説明

画像表示装置および画像表示装置の制御方法

【課題】表示パネルに供給する電圧を昇圧する昇圧処理と補正パラメータの転送処理とを短時間で完了することのできる技術を提供する。
【解決手段】本発明の画像表示装置は、表示パネルと、入力された映像信号を補正パラメータを用いて補正し、前記表示パネルへ出力する信号処理部と、前記表示パネルに電圧を供給する電源部と、前記補正パラメータを記憶する記憶部と、画像表示装置の起動時に、前記電源部から前記表示パネルに供給する電圧を前記表示パネルの駆動に必要な電圧まで段階的に昇圧する昇圧処理と、前記記憶部から前記信号処理部へ前記補正パラメータを転送する転送処理とを実行する制御部と、を有し、前記転送処理は、前記昇圧処理において昇圧を行わない期間を利用して前記補正パラメータを間欠的に転送する処理であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置および画像表示装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置に関する従来技術は、例えば、特許文献1,2に開示されている。具体的には、特許文献1には、同一表示素子に対応する複数の補正値(輝度むら補正データ)を用いて、表示された映像の輝度むらを低減する技術が開示されている。特許文献2には、電子放出素子を有する表示パネルに供給する電子加速用電圧の制御方法が開示されている。
【0003】
画像表示装置には、補正パラメータの転送処理や表示パネルに供給する電圧を目標値(表示パネルの駆動に必要な電圧)まで昇圧する昇圧処理を順に実行し、それらの処理が完了した後に映像の表示を開始する装置がある。
近年、画像表示装置の高精細化に伴って、補正パラメータのデータ量は増大している。
また、表示パネルに供給する電圧を目標値まで一度に昇圧することが困難な場合がある。例えば、電子源から放出された電子を加速し、蛍光体にぶつけて発光を得る電界放出ディスプレイ(FED)において、目標値まで一度に昇圧すると、予期せぬ放電の発生や、表示パネル表面への埃などの吸着をまねく虞がある。そのような課題を解決するために、表示パネルに供給する電圧を目標値まで段階的に昇圧することがある。
その結果、転送処理の処理時間と昇圧処理の処理時間は長くなり、両方の処理を完了するまでに長時間(数秒程度)を要していた。即ち、映像の表示を開始するまでに長時間を要していた。一方、ユーザにとって映像の表示を開始するまでの時間は短いことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−145494号公報
【特許文献2】特許第3679712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表示パネルに供給する電圧を昇圧する昇圧処理と補正パラメータの転送処理とを短時間で完了することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像表示装置は、表示パネルと、入力された映像信号を補正パラメータを用いて補正し、前記表示パネルへ出力する信号処理部と、前記表示パネルに電圧を供給する電源部と、前記補正パラメータを記憶する記憶部と、画像表示装置の起動時に、前記電源部から前記表示パネルに供給する電圧を前記表示パネルの駆動に必要な電圧まで段階的に昇圧する昇圧処理と、前記記憶部から前記信号処理部へ前記補正パラメータを転送する転送処理とを実行する制御部と、を有し、前記転送処理は、前記昇圧処理において昇圧を行わない期間を利用して前記補正パラメータを間欠的に転送する処理であることを特徴とする。
【0007】
本発明の画像表示装置の制御方法は、表示パネルと、入力された映像信号を補正パラメータを用いて補正し、前記表示パネルへ出力する信号処理部と、前記表示パネルに電圧を供給する電源部と、前記補正パラメータを記憶する記憶部と、を有する画像表示装置の制
御方法であって、画像表示装置の起動時に、前記電源部から前記表示パネルに供給する電圧を前記表示パネルの駆動に必要な電圧まで段階的に昇圧する昇圧ステップと、前記記憶部から前記信号処理部へ前記補正パラメータを転送する転送ステップと、を有し、前記転送ステップは、前記昇圧ステップにおいて昇圧を行わない期間を利用して前記補正パラメータを間欠的に転送するステップであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表示パネルに供給する電圧を昇圧する昇圧処理と補正パラメータの転送処理とを短時間で完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施例に係る画像表示装置の機能構成の一例を示す図。
