説明

画像書換方法及びその装置

【課題】安価で低出力なレーザ光源を用い、高速で画像等の情報を可逆性感熱記録媒体に書き換え可能で、かつ大画角べた画像の記録を実現すること。
【解決手段】記録媒体2に対して発色可能温度帯域に加熱し、この加熱後の冷却によって記録媒体2を一様に発色させ、次に、一様に発色した記録媒体2の温度が消色可能温度帯域内又は消色可能温度帯域外でかつ当該消色可能温度帯域の下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下したときに、記録媒体2を加熱して当該記録媒体2を画像様に消色する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆性感熱記録媒体に付与する光エネルギーを熱エネルギーに変換し、かつ
この熱エネルギーを制御することにより発色と消色とを可能とし、可逆性感熱記録媒体に対して非接触で画像等のデータの記録、消去を行う画像書換方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可逆性感熱記録媒体は、常温より高い発色可能温度帯域に加熱し所定の冷却速度の冷却によって発色し、かつ常温で発色状態を維持しながら前記発色可能温度帯域よりも低い消色可能温度帯域に加熱すると消色する。このような可逆性感熱記録媒体に対して画像等を記録、消去する技術としては、例えば特許文献1乃至3に開示されている。例えば特許文献1は、光吸収熱変換層を可逆性感熱記録媒体に形成するか、若しくはロイコ染料と顕色剤とを含有する記録層に光吸収熱変換材料を混合し、一つ又は複数のレーザビームを可逆性感熱記録媒体上に合焦して走査し、光エネルギーを熱エネルギーに変換して画像等のデータを非接触で形成する方法を開示する。
【0003】
可逆性感熱記録媒体に関する技術は、例えば特許文献4に開示されている。この特許文献4は、発色温度が130℃、消色温度が60〜70℃、又発色に要する加熱時間が1.2msec、消色に要する加熱時間が20secである可逆性感熱記録媒体について開示する。このように発色温度は消色温度より高く、かつ消色に要する加熱時間は発色に要する加熱時間より長くなっている。可逆性感熱記録媒体の前回の画像形成で発色した部分を消色し、新たな画像等のデータを発色によって形成する画像書換装置がある。このような画像書換装置において画像形成速度は、消色過程が支配的であり、高速の画像形成が困難である。
【0004】
このように消去のための加熱に長時間必要な可逆性感熱記録媒体に対し、高速で消色可能な可逆性感熱記録媒体が例えば特許文献5に開示されている。このような高速で消色可能な可逆性感熱記録媒体は、少ない熱エネルギーの授受で瞬時に発色状態から消色状態に転移することが知られている。又、高速消色性を有する可逆性感熱記録媒は、可逆性顕色剤の融点以上まで加熱し溶融した後、冷却速度を、高速消色性を有さない可逆性感熱記録媒体に比較して速くする必要がある。
【0005】
可逆性感熱記録媒体に対する画像等の書き換え方法に関する技術は、例えば特許文献1、特許文献4、特許文献6及び7に開示されている。このような可逆性感熱記録媒体に対する画像等のデータの書き換え方法としては、可逆性感熱記録媒体を全面消色した後、画像様に加熱して発色させるポジ画像形成と、可逆性感熱記録媒体の全面を発色させた後、画像様に、すなわち地肌部分を加熱し消色させるネガ画像形成とが知られている。いずれの画像書き換え方法であっても最終的に得られる画像等は同じである。
【特許文献1】特許3446316号公報
【特許文献2】特開2004−345273号公報
【特許文献3】特開平11−151856号公報
【特許文献4】特開平5−124360号公報
【特許文献5】特開2001−162941号公報
【特許文献6】特開昭59−120492号公報
【特許文献7】特開2001−341429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可逆性感熱記録媒体を用いた画像書換方法は、可逆性感熱記録媒体に光吸収熱変換材料を混合し、光エネルギーを熱エネルギーに変換させて画像等のデータを非接触で形成するので、可逆性感熱記録媒体の寿命及び画像書換装置自体の寿命を延長し、良好な画質を長期にわたって維持するのに好適である。このような画像書換装置は、非接触であるので、例えばサーマルヘッドを用いた画像書換装置に比べて優位性を有する。
【0007】
しかしながら、かかる画像書換装置の現状は、画像形成用の光源として解像度と光強度との関係からレーザビーム以外に選択肢がなく、このため高価で高出力なレーザ光源が必要される。例えば幅100mm画像を、画像幅と直交する方向に76mm/sec程度の速度で画像形成する場合、画素の大きさを例えば0.125mm×0.125mmとすると、可逆性感熱記録媒体面上で約45〜60Wの光強度のレーザビームが必要になる。例えばレーザビームが1本ならば、レーザビーム1本当たり50Wであるが、n本のレーザビームの場合は、レーザビーム1本当たり50W/nとなる。このため、レーザビーム1本当たり50Wのレーザ光源は、コストの面で好ましくない。又、複数のレーザ素子を配列したレーザビームアレイも同様にサーマルヘッドに比較すると高価である。
【0008】
このため現状では、比較的低出力でかつ低価格のレーザ光源を使用し、画像形成速度を遅くして可逆性感熱記録媒体に対する記録、消去の画像書換を行っている。ところが、画像形成速度が遅いために可逆性感熱記録媒体の全体を走査するラスター走査が行えず、1つのレーザビームによる走査、いわゆる1つのレーザビームにより一筆書きするベクター走査が採用されている。
【0009】
可逆性感熱記録媒体に対して1本のレーザ光ビームを走査して画像形成する場合、例えば幅100mmの画像等のデータを、このデータの画像幅と直交する方向に例えば76mm/sec程度の速度で走査するとき、画素の大きさを例えば0.125mm×0.125mmとすると、1画素当たりの露光時間は例えば1〜2μsec程度になる。
【0010】
可逆性感熱記録媒体に混合される光吸収熱変換材料は、有機高分子バインダー中に分散して用いられている。光吸収熱変換材料や他の可逆性感熱記録媒体を構成する材料の熱伝導が露光時間に対して不十分な場合、高出力のレーザビームを使用すると、光吸収熱変換材料やその周囲が300〜400℃以上になる。このため、光吸収熱変換材料や他の可逆性感熱記録媒体を構成する材料が熱分解、溶融するおそれがある。このため、可逆性感熱記録媒体に対する画像等のデータの記録、消去には、プラスチックや金属表面を溶融して刻印するレーザマーカ等に使用されているような高出力のレーザビームを採用することができず、使用できるレーザビームの光強度に限界がある。従って、画像形成速度の向上に限界がある。
【0011】
又、可逆性感熱記録媒体に対して1本のレーザ光ビームを走査して画像形成する場合、コスト的な制約と、上記の如く可逆性感熱記録媒体を構成する材料の熱分解との2つの理由から、大出力レーザ光源の採用が困難である。このためポジ画像形成を採用した場合には、大面積の発色パターンすなわち大画角のべた画像を形成することが困難になる。
【0012】
具体的に1本のレーザビームを可逆性感熱記録媒体上に主走査し、これと同時に主走査方向に対して垂直な副走査方向に可逆性感熱記録媒体を移動若しくは主走査の走査ラインを移動させるラスター走査を使用した場合、十分な光強度のレーザビームを採用しかつ所要の露光時間を確保できないと、可逆性感熱記録媒体における発色域の温度上昇が不十分となる。このため、レーザビームを主走査するときの各走査ライン間の時間間隔が長いと、可逆性感熱記録媒体上におけるある1つの走査ライン上で照射されたレーザビームにより加熱・溶融した発色域が冷却されてしまい、先の走査ラインに隣接する次の走査ライン上へのレーザビームの主走査によって先の発色域の一部が消色してしまう。
【0013】
このような先に主走査された発色域の消色は、レーザビームの光強度がガウス分布に従っているために、このガウス分布の裾の部分が先の発色域の一部に掛かり、かつ可逆性感熱記録媒体の消色可能温度帯域が発色可能温度帯域よりも低いために、レーザビームの光強度が低くても消色してしまうからである。
【0014】
又、レーザビームの光強度が強い場合、光強度分布だけではなく可逆性感熱記録媒体の熱伝導でも先の発色域の消色条件を満たしてしまうこともある。このような現象を防ぐためには、十分な光強度のレーザビームを用い所要の露光時間で可逆性感熱記録媒体全体を温度上昇せしめ、発色可能温度帯域下限以上或いは消色可能温度帯域上限以上に、発色後の可逆性感熱記録媒体の温度を保持する必要がある。このため、現状の画像書換装置では、主走査の走査ラインの時間間隔を短くするためにラスター走査の主走査幅を短く設定しているので、大画角のべた画像形成が困難である。
【0015】
特許文献4は、可逆性感熱記録媒体の発色温度130℃、消色温度60〜70℃を開示する。可逆性感熱記録媒体を全面発色させた後、画像様にすなわち地肌部分を加熱し消色させるネガ画像形成を採用した場合、画像形成時は確かに消色温度に対応して必要な光エネルギーは減少する。
しかしながら、ネガ画像形成の発色温度は、ポジ画像形成の場合と同じなので、必要なレーザビームの光強度は同じである。さらに、画像の印画率(発色面積/全記録面積)が50%を下回る場合、全面発色が必要なネガ画像形成は、部分発色で済むポジ画像形成に比べて総消費電力が大きくなる。しかるに、ネガ画像形成は、レーザビームの低い光強度化に繋がらない。
【0016】
又、特許文献5は、高速消色性を有する可逆性感熱記録媒を開示するが、この可逆性感熱記録媒を使用しても従来の律速段階であった消色に要する時間が短縮されるだけで、発色に必要な光強度は同じである。しかるに、高速消色性可逆性感熱記録媒体は、レーザビームの低い光強度化に繋がらない。
【0017】
本発明の目的は、安価で低出力なレーザ光源を用い、高速で画像等の情報を可逆性感熱記録媒体に書き換え可能で、かつ大画角べた画像の記録を実現可能な画像書換方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の主要な局面に係る画像書換方法は、常温より高い発色可能温度帯域に加熱し所定の冷却速度の冷却によって発色し、かつ常温で発色状態を維持しながら前記発色可能温度帯域よりも低い消色可能温度帯域に加熱すると消色する可逆性感熱記録媒体に対して情報の書き換えを行う画像書換方法において、可逆性感熱記録媒体に対して発色可能温度帯域に加熱し、この加熱後の冷却によって可逆性感熱記録媒体を一様に発色させる発色工程と、一様に発色した可逆性感熱記録媒体の温度が消色可能温度帯域内又は消色可能温度帯域外でかつ当該消色可能温度帯域の下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下したときに、可逆性感熱記録媒体を加熱して可逆性感熱記録媒体を情報様に消色する消色工程とを有する。
【0019】
本発明の主要な局面に係る画像書換装置は、常温より高い発色可能温度帯域に加熱し所定の冷却速度の冷却によって発色し、かつ常温で発色状態を維持しながら前記発色可能温度帯域よりも低い消色可能温度帯域に加熱すると消色する可逆性感熱記録媒体に対して情報の書き換えを行う画像書換装置において、可逆性感熱記録媒体に対して発色可能温度帯域に加熱し、この加熱後の冷却によって可逆性感熱記録媒体を一様に発色させる発色系と、一様に発色した可逆性感熱記録媒体の温度が消色可能温度帯域内又は消色可能温度帯域外でかつ当該消色可能温度帯域の下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下したときに、可逆性感熱記録媒体を加熱して可逆性感熱記録媒体を情報様に消色する消色系とを具備する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、安価で低出力なレーザ光源を用い、高速で画像等の情報を可逆性感熱記録媒体に書き換え可能で、かつ大画角べた画像の記録を実現可能な画像書換方法及びその装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は画像書換装置の基本構成図を示し、図2は同装置の概略斜視図を示す。記録媒体搬送装置1上には、光熱変換型可逆性感熱記録媒体(以下、記録媒体と称する)2が載置される。この記録媒体搬送装置1は、記録媒体2を一定速度で媒体搬送方向Yに搬送する。なお、媒体搬送方向Yに対して垂直方向が後述するライン露光方向Xである。記録媒体搬送装置1は、複数の搬送ローラ3a、3bと、これら搬送ローラ3a、3bに掛けられた無端の搬送ベルト4となどから成り、例えば搬送ローラ3aを回転駆動することによって搬送ベルト4を移動し、記録媒体2を媒体搬送方向Yに搬送する。なお、記録媒体2には、前回の使用で画像等のデータが記録された前記録画像2aと、一様発色した一様発色画像2bと、書換え後の記録画像2cとが形成されている。
【0022】
図3は記録媒体2の概略断面図を示す。この記録媒体2の層構造は、支持体2−1を設け、この支持体2−1上に光吸収熱変換材料を混入した可逆性感熱記録層2−2と、保護層2−3とを形成して成る。このうち可逆性感熱記録層2−2は、少なくともロイコ染料と可逆性顕色剤と光吸収熱変換材料とから成る。
【0023】
記録媒体2の層構造としては、例えばロイコ染料と可逆性顕色剤とから可逆性感熱記録層2−2を形成し、この可逆性感熱記録層2−2上に光吸収熱変換材料からなる光熱変換層を積層することも可能である。又、記録媒体2は、ロイコ染料と可逆性顕色剤と光吸収熱変換材料から可逆性感熱記録層2−2を形成し、この可逆性感熱記録層2−2上にさらに光吸収熱変換材料からなる光熱変換層を積層することも可能である。又、光吸収熱変換材料を含んだ可逆性感熱記録層2−2がある。この可逆性感熱記録層2−2において光吸収熱変換材料の吸収波長を持つ光の平均透過率が例えば30%以上ある場合には、可逆性感熱記録層2−2の直下に光吸収熱変換材料から成る光熱変換層を積層することも可能である。
【0024】
以下、記録媒体2の各層に用いる材料について説明する。
ロイコ染料は、具体的例として例えば上記特許文献2、3、5に開示されているものが使用可能である。これに限定されるものではない。ロイコ染料の具体的な例としては、例えば3−ジエチルアミノ−7−o−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−m−クロロフェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−p−クロロフェニルアミノフルオラン等である。
【0025】
可逆性顕色剤は、長鎖アルキル基を有するフェノール化合物を使用する。この可逆性顕色剤は、例えば上記特許文献2、3、5に開示されている。本実施の形態では、高速消色性を有する可逆性顕色剤に限定する必要があり、特に特許文献5に開示されて具体的な可逆性顕色剤の使用が望ましい。例えば可逆性顕色剤は、下記の一般式(1)により表される化合物が望ましいが、これに限定されるものでない。
【化1】

【0026】
