説明

画像表示装置

【課題】画像表示性能を向上することのできる技術を提供する。
【解決手段】本発明の画像表示装置は、複数の行配線および複数の列配線を用いて複数の表示素子がマトリクス状に配置された表示パネルと、複数の行配線を順次選択する行配線駆動回路と、入力された映像信号に基づいて変調された変調信号を、前記複数の列配線に出力する列配線駆動回路と、を有し、前記行配線駆動回路は、選択状態にする行配線に選択信号を出力する選択信号出力回路と、非選択状態にする行配線に非選択信号を出力する非選択信号出力回路と、非選択状態の行配線の電位に対応する電位をフィードバックすることにより、前記非選択信号出力回路の出力インピーダンスを低減する調整回路と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関し、特に、テレビジョン受像機やコンピュータなどのモニタに利用される、マトリクスパネルを有する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置(平面型画像表示装置)として、電子放出素子を用いた表示装置(電子線表示装置)、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機EL表示装置などがある。この種の平面型画像表示装置は、複数の表示素子がマトリクス状に配列された表示パネル(マトリクスパネル)と、表示素子を駆動するための駆動回路とを備えている。表示素子の駆動方式としては、線順次駆動、ホールド駆動、サブフィールド駆動等があり、表示デバイスによって種々の方式が採用されている。線順次駆動における非選択行配線(非選択状態の行配線)の駆動方法に関する従来技術は、例えば、特許文献1〜3に開示されている。具体的には、特許文献1,2には、低消費電力化を意図した、非選択行配線に接続された表示素子のリーク電流の低減方法に関する技術が開示されている。特許文献3には、非選択信号(非選択状態にする行配線に出力する信号)のオーバーシュートを抑制するためにダイオードで電位をクランプする技術が開示されている。しかしながら、一般的には、非選択行配線は、コストや回路規模を考慮して、図11の符号12bで示すように簡便なスイッチ構成で駆動される(図11は、従来の行配線駆動回路を示す図である)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−162927号公報
【特許文献2】特開平11−161223号公報
【特許文献3】特許第3236465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の方法では画像表示性能に関して以下に示すような課題があった。
非選択行配線を駆動するためのスイッチのインピーダンスと、行配線と列配線の交差部との容量結合によって、画像表示時に非選択行配線の電位が揺れ、その揺れが他の選択行配線および列配線に回り込み、表示画像が悪化することがあった。図10は表示画像の一例を示す図である。図6は、図10に示す画像を表示したときの各種駆動波形を示す図である。例えば、図10(a)に示すように単色パッチ10bのみを表示する場合、該表示のための列配線駆動波形(変調信号の波形;列配線の電位波形)は波形6hのようになる。それに対し、図10(b)に示すように単色パッチ10bと、それよりも階調値の低い帯10cを同時に表示させると、帯10cを表示するための列配線駆動波形(図6(a)の符号6c)の立ち下りの影響を受けて非選択行配線の電位(波形6d)が揺れる。そして、その揺れが単色パッチ10bに対応する列配線の電位に回り込み(伝播し)、単色パッチ10bを表示するための列配線駆動波形は符号6fに示すような歪んだ波形となってしまう。そのため、所望の駆動波形(波形6h)を得ることができず、表示画像が悪化してしまう。
【0005】
また、特許文献1に開示の技術では、非選択行配線を高インピーダンス化してしまうため、非選択行配線の電位揺れが助長され、表示画像がより悪化してしまう。特許文献2に開示の技術では表示素子のリーク電流は抑制できるものの、上記容量結合に起因する電位揺れを抑制することはできないため、画像表示性能を向上することはできない。特許文献
3に開示の技術では、抑制可能なのはクランプ電位を越えるオーバーシュートのみで、アンダーシュートを伴うクランプ電位以下の電位揺れに対する抑制効果は小さく、電位規定が不十分であるため、表示画像が悪化することがある。
