説明

画像消去方法

【課題】被転写材を劣化させることなく迅速に消え残りのない画像消去を行う。
【解決手段】消去方法は、少なくともバインダー樹脂、電子供与性呈色剤、電子受容性顕色剤を含むトナー用いて形成した画像を10秒以内の加熱により消去する。消去した画像領域と紙との色差ΔEが5以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、消去可能な現像剤を用いて形成された画像を消去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスの情報環境において、コンピューター、ソフト、ネットワークの普及により、情報処理の迅速化、共有化が可能になった。本来、情報の電子化は、情報の保存、蓄積、検索等には優れているが、情報の表示(特に一覧性)、伝達には紙媒体に優位性があるので、情報のデジタル化が進むにつれて、紙の使用量を増加しているのが実情である。一方、CO排出に代表される消費エネルギーの削減は各分野で急務である。情報の一時的な表示、伝達のために使用している紙媒体をリサイクルできれば、消費エネルギーの削減に大きく貢献できる。
【0003】
紙媒体をリサイクルするための色材として、従来から消色可能な色材が知られている。
【0004】
例えば、可逆的感熱記録媒体において、発色と消色を加熱によって容易に行うことが提案されている。しかし、記録媒体側に発色性組成物を存在させるため、一般の紙媒体が使用できない欠点がある。また、例えば消去可能なトナーを粉砕法で製造することが提案されている。しかし、呈色剤、顕色剤、消色剤等の複数の成分を固相で取り扱うため、発色・消色の反応が迅速かつ十分でないという欠点がある。
【0005】
上記のような消去可能な色材を用いてトナーを作成した場合、色材の消去に時間がかかることと、消去回数を増やしていくと消去残りが目立つようになることが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−42635号公報
【特許文献2】特許第3457538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、被転写材を劣化させることなく迅速に消え残りのない画像消去を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、バインダー樹脂、電子供与性呈色剤、及び電子受容性顕色剤を含む消去可能な現像剤を用いて、現像、転写、及び定着することにより被転写材上に形成された画像を消去する方法であって、
前記現像剤を用いて画像が形成された被転写材を現像剤を定着する温度以上の温度で、10秒以内の時間加熱して画像の消色を行なって、画像消色後の該被転写材表面において消色された画像領域と画像が形成されない領域との色差ΔEを5以下にする画像消去方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態にかかる画像形成装置の一例を表す概略図である。
【図2】図1の定着装置の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態によれば、バインダー樹脂、電子供与性呈色剤、及び電子受容性顕色剤を含む消去可能な現像剤を用い、現像、転写、及び定着することにより画像が形成された被転写材を、現像剤を定着する温度以上の温度で10秒以内の時間加熱して現像剤を消色せしめ、画像消去を行う方法が提供される。
【0011】
第1の実施形態では、画像消色後、被転写材表面において消色された画像領域と画像が形成されない領域との色差ΔEは5以下である。
【0012】
第1の実施形態に係る画像消去方法を用いると、10秒以内の時間加熱で、消色された画像領域と画像が形成されない領域との色差ΔEは5以下となるので、被転写材を劣化させることなく迅速に消え残りのない画像消去を行うことができる。
【0013】
色差ΔEが5を超えると、消去跡が目立ち、消去が不十分に見える。
【0014】
また、第2の実施形態では、消去可能な現像剤は、バインダー樹脂と、電子供与性呈色剤、電子受容性顕色剤、及び温度コントロール剤をマイクロカプセル化した色材とを含む。また、消去される画像のトナー付着量は0.50mg/cm〜0.75mg/cmである。
【0015】
第2の実施形態にかかる画像消去方法を用いると、10秒以内の時間加熱で、迅速に消え残りのない画像消去を行うことができる。
【0016】
トナー付着量が0.50mg/cm未満であると、印字時の画像濃度が低く、見づらい画像になる。0.75mg/cmを超えると、加熱消去後に新たな情報を印字した際に前の消え残った画像が目立ち、新たな印字情報が読み取り難くなってしまう。
【0017】
第2の実施形態にかかる画像消去方法は第1の実施形態にかかる画像消去方法と組み合わせることもできる。
【0018】
実施形態によれば、被転写材として、画像の形成を3回及び画像の消色を3回行なった被転写材に4回目の画像を形成した被転写材を適用し、4回目の消色を行っても、前記色差ΔEを5以下にすることができる。
