説明

画像記録装置

【課題】支持部からの被記録媒体の浮き上がりを検出すること。
【解決手段】パターンが記録された被記録媒体を支持する支持部と、前記支持部に位置する前記被記録媒体に画像を記録する記録部と、前記被記録媒体を搬送方向の下流側へ搬送する搬送部と、前記パターンを読み取るセンサーと、前記センサーからの読取結果に基づいて、前記支持部からの前記被記録媒体の浮き上がりを検出する制御部と、を備えたことを特徴とする画像記録装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置の一例として、ヘッドに設けられたノズルから被記録媒体に向けてインクを吐出するインクジェットプリンター(以下、プリンター)が挙げられる。通常、プリンターには、ヘッドのノズル面と被記録媒体との間隔が一定となるように、ヘッドと対向する位置にて被記録媒体を裏面から支持するプラテンが設けられている。
【0003】
更に、被記録媒体の平坦性を確保するために、プラテンの表面に吸引力を発生させる吸引ファンが設けられたプリンターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−23166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、吸引ファンで被記録媒体をプラテンの表面に吸引吸着させようとしても、例えば、被記録媒体のサイズが大きい場合などでは、被記録媒体がプラテンから浮き上がってしまうことがある。被記録媒体が浮き上がっていることに気付かずに印刷を続けてしまうと、被記録媒体の正しい位置にインクが着弾しなかったり、被記録媒体とヘッドが衝突したりしてしまう。
【0006】
そこで、本発明では、プラテン(支持部)からの被記録媒体の浮き上がりを検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する為の主たる発明は、パターンが記録された被記録媒体を支持する支持部と、前記支持部に位置する前記被記録媒体に画像を記録する記録部と、前記被記録媒体を搬送方向の下流側へ搬送する搬送部と、前記パターンを読み取るセンサーと、前記センサーからの読取結果に基づいて、前記支持部からの前記被記録媒体の浮き上がりを検出する制御部と、を備えたことを特徴とする画像記録装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】図2Aはプリンターの概略断面図であり、図2Bはヘッドの周辺を上から見た概略図である。
【図3】用紙の浮きを検出する処理のフローである。
【図4】用紙の裏面に印刷されたパターンPを説明する図である。
【図5】図5Aから図5Cは用紙の状態とパターンとの関係を説明する図である。
【図6】図6A及び図6Bは画像読み取りセンサーの読取データを説明する図である。
【図7】図7A及び図7Bはエッジ検出可能なデータへの変換を説明する図である。
【図8】印刷処理のフローを示す図である。
【図9】用紙に折れが生じている場合のパターンの大きさと形状を示す図である。
【図10】図10Aはパターンの変形例を説明する図であり、図10Bは用紙が傾斜して搬送される場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0010】
即ち、パターンが記録された被記録媒体を支持する支持部と、前記支持部に位置する前記被記録媒体に画像を記録する記録部と、前記被記録媒体を搬送方向の下流側へ搬送する搬送部と、前記パターンを読み取るセンサーと、前記センサーからの読取結果に基づいて、前記支持部からの前記被記録媒体の浮き上がりを検出する制御部と、を備えたことを特徴とする画像記録装置である。
このような画像記録装置によれば、被記録媒体の浮き上がりを、例えば、画像記録前に検出することができ、被記録媒体上の正しい位置にインクを着弾させたり、記録部と被記録媒体の衝突を防止したりすることができる。
【0011】
かかる画像記録装置であって、前記制御部は、前記センサーが読み取った前記パターンの大きさに基づいて、前記支持部からの前記被記録媒体の浮き上がりを検出すること。
このような画像記録装置によれば、被記録媒体の浮き上がりを検出することができる。
【0012】
かかる画像記録装置であって、前記制御部は、前記センサーが読み取った前記パターンの中心から前記パターンの端までの距離が閾値未満である場合、前記被記録媒体が前記支持部から浮き上がっていると判定すること。
このような画像記録装置によれば、被記録媒体の浮き上がりを検出することができる。
【0013】
かかる画像記録装置であって、前記制御部は、前記センサーが読み取った前記パターンの歪みに基づいて、前記支持部からの前記被記録媒体の浮き上がりを検出すること。
このような画像記録装置によれば、被記録媒体の浮き上がりを検出することができる。
【0014】
かかる画像記録装置であって、前記パターンは円であること。
このような画像記録装置によれば、パターンの大きさや歪みの算出を容易にすることができ、被記録媒体の傾斜を考慮する必要がなくなる。
【0015】
かかる画像記録装置であって、前記制御部は、前記被記録媒体が前記支持部から浮き上がっている場合、前記搬送部に、前記被記録媒体を前記搬送方向の上流側へ搬送させた後に、再度、前記被記録媒体を前記搬送方向の前記下流側へ搬送させること。
このような画像記録装置によれば、被記録媒体の浮き上がりを解消した状態で画像を記録することができ、例えば、被記録媒体上の正しい位置にインクを着弾させたり、記録部と被記録媒体の衝突を防止したりすることができる。
【0016】
かかる画像記録装置であって、前記搬送方向と交差する方向における前記被記録媒体の一方側の端が、前記支持部の前記交差する方向における基準位置に合わされた状態で、前記被記録媒体は搬送され、前記センサーは、前記被記録媒体が通過する領域のうち、前記記録部よりも前記搬送方向の上流側の位置であり、前記交差する方向における前記一方側の位置に、配置されていること。
