説明

画像記録方法及び画像記録装置

【課題】インク循環経路を備える画像記録装置は、ユーザがその日最初に画像記録出力を必要とする際に起動され、画像記録するジョブ量に関わりなく、インクが記録適正温度になるまで記録開始を待機する。
【解決手段】記録量の少ない画像記録ジョブが与えられた場合に記録ヘッドのインク液室内に残存するインクのみ又は、インク循環経路に設けられたバイパス連通路によるインク循環経路よりも短いインク加温循環経路内に残存するインクのみを加温して、短時間でインクを記録適正温度に昇温して、短い待機時間で画像記録を開始する画像記録方法及び画像記録装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環するインク流路が設けられ、インクを吐出して記録媒体に画像を記録する画像記録方法及び画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録ヘッドの圧電素子、発熱素子等のアクチュエータを駆動してインクを記録媒体に吐出して画像を記録するインクジェット画像形成装置が知られている。この記録ヘッドのアクチュエータ内に気泡や異物が混入した場合、又は記録ヘッドのノズルから水分が蒸発することでアクチュエータ内に充填されたインクの粘度が上昇した場合、記録ヘッドのアクチュエータ内にインク詰まりが発生し、正常なインク吐出ができず、画像記録を妨げる問題がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、画像記録装置のインク供給経路において、記録ヘッドにインクを供給するインク供給流路と、画像形成に使用されなかったインクをインク供給流路に戻すインク回帰流路とで構築され、インクを循環させるインク循環経路が提案されている。このようなインクの循環を行うことにより、インク流によりヘッド外に異物が流し出されてフィルタにより除去され、さらに流れるインクによる放熱効果を利用して駆動中の記録ヘッドの温度上昇が防止される。また記録ヘッド内に発生した気泡の除去及びインクの増粘防止の効果も奏している。
【特許文献1】特開2006−88575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したインク循環経路を有する画像形成装置は、循環経路を有さない装置に比べて、インクの供給路内に残存するインク量が多くなる。このインク量が多くなることによって、インク全体としての熱容量が大きくなり、インクの温度の変動が少なくなる反面、装置起動後にインク温度が記録可能な状態となるまで加温する過程(ウォームアップ)に時間を要している。
【0005】
インク循環経路を有する従来の画像形成装置は、インク温度が記録適正温度に達していない限り、画像記録を開始できなかった。冬期や気温の低い地域で、画像記録装置が使用される場合、主電源を入れた直後に行われる判定では、インク温度が低く、記録開始不可となる可能性が高い。
【0006】
画像記録装置が起動されるタイミングは、ユーザがその日最初に画像記録出力を必要とする場合が多いが、インクが記録適正温度にならない限り、記録動作は開始されないため、ウォームアップ完了まで待機することとなる。しかし、その待機時間は、装置周囲の外気温に影響され、画像記録出力する記録媒体の枚数(ジョブ量)には関係しない。
【0007】
従って、ユーザが例えば、1枚の画像記録出力された記録媒体を実施する場合であっても、多量の画像記録枚数を実施する場合であっても、同じ時間を待機していなければならない。従って、ユーザとしては、少量の画像記録ジョブ量の場合でも長時間待機することとなる。
【0008】
そこで本発明は、上記問題に着目したものであり、少量の画像記録ジョブに応じて、少量のインクを加温するインク循環流路に切り替えることにより、短時間で起動して画像記録が開始可能な画像記録方法及び画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態による画像記録方法は、少なくとも1つの記録ヘッドと、インクを貯蓄するインクタンクと、前記インクタンクから前記記録ヘッドまでを接続するインク供給経路及び前記記録ヘッドから前記インクタンクまでを接続するインク帰還経路からなるインク循環経路と、前記インク循環経路上に設けられて前記インクを循環させるインク循環手段と、を有する画像記録装置における画像記録方法であって、前記記録ヘッド内に残存するインクの温度が記録適正温度未満である場合に、画像記録すべきジョブ量が予め定めたジョブ量未満か否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにて前記画像記録すべきジョブ量が前記所定量未満と判定された場合に、前記インク循環手段を制御し、インク循環を行わない循環停止ステップと、前記インクの循環を停止させている間に、記録ヘッド内に残存する前記インクのみを加温する第1の加温ステップと、を有し、記録ヘッド内の前記インクが加温され、前記記録適正温度に達した後に、前記インク循環を停止した状態で、画像記録を実施する画像記録ステップを有する。
【0010】
また、本発明の実施形態による画像記録装置は、インクを吐出して画像を記録する少なくとも1つの記録ヘッドと、インクを貯留するインクタンクと、前記インクタンクから前記記録ヘッドまでを接続するインク供給経路及び前記記録ヘッドから前記インクタンクまでを接続するインク帰還経路からなる第1インク循環経路と、前記第1インク循環経路内で前記インクを循環させる第1インク循環手段と、前記インク供給経路と前記インク帰還経路との間を短路でバイパス接続し、前記記録ヘッドを経路上に含み、前記第1インク循環経路内に残存するインクよりも少ないインク量のインクを循環させるための第2インク循環経路と、前記第2のインク循環経路内で前記インクを循環させる第2のインク循環手段と、を備えて、前記第2のインク循環経路内に残存するインク量で画像記録可能なジョブ量が入力した際に、前記第2のインク循環経路内で前記インクを循環し、且つ前記記録ヘッド内を通過するインクを不吐出状態で前記記録ヘッドを駆動させて、前記記録ヘッド内を通過する前記インクを加温して記録適正温度に達した後に画像記録を実施する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少量の画像記録ジョブに応じて、少量のインクを加温するインク循環流路に切り替えることにより、短時間で起動して画像記録が開始可能な画像記録方法及び画像記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、本発明の概念について説明する。本発明は、記録量(印刷枚数)の少ない画像記録ジョブが与えられた場合に、記録ヘッドのインク液室内に残存するインク量又は、インク循環経路に設けられたバイパス連通路を経由するインク循環経路よりも短い経路のインク加温循環経路内に残存するインク量で画像記録が可能と判断された場合に、そのインク液室内に残存するインクのみ又はインク加温循環経路内に残存するインクのみを加温して、短時間でインクを記録適正温度まで昇温して、短い待機時間で画像記録を開始する画像記録方法及び画像記録装置である。