【0006】
本発明は、画像表示性能を向上することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像表示装置は、複数の行配線および複数の列配線を用いて複数の表示素子がマトリクス状に配置された表示パネルと、複数の行配線を順次選択する行配線駆動回路と、入力された映像信号に基づいて変調された変調信号を、前記複数の列配線に出力する列配線駆動回路と、を有し、前記行配線駆動回路は、選択状態にする行配線に選択信号を出力する選択信号出力回路と、非選択状態にする行配線に非選択信号を出力する非選択信号出力回路と、非選択状態の行配線の電位に対応する電位をフィードバックすることにより、前記非選択信号出力回路の出力インピーダンスを低減する調整回路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像表示性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1に係る行配線駆動回路の一例を示す図。
【図2】本実施形態に係る画像表示装置の構成の一例を示す図。
【図3】線順次駆動における駆動波形の一例を示す図。
【図4】本実施形態に係る行配線駆動回路の一例を示す図。
【図5】行配線駆動回路と行配線との接続態様の一例を示す図。
【図6】本発明の課題及び効果を説明するための図。
【図7】実施例2に係る行配線駆動回路の一例を示す図。
【図8】実施例3に係る行配線駆動回路の一例を示す図。
【図9】実施例4に係る行配線駆動回路の一例を示す図。
【図10】表示画像の一例を示す図。
【図11】従来の行配線駆動回路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係る画像表示装置について説明する。
本実施形態に係る画像表示装置は、複数の行配線および複数の列配線を用いて複数の表示素子がマトリクス状に配置された表示パネル(マトリクスパネル)を有する。本発明は、例えば、電子線表示装置、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機EL表示装置等に適用できる。特に、電子線表示装置は、マトリクスパネルの配線容量や電子放出素子部の容量が大きいため、また、線順次駆動によって本発明の効果である画像表示性能の向上が特に期待できるため、本発明において最も好適な形態である。電子線表示装置では、表示素子として、FE型電子放出素子、MIM型電子放出素子、表面伝導型電子放出素子などの冷陰極素子が用いられる。
【0011】
図2は本実施形態に係る画像表示装置の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る画像表示装置は、図2に示すように、表示パネル2a、行配線駆動回路2f、列配線駆動回路2e、信号生成回路2jなどを有する。
表示パネル2aは、複数の行配線2b、複数の列配線2c、及び、複数の表示素子2dを有する。
信号生成回路2jは、列配線駆動回路2eへ映像信号を出力し、行配線駆動回路2fへ水平同期信号を出力する。
列配線駆動回路2eは、入力された映像信号に基づいて変調された変調信号を、複数の列配線2cに出力する。具体的には、列配線駆動回路は、映像信号に基づいて変調信号のパルス幅や波高値を変調する。
行配線駆動回路2fは、複数の行配線2bを順次選択する。例えば、行配線駆動回路2fは、シフトレジスタ2g、出力回路2h(マルチプレクサ)などを有する。出力回路2hは、選択状態にする行配線に選択信号(選択電位Vs)を出力する選択信号出力回路と、非選択状態にする行配線に非選択信号(非選択電位Vns)を出力する非選択信号出力回路とを有する。非選択信号出力回路及び選択信号出力回路は、バイポーラトランジスタやCMOSトランジスタを用いた回路である。そして、行配線駆動回路2fは、図3に示すように、列配線への変調信号(駆動電位Ve)の出力と同期して順次行配線を選択する。図3は、線順次駆動における駆動波形の一例を示す図である。
【0012】
具体的には、シフトレジスタ2gが、入力された水平同期信号から線順次駆動のための制御信号を生成する。そして、出力回路2hが、該制御信号に従って(列配線への変調信号の印加と同期して)、行配線の状態を選択状態、非選択状態へ順次切り替える。換言すれば、行配線に対し使用する回路を選択信号出力回路と非選択信号出力回路の間で切り替える。それにより、出力回路2hから選択状態にする行配線に選択信号が出力され、非選択状態にする行配線に非選択信号が出力される。そして、選択行配線に接続された表示素子が変調信号に応じて駆動される(即ち、行配線駆動回路2fと列配線駆動回路2eにより表示素子が駆動される)。
