説明

画像計測方法、画像計測装置及び画像検査装置

【課題】撮影装置の光学特性の歪み成分の補正値によって撮影装置を校正でき、プロジェクタの投影画像における光学特性の計測を精度良く行うことができる画像計測方法を提供する。
【解決手段】黒色及び白色で所定のパターンで形成された校正パターンをプロジェクタによって単色光で照明する(S101)。そして、撮影装置によって校正面の校正パターンを撮影し(S102)、画像処理装置によって撮影装置から出力される画像信号に基づいて校正パターンの位置を解析する(S103)。解析した実際の校正パターンの位置と理想の校正パターンの位置との相対関係から撮影装置の光学特性の歪み成分の補正値を算出する(S104)。計測対象のプロジェクタが投影した投影画像から得られた画像信号を補正値で補正し(S109)、補正された画像信号に基づいて投影画像の光学特性を計測する(S110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタからスクリーンに投影された投影画像の光学特性を計測する画像計測方法、画像計測装置及び画像検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタは、光源から照射された光束を画像情報に応じて変調して作成した光画像をスクリーンに投影するものである。そのスクリーンが反射型スクリーンであれば投影画像をスクリーンの表面側から観察でき、透過型スクリーンであれば投影画像をスクリーンの背面側から観察できる。
【0003】
プロジェクタの投影画像の品質を判断する特性として、投影画像の歪みがある。この投影画像の歪みとは、図12に示すように、プロジェクタから例えば格子状の投影パターンの画像情報に基づいて作成した理想の投影画像101(図中破線で示す仮想画像)の形状に比べて、スクリーン102上に投影された実際の投影画像103(図中実線で示す)の形状が異なってしまう状態のことをいう。この投影画像の歪みの原因は、スクリーン102の表面の凹凸のような投影環境の他にプロジェクタの構成が関係する。
【0004】
そのプロジェクタの構成と投影画像の歪みの関係について図面を用いて以下に説明する。図13は計測対象のプロジェクタの構成を示す概略斜視図である。同図に示すプロジェクタ200では、光源201から出射された光が光学像形成パネル202に到達し、到達した光は画像情報に応じて光学像形成パネル202の画素単位に配列されたパネルによって反射させられたり、透過させられたりして画素単位のドット画像の投影光に変調される。そのドット画像の投影光が投射レンズ203を通じてスクリーン204に投影される。このような構成部材を有するプロジェクタ200では、これらの構成部材間の相互設置精度、投射レンズの光学精度、各構成部材の姿勢精度などが影響して、投影画像の歪みが生じる。特に、プロジェクタからスクリーンまでの距離を短くした短焦点型のプロジェクタでは、プロジェクタから投影した投影画像を非球面ミラーなどに投射し、その反射光をスクリーンに投影する。この非球面ミラー自体の形状精度や設置精度のわずかな誤差によっても、投影画像の歪みが大きく発生する。
【0005】
また、プロジェクタには液晶3板式プロジェクタと呼ばれ、RGBに色分解した投影画像を合成して作成したフルカラー画像を投影するものがある。図14に示す液晶3板式プロジェクタ300では、光源301から照射された光をダイクロイックミラー302、303、ミラー304〜306によって3つ光路に分解する。分解された光は画像情報に応じてRGBの各光学像形成パネル307〜309によって各色毎のドット画像光となる。3つの色分解のドット画像光はクロスプリズム310によって合成され、複数のレンズで構成された投影レンズユニット311を介して図示していないスクリーンに投影される。そして、合成されたプロジェクタの投影画像には、光学系における構成部材間の設置ずれ、及び各色画像の各光学系相互のずれが原因となって、色ズレという現象が生じる。例えば、図15の(a)に示す文字の黒色は、RGB全ての基本色の光の合成された色である。図15の(b)に示すRGBの各色信号に基づいて作成された文字を合成した際、各色画像の各光学系相互のずれにより、図15の(c)に示すような色ズレが生じる。
