画像記録装置
【課題】 本発明は、インクの循環動作の開始直後のノズル孔の圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部からの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することである。
【解決手段】 画像記録部12aにポンプ6の駆動によりインクを循環させる密閉であるインク循環部2に、インク循環部2内の圧力を調整する圧力調整部24を設けるとともに、ポンプ6の駆動によりインク循環部2にインクを循環させる循環開始時に、画像記録部12aの2つのポート29,30の部分の循環開始時における単位時間当たりの圧力変化量が大きい方の圧力変化を調整して画像記録部12aのノズル圧力を予め設定された適正な設定範囲R内に保持する状態に前記圧力調整部24を制御するコントローラ43を設けた。
【解決手段】 画像記録部12aにポンプ6の駆動によりインクを循環させる密閉であるインク循環部2に、インク循環部2内の圧力を調整する圧力調整部24を設けるとともに、ポンプ6の駆動によりインク循環部2にインクを循環させる循環開始時に、画像記録部12aの2つのポート29,30の部分の循環開始時における単位時間当たりの圧力変化量が大きい方の圧力変化を調整して画像記録部12aのノズル圧力を予め設定された適正な設定範囲R内に保持する状態に前記圧力調整部24を制御するコントローラ43を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを循環させるインク循環経路を備えたインクジェットプリンタなどの画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンタは、サーマルヘッド方式、或いは電気機械変換装置(ピエゾ)方式等の記録ヘッドを搭載し、前記記録ヘッドに設けられた複数のノズル孔から用紙等の記録媒体上にインク滴を吐出することによって画像記録が行われている。このようなインクジェットプリンタの一部には、インクを循環させるインク循環経路を備えたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、画像記録部としての記録ヘッドと、エアバッファを有するバッファタンク及びサブタンクと、ポンプと、が備えられたインク循環経路を有するインクジェットプリンタが開示されている。ここでは、インク循環経路内のバッファタンクと記録ヘッドとの間に介設された弁を閉じてポンプを駆動させることでサブタンクに貯留されているインクをバッファタンクに送液する構成が示されている。
【0004】
特許文献1のインク循環経路は、ポンプと、記録ヘッドと、ポンプと記録ヘッドを接続し、ポンプからインクを供給する上流側インク経路と、記録ヘッドとポンプを接続し、記録ヘッドからインクを回収する下流側インク経路とを有する。記録ヘッドは内部に、前記上流側インク経路と前記下流側インク経路とをつなぐヘッド内経路と、前記ヘッド内経路とつながるノズルと、を有する。前記ノズルは、前記ヘッド内経路とつながるとともにインクを吐出するノズル孔を有し、前記ヘッド内経路より前記ノズル孔にインクが供給され、画像記録時は前記ノズル孔より記録ヘッドの外部にある記録媒体に向けインクが吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−150745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェットプリンタでは、画像記録部のノズル孔の部分におけるインクの圧力(ノズル圧力)は、画像記録部の外側である外気の気圧(外気圧)に対し、正圧になると前記ノズル孔から画像記録部の外部へインクが漏れ出てしまい、所定範囲以上の負圧になると、前記ノズル孔から画像記録部の内部へ空気が流入し、前記ノズル孔のメニスカスを破損してしまう。そのため、外気圧に対しノズル圧力は所定範囲の負圧に維持する必要がある。
【0007】
前記ノズル圧力は、前記画像記録部におけるインクが供給される上流側インク経路と接続される上流側接続ポート部における圧力と、前記画像記録部におけるインクが回収される下流側インク経路と接続される下流側接続ポート部における圧力と、の圧力の平均値の変化に連動し変化する。
特許文献1では、インク循環経路でインクの循環を開始する際、連通バルブを閉めた状態で、つまりインク循環経路は画像記録部のノズル孔以外は外気に対し密閉の状態で循環を開始する。特許文献1のインク循環経路は、例えばサブタンクやバッファタンクの内部にあるエアバッファのように、ポンプから画像記録部にインクを供給する上流インク経路と、画像記録部からインクを回収する下流インク経路とに各々空気が介在している。ここで、空気は圧力により大きく収縮するが、インクは圧力による収縮がほとんどない。
【0008】
そのため、インクの循環の開始時には、上流側および下流側のそれぞれのインク経路に空気というバッファが介在するため、ポンプ駆動開始時の前記上流側および下流側の接続ポート部における圧力は、ポンプ駆動開始時に急激に一定圧力まで変動するのではなく、空気の収縮により、緩やかに変動し、その後、一定圧力に落ち着く。
【0009】
しかし、ポンプ駆動開始時のようにインク循環経路内の圧力に変動が生じたとき、上流側および下流側のそれぞれのインク経路にある空気の容量が異なる場合には、空気の容量がより少ない側のインク経路の圧力の変動は、空気の容量がより多いほうのインク経路の圧力変動と比較し、単位時間当たりの圧力変動量が大きい。
【0010】
これにより、インク循環開始直後における、上流側接続ポート部と下流側接続ポート部の圧力の平均値は不安定になり、この平均値と連動し変化する前記ノズル圧力は、循環開始直後に不安定になる。そのため、ひいてはメニスカスが破壊される原因となり、従って、印字不良の原因となる。
【0011】
そこで、特許文献1では、循環動作を開始する前に、前記上流側インク経路及び、前記下流側インク経路にそれぞれ設けられた開閉弁を閉じて、ポンプを駆動することにより、予め前記バッファタンクを予圧しておくことで、前記ノズル圧力は圧力の変動が収まり、前記不具合を解消している。
【0012】
しかしながら、前記2つの開閉弁を同時にあける制御を行うことは技術的に困難であり、少しでも開放のタイミングがずれてしまうと、急激にノズル圧力が正圧、あるいは負圧のいずれか一方に変動する。即ち、ノズル孔のメニスカスが破壊され、印字不良の原因となる。
【0013】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、インクの循環動作の開始直後のノズル孔の圧力(ノズル圧力)の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部からの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一局面の態様は、記録媒体に画像を記録するために前記記録媒体にインクを吐出するノズル孔と、インクが供給される供給ポートと、インクを排出する排出ポートと、を有する画像記録部と、インクを循環させるポンプと、インク循環経路を有し、前記インク循環経路は、前記ポンプと前記画像記録部の前記供給ポートを接続し、前記ポンプから前記画像記録部へインクを供給する第1のインク経路と、前記画像記録部の前記排出ポートと前記ポンプを接続し、前記画像記録部から前記ポンプへインクを回収する第2のインク経路と、からなり、画像記録時の前記インク循環経路は、前記ノズル孔を除き密閉である画像記録装置において、前記インク循環経路には、前記インク循環経路内の圧力を調整する圧力調整部を設けるとともに、前記ポンプの駆動により前記インク循環経路にインクを循環させる循環開始時に、前記画像記録部の2つのポートの部分の循環開始時における単位時間当たりの圧力変化量が大きい方の圧力変化を調整して前記画像記録部のノズル孔における圧力を予め設定された適正な設定範囲内に保持する状態に前記圧力調整部を制御する制御手段を設けたことを特徴とする画像記録装置である。
【0015】
本発明の他の局面の態様は、記録媒体に画像を記録するために前記記録媒体にインクを吐出するノズル孔と、インクが供給される供給ポートと、インクを排出する排出ポートと、を有する画像記録部と、インクを循環させるポンプと、インク循環経路を有し、前記インク循環経路は、前記ポンプと前記画像記録部の前記供給ポートを接続し、前記ポンプから前記画像記録部へインクを供給する第1のインク経路と、前記画像記録部の前記排出ポートと前記ポンプを接続し、前記画像記録部から前記ポンプへインクを回収する第2のインク経路と、からなり、画像記録時の前記インク循環経路は密閉である画像記録装置において、前記インク経路のうち、前記第1のインク経路中に介在する空気の容量と、前記第2のインク経路中に介在する空気の容量が略等しく、さらに前記第1のインク経路の流路抵抗と前記第2のインク経路の流路抵抗が略等しいことを特徴とする画像記録装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部からの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の画像記録装置の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【図2】第1の実施の形態のインクジェットプリンタのインクタンク内のインク液面高さを検出する液面検出部を示す概略構成図。
【図3】第1の実施の形態のインクジェットプリンタの圧力調整部を示す概略構成図。
【図4A】インクジェットプリンタのインクタンクに空気部がある場合の第2のインク経路の圧力変動状態を示す特性図。
【図4B】インクジェットプリンタの図4Aの第2のインク経路の圧力変動時に対応する第1のインク経路の圧力変動状態を示す特性図。
【図5A】インクジェットプリンタの画像記録部の供給ポートと排出ポートの圧力変動状態を示す特性図。
【図5B】インクジェットプリンタの循環動作開始直後のノズル圧力の変動状態を示す特性図。
【図6】第1の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理を説明するフローチャート。
【図7】第1の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理による循環動作開始直後のノズル圧力の変化状態を示す特性図。
【図8】第1の実施の形態のインクジェットプリンタの圧力調整部の変形例を示す概略構成図。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【図10】第2の実施の形態のインクジェットプリンタの圧力調整部を示す概略構成図。
【図11】圧力調整部を作動せずにインクを循環させた場合の第1のインク経路、第2のインク経路、及びノズル圧力の変動状態を示す特性図。
【図12】第2の実施の形態のインクジェットプリンタにおけるインク循環処理を説明するフローチャート。
【図13】第2の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理による循環動作開始直後のノズル圧力の変化状態を示す特性図。
【図14】第2の実施の形態のインクジェットプリンタの圧力調整部の変形例を示す概略構成図。
【図15】本発明の第3の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【図16】圧力調整部を作動せずにインクを循環させた場合の第1のインク経路、第2のインク経路、及びノズル圧力の変動状態を示す特性図。
【図17】第3の実施の形態のインクジェットプリンタにおけるインク循環処理を説明するフローチャート。
【図18】第3の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理による循環動作開始直後のノズル圧力の変化状態を示す特性図。
【図19】本発明の第4の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【図20】圧力調整部を作動せずにインクを循環させた場合の第1のインク経路、第2のインク経路、及びノズル圧力の変動状態を示す特性図。
【図21】第4の実施の形態のインクジェットプリンタにおけるインク循環処理を説明するフローチャート。
【図22】第4の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理による循環動作開始直後のノズル圧力の変化状態を示す特性図。
【図23】本発明の第5の実施の形態のインクジェットプリンタにおけるインク循環処理の変形例を説明するフローチャート。
【図24】第5の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理の変形例による循環動作開始直後のノズル圧力の変化状態を示す特性図。
【図25】本発明の第6の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【図26】第6の実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャート。
【図27】本発明の第7の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本実施形態を説明する。
[第1の実施の形態]
(構成)
図1〜3および図6、7は、本発明の第1の実施の形態を示す。図1は本発明に係る第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示す図である。
【0019】
なお、図1には記録媒体を供給する供給部、供給された記録媒体を搬送する搬送機構、画像記録された記録媒体を搬出する排出部、画像記録部のメンテナンスを行うメンテナンス部、及びインク吐出制御をはじめとして装置全体を制御する装置制御部等の図示は省略している。
【0020】
図1に示すインクジェットプリンタ1は、例えば、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4種類の色のインクを用いて記録媒体に画像を記録する。なお、図1においては、代表的に1色のインクに関わるインク経路の構成を示している。
【0021】
このインクジェットプリンタ1のインク経路は、大別すると、インク循環部2と、インクカートリッジホルダ部3と、廃液タンク部4と、で構成される。
インク循環部2は、画像記録部12aと、インクを循環させるポンプ6と、第1のインク経路14と、第2のインク経路15と、で構成される。
【0022】
インク循環部2は、画像記録部12aと、インクを循環させるポンプ6と、前記画像記録部12aと前記ポンプ6との間を接続する2つのインク経路(インク供給側の第1のインク経路14とインク排出側の第2のインク経路15)を有する。第1のインク経路14は、画像記録部12aの供給ポート29とポンプ6のインク出口との間を接続する。この第1のインク経路14には、熱交換部10と、フィルタ11と、圧力調整部24とがポンプ6側から順次介設されている。第2のインク経路15は、画像記録部12aの排出ポート30とポンプ6のインク入口との間を接続する。この第2のインク経路15には、空気が介在するインクタンク5が介設されている。
これらの各構成部間は、インク流路としてのチューブ(図の矢印つきの細い線)を介して順次接続されている。
【0023】
インクカートリッジホルダ部3は、インク循環部2にインクを補充するためのインクカートリッジ7を保持する。インクが充填されたインクカートリッジ7の供給口7aを着脱可能に装着するためのジョイント部8を備えており、インクカートリッジ7の供給口7aがジョイント部8に装着されると、インクカートリッジ7内のインクがインクタンク5のインク補給ポート5fよりインク循環部2に供給される。なお、インクカートリッジホルダ部3とインク循環部2とを連結するインク補給路42には補給弁9が設けられ、この補給弁9を開閉することによりインク循環部2へのインク供給を制御している。
【0024】
廃液タンク部4は、廃液インクを収容するためのオーバーフロータンク18を有する。インク循環部2で不要となったインクやインク循環部2からオーバーフローしたインクは、インク循環部2のインクタンク5の大気ポート5cより、気圧路チューブ41を介してオーバーフロータンク18に排出される。
【0025】
なお、図1中の矢印は、インク循環部2をインクが循環するときのインクが流れる方向を示している。インク循環部2において、ポンプ6の駆動時には、インクは、第1のインク経路14の、熱交換部10と、フィルタ11と、圧力調整部24とを順次介して画像記録部12aへ供給される。さらに、画像記録部12aで使われなかったインクは、第2のインク経路15のインクタンク5を介してポンプ6へ帰還する。
【0026】
本実施の形態のインク循環部2において、インクタンク5は画像記録部12aよりも重力方向下方に配置されている。該配置位置は、通常、インクの循環を行わない場合にインクタンク5内のインク液面高さと、画像記録部12aのノズル13内のインク液面の高さとの差、すなわち水頭差によって、ノズル孔の部分におけるノズル圧力を所定範囲の負圧に維持し、ノズル孔にメニスカスが形成されるように設定されている。
【0027】
次に本実施の形態のインク循環部2の個々の構成について詳細に説明する。ポンプ6は循環動作時に駆動され、ポンプ6のインク出口より第1のインク経路14へインクを送る。
第1のインク経路14はチューブを通して上述した熱交換部10、フィルタ11、圧力調整部24の順に接続されている。
熱交換部10は、チューブを介してポンプ6と接続され、ポンプ6によって送られたインクを所定の温度に維持するように調整している。即ち、熱交換部10に流入したインクを加温、又は、冷却する。
フィルタ11は画像記録部12aに供給されるインクに含まれる異物を除去し、画像記録部12aのノズル13のノズル孔の目詰まりなどに起因する印字不良をなくすために設けられている。フィルタ11は、インクを通過させるメッシュ状の部材を有し、そのメッシュの網目として、画像記録部12aの各ノズル13のノズル孔の口径を問題なく通過できるような、十分小さい異物までも除去できるサイズの網目となっている。
そして、フィルタ11から流出したインクを、後述する圧力調整部24を介した後、画像記録部12aに流入させるように設けられている。
【0028】
次に画像記録部12aについて説明する。画像記録部12aは、複数の記録ヘッド12と、インク供給器16と、インク回収器17とを有する。
