説明

画像誘導放射線処置のためのコーン・ビームCTスキャンへのX線画像の高精度重ね合わせ

画像誘導放射線外科向けの、コーン・ビームCTスキャンへのX線画像の高精度重ね合わせのための方法は、関心領域の2Dの処置前X線画像を得ること、ほぼ処置時に関心領域の2DのX線画像を得ること、ほぼ処置時に2DのX線画像を対応する2Dの処置前X線画像と重ね合わせて2Dの重ね合わせ結果を得ること、及び2Dの重ね合わせ結果を3Dの追跡結果へ変換して関心領域を追跡することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に画像誘導放射線処置システムに関し、具体的には、処置前のX線画像と処置実施中に得られたX線画像の重ね合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍学は、腫瘍の発生、診断、処置、予防の研究を含めて腫瘍を扱う医学の一分科である。腫瘍は、生理学的機能に役立たない細胞が抑制されずに累進的に増殖することに起因する組織の成長異常である。腫瘍は悪性(癌)かもしれないし、良性かもしれない。悪性腫瘍は、血管又はリンパ系を通って他の身体各部へ癌細胞を広げる(転移する)腫瘍である。良性腫瘍は、転移しないが、神経、血管、器官などの重要な身体構造に影響を及ぼすとき、やはり生命を脅かす恐れがある。
【0003】
放射線外科及び放射線治療は、周囲の組織への放射線被曝を最小限にする一方で、標的領域(関心領域すなわちROI)へ規定された放射線量(例えばX線又はγ線)を照射することにより、腫瘍及び他の病変を処置するために外部放射線ビームを使用する放射線処置システムである。放射線外科及び放射線治療の両方の目的は、健康な組織や重要な組成を救う一方で腫瘍の組織を破壊することである。放射線治療は、1回の処置当りの線量が低いこと及び処置が多いこと(例えば30日から45日の処置)を特徴とする。放射線外科は、1回又はせいぜい数回の処置で、腫瘍に対して比較的高線量の放射線を照射することを特徴とする。放射線治療及び放射線外科では、どちらも放射線量が複数の角度から腫瘍部位に照射される。各放射ビームの角度が異なるので、すべてのビームは腫瘍部位を通り抜けるが、腫瘍に至る途上では健康な組織の異なる領域を通過する。その結果、腫瘍における蓄積放射線量は高く、健康な組織に対する平均放射線量は低い。
【0004】
従来の放射線治療及び放射線外科処置システムは、剛体で侵襲性定位の(3次元の基準の)フレームを使用して、関心領域を結像する診断/処置プランニングCAT(コンピュータ体軸断層撮影)スキャン又は他の3D結像方式(例えばMRIスキャン又はPETスキャン)の間中、及び後続の放射線処置中は患者を固定する。フレーム上の標点(基準)が、結像される領域(例えば脳)と固定の空間的関係を有するように、剛体のフレームが患者の骨性の構造(例えば頭蓋)に取り付けられる。次に、処置中に、フレームは、1つ又は複数の放射ビームの位置決め用に基準点を与える。従来の放射線外科システムでは、特定用途向けに機械加工された放射線遮蔽の穴を通る複数の同時放射ビームを生成するために、分配された放射源(例えばコバルト60)が使用される。従来の放射線処置システムでは、放射源は、固定の回転面で患者の回りを回転するガントリ構造中に取り付けられた単一ビーム・デバイスである。すべてのビームは回転中心(等角点)を通り抜けるが、患者は、各放射ビームが照射される前に、等角点に対して適切に位置決め又は再位置決めされなければならない。
【0005】
画像誘導の放射線治療システム及び放射線外科システム(一緒に、画像誘導の放射線処置システムすなわちIGR処置システム)は、処置プランニング段階(処置前結像段階)と処置実施段階(処置段階)の間の患者の位置の差を補正することにより、侵襲性のフレーム固定の使用を解消する。この補正は、処置実施段階中にリアルタイムのX線画像を得て、それらを、処置前CATスキャンから与えられた、デジタル再構成されたX線写真(DRR)として知られている基準画像と重ね合わせることにより達成される。
【0006】
図1は、CATスキャナの概略図を示す。図1に示されるように、X線源は、患者を通って検出器に当るX線の扇形ビームを生成する。処置台が静止している一方で、X線源と検出器を患者のまわりで回転させ、様々な角度位置から体を横切るスライスをスキャンさせることにより患者の横断面の像が得られる。各横断面のスライスが完了した後、台が(図1の面に垂直に)進められ、次の横断面のスライスが得られる。スライスからの画像データを統合することにより3次元(3D)画像(CTボリューム)が得られる。規定された放射線量を照射するために必要とされる、X線ビームの角度、持続時間、強度を算定する処置プランを作成するために、CATスキャンが使用される。
