画像形成装置
【課題】腰の強い記録シートであっても、転写チリの発生を抑える。
【解決手段】自らの先端を中間転写ベルト16の2次転写ニップ入口付近の箇所であるニップ上流箇所P1に対して所定の間隙を介して対向させながら、レジストローラ対32によって送り出された記録シートPを自らの先端部におけるベルト対向面に接触させてニップ上流箇所P1に向けて案内するガイド部材90を設け、2次転写ニップにおけるベルト曲率中心と2次転写ローラ20の曲率中心とを結ぶ第1仮想直線L1に対して直交し且つニップ入口を通る第2仮想直線L2よりもベルト側にガイド部材90の先端を位置させ、少なくとも、記録シートPを2次転写ニップに進入させた直後の期間にレジストローラ対32をベルトよりも遅い線速で駆動し、その後、レジストローラ対32の線速をベルトと同じにする。
【解決手段】自らの先端を中間転写ベルト16の2次転写ニップ入口付近の箇所であるニップ上流箇所P1に対して所定の間隙を介して対向させながら、レジストローラ対32によって送り出された記録シートPを自らの先端部におけるベルト対向面に接触させてニップ上流箇所P1に向けて案内するガイド部材90を設け、2次転写ニップにおけるベルト曲率中心と2次転写ローラ20の曲率中心とを結ぶ第1仮想直線L1に対して直交し且つニップ入口を通る第2仮想直線L2よりもベルト側にガイド部材90の先端を位置させ、少なくとも、記録シートPを2次転写ニップに進入させた直後の期間にレジストローラ対32をベルトよりも遅い線速で駆動し、その後、レジストローラ対32の線速をベルトと同じにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写ベルト等の像担持体と、転写ローラ等のニップ形成部材との当接によって形成している転写ニップに進入する直前の像担持体の表面箇所に対して、レジストローラ対等の送出手段によって記録部材を送り出す転写装置に関するものである。また、かかる転写装置を用いる複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置として、特許文献1に記載のものが知られている。図1は、特許文献1に記載の画像形成装置における2次転写ニップの周囲を拡大して示す拡大構成図である。同図において、像担持体としての中間転写ベルト16は、複数のローラによって張架された状態で、図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト16の周方向における全域のうち、駆動ローラ18に対する掛け回し箇所には、ニップ形成部材としての2次転写ローラ20がベルトおもて面側から当接して2次転写ニップを形成している。2次転写ニップに進入する前の中間転写ベルト16には、図示しない領域でY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(黒)のトナー像が重ね合わせて1次転写される。
【0003】
2次転写ニップの下方に配設された送出手段としてのレジストローラ対32は、ローラ間に挟み込んだ記録シートPを、2次転写ニップでベルト上の4色重ね合わせトナー像に同期させるタイミングで中間転写ベルト16に向けて送り出す。送り出された記録シートPは、2次転写ニップに挟み込まれた後、その表面にベルト上の4色重ね合わせトナー像が2次転写される。
【0004】
2次転写ニップの入口付近では、駆動ローラ18に対する掛け回しによってローラ曲率に沿った湾曲軌道で移動するベルト湾曲箇所と、2次転写ローラ20表面との間に空間が形成されている。このような2次転写ニップの入口付近において、記録シートPが中間転写ベルト16のおもて面に密着しておらず、おもて面とシート面との間に微小間隙が形成されていると、入口付近に形成される電界によってトナーがベルト表面から離脱して微小空間内を飛翔する。そして、記録シートにチリ状に散って付着する転写チリという現象を引き起こす。そこで、図示の画像形成装置では、レジストローラ対32から送り出した記録シートPを、2次転写ニップよりもベルト移動方向の上流側に位置するベルト箇所に接触させてから、ベルトとともに2次転写ニップの入口に向けて移動させるようにしている。これにより、2次転写ニップの入口付近で記録シートをベルトおもて面に密着させた状態にすることで、転写チリの発生を抑えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この画像形成装置であっても、記録シートPとして、厚紙などの腰の強いものが用いると、転写チリを引き起こしてしまうことが本発明者らの実験によって判明した。具体的には、記録シートPとして、普通紙などの腰の弱いものを用いたとする。この場合、図2に示すように、レジストローラ対32から送り出された記録シートPは、2次転写ニップよりもベルト移動方向の上流側に位置するベルト箇所に接触した後、ベルト湾曲面に沿って柔軟に変形しながら、ベルトとともに2次転写ニップの入口まで移動する。2次転写ニップの入口付近では、ベルト湾曲面に沿って柔軟に変形することでベルトおもて面に密着しているので、転写チリの発生を抑えることができる。これに対し、記録シートPとして、厚紙などの腰の強いものを用いたとする。すると、図3に示すように、レジストローラ対32から送り出された記録シートPは、2次転写ニップよりもベルト移動方向の上流側に位置するベルト箇所に接触した後、一旦はベルトおもて面に密着した状態でベルトとともに移動する。しかし、2次転写ニップの入口付近にさしかかると、その腰の強さから、ベルト湾曲面に沿って追従することができずに、ベルトおもて面から離間してしまう。そして、2次転写ローラ20に突き当たった後、2次転写ローラ20によって強制的にニップ入口に向けて方向転換せしめられる。図示のように、2次転写ニップの入口付近では、ベルトおもて面から離間することから、転写チリを引き起こしてしまうのである。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、腰の強い記録部材であっても、転写チリの発生を抑えることができる転写装置や画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、自らの無端移動する表面に可視像を担持する像担持体と、自らの無端移動する表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域を、前記像担持体の表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域に当接させて転写ニップを形成するニップ形成部材と、2つの表面無端移動体におけるそれぞれの無端移動可能な表面を当接させて形成している送出ニップに挟み込んだ記録部材を、2つの前記表面無端移動体のうち、少なくとも一方の表面無端移動体の駆動により、前記像担持体の表面の無端移動方向における全域のうち、前記転写ニップに進入する直前で所定の曲率の湾曲軌道に沿って前記転写ニップの入口に向けて進む箇所であるニップ上流箇所に向けて送り出す送出手段とを有し、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に転写する転写装置において、自らの先端を前記像担持体の前記ニップ上流箇所に対して所定の間隙を介して対向させながら、前記送出手段によって送り出された記録部材を自らの先端部における前記像担持体との対向面に接触させて前記ニップ上流箇所に向けて案内する案内部材を設け、前記転写ニップにおける前記像担持体の曲率中心と前記ニップ形成部材の曲率中心とを結ぶ第1仮想直線に対して直交し且つ前記転写ニップの入口を通る第2仮想直線よりも前記像担持体の側に前記案内部材の先端を位置させ、少なくとも、前記送出ニップから送り出した記録部材の先端を前記転写ニップに進入させてから、前記先端を転写ニップ内で所定量だけ進めるまでの期間にて、前記一方の表面無端移動体を前記像担持体や前記ニップ形成部材よりも遅い線速で駆動し、且つ、前記期間の経過後に、2つの表面無端移動体におけるそれぞれの表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、送出手段から送り出した記録部材を転写ニップに進入させてから転写ニップ内で所定量だけ進めるまでの期間において、送出手段の表面無端移動体の線速を転写ニップにおける像担持体の線速よりも遅くすることで、送出手段と転写ニップとの間で記録部材を転写ニップに向けて引っ張る。これにより、案内部材の先端部における像担持体との対向面に接触しながら像担持体のニップ上流箇所に向けて案内される記録部材が、案内部材の先端と転写ニップの入口との間で同先端と同入口とを一直線状に結ぶ仮想直線(以下、第3仮想直線という)に沿って真っ直ぐに延びる姿勢をとろうとする。しかし、案内部材の先端が第2仮想直線よりも像担持体の側に位置していることから、案内部材の先端から転写ニップの入口に向けて一直線状に延びる第3仮想直線は自らよりもニップ形成部材の側に突出している像担持体の湾曲部を貫いて転写ニップの入口に至っている。このため、転写ニップの入口に向けて引っ張られながら第3仮想直線に沿って真っ直ぐに延びようとする記録部材は、真っ直ぐな姿勢になる前にニップ像担持体の湾曲表面に強く密着する。本発明においては、このように、案内部材の先端と転写ニップの入口との間で記録部材を転写ニップに向けて引っ張りながら像担持体の湾曲表面に強制的に密着させた後、送出手段の表面無端移動体の線速を少し速めて像担持体と同じ速度にする。これにより、送出手段の送出ニップ内で記録部材をスリップさせてしまうことを回避する。送出手段の表面無端移動体の線速を少し速めても、記録部材を転写ニップに向けて引っ張る像担持体の線速と同じにしていることから、送出手段と転写ニップとの間で記録部材に弛みを発生させることはない。このため、記録部材の後端を送出手段から送り出すまでは、記録部材を転写ニップの入口付近で像担持体の湾曲表面に密着させ続ける。かかる構成では、厚紙などの腰の強い記録部材であっても、記録部材を転写ニップに進入させた直後に転写ニップに向けて引っ張って像担持体の湾曲表面に強制的に密着させた後、その密着状態を維持したままで転写ニップに送り込み続けるので、腰の強い記録部材であっても転写チリの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】特許文献1に記載の画像形成装置における2次転写ニップの周囲を拡大して示す拡大構成図。
【図2】同2次転写ニップの入口付近における普通紙の挙動を示す説明図。
【図3】同2次転写ニップの入口付近における厚紙の挙動を示す説明図。
【図4】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図5】同プリンタにおけるK用の作像ユニットを示す拡大構成図。
【図6】同プリンタにおける2次転写ニップとその周囲構成とを示す拡大構成図。
【図7】同周囲構成を更に拡大して示す拡大構成図。
【図8】本プリンタにおける2次転写ニップ直前での記録シートPの挙動を示す拡大説明図。
【図9】実施例に係るプリンタにおける2次転写ニップの周囲構成を示す構成図。
【図10】ガイド部材として樹脂からなるものを用いた場合における異常画像の発生の原理を説明するための、2次転写ニップ周囲の構成図。
【図11】導電性材料からなるガイド部材を接地した場合における転写不良の発生の原理を説明するための、2次転写ニップ周囲の構成図。
【図12】導電性材料からなるガイド部材を接地した場合におけるシート裏汚れの発生の原理を説明するための、2次転写ニップ周囲の構成図。
【図13】実施例に係るプリンタにおける2次転写ニップの周囲構成をより詳しく示す構成図。
【図14】具体例に係るプリンタにおける2次転写ニップの周囲構成を示す構成図。
【図15】詳細例に係るプリンタにおける2次転写ニップの周囲構成を示す構成図。
【図16】2次転写ローラを中間転写ベルトから離間させた状態の同周囲構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図4は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を作像するための4つの作像ユニット1Y,M,C,Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための作像ユニット1Kを例にすると、これは図5に示されるように、潜像担持体であり且つ像担持体であるドラム状の感光体2Kを備えている。また、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置4K、現像装置5K等も備えている。画像形成ユニットたる作像ユニット1Kは、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
【0011】
帯電装置4Kは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、レーザー光Lによって露光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置5KによってYトナー像に現像される。そして、後述する中間転写ベルト16上に1次転写される。ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色の作像ユニット(1Y,M,C)においても、同様にして感光体(2Y,M,C)上に(Y,M,C)トナー像が形成されて、後述する中間転写ベルト16上に中間転写される。
【0012】
現像装置5Kは、図示しないKトナーを収容する縦長のホッパ部6Kと、現像部7Kとを有している。ホッパ部6K内には、図示しない駆動手段によって回転駆動されるアジテータ8K、これの鉛直方向下方で図示しない駆動手段によって回転駆動される撹拌パドル9K、これの鉛直方向で図示しない駆動手段によって回転駆動されるトナー供給ローラ10Kなどが配設されている。ホッパ部6K内のKトナーは、アジテータ8Kや撹拌パドル9Kの回転駆動によって撹拌されながら、自重によってトナー供給ローラ10Kに向けて移動する。トナー供給ローラ10Kは、金属製の芯金と、これの表面に被覆された発泡樹脂等からなるローラ部とを有しており、ホッパ部6K内のKトナーをローラ部の表面に付着させながら回転する。
【0013】
現像装置5Kの現像部7K内には、感光体2Kやトナー供給ローラ10Kに当接しながら回転する現像ローラ11Kや、これの表面に先端を当接させる薄層化ブレード12Kなどが配設されている。ホッパ部6K内のトナー供給ローラ10Kに付着したKトナーは、現像ローラ11Kとトナー供給ローラ10Kとの当接部で現像ローラ11Kの表面に供給される。供給されたKトナーは、現像ローラ11Kの回転に伴ってローラと薄層化ブレード12Kとの当接位置を通過する際に、ローラ表面上での層厚が規制される。そして、層厚規制後のKトナーは、現像ローラ11Kと感光体2Kとの当接部である現像領域において、感光体2K表面のK用の静電潜像に付着する。この付着により、K用の静電潜像がKトナー像に現像される。
【0014】
図5を用いてK用の作像ユニットについて説明したが、Y,M,C用の作像ユニット1Y,M,Cにおいても、同様のプロセスにより、感光体2Y,M,C表面にY,M,Cトナー像が形成される。
【0015】