記録ヘッド12は、インク供給器16とインク回収器17に接続されたノズル13と、前記ノズルに設けられ記録媒体にインクを吐出するノズル孔と、ノズル孔が並設されたノズルプレートとを有する。インク供給器16には、第1のインク経路14と接続されインクが供給される供給ポート29が設けられている。インク回収器17には、第2のインク経路15と接続されインクを排出する排出ポート30が設けられている。
また、画像記録部12aには記録ヘッド12を通過するインクの温度を検出するヘッドサーミスタ28が備えられている。
なお本実施例では、画像記録部12aを、複数の記録ヘッド12と、インク供給器16と、インク回収器17と、で構成する記載としたが、これに限らず、前述の特許文献1に記載の構成のように、インク供給器16とインク回収器17と複数の記録ヘッド12を一体的に設け、供給ポート29と排出ポート30と複数のノズル孔とを有する一体的な画像記録部(記録ヘッド)としてもよい。
【0029】
そして、第1のインク経路14からインク供給器16に流入したインクはそれぞれ略均等に記録ヘッド12に分配される。
記録ヘッド12は、図示しない用紙搬送部に対向して設けられ、外部から入力された画像信号に基づいて、各記録ヘッド12のノズルプレートに形成されているノズル13のノズル孔から、用紙搬送機構により搬送される図示しない記録媒体に向けて液体であるインクを吐出する。
【0030】
インク供給器16を介して記録ヘッド12に流入するインク量は、記録ヘッド12のノズル孔から吐出されるインク量を上回るように設定されている。そのため、記録ヘッド12のノズル孔から吐出されなかったインクは、ノズル13を介しインク回収器17に流れ込み、インク回収器17の排出ポート30に接続されている第2のインク経路15へ送られる。
【0031】
第2のインク経路15には、インクタンク5が介設されている。インク回収器17の排出ポート30から流出したインクは、チューブを経由してインクタンク5のインク入り口ポート5aに送られ、その後インクタンク5のインク出口ポート5bからチューブを経由してポンプ6に帰還する。
【0032】
インクタンク5には、画像記録部12aとチューブを介し接続されるインク入り口ポート5aと、ポンプ6とチューブを介しと接続されるインク出口ポート5bと、大気ポート5cと、空気部5dと、インク液面を所定の高さに保つための液面検出部5eと、インク補給ポート5fと、が備えられている。インクタンク5の天井部には、インク入り口ポート5aと、大気ポート5cと、インク補給ポート5fとが配設されている。インクタンク5の側面下部には、インク出口ポート5bが配設されている。
【0033】
インクタンク5の大気ポート5cは、気圧路チューブ41を介して廃液タンク部4の大気解放されているオーバーフロータンク18と接続されている。この気圧路チューブ41には大気開放弁としての大気解放電磁弁19が設けられており、大気解放電磁弁19の開閉(開放/遮断)によりインクタンク5内を大気開放、又は密閉させることができる。
【0034】
インクタンク5の液面検出部5eは、図2に示すように、フロート部材21と磁石23からなるフロート部20と、液面位置センサ22と、を備えている。フロート部20は、インクタンク5内のインクの液面高さ5gに応じて上下に揺動する。液面位置センサ22は磁気センサからなり、フロート部材21に取り付けられた磁石23を検出することによって、フロート部20の位置、即ちインク液面5gの高さを検出する。
なお、液面検出部5eは、上記の構成に限ることはなく、インク液面の位置を検出することができればよい。例えば、インクタンク5の壁面の一部を透明部材で構成し、透明部材の壁面を通して光学センサで直接液面の位置を検出するようにしてもよい。また、予め液面の位置と、インクタンク5の内圧との関係を調べておいて、圧力センサでインクタンク5の内圧を測定することで、液面の位置を検出するようにしてもよい。
【0035】
インクタンク5のインク補給ポート5fは、インク補給路42のチューブを介してインクカートリッジホルダ部3と接続されている。インク循環部2のインク量が予め設定されたインク量よりも減った場合には、インクカートリッジ7から、インクタンクへ5とインクが補給される。
【0036】
第1のインク経路14には上述のように圧力調整部24が備えられている。圧力調整部24は、図3に示すように第1のインク経路14に一端が接続された流路分岐27と、圧力調整電磁弁25と、少なくとも1部が伸縮可能な容器26と、で構成されている。圧力調整電磁弁25は、流路分岐27の途中に介設されている。容器26は、流路分岐27の他端に接続されている。
【0037】
なお、図3中の矢印はインク流れ方向を示す。圧力調整電磁弁25は、コントローラ(制御手段)43に接続されている。コントローラ43には、ポンプ6や、インクジェットプリンタ1の図示しない操作パネルなどが接続されている。そして、圧力調整電磁弁25は、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで一旦開放され、その後、第2のインク経路15の圧力が圧力一定状態になるまでに閉じるという制御をしている。圧力調整電磁弁25が開放されて、ポンプ6を駆動すると第1のインク経路14は加圧され、同時に流路分岐27を経て容器26も加圧される。容器26は伸縮可能であるために容器26にかかる正圧と釣合うまで伸びる。容器26が伸びることで、後述の第1のインク経路14の単位時間当たりの圧力変化量は少なくなる。
【0038】
このように形成されたインク循環部2は、画像記録時や、循環によるクリーニング時には、インクタンク5の大気解放電磁弁19を閉じてインクタンク5が大気から遮断される。この状態でポンプ6を駆動すると、インクタンク5は減圧され、時間と共に負圧になる。ここで、正常な印字動作を行うために、画像記録部12aに適正な負圧を与えて、ノズル13のノズル孔にかかるインクにメニスカスを形成する必要がある。このとき、インクタンク5から画像記録部12aへインクを供給する第1のインク経路14の流路抵抗をR1とし、画像記録部12aからインクタンク5へインクを回収する第2のインク経路15の流路抵抗をR2とすると、R1>R2の関係であれば、画像記録部12aに負圧が生成される。正常な印字動作を行うためには、流路抵抗R1及び流路抵抗R2を適正なメニスカスが形成されるための値に設定すればよい。本実施の形態の場合、画像記録部12aに与える適正な負圧は、−2kPaから−0.5kPaであればよい。
【0039】
また、インクジェットプリンタ1の待機時(インク非循環時)には、インクタンク5の大気解放電磁弁19を開けて、インクタンク5内を大気に対し開放する大気開放状態にする。この時、インクタンク5は前述したように画像記録部12aより重力方向下方に配置しているため、画像記録部12aのノズル13のノズル孔には水頭差によりメニスカスが形成されている。つまり、待機時においてインクタンク5は、ノズル孔のメニスカスが破壊されず、且つ画像記録部12aからインクが垂れ落ちることのないようにノズル圧力が所定範囲の負圧になるような位置に配置している。なお、画像記録部12aのノズル13のノズル孔に適正な負圧を生成してメニスカスを形成するために、インクタンク5の大気解放電磁弁19を閉じてインクタンク5に所定範囲の負圧を生成するための負圧生成機構(不図示)をインクタンク5に設けてもよい。
【0040】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態のインクジェットプリンタ1の使用時には、ポンプ6を駆動して循環を開始する。このポンプ6を駆動する際に、特許文献1のように、インクタンク5に空気部があると、空気には圧縮する性質があるため、第2のインク経路15の圧力P2は、図4Aに示すようにポンプ6の駆動時点T1から緩やかに時間と共に変動する。このとき、第1のインク経路14には空気部がなく、インクで満たされている。インクは略非圧縮性であるため、圧力調整部24を作動させずにインクを循環させると、第1のインク経路14の圧力P1は、図4Bに示すようにポンプ6の駆動時点T1から略同時に変化する。したがって、第1のインク経路14の圧力P1と第2のインク経路15の圧力P2とでは単位時間当たりの圧力変化量が異なってしまう。即ち、第1のインク経路14の圧力P1のほうがより早く圧力一定状態になる。
【0041】
また、同様にインクは略非圧縮性であるため、画像記録部12aの供給ポート29、排出ポート30でも、第1のインク経路14および第2のインク経路15の圧力変動と同じように、圧力の時間変動が異なる(図5A参照)。
ここで、ノズル圧力Pnは、供給ポート29の圧力P1と、出口である排出ポート30の圧力P2と、ノズル孔からの外気圧と、供給ポート29とノズル孔との水頭差による圧力と、排出ポート30との圧力P2とノズル孔との水頭差による圧力と、により決まるが、本実施形態の説明においては、便宜上、外気圧は一定とし、また供給ポート29とノズル孔との水頭差および排出ポート30との圧力P2とノズル孔との水頭差はないものとし、つまりはノズル圧力Pnはノズル孔に対して入り口である供給ポート29の圧力P1と、出口である排出ポート30の圧力P2との平均値で表されることとする。
即ち、ノズル圧力Pnは図5Bに示すようにポンプ6の駆動時点T1から時間と共に振る舞い、循環動作の開始直後にノズル圧力が急激に変動する。このとき、ノズル圧力Pnは、予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れ、不安定になってしまう。したがって、ノズル圧力Pnの急激な変動により、メニスカスが破壊されてしまい、ノズル13のノズル孔から予期せぬインク滴が出て、印字不良の原因となってしまう場合がある。
【0042】
そこで、この状態を解消するための本実施の形態のインク循環処理について説明する。図6は本実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャートである。STEP101では、インク循環処理が実行される。なお、この処理は、図示しない印刷動作の命令や、経路洗浄の命令がなされて実行される。次に、STEP102では気圧路チューブ41の大気解放電磁弁19が閉鎖され、インク循環部2が画像記録部12aのノズル孔以外は密閉される。
【0043】
STEP103では圧力調整部24が作動される。即ち、流路分岐27の圧力調整電磁弁25が開放される。そして、STEP104でポンプ6が駆動され、インク循環が開始される。なお、STEP103及びSTEP104は同時に行ってもよいし、順序を逆転してもよい。そして、第2のインク経路15の圧力P2が圧力一定状態になるまでに(圧力P2が圧力一定状態になる前の時点で)STEP105で圧力調整部24を停止する。
【0044】
STEP106ではインク循環終了かどうかの確認をしている。STEP106でNOを選択する場合、即ち、インク循環終了でなければ再びSTEP106に戻る。STEP106でYESを選択する場合、即ち、インク循環終了であればSTEP107へ移行し、ポンプ6を停止させる。次に、STEP108で大気解放電磁弁19を開放し、STEP109でインク循環終了とする。なお、不図示だが、インク循環部2のインク量が、吐出により減少した場合は適宜、インクカートリッジホルダ部3から補給すればよい。
【0045】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、第1のインク経路14に圧力調整部24を設けている。そして、圧力調整部24の圧力調整電磁弁25は、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで一旦開放され、その後、第2のインク経路15の圧力が圧力一定状態になるまでに閉じるという制御をしている。このとき、圧力調整電磁弁25が開放されて、ポンプ6を駆動すると第1のインク経路14は加圧され、同時に流路分岐27を経て容器26も加圧される。そのため、容器26は、この容器26にかかる正圧と釣合うまで伸びることで、第1のインク経路14の単位時間当たりの圧力変化量を少なくすることができる。その結果、図7に示すようにポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnが予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れずにすむ。したがって、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部12aからの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【0046】
なお、圧力調整部24はこれに限ることはなく、インクの循環動作の開始直後の第1のインク経路14の単位時間あたりの圧力変化量を少なくすればよい。例えば、図8に示す変形例のように、伸縮可能な容器26の代わりに減圧ポンプ31と、インクを貯留するタンク32と、を設け、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで図8中の破線矢印方向に示すように第1のインク経路14からインクを送液することで担ってもよい。
【0047】
[第2の実施の形態]
(構成)
図9乃至図13は、本発明の第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図7参照)のインクジェットプリンタ1の構成を次の通り変更した変形例である。図9は、本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示す図である。
なお、第1の実施の形態と同じ構成は説明を省略する。
【0048】
第1の実施の形態(図1)では、第2のインク経路15に空気が介在するインクタンク5を、第1のインク経路14に圧力調整部24を設けた構成を示したが、本実施の形態では、図9に示すように、第1のインク経路14に空気が介在するインクタンク52を、第2のインク経路15に圧力調整部51を設けたものである。
インク循環部2の第1のインク経路14は、画像記録部12aの供給ポート29とポンプ6のインク出口との間を接続する。この第1のインク経路14には、熱交換部10と、フィルタ11と、インクタンク52とが、ポンプ6側から順次介設されている。第2のインク経路15は、画像記録部12aの排出ポート30とポンプ6のインク入口との間を接続する。この第2のインク経路15には、後述する圧力調整部51が介設されている。
【0049】
本実施の形態のインクタンク52には、フィルタ11とチューブを介して接続されるインク入り口ポート52aと、画像記録部12a側の供給ポート29とチューブを介して接続されるインク出口ポート52bと、大気ポート52cと、空気部52dと、インク液面52gを所定の高さに保つための液面検出部52eと、インク補給ポート52fと、が備えられている。インクタンク52の天井部には、インク入り口ポート52aと、大気ポート52cと、インク出口ポート52bとが配設されている。インクタンク5の側面下部には、インク補給ポート52fが配設されている。液面検出部52eは、第1の実施の形態(図1)の液面検出部5eと同一構成になっている。
【0050】
インクタンク52の大気ポート52cは、気圧路チューブ41を介して廃液タンク部4の大気解放されているオーバーフロータンク18と接続されている。この気圧路チューブ41には大気開放弁としての大気解放電磁弁53が設けられており、大気解放電磁弁53の開閉(開放/遮断)によりインクタンク52内を大気開放、又は密閉させることができる。また、インクタンク52のインク補給ポート52fは、インク補給路42のチューブを介してインクカートリッジホルダ部3と接続されている。このインク補給路42には補給弁9が設けられ、この補給弁9を開閉することによりインク循環部2へのインク供給を制御している。
【0051】
圧力調整部51は、第1の実施の形態の圧力調整部24とほぼ同じ構成になっている。すなわち、本実施の形態の圧力調整部51は、図10に示すように第2のインク経路15に一端が接続された流路分岐54と、圧力調整電磁弁56と、少なくとも1部が伸縮可能な容器57と、で構成されている。圧力調整電磁弁56は、流路分岐54の途中に介設されている。容器57は、流路分岐54の他端に接続されている。
【0052】
なお、図10中の矢印はインク流れ方向を示す。圧力調整電磁弁56は、コントローラ43(図3参照)に接続されている。コントローラ43には、ポンプ6や、インクジェットプリンタ1の図示しない操作パネルなどが接続されている。そして、圧力調整電磁弁56は、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで一旦開放され、その後、第2のインク経路15の圧力が圧力一定状態になるまでに閉じるという制御をしている。圧力調整電磁弁56が開放されて、ポンプ6を駆動するとポンプ6の上流側の第2のインク経路15は吸引され、同時に流路分岐54を経て容器57に吸引力(負圧)が作用する。容器57は伸縮可能であるために容器57にかかる負圧と釣合うまで縮む。容器57が縮むことで、第2のインク経路15の圧力の変動量が少なくなる。
【0053】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態のインクジェットプリンタ1の使用時には、インク循環時は第1の実施の形態と同様に、大気解放電磁弁53を閉じることでインク循環部2を画像記録部12aのノズル孔以外は密閉し、ポンプ6を駆動することで、インク循環動作を行う。本実施の形態において、圧力調整部51を作動せずにインクを循環させると、図11に示すように画像記録部12aの供給ポート29の圧力P1の変化状態と、排出ポート30の圧力P2の変化状態との差により、ノズル圧力Pnは、予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れ、不安定になってしまう。したがって、ノズル圧力が適正圧力範囲Rを逸脱し、メニスカスが破壊されてしまい、ノズル孔から外気を吸い込むことで、印字不良の原因となってしまう場合がある。
【0054】
そこで、上述の不具合を解消するための本実施の形態のインク循環処理を説明する。図12は本実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャートである。STEP201では、インク循環処理が実行される。なお、この処理は、図示しない印刷動作の命令や、経路洗浄の命令がなされて実行される。次に、STEP202では気圧路チューブ41の大気解放電磁弁53が閉鎖され、インク循環部2が画像記録部12aのノズル孔以外は密閉される。