【0007】
DRRは、CATスキャン・スライスからのデータを組み合わせて、スライスを通る2次元の(2D)投影図(リアルタイム結像システムの形状寸法を近似する)を計算することにより生成される合成X線画像である。DRR画像とリアルタイムX線画像の間の重ね合わせプロセスは、基準画像とリアルタイム画像の間の並進と回転の位置合わせ不良を補正することを意図する。
【0008】
重ね合わせの精度は、重ね合わせプロセスに使用されたDRR画像の精度によって制限される。また、DRR画像の精度は、診断CATスキャンの分解能によって制限される。前述のように、DRRは合成のX線である。DRRは、CTボリュームを通してスライスからスライスまでトレース・ラインを統合することにより得られる。X線画像と比べてDRRはぼやけており、また、像の詳細のいくつかが失われることがある。したがって、重ね合わせプロセスは、高画質のリアルタイムX線画像を低画質のDRR画像と比較する。また、重ね合わせの全体的性能はDRRの分解能によって制限される。
【0009】
図2は、DRR画像の使用に関連した1つの起こり得る問題を示す。図2は、不規則性のある血管のすぐ近くに腫瘤がある様子を示す。CATスキャンは、一連の増分によって分離された一連の横断面のスライスから成り、増分が患者の総計のX線被曝を安全なレベルに制限する働きをする。CATスキャン・データからDRRが生成されるとき、画像はスライス間の直線補間によって与えられるが、これによって、与えられた画像の詳細が損なわれる。図3は、図2から得られたデータからの、腫瘤と血管のそのような描写を示す。図3では、CATスキャン・スライス間の増分が不規則性のサイズより大きいので、血管の不規則性が失われる。特徴形状データが失われると、重ね合わせプロセスを駆動するために使用される、DRRとリアルタイムX線画像の間のあらゆる類似性測度の有効性が低下する。DRR描写プロセスによって、増分中の密度変化データも失われ、このことによって、処置中に軟繊維組織の運動を追跡することが困難又は不可能になる恐れがある。
【0010】
本発明は、添付図面において、限定ではなく例として説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の説明では、本発明の実施形態についての十分な理解をもたらすために、特定の構成要素、デバイス、方法等の例など多数の具体的な細部が明らかにされる。しかし、本発明の実施形態を実行するために、これらの具体的な細部を使用する必要はないことが当業者には明らかであろう。他の例では、本発明の実施形態を不必要に不明瞭にしないために、周知の材料又は方法は詳細には説明されていない。本明細書に使用される用語「結合された」は、1つ又は複数の介在する構成要素又はシステムによって直接結合されるか又は間接的に結合されることを意味してよい。本明細書に使用される用語「X線画像」は、可視のエックス線画像(例えば画面に表示されたもの)又はX線画像のデジタル表現(例えばX線検出器の画素出力に対応するファイル)を意味してよい。用語「処置中の画像」又は本明細書に使用されるような「リアルタイム画像」は、放射線外科又は放射線治療処置の処置実施段階中の任意の時点(放射源がオンの時もオフの時も含み得る)で捕えられた画像を意味している。本明細書に使用される用語IGRは、画像誘導放射線治療、画像誘導放射線外科又はその両方を意味している。
【0012】
画像誘導放射線外科及び画像誘導放射線治療のための、X線画像のCTスキャン画像への高精度重ね合わせのための方法及びシステムが説明される。一実施形態では、本方法は、処置前結像システムからの関心領域の2Dの処置前X線画像(例えば処置プランニング段階中のもの)を含む。本方法は、関心領域の2Dの処置中X線画像を(例えば処置実施段階中に)得て、この2Dの処置中X線画像を、対応する2Dの処置前X線画像と重ね合わせて2Dの重ね合わせ結果を得ることも含む。最終的に、本方法は、2Dの重ね合わせの結果を3Dの追跡結果へ変換して、画像誘導放射線外科又は画像誘導放射線治療(IGR)処置中に関心領域を追跡することを含む。
【0013】
