説明

画像評価装置、および画像評価プログラム

【課題】画像処理に伴う画質の劣化状況を評価して表示すること。
【解決手段】画質評価部103aは、原画像を画像処理して得た処理後画像の画質を評価するために、原画像と処理後画像とを、画質の劣化現象を表す特徴量を用いて比較して、画像処理に起因する処理後画像における画質の劣化を、画質の劣化現象を表す特徴量ごとに評価する。評価結果出力部103bは、原画像、処理後画像、および評価結果を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の画質を評価するための画像評価装置、および画像評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
次のようなデータ解析装置が知られている。このデータ解析装置は、画質の評価対象となる画像と、画質を評価するためのパラメータと、評価結果を示す図表またはグラフと、種々の制御ボタンとを同時に表示する(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−107766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のデータ解析装置を用いて、原画像を画像処理して得た処理後画像の画質を評価しようとした場合には、処理後画像の画質が原画像からどの程度劣化しているかを評価することはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、原画像を画像処理して得た処理後画像の画質を評価するために、原画像と処理後画像とを、画質の劣化現象を表す複数の特徴量を用いて比較して、画像処理に起因する処理後画像における画質の劣化を、画質の劣化現象を表す特徴量ごとに評価し、原画像、処理後画像、および評価結果を表示することを特徴とする。
本発明では、原画像と、画質の劣化現象が異なる複数の処理後画像のそれぞれとを、画質の劣化現象を表す特徴量を用いて比較して評価を行い、原画像、複数の処理後画像、および各処理後画像ごとの評価結果を表示するようにしてもよい。
また、処理後画像に代えて、画質の劣化現象を表す特徴量を可視化した画像を表示するようにしてもよく、評価結果を、数値、または数値を模式化した図形により表示するようにしてもよい。
画質の劣化現象を表す特徴量は、ぼやけの度合いを表す特徴量、ブロック歪みの大きさを表す特徴量、ランダムノイズの大きさを表す特徴量、および各コマ間の明るさの変化度合いを表す特徴量の少なくともいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、処理後画像の画質が原画像からどの程度劣化しているかを評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本実施の形態における画像評価装置の一実施の形態の構成を示すブロック図である。画像評価装置100は、例えばパソコン(パーソナルコンピュータ)であって、操作部材101と、接続IF(インターフェース)102と、制御装置103と、HDD(ハードディスクドライブ)104と、モニタ105とを備えている。
【0008】
操作部材101は、使用者によって操作される種々の装置、例えばキーボードやマウスを含む。接続IF102は、デジタルカメラなどの外部装置を接続するためのインターフェースであって、例えばデジタルカメラと有線接続を行うためのUSBインターフェースや、無線接続を行うための無線LANモジュールなどが使用される。本実施の形態では、例えば、この接続IF102を介してデジタルカメラから画像データ(静止画データまたは動画データ)が取り込まれる。
【0009】
HDD104は、接続IF102を介して取り込まれた画像データや、制御装置103で実行される種々のプログラム等を記録するための記録装置である。本実施の形態では、HDD104には画像データとして、複数フレームの画像で構成される動画データが記録されているものとする。例えば、動画撮影機能付きのデジタルカメラやデジタルビデオカメラで撮影され、所定のファイル形式、例えばMPEG形式に圧縮された動画データ(処理後動画データ)、および圧縮を行う前の元動画データ(処理前動画データ)が、それぞれ記録されているものとする。
【0010】
モニタ105は、例えば液晶モニタであって、制御装置103から出力される表示用データを表示する。
【0011】
制御装置103は、CPU、メモリ、およびその他の周辺回路によって構成され、画質評価部103aと、評価結果出力部103bとを機能的に備えている。画質評価部103aは、HDD104に記録されている処理後画像データが、処理前画像データと比較してどの程度画質が劣化しているかを評価する。すなわち、動画データは、データサイズを小さくするために圧縮を行うことによって、一般的に画質が劣化する。画質劣化の要因としては、例えば、ぼやけ、ブロック歪み、ランダムノイズ、およびフリッカなどが考えられる。
【0012】
なお、画質評価部103aは、ぼやけ、ブロック歪み、ランダムノイズの各要因については、処理前動画データと処理後動画データの対応するフレーム間でどの程度の差があるかを数値化して判定することによって、処理後動画データにおける画質の劣化を評価する。また、フリッカについては、処理前動画データのちらつき、すなわち各コマ間の明るさの変化と、処理後動画データのちらつきとに、どの程度の差があるかを数値化して判定することによって、処理後動画データの画質の劣化を評価する。以下、画質劣化の各要因ごとに、画質評価部103aによる画質評価処理の具体例について説明する。
【0013】
(A)ぼやけによる画質の劣化の評価
画質評価部103aは、ぼやけの度合いを表す特徴量である空間情報特徴エラー率ER_SIを次式(1)により算出することによって、処理後動画データがぼやけによってどの程度劣化しているかを評価する。
【数1】

