説明

画像評価用のチャート、カメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置、カメラモジュールのレンズ位置調整装置、カメラモジュールのピント調整装置、カメラモジュール搭載用のパレット、カメラモジュール用接着剤塗付装置

【課題】ピント調整の精度の向上や調整工程の効率化を図ることができる、画像評価用のチャート、カメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置、カメラモジュールのレンズ位置調整装置、カメラモジュールのピント調整装置、カメラモジュール搭載用のパレット、カメラモジュール用接着剤塗付装置を提供すること。
【解決手段】画像評価用のチャート6は、格子点6Aが直角2等辺三角形の頂点を成す格子線6Bにて形成される領域6Cを有し、格子線6Bを挟んで隣接する領域6C1,6C2のコントラストが互いに異なる構成とする。そして、ピントずれ方向・量測定装置のチャートとしてチャート6を用いる。ピントずれ方向・量測定装置は、チャート6を移動することで、測定対象のレンズのピントずれ方向・量を測定する。ピントずれ方向・量の測定に際しては、二乗平均平方根を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像評価用のチャート、カメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置、カメラモジュールのレンズ位置調整装置、カメラモジュールのピント調整装置、カメラモジュール搭載用のパレット、カメラモジュール用接着剤塗付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズと撮像素子とが筐体等に組み込まれた一体的な構成であり、携帯電話やウエブカメラ等の電子機器に組み込まれて使用されるカメラモジュールが知られている。このようなカメラモジュールの製造にあたっては、画像評価用のチャートを撮影し、その撮像状態に基づいて、カメラモジュールのピント調整が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−301168号
【0004】
【特許文献2】特開2006−208932号
【0005】
【特許文献3】特開2009−3152号
【0006】
【特許文献4】特開2009−302837号
【0007】
【特許文献5】特開2006−30256号
【0008】
【特許文献6】特開2007−57818号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、撮像素子の高画素化等に伴い、より精度の高いピント調整や、調整工程の効率化等が望まれる。そこで、本発明は、ピント調整の精度の向上や調整工程の効率化を図ることができる、画像評価用のチャート、カメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置、カメラモジュールのレンズ位置調整装置、カメラモジュールのピント調整装置、カメラモジュール搭載用のパレット、カメラモジュール用接着剤塗付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、画像評価用のチャートは、格子点が直角2等辺三角形の頂点を成す格子線にて形成される領域を有し、格子線を挟んで隣接する領域のコントラストが互いに異なることとする。
【0011】
上記課題を解決するため、ピントずれ方向・量測定装置は、レンズと、レンズを透過した光を受光する撮像素子とを有するカメラモジュールを、所定位置に保持する保持手段と、保持手段により保持されたカメラモジュールのレンズの光軸上に配置される画像評価用のチャートと、チャートを光軸方向に沿って移動させるチャート移動手段と、レンズの焦点位置に対して光学的に共役な位置に対するチャートの位置のずれ量とずれ方向であるチャート偏倚方向・量を検出するチャート偏倚方向・量検出手段と、撮像素子の撮像面に形成されるチャート像の合焦状態に関する合焦評価値を演算する合焦評価値演算手段と、チャートが少なくとも異なる3つの位置に配置されているときの合焦評価値を用いて、チャート像が合焦状態となるときのチャート偏倚方向・量であるチャート合焦偏倚方向・量を演算するチャート合焦偏倚方向・量演算手段と、チャート合焦偏倚方向・量を用いて、撮像面に対するレンズの焦点位置のずれ量とずれ方向であるピントずれ方向・量を演算するピントずれ方向・量演算手段とを有することとする。
【0012】
上記発明において、合焦評価値演算手段は、二乗平均平方根を用いて合焦評価値の演算を行うこととする。
【0013】
上記発明において、撮像面に合焦された状態で結像されるチャート像のコントラストの1周期の幅が、撮像素子の8画素以上であることとする。
【0014】
上記発明において、撮像素子はCMOSであり、チャートが照明されることにより撮像面に形成されるチャート像がCMOSを露光する露光状態と、CMOSが露光されない非露光状態とを交互に発生させる露光状態切換手段を有し、露光状態におけるチャート像の合焦評価値を演算し、非露光時にチャートを移動することとする。
【0015】
上記発明において、チャートとカメラモジュールとの間には、チャートからの光を撮像面に向けて反射する反射ミラーが配置されていることとする。
【0016】
上記発明において、チャートは、格子点が直角2等辺三角形の頂点を成す格子線にて形成される領域を有し、格子線を挟んで隣接する領域のコントラストが互いに異なることとする。
【0017】
上記課題を解決するため、カメラモジュールのレンズ位置調整装置は、レンズと、レンズを保持しているレンズ鏡筒と、レンズ鏡筒を保持する筐体と、レンズを透過した光を受光する撮像素子とを有し、レンズ鏡筒と筐体との間に形成されるネジ部に沿ってレンズ鏡筒が光軸中心に回転されることによりレンズと撮像素子の撮像面との間の距離の調整が可能なカメラモジュールを所定位置に保持する保持手段と、レンズ鏡筒の光入射側の端面に吸着する吸着手段と、吸着手段を端面に吸着させた状態で、レンズ鏡筒をネジ部に沿って回転させる回転手段とを有することとする。
【0018】
上記課題を解決するため、カメラモジュールのピント調整装置は、レンズと、レンズを保持しているレンズ鏡筒と、レンズ鏡筒を保持する筐体と、レンズを透過した光を受光する撮像素子とを有し、レンズ鏡筒と筐体との間に形成されるネジ部に沿ってレンズ鏡筒が光軸中心に回転されることによりレンズと撮像素子の撮像面との間の距離の調整が可能なカメラモジュールのピント調整装置において、カメラモジュールの撮像面に対するレンズの焦点位置のずれ量とずれ方向であるピントずれ方向・量を測定するピントずれ方向・量測定手段と、ピントずれ方向・量測定手段により測定されたピントずれ方向・量に基づいて、レンズの焦点位置を撮像面に一致させるために必要なレンズ鏡筒の回転方向および回転量を演算する回転演算手段と、レンズ鏡筒をネジ部に沿って、回転演算手段により演算された回転方向に回転量でレンズ鏡筒を回転させることで、レンズの焦点位置と撮像面とを一致させるレンズ位置調整手段とを有し、ピントずれ方向・量測定手段は、請求項2から7のいずれか1項に記載のカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置であり、レンズ位置調整手段は、請求項8に記載のカメラモジュールのレンズ位置調整装置であることとする。
【0019】
上記課題を解決するため、レンズと、レンズを保持しているレンズ鏡筒と、レンズ鏡筒を保持する筐体と、レンズを透過した光を受光する撮像素子とを有し、レンズ鏡筒と筐体との間に形成されるネジ部に沿ってレンズ鏡筒が光軸中心に回転されることによりレンズと撮像素子の撮像面との間の距離の調整が可能なカメラモジュールであって、レンズ鏡筒に設けられる所定位置に接着剤が塗付されることでレンズ鏡筒の回転位置の固定が行われるカメラモジュールが、距離の調整が行われた状態で搭載されるカメラモジュール搭載用のパレットにおいて、所定の基準位置と所定位置との偏差を記憶することができる偏差記憶手段を有することとする。
【0020】
上記課題を解決するため、レンズと、レンズを保持しているレンズ鏡筒と、レンズ鏡筒を保持する筐体と、レンズを透過した光を受光する撮像素子とを有し、レンズ鏡筒と筐体との間に形成されるネジ部に沿ってレンズ鏡筒が光軸中心に回転されることによりレンズと撮像素子の撮像面との間の距離の調整が可能なカメラモジュールであって、レンズ鏡筒に設けられる所定位置に接着剤が塗付されることでレンズ鏡筒の回転位置の固定が行われるカメラモジュールに対して、所定位置に接着剤を塗付するカメラモジュール用接着剤塗付装置において、上述の偏差記憶手段が備えられているカメラモジュール搭載用のパレットがセットされ、偏差記憶手段に記憶されている偏差に基づいて、所定位置を特定し、接着剤の塗付を行うこととする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ピント調整の精度の向上や調整工程の効率化を図ることができる、画像評価用のチャート、カメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置、カメラモジュールのレンズ位置調整装置、カメラモジュールのピント調整装置、カメラモジュール搭載用のパレット、カメラモジュール用接着剤塗付装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のカメラモジュールのピント調整装置の構成を示す図である
