説明

画像表示装置、画像処理装置および画像表示方法

【課題】画像表示装置における画質補正技術に関し、色相調整を少ない計算量で実行する。
【解決手段】
色相補正量算出部510は、補正前画像の画素データのU、V成分(第1および第2の色差信号成分)の入力値から算出されている簡易色相角(色相角入力値)に対応しU、V成分のおのおのについてU値色相補正量およびV色相補正量(第1および第2の色相補正量)を算出する。色相補正演算部511は、U値色相補正量およびV色相補正量に基づいてU、V成分の入力値を補正することにより、補正後画像の画素データに対応するU、V成分の出力値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画質補正を行なう画像表示装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば外光の影響の大きい場所で画像表示装置を使用する場合、外光の映り込みにより、パネルに表示された画像が見え難くなるという問題がある。この原因は、映り込みにより表示画像のダイナミックレンジが狭まることにあり、外光の映り込みに伴い、照射前に比べて照射後の表示画像の色合いが低下して、くすんだ色になってしまうという課題があった。
【0003】
この外光照射後の画質低下の改善を目的として、コントラスト増大による画質補正を利用する場合がある。しかし、コントラストの増大を図る一方で、補正前の色相に比べて補正後の色相が変化してしまい、元画像の画質を反映しないという問題が生じた。
【0004】
従来技術として入力された画像信号の色空間から色相を判定する色相判定部と、画像信号の彩度データを算出する機能を有する画像処理装置において、色相ごとに彩度変化量を調整できる手段を有するものが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−274210号公報
【特許文献2】特開2005−204136号公報
【特許文献3】特開2007−228240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は色相調整をしようとすると計算量が大きくなるという問題があった。特に近年画素数の増大にともなって、一画素あたりの処理時間の短縮化の要請がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、外光照射で色相が変化した場合などにおいて色相調整を少ない計算量で実行可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
態様の一例では、補正前入力画像の各画素データから色差信号成分を算出する補正前画像入力部と、前記補正前入力画像の各画素の第1および第2の色差信号成分の絶対値の比率および大小関係と各々の符号に基づいて、前記補正前入力画像の各画素の色相角を近似する簡易色相角を算出する簡易色相角算出部と、前記簡易色相角を入力し、色相補正量を記憶した彩度色相補正テーブルを参照することにより、色相補正量の第1および第2の色差信号成分を独立に取得する色相補正量取得部と、前記色相補正量に基づいて、前記第1および第2の色差信号成分の出力値を算出する、色相補正演算部と、前記第1および第2の色差信号成分の出力値から補正後出力画像の各画素データを生成し、出力する補正後画像出力部とを備えることを特徴とする画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
外光照射等に対して色相調整を少ない計算量で行なう画像表示装置および方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】コントラスト増大による画質補正の説明図である。
【図2】U、Vガンマの1次元LUTを使った彩度補正による彩度改善手法の説明図である。
【図3】UV平面の2次元LUTを使った彩度補正による彩度改善手法の説明図である。
【図4】rθ極座標平面の2次元LUTを使った彩度補正による彩度改善手法の説明図である。
【図5】画像表示装置の実施形態の機能ブロック図である。
【図6】彩度の簡易算出手法の説明図である。
【図7】実施形態において採用する簡易色相角の座標系の説明図である。
【図8】簡易色相角の算出手法の説明図である。
【図9】彩度補正部504の動作概略の説明図である。
【図10】色相補正部505の動作概略の説明図(その1)である。
【図11】色相補正部505の動作概略の説明図(その2)である。
【図12】色相補正部505の動作概略の説明図(その3)である。
【図13】補正前画像入力部501の制御動作を示すフローチャートである。
【図14】簡易彩度算出部502の制御動作を示すフローチャートである。
【図15】簡易色相角算出部503の制御動作を示すフローチャートである。
【図16】彩度補正部504の制御動作を示すフローチャートである。
【図17】色相補正部505の制御動作を示すフローチャートである。
【図18】彩度色相補正テーブル507の具体例を示す図である。
【図19】補正後画像出力部508の制御動作を示すフローチャートである。
【図20】実施形態の装置を実現できるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の説明では、まず、通常考えられる彩度色相補正の技術とそれらの問題点および本実施形態との関係について説明をする。その後に、本実施形態の構成および動作について説明をする。
【0012】
図1は、コントラスト増大による画質補正の説明図である。図1(a)に示される補正前(元)画像に対して外光が照射された結果、図1(b)に示されるように、画像の彩度が悪化する。この画像に対して、従来技術によりコントラストを増大させる手法により補正を行うと、図1(c)に示されるように、画像の色相が変化してしまう。
【0013】
そこで、UVガンマの1次元LUTを使った彩度補正による彩度改善手法が考えられる。図2は、その説明図である。RGB色空間をYUV(またはYCbCr)色空間に変換したときの、UV色差信号成分(またはCb、Cr色成分、以下同様)は、彩度に関連する色成分である。より具体的には、彩度rは、次の(1)式のように、UとVの2乗和の平方根で表現される。
【0014】
彩度r=(U2 +V2 1/2 ・・・(1)
【0015】
外光照射による彩度補正を行う場合、例えば、地味目の色は彩度をあまり変えず、濃いめの色は大きく変えたいという要望がある。そこで、彩度に関連するU、V成分のうちの何れか一方または両方が、所望の補正用UVガンマ曲線特性を使って変換される。UVガンマ曲線特性は、入力値に対して補正後の出力値を出力する1次元LUT(ルックアップテーブル)を使って作られる。図2は、同じ1つの補正用UVガンマ曲線特性によって、U、V成分の両方の各値が補正される例が示されているが、彩度により大きな影響を及ぼす一方の成分のみが補正されてもよい。このようにして、U、V成分の何れか一方または両方が補正されることにより、結果的に、(1)式で表現される彩度rが強調されることになり、画像のコントラストが向上する。
【0016】
しかしながら、上述のUVガンマの1次元LUTを使った手法では、例えば、U、Vのうちの一方のみの色成分について彩度強調量の調整が行われる結果、U、Vの比率が、補正前と補正後とでずれてしまう。あるいは、図2に示されるように、U、Vの両方の色成分について彩度強調量の調整が行われる場合も、U、Vの各値に対応する補正用UVガンマ曲線特性は一般に異なるため、この場合も、U、Vの比率が、補正前と補正後とでずれてしまう。例えば図2の例では、1組のU、V値に対して、補正UVガンマ曲線特性により、U成分の値Uは同じUに、V成分の値Vは2Vに変換されるとすれば、UとVの値の比率は、補正前がU:V、補正後がU:2Vとなって、大きくずれることになる。図2の例から離れて具体的な数値例で説明すれば、例えば補正前のU、V値が(2,10)であったとする。この場合のUとVの比率は1:5となっている。これに対して、補正用UVガンマ曲線特性により、U値が2から2へ(そのまま)に、V値が10から18へというような補正がなされたとする。一般に、値が低い領域は、無彩色に近くなるため、あまり値を変更しないような補正がなされる場合が多い。このような補正がなされた場合には、補正後のUとVの比率は1:9に変化してしまう。理想的には、例えばU、V値2,10→4,20というように、U、Vの比率を変化させない補正が望ましいが、1次元LUTを用いた場合、実際にはそうすることは難しい。このように、UとVの比率がずれる結果、彩度の補正前と補正後とで色相、すなわち色合いが変化してしまい、画像表示上好ましくない。
【0017】
このような状態をなくすために、次のような演算を行うことが考えられる。まず、入力されたU、V値の比率をA、すなわち、次の(2)式とする。
【0018】
A=U/V ・・・(2)
【0019】
