説明

画像表示装置及び画像表示装置に用いる集音手段

【課題】超音波の到来方向の検出に有益な集音手段、超音波を発する音源位置を特定し可視化した画像表示装置を提供する。
【解決手段】カメラの撮像画像を表示する表示手段と、少なくとも2つのマイクロフォンM3、M4を有する集音手段15と、音源が発する超音波が少なくとも2つのマイクロフォンに到達する時間差に基づき音源位置を算出する音源位置算出手段と、表示手段に表示された撮像画像内に音源位置を識別する画像を表示する制御を行う表示制御手段とを備えた画像表示装置で、集音手段は、少なくとも2つのマイクロフォンをそれぞれ覆い、基端C、Dを閉塞して先端に各マイクロフォンの集音方向へ開口する集音孔H3、H4を形成し、基端から先端に向けて先細りする形状の筒状部材17C、17Dを有し、少なくとも2つの筒状部材を、先端が互いに接近するように配置することで、集音孔同士の間隔Yを超音波の半波長未満にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音源が発する音を検出する集音手段、該集音手段を備えて表示手段に音源の位置を識別する画像を表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1において、5つのマイクロフォンを用い、各マイクロフォン間の音の到達時間差に基づいて音源の位置を推定すると共に、推定された音源位置近傍の映像をカメラで採取し、ディスプレイに表示された前記音源位置近傍の映像上に、音源位置を表示する音源探査システムに関する技術を開示した。
【0003】
本技術によれば、例えば、工場内等の所定の箇所に音源探査システムを設置して、定期的に音源の位置の測定を行うことにより、トランスやモータ等の機器故障に伴って故障音を発する音源を特定できる。これにより機器の異常を効率的に発見できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−111183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の音源探査システムのように、集音手段として、2つのマイクロフォンを水平方向に所定の間隔をおいて一対にした上で二対のマイクロフォンを同一平面に直交配置する場合には、各マイクロフォンの外形寸法に制約されて前記所定の間隔を狭めることに限度があった。一般に故障音を発する音源の位置を推定するためには、前記所定の間隔を音源から発生する音の半波長よりも短くしなければならないことから、前記間隔を狭めることが制限されると、集音手段が機器故障に伴って音源から発せられる波長が短い超音波の到来方向を検出できず、ひいては超音波を発する音源を特定できないという問題があった。
【0006】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、超音波の到来方向の検出に有益な集音手段、超音波を発する音源の位置を特定して該音源の位置を可視化できる画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る画像表示装置は、カメラによって撮像した撮像画像を表示する表示手段と、互いに離れて配置された少なくとも2つのマイクロフォンを有する集音手段と、音源が発する超音波が前記少なくとも2つのマイクロフォンに到達する時間差に基づいて、前記音源の位置を算出する音源位置算出手段と、前記表示手段に表示された前記撮像画像内に、前記音源の位置を識別する画像を表示する制御を行う表示制御手段と、を備えた画像表示装置において、前記集音手段は、前記少なくとも2つのマイクロフォンをそれぞれ覆い、基端を閉塞して先端に各マイクロフォンの集音方向へ開口する集音孔を形成し、前記基端から前記先端に向けて先細りする形状からなる筒状部材を有し、少なくとも2つの前記筒状部材を、前記先端が互いに接近するように配置することで、前記集音孔同士の間隔を前記超音波の半波長未満にしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記集音手段に、前記集音孔を開放した状態で、前記少なくとも2つの筒状部材を覆って前記集音孔以外からの前記超音波の伝搬を遮断する遮断部材を