先に示した図4において、作像ユニット1Y,M,C,Kの鉛直方向上方には、光書込ユニット70が配設されている。潜像書込装置たる光書込ユニット70は、画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光Lにより、作像ユニット1Y,M,C,Kにおける感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット70は、光源から発したレーザー光(L)を、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。
【0016】
作像ユニット1Y,M,C,Kの鉛直方向下方には、無端状の中間転写ベルト16を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。転写装置の一部である転写ユニット15は、中間転写ベルト16の他に、従動ローラ17、駆動ローラ18、4つの1次転写ローラ19Y,M,C,K、2次転写ローラ20、ベルトクリーニング装置21、クリーニングバックアップローラ22などを備えている。
【0017】
従動ローラ17、駆動ローラ18、クリーニングバックアップローラ22及び4つの1次転写ローラ19Y,M,C,Kは、中間転写ベルト16のループ内側に配設されている。これらのうち、クリーニングバックアップローラ22や、4つの1次転写ローラ19Y,M,C,Kは、中間転写ベルト16の裏面に当接しているものの、その周面に対するベルトの巻き付き角度はごく僅かである。このため、実質的に中間転写ベルト16を張架していない。これに対し、従動ローラ17及び駆動ローラ18は、それぞれ周面に中間転写ベルト16を約180[°]の巻き付き角度で巻き付けながら、中間転写ベルト16を張架している。即ち、本プリンタでは、従動ローラ17及び駆動ローラ18が、それぞれ中間転写ベルト16を張架する張架ローラとして機能している。なお、駆動ローラ18は、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動されることで、中間転写ベルト16を同方向に無端移動せしめる。
【0018】
4つの1次転写ローラ19Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト16を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ベルト16のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ19Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されており、これにより、感光体2Y,M,C,Kの静電潜像と、1次転写ローラ19Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。なお、1次転写ローラ19Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0019】
中間転写ベルト16としては、そのベルト基体が、TPE(サーモプラスチックエラストマーアロイ)、PC(ポリカーボネート)、PI(ポリイミド)、PAA(ポリアミドアロイ)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の高分子材料からなるものを用いることが可能である。ここで、ベルト基体とは、中間転写ベルト16が単層構造である場合には、ベルトそのものである。また、多層構造の場合には、最も厚い層がベルト基体となる。
【0020】
Y用の作像ユニット1Yの感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴って上述のY用の1次転写ニップに進入すると、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト16上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト16は、その無端移動に伴ってM,C,K用の1次転写ニップを通過する際に、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト16上には4色トナー像が形成される。
【0021】
駆動ローラ18は、中間転写ベルト16における周方向の全領域のうち、後述する2次転写ニップを形成する箇所を自らの周面に掛け回してベルト湾曲箇所を形成する転写裏打ちローラとして機能している。転写ユニット15の2次転写ローラ20は、転写裏打ちローラたる駆動ローラ18の曲率に沿って湾曲する前記ベルト湾曲箇所にベルトおもて面側から当接して2次転写ニップを形成している。かかる構成の2次転写ローラ20、及び駆動ローラ18のうち、何れか一方には、図示しない転写バイアス電源によって2次転写バイアスが印加される。また、他方は、アース接続されている。これにより、2次転写ローラ20と駆動ローラ18との間に、2次転写電界が形成される。
【0022】
2次転写ローラ20としては、金属製のローラ芯金上に、導電性且つ弾性を発揮する材料からなる導電弾性層を被覆したものを用いている。かかる導電弾性層の材料としては、イオン導電性材料(ウレタン+カーボン分散、NBR、ヒドリン)や電子導電性材料(EPDM)等が挙げられる。
【0023】
転写ユニット15の鉛直方向下方には、記録部材たる記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している記録部材収容手段としての給紙カセット30が、プリンタの筐体に対してスライド着脱可能に配設されている。この給紙カセット30は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ30aを当接させており、これを所定のタイミングで図中反時計回り方向に回転させることで、その記録紙Pを給紙路31に向けて送り出す。
【0024】
給紙路31の末端付近には、レジストローラ対32が配設されている。このレジストローラ対32は、給紙カセット30における紙排出側の端部の斜め上方に配設されている。給紙カセット30内からカセット側方に向けてほぼ水平方向に排出された記録紙Pは、排出後直ちに約90[°]の角度で大きく方向転換せしめられて、レジストローラ対32のレジストニップに向けて送られる。レジストローラ対32は、給紙カセット30から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを上述の2次転写ニップ内で中間転写ベルト16上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。
【0025】
2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト16上の4色トナー像は、2次転写電界やニップ圧の影響を受けて記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、2次転写ローラ20や中間転写ベルト16から曲率分離する。そして、転写後搬送路33を経由して、2次転写ニップの上方に配設された定着装置34に送り込まれる。
【0026】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト16には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト16のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置21によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト16のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ22は、ベルトクリーニング装置21によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0027】
定着装置34は、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ34aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ34bとによって定着ニップを形成している。定着装置34内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ34aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0028】
定着装置34内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路35を経由した後、排紙路36と反転前搬送路41との分岐点にさしかかる。定着後搬送路35の側方には、回動軸42aを中心にして回動駆動される切替爪42が配設されており、その回動によって定着後搬送路35の末端付近を閉鎖したり開放したりする。定着装置34から記録紙Pが送り出されるタイミングでは、切替爪42が図中実線で示す回動位置で停止して、定着後搬送路35の末端付近を開放している。よって、記録紙Pが定着後搬送路35から排紙路36内に進入して、排紙ローラ対37のローラ間に挟み込まれる。
【0029】
図示しないテンキー等からなる操作部に対する入力操作や、図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくる制御信号などにより、片面プリントモードが設定されている場合には、排紙ローラ対37に挟み込まれた記録紙Pがそのまま機外へと排出される。そして、筐体の上カバー50の上面であるスタック部にスタックされる。
【0030】
一方、両面プリントモードに設定されている場合には、先端側を排紙ローラ対37に挟み込まれながら排紙路36内を搬送される記録紙Pの後端側が定着後搬送路35を通り抜けると、切替爪42が図中一点鎖線の位置まで回動して、定着後搬送路35の末端付近が閉鎖される。これとほぼ同時に、排紙ローラ対37が逆回転を開始する。すると、記録紙Pは、今度は後端側を先頭に向けながら搬送されて、反転前搬送路41内に進入する。
【0031】
図4は、本プリンタを正面側から示している。図紙面に直交する方向の手前側がプリンタの前面であり、奥側が後面である。また、本プリンタの図中右側が右側面、左側が左側面である。本プリンタの右端部は、回動軸40aを中心に回動することで筐体本体に対して開閉可能な反転ユニット40になっている。排紙ローラ対37が逆回転すると記録紙Pがこの反転ユニット40の反転前搬送路41内に進入して、鉛直方向上側から下側に向けて搬送される。そして、反転搬送ローラ対43のローラ間を経由した後、半円状に湾曲している反転搬送路44内に進入する。更に、その湾曲形状に沿って搬送されるのに伴って上下面が反転せしめられながら、鉛直方向上側から下側に向けての進行方向も反転して、鉛直方向下側から上側に向けて搬送される。その後、上述した給紙路31内を経て、2次転写ニップに再進入する。そして、もう一方の面にもフルカラー画像が一括2次転写された後、転写後搬送路33、定着装置34、定着後搬送路35、排紙路36、排紙ローラ対37を順次経由して、機外へと排出される。
【0032】
反転ユニット40は、外部カバー45と揺動体46とを有している。具体的には、反転ユニット40の外部カバー45は、プリンタ本体の筺体に設けられた回動軸40aを中心にして回動するように支持されている。この回動により、外部カバー45は、その内部に保持している揺動体46とともに筺体に対して開閉する。図中点線で示すように、外部カバー45がその内部の揺動体46とともに開かれると、反転ユニット40とプリンタ本体側との間に形成されていた給紙路31、2次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36が縦に2分されて、外部に露出する。これにより、給紙路31、2次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
【0033】
また、揺動体46は、外部カバー45が開かれた状態で、外部カバー45に設けられた図示しない揺動軸を中心にして回動するように外部カバー45に支持されている。この回動により、揺動体46が外部カバー45に対して開かれると、反転前搬送路41や反転搬送路44が縦に2分されて外部に露出する。これにより、反転前搬送路41内や反転搬送路44内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
【0034】
プリンタの筺体の上カバー50は、図中矢印で示すように、回動軸51を中心にして回動自在に支持されており、図中反時計回り方向に回転することで、筺体に対して開いた状態になって、筺体の上部開口を外部に向けて大きく露出させる。これにより、光書込ユニット71が露出する。
【0035】
なお、本プリンタでは、転写ユニット15の構成の簡素化や装置の小型化をできるだけ図るために、中間転写ベルト16を2本の張架ローラ(17、18)だけで張架している。かかる構成では、何れか一方(17、18)を駆動ローラとして機能させることになるが、本プリンタでは、転写裏打ちローラとして機能する方の張架ローラを駆動ローラとして機能させている。これにより、転写裏打ちローラに多機能をもたせているが、転写裏打ちローラと駆動ローラとを別々にしてもよい。
【0036】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図6は、本プリンタの2次転写ニップの周囲を拡大して示す拡大構成図である。同図において、送出手段たるレジストローラ対32は、一方の表面無端移動体としての第1レジストローラ32aと、他方の表面無端移動体としての第2レジストローラ32bとの当接によって送出ニップを形成している。そして、送出ニップに挟み込んだ記録シートPを、少なくとも第1レジストローラ32aの回転駆動により、中間転写ベルト16のおもて面の無端移動方向における全域のうち、2次転写ニップよりも上流側のベルト領域に向けて送り出す。
【0037】
2次転写ニップの直前において、中間転写ベルト16は、自らの表面を弧状の湾曲軌道に沿って2次転写ローラ20に徐々に近づけながら2次転写ニップに向けて移動するように、駆動ローラ18の曲率に沿って湾曲している。2次転写ニップの下方には、案内部材としてのガイド部材90が配設されている。このガイド部材90は、自らの先端を中間転写ベルト16のニップ上流箇所P1に対して所定の間隙を介して対向させながら、レジストローラ対32によって送り出された記録シートP、2次転写ニップの入口の近傍で且つ入口よりもベルト移動方向の上流側の箇所であるニップ上流箇所P1に向けて案内する。このガイド部材90の配設条件は、次のようになっている。即ち、図7に示されるように、ガイド部材90の先端を第2仮想直線L2よりも中間転写ベルト16側に位置させるという配設条件である。
【0038】
第2仮想直線L2は、2次転写ニップにおけるベルトの曲率中心たる駆動ローラ18の回転中心と、2次転写ニップにおける2次転写ローラ20の曲率中心たる2次転写ローラ回転中心とを結ぶ第1仮想直線L1に直交し且つニップ入口を通る直線である。ガイド部材90の先端を第2仮想直線L2よりも中間転写ベルト16側に位置させると、図示のように、ガイド部材90の先端と、2次転写ニップの入口とを結ぶ第3仮想直線L3を、2次転写ニップの入口直前におけるベルトの湾曲表面よりもベルト曲率中心(駆動ローラ18中心)の側に位置させることになる。
【0039】