このときに、まず、入力されたU、V値を使って、前述した(1)式により彩度rを計算する。次に、入力彩度値に対して補正された彩度値を出力するための1次元LUTによる補正用彩度ガンマ曲線特性を使って、彩度値を補正する。そして、この補正後の彩度値と、入力されたU、Vの値から計算される比率Aを使って、前述した(1)式と(2)式の連立方程式を解くことにより、補正後のU、Vの値が算出される。具体的な数値例で説明すれば、例えば補正前のU、V値が先ほどの例と同じ2,10であったとする。この場合(2)式はU/V=2/10=1/5となっている。また(1)式により、彩度r=(U2 +V2 1/2 =(22 +102 1/2≒10.2となる。これに対して、補正用彩度ガンマ曲線特性により、彩度rが10.2から19に強調補正されたとする。この結果、この彩度値を(1)式に代入することにより、(2)式と合わせて、下記の連立方程式が解かれる。
【0020】
19=(U2 +V2 1/2
V=5U
これより、
19=(U2 +25U2 1/2
従って、
U≒3.73
V=5U≒18.65
と求まる。このようにして、彩度を適切に補正しながら、U、V値の比率を補正前と同じに維持して色相が変化しないように調整することができる。
【0021】
しかしながら、このような手法だと、1秒間に数十回のリフレッシュレートで画像表示装置上の膨大な画素数(数十万画素から数百万画素)の各画素について、上述の演算を行う必要があり、大きな演算コストがかかってしまう。
【0022】
そこで、U、V平面の2次元LUTを使った彩度補正による彩度改善手法が考えられる。図3はその説明図である。この手法では、U、Vの各成分が彩度だけではなく色相も決定する成分であることに着目し、UV平面上の離散的なポイントにおいて補正量を保持する。これは、入力される(U、V値)の各値組毎に補正量を保持する2次元LUTを使って実装される。そして、入力されたU、V成分のポイントに対応する補正量がLUTから読み出され、補正されたU、V成分が出力される。U、V成分に対応するポイントが離散ポイント間に存在するときの補正量は、そのポイントの周囲の離散ポイントの補正量からの補間演算により算出する。
【0023】
このUV平面の2次元のLUTを使った手法において、図3に例示されるように、離散ポイントは、UVの格子状となる。従って、図3に示されるように、図3に示される彩度が高い領域では、入力されたU、V値がわずかに変更になった程度ではその値組の近傍の離散ポイントを参照することができ、それに基づいて精度の高い補正を行うことができる。しかし、図3に示される彩度が低い領域では、入力されたU、V値がわずかに変更になっただけでも参照される離散ポイントにおけるUとVの位相関係が大きく変化してしまう。UとVの位相関係は色相を決定するため、図3に示される彩度が低い領域では、U、V値の変化に対する色相の変化が大きく、色相観点で離散ポイントが粗くなってしまい、補正後に画像の色合いが変わってしまうという問題が生じる。
【0024】
そこで、次のようなさらなる改善手法が考えられる。この手法では、入力された信号により表示される色を調整する表示装置を備える。そして、入力信号の値のうちのU,V成分を極座標変換する手段と、極座標空間の角度を用いて色を特定し、特定した色に明度の調整を行う明度調整手段と、特定した色に彩度の調整を行う彩度調整手段と、特定した色に色相の調整を行う色相調整手段とを有する。これにより、明度、彩度及び色相の調整をそれぞれ独立して行う。図4はその説明図である。
【0025】
今、明度は、入力信号のYin値として表される。また、彩度rは、U、V成分から、前述した(1)式と同様の次の(3)式により算出される。
【0026】
彩度r=(U2 +V2 1/2 ・・・(3)
また、色相角θは、U、V成分に対して、次の(4)式の関係を有する。
tanθ=(V/U) ・・・(4)
従って、色相角θは、U、V成分から、次の(5)式により算出される。
θ=tan-1(V/U) ・・・(5)
【0027】
(3)式および(4)式の関係より、U、V成分と、彩度rおよび色相角θとの関係は、図4(a)のようになる。すなわち、無彩色基準点を原点とするUV平面上において、原点から入力されたU、V成分によって決まるポイントまでの線分を引いたときに、その線分長さが彩度rとなり、その線分とU軸とのなす角度が色相角θとなる。図4(a)より、彩度rと色相角θは、極座標系を構成することがわかる。
【0028】
そこで、さらなる改善手法では、rθ極座標平面上の離散的なポイントにおいて補正量を保持する。そして、入力されたU、V成分のポイントから、まず、彩度rと色相角θが前述の(3)式および(5)式により算出される。そして、算出された彩度rと色相角θのポイントに対応する彩度と色相角と明度の補正量がLUTから読み出され、補正された彩度と色相角と明度が算出される。そして、前述の(3)および(4)式により、その補正された彩度と色相角に基づいて、補正されたU、V成分、およびこれに加えて補正された明度成分Yが算出されて出力される。
【0029】
このrθ平面の2次元のLUTを使った手法において、図4(b)に例示されるように、離散ポイントは、rθの格子状となる。従って、図4(b)に示されるように、彩度補正において彩度を所定倍数倍しようとしたときに、彩度が高い領域でも低い領域でも、十分な数の離散ポイントから補正量を算出でき、補正後に画質は劣化しない。
【0030】
しかしながら、LUTをrθによる極座標系とする手法では、色相角θの算出に前述した(5)式の三角関数の計算が必要であり、彩度rの算出には前述した(3)式の二乗和と平方根の計算が必要となる。また、LUTから読み出された彩度と色相角の補正量に基づいて補正された彩度と色相角を算出する処理も、同様の計算が必要となる。このため、1秒間に数十回のリフレッシュレートで画像表示装置上の膨大な画素数(数十万画素から数百万画素)の各画素について、上述の演算を行う必要があり、大きな演算コストがかかってしまうという問題が生じる。
【0031】
これを解決する技術として、次のような技術が考えられる。すなわち、入力されたRGB画像信号を変換したYUV信号において、彩度値を、U成分とV成分の2乗和あるいは簡易的にUおよびVの絶対値の和として算出する。また、色相値を、入力されたRGB画像信号を変換した2次元の色差信号X、Yに基づいて、X、Y平面を8分割した各区域ごとのY/Xの演算により色相角を簡易的に求める。このようにして求めた彩度値と色相角に基づいて、LUTを参照することにより、彩度変換係数を参照する。そして、補間演算により最終的な彩度変換係数を決定した後、その彩度変換係数を、入力されたRGB画像信号を変換したYUV信号のU成分とV成分に乗算することにより、彩度調整を行う。
【0032】
この技術では、入力されたRGB画像信号を変換したYUV信号から色相情報と彩度データを求める演算を、上述したような簡易演算で実行することにより、演算コストを削減することが可能になる。
【0033】
しかし、この技術では、色相情報と彩度データの算出に簡易演算を採用した結果、彩度調整を行っただけでは、元の画像信号の色相が変化してしまい画質が低下してしまう場合がある。
【0034】
また、外光照射においては、外光の性質によって、特定の色相のみ特性が変化するような場合もあり、その場合には、彩度調整だけでなく色相調整も必要になる。しかし、上述の技術では、色相調整に対応することはできない。
【0035】
入力された色相情報と彩度データに基づいて色相調整用のLUTを用いて色相調整を行うことも考えられるが、色相調整は、色相調整後の色相角に基づいて前述した(4)式のような三角関数を計算する必要がある。このため、演算コストを削減できる色相調整技術は、知られていなかった。
【0036】
以下に、本実施形態の構成および動作について、詳細に説明する。
図5は、画像処理装置たとえば画像表示装置の実施形態の構成図である。
【0037】
補正前画像入力部501は、画像表示デバイスに表示されるべき補正前入力RGB画像の各画素データを入力し、補正前画像入力部501からの補正前入力RGB画像の各画素データを補正前入力YUV信号成分に変換する。
【0038】
簡易彩度算出部502は、補正前画像入力部501が算出した補正前入力YUV信号成分のU色差信号成分(青)およびV色差信号成分(赤)のうち、無彩色基準の絶対値の大きい方の値として、簡易彩度を算出する。この簡易彩度は、補正前入力YUV信号成分の彩度を近似するものである。
【0039】
簡易色相角算出部503は、補正前画像入力部501が算出した補正前入力YUV信号成分のU、V成分の各々の無彩色基準の絶対値の比率および大小関係と各々の符号に基づいて、簡易色相角を算出する。この簡易色相角は、補正前入力YUV信号成分の色相角を近似するものである。
【0040】
