画像表示装置
【課題】膜硬度の高い遮光膜を実現し、輝度と高コントラストを向上させた画像表示装置を提供する。
【解決手段】前面基板SUB2の内面には、蛍光体PHが第1遮光膜BMFの開口BMAに充填されて該遮光膜よりも厚く、第1遮光膜BMFの上にもはみ出して形成される。第1遮光膜BMFと蛍光体PHの上を覆ってアルミニウム薄膜が成膜されて陽極ADを形成する。背面基板SUB1の内面と前面基板SUB2の内面の間に植立するスペーサSPCを、前面基板SUB2側で膜強度の大きい第2遮光膜BMS上に配置する。
【解決手段】前面基板SUB2の内面には、蛍光体PHが第1遮光膜BMFの開口BMAに充填されて該遮光膜よりも厚く、第1遮光膜BMFの上にもはみ出して形成される。第1遮光膜BMFと蛍光体PHの上を覆ってアルミニウム薄膜が成膜されて陽極ADを形成する。背面基板SUB1の内面と前面基板SUB2の内面の間に植立するスペーサSPCを、前面基板SUB2側で膜強度の大きい第2遮光膜BMS上に配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面パネルと背面パネルの間に形成される真空中への電子放出を利用した平面型の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理装置やテレビ放送の高画質化に伴い、高輝度、高精細の特性をもつと共に軽量、省スペースの平面型画像表示装置(フラット・パネル・ディスプレイ、FPD)が普及している。
【0003】
平面型画像表示装置の典型例として、液晶表示装置、プラズマ表示装置などが実用化されている。また、特に高輝度化が可能なものとして、電子源から真空中への電子放出を利用した電子放出型表示装置、低消費電力を特徴とする有機ELディスプレイなど、種々の平面型画像表示装置の実用化も図られている。
【0004】
FPDの中、電子放出型のFPDでは、電子源をマトリクス状に配置した構成が知られている。その一つとして微小で集積可能な冷陰極を利用する電子放出型の画像表示装置がある。
【0005】
また、電子放出型のFPDでは、その冷陰極にスピント型、表面伝導型、カーボンナノチューブ型、金属―絶縁体―金属を積層したMIM(Metal-Insulator-Metal)型、金属―絶縁体―半導体を積層したMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)型または金属―絶縁体―半導体−金属型等の電子源などが用いられる。
【0006】
平面型画像表示装置は、上記のような電子源を有する絶縁基板を備えた背面パネルと、蛍光体層とこの蛍光体層に電子源から放出される電子を射突させるための加速電極を形成する陽極(アノード)を有する前面基板を備えた前面パネルと、両パネルの対向する内部空間を所定の減圧状態に封止する封止枠とで構成される。この画像表示パネルに駆動回路等を組み合わせて画像表示装置が構成される。
【0007】
このような画像表示装置では、第1の方向に延在して第1の方向と交差する第2の方向に並設された多数のデータ信号配線と、このデータ信号配線を覆って形成された絶縁膜と、この絶縁膜上で前記第2の方向に延在して前記第1の方向に並設された多数の走査信号配線と、前記データ信号配線と前記走査信号配線との交差部付近に設けられた電子源とを有する背面基板からなる背面パネルを備える。この背面基板はガラスを好適とする絶縁板であり、この基板上に前記の電極が形成される。
【0008】
この構成において、前記走査信号配線には前記第1の方向すなわち当該走査信号配線の配列方向に走査信号が順次印加される。また、背面基板上の走査信号配線とデータ信号配線の各交差部に上記した電子源が設けられる。これら両配線と電子源とは直接に又は給電電極を介して接続され、電子源に電流が供給される。この背面基板からなる背面パネルと対向して、対向する内面に複数色の蛍光体層とアノード電極(陽極)とを有する前面基板からなる前面パネルを備える。少なくとも前面基板は、ガラスを好適とする光透過性の材料で形成される。そして、両パネルは各々の貼り合せ内周縁に封止枠を介挿して封止され、当該背面パネルと前面パネル及び封止枠で形成される内部を減圧して画像表示装置が構成される。
【0009】
電子源は、前記したようにデータ信号配線と走査信号配線との交差部又はその近傍に有し、データ信号配線に供給する電流値、又はデータ信号配線と走査配線との間の電位差で電子源(カソード)からの電子の放出量(放出のオン・オフを含む)を制御する。放出された電子は、前面基板に有する陽極(アノード)に印加される高電圧で加速され、同じく前面基板に有する蛍光体層に射突してこれを励起することで当該蛍光体層の発光特性に応じた色光で発色する。
【0010】
個々のカソードは対応する蛍光体層と対になって単位画素(副画素、サブピクセル)を構成する。通常は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の副画素三個で一つのカラー画素が構成される。副画素の蛍光体層はコントラストを向上させ、また混色を防止するための遮光膜(ブラックマトリクス:BM)に形成された開口(遮光膜開口、BM開口)に充填されており、カソードから放出され、アノードで加速された電子束(電子ビーム)がブラックマトリクスの開口に充填されている蛍光体層を十分にカバーするように射突することで所定の発光量で発光する。
【0011】
このような平面型の画像表示装置では、隣接する単位画素ごとに開口(BM開口)を設けて、これらのBM開口に蛍光体を塗布等で形成してある。また、背面パネルと前面パネルとの間に複数の間隔保持部材(スペーサ)が固定配置され、両基板間の間隔を封止枠と協働して所定間隔に保持する。このスペーサは、一般にはガラスやセラミックスなどの絶縁材で形成した高抵抗の板状体からなり、通常、複数の画素列毎に画素の動作を妨げない走査信号配線上に設置される。
【0012】
また、封止枠は背面パネルと前面パネルとの内周縁にフリットガラスなどの封着部材で固着され、この固着部で気密封着がなされる。両パネルと封止枠とで形成される表示領域内部の減圧された空間の真空度は、例えば10-3〜10-5Paである。
【0013】
また、平面型画像表示装置において、スペーサを電子源を形成した背面基板及び蛍光面を形成した前面基板へ当接させて植立させる際に導電性ガラスフリット(フリットガラスとも称する)を用いて電気的及び機械的に固定した電子線装置が特許文献1に提案されている。このスペーサは、導電性ガラスフリットを塗布した後に単に加熱処理することにより接着固定されている。
【0014】
この種の画像表示装置に関する従来技術を開示したものとして、特許文献2を挙げることができる。特許文献2では、BM層の上に導電層(10〜12μm)を形成している。そして、BM開口はドット形状とし、ガラス基板とBM層、導電層の開口断面で囲まれたスペースに蛍光体を入れ込む蛍光体膜構造が開示されている(BM層がなくガラス基板と導電層の開口断面で囲まれたスペースに蛍光体ドットを形成する膜構造も含む)。そして、導電層の抵抗は100Ω/cm2以下、できれば10Ω/cm2が望ましい、との記載がある。また、導電層には5〜100%の導電材料を含み、導電材料として銀、銅、金、パラジウム、白金などの金属が開示されている。
【特許文献1】特許第3554312号公報
【特許文献2】米国特許第5945780号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
公称32インチ型近傍から、それ以上のサイズの大型の電子放出型のFPDでは、アノードに5〜15kV程度の高電圧が印加される。前記したように、このようなFPDは、背面基板(カソード基板)と前面基板(アノード基板)間の真空保持と間隔規制のため、アノード基板とカソード基板の間にスペーサが設置される。アノード基板とスペーサはフリット(低融点ガラス)で接着、固定されるが、アノード基板側はガラス上に蛍光体、ブラックマトリクス(BM)、陽極を構成するアルミ薄膜が既に形成されており、BMとアルミ薄膜を介してスペーサを接着、固定することになる。したがってBM、アルミ薄膜の硬度と下地との密着強度が必要となる。