なお、式(1)において、SI(t)は、処理前動画データを構成する任意の時間tにおける1フレーム画像から抽出した空間情報特徴であり、SI(t)は、処理後動画データを構成する任意の時間tにおける1フレーム画像から抽出した空間情報特徴である。
【0014】
ここで、画像における空間情報特徴SIの算出方法について説明する。空間情報特徴SIは、次のようにして算出することができる。まず、画像に対して図2(a)に示す水平方向Sobelフィルタをかけて、水平方向の成分を検出した画像V(i,j)を得る。また、画像に対して図2(b)に示す垂直方向Sobelフィルタをかけて、垂直方向の成分を検出した画像H(i,j)を得る。そして、次式(2)により、この画像V(i,j)とH(i,j)とに基づいて、水平方向および垂直方向の微分画像を合成したエッジ画像R(i,j)を算出する。
【数2】

【0015】
そして、このエッジ画像R(i,j)を用いて、次式(3)により空間情報特徴SIを算出することができる。ここでは、画像サイズがM×N(pixel)であるものとして次式(3)を定義する。
【数3】

なお、この空間情報特徴SIは、エッジ画像R(i,j)の標準偏差であり、画像のエッジ度を表すエッジ特徴量とみなすことができる。
【0016】
処理後動画データにぼやけによる画質の劣化が発生している場合には、処理前動画データに比べてエッジ度が低下することになるため、式(1)で算出した空間情報特徴エラー率ER_SIは負の値をとる。よって、画質評価部103aは、空間情報特徴エラー率ER_SIが負の値であるときに、ぼやけによる画質の劣化があると判定する。そして、空間情報特徴エラー率ER_SIの絶対値をとって、これをぼやけによる画質の劣化度合いを表す値とする。
【0017】
(B)ブロック歪みによる画質の劣化の評価
画質評価部103aは、ブロック歪みを表すパラメータである水平垂直・非水平垂直特徴エラー率ER_HVを次式(4)により算出することによって、処理後動画データが、ブロック歪みによってどの程度劣化しているかを評価する。
【数4】

なお、式(4)において、a(t)は、処理前動画データを構成する任意の時間tにおける1フレーム画像から抽出した水平垂直・非水平垂直特徴であり、a(t)は、処理後動画データを構成する任意の時間tにおける1フレーム画像から抽出した水平垂直・非水平垂直特徴である。
【0018】
ここで、画像における水平垂直・非水平垂直特徴aの算出方法について説明する。まず、上述した画像V(i,j)とH(i,j)とに基づいて、次式(5)によりエッジ角特徴θ(i,j)を算出する。
【数5】

【0019】
そして、式(2)で算出したエッジ画像R(i,j)と、式(5)で算出したエッジ角特徴θ(i,j)とを用いて、水平垂直領域HV(i,j)と、非水平垂直領域HV(i,j)を次式(6)および(7)により定義する。
【数6】