レジストローラ対32は、送出ニップから送り出した記録シートPの先端を2次転写ニップに進入させてから、その先端を2次転写ニップ内で所定量だけ進めるまでの期間(以下、「先端進入後初期期間」という)において、第1レジストローラ32aを中間転写ベルト16や2次転写ローラ20よりも遅い線速で駆動する。これにより、記録シートPの先端を2次転写ニップに進入させてからしばらくの間(先端進入後初期期間)は、レジストローラ対32によるシート送出速度を、2次転写ニップにおけるシート搬送速度よりも遅くして、記録シートPをレジストローラ対32と2次転写ニップとの間で2次転写ニップに向けて引っ張るようにする。
【0040】
このようにして引っ張られる記録シートPは、ガイド部材90の先端と、2次転写ニップの入口との間で、第3仮想直線L3に沿って真っ直ぐに延びる姿勢をとろうとする。しかし、ガイド部材90の先端付近から転写ニップの入口にかけての領域では、上述したように、第3仮想直線L3を、2次転写ニップの入口直前におけるベルトの湾曲表面よりもベルト曲率中心の側に位置させている。これは、図示のように、2次転写ニップ直前における中間転写ベルト16の湾曲表面を第3仮想直線L3よりも2次転写ローラ20の側に突出させていることを意味している。記録シートPは第3仮想直線L3に沿って真っ直ぐに延びた姿勢をとることができずに、第3仮想直線L3よりも2次転写ローラ20の側に突出している中間転写ベルト16の湾曲表面に密着する。
【0041】
本プリンタにおいては、このように、記録シートPの張力によって記録シートPを2次転写ニップ直前の中間転写ベルト16の湾曲表面に密着させた後、第1レジストローラ32aの線速を少し速めて中間転写ベルト16と同じ速度にする。これにより、送出ニップ内で記録シートPをスリップさせてしまうことを回避する。第1レジストローラ32aの線速を少し速めても、記録シートPを2次転写ニップに向けて引っ張るベルトの線速と同じにしていることから、送出ニップと2次転写ニップとの間で記録シートPに弛みを発生させることはない。このため、記録シートPの後端を送出ニップから送り出すまでは、記録シートPを2次転写ニップの入口付近で中間転写ベルト16の湾曲表面に密着させ続ける。かかる構成では、厚紙などの腰の強い記録シートPであっても、その記録シートPを2次転写ニップに進入させた直後に、その張力によって像担持体の湾曲表面に強制的に密着させた後、その密着状態を維持したままで2次転写ニップに送り込み続けるので、腰の強い記録シートPであっても転写チリの発生を抑えることができる。
【0042】
「先端進入後初期期間」の後に、第1レジストローラ32aの線速を少し速めて中間転写ベルト16や2次転写ローラ20の線速と同じにする方法として、第1レジストローラ32aの駆動速度を少しだけ速める方法を例示することができる。しかしながら、この方法では、タイミングを見計らって第1レジストローラ32aの駆動速度を少しだけ速めるという複雑な制御が必要になる。そこで、本プリンタにおいては、「先端進入後初期期間」の後に、レジストローラ対32における第1レジストローラ32a及び第2レジストローラ32bをそれぞれ2次転写ニップに挟み込まれている記録シートPに従動させることで、2つのレジストローラの線速をそれぞれ中間転写ベルト16や2次転写ローラ20の線速と同じにするようになっている。かかる構成では、タイミングを見計らって第1レジストローラ32aの駆動速度を少しだけ速めるという複雑な制御を実施することなく、2つのレジストローラの線速をそれぞれ中間転写ベルト16や2次転写ローラ20の線速と同じにすることができる。
【0043】
レジストローラ対32における第1レジストローラ32a及び第2レジストローラ32bをそれぞれ2次転写ニップに挟み込まれている記録シートPに従動させる方法としては、電動クラッチを用いる方法と、トルクリミッターを用いる方法とが挙げられる。電動クラッチを用いる方法では、「先端進入後初期期間」の経過後に、駆動モータから第1レジストローラ32aに繋いでいた駆動力を、電動クラッチの作動によって切って、第1レジストローラ32aを空回り可能にする。これにより、2つのレジストローラ対をそれぞれ送出ニップに挟み込まれている記録シートPに連れ回らせることができる。しかしながら、この方法では、タイミングを見計らって電動クラッチを作動させるという制御が必要になる。
【0044】
そこで、本プリンタにおいては、トルクリミッターを用いる方法を採用している。具体的には、駆動モータからの駆動力を第1レジストローラ32aに伝達する駆動伝達機構内にトルクリミッターを配設している。第1レジストローラ32aにかかるトルクが所定の閾値を超えると、トルクリミッターが作動して、第1レジストローラ32aを空回りさせる。記録シートPの先端が2次転写ニップに進入した時点では、第1レジストローラ32aがベルトよりも遅い線速で回転駆動している。これにより、ガイド部材90の先端と2次転写ニップとの間のシート箇所に張力を発生させて、そのシート箇所を2次転写ニップ入口付近のベルト湾曲面に密着させる。すると、その張力が第1レジストローラ32aに伝わって、第1レジストローラ32aにかかるトルクが前述した閾値を超えて、トルクリミッターが作動する。そして、第1レジストローラ32aや第2レジストローラ32bが、送出ニップに挟み込まれている記録シートPに連れ回るようになる。かかる構成では、タイミングを見計らって電動クラッチを作動させるという制御を実施することなく、「先端進入後初期期間」の経過後に2つのレジストローラをそれぞれ自動で記録シートに連れ回りさせることができる。
【0045】
上述したように、駆動ローラ18と2次転写ローラ20とのうち、何れか一方には2次転写バイアスが印加され、且つ他方はアース接続されている。これにより、2次転写ニップの上流側では、中間転写ベルト16の湾曲表面と、2次転写ローラ20との間に電界が形成される。2次転写ニップの入口よりもベルト移動方向上流側に離れるにつれて、駆動ローラ18と2次転写ローラ20との距離が大きくなることから、前述の電界の強度は弱くなる。本プリンタにおいては、中間転写ベルト16における2次転写ニップに進入する直前の領域のうち、2次転写ローラ20との電位差がパッシェンの放電開始電位差よりも小さくなる箇所を、ニップ上流箇所P1とし、このニップ上流箇所P1に向けて記録シートPを案内するようにガイド部材90を配設している。かかる構成では、2次転写ニップよりも上流側において、中間転写ベルト16と2次転写ローラ20との間で放電を発生させる前に、記録シートPをその張力によって中間転写ベルト16の湾曲表面に密着させる。中間転写ベルト16の表面から2次転写ローラ20に向けてのトナーの飛翔は、両者間での放電に伴って起こるので、2次転写ローラ20に向けてのトナー飛翔を発生させる前のベルト領域に対して、記録シートPをその張力によって密着させていることになる。よって、ベルト表面から2次転写ローラ20に向けてのトナー飛翔を、記録シートPのベルト湾曲表面への密着によって確実に防止することができる。
【0046】
ガイド部材90については、図7に示されるように、電気抵抗R1を介して接地(アース接続)している。これは次に説明する理由による。即ち、記録シートPが吸湿によって電気抵抗を低下させてしまう高温高湿環境下では、2次転写ニップ内に流れる転写電流を、記録シートPとガイド部材90とを介してアースにリークさせて、2次転写ニップ内で所望の転写効率を発揮することが困難になることがある。転写電流のリークを回避するために、ガイド部材90を接地せずに電気的にフロート状態にすると、ガイド部材90の先端との摺擦によって記録シートPを帯電させて、記録シートPとガイド部材90との間の放電によって異常画像を発生させてしまうおそれがでてくる。そこで、100[MΩ]程度の電気抵抗R1を介してガイド部材90を接地することで、2次転写電流のアースへのリークを防止するとともに、ガイド部材90との摺擦による記録シートPの過剰帯電も防止している。
【0047】
[実施例]
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例のプリンタについて説明する。
実施例に係るプリンタは、図9に示されるように、2次転写バイアス電源91から出力される2次転写バイアスを、駆動ローラ18の芯金に印加するようになっている。2次転写バイアスは、トナーの帯電極性と同じマイナス極性のバイアスである。一方、中間転写ベルト19に当接している2次転写ローラ20の芯金は図示のように接地されている。
【0048】
2次転写ニップ内において、トナーは、トナーと同極性の2次転写バイアスが印加される駆動ローラ18側から接地された2次転写ローラ20側に向けて静電的に押し出される。これにより、中間転写ベルト16上のトナー像が2次転写ニップ内の記録シート表面に2次転写される。2次転写ニップの周囲では、図中の波線矢印で示されるように、駆動ローラ18から2次転写ニップと2次転写ローラ20とを介してアースに対して2次転写電流が流れる。
【0049】
ガイド部材90として、樹脂からなるものを用いたとする。すると、図10に示されるように、ガイド部材90が搬送中の記録シートPと擦れることによって摩擦帯電して徐々にチャージアップしていくことがある。図中の黒丸は、電荷を示している。チャージアップしたガイド部材90は、やがて記録シートとの間で放電を起こして記録シートを帯電させ、この帯電によって異常画像を引き起こすおそれがある。
【0050】
一方、ガイド部材90として導電性材料からなるものを用い、このガイド部材90を接地したとする。すると、図11に示されるように、転写ニップ内に流れる転写電流の一部が搬送中の記録シートPを伝ってガイド部材90にリークすることがある。リークが発生すると、2次転写ニップ内の電界の強度が低下して転写不良を引き起こすおそれがある。また、本プリンタのように、駆動ローラ18に対して2次転写バイアスを印加している構成では、記録シートPの裏汚れを発生させるおそれがある。具体的には、駆動ローラ18とガイド部材90との間に、トナーを駆動ローラ18側からガイド部材90側に静電移動させる電界が形成される。この電界により、図12に示されるように、記録シートPの非搬送時に中間転写ベルト16上のトナーがガイド部材90の表面に転移する。その後、シート搬送時にガイド部材90の表面上のトナーがシート裏面に擦られて付着して裏汚れを引き起こすのである。
【0051】
そこで、実施例に係るプリンタにおいては、次のような構成を採用している。即ち、ガイド部材として、導電性材料(例えば金属)からなるものを用いている。そして、図13に示されるように、2次転写電源91を駆動ローラ18だけでなく、ガイド部材90にも接続して、ガイド部材90の電位を駆動ローラ18の芯金の電位と同じにしている。
【0052】
かかる構成では、ガイド部材90を樹脂材料で構成した場合とは異なり、記録シートPと摺擦させても摩擦帯電させることがないので、チャージアップしたガイド部材90から記録シートPへの放電に起因する異常画像の発生を回避することができる。また、ガイド部材90を駆動ローラ18の芯金と同電位にしていることから、2次転写ニップとガイド部材90との間でガイド部材90への電流のリークを引き起こす電位勾配が形成されるのを回避する。これにより、電流のリークに起因する転写不良の発生を回避することができる。更には、駆動ローラ18とガイド部材90との間にトナーを駆動ローラ18側からガイド部材90側に静電移動させる電界が形成されるのを回避する。これにより、その電界によってトナーをベルトからガイド部材90に転移させてしまうことによる記録シートPの裏汚れの発生を回避することができる。
【0053】
なお、2次転写バイアス電源91を駆動ローラ18とガイド部材90との両方に接続した例について説明したが、2次転写バイアス電源91とは異なる電源をガイド部材90に接続し、この電源から2次転写バイアスと同じ値のバイアスを出力してもよい。
【0054】
[具体例]
次に、実施例に係るプリンタに、更なる特徴的な構成を付加した具体例のプリンタについて説明する。
具体例に係るプリンタにおいては、4つの作像ユニット1Y,M,C,Kについてそれぞれ作像能力を定期的に調整するために、プロセスコントロール処理と呼ばれる処理を定期的に行うようになっている。このプロセスコントロールでは、中間転写ベルト16上にY,M,C,Kの階調パターン像を形成し、それぞれの階調パターン像における各階調の画像濃度を反射型フォトセンサ等からなる画像濃度センサによって検知する。そして、その検知結果に基づいて、4つの作像ユニット1Y,M,C,Kについてそれぞれ、現像バイアスや感光体帯電電位などを調整することで、画像濃度の安定化を図っている。
【0055】
プロセスコントロール処理においては、図14に示されるように、2次転写ニップの近傍であって且つ中間転写ベルト16の上方に配設されている画像濃度センサ92によって階調パターン像Ppの画像濃度を検知する。このような検知を行うために、2次転写ニップよりもベルト移動方向上流側で中間転写ベルト16上に転写した階調パターン像Ppを、2次転写ニップに通した後に画像濃度センサ92に検知させる。この過程において、階調パターン像Ppを2次転写ニップに通す際には、2次転写バイアス電源91から、プリントジョブ時とは異なる値の2次転写バイアスを出力する。具体的には、トナー同極性の2次転写バイアスを出力する。これにより、2次転写ニップ内で階調パターン像Ppを中間転写ベルト16の表面に引き付けることで、階調パターン像Ppの2次転写ローラ20への転移を防止している。
【0056】
このとき、ガイド部材90にも、駆動ローラ18に印加しているバイアスと同じものを印加しているとする。すると、ガイド部材90も、トナーとは逆極性の電位にしてしまう。駆動ローラ18の芯金とガイド部材90とは互いに同じ電位であるが、中間転写ベルト16はある程度の電気抵抗を発揮するため、ガイド部材90よりも電位が低くなっている。すると、中間転写ベルト16の表面上における階調パターン像のトナーをガイド部材90に引き付けてしまうおそれがある。
【0057】
そこで、具体例に係るプリンタにおいては、2次転写バイアス電源91によってガイド部材90に対して2次転写バイアスを印加している状態と、バイアスを印加していないガイド部材90を接地した状態とで切り替えを行う状態切り替え手段を設けている。この状態切り替え手段は、2次転写バイアス電源91、リレースイッチ93、図示しない制御部などから構成されている。リレースイッチ93は、ガイド部材90に対する電気的な接続を2次転写バイアス電源91とアースとで切り替えるものである。また、制御部は、2次転写バイアス電源91からの出力や、リレースイッチ93の動作を制御するものである。
【0058】
かかる構成では、プロセスコントロール処理の実施時に駆動ローラ18に対してトナーとは逆極性のバイアスを印加しているときには、ガイド部材90をバイアス印加のない接地した状態にする。これにより、ガイド部材90と駆動ローラ18との間にトナーをガイド部材90側からベルト表面側に向けて引き寄せる電界を形成する。そして、この電界により、ベルト表面からガイド部材90へのトナーの転移を抑えることで、記録シートPの裏汚れの発生を抑えることができる。
【0059】
[詳細例]
次に、具体例に係るプリンタに、更なる特徴的な構成を付加した詳細例のプリンタについて説明する。