このような画像記録装置によれば、画像記録前に被記録媒体の浮き上がりを検出することができ、被記録媒体のサイズに関係なくセンサーがパターンを読み取ることができる。
【0017】
かかる画像記録装置であって、前記記録部は、インクを吐出する複数のノズルが前記搬送方向に並んだノズル列を備え、前記ノズル列が前記搬送方向と交差する方向に移動しながらインクを吐出する動作と、前記被記録媒体が前記搬送方向の前記下流側へ搬送される動作と、が繰り返され、前記被記録媒体に記録された前記パターンの前記搬送方向の間隔が、前記ノズル列の前記搬送方向の長さ以下であること。
このような画像記録装置によれば、インクを吐出する動作ごとに被記録媒体の浮き上がりを検出することができ、被記録媒体が浮き上がっている状態で画像が記録されてしまうことを、より確実に防止できる。
【0018】
===印刷システム===
画像記録装置をインクジェットプリンター(以下、プリンター)とし、プリンターとコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて、実施形態を説明する。
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図2Aは、被記録媒体Sの搬送方向と交差する方向にプリンター1を見た概略断面図であり、図2Bは、ヘッド41の周辺を上から見た概略図である。
【0019】
コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。
プリンター1内のコントローラー10は、プリンター1における全体的な制御を行うためのものである。インターフェース部11は、外部装置であるコンピューター60との間でデータの送受信を行う。CPU12は、プリンター1の全体的な制御を行うための演算処理装置であり、ユニット制御回路14を介して各ユニットを制御する。メモリー13は、CPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。
【0020】
搬送ユニット20(搬送部に相当)は、被記録媒体S(以下、用紙)を印刷可能な位置に給紙し、印刷時には搬送方向の下流側へ所定の搬送量で用紙Sを搬送するためのものである。なお、被記録媒体は、用紙に限らず、例えば布やフィルム等でもよく、また、用紙は、カット紙でもよいし、ロール状に巻かれた連続紙でもよい。
キャリッジユニット30は、キャリッジ31に搭載されたヘッド41を、用紙Sの搬送方向と交差する移動方向に移動するためのものである。
【0021】
ヘッドユニット40は、用紙Sにインクを吐出するヘッド41(記録部に相当)と、用紙Sを裏面(印刷面とは反対側の面)から支持するプラテン42(支持部に相当)と、キャップ43と、を有する。ヘッド41の下面には、インクを吐出する複数のノズルが搬送方向に所定の間隔おきに並んだノズル列が設けられている。なお、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけてインク室を膨張・収縮させることによりノズルからインクを吐出させるピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってノズルからインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0022】
プラテン42は、図2Aに示すように、プラテンプレート421と、負圧室422と、吸引ファン423と、を有し、用紙Sをプラテンプレート421の上面に吸引吸着させる。そうすることで、印刷時における用紙Sの位置ずれを防止でき、また、用紙Sの平坦性を確保することができる。そのために、プラテンプレート421には上下方向に貫通する多数の吸引孔424が設けられ、プラテンプレート421の上面は、プラテンプレート421の下部に設けられた負圧室422と連通している。吸引ファン423が稼働すると、負圧室422内の空気が外部に吐き出され、負圧室422の内部が負圧状態となる。そうすると、プラテンプレート421の上面の空気が吸引孔424を介して負圧室422の内部に吸引され、用紙Sがプラテンプレート421の上面に吸引吸着する。ただし、これに限らず、例えば、用紙Sをプラテン42に静電吸着させてもよい。
【0023】
キャップ43は、ノズルの目詰まりを防止するためのものであり、ホームポジション(図2Bでは、移動方向における右側端部の非印刷領域)に設けられている。非印刷時に、ヘッド41はホームポジションに退避し、ヘッド41のノズル面はキャップ43で密閉される。従って、ノズルからのインクの蒸発が抑制される。
【0024】
検出器群50は、プリンター1内の状況を監視し、その検出結果をコントローラー10に出力するためのものであり、例えば、用紙Sの裏面に印刷されたパターンを読み取るための画像読取センサー51(センサーに相当)を有する(詳細は後述)。
【0025】
このような構成のプリンター1において、ヘッド41(ノズル列)が移動方向に移動しながらインクを吐出する吐出動作と、媒体Sが搬送方向の下流側へ搬送される搬送動作と、が交互に繰り返される。その結果、媒体S上に2次元の画像が印刷される。なお、1回の吐出動作を「パス」とも呼ぶ。また、図2Bに示すように、移動方向における右側端部(ホームポジション側)を用紙搬送の基準位置とする。そのため、プラテン42の上面の右側端部には、用紙Sの右側端部を合わせる固定ガイド21が設けられ、用紙Sは固定ガイド21に沿って搬送される。即ち、固定ガイド21の左側側辺が用紙搬送の基準位置となる。
【0026】
===用紙Sの浮き上がりの問題===