彩度補正部504は、簡易彩度算出部502および簡易色相角算出部503がそれぞれ算出した補正前入力YUV信号成分の簡易彩度および簡易色相角に基づいて、補正前入力YUV信号成分の彩度の補正を行う彩度補正量を算出する。より具体的には、彩度補正部504は、簡易彩度および簡易色相角の離散値の組に対して彩度補正量を記憶する彩度色相補正テーブル506を有する。彩度補正部504は、補正前入力YUV信号成分の簡易彩度および簡易色相角の値の組を入力として、彩度色相補正テーブル506上の複数の彩度補正量からの補間演算により、補正前入力YUV信号成分の彩度補正量を算出する。
【0041】
色相補正部505は、色相補正量算出部510と色相補正演算部511とを有する。
色相補正量算出部510は、彩度入力値および色相角入力値として、簡易彩度算出部502および簡易色相角算出部503がそれぞれ算出した簡易彩度および簡易色相角を入力する。そして、簡易彩度および簡易色相角の各入力値に対応しU、V成分(第1および第2の色差信号成分)毎に独立にU値色相補正量およびV値色相補正量(第1および第2の色相補正量)を算出する。
【0042】
この色相補正量算出部510は、色相補正量取得部520と色相補正量UV成分取得部521と色相補正量補間部522とを有する。
【0043】
色相補正量取得部520は、U、V成分の入力値から算出した簡易彩度および簡易色相角を入力する。そして、簡易彩度および簡易色相角の各離散値毎に、色相補正量を記憶した彩度色相補正テーブル507を参照する。この結果、複数の色相補正量の離散値を取得する。
【0044】
色相補正量UV成分取得部521は、各色相補正量の離散値を、色相角入力値である簡易色相角に基づき、U値色相補正量およびV値色相補正量の離散値に分解する。
【0045】
色相補正量補間部522は、U値色相補正量およびV値色相補正量の離散値をそれぞれ補間して、補間されたU値色相補正量およびV値色相補正量を算出して出力する。
【0046】
色相補正演算部511は、色相補正量算出部510が出力するU値色相補正量およびV値色相補正量に基づいて、彩度補正部504から出力されるU、V成分の入力値を補正することにより、補正後画像の画素データに対応するU、V成分の出力値を算出する。より具体的には、U値色相補正量およびV値色相補正量に、簡易彩度算出部により算出した簡易彩度を乗算した各結果を、それぞれU,V成分の入力値に加算することにより、U、V成分の出力値を算出する。
【0047】
補正後画像出力部508は、色相補正部505から出力される補正後のU、V成分と補正前のY成分とを、出力RGB画像の各画素データに変換し、画像表示デバイスに出力する。
【0048】
以上の構成を有する画像表示装置の実施形態の動作について、まず説明する。
前述したように、本実施形態は、補正前入力YUV信号成分のうちのU、V成分から、簡易彩度と簡易色相角を簡易な演算方法で近似計算し、LUTをこの簡易彩度と簡易色相角による行列とするものである。
【0049】
そこでまず、彩度の簡易演算手法について説明する。
通常は、U、V成分から彩度rを算出するためには、前述した(1)式を計算する必要がある。これに対して、本実施形態では、U、Vの各成分を無彩色基準にて|U|、|V|として絶対値化した後、この|U|、|V|のうち大きい方の色度を彩度として決定する。以下、このようにして決定された彩度を、簡易彩度と呼ぶ。図6(a)において簡易彩度値を8とする。この場合第1象限において0≦V≦8のときU=8である。これはUV座標(8,0)を通ってU軸に垂直な直線である。0≦U≦8のときV=8となる。これはUV座標(0,8)を通ってV軸に直線となる。
【0050】
ここで、無彩色基準とは、例えば補正前入力YUV信号成分の各データ値が0〜255までの256階調として表現されている場合、中心値の128が無彩色基準値0となるような基準をいう。
【0051】
通常、LUTを彩度rと色相角θによる極座標系とした場合、図4(a)に示したように、UV平面上で彩度rは、無彩色基準値を原点として放射状に伸びる線分の半径に対応する。従って、彩度rの複数の離散値について、同じ彩度rを有するU、Vの入力値の分布は、図6(b)に示されるように、同心円状の分布となる。これに対して、本実施形態において、上述の簡易彩度を採用した場合、簡易彩度の複数の離散値について、同じ簡易彩度を有するU、Vの入力値の分布は、図6(a)に示されるように、同心の正方形分布となる。図6(a)の同心正方形は図6(b)の同心円の近似となる。
【0052】
このように分布する簡易彩度を使ってLUT上で離散ポイントを作成することにより、本来の彩度分布とほぼ同じ傾向をもった彩度補正を行うことが可能となる。しかも、簡易彩度の演算は、U、V成分の絶対値化と各成分の大小判定だけで済むため、非常に簡単に行うことが可能となる。
【0053】
次に、色相角の簡易演算手法について説明する。
本実施形態における色相角の演算においては、YUV座標系を利用した、図7に示されるような、離散型の彩度色相補正制御手法(チャート)を利用する。
【0054】
図7において、チャートの角度が各色相角に対応する。U軸(0)は青色の色差、V軸(2)は赤色の色差を示す。図7の例では、色相角は、0から7までの8分割された値を有する。この分割数は、8分割に限られるものではなく、16分割またはもっと少なくても、多くても良い。
【0055】
図7において、I、II、III、IVはそれぞれ、各色相角における象限、すなわち、第1象限、第2象限、第3象限、第4象限を示す。この象限は、色相角の判定で使用する。
【0056】
最初に、図7の第1象限(I)の位置にあるUV座標の色相角を求める方法について示す。
色相角を簡易に算出するために、図8(a)に示されるような四角のUV座標系を使用する。すなわち、UV座標の無彩色原点を中心とする正方形の辺と原点からの放射直線との各交点を簡易色相角の値に対応させ0、±π/4、±π/2、±π3/4に対応する簡易色相角の値を列の等間隔彩度値に行が対応するテーブルの各要素の補正値を補間し、適切な彩度色相値を小演算量で求める。いま、例えば第1象限(I)において、U軸とV軸を含む適当な正方形の四角形の領域を考える。ここでまず、U軸の正方向を簡易色相角0と定義する。次に、原点からU軸の正方向と45°の角度をなす線分801を考え、この線分がU軸の正方向となす簡易色相角を、tan45°と同じ値1と定義する。さらに、V軸の正方向がU軸の正方向となす簡易色相角を2と定義する。同様にして、図7に示されるように、45°おきの方向の簡易色相角を3,4,5,6,7と定義する。
【0057】
ここで、図8(a)に示されるように、例えば第1象限(I)において、U軸とV軸を含む適当な正方形において、U軸、V軸以外の2辺をそれぞれ例えば10等分する(図8中の「●」で示される位置)。そして、U軸と45°線分801との間を10等分した各等分点と原点とを結ぶ線分がU軸の正方向となす簡易色相角を、45°線分801の簡易色相角1を10で割った値0.1,0.2,・・・,0.8,0.9と定義する。また、45°線分801とV軸を10等分した各等分点と原点とを結ぶ線分がU軸の正方向となす簡易色相角を、V軸の簡易色相角2と45°線分801の簡易色相角1の間を10等分した値1.1,1.2,・・・,1.8,1.9と定義する。このような定義によれば、U軸と45°線分801との間を10等分した各等分点と原点とを結ぶ線分の簡易色相角は、U、V成分の各絶対値の比|V|/|U|として算出できる。例えば、角度45°を2等分したときの角度22.5°のtan値(tan22.5)は0.414となる。U軸と45°方向の線分801をちょうど2分する位置802の等分点と原点とを結ぶ線分の簡易色相角は、|Va |/|Ua |=0.5と計算できる。よって簡易位相角を|Va |/|Ua |=0.5とあらわすことはtan値=tan22.5=0.414に十分に近似できる。これによって実際の角度22.5°を簡易位相角すなわち線分比0.5によって近似できる。この線分比0.5に対応する角度は22.5°に近い。さらに、45°線分801とV軸を10等分した各等分点と原点とを結ぶ線分の簡易色相角は、V軸側から45°線分801を見たときのU、V成分の各絶対値の比|U|/|V|とV軸の簡易色相角2を使って、2−|U|/|V|として算出できる。例えば、V軸と45°方向の線分801とをちょうど2分する位置803の等分点と原点とを結ぶ線分の簡易色相角は、2−|Ub |/|Vb |=2−0.5=1.5と計算できる。等分点802と原点を通る線分がU軸となす簡易色相角は、正確には45°の1/2の22.5°にはならない。等分点803についても同様である。しかしながら、45°線分801の簡易色相角を1、V軸の簡易色相角を2と定義した上で、等分点802の簡易色相角を0.5、等分点803の簡易色相角を1.5と定義することは、元々の角度を十分に近似する角度の近似方法になる。しかも、この簡易色相角の算出においては、前述の(5)式のような三角関数計算を行う必要はなく、簡単な比率計算に基づいて行うことができる。
【0058】
