の第7実施形態をワイパ部材の動きとともに説明する説明図である。
【図12】本発明の第9実施形態をクリーニング動作とともに説明する模式的説明図である。
【図13】同じく模式的説明図である。
【図14】本発明の第10実施形態をクリーニング動作とともに説明する模式的説明図である。
【図15】同じく模式的説明図である。
【図16】クリーニング動作を行なうノズル回復ユニットの一例を示す斜視説明図である。
【図17】図16を反対方向から見た斜視説明図である。
【図18】同ノズル回復ユニットの動作説明に供する説明図である。
【図19】同じく説明図である。
【図20】同じく説明図である。
【図21】レール部材の詳細の説明に供する斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の要部側面説明図、図2は同じく装置底面側から見た底面説明図である。
【0014】
この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、装置本体の内部に画像形成部2及び搬送機構部5等を有し、装置本体の一側から給紙部4によって給紙される用紙10を取り込み、搬送機構部5によって用紙10を間歇的に搬送しながら、画像形成部2によって液滴を吐出して用紙10の下面に画像を形成した後、図示しない排紙トレイに排紙する。
【0015】
ここで、画像形成部2は、左右の側板101L、101R間に横架した主ガイド部材21及び従ガイド部材22で、記録ヘッド24を搭載したキャリッジ23を摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって、駆動プーリと従動プーリ間に渡したタイミングベルトを介して主走査方向に移動走査する。
【0016】
キャリッジ23には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド24a、24b(区別しないときは上記のとおり「記録ヘッド24」という。)及び記録ヘッド24に所要の液体を供給する図示しないヘッドタンクが搭載されている。
【0017】
ここで、記録ヘッド24は、液滴を吐出する複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、液滴を垂直方向上向きに吐出させる状態で装着している。この、記録ヘッド24は、それぞれ複数の液滴を吐出するノズルが列設された2つのノズル列を有し、記録ヘッド24aの一方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、他方のノズル列はマゼンタ(Y)の液滴を、記録ヘッド24bの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0018】
給紙部4は、給紙コロ(半月コロ)41と分離パッド42によって用紙10を1枚ずつ分離して搬送機構部5に給紙する。
【0019】
搬送機構部105は、駆動ローラ(搬送ローラ)52と従動ローラ53との間に掛け回された無端状の搬送ベルト51を有し、搬送ベルト51は帯電ローラ56によって帯電されることで、周回移動することで用紙10を静電吸着して、記録ヘッド24に対向させて矢示X方向(副走査方向:ベルト搬送方向)に搬送する。
【0020】
搬送機構部105の下流側には、画像が記録された用紙10を排紙トレイに送り出すための排紙ローラ61、62が配設されている。
【0021】
また、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド24のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構7を配置している。
【0022】
この維持回復機構7のフレーム70には、記録ヘッド24の各ノズル面124(図1参照)をキャピングするための吸引キャップ71及び保湿キャップ72と、ノズル面124をワイピング(払拭)するワイパ部材(ワイパブレード)73などが保持されている。また、増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる予備吐出(空吐出)を行うときの液滴を受ける空吐出受け75を備えている。吸引キャップ71には吸引手段としての吸引ポンプ76が吸引チューブ77を介して接続され、吸引ポンプ76で吸引された廃液は、吸引チューブ77の吸引ポンプ76より下流側の部分を通じて廃液タンク90に排出される。
【0023】
なお、維持回復機構7のフレーム70内部には、図示しないキャッピング機構用ステッピングモータが配設され、キャッピング機構用ステッピングモータを正転回転すると、図示しないギアとカムを通じて、キャップホルダとともに、吸引キャップ71、保湿キャップ72がキャッピングとデキャップ動作を行う。また、キャッピング機構用ステッピングモータを逆転回転することで吸引ポンプ76が駆動される。また、図示しないワイピングユニットは、キャップユニットの裏に位置し、個別の駆動系を使用して、ワイパホルダとワイパブレード(払拭部材)とを駆動させる。