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット方式の画像記録装置の記録ヘッドにインクを供給するインク循環経路を概略的に示す図である。 本実施形態の画像形成装置1は、主として、上流インクポート10b及び下流インクポート10cを備えた複数の記録ヘッド10と、記録媒体31を搬送する搬送機構30と、記録ヘッド10へのインク循環経路2と、インクの供給及び記録ヘッドの駆動(インク吐出)及び装置全体制御する制御部42とで構成される。
【0014】
本実施形態における記録ヘッド10は、ノズル列長(列状に配置されたノズルによる画像形成する幅)が記録媒体31の幅に満たない短尺ヘッドであり、複数の記録ヘッド10を記録媒体31の幅方向にノズル列長が記録媒体31の幅を超え、且つインクが吐出される領域がオーバーラップするように交互に千鳥に配置している。本実施形態では、6個の短尺記録ヘッドが互い違いに配列して、記録媒体31の幅以上の画像形成を可能としている。勿論、記録媒体31の幅長を超える長さの1本の記録ヘッドであってもよい。この記録ヘッド10は、圧電素子により構成されたアクチュエータの駆動によって、インク循環経路2から供給されたインクを複数のノズル10aにより吐出する。ノズル10aは、約2mm離れた対向位置を通過する記録媒体31に対して、その搬送速度と同期した吐出信号に基づいてインクを垂直方向に吐出して画像が形成される。
【0015】
上流インクポート10bより記録ヘッド10内に供給されたインクは、ノズル10aから吐出され、吐出されなかったインクは下流インクポート10cから記録ヘッド10外に排出される。
【0016】
インク循環経路2は、記録ヘッド10にインクを供給する上流側のインク供給経路2a及び、記録ヘッド10より排出されたインクをインク供給経路(上流サブタンク15)2aに戻す下流側のインク帰還経路2bにより構成される。
【0017】
インク供給経路2aは、ノズル10aよりも重力方向上方に設けられ、記録ヘッド10に上流インクポート10bからインクを供給する上流サブタンク15と、記録ヘッド10(上流インクポート10b)と上流サブタンク15を接続するチューブ16aと、上流サブタンク15にインクを補給するためのインクボトル19と、上流サブタンク15とインクボトル19とを弁20bを介して接続するチューブ18と、弁20bの開閉を制御するインク供給制御部20cと、上流サブタンク15内を大気開放する上流大気開放弁15aと、上流サブタンク15内に設けられた液面センサ20aと、で構成される。
【0018】
インク帰還経路2bは、ノズル10aよりも重力方向下方に設けられ、記録ヘッド10で使用されずに下流インクポート10cから排出されたインクを一時的に貯留する下流サブタンク11と、記録ヘッド10(下流インクポート10c)と下流サブタンク11を接続するチューブ16bと、下流サブタンク11に設けられる圧力調整器17及び下流大気開放弁11aと、下流サブタンク11内に設けられる下流大気開放弁11aと、下流サブタンク11と上流サブタンク15とを接続するチューブ16cと、チューブ16cの経路上に設けられた循環ポンプ12及び温度調整器13及び循環するインク内の異物を除去するフィルタ14と、で構成される。
【0019】
以下、各構成部位について詳細に説明する。
インク供給経路2aにおいて、液面センサ20aは、検出した液面に関する検出信号をインク供給制御部20cに出力する。インク供給制御部20cは、その検出信号に基づき、弁20bを開閉してインクボトル19からインクを補充し、上流サブタンクタンク15内の液面が適正なインク吐出ができる水頭値を維持するように、常に適正な高さに保っている。尚、弁20bは、上流サブタンク15にインクボトル19からインクを補充する時以外は閉じている。
【0020】
また、上流大気開放弁15aに設けられた図示しないフィルタは、上流大気開放弁15aを通してインク供給経路2a内への異物の混入を防止する。大気連通管19aは、インクボトル19内部を常時、大気圧に保っている。尚、ユーザがインクボトル1に、インクを過剰に補填してしまった際に、大気連通管19aを通じて、図示しないインクパンに排出する構成を備えてもよい。
【0021】
インク帰還経路2bにおいて、圧力調整器17は、タンク内部の気圧を調整し、下流大気開放弁11aは、制御部42の制御により開放され、下流サブタンク11の内部空間を大気開放する。また、下流大気開放弁11aを閉じることで下流サブタンク11内を密閉することもできる。下流サブタンク11内が大気圧に保たれている時には、下流サブタンク11とノズル10aの水頭差によってノズル10aにメニスカスが生じているような適切圧力となるように、下流サブタンク11の高さ位置が定められている。
【0022】
下流大気開放弁11aが閉じて、下流サブタンク11を密閉している時には、インク循環の有無の問わず、ノズル10aにかかる圧力が記録適正圧力となるように圧力調整器17が下流サブタンク11内の気圧を調整する。
【0023】
また液面調整器11bは、下流サブタンク11内のチューブ16cの端部に設けられ、チューブ16cを通じて、下流サブタンク11から上流サブタンクタンク15に向かって流れるインク量を調整する。下流大気開放弁11aには、図示しないフィルタが設けられ、下流大気開放弁11aを通してインク供給経路2内に異物が混入することを防止する。
【0024】
循環ポンプ12は、制御部42の制御に従い、インクが循環するための圧力を供給する。温度調整器13は、チューブ16cを通じて流れるインクの温度を検出し、適正な温度範囲になるように、インクの加熱又は冷却を行い温度調整する。
【0025】
フィルタ14は、循環するインク内の紙粉を含む異物やインクの塊等を除去する。
インク循環している時には、上流大気開放弁15aが開放され、下流大気開放弁11aが閉鎖される。この時、圧力調整器17は、ノズル10aにおけるインク液圧が画像記録適正圧力となるように、下流サブタンク11内の気圧を調整する。一方、インクが循環していない時には、上流大気開放弁15は閉鎖され、下流大気開放弁11aは開放される。
【0026】
上述したように、この時のノズル10aにおけるインク液圧は、画像記録適正圧力となっている。また制御部42は、記録ジョブの有無、及びその記録量に関する情報も取得する。記録ヘッド10には、例えばインクの循環する経路内に温度センサ21が設けられており、インクの温度を測定する。この温度センサ21としては、例えば、熱電対が好適する。