以上の考察に基づいて、図8(a)に例示される第1象限においては、以下のアルゴリズムにより、簡易色相角を算出する。
(1)図の点線のように、色相角を四角形の線分上の比率として表わす。
(2)原点を無彩色基準の値とする。例えばYUV数値が256階調表示の
場合、U成分およびV成分のそれぞれの中心値の128が0となる。
(3)各座標を絶対値表示とする。
(4)U軸とV軸の中央の角度45°(傾き1)を境に場合分けする
距離が近いほうの軸(U、V)を基準に色相角を導く(基準軸を求める)。
【0059】
(a)45°以下の場合(例えば図8(a)のAの位置の場合):
|Ua |>|Va | である。
傾きは1以下であり、U軸に近い。Aの簡易色相角算出の基になる
比率は、|Va |/|Ua | と求まる。 (分母は|Ua |)
第1象限のU軸上(正方向)の数値は0である。
よってAの簡易色相角は、
0+(|Va |/|Ua |)=|Va |/|Ua | と求まる。
(b)45°より大きい場合(例えば図8(a)のBの位置のな場合):
|Vb |>|Ub | である。
Bは、距離がU軸よりもV軸に近い。よってV軸を基準にする。
Bの簡易色相角算出の基になる比率は、
|Ub |/|Vb | と求まる。 (分母は|Vb |)
第1象限のV軸上(正方向)の数値は2である。
よってBの簡易色相角は、
V軸(正方向)の値2から|Ub |/|Vb |を引いた値:
2−(|Ub |/|Vb |) と求まる。
【0060】
次に、図7の第1象限(I)以外の位置にあるUV座標の色相角を求める方法の例を示す。図8(b)に示されるような第2象限(II)の座標Cの位置の色相角を求める方法例について説明する。
【0061】
(1)原点を無彩色基準の値とする。
(2)各座標を絶対値表示とする。
(3)U軸とV軸の中央の角度45°(傾き1)を境に場合分けする。
第2象限ではV軸(正方向)を基準0°とし、左回りに正方向角度とする。
−最初に図8(b)のCの位置がU軸に近いか、V軸に近いかを把握する。
・その結果、Cの位置は、V軸(正方向)から見て45°より大きく、U軸
(負方向)に近い値となっている。そこで、U軸を基準に色相角を求める。
(4)|Uc |と|Vc |の大小関係を求める。図8(b)のCでは、
|Uc |>|Vc | である。
(5)図8(b)のCの簡易色相角算出の基になる比率を求める。
(3)からU軸が基準であるから、
|Vc |/|Uc | と求まる。 (分母は|Uc |)
(6)図8(b)のCの簡易色相角を求める
第2象限では、V軸上(正方向)の数値は2、U軸上(負方向)の数値は
4である。座標CはU軸(負方向)が基準であるので、数値4を使う。
−よって、Cの簡易色相角は、
数値4から|Vc |/|Uc |を引いた値:
4−(|Vc |/|Uc |) と求まる。
【0062】
図7の第3象限(III)、第4象限(IV)の位置にあるUV座標の色相角を求める方法も同様である。
【0063】
以上のようにして、本実施形態では、U、V成分の無彩色基準の絶対値の比率および大小関係と各々の符号に基づく判定処理と、簡単な加減算および比率計算によって、簡易色相角を算出することができる。
【0064】
この簡易色相角は、図8(a)および(b)に示されるように、図7のように分類された色相角上で対応する位置の補間値になるように演算され、U、V成分が本来持つ色相角に良く対応している。
【0065】
従って、このようにして演算される簡易色相角は、本来の色相角を良く代替する情報となり得る。
【0066】
以上のようにして、図5の簡易彩度算出部502および簡易色相角算出部503で算出される簡易彩度および簡易色相角を用いた彩度補正部504および色相補正部505の動作概略について、以下に説明する。
【0067】
まず、彩度補正部504が参照する彩度色相補正テーブル506は、図9(a)に示されるようなデータ構成を有する。簡易彩度として算出され得る0〜128の値のうち例えば16値ごとの彩度離散値、および簡易色相角の整数部として算出され得る0〜7(8分割の場合、16分割の場合は0〜15)までの色相角の位置の離散値をインデックスとして、各彩度補正量が記憶される。すなわち、a1,a2,・・・,a7(彩度離散値0、色相角の位置の離散値0〜7に対して),b1,b2,・・・,b7(彩度離散値16、色相角の位置の離散値0〜7に対して)である。同様にして、h1,h2,・・・,h7(彩度離散値112、色相角の位置の離散値0〜7に対して),i1,i2,・・・,i7(彩度離散値128、色相角の位置の離散値0から7に対して)である。
【0068】
簡易彩度および簡易色相角ともに、彩度色相補正テーブル506上のインデックスである彩度および色相角の位置の各離散値の中間の値をとり得る。そこで、彩度補正部504は、簡易彩度算出部502および簡易色相角算出部503にて算出された簡易彩度および簡易色相角ごとに、それらの値を挟み込む彩度色相補正テーブル506上の各インデックスの2つずつの離散値に対応する4つの彩度補正量を読み出す。すなわち、図9(b)に示されるごとくである。そして、2つの彩度離散値と簡易彩度との補間演算および2つの色相角離散値と簡易色相角との補間演算により、入力された簡易彩度および簡易色相角に対応する、補間された彩度補正量を算出する。補間演算は、直線補間演算でもよいし、もっと簡便に所定のアルゴリズムで代表値を選択するような補間演算でもよい。例えば、図9(b)に示される4つの離散ポイントの彩度補正量をそれぞれ例えばa1,a2,b1,b2とし、それらの離散ポイントに対して、入力された簡易彩度および簡易色相角から計算される重みw1,w2,w3,w4を設定する。この場合、補間された彩度補正量は、
(w1×a1+w2×a2+w3×b1+w4×b2)
÷(w1+w2+w3+w4)
として算出することができる。
【0069】
なお、彩度色相補正テーブル506において、色相角の位置ごとに彩度補正量を持たせる必要がないときには、彩度の各離散値に対して、各色相角の位置ごとに同じ値の彩度補正量を記憶させればよい。あるいは、色相角の位置ごとの記憶領域は設ける必要がなく、彩度の各離散値に対して1つのみの彩度補正量を記憶させればよい。
【0070】
以上のようにして算出される彩度補正量を用いた彩度補正部504での彩度補正処理の動作概略について、以下に説明する。
【0071】
彩度補正量は、予め彩度補正テーブルに任意の値の数値を設定しておく。
この彩度補正テーブルを使って、任意の彩度における彩度補正量を補間演算によって
求める。(例えばテーブルにない彩度における彩度補正量を求める場合に補間演算を
行なう。)
【0072】
彩度補正処理は、補正前入力YUV信号成分のU信号成分およびV信号成分を元U値および元V値としたとき、彩度補正後の無彩色基準のU値およびV値は、次の(6)式および(7)式で計算することができる。
【0073】
彩度補正後U値(無彩色基準)
=元U値+元U値×彩度補正量・・・(6)
彩度補正後V値(無彩色基準)
=元V値+元V値×彩度補正量・・・(7)
上記(6)式と(7)式を合わせて、次の(9)式のように表現する。
彩度補正後UV値(無彩色基準)
=元UV値+元UV値×彩度補正量・・・(9)
【0074】
以上のようにして、彩度補正部504は、補正前入力YUV信号成分と彩度補正量とに基づいて彩度補正処理を実行し、彩度補正後UV値(無彩色基準)を出力する。
【0075】
次に、図5の色相補正部505は、彩度色相補正テーブル507を参照し、補正対象の色相角を色相補正量が示す任意の簡易色相角だけずらすことにより、各画素の色相を制御する。
【0076】
色相補正については図10(c)の色相補正チャートを使用する。このチャートを使って、U値とV値の各直交成分で別々に色相補正を行う。この色相補正の具体的手順を以下に説明する。
色相角の調整は、左回りに補正を行うと規定する(右回りでも良いがどちらか決めておく)。
【0077】
ステップ1 最初に、左下の彩度色相補正テーブルの補正対象の色相角の位置に、任意の補正数値(角度)を挿入する。
【0078】
ステップ2 補正前UV値から求めた彩度及び色相角に対して、彩度色相補正テーブルにより補間を行う。色相補正量H1(図11(a)(b))を求める。
【0079】
ステップ3 ステップ2で求めた色相補正量H1を、図11(a)(b)に示すように、Uの色相補正、Vの色相補正の各定点(0,1,・・・,7)にそれぞれ割付ける。
【0080】
−U軸、V軸の向きに対応してH1の符号を変える。例えばUの色相補正の場合は、1,2、3の位置では負、5、6、7の位置では正の符号となる。また、Vの色相補正の
場合は、7、0、1の位置では正、3,4、5の位置では負の符号がつく。
−Uの色相補正では、U軸上(0,4)は色相補正量が0となる。
−Vの色相補正では、V軸上(2,6)は色相補正量が0となる。
【0081】