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2において、前記遮断部材は、可塑性材料によって形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1において、前記筒状部材は前記集音孔を開口させた単一体からなることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記筒状部材内で、前記基端と前記マイクロフォンとの間に吸音部材を介在させたことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明に係る集音手段は、表示手段に、カメラによって撮像した撮像画像を表示し、音源位置算出手段が、音源が発する超音波が互いに離れて配置された少なくとも2つのマイクロフォンに到達する時間差に基づいて、前記音源の位置を算出して、表示制御手段が、前記表示手段に表示された前記撮像画像内に、前記音源の位置を識別する画像を表示する制御を行う画像表示装置に用いられ、前記少なくとも2つのマイクロフォンを有する集音手段であって、前記少なくとも2つのマイクロフォンをそれぞれ覆い、基端を閉塞して先端に各マイクロフォンの集音方向へ開口する集音孔を形成し、前記基端から前記先端に向けて先細りする形状からなる筒状部材を有し、少なくとも2つの前記筒状部材を、前記先端が互いに接近するように配置することで、前記集音孔同士の間隔を前記超音波の半波長未満にしたことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6において、前記集音孔を開放した状態で、前記少なくとも2つの筒状部材を覆って前記集音孔以外からの前記超音波の伝搬を遮断する遮断部材を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7において、前記遮断部材は、可塑性材料によって形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項6において、前記筒状部材は、前記集音孔を開口させた単一体からなることを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項6ないし9のいずれかにおいて、前記筒状部材内で、前記基端と前記マイクロフォンとの間に吸音部材を介在させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明に係る画像表示装置及び請求項6の発明に係る集音手段によれば、筒状部材の先端に集音方向へ開口する集音孔が形成されることで、音源が発する超音波を、集音孔を通じて集音方向のみから筒状部材内に取り込んで各マイクロフォンに向けて伝搬させることができる。しかも、基端から先端に向けて先細りする形状をなす少なくとも2つの筒状部材を、先端が互いに接近するように配置して、集音孔同士の間隔を超音波の半波長未満にしたことで、少なくとも2つのマイクロフォンを用いて超音波の到来方向を検出できる。よって、集音手段が超音波の到来方向を検出するために有益なものとなる。
加えて、請求項1の発明に係る画像表示装置によれば、音源位置算出手段は、前記超音波が少なくも2つのマイクロフォンに到達する時間差に基づいて、前記音源の位置を特定きる。さらに表示制御手段により、音源の位置を画像に置き換えることができる。よって、音源の位置を画像を通じて可視化できる。
請求項2及び請求項7の発明によれば、遮断部材によって、音源が発する超音波が集音孔以外から筒状部材内に取り込まれることを防止できる。よって、マイクロフォンは、集音方向のみからの超音波を検出することが可能になる。
請求項3及び請求項8の発明によれば、遮断部材を、外力によって変形させて筒状部材の集音孔を除く外周に対して密着させることができる。これにより、超音波が集音孔以外から筒状部材内に取り込まれることを効果的に防止できる。
請求項4及び請求項9の発明によれば、筒状部材が集音孔を開口させた単一体からなることで、筒状部材は集音孔以外に内部と外部とを連通させる部分を有しない。よって、超音波を集音孔のみから筒状部材内に取り込むことが可能になる。