図4に示される一実施形態では、処置プランニング及び実施システム400は、患者の関心領域の処置前X線画像を得るために画像診断システム401を含む。画像診断システム401は、3Dの結像及び診断プロセスの一部として2Dの高画質X線画像を直接生成する結像システムである。例えば、画像診断システム401は、患者のまわりで1つ又は複数のX線源と検出器の対を回転させることにより、1組の投影された2DのX線画像を生成するコーン・ビームCTスキャナである。コーン・ビームCTスキャナは当技術において既知であり、したがって本明細書では詳細に説明しない。あるいは、画像診断システム401は、中間の変換なしで2DのX線画像を直接生成する他の結像システムでもよい。画像診断システム401によって生成されたX線画像は、単一のX線源と検出器によって連続的に生成された又は同時に2組のX線源と検出器によって生成された、患者の関心領域を通る対の直交投影図を含む。画像診断システム401によって得られた画像の組は、診断及び処置プランニング用のCTボリュームを構成するために十分な数の関心領域の画像を含む。あるいは、画像診断システム401によって得られた2Dの処置前X線画像の組は、画像誘導放射線処置中の関心領域の2Dの処置中X線画像の期待範囲にほぼ対応する少数の画像であり、その場合には、処置前X線画像の組は、従来のCATスキャンと互いに相関させられる。2Dの処置X線画像の期待範囲は、IGR処置中の患者位置の期待範囲に対応し、この位置は、処置前画像取得プロセス中に患者の1つ又は複数の位置からずれるかもしれない。
【0014】
画像診断システム401によって得られた画像は、当技術で既知のデジタル・エンハンスメント技術を用いて、画像プロセッサ402によって画像の特徴形状を向上させるように処理することができ、処置プランニング・システム403中の処置プランニング・ライブラリ403−Aに格納される。処置プランニング・ライブラリ403−Aは、例えばデジタルX線画像を格納することができる磁気媒体又はソリッド・ステート媒体など任意の種類のデジタル記憶媒体でよい。処置プランニング・システム403は、3Dの診断画像及び1つ又は複数の処置プランを与えるように構成することができ、その処置プランは、将来のIGR処置中の放射線処置X線源と関心領域の空間的関係を含むことができる。処置プランニング・システム403を、システム・プロセッサ404に結合することができ、このプロセッサは、命令を実行し、画像データや他のデータに関して動作し、IGRシステム406などのIGRシステムに指令することができる任意のタイプの汎用又は特殊用途の処理デバイスでよい。システム・プロセッサ404はメモリ405を含み、これは、オペレーティング・システム400向けにデータと命令を格納することができる任意のタイプのメモリでよい。一実施形態では、IGRシステム406は、フレームレス・ロボット・ベースの線形加速器(LINAC)放射線外科システム、例えばカリフォルニア州サニーヴェールのアキュラシー社によって製造されたサイバーナイフ(登録商標)定位的放射線処置システムである。IGRシステム406は、IGR実施システム408とリアルタイム結像システム409と結合されたIGRコントローラ407を含む。IGRコントローラ407は、システム・プロセッサ404からのコマンドに応答してIGR実施システム408とリアルタイム結像システム409の動作を調整するように構成される。リアルタイム結像システム409から得られたリアルタイムX線画像は、前述のように、画像の特徴形状を向上させるために画像プロセッサ410によって処理され、これによって、処置前画像と処置中画像の間の類似性測度を改善することができる。処置前画像と処置中画像の重ね合わせは、処置プランニング・システム403とリアルタイム結像システム409からシステム・プロセッサ404に送られた画像データに対してシステム・プロセッサ404によって実行することができる。処置前X線画像と処置中X線画像の重ね合わせは、面内変換、面内回転、面外回転の計算を含むことができるが、これは当技術では既知である。
【0015】
図5は、本発明が使用することができるフレームレス・ロボット・ベースのLINAC放射線外科システムの一実施形態を示す。図5では、処置実施システム408は、放射線外科X線ビームを生成するための線形加速器(LINAC)501と、そのLINAC 501を患者と関心領域へ位置決めするためのロボット・アーム509と、リアルタイム結像システム409に対して患者を位置決めするための診察台503とを含む。そのようなシステムでは、LINACを位置決めして、患者のまわりの動作ボリューム(例えば球体)内で多くの角度から照射される高度にコリメートされたビームで腫瘍の組織を照射するために、LINAC 501は、動きに多自由度(例えば5以上)を与えるように、ロボット・アーム509の端部に取り付けられる。処置は、単一の等角点、複数の等角点、又は非等角アプローチ(例えば、ビームは標的にされた腫瘤と交差するだけで、必ずしも標的部位中の単一ポイントすなわち等角点に集束するわけではない)のビーム経路を含むことができる。処置は単一のセッション(モノ・フラクション)又は処置プランニング中に求められるような少数のセッション(ハイポ分別)で実施される。