ステップ4 ステップ3で求めた、0、1、・・・7の各定点におけるU色相補正量及びV色相補正量を用いて、補間演算により、「補正前UV値から求めた色相角」に対する各色相補正量を求める。
【0082】
ステップ5 ステップ4により求めたU、Vの各色相補正量を、補正前のU、V値(無彩色基準)に対して、以下の式により付加して、色相補正後のUV値を求める。
色相補正後U値= 補正前U値+彩度×U色相補正量・・・1)
色相補正後V値= 補正前V値+彩度×V色相補正量・・・2)
−すなわち、色相補正後のU,V(無彩色基準)をそれぞれ独立に算出することができる。
ステップ6 無彩色基準U、V値を通常のYUV値に変換する。
【0083】
以下、上記各ステップについて詳細に説明する。
この場合、色相角を、図10(a)に示すように、左回り(反時計回り)に角度回転して色相をシフトさせる。
【0084】
まず、ステップ1について説明する。
図10(b)のように、彩度色相補正テーブル507に、色相補正量として、シフト対象の簡易色相角を格納する。
【0085】
次に、ステップ2およびステップ3について説明する。
図10(b)に示されるデータ構成を有する彩度色相補正テーブル507において、彩度色相補正テーブル506の場合と同様に、彩度のインデックス値は例えば16値ごとの離散値、色相角の位置の離散値は0〜7(または0〜15)の数値をとり得る。これらのインデックスで指定される記憶領域ごとに、各色相補正量が記憶される。すなわち、0,0,・・・,0,a7(彩度離散値0、色相角の位置の離散値0〜7に対して),0,0,・・・,0,b7(彩度離散値16、色相角の位置の離散値0〜7に対して)である。同様にして、0,・・・,h7(彩度離散値112、色相角の位置の離散値0〜7に対して),0,0,・・・,0,i7(彩度離散値128、色相角の位置の離散値0から7に対して)である。この例では、色相角の位置の離散値7に対してのみ色相補正量が有意な値を有し、その他に対しては全て0である。
【0086】
このように、対象の色相角のみ角度を回転させて、他の色相角は変化させないようにすることで、図10(c)のように、対象の色相角のみ所望の色相角にずらすことができる。
【0087】
なお、彩度色相補正テーブル507において、彩度の離散値ごとに色相補正量を持たせる必要がないときには、色相角の位置の各離散値に対して、各彩度ごとに同じ値の色相補正量を記憶させればよい。あるいは、彩度ごとの記憶領域は設ける必要がなく、色相角の位置の各離散値に対して1つのみの色相補正量を記憶させればよい。
【0088】
本実施形態における色相補正処理において、図10(c)の彩度色相補正チャートに示されるように、例えばU軸またはV軸付近の簡易色相角の軸を基準軸であるU軸またはV軸、あるいは45°の軸に近づけるような位相補正を行うことを考える。
【0089】
まず、図10(c)中のU軸に近い破線で示される簡易色相角の軸をU軸に近づけるような簡易色相角α1の補正を行う場合において、簡易色相角の補正量α1をU成分の補正量とV成分の補正量に分解して考える。ここでα1は彩度色相補正テーブル上で色相角0の位置に格納されている。
【0090】
この場合に、簡易色相角が0または4であるU軸付近においては、簡易色相角の軸を回転させたとき、U成分の色相補正量(以下これを「U値色相補正量」と呼ぶ)はあまり変化しない。これに対して、V成分の色相補正量(以下これを「V値色相補正量」と呼ぶ)は比較的大きく変化する。例えば、図10(c)の簡易色相角の補正量α1を考えたとき、色相補正量α1に対応するU成分であるU値色相補正量u1は小さい値であるのに対して、色相補正量α1に対応するV成分であるV値色相補正量v1は比較的大きい値となる。そして、ちょうどU軸上の簡易色相角での色相補正を考えたときには、或る色相補正量に対応するU値色相補正量は0となり、V値色相補正量の絶対値は成分分解前の色相補正量の絶対値に等しくなる。
【0091】
一方、簡易色相角が2または6であるV軸付近においては、簡易色相角の軸を回転させたとき、U成分のU値色相補正量は比較的大きく変化し、これに対して、V成分のV値色相補正量はあまり変化しない。例えば、図10(c)の簡易色相角の補正量α2を考えたとき、色相補正量α2に対応するU成分であるU値色相補正量u2は比較的大きい値であるのに対して、色相補正量α2に対応するV成分であるV値色相補正量v2は小さい値となる。そして、ちょうどV軸上の簡易色相角での色相補正を考えたときには、或る色相補正量に対応するU値色相補正量の絶対値は成分分解前の色相補正量の絶対値に等しくなり、V値色相補正量は0となる。ここでα2は彩度色相補正テーブルの色相角2の位置に格納されている。
【0092】
更に、簡易色相角が1、3、5,または7である45°付近においては、簡易色相角の軸を回転させたとき、U成分のU値色相補正量とV成分のV値色相補正量はほぼ同じくらいの変化量となる。例えば、図10(c)の簡易色相角の補正量α3を考えたとき、色相補正量α3に対応するU成分であるU値色相補正量u3とV成分であるV値色相補正量v3はほぼ同じくらいの値となる。そして、ちょうど45°基準軸上の簡易色相角での色相補正を考えたときには、或る色相補正量に対応するU値色相補正量の絶対値とV値色相補正量の絶対値は同じ値となり、(成分分解前の色相補正量の絶対値)/√2 となる。ここでα3は彩度色相補正テーブルの色相角5の位置に格納されている。
【0093】
なお、U軸またはV軸とは異なる角度に基準軸を設ける場合には、事前に任意の角度βだけ、基準軸をずらして対応する基準軸角度シフト処理を実行すればよい。
【0094】
以上の考察に基づき、図5の色相補正量取得部520は、補正前入力YUV信号成分から算出される簡易彩度と簡易色相角で図10(b)に示される彩度色相補正テーブル507を参照し、簡易彩度と簡易色相角の各値の近傍の各離散値に対応する各色相補正量を読み出す。そして、図5の色相補正量UV成分取得部521は、読み出した各色相補正量を、その色相補正量が0から7までの簡易色相角のどの位置に対応するものであるかによって、色相補正量の絶対値をU値色相補正量の絶対値とV値色相補正量の絶対値に分解する。この処理は、上述したアルゴリズムに基づいて実行される。
このとき、U値色相補正量とV値色相補正量の各符号は、次のように付加する。
【0095】
まず、図10(a)に示したように、色相補正は、簡易色相角の軸をU軸を基準として左回り(反時計回り)に回転させるように行う。
【0096】
この結果、図11(a)に示されるように、色相補正量H1のU成分については、簡易色相角が第1象限(I)または第2象限(II)上にあるときは減少する方向(H1)に、簡易色相角が第3象限(III)または第4象限(IV)上にあるときは増加する方向(H1)に変化する。すなわち、U値色相補正量の符号としては、簡易色相角が第1象限(I)または第2象限(II)上にあるときは負符号が、簡易色相角が第3象限(III)または第4象限(IV)上にあるときは正符号が付加される。
【0097】
一方、図11(b)に示されるように、色相補正量H1のV成分については、簡易色相角が第1象限(I)または第4象限(IV)上にあるときは増加する方向(H1)に、簡易色相角が第2象限(II)または第3象限(III)上にあるときは減少する方向(H1)に変化する。すなわち、V値色相補正量の符号としては、簡易色相角が第1象限(I)または第4象限(IV)上にあるときは正符号が、簡易色相角が第2象限(II)または第3象限(III)上にあるときは負符号が付加される。
【0098】
以上のようにして、色相補正量UV成分取得部521は、補正前入力YUV信号成分から算出される簡易彩度と簡易色相角の各値の近傍の各離散値に対応する各色相補正量ごとに独立に、U値色相補正量およびV値色相補正量を算出する。
【0099】
次に、ステップ4について説明する。
そして、図5の色相補正量補間部522は、複数の離散値に対応する各U値色相補正量から、簡易彩度と簡易色相角の各値に基づいて補間演算により、補間されたU値色相補正量を算出する。同様に、色相補正量補間部522は、複数の離散値に対応する各V値色相補正量から、簡易彩度と簡易色相角の各値に基づいて補間演算により、補間されたV値色相補正量を算出する。
【0100】
次に、ステップ5について説明する。
以上のようにして算出される補間されたU値色相補正量およびV値色相補正量を用いた図5の色相補正演算部511での色相補正処理の演算処理について、以下に説明する。
【0101】
いま例えば、図12に示されるように、U軸上の2点U1、U2を、破線上の角度θだけ補正する場合を考える。このとき角度θが同じでも、U1、U2の大小に対応して、補正量V1、V2は異なる。U1から求めた値V1をそのままV2とすることはできない。なぜなら、角度(UとVの比)が変ってしまうからである。すなわち、U1が4、U2が16で、破線の傾きが1(45°)の直線上に補正する場合、(U1、V1)は(4、4)、(U2、V2)は(16、16)となる。しかし、(U2、V1)のように、U1から求めた値V1を使って(16、4)とすることはできない。それぞれの簡易彩度|U1|、|U2|に対応してV1、V2の値を決める必要がある。