前述のように、本実施形態のプリンター1では、プラテン42上での用紙Sの位置ずれを防止し、用紙Sの平坦性を確保するために、プラテン42に吸引ファン423が設けられ、用紙Sがプラテン42の上面に吸引吸着する。しかし、使用する用紙Sのサイズが大きく用紙Sが重かったり、ロール状に巻かれた連続用紙Sに強い巻き癖がついていたりすると、吸引ファン423の吸引力では、プラテン42の上面に用紙Sを吸引吸着させることが出来ない場合がある。そうすると、後述の図5Bや図5Cに示すように、用紙Sがプラテン42から浮き上がってしまう。
【0027】
用紙Sがプラテン42から浮き上がっているにもかかわらず、印刷を続行してしまうと、ヘッド41のノズル面と用紙Sとの間隔(所謂ペーパーギャップ)が既定値からずれ、用紙Sの正しい位置にインクが着弾せず、印刷画像の画質が劣化してしまう。また、ヘッド41と用紙Sが衝突し、用紙Sが汚れたり、用紙Sにシワや折れが生じて用紙Sが詰まったりしてしまう。
そこで、本実施形態のプリンター1は、印刷前に、プラテン42からの用紙Sの浮き上がりを検出する。
【0028】
===用紙Sの浮き検出処理===
図3は、用紙Sの浮き(浮き上がり)を検出する処理のフローであり、図4は、用紙Sの裏面に印刷されたパターンPを説明する図であり、図5Aから図5Cは、用紙Sの状態とパターンPとの関係を説明する図である。
【0029】
本実施形態のプリンター1は、裏面(印刷面とは反対側の面)にパターンPが印刷された用紙Sを使用する。なお、ユーザーが用紙Sをセットする際や、プリンター1に設けられたセンサーが用紙Sの裏面を読み取った際などに、用紙Sの裏面にパターンPが印刷されていないことが認識された場合、プリンター1は、表面に画像を印刷する前に、裏面にパターンPを印刷する。
【0030】
そして、画像読取センサー51が、用紙Sの裏面に印刷されたパターンPを読み取る。画像読取センサー51は、図2に示すように、プラテン42の内部(負圧室422)に設けられている。また、画像読取センサー51は、ヘッド41よりも搬送方向の上流側に位置し、プラテン42の移動方向における中央部よりも右側(即ち、ホームポジション側,固定ガイド21側)に位置している。画像読取センサー51がパターンPを読み取れるように、プラテンプレート421には画像読取センサー51を露出させる孔425が設けられている。
【0031】
用紙Sの裏面に印刷されたパターンPは、図4に示すように、「円(正円)」である。なお、ここでは、パターンPの色を黒とし、パターンPを線で描かれた円(白抜きの円)とするが、これに限らない。また、画像読取センサー51がパターンPを読み取れるように、用紙Sの表面をヘッド41側に向けたときに画像読取センサー51と対向する裏面の位置に、パターンPは印刷されている。即ち、搬送の基準位置となる用紙Sの右側端部(固定ガイド21)からパターンPまでの距離と、用紙Sの右側端部から画像読取センサー51までの距離が、等しい。また、用紙Sの裏面では複数のパターンPが搬送方向に所定の間隔おきに並んでおり、ここでは、パターンPの搬送方向の間隔がヘッド41に設けられたノズル列の搬送方向の長さに等しいとする。
【0032】
図5Aは、プラテン42(プラテンプレート421の上面)から用紙Sが浮き上がっていない場合のパターンPの大きさと形状を示す図である。この場合、画像読取センサー51は、画像読取センサー51からプラテン42の上面までの距離に応じた大きさの正円のパターンPを読み取ることになる。即ち、画像読取センサー51が読み取ったパターンPでは、パターンPの中心OからパターンPの端点p1〜p3までの各距離r1〜r3が等しく、各距離r1〜r3が、画像読取センサー51からプラテン42の上面までの距離に応じた長さになっている。
【0033】
図5Bは、プラテン42から用紙Sが平行に浮き上がった場合のパターンPの大きさと形状を示す図である。この場合、画像読取センサー51から用紙Sの裏面(パターンP)までの距離が、画像読取センサー51からプラテン42の上面までの距離よりも長くなる。従って、画像読取センサー51は、用紙Sが浮き上がっていない場合(図5A)に比べて、「小さい正円のパターンP」を読み取ることになる。即ち、パターンPの中心OからパターンPの端点p1〜p3までの各距離r1’〜r3’は等しいが、用紙Sが浮き上がっていない場合(図5A)に比べて、パターンPの中心OからパターンPの端点p1〜p3までの距離が短くなっている(r1’、r2’、r3’<r1、r2、r3)。
【0034】
図5Cは、プラテン42から用紙Sが搬送方向に湾曲して浮き上がった場合のパターンPの大きさと形状を示す図である。この場合、画像読取センサー51から用紙Sの裏面(パターンP)までの距離が、画像読取センサー51からプラテン42の上面までの距離よりも長くなり、且つ、パターンPを平面的に見ると、パターンPの搬送方向の長さが移動方向の長さに比べて短くなる。従って、画像読取センサー51は、用紙Sが浮き上がっていない場合(図5A)に比べて、「小さい楕円のパターンP」を読み取ることになる。
【0035】
即ち、パターンPの中心OからパターンPの端点p1〜p3までの各距離r1’’〜r3’’がばらつき、また、用紙Sが浮き上がっていない場合(図5A)に比べて、パターンPの中心OからパターンPの端点p1〜p3までの距離が短くなっている。画像読取センサー51が読み取ったパターンPの形状は、移動方向に長い楕円であるため、例えば、パターンPの中心Oから移動方向左側に向かったパターンPの端点p1までの距離r1’’よりも、パターンPの中心Oから搬送方向下流側に向かったパターンPの端点p3までの距離r3’’の方が短くなっている。
【0036】
このように、用紙Sがプラテン42から浮き上がっていると、画像読取センサー51が読み取るパターンPの大きさが小さくなり(パターンPの中心Oから端点p1〜p3までの距離が短くなり)、パターンPの形状が正円から歪んだ図形(例えば、楕円)となる。