図15は、詳細例に係るプリンタにおける2次転写ニップの周囲構成を示す構成図である。同図において、2次転写バイアス電源91と、ガイド部材90とは、互いに接触している第1電気接点Ep1及び第2電気接点Ep2を介して電気的に接続されている。図示のように中間転写ベルト16上のトナー像を記録シートPに2次転写しているときには、2次転写バイアス電源91から2次転写バイアスが出力される。そして、この2次転写バイアスが駆動ローラ18の芯金とガイド部材とにそれぞれ印加される。
【0060】
具体例に係るプリンタは、プロセスコントロール処理の実施時における階調パターン像の2次転写ローラ20への転移をより確実に防止する狙いで、2次転写ローラ20を中間転写ベルト20に接離させる図示しない接離機構を備えている。プロセスコントロール処理の実施時には、接離機構によって2次転写ローラ20を中間転写ベルト16から離間させることで、階調パターン像の2次転写ローラ20への転移をより確実に防止することができる。
【0061】
ガイド部材90や第2電気接点Ep2については、2次転写ローラ20を保持している図示しない保持体に保持させて2次転写ローラ20と一体的に移動させるようになっている。かかる構成において、プロセスコントロール処理のために2次転写ローラ20を中間転写ベルト16から離間させると、図16に示されるように、2次転写ローラ20とともに移動する第2電気接点Ep2が第1電気接点Ep1から離間する。これにより、ガイド部材90と2次転写バイアス電源91との電気的な繋がりが遮断されて、ガイド部材90に対してバイアスが印加されなくなる。
【0062】
このように、詳細例に係るプリンタにおいては、2次転写ローラ20を中間転写ベルト20に対して接離させるのに伴って、状態の切り替えを行う。具体敵意は、ガイド部材90に対してバイアスを印加している状態と、ガイド部材90に対してバイアスを印加せずにガイド部材90を設定している状態との切り替えを行う。かかる構成では、リレースイッチを設けることなく、ガイド部材90に対するバイアスの印加の入切を自動で行うことができる。
【0063】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、自らの無端移動する表面に可視像を担持する像担持体(例えば中間転写ベルト16)と、自らの無端移動する表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域を、前記像担持体の表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域に当接させて転写ニップを形成するニップ形成部材(例えば2次転写ローラ20)と、2つの表面無端移動体(例えばレジストローラ32a、b)におけるそれぞれの無端移動可能な表面を当接させて形成している送出ニップに挟み込んだ記録部材を、2つの前記表面無端移動体のうち、少なくとも一方の表面無端移動体の駆動により、前記像担持体の表面の無端移動方向における全域のうち、前記転写ニップに進入する直前で所定の曲率の湾曲軌道に沿って前記転写ニップの入口に向けて進む箇所であるニップ上流箇所に向けて送り出す送出手段(例えばレジストローラ対32)とを有し、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に転写する転写装置において、自らの先端を前記像担持体の前記ニップ上流箇所に対して所定の間隙を介して対向させながら、前記送出手段によって送り出された記録部材を自らの先端部における前記像担持体との対向面に接触させて前記ニップ上流箇所に向けて案内する案内部材(例えばガイド部材90)を設け、前記転写ニップにおける前記像担持体の曲率中心と前記ニップ形成部材の曲率中心とを結ぶ第1仮想直線に対して直交し且つ前記転写ニップの入口を通る第2仮想直線よりも前記像担持体の側に前記案内部材の先端を位置させ、少なくとも、前記送出ニップから送り出した記録部材の先端を前記転写ニップに進入させてから、前記先端を転写ニップ内で所定量だけ進めるまでの期間にて、前記一方の表面無端移動体を前記像担持体や前記ニップ形成部材よりも遅い線速で駆動し、且つ、前記期間の経過後に、2つの表面無端移動体におけるそれぞれの表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とするものである。
【0064】
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記期間の経過後に、2つの表面無端移動体をそれぞれ前記送出ニップ内に挟み込まれている記録部材に従動させることで、2つの表面無端移動体の表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とするものである。かかる構成では、タイミングを見計らって送出手段における一方の表面無端移動体の駆動速度を少しだけ速めるという複雑な制御を実施することなく、送出手段における2つの表面無端移動体の線速をそれぞれ像担持体やニップ形成部材の線速と同じにすることができる。
【0065】
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、駆動源からの駆動力を前記一方の表面無端移動体に伝達する駆動伝達機構にトルクリミッターを設け、他方の表面無端移動体を前記一方の表面無端移動体に従動させ、且つ、前記トルクリミッターの作動によって2つの表面無端移動体をそれぞれ前記送出ニップに挟み込まれている前記記録部材に従動させることで、前記期間の経過後に2つの表面無端移動体の表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とするものである。かかる構成では、タイミングを見計らって電動クラッチを作動させるという制御を実施することなく、「先端進入後初期期間」の経過後に、送出手段における2つの表面無端移動体をそれぞれ自動で記録部材に追従させることができる。
【0066】
[態様D]
態様Dは、請求項1乃至3の何れかの転写装置において、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を設け、且つ、前記像担持体における前記転写ニップに進入する直前の領域のうち、前記ニップ形成部材との電位差がパッシェンの放電開始電位差よりも小さくなる箇所を前記ニップ上流箇所とし、このニップ上流箇所に向けて記録部材を案内するように前記案内部材を配設したことを特徴とするものである。かかる個性では、2次転写ニップ入口付近における像担持体表面からニップ形成部材に向けての画像形成剤の飛翔を、記録部材の像担持体表面への密着によって確実に防止することができる。
【0067】
[態様E]
態様Eは、態様A〜Dの何れかにおいて、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を設け、且つ、電気抵抗を介して前記案内部材を接地したことを特徴とするものである。かかる構成では、転写ニップにおける転写電流のアースへのリークを防止するとともに、案内部材との摺擦による記録部材の過剰帯電を防止することができる。
【0068】
[態様F]
態様Fは、態様A〜Dの何れかにおいて、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段(例えば2次転写バイアス電源91)を設け、前記案内部材として、導電性材料からなるものを用い、且つ、前記案内部材に対して前記転写バイアスと同じ電位のバイアスを印加する案内部材バイアス印加手段(例えば2次転写バイアス電源91)を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、既に述べたように、案内部材を樹脂材料で構成した場合とは異なり、チャージアップした案内部材から記録部材への放電に起因する異常画像の発生を回避することができる。また、転写ニップから記録部材を介して案内部材に電流をリークさせることに起因する転写不良の発生を回避することができる。更には、像担持体とガイド部材との間の電界によってトナーを像担持体表面から案内部材に転移させてしまうことによる記録部材の裏汚れの発生を回避することができる。
【0069】
[態様G]
態様Gは、態様Fにおいて、前記像担持体として、無端状のベルト部材からなる像担持ベルトを用い、且つ、前記転写ニップの近傍で前記像担持ベルトの裏面に当接している裏面当接部材に前記転写バイアスを印加したことを特徴とするものである。かかる構成では、転写ニップ内でトナーを像担持ベルト側からニップ形成部材側に静電的に押し出しながら記録部材に転写することができる。
【0070】
[態様H]
態様Hは、態様Gにおいて、前記案内部材バイアス印加手段によって前記案内部材に対してバイアスを印加している状態と、バイアスを印加していない前記案内部材を接地した状態とで切り替えを行う状態切り替え手段を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、像担持ベルト表面から案内部材へのトナーの転移を抑えることで、記録部材の裏汚れの発生を抑えることができる。
【0071】
[態様I]
態様Iは、態様Hにおいて、前記ニップ形成部材を前記像担持体に対して接離させるのに伴って、前記案内部材に対してバイアスを印加している状態と、前記案内部材に対してバイアスを印加せずに前記案内部材を接地した状態との切り替えを行うように、前記状態切り替え手段(例えば、2次転写バイアス電源91、リレースイッチ93、制御部)を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、リレースイッチを設けることなく、案内部材に対するバイアスの印加の入切を自動で行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1Y,M,C,K:作像ユニット(可視像形成手段の一部)
15:転写ユニット(転写装置の一部、可視像形成手段の一部)
16:中間転写ベルト(像担持体)
20:2次転写ローラ(ニップ形成部材)
32:レジストローラ対(送出手段、転写装置の一部))
32a:第1レジストローラ(一方の表面無端移動体)
32b:第2レジストローラ(他方の表面無端移動体)
90:ガイド部材(案内部材)
91:2次転写バイアス電源(状態切り替え手段の一部、転写バイアス印加手段、案内部材バイアス印加手段)
93:リレースイッチ(状態切り替え手段の一部)
P:記録シート(記録部材)
P1:ニップ上流箇所
L1:仮想直線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開2007−219402号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写ベルト等の像担持体と、転写ローラ等のニップ形成部材との当接によって形成している転写ニップに進入する直前の像担持体の表面箇所に対して、レジストローラ対等の送出手段によって記録部材を送り出す転写装置に関するものである。また、かかる転写装置を用いる複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置として、特許文献1に記載のものが知られている。図1は、特許文献1に記載の画像形成装置における2次転写ニップの周囲を拡大して示す拡大構成図である。同図において、像担持体としての中間転写ベルト16は、複数のローラによって張架された状態で、図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト16の周方向における全域のうち、駆動ローラ18に対する掛け回し箇所には、ニップ形成部材としての2次転写ローラ20がベルトおもて面側から当接して2次転写ニップを形成している。2次転写ニップに進入する前の中間転写ベルト16には、図示しない領域でY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(黒)のトナー像が重ね合わせて1次転写される。
【0003】
2次転写ニップの下方に配設された送出手段としてのレジストローラ対32は、ローラ間に挟み込んだ記録シートPを、2次転写ニップでベルト上の4色重ね合わせトナー像に同期させるタイミングで中間転写ベルト16に向けて送り出す。送り出された記録シートPは、2次転写ニップに挟み込まれた後、その表面にベルト上の4色重ね合わせトナー像が2次転写される。
【0004】
2次転写ニップの入口付近では、駆動ローラ18に対する掛け回しによってローラ曲率に沿った湾曲軌道で移動するベルト湾曲箇所と、2次転写ローラ20表面との間に空間が形成されている。このような2次転写ニップの入口付近において、記録シートPが中間転写ベルト16のおもて面に密着しておらず、おもて面とシート面との間に微小間隙が形成されていると、入口付近に形成される電界によってトナーがベルト表面から離脱して微小空間内を飛翔する。そして、記録シートにチリ状に散って付着する転写チリという現象を引き起こす。そこで、図示の画像形成装置では、レジストローラ対32から送り出した記録シートPを、2次転写ニップよりもベルト移動方向の上流側に位置するベルト箇所に接触させてから、ベルトとともに2次転写ニップの入口に向けて移動させるようにしている。これにより、2次転写ニップの入口付近で記録シートをベルトおもて面に密着させた状態にすることで、転写チリの発生を抑えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この画像形成装置であっても、記録シートPとして、厚紙などの腰の強いものが用いると、転写チリを引き起こしてしまうことが本発明者らの実験によって判明した。具体的には、記録シートPとして、普通紙などの腰の弱いものを用いたとする。この場合、図2に示すように、レジストローラ対32から送り出された記録シートPは、2次転写ニップよりもベルト移動方向の上流側に位置するベルト箇所に接触した後、ベルト湾曲面に沿って柔軟に変形しながら、ベルトとともに2次転写ニップの入口まで移動する。2次転写ニップの入口付近では、ベルト湾曲面に沿って柔軟に変形することでベルトおもて面に密着しているので、転写チリの発生を抑えることができる。これに対し、記録シートPとして、厚紙などの腰の強いものを用いたとする。すると、図3に示すように、レジストローラ対32から送り出された記録シートPは、2次転写ニップよりもベルト移動方向の上流側に位置するベルト箇所に接触した後、一旦はベルトおもて面に密着した状態でベルトとともに移動する。しかし、2次転写ニップの入口付近にさしかかると、その腰の強さから、ベルト湾曲面に沿って追従することができずに、ベルトおもて面から離間してしまう。そして、2次転写ローラ20に突き当たった後、2次転写ローラ20によって強制的にニップ入口に向けて方向転換せしめられる。図示のように、2次転写ニップの入口付近では、ベルトおもて面から離間することから、転写チリを引き起こしてしまうのである。