【0102】
そこで、本実施形態では、色相補正後のU値およびV値は、次の(10)式および(11)式で計算される。
色相補正後U値=補正前U値+簡易彩度×U値色相補正量・・・(10)
色相補正後V値=補正前V値+簡易彩度×V値色相補正量・・・(11)
【0103】
上記(10)式と(11)式を合わせて、次の(12)式のように表現する。
色相補正後UV値
=補正前UV値+簡易彩度×UV値色相補正量・・・(12)
【0104】
ここで、補正前UV値(補正前U値と補正前V値)としては、(6)式および(7)式に基づいて彩度補正部504で補正された結果である彩度補正後U値と彩度補正後V値が入力される。
【0105】
以上のようにして、色相補正演算部511は、色相補正処理を実行する。
そしてステップ6に示すように無彩色基準U、V値を通常のYUV値に変換して完了する。
【0106】
この処理は後述する補正後画像出力部508によって実行される(図19参照)。
なお、上述の説明では、彩度補正部504による彩度補正量の算出と彩度補正処理の後に、色相補正部505による色相補正量の算出と色相補正処理が実行されるが、それらの順番は逆であってもよい。あるいは、色相補正部505が単独に動作するようなシステムであってもよい。
【0107】
以上に説明した本実施形態の画像表示装置では、まず、U、V成分から彩度成分と色相角成分を簡易な手法で簡易彩度および簡易色相角として近似計算し、LUTをこの簡易彩度と簡易色相角による座標系とする。これにより、彩度と色相角をベースとする極座標系に準じた座標系でLUTを構成することにより補正後の画質の劣化を防ぐと共に、U、V成分から彩度成分と色相角成分を簡易な手法で近似計算することにより、演算コストの増大を抑制することが可能となる。さらに、本実施形態では、簡易彩度と簡易色相角に基づいて彩度色相補正テーブルを参照して彩度調整を行うにとどまらず、簡易彩度と簡易色相角の両方または一方に基づいて彩度色相補正テーブルをも参照して色相調整を行う。この場合、色相調整は、入力されたU、V成分に対する簡単な比率計算と補間演算により実行することを可能とする。これにより、総合的に演算コストの低い彩度あるいは色相調整技術を提供することが可能となる。
【0108】
さらに本実施形態においては、本発明により求めた色相補正量は、わざわざ角度値に逆変換する必要はない。補正前のUV値(無彩色基準)に直接付加することができるのでメモリや計算量の増大につながらなく効率的である。
【0109】
以上の動作概略で示される動作を実行する画像表示装置の実施形態の詳細動作について、以下に順次説明する。
【0110】
以下に説明する図13から図17、および図19までのフローチャートは例えば、画像表示装置内の画像処理プロセッサが画像表示装置内のプログラムメモリに記憶された制御プログラムを実行する動作である。或いは、画像処理専用ハードウェアが実行する動作である。
【0111】
図13は、図5の補正前画像入力部501の制御動作を示すフローチャートである。
補正前画像入力部501は、画像表示デバイスに表示されるべき補正前入力RGB画像の各画素データを入力し、補正前画像入力部501からの補正前入力RGB画像の各画素データを補正前入力YUV信号成分に変換する(ステップS1301)。この変換は、補正前入力RGB画像の画素データのRGB成分(R,G,B)に対して、次の(13)式の演算を実行することにより、補正前入力YUV信号のYUV成分(Y,U,V)を算出する動作である。
【0112】
Y=0.299R+0.587G+0.114B
U=−0.169R−0.331G+0.500B ・・・(13)
V=0.500R−0.419G−0.081B

例えば、R成分値=160、G成分値=152、B成分値=90の場合、

Y=0.299×160+0.587×152+0.114×90
=147.3
U=−0.169×160−0.331×152+0.500×90
=95.65
V=0.500×160−0.419×152−0.081×90
=137.0

と算出される。
【0113】
次に、図14は、図5の簡易彩度算出部502の制御動作を示すフローチャートである。
【0114】
まず、図5の補正前画像入力部501が算出した補正前入力YUV信号成分のU色差信号成分(青)およびV色差信号成分(赤)の各成分が、無彩色基準にて数値化された上で、|U|、|V|として絶対値化される(ステップS1401)。すなわち、U、V成分の各データ値が0〜255までの256階調として表現されている場合、中心値の128が無彩色基準値0となるように変換された上で、絶対値化される。
【0115】
例えば、前述したように、図13のフローチャートにより、Y=147.3、U=95.65、V=137.0と求まっている場合、U=|95.65−128|=32.35、V=|137−128|=9.0と算出される。
【0116】
そして、ステップS1401で算出された絶対値|U|、|V|のうち大きい方の色度が簡易彩度として決定され、出力される(ステップS1402)。上述の例では、|U|が選択されて、簡易彩度は32.35と決定される。
【0117】
図15は、図5の簡易色相角算出部503の制御動作を示すフローチャートである。
まず、図5の補正前画像入力部501が算出した補正前入力YUV信号成分のU色差信号成分(青)およびV色差信号成分(赤)の各成分の符号が判定されることにより、図7に示されるUVチャート上で座標値(U,V)がI,II,III,IVのどの象限に存在するかが判定される(ステップS1501)。
【0118】
次に、ステップS1501で算出されたU、Vの各成分が、無彩色基準に数値化される(ステップS1602)。すなわち、U、V成分の各データ値が0〜255までの256階調として表現されている場合、中心値の128が無彩色基準値0となるように変換される。
【0119】
次に、ステップS1502の結果得られるU、Vの各成分が、さらに|U|、|V|として絶対値化される(ステップS1503)。
【0120】
次に、ステップS1501で判定された任意の象限にて、対象座標がU軸上、V軸上のどちらに近いか確認され、座標が近いほうの軸が基準軸として採用される(ステップS1504)。
【0121】
次に、ステップS1503で算出された|U|、|V|の大小関係が確認される(ステップS1505)。
【0122】
次に、簡易色相角算出の基準になる基準比率Qが算出される(ステップS1506)。ここで、|U|>|V|であればQ=|V|/|U|、|U|<|V|であればQ=|U|/|V|として算出される。
【0123】
次に、簡易色相角の算出が開始される(ステップS1507)。具体的には、図7に示されるUVチャート上で、ステップS1504で決定された基準軸(U軸、V軸)上に予め決めた簡易色相角Pが取得される。ここで、図7に示されるように、

・U軸上(正方向) 0、8
・V軸上(正方向) 2
・V軸上(負方向) 4
・V軸上(負方向) 6

として、各簡易色相角を決めておく。
【0124】
次に、着目している各象限において、左周り方向を正として、0°から開始した場合に、|U|と|V|の大小関係より、各象限内での座標が45°軸以下であるか大きいかが判定される。そして、ステップS1507で決定した基準軸の簡易色相角Pと、ステップS1506で計算した基準比率Qを用いて、下記計算が実行される。
【0125】
1)45°以下の場合
基準軸の簡易色相角P=P1 、基準比率Q=Q1 、簡易色相角をA=A1
とし、
簡易色相角A1 =(基準軸の簡易色相角P1 )+(基準比率Q1 )・・・(14)
2)45°より大きい場合
基準軸の簡易色相角P=P2 、基準比率Q=Q2 、簡易色相角をA=A2
とし、
簡易色相角A2 =(基準軸の簡易色相角P2 )−(基準比率Q2)・・・(15)
以上の(14)式または(15)式により簡易色相角Aが算出され、出力される(ステップS1508)。
【0126】
図16は、彩度補正部504の制御動作を示すフローチャートである。
彩度補正部504は、まず、図9(a)に例示される彩度色相補正テーブル506を参照する。これにより、彩度補正部504は、入力された簡易彩度値の両端に位置する2つの彩度離散値と、入力された簡易色相角値の両端に位置する2つの色相角の位置の離散値に対応する、4個の彩度補正量(図9(b)参照)を取得する(ステップS1601)。
【0127】
次に、彩度補正部504は、2つの彩度離散値と簡易彩度との補間演算および2つの色相角離散値と簡易色相角との補間演算により、入力された簡易彩度および簡易色相角に対応する、補間された彩度補正量を算出し、出力する(ステップS1602)。例えば、前述のように簡易彩度が32.35が求まっているときに、彩度色相補正テーブル506の彩度の離散値32に対応する彩度補正量が0.53であったときに、その周辺の彩度補正量との補間演算の結果、補間された彩度補正量が0.529と算出される。