【0055】
STEP203では圧力調整部51が作動される。即ち、流路分岐54の圧力調整電磁弁56が開放される。そして、STEP204でポンプ6が駆動され、インク循環が開始される。なお、STEP203及びSTEP204は同時に行ってもよいし、順序を逆転してもよい。そして、第2のインク経路15の圧力P2が圧力一定状態になるまでに(圧力P2が圧力一定状態になる前の時点で)STEP205で圧力調整部51を停止する。
【0056】
STEP206ではインク循環終了かどうかの確認をしている。STEP206でNOを選択する場合、即ち、インク循環終了でなければ再びSTEP206に戻る。STEP206でYESを選択する場合、即ち、インク循環終了であればSTEP207へ移行し、ポンプ6を停止させる。次に、STEP208で大気解放電磁弁53を開放し、STEP209でインク循環終了とする。なお、不図示だが、インク循環部2のインク量が、吐出により減少した場合は適宜、インクカートリッジホルダ部3から補給すればよい。
【0057】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、第2のインク経路15に圧力調整部51を設けている。そして、圧力調整部51の圧力調整電磁弁56は、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで一旦開放され、その後、第2のインク経路15の圧力が圧力一定状態になるまでに閉じるという制御をしている。このとき、圧力調整電磁弁56が開放されて、ポンプ6を駆動すると第2のインク経路15は減圧され、同時に流路分岐54を経て容器57に吸引力(負圧)が作用する。容器57は伸縮可能であるために容器57にかかる負圧と釣合うまで縮む。容器57が縮むことで、排出ポート30の圧力の変動量が少なくなる。その結果、図13に示すようにポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnが予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れずにすむ。したがって、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部12aからの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【0058】
なお、圧力調整部51はこれに限ることはなく、第2のインク経路15の単位時間あたりの圧力変化量を少なくすればよい。例えば、図14に示す変形例のように、伸縮可能な容器57の代わりに加圧ポンプ58と、インクを貯留するタンク59と、を設け、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで図14中の破線矢印方向に示すように第2のインク経路15にインクを送液することで担ってもよい。
【0059】
[第3の実施の形態]
(構成)
図15乃至図18は、本発明の第3の実施の形態を示す。図15は本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示す図である。なお、上述の実施の形態と同じ構成は説明を省略する。
本実施の形態では、インク供給側の第1のインク経路14に第1のインクタンク61を設け、さらにインク排出側の第2のインク経路15に第2のインクタンク62を設けており、第1のインク経路14と第2のインク経路15との両方の経路に空気が介在している。
【0060】
インク循環部2のインク供給側の第1のインク経路14は、画像記録部12aの供給ポート29とポンプ6のインク出口との間を接続する。この第1のインク経路14には、熱交換部10と、フィルタ11と、第1のインクタンク61とが、ポンプ6側から順次介設されている。
【0061】
インク排出側の第2のインク経路15は、画像記録部12aの排出ポート30とポンプ6のインク入口との間を接続する。この第2のインク経路15には、第2のインクタンク62が介設されている。
【0062】
第1のインクタンク61には、フィルタ11とチューブを介して接続されるインク入り口ポート61aと、画像記録部12a側の供給ポート29とチューブを介して接続されるインク出口ポート61bと、大気ポート61cと、空気部61dと、インク液面61gを所定の高さに保つための液面検出部61eと、が備えられている。第1のインクタンク61の天井部には、インク入り口ポート61aと、大気ポート61cと、インク出口ポート61bとが配設されている。
【0063】
第2のインクタンク62には、画像記録部12a側の排出ポート30とチューブを介して接続されるインク入り口ポート62aと、ポンプ6のインク入口とチューブを介して接続されるインク出口ポート62bと、大気ポート62cと、空気部62dと、インク液面62gを所定の高さに保つための液面検出部62eと、インク補給ポート62fと、が備えられている。第2のインクタンク62の天井部には、インク入り口ポート62aと、大気ポート62cと、インク補給ポート62fとが配設されている。第2のインクタンク62の側面下部には、インク出口ポート62bが配設されている。なお、第1のインクタンク61の液面検出部61eと第2のインクタンク62の液面検出部62eは、第1の実施の形態(図1)の液面検出部5eと同一構成になっている。
【0064】
第1のインクタンク61の大気ポート61cは、気圧路チューブ64を介して廃液タンク部4の大気解放されているオーバーフロータンク18と接続されている。この気圧路チューブ64には大気開放弁としての第1の大気解放電磁弁65が設けられており、第1の大気解放電磁弁65の開閉(開放/遮断)により第1のインクタンク61内を大気開放、又は密閉させることができる。
【0065】
同様に、第2のインクタンク62の大気ポート62cは、気圧路チューブ66を介して廃液タンク部4の大気解放されているオーバーフロータンク18と接続されている。この気圧路チューブ66には大気開放弁としての第2の大気解放電磁弁67が設けられており、第2の大気解放電磁弁67の開閉(開放/遮断)により第2のインクタンク62内を大気開放、又は密閉させることができる。
【0066】
また、第2のインクタンク62のインク補給ポート62fは、インク補給路68のチューブを介してインクカートリッジホルダ部3と接続されている。このインク補給路68には補給弁69が設けられ、この補給弁69を開閉することによりインク循環部2へのインク供給を制御している。
【0067】
第2のインクタンク62及び第1のインクタンク61についてさらに詳細に説明する。第1のインクタンク61の空気部61dの空気容量は、第2のインクタンク62の空気部62dの空気容量よりも大きくなっている。本実施の形態では、第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67がインク循環部2内の圧力を調整する圧力調整部として機能する構成になっている。第2の大気解放電磁弁67は、コントローラ(制御手段)70に接続されている。コントローラ70には、ポンプ6や、インクジェットプリンタ1の図示しない操作パネルなどが接続されている。そして、第2の大気解放電磁弁67は、コントローラ70によってインク循環部2の循環開始直前のタイミングで一旦開放され、その後、図18中のT2の時点で閉じるという制御をしている。
【0068】
なお、インクジェットプリンタ1の待機時(インク非循環時)には、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を開けて、第2のインクタンク62内を大気に対し開放状態にするとともに、第1のインクタンク61の第1の大気解放電磁弁65を閉じる。この時、第2のインクタンク62は前述したように画像記録部12aより重力方向下方に配置しているため、画像記録部12aのノズル孔には水頭差によりメニスカスが形成されている。つまり、待機時において第2のインクタンク62は、ノズル孔のメニスカスが破壊されず、且つ画像記録部12aからインクが垂れ落ちることのない位置に配置している。
【0069】
ここで、画像記録部12aのノズル孔のメニスカスを形成するために、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を閉じて第2のインクタンク62に負圧を生成するための負圧生成機構(不図示)を備えてもよい。この場合、第1のインクタンク61の位置は重力方向に制限はない。さらに、メニスカスを形成するための第2のインクタンク62の役割を第1のインクタンク61が担えば第2のインクタンク62の位置は重力方向に制限はない。
【0070】
このように形成されたインク循環部2は、画像記録時や循環によるクリーニング時は、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67及び、第1のインクタンク61の第1の大気解放電磁弁65を閉じて第2のインクタンク62及び第1のインクタンク61を大気から遮断する(密閉状態)。この状態でポンプ6を駆動すると、第1のインク経路14は加圧され、時間と共に一定の正圧になる。このとき、ポンプ6の駆動により第2のインク経路15は減圧され、時間と共に一定の負圧になる。
【0071】
また、正常な印字動作を行うために、画像記録部12aには、適正な負圧を与えて、ノズル孔にかかるインクにメニスカスを形成する必要がある。ここで、第1のインク経路14の流路抵抗をR1とし、第2のインク経路15の流路抵抗をR2とすると、R1>R2の関係であれば、画像記録部12aに負圧が生成される。正常な印字動作を行うためには、流路抵抗R1及び流路抵抗R2を適正なメニスカスが形成されるための値に設定すればよい。なお、画像記録部12aのノズル孔に適正な負圧を生成するために第2のインクタンク62に、不図示だが、圧力生成機構を設けてもよい。
【0072】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態では、第2のインクタンク62の空気部62dの容量と、第1のインクタンク61の空気部61dの容量とが異なる。そのため、本実施の形態の圧力調整部として機能する第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67を作動せずにインク循環部2にインクを循環させると、図16に示すように第1のインク経路14(画像記録部12aの供給ポート29)の圧力P1の単位時間あたりの圧力変動量と、第2のインク経路15(画像記録部12aの排出ポート30)の圧力P2の単位時間あたりの圧力変動量が異なってしまう。即ち、第2のインク経路15の方が、早く圧力一定状態になる。このとき、ノズル圧力Pnは、予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れ、不安定になってしまう。したがって、ノズル圧力Pnの急激な変動により、メニスカスが破壊されてしまい、ノズル13のノズル孔から予期せぬ外気を吸い込むことで、印字不良の原因となってしまう場合がある。
【0073】
そこで、上述の不具合を解消するための本実施の形態のインク循環処理を説明する。図17は本実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャートである。STEP301では、インク循環処理が実行される。なお、この処理は、図示しない印刷動作の命令や、経路洗浄の命令がなされて実行される。次に、STEP302では第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65および第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67が閉鎖され、インク循環部2が画像記録部12aのノズル孔以外は密閉される。
【0074】
STEP303では本実施の形態の圧力調整部が作動される。即ち、第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67がコントローラ70によって開放される。その後、STEP304でポンプ6が駆動され、インク循環が開始される。なお、STEP303及びSTEP304は同時に行ってもよいし、順序を逆転してもよい。そして、図18中のT2の時点で第2の大気解放電磁弁67を閉操作する(STEP305)。
【0075】
STEP306ではインク循環終了かどうかの確認をしている。STEP306でNOを選択する場合、即ち、インク循環終了でなければ再びSTEP306に戻る。STEP306でYESを選択する場合、即ち、インク循環終了であればSTEP307へ移行し、ポンプ6を停止させる。次に、STEP308で第1の大気解放電磁弁65を開放し、STEP309でインク循環終了とする。なお、不図示だが、インク循環部2のインク量が、吐出により減少した場合は適宜、インクカートリッジホルダ部3から補給すればよい。
【0076】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67を本実施の形態の圧力調整部として機能させている。そして、第2の大気解放電磁弁67は、コントローラ70によってインク循環部2の循環開始直前のタイミングで一旦開放され、その後、図18中のT2の時点で閉じるという制御をしている。このとき、第2の大気解放電磁弁67が開放されて、ポンプ6を駆動すると第2のインク経路15に吸引力(負圧)が作用しない。そのため、図18に示すように第2のインク経路15側の排出ポート30の圧力変動の開始をポンプ6の駆動時点T1よりも遅くすることができる。これにより、図18に示すようにポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnが予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れずにすむ。したがって、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部12aからの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【0077】
なお、本実施の形態の第2のインク経路15には、第2の実施の形態の圧力調整部51(図10参照)と同一構成の圧力調整部51を介設し、この圧力調整部51の作動をコントローラ70によって制御することでも同様の効果が得られる。
[第4の実施の形態]
(構成)
図19乃至図22は、本発明の第4の実施の形態を示す。本実施の形態は第3の実施の形態(図15乃至図18参照)の変形例である。本実施の形態では、第1のインクタンク61の空気部61dの空気容量は、第2のインクタンク62の空気部62dの空気容量よりも小さくなっている。本実施の形態では、第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65がインク循環部2内の圧力を調整する圧力調整部として機能する構成になっている。第1の大気解放電磁弁65は、コントローラ(制御手段)71に接続されている。コントローラ71には、ポンプ6や、インクジェットプリンタ1の図示しない操作パネルなどが接続されている。そして、第1の大気解放電磁弁65は、コントローラ71によってインク循環部2の循環開始直前のタイミングで一旦開放され、その後、図18中のT2の時点で閉じるという制御をしている。
【0078】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態では、第2のインクタンク62の空気部62dの容量が、第1のインクタンク61の空気部61dの容量よりも大きい。そのため、本実施の形態の圧力調整部として機能する第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65を作動せずにインク循環部2にインクを循環させると、図20に示すように第1のインク経路14(画像記録部12aの供給ポート29)の圧力P1の単位時間あたりの圧力変動量と、第2のインク経路15(画像記録部12aの排出ポート30)の圧力P2の単位時間あたりの圧力変動量が異なってしまう。即ち、第1のインク経路14の方が、早く圧力一定状態になる。このとき、ノズル圧力Pnは、予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れ、不安定になってしまう。したがって、ノズル圧力Pnの急激な変動により、メニスカスが破壊されてしまい、ノズル13のノズル孔から予期せぬインク滴が出て、印字不良の原因となってしまう場合がある。
【0079】
そこで、上述の不具合を解消するための本実施の形態のインク循環処理を説明する。図21は本実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャートである。STEP401では、インク循環処理が実行される。次に、STEP402では第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65および第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67が閉鎖され、インク循環部2が画像記録部12aのノズル孔以外は密閉される。
【0080】
STEP403では本実施の形態の圧力調整部が作動される。即ち、第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65がコントローラ71によって開放される。その後、STEP404でポンプ6が駆動され、インク循環が開始される。なお、STEP403及びSTEP404は同時に行ってもよいし、順序を逆転してもよい。そして、図22中のT3の時点で第1の大気解放電磁弁65を閉操作する(STEP405)。
【0081】
STEP406ではインク循環終了かどうかの確認をしている。STEP406でNOを選択する場合、即ち、インク循環終了でなければ再びSTEP406に戻る。STEP406でYESを選択する場合、即ち、インク循環終了であればSTEP407へ移行し、ポンプ6を停止させる。次に、STEP408で第1の大気解放電磁弁65を開放し、STEP409でインク循環終了とする。