【0024】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙部4によって給紙された用紙10が帯電された搬送ベルト51に静電吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙10が水平方向に搬送される。そこで、キャリッジ23を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド24を駆動することにより、停止している用紙10にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙10を所定量搬送後、次の行の記録を行い、記録が終了した用紙10を排紙トレイに排紙する。
【0025】
そして、記録ヘッド24のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ23をホーム位置である維持回復機構7に対向する位置に移動して、吸引キャップ71によるキャッピングを行ってノズルからの吸引排出を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0026】
次に、本発明の第1実施形態について図3を参照して説明する。なお、図3は同実施形態をクリーニング動作とともに説明する模式的説明図である。
【0027】
吸引キャップ71は、互いに分離可能に設けられた枠部(枠部材)171及び蓋部(蓋部材)172で構成される。
【0028】
枠部171は、記録ヘッド24のノズル面124に当たって接触してニップ部を形成する当接部171aを有し、吸引キャップ71の周りの壁を形成する部材である。蓋部172は、枠部171の当接部171aを記録ヘッド24のノズル面に当てて接触させたときに、枠部171のノズル面とは反対側の開口を覆う部材である。
【0029】
また、枠部171にはノズル面124に当接する側に吸引ポンプ76と接続する吸引チューブ77が接続されている。つまり、吸引ポンプ76の吸引口76aは、枠部171のノズル面側に設けられている。また、吸引ポンプ76の吸引口76aは、後述する払拭部材であるワイパ部材73による払拭方向(ワイピング方向)下流側に設けられている。
【0030】
払拭部材であるワイパ部材73は、吸引キャップ71の蓋部172が枠部171から離間している状態で、枠部171内に進入してノズル面124に沿って移動することでノズル面124を払拭できるように設けられている。
【0031】
本実施形態におけるクリーニング動作について説明すると、増粘した液体(インク)や埃によるノズル詰まりが発生した場合は、クリーニング動作を実施する。クリーニング動作では、記録ヘッド24のノズルから増粘インクを吸引排出する吸引動作、ノズル面124に残留した廃インクを払拭して清掃するワイピング動作、記録ヘッド24から画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作に区分される。
【0032】
まず、図3(a)に示すように、吸引動作では、図示しないキャップ移動機構によって、吸引キャップ71の枠部171を移動させて当接部171aをノズル面124に当てて接触させることでニップ部を形成する。このとき、蓋部172は枠部171から離間した状態にあるが、キャッピング時には枠部171と蓋部172をともに移動させてもよい。
【0033】
次いで、図3(b)に示すように、同じく図示しないキャップ移動機構によって、吸引キャップ71の蓋部172を枠部171のノズル面と反対側の端部に向けて移動させて押し付けることで、枠部171のノズル面側と反対側の開口部を覆い、ノズル面124と枠部171及び蓋部172によって密閉空間80を形成する。
【0034】
この状態でチュービングポンプなどからなる吸引ポンプ76を駆動させると、密閉空間80が負圧になって記録ヘッド24のノズル24nから廃液となるインク(廃インク)300が密閉空間80内に排出され、図3(c)に示すように、吸引キャップ71内がほぼ廃インク300で満たされる。
【0035】
その後、図3(d)に示すように、吸引キャップ71の蓋部材172のみを枠部171から離間(デキャップ)させる。このとき、吸引キャップ71内の廃インク300はノズル面124と周壁となる枠部171とで形成された受け部で保持されるため、廃インク300が記録ヘッド24の周囲に流れ出すことが防止される。
【0036】
その後、図3(e)に示すように、吸引ポンプ76を再駆動することで、吸引キャップ71の枠部171で保持されている廃インク300を廃液タンク90に排出する。
【0037】
ここで、枠部171に接続された吸引ポンプ76の吸引口76aの位置は、ノズル面側に設けている。吸引口76aがノズル面124に近い程、吸引キャップ71(枠部171)内の廃インク300をより多く吸引することができるため、次工程であるワイピング動作(払拭動作)時において、ワイパ部材73の負荷を低減することができる。
【0038】
次に、図3(f)に示すように、吸引キャップ71の枠部171がノズル面124に当たり接触している状態で、図示しないワイパ移動機構により、ワイパ部材73を枠部171内部に進入させて、記録ヘッド24のノズル面124に接触させる。
【0039】
そして、ワイパ部材73を例えば矢示方向に移動させて、図3(g)に示すように、ノズル面124を払拭するワイピング動作を実施する。ワイパ部材73によりノズル面124を払拭することで、ノズル周りの廃インク300を除去してノズル24nにメニスカスを形成できる。