【0019】
図1に、実施形態に使用可能な画像形成装置の一例を表す概略図を示す。
【0020】
実施形態にかかる画像消去方法は、画像形成装置の定着装置を用いて行うことができる。
【0021】
図示するように、この画像形成装置100は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)や、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFPを例に説明する。
【0022】
MFP100の本体11の上部には原稿台(document table)(図示せず)があり、原稿台上には自動原稿搬送部(ADF)12を開閉自在に設けている。また本体11の上部には操作パネル13を設けている。操作パネル13は、各種のキーから成る操作部14と、タッチパネル式の表示部15を有している。
【0023】
本体11内のADF12の下部にはスキャナ部16を設けている。スキャナ部16は、ADF12によって送られる原稿(document)または原稿台上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成する。さらに本体11内の中央部にはプリンタ部17を有し、本体11の下部には、各種サイズの用紙を収容する複数のカセット18を有している。
【0024】
プリンタ部17は、感光体ドラムとレーザ等を含み、スキャナ部16で読み取った画像データや、PC(Personal Computer)などで作成された画像データを処理して用紙に画像を形成する。
【0025】
プリンタ部17によって画像が形成された用紙は、排紙部40に排出される。プリンタ部17は、例えばタンデム方式によるカラーレーザプリンタであり、レーザ露光装置19からのレーザビームによって感光体を走査して画像を生成する。
【0026】
プリンタ部17は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y,20M,20C,20Kを含む。画像形成部20Y,20M,20C,20Kは、中間転写ベルト21の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置している。
【0027】
なお、以下の説明において各画像形成部20Y,20M,20C,20Kは同じ構成であるため、画像形成部20Yを代表にして説明する。
【0028】
画像形成部20Yは、像担持体である感光体ドラム22Yを有し、感光体ドラム22Yの周囲に、回転方向tに沿って帯電チャージャ23Y、現像器24Y、1次転写ローラ25Y、クリーナ26Y、ブレード27Y等を配置している。感光体ドラム22Yの露光位置には、レーザ露光装置19からイエローのレーザビームを照射し、感光体ドラム22Y上に静電潜像を形成する。
【0029】
画像形成部20Yの帯電チャージャ23Yは、感光体ドラム22Yの表面を一様に全面帯電する。現像器24Yは、現像バイアスが印加される現像ローラによりイエローのトナー及びキャリアからなる二成分現像剤を感光体ドラム22Yに供給し、トナー像を形成する。クリーナ26Yは、ブレード27Yを用いて感光体ドラム22Y表面の残留トナーを除去する。
【0030】
画像形成部20Y,20M,20C,20Kの上部には、現像器24Y,24M,24C,24Kにトナーを供給するトナーカートリッジ28(FIG.1)を設けている。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジ28Y,28M,28C,28Kが隣接している。
【0031】
中間転写ベルト21は、循環的に移動し、耐熱性及び耐磨耗性の点から例えば半導電性ポリイミドが用いられる。中間転写ベルト21は、駆動ローラ31及び従動ローラ32、33に張架され、中間転写ベルト21は感光体ドラム22Y〜22Kに対向して接触している。中間転写ベルト21の感光体ドラム22Yに対向する位置には、1次転写ローラ25Yにより1次転写電圧が印加され、感光体ドラム22Y上のトナー像を中間転写ベルト21に1次転写する。
【0032】
中間転写ベルト21を張架する駆動ローラ31には、2次転写ローラ34を対向して配置している。駆動ローラ31と2次転写ローラ34間を用紙Sが通過する際に、2次転写ローラ34により2次転写電圧が印加され、中間転写ベルト21上のトナー像を用紙Sに2次転写する。中間転写ベルト21の従動ローラ33付近には、ベルトクリーナ35を設けている。
【0033】
一方、レーザ露光装置19は、ポリゴンミラー19a、結像レンズ系19b、ミラー19c等を含み、半導体レーザ素子から出射されたレーザビームを感光体ドラム22の軸線方向に走査する。
【0034】
また、FIG.1で示すように、給紙カセット18から2次転写ローラ34に至る間には、給紙カセット18内の用紙Sを取り出す分離ローラ36、及び搬送ローラ37、レジストローラ38を設けており、2次転写ローラ34の下流には定着装置39を設けている。
【0035】