請求項5及び請求項10の発明によれば、集音孔から筒状部材に取り込まれた超音波を、基端に到達する前に吸音部材に吸収させることが可能になる。これにより、超音波が基端に反射してマイクロフォンに向けて伝搬することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1の画像表示装置の概略構成図である。
【図2】同画像表示装置を構成する集音装置の斜視図である。
【図3】同集音装置の要部縦断面図である。
【図4】同画像表示装置を構成するパーソナルコンピュータの概略ブロック図である。
【図5】同画像表示装置が実行する音源の位置を算出する処理の第1説明図である。
【図6】その第2説明図である。
【図7】ディスプレイに図形画像が表示された状態を示す図である。
【図8】実施形態2の画像表示装置を構成する集音装置の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、図1ないし図7を参照しつつ説明する。実施形態1の画像表示装置1は、測定ユニット10と、増幅器20と、バンドパスフィルタ30と、A/D変換器40と、パーソナルコンピュータ50と、ビデオ入出力ユニット60と、ディスプレイ70とを備えている。
【0020】
図1に示すように、測定ユニット10は、支持部材11A〜11Cと、基台12と、載置固定台13と、CCDカメラ14と、集音装置15とを備えている。基台12は、支持部材11A〜11Cの上部に配置されている。載置固定台13は、カメラ支持部材によって基台12上に支持されている。カメラ支持部材にはCCDカメラ14が前方に向けられた状態で固定されている。
【0021】
図1ないし図3に示すように集音装置15は、筒状部材支持台16と、筒状部材17A〜17Dと、超音波マイクロフォンM1〜M4と、遮断部材18とを備えている。この集音装置15は本発明の集音手段の一例である。筒状部材支持台16は、正面視で同一円周上に等間隔で形成された4つの貫通孔を有する円盤状のアクリル板で形成されている。この筒状部材支持台16は貫通孔が前方に向けられた状態で載置固定台13に固着されている。この筒状部材支持台16は、該筒状部材支持台16の後方で載置固定台13に固着された筒状部材固定台Kにボルト(図示せず。)で固定されている。ここでは筒状部材固定台Kも、円盤状のアクリル板で形成した。なお図3中の符号16C、16Dは貫通孔を示し、他の2つの貫通孔の図示を省略した。
【0022】
各筒状部材17C、17Dはプラスチック製であって、各筒状部材17C、17Dの基端C、Dには、接着剤によってプラスチック製の閉塞部材17G、17Hが固着されている。このため、基端C、Dは閉塞部材17G、17Hによって閉塞されている。各筒状部材17C、17Dの先端には集音孔H3、H4が形成されている。各筒状部材17C、17Dは、前方部が筒状部材支持台16の中心側へ折曲した形状で、かつ基端側から先端側に向けて先細りする形状をなしている。筒状部材17C、17Dは、後方部が貫通孔16C、16Dを貫通し折曲した部分が筒状部材支持台16より前方に突出し集音孔H3、H4を集音装置15の前方に向けて筒状部材支持台16に支持されている。本実施形態では、集音装置15の前方を各超音波マイクロフォンM1〜M4の集音方向とした。両筒状部材17C、17Dは、折曲した部分が互いに接近する側へ配置されることで、両集音孔H3、H4が互いに接近する。その結果、両集音孔H3、H4の垂直方向における間隔Yは、検出しようとする超音波の半波長未満に保たれている。ここでは、一例として間隔Yを0.7cmとして22.5kHzの音波の半波長(約0.8cm)未満にした。なお22.5kHzの音波は本発明の超音波の一例である。
【0023】
一方図示を省略したが、各筒状部材17A、17B(図2参照。)の基端も、各筒状部材17C、17Dの基端C、Dと同様にして閉塞されている。図2に示すように、各筒状部材17A、17Bの先端には集音孔H1、H2が形成されている。両筒状部材17A、17Bも折曲した部分を筒状部材支持台16の中心側へ配置することで、図2の如く両集音孔H1、H2が互いに接近する。両集音孔H1、H2は、両集音孔H3、H4を結ぶ垂直線を2等分する位置で交差する水平線上に0.7cmの間隔を保って配置されている。
【0024】
