画像診断装置及び方法
【課題】異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることによる画像精度の悪化を抑止すること。
【解決手段】実施形態によれば、画像診断装置は、曝射されるX線により天板上の被検体を撮像する第1の撮像装置と、前記被検体の撮像位置を体軸方向に所定の間隔づつ移動させた各位置で撮像する第2の撮像装置と、位置推定部と、補正処理部とを備える。位置推定部は、前記第1の撮像装置における前記天板の撓み情報から前記第2の撮像装置における撮像位置ごとの天板の位置を推定する。補正処理部は、前記位置推定部によって推定された天板の位置の情報を、各撮像装置で得られる画像の位置補正に用いる。
【解決手段】実施形態によれば、画像診断装置は、曝射されるX線により天板上の被検体を撮像する第1の撮像装置と、前記被検体の撮像位置を体軸方向に所定の間隔づつ移動させた各位置で撮像する第2の撮像装置と、位置推定部と、補正処理部とを備える。位置推定部は、前記第1の撮像装置における前記天板の撓み情報から前記第2の撮像装置における撮像位置ごとの天板の位置を推定する。補正処理部は、前記位置推定部によって推定された天板の位置の情報を、各撮像装置で得られる画像の位置補正に用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、画像診断装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野では、診断対象の被検体内を画像化する医用画像診断装置が一般的に用いられている。例えば、医用画像診断装置として、シングルフォトンエミッションCT装置(SPECT装置、SPECT: Single Photon Emission Computed Tomography)や、ポジトロンエミッションCT装置(PET装置、PET:Positron Emission Computed Tomography)などの核医学イメージング装置、X線CT(CT;Computed Tomography)装置、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置などが用いられている。
【0003】
また、近年、複数の医用画像診断装置を一体化させた装置が実用化されている。例を挙げると、被検体の生体組織における機能診断を行なうことができる核医学イメージング装置と、被検体の生体組織における形態情報を画像化するX線CT(CT;Computed Tomography)装置とが一体化された装置(例えば、PET―CT装置やSPECT―CT装置など)が実用化されている。
【0004】
例えば、PET―CT装置では、PET画像とX線CT画像とを重ね合わせたフュージョン(fusion)画像を生成して、身体のどの部分でどのような疾病(例えば、腫瘍など)が起こっているかの検査が行われている。また、X線CT画像を用いた放射線治療計画においては、X線CT画像に加えてPET画像を用いることにより、放射線治療計画の精度が向上することが知られている。
【0005】
ところで、上述したような複数の医用画像診断装置を一体化させた装置においては、各医用画像診断装置で画像を撮像する際に異なる撮像方式が用いられる場合がある。例えば、PET―CT装置においては、被検体を載せた天板を体軸方向に段階的に移動させて、部分ごとに撮像するステップアンドシュート(step and shoot)方式によってPET画像が撮像され、被検体を載せた天板を体軸方向に移動させながら撮像するヘリカルスキャン(helical scan)方式によってX線CT画像が撮像される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−99396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術においては、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることにより、画像の精度が悪化する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態の画像診断装置は、曝射されるX線により天板上の被検体を撮像する第1の撮像装置と、前記被検体の撮像位置を体軸方向に所定の間隔づつ移動させた各位置で撮像する第2の撮像装置と、推定部と、位置補正部とを備える。推定部は、前記第1の撮像装置における前記天板の撓み情報から前記第2の撮像装置における撮像位置ごとの天板の位置を推定する。位置補正部は、前記推定部によって推定された天板の位置の情報を、各撮像装置で得られる画像の位置補正に用いる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るPET−CT装置の全体構成を説明するための図である。
【図2A】図2Aは、PET用架台装置の構成を説明するための図である。
【図2B】図2Bは、PET検出器の構成を説明するための図である。
【図3】図3は、CT用架台装置の構成を説明するための図である。
【図4】図4は、寝台装置を説明するための図である。
【図5】図5は、コンソール装置の構成を説明するための図である。
【図6】図6は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板だれを説明するための図である。
【図7】図7は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板の位置を説明するための図である。
【図8】図8は、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像における天板の位置を説明するための図である。
【図9】図9は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像とヘリカルスキャン方式によって撮像された画像との間の位置のずれを説明するための図である。
【図10】図10は、第1の実施形態に係る補正部の構成を説明するための図である。
【図11】図11は、第1の実施形態に係る位置算出部による処理の一例を模式的に示す図である。
【図12】図12は、位置修正部による処理の一例を模式的に示す図である。
【図13】図13は、位置推定部による処理の一例を模式的に示す図である。
【図14】図14は、補正処理部によるPET画像に対するX線CT画像の位置合わせの一例を模式的に示す図である。
【図15】図15は、補正処理部によるX線CT画像に対するPET画像の位置合わせの一例を模式的に示す図である。
【図16】図16は、第1の実施形態に係るPET−CT装置による画像処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】図17は、第1の実施形態に係るPET−CT装置によるX線CT画像の補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図18A】図18Aは、天板に120kgの加重を施した場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図18B】図18Bは、天板に200kgの加重を施した場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図19】図19は、装置間のずれを説明するための図である。
【図20】図20は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像と、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像との間のX軸方向における位置のずれを説明するための図である。
【図21】図21は、第2の実施形態に係る位置算出部による処理の一例を模式的に示す図である。
【図22A】図22Aは、CT用架台装置2に天板31を挿入した場合の上面図である。
【図22B】図22Bは、ベッドごとに撮像した画像のコロナル面を示す図である。
【図23A】図23Aは、第2の実施形態に係る補正処理部46dによる位置合わせの第1の例を模式的に示す図である。
【図23B】図23Bは、第2の実施形態に係る補正処理部46dによる位置合わせの第2の例を模式的に示す図である。
【図24】図24は、第2の実施形態に係るPET−CT装置によるX軸方向の補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図25】図25は、第3の実施形態に係る位置推定部46cによる処理の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態においては、撮像方式が異なる医用画像診断装置を一体化させた装置として、PET−CT装置を用いる場合を例に挙げて説明する。まず、第1の実施形態に係るPET−CT装置の全体構成について、図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係るPET−CT装置の全体構成を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、PET用架台装置1と、CT用架台装置2と、寝台装置3と、コンソール装置4とを有する。
【0011】
PET用架台装置1は、被検体Pに投与された陽電子放出核種を取り込んだ生体組織から放出される一対のガンマ線を検出することで、PET画像を再構成するためのガンマ線の投影データ(ガンマ線投影データ)を生成する装置である。図2Aは、PET用架台装置の構成を説明するための図である。
【0012】
PET用架台装置1は、図2Aに示すように、PET検出器11や、同時計数回路12などを有する。PET検出器11は、被検体Pから放出されるガンマ線を検出するフォトンカウンティング(photon counting)方式の検出器である。具体的には、PET検出器11は、複数のPET検出器モジュール111が、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように配置されることで構成される。
【0013】
図2Bは、PET検出器の構成を説明するための図である。例えば、PET検出器モジュール111は、図2Bに示すように、シンチレータ111aと、光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)111cとを有するアンガー型の検出器である。
【0014】
シンチレータ111aは、被検体Pから放出されて入射したガンマ線を可視光に変換するNaIやBGOなどが、図2Bに示すように、2次元に複数個配列されている。また、光電子増倍管111cは、シンチレータ111aから出力された可視光を増倍して電気信号に変換する装置であり、図2Bに示すように、稠密に複数個配置されている。
【0015】
なお、光電子増倍管111cは、シンチレーション光を受光し光電子を発生させる光電陰極、発生した光電子を加速する電場を与える多段のダイノード、及び電子の流れ出し口である陽極から成っている。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向って加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を叩き出す。この現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることにより、なだれ的に電子数が増倍され、陽極での電子数は、約100万にまで達する。かかる例では、光電子増倍管111cの利得率は、100万倍となる。また、なだれ現象を利用した増幅のためにダイノードと陽極との間には、通常1000ボルト以上の電圧が印加される。
【0016】
このように、PET検出器モジュール111は、ガンマ線をシンチレータ111aにより可視光に変換し、変換した可視光を光電子増倍管111cにより電気信号に変換することで、被検体Pから放出されたガンマ線の数を計数する。
【0017】
そして、図2Aに示す同時計数回路12は、複数のPET検出器モジュール111それぞれが有する複数の光電子増倍管111cそれぞれと接続される。そして、同時計数回路12は、PET検出器モジュール111の出力結果から、陽電子から放出された一対のガンマ線の入射方向を決定するための同時計数情報を生成する。具体的には、同時計数回路12は、シンチレータ111aから出力された可視光を同じタイミングで電気信号に変換出力した光電子増倍管111cの位置及び電気信号の強度から重心位置を演算することで、ガンマ線の入射位置(シンチレータ111aの位置)を決定する。また、同時計数回路12は、各光電子増倍管111cが出力した電気信号の強度を演算処理(積分処理及び微分処理)することで、入射したガンマ線のエネルギー値を演算する。
【0018】
そして、同時計数回路12は、PET検出器11の出力結果の中から、ガンマ線の入射タイミング(時間)が一定時間の時間ウィンドウ幅以内にあり、エネルギー値がともに一定のエネルギーウィンドウ幅にある組み合わせを検索(Coincidence Finding)する。例えば、2nsecの時間ウィンドウ幅と、350keV〜550keVのエネルギーウィンドウ幅とが、検索条件として設定される。そして、同時計数回路12は、検索した組み合わせの出力結果を、2つの消滅フォトンを同時計数した情報であるとして同時計数情報(Coincidence List)を生成する。そして、同時計数回路12は、同時計数情報をPET画像再構成用のガンマ線投影データとして図1に示すコンソール装置4に送信する。なお、2つの消滅フォトンを同時計数した2つの検出位置を結ぶ線は、LOR(Line of Response)と呼ばれる。また、同時計数情報は、コンソール装置4にて生成される場合であってもよい。
【0019】
図1に戻って、CT用架台装置2は、被検体Pを透過したX線を検出することで、X線CT画像を再構成するためのX線投影データや、スキャノグラムを生成するためのX線の投影データ(X線投影データ)を生成する装置である。図3は、CT用架台装置の構成を説明するための図である。
【0020】
CT用架台装置2は、図3に示すように、X線管21や、X線検出器22、データ収集部23などを有する。X線管21は、X線ビームを発生し、発生したX線ビームを被検体Pに照射する装置である。X線検出器22は、X線管21に対向する位置にて、被検体Pを透過したX線を検出する装置である。具体的には、X線検出器22は、被検体Pを透過したX線の2次元強度分布のデータ(2次元X線強度分布データ)を検出する2次元アレイ型検出器である。より具体的には、X線検出器22は、複数チャンネル分のX線検出素子を配してなる検出素子列が被検体Pの体軸方向に沿って複数列配列されている。なお、X線管及びX線検出器は、CT用架台装置2の内部にて、図示しない回転フレームにより支持されている。
【0021】
データ収集部23は、DAS(Data Acquisition System)であり、X線検出器22により検出された2次元X線強度分布データに対して、増幅処理やA/D変換処理などを行なって、X線投影データを生成する。そして、データ収集部23は、X線投影データを図1に示すコンソール装置4に送信する。
【0022】
図1に戻って、寝台装置3は、被検体Pを載せるベッドであり、天板31と、寝台32とを有する。寝台装置3は、コンソール装置4を介して受け付けたPET−CT装置の操作者からの指示に基づいて、CT用架台装置2及びPET用架台装置1それぞれの撮像口に順次移動される。すなわち、PET−CT装置は、寝台装置3を移動させることで、最初に、X線CT画像の撮像を行ない、その後、PET画像の撮像を行なう。図4は、寝台装置3を説明するための図である。
【0023】
寝台装置3は、図示しない駆動機構によって天板31と寝台32とを被検体の体軸方向に移動させる。例えば、PET−CT装置は、CT用架台装置2の回転フレームを回転させながら、図4の上側の図に示すように天板31をCT用架台装置2の方向に水平移動させて、被検体Pの撮像部位をX線により螺旋状に連続的にスキャンするヘリカルスキャン方式によりX線CT画像を撮像する。
【0024】
また、PET−CT装置は、X線CT画像の撮像を行った後、図4の下側の図に示すように、天板31が寝台32から繰り出されたままの状態で、寝台32を水平移動させて、被検体Pの撮像部位をPET用架台装置1の撮像口内に挿入させる。ここで、寝台32は、図4の下側の図に示すように、PET用架台装置1及びCT用架台装置2それぞれの検出器の中心位置間の距離「a」と同一距離を移動する。すなわち、寝台32が距離「a」を移動することで、X線CT画像の撮像時とPET画像の撮像時とで、被検体Pの体軸方向の同一部位を撮像する際の天板31の寝台32からの繰り出し量を同一にしている。
【0025】
そして、PET−CT装置は、天板31をX線CT画像の撮像時とは逆の方向に水平移動させることで、PET画像を撮像する。かかる場合には、PET−CT装置は、被検体の一部分を撮像した後に、撮像を停止した状態で所定の移動量だけ水平移動して、さらに他の部分を撮像し、かかる移動と撮像とを繰り返すステップアンドシュート方式により被検体の広い範囲を撮像する。
【0026】
図1に戻って、コンソール装置4は、操作者からの指示を受け付けてPET−CT装置における撮像処理を制御する装置である。図5は、コンソール装置の構成を説明するための図である。
