説明

画像表示装置

【課題】取り扱いに不慣れなユーザの操作で装置内部の光学部品などが損傷を受けるなどの不具合が生じることがないようにする。
【解決手段】筐体11に対して出し入れ可能に設けられた可動体12を格納位置と使用位置との間で進退させる進退機構として、第1ラック101と、この第1ラックに噛み合い、モータ66により駆動される第1ギア102とを設け、また光学エンジンユニット13を初期位置と投写位置との間で回動させる回動機構として、光学エンジンユニットを回動させる駆動部材103と、これに一体的に設けられた第2ラック104と、この第1ラックに噛み合い、モータにより第1ギアと連動して駆動される第2ギア105とを設け、可動体が使用位置の近傍に到達すると、ガイド溝117に案内されて第2ラックが第2ギアに噛み合う位置に駆動部材が移動するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン上に画面を投写する光学エンジン部を備えた可動体が筐体に対して出し入れ可能に設けられた画像表示装置およびこれを備えた携帯型情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スクリーン上に画面を投写する投写式の画像表示装置の光源に半導体レーザを用いる技術が注目されている。この半導体レーザは、従来から画像表示装置に多用されてきた水銀ランプに比較して、色再現性がよい点、瞬時点灯が可能である点、長寿命である点、高効率で消費電力を低減することができる点、及び小型化が容易である点など種々の利点を有している。
【0003】
このような半導体レーザを用いた画像表示装置の利点は、携帯型の電子機器に内蔵する場合に都合が良く、例えば半導体レーザを用いた画像表示装置を携帯電話端末に内蔵する技術が知られている(特許文献1参照)。このように画像表示装置を携帯型の電子機器に内蔵すると、必要に応じて画面をスクリーンに拡大表示することができることから、利便性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−316393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、画像表示装置を携帯型の電子機器に内蔵する場合、電子機器の筐体に出し入れ可能に設けて、使用時に電子機器の筐体から引き出す構成とすると利便性を高めることができるが、その一方で、装置の小型化を図る必要があるため、筐体の強度を高めることに限界がある。このため、画像表示装置の出し入れを手動で行うようにすると、画像表示装置の可動部をユーザが手で把持して引き出したり押し込んだりする操作を行うことになり、取り扱いに不慣れなユーザが無理に押し引き操作を行うことで、内部の光学部品が損傷を受けるなどの不具合が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、取り扱いに不慣れなユーザの操作で装置内部の光学部品などが損傷を受けるなどの不具合が生じることがないように構成された画像表示装置およびこれを備えた携帯型情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像表示装置は、筐体と、スクリーン上に画面を投写する光学エンジン部を備え、前記筐体に対して出し入れ可能に設けられた可動体と、この可動体を格納位置と使用位置との間で進退させる進退機構と、この進退機構を駆動するモータと、を有する構成とする。
【0008】
また、本発明の携帯型情報処理装置は、前記の画像表示装置を備え、当該携帯型情報処理装置の本体に形成されたドライブベイに前記画像表示装置が収容されるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動で可動体を格納位置と使用位置との間で進退させるため、可動体を出し入れするために可動体をユーザが手で把持して引き出したり押し込んだりする操作を行う必要がなく、取り扱いに不慣れなユーザの操作で装置内部の光学部品などが損傷を受けることを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による画像表示装置1を携帯型情報処理装置2に内蔵した例を示す斜視図
【図2】光学エンジンユニット13に内蔵される光学エンジン部21の概略構成図
【図3】画像表示装置1の概略構成を示すブロック図
【図4】画像表示装置1を示す斜視図
【図5】画像表示装置1の平面図
【図6】画像表示装置1の下面図
【図7】オートローディング&チルト機構の要部を詳しく示す平面図
【図8】オートローディング&チルト機構の要部を詳しく示す平面図
