説明

画像表示装置

【課題】 低速電子線用蛍光膜では、輝度が高く、かつ同時に寿命の長い蛍光膜が得られておらず、十分な特性を持つ画像表示装置が作製できなかった。
【解決手段】 平均粒径10μm以下の蛍光体粒子を2層以上積層した加速電圧15kV以下の電子線励起用蛍光膜を、全体膜厚のうち表示面側の1/10以上を占める蛍光体層を第1蛍光体により形成すること、および電子線照射側の前記以外の蛍光体層を第2蛍光体により形成することによって、上記課題を解決する。また、本発明の蛍光膜を用いて画像表示装置を作製することにより、上記課題を解決する。
【効果】 本発明により、輝度が高く、かつ寿命の長い蛍光膜および画像表示装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体の発光による光を用いた画像表示装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
本発明における画像表示装置とは、電子線照射や光照射により蛍光体を励起し、発光させて画像情報を表示する装置のことである。これは、陰極線管(特に投射型陰極線管)、低速電子線ディスプレイパネル(電界放出型ディスプレイ(FED)等)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などをいう。また、前記陰極線管やパネルを表示部として、駆動装置や画像処理回路等を組込み画像を表示させるシステム全体も画像表示装置に含める。さらに、上記に示したような自発光の画像表示装置と共に、液晶などの非発光な表示部に、バックライトやサイドライトとして光源を備えた非自発光の画像表示装置も含む。
【0003】
以下、画像表示装置のうち、主に電界放出型ディスプレイ(FED)を取り上げ説明する。カラー画像を表示する薄型の画像表示装置である、電界放出型ディスプレイ(FED)等では、15kV以下の電圧で加速した電子線により蛍光膜を励起して画像を表示する。このようなディスプレイに用いられる低速電子線励起用蛍光膜では、表面に電子が溜まり、電子同士の反発により蛍光体への電子の侵入が妨げられる現象(チャージアップ)が少なくなるように電気抵抗が低いことが求められる。現在このような条件を満たす蛍光膜としては、ZnS:Ag等の硫化物系蛍光体を用いた膜が知られている。しかし、これらの硫化物系蛍光体は電子線の照射のダメージにより分解しやすく、S元素を含んだ気体を放出することで、蛍光体の輝度の低下及び電子源カソードの劣化を招く。これらはディスプレイの寿命を短くする。
【0004】
また、ZnGa2O4:Mnや、Y3(Al,Ga)5O12:Tb、CaMgSi2O6:Eu等の分解しにくく、輝度の劣化の少ない蛍光体は、電気抵抗が高いため、チャージアップしやすく、高い輝度が得られにくい。
【0005】
そのため、特開平08-171868号公報(特許文献1)に示されるようにIn2O3、SnO2、ZnOなどの導電性物質を混合含有させる方法が提案されている。しかし、これらの導電性物質は非発光物であるため、蛍光体に十分な導電性が付与される程度の量(例えば20%以上)を混合すると、膜中の蛍光体量が少なくなり、そのため十分な輝度まで向上させることができない。
【0006】
【特許文献1】特開平08-171868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術では、蛍光体の劣化改善と、輝度向上の両方の課題を解決することが困難であった。したがって、本発明の目的は、劣化が少なく、かつ輝度が高い画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、蛍光体粒子を積層した蛍光膜を有し、該蛍光膜に一方向よりエネルギーを投入し蛍光体を励起し発光させ、その光を利用して表示を行う画像表示装置において、該蛍光膜が少なくとも2種の蛍光体で構成され、そのうち、蛍光膜全体における第1の蛍光体の重量が、第1及び第2以降の蛍光体を含める、全体の蛍光体重量に対する重量比をxとすると、xの範囲が0<x≦0.9であり、かつエネルギー投入側の蛍光膜最表面層の全体の重量に占める第1の蛍光体の重量比をyとすると、yの範囲が(x+0.1)≦y≦1である蛍光膜を有することを特徴とする画像表示装置により達成される。