また、本実施形態では、行配線駆動回路2fは、非選択状態の行配線の電位に対応する電位をフィードバックすることにより、非選択信号出力回路の出力インピーダンス(非選択信号の表示素子への出力インピーダンス)を低減する調整回路2iを有する。
【0013】
なお、従来のスイッチ構成での非選択信号出力回路の出力インピーダンスが1出力(1行配線)あたり10Ω程度であったことから、調整回路2iは、10Ω以下となるように非選択信号出力回路の出力インピーダンスを調整することが望ましい。
図4は、本実施形態に係る行配線駆動回路の一例を示す図である。調整回路2iは、図4の符号4aに示すように、非選択状態の行配線の電位に対応する電位をフィードバックすることにより、該電位を所定の電位に近づける反転増幅器を有する回路であることが望ましい。そのような反転増幅器を用いれば、回路規模の縮小が期待できる。
また、図4のように、選択する行配線の駆動にも反転増幅器(反転増幅器4b)を用いる場合には、反転増幅器4a,4bは別体であり、マルチプレクサ4cによって使用する反転増幅器が切り替えられることが望ましい。
また、反転増幅器4aは、行配線毎に設けられていてもよいが、複数の行配線に対して1つ設けられていることが望ましい。具体的には、調整回路2iは、非選択状態にする複数の行配線に出力する非選択信号を反転増幅器4aから各非選択信号出力回路へ出力し、非選択状態の各行配線の電位に対応する電位の合成電位を反転増幅器4aにフィードバックすることが望ましい。そのような構成にすることにより、回路をより簡素化することができる。
【0014】
また、行配線の状態を選択状態から非選択状態に切り替えると、該非選択状態に切り替えられた行配線の電位にノイズが生じる虞がある。複数の行配線に対して1つの反転増幅器4aを用いる構成において、そのような電位をフィードバックすると、他の非選択行配線に出力する非選択信号にノイズ等の悪影響を及ぼす虞がある。そこで、行配線駆動回路2fは、図4に示すように、遅延回路4dを有することが望ましい。遅延回路4dは、行配線の状態を選択状態から非選択状態に切り替える際に、該非選択状態に切り替えられた行配線の電位に対応する電位のフィードバックを開始するタイミングを該切り替えのタイミングよりも遅らせる。
また、反転増幅器4aへフィードバックする電位は、表示素子に近い位置での電位であ
ることが望ましい。図5は、行配線駆動回路と行配線との接続態様の一例を示す図である。具体的には、図5では、非選択信号出力回路と調整回路(反転増幅器5a)を有するドライバICが、TCP(tape carrier package),COF(chip on film)等のフレキシブル基板上の配線(導線)5bを介して行配線5cに接続されている。このような構成の場合には、例えば、配線5bや行配線5c上での電位を反転増幅器5aにフィードバックすればよい。フィードバックする電位の位置が表示素子に近ければ近いほど、非選択信号の制御性(安定性)を高めることができる。
また、図4に示すように、反転増幅器4aへ電位をフィードバックする際に用いる回路(帰還ループ)の一部と、反転増幅器4bへ電位をフィードバックするための帰還ループの一部とが共通の回路であることが望ましい。そのような構成にすることにより、回路をより簡素化することができる。
【0015】
<実施例1>
以下に本発明の実施例1に係る画像表示装置について説明する。なお、本実施例に係る画像表示装置の全体的な構成は図2と同様であるため、説明は省略し、以下では、行配線駆動回路の具体的な構成について図1,3を用いて説明する。図1は本実施例に係る行配線駆動回路の一例を示す図である。なお、図1ではシフトレジスタを省略している。
【0016】