【0037】
そこで、本実施形態のプリンター1では、画像読取センサー51が用紙Sの裏面に印刷されたパターンPを読み取り、コントローラー10(制御部に相当)が、画像読取センサー51からの読取結果(パターンPの大きさと歪み)に基づいて、プラテン42からの用紙Sの浮き上がりを検出する。
【0038】
以下、用紙Sの浮き検出処理の流れを具体的に説明する。
図6A及び図6Bは、画像読み取りセンサー51がパターンPを読み取ったデータDを説明する図である。図7A及び図7Bは、読取データDを、パターンPのエッジ(輪郭)を検出するためのデータに変換する様子を説明する図である。
【0039】
まず、コントローラー10は、画像読取センサー51に、対向する用紙Sの裏面に印刷されたパターンPを読み取らせ(図3のS001)、パターンPの読取データDを取得する。図6に示すように、読取データDでは、画像読取センサー51の読取解像度に応じた画素(単位領域)が2次元に並ぶ。各画素は、対応する用紙Sの濃度を多段階に示す階調値を有する。例えば、各画素が有する階調値を256段階の値(0〜255)とし、階調値の大きい画素ほど、読み取った用紙部位の濃度が濃いとする。そうすると、例えば、用紙Sの白い部分を読み取った画素の階調値は0付近の値となり、用紙Sに印刷された黒いパターンPを読み取った画素の階調値は255付近の値となる。また、読取データDにおいて、用紙Sの搬送方向に対応する方向を「X方向」とし、ヘッド41の移動方向に対応する方向を「Y方向」とする。
【0040】
次に、コントローター10は、読取データDを、パターンPのエッジ(例えば、図5Aの端点p1〜p3)を検出することのできるデータに変換する(S002)。図7Aの左図に示すように、パターンPの内側(即ち、用紙S)を読み取った画素の階調値は低く、パターンPを読み取った画素にて階調値が急激に高くなる。この階調値が急激に高くなった画素の位置がパターンPのエッジの位置となる。そして、前述(図5)のように、パターンPの中心OからパターンPのエッジ(端点)までの距離によって、パターンPの大きさを判断することができる。なお、本実施形態のパターンPは線画像であるため、パターンPは内側(中心O側)のエッジと外側のエッジを有するが、ここでは、パターンPの内側のエッジを基準とする。よって、コントローラー10は、パターンPの中心OからパターンPの内側のエッジまでの距離によって、パターンPの大きさを判断する。
【0041】
しかし、エッジ部分の階調値の変化が緩やかであると、パターンPのエッジの位置を検出することが難しい。そこで、コントローラー10は、画像読取データDに対して、2次微分をもとにしたラプラシアンフィルタを適用する。そうすると、図7Aの右図に示すように、読取データDに正のピークと負のピークが生じ、その正負のピークの中央(ゼロとなる位置)をパターンPのエッジの位置として検出することができる。
【0042】
ただし、ラプラシアンフィルタは雑音に弱い。そのため、読取データDに対してラプラシアンフィルタを適用する前に、ガウス関数をもとにしたガウシアンフィルタにより画像を平滑化しておくことが好ましい。なお、ガウシアンフィルタは、対象画素に近い画素に大きい重みをつけ、遠い画素に小さい重みをつけた加重平均フィルタである。
【0043】
つまり、コントローラー10は、図7Bに示すように、読取データDに対して、まず、ガウシアンフィルタを適用し、その後に、ラプラシアンフィルタを適用する。その結果、読取データDは、エッジ検出可能なデータ(図7Aの右図)に変換される。なお、エッジ検出のために、ここではラプラシアンフィルタを適用しているが、これに限らず、例えば、ロバーツフィルタやソベルフィルタを適用してもよい。
【0044】
次に、コントローター10は、読取データDにおいて、パターンPの中心Oとなる画素を決定する。パターンPの中心Oと読取データDの中心が一致するように最初に用紙Sをセットしても、搬送誤差などの影響により、パターンPの中心Oと読取データDの中心がずれてしまう場合がある。そこで、コントローラー10は、読取データDの中央に位置する複数の画素の中から、パターンPの中心Oとなる画素を決定する。ここでは、図6に示すように、読取データDの中央の太枠で囲われた25個の画素(5画素×5画素)の中から、パターンPの中心Oとなる画素が決定される。
【0045】
パターンPの形状は正円である。そのため、本来であれば、パターンPの中心Oとなる画素から複数の方向に向かったパターンPの各端点までの距離が等しくなる。従って、パターンPの複数の端点までの距離が等しくなる画素が、パターンPの中心Oとなる画素となる。しかし、図5Cに示すように、プラテン42から用紙Sが浮き上がり、パターンPの形状が歪んでいる場合、パターンPの中心Oとなる画素から複数の方向に向かったパターンPの各端点までの距離が等しくならない。そこで、コントローラー10は、読取データDの中央に位置する25個の画素のうち、パターンPの複数の端点までの距離のばらつきが最小となる画素を、パターンPの中心Oとなる画素にする。
【0046】
そのために、コントローラー10は、読取データDの中央に位置する25個の画素に対して、画素ごとに、その画素(対象画素n)から8方向に向かうパターンPの端点(内側のエッジ)p1〜p8までの距離r1〜r8の平均値mと、その平均値mに対する各距離r1〜r8のばらつき(偏差)Δを算出する。
【0047】
なお、対象画素nに対する8方向は、図6に示すように、対象画素nに対してY方向上側に向かう方向から順に45度ずつずれた8方向とする。また、対象画素nに対してY方向上側に向かう方向から順に反時計回りに、第1方向、第2方向、第3方向、…第8方向とする。また、対象画素nから第1方向に向かうパターンPの端点をp1とし、対象画素nから端点p1までの距離をr1とし、対象画素nから第2方向に向かうパターンPの端点をp2とし、対象画素nから端点p2までの距離をr2とする。その他の方向の端点p3〜p8及び距離r3〜r8も同様とする。