【0027】
図5に示すように、コンソール装置4は、X線投影データ記憶部41と、CT画像再構成部42と、減弱マップ生成部43と、ガンマ線投影データ記憶部44と、PET画像再構成部45とを有する。さらに、コンソール装置4は、図5に示すように、制御部48と、補正データ47とを有する。
【0028】
X線投影データ記憶部41は、データ収集部23から送信されたX線投影データを記憶する。具体的には、X線投影データ記憶部41は、X線CT画像を再構成するためのX線投影データを記憶する。CT画像再構成部42は、X線投影データ記憶部41が記憶する再構成用のX線投影データを、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法により逆投影処理することで、X線CT画像を再構成する。
【0029】
例を挙げれば、CT画像再構成部42は、PET−CT装置を用いた全身検査において、撮像計画により決定された撮像条件(例えば、スライス幅など)に基づいて、X線投影データから、被検体Pの体軸方向に直交する複数の断面を撮像した複数のX線CT画像を再構成する。
【0030】
減弱マップ生成部43は、CT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像を用いて、被検体Pの体内で生じるガンマ線の減弱を補正するための減弱マップを生成する。ガンマ線投影データ記憶部44は、同時計数回路12から送信されたガンマ線投影データを記憶する。PET画像再構成部45は、ガンマ線投影データ記憶部44が記憶するガンマ線投影データから、例えば、逐次近似法によりPET画像を再構成する。
【0031】
補正部46は、減弱マップ生成部43によって生成された減弱マップを用いたPET画像の減弱補正や、CT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像とPET画像再構成部45によって再構成されたPET画像とを融合する際の補正などを行う。補正データ47は、補正部46の処理結果を記憶する。なお、補正部46の処理内容及び補正データ47については、後に詳述する。
【0032】
制御部48は、PET−CT装置全体の処理を制御する。具体的には、制御部48は、PET用架台装置1、CT用架台装置2、天板31及び寝台32を制御することで、PET−CT装置による撮像を制御する。また、制御部48は、ガンマ線投影データ記憶部44が記憶するデータを用いたPET画像再構成部45の処理を制御する。また、制御部48は、X線投影データ記憶部41が記憶するデータを用いたCT画像再構成部42及び減弱マップ生成部43の処理を制御する。また、制御部48は、補正部46の処理を制御する。なお、制御部48は、図示しない入出力装置から操作者の指示を受け付ける。また、制御部48は、図示しない入出力装置にて、操作者が指示を入力するためのGUI(Graphical User Interface)や、X線CT画像およびPET画像を表示するように制御する。
【0033】
以上、第1の実施形態に係るPET−CT装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像と、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像との位置合わせに関する補正処理を実行する。
【0034】
具体的には、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、被検体Pの加重による天板31の沈み込みに起因するPET画像及びX線CT画像における画像間の位置のずれを補正する補正処理を実行する。なお、以下では、天板31が沈み込んだ状態を天板だれと記載する場合がある。
【0035】
ここで、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像と、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像との天板だれに起因する画像間の位置のずれについて説明する。以下では、まず、各撮像方式によって撮像された画像それぞれに対する天板だれの影響を説明した後、画像間の位置のずれについて説明する。
【0036】
図6は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板だれを説明するための図である。図6においては、寝台32がPET用架台装置1側に移動した後、繰り出されていた天板31をステップアンドシュート方式によって寝台32に戻しながらPET画像を撮像した場合の天板だれについて示している。図6のスキャン領域は、PET用架台装置1のスキャン領域を示している。また、図6に示すベッド1、ベッド2及びベッド3は、ステップアンドシュート方式によるPET画像の撮像位置を示している。すなわち、図6においては、ベッド1〜ベッド3の撮像位置それぞれで複数の断層画像を撮像するスキャンを実行する。なお、図6には被検体が示されていないが、実際には、天板31上には被検体が載せられた場合の天板だれを示している。
【0037】
図6に示すように、天板だれの程度は、寝台32からの天板31の繰り出し量によって異なる。すなわち、図6の上段の図に示すように、ベッド1をスキャンする場合には、被検体による加重が天板31に与える影響が大きく、スキャン領域における天板だれの程度も大きくなる。しかしながら、図6の中段の図及び下段の図に示すように、寝台32からの天板31の繰り出し量が減少するごとに、被検体による加重の天板31に与える影響が低減して、スキャン領域における天板だれの程度も小さくなる。
【0038】
図7は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板の位置を説明するための図である。図7においては、ベッドごとに撮像した画像のサジタル(sagittal;矢状)面を示している。すなわち、図7においては、被検体の体軸方向の断面を示している。ステップアンドシュート方式で画像を撮像した場合には、ベッドごとに天板だれの程度が異なることから、天板31の位置は、図7に示すように、ベッド間で段差が生じた状態となる。
【0039】
図8は、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像における天板の位置を説明するための図である。図8においては、天板31をヘリカルスキャン方式によって連続的に繰り出しながらCT画像を撮像した場合の天板の位置を示している。また、図8においては、ヘリカルスキャン方式によって撮像された複数の断面画像を用いて生成されたサジタル面の画像を示している。また、図8に示す矢印は、天板31の移動方向を示している。また、図8に示す複数の矩形は、断面画像のスライス幅を示している。また、図8に示す直線L1は、各断面画像における天板31の中心を通る直線を示している。
【0040】
ヘリカルスキャン方式で画像を撮像した場合には、天板31の繰り出し量の増加に比例して天板だれの程度が大きくなることから、各断面画像における天板31の位置は、図8の直線L1に示すように、天板31の繰り出し量の増加に伴い徐々に低くなる。ここで、ヘリカルスキャン方式によって撮像されたCT画像をサジタル面で見た場合のスライス幅は、実際には、図8に示すような厚みはなく、非常に薄い。そこで、図8に示す各断面画像の幅を限りなく薄くした場合(スライス幅を0に近づけた場合)には、断面画像はX線検出器22の中心に収束することとなる。従って、各断面画像に描出される天板31の中心を通る直線L1が、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像における天板の位置となる。
【0041】
図9は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像とヘリカルスキャン方式によって撮像された画像との間の位置のずれを説明するための図である。ここで、図9においては、図7に示すステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板の位置(直線L2)と、図8に示すヘリカルスキャン方式によって撮像された画像における天板の位置(直線L1)とを示している。
【0042】
図9の直線L1及び直線L2に示すように、各撮像方式によって撮像された画像それぞれの天板は、傾きが異なることで、位置がずれることとなる。すなわち、天板だれが生じることによって、各撮像方式によって撮像された画像間に位置のずれが生じる。このような位置のずれは、PET−CT装置などによって生成される画像の精度を悪化させる。
【0043】
例えば、PET−CT装置では、PET画像の減衰補正や散乱補正にCT画像を用いる。ここで、PET画像とCT画像との間に位置のずれが生じていると、正確な補正が行うことができない。また、PET−CT装置によって生成されるフュージョン画像に位置のずれが発生することとなり、読影者によるフュージョン画像の読影を困難なものにする。
【0044】
そこで、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、以下、詳細に説明する補正部46による補正処理を行なうことで、天板だれが生じた場合でも、画像の精度が悪化することを抑止することを可能にする。図10は、第1の実施形態に係る補正部46の構成を説明するための図である。図10に示すように、補正部46は、位置算出部46aと、位置修正部46bと、位置推定部46cと、補正処理部46dとを有している。そして、補正部46は、処理結果を補正データ47に格納する。
【0045】
位置算出部46aは、ヘリカルスキャン方式によって撮像された複数の画像において、各画像に描出された体軸方向に直線的であり、天板の沈み込みと同一の挙動を示す構造物の位置を算出する。具体的には、位置算出部46aは、X線CT装置によって断層撮像された被検体の複数のX線CT画像に描出された天板をそれぞれ検出し、各X線CT画像における検出した天板の位置を算出する。
【0046】
図11は、第1の実施形態に係る位置算出部46aによる処理の一例を模式的に示す図である。図11においては、ヘリカルスキャン方式によって撮像され、CT画像再構成部42によってX線投影データから再構成された断面画像を示している。例えば、位置算出部46aは、図11に示すように、まず、断面画像に描出された天板31を検出して、検出した天板31を含む領域を切り出す。そして、位置算出部46aは、切り出した領域に含まれる天板31の表面31aのY軸方向の座標を算出する。
【0047】
一例を挙げると、位置算出部46aは、断面画像のY軸方向のピクセル(pixel)に番号を付与しておき、天板31の表面31aが描出されたピクセルの番号をY軸方向の座標として算出する。そして、位置算出部46aは、CT画像再構成部42によってX線投影データから再構成されたすべての断面画像に対して、天板の検出処理及び天板位置の算出処理を実行する。なお、位置算出部46aは、画像のプロファイルを用いた方法や、天板形状のテンプレートを用いたパターンマッチング法などにより画像中の天板を検出する。
【0048】
図10に戻って、位置修正部46bは、各断面画像において、位置算出部46aによって算出された天板の位置が誤っているか否かを判定し、誤っていると判定した場合に、天板の位置を修正する。具体的には、位置修正部46bは、位置算出部46aによって算出された天板の位置を示す値が推定される値から所定の閾値を超えた値である場合に、当該天板の位置を示す値が誤っていると判定する。
【0049】
図12は、位置修正部46bによる処理の一例を模式的に示す図である。ここで、図12における縦軸は、ピクセル番号で算出した天板の位置を示している。また、図12における横軸は、1つのX線CT画像が撮像される部分であるスライスを示している。すなわち、図12においては、位置算出部46aによってスライスごとに算出された天板の位置を示している。
【0050】
例えば、位置修正部46bは、位置算出部46aによって図12の上側の図に示す天板の位置が算出されると、スライスごとの天板の位置の値に基づいて、天板の位置としてとりうる値を推定する。例を挙げると、位置修正部46bは、スライスごとの天板の位置の値に基づく多項式を用いた近似(例えば、最小二乗法など)により、天板の位置としてとりうる値を推定する。そして、位置修正部46bは、推定した値と、位置算出部46aによって算出された値とを比較し、2つの値の差が所定の閾値を超えていた場合に、当該位置算出部46aによって算出された値が誤っていると判定する。
【0051】
例えば、所定の閾値が「1ピクセル」であった場合には、位置修正部46bは、図12の上側の図に示す「r」の値が「1ピクセル」を超えていることから、位置「P1」の値が誤っていると判定する。なお、図12の上側の図に示す「r」は、位置修正部46bによって算出された近似曲線(図示せず)上の値と、位置「P1」の値との差を示している。そして、位置修正部46bは、図12の下側の図に示すように、位置「P1」の値を図示しない近似曲線上の値に修正する。同様に、位置修正部46bは、図12の下側の図に示すように、図12の上側の図の位置「P2」及び「P3」の値を図示しない近似曲線上の値に修正する。
【0052】
なお、上記した例では、近似曲線上の値と位置算出部46aによって算出された値との差が所定の閾値を超えたもののみを修正する場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、位置算出部46aによって算出されたすべての値を近似曲線上の値に置き換える修正をする場合であってもよい。
【0053】
図10に戻って、位置推定部46cは、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像の天板の位置に基づいて、ステップアンドシュート方式で撮像された画像における天板の位置を推定する。具体的には、位置推定部46cは、まず、位置修正部46bによって修正された各X線CT画像における天板の位置の値を用いて、ベッドごとにX線CT画像における天板の傾きを算出する。そして、位置推定部46cは、算出したX線CT画像における天板の傾きに基づいて、ステップアンドシュート方式で撮像されたPET画像における天板の傾きを算出する。そして、位置推定部46cは、算出した天板の傾きに基づいて天板の位置を推定する。以下では、X線CT画像における天板の傾きをマイナススケーリングする方法を用いて天板の位置を推定する場合について説明する。
【0054】
例えば、位置推定部46cは、以下に示す式(1)により、PET画像における天板の傾きを算出する。なお、式(1)における「gradPET(z)」は、zを変数としたPET画像における天板の傾きを示している。また、式(1)における「gradCT」は、X線CT画像における天板の傾きを示している。また、式(1)における「gradinit」は、荷重なしの時の天板初期の傾き(以下、荷重なしの時の天板初期傾きを、基準線の傾きと記す)を示している。また、式(1)における「A(z)」は、zを変数とする関数を示している。
【0055】
【数1】
【0056】
式(1)に示すように、位置推定部46cは、X線CT画像における天板の傾きに変数を乗算し、タンジェント(基準線の傾き)の2倍の値を加算することで、PET画像における天板の傾きを算出する。例えば、位置推定部46cは、zの値として、天板の繰り出し量及び天板だれに関する変数を用いる。或いは、位置推定部46cは、以下に示す式(2)により、PET画像における天板の傾きを算出してもよい。なお、式(2)における「A」は、任意の定数を示している。
【0057】
【数2】
【0058】
すなわち、位置推定部46cは、式(2)に示すように、X線CT画像における天板の傾きに任意の定数を乗算することで、PET画像における天板の傾きを算出する。例えば、位置推定部46cは、以下に示す式(3)によりPET画像における天板の傾きを算出する。
【0059】
【数3】
【0060】
例えば、位置推定部46cは、式(3)に示すように、X線CT画像における天板の傾きに「−1」を乗算することで、PET画像における天板の傾きを算出する。なお、X線CT画像における天板の傾きに乗算する変数或いは定数は、PET−CT装置の設計者や操作者によって任意に決定される。かかる場合には、例えば、CT用架台装置2でヘリカルスキャン方式及びステップアンドシュート方式それぞれの画像を撮像し、撮像した画像に描出された天板の位置から、変数或いは定数を予め決定することが可能である。
【0061】
図13は、位置推定部46cによる処理の一例を模式的に示す図である。例えば、位置推定部46cは、図13に示すように、ベッドごとにX線CT画像における天板の傾きとして直線L1の傾きを算出する。そして、位置推定部46cは、算出した直線L1の傾きと、上述した式(1)〜(3)のいずれか1つを用いてPET画像における天板の傾きを算出する。その後、位置推定部46cは、図13に示すように、ベッドの中心のスライスにおいて直線L1と交差し、かつ、算出した傾きを有する直線L2をPET画像における天板の位置として推定する。
【0062】