図3に示した各超音波マイクロフォンM3、M4は、全指向性を有するものでプラスチック製の環状部材19C、19Dにそれぞれ嵌着されている。各筒状部材17C、17Dには、環状部材19C、19Dがそれぞれ嵌着されることで各超音波マイクロフォンM3、M4が収容されている。このため、各超音波マイクロフォンM3、M4を、基端C、Dが閉塞された各筒状部材17C、17Dで覆うことができる。各超音波マイクロフォンM3、M4は、集音孔H3、H4から各筒状部材17C、17D内に取り込まれた音の超音波信号を検出可能である。両超音波マイクロフォンM3、M4は、貫通孔16C、16Dの形成位置に対応させて垂直方向に所定間隔をおいて互いに離れて配置されている。各超音波マイクロフォンM3、M4に接続された信号線S3、S4は、各筒状部材17C、17Dの貫通孔(図示せず。)から各筒状部材17C、17Dの外部に引き出されている。
【0025】
さらに、各筒状部材17C、17D内で、各環状部材19C、19Dと各基端C、Dとの間には吸音部材80C、80Dがそれぞれ介在されている。ここでは、一例として吸音部材80C、80Dを発泡ウレタンで形成した。集音孔H3、H4から各筒状部材17C、17D内に取り込まれた音は、基端C、Dに到達する前に吸音部材80C、80Dに吸収される。
【0026】
一方、各筒状部材17A、17Bにも、各筒状部材17C、17Dと同様な状態で超音波マイクロフォンM1、M2がそれぞれ収容されている。このため、各超音波マイクロフォンM1、M2を、基端が閉塞された各筒状部材17A、17Bで覆うことができる。各超音波マイクロフォンM1、M2は、集音孔H1、H2から各筒状部材17A、17B内に取り込まれた音の超音波信号を検出可能である。両超音波マイクロフォンM1、M2も、上記の他の2つの貫通孔の形成位置に対応させて水平方向に所定間隔をおいて互いに離れて配置されている。各筒状部材17A、17B内でも、各超音波マイクロフォンM1、M2を嵌着させた環状部材と各基端との間に吸音部材が介在されている。集音孔H1、H2から各筒状部材17A、17B内に取り込まれた音も、各筒状部材17A、17Bの基端に到達する前に吸音部材に吸収される。また、各超音波マイクM1、M2に接続された信号線S1、S2(図1参照。)についても、信号線S3、S4と同様にして各筒状部材17A、17Bの外部に引き出されている。
【0027】
遮断部材18は、音波の伝搬を遮断するもので可塑性材料によって形成されている。ここでは、一例として遮断部材18を粘土で形成した。図2及び図3に示すように、遮断部材18は、集音孔H1〜H4を開放させた状態で外力を加えて成形することで、筒状部材17A〜17D、閉塞部材17G、17Hや各筒状部材17A、17Bの基端を閉塞する部材を覆って圧接する。これにより遮断部材18は、集音孔H1〜H4を除く筒状部材17A〜17Dの外周や閉塞部材の外周に密着する。各超音波マイクM1〜M4に接続された信号線S1〜S4は遮断部材18から引き出されている。信号線S1〜S4が遮断部材18から引き出される部分には遮断部材18を密着させた。
【0028】
図1に示すように各超音波マイクロフォンM1〜M4は、信号線S1〜S4を介して増幅器20に接続されている。増幅器20は、各超音波マイクロフォンM1〜M4から送信された音波信号を増幅する。増幅器20はバンドパスフィルタ30に接続されている。バンドパスフィルタ30によって、フィルタを通過する周波数の帯域が制限される。バンドパスフィルタ30はA/D変換器40に接続されている。A/D変換器40は前記音波信号(アナログ信号)をディジタル信号に変換する。ディジタル信号はパーソナルコンピュータ50に送信される。
【0029】
CCDカメラ14はビデオ入出力ユニット60に接続されている。ビデオ入出力ユニット60は、CCDカメラ14から送信された撮像信号(アナログ信号)をディジタル信号に変換する。ビデオ入出力ユニット60によって、ディジタル信号(撮像信号)はパーソナルコンピュータ50に送信される。パーソナルコンピュータ50はディスプレイ70に接続されている。符号71A、71Bはディスプレイ70の表示領域である。なお、ディスプレイ70は本発明の表示手段の一例である。
【0030】
図4は、パーソナルコンピュータ50の概略ブロック図である。パーソナルコンピュータ50は、キーボード51と、演算処理部52と、記憶部53とを備えている。
【0031】