【0016】
あるいは、他のタイプの処置実施システムを使用してもよい。一例に、ガントリ・ベース(非等角)の強度変調された放射線治療(IMRT)システムがある。ガントリ・ベースのシステムでは、放射源(例えばLINAC)は、患者の軸方向のスライスに対応する固定面で回転するように、回転するガントリに取り付けられる。次いで、放射は、回転面のいくつかの角度位置から照射される。IMRTでは、放射ビームの形状は、ビームの一部が阻止されて、患者に入射する残りのビームが既定の形状を有することができるようにするマルチリーフ・コリメータによって決められる。IMRTプランニングでは、処置プランニングのアルゴリズムは、メイン・ビームのサブセットを選択し、その総合的な線量制約条件を満たすように各補助ビームに対する被曝時間の量を求める。処置実施システムの他の例は、γ線実施システム(例えば、放射源としてコバルト・アイソトープを使用する)を含む。
【0017】
IGRコントローラ407(図5に示さず)は、ロボット・アーム509に埋め込まれてよく、又は個別の構成要素でもよい。図5では、リアルタイム結像システム409は、結像X線源506−A、506−B及びX線画像検出器507−A、507−Bを含む。X線画像検出器507−A、507−Bは、IGR処置中に2Dの高画質X線画像を生成することができるアモルファス・シリコン検出器でよく、互いに90度で、かつ床に対して45度に取り付けられている。処置段階中に、以下に説明されるような3D空間へ2Dの画像を再構成することを容易にするために、患者は、45度のLAO(左前方斜位)角度とRAO(右前方斜位)角度で結像される。当技術で知られているように、IGRシステム406の他の実施形態は、ガントリ・ベースの放射線治療システム又は放射線外科システムを含むことができる。
【0018】
図6は、図5に例示のIGRのシステム406を概略的に示す。図6では、理解しやすいようにロボット・アーム509が省略されている。図6に示されるように、LINAC 501は、患者502の関心領域に高エネルギー放射線を照射するように位置決めされる。電動診察台503は、患者502の関心領域を装置の中心505に位置決めするように使用されるが、以下でより詳細に説明される。前述のように、ロボット・アーム509は、LINAC 501を位置決めする際に6自由度(例えば3つの直角座標と各座標のまわりの回転)を与えることができる。装置の中心505を取り巻くほぼ半球の領域504の任意の個所にLINAC 501を位置決めすることができる。結像X線源506−A、506−Bは、LINAC 501の動作範囲外に取り付けられ、直角に配置された2つのX線検出器507−A、507−Bを照射するよう整合される。X線源506−A、506−BからのX線ビームを使用して、X線源506−A、506−Bからのトレースされたそれぞれの放射線508−Aと508−Bの交差個所で、図6中の「x」によって示された装置の中心505を決める。両放射線はそれぞれの検出器507−A、507−Bに対して垂直である。装置の中心505は、処置前X線画像と処置中X線画像の重ね合わせのための基準点として使用される。代替の結像構成と形状寸法を使用できることに留意されたい。例えば、X線検出器507−Aと507−Bの間の角度は、90度より大きくても小さくてもよい。他の実施形態では、1つ又は複数の追加の装置中心を決めるために追加のX線源と検出器を使用することがある。
【0019】
図7は、リアルタイム結像システム409を用いてIGR処置中に患者の動きをどのように検出することができるかを示す。図7では、2つの位置601−1、601−2での患者の投射画像は、結像システムの(x、y、z)座標系に対して参照されて投影図602−A、602−Bに示され、円は、図の面へ入る座標方向を示す。投影図602−AはY−Z面の動きを検出し、投影図602−BはX−Z面の動きを検出する。そのような直交投影図システムは当技術において既知であり、したがって本明細書では詳細に説明しない。投影図602−Aと602−Bの組合せは、3つの座標軸すべてにおける位置情報を与えることができ、この情報がシステム・プロセッサ405経由でIGRコントローラ407に伝達されて、装置中心505を基準として患者502を配置する。