【図9】オートローディング&チルト機構の要部を詳しく示す平面図
【図10】オートローディング&チルト機構の要部を詳しく示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、筐体と、スクリーン上に画面を投写する光学エンジン部を備え、前記筐体に対して出し入れ可能に設けられた可動体と、この可動体を格納位置と使用位置との間で進退させる進退機構と、この進退機構を駆動するモータと、を有する構成とする。
【0012】
これによると、自動で可動体を格納位置と使用位置との間で進退させるため、可動体を出し入れするために可動体をユーザが手で把持して引き出したり押し込んだりする操作を行う必要がなく、取り扱いに不慣れなユーザの操作で装置内部の光学部品などが損傷を受けることを避けることができる。
【0013】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記可動体は、前記光学エンジン部を構成する投写光学系を少なくとも備えた投写ユニットと、この投写ユニットをヒンジ部を介して上下方向に回動可能に支持する支持ユニットとで構成され、前記投写ユニットを初期位置と投写位置との間で回動させる回動機構をさらに有し、この回動機構が前記進退機構とともに前記モータにより駆動される構成とする。
【0014】
これによると、自動で投写ユニットを初期位置と投写位置との間で回動させるため、投写ユニットをユーザが手で把持して投写ユニットを回動させる操作を行う必要がなく、取り扱いに不慣れなユーザの操作で装置内部の光学部品などが損傷を受けることを避けることができる。
【0015】
また、第3の発明は、前記第2の発明において、前記回動機構は、前記可動体の進退方向となる第1の方向に直交する第2の方向に移動することにより前記投写ユニットを回動させる駆動部材を備え、前記可動体が格納位置から使用位置の近傍までの間に位置する状態では、前記モータの駆動力が前記駆動部材に伝達されず、前記可動体が使用位置の近傍に到達すると、前記モータの駆動力が前記駆動部材に伝達されてその駆動部材が第2の方向に移動するようにした構成とする。
【0016】
これによると、投写ユニットが筐体から抜け出した状態でのみ、駆動部材が投写ユニットを回動させる動作を行うため、投写ユニットが筐体と干渉することを避けることができる。
【0017】
また、第4の発明は、前記第3の発明において、前記進退機構は、第1の方向に延在するように前記筐体側に設けられた第1ラックと、この第1ラックに噛み合い、前記モータにより駆動される第1ギアと、を備え、前記回動機構は、前記駆動部材に設けられた第2ラックと、この第1ラックに噛み合い、前記モータにより前記第1ギアと連動して駆動される第2ギアと、を備え、前記駆動部材は、前記筐体側に設けられたガイド溝に係合する係合部を備え、前記可動体が格納位置から使用位置の近傍までの間に位置する状態では、前記ガイド溝に規制されて前記第2ラックが前記第2ギアに噛み合わない位置に前記駆動部材が保持され、前記可動体が使用位置の近傍に到達すると、前記ガイド溝に案内されて前記第2ラックが前記第2ギアに噛み合う位置に前記駆動部材が移動するようにした構成とする。
【0018】
これによると、可動体の進退動作および投写ユニットの回動動作を円滑に行わせることができる。また、投写ユニットが筐体と干渉しないように、投写ユニットが筐体から抜け出した状態でのみ、駆動部材が投写ユニットを回動させる動作を行うように構成することができる。
【0019】
また、第5の発明は、前記第3若しくは第4の発明において、前記駆動部材は、この駆動部材が第2の方向に移動するのに応じて、前記投写ユニットに設けられた係合部を昇降させるカム部を備えた構成とする。
【0020】
これによると、投写ユニットの係合部が昇降することでヒンジ部を中心にして投写ユニットを円滑に回動させることができる。
【0021】
また、第6の発明は、携帯型情報処理装置に関するものであり、前記第1乃至第5の発明にかかる画像表示装置を備え、当該携帯型情報処理装置の本体に形成されたドライブベイに前記画像表示装置が収容されるようにした構成とする。
【0022】
これによると、携帯型情報処理装置の利便性を高めることができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明による画像表示装置1を携帯型情報処理装置2に内蔵した例を示す斜視図である。携帯型情報処理装置2は、CPUやメモリなどが実装された制御基板(図示せず)などが内蔵された本体部3と、液晶パネルを備えた表示部4とを有し、本体部3と表示部4とがヒンジ部5で連結され、本体部3と表示部4とを重ね合わせた折りたたみ状態として携帯性を高めるようにしている。