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、腰の強い記録部材であっても、転写チリの発生を抑えることができる転写装置や画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、自らの無端移動する表面に可視像を担持する像担持体と、自らの無端移動する表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域を、前記像担持体の表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域に当接させて転写ニップを形成するニップ形成部材と、2つの表面無端移動体におけるそれぞれの無端移動可能な表面を当接させて形成している送出ニップに挟み込んだ記録部材を、2つの前記表面無端移動体のうち、少なくとも一方の表面無端移動体の駆動により、前記像担持体の表面の無端移動方向における全域のうち、前記転写ニップに進入する直前で所定の曲率の湾曲軌道に沿って前記転写ニップの入口に向けて進む箇所であるニップ上流箇所に向けて送り出す送出手段とを有し、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に転写する転写装置において、自らの先端を前記像担持体の前記ニップ上流箇所に対して所定の間隙を介して対向させながら、前記送出手段によって送り出された記録部材を自らの先端部における前記像担持体との対向面に接触させて前記ニップ上流箇所に向けて案内する案内部材を設け、前記転写ニップにおける前記像担持体の曲率中心と前記ニップ形成部材の曲率中心とを結ぶ第1仮想直線に対して直交し且つ前記転写ニップの入口を通る第2仮想直線よりも前記像担持体の側に前記案内部材の先端を位置させ、少なくとも、前記送出ニップから送り出した記録部材の先端を前記転写ニップに進入させてから、前記先端を転写ニップ内で所定量だけ進めるまでの期間にて、前記一方の表面無端移動体を前記像担持体や前記ニップ形成部材よりも遅い線速で駆動し、且つ、前記期間の経過後に、2つの表面無端移動体におけるそれぞれの表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、送出手段から送り出した記録部材を転写ニップに進入させてから転写ニップ内で所定量だけ進めるまでの期間において、送出手段の表面無端移動体の線速を転写ニップにおける像担持体の線速よりも遅くすることで、送出手段と転写ニップとの間で記録部材を転写ニップに向けて引っ張る。これにより、案内部材の先端部における像担持体との対向面に接触しながら像担持体のニップ上流箇所に向けて案内される記録部材が、案内部材の先端と転写ニップの入口との間で同先端と同入口とを一直線状に結ぶ仮想直線(以下、第3仮想直線という)に沿って真っ直ぐに延びる姿勢をとろうとする。しかし、案内部材の先端が第2仮想直線よりも像担持体の側に位置していることから、案内部材の先端から転写ニップの入口に向けて一直線状に延びる第3仮想直線は自らよりもニップ形成部材の側に突出している像担持体の湾曲部を貫いて転写ニップの入口に至っている。このため、転写ニップの入口に向けて引っ張られながら第3仮想直線に沿って真っ直ぐに延びようとする記録部材は、真っ直ぐな姿勢になる前にニップ像担持体の湾曲表面に強く密着する。本発明においては、このように、案内部材の先端と転写ニップの入口との間で記録部材を転写ニップに向けて引っ張りながら像担持体の湾曲表面に強制的に密着させた後、送出手段の表面無端移動体の線速を少し速めて像担持体と同じ速度にする。これにより、送出手段の送出ニップ内で記録部材をスリップさせてしまうことを回避する。送出手段の表面無端移動体の線速を少し速めても、記録部材を転写ニップに向けて引っ張る像担持体の線速と同じにしていることから、送出手段と転写ニップとの間で記録部材に弛みを発生させることはない。このため、記録部材の後端を送出手段から送り出すまでは、記録部材を転写ニップの入口付近で像担持体の湾曲表面に密着させ続ける。かかる構成では、厚紙などの腰の強い記録部材であっても、記録部材を転写ニップに進入させた直後に転写ニップに向けて引っ張って像担持体の湾曲表面に強制的に密着させた後、その密着状態を維持したままで転写ニップに送り込み続けるので、腰の強い記録部材であっても転写チリの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】特許文献1に記載の画像形成装置における2次転写ニップの周囲を拡大して示す拡大構成図。
【図2】同2次転写ニップの入口付近における普通紙の挙動を示す説明図。
【図3】同2次転写ニップの入口付近における厚紙の挙動を示す説明図。
【図4】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図5】同プリンタにおけるK用の作像ユニットを示す拡大構成図。
【図6】同プリンタにおける2次転写ニップとその周囲構成とを示す拡大構成図。
【図7】同周囲構成を更に拡大して示す拡大構成図。
【図8】本プリンタにおける2次転写ニップ直前での記録シートPの挙動を示す拡大説明図。
【図9】実施例に係るプリンタにおける2次転写ニップの周囲構成を示す構成図。
【図10】ガイド部材として樹脂からなるものを用いた場合における異常画像の発生の原理を説明するための、2次転写ニップ周囲の構成図。
【図11】導電性材料からなるガイド部材を接地した場合における転写不良の発生の原理を説明するための、2次転写ニップ周囲の構成図。
【図12】導電性材料からなるガイド部材を接地した場合におけるシート裏汚れの発生の原理を説明するための、2次転写ニップ周囲の構成図。
【図13】実施例に係るプリンタにおける2次転写ニップの周囲構成をより詳しく示す構成図。
【図14】具体例に係るプリンタにおける2次転写ニップの周囲構成を示す構成図。
【図15】詳細例に係るプリンタにおける2次転写ニップの周囲構成を示す構成図。
【図16】2次転写ローラを中間転写ベルトから離間させた状態の同周囲構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図4は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を作像するための4つの作像ユニット1Y,M,C,Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための作像ユニット1Kを例にすると、これは図5に示されるように、潜像担持体であり且つ像担持体であるドラム状の感光体2Kを備えている。また、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置4K、現像装置5K等も備えている。画像形成ユニットたる作像ユニット1Kは、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
【0011】
帯電装置4Kは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、レーザー光Lによって露光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置5KによってYトナー像に現像される。そして、後述する中間転写ベルト16上に1次転写される。ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色の作像ユニット(1Y,M,C)においても、同様にして感光体(2Y,M,C)上に(Y,M,C)トナー像が形成されて、後述する中間転写ベルト16上に中間転写される。
【0012】
現像装置5Kは、図示しないKトナーを収容する縦長のホッパ部6Kと、現像部7Kとを有している。ホッパ部6K内には、図示しない駆動手段によって回転駆動されるアジテータ8K、これの鉛直方向下方で図示しない駆動手段によって回転駆動される撹拌パドル9K、これの鉛直方向で図示しない駆動手段によって回転駆動されるトナー供給ローラ10Kなどが配設されている。ホッパ部6K内のKトナーは、アジテータ8Kや撹拌パドル9Kの回転駆動によって撹拌されながら、自重によってトナー供給ローラ10Kに向けて移動する。トナー供給ローラ10Kは、金属製の芯金と、これの表面に被覆された発泡樹脂等からなるローラ部とを有しており、ホッパ部6K内のKトナーをローラ部の表面に付着させながら回転する。
【0013】
現像装置5Kの現像部7K内には、感光体2Kやトナー供給ローラ10Kに当接しながら回転する現像ローラ11Kや、これの表面に先端を当接させる薄層化ブレード12Kなどが配設されている。ホッパ部6K内のトナー供給ローラ10Kに付着したKトナーは、現像ローラ11Kとトナー供給ローラ10Kとの当接部で現像ローラ11Kの表面に供給される。供給されたKトナーは、現像ローラ11Kの回転に伴ってローラと薄層化ブレード12Kとの当接位置を通過する際に、ローラ表面上での層厚が規制される。そして、層厚規制後のKトナーは、現像ローラ11Kと感光体2Kとの当接部である現像領域において、感光体2K表面のK用の静電潜像に付着する。この付着により、K用の静電潜像がKトナー像に現像される。
【0014】
図5を用いてK用の作像ユニットについて説明したが、Y,M,C用の作像ユニット1Y,M,Cにおいても、同様のプロセスにより、感光体2Y,M,C表面にY,M,Cトナー像が形成される。
【0015】
先に示した図4において、作像ユニット1Y,M,C,Kの鉛直方向上方には、光書込ユニット70が配設されている。潜像書込装置たる光書込ユニット70は、画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光Lにより、作像ユニット1Y,M,C,Kにおける感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット70は、光源から発したレーザー光(L)を、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。
【0016】
作像ユニット1Y,M,C,Kの鉛直方向下方には、無端状の中間転写ベルト16を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。転写装置の一部である転写ユニット15は、中間転写ベルト16の他に、従動ローラ17、駆動ローラ18、4つの1次転写ローラ19Y,M,C,K、2次転写ローラ20、ベルトクリーニング装置21、クリーニングバックアップローラ22などを備えている。
【0017】
従動ローラ17、駆動ローラ18、クリーニングバックアップローラ22及び4つの1次転写ローラ19Y,M,C,Kは、中間転写ベルト16のループ内側に配設されている。これらのうち、クリーニングバックアップローラ22や、4つの1次転写ローラ19Y,M,C,Kは、中間転写ベルト16の裏面に当接しているものの、その周面に対するベルトの巻き付き角度はごく僅かである。このため、実質的に中間転写ベルト16を張架していない。これに対し、従動ローラ17及び駆動ローラ18は、それぞれ周面に中間転写ベルト16を約180[°]の巻き付き角度で巻き付けながら、中間転写ベルト16を張架している。即ち、本プリンタでは、従動ローラ17及び駆動ローラ18が、それぞれ中間転写ベルト16を張架する張架ローラとして機能している。なお、駆動ローラ18は、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動されることで、中間転写ベルト16を同方向に無端移動せしめる。
【0018】
4つの1次転写ローラ19Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト16を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ベルト16のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ19Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されており、これにより、感光体2Y,M,C,Kの静電潜像と、1次転写ローラ19Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。なお、1次転写ローラ19Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0019】
中間転写ベルト16としては、そのベルト基体が、TPE(サーモプラスチックエラストマーアロイ)、PC(ポリカーボネート)、PI(ポリイミド)、PAA(ポリアミドアロイ)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の高分子材料からなるものを用いることが可能である。ここで、ベルト基体とは、中間転写ベルト16が単層構造である場合には、ベルトそのものである。また、多層構造の場合には、最も厚い層がベルト基体となる。
【0020】
Y用の作像ユニット1Yの感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴って上述のY用の1次転写ニップに進入すると、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト16上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト16は、その無端移動に伴ってM,C,K用の1次転写ニップを通過する際に、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト16上には4色トナー像が形成される。
【0021】
駆動ローラ18は、中間転写ベルト16における周方向の全領域のうち、後述する2次転写ニップを形成する箇所を自らの周面に掛け回してベルト湾曲箇所を形成する転写裏打ちローラとして機能している。転写ユニット15の2次転写ローラ20は、転写裏打ちローラたる駆動ローラ18の曲率に沿って湾曲する前記ベルト湾曲箇所にベルトおもて面側から当接して2次転写ニップを形成している。かかる構成の2次転写ローラ20、及び駆動ローラ18のうち、何れか一方には、図示しない転写バイアス電源によって2次転写バイアスが印加される。また、他方は、アース接続されている。これにより、2次転写ローラ20と駆動ローラ18との間に、2次転写電界が形成される。
【0022】
2次転写ローラ20としては、金属製のローラ芯金上に、導電性且つ弾性を発揮する材料からなる導電弾性層を被覆したものを用いている。かかる導電弾性層の材料としては、イオン導電性材料(ウレタン+カーボン分散、NBR、ヒドリン)や電子導電性材料(EPDM)等が挙げられる。
【0023】
転写ユニット15の鉛直方向下方には、記録部材たる記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している記録部材収容手段としての給紙カセット30が、プリンタの筐体に対してスライド着脱可能に配設されている。この給紙カセット30は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ30aを当接させており、これを所定のタイミングで図中反時計回り方向に回転させることで、その記録紙Pを給紙路31に向けて送り出す。
【0024】
給紙路31の末端付近には、レジストローラ対32が配設されている。このレジストローラ対32は、給紙カセット30における紙排出側の端部の斜め上方に配設されている。給紙カセット30内からカセット側方に向けてほぼ水平方向に排出された記録紙Pは、排出後直ちに約90[°]の角度で大きく方向転換せしめられて、レジストローラ対32のレジストニップに向けて送られる。レジストローラ対32は、給紙カセット30から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを上述の2次転写ニップ内で中間転写ベルト16上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。
【0025】