【0020】
処置実施段階中に、LINACが再位置決めされて始動される前に、リアルタイム結像システム409によって毎回患者の2DのリアルタイムX線画像を得ることができる。処置中X線画像は、処置プランニング・ライブラリ402に保存された2Dの高画質処置前X線画像の組と比較することができ、最もよく合致するものを重ね合わせ用に選択する。処置前画像とリアルタイムX線画像の直接比較では、以下の理由により完全な一致は実現しないかもしれない。1)処置前結像システムの形状寸法がリアルタイム結像システムの形状寸法と異なる(例えば2つの結像システムにおいてX線源から関心領域への距離と関心領域から検出器への距離が異なるかもしれない)かも知れず、異なった画像サイズとなり、また、2)患者が剛体でなく、処置前の測位に対して、処置時には、各軸(ヨー、ピッチ、ロール)のまわりの回転変位や肉体の圧縮また伸長があるであろう。したがって、処置プランによって放射線処置が関心領域(例えば腫瘤)に照射されることを確実なものにするために、処置前画像と処置中画像の重ね合わせが必要となる。
【0021】
一実施形態では、各ビームを活性化する前に、直角に投影された2つのリアルタイムX線画像が、2つのよく対応する直角に投影された処置前X線画像と比較され、重ね合わされる。各投影図における2Dの重ね合わせは独立して実行されてよく、面内の並進と回転(例えば、投影図602−AにおけるY−Z並進と回転及び投影図602−BにおけるX−Z並進と回転)を修正し、その結果を組み合わせて3Dの追跡結果を与える3Dの剛体の変化に変換し、これが放射線量の照射に先立ってLINAC 501の位置を修正するために使用される。3D変換によって、例えば画像の特徴形状(解剖学的エッジ、画像勾配、輪郭、対象のサーフェス又はセグメント化された対象など)又は画像の強度に基づく類似性測度を用いて、リアルタイム画像と基準画像の間の面内並進の相違及び面外回転の相違の予測がもたらされる。例えば、公開された米国特許出願第2005/0047544号、第2005/0049477号及び第2005/0049478号に説明されるように、画像重ね合わせ技術は当技術において既知である。本発明の実施形態では、合成DRR画像と比べて、高画質処置前X線画像の利用可能性によって特徴抽出及び軟繊維の可視化が改善され、重ね合わせプロセスで用いられる当技術で既知の最小化技術によって、重ね合わせ誤差をほぼ0に追い込むことが可能になる。
【0022】
別の実施形態では、3Dの処置プランは別の方式(例えば従来のCTスキャン)を用いて作成してよく、2Dの処置前画像は別々に3Dの処置プランと相関させてもよい。
【0023】
別の実施形態では、処置前結像システムと処置中結像システムの結像する形状寸法が異なるとき、処置中画像は、異なる形状寸法を補正するために、例えばシステム・プロセッサの倍率変更アルゴリズムによって倍率変更されてもよい。
【0024】
図8は、画像誘導放射線外科及び画像誘導放射線治療のためのCTスキャンへのX線画像の高精度重ね合わせの一実施形態における方法800を示す。図4に関して、この方法は、処置プランニング段階中に、画像診断システム401を用いてコーン・ビームCTスキャン・ボリュームを得るステップ(ステップ801)と、処置プランニング・システム402を用いてコーン・ビームCTから2Dの処置前X線画像を選択するステップ(ステップ802)と、画像プロセッサ403を用いて2Dの処置前X線画像を前処理し、処置前X線画像の特徴形状を抽出するステップ(ステップ803)とを含んでいる。処置実施段階では、この方法は、リアルタイム結像システム409を用いて2DのリアルタイムX線画像を得るステップ(ステップ804)と、画像プロセッサ410を用いて2DのリアルタイムX線画像を処理して、リアルタイムX線画像の特徴形状を抽出し、かつ画像診断システム401とリアルタイム結像システム409の間の、結像する形状寸法の相違を補正するために任意選択で2DのリアルタイムX線画像を倍率変更するステップ(ステップ805)と、2DのリアルタイムX線画像をシステム・プロセッサ404内の対応する2Dの処置前X線画像と重ね合わせて、2Dの重ね合わせ結果を得るステップ(ステップ806)と、システム・プロセッサ404において幾何学的変換を行って2DのリアルタイムX線画像を3Dのリアルタイム・ボリュームに変換するステップ(ステップ807)と、処置前CTボリュームに対して3Dのリアルタイム・ボリュームを追跡するステップ(ステップ808)とを含んでいる。
