説明

画像表示装置、画像表示装置の製造方法、及び、機能付きフィルム

【課題】フェースプレートの画像表示面上に設けられる機能付きフィルムに、(1)画像表示面の帯電を防止しつつ、(2)メタルバックの電荷量増加を抑える、という電気的機能を満足する導電層を備えた画像表示装置を提供する。
【解決手段】電子放出素子を有する第1基板と、前記電子放出素子に対向するアノード電極を有する第2基板と、前記第2基板の、前記第1基板側に位置する第1面とは反対側に位置する、第2面側に積層された、導電層と、を備え、前記導電層の電位が、画像表示時の前記アノード電極の電位よりも低く設定され、前記導電層の表面抵抗が、前記アノード電極の表面抵抗よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、画像表示装置の製造方法、及び、機能付きフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子放出素子として冷陰極電子放出素子が知られている。冷陰極電子放出素子として、表面伝導型電子放出素子や、電界放出型電子放出素子(以下FE型電子放出素子と記す)や、金属/絶縁層/金属型電子放出素子(以下MIM型電子放出素子と記す)などが知られている。
【0003】
特許文献1〜5には、表面伝導型電子放出素子やFE型電子放出素子の画像表示装置への応用が開示されている。
【0004】
特許文献6には、画像表示装置の表面に設ける光学フィルターが開示されている。そしてまた、特許文献7〜9には、電界放出型ディスプレイ用の、導電層付き反射防止フィルムが開示されている。
【0005】
図9は、電子放出素子を用いた平面型の画像表示装置の表示パネルの一例を示す斜視図である。図9は、その内部構造もまた示している。
【0006】
図9において、10005はリアプレート(第1基板)、10006は側壁、10007はフェースプレート(第2基板)である。リアプレート10005、側壁10006およびフェースプレート10007により、表示パネルの内部を真空に維持するための外囲器(気密容器)を形成している。
【0007】
リアプレート(第1基板)10005上には電子放出素子10002が、N×M個形成されている。また、各電子放出素子10002は、図9に示す通り、行配線10003と列配線10004に接続されている。これら電子放出素子10002、行配線10003及び列配線10004によって構成される部分を電子源と呼ぶ。
【0008】
フェースプレート(第2基板)10007の下面(第1基板側の面;第1面)には、発光体膜10008が設けられている。また、発光体膜10008のリアプレート10005側の面には、Al(アルミニウム)等からなるメタルバック(アノード電極)10009が設けられている。
【0009】
容器外端子Dx1〜DxM,容器外端子Dy1〜DyNおよび容器外端子Hvは、この表示パネルと駆動回路とを電気的に接続するための端子である。そして、容器外端子Dx1〜DxMのそれぞれは電子源の各行配線10003と電気的に接続されている。容器外端子Dy1〜DyNのそれぞれは電子源の各列配線10004と電気的に接続されている。容器外端子Hvはメタルバック10009と電気的に接続されている。
【0010】
また、上記気密容器の内部は10の−6乗[Torr]程度(SI単位系で表すと1.33×10−4[Pa]程度)の真空に保持される。図9に示す表示パネルは、気密容器に加わる大気圧を気密容器内側から支えるための支持体(スペーサ或はリブと呼ばれる)10010を備えている。電子源が設けられた第1基板10005と発光体膜10008が設けられたフェースプレート10007との間は、実用的には500μm以上10mm以下に保たれる。
【0011】
以上説明した表示パネルを用いた画像表示装置の駆動時(画像表示時)においては、容器外端子Dx1〜DxM、及び、容器外端子Dy1〜DyNを通じて各電子放出素子10002に電圧が印加される。すると、各電子放出素子10002から電子が放出される。それと同時にメタルバック10009に容器外端子Hvを通じて1[kV]ないし40[kV]の高電圧を印加して、放出された電子を発光体膜10008に衝突させる。これにより、発光体膜10008が発光し、画像が表示される。このため、第2基板10007の上面(第1基板側に位置する第1面とは反対側に位置する面;第2面)の一部領域(発光体膜10008からの発光が視認できる領域)が画像表示領域となる。
【0012】
このため、フェースプレート10007の表面(発光体膜10008が設けられた側とは反対側の表面;第2面)が、メタルバック10009の電位の影響を受けて高電位となる(帯電する)。従って、画像表示装置を駆動中(画像表示中)、もしくは駆動直後(画像表示直後)に、静電気により大気中の埃や塵がフェースプレート10007に付着してしまう。
【0013】