【図2】図1に示すピント調整装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】回転調整機構の構成を示す図であり、上段(A)は、回転調整機構の概略の構成を側面から見たときの図であり、下段(B)は、回転調整機構の吸着手段としての吸着機構の概略の構成を斜め後方から見た拡大図である。
【図4】チャートの構成を示す図であり、上段(A)は、チャートの全体を示した図であり、中段(B)は、チャートの一部分の拡大図であり、下段(C)は、チャートの構成を説明するための参考図でありチャートから色彩を省略した図である。
【図5】チャートの構成を説明するための参考図である。
【図6】ピント調整装置のピント調整動作を説明するフローチャートである。
【図7】CMOSの画素の露光タイミングと、垂直駆動信号の出力タイミングと、照明装置の点灯・消灯タイミングと、チャートの移動タイミングとを示すタイミングチャートである。
【図8】ピント調整装置の変形例の構成を示す図である。
【図9】回転調整機構の変形例の構成を示す図である。
【図10】ピント調整装置の変形例の構成を示す図であり、図9に示す回転調整機構をピント調整装置の構成を示す図である。
【図11】パレットの構成を示す図である。
【図12】カメラモジュール用接着剤塗付装置の概略の構成を示す図である。
【図13】カメラモジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る、画像評価用のチャート、カメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置、カメラモジュールのレンズ位置調整装置、カメラモジュールのピント調整装置、カメラモジュール搭載用のパレットおよびカメラモジュール用接着剤塗付装置の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
(カメラモジュールのピント調整装置1の全体構成)
図1は、本発明に係るカメラモジュールのピント調整装置(以下、ピント調整装置と記載する。)1の構成を示す図である。図2は、ピント調整装置1の電気的構成を示すブロック図である。図13は、ピント調整装置1によるピント調整の対象となるカメラモジュール100の構成を示す図である。
【0025】
ピント調整装置1は、カメラモジュール100が載置されるステージ2と、保持部3と、カメラモジュール100のレンズ鏡筒102を回転しレンズ鏡筒102の前後方向の位置調整を行うレンズ位置調整装置としての回転調整機構4と、コリメーターレンズ5と、画像評価用のチャート(以下、チャートと記載する。)6と、制御部7等を有している。そして、これらの部材あるいは機構等は、筐体8内に収容されている。なお、以下の説明において、カメラモジュール100からチャート6に向かう方向を前方(前側)その反対方向を後方(後側)として説明する。
【0026】
(カメラモジュール100の構成)
先ず、図13に基いて、カメラモジュール100の構成について説明する。図13は、カメラモジュール100の概略の構成を示す図であり、カメラモジュール100の光軸X1に沿う断面を示している。図13に示すように、カメラモジュール100は、撮影レンズ101と、撮影レンズ101を保持するレンズ鏡筒102と、レンズ鏡筒102を保持する筐体103と、撮像素子としてのCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)104等を有している。そして、カメラモジュール100は、撮影レンズ101と、撮影レンズ101を保持するレンズ鏡筒102と、レンズ鏡筒102を保持する筐体103と、撮像素子としてのCMOS104等が一つのユニットとして構成されている。したがって、カメラモジュール100は、この単位で携帯電話やウエブカメラ等の電子機器に組み込まれた状態で、カメラとしての機能を有する。
【0027】
撮影レンズ101により捕らえられた被写体光は、CMOS104の撮像面に受光させられる。レンズ鏡筒102と筐体103とは、ねじ部105によりねじ結合されている。したがって、レンズ鏡筒102をねじ部105に沿って筐体103に対して回転することで、ねじ部105のリードに従って撮影レンズ101を光軸X1に沿って移動することができる。つまり、レンズ鏡筒102をねじ部105に沿って筐体103に対して回転することで、撮影レンズ101の焦点位置を移動させることができる。カメラモジュール100は、撮影レンズ101の焦点位置が所定位置に調整された状態で、たとえば、レンズ鏡筒102と筐体103とに亘って塗付される接着剤により、レンズ鏡筒102が筐体103に対して回転しないように固定されることで、焦点調整が行われたカメラモジュール100として完成される。
【0028】
図1に戻って、筐体8には、カメラモジュール100を筐体8に取り込んだり、筐体8内から取り出すことができる図示を省略する扉部が設けられている。筐体8は、扉部が閉じられた状態で筐体8内部を暗室状態とすることができるように構成されている。ピント調整装置1を操作するための操作スイッチや表示パネル等の図示を省略する操作部9(図2参照)は、筐体8の外部に備えられている。
【0029】
図1において、制御部7は、筐体8内に配置されている。しかしながら、制御部7は、筐体8の外部に備えられてもよく、たとえば、ピント調整装置1を制御するためのプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータを制御部7として用いてもよい。この場合、パーソナルコンピュータのキーボードを操作部9として用いる構成としてもよい。
【0030】
保持部3は、ピント調整装置1の光軸X2(コリメーターレンズ5の光軸)と撮影レンズ101の光軸X1(カメラモジュール100の光軸X1)とを一致させた状態で、カメラモジュール100をステージ2上に位置決めした状態で固定することができる。
【0031】
保持部3は、ステージ2の前面に対して固定される4つの突起部10(図1には2箇所のみ図示)により構成される。突起部10は、光軸X2の周りに90度間隔で4箇所に設けられている。そして、保持部3は、4つの突起部10の内側に、カメラモジュール100の筐体103を光軸X2と直交する方向に移動しない状態で嵌合することができる。カメラモジュール100は、筐体103を保持部3の4つの突起部10の内側に嵌合させた状態で、光軸X1が光軸X2に一致させられた所定位置に配置される。なお、保持部3は、チャッキング機構等により構成することもできる。ステージ2には、保持部3に保持されたカメラモジュール100の電気接点に接続できる電気接点が設けられ、カメラモジュール100と制御部7とは、電気的に接続可能な構成となっている。
【0032】
筐体8内には、前後方向に亘って配置されるベース体11が設けられ、回転調整機構4、コリメーターレンズ5およびチャート6はベース体11に支持されている。
【0033】
回転調整機構4は、回転調整機構保持体12と移動機構13とを介して、ベース体11に支持されている。移動機構13は、回転調整機構保持体12と共に回転調整機構4を前後方向に移動することができる。移動機構13は、たとえば、軸方向を前後に配置されたリードスクリュー(図示省略)と、このリードスクリューにねじ結合し回転調整機構保持体12に対して取り付けられるボールねじ(図示省略)と、リードスクリューを回転させるモーター14(図2参照)等により構成することができる。つまり、移動機構13は、モーター14によりリードスクリューを回転することで、ボールねじを移動し、回転調整機構保持体12および回転調整機構4を前後方向に移動することができる。
【0034】
コリメーターレンズ5は、レンズ保持体15を介して、ベース体11に対して固定された位置に取り付けられている。
【0035】
チャート6は、チャート保持体16とチャート移動手段としての移動機構17とを介して、ベース体11に支持されている。移動機構17は、チャート保持体16と共にチャート6を前後方向に移動することができる。移動機構17は、移動機構13と同様に、たとえば、軸方向を前後に配置されたリードスクリュー(図示省略)と、このリードスクリューにねじ結合しチャート保持体16に対して取り付けられるボールねじ(図示省略)と、リードスクリューを回転させるモーター18(図2参照)等により構成することができる。つまり、移動機構17は、モーター18によりリードスクリューを回転することで、ボールねじを移動し、チャート保持体16およびチャート6を前後方向に移動することができる。