【0048】
コントローラー10は、図6Aに示すように、読取データDの中央に位置する25個の画素のうち、左上の画素を最初の対象画素nとする。まず、コントローラー10は、対象画素nから8方向に向かうパターンPの端点p1〜p8の位置(パターンPの内側のエッジの位置)を取得する。そして、コントローラー10は、対象画素nから8方向に向かうパターンPの各端点p1〜p8までの距離(画素数)r1〜r8を取得する。
【0049】
次に、コントローラー10は、対象画素nからパターンPの各端点p1〜p8までの距離r1〜r8の平均値mを、下記の式により算出する(図3のS003)。

【0050】
次に、コントローラー10は、算出した平均値mに対する、対象画素nからパターンPの各端点p1〜p8までの距離r1〜r8のばらつきΔを、下記の式により算出する(S004)。

【0051】
こうして、左上の対象画素nの平均値mとばらつきΔを算出すると、コントローラー10は、対象画素nの位置をずらして(S006)、次の対象画素nの平均値mとばらつきΔを算出する。読取データDの中央に位置する25個の全画素について平均値mとばらつきΔを算出するまで、コントローラー10は、この処理を繰り返す。
【0052】
その後、コントローラー10は、読取データDの中央に位置する25個の画素のうち、ばらつきΔが最小となる画素を検出し、その画素を、パターンPの中心Oとなる画素に決定する(S007)。例えば、図6Aの対象画素nでは、対象画素nからパターンPの端点p1〜p3までの距離r1〜r3が短く、対象画素nからパターンPの端点p5〜p7までの距離r5〜r7が長い。よって、図6Aの対象画素nのばらつきΔは大きく、図6Aの対象画素nはパターンPの中心Oとなる画素に決定されない。一方、図6Bの対象画素nでは、対象画素nからパターンPの全端点p1〜p8までの距離r1〜r8が同程度である。よって、図6Bの対象画素nのばらつきΔは小さく、図6Bの対象画素nが、パターンPの中心Oとなる画素に決定される。
【0053】
次に、コントローラー10は、パターンPの中心Oに決定した画素の平均値mを、第1閾値と比較する(S008)。パターンPの中心Oとなる画素の平均値m(即ち、パターンPの中心Oから端点p1〜p8までの距離r1〜r8の平均値)が小さいということは、パターンPの大きさが小さいということであり、前述の図5Bや図5Cに示すように、プラテンPから用紙Sが浮き上がっているということである。
【0054】
そこで、コントローラー10は、パターンPの中心Oとなる画素の平均値mが第1閾値未満である場合(S008→Y)、用紙Sがプラテン42から浮き上がっていると判定する(S011)。なお、第1閾値は、用紙Sがプラテン42から浮き上がっていない場合(図5A)におけるパターンPの中心Oから端点p1〜p8までの距離や、許容する用紙Sの浮きの程度に基づいて、決定するとよい。
【0055】
また、平均値mが第1閾値以上であっても(S008→N)、即ち、パターンPの中心Oから端点p1〜p8までの距離r1〜r8の平均値mが大きくとも、用紙Sがプラテン42から浮き上がっている場合がある。例えば、図5Cに示すように、パターンPの中心Oから搬送方向に向かう端点p3までの距離r3’’は短いが、パターンPの中心Oから移動方向に向かう端点p1までの距離r1’’が比較的に長いと、平均値mが第1閾値以上となってしまう虞がある。
【0056】
そこで、コントローラー10は、パターンPの中心Oとなる画素のばらつきΔが第2閾値以上であり(S009→Y)、パターンPが正円から歪んだ形状をしている場合、用紙Sがプラテン42から浮き上がっていると判定する(S011)。なお、パターンPは正円であるため、本来であれば、パターンPの中心Oから端点p1〜p8までの距離r1〜r8のばらつきΔはゼロとなるが、エッジ位置の検出誤差や、許容する用紙Sの浮きの程度を考慮して、第2閾値を決定するとよい。
【0057】
つまり、コントローラー10は、パターンPの中心Oとなる画素の平均値mが第1閾値以上で(S008→N)、パターンPが大きく、且つ、パターンPの中心Oとなる画素のばらつきΔが第2閾値未満で(S009→N)、パターンPが歪んでいない場合に、用紙Sがプラテン42から浮き上がっていないと判定する(S010)。
【0058】
以上のように、本実施形態のプリンター1では、画像読取センサー51(センサーに相当)が読み取ったパターンPの大きさ(平均値m)、及び、歪み(ばらつきΔ)に基づいて、コントローラー10(制御部に相当)が、プラテン42(支持部に相当)からの用紙Sの浮き上がりを検出する。
【0059】
具体的には、パターンPの中心OからパターンPの端(端点p1〜p8)までの距離r1〜r8(平均値m)が閾値未満である場合に、コントローラー10は用紙Sが浮き上がっていると判定する。また、パターンPの中心OからパターンPの端(端点p1〜p8)までの距離r1〜8のばらつきΔが閾値以上である場合に、コントローラー10は用紙Sが浮き上がっていると判定する。
【0060】
従って、本実施形態のプリンター1では、印刷前に、用紙Sがプラテン42から浮き上がっていることを検出でき、用紙Sの浮き上がりを解消した状態で印刷を実行することができる。そのため、ペーパーギャップが既定値である状態で印刷を実行することができ、用紙Sの正しい位置にインクを着弾させることができるので、印刷画像の画質劣化を抑制することができる。また、ヘッド41と用紙Sの衝突を防止し、用紙Sの汚れや、用紙Sのシワや折れによる用紙Sの詰まりを防止できる。
【0061】