図1において、符号1aは行配線駆動回路、符号1bは出力回路(マルチプレクサ)、符号1cは選択側切り替え回路、符号1dは非選択側切り替え回路、符号1eは選択側反転増幅器、符号1fは非選択側反転増幅器、符号1gはスイッチを示す。具体的には、選択側反転増幅器1eは、選択信号を選択信号出力回路へ出力する反転増幅器であり、非選択側反転増幅器1fは、非選択信号を非選択信号出力回路へ出力する反転増幅器である。選択側切り替え回路1cは選択信号を行配線へ出力するためのスイッチ(選択信号出力回路)、及び、その行配線(選択状態の行配線)の電位に対応する電位を選択側反転増幅器1eにフィードバックするためのスイッチで構成されている。非選択側切り替え回路1dは非選択信号を行配線へ出力するためのスイッチ(非選択信号出力回路)、及び、その行配線(非選択状態の行配線)の電位に対応する電位を非選択側反転増幅器1fにフィードバックするためのスイッチ1gで構成されている。即ち、本実施例では、調整回路は、非選択側反転増幅器1fとスイッチ1gからなる。なお、図1に示すように、本実施例では、複数の行配線に対し1つの非選択側反転増幅器1fを用いている。また、選択側反転増幅器1eに対する帰還ループの一部と、非選択側反転増幅器1fに対する帰還ループの一部として共通の回路を用いている。それにより、回路を簡素化することができる。
【0017】
以下、一例として、図1において、マトリクス配置された複数の電子放出素子のうち、n行目の電子放出素子(n行目の行配線に接続されている電子放出素子)を駆動する場合の動作について説明する。
その場合には、シフトレジスタからの制御信号により、n行目の選択側切り替え回路1c(n行目の行配線に接続されている選択側切り替え回路)内の2つのスイッチが導通される。それにより、n行目の行配線に選択信号3a(選択電位Vs)が出力される。
また、その他のn−1およびn+1行目の行配線に対しては、非選択側切り替え回路1d内の2つのスイッチが導通されることにより、非選択信号3b(非選択電位Vns)が出力される。なお、この動作は非選択状態にする全ての行配線に対して行われる。
また、上述した各スイッチは同じタイミングで導通される。
そして、上記処理(選択信号、非選択信号の出力)と同期して、列配線に映像信号に基づく変調信号3c(駆動電位Ve)が出力される。
【0018】
この方法によれば、選択行配線に接続された電子放出素子にはVe−Vs(≧Vth(電子放出閾値;電子を放出するために必要な電圧))の電圧が印加され、非選択行配線に接続された電子放出素子にはVe−Vns(<Vth)の電圧が印加される。
電子放出素子から所望の強度の電子ビームを出力させるためには、Ve,Vs,Vnsの値を適宜設定すればよい。
また、冷陰極素子の応答速度は高速であるため、駆動電位Veを印加する時間の長さ(図3の矢印3dで示すパルス幅)を変えれば、電子ビームの出力時間の長さを変えることができる。
【0019】
上記構成を想定し、図10(a),10(b)の画像(表示パターン)を表示したときの駆動波形を、シミュレーションにより算出した。
その結果、図6(a)に示すように、従来技術において帯10cを表示するための列配線駆動波形6cの立ち下がりによって引き起こされていた非選択行配線の電位(波形6d)の揺れを、本実施例では抑制することができた。具体的には、波形6eに示すように、非選択行配線の電位の揺れを波形6dの揺れよりも小さくすることができた。これにより、単色パッチ10bに対応する列配線駆動波形の揺れも抑制することができた。具体的には、従来技術では波形6fであった単色パッチ10bに対応する列配線駆動波形を、本実施例では波形6gとすることができ、理想的な駆動状態の波形である波形6hに近づけることができた。
【0020】
次に、電位の揺れが発生する部分(図6(a)の符号6kで示す部分)における波形6g,6fの波形6hからのずれ量を、輝度値に換算した。その結果を図6(b)に示す。符号6iは波形6f(従来の波形)の波形6hからのずれ量を輝度値に換算した値(輝度誤差)を示し、符号6jは波形6g(本実施例の波形)の波形6hからのずれ量を輝度値に換算した値を示す。図6(b)から、本実施例では、従来技術(輝度誤差6i)よりも輝度誤差を低減できていることがわかる。これは、本実施例の構成によって画像表示性能が向上されたことを意味する。
【0021】
上述したように、本実施例によれば、非選択状態の行配線の電位に対応する電位を非選択側反転増幅器にフィードバックすることにより、該電位を所定の電位に近づけられ、非選択信号出力回路の出力インピーダンスが低減される。それにより、非選択信号の電位の揺れを抑制することができ、画像表示性能を向上することができる。
【0022】
<実施例2>
本実施例では、非選択信号出力回路がIC内の回路であり、非選択側反転増幅器が該ICの外付け部品である例について説明する。具体的には、半導体ICの内部と外部に非選択側反転増幅回路が設けられる場合について説明する。