【0128】
そして、彩度補正部504は、補正前入力YUV信号成分のU信号成分およびV信号成分を元彩度U値および元彩度V値とし、ステップS1602で算出された彩度補正量を用いて、前述の(9)式(具体的には(7)式および(8)式)を計算する。この結果、彩度補正部504は、無彩色基準の彩度補正後UV値(彩度補正後U値および彩度補正後V値)を算出し、出力する(ステップS1603)。例えば前述のように、無彩色基準の元彩度U値=−32.35、元彩度V値=9.0で、補間された彩度補正量が0.529であるときに、(7)式および(8)式に基づいて、無彩色基準の彩度補正後U値および彩度補正後V値が次のように算出される。
【0129】
−32.35+(−32.35)×0.529=−49.5
9.0+9.0×0.529=13.8
【0130】
図17は、色相補正部505の制御動作を示すフローチャートである。
色相補正部505内の色相補正量取得部520は、まず、図10(b)に例示される彩度色相補正テーブル507を参照する。これにより、色相補正量取得部520は、入力された簡易彩度値の近傍に位置する複数の彩度離散値と、入力された簡易色相角値の近傍に位置する複数の色相角の位置の離散値に対応する、複数個の色相補正量を取得する。次に、色相補正部505内の色相補正量UV成分取得部521は、取得した各色相補正量を、図10および図11で説明したアルゴリズムに基づいて、各色相補正量をU値色相補正量とV値色相補正量に分解する(以上、ステップS1701)。
【0131】
次に、色相補正部505内の色相補正量補間部522は、複数の離散値に対応する各U値色相補正量から、簡易彩度と簡易色相角の各値に基づいて補間演算により、補間されたU値色相補正量を算出する。同様に、色相補正量補間部522は、複数の離散値に対応する各V値色相補正量から、簡易彩度と簡易色相角の各値に基づいて補間演算により、補間されたV値色相補正量を算出する(ステップS1702)。
【0132】
図18は、彩度色相補正テーブル507の具体的数値例を示す図である。いま例えば、彩度補正部504において算出された彩度補正後UV値(無彩色基準)が、U=97−128=−31、V=117−128=−11であるとする。また、元のY値は127であるとする。この場合、U値とV値の符号関係より、入力画像の簡易色相角は、彩度色相補正チャート上の第3象限(III)(図10(c)参照)内のU軸に近い所に位置することがわかる。従って、これらの入力に対して、図18の彩度色相補正テーブル507を用いて、簡易色相角=4の近傍で色相補正を行う場合を考える。色相補正部505は、彩度色相補正テーブル507に記憶された簡易色相角=4の色相補正量0.2およびその近傍の簡易色相角に対応する色相補正量から、色相補正量からU値色相補正量およびV値色相補正量への分解およびそれらの補間演算を実行する。具体的には、簡易色相角4の色相補正量は、U値の色相補正量=0、V値の色相補正量=0,2である。また、簡易色相角5の色相補正量は、U,V共に0である。これより現画像値U=−31,V=−11に対応するU値色相補正量は、簡易色相角4のU値色相補正量=0と簡易色相角5のU値色相補正量=0から補間演算により算出できる。U値補正量は簡易色相角4付近で−H1,0,H1と変化することを考慮する。一方現画像値U=−31、V=−11に対応するV値色相補正量はU値色相補正量とは独立に簡易色相角=4のV値色相補正量=0,2と簡易色相角5のV値色相補正量=0とその補間演算により算出できる。すなわち(0,2−0)×11/31=0,07と算出できる。ここで、V値補正量は簡易色相角=4付近で−H1、−H1、−H1と変化することを考慮する。この結果例えば、U値色相補正量=0.022とV値色相補正量=−0.07の2値が算出される。すなわち、U=−31およびV=−11に対応する簡易色相角は、第3象限(III)内のU軸にかなり近い所に位置する。このため、U値色相補正量の絶対値は小さい値であり、U値色相補正量の符号は正符号となる(図11(a)参照)。また、V値色相補正量の絶対値は比較的大きい値であり、V値色相補正量の符号は負符号となる(図11(b)参照)。なお、U値色相補正量およびV値色相補正量の具体的な演算値は、補間演算方式等によって異なる。
【0133】
そして、色相補正部505内の色相補正演算部511は、彩度補正後U値および彩度補正後V値と、ステップS1702で算出されたU値色相補正量およびV値色相補正量を用いて、前述の(12)式(具体的には(10)式および(11)式)を計算する。この結果、色相補正演算部511は、無彩色基準の色相補正後UV値(色相補正後U値および色相補正後V値)を算出し、出力する(ステップS1703)。例えば前述のように、彩度補正後UV値(無彩色基準)が、U=97−128=−31、V=117−128=−11で、U値色相補正量=0.022、V値色相補正量=−0.07であるとする。このとき、色相補正演算部511は、まず、彩度補正後UV値の無彩色基準の絶対値の大きい方、すなわち|U|=31として、簡易彩度を算出した上で、(10)式および(11)式を次のように計算する。
【0134】
色相補正後U値=−31+31×0.022=−30.3
色相補正後V値=−11+31×(−0.07)=−13.2
【0135】
図19は、補正後画像出力部508の制御動作を示すフローチャートである。
補正後画像出力部508は、色相補正部505が出力する無彩色基準の色相補正後UV値を入力すると共に、元の補正前のY値を入力し、次の(16)式の変換式により、補正後出力RGB画像のRGB画素値を生成し、出力する(ステップS1901)。
【0136】
補正後出力R値=Y+1.402(色相補正後V値−128)
補正後出力G値=Y−0.344(色相補正後U値−128)
−0.714(色相補正後V値−128) ・・・(16)
補正後出力B値=Y+1.772(色相補正後U値−128)
−0.001(色相補正後V値−128)
【0137】
例えば、色相補正後U値=78、色相補正後V値=141で、補正前のY値=147であるときに、(16)式より、補正後出力RGB値は、次のように計算される。
【0138】
補正後出力R値=127+1.402(141−128)=165.2
補正後出力G値=127−0.344(78−128)
−0.714(141−128)=154.9
補正後出力B値=127+1.772(78−128)
−0.001(141−128)=58.4
【0139】
以上説明した実施形態では、彩度補正部504と色相補正部505をともに備える構成について説明したが、何れか一方のみを備えて、彩度補正処理または色相補正処理のいずれかのみを実施するような形態が採用されてもよい。
【0140】
以上説明した実施形態では、図5の色相補正量取得部520が彩度色相補正テーブル507から取得した色相補正量の離散値を、色相補正量UV成分取得部521がU値色相補正量とV値色相補正量に離散値に分解している。これに対して、彩度色相補正テーブル507に、簡易彩度と簡易色相角に対応する離散値毎に、U値色相補正量とV値色相補正量を直接記憶させてもよい。
【0141】
以上説明した実施形態は、外光照射時だけではなく、デジタル画像の修正等において、彩度補正時に変化した色相を補正する用途に使用することができる。また、ディスプレイ表示やプリンタ印刷において、対象画像データが本来望む色相からずれた場合における色相補正にも使用することができる。さらに、色相を原画像から積極的に変更したいような場合にも、色相の変更を高速に実行することが可能となる。
【0142】
図20は、上述の各実施形態の装置を実現できるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0143】
図20に示されるコンピュータは、CPU2001、メモリ2002、入出力装置2003、外部記憶装置2005、可搬記録媒体2009が挿入される可搬記録媒体駆動装置2006、及び通信インターフェース2007を有し、これらがバス2008によって相互に接続された構成を有する。
【0144】
CPU2001は、当該コンピュータ全体の制御を行う。メモリ2002は、プログラムの実行、データ更新等の際に、外部記憶装置2005(或いは可搬記録媒体2009)に記憶されているプログラム又はデータを一時的に格納するRAM等のメモリである。CUP2001は、プログラムをメモリ2002に読み出して実行することにより、全体の制御を行う。
【0145】
入出力装置2003は、ユーザによるキーボードやマウス等による入力操作を検出し、その検出結果をCPU2001に通知し、CPU2001の制御によって送られてくるデータを表示装置や印刷装置に出力する。
【0146】
