説明

画像書込装置

【課題】電子ペーパーの低コスト化に寄与し、また、電子ペーパーへの画像書き込みを簡
単に行うことができる画像書込装置を提供する。
【解決手段】表示面11を境界とし電界が印加されることにより当該電界が被印加された
箇所の表示色が変化するマイクロカプセル1を備えた電子ペーパー10に対して画像を書
き込む画像書込装置20であって、前記電子ペーパー10の表示面11に複数の書込用電
極61を有した書込パネル25が設けられた載置台21と、前記電子ペーパー10の表示
面11の反対側に、書込用電極61と対向する共通電極27Aを有する共通電極パネル2
7が設けられたカバーパネル体22と、前記電子ペーパー10に書き込む画像の画像デー
タVdに基づいて、前記書込用電極61及び共通電極27A間に電位差を生じさせ、前記
電子ペーパー10の表示面11に電界を印加する信号処理部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的に画像の書き込みが可能であり、書き込んだ画像を無電源状態でも一
定期間保持する記録媒体に対する画像の書き込み技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子的に画像の書き込み(記録)が可能で、書き込んだ画像を無電源状態でも一
定期間保持することができる記録媒体が種々開発されており、これらの記録媒体は紙のよ
うに薄型であることから「電子ペーパー」と呼ばれている。
電子ペーパーとしては、表示面を境界として電界を印加することにより当該電界の被印
加部における表示色を変化させて画像を書き込み・表示するものが一般的である。この種
の電子ペーパーは、共に電極が形成された一対の基板間に、例えば情報を表示する表示層
を封止して構成されている。この表示層には、例えば、帯電粒子を封止したマイクロカプ
セル(電気泳動方式)や、2色に塗り分けられた帯電球体又は円柱状素子(ツイストボー
ル方式)、帯電トナー又は電子粉流体(粉体移動方式)、電気化学反応によって色が変化
する材料(エレクトロデポジション方式)などの材料が用いられる。
【0003】
上記のような構成の電子ペーパーに画像を書き込む方式としては、アクティブマトリク
ス方式が広く用いられている。詳述すると、電子ペーパーの一方の基板上には、X軸方向
に延在する導線(「行選択線」と言う)が一定の間隔でY軸方向に並んで設けられ、また
、Y軸方向に延在する導線(「列信号線」と言う)が一定の間隔でX軸方向に並んで設け
られており、さらに、行選択線及び列信号線の各交点に、行選択線の電圧によってオン/
オフ状態が切り替わると共に列信号線に書込電圧が印加されると電界を発生するアクティ
ブ素子がマトリクス状に配置されている。そして、電子ペーパーに内蔵された駆動回路が
書き込み対象の画像に基づいて、行選択線及び列信号線の電圧を変化させて所望の箇所に
電界を発生させることで、その箇所の表示層の表示色が変化し画像が書き込まれる。
【0004】
また近年では、電子ペーパーを搬送部と、搬送部によって搬送されている電子ペーパー
の電極に電気的に接触する接触部と、電子ペーパーの電極が接触部と接触している箇所に
画像を書き込む書き込み部を備えた、プリンタータイプの画像書込装置が提案されている
(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−109937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アクティブマトリクス方式の電子ペーパーの場合、ガラス基板上にアモ
ルファスシリコンなどで形成された薄型のトランジスタであるTFT(薄膜トランジスタ
)がアクティブ素子として使用されており、さらに、各TFTを駆動するための駆動回路
を備える必要がある。したがって、電子ペーパーの構造が複雑化し、さらには高コスト化
及び歩留まりの低下を引き起こしてしまう、という問題がある。
また、電子ペーパーが備える電極に、接触部を接触させて画像を書き込む従来の画像書
込装置においては、電子ペーパーが駆動回路を備える必要がないものの、電子ペーパーの
電極と接触部との接触不良によって書き込み画像が劣化したり、また、電極を備えた電子
ペーパーが必要であるため高コスト化する、という問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、電子ペーパーの低コスト化に寄
