説明

画像表示装置及びその制御方法

【課題】自発光型の画像表示装置において、画素間の残光時間の違いに起因して発生する色割れを抑制し、高品質なカラー表示を実現するための技術を提供する。
【解決手段】第1の電気光学素子を駆動するための電気信号を前記第1の電気光学素子に印加する第1の画素回路と、前記第1の電気光学素子よりも残光時間が短い第2の電気光学素子を駆動するための電気信号を前記第2の電気光学素子に印加する第2の画素回路と、を含む複数の画素回路で1つのピクセルが形成される。前記第1及び第2の画素回路は、前記第2の電気光学素子に印加される電気信号の波形の重心が、前記第1の電気光学素子に印加される電気信号の波形の重心に比べて時間的に遅れるように、それぞれの電気信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブマトリクス駆動方式の画像表示装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(FPD)として、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、フィールドエミッション表示装置(FED)などがある。中でも、ELDは自発光型で視野角依存性が小さく、高速応答であるため良好な動画画質を実現しやすい特徴がある。また、ELDの中でもアクティブマトリクス駆動方式の表示装置は、高精細化しやすく、表示素子に流れるピーク電流を小さく出来るため寿命が長く高信頼性の表示装置を実現できる。
【0003】
アクティブマトリクス駆動方式のホールド型の表示装置では、動画表示の際に映像がボケて見えるいわゆるホールドボケという現象が発生する。下記特許文献1には、1フレーム内での発光時間の割合(デューティー)を変えることにより、時間平均の表示輝度を簡便に調節した有機EL素子を備えた画像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−60076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ELDやFEDのような自発光型の表示装置では、発光体の材料として、蛍光材料と燐光材料のいずれも使用可能である。蛍光材料は残光時間が短く、燐光材料は残光時間が長いが発光効率が大きいというように、材料毎に特長が異なる。ここで色毎或いは画素毎に蛍光材料と燐光材料を自由に選択できれば、設計の自由度が増すと共に、カラー表示装置の高輝度化や色再現域の拡大を期待できる。しかしながら、蛍光材料と燐光材料とでは残光特性が異なる等の理由から、従来は、複数の画素を配列する表示パネル上には、蛍光材料のみ或いは燐光材料のみというように、全ての画素が同種の材料で構成されるのが一般的であった。
【0006】
我々が検討を行った結果、色毎に残光特性の違う発光体を用いた高精細表示装置で高速に動く映像を表示した場合に、発光体の残光特性の違いに起因した「色割れ」という現象が発生して、妨害感が発生することがわかった。以下に色割れ現象について詳細に説明する。
【0007】
図2は、矩形の電流波形を印加した場合の、短残光の発光体の発光波形と長残光の発光体の発光波形である。横軸は時間であり、電流波形の縦軸は電流値、発光波形の縦軸は発光強度である。図に示すとおり、短残光の発光体の発光波形は電流波形とほとんど同じ形になるが、長残光の発光体の発光波形は発光の立ち上りと立下りが所定の時定数をもつ形になる。よって、発光の立ち上りでは短残光の発光体の色(以下、短残光色)が相対的に強くなり、発光の立下りでは長残光の発光体の色(以下、長残光色)が相対的に強くなり、妨害感が発生する。ここでは、前者の発光の立ち上り時の現象を「着色立ち上り遅れ」、後者の発光の立下り時の現象を「着色尾引き」と呼ぶことにする。これらの現象は、高速に移動する映像を人間が追従視した場合に顕著になり、長残光色があたかも遅れて移動するように見える。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、自発光型の画像表示装置において、画素間の残光時間の違いに起因して発生する色割れを抑制し、高品質なカラー表示を実現するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一態様は、アクティブマトリクス駆動される自発光型の画像表示装置であって、複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線の交差部のそれぞれに配置された複数の画素回路と、を有しており、第1の電気光学素子を駆動するための電気信号を前記第1の電気光学素子に印加する第1の画素回路と、前記第1の電気光学素子よりも残光時間が短い第2の電気光学素子を駆動するための電気信号を前記第2の電気光学素子に印加する第2の画素回路と、を含む複数の画素回路により1つのピクセルが形成され、前記第1及び第2の画素回路は、前記第2の電気光学素子に印加される電気信号の波形の重心が、前記第1の電気光学素子に印加される電気信号の波形の重心に比べて時間的に遅れるように、それぞれの電気信号を出力する画像表示装置を提供するものである。