【0027】
次に、本実施形態のインク循環経路2におけるインク循環について説明する。
まず、装置起動と共に、インクは上流サブタンク15よりチューブ16aを通じて、上流インクポート10bから記録ヘッド10に供給されるように循環する。
【0028】
制御部42からの画像記録指示により、記録媒体31が給送され、ノズル10aの前方を通過する際にインクが吐出され、その記録媒体31に画像が記録される。供給されたインクのうち、ノズル10aで吐出されなかった余剰したインクは、下流インクポート10cから流れ出されて、チューブ16bを通じて下流サブタンク11に排出される。
【0029】
下流サブタンク11内に流れ込んだインクは、循環ポンプ12によって吸い上げられ、チューブ16cを通じて上流サブタンク15へと復帰する。この時、チューブ16c内を流れる過程でフィルタ14により異物が除去され、さらに温度調整器13によりインクが記録に適した温度に調整される。尚、インクが画像記録に適した温度であるか否かは、温度センサ21で測定したインク温度に基づき判断する。
【0030】
下流サブタンク11の液面高さは、液面調整器11bによって、常に適正な高さに維持されている。液面調整器11bは、例えば、チューブ16cに繋がる側面に出口が開口されたパイプが設けられ、そのパイプにインクの浮遊する浮き部材が嵌装されている。
【0031】
循環ポンプ12が一定の圧力でインクを循環させている際に、下流サブタンク11内のインクの液面が所定位置より低下すると、下降した浮き部材が出口を狭めて、チューブ16cへの流出量を制限する又は停止する。これにより、下流サブタンク11から循環ポンプ12がインクを吸い上げる際の流路抵抗が増加する。その結果、下流サブタンク11から単位時間当たりに吸い上げられるインク量が減少し、記録ヘッド10側から流入されるインクによって、下流サブタンク11内のインク液面が上昇して、再度、適正な液面の高さとなる。この時、浮き部材も上昇して出口が開口され、インクが循環ポンプ12により吸い上げられる。
【0032】
このように下流サブタンク11内の液面は、チューブ16cに形成された出口の位置(高さ)を基準として、ある程度の幅で変動しつつ、その幅以内で液面高さが維持される。
【0033】
しかし、画像記録を行えば、ノズル10aからインクが吐出されるため、循環されるインクの総量も減少して、上流サブタンク15内においてもインクの液面が低下する。液面センサ20aは、上流サブタンク15内の液面低下を検知すると、インク供給制御部20cのその情報を送出する。インク供給制御部20では、液面低下の情報に基づき、弁20bを開き、インクボトル19からチューブ18を通じて、上流サブタンク15にインクが補給される。
【0034】
また、本実施形態のようなインク循環経路2は、記録ヘッド10内を経由してインクが循環する。このため、記録ヘッド10の駆動によって発生した熱がインクに伝搬して、記録ヘッド10の温度上昇が抑制される。ここで、インクに与えられた熱は、インク供給経路2全体に拡散するため、循環するインクの温度は上昇し難くなっている。
【0035】
また、インクを循環させることにより記録ヘッド10内に詰まった気泡や異物が下流インクポート10cから流出され、取り除かれる。
【0036】
このように記録ヘッドの温度上昇を抑制し、異物を排除することにより、画像形成装置1は、長時間に渡って画像記録(印字)の品位を低下させることなく、連続的に記録動作を実施することができる。
【0037】
その一方で、温度センサ21で検知されたインク温度が記録適正温度を下回っていた場合、記録動作を開始する前に、予めインクを加温する必要がある。しかし前述したように、インク供給経路2内で循環しているインクは量が多く、前述したように記録ヘッドの温度上昇を防止する役目の方が重要視されているため、簡易には温度を上昇させ難くなっている。
【0038】
つまり、インク供給経路2を有していることにより、記録動作を開始するまでの準備時間(又は、待機時間)が長くなっている。ユーザは、長時間に渡り高い品位の画像記録ができることに加えて、インク温度が直ぐに記録適正温度になり、短い待ち時間で記録開始ができることを当然のように強く要望している。
【0039】
図2に示すフローチャートを参照して、本実施形態のインク循環経路におけるインク温度制御方法について説明する。図2は、第1の実施形態におけるインク加温制御の手順を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明において、インク循環と述べた場合は、既にインク供給経路2内をインクが循環している状態を示唆し、その時に未循環であった場合には、直ちにインクの循環を開始することを意味する。尚、インク循環を停止させるまでは、インクの循環が継続されているものとする。
【0040】
まず、電源の投入と共に、各構成部位が起動して、予め定めた待機状態となるように、初期化される(ステップS1)。ここで、制御部42は、常時又は予め定められたタイミングで温度センサ21の検出値からインク温度情報を取得し、インク温度が記録適正温度以上であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0041】
この判定において、インク温度が記録適正温度以上であった場合には(YES)、インクの循環を開始させ(ステップS3)、インクの温度調整を行い、記録適正温度を維持する(ステップS4)。次に、画像記録ジョブの有無を判定し(ステップS5)、画像記録ジョブがあった場合には(YES)、画像記録を開始する(ステップS6)。その画像記録の終了後には(ステップS7)、装置を停止するか否かを判断する(ステップS8)。他の画像記録を行うために停止しなければ(NO)、ステップS2に戻り、インク温度を確認する。一方、ステップS5で、画像記録ジョブがなかった場合には(NO)、予め定めた時間だけ待機し(ステップS9)、その後、ステップS8に進む。
【0042】
また、ステップS2の判定において、インク温度が記録適正温度以下であった場合には(NO)、制御部42は、画像記録ジョブの有無を判定する(ステップS10)。この判定で画像記録ジョブがない場合には(NO)、インク循環経路におけるインクを循環しつつ(ステップS11)、加温する(ステップS12)。この時に、インクを加温する手法は、ノズルからインク吐出を伴わない駆動波形(以下、「非吐出駆動波形」と呼ぶ)を用いた記録ヘッド10の駆動と、温度調整器13を用いるものである。予め定めた時間に渡り、インクを加温した後、ステップS2に戻り、制御部42によるインク温度を確認する。
【0043】
