説明

画像表示装置

【課題】信号電位の変動を抑制して画質の改善を図る。
【解決手段】水平駆動回路3は、水平周期ごとに画像データに応じた信号電圧を各信号線SLに供給する。垂直駆動回路4は、水平周期ごとに制御信号WSを走査線WSに印加して対応する行の画素2を選択する。選択された画素2は、信号線SLに供給された信号電圧に応じてその階調が変化する。各信号線SLには補完容量Csubが接続しており、水平駆動回路3側又は画素2側の動作の影響を受けて信号線SLに供給した信号電圧が変動する現象を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス型の画像表示装置に関する。より詳しくは、画像表示装置の画質を改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型の画像表示装置は、行状に配された走査線と、列状に配された信号線と、各信号線及び走査線が交差する部分に配され階調が変化する画素と、各信号線に接続する水平駆動回路と、各走査線に接続する垂直駆動回路とからなる。水平駆動回路は、所定の水平周期(1H)ごとに画像データに応じた信号電圧を各信号線に供給する。垂直駆動回路は、水平周期ごとに制御信号を1つの走査線に印加して対応する行の画素を選択する。選択された画素は、信号線に供給された信号電圧に応じてその階調が変化し、以って画像を表示する。典型的には各画素が発光素子を有しており、信号電圧に応じて発光素子の輝度階調が変化する。かかる構成を有する画像表示装置は、例えば以下の特許文献1〜5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−255856
【特許文献2】特開2003−271095
【特許文献3】特開2004−133240
【特許文献4】特開2004−029791
【特許文献5】特開2004−093682
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各画素の輝度階調は信号線に供給された信号電圧により決まる。しかしながら、信号線の信号電位は必ずしも安定ではなく、画素側あるいは水平駆動回路側の動作の影響を受けて変動する。信号電位の変動はばらつきがあり、画質に悪影響を与えるため、解決すべき課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した従来の技術の課題に鑑み、本発明は信号電位の変動を抑制して画質の改善を図ることを目的とする。かかる目的を達成するために以下の手段を講じた。即ち本発明は、行状に配された走査線と、列状に配された信号線と、各信号線及び走査線が交差する部分に配され変化する階調を有する画素と、各信号線に接続する水平駆動回路と、各走査線に接続する垂直駆動回路とからなり、前記水平駆動回路は、所定の水平周期ごとに画像データに応じた信号電圧を各信号線に供給し、前記垂直駆動回路は、水平周期ごとに制御信号を一つの走査線に印加して対応する行の画素を選択し、選択された画素は、該信号線に供給された信号電圧に応じてその階調が変化する画像表示装置であって、各信号線には補完容量が接続しており、該水平駆動回路側又は該画素側の動作の影響を受けて該信号線に供給した信号電圧が変動する現象を抑制することを特徴とする。
【0006】
一態様では、前記水平駆動回路は、水平スイッチを介して各信号線に接続しており、水平周期ごとに該水平スイッチを開閉動作して信号電圧を各信号線に供給し、前記補完容量は、該水平スイッチの開閉動作により生じる該信号電圧の変動を抑制する。他の態様では、前記画素は、サンプリングスイッチと画素容量とを有しており、該サンプリングスイッチは、信号線と画素容量との間に接続し、前記水平駆動回路は、該水平周期で各信号線に信号電圧を供給した後、各信号線を電気的に水平駆動回路から切り離し、その後前記垂直駆動回路は、該制御信号を出力して対応する行の画素を選択し、選択された行の画素のサンプリングスイッチは該制御信号に応じてオンし信号線から信号電圧を取り込んで該画素容量に保持する書込み動作を行い、前記補完容量は、該サンプリングスイッチの書込み動作中に生じる該信号電圧の変動を抑制する。別の態様では、前記画素は、サンプリングスイッチと補正回路とを有しており、該サンプリングスイッチは、制御信号に応じてオンし信号線から信号電圧を取り込み、該補正回路は、取り込まれた該信号電圧の補正動作を行い、前記補完容量は、該補正動作により生じる信号電圧の変動を抑制する。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる画像表示装置は、各信号線に配線容量のほか積極的に補完容量を接続している。この補完容量はノイズに対する信号線の耐性を高めることが出来る。これにより、水平駆動回路側または画素側の動作の影響を受けて信号線の電位が変動する現象を抑制することが出来る。信号電位のばらつきが小さくなるので、画質を改善することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一般的な画像表示装置の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示した画像表示装置の回路接続図である。
【図3】図1に示した画像表示装置の動作説明に供するタイミングチャートである。
【図4】一般的な画像表示装置の他の例を示すブロック図である。
【図5】図4に示した画像表示装置の配線図である。
【図6】図4に示した画像表示装置の動作説明に供するタイミングチャートである。
【図7】信号電位の第1変動要因を示す模式図である。
【図8】信号電位の第2変動要因を示す模式図である。
【図9】信号電位の第3変動要因を示す模式図である。
【図10】本発明の原理を表した模式図である。
