説明

画像形成装置

【課題】水平方向に液滴を吐出する記録ヘッドの回復動作として吸引動作を行ったキャップを、吸引後に記録ヘッドから退避させる際にキャップからインクが垂れることを防止する画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、水平方向に液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、前記キャップに接続された吸引手段と、前記キャップで前記記録ヘッドの前記ノズル面をキャッピングした状態で前記吸引手段を駆動させて前記キャップと前記ノズル面との間のキャップ内空間を負圧にして前記記録ヘッドから液体を吸引する回復装置を備えた画像形成装置であって、前記キャップは、前記キャップ内の鉛直方向最下部の前記ノズル面との接触部と微小ギャップ隔てた位置に前記吸引手段と連通した吸引口を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクその他の液滴を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、FAX、コピー機、複写機複合機(プリンター/FAX/コピー機)等の各種画像形成装置として、インクを滴状にして吐出し、所定の画像を得るインクジェット記録技術が広く知られている。このインクジェット記録装置には、インクを吐出する液滴吐出ヘッドの性能を維持・回復する装置(以下、維持回復装置とする。)が備わっている。
【0003】
維持回復装置は、一般的に、自然蒸発に起因したノズル近傍でのインクの増粘固着を防止するために、ノズル面を高い密閉性を保って覆うキャップと、そのキャップがノズル面をキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する吸引装置、ノズルから吸引したインクを貯留する廃液タンク、ノズル面に付着したインクを払拭し除去するためのワイパーブレード、および画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出を行うための空吐出受けで構成される。
【0004】
この維持回復装置は、ノズル近傍に付着した異物、増粘・固着した液滴を取り除き、正常に所望の吐出特性を得るために画像形成装置内に備えられている。
【0005】
特にキャップは、画像形成装置を長期間使用しない場合に、ノズルにある液体に含まれる水分の乾燥を防ぐために、印字動作後に液滴吐出面を覆うことで、ノズルを保湿している。
【0006】
このキャップが液滴吐出面を覆った状態で、吸引手段により吸引を実行すると、キャップ内に負圧が生じる。この負圧により、液体タンクから液体がノズルを通過し、廃液タンクに流れることになる。
【0007】
このとき、ノズル近傍の異物や増粘・固着した液体を廃液タンクに流すことができる。それに加えて、液体タンクから液滴吐出ヘッドのノズルまでの流路に残存した気泡の排出も行うことができる。
【0008】
このキャップの一部分に、吸引手段と連通する流路とは別に、大気開放口と、大気開放口を開放ないし閉鎖する開閉手段を備えた技術が既に知られている。さらに、特許文献1には、キャップの下側にインク受け部を備える技術が開示されている。
【0009】
ところで、液滴吐出ヘッドは、一般的に重力方向に向かって、液滴を吐出させ、所望の画像を得ることが広く知られている。一方、水平方向に液滴を吐出して画像を得る画像形成装置もまた、既に知られている。また、たとえば、特許文献2に開示されるように、液体吐出ヘッドを傾ける方式もすでに知られている。
【0010】
吐出を重力方向に行う通常のインクジェット記録装置では、印字面を上側に向けて排紙するフェイスアップ排紙のため、印字された紙がページ順とは逆順に重ねられて排紙されていくという不具合があるが、水平方向に液滴を吐出する方式は、用紙の印字面を下側にして排紙するいわゆるフェイスダウン排紙が容易にできるメリットがある。
【0011】
また、水平方向に液滴を吐出する方式では、用紙の両面に対向して記録ヘッドを配置して、両面を同時に印字することも容易にできる(垂直方向にインク吐出する方式では、反対面を上向きにインク吐出する必要が生じ技術的に難しくなる)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、その反面、水平方向に液滴を吐出する方式では、前述したノズル吸引した後にキャップをノズル面から退避させる動作(以下、デキャップとする。)の際にキャップの最下部からインクが垂れ、そのためにキャップの最下部が汚れ、継時での汚れの蓄積によりキャップ不良が発生する不具合があった。