【0016】
実際には、アルミ薄膜はスパッタまたは蒸着で形成するため、硬度も密着強度も問題にはならない。BMは材料、形成プロセスにより硬度が異なり、本来のBM必要特性である黒さ、反射率、導電性、コストの他に硬度も重要な特性になる。
【0017】
これまで、BMに関し、反射率、導電性、硬度の点から既にFPDでは実績のあるクロム(Cr)を用いたもの(Cr−BM)が多く採用されているが、スパッタ成膜後にフォト工程でパターニングするためコスト高である。電子放出型FPDを商業ベースに載せ普及させるには低コストでBMを形成することが必要である。
【0018】
また、Cr−BMは金属クロム及び2価と3価の酸化クロムから成り、“RoHS指令”規制対象の6価クロムではない。しかし、クロムというと環境負荷に関するイメージが悪く、クロム以外の材料に切り替えることが望ましいとされている。
【0019】
クロムの代替材料として、FEDと同じ真空ディスプレイで実績のあるCRT用の黒鉛BMを検討した。しかし、黒鉛膜は硬度が弱く、スペーサを設けた部分が剥がれてしまうことがあった。スペーサを設置した部分以外では黒鉛BMでも問題はなかった。また、黒鉛を低融点ガラス(フリット)と混合することで導電性は低下するが、膜強度は向上できた。
【0020】
特許文献1に開示の構成では、蛍光体層よりも導電層の方が厚膜であるために蛍光体の発光を取り出す効率を向上できない(BM開口径分の発光しか得られない)。また、導電層よりも蛍光体層を厚くしBM開口径よりも大きな蛍光体ドットを形成することでBM開口径分よりも大きな取り出し効率を得ることができるが、導電層が貴金属でかつ膜厚10μm以上で全面に形成するため貴金属使用量が多くなるので材料費が高価になり商業的に成立しない。
【0021】
本発明の目的は、膜硬度の高い遮光膜を実現し、輝度と高コントラストを向上させた画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本発明の画像表示装置は、複数の走査信号配線と、前記走査信号配線に交差する複数のデータ信号配線と、前記走査信号配線と前記データ信号配線の表示領域内での各交叉部近傍に配列された複数の電子源を内面に有する背面基板で構成された背面パネルと、複数の開口を有する導電性遮光膜と、前記電子源に対応して配列されて前記導電性遮光膜の開口に充填して塗布された蛍光体層および前記電子源に対して高電圧が印加される陽極を内面に有する前面基板で構成された前面パネルと、前記前面パネルと前記背面パネルとの間で、前記走査信号配線の上に配置された複数の間隔保持部材とを有し、前記前面パネル及び背面パネルとの間を気密封着して構成される。
【0023】
スパッタとフォトリソ工程の組み合わせはコスト高な製造方法であるのに対し、印刷の方が低コストな方法であることを踏まえ、本発明では、前面基板の主面に導電性の高い銀ペーストに金属黒色顔料を混合した材料を印刷して、黒さ、反射率、導電性、硬度に優れたBMを得る際に、2種類の主材料の遮光膜を形成している。すなわち、有効表示領域の大部分に遮光性能を重視した第1遮光膜を、スペーサを植立する部分には遮光性能と共に膜強度を高めてスペーサとの間の剥離を防止した機能の第2遮光膜を形成した点を特徴とする。
【0024】
また、本発明では、前記導電性遮光膜を主成分が異なる主材料の第1遮光膜と第2遮光膜で形成する。第1遮光膜は表示領域の遮光膜開口に塗布された蛍光体層よりも薄く、その主材料は黒鉛またはカーボンブラックの何れかとし、この材料の当該導電性遮光膜の面積占有率を90%以上とすることができる。
【0025】
また、本発明では、前記導電性遮光膜を形成する前記第2遮光膜の主材料を、金、銀、パラジウム、白金、ルテニウムの少なくとも1以上の金属と低融点ガラスとを含むものとし、表示領域における前記導電性遮光膜の面積占有率を10%以下とすることができる。そして、前記間隔保持部材と前記前面基板の間に、前記導電性遮光膜を形成する前記第2遮光膜の主材料が0.5μm〜50μmの厚みで存在するごとく構成することができる。前記導電性遮光膜を覆って前記陽極を形成した後の前記導電性遮光膜の表面抵抗率を100Ω/□以下とすることができる。
【0026】
なお、以下の説明では、上記第1遮光膜と第2遮光膜を前面基板の主面上でそれぞれ独立させた膜で形成するものとするが、第2遮光膜を設ける部分の第1遮光膜に凹部を形成して、そこに第2遮光膜の下部の一部を埋め込んだ構成としてもよい。
【発明の効果】
【0027】
蛍光体の形成部分では、導電性BM膜が蛍光体層よりも薄いのでBM開口径(幅)よりも大きな蛍光体ドット径(幅広いストライプ)を形成することができ,それにより輝度アップが可能となる。また、膜強度が必要なスペーサを設置する部分のBM膜は金属微粒子を含む高価な材料で形成されるが、スペーサの設置場所以外のBMは安価な黒鉛またはカーボンブラックで形成されるため、画像表示装置全体として、高品質のままコストを低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の最良の実施形態を、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の画像表示装置の実施例1を説明する単位画素付近の模式断面図である。この画像表示装置は、背面パネルPNL1と前面パネルPNL2を図示しない封止枠を解して周辺で貼り合せ、内部空間を真空状態に保持される。背面パネルPNL1は、例えばガラス基板などの背面基板(カソード基板)SUB1の主面(内面)にアルミニゥムAl膜を好適とする電子源の下部電極を構成する画像信号配線(下部電極、所謂、データ信号配線)CL、下部電極CLのアルミニゥムを陽極酸化した陽極酸化膜からなる第1の絶縁膜INS1、窒化シリコン膜SiNを好適とする第2の絶縁膜INS2、給電電極(接続電極)ELC、アルミニゥムAlを好適とする走査信号配線GL、走査信号配線GLに接続したサブピクセル(カラーの副画素)の電子源を構成する上部電極AEDが形成されている。
【0030】
電子源ELSは、画像信号配線CLを下部電極とし、下部電極の上に位置する第1の絶縁膜INS1の一部を形成する薄膜部分INS3、前記薄膜部分INS3の上層に積層する上部電極AEDの部分とで構成される。上部電極AEDは、走査信号配線GLと給電電極ELCの一部とを覆って形成されている。薄膜部分INS3は、所謂トンネル膜である。この構成で、所謂ダイオード電子源ELSが形成される。
【0031】
一方、前面パネルPNL2は、透明なガラス基板を好適とする前面基板(アノード基板)SUB2の主面に遮光膜(ブラックマトリクス)BMで隣接画素と区画された蛍光体PH、アルミニウム蒸着膜を好適とするメタルバックADが形成されており、BMとメタルバックを陽極としている。
【0032】
背面パネルPNL1と前面パネルPNL2の間の間隔は3mmないし5mm前後であり、この間隔を隔壁あるいは間隔保持部材とも称するスペーサSPCで維持している。ここでは、カソード基板SUB1とアノード基板SUB2の板厚は、例えば2.8mm、スペーサSPCの高さは例えば3mm程度である。図1では、分かり易くするために各構成層の厚みを強調して示してあるが、走査信号配線GLの膜厚は例えば3μmである。
【0033】
この様な構成において、背面パネルPNL1の上部電極AEDと前面パネルPNL2の陽極ADの間に加速電圧(2、3kV乃至10kV程度、図1では約5kV)を印加すると、下部電極である画像信号配線CLに供給される表示データの大きさに応じた電子e-が出射し、加速電圧によって蛍光体PHに射突し、これを励起して所定周波数の光Lを前面パネルPNL2の外部に出射する。なお、繰り返しになるが、フルカラー表示の場合は、この単位画素はカラーの副画素(サブピクセル)であり、通常は赤(R)、緑(G)、青(B)の各蛍光体PHからなる3つの副画素で1カラー画素を構成する。