ここで、位置推定部46cによって推定されるPET画像における天板の位置は、上述した式を用いることにより、基準線が考慮された天板の位置となる。基準線は、上述したように、荷重なしの時の天板初期の傾きを示す線である。天板は、荷重なしのときに水平にスライドすることが理想的であるが、実際には、被検体が乗ったときに水平となるように、荷重なしの時は少し競りあがるように設計されている。そこで、本実施形態では、この競りあがりを考慮するために、基準線を用いて天板の位置を推定する。
【0063】
例えば、位置推定部46cは、図13に示すように、X線CT画像の天板の位置を示す直線L1を基準線である直線L10に対して折り返した直線L2を、PET画像の天板の位置を示す直線として推定する。なお、図13の点線L20は、水平面を示す。また、図13のθ1は、直線L1と基準線である直線L10との角度を示す。また、図13のθ2は、直線L2と基準線である直線L10との角度を示す。また、図13のθ3は、直線L1と水平面である点線L4との角度を示す。
【0064】
すなわち、位置推定部46cは、図13の「θ2」の値を「θ1」及び「θ3」の値から算出し、基準線L10から算出した「θ2」の値だけ傾けた直線L2を、PET画像における天板の位置として推定する。
【0065】
上述したように、本実施形態に係るPET−CT装置においては、寝台32がPET用架台装置1及びCT用架台装置2それぞれの検出器の中心位置間の距離と同一距離を移動する。すなわち、各検出器の中心においては、天板だれの程度が同一であり、Y軸方向の天板の位置も同一となる。従って、位置推定部46cは、ベッドの中心のスライスにおいて直線L1と交差し、かつ、算出した傾きを有する直線L2をPET画像における天板の位置として推定することが可能である。
【0066】
図10に戻って、補正処理部46dは、位置推定部46cによって推定された複数のPET画像における天板の位置に基づいて、X線CT画像とPET画像との位置のずれを補正するための補正量を算出する。そして、補正処理部46dは、算出した補正量を用いてX線CT画像とPET画像との位置のずれを補正する。
【0067】
具体的には、補正処理部46dは、位置推定部46cによって推定された複数のPET画像における天板の位置と位置修正部46bによって修正された後の複数のX線CT画像における天板の位置とに基づいて、被検体の略同一位置のスライスごとのY軸方向の移動量を算出する。そして、補正処理部46dは、PET画像に対するX線CT画像の位置の補正及びX線CT画像に対するPET画像の位置の補正を実行する。
【0068】
以下では、第1の実施形態に係るPET−CT装置によるX線CT画像とPET画像との融合画像の生成について説明する。まず、第1の実施形態に係るPET−CT装置においては、被検体Pに対するCT検査及びPET検査が行われると、CT画像再構成部42が、X線投影データ記憶部41に記憶されたX線投影データを用いて、X線CT画像を再構成する。ここで、CT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像は、補正データ47に格納される。
【0069】
CT画像再構成部42によって再構成された複数のX線CT画像に対して、位置算出部46aが天板の位置を算出する。そして、位置修正部46bが、位置算出部46aによって算出された複数のX線CT画像おける天板の位置を修正する。その後、位置推定部46cが、位置修正部46bによって修正された後の複数のX線CT画像における天板の位置から複数のPET画像における天板の位置を推定する。ここで、位置修正部46bによって修正された後の複数のX線CT画像における天板の位置と、位置推定部46cによって推定された複数のPET画像における天板の位置とは、補正データ47によって記憶される。
【0070】
補正処理部46dは、補正データ47によって記憶された複数のX線CT画像における天板の位置と複数のPET画像における天板の位置とを読み出し、被検体の略同一位置のスライスごとのY軸方向の移動量を算出する。そして、補正処理部46dは、CT画像再構成部42によって再構成された複数のX線CT画像をPET画像に位置合わせする補正を実行する。ここで、補正処理部46dによって算出された被検体の略同一位置のスライスごとのY軸方向の移動量は補正データ47によって記憶される。
【0071】
図14は、補正処理部46dによるPET画像に対するX線CT画像の位置合わせの一例を模式的に示す図である。例えば、補正処理部46dは、図14に示すように、位置修正部46bによって修正された後のX線CT画像における天板位置L1と位置推定部46cによって推定されたPET画像における天板位置L2とに基づいて、ベッド1〜3それぞれにおけるスライスごとの移動量を算出する。
【0072】
そして、補正処理部46dは、X線CT画像の天板位置L1をPET画像の天板位置L2と一致させるように、スライスごとにX線CT画像をスライドさせて、PET画像との位置合わせを実行する。そして、補正処理部46dは、位置合わせが行われたX線CT画像を補正データ47に格納する。
【0073】
減弱マップ生成部43は、補正データ47によって記憶された位置合わせ後のX線CT画像を読み出し、読み出したX線CT画像を用いて減弱マップを生成する。ここで、減弱マップ生成部43によって生成された減弱マップは、補正データ47に格納される。
【0074】
PET画像再構成部45は、ガンマ線投影データ記憶部44によって記憶されたガンマ線投影データと補正データ47によって記憶された減弱マップとを用いて、PET画像を再構成する。すなわち、PET画像再構成部45は、画像間の位置のずれを補正した減弱マップを用いてPET画像を再構成することとなる。ここで、PET画像再構成部45によって再構成されたPET画像は、補正データ47に格納される。
【0075】
PET画像再構成部45によってPET画像が再構成されると、補正処理部46dは、補正データ47によって記憶されたPET画像を読み出し、読み出したPET画像をCT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像に位置合わせする補正を実行する。
【0076】
具体的には、補正処理部46dは、補正データ47によって記憶されたX線CT画像、PET画像及び被検体の略同一位置のスライスごとのY軸方向の移動量を読み出し、PET画像をX線CT画像に位置合わせする補正を実行する。図15は、補正処理部46dによるX線CT画像に対するPET画像の位置合わせの一例を模式的に示す図である。
【0077】
例えば、補正処理部46dは、図15に示すように、スライスごとにPET画像を移動量分だけ移動させることで、PET画像の天板位置L2をX線CT画像の天板位置L1と一致させる位置合わせを実行する。そして、補正処理部46dは、位置合わせが行われたPET画像を補正データ47に格納する。
【0078】
制御部48は、図示しない入力部から入力されたPET−CT装置の操作者からの指示に基づいて、例えば、補正データ47によって記憶されたCT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像と、X線CT画像に対する位置合わせが実行されたPET画像とを読み出し、読み出したX線CT画像とPET画像とを融合した画像を図示しない表示部に表示させる。
【0079】
このように、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、X線CT画像における天板の位置からPET画像における天板の位置を推定し、天板位置の一方を他方に一致させるように画像補正を行うことで、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれた場合でも、画像の精度が悪化することを抑止することを可能にする。
【0080】
次に、図16を用いて、第1の実施形態に係るPET−CT装置の処理について説明する。図16は、第1の実施形態に係るPET−CT装置による画像処理の手順を示すフローチャートである。なお、図16においては、被検体に対してヘリカルスキャン方式によるX線CT検査とステップアンドシュート方式によるPET検査が実行された後の処理について示している。図16に示すように、第1の実施形態に係るPET−CT装置においては、CT画像再構成部42がX線投影データ記憶部41によって記憶されたX線投影データを用いてX線CT画像を再構成する(ステップS101)。
【0081】
そして、補正部46が、PET画像に対するX線CT画像のずれを補正する(ステップS102)。その後、減弱マップ生成部43が、補正されたX線CT画像を用いて減弱マップを生成する(ステップS103)。そして、PET画像再構成部45が、減弱マップ生成部43によって生成された減弱マップと、ガンマ線投影データ記憶部44によって記憶されたガンマ線投影データとを用いてPET画像を再構成する(ステップS104)。
【0082】
続いて、補正部46が、X線CT画像に対するPET画像のずれを補正する(ステップS105)。その後、制御部48が、補正後のPET画像とCT画像再構成部42によって生成されたX線CT画像とを融合させ、フュージョン画像を図示しない表示装置に表示させて(ステップS106)、処理を終了する。
【0083】
次に、図17を用いて、第1の実施形態に係るPET−CT装置によるX線CT画像の補正処理について説明する。図17は、第1の実施形態に係るPET−CT装置によるX線CT画像の補正処理の手順を示すフローチャートである。なお、図17に示す処理は、図16のステップS102に対応する。
【0084】
図17に示すように、第1の実施形態に係るPET−CT装置においては、位置算出部46aが、X線CT画像において天板が描出された領域を切り出し(ステップS201)、天板の位置を算出する(ステップS202)。
【0085】
続いて、位置修正部46bが、位置算出部46aによって算出されたX線CT画像における天板の位置の語算出を修正する(ステップS203)。そして、位置推定部46cが、X線CT画像の天板の位置に基づいて、PET画像における天板の位置を推定する(ステップS204)。その後、補正処理部46dが、X線CT画像における天板の位置と位置推定部46cによって推定されたPET画像における天板の位置とから、補正量を算出する(ステップS205)。補正処理部46dは、算出した補正量に基づいて、X線CT画像をPET画像の位置に補正して(ステップS206)、処理を終了する。
【0086】
上述したように、第1の実施形態によれば、位置算出部46aは、天板を体軸方向に連続的に移動させながら断層撮像された被検体のX線CT画像それぞれに描出された天板の位置を算出する。位置推定部46cは、被検体を体軸方向に所定の間隔で移動させて断層撮像された被検体のPET画像それぞれにおける算出部によって算出された天板の位置を推定する。補正処理部46dは、位置算出部46aによって算出された天板の位置と位置推定部46cによって推定された天板の位置とに基づいて、被検体の略同一位置を撮像したX線CT画像およびPET画像の位置合わせを行なう。従って、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることによる画像精度の悪化を抑止することを可能にする。
【0087】
図18A及び図18Bを用いて、シミュレーション結果を説明する。図18Aは、天板に120kgの加重を施した場合のシミュレーション結果を示す図である。図18Bは、天板に200kgの加重を施した場合のシミュレーション結果を示す図である。図18A及び図18Bにおいては、ヘリカルスキャン方式によって撮像した場合の天板の位置及びステップアンドシュート方式によって撮像した場合の天板の位置を、X線CT装置を用いて測定した測定結果と、開示の技術を用いてステップアンドシュート方式によって撮像した場合の天板の位置を推定した結果とを示している。なお、X線CT装置は、ヘリカルスキャン方式及びステップアンドシュート方式で画像を撮像することが可能である。
【0088】
また、図18A及び図18Bにおける縦軸は、ピクセルを示している。また、図18A及び図18Bにおける横軸は、スライスを示している。また、図18A及び図18Bにおける「ステップアンドシュート(推定値)」は、開示の技術を用いて推定した結果を意味している。また、図18A及び図18Bにおける「ステップアンドシュート(実測値)」は、X線CT装置を用いて測定した測定結果を意味している。
【0089】
図18A及び図18Bに示すように、120kgの加重及び200kgの加重のどちらの場合においても、ステップアンドシュート(推定値)を示すL5とステップアンドシュート(実測値)を示すL6とはほとんど重なっている。すなわち、開示の技術を用いることでステップアンドシュートにおける天板の位置を高精度で推定することができ、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることによる画像精度の悪化を抑止することを可能にする。
【0090】
また、第1の実施形態によれば、位置算出部46aは、天板のY軸方向の位置を算出する。従って、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、ヘリカルスキャン方式で撮像された画像とステップアンドシュート方式によって撮像された画像とにおいて、天板だれに起因する位置のずれを補正することができ、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることによる画像精度の悪化を抑止することを可能にする。
【0091】
また、第1の実施形態によれば、位置修正部46bは、位置算出部46aによって算出された複数のX線CT画像それぞれにおける天板の位置に基づいて、各X線CT画像における天板の位置を修正する。そして、位置推定部46cは、PET画像における位置修正部46bによって修正された天板の位置を推定する。従って、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、PET画像における天板の位置をより正確に推定することができる。
【0092】
また、第1の実施形態によれば、制御部48は、補正処理部46dによって位置合わせが実行されたPET画像を、X線CT画像と融合して表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、読影者に対して違和感のない画像を提供することができ、正確な読影を行わせることを可能にする。
【0093】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、天板だれによるY軸方向の位置のずれを補正する場合について説明した。第2の実施形態では、Y軸方向の位置のずれに加え、装置を据え置く際に発生する装置間のずれなどに起因するX軸方向の位置のずれを補正する場合について説明する。なお、以下で説明するX軸方向の補正は、上述したように、装置に据え置き時などに発生する装置間のずれなどに起因する。すなわち、X軸方向のずれは装置ごとにそれぞれ異なることから、X軸方向のずれは、すべての装置において実行される補正である。第2の実施形態においては、位置算出部46a及び補正処理部46dによる処理内容が、第1の実施形態と異なる。以下では、これらを中心に説明する。
【0094】
まず、装置間のずれについて説明する。図19は、装置間のずれを説明するための図である。なお、図19においては、天板31がPET用架台装置に挿入された場合の上面図を示している。例えば、装置間のずれとしては、図19に示すように、PET用架台装置1のスキャン領域に対して、天板31が垂直ではなく、斜めの角度で挿入されることが挙げられる。このような場合に、ステップアンドシュート方式で撮像された画像における天板の位置は、図20に示すようになる。
【0095】
図20は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像と、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像とのX軸方向における位置のずれを説明するための図である。図20においては、ベッドごとに撮像した画像のコロナル(coronal;冠状)面を示している。すなわち、図20においては、被検体の体軸方向の断面を示している。また、図20においては、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板の位置(直線L4)と、図8に示すヘリカルスキャン方式によって撮像された画像における天板の位置(直線L3)とを示している。
【0096】
天板31がPET用架台装置1のスキャン領域に斜めに挿入されることで、図20の直線L3及び直線L4に示すように、各撮像方式によって撮像された画像それぞれの天板は、挿入角度の違いから、位置がずれることとなる。
【0097】
そこで、第2の実施形態に係るPET−CT装置は、図20に示す画像間の位置のずれを補正する。具体的には、第2の実施形態に係るPET−CT装置は、設計者や操作者によって取得されたステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板の位置を予め記憶する。
【0098】
例えば、設計者や操作者は、第2の実施形態に係るPET−CT装置にX線CT画像をステップアンドシュート方式で撮像させ、撮像させたX線CT画像に描出された天板の位置を予め記憶させる。そして、第2の実施形態に係るPET−CT装置は、ヘリカルスキャン方式によるX線CT検査が行われるごとに、記憶していた天板の位置を読み出して、画像間におけるX軸方向の位置のずれを補正する。