【0006】
このようなプロジェクタにおける投影画像の歪みや色ズレを調整する方法として、特許文献1に記載されているものが知られている。この特許文献1の調整方法は、校正パターンの画像情報に基づいて作成した投影画像をプロジェクタからスクリーンに投影させ、この投影画像を撮影装置で撮影して、その撮影画像を解析して投影画像に対する補正値を求めて投影画像の歪みや色ズレを調整するものである。この補正量はプロジェクタの構成及び撮影装置の光学特性の歪み成分の両方の要因から生じた投影画像の歪みや色ズレを補正する補正値である。投影画像の色ズレの調整を高精度に行うためには画素単位のドット画像を撮影して解像度を確保しなければならない。そのために、できるだけスクリーン側に撮影装置を近づけて拡大撮影している。しかし、スクリーンの一部の領域を拡大して限られた撮影範囲で撮影しただけでは、歪みの規模によっては投影画像の歪みを計測できない。例えば、スクリーンの広い範囲に亘ってゆるやかに投影画像が歪んでいる場合にはそのスクリーンの一部の領域を撮影しただけでは上記投影画像の歪みを計測できない。そのため、このような広い範囲に亘る投影画像の歪みを計測するためには、スクリーンの計測箇所を複数に分けて各計測箇所毎に上記校正パターンのチャートを撮影していく方法があるが、この方法では工程数が増えるという問題がある。この問題を解決するために、上記特許文献1の調整方法では、撮影装置に高解像度の撮像素子を搭載することで大きな撮影範囲を高解像度で撮影することで広範囲に投影画像の歪みを計測できるので、上記特許文献1の調整方法では、少ない撮影装置の数でスクリーン上の複数ポイントの色ズレを計測できるため、低コストで、かつ高速に画像計測が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の投影画像の歪みや色ズレを調整する方法では、1つの撮影装置でスクリーンの広い範囲を撮影する場合、その撮影装置に搭載されたレンズの収差により、画像信号自体に投影画像の歪み成分の信号を含んでしまうことがある。レンズの収差には歪曲収差、球面収差、コマ収差、非点収差、色収差があり、特にコマ収差によって画像が歪んで撮影されてしまう。また、撮影する画像光の分光特性によってその歪みが異なってしまう現象は、プロジェクタの投影画像を計測して歪みを算出する場合においては大きな誤差となってしまう。また、プロジェクタの投影画像の計測では、各プロジェクタによって照射する光の分光特性が全て同一とならないため、撮影装置を各プロジェクタ毎に位置調整してもプロジェクタ毎のレンズの収差があるのでそのレンズの収差による計測誤差は改善できない。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的はプロジェクタの投影画像における光学特性の計測を精度良く行うことができる画像計測方法、画像計測装置及び画像検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、光源から照射された光束を画像情報に応じて変調して作成した光画像を計測対象のプロジェクタによってスクリーン上に投影し、投影された投影画像を撮影する撮影装置と、該撮像装置から出力される画像信号を解析して投影画像の光学特性の歪み成分を算出する画像処理装置と、を備え、該撮影装置から出力される画像信号に基づいて投影画像の光学特性を計測する画像計測装置であって、黒色及び白色でかつ所定のパターンで形成された校正パターンの校正面を有する校正面部材の前記校正面を前記プロジェクタによって単色光で照明し、前記撮影装置によって前記校正面の校正パターンを撮影し、前記画像処理装置によって前記撮影装置から出力される画像信号に基づいて前記校正パターンの位置を解析し、解析した実際の前記校正パターンの位置と理想の前記校正パターンの位置との相対関係から前記撮影装置の光学特性の歪み成分の補正値を算出し、前記プロジェクタによって所定の計測用パターンの画像情報に基づいて生成した投影画像をスクリーンに投影し、前記撮影装置によって前記投影画像を撮影し、前記撮影装置から出力される画像信号を、算出した前記撮影装置の光学特性の歪み成分の補正値によって補正し、補正された画像信号に基づいて前記投影画像の光学特性を計測することを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、計測用のプロジェクタを照明として用いて校正パターンの校正面を有する校正面部材を照射して撮影装置で当該校正パターンを撮影する。