【0036】
移動機構17には、コリメーターレンズ5の焦点位置F1に対するチャート6のチャート偏倚方向・量を検出する、チャート偏倚方向・量検出手段としてのチャート偏倚方向・量検出機構19(図2参照)が設けられている。チャート偏倚方向・量とは、焦点位置F1に対するチャート6のずれ方向(前方か後方か)と焦点位置F1とチャート6との間の距離(ずれ量)である。チャート偏倚方向・量検出機構19は、たとえば、ベース体11側に対して固定された位置に設けられるエンコーダー(図示省略)と、チャート保持体16側に設けられるエンコーダー読み取り機構(図示省略)とにより構成することができる。エンコーダー読み取り機構は、エンコーダーを挟んで配置される光センサと投光部とにより構成することができる。焦点位置F1は、カメラモジュール100の撮影レンズ101の焦点位置F2と共役な位置である。
【0037】
制御部7は、たとえば、CPUやROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータであり、合焦評価値演算手段としての合焦評価値演算部7Aと、チャート合焦偏倚方向・量演算手段としてのチャート合焦偏倚方向・量演算部7Bと、ピントずれ方向・量演算手段としてのピントずれ方向・量演算部7Cと、回転演算手段としての回転演算部7Dとを有する。制御部7は、ROMに記憶されている制御プログラムにより、CMOS104やチャート偏倚方向・量検出機構19等からの情報に基づいて上述の各演算部において所定の演算処理を行い、また、チャート6を照明する照明装置20(図2参照)やモーター14等、すなわちピント調整装置1の駆動制御を行う。
【0038】
(ピント調整装置1の動作の概要)
上述の構成を有するピント調整装置1の動作の概要を説明する。保持部3にカメラモジュール100がセットされた後、制御部7は、カメラモジュール100によりチャート6の撮影を行う。そして、制御部7は、CMOS104から得られる撮像信号に基づき、合焦状態に関する合焦評価値を合焦評価値演算部7Aにて演算する。
【0039】
合焦評価値の演算は、チャート6の光軸X2方向の3箇所以上(たとえば、20〜30箇所)の異なる位置における撮像信号について行われる。すなわち、制御部7は、移動機構17を駆動し、チャート6を前後に移動させ、3箇所以上の異なる位置で、カメラモジュール100にチャート6の撮影を行わせ、各位置における合焦評価値を合焦評価値演算部7Aにて演算する。すなわち、各位置に対応するチャート偏倚方向・量についての合焦評価値を演算する。
【0040】
次に、制御部7は、チャート合焦偏倚方向・量演算部7Bにて、演算された複数の合焦評価値に基づいて、合焦状態と判断される合焦評価値を得ることができるチャート偏倚方向・量であるチャート合焦偏倚方向・量を演算する。そして、制御部7は、このチャート合焦偏倚方向・量に基づいて、ピントずれ方向・量演算部7Cにて、撮影レンズ101の焦点位置F2とCMOS104の撮像面とのずれ量とずれ方向であるピントずれ方向・量を演算する。
【0041】
続いて、制御部7は、ピントずれ方向・量分だけレンズ鏡筒102を移動させるために必要なレンズ鏡筒102の回転量および回転方向を回転演算部7Dにて演算する。なお、レンズ鏡筒102の回転量および回転方向と、撮影レンズ2の移動量と移動方向とは予め既知の値としておく。そして、制御部7は、回転演算部7Dにて演算された回転量および回転方向に基づき、回転調整機構4に備えられるモーター21(図2参照)を駆動し、レンズ鏡筒102を回転させ撮影レンズ101の焦点位置F2とCMOS104の撮像面とを一致させる。
【0042】
(回転調整機構4の構成)
以下に、図3を参照しながら、回転調整機構4の構成について詳しく説明する。図3の上段(A)は、回転調整機構4の概略の構成を側面(光軸X2に直交する方向)から見たときの図であり、図3の下段(B)は、回転調整機構4の吸着手段としての吸着機構22の概略の構成を斜め後方から見た拡大図である。
【0043】
回転調整機構4は、回転手段としての回転機構23と吸着機構22を有する。回転機構23は、回転調整機構保持体12に対して回転可能に支持される回転盤24と回転盤24を回転させるモーター21(図2参照)とを有する。回転盤24は、回転調整機構保持体12の後面に設けられるスリーブ25に嵌合され、スリーブ25と回転盤24との間に配置されるボールベアリング26とにより、回転調整機構保持体12に対して回転可能とされている。また、回転盤24は、モーター21(図2参照)の出力軸と歯車にて連結され、モーター21の駆動が伝達可能とされている。
【0044】
吸着機構22は、チャンバー体27と、図示外の真空ポンプと、この真空ポンプとチャンバー体27とを連通する管部28とを有している。チャンバー体27は、回転盤24の後面に取り付けられ、回転盤24の回転と一体に回転することができる。チャンバー体27は、中央に前後に貫通する貫通孔27Aが形成されるリング状を呈している。チャンバー体27の内部には空気室27Bが形成されている。回転盤24の中央にも前後方向に貫通する貫通孔24Aが形成され、また、回転調整機構保持体12にも前後方向に貫通する貫通孔12Aが形成されている。したがって、回転調整機構保持体12および回転調整機構4は、貫通孔27A,24A,12Aにより前後方向に光を通過させることができる。
【0045】
チャンバー体27の後面27Cには、光軸X2の周囲に等間隔に配置される複数(図3(B)では8個)の孔部27Dが形成されている。したがって、真空ポンプにより空気室27B内を減圧すると、孔部27Dには吸引力が発生する。孔部27Dは、後面27Cをカメラモジュール100のレンズ鏡筒102の前端面102A(図13参照)に当接させたときに、前端面102Aに対向する位置に配置されている。
【0046】
したがって、チャンバー体27の後面27Cをレンズ鏡筒102の前端面102Aに当接し、真空ポンプにより空気室27B内を減圧し孔部27Dに吸引力を発生させると、チャンバー体27の後面27Cにレンズ鏡筒102の前端面102Aを吸着することができる。つまり、チャンバー体27の後面27Cにレンズ鏡筒102の前端面102Aを吸着した状態で、回転盤24を回転させ、回転盤24と共にチャンバー体27を回転させることで、レンズ鏡筒102を回転させることができる。回転盤24を回転させるモーター21は、たとえば、ステッッピングモーターにより構成することができ、所定の基準位置からのステップ数に基づき、回転盤24の回転方向と回転量(回転角)を制御することができる。
【0047】
チャンバー体27には、マイクロスイッチ(精密スナップアクションスイッチまたはセンシティブスイッチ)28が設けられている。マイクロスイッチ28は、チャンバー体27が、前方からレンズ鏡筒102に接近し、チャンバー体27の後面27Cがレンズ鏡筒102の前端面102Aに接触したときに、スイッチがオン(またはオフ)される。したがって、マイクロスイッチ28のオン・オフ状態を検出することで、チャンバー体27の後面27Cがレンズ鏡筒102の前端面102Aに接触しているか否かを検出することができる。
【0048】
(コリメーターレンズ5の構成)
コリメーターレンズ5の前方の焦点位置は焦点位置F1である。保持部3にカメラモジュール100がセットされたされたときの撮影レンズ101の後方の焦点位置F2と焦点位置F1とは光学的に共役な関係となっている。したがって、焦点位置F2にCMOS104の撮像面を配置することで、カメラモジュール100は、無限遠に焦点合わせされた撮影系として構成される。
【0049】
(チャート6の構成)
次に、図4を参照しながら、チャート6の構成について詳しく説明する。図4の上段(A)は、チャート6の全体を示した図である。図4の中段(B)は、チャート6の一部分の拡大図である。図4の下段(C)は、チャート6の構成を説明するための参考図であり、チャート6から色彩を省略した図である。
【0050】
図4(C)に示すように、チャート6は、格子点6Aが直角2等辺三角形の頂点を成す格子線6Bにて形成される領域6Cを有している。すなわち、各領域6Cは、直角2等辺三角形を呈している。そして、格子線6Bを挟んで隣接する領域6C、たとえば、領域6C1と領域6C1のコントラストは互いに異なっている。チャート6においては、図4(B)に示すように、白色と黒色にてコントラストが形成されている。
【0051】
上述のように形成されるチャート6は、縦横のエッジ6D,6Eと、縦横のエッジ6D,6Eに対して45度の角度で傾斜するエッジ6F,6Gを有している。つまり、チャート6は、縦方向および横方向の2方向と、縦方向と横方向に対して斜め45度の傾斜であって互いに傾斜方向が異なる2方向(すなわち、縦横方向を45度回転した方向)との4方向の指向性を有している。そして、チャート6は、図4(B)に示す単位チャート61Eが、格子線6Bを挟んで同一のコントラストとならないように複数配列されたものでる。そのため、チャート6は、全体として、チャートの指向性が少ないものとなっている。