与し、また、電子ペーパーへの画像書き込みを簡単に行うことができる画像書込装置を提
供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、表示面を境界とし電界が印加されることにより
当該電界が被印加された箇所の表示色が変化する表示層を備えた電子ペーパーに対して画
像を書き込む画像書込装置であって、前記電子ペーパーの表示面側に複数の第1電極を有
する第1接触体と、前記電子ペーパーの表示面の反対側に、前記第1電極と対向する第2
電極を有する第2接触体と、前記電子ペーパーに書き込む画像の画像データに基づいて、
前記第1電極及び第2電極間に電位差を生じさせ、前記電子ペーパーの表示層に電界を印
加する制御回路とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1接触体及び第2接触体との間に電子ペーパーを挟み込むことで
、第1接触体の第1電極と第2接触体の第2電極との間に発生する電界により、電子ペー
パーの表示面の表示色が変化し画像が書き込まれる。
このように、電子ペーパーを第1接触体及び第2接触体と接触させて電界を印加する構
成であるため、第1接触体及び第2接触体の間に電子ペーパーを挟むだけの簡単な操作で
、表示面の広い範囲にわたり一斉に書き込みを行い、書き込みに要する時間を大幅に短縮
することができる。
また、従来のように、アクティブマトリクス回路や電極などの電気回路要素を電子ペー
パーが備える必要がないため、電子ペーパーの製造コスト、及び、故障率を大幅に下げる
ことが可能となる。
また、現在の印刷紙を電子ペーパーに置き換え、この電子ペーパーをリサイクルして使
用することが可能であり、地球環境に配慮した省資源化が実現可能となる。
【0009】
ここで本発明は、上記発明において、前記制御回路は、前記複数の第1電極と前記第2
電極とのそれぞれの間に同じ方向の電界を発生し、前記電子ペーパーの表示面の表示色を
同一色に変化させることを特徴とする。
この構成によれば、電子ペーパーの表示面の表示色が同一色に変化させられるため、既
に書き込まれていた画像が消去される。これにより、例えば秘密にすべき内容が電子ペー
パーに書き込まれていた場合に、他の画像を書き込まなくとも、簡単に消去することがで
きる。
【0010】
また本発明は、上記発明において、前記制御回路は、前記表示面全体の表示色を同一色
に変化させるときには、前記電子ペーパーに書き込む画像の配色の割合の多い色に、前記
表示面全体の表示色を変化させることを特徴とする。
この構成によれば、電子ペーパーに画像を書き込む際に、表示色を変化させるべき箇所
が減るため、電子ペーパーへの画像の書き込みに要する電力を抑えることができる。
【0011】
また本発明は、上記発明において、前記第2接触体が有する第2電極は、前記第1接触
体が有する第1電極のそれぞれに共通の電極であり、前記制御回路は、前記第1電極の各
々の電位を複数の電位レベルの間で制御し、前記第1及び第2電極の間に発生する電界の
方向を可変することを特徴とする。
この構成によれば、第2電極を1つの電極で構成することが可能であるため、構造の簡
易化が図られると共に、第1電極の電位レベルのみを制御すれば良いため、制御回路の構
成を簡単にすることができる。
【0012】
また本発明は、上記発明において、前記第2接触体には、前記第1接触体が有する第1
電極ごとに対向する位置に前記第2電極がそれぞれ設けられ、前記制御回路は、前記第1
電極、及び、この第1電極と対向する第2電極ごとに、第1及び第2電極間に発生する電
界の方向を可変することを特徴とする。
この構成によれば、第1電極と対向する第2電極ごとに、第1及び第2電極間に発生す
る電界の方向を可変するため、電子ペーパーに画像を書き込む際に、表示面の表示色を一
旦同一色に変化させずとも、画像の書き込みを行うことが可能となり、書き込み時間を短
縮することができる。
【0013】
また本発明は、上記発明において、前記第1接触体及び前記第2接触体は、前記第1電
極と、この第1電極に対応する第2電極との相対位置を規制する規制部材を介して連結さ
れていることを特徴とする。
この構成によれば、規制部材により、第1電極に対応する第2電極との相対位置が規制
されるため、第1電極ごとに第2電極を対にして設けた構成において、第1電極と第2電
極との間の位置ズレを防止し、電子ペーパーへの高品位な画像の書き込みを実現すること
ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は本実施形態に係る電子ペーパー10の構成を模式的に示す上面図である。また、
図2は電子ペーパー10の断面図であり、図2(A)は一部断面を示し、図2(B)はそ
の一部を拡大して示す。
電子ペーパー10は、表示層を構成する多数のマイクロカプセル1を偏平かつ透明なフ
ィルム4に敷き詰めて封止して形成されており、全体的に薄型のシート状に形成されてい
る。マイクロカプセル1は、透明樹脂を数ナノメートルオーダーの略球状体に形成したも
のであり、図2に示すように、マイクロカプセル1の中には、透明な絶縁性液体共に、(
+)に帯電した白色粒子3と(−)に帯電した黒色粒子2とが封入されている。上記フィ
ルム4は柔軟性のある樹脂剤などから形成されており、電子ペーパー10にフレキシブル
性を持たせている。
【0015】
上記電子ペーパー10の表面11と背面12との間に電界Eが印加された場合、マイク
ロカプセル1の中の黒色粒子2及び白色粒子3は、それぞれ逆の電位の方向に移動し、表
面11及び背面12の色が変化する。例えば、図2に示すように、表面11から背面12
に向かう電界Eが印加された場合、表面11には(−)に帯電した白色粒子3が集結し、
背面12には(+)に帯電した黒色粒子2が集結する。この結果、表面11の表示色は全
体が白色に変化し、また、背面12の表示色は全体が黒色に変化する。
以下の説明では、電子ペーパー10の表面11を画像が表示される表示面11と便宜的
に定義する。ただし、この電子ペーパー10の構成から明らかなように、表面11に表示
された画像の色を反転させた画像が背面12にも表示され、この背面12を表示面と定義
することも可能である。また、この背面12のフィルム4を着色して余計な表示を隠すよ
うにしても良い。
【0016】
また、電子ペーパー10として、マイクロカプセル1の中に、互いに異なる極性及び色
の粒子を封入した、いわゆる2粒子系の電気泳動方式を説明したが、これに限らず、帯電
粒子として、正負のいずれか1の極性に帯電した着色粒子のみをマイクロカプセル1に封
入した、いわゆる1粒子系の電気泳動方式としても良い。
【0017】
図3は電子ペーパー10に画像を書き込む画像書込装置20の構成を示す図であり、図
4は画像書込装置20の回路構成を示すブロック図である。
画像書込装置20は、図3に示すように、電子ペーパー10が載置される略箱型の載置
台21と、この載置台21に端部がヒンジ結合されて開閉自在に構成された板状のカバー
パネル体22とを有している。
上記載置台21の側面には接続端子部23が設けられ、この接続端子部23には、電子
ペーパー10に書き込む画像データを保持した、例えばホストPC等の外部機器100が
接続される。
【0018】
載置台21の載置面24には、電子ペーパー10に画像を書き込むための電位を発生さ
せる書込用画素50がマトリクス状に配置された書込パネル25が設けられており、この
書込パネル25に対向するカバーパネル体22の対向面26には、少なくとも書込パネル
25を覆う面積の共通電極パネル27が設けられている。
なお、書込パネル25に対する電子ペーパー10の配置位置によって、電子ペーパー1
0の表示面11における画像の書き込み位置が決まるため、電子ペーパー10を画像書込
装置20に挟むときに電子ペーパー10がズレたりすると、電子ペーパー10に対して画
像が斜めに記録されたり、或いは、枠外に切れてしまう場合もある。そこで、これを回避
するために、電子ペーパー10の角部の配置位置の目安を示す目印28が載置面24に設
けられている。なお、電子ペーパー10を載置面24に所定の配置位置に固定する固定機
構を設けても良い。
【0019】
図4に示すように、画像書込装置20は、信号処理部40と上記書込パネル25とに大
別される。このうち信号処理部40は、プリント基板に形成された回路モジュールにより
構成され、書込パネル25とは、FPC(Flexible Printed Circuit)基板等によって接
続されている。
信号処理部40は、書込パネル25を制御するための回路であり、さらに、主制御部4
1、画像データ取得部42、書込用信号生成部43、及び、走査制御部44を備えている
。主制御部41は、信号処理部40の各部を制御するものであり、画像データ取得部42
は、電子ペーパー10に書き込む画像の画像データVdを外部機器100から取得し、書