一般式(1)で表される化合物中、X1及びX2はそれぞれ同じであっても、異なってもよい酸素原子、硫黄原子又は両末端に炭化水素原子団を含まない−CONH−結合を最小構成単位とする二価の基を表す。R1は単結合又は炭素数1から12の二価の炭化水素基を表す。R2は炭素数1から18の二価の炭化水素基を表す。好ましくは炭素数1〜4の二価の炭化水素基である。R3は炭素数1〜24の一価の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数6から炭素数24の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数8〜24の炭化水素基である。更に、R1、R2及びR3の炭素数の和が11以上35以下である場合が特に好ましい。R1、R2及びR3は主として、各々アルキレン基及びアルキル基を表す。R1の場合は、芳香環を含んでいてもよい。fは0〜4の整数を表し、fが2以上のとき繰り返されるR2及びX2は同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
一般式(1)中のX1、X2は両末端に炭化水素原子団を含まない−CONH−結合を最小構成単位とする二価の基を含むが、その具体例としては、例えばジアシルアミン(−CONHCO−)、ジアシルヒドラジン(−CONHNHCO−)等の基が挙げられるが、好ましくはジアシルヒドラジン、しゅう酸ジアミド、アシルセミカルバジドである。本実施の形態に係わる可逆性顕色剤の具体的な例としては、例えば構造式(2)が挙げるが、これに限定されるものではない。
【化2】

【0028】
又、特許文献5に開示されているように他の可逆性顕色剤であってもロイコ染料と混合して生成された可逆性感熱記録材料に関し、加熱溶融急冷して得られた発色状態の可逆性感熱記録材料が示差走査熱量分析又は示差熱分析によって、その昇温過程で発熱ピークを示さずに消色状態に転移する場合には、高速消色性を有する可逆性感熱記録材料として使用可能である。すなわち、この場合、少ない熱エネルギーの授受で瞬時に発色状態から消色状態に転移することができる。従って、本実施の形態で使用可能な可逆性感熱記録材料は、高速消色性を有することが要件であって、ロイコ染料とそれに適する可逆性顕色剤に限定されるものではない。
【0029】
本実施の形態に用いられる光吸収熱変換材料は、例えば光熱変換色素が用いられる。光吸収熱変換材料の具体的な例としては、例えばフタロシアニン化合物、金属錯体化合物、ポリメチン化合物、ナフトキノン系化合物等が挙げられ、可逆性感熱記録層2−2に分散状態又は分子状態で含有することができる。光吸収熱変換材料は、好ましくは、光熱変換効率、溶剤への溶解性、樹脂への分散性、紫外線に対する耐光性の点でフタロシアニン化合物金属錯体化合物が挙げられ、特にフタロシアニン化合物が好ましい。光吸収熱変換材料は、さらに詳しくは特許文献2、3、5に開示されているものが使用可能である。フタロシアニン化合物の例としては、例えばナフタロシアニン化合物、無金属フタロシアニン化合物、鉄フタロシアニン化合物等である。又、本実施の形態において光吸収熱変換材料は、使用するレーザ光源21の波長808nm〜830mm付近に吸収ピークを持つものが選択される。
【0030】
可逆性感熱記録層2−2には、性能向上のために各種のバインダー、添加剤等を使用することが可能である。これらバインダー、添加剤等については例えば特許文献2、3、5に開示されている。例えば特許文献2、3、5には、可逆性感熱記録層2−2の強度を向上し、かつ可逆性感熱記録層2−2の組成物の各素材が加熱・冷却等によって偏在することなく均一に分散するための耐熱性樹脂等のバインダーが挙げられている。又、例えば特許文献2、3、5には、発色感度及び消去温度を調整するための熱可融性物質等が挙げられている。
【0031】
本実施の形態に用いられる支持体2−1は、単に可逆性感熱記録層2−2を支持するだけに限らず、発色時における加熱後の冷却工程において熱の吸収体として機能を果たす。特に、第1の実施の形態では、自然冷却を採用するので、支持体2−1が冷却速度の大部分を支配している。このため、支持体2−1には、所定の熱伝導率と比熱を有するポリェチレンテレフタレート、ポリプロポレン等の合成樹脂フイルムが使用される。具体的に使用できる支持体2−1の材料は、例えば特許文献2、3、5に開示されている。
【0032】
記録媒体2の層構成としては、可逆性感熱記録層2−2の上の最外層として保護層2−3を積層することが望ましい。本装置は、記録媒体2に対して非接触で画像等を書換えることができ、これにより基本的に加熱・冷却以外に記録媒体2にはダメージを与えない。しかしながら、記録媒体2のライフサイクル全体から見ると本装置での書換え後が記録媒体2の本来の役割を果たす使用段階になる。
【0033】
この記録媒体2の使用段階では、記録媒体2は例えば擦過、打撃、折り曲げ、紫外線照射等のさまざまダメージを受ける。このため、ハードコート層である保護層2−3が必要になる。特に、光吸収熱変換材料としての光熱変換色素やロイコ染料は、紫外線吸収により大きなダメージを受ける可能性が高いので、各種の紫外線吸収剤を保護層2−3に混入する。使用可能な各種の紫外線吸収剤を含めた保護層2−3の材料は、例えば特許文献2、3に開示されている。一般に光吸収熱変換材料としては、近赤外領域の吸収波長を持つものを使用し、ロイコ染料の発色波長域は可視域であるので、最上部の保護層2−3が紫外線のみを吸収する場合には、光吸収熱変換材料もロイコ染料もその機能に影響を与えられることはない。
【0034】
発色系としての発色ステーション10が記録媒体搬送装置1の上方に設けられている。この発色ステーション10は、記録媒体2に対して発色可能温度帯域に加熱し、この加熱後の冷却によって記録媒体2を一様に発色させる。すなわち、発色ステーション10は、媒体搬送方向Yに対して略直角なライン露光方向Xで記録媒体2をライン露光し、記録媒体2幅内の所定の有効発色幅W1の全幅において記録媒体2を発色させる。このとき記録媒体2における前回の使用で記録された前記録画像2aは一様発色画像2bとなる。
【0035】
消色系としての消色ステーション20が記録媒体搬送装置1の上方でかつ発色ステーション10の下流側に設けられている。この消色ステーション20は、後述する図5に示すように発色ステーション10により一様に発色した記録媒体2の温度が消色可能温度帯域S内又は消色可能温度帯域S外でかつ当該消色可能温度帯域Sの下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下したとき、例えば後述する図5に示す温度Tc5に低下したときに、記録媒体2を加熱して当該記録媒体2を画像様に消色する。
【0036】
すなわち、消色ステーション20は、媒体搬送方向Yに対して略垂直な方向であるビーム走査露光方向Xで、かつ記録媒体2幅内の所定の有効消色幅W2で一様発色した記録媒体2における一様発色画像2bの必要な部分をビーム走査露光により画像様に消色する。これにより、記録媒体2に記録されていた一様発色画像2bは、記録画像2cに書換えられる。すなわち一様発色画像2bは、画像等のデータの背景部に相当する部分が消色され、記録画像2cに書き換えられる。
【0037】
又、消色ステーション20は、記録媒体2に対する加熱時間を発色ステーション10による記録媒体2に対する加熱時間よりも短く、かつ記録媒体2に与える加熱エネルギーを発色ステーション10により記録媒体2に与える加熱エネルギーよりも小さい。
発色ステーション10におけるライン露光と消色ステーション20におけるビーム走査露光との時間間隔は、記録媒体2上のいかなる部位においてでも一定に保たれる。このために発色ステーション10におけるライン露光方向Xと消色ステーション20における走査露光方向Xとは、媒体搬送方向Yに対して同一の角度に設定されている。すなわち、発色ステーション10による記録媒体2に対するライン状の光バー15の媒体搬送方向Yに対する照射角度と、消色ステーション20による記録媒体2に対するレーザビーム21aの媒体搬送方向Yに対する走査角度とは、同一に設定されている。
【0038】
但し、消色可能温度条件及び温度変化速度条件の許容幅が大きい場合には、発色ステーション10におけるライン露光方向Xと消色ステーション30におけるライン露光方向Xとは、僅かに異なる角度、例えば角度θとすると、tanθ=1/1000程度に設定されていてもよい。
【0039】
ここで、発色ステーション10及び消色ステーション20による各露光の幅は、通常、
記録媒体2の幅W0>有効消色幅W2>有効発色幅W1
の関係が成り立つように設定される。
又、発色ステーション10及び消色ステーション20による媒体搬送方向Yに対する露光の幅は、
記録媒体2の長さL0>有効消色長L2>有効発色長L1
の関係が成り立つように発色ステーション10と消色ステーション20との各露光タイミングが設定されている。
【0040】
発色ステーション10と消色ステーション20とは、記録媒体2における画像等のデータが記録されていない未使用の部分に対しても上記同様に作用する。すなわち、発色ステーション10は、記録媒体2に対して発色可能温度帯域Kに加熱し、この加熱後の冷却によって記録媒体2を一様に発色させる。
【0041】
消色ステーション20は、発色ステーション10により一様に発色した記録媒体2の温度が消色可能温度帯域S内又は消色可能温度帯域S外でかつ当該消色可能温度帯域Sの下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下したときに、記録媒体2を加熱して当該記録媒体2を画像様に消色する。発色ステーション10及び消色ステーション20の各露光位置が移動する場合、或いは発色ステーション10及び消色ステーション20の各全体が移動する場合、記録媒体2を固定することも可能である。この場合、記録媒体搬送装置1は、必要ない。
【0042】
発色ステーション10と消色ステーション20との間隔は、少なくとも前記搬送機構による記録媒体2の搬送速度と、記録媒体2の温度が発色ステーション10により発色可能温度帯域に加熱されてから消色可能温度帯域S内又は消色可能温度帯域S外でかつ当該消色可能温度帯域Sの下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下するまでに要する時間とに基づいて設定される。
【0043】
次に、発色ステーション10の具体的な構成について説明する。
発色ステーション10は、光源として赤外線(以下、単に光線と称する)を放射するハロゲンランプ11を備える。このハロゲンランプ11は、ガラス管内にフィラメント12を設け、かつガラス管の外側に反射膜13を形成してある。このハロゲンランプ11の長さは、有効発色幅W1よりも長く設定されている。これにより、ハロゲンランプ11は、有効発色幅W1の全幅において記録媒体2の表面を均一な光強度分布にするようにフィラメント12の光強度分布を両端でやや強くなるように設定している。反射膜13は、フィラメント12から出射された光線のうち記録媒体2と反対方向へ向かう光線を反射し、フィラメント12から出射する光線の利用効率を高める。
【0044】
ハロゲンランプ11から出射される光線の光路上には、ハロゲンランプ用集光光学系14が設けられている。このハロゲンランプ用集光光学系14は、複数の光学レンズにより成る。このハロゲンランプ用集光光学系14は、ハロゲンランプ11から出射された光線をレンズにより記録媒体2上に合焦し、媒体搬送方向Yにおける幅が狭いライン状の光バー15に形成して記録媒体2上をライン露光する。
【0045】
光バー15は、記録媒体2に含有する光吸収熱変換材料に吸収されて熱に変換され、発色に必要な温度条件を生成し、記録媒体2に含有される可逆性感熱記録材料を発色する。この発色には、所定範囲の冷却速度を満たす必要がある。本実施の形態では、記録媒体2における光バー15により露光した部分の温度が周囲よりも高くなるので、記録媒体2内部での熱移動及び記録媒体2から外部の空気、記録媒体搬送装置1への熱移動による自然冷却が発色に必要な冷却速度を満たし、冷却工程として使用される。
【0046】
ハロゲンランプ11の出力は、例えば幅100mmの画像を76mm/sec程度の記録媒体2の搬送速度で画像形成する場合、記録媒体2の表面上での光バー15の媒体搬送方向Yの露光長0.125mmに対して25〜30W程度の光バー15の光強度を最大値として必要される。このときのハロゲンランプ11は、例えば消費電力250〜500W程度を必要とする。この値は、記録媒体2の表面で25〜30W程度の光強度の10程度大きいが、ハロゲンランプ11の波長分布が広く、光吸収熱変換材料の吸収波長と一致する領域が少ないこと、またレーザ光のようにコヒーレントではないので光エネルギーの集中性が弱いためである。
【0047】
ハロゲンランプ11のスペクトル分布は、近赤外域の0.8〜1.0μm付近をピークとし、長波長側に広い強度分布を持つ。一方、ハロゲンランプ11の入力電源は、100VAC電源を直流に変換することなく使用できるので、直流電源等が要らず、高出力レーザに必要な高能力冷却装置も不要である。これにより、ハロゲンランプ11の総消費電力量は、高出力レーザと比較してもあまり変わらない。従って、ハロゲンランプ11は、低コストであることも含めて、500〜1000W程度でもレーザ光源に比べればはるかに安価である。
【0048】
フィラメント12から出射される光線は、反射膜13とハロゲンランプ用集光光学系14とにより集光される。フィラメント12から出射される光線の集光は、周知の放物面や楕円面等のミラー、又はこれらのミラーとレンズの組み合わせ等によって行うことが可能である。
【0049】
フィラメント12の直径が例えば1mm程度であり、画像形成速度すなわち媒体搬送速度を76mm/sec程度とする場合、光バー15の媒体搬送方向Yの露光長は1mm以下にすることが望ましく、かつ集光光学系14の横倍率は1以下に設定される。光バー15の媒体搬送方向Yの露光長の値は、媒体搬送速度だけでなく、光バー15の光強度、記録媒体2の比熱や熱伝導率周囲温度等に関係して設定される。光バー15の媒体搬送方向Yの露光長は1mmを超え、露光時間が長くなると、露光部分から記録媒体2全体に熱が移動し、自然冷却では発色に必要な冷却速度が得られなくなる場合がある。そのときには強制冷却手段が使用される。なお、スリットは、周囲からの露光等を防止し、光バー15の媒体搬送方向Yの露光長を確保するために設けられる。
【0050】
記録媒体2の温度調整について説明する。記録媒体2は、使用環境、保存環境によって発色ステーション20の露光位置に来たときの温度が異なる。発色温度域は、例えば160〜240℃とかなり広く取れるので、記録媒体2の温度変動に対してかなり広い幅で対応できる。しかし、使用環境が対応困難な極低温、或いは激しい温度サイクル等であると、記録媒体2の温度や周囲環境の温度を温度センサにより測定し、この測定した温度に応じてハロゲンランプ11の光量を制御することが必要になる。又、記録媒体搬送装置1にヒータ等を組み込み、このヒータ等により記録媒体2を加熱して記録媒体2の温度を一定に保つようにしてもよい。
【0051】
消色ステーション20の具体的な構成について説明する。
消色ステーション20は、光源として半導体レーザ21を備える。この半導体レーザ21は、レーザビーム21aを出射する。この半導体レーザ21から出射されるレーザビーム21aの光路上には、レーザ用集光光学系22とポリゴンミラー23とが設けられている。レーザ用集光光学系22は、複数の光学レンズにより成る。この消色ステーション20から出射されたレーザビーム21aは、レーザ用集光光学系22により記録媒体2上で合焦され、かつ所定の直径を有するレーザビーム21aとして記録媒体2上に照射され、記録媒体2を露光する。ポリゴンミラー23には、ポリゴンモータ24が設けられている。ポリゴンミラー23は、モータ24の駆動によって一定の回転速度で回転する。これにより、レーザビーム21aは、記録媒体2面上に走査される。