【0013】
また、このインク垂れの対策として、上述の特許文献1で開示されたキャップの下側にインク受け部を備える技術では、ヘッドの吸引動作が繰り返されることでインク受け部のインクが溢れる不具合が避けられない、という問題がある。
【0014】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的としては、水平方向に液滴を吐出する記録ヘッドの回復動作として吸引動作を行ったキャップを、吸引後に記録ヘッドから退避させる際にキャップからインクが垂れることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、水平方向に液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、前記キャップに接続された吸引手段と、前記キャップで前記記録ヘッドの前記ノズル面をキャッピングした状態で前記吸引手段を駆動させて前記キャップと前記ノズル面との間のキャップ内空間を負圧にして前記記録ヘッドから液体を吸引する回復装置を備えた画像形成装置であって、前記キャップは、前記キャップ内の鉛直方向最下部の前記ノズル面との接触部と微小ギャップ隔てた位置に前記吸引手段と連通した吸引口を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水平方向に液滴を吐出する記録ヘッドのノズル面を覆って吸引を行うキャップの吸引口を、キャップ内の鉛直方向最下部のノズル面との接触部と微小ギャップ隔てた位置に備えるので、インク吸引時における吸引口付近の流速が増大し、吸引口付近の吸引効率が増大するため、インクを残すことなく外部に吸い出してデキャップ時のインク垂れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の要部について説明する概略図である。
【図2】本発明の一実施形態の維持回復装置について説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態のキャップ44に係る動作及び大気開放弁の動作について説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態のキャップ44について説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態のインクを吸引している状態について説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態のキャップ44とヘッド31の接触部最下点を中心に矢印A方向にキャップを回転するような機構について説明する図である。
【図7】本発明のキャップ44の変形例1について説明する図である。
【図8】本発明のキャップ44の変形例2について説明する図である。
【図9】本発明のキャップ44の変形例3について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について図を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の要部について説明する概略図である。
【0019】
この記録装置では、メインガイドロッド32とサブガイドロッド33にて、キャリッジ30を摺動自在に保持している。このキャリッジ30は、図示しない主走査モータとタイミングベルトによって、メインガイドロッド32とサブガイドロッド33の長手方向(主走査方向)に移動走査する。
【0020】
そして、キャリッジ30には、複数の色(例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックなど)のインク滴を吐出する記録ヘッド31が主走査方向と交差し、かつ重力方向に対して垂直に、すなわち矢印A方向に向けて装着されている。
【0021】
記録ヘッド31には、インクの膜沸騰により吐出圧を得るサーマル方式、圧電素子を用いて振動板を変形させたり、静電力で振動板を変形させたりして吐出圧を得るものなど様々な方式があり、いずれの方式のものも本発明に適用することができる。
【0022】
本記録装置では、給紙コロ28、排紙コロ20、21を通じて、用紙を上方向に搬送し、該用紙の搬送途中において、記録ヘッド31からインク滴を矢印A方向に吐出して、該用紙に印字を実行する。