【0025】
このように、画像誘導放射線外科のための、CTスキャンへのX線画像の高精度重ね合わせ向けのシステム及び方法が説明された。本発明の態様が少なくとも部分的にソフトウェアで実施されてもよいことは上記説明から明らかであろう。すなわち、本技術は、メモリ405などのメモリに含まれた命令のシーケンスを実行するシステム・プロセッサ404など、そのプロセッサに応じてコンピュータ・システム又は他のデータ処理システム内で実行することができる。様々な実施形態において、ハードウェアの回路をソフトウェアの命令と組み合わせて使用して本発明を実施することができる。したがって、本技術は、いかなるハードウェア回路とソフトウェアの特定の組合せ、又はデータ処理システムによって実行される命令のためのいかなる特定のソースにも限定されない。さらに、この説明の全体にわたって、説明を簡単にするために、様々な機能とオペレーションは、ソフトウェア・コードによって実行されるか又はソフトウェア・コードによってもたらされるものとして説明される。しかし、当業者なら、そのような表現によって意味されるのは、それらの機能は、システム・プロセッサ404又はIGRコントローラ407などのプロセッサ又はコントローラによるコードの実行に由来するということであると理解することができる。
【0026】
機械可読媒体は、データ処理システムによって実行されたとき、システムに本発明の様々な方法を実行させるソフトウェアとデータを格納するために使用することができる。この実行可能なソフトウェアとデータは、例えば、メモリ405、処置プランニング・ライブラリ403−A、又はソフトウェア・プログラム及び/又はデータを格納することができる任意の他のデバイスを含む様々な所に格納することができる。
【0027】
したがって、機械可読媒体は、装置(例えばコンピュータ、ネットワーク・デバイス、携帯情報端末、製作ツール、1組の1つ又は複数のプロセッサを有する任意のデバイスなど)によってアクセス可能な形で情報を与える(すなわち、送信及び/又は格納する)任意の仕組みを含む。例えば、機械可読媒体は、記録可能媒体/非記録可能媒体(例えば読み取り専用メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学式記憶媒体、フラッシュ・メモリ・デバイスなど)などや電気的、光学式、音響、又は他の形式の伝搬信号(例えば搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)などを含む。
【0028】
この明細書の全体にわたって、「一実施形態」又は「実施形態」との言及は、その実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造又は特性が、少なくとも本発明の一実施形態に含まれることを意味するものと理解されたい。したがって、この明細書の様々な部分における「実施形態」、「一実施形態」又は「代替実施形態」への2つ以上の言及が、必ずしもすべてが同一の実施形態に言及しているのではないことが強調されており、理解されるべきである。その上、特定の特徴、構造又は特性は、本発明の1つ又は複数の実施形態において適当なものとして組み合わせることができる。さらに、本発明はいくつかの実施形態に関して説明されているが、本発明が説明された実施形態に限定されないことを当業者なら理解するであろう。本発明の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内の変更形態及び改変形態で実施することができる。したがって、本明細書及び図面は、本発明を限定するものではなく例示と見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来のCATスキャン装置を示す図である。
【図2】従来のCATスキャン・システムにおける断面の結像を示す図である。
【図3】従来のCATスキャン・システムにおけるDRR描写を示す図である。
【図4】画像誘導放射線処置のための、コーン・ビームCTスキャンへのX線画像の高精度重ね合わせの一実施形態におけるシステムを示す図である。
【図5】画像誘導放射線処置システムの一実施形態を示す図である。
【図6】結像システムの一実施形態を示す図である。
