説明

画像読取システムおよび画像読取装置

【課題】折れ込みの情報をファイルに引き継ぐ画像読取システムおよび画像読取装置を提供すること。
【解決手段】MFP100は,原稿の画像を読み取り(S102),その原稿の隅に折れ込みがあるか否かを判断する(S103)。そして,原稿に折れ込みがあると判断された場合には(S104:YES),その折れ込みに関する情報である折れ込み情報を作成する(S106)。そして,読み取った原稿の画像データを記憶するファイルを作成し,その折れ込み情報をファイルの非画像領域に書き込む(S109)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,原稿を読み取る画像読取システムおよび画像読取装置に関する。さらに詳細には,読み取った原稿の画像データに基づくファイルを作成する画像読取システムおよび画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,タッチパネルを備えた携帯情報端末装置の普及が進んでいる。携帯情報端末装置は電子書籍の閲覧が可能なものもあることから,製本済みの書籍を電子化するニーズがある。そこで,本などの綴じられた原稿を,見開きの状態で読み取る機能を有する画像読取装置が実用化されている。画像読取装置は,見開きの状態の原稿(見開き原稿)を読み取った後,その原稿の画像データに基づく電子ファイルを作成する。
【0003】
書籍を読み取り対象とする画像読取装置としては,例えば特許文献1に開示されている画像読取装置がある。特許文献1の画像読取装置では,見開き原稿を読み取り,右側のページの画像と,左側のページの画像とで別々に画像補正を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−269095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,従来の画像読取装置には,次のような問題があった。すなわち,書籍においては,気になるページの隅を折り,その折れ込み(dog-ear)を目印として後からそのページの閲覧を容易にする習慣,すなわち書籍に目印を付ける習慣がある。書籍を電子化するにあたっては,この目印の情報が上手く引き継げていない。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,折れ込みの情報をファイルに引き継ぐ画像読取システムおよび画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた画像読取システムは,原稿を読み取る読取部と,前記原稿の隅に折れ込みがあるか否かを判断する判断部と,前記読取部にて読み取った原稿の画像データを記憶する画像領域と,前記画像データ以外のデータを記憶する非画像領域とを有するファイルを生成し,前記判断部にて折れ込みがあると判断された場合,読み取った原稿に折れ込みがあることを示す情報である折れ込み情報を,前記非画像領域に書き込む生成部とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の画像読取システムは,原稿を読み取った際,その原稿の隅に折れ込みがあるか否かを判断する。折れ込みの有無は,例えば,原稿の画像データを解析し,画像の隅部に折れ込みと思われる画像(例えば,直角三角形の画像)が含まれるか否かによって判断できる。そして,原稿に折れ込みがあると判断された場合には,その原稿の画像データを記憶するファイルに対し,そのファイルの非画像領域に折れ込み情報を書き込む。
【0009】
すなわち,本発明の画像読取システムでは,読み取った原稿に折れ込みがあった場合,読み取った原稿に折れ込みがあることを示す情報である折れ込み情報を,その原稿の画像データを記憶するファイルに書き込む。これにより,原稿の内容を電子化するにあたって,原稿に付された折れ込みについての情報を,その原稿の画像データを記憶するファイルに引き継ぐことができる。
【0010】
また,本発明の画像読取システムの前記生成部は,前記読取部で読み取った原稿の画像を2つに分割し,2ページ分の画像としてファイルを生成する分割モードの際,折れ込みがあるページに折れ込みがあることを示す前記折れ込み情報を前記非画像領域に書き込むとよい。この構成によると,分割した結果,折れ込みが有るページについては折れ込み情報が書き込まれるが,折れ込みが無いページについては折れ込み情報が書き込まれない。そのため,適切なページに折れ込み情報が書き込まれることになり,利便性が高まる。
【0011】
また,本発明の画像読取システムの前記判断部は,折れ込みが山折りか谷折りかを区別し,あらかじめ定めた一方の折りである場合に,折れ込みがあると判断するとよい。折れ込みは,一方の面に目印を付ける傾向にある。そのため,他方の面には折れ込み情報を付けない方が望ましい。
【0012】