【0052】
レーザビーム21aの走査幅内で有効消色幅W2が設定される。この有効消色幅W2は、有効発色幅W1よりも長い。レーザビーム21aの光強度は、記録媒体2の全面消色時に有効消色幅W2の全幅において記録媒体2の表面で均一な光強度になるように制御される。又はレーザビーム21aの発光時間は、記録媒体2の全面消色時に有効消色幅W2の全幅において記録媒体2の表面で均一な光強度になるように制御される。
【0053】
半導体レーザ21の発光制御は、画像等のデータを含む画像信号に従ったON/OFF制御、ON/OFF時間幅の変調制御、又はレーザビーム21aの出力光強度の変調制御等の単独若しくは組み合わせによって行われる。これにより、一様発色画像2bは、画像の背景部に相当する部分が消色され、記録画像2cに書き換えられる。
【0054】
レーザビーム21aは、記録媒体2に含有される光吸収熱変換材料に吸収されて熱に変換され、消色に必要な温度条件を生成し、記録媒体2に含有される可逆性感熱記録材料によって消色する。消色ステーション20によってレーザビーム21aが照射される記録媒体2の温度は、発色ステーション10によって光バー15が照射される記録媒体2の初期温度よりも高く、かつ記録媒体2の消色可能温度帯域Sの下限近傍に設定されている。すなわち、発色ステーション10による加熱後、所定の冷却速度で冷却されて発色した記録媒体2が完全に冷め切らない前に消色ステーション20によりレーザビーム21aが照射される。
【0055】
しかるに、発色ステーション10と消色ステーション20との媒体搬送方向Yの位置関係は、発色ステーション10による加熱後、所定の冷却速度で冷却されて発色した記録媒体2が完全に冷め切らない前に消色ステーション20によりレーザビーム21aが照射されるという条件を満たす設定となっている。このとき、記録媒体2の発色部分を消色する場合、レーザビーム25により加熱を開始し、温度上昇カーブを低温側から消色可能温度帯域Sに突入させ、その後、記録媒体2の周囲に対して温度差で移動する熱エネルギー分をレーザビーム25によりわずかな時間だけ付与してやればよい。従って、消色ステーション20における消色に必要な熱エネルギーは、初期温度から加熱する場合に比較してわずかな量で済むので、半導体レーザ21は安価な比較的低出力のもので十分である。
【0056】
次に、半導体レーザ21は、例えば波長808nm若しくは830nmのレーザビーム21aを出射する。この半導体レーザ21から出射されるレーザビーム21aの出力は、例えば、ポリゴンミラー23により走査されてレーザビーム21aの利用効率を50%とし、幅100mmの画像等のデータを76mm/sec程度の記録媒体2の搬送速度で消色により画像形成するネガ画像形成の場合には、画素の大きさを0.125mm×0.125mmとすると、記録媒体2面上での光強度2〜3W程度が必要となる。この値は、発色により画像形成するポジ画像形成の場合と比較して1/10以下である。
【0057】
さらに、レーザビーム21aの照射直前の記録媒体2の温度すなわち消色加熱開始温度を消色可能温度帯域Sの下限近傍、例えば温度差1〜5℃に設定すれば、好条件下で記録媒体2面上での光強度を0.2〜0.3W程度することが可能である。これにより、YAGレーザやC02レーザではなく、安価な低出力の半導体レーザ21を使用した光熱変換型の画像書換装置が可能になる。
【0058】
次に、集光光学系・走査系について説明する。半導体レーザ21から出射されたレーザビーム21aは、集光光学系22を通り、ポリゴンミラー23により反射し、記録媒体2上に合焦する。ポリゴンミラー23は、ポリゴンモータ24の駆動により所定の速度で回転され、半導体レーザ21から出射されたレーザビーム21aの反射角度を可変させて記録媒体2上に走査する。
【0059】
記録媒体2上におけるレーザビーム21aの大きさ及びその形状は、記録媒体2のレーザビーム21aの光強度に対する消色感度によって異なるが、例えば、画素の大きさを0.125mm×0.125mmとし、レーザビーム21aの中心での光強度の1/eをビーム径とすると、円形の場合のレーザビーム21aのビーム径は、記録媒体2面上で例えば0.125〜0.180mm程度である。楕円形の場合のレーザビーム21aのビーム径は、ライン露光方向Xで例えば0.04〜0.09mm程度、媒体搬送方向Yで例えば0.130〜0.180mm程度である。
【0060】
半導体レーザ21等の複数のレーザ光源を用いる場合には、例えば上記特許文献1に開示されているようなレーザ光ビームの重なり合わせ、熱伝導による温度分布等各種のレーザ光ビームの合成パターンを使用可能である。このような特許文献1における集光・走査系は、シンプルであるが、本実施の形態に適用した場合、記録媒体2の表面が平面であるので、周知のようにポリゴンミラー23の反射点から記録媒体2上のレーザビーム25の露光点までの距離は、ポリゴミラー23の回転角度によって異なる。このためライン露光方向Xに対して記録媒体2の幅の中心から周辺に行く程、レーザビーム25のライン露光方向Xの径は大きくなり、さらに走査速度も速くなり、記録媒体2上の単位面積当たりの光強度が均一ではなくなる。
【0061】
これに対して本実施の形態であれば、半導体レーザ21から出力されるレーザビーム21aを変調して単位面積当たり均一の光強度にする方法以外に周知のいくつかの方法が使用できる。例えば、ポリゴンミラー23と記録媒体2との間の光路にfθレンズを挿入する。記録媒体2をおおよそポリゴンミラー23の反射点を中心に湾曲させ、ポリゴンミラー23の反射点から記録媒体2上のレーザビーム21aの露光点までの距離を一定にする等の方法がある。
【0062】
次に、上記の如く構成された装置による画像等のデータの書き換えの動作について説明する。
画像等のデータの書き換えは、記録媒体2に対して発色可能温度帯域に加熱し、この加熱後の冷却によって記録媒体2を一様に発色させる発色工程と、一様に発色した記録媒体2の温度が消色可能温度帯域S内又は消色可能温度帯域S外でかつ当該消色可能温度帯域Sの下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下したときに、記録媒体2を加熱して記録媒体2を画像様に消色する消色工程とから成る。
【0063】
図4乃至図6は発色工程から消色工程までの流れを記録媒体2の特性に基づいた温度・濃度と時間との関係図を示す。これら図4乃至図6における温度・濃度と時間との各関係図は、それぞれ記録媒体2の光吸収熱変換材料を混入した可逆性感熱記録層2−2における温度と濃度との時間変化を表したのもので、右側縦軸に温度、左側縦軸に濃度、横軸に時間を示す。又、例示する温度、濃度、時間等の数値は、例えば幅100mmの画像を76mm/sec程度の記録媒体2の搬送速度で、画素の大きさを例えば0.125mm×0.125mm程度とした場合の画像形成を条件としている。
【0064】
なお、この条件は、光バー15、レーザビーム21aの形状や光強度パターン、記録媒体2に照射されるレーザビーム21aの光強度に対する発色・消色感度、記録媒体2内及びその周囲での熱伝達率、熱伝導率、比熱等によって異なるので、必ずしもその数値に限定されるものではない。
【0065】
先ず、発色工程について説明する。
図4における温度曲線Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Tcは、温度−時間曲線を示す。濃度曲線Dc−Dc−Dc−Dcは、濃度−時間曲線を示す。濃度は、反射濃度を示す。
初期状態である。
初期状態として、記録媒体2は、室温である温度T(25℃)=Tc、消色状態の濃度D(0.2〜0.3)=Dcの状態である。
【0066】
次に、発色前加熱工程である。
記録媒体搬送装置1上に記録媒体2が載置される。この記録媒体搬送装置1は、記録媒体2を一定速度で媒体搬送方向Yに搬送する。
発色ステーション10において、ハロゲンランプ11が光線を出射すると、この光線は、反射膜13で反射した光線を含めてハロゲンランプ用集光光学系14に入射する。このハロゲンランプ用集光光学系14は、ハロゲンランプ11から出射された光線をレンズにより記録媒体2上に合焦し、媒体搬送方向Yにおける幅が狭いライン状の光バー15に形成して記録媒体2上をライン露光する。
【0067】
しかるに、記録媒体2は、発色ステーション10から記録媒体2の面上に照射される光バー15の露光位置に進入すると発色前加熱工程になる。すなわち、記録媒体2が光バー15により露光されると、記録媒体2におけるロイコ染料と可逆性顕色剤とから成る組成物の溶融温度、若しくはどちらか成分の溶融温度等に相当する発色可能温度Tc=Tm(180℃)を通過する。そして、記録媒体2の温度は、温度曲線Tc−Tc−Tcを経てピーク温度Tc(200℃)まで上昇する。
【0068】
記録媒体2の発色可能温度は、上限があり、可逆性感熱記録層2−2の各材料の熱分解温度等によって設定される。この記録媒体2の発色可能温度は、図4に示す温度上昇範囲外である。例えば、温度曲線Tc−Tc−Tc間の発色前熱工程の所要時間、すなわち発色ステーション10での露光時間は、光バー15の媒体搬送方向Yの露光長を例えば1.25mm程度とすると、15〜30msec程度である。好ましくはハロゲンランプ用集光光学系14の設定を変更することにより、光バー15の媒体搬送方向Yの露光長を例えば0.125mm程度にする。実際の装置では、発色ステーション10での露光時間は、15〜30msec程度の中間の値が選択される。
【0069】
又、1画素に相当する面積を発色させるのに必要なエネルギーは、例えば60〜600μJ程度である。このエネルギー値は、可逆性感熱記録層2−2の光吸収熱変換材料の光吸収度、及び記録媒体2全体の熱移動特性にかかわっている。又、光強度に関しては、記録媒体2の光吸収波長に対して記録媒体2面上で約40〜50Wである。
【0070】
次に、発色冷却工程である。
記録媒体2は、記録媒体搬送装置1によって媒体搬送方向Yに搬送されるので、発色ステーション10から照射される光バー15の露光位置からはずれ、発色冷却工程になる。この発色冷却工程において、自然冷却により記録媒体2の温度は、温度曲線Tc−Tc(180℃)−Tc(150℃)に示すように温度Tc(150℃)まで下降する。このとき冷却速度は、例えば−100〜−200℃/sec以上になるように設定される。
この発色冷却工程により濃度は、濃度曲線Dc−Dcにより示す濃度Dcまで変化する。濃度Dcでは最低濃度Dc=D(0.2〜0.3)であり、濃度Dcでは最高濃度D(1.0〜1.2)まで発色する。このときの濃度曲線Dc−Dcに示す濃度の時間変化曲線は、ロイコ染料と可逆性顕色剤との組あわせによる。図4おける発色開始時の濃度Dcは、温度Tc温度に相当し、例えば特許文献7は温度Tcから発色する場合を開示する。いずれにしろ、発色状態を室温(25℃)で保持するためには、所定の冷却速度が必要である。本装置は、発色開始条件に限定されるものではない。
【0071】
次に、後冷却工程である。
記録媒体搬送装置1は、記録媒体2を一定速度で媒体搬送方向Yに搬送する。これにより、記録媒体2は、発色ステーション10を通過し、消色ステーション20に向かって搬送されて消色ステーション20に到達し、さらに消色ステーション20を通過する。このとき、記録媒体2は、画像書き換えの発色維持部分に対してレーザビーム21aにより露光が開始されず、発色状態が維持され後冷却工程となる。自然冷却により記録媒体2の温度は、温度曲線Tc−Tcに示すように温度Tc(30℃)まで下降する。これにより、濃度は、濃度Dcまで最高濃度D(1.0〜1.2)が維持され、後冷却工程が終了する。好ましくは本装置の利用効率上げるために、温度Tc6(30℃)まで冷却せずに、使用者が火傷することなく、かつ記録媒体2が熱変形しない温度40〜60℃で後冷却工程を終了する。
【0072】
次に、低エネルギー消色工程について図5を参照して説明する。
図5は同装置による発色工程から消色工程までの流れを記録媒体の特性に基づいた温度・濃度と時間との関係図を示す。同図において温度曲線Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Te−Te−Te−Teは、温度一時間曲線を示す。濃度曲線Dc−Dc−Dc−De−De−Deは、濃度−時間曲線を示す。濃度は、反射濃度を示す。図5において温度−時間曲線Tc−Tc−Tc−Tc−Tc及び濃度−時間曲線Dc−Dc−Dcまでの発色工程すなわち発色冷却工程までは、上記図4に示す工程と同一工程なのでその説明は省略する。
【0073】
先ず、消色前冷却工程である。
発色冷却工程の次に記録媒体2は、温度曲線Tc−Tcに示す温度Tc(115℃)まで自然冷却される。温度Tcは、消色可能温度帯域Sの下限に近い。この温度Tcを一定に保つように発色ステーション10でのライン露光位置と消色ステーション20でのレーザビーム21aの走査露光位置との間の距離は、記録媒体2のどの部位でも一定である。従って、記録媒体2の搬送速度一定の条件で冷却時間も一定となる。
【0074】
本実施の形態では、温度曲線Tc−Tc(115℃)までの範囲で消色が開始されない。温度曲線Tc−Tcは、消色可能温度帯域S(120〜180℃)内を通過しているが、消色可能な温度変化速度はゼロ以上であり、このとき温度変化速度は冷却中でありゼロ以下なので消色は開始されない。従って、温度Tc=Tc=最高濃度D(1.0〜1.2)まで発色状態が維持される。すなわち消色可能温度帯域S(120〜180℃)内でかつ温度上昇時のみ、消色が開始される。
【0075】
次に、消色前加熱工程である。
記録媒体2は、記録媒体搬送装置1の搬送動作によって消色ステーション20に到達する。消色ステーション20において半導体レーザ21は、レーザビーム21aを出射する。この半導体レーザ21から出射されたレーザビーム21aは、レーザ用集光光学系22により記録媒体2上で合焦されて所定の直径を有するレーザビーム21aとして記録媒体2上に照射され、かつポリゴンミラー23の一定の回転速度の回転により記録媒体2面上に走査される。
【0076】
この状態で記録媒体2は、消色ステーション20から出射されるレーザビーム21aによる露光位置に進入すると、消色前加熱工程となる。記録媒体2がレーザビーム12aにより露光されると、記録媒体2の温度は、図5に示すように温度曲線Tc−Teに従ってTe(120℃)まで上昇する。このとき、記録媒体2は、消色可能温度帯域S(120〜180℃)に達していないので消色は開始されない。
【0077】
次に、消色加熱工程である。
レーザビーム12aの照射による記録媒体2上の露光は続行する。記録媒体2の温度は、温度曲線Te−Teに示すように温度Te(125℃)まで上昇する。ここで、消色開始温度Te(120℃)以上で消色加熱工程となり、濃度は、濃度曲線De−Deに示すように濃度Deまで変化する。濃度Deでは最高濃度D(1・0〜1・2)であり、温度Teでは最低濃度D(0.2〜0.3)で消色する。
【0078】
このときの消色パターンは、画像様になっており、画像等のデータの背景部分が消色され、画像の書き換えが行われる。先の工程の消色前加熱工程における加熱開始温度Tcは、消色可能温度帯域S(120〜180℃)の下限に近く、例えば90〜130℃の範囲で設定される。従って、消色前加熱工程の開始からやや遅れて記録媒体2の消色が開始される。