外部記憶装置2005は、例えばハードディスク記憶装置である。可搬記録媒体駆動装置2006は、可搬記録媒体2009を収容するものである。通信インターフェース2007は、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)の通信回線を接続するための装置である。
【0147】
実施形態による装置は、図5に示す機能ブロックを実現する各フローチャートに対応する各制御プログラムを、CPU2001が実行することで実現される。そのプログラムは、例えば外部記憶装置2005や可搬記録媒体2009に記録され、或いは通信インターフェース2007によりネットワークから取得できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0148】
501 補正前画像入力部
502 簡易彩度算出部
503 簡易色相角算出部
504 彩度補正部
505 色相補正部
506 彩度色相補正テーブル
507 彩度色相補正テーブル
508 補正後画像出力部
510 色相補正量算出部
511 色相補正演算部
520 色相補正量取得部
521 色相補正量UV成分取得部
522 色相補正量補間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補正前入力画像の各画素データから第1の色差信号成分および第2の色差信号成分を算出する補正前画像入力部と、
前記補正前入力画像の各画素における前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分の絶対値の比率と大小関係と各々の符号とに基づいて、該補正前入力画像の各画素の色相角を近似する簡易色相角を算出する簡易色相角算出部と、
前記簡易色相角に基づき、色相補正量を記憶した彩度色相補正テーブルを参照することにより、前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分のおのおのについて、該色相補正量を取得する色相補正量取得部と、
前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分のおのおのに対する前記色相補正量に基づいて、前記第1の色差信号成分および第2の色差信号成分の出力値を算出する、色相補正演算部と、
前記第1の色差信号成分および第2の色差信号成分の出力値から補正後出力画像の各画素データを生成し、出力する補正後画像出力部と、
を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記色相補正量の前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分をそれぞれ補間して、補間色相補正量を算出して出力する色相補正量補間部をさらに備え、
前記色相補正演算部は前記色相補正量あるいは前記補間色相補正量に基づいて、前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分の出力値を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記色相補正演算部は、前記色相補正量あるいは前記補間色相補正量にそれぞれ前記簡易彩度を乗算した各結果を、それぞれ前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分の入力値に加算することにより、前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分の出力値を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記簡易色相角算出部は、前記簡易色相角の各離散値を、前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分の各々を座標軸とし無彩色を原点とする座標系上で、前記原点を中心に所定の方向に回転する360°をn分割して得られる角度に、所定の並び順に番号をつけて得られる角度番号値とし、
前記簡易色相角を、前記角度番号値の間を前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分の各絶対値の比に応じて分割して得られる値として算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記補正前入力画像の各画素の前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分のうち、絶対値の大きい方の値として、前記補正前入力画像の各画素の彩度を近似する簡易彩度を算出する簡易彩度算出部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分の入力値から算出した彩度入力値に対応する彩度補正量を算出する彩度補正量算出部と、
前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分の各々に、前記彩度補正量を乗算して前記補正後画像の画素データに対応する第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分の出力値を算出する彩度補正演算部を更に備える、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記彩度色相補正テーブルは、簡易彩度および簡易色相角の離散値毎に色相補正量あるいは彩度補正量を記憶し、前記簡易彩度および前記簡易色相角を入力し、前記色相補正量あるいは前記彩度補正量を出力する、
ことを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記色相補正量取得部は、前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分毎に座標軸上で色相角を補正する方向に対応して符号を付す、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分は無彩色基準を用いることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項10】
補正前入力画像の各画素データから第1の色差信号成分および第2の色差信号成分を算出する補正前画像入力部と、
前記補正前入力画像の各画素における前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分の絶対値の比率と大小関係と各々の符号とに基づいて、該補正前入力画像の各画素の色相角を近似する簡易色相角を算出する簡易色相角算出部と、
前記簡易色相角に基づき、色相補正量を記憶した彩度色相補正テーブルを参照することにより、前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分のおのおのについて、該色相補正量を取得する色相補正量取得部と、
前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分のおのおのに対する前記色相補正量に基づいて、前記第1の色差信号成分および第2の色差信号成分の出力値を算出する、色相補正演算部と、
前記第1の色差信号成分および第2の色差信号成分の出力値から補正後出力画像の各画素データを生成し、出力する補正後画像出力部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
コンピュータにより、
補正前入力画像の各画素データから第1の色差信号成分および第2の色差信号成分を算出し、
前記補正前入力画像の各画素における前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分の絶対値の比率と大小関係と各々の符号とに基づいて、該補正前入力画像の各画素の色相角を近似する簡易色相角を算出し、
前記簡易色相角に基づき、色相補正量を記憶した彩度色相補正テーブルを参照することにより、前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分のおのおのについて、該色相補正量を取得し、
前記第1の色差信号成分および前記第2の色差信号成分のおのおのに対する前記色相補正量に基づいて、前記第1の色差信号成分および第2の色差信号成分の出力値を算出し、
前記第1の色差信号成分および第2の色差信号成分の出力値から補正後出力画像の各画素データを生成し、出力する、
ことを特徴とする画像表示方法。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−118480(P2012−118480A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270966(P2010−270966)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】