説明

画像検査方法及び画像検査装置

【課題】正常製品群に基づいて作成された基準空間に基づいて決定された検査閾値と、被検査製品の画像のマハラノビス距離とを比較することでその被検査製品の画像の検査を行う画像検査方法、画像検査装置において、基準空間の質を高めること。
【解決手段】当初の基準空間を使用した検査の結果(S31〜S35)、不良と判定された被検査製品の画像である不良判定画像が、誤判定であるか否かが評価されたとして、電子計算機は、その評価によって誤判定であると評価された不良判定画像である誤判定画像を記憶装置に記憶させる(S37)。その記憶装置に記憶された誤判定画像の数量Nが、所定量Nに達しか否かを判定する(S38)。所定量Nに達した場合は(S38、Yes)、記憶装置から誤判定画像を読み出す(S39)。読み出した誤判定画像を当初の基準画像の群に加えて、基準空間を再度作成する(S40)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象とされる被検査製品の欠陥の有無を判定するために、その被検査製品の外観を示した画像の良否の検査を行う画像検査方法及び画像検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査対象とされる被検査製品の外観検査をする場合がある。ここで、検査員が、目視によって行っていたその外観検査(目視検査)を自動化することを考える。この場合、検査員が被検査製品の外観から得ている情報が多岐に渡り、これらの情報を総合的に判断して検査員が検査している場合など、その自動化のための検査基準値を決めるのが困難な場合がある。そこで、従来、多変量解析(多くの情報を一つの尺度に集約する解析手法)の一種であるMT法(マハラノビス・タグチ法)を活用した検査方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このMT法は、多数の情報をマハラノビス距離という一つの尺度に集約し、このマハラノビス距離の大小によって、良否を判定する方法である。つまり、正常な状態にある正常製品群の画像から特徴量(情報)を抽出して、基準となるマハラノビス距離を算出する(基準空間を作るとも言い、基準空間のマハラノビス距離は平均で約1となる)。次いで、検査対象となる被検査製品の画像のマハラノビス距離を算出する。そして、このマハラノビス距離が、基準となるマハラノビス距離から離れるほど、その被検査製品は異常な状態にあると判定をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−252451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した基準空間が検査精度に大きな影響を与えるにも関わらず、特許文献1に開示の方法等の今までの方法では、一度作った基準空間はそのまま使用し続けていた。そのため、仮にその基準空間が適切でない場合には、良品であるにも関わらず不良品と判定される誤判定がなされてしまうことがあり、検査精度の向上に限界があるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、検査精度のさらなる向上を実現するために、基準空間の質を高めることができる画像検査方法及び画像検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、コンピュータによって処理される、被検査製品の画像の良否検査を行う画像検査方法であって、
外観が正常な状態にある複数の正常製品の画像をそれぞれ基準画像として取得する基準画像取得ステップと、
その基準画像取得ステップで取得した各基準画像から所定の特徴量を抽出する抽出ステップと、
その抽出ステップで抽出した前記特徴量に基づいて、各基準画像のマハラノビス距離からなる基準空間を作成する作成ステップと、
その作成ステップで作成した前記基準空間のマハラノビス距離に基づいて、前記被検査製品の画像の良否判定の基準となる閾値を決定する閾値決定ステップと、
前記被検査製品の画像のマハラノビス距離を算出して、そのマハラノビス距離と前記閾値とを比較することで、前記被検査製品の画像の良否判定をする検査実施ステップと、