【図7】画像誘導放射線処置のための、コーン・ビームCTスキャンへのX線画像の高精度重ね合わせの一実施形態におけるリアルタイム結像システムを示す図である。
【図8】画像誘導放射線処置のための、コーン・ビームCTスキャンへのX線画像の高精度重ね合わせの一実施形態における方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ処置時に関心領域の1つ又は複数の2次元(2D)のX線画像を得るステップと、
前記ほぼ処置時に2DのX線画像を複数の2Dの処置前X線画像のうちの対応する1つと重ね合わせて2Dの重ね合わせ結果を得るステップとを含む方法。
【請求項2】
前記ほぼ処置時に、前記2Dの重ね合わせ結果を3Dの追跡結果に変換して前記関心領域を追跡するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の2Dの処置前X線画像が、前記ほぼ処置時に、前記関心領域の2DのX線画像の予想範囲に対応する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の2DのX線画像の前記予想範囲が、前記ほぼ処置時に、患者位置の予想範囲に対応する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の2Dの処置前X線画像が、前記関心領域の複数の対の直交投影図を含み、前記ほぼ処置時に前記複数の2DのX線画像が前記関心領域のもう1つの対の直交投影図を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ほぼ処置時に前記2DのX線画像を前記複数の2Dの処置前X線画像のうちの対応する1つと重ね合わせるステップが、面内並進、面内回転、面外回転を算定するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の2Dの処置前X線画像が3Dの処置プランニングに使用されるコーン・ビームCTスキャンのサブセットを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
CATスキャンを用いて3Dの処置プランを作成するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の2Dの処置前X線画像及び前記2DのX線画像が、結像する寸法形状の相違に該当し、ほぼ前記ほぼ処置時に前記2DのX線画像を倍率変更して前記結像する寸法形状の相違を補正するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ほぼ前記ほぼ処置時に前記複数の2Dの処置前X線画像を処理して前記2DのX線画像との重ね合わせのための特徴形状画像を抽出するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
データ処理システム上で実行されたとき、
ほぼ処置時に関心領域の1つ又は複数の2DのX線画像を得るステップと、
前記ほぼ処置時に2DのX線画像を複数の2Dの処置前X線画像のうちの対応する1つと重ね合わせて2Dの重ね合わせ結果を得るステップとを含む方法をシステムに実行させる命令を含む機械可読媒体。
【請求項12】
前記方法が、前記ほぼ処置時に前記2Dの重ね合わせ結果を3Dの追跡結果に変換して前記関心領域を追跡するステップをさらに含む請求項11に記載の機械可読媒体。
【請求項13】
前記複数の2Dの処置前X線画像が、前記ほぼ処置時に、前記関心領域の2DのX線画像の予想範囲に対応する請求項11に記載の機械可読媒体。
【請求項14】
複数の2DのX線画像の前記予想範囲が、前記ほぼ処置時に、患者位置の予想範囲に対応する請求項13に記載の機械可読媒体。
【請求項15】
前記複数の2Dの処置前X線画像が、前記関心領域の複数の対の直交投影図を含み、前記処置時に及び/又はその直前に前記複数の2DのX線画像が前記関心領域のもう1つの対の直交投影図を含む請求項11に記載の機械可読媒体。
【請求項16】
前記ほぼ処置時に前記2DのX線画像を前記複数の2Dの処置前X線画像の対応する1つと重ね合わせるステップが、面内並進、面内回転、面外回転を算定するステップを含む請求項11に記載の機械可読媒体。
【請求項17】
前記複数の2Dの処置前X線画像が3Dの処置プランニングに使用されるコーン・ビームCTスキャンのサブセットを含む請求項11に記載の機械可読媒体。
【請求項18】
前記複数の2Dの処置前X線画像及び前記2DのX線画像が、結像する寸法形状の相違に該当し、前記方法が、前記ほぼ処置時に前記2DのX線画像を倍率変更して前記結像する寸法形状の相違を補正するステップをさらに含む請求項11に記載の機械可読媒体。