そして、画像処理手段によって撮影装置の光学特性の歪み成分の補正値を予め算出しておく。この補正値を用いて、画像計測で得られた計測対象のプロジェクタの投影画像を撮影装置で撮影して得られた画像信号を補正することで、撮影装置が光学特性の歪み成分を有していても投影画像から得られた画像信号から撮影装置の光学特性の歪み成分を排除でき、プロジェクタの投影画像における光学特性の計測を精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、プロジェクタの投影画像における光学特性の計測を精度良く行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像計測装置の構成を示す概略図である。
【図2】校正パターンの一例を示す平面図である。
【図3】校正パターンの別の例を示す平面図である。
【図4】本実施形態の投影画像の歪み検査処理を示すフローチャートである。
【図5】プロジェクタ投影パターン計測座標の補正の概要を示す図である。
【図6】補正計算方法の一例を説明する図である。
【図7】プロジェクタの画像ひずみ状態を表すイメージを示す平面図である。
【図8】本実施形態の別の変形例における投影画像の歪み検査処理を示すフローチャートである。
【図9】レジスト検査時のスクリーン上の投影画像を示す図である。
【図10】アスペクト比検査時のスクリーン上の投影画像を示す図である。
【図11】線曲がり検査時のスクリーン上の投影画像を示す図である。
【図12】投影画像の歪みを示す平面図である。
【図13】計測対象のプロジェクタの構成を示す概略斜視図である。
【図14】液晶3板式プロジェクタの構成を示す概略図である。
【図15】プロジェクタの投影画像における色ズレ現象を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した画像計測装置の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態の画像計測装置の構成を示す概略図である。同図に示す画像計測装置10は、計測対象のプロジェクタ20を固定して設置する固定装置11と、プロジェクタ20が画像を投影するスクリーン12と、スクリーン12に投影された投影画像を撮影する撮影装置13と、撮影装置13が撮影した画像信号を解析する画像解析手段14と、スクリーン12の直前に設置可能な白黒の所定の校正パターンが形成された校正面部材15とを含んで構成されている。撮影装置13は、CCDカメラなど固体撮像素子を搭載して一般的な撮影装置である。また、撮影装置13の撮像素子はモノクロであって、カラー撮像素子や3板式撮像素子である必要は無い。モノクロ撮像素子であれば、光の全波長帯域に対して感度を有しており、単板式であってもカラー撮像素子と比較して高解像度及び低コストが期待できる。校正面部材15に形成された校正パターンは、同一のパターンが等間隔で校正面に配置され、そのパターン位置などの情報は予め精密測定した実測値として取得されているとする。図2に示す校正面部材15の校正パターンの一例は、背景の色が黒で、パターン部が白色の格子パターンが繰り返し形成され、更に各交点座標は等間隔となっている。図3に示す校正パターンの別の例は、丸パターンであり、背景の色が黒で、パターン部の丸部分が白色である。同一の丸パターンが繰り返し形成され、更に丸部分の中心が等間隔となっている。
【0014】
次に、本実施形態の投影画像の歪み検査処理について処理フローの図4に従って説明する。