【数7】

なお、式(6)で算出される水平垂直領域HV(i,j)は、図3(a)に示す領域3aとなり、式(7)で算出される非水平垂直領域HV(i,j)は、図3(b)に示す領域3bとなる。
【0020】
水平垂直・非水平垂直特徴aは、算出した水平垂直領域HV(i,j)と非水平垂直領域HV(i,j)との比で表され、次式(8)により算出される。なお、次式(8)も画像サイズがM×N(pixel)であるものとして定義する。
【数8】

【0021】
水平垂直方向の成分を含まない画像においては、水平垂直・非水平垂直特徴aは、0に近い値が算出される。処理後動画データにブロック歪みによる画質の劣化が発生している場合には、処理前動画データに比べて垂直水平成分が多くなるため、式(4)で算出した水平垂直・非水平垂直特徴エラー率ER_HVは正の値をとる。よって、画質評価部103aは、水平垂直・非水平垂直特徴エラー率ER_HVが正の値であるときに、ブロック歪みによる画質の劣化があると判定する。そして、水平垂直・非水平垂直特徴エラー率ER_HVの値をブロック歪みによる画質の劣化度合いを表す値とする。
【0022】
(C)ランダムノイズによる画質の劣化の評価
画質評価部103aは、処理前動画データにおけるランダムノイズの量に対する処理後動画データにおけるランダムノイズの量Dを、処理前動画データのエッジ特徴量R(i,j)、および処理後動画データのエッジ特徴量R(i,j)に基づいて次式(9)および(10)により算出することによって、処理後動画データが、ランダムノイズによってどの程度劣化しているかを評価する。なお、次式(10)は、画像サイズがM×N(pixel)であるものとして定義する。
【数9】

【数10】

【0023】
画質評価部103aは、ランダムノイズの量Dが正の値をとるときに、ランダムノイズによる画質の劣化があると判定する。そして、ランダムノイズの量Dの値をランダムノイズによる画質の劣化度合いを表す値とする。
【0024】
(D)フリッカによる画質の劣化の評価
画質評価部103aは、フレーム単位にフリッカによる画質の劣化を評価するために、次式(11)および(12)によって、フレームごとのフリッカ用のエラー率ER_Fを算出する。
【数11】