【0034】
図2は、本発明の画像表示装置の実施例1を説明する前面基板の主面の平面図で、図2(a)は全体図、図2(b)は図2(a)のA部分の拡大図である。前面基板SUB2の主面(内面)には遮光膜(ブラックマトリクス)BMが形成されている。遮光膜BMは、第1の材料からなる第1遮光膜BMFと第2の材料からなる第2遮光膜BMSからなる。第1遮光膜BMFは前面基板SUB2の大部分に形成されており、遮光膜開口(BM開口)BMAを設けて、赤(R)、緑(G)、青(B)の各蛍光体PHを対応するBM開口に塗布し形成してある。そして、スペーサを設置する部分に、第2の材料からなる第2遮光膜BMSが形成されている。スペーサSPCを設置する部分は、背面基板SUB1側では図1に示した走査信号配線GL上であり、前面基板SUB2側では蛍光体が塗布されていない第1遮光膜BMF上である。通常は、スペーサSPCは当該走査信号配線GLの何本か置きに配置される。
【0035】
第1遮光膜BMFを形成する第1の材料は、黒さ、反射率、導電性、耐熱性、基板との接着力が良好で表示品質の向上に好適な黒鉛又はカーボンブラックを主成分とする。第2遮光膜BMSを構成する第2の材料は、黒さ、反射率、導電性、耐熱性、基板との接着力に加えて膜硬度の良好な低融点ガラスを含む導電性黒色材料を主成分とする。
【0036】
遮光膜BMに要求される特性としては、黒さ、反射率、導電性、耐熱性、基板との接着力、膜硬度などがある。黒さ、反射率、導電性、耐熱性、基板との接着力は、基板全面で要求される。しかし、その膜強度はスペーサが接着する部分だけ強くあればよく、そこ以外ではそれほど強い膜強度は要求されない。したがって、図1に示したように、遮光膜BMの膜強度の要求が高い部分と低い部分とで材料を変えることで、コストパフォーマンスの高いBM膜を形成できる。特に、BM遮光率(BM遮光部の面積の全表示面積に対する比率)が40%以上の場合にこの効果は大きい。
【0037】
図3は、遮光膜と蛍光体および陽極の配置を説明する図2のX−X線に沿った一部断面
図である。また、図4は、遮光膜と蛍光体および陽極とスペーサの配置を説明する図2のY−Y線に沿った背面基板およびスペーサとともに示す一部断面図である。蛍光体PHは第1遮光膜BMFの開口BMAに充填して遮光膜よりも厚く塗布される。蛍光体PHは第1遮光膜BMFの上にもはみ出して形成されている。そして、第1遮光膜BMFと蛍光体PHの上を覆ってアルミニウム薄膜が成膜されてメタルバックADが形成されている。
【0038】
スペーサSPCは、前面基板SUB2の主面に形成された第2遮光膜BMSの上に一端を植立され、他端は背面基板SUB1の走査信号配線GL上フリットガラスFGで固定される。なお、背面基板SUB1に有する細かな構成は図示を省略した。
【0039】
図5は、遮光膜開口とこの遮光膜開口に塗布された蛍光体の発光量を遮光膜と蛍光体の膜厚および塗布サイズの違いで説明する要部断面図である。図5(a)は本発明の実施例1の構成、図5(b)は本発明の実施例1と同じ遮光膜の厚さで蛍光体を遮光膜開口のサイズに限定した場合、図5(c)は遮光膜の膜厚が蛍光体のそれより厚い場合で、遮光膜開口のサイズはすべて同じとした。
【0040】
本発明の実施例1では、遮光膜BMFの膜厚が蛍光体PHの層よりも薄いので、遮光膜の開口BMAのサイズより大きいサイズの蛍光体PHを形成することで、遮光膜BMFに隠れた部分の蛍光体の発光もメタルバックADの反射を利用して図5(a)のように前面基板側に取り出すことができるようになり、全体の光量Lが増加し、輝度アップさせることが可能である。
【0041】
これに対し、図5(b)のように遮光膜の開口BMAのサイズからはみ出さないように蛍光体PHを形成した場合、あるいは図5(c)のように遮光膜BMFの膜厚が蛍光体のそれより厚い場合は、遮光膜BMFの開口分の発光しか取り出すことができず、全体の光量Lは増えない。
【0042】
第1遮光膜BMFは、有効表示領域の面積で90%以上を占め、この部分の遮光膜材料に材料が安い黒鉛またはカーボンブラックを用いることで、導電性と黒さなど、品質に優れた遮光膜を安価に形成することができる。なお、この遮光膜は膜強度が弱いため、この膜の上にスペーサを立てることには適さない。しかし、遮光膜としての本来の黒さ、反射率導電性、耐熱性基板との接着力には優れている。
【0043】
スペーサを設置するところの遮光膜は膜硬度も重要なので、低融点ガラスを含んだ導電性黒色材料の遮光膜ペーストを塗布(または印刷)し、熱工程でスペーサと密着させることで強固に接着させることができる。この材料としては、貴金属を含むため高価であるが、この材料の遮光膜の有効表示領域の面積での面積占有率が10%以下なので材料コストを抑えることができる。
【0044】
実験によれば、この遮光膜ペーストの材料の厚さが0.5μm以下では遮光膜(第2遮光膜BMS)としての黒さが不十分となり、50μm以上では膜強度が不十分になる。黒さ、反射率、導電性、耐熱性、基板との接着力、膜硬度を満足する厚さは0.5μm〜50μmである。
【0045】
MIM型画像表示装置の陽極機能としては、陽極ADと共に第1遮光膜BMFと第2遮光膜BMSも含めた導電性遮光膜もその役割を果たす。この部分の表面抵抗率は100Ω/□以下にすることで蛍光面全面に均一な電位を掛けることができ、発光輝度の均一性が得られる。
【0046】
次に、実施例1の前面基板SUB2の製造プロセスの一例を図6、図7、図8を参照して説明する。先ず、前面基板SUB2に紫外線で硬化するネガ型フォトレジストを塗布する。次に、遮光膜の開口部BMAになる部分と第2遮光膜BMSの材料を塗布する部分BMS−Rおよび前面基板SUB2周辺(有効表示領域より若干広い部分)に紫外線が照射されるようフォトマスクを介して紫外線露光する。その後、温純水で未露光部を現像し、除去する。
【0047】
更に、黒鉛スラリーを全面塗布し、乾燥した後、エッチング液で硬化したフォトレジストを膨潤剥離させる。すると、図6に示すように、遮光膜の開口BMAになる部分と第2遮光膜BMSの材料を塗布する部分BMS−Rおよび前面基板SUB2の周辺に黒鉛パターンの無い前面基板SUB2が得られる。この方法は、遮光膜を形成するための低コストな方法としてブラウン管で実績がある。すなわち、遮光膜の開口BMA、および第2遮光膜の材料を150μm幅で塗布できるスペース(第2遮光膜BMSの材料を塗布する部分BMS−R)には遮光膜が塗布されない。
【0048】
次に、緑蛍光膜Gの開口に平均粒径6μmの緑蛍光体GとしてZnS:Cu,Alをセルロース系樹脂と酢酸2−(2−n―ブトキシエトキシ)エチルからなる分散媒にミル分散させたペーストを用いてスクリーン印刷法により緑蛍光膜Gのパターン形成を行う。同様に、青蛍光体Bの開口に青蛍光体BとしてZnS:Ag,Clを用い、赤蛍光体の開口に赤蛍光体としてY202S:Euを用いて蛍光体パターンを形成する。3色の蛍光体PHを塗布した前面基板SUB2の内面を図7に示す。蛍光体PHの膜厚は15μmである。その後、アクリル/セルロース樹脂と高沸点溶媒からなるインクを蛍光膜の上にパターン印刷し、乾燥させ有機平滑膜(フィルミング膜)を形成する。
【0049】
次に、第2の遮光膜材料として、30nmの金属銀微粒子と鉛フリー低融点ガラス混ぜたペーストをディスペンサで所定の位置に150μmの幅で塗布し、第2遮光膜BMSを形成する。このときの第2の遮光膜材料の膜厚は10μmである。次に、陽極ADとして、DCマグネトロンスパッ夕方式でアルミニウムターゲットとアルゴン放電ガスを使用し、積層速度5Å/sで200秒間積層する。これにより、膜厚80nmの陽極ADとなるメタルバック膜が形成される。このときの外観図を図8に示す。