【0052】
しかも、チャート6は、一定のパターンで広い範囲(たとえば、撮影レンズ101の撮影範囲)に亘って形成されている。そのため、どこの場所に注目しても(たとえば、像高の高さに因らず)特性(指向性、解像度)に差が生じ難いものとなっている。
【0053】
チャート6は、図5に示すように、チャート61Aとチャート61Bを重ねたときの排他的論理和により形成されるチャートと、チャート61Cとチャート61Dを重ねたときの排他的論理和により形成されるチャートとを重ねたときの排他的論理和により形成される構成となっている。すなわち、(チャート61Axorチャート61B)xor(チャート61Axorチャート61B)=チャート61Eであり、チャート6は、チャート61Eを複数有するチャートである。なお、排他的論理和においては、2つのチャートを重ねたときに、同色が重なった部分は白、異色が重なった部分は黒で表現することとしている。
【0054】
チャート61Aは、コントラストのエッジの方向が、図中上下方向(X方向)に設定されるチャートであり、チャート61Bは、コントラストのエッジの方向が、図中左右方向(Y方向)に設定されるチャートである。そして、チャート61Cは、コントラストのエッジの方向が、図中右上がり45度の傾斜に設定されるチャートであり、チャート61Dは、コントラストのエッジの方向が、図中左上がり45度の傾斜に設定されるチャートである。つまり、チャート6は、一枚のチャートで4つのチャート61A,61B,61C,61Dが有するエッジを有していることになる。したがって、チャート6は、チャート61A,61B,61C,61Dが有するエッジの方向を有している。
【0055】
チャート保持体16は、チャート6の前方に配置される照明装置20を有している。また、チャート6は、領域6Cの黒色の部分は、光の透過量が少なく構成され、領域6Cの白い部分は光の透過量が多く構成されている。したがって、照明装置20が点灯されると、チャート6の白色の部分は明部として表示され、黒色の部分が暗部として表示され、図4(A)(B)に示す白黒のチャート6として表示される。
【0056】
(ピント調整装置1の動作)
以下に、図6および図7を参照しながらピント調整装置1を用いて、カメラモジュール100のピント調整動作について説明する。図6は、ピント調整装置1のピント調整動作を説明するフローチャートである。図7は、CMOS104の画素の電荷蓄積タイミング・データーの読み出しタイミングと、垂直駆動信号の出力タイミングと、照明装置20の点灯・消灯タイミングと、チャート6の移動タイミングとを示すタイミングチャートである。なお、本実施の形態にピント調整装置1では、CMOS104をローリングシャッター方式にて駆動して読み出した撮像信号に基づき、合焦評価値の演算を行う構成となっている。
【0057】
調整動作に先立ち、先ず、カメラモジュール100を保持部3にセットする。保持部3にセットされたカメラモジュール100の撮影レンズ101の光軸X1とコリメーターレンズ5の光軸X2は一致している。また、ピント調整装置1は、初期状態において、回転調整機構4およびチャート6は、それぞれ、所定の初期位置に配置されている。
【0058】
回転調整機構4の初期位置は、回転調整機構4と保持部3との間でカメラモジュール100を保持部3にセットする作業を行うことができる間隔を保持部3の前方に確保できる位置である。チャート6の初期位置は、本実施の形態においては、レンズ鏡筒102が調整範囲の最前方に配置されているときに、CMOS104の撮像面に形成されるチャート6の像(以下、チャート像と記載する。)を合焦状態とすることができる位置よりも若干前方の位置としている。なお、チャート6の初期位置は、たとえば、レンズ鏡筒102が調整範囲の最後方に配置されているときに、チャート像を合焦状態とすることができる位置よりも若干後方の位置とすることもできる。ピント調整装置1の初期状態においては、照明装置20は、消灯状態とされている。したがって、筐体8内は暗状態であり、CMOS104の各画素には電荷の蓄積はない。
【0059】
ピント調整動作においては、先ず、制御部7は、図7に示すように、垂直駆動信号がオフ(VD幅)のタイミングと時間長に合わせて、照明装置20を点灯させる(ステップS10)。照明装置20が点灯すると、CMOS104の撮像面にチャート像が形成される。制御部7は、CMOS104で撮像されたチャート像(CMOS104から送られて来る画像データー)を取得する(ステップS20)。そして、画像データーに基づき、チャート像の合焦状態に関する合焦評価値を演算する(ステップS20)。そして、演算された合焦評価値が得られたときのチャート偏倚方向・量(焦点位置F1からのチャート6のずれ方向とずれ量)を取得し(ステップS20)、RAM等の所定の記憶手段に記憶する。チャート偏倚方向・量は、チャート偏倚方向・量検出機構19(図2参照)により検出される。
【0060】
照明装置20の点灯時間の長さは、図7に示すように、VD幅に対応する時間であり、点灯時間が経過した後、照明装置20は消灯される。つまり、筐体8内は暗状態となる。したがって、CMOS104の各画素の電荷の蓄積は、VD幅に対応する時間で照明装置20の点灯が行われた間のみのものであり、この電荷が画像データーとして掃き出された後は、再び、照明装置20が点灯するまでCMOS104には電荷の蓄積はない。
【0061】
合焦評価値の演算は、たとえば、二乗平均平方根を用いる。つまり、チャート像が撮像された撮像素子の各画素のコントラストの階調(たとえば、0から255の256階調)の値について、二乗平均平方根(RMS)を求める。この場合、RMSが大きいほど、合焦状態が好適であることを示す。なお、画像データーの場合には、一般的に負の値を取らないため、白と黒の中間のグレーを0とし、チャート6の黒部分の階調を1に、白部分の階調を−1に正規化し、撮像面のチャート像のRMSを求めるようにしてもよい。上記のように正規化した場合、チャート6のRMSは、1になる。したがって、撮像面のチャート像も1に近いほど、合焦状態が好適であることを示す。
【0062】
そして、制御部7は、チャート6が初期位置から所定の位置まで移動したか否かを判断する(ステップS30)。この所定の位置は、本実施の形態では、レンズ鏡筒102が調整範囲の最後方に配置されているときに、チャート6の結像が合焦状態でCMOS104の撮像面に結像する位置よりも若干後方の位置としている。チャート6が所定の位置まで移動していない場合(ステップS30においてNo)には、制御部7は、移動機構17を駆動して、チャート6を所定距離移動させて停止させる(ステップS40)。そして、制御部7は、図7に示すように、チャート6が停止している間に、垂直駆動信号がオフ(VD幅)のタイミングと時間に合わせて、照明装置20を点灯させる(ステップS10)。続いて、制御部7は、CMOS104で撮像されたチャート像(CMOS104から送られて来る画像データー)の取得と、合焦評価値の演算と、演算された合焦評価値に対応するチャート偏倚方向・量の取得を行い(ステップS20)、RAM等の所定の記憶手段に記憶する。
【0063】
チャート6が所定の位置まで移動するまで(ステップS30においてYes)、ステップS10〜S40)の処理を繰り返す。図7に示すように、ピント調整装置1は、垂直駆動信号のオフに併せてチャート6の移動が停止されると共に照明装置20が点灯され、照明装置20の消灯に併せてチャート6が移動され、照明装置20の次回の点灯前にチャート6の移動が停止され、チャート6が停止している間に垂直駆動信号のオフに併せて照明装置20が点灯され、という動作を繰り返す。したがって、チャート6の異なる複数のチャート偏倚方向・量についての合焦評価値を取得することができる。なお、ステップS20においては、画像データおよびチャート偏倚方向・量の取得のみを行い、チャート6が所定の位置まで移動した後(ステップS30においてYes)、後述するステップS50が実行される前に、チャート6の移動位置毎に合焦評価値を演算するようにしてもよい。
【0064】
なお、照明装置20を点灯する前よりも早い時期にチャート6の移動を停止することで、チャート6の移動や制動に伴って発生する機械的振動が収束した状態で、チャート像を撮像することができる。つまり、合焦評価値とチャート偏倚方向・量の精度を高くすることができる。
【0065】
制御部7は、チャート6が所定の位置まで移動した場合(ステップS30においてYes)には、上述のステップS10〜S40にて得られた複数の合焦評価値とチャート偏倚方向・量に基づいて、チャート合焦偏倚方向・量を演算する(ステップS50)。制御部7は、最も値の大きな合焦評価値に対応するチャート偏倚方向・量をチャート合焦偏倚方向・量として演算(決定)する。
