説明

画像表示装置

【課題】ドライバトランジスタのソースに電流発光素子を接続した画素回路を、Nチャンネル型トランジスタのみを用いて構成する。
【解決手段】電流発光素子D1と、電流発光素子D1に電流を流すドライバトランジスタQ1と、ドライバトランジスタQ1の流す電流量を決める電圧を保持する保持コンデンサC1と、画像信号に応じた電圧を保持コンデンサC1に書込む書込みスイッチQ2とを有する画素回路10を複数配列した画像表示装置であって、画素回路10のそれぞれを構成するトランジスタQ1〜Q5はNチャンネル型トランジスタであり、画素回路10のそれぞれは、イネーブルスイッチQ4と、保持コンデンサC1の電圧を初期化するための初期化コンデンサC2と、分離スイッチQ5とをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電流発光素子を用いたアクティブマトリクス型の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自ら発光する有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を多数配列した有機EL表示装置は、バックライトが不要で視野角にも制限がないため、次世代の画像表示装置として期待されている。
【0003】
有機EL素子は、流す電流量によって輝度を制御する電流発光素子である。有機EL素子を駆動する方式としては、単純マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とがある。前者は画素回路が単純であるものの大型かつ高精細の画像表示装置の実現が困難である。このため、近年は、電流発光素子を駆動するドライバトランジスタを有機EL素子毎に備えた画素回路を配列したアクティブマトリクス型の有機EL表示装置の開発が盛んに行われている。
【0004】
ドライバトランジスタおよびその周辺回路は、一般に薄膜トランジスタを用いて形成される。また、薄膜トランジスタにはポリシリコンを用いたものとアモルファスシリコンを用いたものとがある。アモルファスシリコン薄膜トランジスタは移動度が小さくしきい値電圧の経時変化が大きいという弱点があるものの、移動度の均一性がよく、大型化が容易かつ安価であるために大型の有機EL表示装置に適している。また、アモルファスシリコン薄膜トランジスタの弱点であるしきい値電圧の経時変化を画素回路の工夫により克服する方法についても検討されている。例えば特許文献1には、薄膜トランジスタのしきい値電圧が変化した場合であっても、電流発光素子に流す電流量はしきい値電圧の影響を受けず、安定した画像表示が可能な画素回路を備えた有機EL表示装置が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の画素回路はPチャンネル型トランジスタを用いて構成されている。一方、大型の画像表示装置用のアモルファスシリコン薄膜トランジスタとしては、Nチャンネル型トランジスタのみが実用化されていることから、Nチャンネル型トランジスタを用いた画像回路を構成することが必要である。さらに、有機EL素子を容易に製造するために、ドライバトランジスタのソースに有機EL素子のアノードを接続し、各画像回路の有機EL素子のカソードを共通電極に接続できる回路構成が望ましい。さらには、有機ELの発光時に流れる電流と電源線の電気抵抗による電圧降下から発生する発光輝度の不均一を抑制するために、ソース接地動作の画素補償回路が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−514320号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明の画像表示装置は、電流発光素子と、電流発光素子に電流を流すドライバトランジスタと、ドライバトランジスタの流す電流量を決める電圧を保持する保持コンデンサと、画像信号に応じた電圧を保持コンデンサに書込む書込みスイッチとを有する画素回路を複数配列している。各画素回路を構成するトランジスタはNチャンネル型トランジスタである。各画素回路はイネーブルスイッチと初期化コンデンサと分離スイッチとをさらに備えている。イネーブルスイッチのドレインはドライバトランジスタのソースと接続される。