一方、ステップS10において、画像記録ジョブがあった場合には(YES)、制御部42は、画像記録ジョブの記録量が予め定めた記録量以下か否かを判定する(ステップS13)。この判定では、画像記録ジョブの記録量情報(印字量情報)は、例えば、記録枚数や、記録枚数(又は、印字枚数)と記録率(又は、印字率)から算出される計算値である。また、予め定めた記録量とは、例えばインク循環を止めた状態でのインク加温によって記録適正温度まで暖められるインクを用いて記録処理することのできる記録量(又は、記録媒体の記録可能な枚数)である。
【0044】
ステップS13の判定において、画像記録ジョブの記録量が予め定めた記録量を上回る場合には(NO)、インクの必要量が多いため、インクを循環しつつ(ステップS14)、インクを加温する(ステップS15)。この時、インクの加温は、制御部42が温度センサ21の検出値からインク温度情報を取得して、インク温度が記録適正温度以上であるか否かを判定する(ステップS16)。この判定で、インクの温度が記録適正温度に達していたならば(YES)、記録媒体31に対してインクを吐出して画像記録を開始する(ステップS17)。画像記録が終了した後(ステップS18)、ステップS8に移行して装置を停止するか否かを判断する。一方、ステップS16の判定において、インク温度が記録適正温度以下であれば(NO)、インクの加温を継続する。
【0045】
また、ステップS13の判定において、画像記録ジョブにおける記録量が予め定めた記録量以下の場合には(YES)、制御部42は、この時にインクが循環されているか否かを判定する(ステップS19)。この判定でインクが循環されていれば(YES)、インクの循環を停止し(ステップS20)、記録ヘッド10を駆動してインクを加温する(ステップS21)。一方、この判定でインクが循環されていなければ(NO)そのままステップS21へ移行して、インクを加温する。この時の加温は、主として、非吐出駆動波形で記録ヘッド10を駆動させて、記録ヘッド10内に残存しているインクを加温する。
【0046】
次に、記録ヘッド10内のインク液室内に残存するインクの温度が記録適正温度以上になったか否かを判定し(ステップS22)、インクの温度が記録適正温度以上であれば(YES)、制御部42は、画像記録を開始させて(ステップS23)、画像記録が終了した後に(ステップS24)、前述したステップS8へ移行する。
【0047】
尚、この記録量が少量の画像記録ジョブが終了した以降に、別途の画像記録ジョブによる画像記録を行うのであれば、ユーザ指示又は設定により、インク循環を行うと共に温度調整器13によりインクの加温を開始させてもよい。またこの画像記録ジョブで記録を終了するのであれば、温度調整器13を駆動させる必要はない。
【0048】
本実施形態では、記録ヘッド10のインク液室内に残存するインク量により画像記録ジョブが完了する記録量の少ないジョブが与えられた場合には、インク循環を行わずに、ヘッド駆動のみでインク液室内のインクを加温する。この加温は、記録ヘッド10のインク液室内のインクのみが加温され、且つインク循環を行わないため、インクに与えられた熱がインク循環経路全体に拡散されない。従って、このインク加温方法により、加温するべきインク量がごく少量であるため、短時間で記録適正温度となり、短い待機時間で画像記録を開始することができる。
【0049】
よって、本実施形態のインク加熱方法を用いることにより、起動していない画像記録装置において、少ない記録量の画像記録ジョブであれば、短い待機時間で画像記録が開始でき、また多量の記録量の画像記録ジョブに対しては、通常の待機時間で対応ができるため、作業効率よく、ユーザに使い勝手のよい画像記録が実施できる。
【0050】
尚、本実施形態では、温度センサ21は、記録ヘッド10の内部に設けられている構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、インク供給路における記録ヘッド10より上流の位置であって、温度センサ21で検出されるインク温度と記録ヘッド10に流入するインクに大きな温度差が出なければ、記録ヘッド10の近傍で、例えば上流インクポート10bに温度センサ21を設けてもよく、記録ヘッド10内部である必要はない。 また、本実施形態において、記録量の少ない画像記録ジョブを実行する場合に、インクを循環せずインク加温して、温度センサ21の検出値に基づいてインクが記録適正温度に達したか否かを判定したが、必ずしも温度センサ21の検出値を用いなくてもよい。例えば、装置の設計仕様により、インクを吐出せずにインクを加温した際の温度上昇特性は定まっているため、記録ヘッド10の駆動時間によりインク温度を想定し、ジョブの開始を定めておいてもよい。また、インク加温を開始する前に、温度センサ21で取得したインク温度と記録適正温度の差からインクを加温する記録ヘッド10の駆動時間を設定してもよい。
【0051】
次に、第2の実施形態に係る画像記録装置におけるインクの加熱方法について説明する。ここで、図3は、第2の実施形態に係るインクジェット方式の画像記録装置の記録ヘッドにインクを供給するインク循環経路の概念を示す図である。図4は、記録ヘッドに設けられるインク供給経路とインク帰還経路とを連通するインク加温連通路を示す図である。図5(a),(b)は、インク加温連通路の分岐におけるインクの流れについて説明するための図である。図6は、第2の実施形態におけるインク加温制御の手順を説明するためのフローチャートである。
【0052】
図3及び図4に示すように、本実施形態の画像形成装置は、前述した第1の実施形態の構成に加えて、記録ヘッド10の上流インクポート10bと下流インクポート10cに接続されるインク供給経路2aのチューブ16aとインク帰還経路2bのチューブ16bとの間を連通するバイパス連通路40cを含むインク加温循環経路40を設けた構成である。
【0053】
このインク加温循環経路40は、記録ヘッド10の下流側のインク帰還経路2bに設けられた下流分岐点40bと、記録ヘッド10の上流側のインク供給経路2aに設けられた上流分岐点40aとの間を連通するバイパス連通路40cと、バイパス連通路40cにインクが下流分岐点40bから上流分岐点40aに流れるように循環を行うバイパス循環ポンプ(インク加温循環手段)40dと、記録ヘッド10とで構成される。尚、以下の説明において、下流分岐点40bと上流分岐点40aにおける下流と上流は、インク供給経路2aとインク帰還経路2bとからなるインク循環経路のインクの流れを基準としている。従って、インク加温循環経路40のバイパス連通路40cにおいては、下流分岐点40bから上流分岐点40aに向かってインクが流れることとなる。
【0054】