また、本実施形態のプリンター1では、用紙Sの裏面に印刷するパターンPを円(正円)にする。そのため、パターンPの中心Oから端点p1〜p8までの距離r1〜r8を一定にすることができ、パターンPの大きさ(平均値m)や歪み(ばらつきΔ)の算出を容易にすることができる。また、用紙Sが搬送方向に対して傾斜して搬送されたとしても、パターンPが歪んでいなければ、パターンPの中心Oから端点p1〜p8までの距離r1〜r8は変わらない。そのため、用紙Sが傾斜していても傾斜していなくとも、パターンPの中心Oから端点p1〜p8までの距離r1〜r8の平均値mに対する閾値が同じとなるため、パターンPの傾斜を考慮しなくとも正確に用紙Sの浮き上がりを検出することができる。
【0062】
また、本実施形態のプリンター1では、図2Bに示すように、搬送方向と交差する移動方向における用紙Sの右側(一方側に相当)の端が、プラテン42の移動方向における基準位置(固定ガイド21)に合わされた状態で、用紙Sが搬送される。そして、用紙Sが通過する領域のうち、ヘッド41よりも搬送方向上流側の位置であり、移動方向の右側(用紙搬送の基準位置側)の位置に、画像読取センサー51が配置されている。
【0063】
そのため、印刷前の用紙部位に関して、プラテン42からの浮き上がりを検出することができ、用紙Sの浮き上がりを解消した状態で印刷を実行することができる。また、用紙Sの左側端部の位置(用紙搬送の基準位置側とは反対側の用紙端部の位置)は、用紙Sのサイズに応じて変動する。そのため、移動方向の右側(用紙搬送の基準位置側)に画像読取センサー51を配置することで、画像読取センサー51は、用紙Sのサイズに関係なく、用紙Sの裏面に印刷されたパターンPを読み取ることができる。
【0064】
===印刷処理===
図8は、本実施形態のプリンター1における印刷処理のフローを示す図である。プリンター1のコントローラー10は、コンピューター60から印刷ジョブを受信すると(S101)、用紙Sを印刷開始位置に給紙させる(S102)。その後、コントローラー10は、前述の図3のフローに従って、用紙Sの浮き検出処理を実行する(S103)。用紙Sがプラテン42から浮き上がっていない場合(S104→N)、コントローラー10は、1パスの印刷を実行する、即ち、ヘッド41を移動方向に移動させながらヘッドからインクを吐出させる(S105)。
【0065】
一方、用紙Sがプラテン42から浮き上がっている場合(S104→Y)、用紙Sの浮き上がりが解消するように、コントローラー10は、搬送ユニット20(搬送部に相当)に、所定の位置まで用紙Sを搬送方向の上流側へ逆搬送させた後に(S108)、再度、用紙Sを搬送方向の下流側へ搬送させる(S109)。その後、コントローラー10は、用紙Sの浮き検出処理を実行し(S103)、用紙Sの浮き上がりが解消されていれば、1パスの印刷を実行する。なお、図8では示さないが、用紙Sの逆搬送と再搬送を所定回数繰り返しても浮き上がりが解消されない場合、ユーザーにエラーが報知されるようにするとよい。
【0066】
そして、次のパスが有る場合(S106→Y)、コントローラー10は、用紙Sを搬送方向の下流側へ搬送させて(S107)、再び、用紙Sの浮き検出処理を実行してから(S103)、次のパスの印刷を実行する(S105)。そして、次のパスが無くなるまで(S106→N)、コントローラー10は、この処理を繰り返す。
【0067】
このように、1パスの印刷前に用紙Sの浮き上がりを検出した場合、用紙Sを逆搬送することで、用紙Sの浮き上がりを解消した状態で印刷を実行することができる。よって、用紙Sの正しい位置にインクを着弾させることができ、また、用紙Sとヘッド41の衝突を防止することができるため、用紙Sの汚れや詰まりを防止することができる。また、用紙Sの搬送動作時に用紙Sが浮き上がり易いため、用紙Sの搬送動作の後であり、1パスの印刷前に、用紙Sの浮き検出処理を実行するようにするとよい。そうすることで、用紙Sが浮き上がっている状態で印刷が続行されてしまうことを、より確実に防止できる。
【0068】
また、本実施形態のプリンター1で使用する用紙Sには、図4に示すように、ノズル列の搬送方向の長さおきにパターンPが印刷されている。このように、パターンPの搬送方向の間隔を、ノズル列の搬送方向の長さ以下(1パスで印刷される画像幅以下)にすることで、1パスの印刷動作、及び、搬送動作が行われるごとに、用紙Sの浮き検出処理を実行することができる。従って、用紙Sが浮き上がっている状態で印刷が続行されてしまうことを、より確実に防止できる。
【0069】
なお、用紙Sを逆搬送することによって用紙Sの浮き上がりを解消するに限らず、例えば、用紙Sが浮き上がっている場合には、ユーザーに報知するようにしてもよい。また、用紙Sの浮き上がりが解消するように、吸引ファン423の吸引力を強くしたり、用紙Sの搬送ローラーを逆回転して用紙Sに張力を付与したりしてもよい。
【0070】
===変形例===
図9は、用紙Sに折れが生じている場合のパターンPの大きさと形状を示す図である。前述の実施形態では、パターンPの大きさと歪みに基づいて、用紙Sの浮き上がりを検出しているが、これに限らない。用紙Sに折れが生じている場合、画像読取センサー51は、パターンPの一部を読み取ることが出来ない。そのため、画像読取センサー51は、正円ではなく歪んだ図形であり、用紙Sが浮き上がっていない場合(図5A)に比べて小さいパターンPを読み取ることになる。また、用紙Sにシワが生じている場合(不図示)、パターンPを平面的に見ると、パターンPの中心Oから端点までの距離が一定にならない。そのため、画像読取センサー51は、正円ではなく歪んだ図形であり、用紙Sが浮き上がっていない場合(図5A)に比べて小さいパターンPを読み取ることになる。つまり、パターンPの大きさや歪みに基づいて、用紙Sの浮き上がりだけでなく、用紙Sのシワや折れも検出することができる。よって、用紙Sにシワや折れが生じている印刷物が出荷されてしまうことを防止できる。