その検査実施ステップで不良と判定された前記被検査製品の画像である不良判定画像が、誤判定であるか否かが評価されたとして、その評価によって、誤判定であると評価された前記不良判定画像である誤判定画像を取得する誤判定画像取得ステップと、
前記基準画像取得ステップで取得した前記基準画像の群に前記誤判定画像を加えて、前記基準空間を再度作成する再作成ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
これによれば、誤判定画像取得ステップにおいて、誤判定であると評価された不良判定画像(誤判定画像)が取得される。そして、再作成ステップにおいて、当初の基準画像の群にその誤判定画像を加えて、基準空間が再度作成される。その再作成された基準空間は、誤判定画像の特徴量が考慮されたものといえるので、基準空間の質を高めることができる。よって、その基準空間を使用して、被検査製品の画像の検査を行うことにより、検査精度のさらなる向上を実現することができる。
【0009】
また、本発明の画像検査方法において、前記誤判定画像取得ステップの前に実行される、前記誤判定画像を記憶手段に記憶させる記憶ステップと、
その記憶ステップで前記記憶手段に記憶された前記誤判定画像の数量が所定量に達したか否かを判定する数量判定ステップと、を含み、
前記誤判定画像取得ステップは、前記数量判定ステップで前記誤判定画像の数量が前記所定量に達したと判定した場合に、前記記憶手段から前記誤判定画像を読み出す形で、前記誤判定画像を取得するステップである。
【0010】
これによれば、誤判定画像取得ステップにおいて、誤判定と評価された誤判定画像の数量が所定量に達した場合に、記憶手段から誤判定画像が読み出される。その結果、その読み出し後に基準空間が作成されることになるので、誤判定と評価される毎に基準空間を作り直す必要がなく、計算処理を効率化することができる。
【0011】
また、本発明は、被検査製品の画像の良否検査を行う画像検査装置であって、
外観が正常な状態にある複数の正常製品の画像をそれぞれ基準画像として取得する基準画像取得手段と、
その基準画像取得手段が取得した各基準画像から所定の特徴量を抽出する抽出手段と、
その抽出手段が抽出した前記特徴量に基づいて、各基準画像のマハラノビス距離からなる基準空間を作成する作成手段と、
その作成手段が作成した前記基準空間のマハラノビス距離に基づいて、前記被検査製品の画像の良否判定の基準となる閾値を決定する閾値決定手段と、
前記被検査製品の画像のマハラノビス距離を算出して、そのマハラノビス距離と前記閾値とを比較することで、前記被検査製品の画像の良否判定をする検査実施手段と、
その検査実施手段によって不良と判定された前記被検査製品の画像である不良判定画像が、誤判定であるか否かが評価されたとして、その評価によって、誤判定であると評価された前記不良判定画像である誤判定画像を取得する誤判定画像取得手段と、
前記基準画像取得手段が取得した前記基準画像の群に前記誤判定画像を加えて、前記基準空間を再度作成する再作成手段と、を含むことを特徴とする。
【0012】
これにより、上記画像検査方法と同様に、基準空間の質を高めることができる。よって、その基準空間を使用して、被検査製品の画像の検査を行うことにより、検査精度のさらなる向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像検査装置10の全体構成を示す図である。
【図2】基準空間を作成するときの手順を示したフローチャートである。
【図3】ワーク画像401の輝度波形を説明するための図である。
【図4】微分値や積分値を算出する際に輝度波形に引く横線の引き方を例示した図である。
【図5】輝度波形から微分値や積分値を算出する方法を説明する図である。
【図6】被検査画像の良否を判定するときの手順を示したフローチャートである。
【図7】基準空間を作成するとともに、被検査画像の良否判定を行うときの具体的な手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施形態について説明する。図1は本発明の形態にかかる画像検査装置10の全体構成を示す図である。画像検査装置10は、検査対象であるワーク20の外観を撮影し、得られた画像データに基づいて検査を行う。ワーク20は、例えば切削加工した金属部品であり、ワーク20の表面にある、傷、バリ、異物などの欠陥の検査を要するものである。画像検査装置10は、このワーク20を被検査製品とし、その欠陥の有無の検査を行う。