【0023】
ところで、記録ヘッド31には吐出するインクを一時的に貯留するためのインク室が形成されたサブタンク35が一体的に接続されている。ここで言う一体的とは、記録ヘッド31とサブタンク35がチューブ、管等で接続されることも含んでおり、どちらも一緒にキャリッジに搭載されるという意味である。
【0024】
サブタンク35には液体供給チューブ36が接続され、液体供給チューブ36のもう一端は、本体据え置きのインクカートリッジ37に接続されている。
【0025】
なお、図1ではインクカートリッジ37を本体に取り付け、液体供給チューブ36を経由して、インクを記録ヘッド31に供給しているが、本実施形態 では、インクカートリッジ37を記録ヘッド31に直接装着して印字動作を実行する、所謂オンキャリッジ方式でも良い。
【0026】
図2は、本実施形態に係る維持回復装置を示している。記録ヘッド31のインク吐出面45をキャップ44が当接、キャッピングし、ノズル31nの保湿・保護を行う。キャップ44の下部には、吸引用流路61を介して吸引ポンプ43と連通するインク吸引口60が設けられる。
【0027】
また、キャップ44の上部には、大気開放流路51と連通した大気開放口50が設けられる。大気開放流路51の一端は、大気開放弁52に接続されている。
【0028】
吸引ポンプ43としては様々な方式のものを使うことができるが、本実施形態では吸引ポンプ43としては、チューブポンプが用いられている。吸引ポンプ43にて吸引されたインクは、廃液用流路62を通り、廃液タンク42に貯留・廃棄される。
【0029】
また、キャップ44は、キャップホルダ47によって保持されており、その間には、キャップ44がインク吐出面45に対する密着性を高めるために、付勢ばね46が備えられている。
【0030】
更に、キャップホルダ47は、キャップスライダ40に接続されている。このキャップスライダ40は、ガイド58に嵌め込まれており、カム56が図示しない駆動源により回転すると、キャップ44がインク吐出面45に対して、当接ないし離接する方向にガイドされる。
【0031】
カム56にはレール部54とそれに沿って可動するピン55が備わっており、カム56を回転させると、カムの回転中心からピン55までの距離が変化し、キャップ44が記録ヘッド31に離接する。
【0032】
本実施形態の維持回復装置には、更に、インク吐出面を払拭するために、ワイパーブレード53が備わっている。このワイパーブレード53は、インク吐出面45に付着した異物やインクを除去して、液滴の吐出特性を正常に保つために備わっている。
【0033】
図3は、本実施形態に係るキャップ44が、インク吐出面45をキャッピングないしデキャップする動作と、大気開放弁の動作について示している。図3(a)は、キャップ44がインク吐出面45をキャッピングした状態を示している。
【0034】
この状態で、吸引ポンプ43が廃液タンク方向に吸引を開始すると、キャップ内の圧力が負圧になる。その結果、記録ヘッド31内のインクが、ノズル31nから吸い出され、キャップ44、吸引ポンプ43を経由して廃液タンク42に流れる。
【0035】
ここで、吸引ポンプ43が、キャップ内からのインクの吸引を停止すると、キャップ内部にあるインクは、重力方向、つまり吸引用流路61側に溜まる。そのため、この状態で、キャップ44を記録ヘッド31から退避させる(図3(c))と、インクがキャップ44から流れ落ちる。
【0036】
それを防ぐために、図3(b)に示すように、大気開放弁52を開放した状態でキャップ内に残ったインクを吸引し、その後にキャップ44をインク吐出面45から退避させる。
【0037】
次に、本実施形態に係るキャップ44を図4を用いて説明する。キャップ44は図4(a)、(b)に示すように、インク吸引口60に近い部分が幅狭な形状とされている。
【0038】
また、キャップ44の深さは、記録ヘッド31のノズル31nと対向する部分であるノズル対向部(図4(c)の符号66で示す部分)とインク吸引部63で異なるように構成されている。つまり、インク吸引部63の周囲は相対的に浅くなっている。さらに、ノズル対向部66とインク吸引部63は傾斜面65でなだらかに連なっている。
【0039】
このキャップ44を用いて記録ヘッド31の吸引動作を行う場合の動作、機能について図3および図5を用いて説明する。図5(a)は、図3(a)のように大気開放弁52を閉じた状態で吸引ポンプ43を駆動し、キャップ44の内部を負圧にして記録ヘッド31からインクを吸引している状態を示す。