【0099】
第2の実施形態に係る位置算出部46aは、X軸方向の天板の位置のずれを検出するために、天板の位置を算出する対象領域として、X線CT画像に描出される天板においてスライスごとにX軸方向の移動が検出できる領域を用いる。
【0100】
図21は、第2の実施形態に係る位置算出部46aによる処理の一例を模式的に示す図である。図21においては、CT画像再構成部42によってX線投影データから再構成された断面画像を示している。例えば、位置算出部46aは、図21に示すように、まず、断面画像に描出された天板31のへり31bを検出して、検出した天板31のへり31bを含む領域を切り出す。そして、位置算出部46aは、切り出した領域に含まれる天板31のへり31bのX軸方向の座標を算出する。
【0101】
位置算出部46aは、CT画像再構成部42によってX線投影データから再構成されたすべての断面画像に対して、天板のへりの検出処理及び天板のへりのX軸方向の位置の算出処理を実行する。すなわち、位置算出部46aは、ステップアンドシュート方式によって撮像された複数のX線CT画像及びヘリカルスキャン方式によって撮像された複数のX線CT画像に対して、X軸方向の位置の算出処理を実行する。そして、位置算出部46aは、算出したX軸方向の位置を補正データ47に格納する。なお、位置算出部46aは、画像のプロファイルを用いた方法や、天板のへりの形状のテンプレートを用いたパターンマッチング法などにより画像中の天板のへりを検出する。
【0102】
第2の実施形態に係る補正処理部46dは、位置算出部46aによって算出された天板の位置に基づいて、ヘリカルスキャン方式で撮像された画像と、ステップアンドシュート方式で撮像された画像との間のX軸方向の位置のずれを補正する。具体的には、補正処理部46dは、補正データ47によって記憶された各撮像方式ごとの天板のへりのX軸方向の位置を読み出し、読み出した位置に基づいてX軸方向の位置のずれを補正する。
【0103】
図22A及び図22Bを用いて、第2の実施形態に係る補正処理部46dによる処理の一例を説明する。図22Aは、CT用架台装置2に天板31を挿入した場合の上面図である。図22Bは、ベッドごとに撮像した画像のコロナル面を示す図である。
【0104】
例えば、補正処理部46dは、図22Aに示すように、補正データ47によって記憶されたステップアンドシュート方式で撮像された画像における天板のへりの位置を示す直線L4と計測位置(スライス面)との角度「α」をベッドごとに計測する。さらに、補正処理部46dは、図22Aに示すように、補正データ47によって記憶されたヘリカルスキャン方式で撮像された画像における天板のへりの位置を示す直線L3と計測位置(スライス面)との角度「β」をベッドごとに計測する。
【0105】
そして、補正処理部46dは、図22Bに示すように、ベッドごとに、計測した角度「α」と「β」との差である「θ」を算出する。すなわち、補正処理部46dは、X軸方向の位置のずれの程度を示す値として「θ」を算出する。そして、補正処理部46dは、以下に示す式(4)により、スライスごとのX軸方向の補正量を算出する。なお、式(4)における「X’(slice)」は、スライスごとのX軸方向の補正量を示している。また、式(4)における「Z’(slice)」は、ベッドの中心のスライスからのZ軸方向の距離を示している。
【0106】
【数4】
【0107】
すなわち、補正処理部46dは、式(4)に示すように、ベッドの中心からの距離に位置のずれの角度を乗算することで、スライスごとのX軸方向の補正量を算出する。そして、補正処理部46dは、算出したスライスごとの補正量に基づいて、X軸方向の位置のずれを補正する。図23Aは、第2の実施形態に係る補正処理部46dによる位置合わせの第1の例を模式的に示す図である。図23Bは、第2の実施形態に係る補正処理部46dによる位置合わせの第2の例を模式的に示す図である。図23A及び図23Bにおいては、ベッドごとに撮像した画像のコロナル面を示している。
【0108】
例えば、補正処理部46dは、図23Aに示すように、ベッド1〜3それぞれにおいてステップアンドシュート方式によって撮像されたPET画像をヘリカルスキャン方式で撮像されたX線CT画像に一致させるようにX軸方向の補正を実行する。また、補正処理部46dは、図23Bに示すように、ベッド1〜3それぞれにおいてヘリカルスキャン方式で撮像されたX線CT画像をステップアンドシュート方式によって撮像されたPET画像に一致させるようにX軸方向の補正を実行する。
【0109】
次に、図24を用いて、第2の実施形態に係るPET−CT装置によるX軸方向の補正処理について説明する。なお、図24に示す処理は、図16のステップS102に対応する。なお、第2の実施形態に係るPET−CT装置による画像処理の手順は、第1の実施形態に係るPET−CT装置による画像処理の手順と同様であるので、説明を省略する。
【0110】
図24は、第2の実施形態に係るPET−CT装置によるX軸方向の補正処理の手順を示すフローチャートである。なお、図24においては、ステップアンドシュート方式によって撮像されたX線CT画像を用いて天板の位置が算出され、その後、被検体に対してヘリカルスキャン方式によるX線CT検査とステップアンドシュート方式によるPET検査が実行された後の処理について示している。
【0111】
図24に示すように、第2の実施形態に係るPET−CT装置においては、位置算出部46aが、X線CT画像において天板のへりが描出された領域を切り出し(ステップS301)、天板の位置を算出する(ステップS302)。
【0112】
続いて、補正処理部46dが、補正データ47によって記憶されたステップアンドシュート方式で撮像された画像における天板の位置と、位置算出部46aによって算出されたX線CT画像における天板の位置とを用いて角度の差を算出する(ステップS303)。
【0113】
さらに、補正処理部46dは、算出した角度とベッドの中心のスライスからの距離とを用いて補正量を算出する(ステップS304)。その後、補正処理部46dは、算出した補正量に基づいて、X線CT画像をPET画像の位置に補正して(ステップS305)、処理を終了する。なお、PET画像をX線CT画像の位置に合わせる補正は、図16のステップS105において、Y軸方向の補正と同様に実行される。
【0114】
上述したように、第2の実施形態によれば、位置算出部46aは、天板のX軸方向の位置を算出する。従って、第2の実施形態に係るPET−CT装置は、ヘリカルスキャン方式で撮像された画像とステップアンドシュート方式によって撮像された画像とにおいて、装置据付時などに生じる装置間のずれに起因する位置のずれを補正することができ、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることによる画像精度の悪化を抑止することを可能にする。
【0115】
(第3の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0116】
(1)モダリティ
上述した第1及び第2の実施形態では、撮像方式が異なる医用画像診断装置を一体化させた装置としてPET−CT装置を用いる場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、SPECT―CT装置などの装置を用いる場合であってもよい。言い換えれば、ヘリカルスキャン方式で撮像するモダリティとステップアンドシュート方式で撮像するモダリティとを一体化させた装置であればどのような装置を用いる場合であってもよい。
【0117】
(2)補正量の算出
上述した第1及び第2の実施形態では、X線CT検査及びPET検査が実行されるごとに補正量を算出する場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、予め補正量を算出し、算出した補正量をPET−CT装置が記憶しておく場合であってもよい。かかる場合には、検査が実行されると、PET−CT装置は、記憶している補正量を用いて画像間の位置のずれの補正を実行する。
【0118】
(3)減弱マップの作成
上述した第1及び第2の実施形態では、X線CT画像に対して位置合わせを実行した後に減弱マップを生成する場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、X線CT画像から減弱マップを生成した後に、生成した減弱マップに対して位置合わせを実行してもよい。
【0119】
(4)位置合わせの対象物
上述した第1及び第2の実施形態では、X線CT画像に描出された天板の位置を用いて位置合わせを行う場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、治療計画時などに用いられるワイヤーの位置を用いて位置合わせを実行する場合であってもよい。
【0120】
(5)天板位置の算出
上述した第1及び第2の実施形態では、X線CT画像に描出された天板領域を切り出した後に天板の位置を算出する場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、再構成されたX線CT画像をそのまま用いる場合であってもよい。
【0121】
(6)撮像方式
上述した第1及び第2の実施形態では、ヘリカルスキャン方式によってX線CT画像が撮像される場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、ステップアンドシュート方式によってX線CT画像が撮像される場合であってもよい。ステップアンドシュート方式によってX線CT画像を撮像するX線CT装置としては、面検出器を備えたエリアディテクターCT装置がある。
【0122】
エリアディテクターCT装置は、例えば、0.5mmのスライス幅で320列を同時に検出することができる320列面検出器を備え、160mmの幅ごとにスキャンを実行する。図25は、第3の実施形態に係る位置推定部46cによる処理の一例を模式的に示す図である。図25においては、ステップアンドシュート方式によって撮像されたX線CT画像のサジタル面(上側の図)と、ステップアンドシュート方式によって撮像されたPET画像のサジタル面(下側の図)とを示す。また、図25におけるベッドa〜dは、ステップアンドシュート方式によるX線CT画像の撮像位置を示す。また、図25におけるベッド1〜3は、ステップアンドシュート方式によるPET画像の撮像位置を示す。
【0123】
PET装置の検出器の幅が、X線CT装置の面検出器の幅(例えば、160mm)よりも大きいため、ベッド1〜3の各幅は、図25に示すように、ベッドa〜dの各幅よりも大きくなる。そこで、第3の実施形態に係る位置推定部46cは、まず、PET画像のベッドに対応するX線CT装置のベッドを抽出する。例えば、図25に示すように、位置推定部46cは、PET画像のベッド2に対応するX線CT装置のベッドとしてベッドb及びベッドcを抽出する。
【0124】
そして、位置推定部46cは、抽出したX線CT装置のベッドにおけるPET画像のベッドの中心のスライスの位置を特定する。例えば、位置推定部46cは、図25に示すように、抽出したベッドb及びベッドcにおけるベッド2の中心のスライスの位置51を特定する。そして、位置推定部46cは、特定した位置から各ベッドの中心のスライスまでの距離の比を算出する。例えば、位置推定部46cは、図25に示すように、ベッドbの中心のスライスの位置52とベッドcの中心のスライスの位置53との距離を「1」とし、位置51から位置52までの距離と、位置51から位置53までの距離との比「x:(1−x)」を算出する。
【0125】
そして、位置推定部46cは、算出した距離の比と、抽出したX線CT装置の各ベッドにおける天板の傾きとを用いてPET画像における天板の傾きを算出する。例えば、位置推定部46cは、以下に示す式(5)によりPET画像における天板の傾きをベッドごとに算出する。なお、式(5)における「β1」は、ベッド2における天板の角度を示す。また、式(5)における「α1」は、ベッドbにおける天板L7の角度を示す。また、式(5)における「α2」は、ベッドcにおける天板L8の角度を示す。
【0126】
【数5】
【0127】
すなわち、位置推定部46cは、PET画像のベッドに対応するX線CT画像の各ベッドにおける天板の角度「α1」に距離の比「(1−x)」を乗算し、天板の角度「α2」に距離の比「x」を乗算する。そして、位置推定部46cは、乗算後の値を合算した値をPET画像における天板の角度(傾き)「β1」として算出する。
【0128】
そして、位置推定部46cは、算出した角度で中心のスライスを通る直線L9をベッド2における天板の位置として決定する。位置推定部46cは、PET画像におけるベッドごとに上述した処理を実行して、ベッドごとの天板の位置を推定する。なお、PET画像のベッドに対応するX線CT装置のベッドが3つ以上ある場合には、PET画像のベッドの中心のスライスの位置を含むベッド及び隣接するベッドの2つのベッドを抽出する。
【0129】
上述したように、第1〜3の実施形態に係る画像診断装置は、PET画像におけるベッド(撮像位置)ごとの天板の位置を、当該ベッドの中心及び近傍のX線CT画像における天板の位置から推定する。そして、第1〜3の実施形態に係る画像診断装置は、推定した天板の位置を用いてPET画像とX線CT画像との位置補正を行う。なお、上記した実施の形態は例示であり、発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0130】
以上説明したとおり、第1〜3の実施形態によれば、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることによる画像精度の悪化を抑止することが可能になる。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0132】
1 PET用架台装置
2 CT用架台装置
3 寝台装置
4 コンソール装置
31 天板
32 寝台
42 CT画像再構成部
43 減弱マップ生成部
45 PET画像再構成部
46 補正部
46a 位置算出部
46b 位置修正部
46c 位置推定部
46d 補正処理部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、画像診断装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野では、診断対象の被検体内を画像化する医用画像診断装置が一般的に用いられている。例えば、医用画像診断装置として、シングルフォトンエミッションCT装置(SPECT装置、SPECT: Single Photon Emission Computed Tomography)や、ポジトロンエミッションCT装置(PET装置、PET:Positron Emission Computed Tomography)などの核医学イメージング装置、X線CT(CT;Computed Tomography)装置、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置などが用いられている。
【0003】
また、近年、複数の医用画像診断装置を一体化させた装置が実用化されている。例を挙げると、被検体の生体組織における機能診断を行なうことができる核医学イメージング装置と、被検体の生体組織における形態情報を画像化するX線CT(CT;Computed Tomography)装置とが一体化された装置(例えば、PET―CT装置やSPECT―CT装置など)が実用化されている。
【0004】
例えば、PET―CT装置では、PET画像とX線CT画像とを重ね合わせたフュージョン(fusion)画像を生成して、身体のどの部分でどのような疾病(例えば、腫瘍など)が起こっているかの検査が行われている。また、X線CT画像を用いた放射線治療計画においては、X線CT画像に加えてPET画像を用いることにより、放射線治療計画の精度が向上することが知られている。
【0005】
ところで、上述したような複数の医用画像診断装置を一体化させた装置においては、各医用画像診断装置で画像を撮像する際に異なる撮像方式が用いられる場合がある。例えば、PET―CT装置においては、被検体を載せた天板を体軸方向に段階的に移動させて、部分ごとに撮像するステップアンドシュート(step and shoot)方式によってPET画像が撮像され、被検体を載せた天板を体軸方向に移動させながら撮像するヘリカルスキャン(helical scan)方式によってX線CT画像が撮像される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−99396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術においては、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることにより、画像の精度が悪化する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態の画像診断装置は、曝射されるX線により天板上の被検体を撮像する第1の撮像装置と、前記被検体の撮像位置を体軸方向に所定の間隔づつ移動させた各位置で撮像する第2の撮像装置と、推定部と、位置補正部とを備える。推定部は、前記第1の撮像装置における前記天板の撓み情報から前記第2の撮像装置における撮像位置ごとの天板の位置を推定する。位置補正部は、前記推定部によって推定された天板の位置の情報を、各撮像装置で得られる画像の位置補正に用いる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るPET−CT装置の全体構成を説明するための図である。