また,本発明の画像読取システムは,前記判断部にて折れ込みがあると判断した場合に,その折れ込みの前記画像データ内での位置を特定する特定手段を備え,前記折れ込み情報には,前記特定部にて特定した折れ込みの位置に関する情報である位置情報が含まれるとよい。位置情報としては,画像データ中の折れ込みの座標でもよいし,右上,右下,左上,左下の4隅の情報であってもよい。ユーザによっては,折れ込みの位置の違いで意味を区別していることがある。本構成のように,折れ込みの位置を特定する情報を書き込むことで,折れ込みの位置情報をも引き継ぐことができ,より利便性が向上する。
【0013】
また,上記の画像読取システムの前記特定部は,前記位置情報を,前記読取部で読み取った原稿の画像を2つに分割し,2ページ分の画像としてファイルを生成する分割モードでは上下の2分類で特定し,前記読取部で読み取った原稿の画像を分割せず,1ページ分の画像としてファイルを生成する非分割モードでは上下左右の4分類で特定するとよい。画像を分離するか否かのモードの違いによって位置情報の内容を変える方が,より利便性が向上する。
【0014】
また,本発明の画像読取システムは,前記ファイルに前記折れ込み情報を書き込むか否かをユーザに確認する確認部を備え,前記生成部は,前記確認部にて前記ファイルに前記折れ込み情報を書き込まないことが確認された場合,前記折れ込み情報を前記ファイルに書き込まないとよい。折れ込み情報を活用したい場合とそうでない場合とがある。また,ユーザの意図しない折り込みがあることも考えられる。そのため,ユーザの意向を確認する方が望ましい。
【0015】
また,上記の画像読取システムの前記確認部は,前記判断部にて折れ込みがあると判断されたことを契機に,前記ファイルに前記折れ込み情報を書き込むか否かをユーザに確認するとよい。折れ込みがない場合,ユーザ確認は不要である。本構成のように,折れ込みがあった場合にユーザに問い合わせることで,ユーザの手間を軽減できる。
【0016】
また,上記の画像読取システムは,原稿が複数枚ある場合,前記確認部は,その原稿群のうちのある原稿に折れ込みがあってユーザによる確認を行った後は,前記ある原稿以外の原稿に折れ込みがあると判断されたとしてもユーザによる確認は行わず,前記生成部は,前記ある原稿の折れ込みよる前記確認部の確認にて,前記ファイルに前記折れ込み情報を書き込むことが確認された場合には,前記ある原稿以外の原稿に対する前記折れ込み情報も前記ファイルに書き込み,前記ファイルに前記折れ込み情報を書き込まないことが確認された場合には,前記ある原稿以外の原稿に対する前記折れ込み情報も前記ファイルに書き込まないとよい。折れ込みがある度にユーザ確認を行うとユーザにとって手間である。そのため,1度確認を行った後はその確認結果に従ってファイルを生成し,ユーザ確認を行わない方が好ましい。
【0017】
また,本発明は,原稿を読み取る読取部と,前記原稿の隅に折れ込みがあるか否かを判断する判断部と,前記読取部にて読み取った原稿の画像データを記憶する画像領域と,前記画像データ以外のデータを記憶する非画像領域とを有するファイルを生成し,前記判断部にて折れ込みがあると判断された場合,読み取った原稿に折れ込みがあることを示す情報である折れ込み情報を,前記非画像領域に書き込む生成部とを備えることを特徴とする画像読取装置を含んでいる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,折れ込みの情報をファイルに引き継ぐ画像読取システムおよび画像読取装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態にかかるMFPの外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示したMFPのADFを開放した状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示したMFPの画像読取部の内部構成(図1のA−A断面)を示す断面図である。
【図4】図1に示したMFPの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】MFPのブックスキャン処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】折れ込みが存在する原稿の,画像データの一例を示す図である。
【図7】ブックスキャン処理中のファイル作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】ファイルの構成(その1)を示す図である。
【図9】ファイルの構成(その2)を示す図である。
【図10】ファイルの内容を表示するビューワの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,本発明にかかる画像読取装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,スキャン機能,プリント機能,およびファイル出力機能を備えた複合機(MFP:Multi Function Peripheral )に本発明を適用したものである。