【0025】
本体部3の筐体8の上面8aには、キーボード6およびタッチパッド7が設けられている。また、本体部3の筐体8におけるキーボード6の裏面側には、光ディスク装置(ブルーレイディスク、DVDおよびCDなどの光ディスクにおける情報の記録および再生の少なくとも一方を行うもの)などの周辺機器が取り替え可能に収容される収容スペース、いわゆるドライブベイが形成されており、このドライブベイに画像表示装置1が取り付けられている。
【0026】
画像表示装置1は、筐体11と、筐体11に対して出し入れ可能に設けられた可動体12と、を有している。可動体12は、スクリーン15に画面16を投写するための光学部品が収容された光学エンジンユニット(投写ユニット)13と、この光学エンジンユニット13内の光学部品を制御するための基板などが収容された制御ユニット(支持ユニット)14とで構成されている。
【0027】
図2は、光学エンジンユニット13に内蔵される光学エンジン部21の概略構成図である。この光学エンジン部21は、緑色レーザ光を出力する緑色レーザ光源装置22と、赤色レーザ光を出力する赤色レーザ光源装置23と、青色レーザ光を出力する青色レーザ光源装置24と、映像信号に応じて各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光の変調を行う液晶反射型の光変調素子25と、各レーザ光源装置22〜24からのレーザ光を反射させて光変調素子25に照射させるとともに光変調素子25から出射された変調レーザ光を透過させる偏光ビームスプリッタ26と、各レーザ光源装置22〜24から出射されるレーザ光を偏光ビームスプリッタ26に導くリレー光学系27と、偏光ビームスプリッタ26を透過した変調レーザ光をスクリーンに投射する投射光学系28と、を備えている。
【0028】
この光学エンジン部21は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式でカラー画像を表示するものであり、各レーザ光源装置22〜24から各色のレーザ光が時分割で順次出力され、各色のレーザ光による画像が視覚の残像効果によってカラー画像として認識される。
【0029】
リレー光学系27は、各レーザ光源装置22〜24から出射される各色のレーザ光を平行ビームに変換するコリメータレンズ31〜33と、コリメータレンズ31〜33を通過した各色のレーザ光を所要の方向に導く第1および第2のダイクロイックミラー34,35と、ダイクロイックミラー34,35により導かれたレーザ光を拡散させる拡散板36と、拡散板36を通過したレーザ光を収束レーザに変換するフィールドレンズ37と、を備えている。
【0030】
投射光学系28からスクリーンに向けてレーザ光が出射される側を前側とすると、青色レーザ光源装置24から青色レーザ光が後方に向けて出射され、この青色レーザ光の光軸に対して緑色レーザ光の光軸および赤色レーザ光の光軸が互いに直交するように、緑色レーザ光源装置22および赤色レーザ光源装置23から緑色レーザ光および赤色レーザ光が出射され、この青色レーザ光、赤色レーザ光、および緑色レーザ光が、2つのダイクロイックミラー34,35で同一の光路に導かれる。すなわち、青色レーザ光と緑色レーザ光が第1のダイクロイックミラー34で同一の光路に導かれ、青色レーザ光および緑色レーザ光と赤色レーザ光が第2のダイクロイックミラー35で同一の光路に導かれる。
【0031】
第1および第2のダイクロイックミラー34,35は、表面に所定の波長のレーザ光を透過および反射させるための膜が形成されたものであり、第1のダイクロイックミラー34は、青色レーザ光を透過するとともに緑色レーザ光を反射させる。第2のダイクロイックミラー35は、赤色レーザ光を透過するとともに青色レーザ光および緑色レーザ光を反射させる。
【0032】
これらの各光学部材は、筐体41に支持されている。この筐体41は、各レーザ光源装置22〜24で発生した熱を放熱する放熱体として機能し、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0033】
緑色レーザ光源装置22は、側方に向けて突出した状態で筐体41に形成された取付部42に取り付けられている。この取付部42は、リレー光学系27の収容スペースの前方と側方にそれぞれ位置する前壁部43と側壁部44とが交わる角部から側壁部44に直交する向きに突出した状態で設けられている。赤色レーザ光源装置23は、ホルダ45に保持された状態で側壁部44の外面側に取り付けられている。青色レーザ光源装置24は、ホルダ46に保持された状態で前壁部43の外面側に取り付けられている。