【0015】
画像検査装置10は、カメラ12と、照明13と、電子計算機14と、表示装置15と、記憶装置16とを備えている。カメラ12は、ワーク20の外観を撮影し、ワーク20の画像データである被検査画像を得る。カメラ12は、具体的にはCCDカメラである。なお、他の例としては、カメラ12として、CMOSカメラ、アナログカメラなどを使用してもよい。照明13は、カメラ12によりワーク20の外観を撮像する際に、ワーク20の撮像箇所の明るさを調整する。照明13は、具体的にはLEDリング照明である。他の例としては、照明13として、ファイバー照明、LED照明、リング照明、同軸落射照明などを使用してもよい。
【0016】
カメラ12により撮影された被検査画像は、電子計算機14に送られる。電子計算機14は、被検査画像に基づいて、ワーク20の欠陥有無の判定、すなわち良否判定を行い、良否判定の結果を表示装置15に表示させる。また、記憶手段としての記憶装置16は、例えば電子計算機14のハードディスク装置とされ、カメラ12で撮影した各種画像や、電子計算機14が計算した基準空間や判定結果等の各種情報を記憶するものである。なお、記憶装置16として、RAM、フラッシュメモリ等のメモリを使用してもよい。
【0017】
なお、カメラ12は、良品(正常)であることがわかっている正常製品の撮影も行う。これにより、検査の基準となる基準画像を得る。ここで、基準画像は、正常な状態にある複数の正常製品それぞれの画像であり、マハラノビス基準空間を作成するために使用する画像群である。電子計算機14は、複数の基準画像に基づいて、良否判定の際に利用するマハラノビス基準空間を作成する。
【0018】
ここで、図2は、基準空間を作成して、その基準空間に基づいて、被検査画像の良否判定をするための閾値を設定するときの手順を示したフローチャートである。なお、図2のフローチャートは、本発明における、基準空間の作成方法の基本的な考え方を説明するためのものであり、具体的な手順は、後に説明する図7に示している。
【0019】
まず、正常な状態にある複数の正常製品の画像それぞれをカメラ12で撮影する(ステップS11)。次に、撮影した画像それぞれから特徴量(特徴となる情報)を抽出する(ステップS12)。この特徴量は、ワーク20の状態を表しているものであり、予め規定された項目に従って抽出する。ここでは、N個の基準画像から、輝度最大値、輝度最小値、輝度波形の微分値、輝度波形の積分値などK個の項目に従って特徴量を抽出している。特徴量を抽出した結果を、表1に示す。表1において、特徴量Xnkの添え字n(1、2、・・・、N)は基準画像を識別する番号(基準画像No)、添え字k(1、2、・・・、K)は項目を識別する番号(項目No)を表している。
【0020】
【表1】

【0021】
ここで、前述した特徴量について補足説明をする。図3は、輝度波形を説明するための図である。図3(a)は、ワーク20のワーク画像401を示している。また、図3(b)は、画像401の輝度波形のグラフを示しており、詳細には、同図のグラフの横軸はワーク画像401の所定のラインにおける画素位置を示し、縦軸は各画素の輝度値を示している。このグラフ上の曲線が輝度波形である。輝度波形は、画素の行(ライン)毎に各画素の輝度値を波形化したもの、すなわち各行に含まれる各画素と、各画素における輝度値との関係を示す波形である。例として図3では、256階調の輝度を持つ、画素サイズn×nのワーク画像401の輝度波形を示している。
【0022】
図3(b)に示すように、ワーク画像401は、その輝度が、画素に対して変動している。そして、その輝度波形から、前述したように、輝度最大値、輝度最小値、輝度波形の微分値、輝度波形の積分値などの特徴量を抽出することができる。ここで、輝度波形の微分値および輝度波形の積分値について説明する。図4および図5は、その説明の為の図である。つまり、図5に示すように、輝度波形に対して任意の輝度値の直線、すなわち横線L1を引き、横線L1と輝度波形の交点数を微分値として得る。
【0023】