【図2A】図2Aは、PET用架台装置の構成を説明するための図である。
【図2B】図2Bは、PET検出器の構成を説明するための図である。
【図3】図3は、CT用架台装置の構成を説明するための図である。
【図4】図4は、寝台装置を説明するための図である。
【図5】図5は、コンソール装置の構成を説明するための図である。
【図6】図6は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板だれを説明するための図である。
【図7】図7は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板の位置を説明するための図である。
【図8】図8は、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像における天板の位置を説明するための図である。
【図9】図9は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像とヘリカルスキャン方式によって撮像された画像との間の位置のずれを説明するための図である。
【図10】図10は、第1の実施形態に係る補正部の構成を説明するための図である。
【図11】図11は、第1の実施形態に係る位置算出部による処理の一例を模式的に示す図である。
【図12】図12は、位置修正部による処理の一例を模式的に示す図である。
【図13】図13は、位置推定部による処理の一例を模式的に示す図である。
【図14】図14は、補正処理部によるPET画像に対するX線CT画像の位置合わせの一例を模式的に示す図である。
【図15】図15は、補正処理部によるX線CT画像に対するPET画像の位置合わせの一例を模式的に示す図である。
【図16】図16は、第1の実施形態に係るPET−CT装置による画像処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】図17は、第1の実施形態に係るPET−CT装置によるX線CT画像の補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図18A】図18Aは、天板に120kgの加重を施した場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図18B】図18Bは、天板に200kgの加重を施した場合のシミュレーション結果を示す図である。
【図19】図19は、装置間のずれを説明するための図である。
【図20】図20は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像と、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像との間のX軸方向における位置のずれを説明するための図である。
【図21】図21は、第2の実施形態に係る位置算出部による処理の一例を模式的に示す図である。
【図22A】図22Aは、CT用架台装置2に天板31を挿入した場合の上面図である。
【図22B】図22Bは、ベッドごとに撮像した画像のコロナル面を示す図である。
【図23A】図23Aは、第2の実施形態に係る補正処理部46dによる位置合わせの第1の例を模式的に示す図である。
【図23B】図23Bは、第2の実施形態に係る補正処理部46dによる位置合わせの第2の例を模式的に示す図である。
【図24】図24は、第2の実施形態に係るPET−CT装置によるX軸方向の補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図25】図25は、第3の実施形態に係る位置推定部46cによる処理の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態においては、撮像方式が異なる医用画像診断装置を一体化させた装置として、PET−CT装置を用いる場合を例に挙げて説明する。まず、第1の実施形態に係るPET−CT装置の全体構成について、図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係るPET−CT装置の全体構成を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、PET用架台装置1と、CT用架台装置2と、寝台装置3と、コンソール装置4とを有する。
【0011】
PET用架台装置1は、被検体Pに投与された陽電子放出核種を取り込んだ生体組織から放出される一対のガンマ線を検出することで、PET画像を再構成するためのガンマ線の投影データ(ガンマ線投影データ)を生成する装置である。図2Aは、PET用架台装置の構成を説明するための図である。
【0012】
PET用架台装置1は、図2Aに示すように、PET検出器11や、同時計数回路12などを有する。PET検出器11は、被検体Pから放出されるガンマ線を検出するフォトンカウンティング(photon counting)方式の検出器である。具体的には、PET検出器11は、複数のPET検出器モジュール111が、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように配置されることで構成される。
【0013】
図2Bは、PET検出器の構成を説明するための図である。例えば、PET検出器モジュール111は、図2Bに示すように、シンチレータ111aと、光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)111cとを有するアンガー型の検出器である。
【0014】
シンチレータ111aは、被検体Pから放出されて入射したガンマ線を可視光に変換するNaIやBGOなどが、図2Bに示すように、2次元に複数個配列されている。また、光電子増倍管111cは、シンチレータ111aから出力された可視光を増倍して電気信号に変換する装置であり、図2Bに示すように、稠密に複数個配置されている。
【0015】
なお、光電子増倍管111cは、シンチレーション光を受光し光電子を発生させる光電陰極、発生した光電子を加速する電場を与える多段のダイノード、及び電子の流れ出し口である陽極から成っている。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向って加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を叩き出す。この現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることにより、なだれ的に電子数が増倍され、陽極での電子数は、約100万にまで達する。かかる例では、光電子増倍管111cの利得率は、100万倍となる。また、なだれ現象を利用した増幅のためにダイノードと陽極との間には、通常1000ボルト以上の電圧が印加される。
【0016】
このように、PET検出器モジュール111は、ガンマ線をシンチレータ111aにより可視光に変換し、変換した可視光を光電子増倍管111cにより電気信号に変換することで、被検体Pから放出されたガンマ線の数を計数する。
【0017】
そして、図2Aに示す同時計数回路12は、複数のPET検出器モジュール111それぞれが有する複数の光電子増倍管111cそれぞれと接続される。そして、同時計数回路12は、PET検出器モジュール111の出力結果から、陽電子から放出された一対のガンマ線の入射方向を決定するための同時計数情報を生成する。具体的には、同時計数回路12は、シンチレータ111aから出力された可視光を同じタイミングで電気信号に変換出力した光電子増倍管111cの位置及び電気信号の強度から重心位置を演算することで、ガンマ線の入射位置(シンチレータ111aの位置)を決定する。また、同時計数回路12は、各光電子増倍管111cが出力した電気信号の強度を演算処理(積分処理及び微分処理)することで、入射したガンマ線のエネルギー値を演算する。
【0018】
そして、同時計数回路12は、PET検出器11の出力結果の中から、ガンマ線の入射タイミング(時間)が一定時間の時間ウィンドウ幅以内にあり、エネルギー値がともに一定のエネルギーウィンドウ幅にある組み合わせを検索(Coincidence Finding)する。例えば、2nsecの時間ウィンドウ幅と、350keV〜550keVのエネルギーウィンドウ幅とが、検索条件として設定される。そして、同時計数回路12は、検索した組み合わせの出力結果を、2つの消滅フォトンを同時計数した情報であるとして同時計数情報(Coincidence List)を生成する。そして、同時計数回路12は、同時計数情報をPET画像再構成用のガンマ線投影データとして図1に示すコンソール装置4に送信する。なお、2つの消滅フォトンを同時計数した2つの検出位置を結ぶ線は、LOR(Line of Response)と呼ばれる。また、同時計数情報は、コンソール装置4にて生成される場合であってもよい。
【0019】
図1に戻って、CT用架台装置2は、被検体Pを透過したX線を検出することで、X線CT画像を再構成するためのX線投影データや、スキャノグラムを生成するためのX線の投影データ(X線投影データ)を生成する装置である。図3は、CT用架台装置の構成を説明するための図である。
【0020】
CT用架台装置2は、図3に示すように、X線管21や、X線検出器22、データ収集部23などを有する。X線管21は、X線ビームを発生し、発生したX線ビームを被検体Pに照射する装置である。X線検出器22は、X線管21に対向する位置にて、被検体Pを透過したX線を検出する装置である。具体的には、X線検出器22は、被検体Pを透過したX線の2次元強度分布のデータ(2次元X線強度分布データ)を検出する2次元アレイ型検出器である。より具体的には、X線検出器22は、複数チャンネル分のX線検出素子を配してなる検出素子列が被検体Pの体軸方向に沿って複数列配列されている。なお、X線管及びX線検出器は、CT用架台装置2の内部にて、図示しない回転フレームにより支持されている。
【0021】
データ収集部23は、DAS(Data Acquisition System)であり、X線検出器22により検出された2次元X線強度分布データに対して、増幅処理やA/D変換処理などを行なって、X線投影データを生成する。そして、データ収集部23は、X線投影データを図1に示すコンソール装置4に送信する。
【0022】
図1に戻って、寝台装置3は、被検体Pを載せるベッドであり、天板31と、寝台32とを有する。寝台装置3は、コンソール装置4を介して受け付けたPET−CT装置の操作者からの指示に基づいて、CT用架台装置2及びPET用架台装置1それぞれの撮像口に順次移動される。すなわち、PET−CT装置は、寝台装置3を移動させることで、最初に、X線CT画像の撮像を行ない、その後、PET画像の撮像を行なう。図4は、寝台装置3を説明するための図である。
【0023】
寝台装置3は、図示しない駆動機構によって天板31と寝台32とを被検体の体軸方向に移動させる。例えば、PET−CT装置は、CT用架台装置2の回転フレームを回転させながら、図4の上側の図に示すように天板31をCT用架台装置2の方向に水平移動させて、被検体Pの撮像部位をX線により螺旋状に連続的にスキャンするヘリカルスキャン方式によりX線CT画像を撮像する。
【0024】
また、PET−CT装置は、X線CT画像の撮像を行った後、図4の下側の図に示すように、天板31が寝台32から繰り出されたままの状態で、寝台32を水平移動させて、被検体Pの撮像部位をPET用架台装置1の撮像口内に挿入させる。ここで、寝台32は、図4の下側の図に示すように、PET用架台装置1及びCT用架台装置2それぞれの検出器の中心位置間の距離「a」と同一距離を移動する。すなわち、寝台32が距離「a」を移動することで、X線CT画像の撮像時とPET画像の撮像時とで、被検体Pの体軸方向の同一部位を撮像する際の天板31の寝台32からの繰り出し量を同一にしている。
【0025】
そして、PET−CT装置は、天板31をX線CT画像の撮像時とは逆の方向に水平移動させることで、PET画像を撮像する。かかる場合には、PET−CT装置は、被検体の一部分を撮像した後に、撮像を停止した状態で所定の移動量だけ水平移動して、さらに他の部分を撮像し、かかる移動と撮像とを繰り返すステップアンドシュート方式により被検体の広い範囲を撮像する。
【0026】
図1に戻って、コンソール装置4は、操作者からの指示を受け付けてPET−CT装置における撮像処理を制御する装置である。図5は、コンソール装置の構成を説明するための図である。
【0027】
図5に示すように、コンソール装置4は、X線投影データ記憶部41と、CT画像再構成部42と、減弱マップ生成部43と、ガンマ線投影データ記憶部44と、PET画像再構成部45とを有する。さらに、コンソール装置4は、図5に示すように、制御部48と、補正データ47とを有する。
【0028】
X線投影データ記憶部41は、データ収集部23から送信されたX線投影データを記憶する。具体的には、X線投影データ記憶部41は、X線CT画像を再構成するためのX線投影データを記憶する。CT画像再構成部42は、X線投影データ記憶部41が記憶する再構成用のX線投影データを、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法により逆投影処理することで、X線CT画像を再構成する。
【0029】
例を挙げれば、CT画像再構成部42は、PET−CT装置を用いた全身検査において、撮像計画により決定された撮像条件(例えば、スライス幅など)に基づいて、X線投影データから、被検体Pの体軸方向に直交する複数の断面を撮像した複数のX線CT画像を再構成する。
【0030】
減弱マップ生成部43は、CT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像を用いて、被検体Pの体内で生じるガンマ線の減弱を補正するための減弱マップを生成する。ガンマ線投影データ記憶部44は、同時計数回路12から送信されたガンマ線投影データを記憶する。PET画像再構成部45は、ガンマ線投影データ記憶部44が記憶するガンマ線投影データから、例えば、逐次近似法によりPET画像を再構成する。
【0031】
補正部46は、減弱マップ生成部43によって生成された減弱マップを用いたPET画像の減弱補正や、CT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像とPET画像再構成部45によって再構成されたPET画像とを融合する際の補正などを行う。補正データ47は、補正部46の処理結果を記憶する。なお、補正部46の処理内容及び補正データ47については、後に詳述する。
【0032】
制御部48は、PET−CT装置全体の処理を制御する。具体的には、制御部48は、PET用架台装置1、CT用架台装置2、天板31及び寝台32を制御することで、PET−CT装置による撮像を制御する。また、制御部48は、ガンマ線投影データ記憶部44が記憶するデータを用いたPET画像再構成部45の処理を制御する。また、制御部48は、X線投影データ記憶部41が記憶するデータを用いたCT画像再構成部42及び減弱マップ生成部43の処理を制御する。また、制御部48は、補正部46の処理を制御する。なお、制御部48は、図示しない入出力装置から操作者の指示を受け付ける。また、制御部48は、図示しない入出力装置にて、操作者が指示を入力するためのGUI(Graphical User Interface)や、X線CT画像およびPET画像を表示するように制御する。
【0033】
以上、第1の実施形態に係るPET−CT装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像と、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像との位置合わせに関する補正処理を実行する。
【0034】
具体的には、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、被検体Pの加重による天板31の沈み込みに起因するPET画像及びX線CT画像における画像間の位置のずれを補正する補正処理を実行する。なお、以下では、天板31が沈み込んだ状態を天板だれと記載する場合がある。
【0035】
ここで、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像と、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像との天板だれに起因する画像間の位置のずれについて説明する。以下では、まず、各撮像方式によって撮像された画像それぞれに対する天板だれの影響を説明した後、画像間の位置のずれについて説明する。
【0036】