先ず、撮影装置の収差補正などを行う第1の工程について説明する。第1の工程(ステップS101〜S104)は図1の撮影装置13とスクリーン12の位置関係を変更せず、プロジェクタ20からの投影画像の基本色が変更なければ毎回実施する必要は無い。計測対象のプロジェクタ20又は同一機種のプロジェクタを固定装置11に設置する。次に、スクリーン12の直前に、校正面部材15を設置する。もしくは、スクリーン12を取り外し、校正面部材を設置しても良い。スクリーン12の光学面と校正面部材15の校正面で、フォーカス位置が合わないなどの問題がないように、スクリーン12と校正面部材15を設置しておく。次に、プロジェクタから、基本色の均一画像データを、校正面部材15の校正面に照明する(ステップS101)。更に、他の光源からの光が入らないようにする。基本色の均一画像データとは、プロジェクタの画像色形成で使われる基本色であって、例えばRGB3板式液晶プロジェクタではR光のみを照射させ、他のG光、B光は完全に遮光させる。校正面部材15の校正面が白黒パターンで形成され、照明光はプロジェクタの基本色であるので、スクリーン12を反射した光は校正面部材15の校正面の白部のみで反射する。その反射光はプロジェクタの分光特性がそのまま反映されることになる。この状態で、図1の撮影装置13を使って、校正面部材15の校正面を撮影する(ステップS102)。撮像手段13からの画像信号に基づいて図1の画像解析手段14によって校正面部材15の校正面のパターン位置を解析し、つまり校正ポイントの位置座標を計測する(ステップS103)。そして、校正面部材15の校正面の実測値を用いることで、計測対象のプロジェクタ20の基本色での、撮影装置13のレンズの色収差成分を含んだ撮影装置の画像歪みの補正処理データを算出する(ステップS104)。
【0015】
ここで、校正パターンを用いた、プロジェクタ投影パターン計測座標の補正の概要について図5を用いて説明する。同図において、検出された校正パターンの座標31と、実測された測定値から仮想的に計算された正しい校正パターンの座標32との関係より、補正後の座標34へ、検出されたプロジェクタパターンの座標33を補正する。この補正計算方法の一例を、図6に示す。この補正計算では、校正パターンの各検出ポイントからプロジェクタの点灯パターン位置までの距離総和に対する各検出ポイントからプロジェクタの点灯パターン位置までの距離の比を算出して、各検出ポイントのX,Y座標毎の理想ポイントの座標との差分から位置補正されたプロジェクタ点灯パターンの位置座標を求める。この補正計算により、検出されたプロジェクタパターン座標は、仮想的に設定された正しい校正パターン座標に射影されるため、撮影装置による歪み成分を補正することができる。同図に示す各ポイントの理想座標A’、B’、C’のデータは予めメモリに格納されている。
【0016】
次に、図4における画像歪み検査となる第2の工程について説明すると、図1の計測対象のプロジェクタ20を固定装置11にて設置し、プロジェクタ20から校正時に用いた基本色で位置パターンを、校正面部材から切り替えたスクリーン12に投影させる(ステップS106)。この位置パターンも、図2及び図3のような校正パターンを用いる。ただし両者は必ずしも一致する必要は無い。そして、このスクリーン12に投影された画像を、撮影装置13で撮影し(ステップS107)、その画像信号を画像解析手段14で解析することで位置パターンの座標値を算出する(ステップS108)。座標値は第1の工程で得られた補正データを用いて撮影系の持つ収差などの誤差成分を補正する(ステップS109)。そして、プロジェクタの画像ひずみ状態を表すイメージを示す図7には、図1の撮像手段にて検出されたプロジェクタパターンの座標33と、上記補正方法によって補正されたプロジェクタパターンの座標34とが示されている。検出されたプロジェクタパターンの座標34には、撮像手段のレンズ収差成分も含んだ画像の歪みであるのに対して、これを補正した結果であるパターン座標では、計測対象であるプロジェクタ自身による歪み成分のみとなる。この2つのデータから、画像の歪みの特徴量である、各パターン座標で形成される直線の直線性や直線間のピッチによって形成される倍率の誤差などを算出して、画像歪みを検査することができる(ステップS110)。このように、第1の工程で歪み計測に用いる撮影装置の収差補正を、第2の工程でプロジェクタの画像品質特性である歪み計測をそれぞれ行うことができる。
【0017】