【0066】
ところで、図7のA部分に示すように、CMOS104の電荷の読み出しタイミング(順番)が遅い画素(撮像面の右下の最終画素に近い画素)については、照明装置20の点灯時間が電荷の蓄積時間から外れ、露光が不完全な画素(露光不完全画素)となることがある。かかる露光不完全画素は、正確なコントラスト情報を取得していないので、合焦評価値の演算用の情報としては好ましくない。そこで、各ラインの積算時間をできるだけ長くすることで、露光不完全画素の数を少なくすることができる。本実施の形態においては、各ラインの積算時間を、使用するCMOS104において設定できる範囲の最長とすることで、露光不完全画素の数を少なくしている。
【0067】
そして、制御部7は、ピントずれ方向・量演算部7Cにて、チャート合焦偏倚方向・量に基づいて、ピントずれ方向・量を演算する(ステップS60)。ピントずれ方向・量は、下記の式(1)により算出することができる。

dfx={(a×fx)/(a−fx)}−fx ・・・ (1)

但し a=L−{fs(fs+dfs)}/dfs

dfx:ピントずれ方向・量
dfs:チャート合焦偏倚方向・量
fs:コリメーターレンズ5の焦点距離
fx:撮影レンズ101の焦点距離
L:コリメーターレンズ5と撮影レンズ101の主点間距離

【0068】
筐体103に対してねじ部105にてねじ結合するレンズ鏡筒102は、ねじ部105に沿って筐体103に対して回転させられることで、ねじ部105のリードに従って撮影レンズ101を光軸X1に沿って移動することができる。つまり、レンズ鏡筒102をねじ部105に沿って筐体103に対して回転することで、撮影レンズ101の焦点位置を調整することができる。制御部7は、ピントずれ方向・量に基づいて、撮影レンズ101の焦点位置を撮像面に一致させるために必要なレンズ鏡筒102の回転方向と回転量を演算する(ステップS60)。レンズ鏡筒102の回転方向と前後方向について移動方向との対応、およびレンズ鏡筒102の回転量に対する前後方向への移動量との対応(所定の単位回転量に対する移動量との対応)は予め既知の値としておく。そのため、ピントずれ方向・量に基づいて撮影レンズ101の焦点位置を撮像面に一致させるために必要なレンズ鏡筒102の回転方向と回転量を演算することができる。
【0069】
続いて、制御部7は、移動機構13を駆動し、チャンバー体27の後面27Cがレンズ鏡筒102の前端面102Aに当接するまで、回転調整機構4を後方に移動する(ステップS70)。チャンバー体27の後面27Cがレンズ鏡筒102の前端面102Aに当接したか否かは、マイクロスイッチ28のON(またはOFF)を検出することにより判断することができる。次いで、後面27Cを前端面102Aに当接させた状態で図示外の真空ポンプを駆動し、孔部27Dに吸引力を発生させ、レンズ鏡筒102の前端面102Aをチャンバー体27の後面27Cに吸引する(ステップS80)。
【0070】
そして、制御部7は、ステップS60にて演算したレンズ鏡筒102の回転方向と回転量に基づいてモーター21(図2参照)を駆動し、レンズ鏡筒102を所定方向に所定量回転させる(ステップS90)。これにより、撮影レンズ101の焦点位置が撮像面に一致させられる。
【0071】
(実施の形態の主な効果)
上述のピント調整装置1は、カメラモジュール100を所定位置に保持する保持手段としての保持部3と、保持部3により保持されたカメラモジュール100の撮影レンズ101の光軸X1上に配置される画像評価用のチャート6と、チャート6を光軸X1方向に沿って移動させるチャート移動手段としての移動機構17と、撮影レンズ101の焦点位置F2と光学的に共役な位置であるコリメーターレンズ5の焦点位置F1に対するチャート6の位置のずれ量とずれ方向であるチャート偏倚方向・量を検出するチャート偏倚方向・量検出手段としてのチャート偏倚方向・量検出機構19と、撮像素子としてのCMOS104の撮像面に形成されるチャート像の合焦状態に関する合焦評価値を演算する合焦評価値演算手段としての合焦評価値演算部7Aと、チャート6が少なくとも異なる3つの位置に配置されているときの合焦評価値を用いて、チャート像が合焦状態となるときのチャート偏倚方向・量であるチャート合焦偏倚方向・量を演算するチャート合焦偏倚方向・量演算手段としてのチャート合焦偏倚方向・量演算部7Bと、チャート合焦偏倚方向・量を用いて、撮像面に対する撮影レンズの焦点位置F2のずれ量とずれ方向であるピントずれ方向・量を演算するピントずれ方向・量演算手段としてのピントずれ方向・量演算部7Cとを有するカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置(以下、ピントずれ方向・量測定装置と記載する。)を有している。
【0072】
このように構成されるピントずれ方向・量測定装置によれば、たとえば、撮影レンズ101を光軸X2方向に移動させてピント位置を探す場合に比べて、迅速にピント位置を測定することができる。また、被写体距離(チャート6と撮影レンズ101との間の距離)は、撮影レンズ101の像距離よりも長い。そのため、チャート6あるいは撮影レンズ101を移動させて焦点位置を変化させる場合、焦点位置の移動量が同一ならば、チャート6の移動量の方が撮影レンズ101の移動量よりも大きい。つまり、撮影レンズ101を移動させて焦点位置を変化させる制御に比べて、チャート6を移動させて焦点位置を変化させる方が制御を行い易く、ひいては、ピントずれ方向・量測定精度を高いものとすることができる。
【0073】
また、合焦評価値演算部7Aは、二乗平均平方根を用いて合焦評価値の演算を行うこととしている。
【0074】
たとえば、一般的なコントラスト式AFはチャート像の高周波成分を評価値として用い、高周波成分が極大となる位置をピント位置として評価する。しかし、高周波成分が極大のときに必ずしも合焦状態が最適となっていないこともある。たとえば、レンズによっては低周波側の極大と高周波側の極大の位置が一致していないものもある。また、高周波成分を抽出する時に微分法を用いる場合、画像の特定の方向に沿って偏微分することになるためコントラスト評価値は特定の方向性を持つ。レンズによっては走査方向によってピント特性の違う非点収差をもつものがあり、上記の様な方法でピント位置を求めた時に人間の視覚(感覚)と親和性の高い結像結果を得られないことがある。これに対し、チャート像が撮像された撮像素子の各画素のコントラストの階調値について二乗平均平方根(RMS)を求め、これを合焦評価値として用いることで、合焦状態についての評価を精度の高いものとすることができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、上述のように、合焦状態の評価精度が高くなるという観点から二乗平均平方根を用いて合焦評価値を演算しているが、チャート像の高周波成分を合焦状態の評価値として用いることもできる。
【0076】
また、撮像面に合焦された状態で結像されるチャート像のコントラストの1周期(たとえば、黒白のコントラストを有するチャートの場合、連続する黒白一対で1周期のコントラスト)の幅は、撮像素子の8画素以上とすることが好ましい。すなわち、CMOS104の画素ピッチから求められるナイキスト周波数の1/4より大きくなるようにチャート像のコントラストの1周期の幅を設定することが好ましい。このようにすることで、コントラストを精度良く検出することができる。より好ましくは、16画素以上とすることが好ましい。より精度の高いコントラスト検出を行うことができる。
【0077】
一方、できるだけ多くのコントラストの周期についての合焦評価値を得ることで評価値の精度を向上させることができる。かかる観点から、撮像面にコントラストの周期が5周以上取れることが好ましく、より好ましくは、10周期以上取れることが好ましい。つまり、チャート像は、コントラストの1周期が8画素以上であることが好ましく、撮像面にコントラストの周期を5周以上取れることが好ましい。そして、コントラストの1周期を16画素以上とすることでより精度の高いコントラストを検出することができる。また、撮像面にコントラストの周期を10周以上取ることで、合焦評価値の精度をより高いものとすることができる。なお、コントラストの1周期の幅および撮像面に形成されるコントラストの周期の数の設定は、は、チャート自体の大きさ(チャートのコントラストの周期の幅)やCMOS104に撮像されるチャート像の倍率等に設定することができる。
【0078】
チャート6は、走査位置により、コントラストの1周期の幅が異なる。チャート6は、図5で示した4つのチャート61A〜61Dの排他的論理和により形成されているものである。この場合には、チャート61A〜61Dの個別のチャート像(撮像面に形成される像)のコントラストの1周期の幅が、撮像素子の8画素以上とすることで、チャート6のチャート像においても、精度の高いコントラストを検出することができる。