定着装置39の下流には排紙部40と反転搬送路41を設けている。排紙部40には、定着装置39からの用紙が排出される。反転搬送路41は、用紙Sを反転させて2次転写ローラ34の方向に導くもので、両面印刷を行う際に使用する。
【0036】
次にFIG.1の画像形成装置100の動作を説明する。スキャナ16やPC等から画像データが入力されると、各画像形成部20Y〜20Kにて、順次に画像が形成される。
【0037】
画像形成部20Yを例に述べると、感光体ドラム22Yは、イエロー(Y)の画像データに対応するレーザビームが照射され静電潜像が形成される。更に感光体ドラム22Yの静電潜像は、現像器24Yによって現像されイエロー(Y)のトナー像が形成される。
【0038】
感光体ドラム22Yは、回転する中間転写ベルト21と接触して1次転写ローラ25Yによりイエロー(Y)のトナー像を中間転写ベルト21上に1次転写する。感光体ドラム22Yは、トナー像を中間転写ベルト21に1次転写した後、残留トナーがクリーナ26Y及びブレード27Yによって除去され、次の画像形成が可能となる。
【0039】
イエロー(Y)のトナー像形成プロセスと同様にして、画像形成部20M〜20Kにより、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像が形成され、各トナー像が中間転写ベルト21上のイエロー(Y)のトナー像と同一位置に順次転写され、中間転写ベルト21上にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を多重転写し、フルカラートナー像を得る。
【0040】
中間転写ベルト21は、フルカラートナー像を2次転写ローラ34の転写バイアスにより用紙S上に一括2次転写する。中間転写ベルト21上のフルカラートナー像が2次転写ローラ34に達するのと同期して、給紙カセット18から2次転写ローラ34へ用紙Sが給紙される。
【0041】
トナー像が2次転写された用紙Sは定着装置39に達しトナー像を定着する。
【0042】
トナー像が定着された用紙Sは、排紙部40に排出される。一方、中間転写ベルト21は、2次転写終了後、ベルトクリーナ35により残留トナーがクリーニングされる。
【0043】
画像消去を行う場合には、例えば画像を消去すべき用紙をカセットに収容し、給紙カセット18から搬送して、定着装置39へ導入することができる。この際、画像形成部20Y〜20Kではトナー像を形成しない。
【0044】
また、図2に、図1の定着装置の概略図を示す。
【0045】
図2は定着装置39の具体的な構成を示す図である。
【0046】
定着装置39は、加熱ローラ58a、加圧ローラ58b、剥離爪58c、クリーニング部材58dおよび塗布ローラ58eを含む。
【0047】
加熱ローラ58aは、ハロゲンランプなどの熱源を内蔵する。加圧ローラ58bは、加熱ローラ58aに対してほぼ平行に配置されるとともに、図示しない加圧機構によって加熱ローラ58aに対して加圧状態で接している。加熱ローラ58aは、その軸を回転軸として回転可能なように支持され、図示しない回転機構によって矢印A2で示される向きで回転される。加圧ローラ58bは、その軸を回転軸として回転可能なように支持され、加熱ローラ58aの回転に伴って矢印A3で示される向きで回転する。搬送ベルト64によって送り込まれた記録用紙Sは、加熱ローラ58aと加圧ローラ58bとの間に挿入される。画像形成を行う場合には、定着装置58は、加熱ローラ58aの発熱と、加熱ローラ58aおよび加圧ローラ58bによる加圧とによって、記録用紙Sに静電的に付着しているトナーTを溶融定着させる。一方、画像消去を行う場合には、加熱ローラ58aの発熱、及び必要に応じて加圧ローラ58bによる加圧によって、記録用紙Sに定着されているトナーTを消色せしめ、画像を消去する。この時、加熱ローラによる加熱温度を上記定着温度より高くすることができる。
【0048】
剥離爪58cは、加熱ローラ58aから記録用紙Sを剥離する。
【0049】
クリーニング部材58dは、加熱ローラ58aに付着したトナーや紙粉などを除去する。
【0050】
塗布ローラ58eは、加熱ローラ58aに接する状態で加熱ローラ58aにほぼ平行に配置されている。塗布ローラ58eは、加熱ローラ58aの表面に離型剤を塗布する。
【0051】
実施形態に使用される消色可能な現像剤は、バインダー樹脂、電子供与性呈色剤、及び電子受容性顕色剤を含む。
【0052】
(電子供与性呈色剤)
電子供与性呈色剤とは主にロイコ染料のことである。ロイコ染料とは、顕色剤により発色することが可能な電子供与性の化合物である。例えば、ジフェ二ルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
【0053】
具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等である。さらに、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。これらは、2種以上混合して使用しても良い。
【0054】