本実施形態の別の変形例としての画像計測装置では、プロジェクタの基本色のみで行った操作を、計測対象のプロジェクタのカラー画像形成色ごと(RGBならば、RGB毎)に実施して、各形成色での位置パターン誤差を相対的に比較することで、プロジェクタの投影画像全域の色ズレ量分布を求めている。具体的には、3板式液晶プロジェクタでは、RGBの3つの光学像形成パネルが搭載され、各パネルで画像形成されるので、本実施形態を適用する場合、図8に示すように、R、G、Bの3つの色ごとに上記第1の工程及び上記第2の工程をそれぞれ行い(ステップS201、S202、S203)、位置パターンの計測を行う。そして、RGBの各パターン座標値から色ズレ量を算出し(ステップS204)、色ズレ量の検査を行う(ステップS205)。
【0018】
次に、上述の画像計測装置によって得られた被検査対象のプロジェクタの投影画像の品質を検査する画像検査装置について説明する。この画像検査装置は、実際には格子パターンを投影して、各交点の座標を上述の画像計測装置によって取得し、レジスト、アスペクト比、線曲がりや色ずれを検査する装置である。
はじめに、レジストの検査について説明する。ここで、レジストは投影画像位置のことである。検査は、被検査対象のプロジェクタを指定位置に設置してから行う。そして、プロジェクタのズーム機能を用いてズーム等の操作を行うことで指定投影サイズにする。このときのスクリーン上の投影画像の位置がレジストである。図9はレジスト検査時のスクリーン上の投影画像を示す図である。同図での実線はスクリーン40上に投影された被検査投影パターン41であり、点線は理想投影パターン42である。予め校正面の原点に対する投影パターン指定位置との理想座標値を設定して、実際の投影画像の座標値との差から、検査する。そして、検査対象位置43の理想投影パターンとの差(ΔX、ΔY)が指定された規格値以下であるかどうかを判定することで、レジストの検査を行う。
【0019】
次に、アスペクト比の検査について説明する。ここで、アスペクト比とは、投影画像の縦横比のことである。被検査対象のプロジェクタは、投影画像のアスペクト比の設計値を有している。この設計値に対する公差以上のアスペクト比であった場合、例えば投影文字の縦横比が設計値と異なる。例えばつぶれた文字になってしまう。そこで、アスペクト比の検査は、図10に示すように、スクリーン40上に投影された被検査投影パターンの縦(=LY)、横(=LX)を計測する。そして。アスペクト比R=LY/LXを算出し、設計値公差と比較することで、アスペクト比の検査を行う。
【0020】
次に、線曲がりの検査について説明する。投影画像において、本来直線であるパターンが曲がった状態で投影される場合がある。特に、短焦点プロジェクタなど、非球面レンズやミラーなどを搭載したものは、部品精度や組み付け精度によって投影画像が変形する場合がある。そこで、線曲がりの検査では、図11に示すように、格子パターンで形成される各ラインの任意ラインまたは全ラインに対して行われるものである。そして、本来直線であるところのラインがどの程度曲がっているかを示す指標を求める。具体的には、図11に示すように、1ラインを形成する格子パターンの各交点座標を元に、その開始点と終了点で形成される直線に対して、その垂直方向の距離を、交点座標ごとに求める。その中で、+側と−側の最大値をそれぞれ求め、その差を指標(曲がり量)とする。この曲がり量と規格値との比較により、線曲がりの検査を行う。
【0021】
次に、色ずれの検査について説明する。上述した図8のように、画像計測を計測対象のプロジェクタのカラー画像形成色ごとに実施して、各形成色での位置パターン誤差を相対的に比較する。これにより、プロジェクタの投影画像全域の色ずれ量分布を求めている。具体的には、とりわけ3板式液晶プロジェクタでは、RGBの3つの液晶パネルが搭載され各パネルで画像形成されるので、RGBの3つの色ごとに位置パターンの計測を行う。そして、RGBの各パターン座標値から色ずれ量を算出することにより、色ずれの検査を行う。
【0022】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