【0040】
この時、キャップ内の負圧によってノズル31nからインクが流れ出し、キャップ44の下部にインクが溜まりながらインク吸引口60からインクが排出される。また、インク吸引部63の空間が狭いため、インクを排出する流速が大きくなる。
【0041】
さらに、インクが高速に流れることにより、キャップ下部に溜まった増粘インクやゴミを効率よく排出することができる。
【0042】
所定のインク吸引を行った後に吸引ポンプ43を停止し、大気開放弁52を開くと、図5(b)に示すように大気開放口50から空気がキャップ44内部に流入し、大気圧になる。この状態で、一定時間維持すると、キャップ内壁面や記録ヘッド31のノズル面に付着したインクが重力でキャップ下部に落ちる。
【0043】
次に、図3(b)に示すように大気開放弁52を開けたまま吸引ポンプ43を駆動すると、キャップ下部に溜まったインクがインク吸引口60から排出される(図5(c))。
【0044】
ここで、本実施形態のキャップ44は、インク吸引部63のノズル面とのギャップを微小ギャップとしているで、インク吸引部63の吸引の流速を増大することができるため、インク吸引効率が高まりキャップ内にインクを残さず外部に排出することができる。
【0045】
したがって、図3(c)のように吸引ポンプ43を停止してデキャップした際のキャップ44からのインク垂れを防止できる。
【0046】
本実施形態のキャップ44ではインク吸引部63の深さを、キャップ44がノズル面と接触するリップ部(薄肉化する部分)と同じ深さにしているが、深さはこれに限定されるものではない。
【0047】
キャッピング状態で、インク吸引部63が記録ヘッド31と接触して閉塞しない範囲でギャップが狭くなるようにすることが望ましい。ギャップが大きすぎると、大気開放状態で吸引してキャップ内のインクを吸引する時のインク供給部63の流速が低下するため、インクの排出が十分できなくなる不具合が発生するためである。
【0048】
一方、インク吸引部63だけでなくノズル対向部66も浅くしてしまうと、キャップ内の全空間が狭くなり流体抵抗が増大するため、記録ヘッド31のノズル31nからインクを吸引する時にキャップ内に圧力勾配ができてしまう。
【0049】
具体的には、インク吸引部63から遠くなるほど小さい負圧しか作用しなくなるため、鉛直方向上部のノズル31nの回復性能が低下するという不具合が生じる。
【0050】
本実施形態では、図4に示すようにノズル対向部66とインク吸引部63でキャップ内に段差を形成しているが、両者を傾斜面65でなだらかに連なるようにしているので、ノズル31nからキャップ内に排出されたインクを傾斜面65を伝ってインク吸引部63に効率よく集めることができる。
【0051】
また、図4(b)に示すように、インク吸引部63に向かってキャップ44の幅を狭くしているので、キャップ内のインクをインク吸引部63に効率よく集めることができる。
【0052】
なお、先の動作説明においては、図5(a)→図5(b)→図5(c)のプロセスでノズル回復からデキャップまでの動作を行う旨の説明をしたが、図5(b)のプロセス(吸引ポンプ43を停止して大気開放を開けるプロセス)は省略でき、図5(a)のノズル吸引後、吸引ポンプ43を停止せずに大気開放弁52を開放してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、キャップ44に大気開放流路51と連通した大気開放口50が設けられ、大気開放弁52によってキャップ内部と大気との連通状態を制御するものであるが、図6(a)のように、ノズル31nからのインク吸引後に、図6(b)のように、キャップ44とヘッド31の接触部最下点を中心に矢印A方向にキャップ44を回転するような機構とすれば、キャップ上部から空気を取り込めるので、キャップ44の大気開放口や大気開放弁は不要である。
【0054】
〔変形例1〕
次に、上記実施形態におけるキャップ44の変形例1について説明する。図7は、変形例1におけるキャップ44の概略構成を示す説明図である。
【0055】
図7のキャップ44は略長方形状の開口部を有し、ヘッド接触部となるリップ64近傍にインク吸引部63がキャップ幅にわたって形成されたものである。インク吸引部63には略ロート形状にインク吸引口60が穿孔されている。
【0056】
幅広のヘッドの場合など、キャップを図4のようにインク吸引部63に向かって先細り形状にできない場合でも、本変形例1のようにキャップ最下部全幅に渡ってインク吸引部63を浅く形成することで、キャップ内のインク排出時に流速を増大させることができるので、前述と同様にデキャップ時のキャップからのインク垂れを防止することができる。