【数12】

【0025】
なお、式(11)で算出されるDist(t)は、任意の時間tにおける1フレーム画像(tフレーム目)と任意の時間t+1における1フレーム画像(t+1フレーム目)との間の画像の明るさの変化量(距離)を表している。また、式(12)におけるDisto(t)は処理前動画データを構成する任意の時間tおよびt+1における各フレーム画像に基づいて算出したDist(t)を表しており、Dist(t)は処理後動画データを構成する任意の時間tおよびt+1における各フレーム画像に基づいて算出したDist(t)を表している。
【0026】
画質評価部103aは、フレーム毎のフリッカ用のエラー率ER_Fが正の値をとるときに、フリッカによる画質の劣化があると判定する。そして、フレーム毎のフリッカ用のエラー率ER_Fの値をフリッカによる画質の劣化度合いを表す値とする。
【0027】
以上説明した処理によって、画質評価部103aは、画質の劣化現象を表す特徴量を用いて処理前動画データと処理後動画データとを比較することによって、画像処理に起因する処理後動画データにおける画質の劣化を、画質の劣化現象を表す特徴量ごとに評価することができる。なお、ここで、画質の劣化現象を表す特徴量は、上述した画像のぼやけの度合いを表す特徴量である空間情報特徴エラー率ER_SI、ブロック歪みの大きさを表す特徴量である水平垂直・非水平垂直特徴エラー率ER_HV、ランダムノイズの大きさを表す特徴量であるランダムノイズの量D、および各コマ間の明るさの変化度合いを表す特徴量であるフレーム毎のフリッカ用のエラー率ER_Fをいう。
【0028】
評価結果出力部103bは、画質評価部103aによる画質の評価結果をモニタ105に出力して表示する。本実施の形態では、評価結果出力部103bは、使用者が、画質の劣化状況を上述した各要因ごとに把握できるように、それぞれの画質の劣化現象を表す特徴量を数値、または数値を模式化した図形により表示する。例えば、図4に示すように、処理前動画データ4a、処理後画像データ4b、画質の劣化現象を表す特徴量の数値データ4c、および画質の劣化現象を表す特徴量を模式的に表したインジケータ4cを一画面内に表示する。なお、評価結果出力部103bは、処理前動画データ4aおよび処理後画像データ4bとともに、数値データ4cとインジケータ4cのいずれか一方のみを表示するようにしてもよい。
【0029】
なお、インジケータ4cは、上述した処理で算出した4つの画質の劣化現象を表す特徴量のそれぞれごとに表示されている。すなわち、画像のぼやけの度合いを表す特徴量である空間情報特徴エラー率ER_SIに基づいて特定される画像劣化の度合いを表したインジケータ4c−1、ブロック歪みの大きさを表す特徴量である水平垂直・非水平垂直特徴エラー率ER_HVに基づいて特定される画像劣化の度合いを表したインジケータ4c−2、ランダムノイズの大きさを表す特徴量であるランダムノイズの量Dに基づいて特定される画像劣化の度合いを表したインジケータ4c−3、および各コマ間の明るさの変化度合いを表す特徴量であるフレーム毎のフリッカ用のエラー率ER_Fに基づいて特定される画像劣化の度合いを表したインジケータ4c−4が表示されている。
【0030】
これによって、使用者は画面上で、処理前動画データ4aと処理後動画データ4bとを見比べることができ、さらに、処理後動画データの画質の劣化状況を数値データ4cおよびインジケータ4dにより視覚的に把握することができる。
【0031】
なお、上述したように、画質評価部103aによる画質の評価は、処理後動画データの各フレームに対して行われる。このため、図4に示す画面上では、使用者によって動画の再生が指示されると、処理前動画データ4aおよび処理後動画データ4bは同時に再生される。すなわち、画面上には、処理前動画データ4aと処理後動画データ4bの対応するフレームが同時に表示され、所定のフレームレートでそれぞれのフレームが切り替えられる。
【0032】
そして、画質評価部103aは、再生中の各フレームごとに、上述した画質の評価処理を行い、その評価結果を逐次画面上に表示していく。すなわち、数値データ4cおよびインジケータ4dを逐次更新していく。これによって、図4に示す画面上では、処理前動画データ4aおよび処理後動画データ4bの表示中のフレームに対する画質の評価結果が、数値データ4cおよびインジケータ4dに表示され、表示するコマの切り替わりとともに、数値データ4cおよびインジケータ4dの表示内容も更新されていくことになる。