【0050】
パネルベークにより蛍光膜中の有機物とフィルミング膜を焼失させることで、主面に第1遮光膜BMF、第2遮光膜BMS、蛍光体層PH(G,B,R)と陽極ADを有する前面基板SUB2を得た。
【0051】
この前面基板SUB2の第2遮光膜BMSの上にスペーサSPCを植立し、背面基板SUB1と合わせ、封着し、真空排気することで表示パネルを得る。このとき、前面基板SUB2と第2遮光膜BMSおよびスペーサSPCは剥がれることなく、強固に接着できた。完成した表示パネルの遮光膜の拡散反射率は、第1材料部分、第2材料部分とも1%であり、十分な黒さを示す。遮光膜の陽極を介しての表面抵抗率は10Ω/□であり、十分な導電性を示した。このパネルに高圧7kV印加し動作させたときの輝度を図5(a)(b)について比較したところ実施例1である図5(a)の方が20%高い輝度を獲ることができた。
【0052】
次に、実施例1の前面基板SUB2の製造プロセスの他例を説明する。先ず、黒鉛微粒子とカーボンブラック微粒子をセルロース系樹脂と酢酸2−(2−nブトキシエトキシ)エチルからなる分散媒にミル分散させた第1の遮光膜の材料ペーストを印刷法により第1遮光膜の形成位置に塗布する。このときの膜厚は3μmであった。
【0053】
次に、前記したプロセスと同じように、3色の蛍光体をG,B,Rの順に印刷する。その後、アクリル/セルロース樹脂と高沸点溶媒からなるインクを蛍光体膜の上にパターン印刷し、乾燥させて有機平滑膜(フィルミング膜)を形成する。次に、第2遮光膜の材料として粒径20nmの銀とパラジウムの混合金属微粒子と鉛フリー低融点ガラス混ぜたペーストを印刷法で所定の位置に150μmの幅で塗布する。このときの第2遮光膜の膜厚は10μmである。
【0054】
以後、前記のプロセスと同様の方法を経て表示パネルを完成させる。完成した表示パネルの遮光膜の拡散反射率は、第1遮光膜の部分が1.3%、第2遮光膜の部分が1%であり、十分な黒さであった。遮光膜の陽極ADを介しての表面抵抗率は30Ω/□であり、十分な導電性を示した。
【0055】
図9は、本発明による画像表示装置の全体構造の一例を説明する一部破断して示す斜視図である。また、図10は、図9のA−A’線に沿って切断した断面図である。背面基板SUB1の内面には画像信号配線CLと走査信号配線GLを有し、画像信号配線CLと走査信号配線GLの交差部分に電子源が形成されている。画像信号配線CLの端部には画像信号配線引き出し端子CLTが形成され、走査信号配線GLの端部には走査信号配線引き出し端子GLTが形成されている。
【0056】
前面基板SUB2の内面には陽極ADと遮光膜の開口に塗布された蛍光体PHが形成されている。背面基板SUB1と前面基板SUB2とは、その周縁部の内側に封止枠MFLを介在させて貼り合わされる。この貼り合わせた間隙を所定値に保持するため、背面基板SUB1と前面基板PNL2の間にガラス板を好適とするスペーサSPCを植立させていることは前記したとおりである。図10はこのスペーサSPCに沿った断面なので、隔壁SPCは図示が省略されてある。
【0057】
図11は、本発明の構成を適用した画像表示装置の等価回路例の説明図である。図11中に破線で示した領域は有効表示領域ARであり、この表示領域ARにn本の画像信号配線CLとm本の走査信号配線GLが互いに交差して配置されてn×mの副画素からなるマトリクスが形成されている。マトリクスの各交差部はカラーの副画素を構成し、図中の3つの単位画素(あるいは、副画素)"R"、"G"、"B"の1グループでカラー1画素を構成するのは前述したとおりである。なお、電子源の構成は図示を省いた。
【0058】
画像信号配線CLは、画像信号配線引き出し端子CLTでデータ信号線駆動回路CDRに接続される。走査信号配線GLは走査信号配線引き出し端子GLTで走査信号駆動回路GDRに接続されている。データ信号線駆動回路CDRには外部信号源から画像データ信号NSが入力され、走査信号線駆動回路GDRには同様に走査信号SSが入力される。
【0059】
これにより、順次選択される走査信号線GLに交差する画像信号配線CLに表示データ(画像信号)を供給することで、二次元のフルカラー画像を表示することができる。本構成例を用いることにより、比較的低電圧で高効率の自発光平面表示装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の画像表示装置の実施例1を説明する単位画素付近の模式断面図である。
【図2】本発明の画像表示装置の実施例1を説明する前面基板の主面の平面図である。
【図3】遮光膜と蛍光体および陽極の配置を説明する図2のX−X線に沿った一部断面図である。
【図4】遮光膜と蛍光体および陽極とスペーサの配置を説明する図2のY−Y線に沿った背面基板およびスペーサとともに示す一部断面図である。
【図5】遮光膜開口とこの遮光膜開口に塗布された蛍光体の発光量を遮光膜と蛍光体の膜厚および塗布サイズの違いで説明する要部断面図である。
【図6】本発明の実施例1の前面基板の製造プロセスの一例を説明する図である。
【図7】本発明の実施例1の前面基板の製造プロセスの一例を説明する図である。
【図8】本発明の実施例1の前面基板の製造プロセスの一例を説明する図である。
【図9】本発明による画像表示装置の全体構造の一例を説明する一部破断して示す斜視図である。
【図10】図9のA−A’線に沿って切断した断面図である。
【図11】本発明の構成を適用した画像表示装置の等価回路例の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
SUB1・・・背面基板、SUB2・・・前面基板、MFL・・・封止枠(枠体)、SPC・・・スペーサ、ELS・・・電子源、PH・・・蛍光体、BM・・・遮光膜(ブラックマトリクス)、BMF・・・第1遮光膜、BMS・・・第2遮光膜、BMA・・・ブラックマトリクス開口(BM開口)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面パネルと背面パネルの間に形成される真空中への電子放出を利用した平面型の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理装置やテレビ放送の高画質化に伴い、高輝度、高精細の特性をもつと共に軽量、省スペースの平面型画像表示装置(フラット・パネル・ディスプレイ、FPD)が普及している。
【0003】
平面型画像表示装置の典型例として、液晶表示装置、プラズマ表示装置などが実用化されている。また、特に高輝度化が可能なものとして、電子源から真空中への電子放出を利用した電子放出型表示装置、低消費電力を特徴とする有機ELディスプレイなど、種々の平面型画像表示装置の実用化も図られている。
【0004】
FPDの中、電子放出型のFPDでは、電子源をマトリクス状に配置した構成が知られている。その一つとして微小で集積可能な冷陰極を利用する電子放出型の画像表示装置がある。
【0005】
また、電子放出型のFPDでは、その冷陰極にスピント型、表面伝導型、カーボンナノチューブ型、金属―絶縁体―金属を積層したMIM(Metal-Insulator-Metal)型、金属―絶縁体―半導体を積層したMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)型または金属―絶縁体―半導体−金属型等の電子源などが用いられる。
【0006】
平面型画像表示装置は、上記のような電子源を有する絶縁基板を備えた背面パネルと、蛍光体層とこの蛍光体層に電子源から放出される電子を射突させるための加速電極を形成する陽極(アノード)を有する前面基板を備えた前面パネルと、両パネルの対向する内部空間を所定の減圧状態に封止する封止枠とで構成される。この画像表示パネルに駆動回路等を組み合わせて画像表示装置が構成される。
