説明

画像読取り装置

【課題】左右からのほぼ均等な配光を可能とし、省電力・低発熱なエレクトロルミネッセンス素子を光源として好適に利用することのできる画像読取り装置を得る。
【解決手段】CCDラインセンサによって原稿画像を1ラインずつ読み取る画像読取り装置。原稿読取り位置Rを照明するための光源ユニット10は、第1の光源であるランプ21と、第2の光源であるEL素子22を用いている。ランプ21及びEL素子22からの光は読取り位置Rを照射する。ランプ21からEL素子22に向かって放射された光は、EL素子22の陰極電極26で反射され、読取り位置Rを照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取り装置、特に、原稿画像を光学的に読み取るための画像読取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタに搭載される、あるいは、パソコンなどへの画像入力装置として用いられる画像読取り装置としては、光源にて原稿を照明し、原稿からの反射光をミラーを介して結像レンズに導き、CCD(光電変換素子)からなるラインセンサに結像させるように構成したものが知られている。
【0003】
この種の画像読取り装置にあっては、光源として、従来から、蛍光灯やハロゲンランプが主に使用されており、最近では、LEDやエレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子とも記す)が省電力・低発熱な光源として注目を集めている。
【0004】
ところで、ブック原稿などを読み取る際に光の照射による影が出ないように、光学系の移動方向の上流側及び下流側から光を原稿読取り位置に照射することが行われている。具体的には、第1の手法として、一つの光源に対して対向する位置に反射鏡を配置し、光源からの放射光を原稿読取り位置に反射させること、第2の手法として、ランプを上流側及び下流側に一つずつ配置することが採用されている。
【0005】
しかしながら、前記第1の手法では、原稿読取り位置において、反射鏡で反射された光量が光源からの光量よりも小さくなるために左右均等に配光することができず、ブック原稿や皺のある原稿では影の発生を確実に解消することは困難である。また、第2の手法では、ランプの発する熱量が2倍になり、近傍に位置するレンズなどの光学素子の性能変化が懸念される。
【0006】
特許文献1には、有機EL素子からの光を反射鏡で反射して光量の増大を図るようにした原稿読取り装置が記載されている。しかし、単に反射させるだけでは前記第1の手法と同様にほぼ均等に配光することはできない。
【特許文献1】特開2007−13913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、左右からのほぼ均等な配光を可能とし、省電力・低発熱なエレクトロルミネッセンス素子を光源として好適に利用することのできる画像読取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明は、
原稿を照明するための光源ユニットと、原稿からの反射光を結像するための結像手段と、結像された画像を読み取るための読取り手段と、を備えた画像読取り装置において、
前記光源ユニットは、第1の光源と、該第1の光源から光が放射される側に対向して配置された第2の光源とを含み、
第1の光源及び第2の光源のうち少なくとも第2の光源が発光面と反射面とを有すること、
を特徴とする。
【0009】
本発明に係る画像読取り装置においては、互いに対向する第1の光源と第2の光源とを配置し、少なくとも第2の光源が発光面と反射面とを有するため、原稿読取り位置に対しては、第1の光源及び第2の光源からの放射光に加えて、少なくとも第1の光源からの放射光を第2の光源で反射した反射光で照射することになり、左右からほぼ均等に照射することができ、原稿照射光量の増大を図ること、あるいは、光量が従来と同じであれば消費電力を少なくすることができる。
【0010】
本発明に係る原稿読取り装置において、発光面と反射面を有する光源として省電力・低発熱なエレクトロルミネッセンス素子を好適に用いることができる。発光面と反射面は原稿読取り位置での光量を最適化するように湾曲していてもよく、EL素子であれば、容易に湾曲させることができる。
【0011】
また、発光面は反射面の一部とのみ重なっていてもよく、あるいは、発光面と重なっていない部分にも反射面が設けられていてもよい。
【0012】
また、第2の光源は、必要に応じて、例えば、影の生じやすいブック原稿や皺のある原稿を読み取る際にのみ発光制御してもよい。第2の光源の寿命を延ばすことができ、寿命に問題のあるエレクトロルミネッセンス素子に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る画像読取り装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ部材、部分には共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
(画像読取り装置の概略構成、図1及び図2参照)