【0033】
図5は、本実施の形態における画像評価装置100の処理を示すフローチャートである。図5に示す処理は、使用者によって処理後動画データの再生が指示されることにより、処理後動画データの再生が開始されると起動するプログラムとして制御装置103によって実行される。
【0034】
ステップS10において、画質評価部103aは、処理前動画データおよび処理後動画データの1フレーム目を読み込んで、ステップS20へ進む。ステップS20では、画質評価部103aは、読み込んだ処理前動画データのフレームと、処理後動画データのフレームとを比較することによって、上述した画質の劣化現象を表す特徴量を算出する。すなわち、画像のぼやけの度合いを表す特徴量である空間情報特徴エラー率ER_SI、ブロック歪みの大きさを表す特徴量である水平垂直・非水平垂直特徴エラー率ER_HV、ランダムノイズの大きさを表す特徴量であるランダムノイズの量D、および各コマ間の明るさの変化度合いを表す特徴量であるフレーム毎のフリッカ用のエラー率ER_Fをそれぞれ算出する。その後、ステップS30へ進む。
【0035】
ステップS30では、評価結果出力部103bは、図4で上述したように、処理前動画データ4a、処理後画像データ4b、画質の劣化現象を表す特徴量の数値データ4c、および画質の劣化現象を表す特徴量を模式的に表したインジケータ4cを一画面内に表示する。その後、ステップS40へ進み、画質評価部103aは、画質評価を行ったフレームが、動画データの最終フレームであるか否かを判断する。否定判断した場合には、ステップS50へ進んで、処理前動画データおよび処理後動画データの次フレームを読み込んで、ステップS20へ戻る。これに対して、肯定判断した場合には、処理を終了する。
【0036】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)画質評価部103aは、処理前動画データと処理後動画データとを、画質の劣化現象を表す特徴量を用いて比較して、画像処理に起因する処理後動画データにおける画質の劣化を、画質の劣化現象を表す複数の特徴量ごとに評価した。そして、評価結果出力部103bは、処理前動画データ、処理後動画データ、および評価結果をモニタ105に表示するようにした。これによって、使用者は、処理後動画データの画質が処理前動画データの画質と比較してどの程度劣化しているかを把握することができる。
【0037】
(2)評価結果出力部103bは、画質の評価結果を、数値、または数値を模式化した図形、すなわちインジケータにより表示するようにした。これによって、使用者は、画質の評価結果を視覚的に把握することができる。
【0038】
(3)画質の劣化現象を表す特徴量は、ぼやけの度合いを表す特徴量、ブロック歪みの大きさを表す特徴量、ランダムノイズの大きさを表す特徴量、および各コマ間の明るさの変化度合いを表す特徴量とした。これによって、主な画質の劣化要因を対象として画質の評価を行うことができ、使用者は、処理後動画データの画質の劣化状況を的確に把握することができる。
【0039】
―変形例―
なお、上述した実施の形態の画像評価装置は、以下のように変形することもできる。
(1)上述した実施の形態では、評価結果出力部103bは、図4に示したように、画質の劣化現象を表す特徴量をインジケータ4cで表示するようにし、表示中のフレームが切り替わるごとに、インジケータ4cの表示内容も表示中のフレームの特徴量を示すように更新する例について説明した。しかしながら、評価結果出力部103bは、各フレームごとにインジケータ4cを表示して画質の劣化現象を表す特徴量を模式的に表すだけでなく、動画全体の特徴量の変化状況を折れ線グラフ等により表すようにしてもよい。
【0040】
(2)上述した実施の形態では、評価結果出力部103bは、図4に示したように、処理前動画データ4a、処理後画像データ4b、画質の劣化現象を表す特徴量の数値データ4c、および画質の劣化現象を表す特徴量を模式的に表したインジケータ4cを一画面内に表示する例について説明した。しかしながら、評価結果出力部103bは、処理後画像データ4bに代えて、画質の劣化現象を表す特徴量を可視化した画像を生成して表示するようにしてもよい。図6は、処理後画像データ4bに代えて、ブロック歪みの大きさを表す特徴量である水平垂直・非水平垂直特徴エラー率ER_HVを可視化した画像6aを表示した場合を示している。これによって、使用者は、処理後動画データ内で画質の劣化が発生している箇所を特定することができる。