キーボード51は演算処理部52に接続されている。キーボード51は、超音波マイクロフォンの数、集音孔H1と集音孔H1との水平間隔(ここでは0.7cm)、集音孔H3と集音孔H4との垂直間隔Y(同0.7cm)、バンドパスフィルタ30を通過させる周波数の設定値等を入力するために用いられる。加えて画像表示装置1の操作者は、キーボード51を操作して、音源から発せられた音の伝搬速度を補正するための測定ユニット10の周囲温度値(例えば20℃)、後述する水平角度θや垂直角度φの算出間隔(例えば30回/秒)を任意に入力できる。
【0032】
演算処理部52は、記憶部53及びディスプレイ70にそれぞれ接続されている。記憶部53は、ディジタル信号(音波信号)演算処理プログラム記憶部53Aと、表示画像データ選択処理プログラム記憶部53Bと、画像表示制御プログラム記憶部53Cと、データ記憶部53Dとを備えている。ディジタル信号(音波信号)演算処理プログラム記憶部53Aには、音波信号の音圧レベルを分析して選定周波数として音圧レベルが最大値を示す周波数を選定する処理、超音波を発する音源の位置を算出する処理等を実行するプログラムが記憶されている。表示画像データ選択処理プログラム記憶部53Bには、後述の表示領域71A、71Bに表示する円形の画像データを選択する処理を実行するプログラムが記憶されている。画像表示制御プログラム記憶部53Cには、前記画像データに基づいて表示領域71A、71Bに各種の円形画像をそれぞれ表示する処理等を実行するプログラムが記憶されている。
【0033】
データ記憶部53Dには、CCDカメラ14からの撮像信号に応じて表示領域71Aに表示されるCCDカメラ14の撮像画像の画像データ、前記選定周波数のデータ、音源の位置データ(水平角度θ、垂直角度φの各データ)等が記憶されている。加えて、データ記憶部53Dには、前記選定周波数に対応付けて、互いに色が異なり大きさが同じ円形の画像データが記憶されている。
【0034】
本実施形態の画像表示装置1では、例えば機器の故障音を含む音が発生したことに起因して、演算処理部52が、データ記憶部53Dから、円形の画像データやCCDカメラ14の撮像画像の画像データを読み出す。その後演算処理部52は、円形の画像データに基づいて、表示領域71A、71Bに表示する表示画像の画像信号を生成する。続いて演算処理部52は、生成した画像信号や撮像画像の画像データに関する撮像信号をディスプレイ70に送信して表示領域71Aに、撮像画像に重ねて故障音を含む音が発せられる音源の位置を識別する画像(円形の画像)を表示する。以下に、演算処理部52が各表示領域71A、71Bに音源の位置を識別する画像を表示する処理について説明する。
【0035】
演算処理部52は、音源から発せられた音の音波信号(音圧レベル)、CCDカメラ14からの撮像信号を取得する処理をそれぞれ実行する。ここでは、超音波マイクロフォンM1〜M4によって検出された音波信号及び前記撮像信号が、図4に示すように、ディジタル信号として演算処理部52に入力される。その後演算処理部52は、音波信号及び撮像信号をデータ記憶部53Dにそれぞれ記憶させる処理を実行する。
【0036】
さらに演算処理部52は、ディジタル信号(音波信号)演算処理プログラム記憶部53Aに記憶されたプログラムを用い以下に説明する手法によって、上記の選定周波数毎に、2つの集音孔H1、H2の原点位置0(図5参照。)から水平方向(図5中の左右方向)に対する音源の位置への水平角度θ(図5参照。)を算出する処理を実行する。原点位置0は、集音孔H1の中心点と集音孔H2の中心点とを結ぶ水平線を2等分する点と、集音孔H3の中心点と集音孔H4の中心点とを結ぶ垂直線を2等分する点とが重なる位置である。また図5中に二点鎖線の矢印で示した方向は、音源から発せられた音の伝搬方向である。
【0037】
水平角度θは、集音孔H1と集音孔H2との水平間隔、音源から発せられた音が2つの超音波マイクロフォンM1、M2に到達する時間差、該音の伝搬経路の温度によって変化する。水平角度θは下記の式(1)、式(2)を用いて算出できる。本実施形態では、音が各集音孔H1、H2から各筒状部材17A、17B内に取り込まれて各超音波マイクロフォンM1、M2に向けて伝搬する距離は同じであると考えられることから、便宜的に超音波マイクロフォンM1、M2の位置は集音孔H1、H2の位置と一致するものとした。なお、D12は、2つの超音波マイクロフォンM1、M2における音の到達時間差であり、cは音の伝搬速度である。Lは、集音孔H1と集音孔H2との水平間隔であり、tは音の伝搬経路の温度である。