2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト16上の4色トナー像は、2次転写電界やニップ圧の影響を受けて記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、2次転写ローラ20や中間転写ベルト16から曲率分離する。そして、転写後搬送路33を経由して、2次転写ニップの上方に配設された定着装置34に送り込まれる。
【0026】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト16には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト16のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置21によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト16のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ22は、ベルトクリーニング装置21によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0027】
定着装置34は、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ34aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ34bとによって定着ニップを形成している。定着装置34内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ34aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0028】
定着装置34内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路35を経由した後、排紙路36と反転前搬送路41との分岐点にさしかかる。定着後搬送路35の側方には、回動軸42aを中心にして回動駆動される切替爪42が配設されており、その回動によって定着後搬送路35の末端付近を閉鎖したり開放したりする。定着装置34から記録紙Pが送り出されるタイミングでは、切替爪42が図中実線で示す回動位置で停止して、定着後搬送路35の末端付近を開放している。よって、記録紙Pが定着後搬送路35から排紙路36内に進入して、排紙ローラ対37のローラ間に挟み込まれる。
【0029】
図示しないテンキー等からなる操作部に対する入力操作や、図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくる制御信号などにより、片面プリントモードが設定されている場合には、排紙ローラ対37に挟み込まれた記録紙Pがそのまま機外へと排出される。そして、筐体の上カバー50の上面であるスタック部にスタックされる。
【0030】
一方、両面プリントモードに設定されている場合には、先端側を排紙ローラ対37に挟み込まれながら排紙路36内を搬送される記録紙Pの後端側が定着後搬送路35を通り抜けると、切替爪42が図中一点鎖線の位置まで回動して、定着後搬送路35の末端付近が閉鎖される。これとほぼ同時に、排紙ローラ対37が逆回転を開始する。すると、記録紙Pは、今度は後端側を先頭に向けながら搬送されて、反転前搬送路41内に進入する。
【0031】
図4は、本プリンタを正面側から示している。図紙面に直交する方向の手前側がプリンタの前面であり、奥側が後面である。また、本プリンタの図中右側が右側面、左側が左側面である。本プリンタの右端部は、回動軸40aを中心に回動することで筐体本体に対して開閉可能な反転ユニット40になっている。排紙ローラ対37が逆回転すると記録紙Pがこの反転ユニット40の反転前搬送路41内に進入して、鉛直方向上側から下側に向けて搬送される。そして、反転搬送ローラ対43のローラ間を経由した後、半円状に湾曲している反転搬送路44内に進入する。更に、その湾曲形状に沿って搬送されるのに伴って上下面が反転せしめられながら、鉛直方向上側から下側に向けての進行方向も反転して、鉛直方向下側から上側に向けて搬送される。その後、上述した給紙路31内を経て、2次転写ニップに再進入する。そして、もう一方の面にもフルカラー画像が一括2次転写された後、転写後搬送路33、定着装置34、定着後搬送路35、排紙路36、排紙ローラ対37を順次経由して、機外へと排出される。
【0032】
反転ユニット40は、外部カバー45と揺動体46とを有している。具体的には、反転ユニット40の外部カバー45は、プリンタ本体の筺体に設けられた回動軸40aを中心にして回動するように支持されている。この回動により、外部カバー45は、その内部に保持している揺動体46とともに筺体に対して開閉する。図中点線で示すように、外部カバー45がその内部の揺動体46とともに開かれると、反転ユニット40とプリンタ本体側との間に形成されていた給紙路31、2次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36が縦に2分されて、外部に露出する。これにより、給紙路31、2次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
【0033】
また、揺動体46は、外部カバー45が開かれた状態で、外部カバー45に設けられた図示しない揺動軸を中心にして回動するように外部カバー45に支持されている。この回動により、揺動体46が外部カバー45に対して開かれると、反転前搬送路41や反転搬送路44が縦に2分されて外部に露出する。これにより、反転前搬送路41内や反転搬送路44内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
【0034】
プリンタの筺体の上カバー50は、図中矢印で示すように、回動軸51を中心にして回動自在に支持されており、図中反時計回り方向に回転することで、筺体に対して開いた状態になって、筺体の上部開口を外部に向けて大きく露出させる。これにより、光書込ユニット71が露出する。
【0035】
なお、本プリンタでは、転写ユニット15の構成の簡素化や装置の小型化をできるだけ図るために、中間転写ベルト16を2本の張架ローラ(17、18)だけで張架している。かかる構成では、何れか一方(17、18)を駆動ローラとして機能させることになるが、本プリンタでは、転写裏打ちローラとして機能する方の張架ローラを駆動ローラとして機能させている。これにより、転写裏打ちローラに多機能をもたせているが、転写裏打ちローラと駆動ローラとを別々にしてもよい。
【0036】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図6は、本プリンタの2次転写ニップの周囲を拡大して示す拡大構成図である。同図において、送出手段たるレジストローラ対32は、一方の表面無端移動体としての第1レジストローラ32aと、他方の表面無端移動体としての第2レジストローラ32bとの当接によって送出ニップを形成している。そして、送出ニップに挟み込んだ記録シートPを、少なくとも第1レジストローラ32aの回転駆動により、中間転写ベルト16のおもて面の無端移動方向における全域のうち、2次転写ニップよりも上流側のベルト領域に向けて送り出す。
【0037】
2次転写ニップの直前において、中間転写ベルト16は、自らの表面を弧状の湾曲軌道に沿って2次転写ローラ20に徐々に近づけながら2次転写ニップに向けて移動するように、駆動ローラ18の曲率に沿って湾曲している。2次転写ニップの下方には、案内部材としてのガイド部材90が配設されている。このガイド部材90は、自らの先端を中間転写ベルト16のニップ上流箇所P1に対して所定の間隙を介して対向させながら、レジストローラ対32によって送り出された記録シートP、2次転写ニップの入口の近傍で且つ入口よりもベルト移動方向の上流側の箇所であるニップ上流箇所P1に向けて案内する。このガイド部材90の配設条件は、次のようになっている。即ち、図7に示されるように、ガイド部材90の先端を第2仮想直線L2よりも中間転写ベルト16側に位置させるという配設条件である。
【0038】
第2仮想直線L2は、2次転写ニップにおけるベルトの曲率中心たる駆動ローラ18の回転中心と、2次転写ニップにおける2次転写ローラ20の曲率中心たる2次転写ローラ回転中心とを結ぶ第1仮想直線L1に直交し且つニップ入口を通る直線である。ガイド部材90の先端を第2仮想直線L2よりも中間転写ベルト16側に位置させると、図示のように、ガイド部材90の先端と、2次転写ニップの入口とを結ぶ第3仮想直線L3を、2次転写ニップの入口直前におけるベルトの湾曲表面よりもベルト曲率中心(駆動ローラ18中心)の側に位置させることになる。
【0039】
レジストローラ対32は、送出ニップから送り出した記録シートPの先端を2次転写ニップに進入させてから、その先端を2次転写ニップ内で所定量だけ進めるまでの期間(以下、「先端進入後初期期間」という)において、第1レジストローラ32aを中間転写ベルト16や2次転写ローラ20よりも遅い線速で駆動する。これにより、記録シートPの先端を2次転写ニップに進入させてからしばらくの間(先端進入後初期期間)は、レジストローラ対32によるシート送出速度を、2次転写ニップにおけるシート搬送速度よりも遅くして、記録シートPをレジストローラ対32と2次転写ニップとの間で2次転写ニップに向けて引っ張るようにする。
【0040】
このようにして引っ張られる記録シートPは、ガイド部材90の先端と、2次転写ニップの入口との間で、第3仮想直線L3に沿って真っ直ぐに延びる姿勢をとろうとする。しかし、ガイド部材90の先端付近から転写ニップの入口にかけての領域では、上述したように、第3仮想直線L3を、2次転写ニップの入口直前におけるベルトの湾曲表面よりもベルト曲率中心の側に位置させている。これは、図示のように、2次転写ニップ直前における中間転写ベルト16の湾曲表面を第3仮想直線L3よりも2次転写ローラ20の側に突出させていることを意味している。記録シートPは第3仮想直線L3に沿って真っ直ぐに延びた姿勢をとることができずに、第3仮想直線L3よりも2次転写ローラ20の側に突出している中間転写ベルト16の湾曲表面に密着する。
【0041】
本プリンタにおいては、このように、記録シートPの張力によって記録シートPを2次転写ニップ直前の中間転写ベルト16の湾曲表面に密着させた後、第1レジストローラ32aの線速を少し速めて中間転写ベルト16と同じ速度にする。これにより、送出ニップ内で記録シートPをスリップさせてしまうことを回避する。第1レジストローラ32aの線速を少し速めても、記録シートPを2次転写ニップに向けて引っ張るベルトの線速と同じにしていることから、送出ニップと2次転写ニップとの間で記録シートPに弛みを発生させることはない。このため、記録シートPの後端を送出ニップから送り出すまでは、記録シートPを2次転写ニップの入口付近で中間転写ベルト16の湾曲表面に密着させ続ける。かかる構成では、厚紙などの腰の強い記録シートPであっても、その記録シートPを2次転写ニップに進入させた直後に、その張力によって像担持体の湾曲表面に強制的に密着させた後、その密着状態を維持したままで2次転写ニップに送り込み続けるので、腰の強い記録シートPであっても転写チリの発生を抑えることができる。
【0042】
「先端進入後初期期間」の後に、第1レジストローラ32aの線速を少し速めて中間転写ベルト16や2次転写ローラ20の線速と同じにする方法として、第1レジストローラ32aの駆動速度を少しだけ速める方法を例示することができる。しかしながら、この方法では、タイミングを見計らって第1レジストローラ32aの駆動速度を少しだけ速めるという複雑な制御が必要になる。そこで、本プリンタにおいては、「先端進入後初期期間」の後に、レジストローラ対32における第1レジストローラ32a及び第2レジストローラ32bをそれぞれ2次転写ニップに挟み込まれている記録シートPに従動させることで、2つのレジストローラの線速をそれぞれ中間転写ベルト16や2次転写ローラ20の線速と同じにするようになっている。かかる構成では、タイミングを見計らって第1レジストローラ32aの駆動速度を少しだけ速めるという複雑な制御を実施することなく、2つのレジストローラの線速をそれぞれ中間転写ベルト16や2次転写ローラ20の線速と同じにすることができる。
【0043】
レジストローラ対32における第1レジストローラ32a及び第2レジストローラ32bをそれぞれ2次転写ニップに挟み込まれている記録シートPに従動させる方法としては、電動クラッチを用いる方法と、トルクリミッターを用いる方法とが挙げられる。電動クラッチを用いる方法では、「先端進入後初期期間」の経過後に、駆動モータから第1レジストローラ32aに繋いでいた駆動力を、電動クラッチの作動によって切って、第1レジストローラ32aを空回り可能にする。これにより、2つのレジストローラ対をそれぞれ送出ニップに挟み込まれている記録シートPに連れ回らせることができる。しかしながら、この方法では、タイミングを見計らって電動クラッチを作動させるという制御が必要になる。
【0044】
そこで、本プリンタにおいては、トルクリミッターを用いる方法を採用している。具体的には、駆動モータからの駆動力を第1レジストローラ32aに伝達する駆動伝達機構内にトルクリミッターを配設している。第1レジストローラ32aにかかるトルクが所定の閾値を超えると、トルクリミッターが作動して、第1レジストローラ32aを空回りさせる。記録シートPの先端が2次転写ニップに進入した時点では、第1レジストローラ32aがベルトよりも遅い線速で回転駆動している。これにより、ガイド部材90の先端と2次転写ニップとの間のシート箇所に張力を発生させて、そのシート箇所を2次転写ニップ入口付近のベルト湾曲面に密着させる。すると、その張力が第1レジストローラ32aに伝わって、第1レジストローラ32aにかかるトルクが前述した閾値を超えて、トルクリミッターが作動する。そして、第1レジストローラ32aや第2レジストローラ32bが、送出ニップに挟み込まれている記録シートPに連れ回るようになる。かかる構成では、タイミングを見計らって電動クラッチを作動させるという制御を実施することなく、「先端進入後初期期間」の経過後に2つのレジストローラをそれぞれ自動で記録シートに連れ回りさせることができる。
【0045】
上述したように、駆動ローラ18と2次転写ローラ20とのうち、何れか一方には2次転写バイアスが印加され、且つ他方はアース接続されている。これにより、2次転写ニップの上流側では、中間転写ベルト16の湾曲表面と、2次転写ローラ20との間に電界が形成される。2次転写ニップの入口よりもベルト移動方向上流側に離れるにつれて、駆動ローラ18と2次転写ローラ20との距離が大きくなることから、前述の電界の強度は弱くなる。本プリンタにおいては、中間転写ベルト16における2次転写ニップに進入する直前の領域のうち、2次転写ローラ20との電位差がパッシェンの放電開始電位差よりも小さくなる箇所を、ニップ上流箇所P1とし、このニップ上流箇所P1に向けて記録シートPを案内するようにガイド部材90を配設している。かかる構成では、2次転写ニップよりも上流側において、中間転写ベルト16と2次転写ローラ20との間で放電を発生させる前に、記録シートPをその張力によって中間転写ベルト16の湾曲表面に密着させる。中間転写ベルト16の表面から2次転写ローラ20に向けてのトナーの飛翔は、両者間での放電に伴って起こるので、2次転写ローラ20に向けてのトナー飛翔を発生させる前のベルト領域に対して、記録シートPをその張力によって密着させていることになる。よって、ベルト表面から2次転写ローラ20に向けてのトナー飛翔を、記録シートPのベルト湾曲表面への密着によって確実に防止することができる。