【図11】本発明にかかる画像表示装置の回路構成とデバイス構成を対比した模式図である。
【図12】本発明にかかる画像表示装置に形成される補完容量の一例を示す模式図である。
【図13】同じく補完容量の他の例を示す模式図である。
【図14】同じく補完容量の別の例を示す模式図である。
【図15】本発明にかかる画像表示装置の実施例の全体構成を示すブロック図である。
【図16】図15に示した画像表示装置に含まれる画素の構成を示す回路図である。
【図17】図15及び図16に示した画像表示装置の動作説明に供する模式図である。
【図18】同じく動作説明に供するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、一般的なアクティブマトリクス型画像表示装置の一例を表す模式的な平面図であり、特に線順次駆動方式を採用した画像表示装置を表している。図示する様に、この画像表示装置は、全体としてフラットなパネル0で構成されている。このフラットパネル0の上に、画素アレイ1とセレクタ3とスキャナ4とが集積形成されている。パネル0は接続端子11を有しており、外部のシステムと接続される。パネル0は外部のシステムから画像データdata、クロック信号VCK、イネーブル信号ENBなどパネル0の動作に必要な信号の供給を受ける。
【0010】
画素アレイ1は、行状に配された走査線WSと、列状に配された信号線SLと、各信号線SL及び走査線WSが交差する部分に配され変化する階調を有する画素2とで構成されている。
【0011】
セレクタ3は水平駆動回路を構成しており、各信号線SLに接続している。一方スキャナ4は垂直駆動回路を構成しており、各走査線WSに接続している。セレクタ3は、水平周期(1H)毎に画像データdataに応じた信号電圧Vsigを各信号線SLに供給する。スキャナ4は、水平周期ごとに制御信号Vを1つの走査線WSに印加して対応する行の画素2を選択する。選択された画素2は、信号線SLに供給された信号電圧Vsigに応じてその階調が変化する。なお図では、n行目の走査線WSに供給される制御信号をV(n)で表してある。また緑色の画素に供給される信号電圧をVsig_Gで表している。特にn列目の信号線SLに供給される信号電圧はVsig_G(n)で表してある。
【0012】
個々の画素2は、サンプリングトランジスタTr1とドライブトランジスタTrdと発光素子ELとで構成されている。サンプリングトランジスタTr1のゲートは対応する走査線WSに接続し、ソースは対応する信号線SLに接続し、ゲートは対応するドライブトランジスタTrdのゲートに接続している。ドライブトランジスタTrdのドレインは電源ラインVccに接続し、ソースは発光素子ELのアノードに接続している。発光素子ELのカソードは接地電位Vcathに接続している。
【0013】
図2は、セレクタ3と画素アレイ1の接続関係を示す回路図である。画素アレイ1側は、RGB3画素で1つのトリオを構成しており、これが順に配列している。これに対しスキャナ3は1つの画素トリオに対応して3個の水平スイッチHSWが配列している。3個1組の水平スイッチHSWの内、左側のHSWはそのオン/オフがゲート信号sel1及びxsel1で制御される。このHSWの入力側には画像データdata(n)が供給され、出力側は信号線SLに接続している。このHSWがゲート信号sel1及びxsel1に応じてオンしたとき、画像データdata(n)が出力側の信号線SLに供給される。このときの信号線の電位はVsig−R(n)となる。なおRは赤色画素に割り当てられる信号電位をあらわしている。同様に中央のHSWは画像データdata(n)をサンプリングして対応する信号線にVsig_G(n)を供給する。右側のHSWは同じく画像データdata(n)を取り込んで、対応する信号線SLに信号電圧Vsig_B(n)を供給する。なおBは赤色画素に供給される信号電圧を表している。図では理解を容易にするため画像データdataと信号電圧Vsigは同じ電圧信号として単純に表している。説明の都合上本明細書は、信号線に供給される前の信号電圧をdataで表し、信号線に供給された後の電圧信号をVsigで表している。したがってVsigは信号線SLの実際の信号電位を表しており、種々の要因により変動する。一方dataはソースドライバ(図示せず)から供給され、安定した電圧信号である。
【0014】
図3は、図1及び図2に示した線順次方式の画像表示装置の動作説明に供するタイミングチャートである。スキャナ4はシフトレジスタで構成されており、外部システムから供給されたクロック信号VCK及びイネーブル信号ENBに応じて水平周期(1H)毎動作し、同じく外部システムから供給されたスタート信号(図示せず)を順次転走して、シフト信号vsr(n)を出力する。スキャナ4はさらに出力段のゲート回路を備えており、シフト信号vsr(n)をイネーブル信号ENBで処理して、最終的な制御信号V(n)を各走査線WSに出力する。
【0015】
一方ソースドライバは水平周期ごとRGBに時分割された画像データdataをセレクタ3に供給する。セレクタ3はdataRが入力されたタイミングでゲート信号sel1がハイレベルとなり、水平スイッチHSWの内R画素に対応したHSWが一斉に開く。これにより、dataRが一斉に選択された行の各R画素に書き込まれる。続いてdataGが入力されたタイミングでゲート信号sel2がハイレベルとなり、G画素に対応した水平スイッチHSWが一斉にオンし、dataGが対応する信号線SLに供給される。続いてdataBがソースドライバから入力するタイミングで、ゲート信号sel3がハイレベルとなり、B画素に対応するHSWが一斉にオンして、対応する信号線SLにdataBをサンプリングする。
【0016】