そこで、フェースプレート(第2基板)10007の画像表示面の電位を緩和するために、フェースプレート10007の画像表示面に導電層を設ける。そして、この導電層を例えばアースに接地すれば第2基板の第2面の帯電を抑制することができる。
【0014】
一方、メタルバック10009には高電圧を印加するので、メタルバックに対向するリアプレート10005上の電子放出素子10002、行配線10003、及び、列配線10004は、高電界にさらされる。その結果、リアプレート上に電界が集中するような3重点や異物などが存在すると、そこに電界が集中し、気密容器内部で放電が発生する場合がある。
【0015】
放電が発生すると、電子放出素子10002、行配線10003、列配線10004等に、フェースプレート(典型的にはメタルバック10009)に蓄積された電荷が流れ込む。その結果、電子放出素子10002の破壊や行配線10003、及び、列配線10004に繋がる駆動回路の破壊などを引き起こし、深刻な画質劣化を発生させる場合がある。
【0016】
そこで、アノード電極(メタルバック)10009に、特許文献10で示されるような方法で、電流制限機能を持たせる方法が提案されている。
【0017】
しかし、アノード電極に電流制限機能を持たせた状況で、上記した導電層を接地等することによりフェースプレート表面の帯電抑制処理を行うと、深刻な画素欠陥が発生することがある。
【0018】
この原因は、導電層の表面抵抗(シート抵抗)をメタルバックの見かけの表面抵抗よりも低く設定していたために、メタルバックの電荷量が見かけ上増加し、画像表示装置内部で放電が発生したときの第2基板の電流制限効果が低下したためと考えられる。
【0019】
従って、導電層は、メタルバック(アノード電極)10009の電流制限効果の低下を抑制するように、且つ、画像表示装置表面の帯電を抑制するように設ける必要がある。
【特許文献1】特開平10−326583号公報
【特許文献2】米国特許第6677706号明細書
【特許文献3】欧州特許第0866491号明細書
【特許文献4】特開2003−229079号公報
【特許文献5】米国特許第6800995号明細書
【特許文献6】特開2001−281442号公報
【特許文献7】特開2006−189783号公報
【特許文献8】特開2006−189784号公報
【特許文献9】国際公開第2006/062251号パンフレット
【特許文献10】特開平10−326583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明ではフェースプレートの画像表示面上に設けられる機能付きフィルムに、(1)画像表示面の帯電を防止しつつ、(2)メタルバックの電荷量増加を抑える、という電気的機能を満足する導電層を備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明の画像表示装置は以下の構成を備える。
【0022】
即ち、電子放出素子を有する第1基板と、前記電子放出素子に対向するアノード電極を有する第2基板と、前記第2基板の、前記第1基板側に位置する第1面とは反対側に位置する、第2面上に積層された、導電層と、を備え、前記導電層の電位が、画像表示時の前記アノード電極の電位よりも低く設定され、前記導電層の表面抵抗が、前記アノード電極の表面抵抗よりも高い、事を特徴とする。
【0023】
更に、前記第2基板の、前記第1面に、前記アノード電極から離れ且つ前記アノード電極の周りに、電位規定電極が設けられており、前記電位規定電極は、画像表示時の前記アノード電極の電位よりも低い電位に設定されることを特徴とする。
【0024】
また、前記電位規定電極が、前記第2基板の前記アノード電極を取り囲むように設けられていることを特徴とする。
【0025】
前記導電層の電位及び/又は前記電位規定電極の電位が、グランド電位であることを特徴とする。
【0026】
前記電位規定電極と前記アノード電極が、抵抗膜を介して接続されていることを特徴とする。
【0027】
さらに、前記第2基板の前記第2面側に設けられた、第3基板を備えており、前記第3基板は、前記第2面側において前記導電層と空間的に離れて設けられており、且つ、反射防止特性を有する事を特徴とする。
【0028】
さらに、前記導電層の前記第2基板側とは反対側に位置するように設けられ、且つ、画像表示時の前記アノード電極の電位よりも低く設定される、導電性の反射防止層を有しており、前記反射防止層の表面抵抗が、前記アノード電極の表面抵抗よりも高い、ことを特徴とする。
【0029】
前記反射防止層の表面抵抗が、前記導電層の表面抵抗よりも高い、ことを特徴とする。
【0030】
前記導電層が絶縁性基体に固定されており、前記導電層が、前記第2基板の、前記第2面に、粘着層を介して取り付けられている、ことを特徴とする。
【0031】