【0010】
本発明の第二態様は、複数の走査線と複数のデータ線の交差部のそれぞれに配置された複数の画素回路を有し、アクティブマトリクス駆動される自発光型の画像表示装置の制御方法であって、第1の画素回路から、第1の電気光学素子を駆動するための電気信号を前記第1の電気光学素子に印加するステップと、前記第1の画素回路とともに1つのピクセルを形成する第2の画素回路から、前記第1の電気光学素子よりも残光時間が短い第2の電気光学素子を駆動するための電気信号を前記第2の電気光学素子に印加するステップと、を含み、前記第1及び第2の画素回路は、前記第2の電気光学素子に印加される電気信号の波形の重心が、前記第1の電気光学素子に印加される電気信号の波形の重心に比べて時間的に遅れるように、それぞれの電気信号を出力する画像表示装置の制御方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自発光型の画像表示装置において、画素間の残光時間の違いに起因して発生する色割れを抑制し、高品質なカラー表示を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第三実施形態の電流波形と発光波形の関係を説明するための図。
【図2】従来の画像表示装置の電流波形と発光波形の関係を説明するための図。
【図3】本発明の第一実施形態の画像表示装置の画素回路の一例。
【図4】本発明の第一及び第三実施形態の画像表示装置の全体構成の一例。
【図5】本発明の第一実施形態の電流波形と発光波形の関係を説明するための図。
【図6】本発明の第二実施形態の画像表示装置の画素回路の一例。
【図7】本発明の第二実施形態の画像表示装置の全体構成の一例。
【図8】本発明の第二実施形態の電流波形と発光波形の関係を説明するための図。
【図9】本発明の第二実施形態の画像表示装置の課題を説明するための図。
【図10】本発明の第三実施形態の画像表示装置の画素回路の一例。
【図11】本発明の第三実施形態の画像表示装置の画素回路の変形例。
【図12】本発明の第三実施形態の画像表示装置の全体構成の変形例。
【図13】従来の画像表示装置の画素回路。
【図14】従来の画像表示装置のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、残光時間の異なる複数の電気光学素子を発光素子として用いる画像表示装置に関し、詳しくは、残光時間の違いによって発生する色割れを抑制するため、各素子を駆動する電気信号の立ち上がり/立下りの速度やタイミングを制御する技術に関する。本発
明は、複数の電気光学素子をアクティブマトリクス駆動する方式の画像表示装置に好ましく適用できる。ここで電気光学素子とは、電気信号(電流信号または電圧信号)により発光強度(輝度)が制御される自発光型のデバイスをいい、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、電子放出素子(冷陰極素子)と電子線励起蛍光体からなる発光素子などがある。
以下、OLEDを発光素子として用いるELDを例にして、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
(参考例:従来技術の説明)
先ず、本発明の理解を容易にするために、本発明の前提となるアクティブマトリクス型表示装置について従来例(特許文献1の第一実施形態)の説明をする。
【0015】
図13は、参考例の一画素分の等価回路図である。図示するように、本画像表示装置は、所定の走査サイクル(フレーム)で画素回路PXLを選択するための走査線Yと、画素回路PXLを駆動するための階調情報を与えるデータ線Xとがマトリクス状に配設されている。走査線Yとデータ線Xの交差部に配置された画素回路PXLは、発光素子OLEDと、第一の能動素子であるTFT1と、第二の能動素子であるTFT2と、保持容量Csとを含む。発光素子OLEDは供給される電流量によって輝度が変化する。TFT1は、走査線Yによって制御されるスイッチであり、ONのときに、データ線Xから供給される階調情報を保持容量Csに書き込む。TFT2は、保持容量Csに書き込まれた階調情報に応じて、発光素子OLEDに供給する電気信号(本例では電流量)を制御するトランジスタである。
【0016】