図4に示すように、インク加温循環経路40は、下流インクポート10bから排出されたインクが下流分岐点40bで分岐してバイパス連通路40cに流入し、バイパス循環ポンプ40dを通過して、上流分岐点40aからインク供給経路2aに流入し、再び記録ヘッド10内にフィードバックする循環経路を構築する。
【0055】
このインク加温循環経路40に含まれるインク量は、インク供給経路2aとインク帰還経路2bからなるインク循環経路内に含まれるインクの総量よりも十分に少なく、一方、記録ヘッドのインク液室に残存するインク量よりも多くなる。
【0056】
バイパス循環ポンプ40dは、例えば、停止時の流路抵抗が記録ヘッド10内の流路抵抗、即ち上流インクポート10bから記録ヘッド10内を抜けて下流インクポート10cに至る流路抵抗の間よりも高い。
【0057】
本実施形態における上流分岐点40aの一例としては、図5(a)に示すように、V字に分岐する分岐形状であり、下流分岐点40bの構造も、図5(b)に示すように、V字に交わる分岐形状である。これらの分岐形状を成すことで、インク流は流れを妨げることなくスムーズに分岐し、またスムーズに合流する。インク加温循環を行う際には、循環ポンプ12が停止した状態でバイパス循環ポンプ40dを駆動させ、バイパス連通路40c内のインクを下流分岐点40aから上流分岐点40bに向けてインクを流れさせる。上流分岐点40bでバイパス連通路40cを流れ出たインクは慣性により記録ヘッド10に向かい、記録ヘッド10から流れ出たインクは下流分岐点40aでバイパス連通路40cに流れ込む。この循環の間、記録ヘッド10が非吐出駆動波形で駆動されることで、インクを加温する。
【0058】
次に、図6に示すフローチャートを参照して、本実施形態におけるインク加温制御方法について説明する。以下の説明において、インク通常循環は、インク供給経路2aとインク帰還経路2bからなるインク循環経路2をインクが循環する状態を示唆し、インク加温循環は、記録ヘッド10から排出されたインクがインク帰還経路16bから分岐してバイパス連通路40cを通過して再び、インク供給経路16aに合流して記録ヘッド10内にフィードバックする循環の状態を示唆する。また、インク通常循環は、既にインク循環経路で循環が行われている場合には、循環を継続することを意味し、インク循環が行われていなかった場合には、インク通常循環が開始されることを意味する。また、インク通常循環は、停止動作が行われるまで、インクの循環を継続する。
【0059】
まず、電源の投入と共に、各構成部位が起動して、予め定めた待機状態となるように、初期化される(ステップS41)。ここで、制御部42は、常時又は予め定められたタイミングで温度センサ21の検出値からインク温度情報を取得し、インク温度が記録適正温度以上であるか否かを判定する(ステップS42)。
【0060】
この判定において、インク温度が記録適正温度以上であった場合には(YES)、制御部42は循環ポンプ12を駆動させて、インクがインク循環経路2を周回するインク通常循環の状態で(ステップS43)、インクの温度調整を行う(ステップS44)。
【0061】
次に、画像記録ジョブの有無を判定し(ステップS45)、画像記録ジョブがあった場合には(YES)、画像記録を開始する(ステップS46)。その画像記録の終了後には(ステップS47)、装置を停止するか否かを判断する(ステップS58)。他の画像記録を行うために停止しなければ(NO)、ステップS42に戻り、インク温度を確認する。一方、ステップS45で、画像記録ジョブがなかった場合には(NO)、予め定めた時間を待機し(ステップS48)、その後、ステップS42に戻る。
【0062】
また、ステップS42の判定において、インク温度が記録適正温度に満たなければ(NO)、制御部42は、画像記録ジョブの有無を判定する(ステップS49)。この判定で画像記録ジョブがない場合には(NO)、インク通常循環を行うと共に(ステップS50)、インクを加温する(ステップS51)。この時、インクを加温する手法は、非吐出駆動波形に基づく記録ヘッド10の駆動と、温度調整器13とを用いて行う。予め定めた時間に渡り、インクを加温した後、ステップS42に戻り、制御部42によるインク温度を確認する。
【0063】
一方、ステップS49において、画像記録ジョブがあった場合には(YES)、制御部42は、画像記録ジョブの記録量が予め定めた記録量以下か否かを判定する(ステップS52)。この判定では、画像記録ジョブの記録量情報(印字量情報)は、例えば、記録枚数や、記録枚数(又は、印字枚数)と記録率(又は、印字率)から算出される計算値である。
【0064】
また本実施形態における予め定めた記録量とは、インク加温循環経路40内に含まれるインク量であり、インク加温循環によって記録適正温度まで暖められるインクを用いて記録処理することのできる記録量(又は、記録媒体の記録可能な枚数)である。インク加温循環経路40内に含まれるインク量は、具体的には、記録ヘッド10、下流インクポート10b、下流分岐点40b、バイパス連通路40c、上流分岐点40a及び記録ヘッド10を結ぶインク経路内に残存するインク量である。
【0065】
ステップS52の判定において、画像記録ジョブの記録量が予め定めた記録量を上回る場合には(NO)、インクの必要量が多いため、インク通常循環を行いつつ(ステップS53)、インクを加温する(ステップS54)。
【0066】
この時、インクの加温は、制御部42が温度センサ21の検出値からインク温度情報を取得して、インク温度が記録適正温度以上であるか否かを判定する(ステップS55)。この判定で、インクの温度が記録適正温度に達していたならば(YES)、画像記録を開始する(ステップS56)。画像記録が終了した後(ステップS57)、ステップS58に移行して装置を停止するか否かを判断する。一方、ステップS55の判定において、インク温度が記録適正温度以下であれば(NO)、インクの加温を継続する。
【0067】
また、ステップS52の判定において、画像記録ジョブにおける記録量が予め定めた記録量以下の場合には(YES)、制御部42は、この時にインク通常循環が行われているか否かを判定する(ステップS59)。この時にインクが循環されていれば(YES)、循環ポンプ12を停止してインク通常循環を停止する(ステップS60)。次に、バイパス循環ポンプ40dを駆動させて、前述したインク加温循環を開始する(ステップS61)。このインク加温循環により、記録ヘッド10から排出されたインクは、インク帰還経路2bから分岐してバイパス連通路40cを通過して、インク供給経路2aに合流し、記録ヘッド10内にフィードバックする。この時、非吐出駆動波形で記録ヘッド10を駆動させて、記録ヘッド10内にてインク加温循環で流れるインクを加温する(ステップS62)。
【0068】