込用信号生成部43に出力する。書込用信号生成部43は、画像データ取得部42から入
力された画像データVdに基づいて、書込用画素50のそれぞれに加える書込用信号Ve
を生成し、書込パネル25に出力する。走査制御部44は、書込パネル25が書込用信号
Veを書込用画素50のそれぞれに加える際のタイミング信号CLX、CLYを生成し、
次に説明する垂直走査回路53及び水平走査回路54に出力する。
【0020】
書込パネル25は、図4においてX(水平)方向に延在する複数の選択線51と、Y(
垂直)方向に延在する複数の信号線52とを有し、これらの選択線51と信号線52との
交差部分の各々に対応するように書込用画素50が設けられている。
書込用画素50は、図5に示されるように、nチャネル型のTFT(薄膜トランジスタ
)60のソースが信号線52に接続されるとともに、ドレインが書込用電極61に接続さ
れる一方、ゲートが選択線51に接続されている。
【0021】
また、画像書込装置20のカバーパネル体22が閉じられた状態では、全書込用画素5
0の書込用電極61に対向する位置に共通電極パネル27の共通電極27Aが配置される
。共通電極27Aは、カバーパネル体22に設けられた共通電位線65に接続されており
、その電位が一定の電圧Vcomに維持される。
電子ペーパー10を載置台21に載置し、カバーパネル体22を閉じた場合には、書込
パネル25の書込用電極61と、共通電極パネル27の共通電極27Aとの間に電子ペー
パー10が挟持されてマイクロカプセル1が介在することとになる。
【0022】
書込パネル25には、書込用電極61と共通電極27Aとの間の電位差を一定時間保持
するための蓄積容量62が書込用画素50毎に形成されている。この蓄積容量62の一端
は、書込用電極61(TFT60のドレイン)に接続される一方、その他端は選択線51
に接続されている。
【0023】
前掲図4に戻り、マトリクス状に配置された書込用画素50の周辺には、垂直走査回路
53や水平走査回路54などの周辺回路が設けられている。このうち、垂直走査回路53
は、順次排他的に1水平走査期間にわたってHレベルになる選択信号G1、G2、G3、
…を、それぞれ1行目、2行目、3行目…の選択線51に供給するものである。選択信号
G1、G2、G3…がHレベルとなった選択線51においては、その選択線51にゲート
が接続されている各書込用画素50のTFT60がオンする。
水平走査回路54は、1水平走査期間の間に、1列目、1列目、3行目…の信号線52
を順次排他的に選択すると共に、選択している信号線52に書込用信号Veを供給するも
のである。
【0024】
すなわち、選択信号G1、G2、G3…がHレベルとなった選択線51においては、1
列目、1列目、3行目…の信号線52に接続されているTFT60に順次書込用信号Ve
が供給される。書込用信号Veの電圧レベルは、共通電極27Aの電圧Vcomよりも高
いレベル(以下、Hレベル)、電圧Vcomよりも低い電圧(以下、反転Hレベル)、及
び、上記電圧Vcomと同一レベル(以下、Lレベル)の3つのレベルのいずれかを有す
る。
【0025】
Hレベルの書込用信号Veが信号線52に供給された場合、TFT60がオン状態の書
込用画素50では、書込用電極61と共通電極27Aとの間に電位差が生じ、書込用電極
61から共通電極27Aに向かう電界が発生して印加されるため、書込用電極61と共通
電極27Aとの間に介在するマイクロカプセル1では、(−)に帯電した白色粒子3が書
込用電極61に集結し、(+)に帯電した黒色粒子2が共通電極27Aに集結する。
また、反転Hレベルの書込用信号Veが信号線52に供給された場合、TFT60がオ
ン状態の書込用画素50では、書込用電極61と共通電極27Aとの間に電位差が生じ、
共通電極27Aから書込用電極61に向かう電界が発生して印加されるため、書込用電極
61と共通電極27Aとの間に介在するマイクロカプセル1では、(+)に帯電した黒色
粒子2が書込用電極61に集結し、(−)に帯電した白色粒子3が共通電極27Aに集結
する。
一方、Lレベルの書込用信号Veが信号線52に供給された場合、TFT60がオン状
態の書込用画素50では、共通電極27Aと書込用電極61との間に電界が発生しないた
め、書込用電極61と共通電極27Aとの間に介在するマイクロカプセル1内での帯電粒
子の移動は生じない。
【0026】
次いで、本実施形態の動作について説明する。