イネーブルスイッチのソースは電流発光素子のアノードと接続される。保持コンデンサの一方の端子はドライバトランジスタのゲートに接続され、保持コンデンサの他方の端子は初期化コンデンサの一方の端子に接続される。初期化コンデンサの他方の端子は保持コンデンサの電圧を初期化するためのトリガ信号を供給するトリガ線に接続される。分離スイッチのドレインは保持コンデンサと初期化コンデンサとが接続された節点と接続される。分離スイッチのソースはドライバトランジスタのソースと接続される。この構成により、ドライバトランジスタのソースに電流発光素子を接続した画素回路をNチャンネル型トランジスタのみを用いて構成した画像表示装置を提供することができる。
【0008】
また、本発明の画像表示装置のイネーブルスイッチを制御する制御信号は、トリガ線に供給されるトリガ信号であってもよい。この構成により画素回路を簡素化することができる。
【0009】
また、本発明の画像表示装置の各画素回路は、ドライバトランジスタのゲートに参照電圧を印加するための参照スイッチをさらに備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態における有機EL表示装置の構成を示す模式図
【図2】本発明の実施の形態における画素回路の回路図
【図3】本発明の実施の形態における画素回路の動作を示すタイミングチャート
【図4】本発明の実施の形態における画像表示装置のしきい値検出期間における動作 を説明するための回路図
【図5】本発明の実施の形態における画像表示装置の書込み期間における動作を説明 するための回路図
【図6】本発明の実施の形態における画像表示装置の発光期間における動作を説明す るための回路図
【図7】本発明の実施の形態における画素回路の各素子のレイアウトの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態におけるアクティブマトリクス型の画像表示装置について、図面を用いて説明する。なお、ここでは画像表示装置として、薄膜トランジスタを用いて有機EL素子を発光させるアクティブマトリクス型の有機EL表示装置について説明するが、本発明は、流す電流量によって輝度を制御する電流発光素子を用いたアクティブマトリクス型の画像表示装置全般に適用可能である。
【0012】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態における有機EL表示装置の構成を示す模式図である。
【0013】
本実施の形態における有機EL表示装置は、マトリクス状に配列された複数の画素回路10と、走査線駆動回路11と、データ線駆動回路12と、電源線駆動回路14とを備えている。走査線駆動回路11は、画素回路10に走査信号scn、リセット信号rst、トリガ信号trg、マージ信号mrgのそれぞれを供給する。データ線駆動回路12は、画像信号に対応したデータ信号dataを画素回路10に供給する。電源線駆動回路14は、画素回路10に電力を供給する。本実施の形態においては、画素回路10がn行m列のマトリクス状に配列されているものとして説明する。
【0014】
走査線駆動回路11は、図1において行方向に配列された画素回路10に共通に接続された走査線41に、それぞれ独立に走査信号scnを供給する。走査線駆動回路11は、同じく行方向に配列された画素回路10に共通に接続されたリセット線42に、それぞれ独立にリセット信号rstを供給する。走査線駆動回路11は、同じく行方向に配列された画素回路10に共通に接続されたトリガ線43に、それぞれ独立にトリガ信号trgを供給する。走査線駆動回路11は、同じく行方向に配列された画素回路10に共通に接続されたマージ線44に、それぞれ独立にマージ信号mrgを供給する。またデータ線駆動回路12は、図1において列方向に配列された画素回路10に共通に接続されたデータ線20に、それぞれ独立にデータ信号dataを供給する。本実施の形態においては、走査線41、リセット線42、トリガ線43、マージ線44の数はそれぞれn本、データ線20の数はm本であるが、走査線41、リセット線42、トリガ線43、マージ線44の数については、同一でなくともよい。
【0015】