図6は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板だれを説明するための図である。図6においては、寝台32がPET用架台装置1側に移動した後、繰り出されていた天板31をステップアンドシュート方式によって寝台32に戻しながらPET画像を撮像した場合の天板だれについて示している。図6のスキャン領域は、PET用架台装置1のスキャン領域を示している。また、図6に示すベッド1、ベッド2及びベッド3は、ステップアンドシュート方式によるPET画像の撮像位置を示している。すなわち、図6においては、ベッド1〜ベッド3の撮像位置それぞれで複数の断層画像を撮像するスキャンを実行する。なお、図6には被検体が示されていないが、実際には、天板31上には被検体が載せられた場合の天板だれを示している。
【0037】
図6に示すように、天板だれの程度は、寝台32からの天板31の繰り出し量によって異なる。すなわち、図6の上段の図に示すように、ベッド1をスキャンする場合には、被検体による加重が天板31に与える影響が大きく、スキャン領域における天板だれの程度も大きくなる。しかしながら、図6の中段の図及び下段の図に示すように、寝台32からの天板31の繰り出し量が減少するごとに、被検体による加重の天板31に与える影響が低減して、スキャン領域における天板だれの程度も小さくなる。
【0038】
図7は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板の位置を説明するための図である。図7においては、ベッドごとに撮像した画像のサジタル(sagittal;矢状)面を示している。すなわち、図7においては、被検体の体軸方向の断面を示している。ステップアンドシュート方式で画像を撮像した場合には、ベッドごとに天板だれの程度が異なることから、天板31の位置は、図7に示すように、ベッド間で段差が生じた状態となる。
【0039】
図8は、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像における天板の位置を説明するための図である。図8においては、天板31をヘリカルスキャン方式によって連続的に繰り出しながらCT画像を撮像した場合の天板の位置を示している。また、図8においては、ヘリカルスキャン方式によって撮像された複数の断面画像を用いて生成されたサジタル面の画像を示している。また、図8に示す矢印は、天板31の移動方向を示している。また、図8に示す複数の矩形は、断面画像のスライス幅を示している。また、図8に示す直線L1は、各断面画像における天板31の中心を通る直線を示している。
【0040】
ヘリカルスキャン方式で画像を撮像した場合には、天板31の繰り出し量の増加に比例して天板だれの程度が大きくなることから、各断面画像における天板31の位置は、図8の直線L1に示すように、天板31の繰り出し量の増加に伴い徐々に低くなる。ここで、ヘリカルスキャン方式によって撮像されたCT画像をサジタル面で見た場合のスライス幅は、実際には、図8に示すような厚みはなく、非常に薄い。そこで、図8に示す各断面画像の幅を限りなく薄くした場合(スライス幅を0に近づけた場合)には、断面画像はX線検出器22の中心に収束することとなる。従って、各断面画像に描出される天板31の中心を通る直線L1が、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像における天板の位置となる。
【0041】
図9は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像とヘリカルスキャン方式によって撮像された画像との間の位置のずれを説明するための図である。ここで、図9においては、図7に示すステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板の位置(直線L2)と、図8に示すヘリカルスキャン方式によって撮像された画像における天板の位置(直線L1)とを示している。
【0042】
図9の直線L1及び直線L2に示すように、各撮像方式によって撮像された画像それぞれの天板は、傾きが異なることで、位置がずれることとなる。すなわち、天板だれが生じることによって、各撮像方式によって撮像された画像間に位置のずれが生じる。このような位置のずれは、PET−CT装置などによって生成される画像の精度を悪化させる。
【0043】
例えば、PET−CT装置では、PET画像の減衰補正や散乱補正にCT画像を用いる。ここで、PET画像とCT画像との間に位置のずれが生じていると、正確な補正が行うことができない。また、PET−CT装置によって生成されるフュージョン画像に位置のずれが発生することとなり、読影者によるフュージョン画像の読影を困難なものにする。
【0044】
そこで、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、以下、詳細に説明する補正部46による補正処理を行なうことで、天板だれが生じた場合でも、画像の精度が悪化することを抑止することを可能にする。図10は、第1の実施形態に係る補正部46の構成を説明するための図である。図10に示すように、補正部46は、位置算出部46aと、位置修正部46bと、位置推定部46cと、補正処理部46dとを有している。そして、補正部46は、処理結果を補正データ47に格納する。
【0045】
位置算出部46aは、ヘリカルスキャン方式によって撮像された複数の画像において、各画像に描出された体軸方向に直線的であり、天板の沈み込みと同一の挙動を示す構造物の位置を算出する。具体的には、位置算出部46aは、X線CT装置によって断層撮像された被検体の複数のX線CT画像に描出された天板をそれぞれ検出し、各X線CT画像における検出した天板の位置を算出する。
【0046】
図11は、第1の実施形態に係る位置算出部46aによる処理の一例を模式的に示す図である。図11においては、ヘリカルスキャン方式によって撮像され、CT画像再構成部42によってX線投影データから再構成された断面画像を示している。例えば、位置算出部46aは、図11に示すように、まず、断面画像に描出された天板31を検出して、検出した天板31を含む領域を切り出す。そして、位置算出部46aは、切り出した領域に含まれる天板31の表面31aのY軸方向の座標を算出する。
【0047】
一例を挙げると、位置算出部46aは、断面画像のY軸方向のピクセル(pixel)に番号を付与しておき、天板31の表面31aが描出されたピクセルの番号をY軸方向の座標として算出する。そして、位置算出部46aは、CT画像再構成部42によってX線投影データから再構成されたすべての断面画像に対して、天板の検出処理及び天板位置の算出処理を実行する。なお、位置算出部46aは、画像のプロファイルを用いた方法や、天板形状のテンプレートを用いたパターンマッチング法などにより画像中の天板を検出する。
【0048】
図10に戻って、位置修正部46bは、各断面画像において、位置算出部46aによって算出された天板の位置が誤っているか否かを判定し、誤っていると判定した場合に、天板の位置を修正する。具体的には、位置修正部46bは、位置算出部46aによって算出された天板の位置を示す値が推定される値から所定の閾値を超えた値である場合に、当該天板の位置を示す値が誤っていると判定する。
【0049】
図12は、位置修正部46bによる処理の一例を模式的に示す図である。ここで、図12における縦軸は、ピクセル番号で算出した天板の位置を示している。また、図12における横軸は、1つのX線CT画像が撮像される部分であるスライスを示している。すなわち、図12においては、位置算出部46aによってスライスごとに算出された天板の位置を示している。
【0050】
例えば、位置修正部46bは、位置算出部46aによって図12の上側の図に示す天板の位置が算出されると、スライスごとの天板の位置の値に基づいて、天板の位置としてとりうる値を推定する。例を挙げると、位置修正部46bは、スライスごとの天板の位置の値に基づく多項式を用いた近似(例えば、最小二乗法など)により、天板の位置としてとりうる値を推定する。そして、位置修正部46bは、推定した値と、位置算出部46aによって算出された値とを比較し、2つの値の差が所定の閾値を超えていた場合に、当該位置算出部46aによって算出された値が誤っていると判定する。
【0051】
例えば、所定の閾値が「1ピクセル」であった場合には、位置修正部46bは、図12の上側の図に示す「r」の値が「1ピクセル」を超えていることから、位置「P1」の値が誤っていると判定する。なお、図12の上側の図に示す「r」は、位置修正部46bによって算出された近似曲線(図示せず)上の値と、位置「P1」の値との差を示している。そして、位置修正部46bは、図12の下側の図に示すように、位置「P1」の値を図示しない近似曲線上の値に修正する。同様に、位置修正部46bは、図12の下側の図に示すように、図12の上側の図の位置「P2」及び「P3」の値を図示しない近似曲線上の値に修正する。
【0052】
なお、上記した例では、近似曲線上の値と位置算出部46aによって算出された値との差が所定の閾値を超えたもののみを修正する場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、位置算出部46aによって算出されたすべての値を近似曲線上の値に置き換える修正をする場合であってもよい。
【0053】
図10に戻って、位置推定部46cは、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像の天板の位置に基づいて、ステップアンドシュート方式で撮像された画像における天板の位置を推定する。具体的には、位置推定部46cは、まず、位置修正部46bによって修正された各X線CT画像における天板の位置の値を用いて、ベッドごとにX線CT画像における天板の傾きを算出する。そして、位置推定部46cは、算出したX線CT画像における天板の傾きに基づいて、ステップアンドシュート方式で撮像されたPET画像における天板の傾きを算出する。そして、位置推定部46cは、算出した天板の傾きに基づいて天板の位置を推定する。以下では、X線CT画像における天板の傾きをマイナススケーリングする方法を用いて天板の位置を推定する場合について説明する。
【0054】
例えば、位置推定部46cは、以下に示す式(1)により、PET画像における天板の傾きを算出する。なお、式(1)における「gradPET(z)」は、zを変数としたPET画像における天板の傾きを示している。また、式(1)における「gradCT」は、X線CT画像における天板の傾きを示している。また、式(1)における「gradinit」は、荷重なしの時の天板初期の傾き(以下、荷重なしの時の天板初期傾きを、基準線の傾きと記す)を示している。また、式(1)における「A(z)」は、zを変数とする関数を示している。
【0055】
【数1】
【0056】
式(1)に示すように、位置推定部46cは、X線CT画像における天板の傾きに変数を乗算し、タンジェント(基準線の傾き)の2倍の値を加算することで、PET画像における天板の傾きを算出する。例えば、位置推定部46cは、zの値として、天板の繰り出し量及び天板だれに関する変数を用いる。或いは、位置推定部46cは、以下に示す式(2)により、PET画像における天板の傾きを算出してもよい。なお、式(2)における「A」は、任意の定数を示している。
【0057】
【数2】
【0058】
すなわち、位置推定部46cは、式(2)に示すように、X線CT画像における天板の傾きに任意の定数を乗算することで、PET画像における天板の傾きを算出する。例えば、位置推定部46cは、以下に示す式(3)によりPET画像における天板の傾きを算出する。
【0059】
【数3】
【0060】
例えば、位置推定部46cは、式(3)に示すように、X線CT画像における天板の傾きに「−1」を乗算することで、PET画像における天板の傾きを算出する。なお、X線CT画像における天板の傾きに乗算する変数或いは定数は、PET−CT装置の設計者や操作者によって任意に決定される。かかる場合には、例えば、CT用架台装置2でヘリカルスキャン方式及びステップアンドシュート方式それぞれの画像を撮像し、撮像した画像に描出された天板の位置から、変数或いは定数を予め決定することが可能である。
【0061】
図13は、位置推定部46cによる処理の一例を模式的に示す図である。例えば、位置推定部46cは、図13に示すように、ベッドごとにX線CT画像における天板の傾きとして直線L1の傾きを算出する。そして、位置推定部46cは、算出した直線L1の傾きと、上述した式(1)〜(3)のいずれか1つを用いてPET画像における天板の傾きを算出する。その後、位置推定部46cは、図13に示すように、ベッドの中心のスライスにおいて直線L1と交差し、かつ、算出した傾きを有する直線L2をPET画像における天板の位置として推定する。
【0062】
ここで、位置推定部46cによって推定されるPET画像における天板の位置は、上述した式を用いることにより、基準線が考慮された天板の位置となる。基準線は、上述したように、荷重なしの時の天板初期の傾きを示す線である。天板は、荷重なしのときに水平にスライドすることが理想的であるが、実際には、被検体が乗ったときに水平となるように、荷重なしの時は少し競りあがるように設計されている。そこで、本実施形態では、この競りあがりを考慮するために、基準線を用いて天板の位置を推定する。
【0063】
例えば、位置推定部46cは、図13に示すように、X線CT画像の天板の位置を示す直線L1を基準線である直線L10に対して折り返した直線L2を、PET画像の天板の位置を示す直線として推定する。なお、図13の点線L20は、水平面を示す。また、図13のθ1は、直線L1と基準線である直線L10との角度を示す。また、図13のθ2は、直線L2と基準線である直線L10との角度を示す。また、図13のθ3は、直線L1と水平面である点線L4との角度を示す。
【0064】
すなわち、位置推定部46cは、図13の「θ2」の値を「θ1」及び「θ3」の値から算出し、基準線L10から算出した「θ2」の値だけ傾けた直線L2を、PET画像における天板の位置として推定する。
【0065】
上述したように、本実施形態に係るPET−CT装置においては、寝台32がPET用架台装置1及びCT用架台装置2それぞれの検出器の中心位置間の距離と同一距離を移動する。すなわち、各検出器の中心においては、天板だれの程度が同一であり、Y軸方向の天板の位置も同一となる。従って、位置推定部46cは、ベッドの中心のスライスにおいて直線L1と交差し、かつ、算出した傾きを有する直線L2をPET画像における天板の位置として推定することが可能である。
【0066】
図10に戻って、補正処理部46dは、位置推定部46cによって推定された複数のPET画像における天板の位置に基づいて、X線CT画像とPET画像との位置のずれを補正するための補正量を算出する。そして、補正処理部46dは、算出した補正量を用いてX線CT画像とPET画像との位置のずれを補正する。
【0067】
具体的には、補正処理部46dは、位置推定部46cによって推定された複数のPET画像における天板の位置と位置修正部46bによって修正された後の複数のX線CT画像における天板の位置とに基づいて、被検体の略同一位置のスライスごとのY軸方向の移動量を算出する。そして、補正処理部46dは、PET画像に対するX線CT画像の位置の補正及びX線CT画像に対するPET画像の位置の補正を実行する。
【0068】
以下では、第1の実施形態に係るPET−CT装置によるX線CT画像とPET画像との融合画像の生成について説明する。まず、第1の実施形態に係るPET−CT装置においては、被検体Pに対するCT検査及びPET検査が行われると、CT画像再構成部42が、X線投影データ記憶部41に記憶されたX線投影データを用いて、X線CT画像を再構成する。ここで、CT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像は、補正データ47に格納される。
【0069】
CT画像再構成部42によって再構成された複数のX線CT画像に対して、位置算出部46aが天板の位置を算出する。そして、位置修正部46bが、位置算出部46aによって算出された複数のX線CT画像おける天板の位置を修正する。その後、位置推定部46cが、位置修正部46bによって修正された後の複数のX線CT画像における天板の位置から複数のPET画像における天板の位置を推定する。ここで、位置修正部46bによって修正された後の複数のX線CT画像における天板の位置と、位置推定部46cによって推定された複数のPET画像における天板の位置とは、補正データ47によって記憶される。
【0070】
補正処理部46dは、補正データ47によって記憶された複数のX線CT画像における天板の位置と複数のPET画像における天板の位置とを読み出し、被検体の略同一位置のスライスごとのY軸方向の移動量を算出する。そして、補正処理部46dは、CT画像再構成部42によって再構成された複数のX線CT画像をPET画像に位置合わせする補正を実行する。ここで、補正処理部46dによって算出された被検体の略同一位置のスライスごとのY軸方向の移動量は補正データ47によって記憶される。
【0071】
図14は、補正処理部46dによるPET画像に対するX線CT画像の位置合わせの一例を模式的に示す図である。例えば、補正処理部46dは、図14に示すように、位置修正部46bによって修正された後のX線CT画像における天板位置L1と位置推定部46cによって推定されたPET画像における天板位置L2とに基づいて、ベッド1〜3それぞれにおけるスライスごとの移動量を算出する。