【0079】
消色前加熱工程と消色加熱工程とは、レーザビーム21aによる1画素に対する単位露光時間内での連続工程であり、記録媒体2の消色開始温度Teを基準に区分している。温度曲線Tc−Te間の消色前加熱工程と消色加熱工程との総所要時間、すなわち消色ステーション20の総露光時間は、例えば1〜1.3μsec程度である。又、1画素を消色させるのに必要なエネルギーは、例えば2〜5μJ程度である。このエネルギー値は、消色加熱開始温度の設定に大きく係り、さらに可逆性感熱記録層2−2の光吸収熱変換材料の光吸収度、及び記録媒体2全体の熱移動特性に係っている。
【0080】
レーザビーム21aの記録媒体2面上での光強度は、例えば、2〜3W程度である。これにより小光強度のレーザビーム21aによる画像等のデータの書き換えができる。さらに、消色加熱開始温度、レーザビーム21aの形状、記録媒体2の特性等を最適化すると、光強度は、例えば0.2〜0.3W程度に設定することも可能である。この場合、消色可能温度の変化速度の範囲を、−20℃〜0℃/sec程度に設定し、さらに、消色加熱開始温度を、温度Tcを消色可能温度帯域S(120〜180℃)に設定する。このとき、温度変化速度が消色可能温度変化速度を満たしていれば、直ちに消色が開始される。これにより、消色前加熱工程を省略可能である。特に、消色可能温度変化速度の範囲が例えば−20℃/secのように温度降下勾配である場合、消色加熱開始温度は、温度Tcを例えば125〜140℃の範囲で設定し、消色前加熱工程を省略できる。
【0081】
次に、後冷却工程である。
記録媒体2は、記録媒体搬送装置1の搬送動作によって消色ステーション20を通過して消色ステーション20から離れる。これにより、記録媒体2は、消色ステーション20から出射される光バー15による露光位置から外れて後冷却工程となる。この後冷却工程において、記録媒体2の温度は、自然冷却により温度曲線に示すようにTe−Te(120℃)−Te(40℃)まで下降する。
【0082】
このとき温度変化速度は、冷却中なのでゼロ以下であり、消色は開始されない。濃度は、Deまで最低濃度D(0.2〜0.3)が維持され、後冷却工程が終了する。なお、好ましくは本装置の利用効率上げるために、温度Te(40℃)まで冷却せずに、使用者が火傷することなく、かつ記録媒体2が熱変形しない温度40〜60℃で後冷却工程を終了する。
【0083】
次に、本装置による画像等のデータの書き換えに対する比較例を説明する。
この比較例は、高エネルギーによる消色工程である。図6は比較例として消色加熱開始温度を室温付近T(30℃)とした場合における温度・濃度と時間との関係図を示す。この比較例は、消色ステーション20の位置を例えば発色ステーション10から十分な間隔をおいて設定する。すなわち、比較例は、消色ステーション20と発色ステーション10との間隔を本装置における消色ステーション20と発色ステーション10との間隔よりも長く設定する。
【0084】
図6において曲線Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Te−Te−Te−Te−Teは温度−時間曲線である。曲線Dc−Dc−Dc−De−De−De−Deは濃度一時間曲線である。濃度は、反射濃度を示す。温度−時間曲線Tc−Tc−Tc−Tc−Tc及び濃度−時間曲線Dc−Dc−Dcまでの発色工程すなわち発色冷却工程までは上記工程と同一工程なのでその説明は省略する。
【0085】
先ず、消色前加熱工程である。
消色加熱開始温度を室温付近Te(35℃)とした場合、記録媒体2が消色ステーション20から出力されるレーザビーム21aによる露光位置に進入することにより消色前加熱工程となる。記録媒体2がレーザビーム21aの照射を受けて露光されると、その温度は、温度曲線Te−Teに示すようにTe(120℃)まで上昇する。このとき、記録媒体2は、未だ消色可能温度帯域S(180〜120℃)に達していないので、消色は開始されない。
【0086】
次に、消色加熱工程である。
レーザビーム21aによる露光が続行し、記録媒体1の温度は、温度曲線Te−Teに示すようにTe(125℃)まで上昇する。ここで、消色開始温度Te(120℃)以上で消色加熱工程となり、濃度は、濃度曲線De−Deに示すように濃度Deまで変化する。温度Teでは最高濃度D(1.0〜1.2)であり、温度Teでは最低濃度D(0.2〜0.3)で消色する。このときの消色パターンは、画像様になっていて、画像等のデータの背景部分が消色されることにより、画像等のデータの書き換えが行われる。
【0087】
温度曲線Te−Te間における消色前加熱工程と消色加熱工程との所要時間、すなわち消色ステーション20の総露光時間は、例えば1〜1.3μsec程度である。又、1画素を消色させるのに必要なエネルギーは、例えば20〜40μJ程度である。レーザビーム21aの光強度は、例えば15〜20W程度である。従って、レーザビーム21aの走査条件を一定にし、総露光所要時間を本装置と同一にすると、消色加熱開始温度を室温付近にした場合、本装置のように消色可能温度帯域の下限に近く設定した低エネルギー消色工程の場合の10程度のエネルギーを必要とする。このため、比較例は、高エネルギー消色工程となる。
【0088】
次に、後冷却工程である。
記録媒体2は、消色ステーション20から出射されるレーザビーム21aによる露光位置から外れて後冷却工程となる。自然冷却により記録媒体2の温度は、温度曲線Te−Te(120℃)−Te(40℃)に示すようにTe(40℃)まで下降する。このとき温度変化速度は、冷却中なのでゼロ以下であり、消色は開始されない。温度DTeまで最低濃度D(0.2〜0.3)が維持され、後冷却工程が終了する。このように後冷却工程は、低エネルギー消色工程と同様である。
【0089】
次に、第1の実施の形態の変形例について説明する。
【0090】
記録媒体1の搬送速度が速い場合は、発色ステーション10の光源として用いられているハロゲンランプ11は、搬送速度に対応した高速のON/OFFができない。
【0091】
そこで、周知のサーマルプリンタ、レーザビームプリンタ、インクジェットプリンタ等が使用している媒体搬送方向Yに対しての関係
記録媒体長>有効画像長
を成立させるためには、光バー15を高速でON/OFFするシャッタ等が必要になる。
【0092】
簡易な装置としては、
記録媒体長L<有効発色長L<有効消色長L
の関係が成り立つように発色ステーション10及び消色ステーション20による各露光タイミングが設定される。すなわち、記録媒体2の媒体搬送方向Yに対して両側端部まで発色及び消色を可能にする。但し、画像品質を保障する範囲は、記録媒体2の長Lよりも短くてよい。
【0093】
発色ステーション10は、ハロゲンランプ11から出射された光線をライン状に形成した光バー15を記録媒体2に照射して発色加熱しているが、これに限らず、記録媒体2に接触して発色加熱する接触加熱手段を用いてもよい。本装置は、消色ステーション20における光源としての例えば半導体レーザ21の低出力化を目的としているので、発色ステーション10には、接触加熱手段を用いることが可能である。例えば、ハロゲンランプ11を内蔵し、かつ表面をフッ素樹脂によりコーティングしたアルミニウム製のヒートローラ、又は発熱抵抗体を内蔵し、かつ表面をフッ素樹脂によりコーティングしたポリイミド製の移動可能な無端状耐熱性フィルム等が使用できる。これらヒートローラ及び無端状耐熱性フィルムは、回転若しくは移動するので、記録媒体2の表面との速度差はゼロである。これにより、例えばサーマルヘッドにより加熱する場合のように摺擦はなく、記録媒体2の表面に対するダメージは、サーマルヘッドを用いた加熱の場合に比べてはるかに小さい。
【0094】
又、消色ステーション20における発色加熱手段としては、半導体レーザや高輝度LEDをアレイ状に並べたもの、赤外線を放射する電気抵抗体、高周波加熱装置等が使用可能である。これにより、記録媒体2に対する画像等のデータの書き換えを複数回繰り返しても記録媒体2にダメージを与えることなく、記録媒体2の長寿命化を図れる。
【0095】
このように上記第1の実施の形態によれば、記録媒体2に対して発色可能温度帯域に加熱し、この加熱後の冷却によって記録媒体2を一様に発色させ、次に、一様に発色した記録媒体2の温度が消色可能温度帯域内又は消色可能温度帯域外でかつ当該消色可能温度帯域の下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下したときに、記録媒体2を加熱して当該記録媒体2を画像様に消色する。これにより、安価で低出力な半導体レーザ21を用い、高速で画像等の情報を記録媒体2に書き換え可能で、かつ大画角べた画像の記録を実現できる。
【0096】
又、高速消色性を有する記録媒体2を用いてネガ画像形成を実現できる。すなわち、従来から記録媒体2を一様発色させた後、画像様に消色するネガ画像形成を採用した場合、画像様消色に必要な光エネルギーが減少することは知られていた。高速消色性を持たない可逆性感熱記録媒体に対しては、高速消色が出来ないために有効な画像様消色方法がなく、このため安価で高速のネガ画像形成を行う装置については開示されていなかった。これに対して本装置は、高速消色性を有し、さらに光熱変換機能を付加した光熱変換型可逆性感熱記録媒体2を採用することにより、安価で高速のネガ画像形成を実現できる。
【0097】
画像形成用の光源として安価で低出力な半導体レーザ21を用い、さらに、高速消色性を有する可逆性感熱記録媒体2の少ない熱エネルギーの授受で瞬時に発色状態から消色状態に転移することができるという特性を利用し、消色可能温度帯域の下限に近くに消色加熱開始温度を設定することにより、より一層の画像様のパターン形成用光源の低出力化を図ることができる。
【0098】
従来のサーマルヘッドによる加熱では、画像形成速度が速くなるに従って大きな投入電力が必要である。このため、サーマルヘッド全体の温度が上昇し、通電をパルス制御に従ってOFFしたとしても、記録媒体2とサーマルヘッドとが接触している限り、サーマルヘッドの熱容量に応じて保持される熱が記録媒体2の搬送方向前方に伝達され、記録媒体2の冷却速度が遅くなる。
【0099】
これに対し本装置のようにレーザビーム21aを用いる加熱方式では、パルス制御に従ったサーマルヘッドと比較して例えば1/1000程度の短い加熱時間でかつ非接触で消色することが可能であり、一定の冷却速度が保障される。これにより、本装置によれば、消色可能温度帯域の下限に近くに消色加熱開始温度を設定するので、一定の安定した冷却速度が保障され、非接触加熱による画像様消色が好適となる。
【0100】
ネガ画像形成による大画角べた画像の記録が実現可能である。すなわち、レーザビーム21aの光強度はガウス分布している。記録媒体2の消色温度帯域が発色温度帯域よりも低いので、レーザビーム21aのガウス分布の裾の部分が前回の発色域に掛かり、ガウス分布の裾の小さい光強度域でも消色してしまう場合がある。又は、記録媒体2の熱伝導でも前回の発色域が消色条件を満たしてしまう場合もある。このような理由により露光の近接による前画像消色が発生し、従来装置では、大画角べた画像の実現が困難であった。これに対して本装置は、ネガ画像形成であり、画像パターンの形成が消色によるので、本質的に露光の近接による前画像消色は発生しない。
【0101】
上記第1の実施形態は、画像形成用の半導体レーザ21等の光源の低出力化、すなわち画像様消色に使用する半導体レーザ21の低出力化、低価格化を実現できる。レーザ光源に高出力・高価格のものを使用すれば、従来のサーマルヘッドを使用した装置で実現困難であった高速の画像書換装置が提供できる。例えば2〜3W程度レーザ光源を使用すれば、幅100mmの画像を760mm/sec程度の媒体搬送速度で消色により画像形成が可能である。又は媒体搬送速度をそれほど速くせずに、大画幅の画像形成に適する画像書換装置の提供が可能になる。
【0102】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図1及び図2と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図7は画像書換装置の基本構成図を示し、図8は同装置の概略斜視図を示す。
【0103】
具体例としては、幅100mmの画像を例えば380mm/sec程度の媒体搬送速度で、例えば0.125mm×0.125mmの画素で画像形成するものとする。
【0104】
発色ステーション10は、上記第1の実施の形態における発色ステーション10と基本的に同一であり、相違するところは、集光光学系14が媒体搬送方向Yの露光長を例えば0.725mmとなるように変更した点である。
【0105】
この変更は、媒体搬送速度5倍に対して媒体搬送方向Yの露光長を5倍の0.725mmとし、発色前の加熱所要時間を上記第1の実施の形態と同一の1.5〜3.0msec程度に設定し、上記第1の実施の形態と同一の例えば消費電力250〜500W程度のハロゲンランプ11を使用できるようにするためのである。又、媒体搬送方向Yの露光長を0.125mm程度にすると、単純に媒体搬送速度が上記第1の実施の形態の5倍になるので、ハロゲンランプ11の出力は、例えば消費電力1250〜2500W程度必要となる。しかるに、ハロゲンランプ11の入力電源は、例えば144〜250VAC電源が必要になる。
【0106】
消色系としての消色ステーション(以下、レーザアレイモジュールと称する)30が記録媒体搬送装置1の上方で、かつ発色ステーション10の下流側に設けられている。このレーザアレイモジュール30は、半導体レーザアレイ31と、レーザアレイ用集光光学系32とを有する。半導体レーザアレイ31は、光エネルギーとして例えば波長808mm又は830mmの単位レーザビーム33を出力する複数の半導体レーザチップ、例えば800個の半導体レーザチップをライン状に配列して成る。半導体レーザアレイ31は、ライン露光方向Xと同一方向に配置されている。半導体レーザアレイ31の複数のレーザ素子の配列方向をアレイ集積方向Xと称する。
【0107】
レーザアレイ用集光光学系32は、半導体レーザアレイ31の各レーザ素子から出力された各単位レーザビーム33をライン状に成形し、レーザビームアレイ34として記録媒体2に照射する。なお、半導体レーザアレイ31の各レーザ素子は、レーザレイドライバ35によって個別に駆動される。
【0108】
具体的にレーザアレイジュール30は、例えば幅100mmの画像等のデータで画素の大きさを例えば0.125mm×0.125mmとすると、アレイ集積方向Xに各単位レーザビーム33を例えば800個並べてレーザビームアレイ34を形成する。このレーザビームアレイ34は、上記の如くレーザレイドライバ35により個別に制御可能で、パルス幅に従ったON/OFF制御、パワー変調等が可能である。
【0109】
記録媒体2の面上における1つの単位レーザビーム33の大きさ及びその形状は、次の通りである。例えば単位レーザビーム33が円形の場合、ビーム径は、記録媒体2面上において例えば0.125〜0.180mm程度である。又、単位レーザビーム33が楕円形の場合、ビーム径は、ライン露光方向Xで例えば0.130〜0.180mm程度、媒体搬送方向Yで例えば0.04〜0.09mm程度である。
【0110】