【0034】
赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、いわゆるCANパッケージで構成され、レーザ光を出力するレーザチップが、ステムに支持された状態で缶状の外装部の中心軸上に光軸が位置するように配置されたものであり、外装部の開口に設けられたガラス窓からレーザ光が出射される。この赤色レーザ光源装置23および青色レーザ光源装置24は、ホルダ45,46に開設された取付孔47,48に圧入するなどしてホルダ45,46に対して固定される。青色レーザ光源装置24および赤色レーザ光源装置23のレーザチップの発熱は、ホルダ45,46を介して筐体41に伝達されて放熱され、各ホルダ45,46は、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で形成されている。
【0035】
緑色レーザ光源装置22は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザ51と、半導体レーザ51から出力された励起用レーザ光を集光する集光レンズであるFAC(Fast-Axis Collimator)レンズ52およびロッドレンズ53と、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光(赤外レーザ光)を出力する固体レーザ素子54と、基本レーザ光の波長を変換して半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力する波長変換素子55と、固体レーザ素子54とともに共振器を構成する凹面ミラー56と、励起用レーザ光および基本波長レーザ光の漏洩を阻止するガラスカバー57と、各部を支持する基台58と、各部を覆うカバー体59と、を備えている。
【0036】
この緑色レーザ光源装置22は、基台58を筐体41の取付部42に取り付けて固定され、緑色レーザ光源装置22と筐体41の側壁部44との間に所要の幅(例えば0.5mm以下)の間隙が形成される。これにより、緑色レーザ光源装置22の熱が赤色レーザ光源装置23に伝わりにくくなり、赤色レーザ光源装置23の昇温を抑制して、温度特性の悪い赤色レーザ光源装置23を安定的に動作させることができる。また、赤色レーザ光源装置23の所要の光軸調整代(例えば0.3mm程度)を確保するため、緑色レーザ光源装置22と赤色レーザ光源装置23との間に所要の幅(例えば0.3mm以上)の間隙が設けられている。
【0037】
図3は、画像表示装置1の概略構成を示すブロック図である。画像表示装置1の制御部61は、各色のレーザ光源装置22〜24を制御するレーザ光源制御部62と、携帯型情報処理装置2から入力される映像信号に基づいて光変調素子25を制御する光変調素子制御部63と、携帯型情報処理装置2から供給される電力をレーザ光源制御部62および光変調素子制御部63に供給する電源部64と、各部を総括的に制御する主制御部65と、を有している。この制御部61は、制御ユニット14に設けられている。
【0038】
制御ユニット14には、後に詳しく説明するオートローディング&チルト機構を構成するモータ66と、このモータ66を駆動するモータ駆動回路67とが設けられている。また、オートローディング&チルト機構を操作する操作スイッチ68が、筐体11の前面側を覆う前面パネル69に設けられており(図1参照)、この操作スイッチ68の出力信号が主制御部65に入力され、操作スイッチ68の操作に応じてモータ66が動作する。
【0039】
画像表示装置1の筐体11(図4を併せて参照されたい)には、携帯型情報処理装置2から電力を供給するための給電線および携帯型情報処理装置2から映像信号を送信するための信号線が接続されるインタフェイス部71が設けられており、このインタフェイス部71と制御ユニット14とが配線ケーブル72で結ばれている。この配線ケーブル72は、可撓性を有し、筐体11に対して可動体12を出し入れする際には、制御ユニット14に追随するように屈曲変形する。
【0040】
また、制御ユニット14と光学エンジンユニット13とは配線ケーブル73で結ばれている。この配線ケーブル73は、制御部81内の各部と光学エンジン部21内の各部との間で信号を送受するための信号線や、冷却ファンなどに電力を供給する給電線で構成されている。この配線ケーブル73も、可撓性を有し、制御ユニット14に対して光学エンジンユニット13を回動させる際には、光学エンジンユニット13の回動に伴って配線ケーブル73が屈曲変形する。
【0041】