θ=sin−1{(D12×c)/L}[°]・・・(1)
c=334+0.6t[m/s]・・・(2)
【0038】
加えて演算処理部52は、式(2)及び下記の式(3)を用いて垂直角度φ(図6参照。)を算出する。この垂直角度φは、原点位置0(図5、図6参照。)から垂直方向(図6中の上下方向)に対する音源の位置への角度を意味する。ここでも、音が各集音孔H3、H4から各筒状部材17C、17D内に取り込まれて各超音波マイクロフォンM3、M4に向けて伝搬する距離は同じであると考えられることから、便宜的に超音波マイクロフォンM3、M4の位置は集音孔H3、H4の位置と一致するものとした。なおD34は、2つの超音波マイクロフォンM3、M4における音の到達時間差であり、cは音の伝搬速度である。Yは、集音孔H3と集音孔H4との垂直間隔である。
φ=sin−1{(D34×c)/Y}[°]・・・(3)
【0039】
本実施形態では演算処理部52は、水平角度θや垂直角度φを算出する際に、式(2)中の温度tとして測定ユニット10の周囲温度のデータを用いた。なお演算処理部52は本発明の音源位置算出手段の一例である。
【0040】
続いて演算処理部52は、画像表示制御プログラム記憶部53Cに記憶されたプログラムを実行して以下に説明するように、データ記憶部53Dから選択した円形の画像データに基づいて、各種の円形画像Z1、Z2(図7参照。)等を各表示領域71A、71Bに表示する処理を実行する。
【0041】
具体的には、音源において上記の選定周波数を含む機器の故障音が発生している場合には、演算処理部52は、データ記憶部53Dから該選定周波数(ここでは故障音の周波数である22kHz)に対応付けられた画像データ(ここでは赤色の円形の画像データ)を読み出す。その後演算処理部52は、赤色の円形の画像データに基づいて、水平角度θや垂直角度φの算出間隔(ここでは30回/秒)に合わせて1秒あたり画面を30回書き換えて、各表示領域71A、71Bに赤色の円形画像Z1(図7参照。)を表示する。加えて演算処理部52は、各表示領域71A、71Bに赤色の円形画像Z1を表示する場合と同様に、音源の位置及び選定周波数に対応させて、各表示領域71A、71Bに円形画像Z2等を表示する。なお、演算処理部52は本発明の表示制御手段の一例である。
【0042】
<実施形態1の効果>
実施形態1の集音装置15及び画像表示装置1では、筒状部材17A〜17Dの先端に集音方向へ開口する集音孔H1〜H4が形成されることで、音源が発する超音波を、集音孔H1〜H4を通じて集音方向のみから筒状部材17A〜17D内に取り込んで各超音波マイクロフォンM1〜M4に向けて伝搬させることができる。しかも、筒状部材17Aの先端と筒状部材17Bの先端、筒状部材17Cの先端と筒状部材17Dの先端とをそれぞれ互いに接近するように配置して、集音孔H1と集音孔H2との水平間隔、集音孔H3と集音孔H4との垂直間隔Yをそれぞれ検出しようとする超音波の半波長未満にしたことで、2つ超音波マイクロフォンM1、M2、2つの超音波マイクロフォンM3、M4をそれぞれ用いて超音波の到来方向を検出できる。よって、集音装置15が超音波の到来方向を検出するために有益なものになる。
加えて画像表示装置1では、演算処理部52が、2つの超音波マイクロフォンM1、M2における超音波の到達時間差D12や、2つの超音波マイクロフォンM3、M4における超音波の到達時間差D34に基づいて、超音波(例えば22kHzの音波)を発する音源の位置を算出することで該音源の位置を特定できる。さらに、演算処理部52は、音源の位置を円形画像Z1等に置き換えることができる。よって、各種の円形画像Z1等を通じて音源の位置を可視化できる。
【0043】
また、遮断部材18は、集音孔H1〜H4を除く筒状部材17A〜17Dの外周や閉塞部材17G、17H等の外周に密着することで、音源が発する超音波が、集音方向へ開口した集音孔H1〜H4以外から筒状部材17A〜17Dの内部に取り込まれることを防止できる。よって、筒状部材17A〜17Dに収容された超音波マイクロフォンM1〜M4は、集音方向のみからの超音波を検出することが可能になる。