前記導電層は、絶縁性基体の或る面に固定されており、前記反射防止層が前記絶縁性基体のもう1つの面に固定されており、前記導電層は、前記第2基板の、第2面に、粘着層
を介して取り付けられている、ことを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る機能付きフィルムは、電子放出素子を有する第1基板と前記電子放出素子に対向するアノード電極を有する第2基板とを備える画像表示装置に設けられる機能付きフィルムであって、前記第2基板の、前記第1基板側に位置する第1面とは反対側に位置する、第2面側に設けられる導電層を備え、前記導電層の電位が、画像表示時の前記アノード電極の電位よりも低く設定され、前記導電層の表面抵抗が、前記アノード電極の表面抵抗よりも高いことを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る画像表示装置の製造方法は、電子放出素子を有する第1基板と前記電子放出素子に対向するアノード電極を有する第2基板とを備える表示パネルを用意する工程と、前記第2基板の、前記第1基板側に位置する第1面とは反対側に位置する、第2面側に導電層を設ける工程と、を有し、前記導電層の電位が、画像表示時の前記アノード電極の電位よりも低く設定され、前記導電層の表面抵抗が、前記アノード電極の表面抵抗よりも高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、画像表示装置内部で万一放電が発生しても、アノード電極の電流制限効果を保つことができると共に、画像表示装置の画像表示面の電位の上昇を抑えることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0036】
(実施の形態1)
まず、この発明の第1の実施形態による画像表示装置について説明する。図1に、この第1の実施形態による画像表示装置の模式図を示す。
【0037】
本実施形態の画像表示装置は画像表示装置本体(表示パネル)1000、駆動回路1010、及び、機能付きフィルム1020により構成される。図1では画像表示装置本体1000と機能付きフィルム1020が離れているが、本来の構成は画像表示装置本体1000の画像表示領域1001に機能付きフィルム1020を接触させた構成となる。また、図1では、駆動回路1010を画像表示装置本体1000の裏面に設けているが、駆動回路の配置位置はこのような配置位置に限定されるものではない。
【0038】
本実施形態では、符号1000で示す画像表示装置本体(表示パネル)に電子放出素子として表面伝導型電子放出素子を用いた例を示すが、その他の電子放出素子を用いることもできる。符号1001は画像表示装置本体1000の画像表示領域(第2基板の画像表示領域)を示す。
【0039】
図2に画像表示装置本体1000の一部の断面模式図を示す。画像表示装置本体1000は、電子放出素子1006を有するリアプレート(第1基板)1004と、メタルバック(アノード電極)1007及び発光体膜1008を有するフェースプレート(第2基板)1003とを備える。図2に示すように、第1基板1004と第2基板1003が対向して配置されており、アノード電極1007が電子放出素子1006に対向している。
【0040】
そして、第2基板1003と第1基板1004との間の空間は、大気圧よりも低い圧力に維持され(好ましくは真空に維持され)ている。この空間を維持するために、第1基板1004と第2基板1003との間に、枠部材1005が設けられている。そして、図2
には図示していないが、従来公知の大気圧支持部材(スペーサ)を設けることもできる。
【0041】
画像表示領域1001は、フェースプレート(第2基板)1003の上面(第1基板側に位置する第1面とは反対側に位置する面;第2面)の一部領域(発光体膜1008からの発光が視認できる領域)である。
【0042】
このように、画像表示装置本体の主要な構造は、図9で示した画像表示装置など、従来の画像表示装置と同様である。
【0043】
リアプレート(第1基板)1004とフェースプレート(第2基板)1003としては、実用的には、ガラス基板を用いることができる。メタルバック(アノード電極)1007としては、金属膜を用いることができ、実用的には、アルミ膜を用いることができる。
【0044】
図3には、図2で示した第2基板1003の上面(第1基板側に位置する面とは反対側に位置する面;第2面)上に機能付きフィルム1020を設けた状態の一部断面模式図を示す。ここで説明する機能付きフィルム1020は、図1、図3に示す様に、第2基板1003の上面(第2面)上に、視聴者側に向かって、順に、粘着層1021、導電層1022、絶縁性基体1023、反射防止層1024、保護層1025の順番で積層されている。すなわち、導電層1022、絶縁性基体1023、反射防止層1024、保護層1025は、第2基板1003の第2面側に設けられており、反射防止層1024は導電層1022の第2基板側とは反対側に位置するように設けられているということである。また、導電層1022は、絶縁性基体1023の一方の面に固定されており、反射防止層1024が絶縁性基体1023の他方の面に固定されているということである。