この微分値は、画像の特徴量の変動の回数の指標とすることができる。すなわち、微分値が大きいほど、画像中に、特徴量が変動する部位が多く含まれているといえる。図5の場合では、ワーク画像401中に、横線L1で示される輝度C1を基準として、変動する部位がどの程度含まれているかを示す特徴量を抽出することになる。このように、微分値を特徴量として用いることにより、特徴量が変動する部位が多く含まれている画像でも、その特徴量が精度よく反映された基準空間を作成することができるので、被検査画像の良否を精度良く判定することができる。
【0024】
また、図5に示すように、輝度波形に対して任意の輝度値の直線、すなわち横線L2を引き、横線L2よりも上の輝度波形の区間総和を積分値として得る。この積分値は、画像において一定以上の特徴量を有している部位が占める割合の指標とすることができる。すなわち、積分値が大きいほど、画像中に、一定以上の特徴量を有している部位が多く含まれているといえる。図5の場合では、ワーク画像401中に、横線L2で示される輝度C2以上の輝度の部位がどの程度含まれているかを示す特徴量を抽出することになる。このように、積分値を特徴量として用いることにより、一定以上の特徴量を有している部位が多く含まれている画像でも、その特徴量が精度よく反映された基準空間を作成することができるので、被検査画像の良否を精度良く判定することができる。
【0025】
輝度波形に引く横線としては、例えば図4のように設定することができる。すなわち、図4において、例えば、ワーク画像401の所定の行に含まれる複数の輝度値の平均値をμ、標準偏差をσとし、μ±σ、μ±0.8σ、μ±0.6σ、・・・のように等間隔に横線を設定する。この場合、各横線に対する微分値、積分値を特徴量として抽出することができる。
【0026】
次に、各基準画像のマハラノビス距離を算出し、検査の基準となるマハラノビス距離を算出する。つまり、基準空間を作成する(ステップS13)。具体的には、まず最初に、表1の項目毎に特徴量の平均値μkと標準偏差σkを算出する。そして、算出した平均値μk、標準偏差σkを(式1)に代入して、基準化した特徴量xnkを算出する。そして、表2に示すように、基準化した特徴量xnkの行列とする。
【0027】
【数1】

【0028】
【表2】

【0029】
次いで、(式2)により項目pと項目qの相関係数rpqを算出する。その相関係数rpqに基づいて、(式3)に示すように、各相関係数を要素とする相関係数行列Rを得る。そして、(式4)に示すように、相関係数行列Rの逆行列Aを算出する。
【0030】
【数2】

【0031】
【数3】

【0032】
【数4】

【0033】
次いで、(式5)により、n番目の基準画像のマハラノビス距離MDnを算出する。最終的には、全ての基準画像のマハラノビス距離が算出され、基準空間の作成が終わる。
【0034】
【数5】

【0035】
ステップS13の最後として、全ての基準空間のマハラノビス距離、各項目の平均値μk、各項目の標準偏差σk、逆行列Aを基準空間のパラメータとして、記憶装置16に記憶させる。
【0036】
次に、各基準画像のマハラノビス距離をもとに、良否の判定基準となる検査閾値を決定する(ステップS14)。つまり、基準画像のマハラノビス距離も分布を持つので、例えば、このうち最大のマハラノビス距離をもとにして、検査閾値を決定する。例えば、式5により算出した基準画像のマハラノビス距離最大値が1.6になったので、マハラノビス距離が1.6の製品までは良品とするために、ここでは検査閾値を1.7とした。
【0037】
以上のようにして、電子計算機14は、基準空間を作成するとともに、その基準空間に基づいて、検査閾値を決定する。次に、電子計算機14は、その検査閾値に基づいて、検査対象とされる被検査製品の良否判定をする。ここで、図6は、被検査製品の画像である被検査画像の良否を判定するときの手順を示したフローチャートである。なお、図6のフローチャートは、本発明における、被検査画像の良否を判定するときの手順の基本的な考え方を説明するためのものであり、具体的な手順は、後に説明する図7に示している。
【0038】
まず、検査対象となるワーク20(被検査製品)の画像をカメラ12で撮影する(ステップS21)。次に、撮影した被検査画像それぞれから特徴量(特徴となる情報)を抽出する(ステップS22)。この特徴量は、基準空間を作成する際に用いた項目に従って抽出する。
【0039】
次に、基準空間を作成する時と同じ手順を経て、被検査画像のマハラノビス距離を算出する(ステップS23)。ただし、特徴量を基準化する際に使用する特徴量の平均値μkと標準偏差σk、相関係数行列Rの逆行列Aについては、基準空間を作成する際に算出された値を使用する。