図4は、アクティブマトリクス型画像表示装置の他の例を示す模式的な回路図であり、特にアナログ点順次方式の画像表示装置を表している。図1に示したセレクタ線順次方式の画像表示装置と異なる点は、セレクタ3に代えてHスキャナ3aを用いていることである。なおこれとの対照でスキャナ4は特にVスキャナと記載してある。Hスキャナ3aは水平駆動回路を構成し、Vスキャナ4は垂直駆動回路を構成している。
【0017】
図5は、Hスキャナ3aと画素アレイ1の接続関係を示す回路図である。Hスキャナ3aはRGB3画素1組のトリオに対応して、3個1組の水平スイッチHSWを有している。水平スキャナ3aはさらに3個1組のHSWを順次オンオフ制御するため、シフトレジスタSRを有している。このシフトレジスタSRは、外部システムから供給されるクロック信号HCKに応じて動作し、各段ごと順に制御信号H(n)を出力して、対応するHSWのオンオフを制御する。
【0018】
3個1組のHSWの内、左側のHSWは入力側に画像データdataRが供給され、出力側はR画素に割り当てられている信号線SLに接続している。左側のHSWは信号電圧dataRをサンプリングして、対応する信号線SLに供給する。このときの電位をVsig_R(n)で表している。同様にして中央のHSWはdataGをサンプリングして対応する信号線SLの電位をVsig_G(n)にする。右側のHSWはdataBを取り込んで対応する信号線の電位をVsig_B(n)にする。
【0019】
図6は、図4及び図5に示したVスキャナ及びHスキャナの動作説明に供するタイミングチャートである。Vスキャナ4はVCK及びENBに応じて動作し、順次制御信号V(n−1)、V(n)、V(n+1)を対応する走査線WSに出力する。これにより、1水平周期で1行分の画素が順次選択される。
【0020】
一方Hスキャナ3aはクロック信号HCKに応じて動作し、順次水平制御信号H(1)、H(2)、H(3)・・・を出力する。これにより、水平スイッチHSWが点順次でオンし、dataB,R,Gが点順次で対応する信号線SLに供給され、さらに選択された行の画素に順次書き込まれていく。以上の説明から明らかなように、セレクタ線順次方式の画像表示装置は、1行単位で一斉に信号電圧を書き込んでいく。この為ソースドライバが別途必要である。ソースドライバはパネル0の外でCOGやCOF構成とすることが出来る。あるいはソースドライバをパネル0の内部に組み込むことも出来る。一方アナログ点順次方式の画像表示装置はセレクタに代えてHスキャナを用い、各水平周期内で順次信号電圧を選択された行の画素に書き込んでいくタイプである。即ちR/G/Bのアナログ入力によって描画を行うタイプである。ここで、セレクタ線順次方式及びアナログ点順次方式共に、画像データdataを供給するデータ線とその先で分岐した信号線とが、水平スイッチHSWによって接続される構成になっている。HSWのオンオフタイミングは異なるが、それ以外の動作はセレクタ線順次とアナログ点順次とで同じである。
【0021】
データ線から水平スイッチHSW通って信号線に供給された信号電圧Vsigの変動をもたらす要因が、大別して3つ挙げられる。図7は、第1の要因を表す模式図である。図示する様に、画像データdataを供給するデータ線がHSWを介して信号線SLに接続している。この信号線SLの電位をVsigで表し、配線容量をCsigで表している。HSWは互いに逆極性のゲート信号hsw,xhswでオンオフ制御される。前述したセレクタ線順次方式の場合、ゲート信号hswはsel(n)である。またアナログ点順次方式の場合、ゲート信号hswはH(n)して与えられる。HSWは通常CMoSトランジスタで構成されており、ゲートとドレインとの間に寄生容量Chswを有する。
【0022】
一方画素2は基本的にサンプリングトランジスタTr1とドライブトランジスタTrdと発光素子ELとで構成されている。通常画素2はドライブトランジスタTrdの閾電圧や移動度のばらつきの影響を除くため、補正回路2aを備えている。
【0023】
図7に示した第1の要因では、HSWのゲート信号hsw,xhswからの飛込みが信号線SLの信号電位Vsigに影響を与える。理想的には、dataで規定される電位(data電位)と信号線電位Vsigは等しくなる必要がある。しかし実際にはHSWのゲート信号からの飛込みがあり、図示する様にVsigがΔVhだけデータ電位からずれてしまう。この信号線SLへの飛び込み変動量は、ΔVh=Vhsw×Chsw/(Chsw+Csig)で与えられる。ここでVhswはゲート信号hswの振幅である。飛込みによる変動分ΔVhはHSWを構成するCMoSトランジスタ双方からの飛び込みの和である。この飛込みによる変動分ΔVhは信号線SL毎にばらつくため、画質劣化の原因となる。
【0024】
図8は、Vsigの第2の変動要因を示す模式図である。この模式図の左側に示すように、データ線はHSWを介して信号線SLに接続している。信号線SLには画素2が接続している。HSWはデータ電圧dataを信号線SLに書き込んだ後、ゲート信号hsw=LO,xhsw=HIとなってオフする。一方画素2側では走査線WSに供給される制御信号がHIとなってサンプリングトランジスタTr1がオンし、信号線SLからVsigを取り込んでドライブトランジスタTrdのゲートGに供給する。ドライブトランジスタTrdはVsigに応じソースSから駆動電流を発光素子ELに流す。このとき補正回路2aはドライブトランジスタTrdの閾電圧や移動度のばらつきを補正するため、取り込んだ信号電位Vsigに補正処理を施す。この関係でドライブトランジスタTrdのソースSの電位は変動する。
【0025】