記録媒体2の面上における1つの単位レーザビーム33の光強度は、例えば50〜70mW程度必要である。これにより、レーザアレイモジュール30の全体では、例えば40〜56W程度の光出力が必要である。又、レーザアレイドライバ35により半導体レーザアレイ31を周知の時分割駆動を行う場合、例えば、単位レーザビーム33の駆動時間を3分の1とし、逆に1つの単位レーザビーム33の光強度を例えば150〜210mW程度とする。このときもレーザレイモジュール30の全体での光出力の40〜56Wを保持し、単位記録面積当たりに必要なエネルギーを確保している。
上記第1の実施の形態と同様に、消色加熱開始温度を消色温度帯域Sの下限近傍、例えば温度差1〜5℃に設定すれば、好条件下では単位レーザビーム33の出力を例えば5〜7mW程度することが可能である。
【0111】
次に、上記の如く構成された装置による画像等のデータの書き換えの動作について説明する。
記録媒体搬送装置1上に記録媒体2が載置される。この記録媒体搬送装置1は、記録媒体2を一定速度で媒体搬送方向Yに搬送する。
発色ステーション10において、上記第1の実施の形態と同様に、ハロゲンランプ11が光線を出射すると、この光線は、反射膜13で反射した光線を含めてハロゲンランプ用集光光学系14に入射する。このハロゲンランプ用集光光学系14は、ハロゲンランプ11から出射された光線をレンズにより記録媒体2上に合焦し、媒体搬送方向Yにおける幅が狭いライン状の光バー15に形成して記録媒体2上をライン露光する。これにより、記録媒体2は、所定の有効発色幅Wの全幅において発色する。このとき記録媒体2の前回の使用で記録された前記録画像2aは、一様発色画像2bに形成される。
【0112】
記録媒体搬送装置1は、記録媒体2を一定速度で媒体搬送方向Yに搬送する。これにより、記録媒体2は、発色ステーション10を通過し、レーザアレイモジュール30に向かって搬送されてレーザアレイモジュール30に到達し、さらにレーザアレイモジュール30を通過する。
【0113】
レーザアレイモジュール30における半導体レーザアレイ31は、例えば800個の半導体レーザチップからそれぞれ例えば波長808mm又は830mmの単位レーザビーム33を出力する。レーザアレイ用集光光学系32は、半導体レーザアレイ31の各半導体レーザチップから出力された各単位レーザビーム33をライン状に成形し、レーザビームアレイ34として記録媒体2に照射する。このレーザビームアレイ34は、媒体搬送方向Yに対して略直角なアレイ集積方向Xに沿って記録媒体2に照射される。
【0114】
これにより、記録媒体2上の所定の有効消色幅Wにおいて、一様発色した記録媒体2の必要な部分が画像様に消色される。すなわち記録媒体2上の一様発色画像2bは、画像等のデータの背景部に相当する部分が消色され、求められている現在の記録画像2cに形成される。
【0115】
本実施の形態における発色工程から消色工程の記録媒体2上の温度及びの濃度の変化は、上記第1の実施の形態における発色工程から消色工程の説明で用いた図5に示す温度・濃度曲線−時間の関係図における温度−時間曲線Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Te−Te−Te−Teと、濃度−時間曲線Dc−Dc−Dc−De−De−Deと基本的に同一である。但し、画像形成速度が5倍になるので、温度曲線Tc−Tc−Tc間の発色前加熱所要時間は、5分の1の3〜6msec程度になる。又、消色工程は、レーザビーム21aの走査から固定配置された半導体レーザアレイ31からのレーザビームアレイ34の照射になるので、温度曲線Tc−Te間の消色加熱所要時間は、半導体レーザアレイ31の各半導体レーザチップを時分割駆動を行わない条件で例えば0.3〜0.6msec程度になる。
【0116】
次に、第2の実施の形態の変形列について説明する。
超高速化を実現するためにレーザアレイモジュール30の単位レーザビーム33の出力を例えば100〜200mW程度とし、消色加熱開始温度を消色温度帯域Sの下限近傍に設定すれば、例えば760〜1520mm/secの媒体搬送速度(画像形成速度)を達成できる可能性を有する。この場合、発色ステーション10においてもハロゲンランプ11を複数使用する必要がある。
【0117】
レーザアレイモジュール30の代わりに高輝度LEDアレイモジュールを使用することが可能である。このような高輝度LEDアレイモジュールでは、媒体搬送速度(画像形成速度)を例えば76mm/sec程度に設定すれば、光源の低出力化が可能で、高輝度LEDアレイを使用したモジュールの使用が可能である。この場合、例えば、単位ビーム33当たり例えば3〜15mW程度の出力が必要とされる。
【0118】
このように上記第2の実施の形態によれば、半導体レーザアレイ31と、レーザアレイ用集光光学系32とを有するレーザアレイモジュール30を設け、半導体レーザアレイ31の複数の半導体レーザチップから出力される複数の単位レーザビーム33をレーザアレイ用集光光学系32によってライン状に成形し、レーザビームアレイ34として記録媒体2に照射する。これにより、上記第1の実施の形態の効果と同様の効果を奏することは言うまでもなく、さらに上記第1の実施の形態の5倍の例えば380mm/sec程度の媒体搬送速度(画像形成速度)を達成できる。複数の単位レーザビーム33の出力をより大きな出力のものにすれば、更なる高速化が可能である。
【0119】
画像書換装置の大画角化の画像形成速度のさらなる高速化には、発色ステーション10におけるハロゲンランプ1の出力が不足する。このため実用上は、例えば画像幅100mmでの高速化よりも大画角化の画像書換装置の方が実現が容易で単位時間当たりの画像形成面積が大きくなる。例えば380mm/secの媒体搬送速度(画像形成速度)で幅300mmの画像を形成する場合、例えば750〜1500W(電源100〜120VAC)のハロゲンランプが容易に入手可能である。この場合、単位時間当たりの画像形成面積は、例えば幅100mmの画像形成時の3倍になる。さらに、レーザアレイモジュール30は、32:レーザアレイ用集光光学系32やレーザレイドライバ35等を備えてユニット化されている。これにより、レーザアレイモジュール30は、画像幅の大きな画像書換装置にも容易に設置できる。
【0120】
次に、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図1及び図2と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図9は画像書換装置の基本構成図を示し、図10は同装置の概略斜視図を示す。記録媒体2は、記録媒体2の貼付済みのコンテナ40の表面上に張り付いている。このコンテナ40は、図示されていない移送系によって画像形成開始時に所定の画像形成位置に移送されて位置決めされて設置され、画像形成終了時に当該画像形成位置から他の位置に移送される。
【0121】
発色消色ステーション50が画像形成開始時に移送されたコンテナ40の上方に配置されている。この発色消色ステーション50は、発色系としての第1の半導体レーザ51と、消色系としての第2の半導体レーザ52とを有する。
第1の半導体レーザ51は、発色用の第1のレーザビーム51aを出力する。この第1の半導体レーザ51から出力される第1のレーザビーム51aの光路上には、発色用レーザ集光光学系53が配置されている。この発色用レーザ集光光学系53は、第1の半導体レーザ51から出力された第1のレーザビーム51aを後述する偏光ビームスプリッタ54と2次元走査系60とを介して記録媒体2上で合焦し、かつ所定の直径を有する発色用レーザビーム55として記録媒体2上に照射し、記録媒体2を露光する。
【0122】
第2の半導体レーザ52は、消色用の第2のレーザビームを出力する。この第2の半導体レーザ52から出力される第2のレーザビーム52aの光路上には、消色用レーザ集光光学系56が配置されている。この消色用レーザ集光光学系56は、第2の半導体レーザ52から出力された第2のレーザビーム52aを後述する偏光ビームスプリッタ54と2次元走査系60とを介して記録媒体2上で合焦し、かつ所定の直径を有する消色用レーザビーム57として記録媒体2上に照射し、記録媒体2を露光する。
【0123】
第1の半導体レーザ51から出力される第1のレーザビーム51aの光路と第2の半導体レーザ52から出力される第2のレーザビーム52aの光路との交点上には、偏光ビームスプリッタ54が設けられている。
【0124】
第1のレーザビーム51aと第2のレーザビーム52aとは、直線偏光で互いに直交しているため、偏光ビームスプリッタ54によって、所定の間隔で第1のレーザビーム51aと第2のレーザビーム52aが合成される。
【0125】
2次元走査系60は、第1の半導体レーザ51から出力された第1のレーザビーム51aを記録媒体2上に走査して当該記録媒体2を一様に発色させ、かつ第2の半導体レーザ52から出力された第2のレーザビーム52aを記録媒体2上に走査して当該記録媒体2を画像様に消色する。
この2次元走査系60は、2次元ガルバノミラー61と、高速走査回転軸62と、低速走査回転軸63とから成り、図示していない電磁駆動コイル等の駆動機構により2つの回転方向に独立に振動する。高速走査回転軸62は、2次元ガルバノミラー61を回転方向ωxに高速で回転させて第1のレーザビーム51a及び第2のレーザビーム52aをX方向に高速走査する。低速走査回転軸63は、2次元ガルバノミラー61を回転方向ωyに低速で回転させて第1のレーザビーム51a及び第2のレーザビーム52aをY方向に低速走査する。2次元ガルバノミラー61は、高速走査回転軸62と低速走査回転軸63との2軸の回転運動の組合せにより記録媒体2上の有効画像形成範囲に発色用レーザビーム55と消色用レーザビーム57とをラスター走査する。
【0126】
この場合、2次元走査系60は、第2のレーザビーム52aを記録媒体2上に走査する前に、第1のレーザビーム51aを記録媒体2上に走査する。
【0127】
しかるに、2次元走査系60は、第1のレーザビーム51aを記録媒体2上に走査した後、上記図5に示すように記録媒体2の温度が消色可能温度帯域S内又は消色可能温度帯域S外でかつ当該消色可能温度帯域Sの下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下した時点で、第2のレーザビーム52aを記録媒体2上に走査する。
【0128】
従って、記録媒体2上の第1のレーザビーム51aの走査位置と第2のレーザビーム52aの走査位置とは、低速走査方向Yに間隔Hだけ離れている。この間隔Hは、第1のレーザビーム51aを記録媒体2上に走査した時点と、上記図5に示すように記録媒体2の温度が消色可能温度帯域S内又は消色可能温度帯域S外でかつ当該消色可能温度帯域Sの下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下してから第2のレーザビーム52aを記録媒体2上に走査する時点との時間差に対応し、第1のレーザビーム51a及び第2のレーザビーム52aを記録媒体2上の低速走査方向Yに走査するときの走査速度に応じて決定される。
【0129】
具体的に、発色消色ステーション50における第1の半導体レーザ51は、例えば波長808mm又は830mmの第1のレーザビーム51aを出力し、かつ記録媒体2の面上で例えば光強度20〜30W程度を有する。一方、第2の半導体レーザ52は、例えば波長808mm又は830mmの第2のレーザビーム52aを出力し、かつ記録媒体2の面上で例えば光強度0.2〜0.3W程度を有する。
【0130】
偏光ビームスプリッタ54から出射された第1のレーザビーム51aと第2のレーザビーム52aとは、2次元ガルバノミラー61で反射して記録媒体2上で合焦する。このとき、第1のレーザビーム51aは、楕円形に形成され、高速走査方向Xのビーム径が例えば4〜10mm程度、低速走査方向Yのビーム径が例えば0.130〜0.180mm程度である。一方、第2のレーザビーム52aは、楕円形に形成され、高速走査方向Xのビーム径が例えば0.04〜0.09mm程度、低速走査方向Yのビーム系が例えば0.130〜0.180mm程度である。
【0131】
又、発色用レーザビーム55と消色用レーザビーム57とは、低速走査方向Yの中心軸が一致し、高速走査方向Xの中心軸間隔すなわち間隔Hが例えば2画素分0.25mm離れている。高速走査速度は、例えば62.5m/sec程度である。高速走査方向Xのライン形成周期は、例えば3.3msec程度である。従って、低速走査速度は、例えば39mm/sec程度である。ゆえに、発色用レーザビーム55と消色用レーザビーム57との露光時間の間隔は、例えば6.6msec程度になる。これにより、発色用レーザビーム55が低速走査方向Yで消色用レーザビーム57に対して例えば2画素分0.25mm先行する位置にある。
【0132】
図9及び図10に示すように単純な2次元ガルバノミラー61を用いた2次元走査系60は、発色用レーザビーム55と消色用レーザビーム57との露光時間の間隔が一定でない。この場合、走査速度が一定になるように公知のfθレンズ等を用いた光学系を付加する。又、発色用レーザビーム55と消色用レーザビーム57との露光時間の間隔が異なっても記録媒体2の温度変化速度が一定になるように公知のレーザ発光パルス幅変調やレーザ発光パワー変調等を用いて発色用レーザビーム55と消色用レーザビーム57との露光エネルギーを調整する。
【0133】
次に、発色用レーザビーム55の長焦点深度化について説明する。上記第1及び第2の実施の形態における発色ステーション10は、光源としてハロゲンランプ11を使用するので、集光光学系の横倍率を1以下に設定するため、焦点深度を深くすることができない。このため、例えば記録媒体2の表面のうねりが大きいと、この記録媒体2上に光バー15を合焦することが困難であった。
これに対して第3の実施の形態は、発色用レーザビーム55を低速走査方向Yに消色用レーザ光ビーム57に対して光学系の横倍率を例えば10程度にとることができるので、比較的大きな焦点深度得ることができる。
【0134】
光学系の横倍率を例えば10程度すると、発色用レーザ集光光学系53と記録媒体2との間隔、及び消色用レーザ集光光学系56と記録媒体2との間隔をそれぞれ長くすることができる。これによって、大画角の記録媒体2に対しても2次元走査ミラー61の位置を、記録媒体2の表面から所定の距離だけ離して設置することにより2次元走査が可能になる。
【0135】
次に、発色用レーザビーム55について説明する。発色用レーザビーム55は、大きな露光面積を形成することが可能である。すなわち、発色用レーザビーム55は、高速走査方向Xのビーム径が例えば4〜10mm程度であり、低速走査方向Yのビーム系が例えば0.130〜0.180mm程度であり、消色用レーザビーム57と比較して大きな露光面積を有する。これにより、発色用レーザビーム55は、光強度20〜30Wを分散し、単位面積当たりの光強度を発色用レーザビーム55の10倍程度にしている。これは高出力のレーザビームを使用すると、光吸収熱変換材料やその周囲が300〜400℃以上になり、光吸収熱変換材料や他の可逆性感熱記録媒体を構成する材料を熱分解・溶融する恐れがあるためである。
【0136】
発色用レーザビーム55は、長い露光時間を有することが可能である。この発色用レーザビーム55の露光時間は、例えば64〜160μsec程度であり、消色用レーザビーム57の露光時間の2〜2.6μsecと比較して長くなっている。これは、十分な光強度の発色用レーザビーム55を用い、所要の露光時間で記録媒体2の全体を温度上昇せしめ、発色可能温度帯域Kの下限以上か、又は消色可能温度帯域Sの上限以上に、発色後の記録媒体2の温度を保持する必要があるためである。