なお、ここでは、制御部81を制御ユニット14に設けたが、この制御部81の一部、例えば電源部84を、インタフェイス部71とともに筐体11側に設けるようにしてもよい。
【0042】
図4は、画像表示装置1を示す斜視図であり、図4(A)に、可動体12を筐体11内に格納した格納状態を、図4(B)に、可動体12を筐体11から引き出した使用状態をそれぞれ示している。
【0043】
可動体12を構成する光学エンジンユニット13および制御ユニット14の各筐体は、高さ方向の寸法が短い扁平な箱形状をなしている。筐体11内には、制御ユニット14の各筐体の両側縁部を支持するガイドレール81が設けられており、このガイドレール81に沿って制御ユニット14がスライドすることで、矢印Aで示すように、可動体12が、筐体11内に格納された格納位置と、筐体11から抜け出した使用位置との間で進退させることができる。
【0044】
制御ユニット14の筐体82は、光学エンジンユニット13に対して幅方向に隣接する筐体部分82aと、光学エンジンユニット13に対して前後方向の後側に隣接する筐体部分82bとを有し、全体としてL字形状をなしており、制御ユニット14の筐体部分82aと光学エンジンユニット13とがヒンジ部83を介して連結されている。ヒンジ部83の回動軸は、前後方向、すなわち可動体12の出し入れ方向に配置されている。
【0045】
光学エンジンユニット13におけるヒンジ部83と相反する側の端部には出射窓84が設けられており、この出射窓84から光学エンジン部21の投射光学系28(図2参照)を通過したレーザ光が出射される。
【0046】
図4(B)に示す使用状態では、制御ユニット14が筐体11のガイドレール81に支持される一方で、光学エンジンユニット13は筐体11から完全に抜け出し、矢印Bで示すように、光学エンジンユニット13を、ヒンジ部83を中心にして、制御ユニット14と平行になった初期位置と、出射窓84を斜め上方に向けた投写位置との間で上下方向に回動させることができる。
【0047】
図1に示したように、画像表示装置1の収容スペースは、携帯型情報処理装置2の筐体8の側面に開口しており、携帯型情報処理装置2の筐体8の側面に対して略直交する向きに可動体12を出し入れする構成となっている。画像表示装置1の筐体11は携帯型情報処理装置2の筐体8に収容され、使用状態では光学エンジンユニット13と制御ユニット14の一部が、携帯型情報処理装置2の筐体8の側方に突出した状態となる。携帯型情報処理装置2はその背面面がスクリーン15に正対するように配置され、これにより光学エンジンユニット13に設けられた出射窓84をスクリーン15に正対させることができる。
【0048】
次に、本画像表示装置1のオートローディング&チルト機構について説明する。図5は、画像表示装置1の平面図である。図6は、画像表示装置1の下面図である。図7、図8、図9は、オートローディング&チルト機構の要部を詳しく示す平面図であり、オートローディング&チルト機構の遷移状態を段階的に示す。図10は、オートローディング&チルト機構の要部を詳しく示す斜視図である。なお、図5、図10では、筐体11や制御ユニット14の筐体を透視してその内部に設けられた部品を示している。
【0049】
本画像表示装置1は、制御ユニット14と光学エンジンユニット13とからなる可動体12を、筐体11内に格納された格納位置から、筐体11から抜け出した使用位置に自動で前進させるオートローディングと、光学エンジンユニット13を、制御ユニット14と平行になった初期位置から、所定の投写角度(例えば20度)に傾いた投写位置に自動で回動させるオートチルトとを実現するオートローディング&チルト機構を備えている。
【0050】
このオートローディング&チルト機構は、図7に示すように、モータ66と、筐体11に対して可動体12を出し入れする第1の方向に延在する第1ラック101と、この第1ラック101に噛み合う第1ギア102と、第1の方向に直交する第2の方向に移動可能に設けられた駆動部材103と、この駆動部材103に一体的に設けられた第2ラック104に噛み合う第2ギア105と、を有している。
【0051】
図5に示すように、第1ラック101は、筐体11側にガイドレール81に沿うように設けられている。第1ギア102と駆動部材103と第2ギア105とは、モータ66ともに、制御ユニット14の筐体82において光学エンジンユニット13に対して前後方向の後側に隣接する筐体部分82bに設けられている。
【0052】
図7に示したように、第1ラック101と第1ギア102とは、可動体12を格納位置と使用位置との間で進退させる進退機構を構成し、モータ66の出力軸に設けられたウォームギア107が第1ギア102にかみ合うことで、モータ66により第1ギア102が回転駆動され、これに応じて可動体12が第1の方向に進退する。ここで、モータ66を正転させると、可動体12が使用位置に向けて前進し、モータ66を逆転させると、可動体12が格納位置に向けて後退する。