【0045】
本実施形態では、機能付きフィルム1020として、複数の層が積層されたものを用いた例を示したが、機能付きフィルム1020は、少なくとも導電層1022を含んでいればよい。従って、基本的には、導電層1022以外の層は、必要に応じて適宜用いることができるものである。
【0046】
また、導電層1022が反射防止機能を併せもつこともできる。反射防止機能を導電層1022に持たせれば、反射防止層1024を省略することもできる。また、機能付きフィルムは、画像表示装置本体1000を用意し、そのフェースプレート1003の上面(第2面)上に貼り付けるものであることが好ましい。即ち、機能付きフィルムを、導電層1022と粘着層1021で構成し、粘着層1021を介して導電層1022を第2基板の画像表示領域を含む第2基板の上面(第2面)に貼付けるのが好ましい。
【0047】
しかし、通常、導電層1022は非常に薄いので、画像表示装置本体1000を形成した後にフェースプレート1003の上面(第2面)上に貼り付けるのは困難である。そのため、上記導電層1022と粘着層1021とを絶縁性基体上に予め成膜することで、機能付きフィルムを構成することがより好ましい。
【0048】
絶縁性基体としては、比較的剛性があり、絶縁性であり、光学的に透明であることが好ましい。機能付きフィルムがこのような構成であれば、図1や図3で示した多数の他の機能を有する層をさらに積層しても、機能付きフィルムをフェースプレート1003の上面(第2面)上に貼り付け易くなる。
【0049】
また、導電層1022の電位は、画像表示時のアノード電極の電位よりも低く設定されることが好ましい。本実施形態では図3に示すように、機能付きフィルム1020の導電層1022をグランドに繋がる不図示の電極に接地することで、機能付きフィルム1020の表面電位をグランド電位(0[V])となるようにする。
【0050】
また、枠部材1005の高さは実用的には500μm以上10mm以下であるが、本実施形態では枠部材1005の高さを1mmとした。
【0051】
ここで、メタルバック1007に印加するアノード電圧を約12kVとしたため、フェースプレート1003とリアプレート1004の間の電界は10(V/m)以上の高電界となる。従って、画像表示装置内部に電界集中点が存在すると、予期しない放電が発生することがある。その結果、放電によりフェースプレート1003上のメタルバック1007の電荷がリアプレート1004上の電子放出素子1006や不図示の配線などへ流れ込んでしまう。すると、電子放出素子1006の破壊や駆動回路の破壊を誘発することになり、画質上の大きな欠陥を引き起こす可能性がある。
【0052】
そこで、本実施形態ではメタルバック1007の表面抵抗を10(Ω/□)以上に設定する。それによって、画像表示装置に、万が一画像表示装置の内部で放電が発生しても一度に多量の電荷がリアプレート1004上の電子放出素子1006や不図示の配線や駆動回路などに流れ込まないように電流制限機能を持たせる。このようなメタルバック(アノード電極1007)の表面抵抗を備える点が、本実施形態の画像表示装置本体(表示パネル)と従来の画像表示装置本体(表示パネル)との主要な差異の1つである。
【0053】
尚、上記アノード電極1007の表面抵抗は、アノード電極1007上の200mm×200mmエリアの、他の層の抵抗も合成された、シート抵抗を測定することで定義できる。具体的には200mmの長さをもつ2つの電極を、200mm離間して、アノード電極1007に接触させ、電極間の抵抗値を求めることで算出することができる。
【0054】
上記のようなシート抵抗(表面抵抗)を増やすための手法としては、例えば、メタルバックを複数の領域に分割し、各領域間を抵抗体で接続する方法などの従来公知の手法を適宜採用することができる。
【0055】
そのような手法の一例は、例えば、特開2005−235470号公報(米国特許出願公開第2005/0179398)に開示されている。
【0056】
図10,11は本発明を好ましく適用できるフェースプレートの構成を示す。図10はリアプレート側から見たフェースプレートの平面図である。図11は、図10のA−A’断面の一部を拡大した図である。なお、図11にはリアプレート21及び電子放出素子23も図示している。
【0057】
図10,11に示すフェースプレートは例えば以下のような工程によって製造することができる。
【0058】