【0007】
このような画像表示装置では、第1の方向に延在して第1の方向と交差する第2の方向に並設された多数のデータ信号配線と、このデータ信号配線を覆って形成された絶縁膜と、この絶縁膜上で前記第2の方向に延在して前記第1の方向に並設された多数の走査信号配線と、前記データ信号配線と前記走査信号配線との交差部付近に設けられた電子源とを有する背面基板からなる背面パネルを備える。この背面基板はガラスを好適とする絶縁板であり、この基板上に前記の電極が形成される。
【0008】
この構成において、前記走査信号配線には前記第1の方向すなわち当該走査信号配線の配列方向に走査信号が順次印加される。また、背面基板上の走査信号配線とデータ信号配線の各交差部に上記した電子源が設けられる。これら両配線と電子源とは直接に又は給電電極を介して接続され、電子源に電流が供給される。この背面基板からなる背面パネルと対向して、対向する内面に複数色の蛍光体層とアノード電極(陽極)とを有する前面基板からなる前面パネルを備える。少なくとも前面基板は、ガラスを好適とする光透過性の材料で形成される。そして、両パネルは各々の貼り合せ内周縁に封止枠を介挿して封止され、当該背面パネルと前面パネル及び封止枠で形成される内部を減圧して画像表示装置が構成される。
【0009】
電子源は、前記したようにデータ信号配線と走査信号配線との交差部又はその近傍に有し、データ信号配線に供給する電流値、又はデータ信号配線と走査配線との間の電位差で電子源(カソード)からの電子の放出量(放出のオン・オフを含む)を制御する。放出された電子は、前面基板に有する陽極(アノード)に印加される高電圧で加速され、同じく前面基板に有する蛍光体層に射突してこれを励起することで当該蛍光体層の発光特性に応じた色光で発色する。
【0010】
個々のカソードは対応する蛍光体層と対になって単位画素(副画素、サブピクセル)を構成する。通常は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の副画素三個で一つのカラー画素が構成される。副画素の蛍光体層はコントラストを向上させ、また混色を防止するための遮光膜(ブラックマトリクス:BM)に形成された開口(遮光膜開口、BM開口)に充填されており、カソードから放出され、アノードで加速された電子束(電子ビーム)がブラックマトリクスの開口に充填されている蛍光体層を十分にカバーするように射突することで所定の発光量で発光する。
【0011】
このような平面型の画像表示装置では、隣接する単位画素ごとに開口(BM開口)を設けて、これらのBM開口に蛍光体を塗布等で形成してある。また、背面パネルと前面パネルとの間に複数の間隔保持部材(スペーサ)が固定配置され、両基板間の間隔を封止枠と協働して所定間隔に保持する。このスペーサは、一般にはガラスやセラミックスなどの絶縁材で形成した高抵抗の板状体からなり、通常、複数の画素列毎に画素の動作を妨げない走査信号配線上に設置される。
【0012】
また、封止枠は背面パネルと前面パネルとの内周縁にフリットガラスなどの封着部材で固着され、この固着部で気密封着がなされる。両パネルと封止枠とで形成される表示領域内部の減圧された空間の真空度は、例えば10-3〜10-5Paである。
【0013】
また、平面型画像表示装置において、スペーサを電子源を形成した背面基板及び蛍光面を形成した前面基板へ当接させて植立させる際に導電性ガラスフリット(フリットガラスとも称する)を用いて電気的及び機械的に固定した電子線装置が特許文献1に提案されている。このスペーサは、導電性ガラスフリットを塗布した後に単に加熱処理することにより接着固定されている。
【0014】
この種の画像表示装置に関する従来技術を開示したものとして、特許文献2を挙げることができる。特許文献2では、BM層の上に導電層(10〜12μm)を形成している。そして、BM開口はドット形状とし、ガラス基板とBM層、導電層の開口断面で囲まれたスペースに蛍光体を入れ込む蛍光体膜構造が開示されている(BM層がなくガラス基板と導電層の開口断面で囲まれたスペースに蛍光体ドットを形成する膜構造も含む)。そして、導電層の抵抗は100Ω/cm2以下、できれば10Ω/cm2が望ましい、との記載がある。また、導電層には5〜100%の導電材料を含み、導電材料として銀、銅、金、パラジウム、白金などの金属が開示されている。
【特許文献1】特許第3554312号公報
【特許文献2】米国特許第5945780号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
公称32インチ型近傍から、それ以上のサイズの大型の電子放出型のFPDでは、アノードに5〜15kV程度の高電圧が印加される。前記したように、このようなFPDは、背面基板(カソード基板)と前面基板(アノード基板)間の真空保持と間隔規制のため、アノード基板とカソード基板の間にスペーサが設置される。アノード基板とスペーサはフリット(低融点ガラス)で接着、固定されるが、アノード基板側はガラス上に蛍光体、ブラックマトリクス(BM)、陽極を構成するアルミ薄膜が既に形成されており、BMとアルミ薄膜を介してスペーサを接着、固定することになる。したがってBM、アルミ薄膜の硬度と下地との密着強度が必要となる。
【0016】
実際には、アルミ薄膜はスパッタまたは蒸着で形成するため、硬度も密着強度も問題にはならない。BMは材料、形成プロセスにより硬度が異なり、本来のBM必要特性である黒さ、反射率、導電性、コストの他に硬度も重要な特性になる。
【0017】
これまで、BMに関し、反射率、導電性、硬度の点から既にFPDでは実績のあるクロム(Cr)を用いたもの(Cr−BM)が多く採用されているが、スパッタ成膜後にフォト工程でパターニングするためコスト高である。電子放出型FPDを商業ベースに載せ普及させるには低コストでBMを形成することが必要である。
【0018】
また、Cr−BMは金属クロム及び2価と3価の酸化クロムから成り、“RoHS指令”規制対象の6価クロムではない。しかし、クロムというと環境負荷に関するイメージが悪く、クロム以外の材料に切り替えることが望ましいとされている。
【0019】
クロムの代替材料として、FEDと同じ真空ディスプレイで実績のあるCRT用の黒鉛BMを検討した。しかし、黒鉛膜は硬度が弱く、スペーサを設けた部分が剥がれてしまうことがあった。スペーサを設置した部分以外では黒鉛BMでも問題はなかった。また、黒鉛を低融点ガラス(フリット)と混合することで導電性は低下するが、膜強度は向上できた。
【0020】
特許文献1に開示の構成では、蛍光体層よりも導電層の方が厚膜であるために蛍光体の発光を取り出す効率を向上できない(BM開口径分の発光しか得られない)。また、導電層よりも蛍光体層を厚くしBM開口径よりも大きな蛍光体ドットを形成することでBM開口径分よりも大きな取り出し効率を得ることができるが、導電層が貴金属でかつ膜厚10μm以上で全面に形成するため貴金属使用量が多くなるので材料費が高価になり商業的に成立しない。
【0021】
本発明の目的は、膜硬度の高い遮光膜を実現し、輝度と高コントラストを向上させた画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本発明の画像表示装置は、複数の走査信号配線と、前記走査信号配線に交差する複数のデータ信号配線と、前記走査信号配線と前記データ信号配線の表示領域内での各交叉部近傍に配列された複数の電子源を内面に有する背面基板で構成された背面パネルと、複数の開口を有する導電性遮光膜と、前記電子源に対応して配列されて前記導電性遮光膜の開口に充填して塗布された蛍光体層および前記電子源に対して高電圧が印加される陽極を内面に有する前面基板で構成された前面パネルと、前記前面パネルと前記背面パネルとの間で、前記走査信号配線の上に配置された複数の間隔保持部材とを有し、前記前面パネル及び背面パネルとの間を気密封着して構成される。