【0044】
さらに、遮断部材18を、外力によって変形させて集音孔H1〜H4を除く筒状部材17A〜17Dの外周や閉塞部材17G、17H等の外周に密着させることで、超音波が集音孔H1〜H4以外から筒状部材17A〜17D内に取り込まれることを効果的に防止できる。
【0045】
加えて、集音孔H1〜H4から筒状部材17A〜17D内に取り込まれた超音波を、基端C、D等に到達する前に吸音部材80C、80D等に吸収させることが可能になる。これにより、超音波が基端C、D等に反射して超音波マイクロフォンM1〜M4に向けて伝搬することを抑制できる。
【0046】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図8を参照しつつ説明する。ここでは実施形態1と同一の構成は同一の符号を付しその説明を省略する。実施形態2の画像表示装置1Aは、実施形態1の集音装置15に代えて集音装置15Aを備えている。集音装置15Aは、実施形態1の筒状部材17C、17Dに代えて筒状部材17C1、17D1を備えている。各筒状部材17C1、17D1は粘土で成形されて基端C1、D1が閉塞された単一体とされている。加えて信号線S3、S4が各筒状部材17C1、17D1から引き出される部分には、粘土で成形された各筒状部材17C1、17D1が密着する。これにより、各筒状部材17C1、17D1は、集音孔H13、H14以外には各筒状部材17C1、17D1の内部と外部とを連通させる部分を有しない。
【0047】
一方図示を省略したが、集音装置15Aは、実施形態1の筒状部材17A、17Bに代えて、各筒状部材17C1、17D1と同様に成形された単一体からなる2つの筒状部材を備えている。この2つの筒状部材についても、集音孔以外には各筒状部材の内部と外部とを連通させる部分を有しない。
【0048】
<実施形態2の効果>
本実施形態の画像表示装置1A及び集音手段15Aでは、各筒状部材17C1、17D1は、集音孔H13、H14のみを通じて外部と連通することから、超音波信号は、集音孔H13、H14のみから各筒状部材17C1、17D1内に取り込み可能となる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。例えば上述した実施形態1、2とは異なり、集音装置は、4つの筒状部材に限らず、例えば水平方向又は垂直方向に集音孔同士を0.7cmの間隔をおいて互いに離れて配置した2つの筒状部材のみを備えるものであってもよい。加えて前記水平間隔や前記垂直間隔は、0.7cmに設定することに限らず、検出しようとする故障音の周波数に応じて適宜の値に変更してもよい。さらに加えて各筒状部材を、前方部を折曲させずに基端側から先端側に向けて先細りする形状にした上で、少なくとも2つの筒状部材を、水平方向又は垂直方向に所定間隔をおいて平行に配置した状態で、集音孔同士の間隔を前記適宜の値に設定してもよい。これ以外にも、前方部を折曲させずに基端側から先端側に向けて先細りする形状にした少なくとも2つの筒状部材が、先端が互いに筒状部材支持台16の中心側へ向くように傾斜させた状態で筒状部材支持台16に支持させることで、集音孔同士の間隔を前記適宜の値に設定してもよい。
【0050】
また筒状部材17A〜17Dや各筒状部材17A〜17Dの基端を閉塞する部材の材質は、プラスチックに限らずアルミニウム等の金属や合成ゴム等であってもよい。さらに上述した実施形態とは異なり、各筒状部材17A〜17Dに代えて、2つ以上の短尺で先細り形状の環状部材を円筒状に組み合わせて筒状部材を形成した上で、遮断部材18が、この筒状部材の集音孔を除いて各筒状部材の外周や閉塞部材の外周に密着するようにしてもよい。さらに加えて筒状部材17C1、17D1は、粘土で成形されたものに限らず合成樹脂等で成形された単一体としてもよい。
【0051】