【0072】
そして、補正処理部46dは、X線CT画像の天板位置L1をPET画像の天板位置L2と一致させるように、スライスごとにX線CT画像をスライドさせて、PET画像との位置合わせを実行する。そして、補正処理部46dは、位置合わせが行われたX線CT画像を補正データ47に格納する。
【0073】
減弱マップ生成部43は、補正データ47によって記憶された位置合わせ後のX線CT画像を読み出し、読み出したX線CT画像を用いて減弱マップを生成する。ここで、減弱マップ生成部43によって生成された減弱マップは、補正データ47に格納される。
【0074】
PET画像再構成部45は、ガンマ線投影データ記憶部44によって記憶されたガンマ線投影データと補正データ47によって記憶された減弱マップとを用いて、PET画像を再構成する。すなわち、PET画像再構成部45は、画像間の位置のずれを補正した減弱マップを用いてPET画像を再構成することとなる。ここで、PET画像再構成部45によって再構成されたPET画像は、補正データ47に格納される。
【0075】
PET画像再構成部45によってPET画像が再構成されると、補正処理部46dは、補正データ47によって記憶されたPET画像を読み出し、読み出したPET画像をCT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像に位置合わせする補正を実行する。
【0076】
具体的には、補正処理部46dは、補正データ47によって記憶されたX線CT画像、PET画像及び被検体の略同一位置のスライスごとのY軸方向の移動量を読み出し、PET画像をX線CT画像に位置合わせする補正を実行する。図15は、補正処理部46dによるX線CT画像に対するPET画像の位置合わせの一例を模式的に示す図である。
【0077】
例えば、補正処理部46dは、図15に示すように、スライスごとにPET画像を移動量分だけ移動させることで、PET画像の天板位置L2をX線CT画像の天板位置L1と一致させる位置合わせを実行する。そして、補正処理部46dは、位置合わせが行われたPET画像を補正データ47に格納する。
【0078】
制御部48は、図示しない入力部から入力されたPET−CT装置の操作者からの指示に基づいて、例えば、補正データ47によって記憶されたCT画像再構成部42によって再構成されたX線CT画像と、X線CT画像に対する位置合わせが実行されたPET画像とを読み出し、読み出したX線CT画像とPET画像とを融合した画像を図示しない表示部に表示させる。
【0079】
このように、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、X線CT画像における天板の位置からPET画像における天板の位置を推定し、天板位置の一方を他方に一致させるように画像補正を行うことで、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれた場合でも、画像の精度が悪化することを抑止することを可能にする。
【0080】
次に、図16を用いて、第1の実施形態に係るPET−CT装置の処理について説明する。図16は、第1の実施形態に係るPET−CT装置による画像処理の手順を示すフローチャートである。なお、図16においては、被検体に対してヘリカルスキャン方式によるX線CT検査とステップアンドシュート方式によるPET検査が実行された後の処理について示している。図16に示すように、第1の実施形態に係るPET−CT装置においては、CT画像再構成部42がX線投影データ記憶部41によって記憶されたX線投影データを用いてX線CT画像を再構成する(ステップS101)。
【0081】
そして、補正部46が、PET画像に対するX線CT画像のずれを補正する(ステップS102)。その後、減弱マップ生成部43が、補正されたX線CT画像を用いて減弱マップを生成する(ステップS103)。そして、PET画像再構成部45が、減弱マップ生成部43によって生成された減弱マップと、ガンマ線投影データ記憶部44によって記憶されたガンマ線投影データとを用いてPET画像を再構成する(ステップS104)。
【0082】
続いて、補正部46が、X線CT画像に対するPET画像のずれを補正する(ステップS105)。その後、制御部48が、補正後のPET画像とCT画像再構成部42によって生成されたX線CT画像とを融合させ、フュージョン画像を図示しない表示装置に表示させて(ステップS106)、処理を終了する。
【0083】
次に、図17を用いて、第1の実施形態に係るPET−CT装置によるX線CT画像の補正処理について説明する。図17は、第1の実施形態に係るPET−CT装置によるX線CT画像の補正処理の手順を示すフローチャートである。なお、図17に示す処理は、図16のステップS102に対応する。
【0084】
図17に示すように、第1の実施形態に係るPET−CT装置においては、位置算出部46aが、X線CT画像において天板が描出された領域を切り出し(ステップS201)、天板の位置を算出する(ステップS202)。
【0085】
続いて、位置修正部46bが、位置算出部46aによって算出されたX線CT画像における天板の位置の語算出を修正する(ステップS203)。そして、位置推定部46cが、X線CT画像の天板の位置に基づいて、PET画像における天板の位置を推定する(ステップS204)。その後、補正処理部46dが、X線CT画像における天板の位置と位置推定部46cによって推定されたPET画像における天板の位置とから、補正量を算出する(ステップS205)。補正処理部46dは、算出した補正量に基づいて、X線CT画像をPET画像の位置に補正して(ステップS206)、処理を終了する。
【0086】
上述したように、第1の実施形態によれば、位置算出部46aは、天板を体軸方向に連続的に移動させながら断層撮像された被検体のX線CT画像それぞれに描出された天板の位置を算出する。位置推定部46cは、被検体を体軸方向に所定の間隔で移動させて断層撮像された被検体のPET画像それぞれにおける算出部によって算出された天板の位置を推定する。補正処理部46dは、位置算出部46aによって算出された天板の位置と位置推定部46cによって推定された天板の位置とに基づいて、被検体の略同一位置を撮像したX線CT画像およびPET画像の位置合わせを行なう。従って、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることによる画像精度の悪化を抑止することを可能にする。
【0087】
図18A及び図18Bを用いて、シミュレーション結果を説明する。図18Aは、天板に120kgの加重を施した場合のシミュレーション結果を示す図である。図18Bは、天板に200kgの加重を施した場合のシミュレーション結果を示す図である。図18A及び図18Bにおいては、ヘリカルスキャン方式によって撮像した場合の天板の位置及びステップアンドシュート方式によって撮像した場合の天板の位置を、X線CT装置を用いて測定した測定結果と、開示の技術を用いてステップアンドシュート方式によって撮像した場合の天板の位置を推定した結果とを示している。なお、X線CT装置は、ヘリカルスキャン方式及びステップアンドシュート方式で画像を撮像することが可能である。
【0088】
また、図18A及び図18Bにおける縦軸は、ピクセルを示している。また、図18A及び図18Bにおける横軸は、スライスを示している。また、図18A及び図18Bにおける「ステップアンドシュート(推定値)」は、開示の技術を用いて推定した結果を意味している。また、図18A及び図18Bにおける「ステップアンドシュート(実測値)」は、X線CT装置を用いて測定した測定結果を意味している。
【0089】
図18A及び図18Bに示すように、120kgの加重及び200kgの加重のどちらの場合においても、ステップアンドシュート(推定値)を示すL5とステップアンドシュート(実測値)を示すL6とはほとんど重なっている。すなわち、開示の技術を用いることでステップアンドシュートにおける天板の位置を高精度で推定することができ、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることによる画像精度の悪化を抑止することを可能にする。
【0090】
また、第1の実施形態によれば、位置算出部46aは、天板のY軸方向の位置を算出する。従って、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、ヘリカルスキャン方式で撮像された画像とステップアンドシュート方式によって撮像された画像とにおいて、天板だれに起因する位置のずれを補正することができ、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることによる画像精度の悪化を抑止することを可能にする。
【0091】
また、第1の実施形態によれば、位置修正部46bは、位置算出部46aによって算出された複数のX線CT画像それぞれにおける天板の位置に基づいて、各X線CT画像における天板の位置を修正する。そして、位置推定部46cは、PET画像における位置修正部46bによって修正された天板の位置を推定する。従って、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、PET画像における天板の位置をより正確に推定することができる。
【0092】
また、第1の実施形態によれば、制御部48は、補正処理部46dによって位置合わせが実行されたPET画像を、X線CT画像と融合して表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係るPET−CT装置は、読影者に対して違和感のない画像を提供することができ、正確な読影を行わせることを可能にする。
【0093】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、天板だれによるY軸方向の位置のずれを補正する場合について説明した。第2の実施形態では、Y軸方向の位置のずれに加え、装置を据え置く際に発生する装置間のずれなどに起因するX軸方向の位置のずれを補正する場合について説明する。なお、以下で説明するX軸方向の補正は、上述したように、装置に据え置き時などに発生する装置間のずれなどに起因する。すなわち、X軸方向のずれは装置ごとにそれぞれ異なることから、X軸方向のずれは、すべての装置において実行される補正である。第2の実施形態においては、位置算出部46a及び補正処理部46dによる処理内容が、第1の実施形態と異なる。以下では、これらを中心に説明する。
【0094】
まず、装置間のずれについて説明する。図19は、装置間のずれを説明するための図である。なお、図19においては、天板31がPET用架台装置に挿入された場合の上面図を示している。例えば、装置間のずれとしては、図19に示すように、PET用架台装置1のスキャン領域に対して、天板31が垂直ではなく、斜めの角度で挿入されることが挙げられる。このような場合に、ステップアンドシュート方式で撮像された画像における天板の位置は、図20に示すようになる。
【0095】
図20は、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像と、ヘリカルスキャン方式によって撮像された画像とのX軸方向における位置のずれを説明するための図である。図20においては、ベッドごとに撮像した画像のコロナル(coronal;冠状)面を示している。すなわち、図20においては、被検体の体軸方向の断面を示している。また、図20においては、ステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板の位置(直線L4)と、図8に示すヘリカルスキャン方式によって撮像された画像における天板の位置(直線L3)とを示している。
【0096】
天板31がPET用架台装置1のスキャン領域に斜めに挿入されることで、図20の直線L3及び直線L4に示すように、各撮像方式によって撮像された画像それぞれの天板は、挿入角度の違いから、位置がずれることとなる。
【0097】
そこで、第2の実施形態に係るPET−CT装置は、図20に示す画像間の位置のずれを補正する。具体的には、第2の実施形態に係るPET−CT装置は、設計者や操作者によって取得されたステップアンドシュート方式によって撮像された画像における天板の位置を予め記憶する。
【0098】
例えば、設計者や操作者は、第2の実施形態に係るPET−CT装置にX線CT画像をステップアンドシュート方式で撮像させ、撮像させたX線CT画像に描出された天板の位置を予め記憶させる。そして、第2の実施形態に係るPET−CT装置は、ヘリカルスキャン方式によるX線CT検査が行われるごとに、記憶していた天板の位置を読み出して、画像間におけるX軸方向の位置のずれを補正する。
【0099】
第2の実施形態に係る位置算出部46aは、X軸方向の天板の位置のずれを検出するために、天板の位置を算出する対象領域として、X線CT画像に描出される天板においてスライスごとにX軸方向の移動が検出できる領域を用いる。
【0100】
図21は、第2の実施形態に係る位置算出部46aによる処理の一例を模式的に示す図である。図21においては、CT画像再構成部42によってX線投影データから再構成された断面画像を示している。例えば、位置算出部46aは、図21に示すように、まず、断面画像に描出された天板31のへり31bを検出して、検出した天板31のへり31bを含む領域を切り出す。そして、位置算出部46aは、切り出した領域に含まれる天板31のへり31bのX軸方向の座標を算出する。
【0101】
位置算出部46aは、CT画像再構成部42によってX線投影データから再構成されたすべての断面画像に対して、天板のへりの検出処理及び天板のへりのX軸方向の位置の算出処理を実行する。すなわち、位置算出部46aは、ステップアンドシュート方式によって撮像された複数のX線CT画像及びヘリカルスキャン方式によって撮像された複数のX線CT画像に対して、X軸方向の位置の算出処理を実行する。そして、位置算出部46aは、算出したX軸方向の位置を補正データ47に格納する。なお、位置算出部46aは、画像のプロファイルを用いた方法や、天板のへりの形状のテンプレートを用いたパターンマッチング法などにより画像中の天板のへりを検出する。
【0102】
第2の実施形態に係る補正処理部46dは、位置算出部46aによって算出された天板の位置に基づいて、ヘリカルスキャン方式で撮像された画像と、ステップアンドシュート方式で撮像された画像との間のX軸方向の位置のずれを補正する。具体的には、補正処理部46dは、補正データ47によって記憶された各撮像方式ごとの天板のへりのX軸方向の位置を読み出し、読み出した位置に基づいてX軸方向の位置のずれを補正する。
【0103】
図22A及び図22Bを用いて、第2の実施形態に係る補正処理部46dによる処理の一例を説明する。図22Aは、CT用架台装置2に天板31を挿入した場合の上面図である。図22Bは、ベッドごとに撮像した画像のコロナル面を示す図である。
【0104】
例えば、補正処理部46dは、図22Aに示すように、補正データ47によって記憶されたステップアンドシュート方式で撮像された画像における天板のへりの位置を示す直線L4と計測位置(スライス面)との角度「α」をベッドごとに計測する。さらに、補正処理部46dは、図22Aに示すように、補正データ47によって記憶されたヘリカルスキャン方式で撮像された画像における天板のへりの位置を示す直線L3と計測位置(スライス面)との角度「β」をベッドごとに計測する。
【0105】
そして、補正処理部46dは、図22Bに示すように、ベッドごとに、計測した角度「α」と「β」との差である「θ」を算出する。すなわち、補正処理部46dは、X軸方向の位置のずれの程度を示す値として「θ」を算出する。そして、補正処理部46dは、以下に示す式(4)により、スライスごとのX軸方向の補正量を算出する。なお、式(4)における「X’(slice)」は、スライスごとのX軸方向の補正量を示している。また、式(4)における「Z’(slice)」は、ベッドの中心のスライスからのZ軸方向の距離を示している。
【0106】
【数4】
【0107】
すなわち、補正処理部46dは、式(4)に示すように、ベッドの中心からの距離に位置のずれの角度を乗算することで、スライスごとのX軸方向の補正量を算出する。そして、補正処理部46dは、算出したスライスごとの補正量に基づいて、X軸方向の位置のずれを補正する。図23Aは、第2の実施形態に係る補正処理部46dによる位置合わせの第1の例を模式的に示す図である。図23Bは、第2の実施形態に係る補正処理部46dによる位置合わせの第2の例を模式的に示す図である。図23A及び図23Bにおいては、ベッドごとに撮像した画像のコロナル面を示している。
【0108】
例えば、補正処理部46dは、図23Aに示すように、ベッド1〜3それぞれにおいてステップアンドシュート方式によって撮像されたPET画像をヘリカルスキャン方式で撮像されたX線CT画像に一致させるようにX軸方向の補正を実行する。また、補正処理部46dは、図23Bに示すように、ベッド1〜3それぞれにおいてヘリカルスキャン方式で撮像されたX線CT画像をステップアンドシュート方式によって撮像されたPET画像に一致させるようにX軸方向の補正を実行する。