【0040】
このとき、吸引ポンプ76の吸引口76aはワイパ部材73の移動方向(ワイピング方向)下流側に設けている。なお、ワイピング方向(払拭方向)に関しては、ノズル列に対して垂直方向でも、水平方向でもいずれも可能である。これにより、ワイパ部材73で掻き取った廃インク300を吸引口76aに向けて流すことができ、ワイピング後の廃インクの飛散をより効果的に防止することができる。さらに、掻き取った廃インク300の処理を吸引ポンプ76で吸引するため、新たなワイピング後のインク処理機構が不要となり、装置の低コスト化・小型化を計れる。
【0041】
その後、ワイパ部材73をノズル面124から離間させ枠部材171内から退出させた後、図3(h)に示すように、吸引キャップ71の枠部171をノズル面124から離間(デキャップ)させる。
【0042】
このように、キャップ部材は、ノズル面に押し当てられて周りの壁を形成する枠部材と、枠部材と分離可能であり、枠部材のノズル面側と反対側を覆う蓋部材と、を有し、枠部材をノズル面に押し当て、蓋部材で枠部材のノズル面と反対側を覆うことで、ノズル面との間に密閉空間を形成可能であり、払拭部材は、蓋部材が枠部材から離間している状態で、枠部材内に入り込んでノズル面を払拭可能に設けられている構成とすることで、記録ヘッドのノズル面から周囲への廃液の垂れを防止できるとともに、液滴を垂直方向上方に向けて吐出する場合の払拭動作による廃液の飛散を低減することができる。
【0043】
ここで、比較例について図4を参照して説明する。この比較例の吸引キャップ771は、上記実施形態の枠部171と蓋部172が一体の部材に相当する。
【0044】
そのため、図4(a)、(b)に示すように、吸引キャップ771でノズル面124をキャッピングした後吸引を行い、図4(c)に示すように、吸引キャップ771をノズル面124から離間させると、記録ヘッド24の周囲に廃インク300が垂れ落ちる。垂れ落ちた廃インク300は、装置内を汚し、電気回路を損傷する。
【0045】
その後、図4(d)に示すように、ワイパ部材73でノズル面124のワイピングを行うと、図4(e)、(f)に示すように、ワイパ部材73が記録ヘッド24から離間するときに、ワイパ部材73の形状復元によってワイパ部材73に転移した廃インク300が周囲に飛散し、装置内を汚し、電気回路を損傷することがある。
【0046】
このように、比較例の構成にあっては、記録ヘッドのノズル面から周囲に廃液が垂れ、あるいは、払拭動作に伴って廃液が飛散する。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態について図5を参照して説明する。なお、図5は同実施形態をクリーニング動作とともに説明する模式的説明図である。
【0048】
本実施形態では、記録ヘッド24は垂直方向に交差する方向で上方に向けて液滴を吐出する状態、すなわち、記録ヘッド24をそのノズル面124を斜め上方に向けて配置している。
【0049】
そして、本実施形態のクリーニング動作では、前記実施形態と同様、図5(a)〜(c)に示すように、吸引キャップ71内への廃インク300の吸引排出を行う。その後、図5(d)に示すように、蓋部172の一部172aのみを開き、吸引キャップ71内を大気に開放する。この状態で、図5(e)に示すように、吸引ポンプ76を駆動して、吸引キャップ71内の廃インク300を廃液タンク90に排出し、その後に図5(f)に示すように、蓋部172を枠部171から離間させる。これにより、記録ヘッド24の周囲からの廃インク300の垂れを防止することができる。
【0050】
その後、前記実施形態と同様、図5(g)〜(i)に示すように、ワイピング動作、吸引キャップ71の枠部171のノズル面124からの離間動作を行う。
【0051】
このようにしても、前記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。更に、途中で大気開放を行うことによって吸引ポンプによる吸引キャップ内廃液の排出処理が容易になる。
【0052】
次に、本発明の第3実施形態の異なる例について図6及び図7を参照して説明する。なお、図6及び図7は同実施形態の説明に供する吸引キャップの斜視説明図である。
【0053】
本実施形態では、吸引キャップ71の枠部171(図7の例)及び蓋部172(図6の例)のいずれかに切り欠き部173を設けている。切り欠き部173は、枠部171と蓋部172が押し付けられる部分(両者のニップを形成する部分)に設けられている。この場合、枠部171及び蓋部172の切り欠き部173を設けた部分は弾性変形可能に形成されている。
【0054】
これにより、枠部171を記録ヘッド24のノズル面に押し付け、蓋部172を枠部171に押し付けたとき(キャッピング時)には切り欠き部173は潰されて、内部に密閉空間を形成できる。
【0055】
本実施形態のクリーニング動作としては、記録ヘッド24のノズル面に枠部171を押し付け、枠部171に蓋部172を押し付けて切り欠き部173を閉じることで、吸引キャップ71内に密閉空間を形成する。そして、吸引ポンプ76を駆動して記録ヘッド24のノズルから廃インクを吸引キャップ71内に吸引排出させる。
【0056】