先ず、洗浄したガラス基板11上に導電性領域として、スパッタリング法にてITO膜12を画像表示領域全面に成膜する。ITO膜12のシート抵抗値は例えば100Ω/□とする。ITO膜12はその一部が高圧電源と接続されており、高圧電位(アノード電位)が供給される。
【0059】
次に、銀粒子及びガラスフリットを含むペーストを、スクリーン印刷法にて、図10に示すようにITO膜12を囲む様に印刷し、400℃にて焼成を行い、電位規定電極100を形成する。電位規定電極100は幅2mmとし、ITO膜12の外周から4mm離れるように形成する。電位規定電極100の抵抗値としては1Ω以下とする。なお、電位規定電極100を設ける理由については後述する。
【0060】
次に間隔規定部材として、酸化ルテニウムペーストを用い、スクリーン印刷法にて厚さ10μm、幅250μm、200μm×200μmの開口部を有する格子状の開口部を備える、高抵抗なブラックマトリクス13を形成する。
【0061】
次にスクリーン印刷法により、R,G,Bの各蛍光体14を1色づつ3回に分けて厚さ10μmになるように、上記ブラックマトリクス13の各開口部に充填する。スクリーン印刷法を用いて蛍光体を充填することができるが、もちろんこれに限定される訳ではなく、例えばフォトリソグラフィー法などを用いても良い。また蛍光体14はCRTの分野で用いられているP22の蛍光体を用いる。蛍光体としては、赤色(P22−RE3;Y2
2S:Eu3+)、青色(P22−B2;ZnS:Ag,Al)、緑色(P22−GN4
;ZnS:Cu,Al)のものを用いる。
【0062】
次に、ブラウン管の製造技術として公知であるフィルミング工程(ラッカー(lacquer)等による平滑化処理)により、樹脂膜をブラックマトリクス13及び蛍光体14上に成膜する。そして、その後に、Al膜を蒸着法により上記樹脂膜上に堆積させる。そして、最後に樹脂膜を熱分解させて除去する事により、厚さ100nmの導電性膜(Al膜)をブラックマトリクス13及び蛍光体14上に配置する。
【0063】
その後、YAGレーザー加工機にて、上記導電性膜(Al膜)を切断し、絵素毎の導電性膜15に分割する。
【0064】
このようにすることで、図10,11に示したフェースプレートを形成することができる。アノード電極の抵抗値は、各部材の大きさや材料を適宜選択することで、所定の値とすることができる。
【0065】
図8は、本実施形態の画像表示装置における第2基板(フェースプレート)1003を電子放出素子1006側から見た平面模式図である。本実施形態の画像表示装置でも、図8に示す様に、フェースプレート1003の第1面に、アノード電極1007と所定距離離れて電位規定電極を設けることが好ましい。電位規定電極は、アノード電極1007の周りに配置される。換言すると、アノード電極1007の外周とフェースプレート1003の外周との間に、アノード電極1007と所定距離離れて電位規定電極を設けることが好ましい。
【0066】
そして、電位規定電極を設ける場合には、図8に示す様に、アノード電極1007の外周を取り囲むように、電位規定電極を配置することがより好ましい。
【0067】
電位規定電極は、実用的には、フェースプレート上の枠部材1005が固定される領域の内側に設けられる。尚、図8でも、枠部材1005が固定される領域と電位規定電極とが所定距離離れて設けられているが、電位規定電極の一部が、枠部材1005が固定される領域の一部領域にまで延在していてもよい。また、電位規定電極の一部が、枠部材1005が固定される領域の全ての領域に延在していてもよい。
【0068】
このような電位規定電極を設けることで、アノード電極1007と枠部材との間などで生じる電界を抑制することができる。その結果、枠部材1005とアノード電極1007との距離を縮めることができる。
【0069】
一方で、このような電位規定電極は、画像表示装置の駆動時(画像表示時)において、アノード電極の電位よりも十分に低い電位に維持される。典型的には、電位規定電極の電位はグランド電位に維持される。そのため、電位規定電極のアノード電極側の端部は高電界にさらされることになり、電位規定電極とアノード電極との間で放電が発生してしまう
場合がある。
【0070】
そこで、電位規定電極のアノード電極側の端部に生じる電界強度を緩和するために、本実施形態では、機能付きフィルム1020を構成する導電性の膜で、第2基板1003の上面(第2面)の全て又はほぼ全てを覆う様にする事が好ましい。換言すると、機能付きフィルム1020を構成する導電性の膜が、第2基板1003の画像表示領域上だけでなく、電位規定電極のアノード電極側端部の真上に位置する、第2基板1003の上面(第2面)も、覆う様にする事が好ましい。この様にすることで、電位規定電極のアノード電極側の端部に生じる電界強度を緩和することができる。尚、機能付きフィルム1020を構成する導電性の膜としては、例えば、導電層1022や導電性の反射防止層1024などが挙げられる。
【0071】