【0109】
次に、図24を用いて、第2の実施形態に係るPET−CT装置によるX軸方向の補正処理について説明する。なお、図24に示す処理は、図16のステップS102に対応する。なお、第2の実施形態に係るPET−CT装置による画像処理の手順は、第1の実施形態に係るPET−CT装置による画像処理の手順と同様であるので、説明を省略する。
【0110】
図24は、第2の実施形態に係るPET−CT装置によるX軸方向の補正処理の手順を示すフローチャートである。なお、図24においては、ステップアンドシュート方式によって撮像されたX線CT画像を用いて天板の位置が算出され、その後、被検体に対してヘリカルスキャン方式によるX線CT検査とステップアンドシュート方式によるPET検査が実行された後の処理について示している。
【0111】
図24に示すように、第2の実施形態に係るPET−CT装置においては、位置算出部46aが、X線CT画像において天板のへりが描出された領域を切り出し(ステップS301)、天板の位置を算出する(ステップS302)。
【0112】
続いて、補正処理部46dが、補正データ47によって記憶されたステップアンドシュート方式で撮像された画像における天板の位置と、位置算出部46aによって算出されたX線CT画像における天板の位置とを用いて角度の差を算出する(ステップS303)。
【0113】
さらに、補正処理部46dは、算出した角度とベッドの中心のスライスからの距離とを用いて補正量を算出する(ステップS304)。その後、補正処理部46dは、算出した補正量に基づいて、X線CT画像をPET画像の位置に補正して(ステップS305)、処理を終了する。なお、PET画像をX線CT画像の位置に合わせる補正は、図16のステップS105において、Y軸方向の補正と同様に実行される。
【0114】
上述したように、第2の実施形態によれば、位置算出部46aは、天板のX軸方向の位置を算出する。従って、第2の実施形態に係るPET−CT装置は、ヘリカルスキャン方式で撮像された画像とステップアンドシュート方式によって撮像された画像とにおいて、装置据付時などに生じる装置間のずれに起因する位置のずれを補正することができ、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることによる画像精度の悪化を抑止することを可能にする。
【0115】
(第3の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0116】
(1)モダリティ
上述した第1及び第2の実施形態では、撮像方式が異なる医用画像診断装置を一体化させた装置としてPET−CT装置を用いる場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、SPECT―CT装置などの装置を用いる場合であってもよい。言い換えれば、ヘリカルスキャン方式で撮像するモダリティとステップアンドシュート方式で撮像するモダリティとを一体化させた装置であればどのような装置を用いる場合であってもよい。
【0117】
(2)補正量の算出
上述した第1及び第2の実施形態では、X線CT検査及びPET検査が実行されるごとに補正量を算出する場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、予め補正量を算出し、算出した補正量をPET−CT装置が記憶しておく場合であってもよい。かかる場合には、検査が実行されると、PET−CT装置は、記憶している補正量を用いて画像間の位置のずれの補正を実行する。
【0118】
(3)減弱マップの作成
上述した第1及び第2の実施形態では、X線CT画像に対して位置合わせを実行した後に減弱マップを生成する場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、X線CT画像から減弱マップを生成した後に、生成した減弱マップに対して位置合わせを実行してもよい。
【0119】
(4)位置合わせの対象物
上述した第1及び第2の実施形態では、X線CT画像に描出された天板の位置を用いて位置合わせを行う場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、治療計画時などに用いられるワイヤーの位置を用いて位置合わせを実行する場合であってもよい。
【0120】
(5)天板位置の算出
上述した第1及び第2の実施形態では、X線CT画像に描出された天板領域を切り出した後に天板の位置を算出する場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、再構成されたX線CT画像をそのまま用いる場合であってもよい。
【0121】
(6)撮像方式
上述した第1及び第2の実施形態では、ヘリカルスキャン方式によってX線CT画像が撮像される場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、ステップアンドシュート方式によってX線CT画像が撮像される場合であってもよい。ステップアンドシュート方式によってX線CT画像を撮像するX線CT装置としては、面検出器を備えたエリアディテクターCT装置がある。
【0122】
エリアディテクターCT装置は、例えば、0.5mmのスライス幅で320列を同時に検出することができる320列面検出器を備え、160mmの幅ごとにスキャンを実行する。図25は、第3の実施形態に係る位置推定部46cによる処理の一例を模式的に示す図である。図25においては、ステップアンドシュート方式によって撮像されたX線CT画像のサジタル面(上側の図)と、ステップアンドシュート方式によって撮像されたPET画像のサジタル面(下側の図)とを示す。また、図25におけるベッドa〜dは、ステップアンドシュート方式によるX線CT画像の撮像位置を示す。また、図25におけるベッド1〜3は、ステップアンドシュート方式によるPET画像の撮像位置を示す。
【0123】
PET装置の検出器の幅が、X線CT装置の面検出器の幅(例えば、160mm)よりも大きいため、ベッド1〜3の各幅は、図25に示すように、ベッドa〜dの各幅よりも大きくなる。そこで、第3の実施形態に係る位置推定部46cは、まず、PET画像のベッドに対応するX線CT装置のベッドを抽出する。例えば、図25に示すように、位置推定部46cは、PET画像のベッド2に対応するX線CT装置のベッドとしてベッドb及びベッドcを抽出する。
【0124】
そして、位置推定部46cは、抽出したX線CT装置のベッドにおけるPET画像のベッドの中心のスライスの位置を特定する。例えば、位置推定部46cは、図25に示すように、抽出したベッドb及びベッドcにおけるベッド2の中心のスライスの位置51を特定する。そして、位置推定部46cは、特定した位置から各ベッドの中心のスライスまでの距離の比を算出する。例えば、位置推定部46cは、図25に示すように、ベッドbの中心のスライスの位置52とベッドcの中心のスライスの位置53との距離を「1」とし、位置51から位置52までの距離と、位置51から位置53までの距離との比「x:(1−x)」を算出する。
【0125】
そして、位置推定部46cは、算出した距離の比と、抽出したX線CT装置の各ベッドにおける天板の傾きとを用いてPET画像における天板の傾きを算出する。例えば、位置推定部46cは、以下に示す式(5)によりPET画像における天板の傾きをベッドごとに算出する。なお、式(5)における「β1」は、ベッド2における天板の角度を示す。また、式(5)における「α1」は、ベッドbにおける天板L7の角度を示す。また、式(5)における「α2」は、ベッドcにおける天板L8の角度を示す。
【0126】
【数5】
【0127】
すなわち、位置推定部46cは、PET画像のベッドに対応するX線CT画像の各ベッドにおける天板の角度「α1」に距離の比「(1−x)」を乗算し、天板の角度「α2」に距離の比「x」を乗算する。そして、位置推定部46cは、乗算後の値を合算した値をPET画像における天板の角度(傾き)「β1」として算出する。
【0128】
そして、位置推定部46cは、算出した角度で中心のスライスを通る直線L9をベッド2における天板の位置として決定する。位置推定部46cは、PET画像におけるベッドごとに上述した処理を実行して、ベッドごとの天板の位置を推定する。なお、PET画像のベッドに対応するX線CT装置のベッドが3つ以上ある場合には、PET画像のベッドの中心のスライスの位置を含むベッド及び隣接するベッドの2つのベッドを抽出する。
【0129】
上述したように、第1〜3の実施形態に係る画像診断装置は、PET画像におけるベッド(撮像位置)ごとの天板の位置を、当該ベッドの中心及び近傍のX線CT画像における天板の位置から推定する。そして、第1〜3の実施形態に係る画像診断装置は、推定した天板の位置を用いてPET画像とX線CT画像との位置補正を行う。なお、上記した実施の形態は例示であり、発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0130】
以上説明したとおり、第1〜3の実施形態によれば、異なる撮像方式で撮像した画像間で位置がずれることによる画像精度の悪化を抑止することが可能になる。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0132】
1 PET用架台装置
2 CT用架台装置
3 寝台装置
4 コンソール装置
31 天板
32 寝台
42 CT画像再構成部
43 減弱マップ生成部
45 PET画像再構成部
46 補正部
46a 位置算出部
46b 位置修正部
46c 位置推定部
46d 補正処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曝射されるX線により天板上の被検体を撮像する第1の撮像装置と、
前記被検体の撮像位置を体軸方向に所定の間隔づつ移動させた各位置で撮像する第2の撮像装置と、
前記第1の撮像装置における前記天板の撓み情報から前記第2の撮像装置における撮像位置ごとの天板の位置を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された天板の位置の情報を、各撮像装置で得られる画像の位置補正に用いる位置補正部と、
を備えたことを特徴とする画像診断装置。
【請求項2】
前記第1の撮像装置は、前記天板上の被検体に対して螺旋状のスキャンを実行することを特徴とする請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項3】
前記第1の撮像装置は、前記被検体の撮像位置を体軸方向に所定の間隔づつ移動させた各位置で撮像し、
前記第2の撮像装置は、前記第1の撮像装置にて移動された間隔よりも大きい間隔で前記被検体の撮像位置を体軸方向に移動させた各位置で撮像することを特徴とする請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記第1の撮像装置にて撮像された画像である第1の画像において、複数の第1の画像それぞれに描出された前記天板と同一の挙動を示す構造物の位置を、前記天板の撓み情報として算出し、算出した構造物の位置を用いて、前記第2の撮像装置にて撮像された画像である第2の画像における天板の位置を推定し、
前記位置補正部は、前記推定部によって推定された前記第2の画像における天板の位置を、前記被検体の略同一位置を撮像した前記第1の画像及び前記第2の画像の位置補正に用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像診断装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記天板の上面に対して垂直方向の位置を、前記構造物の位置として算出することを特徴とする請求項4に記載の画像診断装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記天板の上面に対して水平方向の位置を、前記構造物の位置として算出することを特徴とする請求項4に記載の画像診断装置。
【請求項7】
前記推定部によって算出された前記複数の第1の画像それぞれにおける前記構造物の位置に基づいて、各第1の画像における構造物の位置を修正する修正部をさらに有し、
前記推定部は、前記修正部によって修正された構造物の位置を用いて、前記第2の画像における天板の位置を推定することを特徴とする請求項4に記載の画像診断装置。
【請求項8】
前記位置補正部によって位置補正が実行された前記第1の画像又は前記第2の画像を、位置補正前の第2の画像又は第1の画像それぞれと融合して、所定の表示部に表示されるように制御する制御部をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の画像診断装置。
【請求項9】
曝射されるX線により天板上の被検体を撮像する第1の撮像装置における前記天板の撓み情報から前記被検体の撮像位置を体軸方向に所定の間隔づつ移動させた各位置で撮像する第2の撮像装置における撮像位置ごとの天板の位置を推定する推定工程と、
前記推定工程によって推定された天板の位置の情報を、各撮像装置で得られる画像の位置補正に用いる位置補正工程と、
を含んだことを特徴とする方法。
【請求項1】
曝射されるX線により天板上の被検体を撮像する第1の撮像装置と、
前記被検体の撮像位置を体軸方向に所定の間隔づつ移動させた各位置で撮像する第2の撮像装置と、
前記第1の撮像装置における前記天板の撓み情報から前記第2の撮像装置における撮像位置ごとの天板の位置を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された天板の位置の情報を、各撮像装置で得られる画像の位置補正に用いる位置補正部と、
を備えたことを特徴とする画像診断装置。
【請求項2】
前記第1の撮像装置は、前記天板上の被検体に対して螺旋状のスキャンを実行することを特徴とする請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項3】
前記第1の撮像装置は、前記被検体の撮像位置を体軸方向に所定の間隔づつ移動させた各位置で撮像し、
前記第2の撮像装置は、前記第1の撮像装置にて移動された間隔よりも大きい間隔で前記被検体の撮像位置を体軸方向に移動させた各位置で撮像することを特徴とする請求項1に記載の画像診断装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記第1の撮像装置にて撮像された画像である第1の画像において、複数の第1の画像それぞれに描出された前記天板と同一の挙動を示す構造物の位置を、前記天板の撓み情報として算出し、算出した構造物の位置を用いて、前記第2の撮像装置にて撮像された画像である第2の画像における天板の位置を推定し、
前記位置補正部は、前記推定部によって推定された前記第2の画像における天板の位置を、前記被検体の略同一位置を撮像した前記第1の画像及び前記第2の画像の位置補正に用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像診断装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記天板の上面に対して垂直方向の位置を、前記構造物の位置として算出することを特徴とする請求項4に記載の画像診断装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記天板の上面に対して水平方向の位置を、前記構造物の位置として算出することを特徴とする請求項4に記載の画像診断装置。
【請求項7】
前記推定部によって算出された前記複数の第1の画像それぞれにおける前記構造物の位置に基づいて、各第1の画像における構造物の位置を修正する修正部をさらに有し、
前記推定部は、前記修正部によって修正された構造物の位置を用いて、前記第2の画像における天板の位置を推定することを特徴とする請求項4に記載の画像診断装置。
【請求項8】
前記位置補正部によって位置補正が実行された前記第1の画像又は前記第2の画像を、位置補正前の第2の画像又は第1の画像それぞれと融合して、所定の表示部に表示されるように制御する制御部をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の画像診断装置。
【請求項9】
曝射されるX線により天板上の被検体を撮像する第1の撮像装置における前記天板の撓み情報から前記被検体の撮像位置を体軸方向に所定の間隔づつ移動させた各位置で撮像する第2の撮像装置における撮像位置ごとの天板の位置を推定する推定工程と、
前記推定工程によって推定された天板の位置の情報を、各撮像装置で得られる画像の位置補正に用いる位置補正工程と、
を含んだことを特徴とする方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−115659(P2012−115659A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249099(P2011−249099)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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