その後、蓋部172を枠部171から所定量離間させ、切り欠き部173が潰された状態から開放させ、切り欠き部173以外の部分では、蓋部172と枠部171とは蜜に接して、枠部171から廃インクが流れ出さない状態とする。つまり、この状態になる移動量が「所定量」である。これによって、吸引キャップ71内は大気開放される。
【0057】
その後、吸引ポンプ76を駆動して吸引キャップ71内の廃インクを吸引排出し、蓋部172を枠部171から完全に離間させる。その他の動作は前記第2実施形態と同様である。
【0058】
このように構成することで、前記第2実施形態のように記録ヘッド24を斜め上方を向けて配置した場合でも、蓋部172のキャッピング・デキャップの移動が直線方向となるため、簡単な構成にて維持ユニットを形成することができる。
【0059】
次に、本発明の第4実施形態について図8を参照して説明する。なお、図8は同実施形態の説明に供する吸引キャップの断面説明図である。
【0060】
本実施形態では、吸引キャップ71の蓋部172に廃インクを吸収する吸収部材174を設けている。クリーニング動作におけるインク吸引時に、吸収部材174に廃インクを吸収させるので、クリーニング動作が終了し、デキャップした状態で長時間装置を稼働させない場合、吸収部材174が保湿材となるため、ノズルの乾燥を防止することができる。
【0061】
なお、吸収部材174は記録ヘッド24のノズル列長より長いものが好ましく、蓋部172の一部に接着剤を用いて接着し、或いは、爪部などで保持することができる。
【0062】
次に、本発明の第5実施形態について図9を参照して説明する。なお、図9は同実施形態の説明に供する吸引キャップの断面説明図である。
【0063】
本実施形態では、吸引キャップ71の枠部171は、記録ヘッド24のノズル面124に当たって接触することでニップを形成する当接部171aを有する第1部分171Aと、蓋部172に当たって接触することでニップを形成する当接部171bを有する第2部分171Bと、第1部分171Aと第2部分171Bとの間の第3部分171Cとで構成される。
【0064】
ここで、第1部分171A、第2部分171Bは弾性部材で形成されている。一方、第3部分171Cは剛性の高い部材で形成されている。
【0065】
これにより、吸引キャップ71によるキャッピング時において、第1部分171A、第2部分171Bは押し潰されて高い密閉性を持つ密閉空間を形成することができる。
【0066】
なお、第3部分171Cを弾性部材で形成することもできるが、この場合には厚みを厚くするなどして剛性を高めることが好ましい。
【0067】
次に、本発明の第6実施形態について図10を参照して説明する。なお、図10は同実施形態におけるワイパ部材の動きの説明に供する説明図である。
【0068】
ワイパ部材73は、図10(a)に示すように、記録ヘッド24のノズル面124の一端部側から他端部側に向けて矢示方向(ワイピング方向)に払拭する。その後、ワイパ部材73の払拭終了位置にて、図10(b)に示すように、ワイピング方向とは異なる方向にワイパ部材73を移動させる。このとき、吸引ポンプ76を駆動して吸引動作を行なう。
【0069】
ノズル面124の払拭動作によってワイパ部材73の表面に付着した廃インクも吸引動作にて処理できるため、ワイパ部材における廃インク付着や固着による次のワイピング性能の低下を防止することができる。また、ワイパ部材に付着した廃インクの処理機構やインク受け機構を新たに設ける必要がないため、装置の低コスト化、小型化を図れる。
【0070】
次に、本発明の第7実施形態について図11を参照して説明する。なお、図11は同実施形態をワイパ部材の動きとともに説明する説明図である。
【0071】
本実施形態では、吸引キャップ71の枠部171のワイピング方向終端側の内壁面に、ワイパ部材73に付着した廃インクを除去する突起部176を設けている。この突起部176は、ワイピング方向と直交する方向で、ワイパ部材73の幅以上の幅を有し、かつ、先端部は剛性の弱い材質、もしくは先端が鋭利ではない形状に形成されている。この突起部176は、枠部171と同じ材質でも、異なる材質でもよい。
【0072】
このように構成することで、図11(a)、(b)に示すように、ワイパ部材73でワイピングを行ってワイピング終端位置まで移動させると、ワイパ部材73と突起部176とノズル面124との間に空間が形成されて、ワイパ部材73で掻き取った廃インク300が保持される。この状態で、吸引ポンプ76を駆動して廃インク300を廃液タンク90に排出させる。
【0073】
そして、ワイパ部材73を突起部176に押し付けた状態でそのままノズル面124から離間する方向に移動させることで、ワイパ部材73に付着した廃インク300が突起部175で掻き取られてワイパ部材73が清掃される。このとき、吸引ポンプ76の駆動を継続し、あるいは、再駆動することで、ワイパ部材73から掻き取られる廃インク300が排出される。
【0074】
これにより、ワイパ部材の表面に付着した廃インクを簡単な構成で除去してワイパ部材を清掃することができる。
【0075】
次に、本発明の第8実施形態について説明する。