図8の右側は、図8の左側に示した構成の等価回路図である。図示する様に、HSWはOFFで、サンプリングトランジスタTr1はオン抵抗で表してある。また補正回路2aは単純な保持容量Csで模式的に表してある。この保持容量CsはドライブトランジスタTrdのゲートGとソースSとの間に接続されている。信号線SLに書き込まれた信号電位VsigはサンプリングトランジスタTr1を介して保持容量Csに保持され、ドライブトランジスタTrdのゲートGは所定の電位VG0に固定される。理想的にはこのゲート電位VG0はそのまま維持されるべきである。しかしながら補正回路2aの動作によりドライブトランジスタTrdのノードSが上昇する場合がある。この影響を受けてドライブトランジスタTrdのノードGがΔVsだけ上昇してしまう。このΔVsの上昇はサンプリングトランジスタTr1のオン抵抗を介して信号線SLに影響を与える。この信号線への影響はΔVs=Vs×Cs/(Cs+Csig)となる。なおVsは補正動作時に現れるノードSの変動分である。
【0026】
図9は、信号電位Vsigの第3の変動要因を示す模式図である。この模式図の左側に示すように、データdataを供給するデータ線はHSWを介して信号線SLに接続している。信号線SLには画素2が接続している。この画素2はサンプリングトランジスタTr1,ドライブトランジスタTrd及び発光素子ELに加え、画素容量Cgを備えている。この画素容量Cgは、オンしたサンプリングトランジスタTr1を介して信号電位Vsigを取り込み、保持するためのものである。
【0027】
図9の右下側に、本構成のタイミングチャートを示す。最初にゲート信号HSWがハイレベルになり、HSWがオンしてデータ電圧Vdataが信号線SLに取り込まれる。これにより信号線の信号電位Vsigはデータ電圧Vdataを等しくなる。この時点でドライブトランジスタTrdのノードGは所定の電位VG0にある。この後走査線WSに供給される制御信号がハイレベルとなり、サンプリングトランジスタTr1がオンする。この結果信号線SLから信号電位Vsigがサンプリングされ、ノードGの確定電位がVGとなる。理想的には、ノードGの確定電位VGはVsigと等しくなるべきであるが、配線容量Csigと画素容量Cgの容量結合により、ΔVGだけ変化してしまう。理想状態から変化したノードGの確定電位は、VG=(Csig・Vdata+Cg・Vg0)/(Csig+Cg)で与えられる。ここでVG0はノードGの初期電圧である。
【0028】
図10は、本発明にかかる画像表示装置の要部を示す模式図である。図示する様に、本発明にかかる画像表示装置は、信号線SL自体の配線容量Csigに加え、補完容量Csubを設けている。この補完容量Csubは信号線SLのノイズに対する耐性を高めるものであり、データ線から水平スイッチHSWを介して信号線SLに書き込まれた信号電位Vsigを安定的に維持することが出来る。補完容量Csubを信号線SLに接続することで、水平スイッチHSWを含む水平駆動回路側または補正回路2aなどを含む画素2側の動作の影響を受けて信号線SLに供給した信号電圧Vsigが変動する現象を抑制している。
【0029】
補完容量Csubを追加することで、前述した水平スイッチHSWのゲートパルスからの飛込みによる変動分は、以下のように表される。
ΔVh=Vhsw×Chsw/((Chsw+(Csig+Csub))
Csubを追加することで、分母のCsigがCsig+Csubになる。水平スイッチHSWの寄生容量Chswに対してCsig+Csubを十分大きくすることで、変動分ΔVhは0に近づけることが出来る。実用上は、Chswに対してCsig+Csubが5倍以上となるように、Csubの容量を設計すれば良い。
【0030】
また画素回路2側のノードSの上昇に伴う変動分は以下のように表される。
ΔVs=Vs×Cs/((Cs+(Csig+Csub))
ここでも補正回路2a側の保持容量Csに比べ、Csig+Csubを大きく取ることで、変動分ΔVsを0に近づけることが出来る。実用的には、保持容量Csに対してCsigとCsubの和が5倍以上となるようにCsubの容量を設定すれば良い。
【0031】
また容量結合があるときのゲートノードの確定電位は以下の式で表される。
VG=((Csig+Csub)・Vdata+Cs・VG0))/
((Csig+Csub)+Cg))
ここで画素容量Cgに比較してCsig+Csubを大きく取ることで、上記式の分子と分母にあるCgの項は無視できる。この結果ほぼVG=Vdataとなり、容量結合の影響を抑えて、ゲートノードの電位VGをほぼデータ電圧Vdataの値にすることが出来る。この様にVdataと実質的に等しいゲートノードの電位VGを維持するため、CsigとCsubの和がCgに対して5倍以上となるように、Csubの値を設定すれば良い。
【0032】
以上説明したように、本発明にかかる画像表示装置は、基本的に行状に配された走査線WSと、列状に配された信号線SLと、各信号線SL及び走査線WSが交差する部分に配され階調が変化する画素2と、各信号線に接続する水平駆動回路3と、各走査線WSに接続する垂直駆動回路4とからなる。水平駆動回路3は、所定の水平周期(1H)毎に画像データdataに応じた信号電圧Vsigを各信号線SLに供給する。垂直駆動回路4は、水平周期ごとに制御信号WSを1つの走査線WSに印加して対応する行の画素2を選択する。なお本明細書では表記を単純化するため、走査線WSとその制御信号を同じ参照符号で表わしている。。選択された画素2は、信号線SLに供給された信号電圧Vsigに応じてその階調が変化する。
【0033】
本発明の特徴事項として、信号線SLには補完容量Csubが接続しており、水平駆動回路4側または画素2側の動作の影響を受けて信号線SLに供給した信号電圧Vsigが変動する減少を抑制する。例えば水平駆動回路3は、水平スイッチHSWを介して各信号線SLに接続しており、水平期間毎に水平スイッチHSWを開閉動作して信号電圧Vsigを各信号線SLに供給する。補完容量Csubは、水平スイッチHSWの開閉動作により生じる信号電圧Vsigの変動ΔVhを抑制する。
【0034】