電源線駆動回路14は、すべての画素回路10に共通に接続された高電圧側電源線24と低電圧側電源線25に電力を供給する。また、すべての画素回路10に共通に接続された参照電圧線26に参照電圧Vrefを供給する。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態における画素回路10の回路図である。
【0017】
本実施の形態における各画素回路10は、電流発光素子である有機EL素子D1と、ドライバトランジスタQ1と、保持コンデンサC1と、トランジスタQ2と、トランジスタQ3と、トランジスタQ4と、トランジスタQ5とを備えている。ドライバトランジスタQ1は、有機EL素子D1に電流を流すことで有機EL素子D1を発光させる。保持コンデンサC1は、ドライバトランジスタQ1の流す電流量を決める電圧を保持する。トランジスタQ2は、画像信号に応じた電圧を保持コンデンサC1に書込むための書込みスイッチである。トランジスタQ3は、ドライバトランジスタQ1のゲートに参照電圧Vrefを印加するための参照スイッチである。トランジスタQ4は、有機EL素子D1に電流を流す電流経路に挿入されたイネーブルスイッチである。トランジスタQ5は、保持コンデンサC1に電圧を書込むときに保持コンデンサC1とドライバトランジスタQ1のソースとを切り離すための分離スイッチである。また、各画素回路10は、保持コンデンサC1にドライバトランジスタQ1のしきい値電圧Vthを超える電圧を与えて保持コンデンサC1の電圧を初期化するための初期化コンデンサC2をさらに備えている。ここで、画素回路10を構成するドライバトランジスタQ1およびトランジスタQ2〜Q5はすべてNチャンネル薄膜型トランジスタである。そしてこれらのトランジスタQ2〜Q5はエンハンスメント型トランジスタであるものとして説明するが、デプレション型トランジスタであってもよい。
【0018】
イネーブルスイッチであるトランジスタQ4のドレインはドライバトランジスタQ1のソースと接続されている。トランジスタQ4のソースは有機EL素子D1のアノードと接続されている。すなわち、ドライバトランジスタQ1のドレインは高電圧側電源線24に接続され、ドライバトランジスタQ1のソースはトランジスタQ4のドレインに接続されている。そして、トランジスタQ4のソースは有機EL素子D1のアノードに接続され、有機EL素子D1のカソードは低電圧側電源線25に接続されている。ここで高電圧側電源線24に供給されている電圧は、例えば5(V)であり、低電圧側電源線25に供給されている電圧は、例えば−15(V)である。
【0019】
保持コンデンサC1の一方の端子はドライバトランジスタQ1のゲートに接続されている。保持コンデンサC1の他方の端子は初期化コンデンサC2の一方の端子に接続されている。初期化コンデンサC2の他方の端子は保持コンデンサC1の電圧を初期化するためのトリガ信号trgを供給するトリガ線43に接続されている。分離スイッチであるトランジスタQ5のドレインは保持コンデンサC1と初期化コンデンサC2とが接続された節点(以下、「節点a」と称する)と接続されている。トランジスタQ5のソースはドライバトランジスタQ1のソースと接続されている。
【0020】
またドライバトランジスタQ1のゲートは書込みスイッチであるトランジスタQ2を介してデータ線20に接続されるとともに、参照スイッチであるトランジスタQ3を介して参照電圧線26に接続されている。
【0021】
なお、トランジスタQ2のゲートは走査線41に接続され、トランジスタQ3のゲートはリセット線42に接続され、トランジスタQ5のゲートはマージ線44に接続されている。また、トランジスタQ4のゲートがトリガ線43に接続されているが、これは本実施の形態においてはトリガ線43に供給されるトリガ信号trgがトランジスタQ4を制御する制御信号をも兼ねているためである。もちろんトランジスタQ4を制御する制御信号を独立に設けてもよいが、トリガ信号trgと兼用することで配線を減らすことができ、画素回路10を簡素化することができる。
【0022】