【0079】
ピント調整装置1は、筐体8と、照明装置20と、制御部7とを有する露光状態切換手段を有している。回転調整機構4、コリメーターレンズ5、チャート6およびカメラモジュール100が筐体8内に収容されている。また、筐体8の扉部(図示省略)が閉じられた状態で照明装置20が消灯状態となると、筐体8内は暗状態となる。制御部7は、照明装置20の点灯と消灯の切換を行い、照明装置20が消灯状態のときには、CMOS104は、露光されない非露光状態となり、照明装置20が点灯状態のときは、照明装置20により照明されるチャート6のチャート像(チャート6からの光)によりCMOS104の撮像面が露光される露光状態となる。そして、制御部7は、CMOS104が露光状態のときのチャート像の合焦評価値を演算し、CMOS104が非露光状態となる照明装置20の消灯状態のときにチャート6を移動させる。
【0080】
ローリングシャッター方式であるCMOS104においては、上述のように露光状態と非露光状態との切換を行い、非露光状態の時にチャート6の移動を行うことで、チャート像のコントラストの検出精度の低下を防ぐことができる。つまり、露光状態の時にチャート6を移動させると、フレームとチャート6の位置との関係が1対1でなくなるため、コントラストの検出精度の低下を招く虞がある。これに対し、チャート6の移動を非露光状態の時に行い、チャート6が停止しているときに露光状態とすることで、フレームとチャート6の位置との関係を1対1とすることができる。そのため、チャート像のコントラストの検出精度の低下を防ぐことができる。なお、照明装置20を点灯状態としたまま、たとえば、シャッター釦の押下に併せて1フレーム分の画像データーを取得するように、画像データーの取得タイミングを制御し、この画像データーに基づいて合焦評価値を演算してもよい。
【0081】
しかしながら、かかる構成とした場合には、チャート6が次の位置に移動し停止が完了するまで、電荷の蓄積を待つ必要がある。これは、チャート6が移動している間に電荷の蓄積を行うと、上述したように、フレームとチャート6の位置との関係が1対1でなくなるため、チャート像のコントラストの検出精度が低下する虞があるからである。したがって、チャート6が移動している間は、電荷の蓄積を行うことができない。つまり、チャート6の移動と、電荷の蓄積とを異なるタイミングで行う必要がある。
【0082】
これに対し、ピント調整装置1は、CMOS104の露光状態(露光状態と非露光状態との切替)を、照明装置20の点灯・非点灯により制御し、チャート6の移動を、照明装置20が非点灯の状態にある時に行う構成となっている。このように構成することで、CMOS104が電荷を蓄積する駆動状態となっている間にチャート6を移動しても、チャート像のコントラストの検出精度の低下を防ぐことができる。これは、CMOS104は、電荷蓄積可能な状態であるが、照明装置20が非点灯状態であるため、電荷が蓄積されないためである。したがって、チャート6の移動を、電荷の蓄積を行う時間内、すなわち、1フレーム分の画像の読み取りを行う時間内に行うことができる。このため、図7に示す本実施の形態のように、1フレーム分の画像の読み取りを行う都度に、チャート6を移動する構成とした場合には、たとえば、フレーム走査時間が1/15秒であり、チャート6の観測箇所の数が30箇所である場合は、約2秒の測定時間で、30箇所について、合焦評価値を演算するためのデーターを取得することができる。
【0083】
本実施の形態では、撮像素子にCMOSを備えるカメラモジュールに対してピントずれ方向・量を測定しているが、撮像素子としてCCDを用いるカメラモジュールについてもピントずれ方向・量の測定を行ことができる。
【0084】
なお、チャート6の位置制御は、モーター18をステッピングモーターにより構成することで、十分に小さい分解能、たとえば1μmで制御することもできるが、合焦評価値の数(撮影回数)を少なくし、測定時間を短くするため、求めるべきチャートの位置分解能より間引いて撮影を行い合焦評価値の極大は近似関数による補間処理で求めることが好ましい。
【0085】
レンズ位置調整装置としての回転調整機構4は、カメラモジュール100を所定位置に保持する保持手段としての保持部3と、レンズ鏡筒102の光入射側の端面である前端面102Aに吸着する吸着手段としての吸着機構22と、吸着機構22を前端面102Aに吸着させた状態で、レンズ鏡筒102をカメラモジュール100のねじ部105に沿って回転させる回転手段としての回転機構23を有している。
【0086】
レンズ鏡筒102を回転する機構としては、たとえば、レンズ鏡筒102の前端面102Aに凹部を形成し、回転機構23の側に凹部に嵌合するツメを設け、凹部にツメを嵌合させて、レンズ鏡筒102を回転する機構を採用することもできる。しかしながら、かかる機構による場合は、ツメを凹部に嵌合させるために、凹部の位置を検出する時間を要し、また、検出するための機構を要する。これに対し、レンズ鏡筒102の前端面102Aを吸着する構成とすることで、凹部の位置を検出する時間と検出するための機構が不要となり、作業時間の効率化が図られ、また、装置の構成を簡略することも可能となる。
【0087】
(他の実施の形態)
ピント調整装置1は、図8に示すように、コリメーターレンズ5とカメラモジュール100との間に4つの反射ミラー29(図8では2つのみ図示)を配置してもよい。
【0088】
各反射ミラー29は、その反射面の法線が光軸X2と垂直に交わる姿勢で、取り付けられている。すなわち、各反射ミラー29の反射面は、光軸X2に平行となっている。また、反射ミラー29は、光軸X2を交点の中心とし、互いに直交する2方向の各方向に、光軸X2を挟んで1対ずつ配置されている。すなわち、互いに対向する一対の反射ミラー29は光軸X2を挟んで対称に配置され、また他の一対の互いに対向する反射ミラー29も光軸X2を挟んで対称に配置される。そして、一対の反射ミラー29が配置される方向と、他の一対の反射ミラー29が配置される方向は互いに直交している。
【0089】
このように反射ミラー29を配置することで、チャート6の光軸X2から離れた位置のチャート部分を撮像することができる。つまり、反射ミラー29を所望の像高に合わせた軸外の方向に設定するだけで、チャート6の広い範囲に亘って合焦状態を検出することができる。
【0090】
なお、各反射ミラー29は、CMOS104の撮像面の対角方向に一対ずつ互いに対向するように配置してもよい。 また、反射ミラー29は4枚に限らず、1枚以上配置することで、ミラーが配置された方向について、軸外の広い範囲に亘って合焦状態を検出することができる。
【0091】
(他の実施の形態)
カメラモジュールの中には、図9に示すカメラモジュール110のように、レンズ鏡筒102の前端面102Aに、治具連結用の凹部106が形成されているものもある。このようなカメラモジュール110に対しては、上述の実施の形態に説明した回転調整機構4に換えて、図9に示す回転調整機構40としてもよい。回転調整機構40、チャンバー体27に換えて、凹部106に嵌合可能なツメ41を有するチャック体42を回転盤24に備えている。かかる構成の回転調整機構40においては、凹部106にツメ41を嵌合させた状態で、回転盤24を回転することで、レンズ鏡筒102を回転することができる。なお、図9においては、図1に示す回転調整機構4と同様な構成部分については同一の符号を付し、その説明を省略または簡略する。また、図13に示すカメラモジュール100と同様な構成部分についても同一の符号を付し、その説明を省略または簡略する。
【0092】
(他の実施の形態)
図10は、回転調整機構40を備えるピント調整装置50の構成を示す図である。ピント調整装置1の構成と同様の構成部分については、同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。図11は、複数のカメラモジュール110を載置することができるパレット51に、複数のカメラモジュール110が載置された状態を示す図である。
【0093】
ピント調整装置50は、ステージ2に載置されたパレット51に載置された複数のカメラモジュール110に対して、順次にピント調整を行うことができる。ピント調整装置50のステージ2には、パレット51を光軸X2に直交する方向に移動することができる図示を省略するパレット移動機構が備えられている。パレット移動機構は、たとえば、直交する2軸に沿って移動することができる移動ステージにより構成することができる。
【0094】
パレット移動機構により、パレット51に載置されているカメラモジュール110は、順次、ピント調整が施される位置(調整作業位置)、すなわち、撮影レンズ101の光軸X1と光軸X2と一致する位置に移動させられピント調整が施される。調整作業位置にカメラモジュール100が配置されたとき、ステージ2側に設けられる電気接点とカメラモジュール100の電気接点とが接続され、カメラモジュール100と制御部7とは電気的に接続可能な構成とされる。