一態様では、画素2は、サンプリングスイッチとなるサンプリングトランジスタTr1と画素容量Cgとを有している。サンプリングトランジスタTr1は、信号線SLと画素容量Cgとの間に接続している。水平駆動回路3は、水平周期で各信号線SLに信号電圧Vsigを供給した後、各信号線SLを電気的に水平駆動回路3から切り離す。その後垂直駆動回路4は、制御信号WSを出力して対応する行の画素2を選択する。選択された行の画素2のサンプリングトランジスタTr1は制御信号WSに応じてオンし、信号線SLから信号電圧Vsigを取り込んで画素容量Cgに保持する書き込み動作を行う。補完容量Csubは、サンプリングトランジスタTr1の書き込み動作中に生じる信号電圧Vsigの変動ΔVGを抑制する。
【0035】
別の態様では、画素2はサンプリングスイッチを構成するサンプリングトランジスタTr1と補正回路2aとを有している。サンプリングトランジスタTr1は、制御信号WSに応じてオンし信号線SLから信号電圧Vsigを取り込む。補正回路2aは取り込まれた信号電圧Vsigの補正動作を行う。補完容量Csubは、この補正動作により生じる信号電圧Vsigの変動ΔVsを抑制することが出来る。
【0036】
図11は、本発明にかかる画像表示装置の回路構成とデバイス構造を対応して表した模式図である。回路的には、本画像表示装置はデータ線が水平スイッチHSWを介して信号線SLに接続している。この信号線SLに画素2と補完容量Csubが接続している。画素2は基本的にサンプリングトランジスタTr1やドライブトランジスタTrdなどのトランジスタTrと発光素子ELとで構成されている。
【0037】
図11の右側は、トランジスタTrや発光素子ELのデバイス構造を示す模式図である。本実施形態はトランジスタTrや発光素子ELが薄膜素子で構成されている。具体的には、ガラスなどの絶縁基板上に、薄膜素子のトランジスタTrを形成した後、その上に絶縁膜を介して同じく薄膜素子の発光素子ELを形成している。図示する様に、発光素子ELはカソード(Cathode)とアノード(Anode)とからなり、その間に絶縁膜が配されている。この発光素子ELはダイオード構造であり、例えば有機エレクトロルミネッセンス材料を発光材料に用いている。一方トランジスタTrはポリシリコン(PS)を素子領域とする薄膜トランジスタ(TFT)である。TFTのソース電極及びドレイン電極は金属アルミニウム(Al)からなる。その下に絶縁膜を介してTFTの素子領域となるポリシリコン膜(PS)が形成されている。さらにその下には絶縁膜を介してTFTのゲート電極となる金属モリブデン(Mo)が成膜されている。信号線SLは通常配線抵抗の小さい金属アルミニウム層または金属モリブデン層で作られる。かかる多層構造で、補完容量Csubは絶縁膜を誘電体としてトランジスタTr等一緒に形成される。
【0038】
図12は、補完容量の一実施例を示す模式的な断面図である。この実施例は信号線SLが金属アルミニウム配線で作成されている場合である。フローティングのカソード層(Cathode)と金属モリブデン層(Mo)は、アルミニウム配線とコンタクトすることで同電位とする。一方フローティングのアノード層(Anode)とポリシリコン層(PS)は固定電位に吊っておく。かかる構成で、CathodeとAnodeの間に第1の補完容量Csub1が形成され、Anodeとアルミニウム配線との間で第2の補完容量Csub2が形成され、アルミニウム配線と多結晶シリコン膜PSとの間で第3の補完容量Csub3が形成され、最後に多結晶シリコン膜PSと金属モリブデン膜(Mo)との間で第4の補完容量Csub4が形成される。トータルの補完容量Csubは、Csub1とCsub2とCsub3とCsub4の合計となり、大きな容量値が得られる。
【0039】
図13は、補完容量の他の実施例を示す模式的な断面図である。この実施例は金属モリブデン膜を信号線SLに使っている。この場合フローティングのCathodeとアルミニウム配線をモリブデン配線にコンタクトすることで同電位とする。フローティングのAnodeと多結晶シリコン膜PSは固定電位に吊っておく。かかる構成により、各層の絶縁膜を誘電体として、補完容量Csub1〜Csub4を形成することが出来る。
【0040】
図14は、補完容量の別の実施例を示す模式図である。基本的に、補完容量Csubの容量値は設計上要求されるサイズによって決定すれば良い。実用的には、本実施形態が好ましい。本実施形態は金属アルミニウムを信号線SLとして用い、Anodeと金属モリブデン膜を信号線SLと同電位にする一方、Cathodeと多結晶シリコン膜PSを固定電位に吊ってある。これにより、3個の補完容量Csub1,Csub3,Csub4を作ることが出来る。
【0041】
図15は、本発明にかかる画像表示装置の実施例の全体構成を示すブロック図である。図示する様に、本画像表示装置は基本的に画素アレイ部1とスキャナ部と信号部とで構成されている。画素アレイ部1は、行状に配された第1走査線WS、第2走査線AZ2、第3走査線AZ1及び第4走査線DSと、列状に配された信号線SLと、これらの走査線WS,AZ2,AZ1,DS及び信号線SLに接続した行列状の画素回路2と、各画素回路2の動作に必要な第1電位Vofs,第2電位Vini及び第3電位Vccを供給する複数の電源線とからなる。信号部は水平セレクタ3からなり、信号線SLに映像信号を供給する。各信号線SLには本発明にしたがって補完容量Csubが接続している。スキャナ部は、ライトスキャナ4、ドライブスキャナ5、第一補正用スキャナ71及び第二補正用スキャナ72からなり、それぞれ第1走査線WS、第4走査線DS、第3走査線AZ1及び第2走査線AZ2に制御信号を供給して順次行毎に画素回路を走査する。
【0042】