【0137】
このような設定により発色用レーザビーム55のガウス分布の裾の部分は、前ラインの発色域を再露光しても、その再露光部分が発色可能温度帯域Kの下限以上か、又は消色可能温度帯域Sの上限以上の温度になっているので、再露光により前ラインの発色域が消色されることはない。
第1の半導体レーザ51は、マルチモード、光源の出光幅が広い0.1〜1程度に対応している10mm程度のものを使用できる。第1の半導体レーザ51は、露光パターンが長径のものに対応できる。
【0138】
次に、上記の如く構成された装置による画像等のデータの書き換えの動作について説明する。ここでは、具体例としては、幅100mmの画像を例えば38mm/sec程度の媒体搬送速度で、例えば0.125mm×0.125mmの画素で画像形成するものとする。
【0139】
発色消色ステーション50における第1の半導体レーザ51は、発色用の第1のレーザビーム51aを出力する。この第1のレーザビーム51aは、発色用レーザ集光光学系53、偏光ビームスプリッタ54を通って2次元走査系60に入射する。これと共に、第2の半導体レーザ52は、消色用の第2のレーザビーム52aを出力する。この第2のレーザビーム52aは、消色用レーザ集光光学系56、偏光ビームスプリッタ54を通って2次元走査系60に入射する。
【0140】
この2次元走査系60では、2次元ガルバノミラー61を高速走査回転軸62により回転方向ωxに高速で回転させて第1のレーザビーム51a及び第2のレーザビーム52aをX方向に高速走査し、これと同時に、2次元ガルバノミラー61を低速走査回転軸63により回転方向ωyに低速で回転させて第1のレーザビーム51a及び第2のレーザビーム52aをY方向に低速走査する。これにより、2次元ガルバノミラー61は、高速走査回転軸62と低速走査回転軸63との2軸の回転運動の組合せにより記録媒体2上の有効画像形成範囲に発色用レーザビーム55と消色用レーザビーム57とをラスター走査する。
【0141】
この2次元ラスター走査は、例えば、Y方向への低速走査を一定速度、X方向への高速走査を一定速度又はサインカーブに従う速度分布で行い、XY方向の両走査とも2次元ガルバノミラー61による走査を想定し往路のみで露光する。X方向の高速走査で往路のみの露光を採用したのは、記録媒体2の温度変化速度をできるだけ一定になるようにするためである。発色用レーザビーム55と消色用レーザビーム57との光出力を制御する場合には、往復での露光も可能である。
【0142】
又、2次元ラスター走査するとき、第1の半導体レーザ51から出力された第1のレーザビーム51aは、発色用レーザ集光光学系53により記録媒体2上に合焦される。これにより、第1のレーザビーム51aは、所定の直径を有する発色用レーザビーム55として記録媒体2上に照射され、記録媒体2を露光する。これと共に、第2の半導体レーザ52から出力された第2のレーザビーム52aは、消色用レーザ集光光学系56により記録媒体2上に合焦される。これにより、第2のレーザビーム52aは、所定の直径を有する消色用レーザビーム57として記録媒体2上に照射され、記録媒体2を露光する。
【0143】
すなわち、2次元走査系60は、第1のレーザビーム51aを記録媒体2上に走査した後、上記図5に示すように記録媒体2の温度が消色可能温度帯域S内又は消色可能温度帯域S外で、かつ当該消色可能温度帯域Sの下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下した時点で、第2のレーザビーム52aを記録媒体2上に走査する。
しかるに、2次元走査系60は、第1の半導体レーザ51から出力された第1のレーザビーム51aを発色用レーザビーム55として記録媒体2上に走査して当該記録媒体2を一様に発色させ、この後、第2の半導体レーザ52から出力された第2のレーザビーム52aを消色用レーザビーム57として記録媒体2上に走査して当該記録媒体2を画像様に消色する。
【0144】
本実施の形態における発色工程から消色工程の記録媒体2上の温度及びの濃度の変化は、上記第1の実施の形態における発色工程から消色工程の説明で用いた図5に示す温度・濃度曲線−時間の関係図における温度−時間曲線Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Te−Te−Te−Teと、濃度−時間曲線Dc−Dc−Dc−De−De−Deと基本的に同一である。但し、画像形成速度の変更に対応して温度Tc−Tc−Tc間の発色前の加熱所要時間は、例えば64〜160μsec程度になる。又、温度Tc−Te間の消色前加熱工程と消色加熱工程との総所要時間は、例えば2〜2.6μsec程度になる。
【0145】
このように上記第3の実施の形態によれば、発色系としての第1の半導体レーザ51と、消色系としての第2の半導体レーザ52とを有し、2次元走査系60によって第1の半導体レーザ51から出力された第1のレーザビーム51aを記録媒体2上に走査して当該記録媒体2を一様に発色させ、かつ第2の半導体レーザ52から出力された第2のレーザビーム52aを記録媒体2上に走査して当該記録媒体2を画像様に消色する。これにより、上記第1の実施の形態の効果と同様の効果を奏することは言うまでもなく、さらに次のような効果を奏することができる。
【0146】
記録媒体2の表面のうねりに対応可能である。すなわち、第3の実施の形態では、光学系の横倍率を例えば10程度にとることができるので、比較的大きな焦点深度得ることができる。これにより、コンテナ40の表面に貼り付けられた記録媒体2のような表面のうねりの大きいのもに対しても合焦することが容易である。さらに、発色及び消色用光源がコンパクトに纏めることができるので、発色用レーザ集光光学系53及び消色用レーザ集光光学系56の各位置を制御してオートフォーカス機能を付加することが容易であり、より大きな記録媒体2の表面のうねりに対応できる。
【0147】
移動する記録媒体2に対応可能である。すなわち、発色用レーザ集光光学系53及び消色用レーザ集光光学系56と記録媒体2との間の距離を長くすることができるので、記録媒体2の表面に対する2次元走査が可能である。これにより、移動するコンテナ40の表面に貼り付けられた記録媒体2に対しても、2次元走査の速度をコンテナ40の移動速度に追随させ、反射ミラーからの距離の変化にオートフォーカス機能で対応することにより、コンテナ40を移動したままで、記録媒体2の画像等のデータの書き換えが可能になる。これは物流関係において、本装置の用途を画期的に広めることができる。
【0148】
なお、2次元走査系60としては、例えば1次元ガルバノミラーを2つ使用したものも使用可能である。
【0149】
次に、本発明の第4の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図1及び図2と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図11は画像書換装置の基本構成図を示し、図12は同装置の概略斜視図を示す。本装置は、冷却系としての片側冷却モジュール70を備える。この片側冷却モジュール70は、上記第1及び第2の実施の形態における発色ステーション10のライン状加熱手段、特にハロゲンランプ11を光源とした一様加熱手段に対して発色冷却工程における記録媒体2における加熱された部分の自然冷却を補完するための強制冷却手段として機能し、より確実な発色を実現させる。すなわち、片側冷却モジュール70は、発色ステーション10により発色可能温度帯域Sに加熱された記録媒体2の部分を強制的に冷却するもので、記録媒体2に対して冷却媒体として例えば冷却用空気71を噴出する例えば1つの冷却ノズル72を備える。
【0150】
この冷却ノズル72は、光バー15と消色ステーション20の露光位置との間で、かつ光バー15から所定の間隔をおいて設けられている。この冷却ノズル72は、記録媒体2上に対してライン露光方向Xの全幅に渡って冷却用空気71を噴出し、光バー15による発色前加熱工程に引き続く発色冷却工程を強制冷却で制御する。
【0151】
又、片側冷却モジュール70は、発色冷却工程に引き続く消色ステーション20の消色冷前却工程に対しても強制冷却を施し、消色加熱開始温度の安定的を実現する。又、ライン露光方向Xの関係は、噴出した冷却用空気71の気流のライン露光方向Xへの広がり、又ライン露光方向Xへの熱伝導を考慮して、
有効冷却幅W>有効露光幅W=有効発色幅W
に設定されている。
【0152】
具体的に、片側冷却モジュール70は、冷却ノズル72に対して空気供給系配管73を介して給気ポンプ74が接続されている。この給気ポンプ74は、できるだけ低温の空気を取り入れるために本装置の内部のからではなく直接外気を取り込み、取り込んだ空気を所定の圧力まで加圧し、冷却用空気71として空気供給系配管73を通して冷却ノズル72に供給する。
【0153】
発色ステーション10は、ハロゲンランプハウス75によって囲まれている。このハロゲンランプハウス75は、上端及び下端がそれぞれ開口されている。ハロゲンランプハウス75の上端には、吸引機構としての排気ファン76が設けられている。この排気ファン76は、記録媒体2に対して噴出された冷却用空気71を吸引し、発色ステーション10による記録媒体2の加熱部分への直接の冷却用空気71の流入を防止する。又、排気ファン76は、記録媒体2に対して噴出された冷却用空気71を発色ステーション10内に通して当該発色ステーション10を冷却しながら吸引する。
【0154】
冷却ノズル72から噴出された冷却用空気71の気流は、発色前加熱工程後の記録媒体2上に衝突し、記録媒体2を強制冷却する。このとき冷却用空気71の気流77は、光バー15の露光部位まで到達して当該露光部位を冷却しないようする必要がある。このため、冷却ノズル72の付近から光バー15の露光部位にかけての所定エリアは、排気ファン76による周囲気圧より負圧状態になっている。これにより、冷却用空気71の気流77は、光バー15の露光部位に到達する前に、ハロゲンランプハウス75内に吸引される。
【0155】
冷却用空気71の気流77は、ハロゲンランプハウス75内を下端から上端に向かって流れ、ハロゲンランプ用集光光学系14及びハロゲンランプ11を冷却し、この後、排気ファン76によりハロゲンランプハウス75の上端から本装置の外部に排出される。
【0156】
ハロゲンランプ用集光光学系14に光学レンズを使用した場合、ハロゲンランプ11からの赤外線放射で光学レンズの温度が上昇し、歪みが発生する。ハロゲンランプハウス75内を流れる気流77は、ハロゲンランプ用集光光学系14の光学レンズの温度上昇を防止して良好な集光特性を維持する。又、ハロゲンランプ11は最高使用温度が規定されているので、ハロゲンランプハウス75内に流れる気流77によりハロゲンランプ11を冷却する。なお、ハロゲンランプ用集光光学系14及びハロゲンランプ11の冷却に必要な空気流入量を確保するために、冷却ノズル72から噴出された冷却用空気71だけではなく、本装置の外部及び内部から取り入れた空気を例えばハロゲンランプハウス75内に取り込りこむことが可能である。
【0157】
冷却ノズル72から噴出された冷却用空気71は、温度が低いほど記録媒体2から多くの熱を奪うことが可能である。これにより、冷却用空気71の温度は、低くすることが必要である。給気ポンプ74により十分に加圧された空気は、冷却ノズル72から噴出する際に断熱膨張によりその温度が低減する。冷却用空気71の温度を低くするためには、例えば給気ポンプ74から冷却ノズル72に至る空気供給系配管73等を含む経路、又は冷却ノズル72の外壁に周知のペルチェ素子を使用した空気冷却手段を使用することが可能である。
【0158】
片側冷却モジュール70による記録媒体2の冷却速度の制御は、冷却ノズル72の開口量、給気ポンプ74による冷却ノズル72内の圧力、排気ファン76の回転数等の値を変更することによって行う。本装置の制御システムは、例えば、本装置の周囲温度、本装置の内部温度、記録媒体2の表面温度等を測定し、これら本装置の周囲温度、本装置の内部温度、記録媒体2の表面温度等の変化に応じて冷却ノズル72の開口量、給気ポンプ74による冷却ノズル72内の圧力、排気ファン76の回転数等の値を自動制御する。
【0159】
一方、記録媒体2は、上記図3に示すように可逆性感熱記録層2−2を上記第1の実施の形態における可逆性感熱記録層2−2と同一とし、かつ熱伝導率の低い支持体2−1を用いる。又は、記録媒体2は、可逆性感熱記録層2−2と支持体2−1の界面に低熱伝導率の断熱層を形成したものを用いる。これにより、記録媒体2は、発色前加熱工程においてより小さな露光エネルギーによって可逆性感熱記録層2−2を発色に必要な温度に上昇させることができる。このような断熱型の記録媒体2は、可逆性感熱記録層2−2から支持体2−1への熱移動量が少なく自然冷却によって発色に必要な冷却速度を得られない。
【0160】
上記片側冷却モジュール70による記録媒体2の強制冷却は、発色前加熱工程において記録媒体2の全体に熱が移動して自然冷却により発色に必要な冷却速度が得られなくなったために採用された方法である。従って、断熱型の記録媒体2に対して片側冷却モジュール70による強制冷却を使用すれば、より小さな露光エネルギーにより発色が可能になる。これにより、発色加熱源の電力消費量の低減、或いは画像形成速度の高速化の達成に大きく寄与できる。
【0161】
熱伝導率の低い支持体2−1及び可逆性感熱記録層2−2と支持体2−1との界面に設定可能な断熱層としては、例えば、紙、各種不織布、発泡ポリェチレンテレフタレート、多孔性膜(ポリエチレン、フツ素樹、セルロースアセテト)等からなる多孔性膜等、或いはこれらにポリェチレンテレフタレート、ポリプロポレン等をラミネートしたのもが使用できる。
【0162】
又、保護層3−2は、上記第1の実施の形態で開示したのもを使用可能であるが、保護層3−2自体の熱容量を小さくしかつ熱移動量を多くするために、保護層3−2の厚みが薄いものを選択する。
また、冷却ノズル72から噴出された冷却用空気71との熱伝達を向上するために、保護層3−2に微小な凹凸を設けて表面積を大きくする方法がある。この場合、熱容量や熱移動量とのバランスを考慮して採用する。
【0163】
次に、片側冷却モジュール70による強制冷却が必要な場合について説明する。
ハロゲンランプ11に対するハロゲンランプ用集光光学系14を、記録媒体2のうねり等に対応して発色ステーション10の光バー15の記録媒体2上での焦点深度を深く設定する場合、又は安価なハロゲンランプ用集光光学系14を用いて光バー15の集光幅を広く設定する場合、光バー15の媒体搬送方向Yの露光長は1mmを超え、発色前加熱工程での露光時間が長くなる。
【0164】
この場合、熱が露光部分から記録媒体2全体に移動し、自然冷却により発色に必要な冷却速度が得られなくなる。すなわち、発色前加熱工程での露光時間が長くなると、記録媒体2内の支持体2−1の全体が加熱され、可逆性感熱記録層2−2と支持体2−1との温度差がなくなる。これにより、発色冷却工程での可逆性感熱記録層2−2の自然冷却速度が発色する温度の速度変化の条件を満たさなくなる。
【0165】