【0041】
(3)上述した実施の形態では、画質評価部103aは、処理後動画データの画質の劣化状況を各特徴量ごとに評価する例について説明した。しかしながら、画質評価部103aは、さらに、上述した処理で算出したそれぞれの画質の劣化現象を表す特徴量に基づいて、処理後動画データの画質を総合的に評価するようにしてもよい。
【0042】
例えば、画質評価部103aは、画像のぼやけの度合いを表す特徴量である空間情報特徴エラー率ER_SI、ブロック歪みの大きさを表す特徴量である水平垂直・非水平垂直特徴エラー率ER_HV、ランダムノイズの大きさを表す特徴量であるランダムノイズの量D、および各コマ間の明るさの変化度合いを表す特徴量であるフレーム毎のフリッカ用のエラー率ER_Fのそれぞれに対して重み付けを行った評価値Rを次式(13)によって算出する。なお、次式(13)において、w1〜w4は、各特徴量に付加する重み値であって、その値はあらかじめ設定されている。
R=w1・ER_SI+w2・ER_HV+w3・D+w4・ER_F ・・・(13)
【0043】
そして、画質評価部103aは、式(13)で算出した評価値Rと、あらかじめ設定した閾値Tとを比較し、R>Tならば画質評価は合格、R≦Tならば画質評価は不合格といったように、処理後動画データの各フレームについて画質の総合的な評価を行う。
【0044】
あるいは、ER_SIに対する閾値をT1、ER_HVに対する閾値をT2、Dに対する閾値をT3、およびER_Fに対する閾値をT4としてあらかじめ設定しておき、各特徴量とそれぞれに対応する閾値とを比較した結果、特徴量>閾値、例えばER_SI>T1が成り立てば1を返し、成り立たない場合には0を返す関数funcを定義しておく。この関数funcは、例えば、func(ER_SI>T1)のように表記し、ER_SI>T1が成り立つ場合には、func(ER_SI>T1)=1となり、成り立たない場合には、func(ER_SI>T1)=0となる。
【0045】
画質評価部103aは、この関数を用いた次式(14)によって評価値R´を算出し、このR´とあらかじめ設定した閾値T´とを比較する。画質評価部103aは、R´>T´ならば画質評価は合格、R´≦T´ならば画質評価は不合格といったように、処理後動画データの各フレームについて画質の総合的な評価を行うようにしてもよい。
R´=func(ER_SI>T1)+func(ER_HV>T2)+func(D>T3)+func(ER_F>T4) ・・・(14)
【0046】
評価結果出力部103bは、画質評価部103aによるこの総合的な画質の評価結果をモニタ105へ出力して表示する。以上の処理により、画質評価部103aは、処理後動画データの画質の劣化状況を各特徴量ごとに評価するとともに、処理後動画データの総合的な画質を評価することもできる。
【0047】
(4)上述した実施の形態では、デジタルカメラ等で所定のファイル形式、例えばMPEG形式に圧縮された動画データを処理後動画データとした。そして、画質評価部103aは、当該処理後動画データと圧縮を行う前の元動画データである処理前動画データとを比較することによって、画質の劣化現象を表す特徴量ごとに処理後動画データを構成する各フレームの画質を評価する例について説明した。しかしながら、処理前動画データとして、使用者によって任意に画質が劣化された動画データを用いるようにしてもよい。これによって、使用者は、動画データの画質を任意に変化させ、それにより、処理前画像と比較してどの程度画質が劣化するかをシミュレーションすることができる。
【0048】
なお、使用者は以下のようにして、処理前動画データの画質を劣化させた処理後動画データを作成することができる。ここでは、次の(a)〜(d)に示すように、処理前動画データに対してぼかしを付加して画質を劣化させる場合、ブロック歪みを付加して画質を劣化させる場合、ランダムノイズを付加して画質を劣化させる場合、およびフリッカを付加して画質を劣化させる場合について説明する。
【0049】
(a)処理前動画データに対してぼかしを付加して画質を劣化させる場合
処理前動画データを構成する各フレームをぼかす方法としては、各フレームの画像データに対して正規分布フィルタをかける方法がある。例えば、処理前動画データを構成する各フレーム(原画像)をf(x,y)とし、ぼかしを付加した画像(ぼかし画像)をF(x,y)とすると、ぼかし画像F(x,y)は、次式(15)および(16)によって表される。
【数13】