次に、本実施の形態における画素回路10の動作について説明する。図3は、本発明の実施の形態における画素回路10の動作を示すタイミングチャートである。本実施の形態においては、各画素回路10は1フィールド期間内に、ドライバトランジスタQ1のしきい値電圧Vthを検出する動作、画像信号に対応したデータ信号dataを保持コンデンサC1に書込む動作、保持コンデンサC1に書込まれた電圧にもとづき有機EL素子D1を発光させる動作を行う。便宜上、しきい値電圧Vthを検出する期間をしきい値検出期間T1、データ信号dataを書込む期間を書込み期間T2、有機EL素子D1を発光させる期間を発光期間T3として、以下に動作の詳細を説明する。なお、しきい値検出期間T1、書込み期間T2、発光期間T3は画素回路10のそれぞれに対して定義されるものであり、すべての画素回路10に対して上記3つの期間の位相を一致させる必要はない。本実施の形態においては、行方向に配列された画素回路10に対しては上記3つの期間の位相を一致させ、列方向に配列された画素回路10に対してはそれぞれの書込み期間T2が重ならないように上記3つの期間の位相をずらして駆動している。このように位相をずらして駆動することにより発光期間T3の時間を長く設定できるので、画像表示輝度を向上する上で望ましい。
【0023】
(しきい値検出期間T1)
図4は、本発明の実施の形態における画像表示装置のしきい値検出期間T1における動作を説明するための回路図である。なお図4には、説明のために、図2のトランジスタQ2〜Q5をそれぞれスイッチSW2〜SW5で置き換えている。
【0024】
まず、しきい値検出期間T1の前、すなわち1フィールド前の発光期間の後半では、走査信号scn、リセット信号rst、マージ信号mrgはそれぞれローレベルでありトリガ信号trgはハイレベルである。従って、スイッチSW2、スイッチSW3、スイッチSW5はオフ状態であり、スイッチSW4はオン状態である。このときの保持コンデンサC1の端子間の電圧VC1を電圧VC1(0)、ドライバトランジスタQ1のソース電圧Vsを電圧Vs(0)とすると、節点aの電圧Vaは後述するように電圧Vs(0)と等しい。すなわち、ドライバトランジスタQ1のゲート電圧を電圧Vgとすると、
【0025】
【数1】

【0026】
である。
【0027】
しきい値検出期間T1の最初の時刻t11において、トリガ信号trgをローレベルにしてスイッチSW4をオフ状態とする。トリガ信号trgのハイレベルの電圧とローレベルの電圧との差を電圧差ΔVとすると、ドライバトランジスタQ1のゲート電圧Vgおよび節点aの電圧Vaも電圧差ΔVだけ低下する。そして、ゲート電圧Vgおよび節点aの電圧Vaは、
【0028】
【数2】

【0029】
となる。
【0030】
その後の時刻t12において、リセット信号rstをハイレベルにしてスイッチSW3をオン状態とする。するとドライバトランジスタQ1のゲート電圧Vgが参照電圧Vrefに等しくなり、節点aの電圧Vaも変化して、
【0031】
【数3】

【0032】
となる。従って保持コンデンサC1の端子間の電圧VC1は、
【0033】
【数4】

【0034】
となる。
【0035】
ここで重要なことは、スイッチSW3をオン状態とした後にスイッチSW5をオン状態にしたときに、ドライバトランジスタQ1をオン状態にすることができるように節点aの電圧Vaが十分低くなることである。言い換えれば、このときに、保持コンデンサC1の端子間の電圧VC1がしきい値電圧Vthと比較して十分大きくなることである。例えば本実施の形態において、Vs(0)=−5(V)、Vref=0(V)、VC1(0)=0(V)、ΔV=30(V)、さらに保持コンデンサC1の容量と初期化コンデンサC2の容量とが等しいと仮定する。すると、保持コンデンサC1の端子間の電圧VC1は17.5(V)であり、ドライバトランジスタQ1のソース電圧Vaが−17.5(V)となって、しきい値電圧Vthと比較して十分大きくなる。このため、ドライバトランジスタQ1をオン状態にすることが可能である。
【0036】
次に、時刻t13においてマージ信号mrgをハイレベルにしてスイッチSW5をオン状態にする。すると、しきい値電圧Vthより高い電圧に充電された保持コンデンサC1がスイッチSW5を介してドライバトランジスタQ1のゲート・ソース間に接続される。このため、ドライバトランジスタQ1はオン状態となり、保持コンデンサC1の電荷を放電してドライバトランジスタQ1のソース電圧Vsが上昇をはじめる。そして、ドライバトランジスタQ1のゲート・ソース間電圧Vgsがしきい値電圧Vthと等しくなった時点でドライバトランジスタQ1はオフ状態となる。従って、保持コンデンサC1の端子間の電圧VC1はしきい値電圧Vthに等しくなる。すなわち、