【0009】
すなわち、電子線が照射される側の層を、劣化が少ない第1の蛍光体を多くして劣化を低減し、蛍光膜全体では、低速電子線において高輝度を示す第2以降の蛍光体により輝度を高くすることで、長寿命でありかつ高輝度の画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、輝度が高く、寿命の長い蛍光膜及び画像表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の蛍光膜の一例の断面図である。表示面であるフェイスパネル1の上に透明電極2が設けられ、さらにその上に蛍光膜が形成されている。蛍光膜は、第2以降の蛍光体である3、及び第1の蛍光体である4で構成されている。
【0013】
図1の例では膜全体が3層に重なった蛍光体粒子で形成されている。ここでは、上層より、第1蛍光体層、第2蛍光体層、第3蛍光体層と呼ぶ。この図の蛍光膜や蛍光体層の厚さは一例であり、他の膜厚も可能である。また、図1の例では、フェイスパネル上に透明電極を設けているが、その替わりに、蛍光体層の上にアルミ層を設けて電極としてもよい。
【0014】
ここで、第2の蛍光体として、低速電子線において良好な輝度を示す蛍光体を用いれば、高い輝度の蛍光膜を得ることができる。かつ、第1蛍光体として、劣化に強く、電子線の照射によって分解しにくい蛍光体を用いることで、長寿命の蛍光膜を得ることができる。
【0015】
上記本発明の構成が有効である理由を以下に述べる。蛍光体を励起し発光させる電子線は、フェイスパネルの逆側から照射される。照射された電子線は、蛍光膜中の蛍光体層を通過することで、強度の減衰が生じる。このため、電子線照射側である図1の最も上の第1蛍光体層では励起電子線強度が強く、フェイスパネル側の下の第2〜3蛍光体層では励起電子線強度が弱くなり、膜の厚さ方向での強度の不均一をもたらす。このことは、第2〜3蛍光体層では、励起が弱いため蛍光体の高い輝度が得られにくく、第1蛍光体層では励起が強いため劣化が激しく、蛍光体の分解による影響が顕れやすいことを示している。ここで、上記本発明の構成を用いれば、第2〜3蛍光体層での輝度の低さを補い、第1蛍光体層での劣化を押さえることができ、結果として輝度が高く劣化の少ない蛍光膜を得ることができる。また、第1蛍光体層に、強い励起での輝度の飽和が少ない蛍光体を用いれば、さらに高輝度な蛍光膜を得ることができる。
【0016】
上記構成を実現する方法のひとつは、上記第1の蛍光体として劣化の少ない蛍光体を用いる、すなわち、測定条件の例として、10μA/cm2の電子線を2000時間照射した後の輝度の、初期輝度に対する比率が、第2以降の蛍光体の該比率より大きいものを用いることである。
【0017】
さらに、上記第1の蛍光体として輝度の飽和が少ない蛍光体を用いる、すなわち、10μA/cm2〜20μA/cm2の電子線励起における、発光輝度の増加率が、第1蛍光体より該増加率より大きいものをもちいればさらに輝度の高い蛍光膜を得ることができる。
【0018】
上記蛍光体の例としては、第2の蛍光体として、ZnS:Ag,Al、ZnS:Cu,Al、Y2O2S:Eu、ZnO:Zn、Zn2SiO4:Mn等が、第1の蛍光体としてZnGa2O4、ZnGa2O4:Mn、Y2SiO5:Tb、Y3(Al,Ga)5O12:Tb、Y(P,V)O4:Eu、Y2O3:Eu、CaMgSi2O6:Eu等がそれぞれ挙げられる。さらに、本発明を作製する際には、ここに挙げた蛍光体以外にも様々な組み合わせを考えることができる。
【0019】
また、S元素を含む蛍光体を、第2蛍光体として用いることで、S元素を含む気体の放出量を減少させ、電子源カソードの劣化を減少させることができる。
【0020】
さらに、本発明の構成を生かし、さらに良好な特性を得るためには、第1の蛍光体が占める面積が表面全体の面積に占める比率をaとし、第1の蛍光体の比重がu、第1及び第2以降の蛍光体を含める、全体の蛍光体の平均比重がvである場合、aの範囲が、蛍光膜全体の蛍光体重量に対する第1の蛍光体の重量比である請求項1記載の重量比xに対し、{(x+0.1)v/u}2/3≦a≦1である蛍光膜を有する画像表示装置において、第1の蛍光体への強い電子線照射が確実になり、さらに高い輝度を得ることができる。
【0021】