図1に本発明の第1実施例である画像読取り装置1Aの概略構成を示す。この画像読取り装置1Aは、プラテンガラス2上に載置された原稿Dの画像を縮小光学系を用いて読み取るもので、光源ユニット10にてプラテンガラス2上に載置された原稿Dを照射し、原稿面からの反射光をミラー15,16,17を介して結像レンズ18に入射し、該結像レンズ18にてCCDラインセンサ19(光電変換素子)上に結像させる。
【0015】
光源ユニット10とミラー15とは第1スライダ11に搭載され、ミラー16,17は第2スライダ12に搭載され、それぞれ、矢印X方向に図示しないモータによって移動される。CCDラインセンサ19は矢印X方向とは直交する方向(主走査方向Y)にライン状に配置され、光源ユニット10やミラー15なども主走査方向Yに延在しており、本明細書ではこの主走査方向Yを長手方向とも称する。
【0016】
図2に本発明の第2実施例である画像読取り装置1Bの概略構成を示す。この画像読取り装置1Bは、光源ユニット10、ミラー15,16,17、結像レンズ18及びCCDラインセンサ19を単一のスライダ13に収容したもので、これらの光学系が一体的に矢印X方向に移動し、プラテンガラス2上に載置された原稿Dの画像を読み取る。なお、本第2実施例は第1実施例に比べて光学系の精度が高く、駆動系の構成が簡単である利点を有している。
【0017】
(エレクトロルミネッセンス素子、図3参照)
前記光源ユニット10においては、移動方向Xの上流側に蛍光灯あるいはハロゲンランプなどのランプ21が配置され、下流側にエレクトロルミネッセンス素子22が配置されている。なお、ランプ21に代えてエレクトロルミネッセンス素子を配置してもよい。
【0018】
ここで、EL素子22について図3を参照して説明する。EL素子22は、透明な陽極電極24を備えた透明ガラス基板25と陰極電極26を備えた基板27とで発光層28を封止したものである。無機ELにあっては、発光層28に電界を印加することにより発光させる。有機ELにあっては、発光層28内で電子輸送層の電子とホール輸送層の正孔をと結合させることにより発光させる。
【0019】
発光層28からの光は透明ガラス基板25の外部へ矢印a方向に放射される。透明ガラス基板25から光が放射されるので、透明ガラス基板25を発光面と称する。陰極電極26には反射材(例えばアルミニウム)が使用され、照射効率を高めている。そして、透明ガラス基板25の外部から入射した光bは陰極電極26にて反射され、透明ガラス基板25から外部へ放射される。この意味で陰極電極26を反射面と称する。
【0020】
(光源ユニットの第1例、図4参照)
第1例は、図4に示すように、第1の光源Aとして蛍光灯、ハロゲンランプなどのランプ21を用い、第2の光源BとしてEL素子22を用いたもので、EL素子22は前述したように発光面(透明ガラス基板25)及び反射面(陰極電極26)を備えている。
【0021】
第1の光源Aの光は、原稿読取り位置Rに向けて放射されるとともに、その一部は第2の光源Bに向かって放射される。第2の光源Bに向かって放射された光は、透明ガラス基板25から内部に入射し、かつ、陰極電極26で反射され、原稿読取り位置Rを照射する。また、第2の光源B自体の光も原稿読取り位置Rを照射する。
【0022】
本第1例においては、互いに対向する第1の光源Aと第2の光源Bとを配置し、第2の光源Bとして発光面と反射面とを有するEL素子22を用いたため、原稿読取り位置Rに対しては、第1の光源A及び第2の光源Bからの放射光に加えて、第1の光源Aからの放射光を第2の光源Bで反射した反射光で照射することになり、左右からほぼ均等に照射することができ、原稿照射光量の増大を図ることができる。あるいは、光量が従来と同じであれば消費電力を少なくすることができる。
【0023】
(光源ユニットの第2例、図5参照)
第2例は、図5に示すように、第2の光源BであるEL素子22を原稿読取り位置Rでの光量を最適化するように湾曲させている。EL素子22は極めて薄く構成されており、容易に湾曲させることができる。他の構成は前記第1例と同様である。なお、EL素子22を湾曲ではなく鈍角に折り曲げてもよい。
【0024】
(シミュレーションによる照明効率)
ここで、第1例及び第2例による照明効率、即ち、第1の光源Aを発した光がどの程度第2の光源Bで反射されるか、についてのシミュレーション結果を以下の表1に示す。
【0025】
第1の光源Aの光量を「1」とした場合、第2の光源Bが全く光を反射しない場合をシミュレーション(a)とする。第1例(図4参照)に示した平面形状のEL素子22を用いた場合をシミュレーション(b)とする。さらに、第2例(図5参照)に示した湾曲形状のEL素子22を用いた場合をシミュレーション(c)とする。なお、表1の数値は第1の光源Aの光量を「1」とした場合の比率である。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示したように、第2の光源Bでの反射量は、シミュレーション(a)の場合は「0」、シミュレーション(b)の場合は「0.43」、シミュレーション(c)の場合は「0.50」である。従って、第1の光源A及び第2の光源Bからの配光比を望ましい5:5にするために第2の光源Bにおいて必要とされる光量は、シミュレーション(a)では「1」、シミュレーション(b)では「0.57」、シミュレーション(c)では「0.50」である。