【数14】

使用者は、式(15)における標準偏差σの値を任意に設定したり、式(16)に示すフィルタg(i,j)の大きさ(3×3または5×5など)を任意に設定することによって、処理前動画データの各フレームを任意の強度でぼかすことができる。
【0050】
(b)処理前動画データに対してブロック歪みを付加して画質を劣化させる場合
ブロック歪みは、DCTのような直行変換を使って座標変換し、逆変換の際の誤差によって生じるものである。したがって、処理前動画データの各フレームに対してブロック歪みを付加するためには、実際にDCT変換を行い、誤差が入るように逆変換を行えばよい。例えば、原画像を8×8(pixel)の小領域に分割し、その小領域をf(x,y)とし、その小領域に対応するDCT変換後のデータをF(u,v)とした場合には、DCT変換および逆変換は、それぞれ次式(17)および(18)に示すようになる。
【数15】

【数16】

このとき、使用者は、逆変換を行う際に、式(18)において、M(≦7)およびN(≦7)の値を任意に設定することによって、処理前動画データの各フレームに対して任意の強度でブロック歪みを付加することができる。
【0051】
(c)処理前動画データに対してランダムノイズを付加して画質を劣化させる場合
処理前動画データを構成する各フレームに付加するランラムノイズとしては、例えばガウスノイズが考えられる。例えば、(0,1)上の一様分布に従う乱数X=(X,X)を次式(19)および(20)を用いて変換すると、μ=0、σ=1の正規分布関数になる。
【数17】

【数18】

【0052】
ここでは、この乱数Xを用いて、処理前動画データを構成する各フレームにガウスノイズを付加する。具体的には、処理前動画データを構成する各フレーム(原画像)をf(x,y)とし、ガウスノイズを付加した後の画像をF(x,y)とした場合には、画像F(x,y)は、次式(21)で表される。なお、次式(21)において、randは、一様分布に従う乱数X=(X,X)を入力すると、正規分布となるYおよびYを出力する。
【数19】

使用者は、式(21)において、標準偏差σの値を任意に設定することによって、処理前動画データの各フレームに対して任意の強度でランダムノイズを付加することができる。
【0053】
(d)処理前動画データに対してフリッカを付加して画質を劣化させる場合
フリッカは、フレームごとに画面全体の平均輝度が周期的に変化することによって、動画がちらついて見える現象をいうため、次式(22)によって、各フレームの輝度値を周期的に変化させれば、処理前動画データに対してフリッカを付加することができる。
【数20】