【図2】本実施例に係る表示パネルの構成の一例を示す図
【図3】電圧指示値の時間変化の一例を示す図。
【図4】昇圧処理と転送処理の実行方法の一例を示す図。
【図5】昇圧処理と転送処理の実行方法の一例を示す図。
【図6】昇圧処理と転送処理の実行方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係る画像表示装置およびその制御方法の具体的な実施例について説明する。
<実施例1>
図1は、本実施例に係る画像表示装置の機能構成を示すブロック図である。本実施例に係る画像表示装置は、垂直同期信号、水平同期信号を含む入力映像信号S001(入力された映像信号)を元に表示パネル0002(表示部)に映像を表示する。本実施例では、表示パネル0002は、複数の走査配線(行配線)、複数の変調配線(列配線)、及び、複数の走査配線と複数の変調配線の交点に設けられた複数の表示素子を有するものとする。なお、列配線が走査配線、行配線が変調配線であってもよい。
【0011】
タイミング生成回路0008は、入力された垂直同期信号、水平同期信号を元に駆動タイミング信号S006を生成する。
信号処理部0003は、入力映像信号S001を、補正パラメータS003を用いて、表示パネル0002での表示に適した駆動データS002へ変換(補正)し、変調配線ドライバ0006を介して表示パネル0002へ出力する。
変調配線ドライバ0006と走査配線ドライバ0007は、駆動タイミング信号S006と駆動データS002を用いて走査配線、変調配線を選択する。その結果、選択された走査配線、変調配線の交点に存在する表示素子が駆動され発光し、映像が表示される。
電源部0004は、表示パネル0002に電圧(供給電圧S005)を供給(印加)する。具体的には、後述する電圧指示値S004に応じた供給電圧S005を表示パネル0002に供給する。
記憶部0005は、補正パラメータS003を記憶する。記憶部0005としては、例えば、不揮発性メモリ、磁気ディスク、光ディスクなどを用いることができる。補正パラメータS003は、入力映像信号S001を補正するためのパラメータである。補正パラメータS003は、例えば、複数のデータ(例えば、輝度むらを補正するための輝度むら補正データ)からなる。
【0012】
制御部0001は、画像表示装置の起動時に、昇圧処理と転送処理とを実行する。制御部0001は、例えば、マイコンなどで構成される。
昇圧処理は、供給電圧S005を表示パネルの駆動に必要な電圧(目標値)まで段階的に昇圧する処理である。具体的には、制御部0001は、供給電圧S005の値を表す電
圧指示値S004を電源部0004へ出力する。図3(a)に、電圧指示値S004の時間変化の一例を、図3(b)にその一部(図3(a)の太枠部分)を拡大した図を示す。本実施例では、制御部0001は、図3(b)に示すように、電圧指示値S004を出力した後(期間T001の後)に、適宜待ち時間(次に電圧指示値S004を出力するまでの期間;昇圧を行わない期間T002)を設ける。それにより、供給電圧S003を段階的に昇圧する。供給電圧S003を段階的に昇圧することにより、予期せぬ放電の発生(それによる回路の破壊)や、表示パネル表面への埃などの吸着などを抑制することができる。
転送処理は、記憶部0005から信号処理部0003へ補正パラメータS003を転送する処理である。
【0013】
また、本実施例では、表示パネル0002として電界放出ディスプレイ(FED)、即ち、表示素子として電子放出素子(特に表面伝導型電子放出素子)を用いた例について説明する。図2に、表示パネル0002の断面模式図を示す。表示パネル0002は、リアプレート(RP)0013とフェースプレート(FP)0014を有する。RP0013は、複数の走査配線、複数の変調配線、及び、複数の電子放出素子0011を有する。FP0014は、複数の電子放出素子に対向して配置された複数の蛍光体0012と蛍光体0012の電子放出素子側に設けられたアノード電極0015を有する。FEDでは、リアプレート側よりもフェースプレート側の電位が高くなるように表示パネル0002(アノード電極0015)に供給電圧S005を供給する。それにより、電子放出素子0011から放出された電子は加速し、蛍光体0012に衝突する。電子が蛍光体0012に衝突することにより、蛍光体0012は発光し、画像表示領域0016に映像が表示される。なお、表示パネル0002は、FEDに限らず、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどであってもよい。