また、図8に示した構成では、アノード電極1007と所定距離離れて電位規定電極を設けているため、第2基板1003の表面が、アノード電極1007と電位規定電極との間で露出する構成となっている。第2基板は通常ガラス基板が使われる。そのため、絶縁性の表面がアノード電極1007と電位規定電極との間で露出する。絶縁性の表面は帯電し易く、電位の制御が難しい。
【0072】
そこで、アノード電極1007と電位規定電極との間で露出する、第2基板1003の表面(第1面)を抵抗膜で覆うことが好ましい。換言すると、アノード電極1007と電位規定電極とを抵抗膜を介して接続することが好ましい。抵抗膜のシート抵抗としては、実用的には、1×10以上1×1015以下に設定される。
【0073】
従って、図8に示す様に、アノード電極1007の外周を取り囲むように電位規定電極を配置する場合には、上記抵抗膜で、アノード電極1007の外周を取り囲む構成となる。
【0074】
そして、本実施形態では、アノード電極の電流制限機能を維持するため、機能付きフィルム1020の導電層1022の表面抵抗を所定の関係に設定する。即ち、導電層1022の表面抵抗を、アノード電極の表面抵抗よりも高い表面抵抗に設定する。
【0075】
なお、導電層1022の表面抵抗値はアノード電極の表面抵抗値よりも1桁以上高く且つ1×10(Ω/□)以下とすることが好ましい。機能付きフィルム1020の導電層1022の表面抵抗値は、後述する値に限定される必要はない。メタルバック1007の表面抵抗、画像表示装置表面の最大許容到達電位、画像表示装置表面の電位が安定するまでの緩和時間などによって導電層1022の表面抵抗値は適宜設定することができる。
【0076】
導電層1022の実用的な表面抵抗の値は具体的には、アノード電極の表面抵抗が104〜6(Ω/□)程度の場合、1×10(Ω/□)以上1×10(Ω/□)以下とすることが好ましい。
【0077】
また、図3に示すように、機能付きフィルム1020が導電層1022に加え、導電性の反射防止層1024を備える場合には、反射防止層の表面抵抗もアノード電極の表面抵抗よりも高い表面抵抗に設定する。
【0078】
具体的には、アノード電極の表面抵抗が104〜6(Ω/□)程度の場合、導電性の反射防止層の表面抵抗は1×10(Ω/□)以上1×1014(Ω/□)以下とすることが好ましい。
【0079】
導電層や導電性の反射防止層の表面抵抗の測定方法は、アノード電極の表面抵抗の測定
方法と同様、200mmの長さをもつ2つの電極を、200mm離間して、導電層や反射防止層に接触させ、電極間の抵抗値を求める事で算出できる。
【0080】
機能付きフィルム1020が導電層1022や導電性の反射防止層1024を備える場合、機能付きフィルム1020の表面抵抗をメタルバック1007の表面抵抗よりも低く設定すると、見かけ上メタルバックの電荷量が大幅に増えることになる。その結果、万が一画像表示装置内部で放電が発生した際には、メタルバック1007による電流制限効果が低減する。よって、機能付きフィルム1020の表面抵抗はメタルバック1007の表面抵抗に比べて十分に高いことが望ましい。
【0081】
通常、機能付きフィルム1020は少なくとも導電層1022を備える。そして、機能付きフィルム1020は、さらに、導電性の反射防止層1024などの導電性の膜を単数または複数備える場合もある。従って、機能付きフィルム1020の導電層1022や導電性の反射防止層1024などの導電性の膜の表面抵抗を、いずれも、前述したように、メタルバック1007の表面抵抗に比べて1桁以上高く設定する事が好ましい。
【0082】
本実施形態においては、導電層1022をグランドに接地して画像表示装置表面の電位を規定するため、導電層1022の表面抵抗を反射防止層1024の表面抵抗よりも低く設定した。
【0083】
機能付きフィルム1020が、導電層1022と導電性の反射防止層1024とを備える場合における、機能付きフィルム1020とフェースプレート1003の等価回路を図4に示す。
【0084】
導電層1022、導電性の反射防止層1024を上記した表面抵抗の範囲に設定することで、放電発生時のメタルバック1007による電流制限効果を損なうことなく、表面の電位を規定することが可能となる。
【0085】
図5に画像表示装置表面の電位と導電層1022の抵抗との相関を示す。また、図6に放電によりリアプレートに流れ込む電荷量と導電層1022の抵抗との相関を示す。尚、図5および図6ともに、画像表示面の大きさ(対角)が55インチの場合において、アノード電極の表面抵抗を10(Ω/□)程度として算出している。
【0086】
図5において、Aは導電層1022の表面抵抗が1×10Ω/□である場合、Bは導電層1022の表面抵抗が1×10Ω/□である場合、Cは導電層1022の表面抵抗が1×10Ω/□である場合を示している。また、Dは導電層1022の表面抵抗が1×10Ω/□である場合、Eは導電層1022の表面抵抗が1×1010Ω/□である場合を示している。