【0023】
図7は本実施例に係る行配線駆動回路の一例を示す図である。本実施例に係る行配線駆動回路は、図7に示すように、図2の構成の他に、外部端子7a,7b,7c、及び、選択回路7dを有する。外部端子7aは、非選択信号出力回路に入力する非選択信号を外部から入力するための端子であり、外付け部品である非選択側反転増幅器(外部反転増幅器7e)の出力端子が接続される端子である。外部端子7bは、フィードバックする電位(非選択状態の行配線の電位に対応する電位)を外部へ取りだすための外部端子7bであり、外部反転増幅器7eの反転入力端子に接続される端子である。外部端子7cは、非選択側反転増幅器として外部反転増幅器7eと半導体IC内部の非選択側反転増幅器7fのどちらを使用するかを決めるための選択信号を入力するための端子である。選択回路7dは、該選択信号に応じて使用する非選択側反転増幅器を切り替える回路である。
【0024】
本実施例によれば、非選択側反転増幅器として外付け部品を用いることにより、高性能な(高帯域な)外付けの反転増幅器を選定できる場合に、非選択側反転増幅器を容易に変更すること可能となる。そして、そのような変更により、更なる高画質化(画像表示性能の向上)が期待できる。
【0025】
<実施例3>
本実施例では、非選択信号出力回路、選択信号出力回路が、それぞれ、フレキシブル基板上に形成された導線を介して行配線に非選択信号、選択信号を出力する場合について説明する。一般に、そのようなフレキシブル基板上には、複数の行配線に対応する複数の導線が形成されている。そして、複数の導線は、行配線側に向かって互いの間隔が大きくなる斜め配線部を有する。
【0026】
そこで本実施例では、調整回路が、斜め配線部よりも行配線側の電位を非選択側反転増幅器、選択側反転増幅器にフィードバックする。
具体的には、図8に示すように、行配線駆動回路8aの出力端子8bとフィードバックする電位を入力する入力端子8cを各行配線毎に設けた(図8は、本実施例に係る行配線駆動回路の一例をしめす図である。)。そして、フィルムパッケージ上の斜め配線部8dよりも行配線側の位置8eでの電位がフィードバックされるように帰還ループを形成した。即ち、帰還ループの始点を位置8eとした。なお、他の構成は実施例1,2と同様のため、説明は省略する。
【0027】
本実施例によれば、斜め配線部8dよりも行配線側の電位を非選択側反転増幅器にフィードバックすることにより、非選択側反転増幅器の出力直後の位置での電位をフィードバックさせる場合に比べ、非選択信号の制御性(安定性)を向上することができる。
また、上述した斜め配線部では、各配線(導線)の長さ(配線抵抗)に差が生じるため、電位の降下量に差が生じ、フィルムパッケージ(フレキシブル基板)単位での表示むらが生じてしまう。本実施例では、非選択側反転増幅器と選択側反転増幅器とで、帰還ループの始点からシフトレジスタまでの回路が共通しているため、上述の表示むらを防止することができる。言い換えれば、選択側反転増幅器に対しても斜め配線部8dより行配線側の電位がフィードバックされるため、上述の表示むらを防止することができる。
【0028】
<実施例4>
本実施例では、行配線の状態を選択状態から非選択状態に切り替える際に、該非選択状態に切り替えられた行配線の電位に対応する電位のフィードバックを開始するタイミングを該切り替えのタイミングよりも遅らせる構成について説明する。具体的には、本実施例では、調整回路がそのような遅延を行う遅延回路を有する構成について説明する。その他の構成は実施例1〜3などと同様である。なお、本実施例では、複数の行配線に対して1つの非選択側反転増幅器を用いるものとする。
【0029】
行配線の状態の選択状態から非選択状態への切り替えに対し、該非選択状態に切り替えられた行配線の電位に対応する電位のフィードバックを遅延無く行うと、他の非選択行配線に出力する非選択信号にノイズ等の悪影響を及ぼす虞がある。
本実施例では、上記構成を採用することにより、行配線の選択状態から非選択状態への遷移途中における中間電位(ノイズ等を含む電位)のフィードバックを抑制することができる。そして、選択状態から非選択状態への遷移途中の行配線の電位に対応する電位は、他の非選択行配線の電位に対応する電位のみが非選択側反転増幅回路にフィードバックされるため、一定の非選択電位に向かうこととなる(一時的なスイッチ駆動)。そのため、選択状態から非選択状態へ遷移時においても安定して動作できることは明らかである。