このときの自然冷却速度は、記録媒体2の水平方向(面方向)の熱伝導を無視できるとすると、保護層2−2及び支持体2−1の表面から周囲の空気層に対する熱伝達が支配的になる。支持体2−1は、記録媒体搬送装置1上に接しているので、支持体2−1と記録媒体搬送装置1との界面には空気層が存在していると見なせる。この状態での冷却速度は、支持体2−1全体が加熱されない状態に比較してかなり小さい。
【0166】
発色前加熱工程における露光時間を長くできると、発色ステーション10のハロゲンランプ11の出力を同一の媒体搬送速度(画像形成速度)に対してより小さくできる。例えば幅100mmの画像を例えば76mm/sec程度の媒体搬送速度で画像形成する場合、光バー15の媒体搬送方向Yの露光長を例えば1.25mmとすると、ハロゲンランプ11は、例えば消費電力25〜50W程度のもので十分である。
【0167】
次に、上記の如く構成された装置による画像等のデータの書き換えの動作について上記第1の実施の形態と相違するところを説明する。
発色ステーション10において、上記第1の実施の形態と同様に、ハロゲンランプ11が光線を出射すると、この光線は、反射膜13で反射した光線を含めてハロゲンランプ用集光光学系14に入射する。このハロゲンランプ用集光光学系14は、ハロゲンランプ11から出射された光線をレンズにより記録媒体2上に合焦し、媒体搬送方向Yにおける幅が狭いライン状の光バー15に形成して記録媒体2上をライン露光する。これにより、記録媒体2は、所定の有効発色幅Wの全幅において発色する。
【0168】
この状態で、片側冷却モジュール70の給気ポンプ74は、例えば本装置の外部から直接外気を取り込み、取り込んだ空気を所定の圧力まで加圧し、冷却用空気71として空気供給系配管73を通して冷却ノズル72に供給する。この冷却ノズル72は、記録媒体2上に対してライン露光方向Xの全幅に渡って冷却用空気71を噴出し、光バー15による発色前熱工程に引き続く発色冷却工程を強制冷却で制御する。
【0169】
一方、排気ファン76は、記録媒体2に対して噴出された冷却用空気71を吸引し、発色ステーション10による記録媒体2の加熱部分への直接の冷却用空気71の流入を防止する。又、排気ファン76は、記録媒体2に対して噴出された冷却用空気71を発色ステーション10内に通して当該発色ステーション10を冷却しながら吸引する。
【0170】
しかるに、冷却ノズル72から噴出された冷却用空気71の気流は、発色前加熱工程後の記録媒体2上に衝突し、記録媒体2を強制冷却する。冷却用空気71の気流77は、ハロゲンランプハウス75内を下端から上端に向かって流れ、ハロゲンランプ用集光光学系14及びハロゲンランプ11を冷却し、この後、排気ファン76によりハロゲンランプハウス75の上端から本装置の外部に排出される。
【0171】
本実施の形態における発色工程から消色工程の記録媒体2上の温度及びの濃度の変化は、上記第1の実施の形態における発色工程から消色工程の説明で用いた図5に示す温度・濃度曲線−時間の関係図における温度−時間曲線Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Te−Te−Te−Teと、濃度−時間曲線Dc−Dc−Dc−De−De−Deと基本的に同一である。
【0172】
なお、片側冷却モジュール70による強制冷却は、発色冷却工程である最高温度からの温度曲線Tc−Tc−Tc(150℃)に示す温度下降に対して作用する。さらに、片側冷却モジュール70による強制冷却は、消色冷前却工程Tc−Tc(115℃)に対しても有効である。すなわち、片側冷却モジュール70は、発色ステーション10により発色可能温度帯域Sに加熱された記録媒体2の部分を強制的に冷却し、ハロゲンランプ11により加熱された記録媒体2の部分の自然冷却を補完し、より確実な発色を実現する。
【0173】
このように上記第4の実施の形態によれば、発色ステーション10により発色可能温度帯域Sに加熱された記録媒体2の部分を強制的に冷却する片側冷却モジュール70を設けた。これにより、ハロゲンランプ11により加熱された記録媒体2の部分の自然冷却を補完して確実な発色を実現できる。これにより、発色前加熱工程での長時間露光時間に対応でき、発色ステーション10のハロゲンランプ用集光光学系14の焦点深度を深く設定できる。又は、ハロゲンランプ11の出力を同一の媒体搬送速度(画像形成速度)に対してより小さくできる。
【0174】
発色冷却工程における発色温度の変化する速度の条件は、発色に対して必須条件である。又、消色冷前却工程における最終温度である消色加熱開始温度は、本装置により達成しようとする画像形成用光源の低出力化又は画像形成速度の向上に対する重要な点である。本装置においては、周囲温度、装置の内部温度、記録媒体2の温度は、使用環境条件によって変換しやすい値である。これらの温度条件や記録媒体2の温度に関連する状態値、例えば比熱、熱伝導率厚さ、表面積等は、発色冷却工程や消色冷前却工程に大きな影響を与える。
従って、これらの温度等を自動測定すれば、片側冷却モジュール70による強制冷却により冷却速度を自由に制御でき、発色温度変化速度や消色加熱開始温度を常に最適に保つことができ、本装置の性能のロバスト性を向上できる。
【0175】
断熱型の記録媒体2に対して強制冷却を使用すれば、より小さな露光エネルギーによって発色が可能になり、発色加熱源の電力消費量の低減、又は画像形成速度の高速化の達成に大きく寄与できる。
【0176】
冷却ノズル72から高圧の冷却用空気71を記録媒体2上に噴出するので、この噴出される冷却用空気71によって記録媒体2の面上に静電気等で付着した異物を吹き飛ばして除去できる。これにより、記録媒体2の長寿命化に寄与できる。さらに発色ステーション10による一様露光、及び消色ステーション20による画像様の露光の際に異物による遮光を除去できる。これにより、記録媒体2に形成される画質の向上にも寄与できる。
【0177】
上記第4の実施の形態は、次のように変形してもよい。
片側冷却モジュール70は、記録媒体2に対して接触してもよい。例えば、接触型の片側冷却モジュール70としては、例えば表面をフッ素樹脂コーティングしたアルミニウム製の中空冷却ローラ、又は内部に冷却金属バーを内蔵しかつ表面をフッ素樹脂コーティングしたポリイミド製の移動可能な無端状耐熱性フィルム等であってもよい。これら中空冷却ローラ又は無端状耐熱性フィルムは、記録媒体2からの熱移動を受けて温度上昇する。これにより、記録媒体2の加熱部分の熱が中空冷却ローラ又は無端状耐熱性フィルムに移動するので、記録媒体2の加熱部分は、冷却される。
【0178】
中空冷却ローラ及び冷却金属バー自体は、自然冷却、周知の強制空冷、水冷、ペルチェ素子、ヒートポンプ等の周知の冷却手段により冷却される。これら中空冷却ローラ及び無端状耐熱性フィルムは、回転又は移動して記録媒体2の加熱部分を冷却する。これにより、中空冷却ローラ又は無端状耐熱性フィルムと記録媒体2の表面との速度差はゼロであり、記録媒体2の表面のダメージは小さい。
【0179】
ところで、記録媒体2に対する画像等のデータの書き換えの寿命の長寿命化からすると、発色ステーション10によるライン状の冷却としては、非接触で行うのが望ましい。この発色ステーション10によるライン状の冷却は、気体若しくは液体によるのが有効である。上記第1及び第2の実施の形態のように記録媒体搬送装置1を必要とする場合には、記録媒体1の表面に接する搬送ローラ等が必要になる。この場合には、記録媒体2に接触して冷却する接触冷却手段に記録媒体搬送手段を兼ねさせ、記録媒体2の表面に対するダメージを本装置全体で最小にする方法を採用するのがよい。
【0180】
消色ステーション20は、上記第1の実施の形態におけるレーザビーム21aの走査によるものか、又は上記第2の実施の形態におけるレーザビームアレイ34の照射によるもののいずれでもよい。
【0181】
次に、本発明の第5の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図11及び図12と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図13は画像書換装置の基本構成図を示し、図14は同装置の概略斜視図を示す。本装置は、冷却系としての両側冷却モジュール80を備える。この両側冷却モジュール80は、上記第1及び第2の実施の形態における発色ステーション10のライン状加熱手段、特にハロゲンランプ11を光源とした一様加熱手段に対して発色冷却工程における記録媒体2における加熱された部分の自然冷却を補完する。この両側冷却モジュール80の基本構成は、上記第4の実施の形態における片側冷却モジュール70と同一であるので、その相違点のみ説明する。
【0182】
両側冷却モジュール80は、前方冷却ノズル81と、冷却ノズル(以下、後方冷却ノズルと称する)72とを備える。これら前方冷却ノズル81と後方冷却ノズル72とには、空気供給系配管(以下、両側冷却用空気供給系配管と称する)73を介して給気ポンプ(以下、両側冷却用給気ポンプと称する)74が接続されている。この両側冷却用給気ポンプ74は、空気を取り入れ、この取り入れた空気を所定の圧力まで加圧し、両側冷却用空気供給系配管73を通して前方冷却ノズル81と後方冷却ノズル72とに供給する。これにより、前方冷却ノズル81は、記録媒体2上に対してライン露光方向Xの全幅に渡って前方冷却用空気82を噴出する。冷却ノズル72は、記録媒体2上に対してライン露光方向Xの全幅に渡って冷却用空気71を噴出する。
【0183】
前方冷却ノズル81と後方冷却ノズル72とは、発色ステーション10における光バー15の記録媒体30上の露光位置を挟んで、この露光位置の上流側と下流側との両側にそれぞれ設置されている。前方冷却ノズル81から噴出された前方冷却用空気82の気流83は、記録媒体2を強制冷却する。後方冷却ノズル72から噴出された冷却用空気(以下、後方冷却用空気と称する)71の気流77も記録媒体2を強制冷却する。
【0184】
前方冷却用空気82の気流83及び後方冷却用空気71の気流77は、それぞれ光バー15の露光部位まで到達し、この露光部位を冷却しないようする必要がある。しかるに、前方冷却ノズル81と後方冷却ノズル72との付近から光バー15の露光部位にかけての所定エリアは、排気ファン(以下、両側冷却用排気ファンと称する)76により周囲の気圧よりも負圧状態になっている。前方冷却用空気82の気流83及び後方冷却用空気71の気流77は、光バー15の露光部位に到達する前に、ハロゲンランプハウス(以下、両側冷却用ハロゲンランプハウスと称する)75内に吸引される。両側冷却時ハロゲンランプハウス75内の各気流83、77は、ハロゲンランプ用集光光学系14及びハロゲンランプ11を冷却した後、両側冷却用排気ファン76により本装置の外部に排出される。
【0185】
なお、両側冷却時ハロゲンランプハウス75内の各気流83、77は、前方冷却ノズル81と後方冷却ノズル72との2つノズルから噴出される前方冷却用空気82の気流83と後方冷却用空気71の気流77とから成る。これにより、両側冷却用排気ファン76及び両側冷却用ハロゲンランプハウス75は、片側冷却モジュール70の使用時と異なる構造又は条件設定になっている。同様に両側冷却用空気供給系配管73及び両側冷却用給気ポンプ74も片側冷却モジュール70の使用時と異なる構造又は条件設定になっている。
【0186】
次に、両側冷却モジュール80による両側強制冷却が必要な場合について説明する。
発色前加熱工程における露光時間が長くなると、記録媒体2の水平方向(面方向)の熱伝導が無視できなくなる。このような条件下では、発色ステーション10における光バー15の記録媒体2上の露光位置に対して上流側と下流側との両方向に記録媒体2の内部を通って熱が伝導する。下流側に関しては、上記第4の実施の形態における片側冷却モジュール70と同様に、後方冷却ノズル72から噴出される後方冷却用空気71によって記録媒体2が強制冷却され、発色冷却工程での冷却速度が確保できる。
【0187】
一方、上流側に関しては、前方冷却ノズル81が無いとすると、記録媒体2を強制冷却する手段が無くなり、記録媒体2内の温度が上昇する。このため、発色ステーション10における発色条件が変化する。又、記録媒体2内の温度上昇は、後方冷却ノズル72による冷却にも影響を与える。例えば、記録媒体2内の総熱量が後方冷却ノズル72による除去熱量を上回った場合、十分な冷却速度を確保できなくなる。
【0188】
従って、第5の実施の形態では、前方冷却ノズル81と後方冷却ノズル72とを発色ステーション10における光バー15の記録媒体2上の露光位置を挟んで上流側と下流側との両方向に設置し、光バー15の記録媒体2上の露光位置から上流側と下流側との両方向移動する熱を空気流による強制冷却によって吸収する。
【0189】
次に、上記の如く構成された装置による画像等のデータの書き換えの動作について上記第4の実施の形態と相違するところを説明する。
両側冷却モジュール80の両側冷却用給気ポンプ74は、例えば本装置の外部から直接外気を取り込み、取り込んだ空気を所定の圧力まで加圧し、冷却用空気71として両側冷却用空気供給系配管73を通して前方冷却ノズル81と後方冷却ノズル72とに供給する。これにより、後方冷却ノズル72は、記録媒体2上に対してライン露光方向Xの全幅に渡って冷却用空気82を噴出し、記録媒体2を強制冷却する。前方冷却ノズル81は、記録媒体2上に対してライン露光方向Xの全幅に渡って冷却用空気71を噴出し、光バー15による発色前熱工程に引き続く発色冷却工程を強制冷却で制御する。
【0190】
一方、両側冷却用排気ファン76は、記録媒体2に対して噴出された冷却用空気82及び冷却用空気71を吸引し、発色ステーション10による記録媒体2の加熱部分への直接の冷却用空気82及び冷却用空気71の流入を防止する。又、両側冷却用排気ファン76は、記録媒体2に対して噴出された冷却用空気82及び冷却用空気71を発色ステーション10内に通して当該発色ステーション10を冷却しながら吸引する。
【0191】
しかるに、前方冷却ノズル81と後方冷却ノズル72とからそれぞれ噴出された冷却用空気82と冷却用空気71との気流83、77は、発色前加熱工程後の記録媒体2上に衝突し、記録媒体2を強制冷却する。冷却用空気82と冷却用空気71との気流83、77は、両側冷却用ハロゲンランプハウス75内を下端から上端に向かって流れ、ハロゲンランプ用集光光学系14及びハロゲンランプ11を冷却し、この後、両側冷却用排気ファン76により両側冷却用ハロゲンランプハウス75の上端から本装置の外部に排出される。
【0192】
本実施の形態における発色工程から消色工程の記録媒体2上の温度及びの濃度の変化は、上記第1の実施の形態における発色工程から消色工程の説明で用いた図5に示す温度・濃度曲線−時間の関係図における温度−時間曲線Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Tc−Te−Te−Te−Teと、濃度−時間曲線Dc−Dc−Dc−De−De−Deと基本的に同一である。なお、両側冷却モジュール80による強制冷却は、発色冷却工程である最高温度からの温度曲線Tc−Tc−Tc(150℃)に示す温度下降に対して作用する。さらに、両側冷却モジュール80による強制冷却は、消色冷前却工程Tc−Tc(115℃)に対しても有効である。すなわち、両側冷却モジュール80は、発色ステーション10により発色可能温度帯域Sに加熱された記録媒体2の部分を強制的に冷却し、ハロゲンランプ11により加熱された記録媒体2の部分の自然冷却を補完し、より確実な発色を実現する。
【0193】