【0053】
駆動部材103と第2ギア105とは、光学エンジンユニット13を初期位置と投写位置との間で回動させる回動機構を構成し、第1ギア102に同軸的かつ一体的に設けられた中間ギア108が第2ギア105にかみ合うことで、モータ66により第1ギア102と連動して第2ギア105が回転駆動され、このとき、モータ66の回転力が減速されて第2ギア105に伝達される。
【0054】
駆動部材103は、図10に示すように、光学エンジンユニット13に設けられた突起(係合部)111が係合するカム部112を備えている。このカム部112には、突起111が嵌入するカム溝113が形成されている。カム溝113は、ヒンジ部83と離反する側に向かって高くなるように傾斜した傾斜部113aを有し、その両端には駆動部材103の移動方向、すなわち第2の方向に平行となる平行部113b,113cが設けられている。
【0055】
光学エンジンユニット13の突起111が平行部113b,113cに位置する状態では、駆動部材103が第2の方向に移動しても光学エンジンユニット13は回動しないが、突起111が傾斜部113aに位置する状態では、駆動部材103が第2の方向に移動するのに応じて突起111が昇降し、これに伴って光学エンジンユニット13がヒンジ部83を中心にして回動する。ここで、モータ66を正転させると、光学エンジンユニット13が投射位置に向けて上向きに回動し、モータ66を逆転させると、光学エンジンユニット13が初期位置に向けて下向きに回動する。
【0056】
駆動部材103は、図7に示したように、下面側に複数(ここでは2つ)の突起(係合部)115を備えている。この突起115は、制御ユニット14の筐体82に形成された長孔116に嵌り合う。長孔116は、第2の方向に長く形成されており、これにより駆動部材103が第2の方向にのみ移動するように規制され、駆動部材103の長手方向に設けられた第2ラック104が第2の方向に延在するように配置される。
【0057】
駆動部材103の突起115は、制御ユニット14の筐体82に形成された長孔116を通って、筐体11に形成された複数(ここでは2つ)のガイド溝117に嵌り合う。このガイド溝117は、図6に示すように、第1の方向に延在する第1部分117aと、第2の方向に延在する第2部分117bと、第1および第2の方向に対して傾斜した方向に延在する傾斜部分117cと、を有している。
【0058】
可動体12が格納位置から使用位置の近傍までの間に位置する状態では、図7に示すように、駆動部材103の突起115がガイド溝117の第1部分117aに位置し、この状態では、駆動部材103が、ガイド溝117の第1部分117aに規制されて第2の方向に移動することができず、第1の方向に進退する制御ユニット14の筐体82とともに第1の方向に移動する。このとき、駆動部材103は、第2ラック104が第2ギア105に噛み合わない位置に保持され、モータ66により第1ギア102と連動して回転する第2ギア105は空転状態となる。
【0059】
一方、可動体12が使用位置に到達した状態では、図9に示すように、駆動部材103の突起115がガイド溝117の第2部分117bに位置し、この状態では、駆動部材103が、ガイド溝117の第2部分117bに規制されて第2の方向にのみ移動することができ、このとき、駆動部材103の第2ラック104が第2ギア105に噛み合う状態となっている。このため、モータ66により第2ギア105が回転駆動されることで駆動部材103が第2の方向に移動して、光学エンジンユニット13を回動させる動作を行う。
【0060】
また、可動体12が使用位置の近傍に位置する状態では、図8に示すように、駆動部材103の突起115がガイド溝117の傾斜部分117cに位置し、この状態では、駆動部材103が、ガイド溝117の傾斜部分117cに案内されて駆動部材103の第2ラック104が第2ギア105に噛み合う位置に向けて第2の方向に移動する。駆動部材103が、第2ラック104が第2ギア105に噛み合う位置に到達すると、第1ギア102と第1ラック101との噛み合いが解除され、可動体12の進退動作から光学エンジンユニット13の回動動作に切り替わる。
【0061】