また、上記第1の蛍光体の平均粒径を、第2の蛍光体の平均粒径より小さくすることで、第2の蛍光体を覆う効果が高められ、さらに劣化の少ない蛍光膜を得ることができる。ここで、平均粒子径とは、蛍光体粉末の粒径分布をコールターメーターにより測定した結果のうち、粒径分布の中央に示される値をいう。
【0022】
加えて、本発明の構成において、上記各蛍光体層の電気抵抗率を、それぞれ異なる値とすればさらに望ましい。これは、励起の際に、各層に流れる電流量が異なり、また電流の流れる経路が異なるため、各層それぞれに電子のチャージアップをより少なくするために最適な電気抵抗率があるためである。なお、電気抵抗率は、ここでは、各蛍光体の単一の膜表面に蒸着した電極により、4端子法で測定した値を用いる。
【0023】
第1の蛍光体と第2以降の蛍光体との電気抵抗率の関係は、膜構造、蛍光体材料、電子線加速電圧等で最適なものを選ぶ必要がある。一般的に,電気抵抗率が高い蛍光体のみで構成された蛍光膜では,良好な特性とならない.電気抵抗率が高い蛍光体を用いる場合,電気抵抗率が低い蛍光体と組み合わせた構成にした方が,望ましい特性が得られる場合が多い.
これらの電気抵抗率の違いは、一つの方法として、蛍光体材料の違いにより実現することができる。例として、電気抵抗率の高い蛍光体に、ZnGa2O4:Mn、Y2SiO5:Tb等、また、電気抵抗率の低い蛍光体に、ZnS:Ag,Al、ZnO:Zn等が挙げられる。
【0024】
また、Y3(Al,Ga)5O12-a:Tb蛍光体(ただしaは0以上の数字)はO原子の濃度により電気抵抗率が異なり、a>0の場合のY3(Al,Ga)5O12-a:Tb蛍光体はa=0のY3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体より電気抵抗率を低く作ることが可能である。前者蛍光体を第1蛍光体とし、後者蛍光体を第2蛍光体として用いる構成も、本発明の一つとして考えられる。この酸素濃度による電気抵抗率の違いは、酸化物を主体とした蛍光体の多くに当てはまるものであり、他の酸化物主体の蛍光体においても同様の構成が可能である。
【0025】
さらに、各層の抵抗率の違いを実現するために、In2O3、SnO2等の導電性物質を含有させる方法がある。上記各蛍光体の一方に、導電性物質を含有させることで実現することができる。また、上記蛍光体の両者に、導電性物質を含有させ、かつ各蛍光体の導電性物質の含有量を異なる量とすることで実現することができる。本発明のこれらの構成を用いれば、蛍光膜全体に均一に導電性物質を含有させるよりも導電性物質を減らすことができ、高輝度の蛍光膜を得ることができる。
【0026】
また,本発明の効果は,励起源の種類に限定されず,様々な電子線源や紫外線源などの,全ての種類の蛍光体励起を行う励起源において有効である。
【0027】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1に示す構造を持つ蛍光膜を、蛍光体のスラリーを用い、蛍光体の混合率を変化させて2層に塗布する方法により作製した。この蛍光膜を表示面に用いて、図2に構成を示す電界放出型ディスプレイパネルを作製した。第2の蛍光体としてZnS:Cu,Al蛍光体、第1の蛍光体としてY3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体を用いた。ここで、蛍光膜全体における第1の蛍光体の重量が、第1及び第2以降の蛍光体を含める、全体の蛍光体重量に対する重量比をxとすると、xを0.1〜0.9まで変化させ、かつエネルギー投入側の蛍光膜最表面層の全体の重量に占める第1の蛍光体の重量比をyとすると、yの範囲を(x+0.1)≦y≦1と変化させた。
【0029】
また、従来技術の比較として、膜全体がZnS:Cu,Al蛍光体によって構成されている蛍光膜、および膜全体がY3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体により構成されている蛍光膜もそれぞれ作製し、さらにこれらの蛍光膜を表示面に用いた電界放出型ディスプレイパネルを作製した。各蛍光体の平均粒径は5μm〜6μmのものを用いた。
【0030】