図6(A)に示すように、先ず、電子ペーパー10の表示面11を載置台21の書込パ
ネル25側に向けて載置し、カバーパネル体22を閉じる。これにより、図6(B)に示
すように、電子ペーパー10は、載置台21とカバーパネル体22との間に挟み込まれ、
電子ペーパー10の表示面11に書込パネル25が面接触し、また、電子ペーパー10の
背面12に共通電極パネル27が面接触することになる。
【0027】
そして、図示しない操作パネルが操作されるなどして、電子ペーパー10への画像の書
き込みが指示されると、画像書込装置20は、先ず、書込パネル25の全書込用画素50
に対してHレベル或いは反転Hレベルの書込用信号Veを供給し、図6(B)に示すよう
に、先ず、電子ペーパー10の表示面11の表示色を白又は黒のいずれか1の色に変化さ
せ、電子ペーパー10に既に書き込まれている画像70Aを消去する(画像消去過程)。
次いで、画像書込装置20は、ホストPC等の外部機器100から入力された画像デー
タVdに基づいて、各書込用画素50のそれぞれに、Hレベル、反転Hレベル或いはLレ
ベルの書込用信号Veを供給し、電子ペーパー10に画像70Bを書き込む(画像書込過
程)。そして、図6(C)に示すように、カバーパネル体22を開けて電子ペーパー10
を取り出すと、画像70Bが記録された電子ペーパー10が得られる。
【0028】
上記画像書込過程について更に詳述すると、画像消去過程において表示面11の表示色
が白色になされている場合には、画像書込過程において、画像書込装置20は、黒色に変
化すべき箇所の書込用画素50に対して反転Hレベルの書込用信号Veを供給し、その他
の書込用画素50に対してはLレベルの書込用信号Veを供給することで、反転Hレベル
の書込用信号Veを供給した書込用画素50にだけ電界を発生させて、その箇所の表示色
だけを黒色に変化させ画像70Bを表示面11に書き込む。
一方、画像消去過程において表示面11の表示色が黒色になされている場合には、画像
書込過程において、画像書込装置20は、白色に変化すべき箇所の書込用画素50に対し
てHレベルの書込用信号Veを供給し、その他の書込用画素50に対してはLレベルの書
込用信号Veを供給することで、Hレベルの書込用信号Veを供給した書込用画素50に
だけ電界を発生させて、その箇所の表示色だけを白色に変化させ画像70Bを表示面11
に書き込む。
【0029】
ここで、画像消去過程において、表示面11の表示色を白又は黒のどちらにするかは次
のように決定される。すなわち、電子ペーパー10に書き込む予定の画像70Bを構成す
る各画素のうち、白画素が黒画素よりも多い場合、すなわち、表示面11において白色面
積が黒色面積よりも大きくなる場合には、画像消去過程において表示面11の表示色を白
色に変化させる。これとは逆に、電子ペーパー10に画像70Bを書き込んだ場合に、表
示面11において黒色面積が白色面積よりも大きくなる場合には、画像消去過程において
表示面11の表示色を黒色に変化させる。
これにより、画像書込過程においては、書込予定の画像70Bを書き込む際には、Hレ
ベル或いは反転Hレベルの書込用信号Veを供給する書込用画素50の画素数が確実に減
るため、書込み時の低消費電力化を図ることができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、画像書込装置20の載置台21及びカバー
パネル体22との間に電子ペーパー10を挟み込むことで、載置台21の書込パネル25
が備える書込用電極61と、カバーパネル体22の共通電極27Aとの間に発生する電界
Eによって電子ペーパー10の表示面11の表示色が変化し画像が書き込まれる。
このように、電子ペーパー10を画像書込装置20に挟むだけの簡単な操作で、表示面
11全体にわたり一斉に書き込みを行うことができ、書き込みに要する時間を大幅に短縮
することができる。
また、従来のように、アクティブマトリクス回路や電極などの電気回路要素を電子ペー
パー10が備える必要がないため、電子ペーパー10の製造コスト、及び、故障率を大幅
に下げることが可能となる。
また、現在の印刷紙を電子ペーパー10に置き換え、この電子ペーパー10をリサイク
ルして使用することが可能であり、地球環境に配慮した省資源化が実現可能となる。
【0031】
また本実施形態によれば、書込パネル25が備える各書込用電極61の電位レベルを共
通にし、それぞれの書込用電極61と共通電極27Aとの間に同じ方向の電界を発生させ