次に、温度センサ21により記録ヘッド10内のインク液室内に残存するインクの温度を検出し、その検出結果が記録適正温度以上になったか否かを判定する(ステップS63)。この判定で、インクの温度が記録適正温度以上であれば(YES)、制御部42は、画像記録を開始させて(ステップS64)、画像記録が終了した後には(ステップS65)、インク加温循環を停止して(ステップS66)、インク通常循環を行う。さらに、前述したステップS58へ移行する。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、記録媒体に画像記録させる際に、使用するインク量が少ないと見込まれたときには、バイパス的な循環経路であるインク加温循環経路40を選択する。このインク加温循環の選択により、インクが記録ヘッド10内を流れつつ、加温される。このため、前述した第1の実施形態のように記録ヘッド10のインク室内に残存するインクのみの温度が上昇するのではなく、バイパス連通路40c内のインクのすべてが加温されるため、記録媒体へ画像記録できる量(又は、記録面積)が多くなる。また、インク加温時にインク加温循環を行わない場合と比べて、記録ヘッド10内の発熱部とインクの温度差を大きく保つことが出来るので、インクの加温効率が向上する。
【0070】
本実施形態のインク加温循環経路40では、上流分岐点40b及び下流分岐点40aの分岐形状によって、インク加温循環を行う際に記録ヘッド10から流れ出たインクがインク帰還経路16bを分岐して、バイパス連通路40cを経由して再び、インク供給経路16aに合流して記録ヘッド10に戻るように制御する構成であったが、必ずしも限定されるものではない。例えば、2つの分岐点あるいは両方に3方向電磁弁を設け、記録ヘッド10から流れ出たインクが下流サブタンク11、上流サブタンク15を経由して記録ヘッド10に戻る通常のインク循環経路と、インク加温循環経路40と、を切り替える構成であってもよい。
【0071】
このような構成であれば、バイパス循環ポンプ40dのトルクを増加させても、上流分岐点4b及び、下流分岐点40aにおいて、通常のインク循環経路からのインク取り込みや通常のインク循環経路へのインク逃げ出しが起こる恐れがない。このため、インク加温循環の流量を増加させることができ、インク加温効率が向上できる。
【0072】
また、本実施形態のインク加温循環においては、記録量が少ない画像記録ジョブの場合に実施することを説明したが、インク加温循環を備える構成であっても、必ずしもこの限りではない。画像記録ジョブの記録量が特に少なく、予め定めた記録量基準をも下回る場合には、第1の実施形態によるインク加温に切り替えて、記録ヘッド内のインクのみを加温してもよい。この場合、インク加温に要する時間は、インク加温循環を行う場合よりもさらに短縮することができる。
【0073】
次に、第3の実施形態に係る画像記録装置におけるインクの加熱方法について説明する。図7は、第3の実施形態に係るインクジェット方式の画像記録装置の記録ヘッドにインクを供給するインク循環経路の概念を示す図である。
【0074】
このインク循環経路は、前述した第2の実施形態と同様に、記録ヘッド10から排出されたインクがインク帰還経路2bのチューブ16bから分岐してバイパス連通路40fを通過して再び、インク供給経路2aのチューブ16aに合流して記録ヘッド10内にフィードバックするインク加温循環経路40を有している。但し、上流分岐点40aが下流分岐点4bよりも高い位置に設けられ、バイパス連通路40fは、鉛直方向に向いて設けられている。本実施形態では、第2の実施形態のバイパス循環ポンプ40dに換わって、例えば、ヒータからなるインク加温部40eが設けられている。
【0075】
このような構成により、インク加温部40eによって加温されたインクは、バイパス連通路40f内を鉛直上方向に移動する。バイパス連通路40f内を流れ、上流分岐点40bに到達したインクは、再びインク供給経路16に合流して慣性により記録ヘッド10内に流入する。
【0076】
つまり、インク加温部40eによって生み出された上流分岐点40aに向かうインクの流れによって、バイパス連通路40fの入口となる下流分岐点40bは、上流分岐点40aに比べて、弱負圧となっている。この圧力差から、記録ヘッド10から流れ出たインクは下流分岐点40bにおいて、再びバイパス連通路40fに流れ込む。
【0077】
この対流の繰り返しによって、インク加温循環経路40内のインクの温度は上昇する。この際、記録ヘッド10においても、非吐出駆動波形で駆動されることによりインク加温効率を向上できる。
【0078】
図8に示すフローチャートを参照して、本実施形態のインク加温循環について説明する。
本実施形態は、前述したようにインク加温部40eによってインクを加温し、インクの流れを発生させているが、図6において説明した第2の実施形態のインク加温循環とは、バイパス循環ポンプ40dによるインクの流れを発生させて、記録ヘッドのみの駆動によりインクを加温する点が異なっている。本実施形態では、図6に示したフローチャートと同等の動作又は作用においては、同じ参照符号を付して説明を簡略化し、インク加温部40eによるインクの加温及び流れについて詳細に説明する。
【0079】
まず、電源の投入により、初期化されてインク温度が測定される。インク温度が記録適正温度以上であれば、インク循環経路2によるインク通常循環によりインクの温度調整が行われる(ステップS41〜S44)。次に、画像記録ジョブの有無を確認し(ステップS45)、ジョブがあれば(YES)、画像記録を開始し(ステップS46)、画像記録が終了した後(ステップS47)、画像記録装置を停止するか否かを判断し、停止しなければ(NO)、ステップS42に戻る。また、ジョブが無ければ(NO)、ジョブ入力を予め設定した所定時間を待機し(ステップS48)、画像記録装置を停止するか否かを判断し、停止しなければ(NO)、ステップS42に戻る。
【0080】
一方、ステップS42の判定で、インク温度が記録適正温度に満たなければ(NO)、画像記録ジョブの有無を判定し(ステップS49)、画像記録ジョブがない場合には(NO)、インク通常循環を継続させつつ(ステップS50)、前述したようにノズルをインク不吐出で駆動し、且つ温度調整器13を用いて、インクを加温する(ステップS51)。一方、画像記録ジョブがあった場合には(YES)、その画像記録ジョブが予め定めた所定量以下か否かを判定し(ステップS52)、所定量以上であれば(NO)、インク通常循環及びインク加温を継続する(ステップS53,S54)。そして、インク温度が記録適正温度以上になれば、画像記録を開始し、記録が終了したならばステップS58に移行する(ステップS55,S56,S57)。ステップS52の判断で、画像記録ジョブが所定量以下であれば(YES)、インク通常循環を停止し(ステップS58,S59)、インク加温部40eによるインク加温に切り替える(ステップS71)。
【0081】