(電子受容性顕色剤)
顕色剤としては、ロイコ染料にプロトンを与える電子受容性化合物である。例えば、フェノール類、フェノール金属塩類、カルボン酸金属塩類、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、ベンゾフェノン類、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類、モノフェノール類、ポリフェノール類、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体等がある。
【0055】
(バインダー樹脂)
実施形態においてバインダーとして用いる樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分をエステル化反応を経て、重縮合して得られるポリエステル系樹脂が望ましい。スチレン系樹脂だと一般にガラス転移温度がポリエステル系に比較して高いので低温定着の観点で不利になる。酸成分としてテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族カルボン酸、等が挙げられる。
【0056】
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチングリコール、トリメチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、ビスフェノールA等のエチレンオキシド またはプロピレンオキシド付加物等をあげることができる。
【0057】
また、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)やグリセリン等の3価以上の多価のカルボン酸や多価のアルコール成分を用いて、上記のポリエステル成分を架橋構造にしてもよい。
【0058】
これらは組成の異なる2種類以上のポリエステル樹脂を混合して使用してもよい。
【0059】
ポリエステル樹脂は非晶性でも結晶性でも良い。
【0060】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は45℃以上70℃以下が望ましい。50℃以上65℃以下がより望ましい。ガラス転移温度が45℃より低いとトナーの耐熱保存性が悪化し、また消去時の樹脂の光沢が目だって好ましくない。70℃より高いと低温定着性が悪化し、また加熱時の消去性が劣って好ましくない。
【0061】
(離型剤成分)
実施形態に使用される現像剤には、任意に離形剤を添加することができる。離形剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスおよびそれらの変性物、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、ライスワックスなどの植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろうのなどの動物系ワックス、モンタンワックス、オゲソライト、セレシンなどの鉱物系ワックス、リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのなどの脂肪酸アミド、機能性合成ワックス、シリコーン系ワックス等が挙げられる。
【0062】
実施形態においては、離型剤は特にアルコール成分とカルボン酸成分からなる成分のエステル結合を持つものが好ましい。アルコール成分としては高級アルコール、カルボン酸成分としては直鎖アルキル基を持つ飽和脂肪酸、モノエン酸、ポリエン酸等の不飽和脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。また不飽和多価カルボン酸としてマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等が挙げられる。またこれらの無水物でも良い。
【0063】
離型剤の軟化点は低温定着性の観点から、50℃〜120℃、より望ましくは60℃〜110℃である。
【0064】
(帯電制御剤)
実施形態においては、摩擦帯電電荷量を制御するための帯電制御剤などを配合住めことができる。帯電制御剤としては、含金属アゾ化合物が用いられ、金属元素が鉄、コバルト、クロムの錯体、錯塩、あるいはその混合物が望ましい。また、含金属サリチル酸誘導体化合物も用いられ、金属元素がジルコニウム、亜鉛、クロム、ボロンの錯体、錯塩、あるいはその混合物が望ましい。
【0065】
(添加剤)
実施形態においては、トナー粒子に対して流動性や帯電性を調整するために、トナー粒子表面に、トナー粒子全重量に対し0.01〜20重量%の無機微粒子を添加混合することができる。このような無機微粒子としてはシリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、酸化錫等を単独であるいは2種以上混合して使用することができる。無機微粒子は疎水化剤で表面処理されたものを使用することが環境安定性向上の観点から好ましい。また、このような無機酸化物以外に1μm以下の樹脂微粒子をクリーニング性向上のために添加してもよい。