【0071】
図10Aは、パターンPの変形例を説明する図であり、図10Bは、用紙Sが傾斜して搬送される場合を説明する図である。前述の実施形態では、パターンの形状を円(正円)としているが、これに限らず、例えば、図10Aに示すように正方形にしてもよいし、正八角形(不図示)にしてもよい。また、プリンター1に対して推奨する用紙Sの裏面には、会社名や商品名など(例えば、「EPSON」)が印刷されている場合がある。この場合、パターンPを別に印刷することなく、会社名などの文字や記号を画像読取センサー51に読み取らせ、その文字や記号の大きさや歪みに基づいて、用紙Sの浮き上がりを検出するようにしてもよい。
【0072】
また、図10Aに示すようにパターンPが正方形である場合、パターンPの中心Oから8方向に向かうパターンPの端点p1〜p8までの距離r1〜r8が異なる。具体的には、中心OからパターンPの頂点までの距離r2,r4,r6,r8が、中心OからX方向及びY方向に向かう距離r1,r3,r5,r7の√2倍となる。従って、パターンPの中心Oから端点p1〜p8までの距離r1〜r8の平均値mとばらつきΔを以下の式により算出するとよい。

【0073】
また、パターンPが正方形である場合、用紙Sが搬送方向に対して傾斜してしまうと(図10B)、パターンPの中心Oから8方向(図中の実線で示す正規の8方向)に向かうパターンPの端点p1〜p8までの距離r1〜r8が、傾斜していない場合(図10A)と異なってしまう。
【0074】
そこで、パターンPの中心Oとなる画素を決定する際に、正規の8方向だけでなく、正規の8方向から傾いた8方向(図中の点線の方向や一点鎖線の方向)に関しても、対象画素nから各8方向に向かうパターンPの端点までの距離のばらつきΔを算出するとよい。そうすると、対象画素nごとに複数のばらつきΔ(正規の8方向のΔと点線の方向のΔと一点鎖線の方向のΔ)が得られるため、多数のばらつきΔの中から最小のばらつきΔとなる画素を、パターンPの中心Oとなる画素にする。
【0075】
そして、パターンPの中心Oとなる画素の複数のばらつきΔ(正規の8方向のΔと点線の方向のΔと一点鎖線の方向のΔ)の平均値や最大値・最小値が、閾値以上である場合に、用紙Sが浮き上がっていると判定するとよい。同様に、パターンPの中心Oとなる画素の複数の平均値m(正規の8方向のmと点線の方向のmと一点鎖線の方向のm)の平均値や最大値・最小値が、閾値未満である場合に、用紙Sが浮き上がっていると判定するとよい。
【0076】
このように、用紙Sが傾斜しないとき(図10A)と用紙Sが傾斜するとき(図10B)とで、パターンPの中心Oから8方向に向かうパターンPの端点p1〜p8までの距離r1〜r8が異なってしまう場合、より多くの方向の平均値mやばらつきΔを考慮することで、用紙Sの傾斜の影響を減らして用紙Sの浮き上がりを検出することができる。
【0077】
また、前述の実施形態では、パターンPの大きさや歪みを判断するために、パターンPの中心Oから8方向に向かうパターンPの端点p1〜p8までの距離r1〜r8を用いているが、これに限らない。例えば、パターンPの中心Oから4方向(X方向の左右とY方向の上下)の距離を用いてもよいし、パターンPの中心Oから16方向や32方向の距離を用いてもよい。
【0078】
前述の実施形態では、パターンPの大きさや歪みを判断するために、パターンPの中心OからパターンPの端点までの距離を用いているが、これに限らない。例えば、パターンPの端点から端点までの距離(例えば、図6Aのp1からp5までの距離や、p3からp7までの距離)を用いてもよい。
【0079】
前述の実施形態では、パターンPの大きさを判断するために、パターンPの中心Oから8方向に向かうパターンPの端点p1〜p8までの距離r1〜r8の平均値mを用いているが、これに限らない。例えば、各距離r1〜r8と閾値を比較して、閾値よりも小さい距離がある場合に、用紙Sが浮き上がっていると判定するようにしてもよい。
【0080】
前述の実施形態では、パターンPの中心Oとなる画素を決定したり、パターンPの歪みを判断したりするために、平均値mに対する、パターンPの中心Oから端点p1〜p8までの各距離r1〜r8のばらつきΔを用いているが、これに限らない。例えば、各距離r1〜r8の差(例えば、r1とr2の差(絶対値)や、r1とr3の差、r2とr3の差など)の合計値が最小となる画素をパターンPの中心Oにしたり、閾値以上となる距離の差がある場合に用紙Sが浮き上がっていると判定したりするようにしてもよい。
【0081】
前述の実施形態では、パターンPの大きさ(平均値m)と歪み(ばらつきΔ)に基づいて用紙Sの浮き上がりを検出しているが、これに限らず、何れか一方のパラーメーターに基づいて用紙Sの浮き上がりを検出するようにしてもよい。
【0082】
前述の実施形態では、用紙Sの裏面にパターンPが印刷されているが、これに限らず、用紙Sの表面(余白部分)にパターンPが印刷されるようにしてもよい。また、パターンPを線画像としているが、これに限らず、パターンPを塗りつぶし画像にしてもよい。
【0083】
前述の実施形態では、ヘッド41よりも搬送方向の上流側に画像読取センサー51を配置し、印刷前の用紙Sの浮き上がりを検出するようにしているが、これに限らない。例えば、印刷後の用紙Sの浮き上がりを検出するようにしてもよい。印刷後の用紙Sが浮き上がっている場合、インクの着弾位値がずれていたり、用紙Sにシワや折れが生じていたりする虞がある。そのため、印刷後の用紙Sに浮き上がりが検出された場合、例えば、ユーザーが印刷物を確認するようにするとよい。また、図8に示すように、用紙Sの搬送動作後であり1パスの印刷前に用紙Sの浮き上がりを検出するに限らず、1パスの印刷後であり用紙Sの搬送動作前に、用紙Sの浮き上がりを検出するようにしてもよい。また、パスごとに用紙Sの浮き上がりを検出しなくてもよい。この場合、パターンPの搬送方向の間隔がノズル列長さよりも長くてもよい。