画素回路PXLへの階調情報の書き込みは、走査線Yが選択された状態で、データ線Xに階調情報に応じた電気信号(データ電位Vdata)を印加することによって行われる。画素回路PXLに書き込まれた階調情報は走査線Yが非選択となったあとも保持容量Csに保持され、発光素子OLEDは保持された階調情報に応じた輝度で点灯を維持可能である。
【0017】
また、第三の能動素子であるTFT3は、発光素子OLEDの発光期間を制御するためのスイッチ(消灯回路)である。具体的には、TFT3のゲートGに与える制御信号によりTFT2のゲート電位を制御して、OLEDを消灯することが可能である。この制御信号は、停止制御線Zを介して対応する走査線上の各画素回路PXLに含まれるTFT3に与えられる。制御信号に応じてTFT3をオン状態にすることにより、保持容量Csが放電されて、TFT2のゲート−ソース間電圧Vgsが0Vとなり、OLEDに流れる電流を遮断することができる。同一走査線上の全画素回路PXLのTFT3のゲートGは同一停止制御線Zに共通接続されており、停止制御線Z単位で発光停止制御を行うことができる。
【0018】
図4は、図13に示した画素回路PXLをマトリクス状に配列した画像表示装置の全体構成を示す回路図である。図示するように、走査線Y1,Y2,…,YNが行状に配列され、データ線Xが列状に配列されている。各走査線Yとデータ線Xの交差部に画素回路PXLが形成されている。又、走査線Y1,Y2,…,YNと平行に、停止制御線Z1,Z2,…,ZNが形成されている。
【0019】
走査線Yは走査線駆動回路21に接続されている。走査線駆動回路21はシフトレジスタを含んでおり、垂直クロックVCKに同期して垂直スタートパルスVSP1を順次転送することにより、走査線Y1,Y2,…,YNを一走査サイクル内で順次選択する。一方、停止制御線Zは停止制御線駆動回路23に接続されている。この駆動回路23もシフトレジスタを含んでおり、VCKに同期して垂直スタートパルスVSP2を順次転送するこ
とにより、停止制御線Zに制御信号を出力する。尚、VSP2は遅延回路24により所定時間だけVSP1から遅延している。
【0020】
データ線Xはデータ線駆動回路22に接続されている。データ線駆動回路22は、走査線Yの線順次走査に同期して、各データ線Xに階調情報に対応した電気信号を出力する。この場合、データ線駆動回路22は、いわゆる線順次駆動を行い、選択された画素の行に対して一斉に電気信号を供給する。
【0021】
図14は、図4に示した画像表示装置の動作説明に供するタイミングチャートである。まず、垂直スタートパルスVSP1が走査線駆動回路21及び遅延回路24に入力される。走査線駆動回路21はVSP1の入力を受けたあと、垂直クロックVCKに同期して走査線Y1,Y2,…,YNを順次選択し、走査線単位で階調情報が画素回路PXLに書き込まれていく。各画素回路PXLは書き込まれた階調情報に応じた強度で発光を開始する。VSP1は遅延回路24で遅延され、VSP2として停止制御線駆動回路23に入力される。停止制御線駆動回路23はVSP2を受けたあと、垂直クロックVCKに同期して停止制御線Z1,Z2,…,ZNを順次選択し、発光が走査線単位で停止していく。
【0022】
図4、図13、図14に示した構成によれば、各画素回路PXLが発光するのは階調情報が書き込まれてから発光停止制御信号によって発光が停止するまでの間、即ち概ね遅延回路24によって設定された遅延時間分である。その遅延時間をτとし、一走査サイクル(一フレーム)の時間をTとすると、画素が発光している時間的割合即ちデューティーは概ねτ/Tとなる。
【0023】
(第一実施形態)
以下に本発明の第一実施形態について、前記参考例と違う点について詳細に説明する。
図3は本発明の第一実施形態の左右二画素分の等価回路図の一例である。左側は、長残光の発光体であるOLED1(第1の電気光学素子)を有する長残光色の第1の画素回路(PXL1)であり、右側は、短残光の発光体であるOLED2(第2の電気光学素子)を有する短残光色の第2の画素回路(PXL2)である。一般的な画像表示装置では、複数の原色(例えばRGBの3色)の画素回路で1つの点を表現する。各原色の画素回路を「サブピクセル」とよび、複数のサブピクセルの組を「ピクセル」とよぶ場合もある。図3の各画素回路はサブピクセルに対応するものである。
【0024】
各原色の発光体材料は、各種の蛍光材料や燐光材料の中から、色純度、発光効率、寿命、色バランスなどを考慮して適宜選択される。本実施形態では、例えば、R(赤)画素の発光体材料として長残光の燐光材料が用いられ、G(緑)画素及びB(青)画素の発光体材料として短残光の蛍光材料が用いられたものとする。図3においては、PXL1がR画素を表し、PXL2がG画素を表している。なお、B画素は図示されていないが、PXL2と同じ回路構成である。
【0025】