【0082】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65を本実施の形態の圧力調整部として機能させている。そして、第1の大気解放電磁弁65は、コントローラ71によってインク循環部2の循環開始直前のタイミングで一旦開放され、その後、図22中のT3の時点で閉じるという制御をしている。このとき、第1の大気解放電磁弁65が開放されて、ポンプ6を駆動すると第1のインク経路14に吐出力(正圧)が作用しない。そのため、図22に示すように第1のインク経路14側の供給ポート29の圧力変動の開始をポンプ6の駆動時点T1よりも遅くすることができる。これにより、図22に示すようにポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnが予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れずにすむ。したがって、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部12aからの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【0083】
なお、本実施の形態の第1のインク経路14には、図3、図8の圧力調整部24と同一構成の圧力調整部24を介設し、この圧力調整部24の作動をコントローラ71によって制御することでも同様の効果が得られる。
[第5の実施の形態]
(構成)
図23および図24は、本発明の第5の実施の形態を示す。本実施の形態は、第3の実施の形態(図15乃至図18参照)の変形例である。すなわち、本実施の形態では、図15のインク経路の構成で、インク循環部2のインクの循環開始時に、図23に示すフローチャートのインク循環処理を行うようにしたものである。
【0084】
(作用)
図23のフローチャートでは、STEP501からSTEP504までは図17に示すフローチャートのSTEP301からSTEP304までと同じである。STEP505で第2の大気解放電磁弁67を予め設定しておいた回数だけ間欠的に開閉させる制御を行う。ここで、予め設定しておいた回数だけ第2の大気解放電磁弁67を開閉させた後に、STEP506で第2の大気解放電磁弁67を閉鎖する。STEP507以降は図17に示すフローチャートのSTEP306からSTEP309までと同じである。
【0085】
(効果)
本実施の形態によると、第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67は、インク循環部2の循環開始直前のタイミングで一旦開放され、その後、予め設定しておいた回数だけ第2の大気解放電磁弁67を開閉させ、図24中のT4の時点で第2の大気解放電磁弁67を閉じるという制御をしている。これにより、図24に示すようにポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの圧力変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnは適正圧力(予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間)を保つことができる。
【0086】
なお、本実施の形態では、画像記録部12aの供給ポート29と、排出ポート30とにそれぞれ圧力センサを設け、その圧力センサによる検出データをコントローラ70にフィードバックし、第2の大気解放電磁弁67の開閉動作を制御する構成にしてもよい。
[第6の実施の形態]
(構成)
図25および図26は、本発明の第6の実施の形態を示す。図25は、本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示す図である。本実施の形態は、第3の実施の形態(図15乃至図18参照)の変形例である。すなわち、本実施の形態では、図25のインク経路の第2のインクタンク62の気圧路チューブ66にインクタンク62に負圧を生成するための負圧生成部33を接続したものである。この負圧生成部33を圧力調整部として機能させる構成にしている。
【0087】
本実施の形態の負圧生成部33は、負圧を発生させる内部が空洞で伸縮可能なベローズ部34と、錘部35と、ベローズ昇降機構36とで構成されている。ベローズ部34は、伸び下がることで、ベローズ部34の内部の体積が増え、気圧路チューブ66を経由し第2のインクタンク内の空気を引き込むことにより、第2のインクタンク62内を負圧状態にすることができる。
なお、メニスカスを形成するために、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を閉じて負圧生成部33を用いて第2のインクタンク62に負圧を生成する場合、第1のインクタンク61の位置は重力方向に制限はない。さらに、メニスカスを形成するための第2のインクタンク62の役割を第1のインクタンク61が担えば第2のインクタンク62の位置は重力方向に制限はない。
【0088】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態では、インク循環部2は、画像記録時や循環によるクリーニング時は、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67及び、第1のインクタンク61の第1の大気解放電磁弁65を閉じて第2のインクタンク62及び第1のインクタンク61を大気から遮断する。この状態でポンプ6を駆動すると、第1のインク経路14は加圧され、時間と共に正圧になる。さらに第2のインク経路15は減圧され、時間と共に負圧になる。
【0089】
ここで、正常な印字動作を行うために、画像記録部12aに適正な負圧を与えて、ノズル孔にかかるインクにメニスカスを形成する必要があるため、第2のインクタンク62の空気部62dに上記負圧生成部33を設けている。負圧生成部33のベローズ部34は、伸び下がることで第2のインクタンク62内を負圧状態にすることができる。
【0090】
この負圧生成部33の駆動時には、まず、第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67を開いて第2のインクタンク62内を大気に対して開放した状態で、ベローズ昇降機構36によりベローズ部34及び錘部35を上昇させる(縮める)。そしてベローズ部34及び錘部35を所定の位置まで上昇させた後、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を閉じる。
【0091】
このように第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を閉じると、第2のインクタンク62及びベローズ部34の内部は連通しつつ外部とは閉じられた空間となる。この状態でベローズ部34を伸縮させると、上記閉じられた空間の体積が増減する。
つまり、ベローズ部34を支えない位置までベローズ昇降機構36を降下させると、ベローズ部34が錘部35の重さによって下方に引っ張られ、上記閉じられた空間の体積が増加し、第2のインクタンク62内には、錘部35に加わる重力と釣り合う大きさの一定の負圧が発生する。
【0092】
これにより第2のインクタンク62と画像記録部12aは、チューブ等を介して連通しているため画像記録部12aには、所定の負圧がかかる。この所定の負圧により画像記録部12aのノズル孔にメニスカスを形成することができる。
図26は、本実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャートである。STEP601では、循環処理が実行される。なお、この処理は、図示しない印刷動作の命令や、経路洗浄の命令がなされて実行される。次にSTEP602では第2の大気解放電磁弁67が開放され、第2のインクタンク62が大気に対し開放される。なお、待機状態で第2の大気解放電磁弁67が開放されているならば、STEP602は必要ない。次にSTEP603でベローズ昇降機構36が下降する。即ち、ベローズ部34が伸びる。そして、STEP604で第2の大気解放電磁弁67と、第1の大気解放電磁弁65が閉じて、インク循環部2は密閉される。
【0093】
STEP605では負圧生成部33が作動される。即ち、ベローズ昇降機構36が上昇し、ベローズ部34が縮む。そして、STEP606でポンプ6が駆動され、インク循環が開始される。なお、STEP605と、STEP606は同時に行ってもよいし、順序を逆転してもよい。そして、第2のインク経路15の圧力が圧力一定状態になるまでにSTEP607でベローズ昇降機構36を停止させる。
【0094】
STEP608ではインク循環終了かどうかの確認をしている。STEP608でNOを選択する場合、即ち、インク循環終了でなければ再びSTEP608に戻る。STEP608でYESを選択する場合、即ち、インク循環終了であればSTEP609へ移行し、ポンプ6を停止させる。次に、STEP610で第2の大気解放電磁弁67を開放し、STEP611でインク循環終了とする。
【0095】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、図25のインク経路の第2のインクタンク62の気圧路チューブ66にインクタンク62に負圧を生成するための負圧生成部33を接続し、この負圧生成部33をインクの循環動作の開始時の圧力調整部として機能させる構成にしている。この負圧生成部33の動作により、インクの循環動作の開始時には、第2の大気解放電磁弁67が開放されて、ポンプ6を駆動すると第2のインク経路15に吸引力(負圧)が作用しない。そのため、第2のインク経路15側の排出ポート30の圧力変動の開始をポンプ6の駆動時点T1よりも遅くすることができる(図18参照)。これにより、ポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnが予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れずにすむ。したがって、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部12aからの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【0096】
[第7の実施の形態]
(構成)
図27は、本発明の第7の実施の形態を示す。図27は、本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示す図である。本実施の形態は、第3の実施の形態(図15乃至図18参照)の変形例である。すなわち、本実施の形態では、第1のインク経路14の第1のインクタンク61の空気部61dと、第2のインク経路15の第2のインクタンク62の空気部62dとは、それぞれの空気容量(バッファ容量)が略等しい容量に設定されている。さらに、前記第1のインク経路14の流路抵抗R1と前記第2のインク経路の流路抵抗R2が略等しい。また、第1のインクタンク61と及び第2のインクタンク62内のインク液面高さは重力方向に略等しい高さにあると同時に、画像記録部12aより低い位置にある。
【0097】
なお、インクジェットプリンタ1の待機時(インク非循環時)には、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を開けて、第2のインクタンク62内を大気に対し開放して、第2のインクタンク62内を大気開放状態にするとともに第1のインクタンク61の第1の大気解放電磁弁65を閉じる。この時、第2のインクタンク62は前述したように画像記録部12aより重力方向下方に配置しているため、画像記録部12aのノズル孔には水頭差によりメニスカスが形成されている。つまり、待機時において第2のインクタンク62は、ノズル孔のメニスカスが破壊されず、且つ画像記録部12aからインクが垂れ落ちることのない位置に配置している。
【0098】
なお、メニスカスを形成するために、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を閉じて第2のインクタンク62に負圧を生成するための負圧生成機構(不図示)を備えてもよい。さらに、メニスカスを形成するための第2のインクタンク62の役割を第1のインクタンク61が担えば第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を開放する必要はない。
【0099】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態では、インク循環部2は、画像記録時や循環によるクリーニング時は、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67及び、第1のインクタンク61の第1の大気解放電磁弁65を閉じて第2のインクタンク62及び第1のインクタンク61を大気から遮断する。この状態でポンプ6を駆動すると、第1のインク経路14は加圧され、時間と共に正圧になる。さらに第2のインク経路15は減圧され、時間と共に負圧になる。
【0100】
なお、画像記録部12aのノズル孔に適正な負圧を生成するために、画像記録部12aに対し、第1のインクタンク61および第2のインクタンク62を低い位置に設けているが、第2のインクタンク62に図示しない圧力生成機構設けてもよい。
【0101】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、第2のインクタンク62の空気部62dの容量と、第1のインクタンク61の空気部61dの容量とが略等しい容量に設定されている。さらに、前記第1のインク経路14の流路抵抗R1と前記第2のインク経路の流路抵抗R2が略等しいので、第1のインク経路14及び第2のインク経路15の圧力の単位時間当たりの圧力の変動量の絶対値は略均等になる。即ち、ノズル圧力の変動が抑制され、従ってノズル孔のメニスカスが破壊されることはない。
【0102】
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、インクを循環させるインク循環経路を備えたインクジェットプリンタなどの画像記録装置を使用する技術分野や、これを製造する技術分野に有効である。
【符号の説明】
【0104】
2…インク循環部(インク循環経路)、6…ポンプ、12a…画像記録部、14…第1のインク経路、15…第2のインク経路、24…圧力調整部、29…供給ポート、30…排出ポート、43…コントローラ(制御手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを循環させるインク循環経路を備えたインクジェットプリンタなどの画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンタは、サーマルヘッド方式、或いは電気機械変換装置(ピエゾ)方式等の記録ヘッドを搭載し、前記記録ヘッドに設けられた複数のノズル孔から用紙等の記録媒体上にインク滴を吐出することによって画像記録が行われている。このようなインクジェットプリンタの一部には、インクを循環させるインク循環経路を備えたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、画像記録部としての記録ヘッドと、エアバッファを有するバッファタンク及びサブタンクと、ポンプと、が備えられたインク循環経路を有するインクジェットプリンタが開示されている。ここでは、インク循環経路内のバッファタンクと記録ヘッドとの間に介設された弁を閉じてポンプを駆動させることでサブタンクに貯留されているインクをバッファタンクに送液する構成が示されている。
【0004】
特許文献1のインク循環経路は、ポンプと、記録ヘッドと、ポンプと記録ヘッドを接続し、ポンプからインクを供給する上流側インク経路と、記録ヘッドとポンプを接続し、記録ヘッドからインクを回収する下流側インク経路とを有する。記録ヘッドは内部に、前記上流側インク経路と前記下流側インク経路とをつなぐヘッド内経路と、前記ヘッド内経路とつながるノズルと、を有する。前記ノズルは、前記ヘッド内経路とつながるとともにインクを吐出するノズル孔を有し、前記ヘッド内経路より前記ノズル孔にインクが供給され、画像記録時は前記ノズル孔より記録ヘッドの外部にある記録媒体に向けインクが吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−150745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェットプリンタでは、画像記録部のノズル孔の部分におけるインクの圧力(ノズル圧力)は、画像記録部の外側である外気の気圧(外気圧)に対し、正圧になると前記ノズル孔から画像記録部の外部へインクが漏れ出てしまい、所定範囲以上の負圧になると、前記ノズル孔から画像記録部の内部へ空気が流入し、前記ノズル孔のメニスカスを破損してしまう。そのため、外気圧に対しノズル圧力は所定範囲の負圧に維持する必要がある。
【0007】
前記ノズル圧力は、前記画像記録部におけるインクが供給される上流側インク経路と接続される上流側接続ポート部における圧力と、前記画像記録部におけるインクが回収される下流側インク経路と接続される下流側接続ポート部における圧力と、の圧力の平均値の変化に連動し変化する。
特許文献1では、インク循環経路でインクの循環を開始する際、連通バルブを閉めた状態で、つまりインク循環経路は画像記録部のノズル孔以外は外気に対し密閉の状態で循環を開始する。特許文献1のインク循環経路は、例えばサブタンクやバッファタンクの内部にあるエアバッファのように、ポンプから画像記録部にインクを供給する上流インク経路と、画像記録部からインクを回収する下流インク経路とに各々空気が介在している。ここで、空気は圧力により大きく収縮するが、インクは圧力による収縮がほとんどない。
【0008】
そのため、インクの循環の開始時には、上流側および下流側のそれぞれのインク経路に空気というバッファが介在するため、ポンプ駆動開始時の前記上流側および下流側の接続ポート部における圧力は、ポンプ駆動開始時に急激に一定圧力まで変動するのではなく、空気の収縮により、緩やかに変動し、その後、一定圧力に落ち着く。
【0009】
しかし、ポンプ駆動開始時のようにインク循環経路内の圧力に変動が生じたとき、上流側および下流側のそれぞれのインク経路にある空気の容量が異なる場合には、空気の容量がより少ない側のインク経路の圧力の変動は、空気の容量がより多いほうのインク経路の圧力変動と比較し、単位時間当たりの圧力変動量が大きい。
【0010】
これにより、インク循環開始直後における、上流側接続ポート部と下流側接続ポート部の圧力の平均値は不安定になり、この平均値と連動し変化する前記ノズル圧力は、循環開始直後に不安定になる。そのため、ひいてはメニスカスが破壊される原因となり、従って、印字不良の原因となる。
【0011】