【0014】
本実施例に係る画像表示装置は、転送処理と昇圧処理が完了した後に、映像の表示を開始する。なお、本実施例では、補正パラメータS003が全て転送され、供給電圧S005が目標値に達している状態で映像を表示した場合に、映像の表示が行われたものとみなす。即ち、転送処理や昇圧処理が不十分な状態(補正パラメータS003を用いた補正処理や供給電圧の昇圧が不十分な状態)で映像を表示した場合には、映像の表示が行われたとはみなさない。転送処理と昇圧処理が完了するまでは、黒画像が表示されていてもよいし、転送処理や昇圧処理が不十分な状態での映像が表示されていてもよい。
以下、転送処理と昇圧処理について詳しく説明する。
【0015】
従来、転送処理と昇圧処理の2つの処理は順に実行されていた(即ち、転送処理と昇圧処理の一方の処理が完了してから他方の処理を開始していた)。その結果、画像表示装置を起動してから映像の表示が開始されるまでに長い時間(数秒程度)を要していた。映像の表示が開始されるまでの時間は短いことが望ましいが、転送処理と昇圧処理のそれぞれの処理時間を短くすることは困難である。例えば、予期せぬ放電の発生や、表示パネル表面への埃などの吸着などをまねく虞があるため、昇圧処理の時間を短くすることには限界がある。
そこで、本実施例では、昇圧処理において昇圧を行わない期間を利用して補正パラメータを間欠的に転送することにより、上記2つの処理が完了するまでの時間を短縮する。以下、詳しく説明する。
【0016】
図4に示すように、昇圧処理では、処理時間がT010の電圧指示値出力処理P021と、処理時間がT020の待機処理P022とが交互に繰り返される。電圧指示値出力処理P021は電源部0004へ電圧指示値を出力する処理であり、待機処理P022は電源部0004に対して何も出力しない処理である。そこで、本実施例では、制御部0001は、図4に示すように転送処理を処理時間が待機処理P022の処理時間T020と等
しい複数の部分転送処理P011に分割して、それぞれの部分転送処理P011を待機処理P022中に実行する。具体的には、制御部0001は電圧指示値出力処理P021と部分転送処理P011とを切り替えながら実行する。なお、図4では電圧指示値出力処理P021が最初に実行されているが、部分転送処理P011が最初に実行されてもよい。
【0017】
また、図4は待機処理P022の処理時間が一定の場合を図示したものであるが、図5(a)に示すように、待機処理P022の処理時間は一定でなくてもよい。図5(a)の(i)は、供給電圧の昇圧を非線形に行う際の電圧指示値の時間変化の一例であり、(ii)は、その一部((i)の太枠部分)を拡大した図である。電圧指示値出力処理P021で昇圧する電圧値を一定とすると、待機処理P022の処理時間は一定ではなくなる。
その場合にも、転送処理を処理時間が待機処理P022の処理時間と等しくなるように複数の部分転送処理P011に分割すればよい。例えば、図5(b)に示すように、転送処理を、処理時間がそれぞれ待機処理P022の処理時間T021、T022、T023と等しくなるように3つの部分転送処理P011に分割すればよい。そして、電圧指示値出力処理P021と部分転送処理P011とを切り替えながら実行すればよい。
【0018】
また、部分転送処理P011の処理時間は、待機処理P022の処理時間と必ずしも一致していなくてもよい(補正パラメータを構成するデータの構造によっては、必ずしも一致させることができない場合がある)。例えば、図5(c)に示すように、転送処理が、処理時間が待機処理P022の処理時間T021,T022,T023と無関係の部分転送処理(処理時間がそれぞれT024,T025,T026の3つ部分転送処理P011)に分割されてもよい。そして、待機処理P022の処理時間よりも部分転送処理P011の処理時間のほうが長い場合には、待機処理P022の処理時間を転送処理P011の処理時間以上の長さに設定しなおせばよい(待機処理の処理時間の再設定)。図5(c)の例では、待機処理の処理時間T021よりも部分転送処理の処理時間T024のほうが長いため、待機処理の処理時間T021が部分転送処理の処理時間T024と同じ長さに再設定される。また、待機処理の処理時間T022と部分転送処理の処理時間T025は等しく、待機処理の処理時間T023よりも部分転送処理の処理時間T026のほうが短いため、待機処理の処理時間T022,T023は変更されない。