これらのパネルにおいて、10μA/cm2の電子線を照射し、各蛍光膜の輝度の比較を行った。また、さらに、10μA/cm2の電子線を2000時間照射した後の輝度を測定し、劣化の度合を測定した。すべての輝度は、膜面から20cm離れたSi製のフォトトランジスタにより測定した。
【0031】
表1に、測定の結果を示す。実施例として、本発明の蛍光膜の測定データを、x=0.3、y=0.9の場合に付いて示した。比較例1として、ZnS:Cu,Al蛍光体の蛍光膜の測定データを、比較例2としてY3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体の蛍光膜の測定データを示す。輝度は比較例1を100とした相対輝度で示した。実施例の輝度が、比較例1及び2の輝度より上回っている。また、劣化後の輝度を、劣化前の初期輝度を100として標準化して示した。実施例の劣化後輝度が、比較例1及び2の劣化後輝度を上回っており、劣化が少ないことがわかる。これらより、本発明の蛍光膜の輝度及び劣化特性の両者とも、従来技術の蛍光膜より優れていることが示された。
【0032】
【表1】

【0033】
以上のように、本発明を用いることによって、輝度が高く寿命の長い蛍光膜および画像表示装置を提供することができる。
【0034】
また,ここでは,スピント型と呼ばれる電子線源による例を示したが,メタル−インシュレータ−メタル(MIM)型の電子線源や,カーボンナノチューブ(CNT)を用いた電子線源など,全ての種類の電子線源に於いても,本発明は有効である。
【実施例2】
【0035】
図1に示す構造を持つ蛍光膜を、蛍光体のスラリーを用いて2層に塗布する方法により作製した。この蛍光膜を表示面に用いて、図2に構成を示す電界放出型ディスプレイパネルを作製した。第2の蛍光体としてZnS:Cu,Al蛍光体、第1の蛍光体としてZnGa2O4:Mn蛍光体を用いた。ここで、蛍光膜全体における第1の蛍光体の重量が、第1及び第2以降の蛍光体を含める、全体の蛍光体重量に対する重量比をxとすると、xを0.1〜0.9まで変化させ、かつエネルギー投入側の蛍光膜最表面層の全体の重量に占める第1の蛍光体の重量比をyとすると、yの範囲を(x+0.1)≦y≦1と変化させた。
【0036】
また、ZnGa2O4:Mn蛍光体は平均粒径が3μm〜4μmのものを用いて、ZnS:Cu,Al蛍光体の平均粒径5μm〜6μmより小さくした。また、従来技術の比較として、膜全体がZnS:Cu,Al蛍光体によって構成されている蛍光膜、および膜全体がZnGa2O4:Mn蛍光体により構成されている蛍光膜もそれぞれ作製し、さらにこれらの蛍光膜を表示面に用いた電界放出型ディスプレイパネルを作製した。
【0037】
これらのパネルを実施例1と同様の測定を行い比較した結果、本発明の実施例の輝度及び劣化の両者とも、従来技術の蛍光膜より優れていることが示された。
【0038】
以上のように、本発明を用いることによって、輝度が高く寿命の長い蛍光膜および画像表示装置を提供することができる。
【実施例3】
【0039】
図1に示す構造を持つ蛍光膜を、蛍光体のスラリーを用いて2層に塗布する方法により作製した。この蛍光膜を表示面に用いて、図2に構成を示す電界放出型ディスプレイパネルを作製した。第2の蛍光体としてZnS:Cu,Al蛍光体、第1の蛍光体としてY2SiO5:Tb蛍光体を用いた。ここで、蛍光膜全体における第1の蛍光体の重量が、第1及び第2以降の蛍光体を含める、全体の蛍光体重量に対する重量比をxとすると、xを0.1〜0.9まで変化させ、かつエネルギー投入側の蛍光膜最表面層の全体の重量に占める第1の蛍光体の重量比をyとすると、yの範囲を(x+0.1)≦y≦1と変化させた。
【0040】
また、従来技術の比較として、膜全体がY2SiO5:Tb蛍光体によって構成されている蛍光膜、および膜全体がZnS:Cu,Al蛍光体より構成されている蛍光膜もそれぞれ作製し、さらにこれらの蛍光膜を表示面に用いた電界放出型ディスプレイパネルを作製した。各蛍光体の平均粒径は5μm〜6μmのものを用いた。
【0041】
これらのパネルを実施例1と同様の測定を行い比較した結果、本発明の実施例の輝度及び劣化の両者とも、従来技術の蛍光膜より優れていることが示された。
【0042】
以上のように、本発明を用いることによって、輝度が高く寿命の長い蛍光膜および画像表示装置を提供することができる。
【実施例4】
【0043】