式(22)において、Tは輝度値を変化させる周期であり、Aはフレームの明るさを変化させるための倍率である。使用者は、この式(22)において、TおよびAの少なくともいずれか一方の値を任意に設定することによって、処理前動画データに対して、任意の周期および明るさ変化となるように、フリッカを付加することができる。
【0054】
なお、このように、使用者が動画データの画質を任意に変化させて、画質の劣化状態をシミュレーションする場合には、複数のパターンで画質を劣化させ、各パターンについて処理前動画データとの比較を行うことが考えられる。このため、処理前動画データに対して、異なる画像劣化の要因が付加され、複数の処理後動画データが作成された場合には、画質評価部103aは、それぞれの処理後動画データを対象として、上述した画質の評価を行う。そして、評価結果出力部103bは、複数の処理後動画データについての評価結果を同一画面上に表示するようにしてもよい。
【0055】
例えば、使用者によって、処理前動画データに対して、(a)で上述した方法でぼかしが付加された第1の処理後動画データと、(b)で上述した方法でブロック歪みが付加され、さらに(c)で上述した方法でランダムノイズが付加された第2の処理後動画データとが作成されたとする。この場合には、画質評価部103aは、第1の処理後動画データおよび第2の処理後動画データのそれぞれを対象として、画質の評価を行う。
【0056】
そして、評価結果出力部103bは、例えば図7に示すように、処理前動画データ4a、画質の劣化現象を表す特徴量の数値データ4c、第1の処理後動画データ7a、第1の処理後動画データの画質の劣化現象を表す特徴量を模式的に表したインジケータ7b、第2の処理後動画データ7c、および第2の処理後動画データの画質の劣化現象を表す特徴量を模式的に表したインジケータ7dを一画面上に表示する。また、原画像に基づいて画像の圧縮条件を変えて複数の処理後画像を作成し、作成した各処理後画像データの評価結果を同一画面上に表示するようにしてもよい。これによって、使用者は、複数の処理後画像データに対する評価結果を、一画面上で比較することができる。
【0057】
(5)上述した実施の形態では、画質の評価対象を動画データとし、処理前動画データの各フレームと、処理後動画データの対応するフレーム間で画質を比較して評価する例について説明した。しかしながら、本発明は、静止画同士を比較して画質の劣化状況を評価する場合にも適用可能である。すなわち、原画像と画像処理が施された処理後画像とを対象として、処理後画像が原画像と比較してどの程度画質が劣化しているかを評価することもできる。このように、静止画同士を比較する場合には、画質の劣化要因としてフリッカは考慮する必要がない。なお、カメラの連写機能を用いて複数枚の静止画を連続して撮影した場合には、各コマ間で明るさが変化する場合があるため、フリッカを考慮するようにしてもよい。
【0058】
(6)上述した実施の形態では、画像評価装置100としてパソコンを用いる例について説明した。しかしながら、本発明における動画評価装置100は、動画を再生して表示することができる他の機器に適用することもできる。例えば、動画再生機能を備えたデジタルカメラや携帯電話に適用することで、これらの機器上でも画質の評価を行うことができるようになる。
【0059】
また、図5に示した画質評価部103aおよび評価結果出力部103bによる処理を既述したプログラム(画質評価プログラム)を、使用者が画像を編集するための画像編集装置や、パソコン上で実行される画像編集アプリケーションに組み込むようにしてもよい。これによって、使用者は、画質評価プログラムを実行して得られる図4に示す画面を見て画質の劣化状況を把握した上で、その劣化を軽減するように画像の編集を行なうことができ、画像編集作業の効率を向上することができる。
【0060】
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】画像評価装置の一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】水平方向Sobelフィルタおよび垂直方向Sobelフィルタの具体例を示す図である。
【図3】水平垂直領域HV(i,j)および非水平垂直領域HV(i,j)の具体例を示す図である。
【図4】画質の評価結果を表示する画面の具体例を示す第1の図である。
【図5】画像評価装置100の処理を示すフローチャート図である。
【図6】画質の評価結果を表示する画面の具体例を示す第2の図である。
【図7】画質の評価結果を表示する画面の具体例を示す第3の図である。
【符号の説明】
【0062】
100 画像評価装置、101 操作部材、102 接続IF、103 制御装置、103a 画質評価部、103b 評価結果出力部、104 HDD、105 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像を画像処理して得た処理後画像の画質を評価するための画像評価装置であって、
前記原画像と前記処理後画像とを、画質の劣化現象を表す複数の特徴量を用いて比較して、前記画像処理に起因して生じた前記処理後画像における画質の劣化を、前記画質の劣化現象を表す特徴量ごとに評価する評価手段と、
前記原画像、前記処理後画像、および前記評価手段による評価結果を表示する表示制御手段とを備えることを特徴とする画像評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像評価装置において、
前記評価手段は、前記原画像と、あらかじめ作成された前記画質の劣化現象が異なる複数の処理後画像のそれぞれとを、前記画質の劣化現象を表す特徴量を用いて比較して前記評価を行い、
前記表示制御手段は、前記原画像、前記複数の処理後画像、および各処理後画像ごとの前記評価結果を表示することを特徴とする画像評価装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像評価装置において、
前記表示制御手段は、前記処理後画像に代えて、前記画質の劣化現象を表す特徴量を可視化した画像を表示することを特徴とする画像評価装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像評価装置において、
前記表示制御手段は、前記評価結果を、数値、または前記数値を模式化した図形により表示することを特徴とする画像評価装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像評価装置において、
前記画質の劣化現象を表す特徴量は、ぼやけの度合いを表す特徴量、ブロック歪みの大きさを表す特徴量、ランダムノイズの大きさを表す特徴量、および各コマ間の明るさの変化度合いを表す特徴量の少なくともいずれかであることを特徴とする画像評価装置。
【請求項6】
原画像を画像処理して得た処理後画像の画質を評価するための画像評価プログラムであって、
コンピュータに、
前記原画像と前記処理後画像とを、画質の劣化現象を表す複数の特徴量を用いて比較して、前記画像処理に起因する前記処理後画像における画質の劣化を、前記画質の劣化現象を表す特徴量ごとに評価する評価手順と、
前記原画像、前記処理後画像、および前記評価手順での評価結果を表示する表示制御手順とを実行させるための画像評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−287329(P2008−287329A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129188(P2007−129188)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(592217093)株式会社ニコンシステム (102)
【Fターム(参考)】