【0057】
〔変形例2〕
次に、上記実施形態におけるキャップ44の変形例2について説明する。図8は、変形例2におけるキャップ44の概略構成を示す説明図である。
【0058】
図8(b)はキャップ44の開口側から見た図で、ヘッド31及びノズル31nを点線で示している。本変形例2のキャップ44には、ヘッド31の各ノズル列にそれぞれインク吸引口60が設けられている。このインク吸引口60の下側を略V字上に囲む形でリップ64が形成されており、インク吸引口60の周辺を浅く形成している。
【0059】
ノズル吸引した場合、インクはノズル直下に集中して流れ落ちるので、このように各ノズルの直下にインク吸引口60を設ける構成とすることで、複数ノズル列を有するヘッドによりデキャップ時のインク垂れを有効に防止することができる。
【0060】
また、本変形例2のキャップ44のインク吸引口60はインク排出方向に径が拡大するテーパ穴とされ、下部がインク排出方向に傾斜するように設けられている。したがって、吸引ポンプ43停止時にインク供給口60内のインクがキャップ内に逆流することを確実に防止できる。
【0061】
〔変形例3〕
次に、上記実施形態におけるキャップ44の変形例3について説明する。図9は、変形例3におけるキャップ44の概略構成を示す説明図である。
【0062】
図9(b)はキャップ44の開口側から見た図で、ヘッド31及びノズル31nを点線で示している。本変形例3のキャップ44には、キャップ44の鉛直方向に伸びた壁面の下部にインク吸引口60が設けられている。このインク吸引口60の下側を略V字上に囲む形でリップ64が形成され、インク吸引口60の周辺を浅く形成している。
【0063】
ノズル吸引したインクが、キャップの隅に残りやすい傾向があるので、このように垂直壁面の下部にインク吸引口60を設ける構成とすることで、キャップ隅部のインクがデキャップ時に垂れることを有効に防止することができる。
【0064】
また、上記説明した変形例2と同様に、本変形例3においても、キャップ44のインク吸引口60はインク排出方向に径が拡大するテーパ穴とされ、下部がインク排出方向に傾斜するように設けられている。したがって、吸引ポンプ43停止時にインク供給口60内のインクがキャップ内に逆流することを確実に防止できる。
【0065】
以上、本発明の上記構成によれば、キャップ最下部の全域にノズル面との接触部と微小ギャップ隔てて吸引口が備えられるので、水平方向に液滴を吐出する記録ヘッド31が幅広である場合にも、記録ヘッド31の吸引によってキャップ下部に溜まったインクを効率よく外部に排出でき、吸引後に記録ヘッド31から退避させた際にキャップ44からインクが垂れることを防止することができる。
【0066】
また、上記構成によれば、キャップ44が鉛直方向下部ほどキャップ幅が狭くなる先細り形状であるので、キャップ内のインクを効率よく吸引口に集めることができ、ノズル吸引によってキャップ内に流入するインクを、流速が高く吸引効率が大きくされたインク吸引口に効率よく集めることができるので、インクを残すことなく外部に吸い出してデキャップ時のインク垂れを防止することができる。
【0067】
また、上記構成によれば、記録ヘッド31のノズル面をキャッピングした状態でノズル31nの鉛直下方部に対応した位置にあたるキャップ形状を先細り形状とし、その先端に流速が高く吸引効率が大きくされた吸引部が備えられるので、インクの溜まりやすいノズル直下部分のインク吸引効率が向上して、キャップ内にインクが残ることによるキャップ退避時のインク垂れを防止することができる。
【0068】
また、上記構成によれば、鉛直方向に伸びたキャップ内壁が最下部で形成する隅部に流速が高く吸引効率が大きくされた吸引部が備えられるので、キャップ内でインクの溜まりやすいキャップ隅部のインク吸引効率が向上して、キャップ内にインクが残ることによるキャップ退避時のインク垂れを防止することができる。
【0069】
また、上記構成によれば、キャップ44の記録ヘッド31のノズル31nとの対向面は吸引口に傾斜面で連なるようにしているので、ノズル吸引で記録ヘッド31から吸い出されたインクをキャップ内に滞留させずに流速が高く吸引効率が大きくされた吸引部に集めることができ、キャップ内にインクが残ることによるキャップ退避時のインク垂れを防止することができる。
【0070】