【0037】
【数5】

【0038】
である。
【0039】
この後、時刻t14で、マージ信号mrgをローレベルとしてスイッチSW5をオフ状態とする。そして時刻t15において、リセット信号rstをローレベルにしてスイッチSW3をオフ状態とする。
【0040】
(書込み期間T2)
図5は、本発明の実施の形態における画像表示装置の書込み期間T2における動作を説明するための回路図である。
【0041】
書込み期間T2の時刻t21において、走査信号ScnをハイレベルとしてスイッチSW2をオン状態とする。するとこのときデータ線20に供給されているデータ信号dataに対応した電圧Vdataが、保持コンデンサC1の一方の端子に印加される。そのため、保持コンデンサC1と初期化コンデンサC2とにより電圧Vdataを容量分割した電圧だけ保持コンデンサC1の電圧VC1が増加して、
【0042】
【数6】

【0043】
となる。
【0044】
その後の時刻t22において、走査信号ScnをローレベルとしてスイッチSW2をオフ状態とする。
【0045】
(発光期間T3)
図6は、本発明の実施の形態における画像表示装置の発光期間T3における動作を説明するための回路図である。
【0046】
時刻t31においてマージ信号mrgをハイレベルとしてスイッチSW5をオン状態とする。これによりドライバトランジスタQ1のゲート・ソース間電圧Vgsが保持コンデンサC1の端子間の電圧VC1と等しくなる。
【0047】
その後の時刻t32において、トリガ信号trgをハイレベルとしスイッチSW4をオン状態とする。すると有機EL素子D1に電流が流れ、有機EL素子D1が画像信号に対応した輝度で発光する。このとき有機EL素子D1に流れる電流Ipxlは、
【0048】
【数7】

【0049】
となる。なお、βはドライバトランジスタQ1の移動度μ、ゲート絶縁膜容量Cox、チャンネル長L、チャンネル幅Wに依存して決まる係数であり、
【0050】
【数8】

【0051】
で表される。
【0052】
このように、有機EL素子D1に流れる電流Ipxlにはしきい値電圧Vthの項が含まれない。従って、ドライバトランジスタQ1のしきい値電圧Vthが経時変化により変動した場合であっても有機EL素子D1に流れる電流Ipxlはその影響を受けることがない。
【0053】
そしてドライバトランジスタQ1のソース電圧Vsが節点aの電圧Vaと等しくなって以降の時刻t33において、マージ信号mrgをローレベルとしてスイッチSW5をオフ状態とする。しかしスイッチSW5をオフ状態としてもドライバトランジスタQ1のゲート電圧Vgは変化しない。すなわち、節点aの電圧VaとドライバトランジスタQ1のソース電圧Vsとも依然等しいままであり、有機EL素子D1に流れる電流Ipxlも変化しない。
【0054】
なお本実施の形態においては、しきい値検出期間T1、書込み期間T2、発光期間T3の時間を、それぞれ1ms、16μs、15msに設定した。しかしこれらの時間は有機EL素子D1の特性、保持コンデンサC1の容量、その他、画素回路10を構成する各素子の特性等により最適に設定することが望ましい。また静止画像では輝度を高くするために発光期間T3の時間を長く設定し、動画像では発光の応答速度を考慮して発光期間T3の時間をやや短めに設定する等、表示する画像の種類により設定してもよい。
【0055】
また上述の説明では、高電圧側電源線24の電圧を5(V)、低電圧側電源線25の電圧を−15(V)、参照電圧Vrefを0(V)とした。しかしこれらの電圧値も画素回路10を構成する各素子の特性等により最適に設定することが望ましい。例えばドライバトランジスタQ1がエンハンスメント型トランジスタであれば、参照電圧Vrefを高電圧側電源線24の電圧と同一とすることで参照電圧線26を省略することができる。またこの省略によって、画素回路10の各素子および配線のレイアウトを簡素化することができる。
【0056】