【0046】
ガイド部材90については、図7に示されるように、電気抵抗R1を介して接地(アース接続)している。これは次に説明する理由による。即ち、記録シートPが吸湿によって電気抵抗を低下させてしまう高温高湿環境下では、2次転写ニップ内に流れる転写電流を、記録シートPとガイド部材90とを介してアースにリークさせて、2次転写ニップ内で所望の転写効率を発揮することが困難になることがある。転写電流のリークを回避するために、ガイド部材90を接地せずに電気的にフロート状態にすると、ガイド部材90の先端との摺擦によって記録シートPを帯電させて、記録シートPとガイド部材90との間の放電によって異常画像を発生させてしまうおそれがでてくる。そこで、100[MΩ]程度の電気抵抗R1を介してガイド部材90を接地することで、2次転写電流のアースへのリークを防止するとともに、ガイド部材90との摺擦による記録シートPの過剰帯電も防止している。
【0047】
[実施例]
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例のプリンタについて説明する。
実施例に係るプリンタは、図9に示されるように、2次転写バイアス電源91から出力される2次転写バイアスを、駆動ローラ18の芯金に印加するようになっている。2次転写バイアスは、トナーの帯電極性と同じマイナス極性のバイアスである。一方、中間転写ベルト19に当接している2次転写ローラ20の芯金は図示のように接地されている。
【0048】
2次転写ニップ内において、トナーは、トナーと同極性の2次転写バイアスが印加される駆動ローラ18側から接地された2次転写ローラ20側に向けて静電的に押し出される。これにより、中間転写ベルト16上のトナー像が2次転写ニップ内の記録シート表面に2次転写される。2次転写ニップの周囲では、図中の波線矢印で示されるように、駆動ローラ18から2次転写ニップと2次転写ローラ20とを介してアースに対して2次転写電流が流れる。
【0049】
ガイド部材90として、樹脂からなるものを用いたとする。すると、図10に示されるように、ガイド部材90が搬送中の記録シートPと擦れることによって摩擦帯電して徐々にチャージアップしていくことがある。図中の黒丸は、電荷を示している。チャージアップしたガイド部材90は、やがて記録シートとの間で放電を起こして記録シートを帯電させ、この帯電によって異常画像を引き起こすおそれがある。
【0050】
一方、ガイド部材90として導電性材料からなるものを用い、このガイド部材90を接地したとする。すると、図11に示されるように、転写ニップ内に流れる転写電流の一部が搬送中の記録シートPを伝ってガイド部材90にリークすることがある。リークが発生すると、2次転写ニップ内の電界の強度が低下して転写不良を引き起こすおそれがある。また、本プリンタのように、駆動ローラ18に対して2次転写バイアスを印加している構成では、記録シートPの裏汚れを発生させるおそれがある。具体的には、駆動ローラ18とガイド部材90との間に、トナーを駆動ローラ18側からガイド部材90側に静電移動させる電界が形成される。この電界により、図12に示されるように、記録シートPの非搬送時に中間転写ベルト16上のトナーがガイド部材90の表面に転移する。その後、シート搬送時にガイド部材90の表面上のトナーがシート裏面に擦られて付着して裏汚れを引き起こすのである。
【0051】
そこで、実施例に係るプリンタにおいては、次のような構成を採用している。即ち、ガイド部材として、導電性材料(例えば金属)からなるものを用いている。そして、図13に示されるように、2次転写電源91を駆動ローラ18だけでなく、ガイド部材90にも接続して、ガイド部材90の電位を駆動ローラ18の芯金の電位と同じにしている。
【0052】
かかる構成では、ガイド部材90を樹脂材料で構成した場合とは異なり、記録シートPと摺擦させても摩擦帯電させることがないので、チャージアップしたガイド部材90から記録シートPへの放電に起因する異常画像の発生を回避することができる。また、ガイド部材90を駆動ローラ18の芯金と同電位にしていることから、2次転写ニップとガイド部材90との間でガイド部材90への電流のリークを引き起こす電位勾配が形成されるのを回避する。これにより、電流のリークに起因する転写不良の発生を回避することができる。更には、駆動ローラ18とガイド部材90との間にトナーを駆動ローラ18側からガイド部材90側に静電移動させる電界が形成されるのを回避する。これにより、その電界によってトナーをベルトからガイド部材90に転移させてしまうことによる記録シートPの裏汚れの発生を回避することができる。
【0053】
なお、2次転写バイアス電源91を駆動ローラ18とガイド部材90との両方に接続した例について説明したが、2次転写バイアス電源91とは異なる電源をガイド部材90に接続し、この電源から2次転写バイアスと同じ値のバイアスを出力してもよい。
【0054】
[具体例]
次に、実施例に係るプリンタに、更なる特徴的な構成を付加した具体例のプリンタについて説明する。
具体例に係るプリンタにおいては、4つの作像ユニット1Y,M,C,Kについてそれぞれ作像能力を定期的に調整するために、プロセスコントロール処理と呼ばれる処理を定期的に行うようになっている。このプロセスコントロールでは、中間転写ベルト16上にY,M,C,Kの階調パターン像を形成し、それぞれの階調パターン像における各階調の画像濃度を反射型フォトセンサ等からなる画像濃度センサによって検知する。そして、その検知結果に基づいて、4つの作像ユニット1Y,M,C,Kについてそれぞれ、現像バイアスや感光体帯電電位などを調整することで、画像濃度の安定化を図っている。
【0055】
プロセスコントロール処理においては、図14に示されるように、2次転写ニップの近傍であって且つ中間転写ベルト16の上方に配設されている画像濃度センサ92によって階調パターン像Ppの画像濃度を検知する。このような検知を行うために、2次転写ニップよりもベルト移動方向上流側で中間転写ベルト16上に転写した階調パターン像Ppを、2次転写ニップに通した後に画像濃度センサ92に検知させる。この過程において、階調パターン像Ppを2次転写ニップに通す際には、2次転写バイアス電源91から、プリントジョブ時とは異なる値の2次転写バイアスを出力する。具体的には、トナー同極性の2次転写バイアスを出力する。これにより、2次転写ニップ内で階調パターン像Ppを中間転写ベルト16の表面に引き付けることで、階調パターン像Ppの2次転写ローラ20への転移を防止している。
【0056】
このとき、ガイド部材90にも、駆動ローラ18に印加しているバイアスと同じものを印加しているとする。すると、ガイド部材90も、トナーとは逆極性の電位にしてしまう。駆動ローラ18の芯金とガイド部材90とは互いに同じ電位であるが、中間転写ベルト16はある程度の電気抵抗を発揮するため、ガイド部材90よりも電位が低くなっている。すると、中間転写ベルト16の表面上における階調パターン像のトナーをガイド部材90に引き付けてしまうおそれがある。
【0057】
そこで、具体例に係るプリンタにおいては、2次転写バイアス電源91によってガイド部材90に対して2次転写バイアスを印加している状態と、バイアスを印加していないガイド部材90を接地した状態とで切り替えを行う状態切り替え手段を設けている。この状態切り替え手段は、2次転写バイアス電源91、リレースイッチ93、図示しない制御部などから構成されている。リレースイッチ93は、ガイド部材90に対する電気的な接続を2次転写バイアス電源91とアースとで切り替えるものである。また、制御部は、2次転写バイアス電源91からの出力や、リレースイッチ93の動作を制御するものである。
【0058】
かかる構成では、プロセスコントロール処理の実施時に駆動ローラ18に対してトナーとは逆極性のバイアスを印加しているときには、ガイド部材90をバイアス印加のない接地した状態にする。これにより、ガイド部材90と駆動ローラ18との間にトナーをガイド部材90側からベルト表面側に向けて引き寄せる電界を形成する。そして、この電界により、ベルト表面からガイド部材90へのトナーの転移を抑えることで、記録シートPの裏汚れの発生を抑えることができる。
【0059】
[詳細例]
次に、具体例に係るプリンタに、更なる特徴的な構成を付加した詳細例のプリンタについて説明する。
図15は、詳細例に係るプリンタにおける2次転写ニップの周囲構成を示す構成図である。同図において、2次転写バイアス電源91と、ガイド部材90とは、互いに接触している第1電気接点Ep1及び第2電気接点Ep2を介して電気的に接続されている。図示のように中間転写ベルト16上のトナー像を記録シートPに2次転写しているときには、2次転写バイアス電源91から2次転写バイアスが出力される。そして、この2次転写バイアスが駆動ローラ18の芯金とガイド部材とにそれぞれ印加される。
【0060】
具体例に係るプリンタは、プロセスコントロール処理の実施時における階調パターン像の2次転写ローラ20への転移をより確実に防止する狙いで、2次転写ローラ20を中間転写ベルト20に接離させる図示しない接離機構を備えている。プロセスコントロール処理の実施時には、接離機構によって2次転写ローラ20を中間転写ベルト16から離間させることで、階調パターン像の2次転写ローラ20への転移をより確実に防止することができる。
【0061】
ガイド部材90や第2電気接点Ep2については、2次転写ローラ20を保持している図示しない保持体に保持させて2次転写ローラ20と一体的に移動させるようになっている。かかる構成において、プロセスコントロール処理のために2次転写ローラ20を中間転写ベルト16から離間させると、図16に示されるように、2次転写ローラ20とともに移動する第2電気接点Ep2が第1電気接点Ep1から離間する。これにより、ガイド部材90と2次転写バイアス電源91との電気的な繋がりが遮断されて、ガイド部材90に対してバイアスが印加されなくなる。
【0062】
このように、詳細例に係るプリンタにおいては、2次転写ローラ20を中間転写ベルト20に対して接離させるのに伴って、状態の切り替えを行う。具体敵意は、ガイド部材90に対してバイアスを印加している状態と、ガイド部材90に対してバイアスを印加せずにガイド部材90を設定している状態との切り替えを行う。かかる構成では、リレースイッチを設けることなく、ガイド部材90に対するバイアスの印加の入切を自動で行うことができる。
【0063】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、自らの無端移動する表面に可視像を担持する像担持体(例えば中間転写ベルト16)と、自らの無端移動する表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域を、前記像担持体の表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域に当接させて転写ニップを形成するニップ形成部材(例えば2次転写ローラ20)と、2つの表面無端移動体(例えばレジストローラ32a、b)におけるそれぞれの無端移動可能な表面を当接させて形成している送出ニップに挟み込んだ記録部材を、2つの前記表面無端移動体のうち、少なくとも一方の表面無端移動体の駆動により、前記像担持体の表面の無端移動方向における全域のうち、前記転写ニップに進入する直前で所定の曲率の湾曲軌道に沿って前記転写ニップの入口に向けて進む箇所であるニップ上流箇所に向けて送り出す送出手段(例えばレジストローラ対32)とを有し、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に転写する転写装置において、自らの先端を前記像担持体の前記ニップ上流箇所に対して所定の間隙を介して対向させながら、前記送出手段によって送り出された記録部材を自らの先端部における前記像担持体との対向面に接触させて前記ニップ上流箇所に向けて案内する案内部材(例えばガイド部材90)を設け、前記転写ニップにおける前記像担持体の曲率中心と前記ニップ形成部材の曲率中心とを結ぶ第1仮想直線に対して直交し且つ前記転写ニップの入口を通る第2仮想直線よりも前記像担持体の側に前記案内部材の先端を位置させ、少なくとも、前記送出ニップから送り出した記録部材の先端を前記転写ニップに進入させてから、前記先端を転写ニップ内で所定量だけ進めるまでの期間にて、前記一方の表面無端移動体を前記像担持体や前記ニップ形成部材よりも遅い線速で駆動し、且つ、前記期間の経過後に、2つの表面無端移動体におけるそれぞれの表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とするものである。
【0064】
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記期間の経過後に、2つの表面無端移動体をそれぞれ前記送出ニップ内に挟み込まれている記録部材に従動させることで、2つの表面無端移動体の表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とするものである。かかる構成では、タイミングを見計らって送出手段における一方の表面無端移動体の駆動速度を少しだけ速めるという複雑な制御を実施することなく、送出手段における2つの表面無端移動体の線速をそれぞれ像担持体やニップ形成部材の線速と同じにすることができる。
【0065】
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、駆動源からの駆動力を前記一方の表面無端移動体に伝達する駆動伝達機構にトルクリミッターを設け、他方の表面無端移動体を前記一方の表面無端移動体に従動させ、且つ、前記トルクリミッターの作動によって2つの表面無端移動体をそれぞれ前記送出ニップに挟み込まれている前記記録部材に従動させることで、前記期間の経過後に2つの表面無端移動体の表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とするものである。かかる構成では、タイミングを見計らって電動クラッチを作動させるという制御を実施することなく、「先端進入後初期期間」の経過後に、送出手段における2つの表面無端移動体をそれぞれ自動で記録部材に追従させることができる。
【0066】
[態様D]
態様Dは、請求項1乃至3の何れかの転写装置において、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を設け、且つ、前記像担持体における前記転写ニップに進入する直前の領域のうち、前記ニップ形成部材との電位差がパッシェンの放電開始電位差よりも小さくなる箇所を前記ニップ上流箇所とし、このニップ上流箇所に向けて記録部材を案内するように前記案内部材を配設したことを特徴とするものである。かかる個性では、2次転写ニップ入口付近における像担持体表面からニップ形成部材に向けての画像形成剤の飛翔を、記録部材の像担持体表面への密着によって確実に防止することができる。
【0067】
[態様E]