【0023】
スパッタとフォトリソ工程の組み合わせはコスト高な製造方法であるのに対し、印刷の方が低コストな方法であることを踏まえ、本発明では、前面基板の主面に導電性の高い銀ペーストに金属黒色顔料を混合した材料を印刷して、黒さ、反射率、導電性、硬度に優れたBMを得る際に、2種類の主材料の遮光膜を形成している。すなわち、有効表示領域の大部分に遮光性能を重視した第1遮光膜を、スペーサを植立する部分には遮光性能と共に膜強度を高めてスペーサとの間の剥離を防止した機能の第2遮光膜を形成した点を特徴とする。
【0024】
また、本発明では、前記導電性遮光膜を主成分が異なる主材料の第1遮光膜と第2遮光膜で形成する。第1遮光膜は表示領域の遮光膜開口に塗布された蛍光体層よりも薄く、その主材料は黒鉛またはカーボンブラックの何れかとし、この材料の当該導電性遮光膜の面積占有率を90%以上とすることができる。
【0025】
また、本発明では、前記導電性遮光膜を形成する前記第2遮光膜の主材料を、金、銀、パラジウム、白金、ルテニウムの少なくとも1以上の金属と低融点ガラスとを含むものとし、表示領域における前記導電性遮光膜の面積占有率を10%以下とすることができる。そして、前記間隔保持部材と前記前面基板の間に、前記導電性遮光膜を形成する前記第2遮光膜の主材料が0.5μm〜50μmの厚みで存在するごとく構成することができる。前記導電性遮光膜を覆って前記陽極を形成した後の前記導電性遮光膜の表面抵抗率を100Ω/□以下とすることができる。
【0026】
なお、以下の説明では、上記第1遮光膜と第2遮光膜を前面基板の主面上でそれぞれ独立させた膜で形成するものとするが、第2遮光膜を設ける部分の第1遮光膜に凹部を形成して、そこに第2遮光膜の下部の一部を埋め込んだ構成としてもよい。
【発明の効果】
【0027】
蛍光体の形成部分では、導電性BM膜が蛍光体層よりも薄いのでBM開口径(幅)よりも大きな蛍光体ドット径(幅広いストライプ)を形成することができ,それにより輝度アップが可能となる。また、膜強度が必要なスペーサを設置する部分のBM膜は金属微粒子を含む高価な材料で形成されるが、スペーサの設置場所以外のBMは安価な黒鉛またはカーボンブラックで形成されるため、画像表示装置全体として、高品質のままコストを低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の最良の実施形態を、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の画像表示装置の実施例1を説明する単位画素付近の模式断面図である。この画像表示装置は、背面パネルPNL1と前面パネルPNL2を図示しない封止枠を解して周辺で貼り合せ、内部空間を真空状態に保持される。背面パネルPNL1は、例えばガラス基板などの背面基板(カソード基板)SUB1の主面(内面)にアルミニゥムAl膜を好適とする電子源の下部電極を構成する画像信号配線(下部電極、所謂、データ信号配線)CL、下部電極CLのアルミニゥムを陽極酸化した陽極酸化膜からなる第1の絶縁膜INS1、窒化シリコン膜SiNを好適とする第2の絶縁膜INS2、給電電極(接続電極)ELC、アルミニゥムAlを好適とする走査信号配線GL、走査信号配線GLに接続したサブピクセル(カラーの副画素)の電子源を構成する上部電極AEDが形成されている。
【0030】
電子源ELSは、画像信号配線CLを下部電極とし、下部電極の上に位置する第1の絶縁膜INS1の一部を形成する薄膜部分INS3、前記薄膜部分INS3の上層に積層する上部電極AEDの部分とで構成される。上部電極AEDは、走査信号配線GLと給電電極ELCの一部とを覆って形成されている。薄膜部分INS3は、所謂トンネル膜である。この構成で、所謂ダイオード電子源ELSが形成される。
【0031】
一方、前面パネルPNL2は、透明なガラス基板を好適とする前面基板(アノード基板)SUB2の主面に遮光膜(ブラックマトリクス)BMで隣接画素と区画された蛍光体PH、アルミニウム蒸着膜を好適とするメタルバックADが形成されており、BMとメタルバックを陽極としている。
【0032】
背面パネルPNL1と前面パネルPNL2の間の間隔は3mmないし5mm前後であり、この間隔を隔壁あるいは間隔保持部材とも称するスペーサSPCで維持している。ここでは、カソード基板SUB1とアノード基板SUB2の板厚は、例えば2.8mm、スペーサSPCの高さは例えば3mm程度である。図1では、分かり易くするために各構成層の厚みを強調して示してあるが、走査信号配線GLの膜厚は例えば3μmである。
【0033】
この様な構成において、背面パネルPNL1の上部電極AEDと前面パネルPNL2の陽極ADの間に加速電圧(2、3kV乃至10kV程度、図1では約5kV)を印加すると、下部電極である画像信号配線CLに供給される表示データの大きさに応じた電子e-が出射し、加速電圧によって蛍光体PHに射突し、これを励起して所定周波数の光Lを前面パネルPNL2の外部に出射する。なお、繰り返しになるが、フルカラー表示の場合は、この単位画素はカラーの副画素(サブピクセル)であり、通常は赤(R)、緑(G)、青(B)の各蛍光体PHからなる3つの副画素で1カラー画素を構成する。
【0034】
図2は、本発明の画像表示装置の実施例1を説明する前面基板の主面の平面図で、図2(a)は全体図、図2(b)は図2(a)のA部分の拡大図である。前面基板SUB2の主面(内面)には遮光膜(ブラックマトリクス)BMが形成されている。遮光膜BMは、第1の材料からなる第1遮光膜BMFと第2の材料からなる第2遮光膜BMSからなる。第1遮光膜BMFは前面基板SUB2の大部分に形成されており、遮光膜開口(BM開口)BMAを設けて、赤(R)、緑(G)、青(B)の各蛍光体PHを対応するBM開口に塗布し形成してある。そして、スペーサを設置する部分に、第2の材料からなる第2遮光膜BMSが形成されている。スペーサSPCを設置する部分は、背面基板SUB1側では図1に示した走査信号配線GL上であり、前面基板SUB2側では蛍光体が塗布されていない第1遮光膜BMF上である。通常は、スペーサSPCは当該走査信号配線GLの何本か置きに配置される。
【0035】
第1遮光膜BMFを形成する第1の材料は、黒さ、反射率、導電性、耐熱性、基板との接着力が良好で表示品質の向上に好適な黒鉛又はカーボンブラックを主成分とする。第2遮光膜BMSを構成する第2の材料は、黒さ、反射率、導電性、耐熱性、基板との接着力に加えて膜硬度の良好な低融点ガラスを含む導電性黒色材料を主成分とする。
【0036】
遮光膜BMに要求される特性としては、黒さ、反射率、導電性、耐熱性、基板との接着力、膜硬度などがある。黒さ、反射率、導電性、耐熱性、基板との接着力は、基板全面で要求される。しかし、その膜強度はスペーサが接着する部分だけ強くあればよく、そこ以外ではそれほど強い膜強度は要求されない。したがって、図1に示したように、遮光膜BMの膜強度の要求が高い部分と低い部分とで材料を変えることで、コストパフォーマンスの高いBM膜を形成できる。特に、BM遮光率(BM遮光部の面積の全表示面積に対する比率)が40%以上の場合にこの効果は大きい。
【0037】
図3は、遮光膜と蛍光体および陽極の配置を説明する図2のX−X線に沿った一部断面
図である。また、図4は、遮光膜と蛍光体および陽極とスペーサの配置を説明する図2のY−Y線に沿った背面基板およびスペーサとともに示す一部断面図である。蛍光体PHは第1遮光膜BMFの開口BMAに充填して遮光膜よりも厚く塗布される。蛍光体PHは第1遮光膜BMFの上にもはみ出して形成されている。そして、第1遮光膜BMFと蛍光体PHの上を覆ってアルミニウム薄膜が成膜されてメタルバックADが形成されている。
【0038】