本実施形態では、図示しないが、吸引キャップ71の枠部171のノズル面に当たって接触する部分、及び、枠部171の蓋部172に当たって接触する部分の少なくともいずれかを清掃する部材を設ける。清掃部材は、吸収部材など廃液を吸収できる材質で、クリーニング動作後に、枠部171の当接部に付着した廃液を除去して清掃する。
また、同清掃部材を用いて吐出面を払拭するのも可能である。
【0076】
この場合、清掃するのは枠部材181に生じるニップ痕であり、ノズル列は払拭しないので、清掃部材は、枠部171の平面で見た形状(平面形状)に沿った、細長いドーナツ型が好ましく、また、清掃部材は交換可能とすることが好ましい。
【0077】
これにより、キャッピング時の密閉性が高くなり、吸引性能低下を防止することができる。また、吸引性能の耐久性も向上する。
【0078】
次に、本発明の第9実施形態について図12及び図13を参照して説明する。なお、図12及び図13は同実施形態をクリーニング動作とともに説明する模式的説明図である。
【0079】
吸引キャップ71は、互いに分離可能に設けられた枠部(枠部材)171及び蓋部(蓋部材)172で構成される。
【0080】
枠部171は、記録ヘッド24のノズル面124に当たって接触してニップ部を形成する当接部171aを有し、吸引キャップ71の周りの壁を形成する部材である。蓋部172は、枠部171の当接部171aを記録ヘッド24のノズル面に当てて接触させたときに、枠部171のノズル面とは反対側の開口を覆う部材である。
【0081】
また、枠部171にはノズル面124に当接する側に吸引ポンプ76と接続する吸引チューブ77が接続されている。つまり、吸引ポンプ76の吸引口76aは、枠部171のノズル面側に設けられている。また、吸引ポンプ76の吸引口76aは、後述する払拭部材であるワイパ部材73による払拭方向(ワイピング方向)下流側に設けられている。
【0082】
払拭部材であるワイパ部材73は、蓋部材172と一体に設けられ、吸引キャップ71の蓋部172が移動することで、枠部171内に進入してノズル面124に沿って移動してノズル面124を払拭する。
【0083】
本実施形態におけるクリーニング動作について説明する。
【0084】
まず、図12(a)の待機中では、吸引キャップ171はノズル面124から離間している。
【0085】
そこで、図12(b)に示すように、吸引動作では、図示しないキャップ移動機構によって、吸引キャップ71の枠部171を移動させて当接部171aをノズル面124に当てて接触させることでニップ部を形成する。このとき、蓋部172は枠部171から離間した状態にあるが、キャッピング時には枠部171と蓋部172をともに移動させてもよい。
【0086】
次いで、図12(c)に示すように、同じく図示しないキャップ移動機構によって、吸引キャップ71のワイプ部材73を有する蓋部172を枠部171のノズル面と反対側の端部に向けて移動させて押し付けることで、枠部171のノズル面側と反対側の開口部を覆い、ノズル面124と枠部171及び蓋部172によって密閉空間80を形成する。
【0087】
この状態でチュービングポンプなどからなる吸引ポンプ76を駆動させると、密閉空間80が負圧になって記録ヘッド24のノズル24nから廃液となるインク(廃インク)300が密閉空間80内に排出され、図12(d)に示すように、吸引キャップ71内がほぼ廃インク300で満たされる。
【0088】
その後、図12(e)に示すように、吸引キャップ71のワイパ部材73を有する蓋部材172を枠部171から離間(デキャップ)させる。このとき、吸引キャップ71内の廃インク300はノズル面124と周壁となる枠部171とで形成された受け部で保持されるため、廃インク300が記録ヘッド24の周囲に流れ出すことが防止される。
【0089】
その後、図13(a)に示すように、吸引ポンプ76を再駆動することで、吸引キャップ71の枠部171で保持されている廃インク300を廃液タンク90に排出する。
【0090】
ここで、枠部171に接続された吸引ポンプ76の吸引口76aの位置は、ノズル面側に設けている。吸引口76aがノズル面124に近い程、吸引キャップ71(枠部171)内の廃インク300をより多く吸引することができるため、次工程であるワイピング動作(払拭動作)時において、ワイパ部材73の負荷を低減することができる。
【0091】
次に、図13(b)に示すように、吸引キャップ71の蓋部材172をノズル面124に向けて移動させて、吸引キャップ71の枠部171がノズル面124に当たり接触している状態で、蓋部材172に備えたワイパ部材73を枠部171内部に進入させて、記録ヘッド24のノズル面124に接触させる。
【0092】
そして、蓋部材172を矢印方向に移動させることで、ワイパ部材73も矢示方向に移動させて、図13(c)に示すように、ノズル面124を払拭するワイピング動作を実施する。ワイパ部材73によりノズル面124を払拭することで、ノズル周りの廃インク300を除去してノズル24nにメニスカスを形成できる。
【0093】
このとき、吸引ポンプ76の吸引口76aはワイパ部材73の移動方向(ワイピング方向)下流側に設けている。なお、ワイピング方向(払拭方向)に関しては、ノズル列に対して垂直方向でも、水平方向でもいずれも可能である。これにより、ワイパ部材73で掻き取った廃インク300を吸引口76aに向けて流すことができ、ワイピング後の廃インクの飛散をより効果的に防止することができる。さらに、掻き取った廃インク300の処理を吸引ポンプ76で吸引するため、新たなワイピング後のインク処理機構が不要となり、装置の低コスト化・小型化を計れる。