このインク加温部40eによって加温されたインクは、前述したようにバイパス連通路40f、上流分岐点40a、インク供給経路16a、記録ヘッド10、インク帰還経路16b、下流分岐点40b及びインク加温部材40eの経路を対流することにより、インク加温循環経路40内で温度が上昇する。
【0082】
そして、加温循環経路40内のインクの温度が記録適正温度に達したならば(YES)、画像記録を開始し(ステップS62,S63)、記録終了した後(ステップS64)、ステップS58に移行して装置を停止するか否かを判断する。
【0083】
本実施形態によれば、通常に循環されるインク加温に比べて、少量のインクに対して、加温するため、いち早くインク温度が記録適正温度に達することができるため、少量の記録媒体への画像記録であれば、ユーザの待機時間が短くなり、使い勝手のよい画像記録装置を提供することができる。
【0084】
また、バイパス連通路40fを用いたインク加温循環する際に、前述した第2の実施形態のようにポンプ等のインク移動手段を用いることなく、インクの加温により発生させた対流により循環を行うため、低いコストで実現することができる。さらに、ポンプ等の可動部を用いていないため、発生する騒音も小さいレベルとなる。
【0085】
本実施形態においては、インク加温部40eが配置されたバイパス連通路40fは鉛直方向に配置したが、これに限定されるものではなく、インクが対流できるように、ある程度の傾きを有していれば、インク加温循環を行うことができる。
【0086】
本実施形態においては、インクの加温に対して、インク加温部40eとインク不吐出のノズル駆動によるインクの加温を併用することも可能であり、効率的なインク加温が実現できる。
【0087】
また、前述した各実施形態では、固定型の記録ヘッドの近傍を、記録媒体を通過させて、画像記録を行うライン記録方式について説明したが、固定型ヘッドに限定されるものではなく、記録媒体の幅方向に記録ヘッドを移動しながら画像記録することによって、画像を形成するシリアル記録方式であってもよい。上述した複数の実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0088】
本発明の画像記録装置の画像記録方法は、以下の要旨を含む。
【0089】
(1)インク循環経路を備えた画像形成装置の画像記録方法であって、
インク加温時にインクの循環を停止させて、記録ヘッド内に残存するインクのみを加温し、画像記録を実施することを特徴とする。
【0090】
(2)前記(1)項に記載の画像記録方法であって、
前記インク循環経路内のインクの温度が記録適正温度以下であり、記録ヘッド内に残存する加温されたインク量で画像記録が完了する画像記録ジョブが入力した場合に、前記インク循環経路におけるインク循環を停止し、記録ヘッド内のインクを加温し、インク温度が記録適正温度に達した後に画像記録を実行し、画像記録終了の後に、前記インク循環経路内で前記インクを循環しつつ、前記記録ヘッドによるインクの加温を行うことを特徴とする。
【0091】
(3)経路内のインク量の異なる2つ以上のインク循環経路を有する画像形成装置において、インク量の多い循環経路の循環を停止した状態で、インクの加温を行うことを特徴とする。
【0092】
(4)前記(3)項に記載の画像形成装置において、インク量の多い循環経路の循環を停止した状態で、インク量の少ない循環経路を循環しながら、インクの加温を行うことを特徴とする。
【0093】
(5)前記(3)項に記載の画像形成装置において、インク量の少ない循環経路でインクを循環させる手段は、インクを加温して対流を発生させて循環を行う加熱手段を兼ねることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るインクジェット方式の画像記録装置の記録ヘッドにインクを供給するインク循環経路を概略的に示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態のインク循環経路におけるインク温度制御方法について説明するためのフローチャートである。
【図3】図3は、第2の実施形態に係るインクジェット方式の画像記録装置の記録ヘッドにインクを供給するインク循環経路の概念を示す図である。
【図4】図4は、第2の実施形態における記録ヘッドに設けられるインク供給経路とインク帰還経路とを連通するインク加温連通路を示す図である。
【図5】図5(a),(b)は、インク加温連通路の分岐におけるインクの流れについて説明するための図である。
【図6】図6は、第2の実施形態におけるインク加温制御の手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】図7は、第3の実施形態における記録ヘッドに設けられるインク供給経路とインク帰還経路とを連通するインク加温連通路を示す図である。
【図8】図8は、第3の実施形態におけるインク加温制御の手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1…画像形成装置、2…インク循環経路、2a…インク供給経路、2b…インク帰還経路、10…記録ヘッド、10a…ノズル、10b…上流インクポート、10c…下流インクポート、11…下流サブタンク、11a…下流大気開放弁、11b…液面調整器、12…循環ポンプ、13…温度調整器、14…フィルタ、15…上流サブタンク、15a…上流大気開放弁、16a,16b,16c,18…チューブ、17…圧力調整器、19…インクボトル、19a…大気連通管、20a…液面センサ、20b…弁、20c…インク供給制御部、21…温度センサ、30…搬送機構、31…記録媒体、40…インク加温循環経路、40a…上流分岐点、40b…下流分岐点、40c…バイパス連通路、40d…バイパス循環ポンプ(インク加温循環手段)、42…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの記録ヘッドと、インクを貯蓄するインクタンクと、前記インクタンクから前記記録ヘッドまでを接続するインク供給経路及び前記記録ヘッドから前記インクタンクまでを接続するインク帰還経路からなるインク循環経路と、前記インク循環経路上に設けられて前記インクを循環させるインク循環手段と、を有する画像記録装置における画像記録方法であって、
前記記録ヘッド内に残存するインクの温度が記録適正温度未満である場合に、画像記録すべきジョブ量が予め定めたジョブ量未満か否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにて前記画像記録すべきジョブ量が前記所定量未満と判定された場合に、前記インク循環手段を制御し、インク循環を行わない循環停止ステップと、