【0087】
図5から、画像表示装置の駆動電源(アノード電源)を投入した直後数秒で画像表示装置の中央部の表面電位を十分に低い電位に下げるためには、シート抵抗が1×10(Ω/□)以下が望ましいことが分かる。
【0088】
一方、図6から、シート抵抗が1×10(Ω/□)以上であれば、放電時にリアプレート側に移動する電荷が十分に低減され、1×10(Ω/□)以上に表面抵抗を上げてもほとんど減少しないことがわかる。
【0089】
従って、アノード電極の表面抵抗が10(Ω/□)程度の場合、導電層1022の表面抵抗は1×10(Ω/□)以上1×10(Ω/□)以下とすることが好ましい。また、機能付きフィルムが導電層1022に加え、他の導電性の膜を備えた場合においても
、機能付きフィルムを構成するそれぞれの導電性の膜の表面抵抗値を1×10(Ω/□)以上1×10(Ω/□)以下とする。この様にすることで、放電時の被害が低減され、電源投入直後に表示領域の表面電位を十分に低い電位に下げることができる。
【0090】
本実施形態の画像表示装置によれば、安定した表示画像を長期に渡って維持することができる。
【0091】
(実施の形態2)
次に、この発明の第2の実施形態による画像表示装置について説明する。
【0092】
図7に第2の実施の形態による画像表示装置の一部断面模式図を示す。基本的な機能としては、実施の形態1で示した構成に準ずるが、反射防止機能を前面板(第3基板)1026に持たせた構成であり、フェースプレート上に直接設置される機能付きフィルムには反射防止機能は含まれない。即ち、反射防止特性を備えた前面板(第3基板)1026は、第2基板(フェースプレート)1003の第2面側に設けられる。
【0093】
前面板1026は、光学的に透明な基板であり、第2基板(フェースプレート)の第2面側において導電層から空間的に離れて設けられている。換言すれば、前面板1026は、機能付きフィルムから空間的に離れて設けられている。前面板1026は、例えば、ポリカーボネートを用いることができる。
【0094】
従って、各層の表面抵抗の制約としては実施の形態1に準ずる範囲となり、導電層1022の抵抗が、メタルバック1007の抵抗よりも大きい必要がある。
【0095】
本実施形態ではメタルバック1007の表面抵抗を1×10(Ω/□)とし、機能付きフィルム1020の導電層1022の表面抵抗を1×10(Ω/□)以上1×10(Ω/□)以下とした。
【0096】
機能付きフィルム1020の導電層1022の表面抵抗値としては、勿論、本実施形態で設定した値にこだわる必要はない。メタルバック1007の表面抵抗、画像表示装置表面の最大許容到達電位、画像表示装置表面の電位が安定するまでの緩和時間などによって適宜設定される。即ち、表面抵抗値の関係が、”メタルバック1007の表面抵抗値<導電層1022の表面抵抗値”の関係を満たしていれば、画像表示装置内部で発生する放電時の電流制限機能を損なうことは無く、画像表示装置の表面電位を規定することが可能である。
【0097】
本実施形態の画像表示装置によれば、安定した表示画像を長期に渡って維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る画像表示装置の模式図である。
【図2】図2は画像表示装置本体の断面を示す模式図である。
【図3】図3は本発明の第1の実施形態に係る画像表示装置の断面模式図である。
【図4】図4は機能付きフィルム及びフェースプレートの等価回路を示すの図である。
【図5】図5は画像表示装置表面の電位と導電層の抵抗との相関を示す図である。
【図6】図6は放電によりリアプレートに流れ込む電荷量と導電層の抵抗との相関を示す図である。
【図7】図7は本発明の第2の実施形態に係る画像表示装置の断面を示す模式図である。
【図8】図8はフェースプレートの平面模式図である。
【図9】図9は従来の画像表示装置の表示パネルの一例を示す斜線図である。
【図10】図10は、リアプレート側から見たフェースプレートの平面図である。
【図11】図11は、図10中のA−A’断面を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
11 ガラス基板
12 ITO膜
13 ブラックマトリクス
14 蛍光体
15 導電性膜
21 リアプレート
23 電子放出素子
100 電位規定電極
1000 画像表示装置本体
1001 画像表示領域
1003 フェースプレート
1004 リアプレート
1005 枠部材
1006 電子放出素子
1007 メタルバック
1008 発光体膜
1010 駆動回路
1020 機能付きフィルム
1021 粘着層
1022 導電層
1023 絶縁性基体
1024 反射防止層
1025 保護層