図16は、図15に示した画像表示装置に含まれる画素の具体的な構成を示す回路図である。図示する様に画素回路2は、サンプリングトランジスタTr1と、ドライブトランジスタTrdと、第1スイッチングトランジスタTr2と、第2スイッチングトランジスタTr3と、第3スイッチングトランジスタTr4と、保持容量Csと、補完容量Csubと、発光素子ELとを含む。サンプリングトランジスタTr1は、所定のサンプリング期間に第1走査線WSから供給される制御信号に応じ導通して信号線SLから供給された映像信号の信号電位を保持容量Csにサンプリングする。保持容量Csは、サンプリングされた映像信号の信号電位に応じてドライブトランジスタTrdのゲートGに入力電圧Vgsを印加する。ドライブトランジスタTrdは、入力電圧Vgsに応じた出力電流Idsを発光素子ELに供給する。発光素子ELは、所定の発光期間中ドライブトランジスタTrdから供給される出力電流Idsにより映像信号の信号電位に応じた輝度で発光する。
【0043】
第1スイッチングトランジスタTr2は、サンプリング期間に先立ち第2走査線AZ2から供給される制御信号に応じ導通してドライブトランジスタTrdのゲートGを第1電位Vofsに設定する。第2スイッチングトランジスタTr3は、サンプリング期間に先立ち第3走査線AZ1から供給される制御信号に応じ導通してドライブトランジスタTrdのソースSを第2電位Viniに設定する。第3スイッチングトランジスタTr4は、サンプリング期間に先立ち第4走査線DSから供給される制御信号に応じ導通してドライブトランジスタTrdを第3電位Vccに接続し、以ってドライブトランジスタTrdの閾電圧Vthに相当する電圧を保持容量Csに保持させて閾電圧Vthの影響を補正する。さらにこの第3スイッチングトランジスタTr4は、発光期間に再び第4走査線DSから供給される制御信号に応じ導通してドライブトランジスタTrdを第3電位Vccに接続して出力電流Idsを発光素子ELに流す。
【0044】
以上の説明から明らかな様に、本画素回路2は、5個のトランジスタTr1ないしTr4及びTrdと2個の容量Cs及びCsubと1個の発光素子ELとで構成されている。トランジスタTr1〜Tr3とTrdはNチャネル型のポリシリコンTFTである。トランジスタTr4のみPチャネル型のポリシリコンTFTである。但し本発明はこれに限られるものではなく、Nチャネル型とPチャネル型のTFTを適宜混在させることが出来る。発光素子ELは例えばアノード及びカソードを備えたダイオード型の有機ELデバイスである。但し本発明はこれに限られるものではなく、発光素子は一般的に電流駆動で発光する全てのデバイスを含む。
【0045】
図17は、図16に示した画像表示装置から画素回路2の部分のみを取り出した模式図である。理解を容易にするため、サンプリングトランジスタTr1によってサンプリングされる映像信号Vsigや、ドライブトランジスタTrdの入力電圧Vgs及び出力電流Ids、さらには発光素子ELが有する容量成分Coledなどを書き加えてある。以下図17に基づいて、本実施例にかかる画素回路2の動作を説明する。
【0046】
図18は、図17に示した画素回路のタイミングチャートである。図18を参照して図17に示した画素回路の動作を説明する。図18は、時間軸Tに沿って各走査線WS,AZ2,AZ1及びDSに印加される制御信号の波形を表してある。表記を簡略化する為、制御信号も対応する走査線の符号と同じ符号で表してある。トランジスタTr1,Tr2,Tr3はNチャネル型なので、走査線WS,AZ2,AZ1がそれぞれハイレベルの時オンし、ローレベルの時オフする。一方トランジスタTr4はPチャネル型なので、走査線DSがハイレベルの時オフし、ローレベルの時オンする。なおこのタイミングチャートは、各制御信号WS,AZ1,AZ2,DSの波形と共に、ドライブトランジスタTrdのゲートGの電位変化及びソースSの電位変化も表してある。
【0047】
図18のタイミングチャートは、1フィールドの間に現れる各制御信号の状態変化を、タイミングT1〜T7で表してある。1フィールドの間に画素アレイの各行が1回順次走査される。タイミングチャートは、1行分の画素に印加される各制御信号WS,AZ1,AZ2,DSの波形を表している。
【0048】
当該フィールドが始まる前のタイミングT0で、制御信号WS,AZ2,AZ1がローレベルにある。したがってNチャネル型のトランジスタTr1,Tr2,Tr3はオフ状態にある。また制御信号DSがハイレベルにある。したがってPチャネル型のトランジスタTr4もオフ状態である。したがって、タイミングT0では全てのトランジスタTr1〜Tr4はオフ状態にある。このときドライブトランジスタTrdのゲートG(以下ノードGと表す場合がある)とソースS(以下ノードSと表す場合がある)は、図示のようにある電位を保持しているが、全てのトランジスタがオフのため回路的には浮遊状態である。
【0049】
当該フィールドが始まるタイミングT1で、制御信号AZ1がハイレベルになるので、スイッチングトランジスタTr3がオンする。この結果、ドライブトランジスタTrdのソースSが基準電位Viniに接続される。即ちノードSの電位がViniまで急激に低下する。このときノードGは浮遊電位なので、ノードSの急激な電位低下の影響を受けて、ノードGの電位がVFまで低下する。
【0050】
タイミングT1から期間Fを経過したタイミングT2で、制御信号AZ2が立ち上がり、スイッチングトランジスタTr2がオンする。この結果ドライブトランジスタTrdのゲートGが基準電位Vofsに接続する。この段階では既にノードSは基準電位Viniに接続されている。ここでVofs−Vini>Vthを満たしており、Vofs−Vini=Vgs>Vthとすることで、その後タイミングT3で行われるVth補正の準備を行う。換言すると期間T1‐T3は、ドライブトランジスタTrdのリセット期間に相当する。また、発光素子ELの閾電圧をVthELとすると、VthEL>Viniに設定されている。これにより、発光素子ELにはマイナスバイアスが印加され、いわゆる逆バイアス状態となる。この逆バイアス状態は、後で行うVth補正動作及び移動度補正動作を正常に行うために必要である。