て、電子ペーパー10の表示面11の表示色を同一色に変化させる構成を有しているため
、電子ペーパー10に既に書き込まれていた画像を消去する画像消去装置として用いるこ
とが可能である。これにより、例えば秘密にすべき内容が電子ペーパー10に書き込まれ
ていた場合に、他の画像を書き込まなくとも、簡単に消去することができる。
【0032】
また本実施形態によれば、電子ペーパー10の表示面11に画像70Bを書き込むべく
、表示面11の全体の表示色を同一色に変化させる際、電子ペーパー10に画像70Bを
書き込んだときに、表示面11において白色面積が黒色面積よりも大きくなる場合には、
表示面11の表示色を白色に変化させ、これとは逆に、黒色面積が白色面積よりも大きく
なる場合には表示面11の表示色を黒色に変化させる。
これにより、書込予定の画像70Bを書き込む際には、書込用信号Veを供給して電界
を発生させるべき書込用画素50の画素数が確実に減るため、書込み時の低消費電力化を
図ることができる。
【0033】
また本実施形態によれば、共通電極パネル27の共通電極27Aは、書込パネル25の
各書込用電極61のそれぞれに共通の電極としたため、この共通電極27Aを1つの電極
で構成することが可能となり構造が簡単になる。
また、書込用電極61の各々の電圧レベルのみを制御すれば良いため、信号処理部40
の回路構成を簡単にすることができる。
【0034】
<第2実施形態>
次いで本発明の第2実施形態について説明する。
上述した第1実施形態では、書込用電極61を書込用画素50ごとに個別に設けると共
に、それぞれの書込用電極61に共通に共通電極27Aを設ける構成とした。これに対し
て、本実施形態では、書込用電極61ごとに対向する電極を設ける構成としている。
【0035】
図7は本実施形態に係る画像書込装置120の構成を示す図である。
画像書込装置120は、電子ペーパー10が載置される上記載置台121と、この載置
台121に対して上下に並行移動可能に連結されたカバーパネル体122とを有している
。さらに詳述すると、載置台121からは4本の摺動軸129が載置台121の載置面1
24に対して垂直に延び、これらの摺動軸129にカバーパネル体122が上下方向に摺
動自在に連結されている。これらの摺動軸129によりカバーパネル体22の水平方向の
移動が規制されことになる。
【0036】
載置台121の載置面124には、書込用画素150Aがマトリクス状に配置された書
込パネル125Aが配置され、また、書込パネル125Aに対向するカバーパネル体12
2の対向面126には、書込パネル125Aの書込用画素150A(第1電極)ごとに対
向する書込用画素150B(第2電極)を有した書込パネル125Bが配置されており、
一対の書込用画素150A、150Bごとに個別に電子ペーパー10に電界を印加し、そ
の箇所の表示色を変化できるように構成されている。この構成においては、摺動軸129
によりカバーパネル体22の水平方向の移動が規制されているため、一対の書込用画素1
50A、150Bの水平方向の相対位置にズレが生じることがなく、これにより、高品位
な書き込み画像が維持可能となる。
【0037】
上記載置台121側の書込パネル125A、及び、カバーパネル体122側の書込パネ
ル125Bのそれぞれの構成は、第1実施形態にて説明した書込パネル25と略同一であ
り、各書込用画素150A、150Bが備える書込用電極のそれぞれの電圧レベルを個別
にLレベルとHレベルとの間で2段階に制御可能になっている。
したがって、一対の書込用画素150A、150Bごとに異なる方向の電界を発生させ
ることができるため、電子ペーパー10の表示面全体の表示色を一旦同一の色に変化させ
ずとも、画像の書き込みを行うことが可能となり、書き込み時間を大幅に短縮することが
できる。
【0038】
なお、上述した第1及び第2実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであ
り、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、帯電粒子を封入したマイクロカプセルを表示層に備え
る電気泳動方式の電子ペーパー10について説明したが、本発明の電子ペーパーは、これ
に限らず、表示面を境界とし電界が印加されることにより当該電界が被印された箇所の表
示色が変化する表示層を備えた電子ペーパーであれば、ツイストボール方式、粉体移動方