【0095】
ピント調整装置50は、回転調整機構40により、レンズ鏡筒102を回転させる動作を行うに当たり、凹部106にツメ41を嵌合させる必要がある。しかしながら、調整作業位置に配置されたカメラモジュール110の凹部106とツメ41との光軸X2の周方向における位置は一致しているとは限らない。そのため、光軸X2の周方向におけるツメ41と凹部106との位置を一致させ、凹部106にツメ41が嵌合していることを確認した後、上述のステップS60にて演算されたレンズ鏡筒102の回転方向と回転量に基づいてモーター21(図2参照)を駆動し、レンズ鏡筒102を所定方向に所定量回転させる。
【0096】
凹部106にツメ41が嵌合しているか否かは、たとえば、回転盤24の回転トルクを検出することにより判断することができる。ツメ41が凹部106に嵌合しているときの回転トルクは、嵌合していないときの回転トルクに比べて大きい。これは、ツメ41が凹部106に嵌合していないときは、ツメ41の後端面がレンズ鏡筒102の前端面102Aに対して摺動するため、レンズ鏡筒102を回転させるトルクが不要であるのに対し、ツメ41が凹部106に嵌合しているときは、レンズ鏡筒102を回転させるためのトルクが必要だからである。したがって、回転盤24の回転トルクの変動を検出することで、ツメ41が凹部106に嵌合していることを検出してから、レンズ鏡筒102を所定方向に所定量回転させることで、撮影レンズ101の焦点位置を撮像面に一致させることができる。
【0097】
ピント調整装置50は、図9に示すように、光軸X2の周方向について、回転盤24に設定される基準位置P1と、回転盤24の回転に対して固定された位置であるピント調整装置50側の基準位置P2とが設定されている。そして、ピント調整装置50は、回転盤24を回転させたときに、回転盤24の基準位置P1が、基準位置P2からどの方向にどれだけ回転させられたかを検出する。したがって、ピント調整装置50においては、ツメ41の位置と基準位置P1との関係を予め既知としておくことで、基準位置P2に対するツメ41の位置を知ることができる。基準位置P1の基準位置P2に対する回転方向と回転量の検出は、モーター21の回転方向とステップ数により把握することができる。
【0098】
したがって、レンズ鏡筒102の回転に当たっては、基準位置P1を基準位置P2に合わせた状態から回転盤24の回転を開始することで、ツメ41の基準位置P2に対する位置を検出することができる。つまり、撮影レンズ101の焦点位置を撮像面に一致させるようにレンズ鏡筒102を所定方向に所定量回転させピント調整が行われたときのツメ41の基準位置P2に対する位置を検出することができる。ツメ41の位置と凹部106の位置は対応している。したがって、基準位置P2とパレット51に設定される基準位置P3との関係を予め既知としておくことで、基準位置P3に対する凹部106の位置を特定することができる。
【0099】
パレット51には、RFID(Radio
Frequency IDentification)等により構成される記憶装置52が設けられている。ピント調整装置50は、カメラモジュール110毎に、ピント調整が行われた後の凹部106と基準位置P3との関係を特定し、基準位置P3を基準とする凹部106の位置情報を記憶装置52に記憶する。したがって、ピント調整が行われた後のカメラモジュール110が載置されているパレット51の記憶装置52には、載置されている各カメラモジュール110の凹部106の位置情報が記憶されている。
【0100】
回転調整機構40のチャック体42は、ツメ41を、図9に示すように、チャック体42の後端面42Aから後方に突出している状態と、前方に向けて移動する(後端面42Aからの突出長が短くなる)ことができるように構成してもよい。かかる構成においては、ツメ41は、たとえば、図示を省略するスプリング等により、ツメ41の自重を支持できる程度の軽い付勢力で後方に向けて付勢されている構成となっている。したがって、ツメ41を前方に移動しても、ツメ41は、該付勢力により後方に押されて元の位置に復帰する。
【0101】
このように構成されるチャック体42を備えるピント調整装置50は、次のようにして、カメラモジュール110のピント調整を行うことができる。先ず、カメラモジュール110を、ピント調整が施される位置(調整作業位置)に配置させた状態で、回転調整機構40を後方を移動し、ツメ41をレンズ鏡筒102の前端面102Aに当接させる。そして、基準位置P1が基準位置P2に一致している初期位置から回転盤24を、所定の方向に所定の角度回転させる。
【0102】
ツメ41が凹部106に嵌合していないときには、ツメ41は、後端面42Aからの突出長が短くなっている状態で前端面102A上を摺動し、凹部106の位置に移動すると、付勢力により後方に移動し(伸び)、凹部106に嵌合する。ツメ41が凹部106に嵌合すると、レンズ鏡筒102はチャック体42と一体に回転する。たとえば、ツメ41と凹部106が、光軸X1の周りに120度間隔で配置されている場合には、上記の所定の角度を、120度とすれば、回転盤24が120度回転する間に、ツメ41は、凹部106に必ず嵌合する。つまり、回転盤24が初期位置から所定方向に所定の角度回転させられた状態で、ツメ41と凹部106は嵌合した状態で、初期位置に対して所定の位置に配置される。
【0103】
この状態で、カメラモジュール110のピントずれ方向・量を測定し、この測定結果に対応するレンズ鏡筒102の回転方向と回転量を演算する。そして、この回転方向と回転量に基づいてモーター21(図2参照)を駆動し、レンズ鏡筒102を所定方向に所定量回転させ、カメラモジュール110のピント位置調整を行う。
【0104】
ところで、上述したように、ピント調整装置50においては、ツメ41の位置と基準位置P2との関係が予め既知となっている。回転盤24は、基準位置P1が基準位置P2に一致している初期位置から所定の方向に所定の角度回転され、さらに、ピントずれ方向・量に対応した回転方向と回転量を回転させられている。所定の方向と所定の角度回転は既知であるため、ピント位置調整が行われた状態における基準位置P2に対するツメ41の位置を特定することができる。ツメ41の位置と凹部106の位置は対応し、また、基準位置P2とパレット51に設定される基準位置P3との関係も予め既知となている。したがって、ピント位置調整が行われた状態における基準位置P3に対する凹部106の位置を特定することができる。そして、このようにして特定される基準位置P3に対する凹部106の位置を、パレット51の記憶装置52に記憶してもよい。
【0105】
図12は、パレット51に載置されたカメラモジュール110の凹部106(図9参照)に接着剤を塗付するカメラモジュール用接着剤塗付装置(以下、塗付装置と記載する。)70(以下、塗付装置と記載する。)の概略の構成を示す図である。塗付装置70は、パレット51を図中X方向に移動することができ、X方向の移動機構71と、接着剤を塗付するディスペンサー72を図中Y方向とZ方向の2方向に移動することができる2軸の移動機構73とを有する。移動機構71と移動機構73とにより、ディスペンサー72をパレット51に載置されているカメラモジュール110に対してX−Y−Zの3方向に移動することができる。
【0106】
塗付装置70は、パレット51に記憶されているカメラモジュール110毎の凹部106(図9参照)の位置情報に基づき、ディスペンサー72をカメラモジュール110の凹部106に移動し、凹部106に接着剤を塗付する。
【0107】
なお、上述の実施の形態は、本発明の実施の形態の例であり、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施可能である。
【0108】
たとえば、上述の実施の形態においては、ピントずれ方向・量の測定対象として、レンズ鏡筒102を筐体103との間に設けられるねじ部105に沿って光軸X1に回転させて焦点位置を移動させる構成のカメラモジュール100(110)を例示しているが、レンズ鏡筒を筐体に対して、レンズ鏡筒の光軸方向にスライドさせる構成のカメラモジュールとしてもよい。また、測定対象は、カメモーモジュールに限らず、レンズ鏡筒単体であったり投射プロジェクタの投射レンズ光学系であってもよい。また、ピントずれ方向・量の測定に当たって、チャート6に換えて、他のパターンのチャートを用いてもよい。また、上述の実施の形態においては、コリメーターレンズ5を用いて、無限遠にカメラモジュール100の焦点合わせを行っているが、コリメーターレンズ5を用いずに、有限距離に焦点合わせを行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1,50 … カメラモジュールのピント調整装置
3 … 保持部(保持手段)