このように上記第5の実施の形態によれば、両側冷却モジュール80の前方冷却ノズル81と後方冷却ノズル72とからそれぞれ前方冷却用空気82、冷却用空気71を噴出するようにした。これにより、発色前加熱工程における露光時間が長くなっても、発色ステーション10における光バー15の露光位置における記録媒体2の温度を安定化し、発色冷却工程における冷却速度を安定化し、発色工程の温度及びその温度変化の速度条件を一定に保つことができる。さらに、消色ステーション20による消色冷前却工程における冷却速度を安定化でき、レーザビーム21aの露光位置における消色加熱開始温度を安定化し、消色工程の温度及びその温度変化の速度条件を一定に保つことができる。
【0194】
前方冷却ノズル84を使用せずに、温度センサによって記録媒体の温度を感知し、これに連動してハロゲンランプ11の出力を低下させることが可能である。この方式によっても発色ステーション10における光バー15の露光位置における記録媒体2の温度を安定的に制御できる。
【0195】
上記第5の実施の形態は、次のように変形してもよい。例えば、両側冷却モジュール80による強制冷却手段は、例えば上記第4の実施の形態で説明したのと同様に、接触型の両側冷却モジュール80として、例えば表面をフッ素樹脂コーティングしたアルミニウム製の中空冷却ローラ、又は内部に冷却金属バーを内蔵しかつ表面をフッ素樹脂コーティングしたポリイミド製の移動可能な無端状耐熱性フィルム等であってもよい。この場合、光バー15の記録媒体30上の露光位置を挟んで上流側と下流側両方向に中空冷却ローラ又は無端状耐熱性フィルム等を設置することが可能である。
【0196】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】本発明に係る画像書換装置の第1の実施の形態を示す基本構成図。
【図2】同装置の概略斜視図。
【図3】同装置に使用する記録媒体を示す概略断面図。
【図4】通常の発色工程から消色工程までの流れを記録媒体の特性に基づいた温度・濃度と時間との関係図。
【図5】同装置による発色工程から消色工程までの流れを記録媒体の特性に基づいた温度・濃度と時間との関係図。
【図6】同装置による発色工程から消色工程までの流れを記録媒体の特性に基づいた温度・濃度と時間との関係の比較例を示す図。
【図7】本発明に係る画像書換装置の第2の実施の形態を示す基本構成図。
【図8】同装置の概略斜視図。
【図9】本発明に係る画像書換装置の第3の実施の形態を示す基本構成図。
【図10】同装置の概略斜視図。
【図11】本発明に係る画像書換装置の第4の実施の形態を示す基本構成図。
【図12】同装置の概略斜視図。
【図13】本発明に係る画像書換装置の第5の実施の形態を示す基本構成図。
【図14】同装置の概略斜視図。
【符号の説明】
【0198】
1:記録媒体搬送装置、2:光熱変換型可逆性感熱記録媒体(記録媒体)、2a:前記録画像、2b:一様発色画像、2c:記録画像、2−1:支持体、2−2:可逆性感熱記録層、2−3:保護層、3a,3b:搬送ローラ、4:搬送ベルト、10:発色ステーション、11:ハロゲンランプ、12:フィラメント、13:反射膜、14:ハロゲンランプ用集光光学系、15:光バー、20:消色ステーション、21:半導体レーザ、21a:レーザビーム、22:レーザ用集光光学系、23:ポリゴンミラー、24:ポリゴンモータ、30:レーザアレイモジュール、31:半導体レーザアレイ、32:レーザアレイ用集光光学系、33:単位レーザビーム、34:レーザビームアレイ、35:レーザレイドライバ、40:コンテナ、50:発色消色ステーション、51:第1の半導体レーザ、51a:発色用の第1のレーザビーム、52:第2の半導体レーザ、52a:第2のレーザビーム、53:発色用レーザ集光光学系、54:偏光ビームスプリッタ、55:レーザビーム、56:消色用レーザ集光光学系、57:レーザビーム、60:2次元走査系、61:2次元ガルバノミラー、62:高速走査回転軸、63:低速走査回転軸、70:片側冷却モジュール、71:冷却用空気(後方冷却用空気)、72:冷却ノズル(後方冷却ノズル)、73:空気供給系配管(両側冷却用空気供給系配管)、74:給気ポンプ(両側冷却用給気ポンプ)、75:ハロゲンランプハウス、76:排気ファン(両側冷却用排気ファン)、77:冷却用空気の気流、80:両側冷却モジュール、81:前方冷却ノズル、82:前方冷却用空気、83:前方冷却用空気の気流。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温より高い発色可能温度帯域に加熱し所定の冷却速度の冷却によって発色し、かつ常温で発色状態を維持しながら前記発色可能温度帯域よりも低い消色可能温度帯域に加熱すると消色する可逆性感熱記録媒体に対して情報の書き換えを行う画像書換方法において、
前記可逆性感熱記録媒体に対して前記発色可能温度帯域に加熱し、この加熱後の冷却によって前記可逆性感熱記録媒体を一様に発色させる発色工程と、
前記一様に発色した前記可逆性感熱記録媒体の温度が前記消色可能温度帯域内又は前記消色可能温度帯域外でかつ当該消色可能温度帯域の下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下したときに、前記可逆性感熱記録媒体を加熱して前記可逆性感熱記録媒体を前記情報様に消色する消色工程と、
を有することを特徴とする画像書換方法。
【請求項2】
前記消色工程は、前記可逆性感熱記録媒体を加熱して前記消色可能温度帯域内で温度上昇、又は前記消色可能温度帯域の前記下限温度よりも所定温度低い前記温度帯域から前記消色可能温度帯域内へ温度上昇させて前記可逆性感熱記録媒体を前記情報様に消色することを特徴とする請求項1記載の画像書換方法。
【請求項3】
前記消色工程は、前記消色可能温度帯域内で前記可逆性感熱記録媒体を加熱し、前記消色可能温度帯域内で温度変化速度が消色可能な温度変化速度を満たすことにより前記可逆性感熱記録媒体を前記情報様に消色することを特徴とする請求項1記載の画像書換方法。
【請求項4】
前記消色工程による前記可逆性感熱記録媒体に対する加熱時間は、前記発色工程による前記可逆性感熱記録媒体に対する加熱時間よりも短く、
かつ前記消色工程による前記可逆性感熱記録媒体に与える加熱エネルギーは、前記発色工程により前記可逆性感熱記録媒体に与える加熱エネルギーよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1記載の画像書換方法。
【請求項5】
前記可逆性感熱記録媒体は、可逆的に発色及び消色を可能とする感熱記録材料と光エネルギーの照射時に熱を発生する光吸収熱変換材料とをそれぞれ単独又は混合した層から成り、
前記発色工程と前記消色工程とでは、それぞれ前記光エネルギーを前記可逆性感熱記録媒体に照射して非接触で前記加熱を行う、
ことを特徴とする請求項1記載の画像書換方法。
【請求項6】
前記発色工程により前記発色可能温度帯域に加熱された前記可逆性感熱記録媒体を強制的に冷却する冷却工程を有することを特徴とする請求項1記載の画像書換方法。
【請求項7】
常温より高い発色可能温度帯域に加熱し所定の冷却速度の冷却によって発色し、かつ常温で発色状態を維持しながら前記発色可能温度帯域よりも低い消色可能温度帯域に加熱すると消色する可逆性感熱記録媒体に対して情報の書き換えを行う画像書換装置において、
前記可逆性感熱記録媒体に対して前記発色可能温度帯域に加熱し、この加熱後の冷却によって前記可逆性感熱記録媒体を一様に発色させる発色系と、
前記一様に発色した前記可逆性感熱記録媒体の温度が前記消色可能温度帯域内又は前記消色可能温度帯域外でかつ当該消色可能温度帯域の下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下したときに、前記可逆性感熱記録媒体を加熱して前記可逆性感熱記録媒体を前記情報様に消色する消色系と、
を具備することを特徴とする画像書換装置。
【請求項8】
前記消色系は、前記可逆性感熱記録媒体を加熱して前記消色可能温度帯域内で温度上昇、又は前記消色可能温度帯域の前記下限温度よりも所定温度低い前記温度帯域から前記消色可能温度帯域内へ温度上昇させて前記可逆性感熱記録媒体を前記情報様に消色することを特徴とする請求項7記載の画像書換装置。
【請求項9】
前記消色系は、前記消色可能温度帯域内で前記可逆性感熱記録媒体を加熱し、前記消色可能温度帯域内で温度変化速度が消色可能な温度変化速度を満たすことにより前記可逆性感熱記録媒体を前記情報様に消色することを特徴とする請求項7記載の画像書換装置。
【請求項10】
前記消色系は、前記可逆性感熱記録媒体に対する加熱時間を前記発色系による前記可逆性感熱記録媒体に対する加熱時間よりも短く、かつ前記可逆性感熱記録媒体に与える加熱エネルギーを前記発色系により前記可逆性感熱記録媒体に与える加熱エネルギーよりも小さいことを特徴とする請求項7記載の画像書換装置。
【請求項11】
前記可逆性感熱記録媒体は、可逆的に発色及び消色を可能とする感熱記録材料と光エネルギーの照射時に熱を発生する光吸収熱変換材料とをそれぞれ単独又は混合した層から成り、
前記発色系と前記消色系とは、それぞれ前記光エネルギーを前記可逆性感熱記録媒体に照射して非接触で前記加熱を行う、
ことを特徴とする請求項7記載の画像書換装置。
【請求項12】
前記可逆性感熱記録媒体を搬送する搬送機構を備え、
前記発色系は、前記搬送機構による前記可逆性感熱記録媒体の搬送方向の上流側に設けられ、
前記消色系は、前記搬送機構による前記可逆性感熱記録媒体の搬送方向の前記発光系の設置位置よりも下流側に設けられ、
前記発色系と前記消色系との間隔は、少なくとも前記搬送機構による前記可逆性感熱記録媒体の搬送速度と、前記可逆性感熱記録媒体の温度が前記発色系により前記発色可能温度帯域に加熱されてから前記消色可能温度帯域内又は前記消色可能温度帯域外でかつ当該消色可能温度帯域の下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下するまでに要する時間とに基づいて設定される、
ことを特徴とする請求項7記載の画像書換装置。
【請求項13】
前記可逆性感熱記録媒体を搬送する搬送機構を備え、
前記発色系は、前記搬送機構による前記可逆性感熱記録媒体の搬送方向に対して垂直方向のライン状の光エネルギーを前記可逆性感熱記録媒体に照射して前記可逆性感熱記録媒体を一様に発色させる、
前記消色系は、前記搬送機構による前記可逆性感熱記録媒体の搬送方向に対して垂直方向に光エネルギーを走査して前記可逆性感熱記録媒体を前記情報様に消色する、
ことを特徴とする請求項7記載の画像書換装置。
【請求項14】
前記発色系による前記可逆性感熱記録媒体に対する前記ライン状の光エネルギーの前記搬送方向に対する照射角度と、前記消色系による前記可逆性感熱記録媒体に対する前記光エネルギーの前記搬送方向に対する走査角度とは、同一に設定されていることを特徴とする請求項13記載の画像書換装置。
【請求項15】
前記発色系は、前記光エネルギーとして光線を放射するハロゲンランプと、
前記ハロゲンランプから放射された前記光線を前記ライン状の前記光線に成形して前記可逆性感熱記録媒体に照射する集光系と、
を有することを特徴とする請求項13記載の画像書換装置。
【請求項16】
前記消色系は、前記光エネルギーとしてレーザビームを出力する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出力された前記レーザビームを前記可逆性感熱記録媒体の搬送方向に対して垂直方向に走査して前記可逆性感熱記録媒体を前記情報様に消色する走査系と、を有することを特徴とする請求項12記載の画像書換装置。
【請求項17】
前記消色系は、それぞれ前記光エネルギーとしてレーザビームを出力する複数のレーザ素子をライン状に配列して成る半導体レーザアレイと、
前記半導体レーザアレイの前記各レーザ素子から出力された前記各レーザビームを前記ライン状に成形して前記可逆性感熱記録媒体に照射する集光系と、
を有することを特徴とする請求項13記載の画像書換装置。
【請求項18】
前記発色系は、発色用の第1のレーザビームを出力する第1の半導体レーザを有し、
前記消色系は、消色用の第2のレーザビームを出力する第2の半導体レーザを有し、
かつ前記発色系及び前記消色系は、前記第1の半導体レーザから出力された前記第1のレーザビームを前記可逆性感熱記録媒体に走査して前記可逆性感熱記録媒体を一様に発色させ、かつ前記第2の半導体レーザから出力された前記第2のレーザビームを前記可逆性感熱記録媒体に走査して前記可逆性感熱記録媒体を前記情報様に消色する2次元走査系を有し、
前記2次元走査系は、前記第2のレーザビームを前記可逆性感熱記録媒体に走査する前に、前記第1のレーザビームを前記可逆性感熱記録媒体に走査する、
ことを特徴とする請求項7記載の画像書換装置。
【請求項19】
前記2次元走査系は、前記第1のレーザビームを前記可逆性感熱記録媒体に走査した後、前記可逆性感熱記録媒体の温度が前記消色可能温度帯域内又は前記消色可能温度帯域外でかつ当該消色可能温度帯域の下限温度よりも所定温度低い温度帯域内のいずれか一方に低下した時点で前記第2のレーザビームを前記可逆性感熱記録媒体に走査することを特徴とする請求項18記載の画像書換装置。
【請求項20】
前記可逆性感熱記録媒体における前記発色系により前記発色可能温度帯域に加熱された部分を強制的に冷却する冷却系を有することを特徴とする請求項7記載の画像書換装置。
【請求項21】
前記冷却系は、前記可逆性感熱記録媒体に対して冷却媒体を噴出させる少なくとも1つの冷却ノズルを有することを特徴とする請求項20記載の画像書換装置。
【請求項22】
前記可逆性感熱記録媒体を搬送する搬送機構を備え、
前記発色系は、前記搬送機構による前記可逆性感熱記録媒体の搬送方向に対して垂直方向のライン状の光エネルギーを前記可逆性感熱記録媒体に照射して前記可逆性感熱記録媒体を一様に発色させ、
前記冷却ノズルは、前記可逆性感熱記録媒体に照射される前記ライン状の光エネルギーに沿ってライン状に前記冷却媒体を噴出する、
ことを特徴とする請求項21記載の画像書換装置。
【請求項23】
前記冷却ノズルは、前記冷却媒体として冷却用空気を噴出させることを特徴とする請求項21記載の画像書換装置。
【請求項24】
前記可逆性感熱記録媒体に対して噴出された前記冷却媒体を吸引し、少なくとも前記発色系による前記可逆性感熱記録媒体の加熱部分への直接の前記冷却媒体の流入を防止する吸引機構を備えたことを特徴とする請求項21記載の画像書換装置。
【請求項25】
前記吸引機構は、前記可逆性感熱記録媒体に対して噴出された前記冷却媒体を前記発色系内に通して前記発色系を冷却しながら吸引することを特徴とする請求項21記載の画像書換装置。
【請求項26】
前記可逆性感熱記録媒体を搬送する搬送機構を備え、前記冷却ノズルは、前記発色系による前記可逆性感熱記録媒体の加熱部分に対して前記搬送機構による前記可逆性感熱記録媒体の搬送方向の上流側と下流掛側とにそれぞれ設けられる、
ことを特徴とする請求項21記載の画像書換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−96011(P2009−96011A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268177(P2007−268177)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】