【0019】
それにより、待機処理P022の処理時間よりも部分転送処理P011の処理時間のほうが長い場合には、部分転送処理P011が完了した後に、次の電圧指示値出力処理P021が実行されることとなる。また、待機処理P022の処理時間よりも部分転送処理P011の処理時間のほうが短い場合には、部分転送処理P011が完了した後に、待機処理P022の処理時間が経過するまで次の電圧指示値出力処理P021が実行されなくなる。
このように待機処理の処理時間を再設定することにより、部分転送処理の処理時間と待機処理の処理時間とが異なる場合にも、待機処理の処理時間を効果的に利用して転送処理を実行することができる。
なお、待機処理の処理時間の長さは、昇圧処理と転送処理を実行中に制御部が再設定してもよいし、部分転送処理の処理時間に合わせて予め設定されていてもよい。待機処理の処理時間の長さが、その期間を利用して転送しようとするデータの転送に要する時間以上に設定されれば、どのタイミングで設定されてもよい。
【0020】
以上述べたように、本実施例によれば、昇圧処理において昇圧を行わない期間を利用して補正パラメータを間欠的に転送することにより、昇圧処理と転送処理とを短時間で完了することができる。その結果、画像表示装置の起動から映像の表示が開始されるまでの時間が短縮することができる。
なお、本実施例では、供給電圧が電子放出素子から放出された電子を加速するために表示パネルに供給される電圧である場合について説明したが、供給電圧はこれに限らない。
表示パネルに映像を表示するために必要な電圧であればよい。
【0021】
<実施例2>
本実施例では、実施例1の構成において、昇圧処理と転送処理の一方が先に完了する場合について説明する。なお、実施例1と同様の機能や構成については説明を省略する。
本実施例では、制御部0001は、昇圧処理と転送処理の一方が先に完了した後に、他方の処理を続けて実行し、該他方の処理を完了させる。
具体的には、昇圧処理が先に完了する場合には、部分転送処理P011と電圧指示値出力処理P021とを切り替えながら実行した後、残りの補正パラメータを連続的に転送する。転送処理が先に完了する場合には、部分転送処理P011と電圧指示値出力処理P021とを切り替えながら実行した後、電圧指示値出力処理P021と待機処理P022とを切り替えながら実行する。
【0022】
以上述べたように、本実施例によれば、実施例1と同様に転送処理と昇圧処理とを合わせた総処理時間を短くすることができる。また、昇圧処理と転送処理の一方が先に完了する場合でも、他方の処理を完了することができる
【0023】
<実施例3>
本実施例では、補正パラメータが複数の輝度むら補正データからなる場合の例について説明する。輝度むら補正データは表示素子毎に必要なため、p行×q列(p、qは共に自然数)の表示素子が配置されている表示パネルに対して、p×q×N(Nは表示素子毎に必要なデータ数)個のデータが必要になる。
【0024】
まず、N個のデータ及びそのデータを用いた補正方法について説明する。
輝度のばらつきは階調値に依存する。そのため、輝度むら補正データは、1つの表示素子に対し輝度の階調数分だけ用意されていることが望ましい(各階調値に対応するデータが用意されていることが望ましい)。しかしながら、階調数分の輝度むら補正データを用意するとデータ量が膨大になってしまう。そこで本実施例では、一部の階調値に対応する輝度むら補正データ(N個のデータ)のみを用意する。信号処理部0003は、N個の輝度むら補正データから、内挿や外挿によって他の階調値に対応する輝度むら補正データ(用意されていない輝度むら補正データ)を算出する。そして、入力された画素値(階調値)に対応する輝度むら補正データを用いて、該画素値を補正する。
なお、用意されていない輝度むら補正データは、用いる輝度むら補正データの数が多いほど精度良く算出することができるが、用いる輝度むら補正データの数が少なくても(N個より少なくても)算出することができる。例えば、用いる輝度むら補正データの数が2つであっても、誤差は大きくなるが、各階調値の輝度むら補正データを算出することができる。