そこで、特許文献1では、循環動作を開始する前に、前記上流側インク経路及び、前記下流側インク経路にそれぞれ設けられた開閉弁を閉じて、ポンプを駆動することにより、予め前記バッファタンクを予圧しておくことで、前記ノズル圧力は圧力の変動が収まり、前記不具合を解消している。
【0012】
しかしながら、前記2つの開閉弁を同時にあける制御を行うことは技術的に困難であり、少しでも開放のタイミングがずれてしまうと、急激にノズル圧力が正圧、あるいは負圧のいずれか一方に変動する。即ち、ノズル孔のメニスカスが破壊され、印字不良の原因となる。
【0013】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、インクの循環動作の開始直後のノズル孔の圧力(ノズル圧力)の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部からの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一局面の態様は、記録媒体に画像を記録するために前記記録媒体にインクを吐出するノズル孔と、インクが供給される供給ポートと、インクを排出する排出ポートと、を有する画像記録部と、インクを循環させるポンプと、インク循環経路を有し、前記インク循環経路は、前記ポンプと前記画像記録部の前記供給ポートを接続し、前記ポンプから前記画像記録部へインクを供給する第1のインク経路と、前記画像記録部の前記排出ポートと前記ポンプを接続し、前記画像記録部から前記ポンプへインクを回収する第2のインク経路と、からなり、画像記録時の前記インク循環経路は、前記ノズル孔を除き密閉である画像記録装置において、前記インク循環経路には、前記インク循環経路内の圧力を調整する圧力調整部を設けるとともに、前記ポンプの駆動により前記インク循環経路にインクを循環させる循環開始時に、前記画像記録部の2つのポートの部分の循環開始時における単位時間当たりの圧力変化量が大きい方の圧力変化を調整して前記画像記録部のノズル孔における圧力を予め設定された適正な設定範囲内に保持する状態に前記圧力調整部を制御する制御手段を設けたことを特徴とする画像記録装置である。
【0015】
本発明の他の局面の態様は、記録媒体に画像を記録するために前記記録媒体にインクを吐出するノズル孔と、インクが供給される供給ポートと、インクを排出する排出ポートと、を有する画像記録部と、インクを循環させるポンプと、インク循環経路を有し、前記インク循環経路は、前記ポンプと前記画像記録部の前記供給ポートを接続し、前記ポンプから前記画像記録部へインクを供給する第1のインク経路と、前記画像記録部の前記排出ポートと前記ポンプを接続し、前記画像記録部から前記ポンプへインクを回収する第2のインク経路と、からなり、画像記録時の前記インク循環経路は密閉である画像記録装置において、前記インク経路のうち、前記第1のインク経路中に介在する空気の容量と、前記第2のインク経路中に介在する空気の容量が略等しく、さらに前記第1のインク経路の流路抵抗と前記第2のインク経路の流路抵抗が略等しいことを特徴とする画像記録装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部からの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の画像記録装置の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【図2】第1の実施の形態のインクジェットプリンタのインクタンク内のインク液面高さを検出する液面検出部を示す概略構成図。
【図3】第1の実施の形態のインクジェットプリンタの圧力調整部を示す概略構成図。
【図4A】インクジェットプリンタのインクタンクに空気部がある場合の第2のインク経路の圧力変動状態を示す特性図。
【図4B】インクジェットプリンタの図4Aの第2のインク経路の圧力変動時に対応する第1のインク経路の圧力変動状態を示す特性図。
【図5A】インクジェットプリンタの画像記録部の供給ポートと排出ポートの圧力変動状態を示す特性図。
【図5B】インクジェットプリンタの循環動作開始直後のノズル圧力の変動状態を示す特性図。
【図6】第1の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理を説明するフローチャート。
【図7】第1の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理による循環動作開始直後のノズル圧力の変化状態を示す特性図。
【図8】第1の実施の形態のインクジェットプリンタの圧力調整部の変形例を示す概略構成図。
【図9】本発明の第2の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【図10】第2の実施の形態のインクジェットプリンタの圧力調整部を示す概略構成図。
【図11】圧力調整部を作動せずにインクを循環させた場合の第1のインク経路、第2のインク経路、及びノズル圧力の変動状態を示す特性図。
【図12】第2の実施の形態のインクジェットプリンタにおけるインク循環処理を説明するフローチャート。
【図13】第2の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理による循環動作開始直後のノズル圧力の変化状態を示す特性図。
【図14】第2の実施の形態のインクジェットプリンタの圧力調整部の変形例を示す概略構成図。
【図15】本発明の第3の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【図16】圧力調整部を作動せずにインクを循環させた場合の第1のインク経路、第2のインク経路、及びノズル圧力の変動状態を示す特性図。
【図17】第3の実施の形態のインクジェットプリンタにおけるインク循環処理を説明するフローチャート。
【図18】第3の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理による循環動作開始直後のノズル圧力の変化状態を示す特性図。
【図19】本発明の第4の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【図20】圧力調整部を作動せずにインクを循環させた場合の第1のインク経路、第2のインク経路、及びノズル圧力の変動状態を示す特性図。
【図21】第4の実施の形態のインクジェットプリンタにおけるインク循環処理を説明するフローチャート。
【図22】第4の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理による循環動作開始直後のノズル圧力の変化状態を示す特性図。
【図23】本発明の第5の実施の形態のインクジェットプリンタにおけるインク循環処理の変形例を説明するフローチャート。
【図24】第5の実施の形態のインクジェットプリンタのインク循環処理の変形例による循環動作開始直後のノズル圧力の変化状態を示す特性図。
【図25】本発明の第6の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【図26】第6の実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャート。
【図27】本発明の第7の実施の形態におけるインクジェットプリンタのインク経路の構成を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本実施形態を説明する。
[第1の実施の形態]
(構成)
図1〜3および図6、7は、本発明の第1の実施の形態を示す。図1は本発明に係る第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示す図である。
【0019】
なお、図1には記録媒体を供給する供給部、供給された記録媒体を搬送する搬送機構、画像記録された記録媒体を搬出する排出部、画像記録部のメンテナンスを行うメンテナンス部、及びインク吐出制御をはじめとして装置全体を制御する装置制御部等の図示は省略している。
【0020】
図1に示すインクジェットプリンタ1は、例えば、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4種類の色のインクを用いて記録媒体に画像を記録する。なお、図1においては、代表的に1色のインクに関わるインク経路の構成を示している。
【0021】
このインクジェットプリンタ1のインク経路は、大別すると、インク循環部2と、インクカートリッジホルダ部3と、廃液タンク部4と、で構成される。
インク循環部2は、画像記録部12aと、インクを循環させるポンプ6と、第1のインク経路14と、第2のインク経路15と、で構成される。
【0022】
インク循環部2は、画像記録部12aと、インクを循環させるポンプ6と、前記画像記録部12aと前記ポンプ6との間を接続する2つのインク経路(インク供給側の第1のインク経路14とインク排出側の第2のインク経路15)を有する。第1のインク経路14は、画像記録部12aの供給ポート29とポンプ6のインク出口との間を接続する。この第1のインク経路14には、熱交換部10と、フィルタ11と、圧力調整部24とがポンプ6側から順次介設されている。第2のインク経路15は、画像記録部12aの排出ポート30とポンプ6のインク入口との間を接続する。この第2のインク経路15には、空気が介在するインクタンク5が介設されている。
これらの各構成部間は、インク流路としてのチューブ(図の矢印つきの細い線)を介して順次接続されている。
【0023】
インクカートリッジホルダ部3は、インク循環部2にインクを補充するためのインクカートリッジ7を保持する。インクが充填されたインクカートリッジ7の供給口7aを着脱可能に装着するためのジョイント部8を備えており、インクカートリッジ7の供給口7aがジョイント部8に装着されると、インクカートリッジ7内のインクがインクタンク5のインク補給ポート5fよりインク循環部2に供給される。なお、インクカートリッジホルダ部3とインク循環部2とを連結するインク補給路42には補給弁9が設けられ、この補給弁9を開閉することによりインク循環部2へのインク供給を制御している。
【0024】
廃液タンク部4は、廃液インクを収容するためのオーバーフロータンク18を有する。インク循環部2で不要となったインクやインク循環部2からオーバーフローしたインクは、インク循環部2のインクタンク5の大気ポート5cより、気圧路チューブ41を介してオーバーフロータンク18に排出される。
【0025】
なお、図1中の矢印は、インク循環部2をインクが循環するときのインクが流れる方向を示している。インク循環部2において、ポンプ6の駆動時には、インクは、第1のインク経路14の、熱交換部10と、フィルタ11と、圧力調整部24とを順次介して画像記録部12aへ供給される。さらに、画像記録部12aで使われなかったインクは、第2のインク経路15のインクタンク5を介してポンプ6へ帰還する。
【0026】
本実施の形態のインク循環部2において、インクタンク5は画像記録部12aよりも重力方向下方に配置されている。該配置位置は、通常、インクの循環を行わない場合にインクタンク5内のインク液面高さと、画像記録部12aのノズル13内のインク液面の高さとの差、すなわち水頭差によって、ノズル孔の部分におけるノズル圧力を所定範囲の負圧に維持し、ノズル孔にメニスカスが形成されるように設定されている。
【0027】
次に本実施の形態のインク循環部2の個々の構成について詳細に説明する。ポンプ6は循環動作時に駆動され、ポンプ6のインク出口より第1のインク経路14へインクを送る。
第1のインク経路14はチューブを通して上述した熱交換部10、フィルタ11、圧力調整部24の順に接続されている。
熱交換部10は、チューブを介してポンプ6と接続され、ポンプ6によって送られたインクを所定の温度に維持するように調整している。即ち、熱交換部10に流入したインクを加温、又は、冷却する。
フィルタ11は画像記録部12aに供給されるインクに含まれる異物を除去し、画像記録部12aのノズル13のノズル孔の目詰まりなどに起因する印字不良をなくすために設けられている。フィルタ11は、インクを通過させるメッシュ状の部材を有し、そのメッシュの網目として、画像記録部12aの各ノズル13のノズル孔の口径を問題なく通過できるような、十分小さい異物までも除去できるサイズの網目となっている。
そして、フィルタ11から流出したインクを、後述する圧力調整部24を介した後、画像記録部12aに流入させるように設けられている。
【0028】
次に画像記録部12aについて説明する。画像記録部12aは、複数の記録ヘッド12と、インク供給器16と、インク回収器17とを有する。
記録ヘッド12は、インク供給器16とインク回収器17に接続されたノズル13と、前記ノズルに設けられ記録媒体にインクを吐出するノズル孔と、ノズル孔が並設されたノズルプレートとを有する。インク供給器16には、第1のインク経路14と接続されインクが供給される供給ポート29が設けられている。インク回収器17には、第2のインク経路15と接続されインクを排出する排出ポート30が設けられている。
また、画像記録部12aには記録ヘッド12を通過するインクの温度を検出するヘッドサーミスタ28が備えられている。
なお本実施例では、画像記録部12aを、複数の記録ヘッド12と、インク供給器16と、インク回収器17と、で構成する記載としたが、これに限らず、前述の特許文献1に記載の構成のように、インク供給器16とインク回収器17と複数の記録ヘッド12を一体的に設け、供給ポート29と排出ポート30と複数のノズル孔とを有する一体的な画像記録部(記録ヘッド)としてもよい。
【0029】
そして、第1のインク経路14からインク供給器16に流入したインクはそれぞれ略均等に記録ヘッド12に分配される。
記録ヘッド12は、図示しない用紙搬送部に対向して設けられ、外部から入力された画像信号に基づいて、各記録ヘッド12のノズルプレートに形成されているノズル13のノズル孔から、用紙搬送機構により搬送される図示しない記録媒体に向けて液体であるインクを吐出する。
【0030】
インク供給器16を介して記録ヘッド12に流入するインク量は、記録ヘッド12のノズル孔から吐出されるインク量を上回るように設定されている。そのため、記録ヘッド12のノズル孔から吐出されなかったインクは、ノズル13を介しインク回収器17に流れ込み、インク回収器17の排出ポート30に接続されている第2のインク経路15へ送られる。
【0031】
第2のインク経路15には、インクタンク5が介設されている。インク回収器17の排出ポート30から流出したインクは、チューブを経由してインクタンク5のインク入り口ポート5aに送られ、その後インクタンク5のインク出口ポート5bからチューブを経由してポンプ6に帰還する。
【0032】
インクタンク5には、画像記録部12aとチューブを介し接続されるインク入り口ポート5aと、ポンプ6とチューブを介しと接続されるインク出口ポート5bと、大気ポート5cと、空気部5dと、インク液面を所定の高さに保つための液面検出部5eと、インク補給ポート5fと、が備えられている。インクタンク5の天井部には、インク入り口ポート5aと、大気ポート5cと、インク補給ポート5fとが配設されている。インクタンク5の側面下部には、インク出口ポート5bが配設されている。
【0033】
インクタンク5の大気ポート5cは、気圧路チューブ41を介して廃液タンク部4の大気解放されているオーバーフロータンク18と接続されている。この気圧路チューブ41には大気開放弁としての大気解放電磁弁19が設けられており、大気解放電磁弁19の開閉(開放/遮断)によりインクタンク5内を大気開放、又は密閉させることができる。
【0034】
インクタンク5の液面検出部5eは、図2に示すように、フロート部材21と磁石23からなるフロート部20と、液面位置センサ22と、を備えている。フロート部20は、インクタンク5内のインクの液面高さ5gに応じて上下に揺動する。液面位置センサ22は磁気センサからなり、フロート部材21に取り付けられた磁石23を検出することによって、フロート部20の位置、即ちインク液面5gの高さを検出する。
なお、液面検出部5eは、上記の構成に限ることはなく、インク液面の位置を検出することができればよい。例えば、インクタンク5の壁面の一部を透明部材で構成し、透明部材の壁面を通して光学センサで直接液面の位置を検出するようにしてもよい。また、予め液面の位置と、インクタンク5の内圧との関係を調べておいて、圧力センサでインクタンク5の内圧を測定することで、液面の位置を検出するようにしてもよい。
【0035】
インクタンク5のインク補給ポート5fは、インク補給路42のチューブを介してインクカートリッジホルダ部3と接続されている。インク循環部2のインク量が予め設定されたインク量よりも減った場合には、インクカートリッジ7から、インクタンクへ5とインクが補給される。
【0036】
第1のインク経路14には上述のように圧力調整部24が備えられている。圧力調整部24は、図3に示すように第1のインク経路14に一端が接続された流路分岐27と、圧力調整電磁弁25と、少なくとも1部が伸縮可能な容器26と、で構成されている。圧力調整電磁弁25は、流路分岐27の途中に介設されている。容器26は、流路分岐27の他端に接続されている。
【0037】
なお、図3中の矢印はインク流れ方向を示す。圧力調整電磁弁25は、コントローラ(制御手段)43に接続されている。コントローラ43には、ポンプ6や、インクジェットプリンタ1の図示しない操作パネルなどが接続されている。そして、圧力調整電磁弁25は、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで一旦開放され、その後、第2のインク経路15の圧力が圧力一定状態になるまでに閉じるという制御をしている。圧力調整電磁弁25が開放されて、ポンプ6を駆動すると第1のインク経路14は加圧され、同時に流路分岐27を経て容器26も加圧される。容器26は伸縮可能であるために容器26にかかる正圧と釣合うまで伸びる。容器26が伸びることで、後述の第1のインク経路14の単位時間当たりの圧力変化量は少なくなる。
【0038】