【0021】
[MFPの構成]
本形態のMFP100は,図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部1と,原稿の画像を読み取る画像読取部2(読取部の一例)とを備えている。画像形成部1の画像形成方式は,電子写真方式であっても,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0022】
また,MFP100は,その前面側に,各種のボタン(例えば,スタートキー,ストップキー,テンキーの各ボタン)によって構成されるボタン群41,液晶ディスプレイからなる表示部42を備えた操作パネル40を備えている。このボタン群41や表示部42により,動作状況の表示やユーザによる操作の入力が可能になっている。
【0023】
[画像読取部の構成]
続いて,画像読取部2の構成について,図1,図2および図3を参照しつつ説明する。なお,図1および図2は,画像読取部2の外観を示し,図3は画像読取部2の内部構成を示している。
【0024】
画像読取部2は,画像の読み取りを行う本体部10と,原稿の自動搬送を行う自動原稿供給装置(ADF:Auto Document Feeder)20とを備えている。ADF20は,本体部10の上方に位置するとともに一辺が本体部10と接続し,本体部10に対して回動自在に設けられている。そのため,画像読取部2は,ADF20によって本体部10の上面を開閉することができる(図2参照)。つまり,ADF20は,本体部10の上面を覆うカバーを兼ねる。
【0025】
本体部10は,その上面に,コンタクトガラス11,12を備えている。さらに,本体部10の内部であってコンタクトガラス11,12の下方には,原稿の画像を読み取るイメージセンサ15が設けられている。イメージセンサ15は,主走査方向(図3の奥行き方向)に光学素子が一列に並んで配置されており,原稿からの反射光を電気信号に変換して出力する。イメージセンサ15としては,例えば,CIS(Contact Image Sensor)やCCD(Charge Coupled Device)が適用可能である。
【0026】
イメージセンサ15は,スライド軸13に対してスライド自在に支持されている。このスライド軸13は,副走査方向(図3中の左右方向)に延び,両端部が本体部10の筐体に固定されている。そのため,イメージセンサ15は,図3中の左右方向に移動可能に設けられている。
【0027】
ADF20は,読み取り前の原稿を載置する原稿トレイ21と,読み取り後の原稿を載置する排出トレイ22とを備えている。具体的に,原稿トレイ21は,排出トレイ22の上方に配設されている。また,ADF20の内部には,原稿が搬送される経路として,原稿トレイ21と排出トレイ22とを連結する略U字状の搬送路25が設けられている。また,ADF20は,その下面に開口部23が設けられ,その開口部23から原稿押さえ板24が露出するように配置されている。この原稿押さえ板24は,ADF20を閉じた状態でコンタクトガラス12と対向している。
【0028】
ADF20は,原稿トレイ21に載置された原稿を1枚ずつ取り出し,その原稿を本体部10のコンタクトガラス12(以下,「ADFガラス12」とする)に対向する位置に搬送する。具体的には,原稿を原稿押さえ板24とコンタクトガラス12との間を通過させる。その後,その原稿を排出トレイ22上に排出する。
【0029】
また,イメージセンサ15を利用した原稿の読取方式としては,フラットベッド(原稿固定走査)方式と,ADF(原稿移動走査)方式とがある。フラットベッド方式の場合,原稿をコンタクトガラス11(以下,「FBガラス11」とする)上に載置する。その状態で,イメージセンサ15が副走査方向に移動し,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。一方,ADF方式の場合,複数の原稿を纏めて原稿トレイ21に載置する。そして,イメージセンサ15がADFガラス12に対向する位置に移動し,固定される。その状態で,ADF20によって原稿が原稿押さえ板24の下側であってADFガラス12に対向する位置に搬送され,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。
【0030】
例えば,書籍等の綴じられた原稿を読み取る際には,図2のようにADF20を開放し,原稿を見開きの状態とし,読取面を下向きとしてFBガラス11上にセットする。そして,ADF20を開放したまま,ユーザが原稿を押さえた状態で,イメージセンサ15が副走査方向に移動することで,原稿を読み取る。
【0031】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,図4に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(Non Volatile RAM)34と,ASIC35と,ネットワークインターフェース36と,USBインターフェース38とを備えた制御部30を有している。