本実施形態の画像計測方法において、上記実施形態について説明したように、画像歪みの計測の際、撮影装置自体が持つ収差成分に対して計測対象のプロジェクタの投影画像光を用いて補正値を算出するので、プロジェクタの投影画像光の分光特性に関わらず、撮影装置の光学系の収差成分を正確に補正でき、少ない撮影装置でも広域に適用でき、高精度に投影画像の光学特性を計測することができる。
(態様B)
(態様A)において、校正パターンと計測用パターンとは同じパターンである。これによれば、上記実施形態について説明したように、画像の歪みに対する補正値をより簡単に算出することができる。
(態様C)
(態様A)又は(態様B)において、カラー画像を形成する基本色毎の光で校正パターンを照明して撮影装置によって基本色毎の校正パターンをそれぞれ撮影することで、基本色毎の撮影装置の光学特性の歪み成分の補正値をそれぞれ算出する。これによれば、上記実施形態の変形例について説明したように、色ズレ計測の際、撮影系が持つ収差成分に対して、計測対象のプロジェクタのカラー画像の基本色に対応する各投影画像光を用いて補正値をそれぞれ算出するので、プロジェクタの投影画像光の分光特性に関わらず、撮影系の収差成分を正確に補正でき、高精度に投影画像の光学特性を計測することができる。
(態様D)
本実施形態の画像計測装置において、上記実施形態について説明したように、画像歪みの計測の際、撮影手段自体が持つ収差成分に対して計測対象のプロジェクタの投影画像光を用いて補正値を算出するので、プロジェクタの投影画像光の分光特性に関わらず、撮影手段の光学系の収差成分を正確に補正でき、少ない撮影装置でも広域に適用でき、高精度に投影画像の光学特性を計測することができる。
(態様E)
(態様D)において、カラー画像を形成する基本色毎の光で校正パターンを照明して撮影装置によって基本色毎の校正パターンをそれぞれ撮影することで、基本色毎の撮像手段の光学特性の歪み成分の補正値をそれぞれ算出する。これによれば、上記実施形態の変形例について説明したように、色ズレ計測の際、撮影系が持つ収差成分に対して、計測対象のプロジェクタのカラー画像の基本色に対応する各投影画像光を用いて補正値をそれぞれ算出するので、プロジェクタの投影画像光の分光特性に関わらず、撮影系の収差成分を正確に補正でき、高精度に投影画像の光学特性を計測することができる。
(態様F)
(態様D)又は(態様E)の画像計測装置を用い、計測対象のプロジェクタによって投影された所定のパターンを撮影して得られる投影画像の特性値に基づいて投影画像の品質を検査する。これによれば、実施形態の変形例について説明したように、プロジェクタが投影した画像の品質検査、例えばレジスト、アスペクト比、線曲がりや色ずれの検査を投影画像の特性値で行うことができるので、目視検査と比較して検査結果にバラツキがなくなる。
【符号の説明】
【0023】
10 画像計測装置
11 固定装置
12 スクリーン
13 撮影装置
14 画像解析手段
15 校正面部材
20 プロジェクタ
31 座標
32 座標
33 座標
34 座標
40 スクリーン
41 被検査投影パターン
42 理想投影パターン
43 検査対象位置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特許第3853674号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射された光束を画像情報に応じて変調して作成した光画像を計測対象のプロジェクタによってスクリーン上に投影し、投影された投影画像を撮影する撮影装置と、該撮像装置から出力される画像信号を解析して投影画像の光学特性の歪み成分を算出する画像処理装置と、を備え、該撮影装置から出力される画像信号に基づいて投影画像の光学特性を計測する画像計測装置であって、
黒色及び白色でかつ所定のパターンで形成された校正パターンの校正面を有する校正面部材の前記校正面を前記プロジェクタによって単色光で照明し、前記撮影装置によって前記校正面の校正パターンを撮影し、前記画像処理装置によって前記撮影装置から出力される画像信号に基づいて前記校正パターンの位置を解析し、解析した実際の前記校正パターンの位置と理想の前記校正パターンの位置との相対関係から前記撮影装置の光学特性の歪み成分の補正値を算出し、