【0066】
(消色機構)
CVL(クリスタルバイオレットラクトン)に代表されるロイコ染料系の呈色剤は顕色剤と結合すると発色し、解離すると消色するという特徴を持つ。顕色剤と消色剤のほかに温度コントロール剤と呼ばれる融点と凝固点の温度差が大きい物質を用いると温度コントロール剤の融点以上に加熱した際に消色し、凝固点が常温以下の場合は常温でも消色状態を維持した色材になる。実施形態では例えばロイコ系呈色剤、顕色剤、温度コントロール剤をカプセル化した発色・消色可能な色材系を用いることができる。
【0067】
(消去装置)
実施形態に用いられる消色可能なトナーは瞬時消去が必須なので従来の定着機タイプの加熱機が必要になる。例えば従来のローラータイプの定着機を流用できる。トナー消え残りのバインダー樹脂の光沢の観点からは非接触式のフラッシュ定着等の選択肢もあるが、トナー内の温度分布が大きく消去残りが生まれる可能性があり、望ましくない。
【0068】
(消去濃度)
トナーの紙への印字定着後、加熱消去を実施する。消去後は紙との濃度差が全く無いのが理想であるが、現実には色材の消え残りやトナーバインダー樹脂部の影響で紙との濃度差が生じる。
【0069】
消え残りの定量的な評価として、分光濃度計による消去部と紙との色差が適している。L*a*b*表色系では下記式(1)で表されるΔEを色差として用いる。
【0070】
ΔE(色差):ΔE=((ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)0.5…(1)
また、印字濃度、消去濃度の目安としてマクベス濃度計による画像濃度測定も実施した。
【0071】
消色された画像領域の画像濃度は0.2以下にすることができる。
【0072】
画像濃度が0.2を超えると、消去が不十分に見える傾向がある。
【0073】
(消色性についての試験)
東芝テック(株)製の坪量64g/mのP−50Sを用紙として用いた。原稿用紙とて画像濃度を2.0で10mm×10mmの正方形のベタパッチを使用した。現像濃度を調整して、トナー付着量の違う印字サンプルを得た。現像濃度はトナー比濃度、現像バイアス等を調整して行った。
【0074】
トナー付着量が0.50mg/cmより少ないと印字時の画像濃度が低く、見づらい画像になる。0.75mg/cmを超えると加熱消去後に新たな情報を印字した際に前の消え残った画像が目立ち、新たな印字情報が読み取り難くなってしまう。
【0075】
(測定)
トナーの消色部分の色差測定はエックスライト株式会社 x−rite939 反射分光濃度計で測定した。
【0076】
トナー印字部分および消色部分の画像濃度は、マクベス濃度計 RD−913 (マクベス社製)にて測定した。
【0077】
トナーの消色部分の光沢度は、実施例及び比較例のトナーにより用紙に画像を形成し、その画像を加熱して消色したあと、その消色した部分の光沢度を測定した値である。測定は、日本電色工業社製の光沢計(VG2000)により、鏡面光沢度−測定方法(JIS Z 8741)に準拠して測定した。投受光角を60度で測定した。
【0078】
消色された画像領域の光沢度は、15以下にすることができる。光沢度が15を超えると、消去部の光沢が目立って消去が不十分に見える傾向がある。
【0079】
実施例
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する
実施例1
まず、トナーに含まれるバインダー樹脂は、テレフタル酸とビスフェノールAのエチレンオキサイド化合物を重縮合して得られる重量平均分子量Mwが6300のポリエステル(Polyester)系樹脂を95重量部、離型剤であるライスワックスを5重量部、アニオン性乳化剤であるネオゲンR(第一工業製薬社製)を1.0重量部、中和剤ジメチルアミノエタノールを2.1重量部の割合で、高圧ホモジナイザーを用いて混合し、バインダー樹脂の微粒化分散液として生成した。
【0080】
次に、色材は、呈色剤としてロイコ染料のCVL(Crystal violet lactone)を10重量部、顕色剤として4-ヒドロキシ安息香酸ベンジルを10重量部、温度コントロール剤としてラウリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを80重量部の割合で混合し、加熱し溶融した。そして、得られた混合溶融物を壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマーを混合した溶液をポリビニルアルコール水溶液中に滴下し、水溶性脂肪族変性アミンを加えて分散させ、色材をマイクロカプセル化した。
【0081】
そして、マイクロカプセル化した色材10重量部、バインダー樹脂およびワックスの微粒化分散液90重量部を、硫酸アルミニウム(Al(SO)を用いて凝集し、融着した。融着した材料をさらに、洗浄し、乾燥してトナー粒子を得た。この粒子100重量部に対し、疎水性シリカ(SiO)3.5重量%、酸化チタン(TiO)0.5重量%を外添混合して、実施例1のトナーを得た。