【0094】
その後、図13(d)に示すように、蓋部材172とともにワイパ部材73をノズル面124から離間させ枠部材171内から退出させた後、図13(i)に示すように、吸引キャップ71の枠部171をノズル面124から離間(デキャップ)させる。
【0095】
このように、キャップ部材は、ノズル面に押し当てられて周りの壁を形成する枠部材と、枠部材と分離可能であり、枠部材のノズル面側と反対側を覆う蓋部材と、を有し、払拭部材は蓋部材に一体に設けられ、枠部材をノズル面に押し当て、蓋部材で枠部材のノズル面と反対側を覆うことで、ノズル面との間に密閉空間を形成可能であり、蓋部材を移動させることで、払拭部材が枠部材内に入り込んでノズル面を払拭する構成とすることで、記録ヘッドのノズル面から周囲への廃液の垂れを防止できるとともに、液滴を垂直方向上方に向けて吐出する場合の払拭動作による廃液の飛散を低減することができる。
【0096】
また、払拭部材が蓋部材に一体に設けられていることで、払拭部材による払拭動作を行なう機構が簡単になる。
【0097】
次に、本発明の第10実施形態について図14及び図15を参照して説明する。なお、図14及び図15は同実施形態をクリーニング動作とともに説明する模式的説明図である。
【0098】
本実施形態では、記録ヘッド24は垂直方向に交差する方向で上方に向けて液滴を吐出する状態、すなわち、記録ヘッド24をそのノズル面124を斜め上方に向けて配置している。
【0099】
そして、本実施形態のクリーニング動作では、前記実施形態と同様、図示しないが、図12(a)と同様な待機状態から、図14(a)〜(c)に示すように、吸引キャップ71内への廃インク300の吸引排出を行う。
【0100】
その後、図14(d)に示すように、大気開放口(前記第3実施形態の切り欠き部173)を開き、吸引キャップ71内を大気に開放する。
【0101】
この状態で、図14(e)に示すように、吸引ポンプ76を駆動して、吸引キャップ71内の廃インク300を廃液タンク90に排出する。
【0102】
その後に図15(a)に示すように、蓋部172を枠部171から離間させる。これにより、記録ヘッド24の周囲からの廃インク300の垂れを防止することができる。
【0103】
その後、前記実施形態と同様、図15(b)〜(e)に示すように、蓋部材172の移動によってワイパ部材73によるワイピング動作を行い、蓋部材172を移動させてワイパ部材73をノズル面124から退避させ、吸引キャップ71の枠部171のノズル面124からの離間動作を行う。
【0104】
このようにしても、前記第9実施形態と同様の作用効果が得られる。更に、途中で大気開放を行うことによって吸引ポンプによる吸引キャップ内廃液の排出処理が容易になる。
【0105】
次に、上記実施形態のクリーニング動作を行なうノズル回復ユニットの一例について図16及び図17を参照して説明する。図16は同ユニットの斜視説明図、図17は図16を反対方向から見た斜視説明図である。
【0106】
このノズル回復ユニット400は、一対のレール部材401(一方の側のみ図示しているが対になっている)を有している。
【0107】
枠部材171は、長手方向の両側面に突起部402が設けられ、突起部402がレール部材401の穴部403に嵌め込まれることで、レール部材401に保持され、ノズル面124に対する高さ方向が固定される。
【0108】
突起部402は、枠部材171の接触面(ニップ部)を形成する弾性部材と同じ材質でも、異なる材質でもよい。ただし、枠部材171の長手方向への回転が生じないよう、突起部402は、長手方向に長い楕円形や長方形とし、或いは片面に2つずつ設けることが好ましい。
【0109】
また、ワイパ部材73を一体に有する蓋部材172にはレールガイド部材405が設けられ、レールガイド部材405がレール部材401のガイド溝であるカム溝406内に移動可能に嵌め込まれて、カム溝406に沿って周回移動することで、記録ヘッド124のノズル面に対して進退する方向及びワイピング方向に沿う方向に移動可能とされている。
【0110】
レールガイド部材405は弾性部材を用いて、レール部材401のカム溝406に押さえつける構成となっている。レール部材401、レールガイド部材405とも摺動性の良い材質を選ぶことが好ましい。
【0111】
さらに、レール部材401には、図示しない駆動源にて回転される駆動ギヤ410と噛み合うラック部材411がワイピング方向に移動可能に保持されている。ラック部材411には突起部412が設けられ、突起部412がレール部材401のガイド溝413に移動可能に嵌め込まれることで、ラック部材411はガイド溝413に沿ってワイピング方向に移動可能とされている。
【0112】
ラック部材411には2本のピン部材414が取り付けられ、蓋部材172にピン部材414が挿入されている。蓋部材172は、ピン部材414に対して移動可能である。これにより、ラック411がワイピング方向に移動させることで、レール部材401のカム溝406に沿ってノズル面124に対して進退する方向に移動する。
【0113】