前記インクの循環を停止させている間に、記録ヘッド内に残存する前記インクのみを加温する第1の加温ステップと、を有し、
記録ヘッド内の前記インクが加温され、前記記録適正温度に達した後に、前記インク循環を停止した状態で、画像記録を実施するステップと、
を有することを特徴とする画像記録装置の画像記録方法。
【請求項2】
前記判定ステップにおいて、前記画像記録すべきジョブ量が前記予め定めたジョブ量以上と判定された場合に、前記インク循環手段を制御して、前記インク循環経路内で前記インクを循環する循環ステップと、
前記インク循環経路内を前記インクを循環させつつ、インク全体を加温する第2の加温ステップと、を有し、
前記記録ヘッド内で加温された前記インクの温度が記録適正温度に達した後に、前記インクの循環を維持しつつ、画像記録を実施することを特徴とする請求項1記載の画像記録装置の画像記録方法。
【請求項3】
前記第1の加温ステップは、前記インクを不吐出状態で前記記録ヘッドを駆動させて、前記記録ヘッド内に残存する前記インクのみを加温することを特徴とする請求項1記載の画像記録装置の画像記録方法。
【請求項4】
前記第2の加温ステップは、前記インク循環経路内に設けられたインク温度調整手段を制御して、循環する前記インクの全体を加温することを特徴とする請求項2記載の画像記録装置の画像記録方法。
【請求項5】
前記第2の加温ステップは、前記インク循環経路内に設けられたインク温度調整手段により前記インクを加温すると共に、
前記インクを不吐出状態で前記記録ヘッドを駆動させて、前記記録ヘッド内を通過する前記インクを加温することを特徴とする請求項2記載の画像記録装置の画像記録方法。
【請求項6】
インクを吐出して画像を記録する少なくとも1つの記録ヘッドと、インクを貯蓄するインクタンクと、前記インクタンクから前記記録ヘッドまでを接続するインク供給経路及び前記記録ヘッドから前記インクタンクまでを接続するインク帰還経路からなる第1インク循環経路と、第1のインク循環経路内で前記インクを循環させる第1のインク循環手段と、前記インク供給経路と前記インク帰還経路との間をバイパス接続し、前記記録ヘッドを経路上に含み、前記第1インク循環経路内に残存するインクよりも少ないインク量のインクを循環させるための第2インク循環経路と、前記第2のインク循環経路内で前記インクを循環させる第2インク循環手段と、を具備する画像記録装置における画像記録方法において、
前記記録ヘッド内に残存するインクの温度を測定し、得られたインク温度が記録適正温度未満であった場合、入力された画像記録すべきジョブのジョブ量が所定量未満か否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにて、前記画像記録すべきジョブのジョブ量が所定量未満と判定された場合、前記第1のインク循環手段を制御し、前記第1のインク循環経路内で循環を行わず、前記第2のインク循環手段を制御し、前記第2のインク循環経路内でインク循環を行う第1の循環ステップと、
前記第2のインク循環経路内でインク循環が行われている間に、前記記録ヘッド内に残存するインクを加温する第1の加温ステップと、
前記記録ヘッド内の前記インクが加温されてインク温度が記録適正温度に達した後に、前記第2のインク循環経路内で前記インクを循環しつつ、画像記録を実施する画像記録ステップと、
を有することを特徴とする画像記録装置の画像記録方法。
【請求項7】
前記判定ステップにて、画像記録すべきジョブのジョブ量が前記所定量以上と判定された場合、前記第1のインク循環手段を駆動させて、前記第1のインク循環経路内でインクを循環を行う第2の循環ステップと、
第1のインク循環経路内でインク循環している間に、第1インク循環経路内のインクを加熱する第2の加熱ステップと、
前記記録ヘッド内の前記インクが加温されてインク温度が記録適正温度に達した後に、前記第1のインク循環経路内で前記インクを循環しつつ、画像記録を実施することを特徴とする請求項6記載の画像記録装置の画像記録方法。
【請求項8】
インクを吐出して画像を記録する少なくとも1つの記録ヘッドと、
インクを貯留するインクタンクと、
前記インクタンクから前記記録ヘッドまでを接続するインク供給経路及び前記記録ヘッドから前記インクタンクまでを接続するインク帰還経路からなる第1インク循環経路と、
前記第1インク循環経路内で前記インクを循環させる第1インク循環手段と、
前記インク供給経路と前記インク帰還経路との間を短路でバイパス接続し、前記記録ヘッドを経路上に含み、前記第1インク循環経路内に残存するインクよりも少ないインク量のインクを循環させるための第2インク循環経路と、
前記第2のインク循環経路内で前記インクを循環させる第2のインク循環手段と、
を具備し、
前記第2のインク循環経路内に残存するインク量で画像記録可能なジョブ量が入力した際に、前記第2のインク循環経路内で前記インクを循環し、且つ前記記録ヘッド内を通過するインクを不吐出状態で前記記録ヘッドを駆動させて、前記記録ヘッド内を通過する前記インクを加温して記録適正温度に達した後に画像記録を実施することを特徴とする画像記録装置。
【請求項9】
インクを吐出して画像を記録する少なくとも1つの記録ヘッドと、
インクを貯留するインクタンクと、
前記インクタンクから前記記録ヘッドまでを接続するインク供給経路及び前記記録ヘッドから前記インクタンクまでを接続するインク帰還経路からなる第1インク循環経路と、
前記第1インク循環経路内で前記インクを循環させる第1インク循環手段と、
前記インク供給経路と前記インク帰還経路との間を短路でバイパス接続し、前記記録ヘッドを経路上に含み、前記第1インク循環経路内に残存するインクよりも少ないインク量のインクを循環させるための第2インク循環経路と、
前記第2のインク循環経路内で前記インクを加温して循環させるための対流を発生させる第2のインク循環手段と、
を具備し、
前記第2のインク循環経路内に残存するインク量で画像記録可能なジョブ量が入力した際に、前記第2のインク循環経路内で前記インクを加温して対流により循環させて、加温された前記インクが記録適正温度に達した後に画像記録を実施することを特徴とする画像記録装置。
【請求項10】
前記第2のインク循環手段による前記インクの加温に加えて、
前記インクを不吐出状態で前記記録ヘッドを駆動させて、前記記録ヘッド内を通過する前記インクを加温することを特徴とする請求項9記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−269360(P2009−269360A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124003(P2008−124003)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】