また、上記構成によれば、キャップ44の吸引口には吸引口よりも鉛直方向下方に傾斜した傾斜面を有する液体排出路が備えられるので、一旦吸引口に流れたインクがキャップ側に逆流することを防止でき、キャップ内にインクが残ることによるキャップ退避時のインク垂れを防止することができる。
【0071】
また、上記構成によれば、水平方向に液滴を吐出する記録ヘッド31のノズル面を覆って吸引を行うキャップの吸引口を、キャップ内の鉛直方向最下部のノズル面との接触部と微小ギャップ隔てた位置に備えると共にキャッピングした状態でもキャップ内を大気に連通可能な大気解放口50をさらに備えた構成とし、記録ヘッドから液体を吸引した後に大気解放口50を大気に連通させながら吸引動作を行った後にデキャップするので、インク吸引時における吸引口付近の流速が増大し、吸引口付近の吸引効率が増大するため、インクを残すことなく外部に吸い出してデキャップ時のインク垂れを防止することができる。
【0072】
なお、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 前カバー
5 給紙部
16 拍車
29 底板
31 記録ヘッド
31n ノズル
43 吸引ポンプ
44 キャップ
45 インク吐出面
50 大気解放口
51 大気開放流路
52 大気解放弁
60 インク吸引口
63 インク吸引部
64 リップ
65 傾斜部
66 ノズル対向部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開平10−58694号公報
【特許文献2】特開2006−192679号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、
前記キャップに接続された吸引手段と、
前記キャップで前記記録ヘッドの前記ノズル面をキャッピングした状態で前記吸引手段を駆動させて前記キャップと前記ノズル面との間のキャップ内空間を負圧にして前記記録ヘッドから液体を吸引する回復装置を備えた画像形成装置であって、
前記キャップは、前記キャップ内の鉛直方向最下部の前記ノズル面との接触部と微小ギャップ隔てた位置に前記吸引手段と連通した吸引口を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記キャップは、前記ノズル面との接触部の鉛直方向最下部全域に前記吸引手段と連通した吸引口を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記キャップは、鉛直方向下部ほどキャップ幅が狭くなる先細り形状であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記キャップは、前記記録ヘッドの前記ノズル面をキャッピングした状態で前記ノズルの鉛直下方部に対応した位置が先細り形状で、その先端に前記吸引手段と連通した吸引口を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記キャップは、鉛直方向に伸びたキャップ内壁が最下部で形成する隅部に前記吸引手段と連通した吸引口を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記キャップの前記記録ヘッドの前記ノズルとの対向面は前記吸引口に傾斜面で連なることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記吸引口は、前記吸引口よりも鉛直方向下方に傾斜した傾斜面を有する液体排出路を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記キャップは前記記録ヘッドの前記ノズル面をキャッピングした状態でキャップ内を大気に連通可能な大気連通口をさらに備え、前記記録ヘッドの前記ノズル面をキャッピングした状態で前記吸引手段を駆動させて前記記録ヘッドから液体を吸引した後に、前記大気連通口を大気に連通させて前記吸引手段による吸引動作を行い、その後前記ノズル面からキャップを離間させることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−952(P2013−952A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133057(P2011−133057)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】