このように形成されたインク循環部2は、画像記録時や、循環によるクリーニング時には、インクタンク5の大気解放電磁弁19を閉じてインクタンク5が大気から遮断される。この状態でポンプ6を駆動すると、インクタンク5は減圧され、時間と共に負圧になる。ここで、正常な印字動作を行うために、画像記録部12aに適正な負圧を与えて、ノズル13のノズル孔にかかるインクにメニスカスを形成する必要がある。このとき、インクタンク5から画像記録部12aへインクを供給する第1のインク経路14の流路抵抗をR1とし、画像記録部12aからインクタンク5へインクを回収する第2のインク経路15の流路抵抗をR2とすると、R1>R2の関係であれば、画像記録部12aに負圧が生成される。正常な印字動作を行うためには、流路抵抗R1及び流路抵抗R2を適正なメニスカスが形成されるための値に設定すればよい。本実施の形態の場合、画像記録部12aに与える適正な負圧は、−2kPaから−0.5kPaであればよい。
【0039】
また、インクジェットプリンタ1の待機時(インク非循環時)には、インクタンク5の大気解放電磁弁19を開けて、インクタンク5内を大気に対し開放する大気開放状態にする。この時、インクタンク5は前述したように画像記録部12aより重力方向下方に配置しているため、画像記録部12aのノズル13のノズル孔には水頭差によりメニスカスが形成されている。つまり、待機時においてインクタンク5は、ノズル孔のメニスカスが破壊されず、且つ画像記録部12aからインクが垂れ落ちることのないようにノズル圧力が所定範囲の負圧になるような位置に配置している。なお、画像記録部12aのノズル13のノズル孔に適正な負圧を生成してメニスカスを形成するために、インクタンク5の大気解放電磁弁19を閉じてインクタンク5に所定範囲の負圧を生成するための負圧生成機構(不図示)をインクタンク5に設けてもよい。
【0040】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態のインクジェットプリンタ1の使用時には、ポンプ6を駆動して循環を開始する。このポンプ6を駆動する際に、特許文献1のように、インクタンク5に空気部があると、空気には圧縮する性質があるため、第2のインク経路15の圧力P2は、図4Aに示すようにポンプ6の駆動時点T1から緩やかに時間と共に変動する。このとき、第1のインク経路14には空気部がなく、インクで満たされている。インクは略非圧縮性であるため、圧力調整部24を作動させずにインクを循環させると、第1のインク経路14の圧力P1は、図4Bに示すようにポンプ6の駆動時点T1から略同時に変化する。したがって、第1のインク経路14の圧力P1と第2のインク経路15の圧力P2とでは単位時間当たりの圧力変化量が異なってしまう。即ち、第1のインク経路14の圧力P1のほうがより早く圧力一定状態になる。
【0041】
また、同様にインクは略非圧縮性であるため、画像記録部12aの供給ポート29、排出ポート30でも、第1のインク経路14および第2のインク経路15の圧力変動と同じように、圧力の時間変動が異なる(図5A参照)。
ここで、ノズル圧力Pnは、供給ポート29の圧力P1と、出口である排出ポート30の圧力P2と、ノズル孔からの外気圧と、供給ポート29とノズル孔との水頭差による圧力と、排出ポート30との圧力P2とノズル孔との水頭差による圧力と、により決まるが、本実施形態の説明においては、便宜上、外気圧は一定とし、また供給ポート29とノズル孔との水頭差および排出ポート30との圧力P2とノズル孔との水頭差はないものとし、つまりはノズル圧力Pnはノズル孔に対して入り口である供給ポート29の圧力P1と、出口である排出ポート30の圧力P2との平均値で表されることとする。
即ち、ノズル圧力Pnは図5Bに示すようにポンプ6の駆動時点T1から時間と共に振る舞い、循環動作の開始直後にノズル圧力が急激に変動する。このとき、ノズル圧力Pnは、予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れ、不安定になってしまう。したがって、ノズル圧力Pnの急激な変動により、メニスカスが破壊されてしまい、ノズル13のノズル孔から予期せぬインク滴が出て、印字不良の原因となってしまう場合がある。
【0042】
そこで、この状態を解消するための本実施の形態のインク循環処理について説明する。図6は本実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャートである。STEP101では、インク循環処理が実行される。なお、この処理は、図示しない印刷動作の命令や、経路洗浄の命令がなされて実行される。次に、STEP102では気圧路チューブ41の大気解放電磁弁19が閉鎖され、インク循環部2が画像記録部12aのノズル孔以外は密閉される。
【0043】
STEP103では圧力調整部24が作動される。即ち、流路分岐27の圧力調整電磁弁25が開放される。そして、STEP104でポンプ6が駆動され、インク循環が開始される。なお、STEP103及びSTEP104は同時に行ってもよいし、順序を逆転してもよい。そして、第2のインク経路15の圧力P2が圧力一定状態になるまでに(圧力P2が圧力一定状態になる前の時点で)STEP105で圧力調整部24を停止する。
【0044】
STEP106ではインク循環終了かどうかの確認をしている。STEP106でNOを選択する場合、即ち、インク循環終了でなければ再びSTEP106に戻る。STEP106でYESを選択する場合、即ち、インク循環終了であればSTEP107へ移行し、ポンプ6を停止させる。次に、STEP108で大気解放電磁弁19を開放し、STEP109でインク循環終了とする。なお、不図示だが、インク循環部2のインク量が、吐出により減少した場合は適宜、インクカートリッジホルダ部3から補給すればよい。
【0045】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、第1のインク経路14に圧力調整部24を設けている。そして、圧力調整部24の圧力調整電磁弁25は、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで一旦開放され、その後、第2のインク経路15の圧力が圧力一定状態になるまでに閉じるという制御をしている。このとき、圧力調整電磁弁25が開放されて、ポンプ6を駆動すると第1のインク経路14は加圧され、同時に流路分岐27を経て容器26も加圧される。そのため、容器26は、この容器26にかかる正圧と釣合うまで伸びることで、第1のインク経路14の単位時間当たりの圧力変化量を少なくすることができる。その結果、図7に示すようにポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnが予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れずにすむ。したがって、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部12aからの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【0046】
なお、圧力調整部24はこれに限ることはなく、インクの循環動作の開始直後の第1のインク経路14の単位時間あたりの圧力変化量を少なくすればよい。例えば、図8に示す変形例のように、伸縮可能な容器26の代わりに減圧ポンプ31と、インクを貯留するタンク32と、を設け、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで図8中の破線矢印方向に示すように第1のインク経路14からインクを送液することで担ってもよい。
【0047】
[第2の実施の形態]
(構成)
図9乃至図13は、本発明の第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図7参照)のインクジェットプリンタ1の構成を次の通り変更した変形例である。図9は、本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示す図である。
なお、第1の実施の形態と同じ構成は説明を省略する。
【0048】
第1の実施の形態(図1)では、第2のインク経路15に空気が介在するインクタンク5を、第1のインク経路14に圧力調整部24を設けた構成を示したが、本実施の形態では、図9に示すように、第1のインク経路14に空気が介在するインクタンク52を、第2のインク経路15に圧力調整部51を設けたものである。
インク循環部2の第1のインク経路14は、画像記録部12aの供給ポート29とポンプ6のインク出口との間を接続する。この第1のインク経路14には、熱交換部10と、フィルタ11と、インクタンク52とが、ポンプ6側から順次介設されている。第2のインク経路15は、画像記録部12aの排出ポート30とポンプ6のインク入口との間を接続する。この第2のインク経路15には、後述する圧力調整部51が介設されている。
【0049】
本実施の形態のインクタンク52には、フィルタ11とチューブを介して接続されるインク入り口ポート52aと、画像記録部12a側の供給ポート29とチューブを介して接続されるインク出口ポート52bと、大気ポート52cと、空気部52dと、インク液面52gを所定の高さに保つための液面検出部52eと、インク補給ポート52fと、が備えられている。インクタンク52の天井部には、インク入り口ポート52aと、大気ポート52cと、インク出口ポート52bとが配設されている。インクタンク5の側面下部には、インク補給ポート52fが配設されている。液面検出部52eは、第1の実施の形態(図1)の液面検出部5eと同一構成になっている。
【0050】
インクタンク52の大気ポート52cは、気圧路チューブ41を介して廃液タンク部4の大気解放されているオーバーフロータンク18と接続されている。この気圧路チューブ41には大気開放弁としての大気解放電磁弁53が設けられており、大気解放電磁弁53の開閉(開放/遮断)によりインクタンク52内を大気開放、又は密閉させることができる。また、インクタンク52のインク補給ポート52fは、インク補給路42のチューブを介してインクカートリッジホルダ部3と接続されている。このインク補給路42には補給弁9が設けられ、この補給弁9を開閉することによりインク循環部2へのインク供給を制御している。
【0051】
圧力調整部51は、第1の実施の形態の圧力調整部24とほぼ同じ構成になっている。すなわち、本実施の形態の圧力調整部51は、図10に示すように第2のインク経路15に一端が接続された流路分岐54と、圧力調整電磁弁56と、少なくとも1部が伸縮可能な容器57と、で構成されている。圧力調整電磁弁56は、流路分岐54の途中に介設されている。容器57は、流路分岐54の他端に接続されている。
【0052】
なお、図10中の矢印はインク流れ方向を示す。圧力調整電磁弁56は、コントローラ43(図3参照)に接続されている。コントローラ43には、ポンプ6や、インクジェットプリンタ1の図示しない操作パネルなどが接続されている。そして、圧力調整電磁弁56は、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで一旦開放され、その後、第2のインク経路15の圧力が圧力一定状態になるまでに閉じるという制御をしている。圧力調整電磁弁56が開放されて、ポンプ6を駆動するとポンプ6の上流側の第2のインク経路15は吸引され、同時に流路分岐54を経て容器57に吸引力(負圧)が作用する。容器57は伸縮可能であるために容器57にかかる負圧と釣合うまで縮む。容器57が縮むことで、第2のインク経路15の圧力の変動量が少なくなる。
【0053】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態のインクジェットプリンタ1の使用時には、インク循環時は第1の実施の形態と同様に、大気解放電磁弁53を閉じることでインク循環部2を画像記録部12aのノズル孔以外は密閉し、ポンプ6を駆動することで、インク循環動作を行う。本実施の形態において、圧力調整部51を作動せずにインクを循環させると、図11に示すように画像記録部12aの供給ポート29の圧力P1の変化状態と、排出ポート30の圧力P2の変化状態との差により、ノズル圧力Pnは、予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れ、不安定になってしまう。したがって、ノズル圧力が適正圧力範囲Rを逸脱し、メニスカスが破壊されてしまい、ノズル孔から外気を吸い込むことで、印字不良の原因となってしまう場合がある。
【0054】
そこで、上述の不具合を解消するための本実施の形態のインク循環処理を説明する。図12は本実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャートである。STEP201では、インク循環処理が実行される。なお、この処理は、図示しない印刷動作の命令や、経路洗浄の命令がなされて実行される。次に、STEP202では気圧路チューブ41の大気解放電磁弁53が閉鎖され、インク循環部2が画像記録部12aのノズル孔以外は密閉される。
【0055】
STEP203では圧力調整部51が作動される。即ち、流路分岐54の圧力調整電磁弁56が開放される。そして、STEP204でポンプ6が駆動され、インク循環が開始される。なお、STEP203及びSTEP204は同時に行ってもよいし、順序を逆転してもよい。そして、第2のインク経路15の圧力P2が圧力一定状態になるまでに(圧力P2が圧力一定状態になる前の時点で)STEP205で圧力調整部51を停止する。
【0056】
STEP206ではインク循環終了かどうかの確認をしている。STEP206でNOを選択する場合、即ち、インク循環終了でなければ再びSTEP206に戻る。STEP206でYESを選択する場合、即ち、インク循環終了であればSTEP207へ移行し、ポンプ6を停止させる。次に、STEP208で大気解放電磁弁53を開放し、STEP209でインク循環終了とする。なお、不図示だが、インク循環部2のインク量が、吐出により減少した場合は適宜、インクカートリッジホルダ部3から補給すればよい。
【0057】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、第2のインク経路15に圧力調整部51を設けている。そして、圧力調整部51の圧力調整電磁弁56は、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで一旦開放され、その後、第2のインク経路15の圧力が圧力一定状態になるまでに閉じるという制御をしている。このとき、圧力調整電磁弁56が開放されて、ポンプ6を駆動すると第2のインク経路15は減圧され、同時に流路分岐54を経て容器57に吸引力(負圧)が作用する。容器57は伸縮可能であるために容器57にかかる負圧と釣合うまで縮む。容器57が縮むことで、排出ポート30の圧力の変動量が少なくなる。その結果、図13に示すようにポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnが予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れずにすむ。したがって、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部12aからの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【0058】
なお、圧力調整部51はこれに限ることはなく、第2のインク経路15の単位時間あたりの圧力変化量を少なくすればよい。例えば、図14に示す変形例のように、伸縮可能な容器57の代わりに加圧ポンプ58と、インクを貯留するタンク59と、を設け、コントローラ43によってインク循環部2の循環開始直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始の直後の少なくともいずれか1つのタイミングで図14中の破線矢印方向に示すように第2のインク経路15にインクを送液することで担ってもよい。
【0059】
[第3の実施の形態]
(構成)
図15乃至図18は、本発明の第3の実施の形態を示す。図15は本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示す図である。なお、上述の実施の形態と同じ構成は説明を省略する。
本実施の形態では、インク供給側の第1のインク経路14に第1のインクタンク61を設け、さらにインク排出側の第2のインク経路15に第2のインクタンク62を設けており、第1のインク経路14と第2のインク経路15との両方の経路に空気が介在している。
【0060】
インク循環部2のインク供給側の第1のインク経路14は、画像記録部12aの供給ポート29とポンプ6のインク出口との間を接続する。この第1のインク経路14には、熱交換部10と、フィルタ11と、第1のインクタンク61とが、ポンプ6側から順次介設されている。
【0061】
インク排出側の第2のインク経路15は、画像記録部12aの排出ポート30とポンプ6のインク入口との間を接続する。この第2のインク経路15には、第2のインクタンク62が介設されている。
【0062】
第1のインクタンク61には、フィルタ11とチューブを介して接続されるインク入り口ポート61aと、画像記録部12a側の供給ポート29とチューブを介して接続されるインク出口ポート61bと、大気ポート61cと、空気部61dと、インク液面61gを所定の高さに保つための液面検出部61eと、が備えられている。第1のインクタンク61の天井部には、インク入り口ポート61aと、大気ポート61cと、インク出口ポート61bとが配設されている。
【0063】
第2のインクタンク62には、画像記録部12a側の排出ポート30とチューブを介して接続されるインク入り口ポート62aと、ポンプ6のインク入口とチューブを介して接続されるインク出口ポート62bと、大気ポート62cと、空気部62dと、インク液面62gを所定の高さに保つための液面検出部62eと、インク補給ポート62fと、が備えられている。第2のインクタンク62の天井部には、インク入り口ポート62aと、大気ポート62cと、インク補給ポート62fとが配設されている。第2のインクタンク62の側面下部には、インク出口ポート62bが配設されている。なお、第1のインクタンク61の液面検出部61eと第2のインクタンク62の液面検出部62eは、第1の実施の形態(図1)の液面検出部5eと同一構成になっている。
【0064】
第1のインクタンク61の大気ポート61cは、気圧路チューブ64を介して廃液タンク部4の大気解放されているオーバーフロータンク18と接続されている。この気圧路チューブ64には大気開放弁としての第1の大気解放電磁弁65が設けられており、第1の大気解放電磁弁65の開閉(開放/遮断)により第1のインクタンク61内を大気開放、又は密閉させることができる。
【0065】