【0030】
図9は、本実施例に係る行配線駆動回路の一例を示す図である。上記構成は、例えば、能動素子や受動素子を利用した遅延回路(例えば、RC積分回路(図9(a)の符号9a))を、非選択側反転増幅器に対する帰還ループを導通するためのスイッチの手前に設けることで実現できる。そのような遅延回路は、選択状態から非選択状態へ遷移した行配線の電位が十分に安定した後に、該電位に対応する電位を非選択側反転増幅器へフィードバ
ックするための帰還ループを論理的に導通するように、論理反転する論理回路であってもよい。例えば、図9(b)に示すように、行配線毎に、その行配線とその前後1本の行配線の非選択状態が確認された後に論理反転する3NANDの論理回路9bを用いればよい。なお、中間電位のフィードバックが抑制できれば、状態を参照する行配線の数はいくつでもよい。
【0031】
以上述べたように、本実施形態に係る画像表示装置によれば、非選択状態の行配線の電位に対応する電位をフィードバックすることにより、非選択信号出力回路の出力インピーダンスが低減される。それにより、非選択信号の電位の揺れを抑制することができ、画像表示性能を向上することができる。
【符号の説明】
【0032】
2a 表示パネル
2b 行配線
2c 列配線
2d 表示素子
2e 列配線駆動回路
2f 行配線駆動回路
2h 出力回路
2i 調整回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行配線および複数の列配線を用いて複数の表示素子がマトリクス状に配置された表示パネルと、
複数の行配線を順次選択する行配線駆動回路と、
入力された映像信号に基づいて変調された変調信号を、前記複数の列配線に出力する列配線駆動回路と、
を有し、
前記行配線駆動回路は、
選択状態にする行配線に選択信号を出力する選択信号出力回路と、
非選択状態にする行配線に非選択信号を出力する非選択信号出力回路と、
非選択状態の行配線の電位に対応する電位をフィードバックすることにより、前記非選択信号出力回路の出力インピーダンスを低減する調整回路と、
を有する
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記調整回路は、前記非選択状態の行配線の電位に対応する電位をフィードバックすることにより、該電位を所定の電位に近づける反転増幅器を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記反転増幅器は、複数の行配線に対して1つ設けられており、
前記調整回路は、前記非選択状態の各行配線の電位に対応する電位の合成電位を、前記反転増幅器にフィードバックする
ことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記調整回路は、行配線の状態を選択状態から非選択状態に切り替える際に、該非選択状態に切り替えられた行配線の電位に対応する電位のフィードバックを開始するタイミングを該切り替えのタイミングよりも遅らせる遅延回路を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記非選択信号出力回路は、フレキシブル基板上に形成された導線を介して行配線に非選択信号を出力し、
前記フレキシブル基板上には、複数の行配線に対応する複数の導線が形成されており、
前記複数の導線は、行配線側に向かって互いの間隔が大きくなる斜め配線部を有し、
前記調整回路は、前記斜め配線部よりも行配線側の電位を前記反転増幅器にフィードバックする
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記非選択信号出力回路は、IC内の回路であり、
前記反転増幅器は、前記ICに外付けの部品である
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記調整回路は、前記出力インピーダンスを10Ω以下にする
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−203344(P2011−203344A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68436(P2010−68436)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】