画素回路の基本構成は参考例と同じであるが、第2の画素回路PXL2が、保持容量Cs2の放電経路上に抵抗Rを有している点が異なる。すなわち、短残光の第2の画素回路PXL2では、保持容量Cs2と抵抗Rとで消灯回路が構成されている。この抵抗Rは、発光体の残光特性の差に起因する残光時間の差をOLEDに印加する電流波形の立下り特性で調整するためのものであり、Cs2の放電の速度、つまりTFT22のゲート電位の低下速度が遅くなるように作用する。
【0026】
抵抗Rの値は、保持容量Cs2と抵抗Rからなる時定数が2つの発光体OLED1、OLED2の残光時定数の差に相当するように設定するとよい。抵抗Rの形成方法は、TFT32のゲート幅やゲート長を調整してON抵抗がTFT31よりも大きくなるようにし
てもよいし、適当な抵抗材を用いて形成しても構わない。以上のように、第一実施形態は、発光体の残光時間と抵抗値以外は、参考例と同じである。
【0027】
図5は図3に示した本発明の第一実施形態にかかる画像表示装置の動作説明をするためのタイミングチャートである。図5の最上段は短残光色の画素回路PXL2の電流波形、二段目は長残光色の画素回路PXL1の電流波形を示し、横軸は時間、縦軸は電流量である。三段目と四段目はそれぞれPXL2とPXL1の発光波形を示し、横軸は時間、縦軸は発光強度である。
【0028】
PXL1とPXL2とでは、電流信号の立ち上り及び立下りの開始タイミングは同じである。しかし、PXL2の容量Cs2の放電時定数がPXL1の容量Cs1の放電時定数より抵抗Rの分だけ大きいため、OLED2の駆動トランジスタTFT22のゲート電位はOLED1の駆動トランジスタTFT21のゲート電位に比べ、緩やかに低下する。したがって、図5に示すように、OLED2に印加される電流信号の減衰速度が、OLED1に印加される電流信号の減衰速度よりも遅くなる。その結果、OLED2に印加される電流波形の重心をOLED1に印加される電流波形の重心よりも時間的に遅らせることができる。
【0029】
以上述べた構成により、図5に示すように、短残光色と長残光色の発光波形の重心のずれを従来(図2参照)よりも小さくできるため、色割れを抑制することができる。特に本実施形態では、短残光色の画素に対し、長残光色の画素における残光に相当する発光を行わせることができるため、着色尾引きを効果的に抑制することができる。
【0030】
(第二実施形態)
第一実施形態では、図5に示すとおり発光の立下り波形をそろえることができるが、発光の立ち上り波形をそろえることができない。それゆえ、発光波形の重心が長残光色(PXL1)の方が時間的に遅くなってしまい色割れが残ってしまうという課題がある。
【0031】
そこで本発明の第二実施形態では、短残光の電気光学素子(OLED2)に印加される電流波形の立ち上がりのタイミングを、長残光の電気光学素子(OLED1)に印加される電流波形の立ち上がりのタイミングよりも遅らせる。以下に本発明の第二実施形態について、第一実施形態と違う点について詳細に説明する。
【0032】
図6は本発明の第二実施形態の左右上下四画素分の等価回路図の一例であり、図7は図6に示した画素回路PXLをマトリクス状に配列した画像表示装置の全体構成を示す回路図の一例である。図示するように、走査線YとTFT112(またはTFT122)との配線方法以外は、第一実施形態と同じである。第二実施形態では、発光の立ち上りの遅い長残光色の画素回路(PXL1)が短残光色の画素回路(PXL2)よりも早く発光開始するように配線する。具体的には、PXL1は第一実施形態と同様に配線し、PXL2は、PXL1が接続されている走査線Yの次に駆動(選択)される走査線Yに接続される。これにより、図8に示すとおり短残光色の発光の立ち上り開始タイミングを1走査行期間ぶんだけ遅らせることが出来る。なお、データ線駆動回路22からは、PXL1とPXL2とで1行分ずれた階調情報を出力すればよい。
【0033】
以上のように、第2の電気光学素子に印加される電流波形の立ち上がりのタイミングを、第1の電気光学素子に印加される電流波形の立ち上がりのタイミングよりも遅らせることで、図8に示すとおり発光波形の重心の差をゼロもしくは可及的に小さくできる。よって、第一実施形態よりもさらに色割れを効果的に抑制することができる。
【0034】
(第三実施形態)
第二実施形態の方法では、立ち上がりのタイミングを1走査行期間分しか調整することができない。そのため、発光期間(デューティー)が大きい場合は、PXL1とPXL2の発光波形の重心をそろえることが困難である。また、図9のように、発光の立ち上がり初期で短残光色が強くなり色バランスが悪化する(着色立ち上り遅れ)という課題が発生する。
【0035】