ここでは、第1ギア102と第1ラック101との噛み合った状態では、ガイド溝117の傾斜部分117cにより、制御ユニット14とともに駆動部材103を第1の方向に進退させる運動が駆動部材103を第2の方向に移動させる運動に変換され、駆動部材103の第2ラック104が第2ギア105に噛み合った状態では、ガイド溝117の傾斜部分117cにより、駆動部材103を第2の方向に進退させる運動が制御ユニット14を第1の方向に進退させる運動に変換される。
【0062】
以上、画像表示装置1を使用する場合に、モータ66を正転させて、可動体12を格納位置から使用位置に前進させる動作に続いて、光学エンジンユニット13を初期位置から投写位置に回動させる動作を行わせる状況について主に説明したが、逆に画像表示装置1を格納する場合には、モータ66を逆転させればよく、この場合、光学エンジンユニット13を投写位置から初期位置に戻す動作に続いて、可動体12を使用位置から格納位置に戻す動作が行われる。
【0063】
このように構成された画像表示装置1では、自動で可動体12を格納位置と使用位置との間で進退させるとともに、光学エンジンユニット13を初期位置と投写位置との間で回動させるため、可動体12をユーザが手で把持して引き出したり押し込んだりする操作を行う必要がなく、取り扱いに不慣れなユーザの操作で装置内部の光学部品などが損傷を受けることを避けることができる。そして、また、ユーザは操作スイッチ68を操作するだけで済むため、使い勝手が向上する。
【0064】
また、ユーザが手動で可動体12を格納する場合には、光学エンジンユニット13を初期位置に戻すことを忘れて、光学エンジンユニット13が投写位置のままで可動体12を押し込むことで、光学エンジンユニット13が携帯型情報処理装置2の側面に衝突することがあるが、本実施形態では、可動体12を使用位置から格納位置に戻す復帰動作の前に、光学エンジンユニット13を初期位置に戻す復帰動作が自動で行われるため、光学エンジンユニット13の衝突を防止することができる。
【0065】
また、イジェクトロック機構、すなわちイジェクトボタンの押下操作に応じてロックが解除されて画像表示装置の可動体を引き出すことができるようにしたものでは、振動や衝撃でロックが解除されて可動体が飛び出すおそれがあるが、本実施形態では、モータに連結されたギアがラックに噛み合うため、振動や衝撃が作用しても可動体が動くことはない。このため、携帯型情報処理装置をカバンに収納して持ち歩くような場合に、振動や衝撃で可動体が飛び出すことを防止することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、カム溝113を駆動部材103に設けるとともに、カム溝113に係合する突起111を光学エンジンユニット13側に設ける構成としたが、この逆、すなわちカム溝を光学エンジンユニット13側に設けるとともに、突起を駆動部材103に設ける構成も可能である。
【0067】
また、本実施形態では、光学エンジンユニット13が自動で所定の投写角度に設定されるものとしたが、操作スイッチ68の操作などでモータ66を所要の方向に回転させて投写角度を微調整することができるように構成してもよい。
【0068】
また、本実施形態では、操作スイッチ68を操作することでオートローディング&チルト機構が動作するようにしたが、携帯型情報処理装置2のキーボード6などの入力デバイスを用いて携帯型情報処理装置2側からオートローディング&チルト機構の動作を指示するようにしてもよい。また、格納状態に復帰させる場合に、光学エンジンユニット13などをユーザが手で押すと、これをセンサが検知して復帰動作を開始する構成とすることも可能である。
【0069】
また、本実施形態では、画像表示装置1を携帯型情報処理装置2に内蔵した例を示したが、他の携帯型の情報端末装置などの電子機器に内蔵することも可能である。また、本実施形態では、携帯型情報処理装置2の収容スペースに、画像表示装置1が光ディスク装置と取り替え可能に収容される構成としたが、携帯型情報処理装置などの電子機器に光ディスク装置などの他の装置と取り替えできない状態で収容される構成も可能である。
【0070】
また、本実施形態では、投写角度を上下方向に変化させるために回動可能に設けられる投写ユニットを、光学エンジン部全体が収容される光学エンジンユニットとしたが、本発明における投写ユニットは、光学エンジン部の一部である投写光学系を少なくとも備えた構成であればよく、例えば投写光学系を構成するミラーで投写角度を変化させる構成も可能である。
【0071】