【0040】
次に、被検査画像のマハラノビス距離MDと、先に設定した検査閾値とを比較することにより、被検査画像の良否判定を行う(ステップS24)。マハラノビス距離MDが検査閾値よりも大きい場合には(ステップS24、Yes)、被検査画像には異常がある、すなわちワーク20は不良品であると判定する(ステップS25)。一方、マハラノビス距離MDが検査閾値以下である場合には(ステップS24、No)、被検査画像は正常である、すなわちワーク20は良品であると判定する(ステップS26)。
【0041】
このように、本実施形態では、基準空間に基づいて決定された検査閾値と被検査画像のマハラノビス距離とを比較することで、その被検査画像の良否判定を行っているが、その基準空間が必ずしも適当であるとは限らない。例えば、基準空間を作成するための正常製品群にも特徴量に分布を有しており、その分布における最頻値の特徴量を有する正常製品ばかりで基準空間を作成すると、過度に不良と判定してしまう場合がある。また、作成当初は適切であった基準空間が、検査に要求される判定基準が変化して、事後的に適当でなくなる場合もある。つまり、一度作成した基準空間をそのまま使用し続けると、良品であるにも関わらず不良品と判定される誤判定がなされてしまうことがある。そこで、本発明では、一度作成した基準空間を見直すことができるようにしたものである。ここで、図7は、基準空間を作成するとともに、被検査画像の良否判定を行うときの具体的な手順を示したフローチャートである。
【0042】
まず、正常な状態にある複数の正常製品の画像それぞれをカメラ12で撮影する(ステップS31)。このステップS31は、先に説明したステップS11の処理と同じである。なお、ステップS31が本発明の「基準画像取得ステップ」に相当し、ステップS31を実行する電子計算機14が本発明の「基準画像取得手段」に相当する。
【0043】
次に、撮影した基準画像それぞれから特徴量(特徴となる情報)を抽出する(ステップS32)。このステップS32は、先に説明したステップS12の処理と同じである。なお、ステップS32が本発明の「抽出ステップ」に相当し、ステップS32を実行する電子計算機14が本発明の「抽出手段」に相当する。
【0044】
次に、基準画像それぞれのマハラノビス距離を算出する。つまり、基準空間を作成する(ステップS33)。このステップS33は、先に説明したステップS13の処理と同じである。なお、ステップS33が本発明の「作成ステップ」に相当し、ステップS33を実行する電子計算機14が本発明の「作成手段」に相当する。
【0045】
次に、各基準画像のマハラノビス距離をもとに、良否の判定基準となる検査閾値を決定する(ステップS34)。このステップS34は、先に説明したステップS14の処理と同じである。なお、ステップS34が本発明の「閾値決定ステップ」に相当し、ステップS34を実行する電子計算機14が本発明の「閾値決定手段」に相当する。
【0046】
次に、図6に示すステップと同じ処理により、被検査画像の検査を実施する(ステップS35)。すなわち、このステップS35では、図6のフローチャートの処理が実行される。なお、ステップS35が本発明の「検査実施ステップ」に相当し、ステップS35を実行する電子計算機14が本発明の「検査実施手段」に相当する。なお、基準画像、基準空間、被検査画像等、各種データは、記憶装置16に記憶される。
【0047】
ここで、ステップS31〜ステップS35の処理によって、不良品と判定された被検査画像である不良判定画像があったとする。この場合、上述した理由で、その判定が誤判定の場合もあり得るので、その不良判定画像に係る被検査製品(ワーク20)について、誤判定されていないか否かの評価を行う。具体的には、例えば、目視検査員が、目視によって、その被検査製品の良否判定を行う。例えば、ワーク20の表面に傷があったとされて不良品と判定された場合、目視検査員が、その傷が不良品とされる傷に該当するか否かを、その傷の長さ等に基づいて評価する。また、例えば、MT法とは別手段で、コンピュータによって自動的にその評価を行うようにしてもよい。この場合、例えば、不良判定画像に係るワーク20の表面の面粗度をコンピュータによって自動的に計測できるようにし、その面粗度に基づいてその評価を行うようにする。