上記以外にも、超音波マイクロフォンM1〜M4を、環状部材19C、19Dに嵌着せずに筒状部材17A〜17D、17C1、17D1に直接収容したり、筒状部材支持台16や筒状部材固定台Kを、円盤状のアクリル板に代えて例えば貫通孔16C、16D等を設けた正方形の金属板等で形成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1(1A)・・画像表示装置、14・・CCDカメラ、15・・集音装置、17A〜17D、17C1、17D1・・筒状部材、18・・遮断部材、52・・演算処理部、70・・ディスプレイ、80C、80D・・吸音部材、C、D・・筒状部材の基端、H1〜H4、H13、H14・・集音孔、M1〜M4・・超音波マイクロフォン、Y・・集音孔同士の間隔、Z1、Z2・・円形画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラによって撮像した撮像画像を表示する表示手段と、互いに離れて配置された少なくとも2つのマイクロフォンを有する集音手段と、音源が発する超音波が前記少なくとも2つのマイクロフォンに到達する時間差に基づいて、前記音源の位置を算出する音源位置算出手段と、前記表示手段に表示された前記撮像画像内に、前記音源の位置を識別する画像を表示する制御を行う表示制御手段と、を備えた画像表示装置において、
前記集音手段は、前記少なくとも2つのマイクロフォンをそれぞれ覆い、基端を閉塞して先端に各マイクロフォンの集音方向へ開口する集音孔を形成し、前記基端から前記先端に向けて先細りする形状からなる筒状部材を有し、
少なくとも2つの前記筒状部材を、前記先端が互いに接近するように配置することで、前記集音孔同士の間隔を前記超音波の半波長未満にしたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記集音手段に、前記集音孔を開放した状態で、前記少なくとも2つの筒状部材を覆って前記集音孔以外からの前記超音波の伝搬を遮断する遮断部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記遮断部材は、可塑性材料によって形成されていることを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記筒状部材は前記集音孔を開口させた単一体からなることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記筒状部材内で、前記基端と前記マイクロフォンとの間に吸音部材を介在させたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
表示手段に、カメラによって撮像した撮像画像を表示し、音源位置算出手段が、音源が発する超音波が互いに離れて配置された少なくとも2つのマイクロフォンに到達する時間差に基づいて、前記音源の位置を算出して、表示制御手段が、前記表示手段に表示された前記撮像画像内に、前記音源の位置を識別する画像を表示する制御を行う画像表示装置に用いられ、前記少なくとも2つのマイクロフォンを有する集音手段であって、
前記少なくとも2つのマイクロフォンをそれぞれ覆い、基端を閉塞して先端に各マイクロフォンの集音方向へ開口する集音孔を形成し、前記基端から前記先端に向けて先細りする形状からなる筒状部材を有し、
少なくとも2つの前記筒状部材を、前記先端が互いに接近するように配置することで、前記集音孔同士の間隔を前記超音波の半波長未満にしたことを特徴とする集音手段。
【請求項7】
前記集音孔を開放した状態で、前記少なくとも2つの筒状部材を覆って前記集音孔以外からの前記超音波の伝搬を遮断する遮断部材を備えることを特徴とする請求項6に記載の集音手段。
【請求項8】
前記遮断部材は、可塑性材料によって形成されていることを特徴とする請求項7に記載の集音手段。
【請求項9】
前記筒状部材は、前記集音孔を開口させた単一体からなることを特徴とする請求項6に記載の集音手段。
【請求項10】
前記筒状部材内で、前記基端と前記マイクロフォンとの間に吸音部材を介在させたことを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の集音手段。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−185082(P2012−185082A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49311(P2011−49311)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】