図7は、本発明の実施の形態における、参照電圧Vrefを高電圧側電源線24の電圧と等しい電圧に設定した場合の画素回路10の各素子のレイアウトの一例を示す図である。図7において、画素回路10を構成するドライバトランジスタQ1、トランジスタQ2〜Q5、保持コンデンサC1、初期化コンデンサC2、有機EL素子D1の各素子は、それぞれ図2と同じ符号を付して示している。
【0057】
データ線20は図7において画素回路10の左側に列方向に配置され、高電圧側電源線24は画素回路10の右側に列方向に配置されている。図7においては、この高電圧側電源線24は参照電圧線26を兼ねている。また、走査線41は図7において画素回路10の上側に行方向に配置され、リセット線42は走査線41の下側に行方向に配置され、マージ線44はさらにその下側に行方向に配置され、トリガ線43はさらにその下側に行方向に配置されている。そして、列方向に配置されたデータ線20および高電圧側電源線24を第1の層の配線で構成し、行方向に配置された走査線41、リセット線42、マージ線44およびトリガ線43を第1の層とは別の第2の層の配線で構成することができる。このように、参照電圧Vrefを高電圧側電源線24の電圧と等しい電圧に設定することで、画素回路10の各素子および配線のレイアウトを簡素化することができる。
【0058】
また本実施の形態においては、保持コンデンサC1の容量と初期化コンデンサC2の容量とが等しいと仮定して画素回路10の動作を説明した。しかし、これらの容量値も画素回路10を構成する各素子の特性や駆動条件等により最適に設定することが望ましい。例えば保持コンデンサC1の容量は、ドライバトランジスタQ1のゲート・ソース電極間やゲート・ドレイン電極間に存在する寄生容量や、トランジスタQ2、Q3のオフリーク電流等の影響によって、発光期間T3の間に端子間の電圧VC1が変化しないように十分に大きく設定することが望ましい。また、保持コンデンサC1にデータ信号dataを書込むことができ、かつ保持コンデンサC1を確実に初期化できるように初期化コンデンサC2の容量を設定することが望ましい。
【0059】
以上に説明したように本実施の形態によれば、ドライバトランジスタQ1のしきい値電圧Vthが経時変化により変動した場合であっても有機EL素子D1に流れる電流Ipxlはその影響を受けることがなく、画像信号に対応した輝度で有機EL素子D1を発光させることができる。さらに本実施の形態によれば、有機EL素子D1は発光期間T3において画像信号に対応した輝度で発光し、しきい値検出期間T1の開始時における保持コンデンサC1のリセット期間において画像信号に無関係に発光することがない。このため、本実施の形態によれば、コントラストの高い画像を表示することができる。
【0060】
また、保持コンデンサC1の端子間の電圧VC1によって有機EL素子D1の輝度が決まるため、保持コンデンサC1の端子間の電圧VC1が想定外の変動を起こさないように駆動する必要がある。そのために、図3に示したシーケンスにもとづき各トランジスタを制御することで保持コンデンサC1の電圧を確実に制御することができる。
【0061】
このように本実施の形態によれば、ドライバトランジスタQ1のソースに有機EL素子D1を接続し、有機EL素子D1のカソードを低電圧側電源線25に共通に接続する画素回路10を、Nチャンネル型トランジスタのみを用いて構成することができる。そして本実施の形態における画素回路10はアモルファスシリコン薄膜トランジスタを用いて大型の表示装置を構成する場合に最適であるが、Nチャンネル型ポリシリコン薄膜トランジスタを用いる場合であっても望ましいものである。
【0062】
なお、本実施の形態においては、行方向に配列された画素回路10に対してはしきい値検出期間T1、書込み期間T2、発光期間T3の3つの期間の位相を一致させ、列方向に配列された画素回路10に対してはそれぞれの書込み期間T2が重ならないように上記3つの期間の位相をずらして駆動する構成について説明した。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、例えば1フィールド期間をしきい値検出期間T1、書込み期間T2、発光期間T3を含む3つの期間に分割し、すべての画素回路10を同期させて駆動してもよい。すなわち参照電圧Vrefをデータ線20より供給することでトランジスタQ3を省略することができ、トランジスタ数の削減を図ることができる。