スペーサSPCは、前面基板SUB2の主面に形成された第2遮光膜BMSの上に一端を植立され、他端は背面基板SUB1の走査信号配線GL上フリットガラスFGで固定される。なお、背面基板SUB1に有する細かな構成は図示を省略した。
【0039】
図5は、遮光膜開口とこの遮光膜開口に塗布された蛍光体の発光量を遮光膜と蛍光体の膜厚および塗布サイズの違いで説明する要部断面図である。図5(a)は本発明の実施例1の構成、図5(b)は本発明の実施例1と同じ遮光膜の厚さで蛍光体を遮光膜開口のサイズに限定した場合、図5(c)は遮光膜の膜厚が蛍光体のそれより厚い場合で、遮光膜開口のサイズはすべて同じとした。
【0040】
本発明の実施例1では、遮光膜BMFの膜厚が蛍光体PHの層よりも薄いので、遮光膜の開口BMAのサイズより大きいサイズの蛍光体PHを形成することで、遮光膜BMFに隠れた部分の蛍光体の発光もメタルバックADの反射を利用して図5(a)のように前面基板側に取り出すことができるようになり、全体の光量Lが増加し、輝度アップさせることが可能である。
【0041】
これに対し、図5(b)のように遮光膜の開口BMAのサイズからはみ出さないように蛍光体PHを形成した場合、あるいは図5(c)のように遮光膜BMFの膜厚が蛍光体のそれより厚い場合は、遮光膜BMFの開口分の発光しか取り出すことができず、全体の光量Lは増えない。
【0042】
第1遮光膜BMFは、有効表示領域の面積で90%以上を占め、この部分の遮光膜材料に材料が安い黒鉛またはカーボンブラックを用いることで、導電性と黒さなど、品質に優れた遮光膜を安価に形成することができる。なお、この遮光膜は膜強度が弱いため、この膜の上にスペーサを立てることには適さない。しかし、遮光膜としての本来の黒さ、反射率導電性、耐熱性基板との接着力には優れている。
【0043】
スペーサを設置するところの遮光膜は膜硬度も重要なので、低融点ガラスを含んだ導電性黒色材料の遮光膜ペーストを塗布(または印刷)し、熱工程でスペーサと密着させることで強固に接着させることができる。この材料としては、貴金属を含むため高価であるが、この材料の遮光膜の有効表示領域の面積での面積占有率が10%以下なので材料コストを抑えることができる。
【0044】
実験によれば、この遮光膜ペーストの材料の厚さが0.5μm以下では遮光膜(第2遮光膜BMS)としての黒さが不十分となり、50μm以上では膜強度が不十分になる。黒さ、反射率、導電性、耐熱性、基板との接着力、膜硬度を満足する厚さは0.5μm〜50μmである。
【0045】
MIM型画像表示装置の陽極機能としては、陽極ADと共に第1遮光膜BMFと第2遮光膜BMSも含めた導電性遮光膜もその役割を果たす。この部分の表面抵抗率は100Ω/□以下にすることで蛍光面全面に均一な電位を掛けることができ、発光輝度の均一性が得られる。
【0046】
次に、実施例1の前面基板SUB2の製造プロセスの一例を図6、図7、図8を参照して説明する。先ず、前面基板SUB2に紫外線で硬化するネガ型フォトレジストを塗布する。次に、遮光膜の開口部BMAになる部分と第2遮光膜BMSの材料を塗布する部分BMS−Rおよび前面基板SUB2周辺(有効表示領域より若干広い部分)に紫外線が照射されるようフォトマスクを介して紫外線露光する。その後、温純水で未露光部を現像し、除去する。
【0047】
更に、黒鉛スラリーを全面塗布し、乾燥した後、エッチング液で硬化したフォトレジストを膨潤剥離させる。すると、図6に示すように、遮光膜の開口BMAになる部分と第2遮光膜BMSの材料を塗布する部分BMS−Rおよび前面基板SUB2の周辺に黒鉛パターンの無い前面基板SUB2が得られる。この方法は、遮光膜を形成するための低コストな方法としてブラウン管で実績がある。すなわち、遮光膜の開口BMA、および第2遮光膜の材料を150μm幅で塗布できるスペース(第2遮光膜BMSの材料を塗布する部分BMS−R)には遮光膜が塗布されない。
【0048】
次に、緑蛍光膜Gの開口に平均粒径6μmの緑蛍光体GとしてZnS:Cu,Alをセルロース系樹脂と酢酸2−(2−n―ブトキシエトキシ)エチルからなる分散媒にミル分散させたペーストを用いてスクリーン印刷法により緑蛍光膜Gのパターン形成を行う。同様に、青蛍光体Bの開口に青蛍光体BとしてZnS:Ag,Clを用い、赤蛍光体の開口に赤蛍光体としてY202S:Euを用いて蛍光体パターンを形成する。3色の蛍光体PHを塗布した前面基板SUB2の内面を図7に示す。蛍光体PHの膜厚は15μmである。その後、アクリル/セルロース樹脂と高沸点溶媒からなるインクを蛍光膜の上にパターン印刷し、乾燥させ有機平滑膜(フィルミング膜)を形成する。
【0049】
次に、第2の遮光膜材料として、30nmの金属銀微粒子と鉛フリー低融点ガラス混ぜたペーストをディスペンサで所定の位置に150μmの幅で塗布し、第2遮光膜BMSを形成する。このときの第2の遮光膜材料の膜厚は10μmである。次に、陽極ADとして、DCマグネトロンスパッ夕方式でアルミニウムターゲットとアルゴン放電ガスを使用し、積層速度5Å/sで200秒間積層する。これにより、膜厚80nmの陽極ADとなるメタルバック膜が形成される。このときの外観図を図8に示す。
【0050】
パネルベークにより蛍光膜中の有機物とフィルミング膜を焼失させることで、主面に第1遮光膜BMF、第2遮光膜BMS、蛍光体層PH(G,B,R)と陽極ADを有する前面基板SUB2を得た。
【0051】
この前面基板SUB2の第2遮光膜BMSの上にスペーサSPCを植立し、背面基板SUB1と合わせ、封着し、真空排気することで表示パネルを得る。このとき、前面基板SUB2と第2遮光膜BMSおよびスペーサSPCは剥がれることなく、強固に接着できた。完成した表示パネルの遮光膜の拡散反射率は、第1材料部分、第2材料部分とも1%であり、十分な黒さを示す。遮光膜の陽極を介しての表面抵抗率は10Ω/□であり、十分な導電性を示した。このパネルに高圧7kV印加し動作させたときの輝度を図5(a)(b)について比較したところ実施例1である図5(a)の方が20%高い輝度を獲ることができた。
【0052】
次に、実施例1の前面基板SUB2の製造プロセスの他例を説明する。先ず、黒鉛微粒子とカーボンブラック微粒子をセルロース系樹脂と酢酸2−(2−nブトキシエトキシ)エチルからなる分散媒にミル分散させた第1の遮光膜の材料ペーストを印刷法により第1遮光膜の形成位置に塗布する。このときの膜厚は3μmであった。
【0053】
次に、前記したプロセスと同じように、3色の蛍光体をG,B,Rの順に印刷する。その後、アクリル/セルロース樹脂と高沸点溶媒からなるインクを蛍光体膜の上にパターン印刷し、乾燥させて有機平滑膜(フィルミング膜)を形成する。次に、第2遮光膜の材料として粒径20nmの銀とパラジウムの混合金属微粒子と鉛フリー低融点ガラス混ぜたペーストを印刷法で所定の位置に150μmの幅で塗布する。このときの第2遮光膜の膜厚は10μmである。
【0054】
以後、前記のプロセスと同様の方法を経て表示パネルを完成させる。完成した表示パネルの遮光膜の拡散反射率は、第1遮光膜の部分が1.3%、第2遮光膜の部分が1%であり、十分な黒さであった。遮光膜の陽極ADを介しての表面抵抗率は30Ω/□であり、十分な導電性を示した。
【0055】
図9は、本発明による画像表示装置の全体構造の一例を説明する一部破断して示す斜視図である。また、図10は、図9のA−A’線に沿って切断した断面図である。背面基板SUB1の内面には画像信号配線CLと走査信号配線GLを有し、画像信号配線CLと走査信号配線GLの交差部分に電子源が形成されている。画像信号配線CLの端部には画像信号配線引き出し端子CLTが形成され、走査信号配線GLの端部には走査信号配線引き出し端子GLTが形成されている。
【0056】