1026 前面板
10002 電子放出素子
10003 行配線
10004 列配線
10005 リアプレート
10006 側壁
10007 フェースプレート
10008 発光体膜
10009 メタルバック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子放出素子を有する第1基板と、
前記電子放出素子に対向するアノード電極を有する第2基板と、
前記第2基板の、前記第1基板側に位置する第1面とは反対側に位置する、第2面側に設けられた、導電層と、
を備え、
前記導電層の電位が、画像表示時の前記アノード電極の電位よりも低く設定され、
前記導電層の表面抵抗が、前記アノード電極の表面抵抗よりも高い
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記第2基板の前記第1面に、前記アノード電極から離れ且つ前記アノード電極の周りに、電位規定電極が設けられており、
前記電位規定電極は、画像表示時の前記アノード電極の電位よりも低い電位に設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記電位規定電極が、前記第2基板の前記アノード電極を取り囲むように設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記電位規定電極の電位は、グランド電位である
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記電位規定電極と前記アノード電極が、抵抗膜を介して接続されている
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記導電層の電位が、グランド電位である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記第2基板の前記第2面側に設けられた、第3基板をさらに備えており、
前記第3基板は、前記第2面側において前記導電層と空間的に離れて設けられており、且つ、反射防止特性を有する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記導電層の前記第2基板側とは反対側に位置するように設けられ、且つ、画像表示時の前記アノード電極の電位よりも低く設定される、導電性の反射防止層をさらに有しており、
前記反射防止層の表面抵抗が、前記アノード電極の表面抵抗よりも高い
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記反射防止層の表面抵抗が、前記導電層の表面抵抗よりも高い
ことを特徴とする請求項8に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記導電層が絶縁性基体に固定されており、
前記導電層が、前記第2基板の前記第2面に、粘着層を介して取り付けられている
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記導電層は、絶縁性基体の一方の面に固定されており、前記反射防止層が前記絶縁性基体の他方の面に固定されており、
前記導電層は、前記第2基板の第2面に、粘着層を介して取り付けられている
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の画像表示装置。
【請求項12】
電子放出素子を有する第1基板と前記電子放出素子に対向するアノード電極を有する第2基板とを備える画像表示装置に設けられる機能付きフィルムであって、
前記第2基板の、前記第1基板側に位置する第1面とは反対側に位置する、第2面側に設けられる導電層を備え、
前記導電層の電位が、画像表示時の前記アノード電極の電位よりも低く設定され、
前記導電層の表面抵抗が、前記アノード電極の表面抵抗よりも高い
ことを特徴とする機能付きフィルム。
【請求項13】
電子放出素子を有する第1基板と前記電子放出素子に対向するアノード電極を有する第2基板とを備える表示パネルを用意する工程と、
前記第2基板の、前記第1基板側に位置する第1面とは反対側に位置する、第2面側に導電層を設ける工程と、
を有し、
前記導電層の電位が、画像表示時の前記アノード電極の電位よりも低く設定され、
前記導電層の表面抵抗が、前記アノード電極の表面抵抗よりも高い
ことを特徴とする画像表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−181857(P2008−181857A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264751(P2007−264751)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】