式、エレクトロデポジション方式などの各種の電子ペーパーを用いて実施することが可能
である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る電子ペーパーの構成を示す図である。
【図2】電子ペーパーの断面図であり、(A)は断面を示し、(B)はその一部を拡大して示す。
【図3】第1実施形態に係る画像書込装置の構成を示す斜視図である。
【図4】画像書込装置の構成を示す回路図である。
【図5】書込パネルの書込用画素の構成を示す回路図である。
【図6】画像書込装置の動作を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る画像書込装置の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1…マイクロカプセル、10…電子ペーパー、11…表示面(表面)、20、120…
画像書込装置、21、121…載置台、22…カバーパネル体、24、124…載置面(
接触面)、25…書込パネル(第1接触体)、26、126…対向面(接触面)、27…
共通電極パネル(第2接触体)、27A…共通電極(第2電極)、40…信号処理部(制
御回路)、50、150A、150B…書込用画素、61…書込用電極(第1電極)、7
0A、70B…画像、125A…書込パネル(第1接触体)、125B…書込パネル(第
2接触体)、129…摺動軸(規制部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面を境界とし電界が印加されることにより当該電界が被印加された箇所の表示色が
変化する表示層を備えた電子ペーパーに対して画像を書き込む画像書込装置であって、
前記電子ペーパーの表示面側に複数の第1電極を有する第1接触体と、
前記電子ペーパーの表示面の反対側に、前記第1電極と対向する第2電極を有する第2
接触体と、
前記電子ペーパーに書き込む画像の画像データに基づいて、前記第1電極及び第2電極
間に電位差を生じさせ、前記電子ペーパーの表示層に電界を印加する制御回路と
を備えることを特徴とする画像書込装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像書込装置において、
前記制御回路は、
前記複数の第1電極と前記第2電極とのそれぞれの間に同じ方向の電界を発生し、前記
電子ペーパーの表示面の表示色を同一色に変化させる
ことを特徴とする画像書込装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像書込装置において、
前記制御回路は、
前記表示面全体の表示色を同一色に変化させるときには、前記電子ペーパーに書き込む
画像の配色の割合の多い色に、前記表示面全体の表示色を変化させる
ことを特徴とする画像書込装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像書込装置において、
前記第2接触体が有する第2電極は、前記第1接触体が有する第1電極のそれぞれに共
通の電極であり、
前記制御回路は、前記第1電極の各々の電位を複数の電位レベルの間で制御し、前記第
1及び第2電極の間に発生する電界の方向を可変することを特徴とする画像書込装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の画像書込装置において、
前記第2接触体には、前記第1接触体が有する第1電極ごとに対向する位置に前記第2
電極がそれぞれ設けられ、
前記制御回路は、
前記第1電極、及び、この第1電極と対向する第2電極ごとに、第1及び第2電極間に
発生する電界の方向を可変することを特徴とする画像書込装置。
【請求項6】
請求項4に記載の画像書込装置において、
前記第1接触体及び前記第2接触体は、
前記第1電極と、この第1電極に対応する第2電極との相対位置を規制する規制部材を
介して連結されていることを特徴とする画像書込装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−241979(P2008−241979A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80877(P2007−80877)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】