なお、2本のピン部材414を備えることで蓋部材172の長手方向での回転が防止される。また、蓋部材172のピン部材414を挿入する穴部は、ワイピング方向と垂直方向に長い楕円形状や長方形状にすることで、ラック部材411のピン部材414との干渉・齧りを低減することができる。また、蓋部材172の穴部もラック部材411のピン部414も摺動性の良い材質を選ぶことが好ましい。
【0114】
次に、このノズル回復ユニット400の動作について図18ないし図20を参照して説明する。図18ないし図20は同説明に供する説明図である。
【0115】
まず、図18(a)に示す待機位置状態から、図18(b)に示すように、キャッピング機構用駆動源(例えばステッピングモータ)を駆動して、レール部材401を記録ヘッド24のノズル面側に移動させて、レール部材401に固定された枠部材171によるノズル面のキャッピングを行う。
【0116】
次いで、図18(c)に示すように、ラック部材411移動用の図示しないモータを正転駆動させ、ギヤ410を回転させることで、ラック部材411を矢印a方向(図中右方向)に移動させることで、蓋部材172がカム溝406に沿って移動して、蓋部材172をキャッピングする。
【0117】
その後、図示しない吸引用モータを駆動して、キャップ部材71内を負圧にし、インクを吸引する。
【0118】
そして、ラック部材411移動用の図示しないモータを一定量逆転駆動させ、ギヤ410を逆回転させ、ラック部材411を矢印b方向(図中左方向)に移動させ、前記第3実施形態で説明したような枠部材171又は蓋部材172に設けた切り欠き部173を押し潰し状態から開放することで、キャップ部材71内を大気開放する。なお、切り欠き部173以外においては、枠部材171と蓋部材172は密着しており、インクの垂れは発生しない。
【0119】
次いで、吸引用モータを駆動させ、キャップ部材71内のインクを吸引する。
【0120】
その後、図18(d)に示すように、ラック部材411移動用の図示しない駆動モータを逆転駆動させ、ギヤ410を逆回転させ、ラック部材411を矢印b方向(図中左方向)に移動させて、蓋部材172を退避移動させデキャップする。
【0121】
次いで、図19(a)に示すように、ラック部材411移動用の図示しない駆動モータを正転駆動させ、ギヤ410を回転させることで、ラック部材411を矢印a方向(図中右方向)に移動させる。これにより、蓋部材172がノズル面に近づく方向に移動して、ワイピング開始位置にワイパ部材73が移動する。
【0122】
そして、図19(b)に示すように、ラック部材411移動用の図示しない駆動モータを逆転駆動させ、ギヤ410を回転させることで、ラック部材411を矢印b方向(図中左方向)に移動させ、蓋部材172とともにワイパ部材173を移動させてワイピングを実施する。
【0123】
続けて、図19(c)に示すように、ラック部材411移動用の図示しない駆動モータを逆転駆動させ、ギヤ410を回転させることで、ラック部材411を矢印b方向(図中左方向)に移動させることで、蓋部材173とともにワイパ部材73がノズル面から退避移動する(ワイピング退避I位置)。
【0124】
そこで、図20(a)に示すように、ラック部材411移動用の図示しない駆動モータを正転駆動させ、ギヤ410を回転させることで、ラック部材411を矢印a方向(図中右方向)に移動させることでワイパ部材73を初期位置まで移動させる(ワイピング退避II位置)。
【0125】
さらに、図20(b)に示すように、ラック部材411移動用の図示しない駆動モータを正転駆動させ、ギヤ410を回転させることで、蓋部材172を蓋部材待機位置に移動させる。
【0126】
その後、図20(c)に示すように、キャッピング機構用モータを用いて、ノズル回復ユニット400を記録ヘッド24側から退避する位置に移動させ、枠部材171をデキャップする。この位置が、図18(a)の待機位置となる。
【0127】
次に、レール部材の詳細について図21を参照して説明する。図20は同レール部材401の斜視説明図である。
【0128】
レール部材401のカム溝406には一部に段差部416を設けている。これにより、レールガイド部材405がカム溝406に対して一方向に回ることができ、ワイピング方向を一方向に規制することができる。
【0129】
また、レール部材401のカム溝406における曲がり角部417の溝幅は大きくすることが好ましい。
【0130】
つまり、上述したように、駆動モータを駆動してギヤ410を回転させることでラック部材411を移動させ、レールガイド部材405の移動によってキャッピングやワイピングを実施しているが、ガイド溝405の曲がり角部417に突き当たった場合、それ以上駆動モータを駆動すると、ラック部材411とギヤ410の負荷が大きくなり、部品破損のおそれがある。曲がり角部417の溝幅を大きく設けることで、負荷増大による部品破損を防止することができる。
【0131】
次に、ラック部材411に設けたピン部材414は、ラック部材411とは別部材とすることが好ましい。
【0132】
つまり、ラック部材411のピン部分の長さは、蓋部材172のキャッピング位置からデキャップ位置の間以上必要であり、ワイパ部材73と一体型の蓋部材172では、さらに長さが必要となる。
【0133】