そこで本発明の第三実施形態では、短残光の電気光学素子(OLED2)に印加される電流波形の立ち上がりにおける上昇速度を、長残光の電気光学素子(OLED1)に印加される電流波形の立ち上がりにおける上昇速度よりも遅くする。以下に本発明の第三実施形態について、第一実施形態と違う点について詳細に説明する。
【0036】
図10は本発明の第三実施形態の左右二画素分の等価回路図の一例である。図示するように、短残光色の画素回路PXL2では、OLED2を制御するトランジスタTFT22のゲートGと保持容量Cs2の間に抵抗R1が設けられている。それ以外の構成は、第一実施形態と同じである。
【0037】
この抵抗R1は、発光体の残光特性の差に起因した発光の立ち上り特性の差を電流の立ち上り特性で調整するためのものである。R1の値は、Cs2とR1からなる時定数が2つの発光体の残光時定数の差に相当するように設定するとよい。
【0038】
図1は図10に示した本発明の第三実施形態にかかる画像表示装置の動作説明をするためのタイミングチャートである。図に示すとおり、短残光色の画素の電流の立ち上りと立下りを抵抗R1とR2で調整することにより、短残光色と長残光色の発光波形の差を調整する事ができる。
【0039】
以上のように、第2の電気光学素子に流れる電流の立ち上り速度が、第1の電気光学素子に流れる電流の立ち上り速度よりも遅くなっていれば、図1に示すとおり着色立ち上り遅れを抑制することができる。よって、第二実施形態よりもさらに色割れを効果的に抑制することができる。
【0040】
(第三実施形態の変形例)
図11は本発明の第三実施形態の変形例の上下左右四画素分の画素回路の一例である。また、図12は図11に示した画素回路をマトリクス状に配列した画像表示装置の全体構成を示す回路図の一例である。第三実施形態との違いは、停止制御線Zが上下に隣接する2行分の画素回路で共有されている点と、抵抗R11、R12、R21、R22の特性である。
【0041】
走査線Yは別のため、発光開始タイミングは下の画素回路の方が遅いが、停止制御線Zが共通のため、発光停止タイミングは上下の画素回路で同じとなる。そのため、下の画素回路の方が発光期間(デューティー)が小さくなり、輝度斑が発生することになる。そこで、本変形例では、輝度斑の発生を抑制するために、下の画素回路のOLEDに印加される電流波形の減衰速度を上の画素回路のものよりも遅くすることによって、実効的な発光期間が同じになるようにしている。
【0042】
具体的には、下の画素回路PXL1の消灯回路に設けられた抵抗R21などからなる時定数が、上の画素回路PXL1の消灯回路に設けられた抵抗R11などからなる時定数よりもおよそ1走査行期間分大きくなるように設定するとよい。また、下の画素回路PXL2の消灯回路に設けられた抵抗R22などからなる時定数が、上の画素回路PXL2の消灯回路に設けられた抵抗R12などからなる時定数よりもおよそ1走査行期間分大きくなるようにするとよい。また、抵抗R12とR11の値は、第一実施形態と同じように、2
つの発光体(OLED12とOLED11)の残光時定数の差に対応するように設定する。抵抗R22とR21の値も、2つの発光体(OLED22とOLED21)の残光時定数の差に対応するように設定する。尚、抵抗R1の値は第三実施形態と同じように設定する。
【0043】
以上のようにすることにより、輝度斑を発生させることなく、停止制御線Zの数と発光停止制御駆動回路23の出力段数を第三実施形態の半分にすることができる。
【0044】
(その他)
以上述べた実施形態は本発明の一具体例にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。例えば、上記各実施形態の回路構成は一例であり、本発明は、残光特性の違う複数種類の電気光学素子と、各電気光学素子を駆動するための電気信号を出力する画素回路とを有し、アクティブマトリクス駆動される自発光型の画像表示装置であれば、適用できる。
【0045】
例えば、電気光学素子として、電子放出素子と蛍光体からなる発光素子を用いるFEDにも本発明を適用することができる。FEDの場合の画素回路では、ソースフォロア回路により電圧信号で電子放出素子を駆動することが好ましい。また、本発明は、別の画素回路(TFTの特性変動を補償するための様々な画素回路など)を有する画像表示装置にも適用することができる。また、発光特性の差を抑制する手段は、抵抗に限定する必要はなく、保持容量やゲート容量などを変更しても電気信号波形(発光波形)の重心を調整できるため、同様の効果を得ることができる。
【0046】
また上記実施形態では、長残光と短残光の2種類の画素で説明をしたが、残光特性の異なる画素が3種類以上存在する場合にも本発明を適用可能である。例えば、RGB3原色の画像表示装置において、各色の残光時間がR>G>Bのように相違する場合は、各色の電気光学素子に印加する電気信号の波形の重心がR、G、Bの順に遅くなるように、各色の画素回路に付加する抵抗値を調整すればよい。