【0048】
なお、この評価を行うタイミングは、ステップS35の実施の度としたり、ステップS35の実施の回数が所定回数になった場合等、一定間隔おきとしたりすることができる。また、一回の検査時で、複数のワーク20(被検査製品)の検査をする場合には、それらワーク20の検査が全て終わったとき、つまり各検査時の度に評価を行ってもよい。
【0049】
図7の説明に戻り、ステップS35の検査の後、上述の評価がされたとして、次いで、誤判定が発生したか否かを判断する(ステップS36)。具体的には、例えば、上記評価が目視検査員によってなされた場合には、その目視検査員による入力操作に基づいて、誤判定が発生したか否かを判断する。すなわち、目視検査員が、電子計算機14に対して、誤判定が発生したことを入力操作できるようにし、電子計算機14は、その入力があった場合に誤判定が発生したと判断する。また、例えば、上記評価がコンピュータによって自動的に行われた場合には、そのコンピュータによる評価結果に基づいて、誤判定が発生したか否かを判断する。
【0050】
ステップS36において、誤判定が発生したと判断したときは(ステップS36、Yes)、その誤判定に係る不良判定画像である誤判定画像を記憶装置16に記憶させる(ステップS37)。なお、その誤判定画像が、被検査画像として既に記憶装置16に記憶されている場合には、当初の記憶エリアから所定の誤判定画像の記憶エリアに、その誤判定画像を移動させる。なお、ステップS37が本発明の「記憶ステップ」に相当する。
【0051】
次いで、記憶装置16に記憶されている誤判定画像の数量Nが所定量Nに達したか否かを判断する(ステップS38)。なお、ステップS38が本発明の「数量判定ステップ」に相当する。ここで、誤判定画像の数量Nが未だ所定量Nに達していない場合は(ステップS38、No)、ステップS35の処理に戻る。この場合、基準空間の見直しは未だ行わず、当初の基準空間(当初の検査閾値)をそのまま使用して、他の被検査画像に対して画像検査を継続することになる。この場合、再び誤判定が発生した場合には(ステップS36、Yes)、その誤判定に係る誤判定画像が記憶装置16に記憶されるので(ステップS37)、記憶装置16に記憶される誤判定画像が蓄積されていくことになる。
【0052】
そして、ステップS38において、誤判定画像の数量Nが所定量Nに達した場合には(ステップS38、Yes)、記憶装置16に記憶されている全ての誤判定画像を読み出す(ステップS39)。なお、ステップS39が本発明の「誤判定画像取得ステップ」に相当し、ステップS39を実行する電子計算機14が本発明の「誤判定画像取得手段」に相当する。
【0053】
次いで、基準画像の見直しとして、読み出した全ての誤判定画像を、ステップS31で取得した基準画像の群に加えて、基準空間を再度作成する(ステップS40)。基準空間の作成方法は、ステップS33における作成方法と同じである。なお、ステップS40が本発明の「再作成ステップ」に相当し、ステップS40を実行する電子計算機14が本発明の「再作成手段」に相当する。
【0054】
次いで、ステップS34の処理に戻り、再作成した基準空間に基づいて、新たに検査閾値を決定する(ステップS34)。そして、以降、新たな検査閾値に基づいて、被検査画像の良否検査を実施する(ステップS35)。このように、基準空間を作り直した結果として、この例では、基準空間を作り直す前と比べて、誤判定を50%以上削減することが出来た。
【0055】
一方、ステップS36において、誤判定が発生しなかった場合には(ステップS36、No)、ステップS35の処理に戻る。この場合、当初の基準空間をそのまま使用し続けて、被検査画像の良否検査を継続することになる(ステップS35)。また、基準空間が再作成された場合に、その後、誤判定が発生しなかった場合には(ステップS36、No)、その再作成された基準空間をそのまま使用し続けて、被検査画像の良否検査を継続することになる(ステップS35)。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、誤判定画像を、基準画像の群に加えて基準空間を作り直すようにしたので、その誤判定画像の特徴量が考慮された質の高い基準空間を作成できる。よって、検査精度のさらなる向上に繋げることができる。また、基準空間は、誤判定画像の数量Nが所定量Nに達したタイミングで作り直されるので、誤判定する毎に基準空間を作り直す必要がなく、計算処理を効率化することができる。