前面基板SUB2の内面には陽極ADと遮光膜の開口に塗布された蛍光体PHが形成されている。背面基板SUB1と前面基板SUB2とは、その周縁部の内側に封止枠MFLを介在させて貼り合わされる。この貼り合わせた間隙を所定値に保持するため、背面基板SUB1と前面基板PNL2の間にガラス板を好適とするスペーサSPCを植立させていることは前記したとおりである。図10はこのスペーサSPCに沿った断面なので、隔壁SPCは図示が省略されてある。
【0057】
図11は、本発明の構成を適用した画像表示装置の等価回路例の説明図である。図11中に破線で示した領域は有効表示領域ARであり、この表示領域ARにn本の画像信号配線CLとm本の走査信号配線GLが互いに交差して配置されてn×mの副画素からなるマトリクスが形成されている。マトリクスの各交差部はカラーの副画素を構成し、図中の3つの単位画素(あるいは、副画素)"R"、"G"、"B"の1グループでカラー1画素を構成するのは前述したとおりである。なお、電子源の構成は図示を省いた。
【0058】
画像信号配線CLは、画像信号配線引き出し端子CLTでデータ信号線駆動回路CDRに接続される。走査信号配線GLは走査信号配線引き出し端子GLTで走査信号駆動回路GDRに接続されている。データ信号線駆動回路CDRには外部信号源から画像データ信号NSが入力され、走査信号線駆動回路GDRには同様に走査信号SSが入力される。
【0059】
これにより、順次選択される走査信号線GLに交差する画像信号配線CLに表示データ(画像信号)を供給することで、二次元のフルカラー画像を表示することができる。本構成例を用いることにより、比較的低電圧で高効率の自発光平面表示装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の画像表示装置の実施例1を説明する単位画素付近の模式断面図である。
【図2】本発明の画像表示装置の実施例1を説明する前面基板の主面の平面図である。
【図3】遮光膜と蛍光体および陽極の配置を説明する図2のX−X線に沿った一部断面図である。
【図4】遮光膜と蛍光体および陽極とスペーサの配置を説明する図2のY−Y線に沿った背面基板およびスペーサとともに示す一部断面図である。
【図5】遮光膜開口とこの遮光膜開口に塗布された蛍光体の発光量を遮光膜と蛍光体の膜厚および塗布サイズの違いで説明する要部断面図である。
【図6】本発明の実施例1の前面基板の製造プロセスの一例を説明する図である。
【図7】本発明の実施例1の前面基板の製造プロセスの一例を説明する図である。
【図8】本発明の実施例1の前面基板の製造プロセスの一例を説明する図である。
【図9】本発明による画像表示装置の全体構造の一例を説明する一部破断して示す斜視図である。
【図10】図9のA−A’線に沿って切断した断面図である。
【図11】本発明の構成を適用した画像表示装置の等価回路例の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
SUB1・・・背面基板、SUB2・・・前面基板、MFL・・・封止枠(枠体)、SPC・・・スペーサ、ELS・・・電子源、PH・・・蛍光体、BM・・・遮光膜(ブラックマトリクス)、BMF・・・第1遮光膜、BMS・・・第2遮光膜、BMA・・・ブラックマトリクス開口(BM開口)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査信号配線と、前記走査信号配線に交差する複数のデータ信号配線と、前記走査信号配線と前記データ信号配線の表示領域内での各交叉部近傍に配列された複数の電子源を内面に有する背面基板で構成された背面パネルと、複数の開口を有する導電性遮光膜と、前記電子源に対応して配列されて前記導電性遮光膜の開口に充填して塗布された蛍光体層および前記電子源に対して高電圧が印加される陽極を内面に有する前面基板で構成された前面パネルと、前記前面パネルと前記背面パネルとの間で、前記走査信号配線の上に配置された複数の間隔保持部材とを有し、前記前面パネル及び背面パネルとの間を気密封着してなる画像表示装置であって、
前記導電性遮光膜が主材料の異なる第1遮光膜と第2遮光膜から形成されており、前記開口を形成する前記第1遮光膜の膜厚が塗布される蛍光体層よりも薄いことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記導電性遮光膜を形成する前記第1遮光膜の主材料が、黒鉛またはカーボンブラックの何れかであり、前記表示領域での当該導電性遮光膜の面積占有率が90%以上であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記導電性遮光膜を形成する前記第2遮光膜の主材料が、金、銀、パラジウム、白金、ルテニウムの少なくとも1以上の金属と低融点ガラスを含み、前記表示領域での当該導電性遮光膜の面積占有率が10%以下であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記間隔保持部材と前記前面基板の間に、前記導電性遮光膜を形成する前記主材料が0.5〜50μmの厚みで存在することを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項2、3又は4において、
前記導電性遮光膜を覆って前記陽極を形成した後の前記導電性遮光膜の表面抵抗率が100Ω/□以下であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項1】
複数の走査信号配線と、前記走査信号配線に交差する複数のデータ信号配線と、前記走査信号配線と前記データ信号配線の表示領域内での各交叉部近傍に配列された複数の電子源を内面に有する背面基板で構成された背面パネルと、複数の開口を有する導電性遮光膜と、前記電子源に対応して配列されて前記導電性遮光膜の開口に充填して塗布された蛍光体層および前記電子源に対して高電圧が印加される陽極を内面に有する前面基板で構成された前面パネルと、前記前面パネルと前記背面パネルとの間で、前記走査信号配線の上に配置された複数の間隔保持部材とを有し、前記前面パネル及び背面パネルとの間を気密封着してなる画像表示装置であって、
前記導電性遮光膜が主材料の異なる第1遮光膜と第2遮光膜から形成されており、前記開口を形成する前記第1遮光膜の膜厚が塗布される蛍光体層よりも薄いことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記導電性遮光膜を形成する前記第1遮光膜の主材料が、黒鉛またはカーボンブラックの何れかであり、前記表示領域での当該導電性遮光膜の面積占有率が90%以上であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記導電性遮光膜を形成する前記第2遮光膜の主材料が、金、銀、パラジウム、白金、ルテニウムの少なくとも1以上の金属と低融点ガラスを含み、前記表示領域での当該導電性遮光膜の面積占有率が10%以下であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記間隔保持部材と前記前面基板の間に、前記導電性遮光膜を形成する前記主材料が0.5〜50μmの厚みで存在することを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項2、3又は4において、
前記導電性遮光膜を覆って前記陽極を形成した後の前記導電性遮光膜の表面抵抗率が100Ω/□以下であることを特徴とする画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−47478(P2008−47478A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223799(P2006−223799)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
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