【符号の説明】
【0047】
X:データ線、Y:走査線、Z:停止制御線
PXL1:第1の画素回路、PXL2:第2の画素回路
OLED1、OLED11、OLED21:第1の電気光学素子
OLED2、OLED12、OLED22:第2の電気光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブマトリクス駆動される自発光型の画像表示装置であって、
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線の交差部のそれぞれに配置された複数の画素回路と、を有しており、
第1の電気光学素子を駆動するための電気信号を前記第1の電気光学素子に印加する第1の画素回路と、前記第1の電気光学素子よりも残光時間が短い第2の電気光学素子を駆動するための電気信号を前記第2の電気光学素子に印加する第2の画素回路と、を含む複数の画素回路により1つのピクセルが形成され、
前記第1及び第2の画素回路は、前記第2の電気光学素子に印加される電気信号の波形の重心が、前記第1の電気光学素子に印加される電気信号の波形の重心に比べて時間的に遅れるように、それぞれの電気信号を出力する
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の画素回路は、前記第2の電気光学素子に印加される電気信号の波形の立下りにおける減衰速度を、前記第1の電気光学素子に印加される電気信号の波形の立下りにおける減衰速度よりも遅くする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の画素回路は、前記第2の電気光学素子に印加される電気信号の波形の立ち上がりのタイミングを、前記第1の電気光学素子に印加される電気信号の波形の立ち上がりのタイミングよりも遅くする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の画素回路は、前記第2の電気光学素子に印加される電気信号の波形の立ち上がりにおける上昇速度を、前記第1の電気光学素子に印加される電気信号の波形の立ち上がりにおける上昇速度よりも遅くする
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
各画素回路は、
ゲートに印加される電圧に応じて電気光学素子に出力する電気信号を制御するトランジスタと、
前記データ線から供給された階調情報を保持し、前記階調情報に応じた電圧を前記トランジスタのゲートに印加する保持容量と、
前記保持容量を放電することにより前記電気光学素子を消灯する消灯回路と、を有しており、
前記第2の画素回路の消灯回路は、前記第1の画素回路の消灯回路よりも放電の速度を遅くするための抵抗を有している
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記第2の画素回路は、前記第1の画素回路が接続されている走査線の次に駆動される走査線に接続されている
ことを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記第2の画素回路は、前記トランジスタのゲートと前記保持容量の間に抵抗を有している
ことを特徴とする請求項5または6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
複数の走査線と複数のデータ線の交差部のそれぞれに配置された複数の画素回路を有し、アクティブマトリクス駆動される自発光型の画像表示装置の制御方法であって、
第1の画素回路から、第1の電気光学素子を駆動するための電気信号を前記第1の電気光学素子に印加するステップと、
前記第1の画素回路とともに1つのピクセルを形成する第2の画素回路から、前記第1の電気光学素子よりも残光時間が短い第2の電気光学素子を駆動するための電気信号を前記第2の電気光学素子に印加するステップと、を含み、
前記第1及び第2の画素回路は、前記第2の電気光学素子に印加される電気信号の波形の重心が、前記第1の電気光学素子に印加される電気信号の波形の重心に比べて時間的に遅れるように、それぞれの電気信号を出力する
ことを特徴とする画像表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−155150(P2012−155150A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14412(P2011−14412)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】