【請求項19】
前記方法が、前記ほぼ処置時に前記複数の2Dの処置前X線画像を処理して前記2DのX線画像との重ね合わせのための特徴形状画像を抽出するステップをさらに含む請求項11に記載の機械可読媒体。
【請求項20】
ほぼ処置時に関心領域の1つ又は複数の2DのX線画像を得るための結像システムと、
前記ほぼ処置時に前記結像システムを制御し、前記1つ又は複数の2DのX線画像を複数の2Dの処置前X線画像のうちの対応する1つ又は複数と重ね合わせ、かつ2Dの重ね合わせ結果を得るために、前記結像システムに結合された処理デバイスとを備える装置。
【請求項21】
前記ほぼ処置時に前記処理デバイスが、前記関心領域を追跡するために前記2Dの重ね合わせ結果を3Dの追跡結果に変換する請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記複数の2Dの処置前X線画像が、前記ほぼ処置時に、前記関心領域の前記1つ又は複数の2DのX線画像の予想範囲に対応する請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記1つ又は複数の2Dの処置前X線画像の前記予想範囲が、前記ほぼ処置時に、患者位置の予想範囲に対応する請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記複数の2Dの処置前X線画像が、前記関心領域の複数の対の直交投影図を含み、前記ほぼ処置時に前記結像システムが、前記1つ又は複数の2DのX線画像を前記関心領域の直交投影図の複数の対として得るように構成される請求項20に記載の装置。
【請求項25】
前記ほぼ処置時に前記処理デバイスが、面内並進、面内回転、面外回転を算定することにより前記1つ又は複数の2DのX線画像を前記複数の2Dの処置前X線画像のうち対応する1つ又は複数と重ね合わせる請求項20に記載の装置。
【請求項26】
前記複数の2Dの処置前X線画像が3Dの処置プランニングに使用されるコーン・ビームCTスキャンのサブセットを備え、前記処理デバイスが前記2Dの重ね合わせ結果を3Dの追跡結果に変換する請求項20に記載の装置。
【請求項27】
前記複数の2Dの処置前X線画像及び前記2DのX線画像が結像する寸法形状の相違に該当し、ほぼ前記ほぼ処置時に前記2DのX線画像を倍率変更して前記結像する寸法形状の相違を補正するために、前記結像システム及び前記処理デバイスに結合された第1の画像プロセッサをさらに備える請求項20に記載の装置。
【請求項28】
前記ほぼ処置時に前記複数の2Dの処置前X線画像を処理して前記2DのX線画像との重ね合わせのための特徴形状画像を抽出するために第2の画像プロセッサをさらに備える請求項27に記載の装置。
【請求項29】
処置プランを実施するための処置実施システムと、
前記処置実施システム、前記結像システム及び前記処理デバイスと結合され、前記処置実施システムを前記3Dの追跡結果と連携して働かせるコントローラとをさらに備える請求項20に記載の装置。
【請求項30】
ほぼ処置時に関心領域の1つ又は複数の(2Dの)X線画像を得るための手段と、
前記ほぼ処置時に2DのX線画像を複数の2Dの処置前X線画像のうちの対応する1つと重ね合わせて2Dの重ね合わせ結果を得るための手段とを備える3Dの画像誘導処置実施システム。
【請求項31】
前記ほぼ処置時に前記2Dの重ね合わせ結果を3Dの追跡結果に変換して前記関心領域を追跡するための手段をさらに備える請求項30に記載の画像誘導処置実施システム。
【請求項32】
CATスキャンを用いて3Dの処置プランを作成するための手段をさらに備える請求項30に記載の画像誘導処置実施システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2008−544831(P2008−544831A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520277(P2008−520277)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/025120
【国際公開番号】WO2007/005445
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(505005625)アキュレイ・インコーポレーテッド (11)
【Fターム(参考)】