4,40 … 回転調整機構(カメラモジュールのレンズ位置調整装置)
6 … 画像評価用のチャート
6A … 格子点
6B … 格子線
6C(6C1,6C2) … 領域
7A … 合焦評価値演算部(合焦評価値演算手段)
7B … チャート合焦偏倚方向・量演算部(チャート合焦偏倚方向・量演算手段)
7C … ピントずれ方向・量演算部(ピントずれ方向・量演算手段)
7D … 回転演算部(回転演算手段)
17 … 移動機構(チャート移動手段)
19 … チャート偏倚方向・量検出装置(チャート偏倚方向・量検出手段)
22 … 吸着機構(吸着手段)
23 … 回転機構(回転手段)
29 … 反射ミラー
51 … カメラモジュール搭載用のパレット
70 … カメラモジュール用接着剤塗付装置
100,110 … カメラモジュール
101 レンズ(撮影レンズ)
104 … CMOS(撮像素子)
F2 … 焦点位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像評価用のチャートにおいて、
格子点が直角2等辺三角形の頂点を成す格子線にて形成される領域を有し、格子線を挟んで隣接する領域のコントラストが互いに異なる、
ことを特徴とする画像評価用のチャート。
【請求項2】
レンズと、前記レンズを透過した光を受光する撮像素子とを有するカメラモジュールを、所定位置に保持する保持手段と、
前記保持手段により保持された前記カメラモジュールのレンズの光軸上に配置される画像評価用のチャートと、
前記チャートを前記光軸方向に沿って移動させるチャート移動手段と、
前記レンズの焦点位置と光学的に共役な位置に対する前記チャートの位置のずれ量とずれ方向であるチャート偏倚方向・量を検出するチャート偏倚方向・量検出手段と、
前記撮像素子の撮像面に形成されるチャート像の合焦状態に関する合焦評価値を演算する合焦評価値演算手段と、
前記チャートが少なくとも異なる3つの位置に配置されているときの前記合焦評価値を用いて、前記チャート像が合焦状態となるときの前記チャート偏倚方向・量であるチャート合焦偏倚方向・量を演算するチャート合焦偏倚方向・量演算手段と、
前記チャート合焦偏倚方向・量を用いて、前記撮像面に対する前記レンズの焦点位置のずれ量とずれ方向であるピントずれ方向・量を演算するピントずれ方向・量演算手段と、
を有することを特徴とするカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置において、
前記合焦評価値演算手段は、二乗平均平方根を用いて前記合焦評価値の演算を行うこと、
を特徴とするカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置において、
前記撮像面に合焦された状態で結像される前記チャート像のコントラストの1周期の幅が、前記撮像素子の8画素以上である、
ことを特徴とするカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載のカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置において、
前記撮像素子はCMOSであり、
前記チャートが照明されることにより前記撮像面に形成される前記チャート像により前記CMOSが露光される露光状態と、前記CMOSが露光されない非露光状態とを交互に発生させる露光状態切換手段を有し、
前記露光状態における前記チャート像の前記合焦評価値を演算し、
前記非露光時に前記チャートを移動する、
ことを特徴とするカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載のカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置において、
前記チャートと前記カメラモジュールとの間には、前記チャートからの光を前記撮像面に向けて反射する反射ミラーが配置されている、
ことを特徴とするカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載のカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置において、
前記チャートは、請求項1に記載されるチャートである、
ことを特徴とするカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置。
【請求項8】
レンズと、前記レンズを保持しているレンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒を保持する筐体と、前記レンズを透過した光を受光する撮像素子とを有し、前記レンズ鏡筒と前記筐体との間に形成されるネジ部に沿って前記レンズ鏡筒が光軸中心に回転されることにより前記レンズと前記撮像素子の撮像面との間の距離の調整が可能なカメラモジュールを所定位置に保持する保持手段と、
前記レンズ鏡筒の光入射側の端面に吸着する吸着手段と、
前記吸着手段を前記端面に吸着させた状態で、前記レンズ鏡筒を前記ネジ部に沿って回転させる回転手段と、
を有することを特徴とするカメラモジュールのレンズ位置調整装置。
【請求項9】
レンズと、前記レンズを保持しているレンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒を保持する筐体と、前記レンズを透過した光を受光する撮像素子とを有し、前記レンズ鏡筒と前記筐体との間に形成されるネジ部に沿って前記レンズ鏡筒が光軸中心に回転されることにより前記レンズと前記撮像素子の撮像面との間の距離の調整が可能なカメラモジュールのピント調整装置において、
前記カメラモジュールの前記撮像面に対する前記レンズの焦点位置のずれ量とずれ方向であるピントずれ方向・量を測定するピントずれ方向・量測定手段と、
前記ピントずれ方向・量測定手段により測定されたピントずれ方向・量に基づいて、前記レンズの焦点位置を前記撮像面に一致させるために必要な前記レンズ鏡筒の回転方向および回転量を演算する回転演算手段と、
前記レンズ鏡筒を前記ネジ部に沿って、前記回転演算手段により演算された前記回転方向に前記回転量で前記レンズ鏡筒を回転させることで、前記レンズの焦点位置と前記撮像面とを一致させるレンズ位置調整手段と、
を有し、
前記ピントずれ方向・量測定手段は、請求項2から7のいずれか1項に記載のカメラモジュールのピントずれ方向・量測定装置であり、
前記レンズ位置調整手段は、請求項8に記載のカメラモジュールのレンズ位置調整装置である、
ことを特徴とするカメラモジュールのピント調整装置。
【請求項10】
レンズと、前記レンズを保持しているレンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒を保持する筐体と、前記レンズを透過した光を受光する撮像素子とを有し、前記レンズ鏡筒と前記筐体との間に形成されるネジ部に沿って前記レンズ鏡筒が光軸中心に回転されることにより前記レンズと前記撮像素子の撮像面との間の距離の調整が可能なカメラモジュールであって、前記レンズ鏡筒に設けられる所定位置に接着剤が塗付されることで前記レンズ鏡筒の回転位置の固定が行われるカメラモジュールが、前記距離の調整が行われた状態で搭載されるカメラモジュール搭載用のパレットにおいて、
所定の基準位置と前記所定位置との偏差を記憶することができる偏差記憶手段を有する、
ことを特徴とするカメラモジュール搭載用のパレット。
【請求項11】
レンズと、前記レンズを保持しているレンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒を保持する筐体と、前記レンズを透過した光を受光する撮像素子とを有し、前記レンズ鏡筒と前記筐体との間に形成されるネジ部に沿って前記レンズ鏡筒が光軸中心に回転されることにより前記レンズと前記撮像素子の撮像面との間の距離の調整が可能なカメラモジュールであって、前記レンズ鏡筒に設けられる所定位置に接着剤が塗付されることで前記レンズ鏡筒の回転位置の固定が行われるカメラモジュールに対して、前記所定位置に接着剤を塗付するカメラモジュール用接着剤塗付装置において、
請求項10に記載の偏差記憶手段が備えられているカメラモジュール搭載用のパレットがセットされ、前記偏差記憶手段に記憶されている前記偏差に基づいて、前記所定位置を特定し、接着剤の塗付を行う、
ことを特徴とするカメラモジュール用接着剤塗付装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−227701(P2012−227701A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93095(P2011−93095)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(509304667)株式会社SUWAオプトロニクス (17)
【Fターム(参考)】