図1に示す構造を持つ蛍光膜を、蛍光体のスラリーを用いて2層に塗布する方法により作製した。この蛍光膜を表示面に用いて、図2に構成を示す電界放出型ディスプレイパネルを作製した。第2の蛍光体としてZnS:Ag,Al蛍光体、第1の蛍光体としてCaMgSi2O6:Eu蛍光体を用いた。ここで、蛍光膜全体における第1の蛍光体の重量が、第1及び第2以降の蛍光体を含める、全体の蛍光体重量に対する重量比をxとすると、xを0.1〜0.9まで変化させ、かつエネルギー投入側の蛍光膜最表面層の全体の重量に占める第1の蛍光体の重量比をyとすると、yの範囲を(x+0.1)≦y≦1と変化させた。
【0044】
また、従来技術の比較として、膜全体がCaMgSi2O6:Eu蛍光体によって構成されている蛍光膜、および膜全体がZnS:Ag,Al蛍光体より構成されている蛍光膜もそれぞれ作製し、さらにこれらの蛍光膜を表示面に用いた電界放出型ディスプレイパネルを作製した。
【0045】
これらのパネルを実施例1と同様の測定を行い比較した結果、本発明の実施例の輝度及び劣化の両者とも、従来技術の蛍光膜より優れていることが示された。
【0046】
以上のように、本発明を用いることによって、輝度が高く寿命の長い蛍光膜および画像表示装置を提供することができる。
【実施例5】
【0047】
図1に示す構造を持つ蛍光膜を、蛍光体のスラリーを用いて2層に塗布する方法により作製した。この蛍光膜を表示面に用いて、図2に構成を示す電界放出型ディスプレイパネルを作製した。第2の蛍光体としてZnS:Cu,Al蛍光体、第1の蛍光体としてY2SiO5:Tb蛍光体に5重量%の導電性物質In2O3を混在させたものを用いた。また、従来技術の比較として、膜全体がY2SiO5:Tb蛍光体に5重量%の導電性物質In2O3を混在させたものによって構成されている蛍光膜、および膜全体がZnS:Cu,Al蛍光体より構成されている蛍光膜もそれぞれ作製し、さらにこれらの蛍光膜を表示面に用いた電界放出型ディスプレイパネルを作製した。各蛍光体の平均粒径は5μm〜6μmのものを用いた。
【0048】
これらのパネルを実施例1と同様の測定を行い比較した結果、本発明の実施例の輝度及び劣化の両者とも、従来技術の蛍光膜より優れていることが示された。
【0049】
以上のように、本発明を用いることによって、輝度が高く寿命の長い蛍光膜および画像表示装置を提供することができる。
【実施例6】
【0050】
本発明の構成の含む蛍光膜を、プラズマディスプレイパネル(PDP)に適用した。図3にプラズマディスプレイパネルのセル構造を示す。また、図4に、プラズマディスプレイパネルの構成を示す。このような構造の本発明によるプラズマディスプレイを作製した。
【0051】
特性を評価した結果、今回作製した本発明によるプラズマディスプレイは、輝度において、従来品を上回った。かつ、画質においても、従来品と同等以上であった。すなわち、本発明により、高輝度かつ画質の良い画像表示装置を得た。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明における蛍光膜の断面構造を模式的に示した構成図である。
【図2】本発明における電界放出型ディスプレイパネルの構成図である。
【図3】プラズマディスプレイパネルのセル構造図である。
【図4】プラズマディスプレイパネルの構成である。
【符号の説明】
【0053】
1 フェースプレート、2 透明電極、3 第2の蛍光体層、4 第1の蛍光体層、5 フェースプレート、6 透明電極、7 蛍光膜、8 リアプレート、9 陰極、10抵抗膜、11絶縁膜、12ゲート、13円錐型金属、14電界放出型電子源、15 蛍光体、16 隔壁、17 アドレス電極、18 背面基板ガラス、19 前面基板ガラス、20 誘電体層、21 保護膜MgO、22 表示電極、23 緑蛍光体層、24 赤蛍光体層、25 