【0025】
次に、本実施例での転送処理の方法について説明する。
本実施例では1回に行方向の1ライン分のデータ数であるp個を転送し、これをq×N回繰り返すことで画像表示に必要な輝度むら補正データを全て転送する(転送処理を完了する)。このように、1回に転送するデータ数を予め決めておくことにより、転送処理が容易に分割可能となると共に、昇圧処理(昇圧の速度など)を変更した際に、転送処理の分割を容易に修正することができるようになる。
【0026】
また、本実施例では、1つの表示素子に対して1個ずつ輝度むら補正データを転送する。具体的には、p個のデータの転送をq回行うことにより、表示パネル0002の各表示素子に1個ずつの計p×q個の輝度むら補正データを転送し、それをN回繰り返すことにより転送処理を完了する。
なお、転送処理の方法はこれに限らない。例えば、1つの表示素子に対応するN個の輝
度むら補正データを転送した後に、次の表示素子に対応するN個の輝度むら補正データを転送してもよい。すなわち、輝度むら補正データを、N個ずつp×q回転送してもよい。また、1回に転送するデータ数はp個である必要はない。例えば、縦方向の1ライン分のデータ数であるq個、表示素子毎に必要なデータ数であるN個、フラッシュメモリ(記憶部)のセクタ単位であってもよい。
【0027】
以下、本実施例に係る画像表示装置で映像の表示が開始されるまで処理の流れの一例について図6(a),(b)を用いて説明する。
まず、ユーザなどにより画像表示装置の起動が指示されると(ステップS601:YES)、制御部0001は、電圧指示値出力処理P021を実行する(ステップS602)。次に、制御部0001は、転送処理と昇圧処理が完了したか否かを判断する(ステップS603)。転送処理と昇圧処理が完了している場合には(ステップS603:YES)、映像の表示が開始され、転送処理と昇圧処理が完了していない場合には(ステップS603:NO)、S604へ進む。ステップS604では、制御部0001が、計測時間が待機処理の処理時間T020と等しいタイマを起動する。
【0028】
(ステップS604の)次に、制御部0001は、記憶部0005から信号処理部0003へp個のデータを転送する(ステップS605;図6(b)の処理P012)。そして、p個のデータの転送後に、制御部0001は、タイマにより待機処理の処理時間T020が経過したか否かを確認する(ステップS606)。処理時間T020が経過していない場合(ステップS606:NO)、ステップS605へ戻り、次のp個のデータが転送される。処理時間T020が経過している場合(ステップS606:YES)、ステップS602へ戻り、次の電圧指示値出力処理P021が実行される。
そして、昇圧処理と転送処理が完了するまで(ステップS603でYESになるまで)ステップS602〜S606の処理を繰り返す。
【0029】
なお、図6の例では、部分転送処理P011の処理時間が待機処理P022の処理時間以上になるように制御しているが(待機処理P022の処理時間が必ず再設定される構成としているが)、制御方法(構成)はこれに限らない。例えば、ステップS606において、処理時間T020が経過していない場合に、制御部0001が、処理時間T020が経過するまでの残り時間を算出し、その算出結果を元に次のp個のデータを転送するか否かを判断してもよい。あるいは、処理時間T020中に実行可能な処理P012(p個のデータを転送する処理)の回数を予め算出し、処理P012を該算出した回数だけ繰り返し実行してもよい。
【0030】
また、実施例1で述べたように、転送処理と昇圧処理が完了するまでは、黒画像が表示されていてもよいし、転送処理や昇圧処理が不十分な状態での映像が表示されていてもよい。例えば、補正パラメータのサイズ(データ量)が多い場合には、全てのデータが転送されるまでに長時間を要するため、補正処理等が不十分な状態であっても映像を表示することが好ましい。
例えば、画像表示装置は、表示素子毎に必要なN個のデータのうち予め定められたn個(n≦Nの自然数)のデータが転送された時点で映像(補正処理が不十分な映像)が表示される構成であってもよい。具体的には、制御部0001は、転送処理と昇圧処理とを上述した方法で実行すればよい。信号処理部0003は、各表示素子について予め定められたn個のデータの転送が完了した時点(昇圧処理は完了していることが好ましい)で、それらのデータを用いて入力映像信号に補正を施し、表示パネルへ出力すればよい。そして、信号処理部0003は、補正パラメータ(全ての輝度むら補正データ)の転送が完了した後に、それらのデータを用いて入力映像信号に補正を施して、表示パネルへ出力すればよい。