態様Eは、態様A〜Dの何れかにおいて、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を設け、且つ、電気抵抗を介して前記案内部材を接地したことを特徴とするものである。かかる構成では、転写ニップにおける転写電流のアースへのリークを防止するとともに、案内部材との摺擦による記録部材の過剰帯電を防止することができる。
【0068】
[態様F]
態様Fは、態様A〜Dの何れかにおいて、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段(例えば2次転写バイアス電源91)を設け、前記案内部材として、導電性材料からなるものを用い、且つ、前記案内部材に対して前記転写バイアスと同じ電位のバイアスを印加する案内部材バイアス印加手段(例えば2次転写バイアス電源91)を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、既に述べたように、案内部材を樹脂材料で構成した場合とは異なり、チャージアップした案内部材から記録部材への放電に起因する異常画像の発生を回避することができる。また、転写ニップから記録部材を介して案内部材に電流をリークさせることに起因する転写不良の発生を回避することができる。更には、像担持体とガイド部材との間の電界によってトナーを像担持体表面から案内部材に転移させてしまうことによる記録部材の裏汚れの発生を回避することができる。
【0069】
[態様G]
態様Gは、態様Fにおいて、前記像担持体として、無端状のベルト部材からなる像担持ベルトを用い、且つ、前記転写ニップの近傍で前記像担持ベルトの裏面に当接している裏面当接部材に前記転写バイアスを印加したことを特徴とするものである。かかる構成では、転写ニップ内でトナーを像担持ベルト側からニップ形成部材側に静電的に押し出しながら記録部材に転写することができる。
【0070】
[態様H]
態様Hは、態様Gにおいて、前記案内部材バイアス印加手段によって前記案内部材に対してバイアスを印加している状態と、バイアスを印加していない前記案内部材を接地した状態とで切り替えを行う状態切り替え手段を設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、像担持ベルト表面から案内部材へのトナーの転移を抑えることで、記録部材の裏汚れの発生を抑えることができる。
【0071】
[態様I]
態様Iは、態様Hにおいて、前記ニップ形成部材を前記像担持体に対して接離させるのに伴って、前記案内部材に対してバイアスを印加している状態と、前記案内部材に対してバイアスを印加せずに前記案内部材を接地した状態との切り替えを行うように、前記状態切り替え手段(例えば、2次転写バイアス電源91、リレースイッチ93、制御部)を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、リレースイッチを設けることなく、案内部材に対するバイアスの印加の入切を自動で行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1Y,M,C,K:作像ユニット(可視像形成手段の一部)
15:転写ユニット(転写装置の一部、可視像形成手段の一部)
16:中間転写ベルト(像担持体)
20:2次転写ローラ(ニップ形成部材)
32:レジストローラ対(送出手段、転写装置の一部))
32a:第1レジストローラ(一方の表面無端移動体)
32b:第2レジストローラ(他方の表面無端移動体)
90:ガイド部材(案内部材)
91:2次転写バイアス電源(状態切り替え手段の一部、転写バイアス印加手段、案内部材バイアス印加手段)
93:リレースイッチ(状態切り替え手段の一部)
P:記録シート(記録部材)
P1:ニップ上流箇所
L1:仮想直線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開2007−219402号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自らの無端移動する表面に可視像を担持する像担持体と、自らの無端移動する表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域を、前記像担持体の表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域に当接させて転写ニップを形成するニップ形成部材と、2つの表面無端移動体におけるそれぞれの無端移動可能な表面を当接させて形成している送出ニップに挟み込んだ記録部材を、2つの前記表面無端移動体のうち、少なくとも一方の表面無端移動体の駆動により、前記像担持体の表面の無端移動方向における全域のうち、前記転写ニップに進入する直前で所定の曲率の湾曲軌道に沿って前記転写ニップの入口に向けて進む箇所であるニップ上流箇所に向けて送り出す送出手段とを有し、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に転写する転写装置において、
自らの先端を前記像担持体の前記ニップ上流箇所に対して所定の間隙を介して対向させながら、前記送出手段によって送り出された記録部材を自らの先端部における前記像担持体との対向面に接触させて前記ニップ上流箇所に向けて案内する案内部材を設け、
前記転写ニップにおける前記像担持体の曲率中心と前記ニップ形成部材の曲率中心とを結ぶ第1仮想直線に対して直交し且つ前記転写ニップの入口を通る第2仮想直線よりも前記像担持体の側に前記案内部材の先端を位置させ、
少なくとも、前記送出ニップから送り出した記録部材の先端を前記転写ニップに進入させてから、前記先端を転写ニップ内で所定量だけ進めるまでの期間にて、前記一方の表面無端移動体を前記像担持体や前記ニップ形成部材よりも遅い線速で駆動し、且つ、前記期間の経過後に、2つの表面無端移動体におけるそれぞれの表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とする転写装置
【請求項2】
請求項1の転写装置において、
前記期間の経過後に、2つの表面無端移動体をそれぞれ前記送出ニップ内に挟み込まれている記録部材に従動させることで、2つの表面無端移動体の表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項2の転写装置において、
駆動源からの駆動力を前記一方の表面無端移動体に伝達する駆動伝達機構にトルクリミッターを設け、他方の表面無端移動体を前記一方の表面無端移動体に従動させ、且つ、前記トルクリミッターの作動によって2つの表面無端移動体をそれぞれ前記送出ニップに挟み込まれている前記記録部材に従動させることで、前記期間の経過後に2つの表面無端移動体の表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの転写装置において、
前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を設け、
且つ、前記像担持体における前記転写ニップに進入する直前の領域のうち、前記ニップ形成部材との電位差がパッシェンの放電開始電位差よりも小さくなる箇所を前記ニップ上流箇所とし、このニップ上流箇所に向けて記録部材を案内するように前記案内部材を配設したことを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの転写装置において、
前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を設け、
且つ、電気抵抗を介して前記案内部材を接地したことを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかの転写装置において、
前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を設け、
前記案内部材として、導電性材料からなるものを用い、
且つ、前記案内部材に対して前記転写バイアスと同じ電位のバイアスを印加する案内部材バイアス印加手段を設けたことを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項6の転写装置において、
前記像担持体として、無端状のベルト部材からなる像担持ベルトを用い、
且つ、前記転写ニップの近傍で前記像担持ベルトの裏面に当接している裏面当接部材に前記転写バイアスを印加したことを特徴とする転写装置。
【請求項8】
請求項7の転写装置において、
前記案内部材バイアス印加手段によって前記案内部材に対してバイアスを印加している状態と、バイアスを印加していない前記案内部材を接地した状態とで切り替えを行う状態切り替え手段を設けたことを特徴とする転写装置。
【請求項9】
請求項8の転写装置において、
前記ニップ形成部材を前記像担持体に対して接離させるのに伴って、前記案内部材に対してバイアスを印加している状態と、前記案内部材に対してバイアスを印加せずに前記案内部材を接地した状態との切り替えを行うように、前記状態切り替え手段を構成したことを特徴とする転写装置。
【請求項10】
像担持体の表面に可視像を形成する可視像形成手段と、前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に転写する転写手段とを備える画像形成装置において、
前記転写手段として、請求項1乃至9の何れかの転写装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
自らの無端移動する表面に可視像を担持する像担持体と、自らの無端移動する表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域を、前記像担持体の表面における所定の曲率に沿って湾曲移動する領域に当接させて転写ニップを形成するニップ形成部材と、2つの表面無端移動体におけるそれぞれの無端移動可能な表面を当接させて形成している送出ニップに挟み込んだ記録部材を、2つの前記表面無端移動体のうち、少なくとも一方の表面無端移動体の駆動により、前記像担持体の表面の無端移動方向における全域のうち、前記転写ニップに進入する直前で所定の曲率の湾曲軌道に沿って前記転写ニップの入口に向けて進む箇所であるニップ上流箇所に向けて送り出す送出手段とを有し、前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に転写する転写装置において、
自らの先端を前記像担持体の前記ニップ上流箇所に対して所定の間隙を介して対向させながら、前記送出手段によって送り出された記録部材を自らの先端部における前記像担持体との対向面に接触させて前記ニップ上流箇所に向けて案内する案内部材を設け、
前記転写ニップにおける前記像担持体の曲率中心と前記ニップ形成部材の曲率中心とを結ぶ第1仮想直線に対して直交し且つ前記転写ニップの入口を通る第2仮想直線よりも前記像担持体の側に前記案内部材の先端を位置させ、
少なくとも、前記送出ニップから送り出した記録部材の先端を前記転写ニップに進入させてから、前記先端を転写ニップ内で所定量だけ進めるまでの期間にて、前記一方の表面無端移動体を前記像担持体や前記ニップ形成部材よりも遅い線速で駆動し、且つ、前記期間の経過後に、2つの表面無端移動体におけるそれぞれの表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とする転写装置
【請求項2】
請求項1の転写装置において、
前記期間の経過後に、2つの表面無端移動体をそれぞれ前記送出ニップ内に挟み込まれている記録部材に従動させることで、2つの表面無端移動体の表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項2の転写装置において、
駆動源からの駆動力を前記一方の表面無端移動体に伝達する駆動伝達機構にトルクリミッターを設け、他方の表面無端移動体を前記一方の表面無端移動体に従動させ、且つ、前記トルクリミッターの作動によって2つの表面無端移動体をそれぞれ前記送出ニップに挟み込まれている前記記録部材に従動させることで、前記期間の経過後に2つの表面無端移動体の表面線速を前記像担持体や前記ニップ形成部材の線速と同じにすることを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの転写装置において、
前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を設け、
且つ、前記像担持体における前記転写ニップに進入する直前の領域のうち、前記ニップ形成部材との電位差がパッシェンの放電開始電位差よりも小さくなる箇所を前記ニップ上流箇所とし、このニップ上流箇所に向けて記録部材を案内するように前記案内部材を配設したことを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかの転写装置において、
前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を設け、
且つ、電気抵抗を介して前記案内部材を接地したことを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかの転写装置において、
前記転写ニップ内で前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に静電転写するために前記像担持体又は前記ニップ形成部材に転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を設け、
前記案内部材として、導電性材料からなるものを用い、
且つ、前記案内部材に対して前記転写バイアスと同じ電位のバイアスを印加する案内部材バイアス印加手段を設けたことを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項6の転写装置において、
前記像担持体として、無端状のベルト部材からなる像担持ベルトを用い、
且つ、前記転写ニップの近傍で前記像担持ベルトの裏面に当接している裏面当接部材に前記転写バイアスを印加したことを特徴とする転写装置。
【請求項8】
請求項7の転写装置において、
前記案内部材バイアス印加手段によって前記案内部材に対してバイアスを印加している状態と、バイアスを印加していない前記案内部材を接地した状態とで切り替えを行う状態切り替え手段を設けたことを特徴とする転写装置。
【請求項9】
請求項8の転写装置において、
前記ニップ形成部材を前記像担持体に対して接離させるのに伴って、前記案内部材に対してバイアスを印加している状態と、前記案内部材に対してバイアスを印加せずに前記案内部材を接地した状態との切り替えを行うように、前記状態切り替え手段を構成したことを特徴とする転写装置。
【請求項10】
像担持体の表面に可視像を形成する可視像形成手段と、前記像担持体の表面上の可視像を記録部材に転写する転写手段とを備える画像形成装置において、
前記転写手段として、請求項1乃至9の何れかの転写装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−77005(P2013−77005A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202320(P2012−202320)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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