【0051】
タイミングT3では制御信号AZ1をローレベルにし且つ直後制御信号DSもローレベルにしている。これによりトランジスタTr3がオフする一方トランジスタTr4がオンする。この結果ドレイン電流Idsが保持容量Csに流れ込み、Vth補正動作を開始する。この時ドライブトランジスタTrdのゲートGはVofsに保持されており、ドライブトランジスタTrdがカットオフするまで電流Idsが流れる。カットオフするとドライブトランジスタTrdのソース電位(S)はVofs−Vthとなる。ドレイン電流がカットオフした後のタイミングT4で制御信号DSを再びハイレベルに戻し、スイッチングトランジスタTr4をオフする。さらに制御信号AZ2もローレベルに戻し、スイッチングトランジスタTr2もオフする。この結果、保持容量CsにVthが保持固定される。この様にタイミングT3‐T4はドライブトランジスタTrdの閾電圧Vthを検出する期間である。ここでは、この検出期間T3‐T4をVth補正期間と呼んでいる。
【0052】
この様にVth補正を行った後タイミングT5で制御信号WSをハイレベルに切り替え、サンプリングトランジスタTr1をオンして映像信号Vsigを保持容量Csに書き込む。発光素子ELの等価容量Coledに比べて保持容量Csは充分に小さい。この結果、映像信号Vsigのほとんど大部分が保持容量Csに書き込まれる。正確には、Vofsに対する。Vsigの差分Vsig−Vofsが保持容量Csに書き込まれる。したがってドライブトランジスタTrdのゲートGとソースS間の電圧Vgsは、先に検出保持されたVthと今回サンプリングされたVsig−Vofsを加えたレベル(Vsig−Vofs+Vth)となる。説明簡易化の為Vofs=0Vとすると、ゲート/ソース間電圧Vgsは図18のタイミングチャートに示すようにVsig+Vthとなる。かかる映像信号Vsigのサンプリングは制御信号WSがローレベルに戻るタイミングT7まで行われる。すなわちタイミングT5‐T7がサンプリング期間に相当する。
【0053】
サンプリング期間の終了するタイミングT7より前のタイミングT6で制御信号DSがローレベルとなりスイッチングトランジスタTr4がオンする。これによりドライブトランジスタTrdが電源Vccに接続されるので、画素回路は非発光期間から発光期間に進む。この様にサンプリングトランジスタTr1がまだオン状態で且つスイッチングトランジスタTr4がオン状態に入った期間T6‐T7で、ドライブトランジスタTrdの移動度補正を行う。即ち本例では、サンプリング期間の後部分と発光期間の先頭部分とが重なる期間T6‐T7で移動度補正を行っている。なお、この移動度補正を行う発光期間の先頭では、発光素子ELは実際には逆バイアス状態にあるので発光する事はない。この移動度補正期間T6‐T7では、ドライブトランジスタTrdのゲートGが映像信号Vsigのレベルに固定された状態で、ドライブトランジスタTrdにドレイン電流Idsが流れる。ここでVofs−Vth<VthELと設定しておく事で、発光素子ELは逆バイアス状態におかれる為、ダイオード特性ではなく単純な容量特性を示すようになる。よってドライブトランジスタTrdに流れる電流Idsは保持容量Csと発光素子ELの等価容量Coledの両者を結合した容量C=Cs+Coledに書き込まれていく。これによりドライブトランジスタTrdのソース電位(S)は上昇していく。図18のタイミングチャートではこの上昇分をΔVで表してある。この上昇分ΔVは結局保持容量Csに保持されたゲート/ソース間電圧Vgsから差し引かれる事になるので、負帰還をかけた事になる。この様にドライブトランジスタTrdの出力電流Idsを同じくドライブトランジスタTrdの入力電圧Vgsに負帰還する事で、移動度μを補正する事が可能である。なお負帰還量ΔVは移動度補正期間T6‐T7の時間幅tを調整する事で最適化可能である。
【0054】
タイミングT7では制御信号WSがローレベルとなりサンプリングトランジスタTr1がオフする。この結果ドライブトランジスタTrdのゲートGは信号線SLから切り離される。映像信号Vsigの印加が解除されるので、ドライブトランジスタTrdのゲート電位(G)は上昇可能となり、ソース電位(S)と共に上昇していく。その間保持容量Csに保持されたゲート/ソース間電圧Vgsは(Vsig−ΔV+Vth)の値を維持する。ソース電位(S)の上昇に伴い、発光素子ELの逆バイアス状態は解消されるので、出力電流Idsの流入により発光素子ELは実際に発光を開始する。この時のドレイン電流Ids対ゲート電圧Vgsの関係は、トランジスタの基本特性式のVgsにVsig−ΔV+Vthを代入する事で、以下の式のように与えられる。
Ids=kμ(Vgs−Vth)2=kμ(Vsig−ΔV)2
上記式において、kは定数である。この特性式からVthの項がキャンセルされており、発光素子ELに供給される出力電流IdsはドライブトランジスタTrdの閾電圧Vthに依存しない事が分かる。基本的にドレイン電流Idsは映像信号の信号電圧Vsigによって決まる。換言すると、発光素子ELは映像信号Vsigに応じた輝度で発光する事になる。その際Vsigは負帰還量ΔVで補正されている。この補正量ΔVは丁度特性式の係数部に位置する移動度μの効果を打ち消すように働く。したがって、ドレイン電流Idsは実質的に映像信号Vsigのみに依存する事になる。この後所定のタイミングに至ると制御信号DSがハイレベルとなってスイッチングトランジスタTr4がオフし、発光が終了すると共に当該フィールドが終わる。換言すると、図18のシーケンスはタイミングT0に戻ることになる。この後次のフィールドに移って再びVth補正動作、移動度補正動作及び発光動作が繰り返されることになる。
【0055】