同様に、第2のインクタンク62の大気ポート62cは、気圧路チューブ66を介して廃液タンク部4の大気解放されているオーバーフロータンク18と接続されている。この気圧路チューブ66には大気開放弁としての第2の大気解放電磁弁67が設けられており、第2の大気解放電磁弁67の開閉(開放/遮断)により第2のインクタンク62内を大気開放、又は密閉させることができる。
【0066】
また、第2のインクタンク62のインク補給ポート62fは、インク補給路68のチューブを介してインクカートリッジホルダ部3と接続されている。このインク補給路68には補給弁69が設けられ、この補給弁69を開閉することによりインク循環部2へのインク供給を制御している。
【0067】
第2のインクタンク62及び第1のインクタンク61についてさらに詳細に説明する。第1のインクタンク61の空気部61dの空気容量は、第2のインクタンク62の空気部62dの空気容量よりも大きくなっている。本実施の形態では、第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67がインク循環部2内の圧力を調整する圧力調整部として機能する構成になっている。第2の大気解放電磁弁67は、コントローラ(制御手段)70に接続されている。コントローラ70には、ポンプ6や、インクジェットプリンタ1の図示しない操作パネルなどが接続されている。そして、第2の大気解放電磁弁67は、コントローラ70によってインク循環部2の循環開始直前のタイミングで一旦開放され、その後、図18中のT2の時点で閉じるという制御をしている。
【0068】
なお、インクジェットプリンタ1の待機時(インク非循環時)には、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を開けて、第2のインクタンク62内を大気に対し開放状態にするとともに、第1のインクタンク61の第1の大気解放電磁弁65を閉じる。この時、第2のインクタンク62は前述したように画像記録部12aより重力方向下方に配置しているため、画像記録部12aのノズル孔には水頭差によりメニスカスが形成されている。つまり、待機時において第2のインクタンク62は、ノズル孔のメニスカスが破壊されず、且つ画像記録部12aからインクが垂れ落ちることのない位置に配置している。
【0069】
ここで、画像記録部12aのノズル孔のメニスカスを形成するために、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を閉じて第2のインクタンク62に負圧を生成するための負圧生成機構(不図示)を備えてもよい。この場合、第1のインクタンク61の位置は重力方向に制限はない。さらに、メニスカスを形成するための第2のインクタンク62の役割を第1のインクタンク61が担えば第2のインクタンク62の位置は重力方向に制限はない。
【0070】
このように形成されたインク循環部2は、画像記録時や循環によるクリーニング時は、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67及び、第1のインクタンク61の第1の大気解放電磁弁65を閉じて第2のインクタンク62及び第1のインクタンク61を大気から遮断する(密閉状態)。この状態でポンプ6を駆動すると、第1のインク経路14は加圧され、時間と共に一定の正圧になる。このとき、ポンプ6の駆動により第2のインク経路15は減圧され、時間と共に一定の負圧になる。
【0071】
また、正常な印字動作を行うために、画像記録部12aには、適正な負圧を与えて、ノズル孔にかかるインクにメニスカスを形成する必要がある。ここで、第1のインク経路14の流路抵抗をR1とし、第2のインク経路15の流路抵抗をR2とすると、R1>R2の関係であれば、画像記録部12aに負圧が生成される。正常な印字動作を行うためには、流路抵抗R1及び流路抵抗R2を適正なメニスカスが形成されるための値に設定すればよい。なお、画像記録部12aのノズル孔に適正な負圧を生成するために第2のインクタンク62に、不図示だが、圧力生成機構を設けてもよい。
【0072】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態では、第2のインクタンク62の空気部62dの容量と、第1のインクタンク61の空気部61dの容量とが異なる。そのため、本実施の形態の圧力調整部として機能する第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67を作動せずにインク循環部2にインクを循環させると、図16に示すように第1のインク経路14(画像記録部12aの供給ポート29)の圧力P1の単位時間あたりの圧力変動量と、第2のインク経路15(画像記録部12aの排出ポート30)の圧力P2の単位時間あたりの圧力変動量が異なってしまう。即ち、第2のインク経路15の方が、早く圧力一定状態になる。このとき、ノズル圧力Pnは、予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れ、不安定になってしまう。したがって、ノズル圧力Pnの急激な変動により、メニスカスが破壊されてしまい、ノズル13のノズル孔から予期せぬ外気を吸い込むことで、印字不良の原因となってしまう場合がある。
【0073】
そこで、上述の不具合を解消するための本実施の形態のインク循環処理を説明する。図17は本実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャートである。STEP301では、インク循環処理が実行される。なお、この処理は、図示しない印刷動作の命令や、経路洗浄の命令がなされて実行される。次に、STEP302では第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65および第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67が閉鎖され、インク循環部2が画像記録部12aのノズル孔以外は密閉される。
【0074】
STEP303では本実施の形態の圧力調整部が作動される。即ち、第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67がコントローラ70によって開放される。その後、STEP304でポンプ6が駆動され、インク循環が開始される。なお、STEP303及びSTEP304は同時に行ってもよいし、順序を逆転してもよい。そして、図18中のT2の時点で第2の大気解放電磁弁67を閉操作する(STEP305)。
【0075】
STEP306ではインク循環終了かどうかの確認をしている。STEP306でNOを選択する場合、即ち、インク循環終了でなければ再びSTEP306に戻る。STEP306でYESを選択する場合、即ち、インク循環終了であればSTEP307へ移行し、ポンプ6を停止させる。次に、STEP308で第1の大気解放電磁弁65を開放し、STEP309でインク循環終了とする。なお、不図示だが、インク循環部2のインク量が、吐出により減少した場合は適宜、インクカートリッジホルダ部3から補給すればよい。
【0076】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67を本実施の形態の圧力調整部として機能させている。そして、第2の大気解放電磁弁67は、コントローラ70によってインク循環部2の循環開始直前のタイミングで一旦開放され、その後、図18中のT2の時点で閉じるという制御をしている。このとき、第2の大気解放電磁弁67が開放されて、ポンプ6を駆動すると第2のインク経路15に吸引力(負圧)が作用しない。そのため、図18に示すように第2のインク経路15側の排出ポート30の圧力変動の開始をポンプ6の駆動時点T1よりも遅くすることができる。これにより、図18に示すようにポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnが予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れずにすむ。したがって、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部12aからの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【0077】
なお、本実施の形態の第2のインク経路15には、第2の実施の形態の圧力調整部51(図10参照)と同一構成の圧力調整部51を介設し、この圧力調整部51の作動をコントローラ70によって制御することでも同様の効果が得られる。
[第4の実施の形態]
(構成)
図19乃至図22は、本発明の第4の実施の形態を示す。本実施の形態は第3の実施の形態(図15乃至図18参照)の変形例である。本実施の形態では、第1のインクタンク61の空気部61dの空気容量は、第2のインクタンク62の空気部62dの空気容量よりも小さくなっている。本実施の形態では、第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65がインク循環部2内の圧力を調整する圧力調整部として機能する構成になっている。第1の大気解放電磁弁65は、コントローラ(制御手段)71に接続されている。コントローラ71には、ポンプ6や、インクジェットプリンタ1の図示しない操作パネルなどが接続されている。そして、第1の大気解放電磁弁65は、コントローラ71によってインク循環部2の循環開始直前のタイミングで一旦開放され、その後、図18中のT2の時点で閉じるという制御をしている。
【0078】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態では、第2のインクタンク62の空気部62dの容量が、第1のインクタンク61の空気部61dの容量よりも大きい。そのため、本実施の形態の圧力調整部として機能する第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65を作動せずにインク循環部2にインクを循環させると、図20に示すように第1のインク経路14(画像記録部12aの供給ポート29)の圧力P1の単位時間あたりの圧力変動量と、第2のインク経路15(画像記録部12aの排出ポート30)の圧力P2の単位時間あたりの圧力変動量が異なってしまう。即ち、第1のインク経路14の方が、早く圧力一定状態になる。このとき、ノズル圧力Pnは、予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れ、不安定になってしまう。したがって、ノズル圧力Pnの急激な変動により、メニスカスが破壊されてしまい、ノズル13のノズル孔から予期せぬインク滴が出て、印字不良の原因となってしまう場合がある。
【0079】
そこで、上述の不具合を解消するための本実施の形態のインク循環処理を説明する。図21は本実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャートである。STEP401では、インク循環処理が実行される。次に、STEP402では第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65および第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67が閉鎖され、インク循環部2が画像記録部12aのノズル孔以外は密閉される。
【0080】
STEP403では本実施の形態の圧力調整部が作動される。即ち、第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65がコントローラ71によって開放される。その後、STEP404でポンプ6が駆動され、インク循環が開始される。なお、STEP403及びSTEP404は同時に行ってもよいし、順序を逆転してもよい。そして、図22中のT3の時点で第1の大気解放電磁弁65を閉操作する(STEP405)。
【0081】
STEP406ではインク循環終了かどうかの確認をしている。STEP406でNOを選択する場合、即ち、インク循環終了でなければ再びSTEP406に戻る。STEP406でYESを選択する場合、即ち、インク循環終了であればSTEP407へ移行し、ポンプ6を停止させる。次に、STEP408で第1の大気解放電磁弁65を開放し、STEP409でインク循環終了とする。
【0082】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、第1のインクタンク61の気圧路チューブ64の第1の大気解放電磁弁65を本実施の形態の圧力調整部として機能させている。そして、第1の大気解放電磁弁65は、コントローラ71によってインク循環部2の循環開始直前のタイミングで一旦開放され、その後、図22中のT3の時点で閉じるという制御をしている。このとき、第1の大気解放電磁弁65が開放されて、ポンプ6を駆動すると第1のインク経路14に吐出力(正圧)が作用しない。そのため、図22に示すように第1のインク経路14側の供給ポート29の圧力変動の開始をポンプ6の駆動時点T1よりも遅くすることができる。これにより、図22に示すようにポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnが予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れずにすむ。したがって、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部12aからの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【0083】
なお、本実施の形態の第1のインク経路14には、図3、図8の圧力調整部24と同一構成の圧力調整部24を介設し、この圧力調整部24の作動をコントローラ71によって制御することでも同様の効果が得られる。
[第5の実施の形態]
(構成)
図23および図24は、本発明の第5の実施の形態を示す。本実施の形態は、第3の実施の形態(図15乃至図18参照)の変形例である。すなわち、本実施の形態では、図15のインク経路の構成で、インク循環部2のインクの循環開始時に、図23に示すフローチャートのインク循環処理を行うようにしたものである。
【0084】
(作用)
図23のフローチャートでは、STEP501からSTEP504までは図17に示すフローチャートのSTEP301からSTEP304までと同じである。STEP505で第2の大気解放電磁弁67を予め設定しておいた回数だけ間欠的に開閉させる制御を行う。ここで、予め設定しておいた回数だけ第2の大気解放電磁弁67を開閉させた後に、STEP506で第2の大気解放電磁弁67を閉鎖する。STEP507以降は図17に示すフローチャートのSTEP306からSTEP309までと同じである。
【0085】
(効果)
本実施の形態によると、第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67は、インク循環部2の循環開始直前のタイミングで一旦開放され、その後、予め設定しておいた回数だけ第2の大気解放電磁弁67を開閉させ、図24中のT4の時点で第2の大気解放電磁弁67を閉じるという制御をしている。これにより、図24に示すようにポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの圧力変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnは適正圧力(予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間)を保つことができる。
【0086】
なお、本実施の形態では、画像記録部12aの供給ポート29と、排出ポート30とにそれぞれ圧力センサを設け、その圧力センサによる検出データをコントローラ70にフィードバックし、第2の大気解放電磁弁67の開閉動作を制御する構成にしてもよい。
[第6の実施の形態]
(構成)
図25および図26は、本発明の第6の実施の形態を示す。図25は、本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示す図である。本実施の形態は、第3の実施の形態(図15乃至図18参照)の変形例である。すなわち、本実施の形態では、図25のインク経路の第2のインクタンク62の気圧路チューブ66にインクタンク62に負圧を生成するための負圧生成部33を接続したものである。この負圧生成部33を圧力調整部として機能させる構成にしている。
【0087】
本実施の形態の負圧生成部33は、負圧を発生させる内部が空洞で伸縮可能なベローズ部34と、錘部35と、ベローズ昇降機構36とで構成されている。ベローズ部34は、伸び下がることで、ベローズ部34の内部の体積が増え、気圧路チューブ66を経由し第2のインクタンク内の空気を引き込むことにより、第2のインクタンク62内を負圧状態にすることができる。
なお、メニスカスを形成するために、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を閉じて負圧生成部33を用いて第2のインクタンク62に負圧を生成する場合、第1のインクタンク61の位置は重力方向に制限はない。さらに、メニスカスを形成するための第2のインクタンク62の役割を第1のインクタンク61が担えば第2のインクタンク62の位置は重力方向に制限はない。
【0088】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態では、インク循環部2は、画像記録時や循環によるクリーニング時は、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67及び、第1のインクタンク61の第1の大気解放電磁弁65を閉じて第2のインクタンク62及び第1のインクタンク61を大気から遮断する。この状態でポンプ6を駆動すると、第1のインク経路14は加圧され、時間と共に正圧になる。さらに第2のインク経路15は減圧され、時間と共に負圧になる。
【0089】
ここで、正常な印字動作を行うために、画像記録部12aに適正な負圧を与えて、ノズル孔にかかるインクにメニスカスを形成する必要があるため、第2のインクタンク62の空気部62dに上記負圧生成部33を設けている。負圧生成部33のベローズ部34は、伸び下がることで第2のインクタンク62内を負圧状態にすることができる。
【0090】