【0084】
前述の実施形態では、固定ガイド21の近傍に画像読取センサー51が1つ設けられているが、これに限らない。例えば、複数の画像読取センサー51を移動方向に並べて配置し、用紙Sの移動方向における複数箇所の浮き上がりを検出するようにしてもよい。
【0085】
前述の実施形態では、プリンター1のコントローラー10が、画像読取センサー51からの読取結果に基づいて、用紙Sの浮き上がりを検出しているが、これに限らない。例えば、プリンター1に接続されたコンピューター60が、画像読取センサー51からの読取結果を取得して、用紙Sの浮き上がりを検出するようにしてもよい。この場合、プリンター1とコンピューター60が接続された印刷システムが画像記録装置に相当する。
【0086】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0087】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ヘッドが移動方向に移動しながら画像を記録する動作と用紙を搬送する動作を繰り返すプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、用紙の幅長さに亘って延びた固定されたヘッドの下を用紙が通過する際に、ヘッドが用紙に向けてインクを吐出することによって、用紙に2次元の画像を印刷するプリンターでもよい。また、例えば、印刷領域に搬送された用紙(ロール紙やカット紙)に対して、ヘッドがX方向に移動しながら画像を記録する動作とヘッドがY方向に移動する動作を繰り返して、印刷領域の用紙部位に2次元の画像を印刷し、その後、用紙をX方向に搬送して新たな用紙部位を印刷領域に搬送するプリンターでもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21 固定ガイド、30 キャリッジユニット、
31 キャリッジ、40 ヘッドユニット、41 ヘッド、42 プラテン、
421 プラテンプレート、422 負圧室、423 吸引ファン、
424 吸引孔、425 孔、43 キャップ、50 検出器群、
51 画像読取センサー、60 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが記録された被記録媒体を支持する支持部と、
前記支持部に位置する前記被記録媒体に画像を記録する記録部と、
前記被記録媒体を搬送方向の下流側へ搬送する搬送部と、
前記パターンを読み取るセンサーと、
前記センサーからの読取結果に基づいて、前記支持部からの前記被記録媒体の浮き上がりを検出する制御部と、
を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置であって、
前記制御部は、前記センサーが読み取った前記パターンの大きさに基づいて、前記支持部からの前記被記録媒体の浮き上がりを検出する、
画像記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像記録装置であって、
前記制御部は、前記センサーが読み取った前記パターンの中心から前記パターンの端までの距離が閾値未満である場合、前記被記録媒体が前記支持部から浮き上がっていると判定する、
画像記録装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の画像記録装置であって、
前記制御部は、前記センサーが読み取った前記パターンの歪みに基づいて、前記支持部からの前記被記録媒体の浮き上がりを検出する、
画像記録装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の画像記録装置であって、
前記パターンは円である、
画像記録装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の画像記録装置であって、
前記制御部は、前記被記録媒体が前記支持部から浮き上がっている場合、前記搬送部に、前記被記録媒体を前記搬送方向の上流側へ搬送させた後に、再度、前記被記録媒体を前記搬送方向の前記下流側へ搬送させる、
画像記録装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の画像記録装置であって、
前記搬送方向と交差する方向における前記被記録媒体の一方側の端が、前記支持部の前記交差する方向における基準位置に合わされた状態で、前記被記録媒体は搬送され、
前記センサーは、前記被記録媒体が通過する領域のうち、前記記録部よりも前記搬送方向の上流側の位置であり、前記交差する方向における前記一方側の位置に、配置されている、
画像記録装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の画像記録装置であって、
前記記録部は、インクを吐出する複数のノズルが前記搬送方向に並んだノズル列を備え、
前記ノズル列が前記搬送方向と交差する方向に移動しながらインクを吐出する動作と、前記被記録媒体が前記搬送方向の前記下流側へ搬送される動作と、が繰り返され、
前記被記録媒体に記録された前記パターンの前記搬送方向の間隔が、前記ノズル列の前記搬送方向の長さ以下である、
画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−103837(P2013−103837A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250944(P2011−250944)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】