そのため、ピン部材414は、ラック部材411とは、別部材とし、ラック部材411と接続することで、一体型成型時の歩留り防止、ピン部折れなどによる不良品発生を防止できる。
【0134】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0135】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0136】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0137】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0138】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0139】
2 画像形成部
4 給紙部
5 搬送機構部
7 維持回復機構
23 キャリッジ
24 記録ヘッド
51 搬送ベルト
71 吸引キャップ
73 ワイパ部材
76 吸引ポンプ
171 枠部(枠部材)
172 蓋部(蓋部材)
400 ノズル回復ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を垂直方向に沿う方向又は垂直方向と交差する方向で上方に向けて吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ部材と、
前記ノズル面を払拭する払拭部材と、を備え、
被記録媒体を前記記録ヘッドの上方位置で搬送して前記記録ヘッドによって画像を形成する画像形成装置であって、
前記キャップ部材は、
前記ノズル面に押し当てられて周りの壁を形成する枠部材と、
前記枠部材と分離可能であり、前記枠部材の前記ノズル面側と反対側を覆う蓋部材と、を有し、
前記枠部材を前記ノズル面に押し当て、前記蓋部材で前記枠部材の前記ノズル面と反対側を覆うことで、前記ノズル面との間に密閉空間を形成可能であり、
前記払拭部材は、前記枠部材内に入り込んで前記ノズル面を払拭可能に設けられている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記枠部材には、前記枠部材内を吸引可能な吸引手段が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記吸引手段の吸引口は、前記枠部材の前記当接部側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記吸引手段の吸引口は、前記払拭部材による払拭方向下流側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドは傾斜して配置され、
前記吸引手段の吸引口は、前記記録ヘッドの低い側に対応して設けられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記蓋部材には液体を吸収する吸収部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記枠部材及び前記蓋部材のいずれかには切り欠き部が設けられ、
少なくとも前記切り欠き部が設けられた部分は変形可能であり、
前記密閉空間を形成するときには前記切り欠き部が閉じる状態になるまで前記枠部材に前記蓋部材を押し付け、
前記吸引手段による吸引動作を行った後、前記切り欠き部を開放状態にする
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記払拭部材による払拭動作を行っている間、前記吸引手段による吸引動作を行うことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記枠部材には、前記払拭部材による払拭終端側の内壁に、前記払拭部材を清掃する突起部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記記録ヘッドの維持回復動作を行うとき、前記枠部材を前記記録ヘッドのノズル面に当接させ、前記蓋部材を前記枠部材に押し付けて前記密閉空間を形成した後、前記吸引手段を駆動して前記ノズルから液体を吸引排出させ、前記蓋部材を前記枠部材から離間させ、前記払拭部材を前記枠部材内に進入させて前記ノズル面を払拭した後、前記枠部材を前記ノズル面から離間させることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記払拭部材は、前記蓋部材と別体であり、前記蓋部材が前記枠部材から離間している状態で、前記枠部材内に入り込んで前記ノズル面を払拭することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記払拭部材は、前記蓋部材と一体であり、前記蓋部材が移動することで、前記枠部材内に入り込んで前記ノズル面を払拭することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−67158(P2013−67158A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−44553(P2012−44553)
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】