【0082】
上記トナーをキャリアと混合し、2成分現像剤を調整した。東芝テック製e−STUDIO3520Cを改造したものを用いて、定着温度85℃で定着速度75mm/sで定着・印字した。画像形成装置とは別に用意した消去専用機(e−STUDIO3520Cの定着機を改造したもの)で、消去温度130℃で加熱消去を実施した。消去時間は0.3秒であった。
【0083】
消去部分に再印字をし、合計4回の印字・消去を繰り返した。消去時の色差を測定した。
【0084】
(比較例1)
東芝製消せるトナー「e−blue」(登録商標)を用いた。製法はトナーバインダー樹脂とロイコ染料、顕色剤、消色剤、WAX等を混練して、得られた混練物を粉砕、分級してトナー粒子を得た。トナー粒子表面に添加剤を付与してトナーを得た。e−STUDIO3520Cで印字し、オプションの消去機で2時間かけて消去した。
【表1】

【0085】
また、光沢度を測定したところ、消去1回は、7.0であった。消去2回は、7.5であった。消去3回は、7.6であった。消去4回は、7.8であった。
【0086】
実施例1の試作トナーを用いて、トナー付着量を変化させて、4回印字、消去を行い画像濃度IDを測定した。なお、実施例1におけるトナー付着量は、0.60mg/cmであり、画像濃度IDは、0.43である。
【表2】

【0087】
トナー付着量が0.40mg/cmでは消去前画像IDが0.35と低く、画像が識別し辛い。トナー付着量が0.80mg/cmでは消去4回後の画像IDが0.23と消え残りが目立つものになっている。
【0088】
これらの実施形態又は実施例によれば、被転写材を劣化させることなく迅速に消え残りのない画像消去を行うことができる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
17…プリンタ部、20Y,20M,20C,20K…画像形成部、21…中間転写ベルト、22Y,22M,22C,22K…感光体ドラム、24Y,24M,24C,24K…現像器、100…画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、電子供与性呈色剤、及び電子受容性顕色剤を含む消去可能な現像剤を用いて、現像、転写、及び定着することにより被転写材上に形成された画像を消去する方法であって、
前記現像剤を用いて画像が形成された被転写材を現像剤を定着する温度以上の温度で、10秒以内の時間加熱して画像の消色を行なって、画像消色後の該被転写材表面において消色された画像領域と画像が形成されない領域との色差ΔEを5以下にする画像消去方法。
【請求項2】
前記被転写材として、画像の形成を3回及び画像の消色を3回行なった被転写材に4回目の画像を形成した被転写材を適用し、4回目の消色を行って、前記色差ΔEを5以下にする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記消色された画像領域の画像濃度が0.2以下である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記消色された画像領域の光沢度は、15以下である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
バインダー樹脂と、電子供与性呈色剤、電子受容性顕色剤、及び温度コントロール剤をマイクロカプセル化した色材とを含む消去可能な現像剤を用いて、現像、転写、及び定着することにより、被転写材上に形成された画像を消去する方法であって、
前記画像のトナー付着量は0.50mg/cm2〜0.75mg/cm2であり、前記現像剤を用いて画像が形成された被転写材を該現像剤を定着する温度以上の温度で、10秒以内の時間加熱して画像の消色を行なう画像消去方法。
【請求項6】
消色された画像領域と画像が形成されない領域との色差ΔEは5以下である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記被転写材として、画像の形成を3回及び画像の消色を3回行なった被転写材に4回目の画像を形成した被転写材を適用し、4回目の消色を行って、前記色差ΔEを5以下にする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記消色された画像領域の画像濃度が0.2以下である請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記消色された画像領域の光沢度は、15以下である請求項5に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−245860(P2011−245860A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117120(P2011−117120)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】