上述したように、本実施例の画像表示装置は、期間T6‐T7で移動度補正動作を行う。この移動度補正動作は、ノードGの電位をVsigに固定した状態で行う必要があり、補正期間中流れる駆動電流の負帰還により、ノードSの電位が所定の補正量ΔVだけ上昇する。本発明では、信号線SLに補完容量Csubが接続されている。したがってノードSがΔVだけ上昇しても、ノードGはほとんど変化せず、Vsigに固定される。これにより正常な移動度補正動作を行うことが出来る。仮に信号線SLに補完容量Csubを接続しないと、ノードSの電位上昇により、ノードGの電位も変動してしまい、正しく移動度補正をかけることが出来ない。
【符号の説明】
【0056】
0・・・パネル、1・・・画素アレイ、2・・・画素、3・・・セレクタ、4・・・スキャナ、SL・・・信号線、WS・・・走査線、EL・・・発光素子、Csub・・・補完容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード層とアノード層とを有する発光素子を含む画素が、行状に配された走査線と列状に配された信号線とが交差する部分に配され、
信号線には補完容量が接続されており、
補完容量は、カソード層とアノード層との間の絶縁膜を誘電体として用いて成る画像表示装置。
【請求項2】
発光素子は、絶縁基板上に形成された薄膜トランジスタの上に、絶縁膜を介して形成された薄膜素子で構成されている請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
補完容量は、発光素子と薄膜トランジスタとの間の絶縁膜を誘電体として用いて成る請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極が第1金属層から成り、第1金属層の下にポリシリコン層が形成され、ポリシリコン層の下に絶縁膜を介して、ゲート電極となる第2金属層が形成されて成る請求項2または請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
第1金属層は、アルミニウム層であり、
第2金属層は、モリブデン層である請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
信号線は、アルミニウム層で形成されており、
前記カソード層とモリブデン層とが同電位に設定されており、
補完容量は、前記カソード層と前記アノード層との間に形成される第1の補完容量と、前記アノード層とアルミニウム層との間に形成される第2の補完容量とを有する請求項4または請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記アノード層とポリシリコン層とが同電位に設定されており、
補完容量は、アルミニウム層とポリシリコン層との間に形成される第3の補完容量を有する請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記アノード層とポリシリコン層とが固定電位に設定されている請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
補完容量は、ポリシリコン層とモリブデン層との間に形成される第4の補完容量を有する請求項7または請求項8に記載の画像表示装置。
【請求項10】
信号線は、モリブデン層で形成されており、
前記カソード層と前記アルミニウム層とモリブデン層とが同電位に設定されており、
補完容量は、前記カソード層と前記アノード層との間に形成される第1の補完容量と、前記アノード層とアルミニウム層との間に形成される第2の補完容量とを有する請求項4または請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記アノード層とポリシリコン層とが同電位に設定されており、
補完容量は、アルミニウム層とポリシリコン層との間に形成される第3の補完容量を有する請求項10に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記アノード層とポリシリコン層とが固定電位に設定されている請求項11に記載の画像表示装置。
【請求項13】
補完容量は、ポリシリコン層とモリブデン層との間に形成される第4の補完容量を有する請求項11または請求項12に記載の画像表示装置。
【請求項14】
信号線は、アルミニウム層で形成されており、
前記アノード層とモリブデン層と信号線とが同電位に設定されており、
補完容量は、前記カソード層と前記アノード層との間に形成される第1の補完容量を有する請求項4または請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項15】
前記カソード層とポリシリコン層とが同電位に設定されており、
補完容量は、アルミニウム層とポリシリコン層との間に形成される第2の補完容量を有する請求項14に記載の画像表示装置。
【請求項16】
前記カソード層とポリシリコン層とが固定電位に設定されている請求項15に記載の画像表示装置。
【請求項17】
補完容量は、ポリシリコン層とモリブデン層との間に形成される第3の補完容量を有する請求項15または請求項16に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−230393(P2012−230393A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137650(P2012−137650)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【分割の表示】特願2006−211599(P2006−211599)の分割
【原出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】