【0063】
また、本実施の形態において示した電圧値等の各数値はあくまでも一例を示したものであり、これらの数値は有機EL素子D1の特性や画像表示装置の仕様等により適宜最適に設定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の画像表示装置によれば、ドライバトランジスタのソースに電流発光素子を接続した画素回路を、Nチャンネル型トランジスタを用いて画素回路を構成することが可能となり、電流発光素子を用いたアクティブマトリクス型の画像表示装置として有用である。
【符号の説明】
【0065】
10 画素回路
11 走査線駆動回路
12 データ線駆動回路
14 電源線駆動回路
20 データ線
24 高電圧側電源線
25 低電圧側電源線
26 参照電圧線
41 走査線
42 リセット線
43 トリガ線
44 マージ線
D1 有機EL素子
C1 保持コンデンサ
C2 初期化コンデンサ
Q1 ドライバトランジスタ Q2,Q3,Q4,Q5 トランジスタ
SW2,SW3,SW4,SW5 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流発光素子と、
前記電流発光素子に電流を流すドライバトランジスタと、
前記ドライバトランジスタの流す電流量を決める電圧を保持する保持コンデンサと、
画像信号に応じた電圧を前記保持コンデンサに書込む書込みトランジスタと
を有する画素回路を複数配列した画像表示装置であって、
前記画素回路のそれぞれを構成するトランジスタはNチャンネル型トランジスタであり、
前記画素回路のそれぞれはイネーブルトランジスタと前記イネーブルトランジスタを制御するイネーブル線と初期化コンデンサと分離トランジスタとをさらに備え、
前記イネーブルトランジスタのソース・ドレインのうちの一方は前記ドライバトランジスタのソースと接続され、前記イネーブルトランジスタのソース・ドレインのうちの他方は前記電流発光素子のアノードと接続され、
前記保持コンデンサの一方の端子は前記ドライバトランジスタのゲートに接続され、
前記保持コンデンサの他方の端子は前記初期化コンデンサの一方の端子に接続され、
前記初期化コンデンサの他方の端子は前記保持コンデンサの電圧を初期化するためのトリガ信号を供給するトリガ線に接続され、
前記分離トランジスタのソース・ドレインのうちの一方は前記保持コンデンサと前記初期化コンデンサとが接続された節点と接続され、
前記分離トランジスタのソース・ドレインのうちの他方は前記ドライバトランジスタのソースと接続され、
前記トリガ線に前記トリガ信号を供給する前に、前記イネーブルトランジスタをオフ状態にする
画像表示装置。
【請求項2】
前記トリガ線の電位を、前記トリガ信号を供給する前の電位にした後に、前記イネーブルトランジスタをオン状態にする
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記分離トランジスタがオン状態であるときに、前記トリガ線に前記トリガ信号を供給し、
その後、前記分離トランジスタをオフ状態にする
請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記画素回路のそれぞれは、ソースまたはドレインの一方を前記ドライバトランジスタのゲートに接続され、前記ドライバトランジスタのゲートに参照電圧を印加するための参照トランジスタをさらに備え、
前記イネーブルトランジスタをオフ状態にするより前に、前記参照トランジスタをオン状態にする
請求項1乃至3に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−230423(P2012−230423A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172617(P2012−172617)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2009−523529(P2009−523529)の分割
【原出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】