【0057】
なお、本発明の画像検査方法、画像検査装置は上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲で種々変形することができる。例えば、上記実施形態では、誤判定画像の数量Nが所定量Nに達したタイミングで基準空間を作り直していたが、検査した被検査画像が所定の量になった時でもよい。また、誤判定する毎に基準空間を作り直すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 画像検査装置
12 カメラ
13 照明
14 電子計算機
15 表示装置
16 記憶装置
20 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって処理される、被検査製品の画像の良否検査を行う画像検査方法であって、
外観が正常な状態にある複数の正常製品の画像をそれぞれ基準画像として取得する基準画像取得ステップと、
その基準画像取得ステップで取得した各基準画像から所定の特徴量を抽出する抽出ステップと、
その抽出ステップで抽出した前記特徴量に基づいて、各基準画像のマハラノビス距離からなる基準空間を作成する作成ステップと、
その作成ステップで作成した前記基準空間のマハラノビス距離に基づいて、前記被検査製品の画像の良否判定の基準となる閾値を決定する閾値決定ステップと、
前記被検査製品の画像のマハラノビス距離を算出して、そのマハラノビス距離と前記閾値とを比較することで、前記被検査製品の画像の良否判定をする検査実施ステップと、
その検査実施ステップで不良と判定された前記被検査製品の画像である不良判定画像が、誤判定であるか否かが評価されたとして、その評価によって、誤判定であると評価された前記不良判定画像である誤判定画像を取得する誤判定画像取得ステップと、
前記基準画像取得ステップで取得した前記基準画像の群に前記誤判定画像を加えて、前記基準空間を再度作成する再作成ステップと、を含むことを特徴とする画像検査方法。
【請求項2】
前記誤判定画像取得ステップの前に実行される、前記誤判定画像を記憶手段に記憶させる記憶ステップと、
その記憶ステップで前記記憶手段に記憶された前記誤判定画像の数量が所定量に達したか否かを判定する数量判定ステップと、を含み、
前記誤判定画像取得ステップは、前記数量判定ステップで前記誤判定画像の数量が前記所定量に達したと判定した場合に、前記記憶手段から前記誤判定画像を読み出す形で、前記誤判定画像を取得するステップであることを特徴とする請求項1に記載の画像検査方法。
【請求項3】
被検査製品の画像の良否検査を行う画像検査装置であって、
外観が正常な状態にある複数の正常製品の画像をそれぞれ基準画像として取得する基準画像取得手段と、
その基準画像取得手段が取得した各基準画像から所定の特徴量を抽出する抽出手段と、
その抽出手段が抽出した前記特徴量に基づいて、各基準画像のマハラノビス距離からなる基準空間を作成する作成手段と、
その作成手段が作成した前記基準空間のマハラノビス距離に基づいて、前記被検査製品の画像の良否判定の基準となる閾値を決定する閾値決定手段と、
前記被検査製品の画像のマハラノビス距離を算出して、そのマハラノビス距離と前記閾値とを比較することで、前記被検査製品の画像の良否判定をする検査実施手段と、
その検査実施手段によって不良と判定された前記被検査製品の画像である不良判定画像が、誤判定であるか否かが評価されたとして、その評価によって、誤判定であると評価された前記不良判定画像である誤判定画像を取得する誤判定画像取得手段と、
前記基準画像取得手段が取得した前記基準画像の群に前記誤判定画像を加えて、前記基準空間を再度作成する再作成手段と、を含むことを特徴とする画像検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−232303(P2011−232303A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105594(P2010−105594)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】