この負圧生成部33の駆動時には、まず、第2のインクタンク62の気圧路チューブ66の第2の大気解放電磁弁67を開いて第2のインクタンク62内を大気に対して開放した状態で、ベローズ昇降機構36によりベローズ部34及び錘部35を上昇させる(縮める)。そしてベローズ部34及び錘部35を所定の位置まで上昇させた後、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を閉じる。
【0091】
このように第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を閉じると、第2のインクタンク62及びベローズ部34の内部は連通しつつ外部とは閉じられた空間となる。この状態でベローズ部34を伸縮させると、上記閉じられた空間の体積が増減する。
つまり、ベローズ部34を支えない位置までベローズ昇降機構36を降下させると、ベローズ部34が錘部35の重さによって下方に引っ張られ、上記閉じられた空間の体積が増加し、第2のインクタンク62内には、錘部35に加わる重力と釣り合う大きさの一定の負圧が発生する。
【0092】
これにより第2のインクタンク62と画像記録部12aは、チューブ等を介して連通しているため画像記録部12aには、所定の負圧がかかる。この所定の負圧により画像記録部12aのノズル孔にメニスカスを形成することができる。
図26は、本実施の形態におけるインク循環処理を説明するフローチャートである。STEP601では、循環処理が実行される。なお、この処理は、図示しない印刷動作の命令や、経路洗浄の命令がなされて実行される。次にSTEP602では第2の大気解放電磁弁67が開放され、第2のインクタンク62が大気に対し開放される。なお、待機状態で第2の大気解放電磁弁67が開放されているならば、STEP602は必要ない。次にSTEP603でベローズ昇降機構36が下降する。即ち、ベローズ部34が伸びる。そして、STEP604で第2の大気解放電磁弁67と、第1の大気解放電磁弁65が閉じて、インク循環部2は密閉される。
【0093】
STEP605では負圧生成部33が作動される。即ち、ベローズ昇降機構36が上昇し、ベローズ部34が縮む。そして、STEP606でポンプ6が駆動され、インク循環が開始される。なお、STEP605と、STEP606は同時に行ってもよいし、順序を逆転してもよい。そして、第2のインク経路15の圧力が圧力一定状態になるまでにSTEP607でベローズ昇降機構36を停止させる。
【0094】
STEP608ではインク循環終了かどうかの確認をしている。STEP608でNOを選択する場合、即ち、インク循環終了でなければ再びSTEP608に戻る。STEP608でYESを選択する場合、即ち、インク循環終了であればSTEP609へ移行し、ポンプ6を停止させる。次に、STEP610で第2の大気解放電磁弁67を開放し、STEP611でインク循環終了とする。
【0095】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、図25のインク経路の第2のインクタンク62の気圧路チューブ66にインクタンク62に負圧を生成するための負圧生成部33を接続し、この負圧生成部33をインクの循環動作の開始時の圧力調整部として機能させる構成にしている。この負圧生成部33の動作により、インクの循環動作の開始時には、第2の大気解放電磁弁67が開放されて、ポンプ6を駆動すると第2のインク経路15に吸引力(負圧)が作用しない。そのため、第2のインク経路15側の排出ポート30の圧力変動の開始をポンプ6の駆動時点T1よりも遅くすることができる(図18参照)。これにより、ポンプ6の駆動時点T1から変化する画像記録部12aのノズル圧力Pnの変化量が少なくなり、ノズル圧力Pnが予め設定された適正圧力範囲Rの上限値Pnmaxと下限値Pnminとの間から外れずにすむ。したがって、インクの循環動作の開始直後のノズル圧力の急激な変化を抑制(緩和)することで、画像記録部12aからの予期せぬインク漏れやメニスカスの破壊による印字不良を防止する画像記録装置を提供することができる。
【0096】
[第7の実施の形態]
(構成)
図27は、本発明の第7の実施の形態を示す。図27は、本実施の形態におけるインクジェットプリンタ1のインク経路の構成を概略的に示す図である。本実施の形態は、第3の実施の形態(図15乃至図18参照)の変形例である。すなわち、本実施の形態では、第1のインク経路14の第1のインクタンク61の空気部61dと、第2のインク経路15の第2のインクタンク62の空気部62dとは、それぞれの空気容量(バッファ容量)が略等しい容量に設定されている。さらに、前記第1のインク経路14の流路抵抗R1と前記第2のインク経路の流路抵抗R2が略等しい。また、第1のインクタンク61と及び第2のインクタンク62内のインク液面高さは重力方向に略等しい高さにあると同時に、画像記録部12aより低い位置にある。
【0097】
なお、インクジェットプリンタ1の待機時(インク非循環時)には、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を開けて、第2のインクタンク62内を大気に対し開放して、第2のインクタンク62内を大気開放状態にするとともに第1のインクタンク61の第1の大気解放電磁弁65を閉じる。この時、第2のインクタンク62は前述したように画像記録部12aより重力方向下方に配置しているため、画像記録部12aのノズル孔には水頭差によりメニスカスが形成されている。つまり、待機時において第2のインクタンク62は、ノズル孔のメニスカスが破壊されず、且つ画像記録部12aからインクが垂れ落ちることのない位置に配置している。
【0098】
なお、メニスカスを形成するために、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を閉じて第2のインクタンク62に負圧を生成するための負圧生成機構(不図示)を備えてもよい。さらに、メニスカスを形成するための第2のインクタンク62の役割を第1のインクタンク61が担えば第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67を開放する必要はない。
【0099】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態では、インク循環部2は、画像記録時や循環によるクリーニング時は、第2のインクタンク62の第2の大気解放電磁弁67及び、第1のインクタンク61の第1の大気解放電磁弁65を閉じて第2のインクタンク62及び第1のインクタンク61を大気から遮断する。この状態でポンプ6を駆動すると、第1のインク経路14は加圧され、時間と共に正圧になる。さらに第2のインク経路15は減圧され、時間と共に負圧になる。
【0100】
なお、画像記録部12aのノズル孔に適正な負圧を生成するために、画像記録部12aに対し、第1のインクタンク61および第2のインクタンク62を低い位置に設けているが、第2のインクタンク62に図示しない圧力生成機構設けてもよい。
【0101】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態のインクジェットプリンタ1では、第2のインクタンク62の空気部62dの容量と、第1のインクタンク61の空気部61dの容量とが略等しい容量に設定されている。さらに、前記第1のインク経路14の流路抵抗R1と前記第2のインク経路の流路抵抗R2が略等しいので、第1のインク経路14及び第2のインク経路15の圧力の単位時間当たりの圧力の変動量の絶対値は略均等になる。即ち、ノズル圧力の変動が抑制され、従ってノズル孔のメニスカスが破壊されることはない。
【0102】
さらに、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、インクを循環させるインク循環経路を備えたインクジェットプリンタなどの画像記録装置を使用する技術分野や、これを製造する技術分野に有効である。
【符号の説明】
【0104】
2…インク循環部(インク循環経路)、6…ポンプ、12a…画像記録部、14…第1のインク経路、15…第2のインク経路、24…圧力調整部、29…供給ポート、30…排出ポート、43…コントローラ(制御手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を記録するために前記記録媒体にインクを吐出するノズル孔と、インクが供給される供給ポートと、インクを排出する排出ポートと、を有する画像記録部と、
インクを循環させるポンプと、
インク循環経路を有し、
前記インク循環経路は、前記ポンプと前記画像記録部の前記供給ポートを接続し、前記ポンプから前記画像記録部へインクを供給する第1のインク経路と、前記画像記録部の前記排出ポートと前記ポンプを接続し、前記画像記録部から前記ポンプへインクを回収する第2のインク経路と、からなり、
画像記録時の前記インク循環経路は、前記ノズル孔を除き密閉である画像記録装置において、
前記インク循環経路には、前記インク循環経路内の圧力を調整する圧力調整部を設けるとともに、
前記ポンプの駆動により前記インク循環経路にインクを循環させる循環開始時に、前記画像記録部の2つのポートの部分の循環開始時における単位時間当たりの圧力変化量が大きい方の圧力変化を調整して前記画像記録部のノズル孔における圧力を予め設定された適正な設定範囲内に保持する状態に前記圧力調整部を制御する制御手段を設けたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記インク循環経路の循環開始時に、一旦、前記圧力調整部を作動させ、その後、前記画像記録部の2つのポートの部分の圧力が圧力一定状態になる前に前記圧力調整部を停止する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、循環開始の直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始直後の少なくともいずれか1つのタイミングで前記圧力調整部を作動させることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整部。
【請求項4】
前記制御手段は、循環開始後、前記画像記録部の2つのポートの部分の循環開始時における単位時間当たりの圧力変化量の小さい方の圧力が一定になるまでに前記圧力調整部を停止することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、循環開始後、前記画像記録部の2つのポートの部分の循環開始時における単位時間当たりの圧力変化量の小さい方の圧力が一定になるまでに前記圧力調整部の作動、停止を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記圧力調整部は、前記第1のインク経路と前記第2のインク経路のうち、前記画像記録部の2つのポートの循環開始時における単位時間当たりの圧力の変化の大きい側のポートに接続される側のインク経路に設けたことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記圧力調整部は、少なくとも前記第1のインク経路と前記第2のインク経路のうち各々のインク経路に介在する空気の容量が少ない側もしくは介在する空気が無い側のインク経路に設けたことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記圧力調整部は、前記インク循環経路中に設けられた圧力解放弁を有し、
前記制御手段は、前記圧力調整部の作動時に前記圧力解放弁を解放し、前記圧力調整部の停止時に前記圧力解放弁を閉じることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記圧力調整部は、前記インク循環経路に連通され、少なくとも1部の内部容量を変化可能な容量変化部と、
前記容量変化部と前記インク循環経路との連通経路を開閉可能な開閉弁と、を具備し、
前記制御手段は、前記圧力調整部の作動時に前記開閉弁を解放し、前記圧力調整部の停止時に前記開閉弁を閉じることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項10】
記録媒体に画像を記録するために前記記録媒体にインクを吐出するノズル孔と、インクが供給される供給ポートと、インクを排出する排出ポートと、を有する画像記録部と、
インクを循環させるポンプと、
インク循環経路を有し、
前記インク循環経路は、前記ポンプと前記画像記録部の前記供給ポートを接続し、前記ポンプから前記画像記録部へインクを供給する第1のインク経路と、前記画像記録部の前記排出ポートと前記ポンプを接続し、前記画像記録部から前記ポンプへインクを回収する第2のインク経路と、からなり、
画像記録時の前記インク循環経路は密閉である画像記録装置において、
前記インク経路のうち、前記第1のインク経路中に介在する空気の容量と、前記第2のインク経路中に介在する空気の容量が略等しく、さらに前記第1のインク経路の流路抵抗と前記第2のインク経路の流路抵抗が略等しいことを特徴とする画像記録装置。
【請求項1】
記録媒体に画像を記録するために前記記録媒体にインクを吐出するノズル孔と、インクが供給される供給ポートと、インクを排出する排出ポートと、を有する画像記録部と、
インクを循環させるポンプと、
インク循環経路を有し、
前記インク循環経路は、前記ポンプと前記画像記録部の前記供給ポートを接続し、前記ポンプから前記画像記録部へインクを供給する第1のインク経路と、前記画像記録部の前記排出ポートと前記ポンプを接続し、前記画像記録部から前記ポンプへインクを回収する第2のインク経路と、からなり、
画像記録時の前記インク循環経路は、前記ノズル孔を除き密閉である画像記録装置において、
前記インク循環経路には、前記インク循環経路内の圧力を調整する圧力調整部を設けるとともに、
前記ポンプの駆動により前記インク循環経路にインクを循環させる循環開始時に、前記画像記録部の2つのポートの部分の循環開始時における単位時間当たりの圧力変化量が大きい方の圧力変化を調整して前記画像記録部のノズル孔における圧力を予め設定された適正な設定範囲内に保持する状態に前記圧力調整部を制御する制御手段を設けたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記インク循環経路の循環開始時に、一旦、前記圧力調整部を作動させ、その後、前記画像記録部の2つのポートの部分の圧力が圧力一定状態になる前に前記圧力調整部を停止する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、循環開始の直前、あるいは循環開始と共に、あるいは循環開始直後の少なくともいずれか1つのタイミングで前記圧力調整部を作動させることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整部。
【請求項4】
前記制御手段は、循環開始後、前記画像記録部の2つのポートの部分の循環開始時における単位時間当たりの圧力変化量の小さい方の圧力が一定になるまでに前記圧力調整部を停止することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、循環開始後、前記画像記録部の2つのポートの部分の循環開始時における単位時間当たりの圧力変化量の小さい方の圧力が一定になるまでに前記圧力調整部の作動、停止を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記圧力調整部は、前記第1のインク経路と前記第2のインク経路のうち、前記画像記録部の2つのポートの循環開始時における単位時間当たりの圧力の変化の大きい側のポートに接続される側のインク経路に設けたことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記圧力調整部は、少なくとも前記第1のインク経路と前記第2のインク経路のうち各々のインク経路に介在する空気の容量が少ない側もしくは介在する空気が無い側のインク経路に設けたことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記圧力調整部は、前記インク循環経路中に設けられた圧力解放弁を有し、
前記制御手段は、前記圧力調整部の作動時に前記圧力解放弁を解放し、前記圧力調整部の停止時に前記圧力解放弁を閉じることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記圧力調整部は、前記インク循環経路に連通され、少なくとも1部の内部容量を変化可能な容量変化部と、
前記容量変化部と前記インク循環経路との連通経路を開閉可能な開閉弁と、を具備し、
前記制御手段は、前記圧力調整部の作動時に前記開閉弁を解放し、前記圧力調整部の停止時に前記開閉弁を閉じることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項10】
記録媒体に画像を記録するために前記記録媒体にインクを吐出するノズル孔と、インクが供給される供給ポートと、インクを排出する排出ポートと、を有する画像記録部と、
インクを循環させるポンプと、
インク循環経路を有し、
前記インク循環経路は、前記ポンプと前記画像記録部の前記供給ポートを接続し、前記ポンプから前記画像記録部へインクを供給する第1のインク経路と、前記画像記録部の前記排出ポートと前記ポンプを接続し、前記画像記録部から前記ポンプへインクを回収する第2のインク経路と、からなり、
画像記録時の前記インク循環経路は密閉である画像記録装置において、
前記インク経路のうち、前記第1のインク経路中に介在する空気の容量と、前記第2のインク経路中に介在する空気の容量が略等しく、さらに前記第1のインク経路の流路抵抗と前記第2のインク経路の流路抵抗が略等しいことを特徴とする画像記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−11670(P2012−11670A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150396(P2010−150396)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【出願人】(511050985)オルテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【出願人】(511050985)オルテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]