また、本実施形態では、可動体の進退動作(オートローディング)と、投写ユニットの回動動作(オートチルト)とを自動で行わせるものとしたが、可動体の進退動作のみを自動で行わせ、投写ユニットの回動動作はユーザが手動で行うようにしてもよい。この場合、フリーストップヒンジを用いることで、任意の投写角度に調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明にかかる画像表示装置およびこれを備えた携帯型情報処理装置は、取り扱いに不慣れなユーザの操作で装置内部の光学部品などが損傷を受けるなどの不具合が生じることがない効果を有し、スクリーン上に画面を投写する光学エンジン部を備えた可動体が筐体に対して出し入れ可能に設けられた画像表示装置およびこれを備えた携帯型情報処理装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 画像表示装置
2 携帯型情報処理装置
11 筐体
12 可動体
13 光学エンジンユニット(投写ユニット)
14 制御ユニット(支持ユニット)
21 光学エンジン部
66 モータ
68 操作スイッチ
101 第1ラック
102 第1ギア
103 駆動部材
104 第2ラック
105 第2ギア
111 突起(係合部)
112 カム部
113 カム溝、113a 傾斜部、113b,113c 平行部
115 突起(係合部)
116 長孔117 ガイド溝、117a 第1部分、117b 第2部分、117c 傾斜部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
スクリーン上に画面を投写する光学エンジン部を備え、前記筐体に対して出し入れ可能に設けられた可動体と、
この可動体を格納位置と使用位置との間で進退させる進退機構と、
この進退機構を駆動するモータと、を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記可動体は、前記光学エンジン部を構成する投写光学系を少なくとも備えた投写ユニットと、この投写ユニットをヒンジ部を介して上下方向に回動可能に支持する支持ユニットとで構成され、
前記投写ユニットを初期位置と投写位置との間で回動させる回動機構をさらに有し、この回動機構が前記進退機構とともに前記モータにより駆動されることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記回動機構は、前記可動体の進退方向となる第1の方向に直交する第2の方向に移動することにより前記投写ユニットを回動させる駆動部材を備え、
前記可動体が格納位置から使用位置の近傍までの間に位置する状態では、前記モータの駆動力が前記駆動部材に伝達されず、前記可動体が使用位置の近傍に到達すると、前記モータの駆動力が前記駆動部材に伝達されてその駆動部材が第2の方向に移動するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記進退機構は、第1の方向に延在するように前記筐体側に設けられた第1ラックと、この第1ラックに噛み合い、前記モータにより駆動される第1ギアと、を備え、
前記回動機構は、前記駆動部材に設けられた第2ラックと、この第1ラックに噛み合い、前記モータにより前記第1ギアと連動して駆動される第2ギアと、を備え、
前記駆動部材は、前記筐体側に設けられたガイド溝に係合する係合部を備え、
前記可動体が格納位置から使用位置の近傍までの間に位置する状態では、前記ガイド溝に規制されて前記第2ラックが前記第2ギアに噛み合わない位置に前記駆動部材が保持され、前記可動体が使用位置の近傍に到達すると、前記ガイド溝に案内されて前記第2ラックが前記第2ギアに噛み合う位置に前記駆動部材が移動するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記駆動部材は、この駆動部材が第2の方向に移動するのに応じて、前記投写ユニットに設けられた係合部を昇降させるカム部を備えたことを特徴とする請求項3若しくは請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の画像表示装置を備え、当該携帯型情報処理装置の本体に形成されたドライブベイに前記画像表示装置が収容されるようにしたことを特徴とする携帯型情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−189852(P2012−189852A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53934(P2011−53934)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【特許番号】特許第4891443号(P4891443)
【特許公報発行日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】