【0031】
以上述べたように、本実施例によれば。実施例1,2と同様に転送処理と昇圧処理とを合わせた総処理時間を短くすることができる。
【0032】
なお、転送処理は、ダイレクトメモリアクセスコントローラ(DMAC)を用いて行われてもよい。即ち、転送処理は、DMA転送により実現されてもよい。転送処理をDMA転送で実現することにより、データ転送を高速化し、転送処理の処理時間をさらに短縮することができる。また、制御部は、転送処理中にバスの影響を受けない他の処理を並列で実行することが可能となる。
なお、転送処理や昇圧処理実行中にエラーが発生した場合には、処理を強制終了し、表示パネルに電圧を供給しないための電圧指示値を出力する制御が行われてもよい。それにより、画像表示装置における予期せぬ動作を抑制することができる。
【符号の説明】
【0033】
0001 制御部
0002 表示パネル
0003 信号処理部
0004 電源部
0005 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
入力された映像信号を補正パラメータを用いて補正し、前記表示パネルへ出力する信号処理部と、
前記表示パネルに電圧を供給する電源部と、
前記補正パラメータを記憶する記憶部と、
画像表示装置の起動時に、前記電源部から前記表示パネルに供給する電圧を前記表示パネルの駆動に必要な電圧まで段階的に昇圧する昇圧処理と、前記記憶部から前記信号処理部へ前記補正パラメータを転送する転送処理とを実行する制御部と、
を有し、
前記転送処理は、前記昇圧処理において昇圧を行わない期間を利用して前記補正パラメータを間欠的に転送する処理である
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記補正パラメータは、複数のデータからなり、
前記昇圧を行わない期間の長さは、その期間を利用して転送しようとするデータの転送に要する時間以上に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記昇圧処理と前記転送処理の一方が先に完了した後に、他方の処理を続けて実行し、該他方の処理を完了させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記転送処理は、ダイレクトメモリアクセスコントローラを用いて行われる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記表示パネルは、複数の電子放出素子を有するリアプレートと、前記複数の電子放出素子に対向して配置された複数の蛍光体を有するフェースプレートとを有する表示パネルであり、
前記電源部は、前記リアプレート側よりも前記フェースプレート側の電位が高くなるように前記表示パネルに電圧を供給する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
表示パネルと、入力された映像信号を補正パラメータを用いて補正し、前記表示パネルへ出力する信号処理部と、前記表示パネルに電圧を供給する電源部と、前記補正パラメータを記憶する記憶部と、を有する画像表示装置の制御方法であって、
画像表示装置の起動時に、前記電源部から前記表示パネルに供給する電圧を前記表示パネルの駆動に必要な電圧まで段階的に昇圧する昇圧ステップと、
前記記憶部から前記信号処理部へ前記補正パラメータを転送する転送ステップと、
を有し、
前記転送ステップは、前記昇圧ステップにおいて昇圧を行わない期間を利用して前記補正パラメータを間欠的に転送するステップである
ことを特徴とする画像表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−158803(P2011−158803A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21938(P2010−21938)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】