【0028】
(光源ユニットの第3例、図6参照)
第3例は、図6に示すように、EL素子22において発光層28の一部を省略して発光面を領域H1とし、陰極電極26が延在する領域H2を反射面のみとしたものである。即ち、反射領域は陰極電極26が設けられている領域H1,H2であり、発光領域H1はこの反射領域の一部とのみ重なっている。
【0029】
本第3例では、EL素子22の発光量は相対的に少なくなるが、発光層28の面積が小さくなることで省電力化が図られる。読取り位置Rにおいては、領域H2での反射光と合わせて必要な光量が確保できればよい。
【0030】
(光源ユニットの第4例、図7参照)
第4例は、図7に示すように、第2の光源Bに発光面(透明ガラス基板25)とは重ならない部分にEL素子22とは別部材である反射面29を設けたものである。反射面29は任意な位置に取り付けることができる。
【0031】
(第2の光源に対する発光制御)
前記第2の光源Bは、必要に応じて、例えば、影の生じやすいブック原稿や皺のある原稿を読み取る際にのみ発光制御してもよい。制御部に対して、ブック原稿であることの情報が操作パネルから入力される。第2の光源Bを選択的に点灯させることで、第2の光源Bの寿命を延ばすことができ、寿命に問題のあるエレクトロルミネッセンス素子に適している。通常の原稿を読み取る際には第1の光源のみが点灯することになるが、その場合でも、第2の光源からの反射光が原稿面を照射するために、第1の光源の光量は少なくて済む。
【0032】
(他の実施例)
なお、本発明に係る画像読取り装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0033】
例えば、本発明が適用される画像読取り装置としては、光学系が移動して静止原稿の画像を読み取る方式以外に、所定位置で静止する読取り光学系の直上を原稿を所定速度で搬送することにより画像を読み取るスルーシート方式であってもよい。また、第1及び第2の光源の配置関係、光源ユニットからの照明光を原稿面に導く導光部材の構成、原稿面からの反射光を導くミラーなどの構成は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る画像読取り装置の第1実施例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る画像読取り装置の第2実施例を示す概略構成図である。
【図3】EL素子の一般的な構成を示す断面図である。
【図4】光源ユニットの第1例を示す説明図である。
【図5】光源ユニットの第2例を示す説明図である。
【図6】光源ユニットの第3例を示す断面図である。
【図7】光源ユニットの第4例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1A,1B…画像読取り装置
10…光源ユニット
18…結像レンズ
19…CCDラインセンサ
21…ランプ
22…エレクトロルミネッセンス素子
25…透明ガラス基板(発光面)
26…陰極電極(反射面)
A…第1の光源
B…第2の光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を照明するための光源ユニットと、原稿からの反射光を結像するための結像手段と、結像された画像を読み取るための読取り手段と、を備えた画像読取り装置において、
前記光源ユニットは、第1の光源と、該第1の光源から光が放射される側に対向して配置された第2の光源とを含み、
第1の光源及び第2の光源のうち少なくとも第2の光源が発光面と反射面とを有すること、
を特徴とする画像読取り装置。
【請求項2】
発光面と反射面を有する光源はエレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1に記載の画像読取り装置。
【請求項3】
発光面と反射面は原稿読取り位置での光量を最適化するように湾曲していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像読取り装置。
【請求項4】
発光面は反射面の一部とのみ重なっていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像読取り装置。
【請求項5】
発光面と重なっていない部分にも反射面が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像読取り装置。
【請求項6】
第2の光源は必要に応じて発光制御されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像読取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−159305(P2009−159305A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335116(P2007−335116)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】