青蛍光体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体粒子を積層した蛍光膜を有し、該蛍光膜に一方向もしくは複数方向よりエネルギーを投入し蛍光体を励起し発光させ、その光を利用して表示を行う画像表示装置において、該蛍光膜が少なくとも2種の蛍光体で構成され、そのうち、蛍光膜全体における第1の蛍光体の重量が、第1及び第2以降の蛍光体を含める、全体の蛍光体重量に対する重量比をxとすると、xの範囲が0<x≦0.9であり、かつエネルギー投入側の蛍光膜最表面層の全体の重量に占める第1の蛍光体の重量比をyとすると、yの範囲が(x+0.1)≦y≦1である蛍光膜を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載した画像表示装置において、該蛍光膜をエネルギー投入側より走査電子顕微鏡等を用いて観察した場合に、エネルギー投入側の蛍光膜最表面において、請求項1記載の第1の蛍光体が占める面積が表面全体の面積に占める比率をaとし、第1の蛍光体の比重がu、第1及び第2以降の蛍光体を含める、全体の蛍光体の平均比重がvである場合、aの範囲が、請求項1記載の重量比xに対し、{(x+0.1)v/u}2/3≦a≦1である蛍光膜を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像表示装置において、重量比xに対し、重量比yの範囲が、(x+0.1)≦y<1であることを特徴とする画像表示装置
【請求項4】
請求項1記載の画像表示装置において、重量比xに対し、面積比aの範囲が、{(x+0.1)v/u}2/3≦a<1であることを特徴とする画像表示装置
【請求項5】
請求項1〜4記載の第1の蛍光体が、酸化物組成を持つ蛍光体であることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項6】
請求項1〜4記載の第2以降の蛍光体が、S元素を含む組成を持つ蛍光体であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項1〜4記載の蛍光体が、励起エネルギーを一定時間照射した後の輝度の、初期輝度に対する比率が、第2以降の蛍光体の該比率より大きい事を特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項1〜4記載の第1及び第2以降の蛍光体が、ZnS、Y2O2S、ZnO、Zn2SiO4、Y2SiO5、Y3(Al,Ga)5O12、ZnGa2O4、Y(P,V)O4、Y2O3、CaMgSi2O6、の組成を含む蛍光体のうちのいずれかであることを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
請求項1〜4記載の、第1の蛍光体の平均粒径を、第2以降の蛍光体の平均粒径より小さくしたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
請求項1〜4記載の、第1の蛍光体の電気抵抗率が、第2以降の蛍光体の平均粒径より異なる値であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項1〜4記載の蛍光体において、各蛍光体に加えて、導電性物質を含有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項12】
上記請求項1〜11記載の画像表示装置において、蛍光体に投入するエネルギーが電子線であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
上記請求項1〜11記載の画像表示装置において、蛍光体に投入するエネルギーが15kV以下の電圧で加速された電子線であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項14】
上記請求項1〜11記載の画像表示装置において、蛍光体に投入するエネルギーが波長380nm以下の紫外光であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項15】
上記請求項1〜11記載の画像表示装置において、蛍光体に投入するエネルギーが波長200nm以下の真空紫外光であることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−200582(P2007−200582A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14526(P2006−14526)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】