前記プロジェクタによって所定の計測用パターンの画像情報に基づいて生成した投影画像をスクリーンに投影し、前記撮影装置によって前記投影画像を撮影し、前記撮影装置から出力される画像信号を、算出した前記撮影装置の光学特性の歪み成分の補正値によって補正し、補正された画像信号に基づいて前記投影画像の光学特性を計測することを特徴とする画像計測方法。
【請求項2】
請求項1記載の画像計測方法において、
前記校正パターンと前記計測用パターンとは同じパターンであることを特徴とする画像計測方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像計測方法において、
前記校正パターンを計測対象の前記プロジェクタを用いて照明する際に、プロジェクタによってカラー画像を形成する基本色毎の光で前記校正パターンを照明し、前記撮影装置によって基本色毎の前記校正面の校正パターンをそれぞれ撮影し、前記画像処理装置によって前記基本色毎の前記撮像装置の光学特性の歪み成分の補正値をそれぞれ算出し、計測対象の前記プロジェクタによって計測用パターンの投影画像をスクリーンに投影させる際に、前記基本色毎で計測用パターンを投影させ、各基本色に応じた各補正値によって補正し、各基本色毎の投影画像における対応関係となる計測用パターンの座標位置間の相対位置からプロジェクタ画像の色ズレ分布を算出することを特徴とする画像計測方法。
【請求項4】
光源から照射された光束を画像情報に応じて変調して作成した光画像を計測対象のプロジェクタによってスクリーン上に投影し、投影された投影画像を撮影する撮影装置と、該撮像装置から出力される画像信号を解析して投影画像の光学特性の歪み成分を算出する画像処理装置と、を備え、該撮影装置から出力される画像信号に基づいて投影画像の光学特性を計測する画像計測装置において、
前記撮影装置は、黒色及び白色で所定のパターンで形成された校正パターンの校正面を有する校正面部材の前記校正面を前記プロジェクタによって単色光で照明させて前記校正面を撮影し、
前記画像処理装置は、前記撮影装置から出力される画像信号に基づいて前記校正パターンの位置を解析し、解析した実際の前記校正パターンの位置と理想の前記校正パターンの位置との相対関係から前記撮影装置の光学特性の歪み成分の補正値を算出し、
前記撮影装置は、前記校正面部材に替えて前記スクリーンに、前記プロジェクタによって所定の計測用パターンの画像情報に基づいて生成して投影された投影画像を撮影し、
前記画像処理装置は、前記撮影装置から出力される画像信号を、予め算出した前記撮影装置の光学特性の歪み成分の補正値によって補正し、補正された画像信号に基づいて前記投影画像の光学特性を計測することを特徴とする画像計測装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像計測装置において、
前記撮影装置は、前記プロジェクタによってカラー画像を形成する基本色毎の光で前記校正パターンを照明させて基本色毎の前記校正面の校正パターンをそれぞれ撮影し、
前記画像処理装置は、前記基本色毎の前記撮像装置の光学特性の歪み成分の補正値をそれぞれ算出し、
前記撮影装置は、計測対象の前記プロジェクタに計測用パターンの投影画像を投影させる際に、前記基本色毎で計測用パターンを投影させ、各基本色に応じた各補正値によって補正し、各基本色毎の投影画像における対応関係となる計測用パターンの座標位置間の相対位置からプロジェクタ画像の色ズレ分布を算出することを特徴とする画像計測装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の画像計測装置を用い、計測対象の前記プロジェクタによって投影された所定のパターンを撮影して得られる投影画像の特性値に基づいて投影画像の品質を検査することを特徴とする画像検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−21674(P2013−21674A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86258(P2012−86258)
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】