【0032】
ROM32には,MFP100を制御するための各種制御プログラムや画像処理プログラム,各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像読取部2で読み取った原稿の画像データやネットワークインターフェース36を介して送られてくる画像データを一時的に記憶する記憶領域として,利用される。NVRAM34は,不揮発性を有する記憶手段であって,各種設定や画像データ等を保存する記憶領域として利用される。
【0033】
ASIC35は,画像形成部1,画像読取部2,操作パネル40,ADF20の開放を検知する開閉センサ45等と電気的に接続されている。例えば,ASIC35は,画像読取部2から画像データの信号を取得する。また,画像形成部1へ所望の画像を作成するための信号を出力する。また,ボタン群41に入力される各種ボタンの信号を受け付ける。また,表示部42に表示する内容の信号を出力する。
【0034】
CPU31(判断部,生成部,特定部,確認部の一例)は,MFP100における画像読取機能,画像形成機能,さらにはファイル作成機能等の各種機能を実現するための演算を実行し,制御の中枢となるものである。CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムに従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,ASIC35を介してMFP100の各構成要素を制御する。また,CPU31は,例えば,ROM32から読み出したプログラムに従って,画像読取部2にて読み取った原稿の画像データに加工処理を施す。
【0035】
ネットワークインターフェース36は,ネットワークに接続され,このネットワークインターフェース36を介して他の情報処理装置(不図示)とのデータ通信が可能になっている。また,USBインターフェース38は,USB接続が可能な周辺機器(不図示)に接続され,このUSBインターフェース38を介して外部の周辺機器等とデータ通信が可能になっている。
【0036】
[ブックスキャンモード]
続いて,MFP100のブックスキャンモードについて説明する。ブックスキャンモードは,本などの綴じられた原稿を,見開きの状態で読み取り,さらに読み取った原稿の画像データを記憶する電子ファイルを作成するモードである。
【0037】
ブックスキャンモードでは,フラットベッド方式によって見開き状態の原稿(見開き原稿)を読み取る。具体的に,MFP100は,ユーザによってブックスキャンモードが選択され,FBガラス11上に見開き原稿がセットされ,ボタン群41中のスタートキーが押下されると,画像読取部2によって見開き原稿を読み取る。
【0038】
見開き原稿の読み取り後,読み取りを継続するか否かをユーザに問い合わせる。読み取りの継続が選択された場合には,ユーザが次のページの見開き原稿をFBガラス11上にセットし,読み取り開始指示を入力するのを待つ。そして,読み取り開始指示が入力されると,新たにセットされた見開き原稿を読み取る。一方,読み取りの終了が選択された場合には,終了が選択されるまでに読み取った1または複数の画像データを,複数の画像データを記憶できるファイル(例えばPDFファイル)形式にてファイルの作成を行う。
【0039】
また,MFP100は,見開き原稿の画像データを記憶する態様として,分割モードと非分割モードとを有している。分割モードでは,見開き原稿の画像データを,左側のページと右側のページとに2分割し,2ページ分の画像データとしてファイルに記憶する。非分割モードでは,見開き原稿の画像データを分割せず,1ページ分の画像データとしてファイルに記憶する。
【0040】
[ブックスキャン処理]
以下,上記のブックスキャンモードでの動作を実現するブックスキャン処理(読取部,判断部,生成部,特定部,確認部の一例)の手順について,図5のフローチャートを参照しつつ説明する。ブックスキャン処理は,ブックスキャンモードが選択された状態で,ボタン群41中のスタートキーが押下されたことを契機に実行される。
【0041】
ブックスキャン処理では,先ず,各種の初期設定を取得する(S101)。初期設定としては,例えば,読み取り後の画像データについて原稿の綴じ部や枠外の影を消去するか否かの設定や,分割モードか非分割モードかの設定がある。さらに,分割モードの場合には,右開きか左開きかの設定がある。初期設定は,ブックスキャン処理を開始する前にユーザによって設定される。この初期設定は,NVRAM34等に記憶されたものでもよいし,S101が実行されるタイミングでユーザに問い合わせ,その際に設定されたものでもよい。
【0042】
次に,スタートキーの押下を契機に,画像読取部2にて,FBガラス11上にセットされた原稿を読み取る(S102)。読み取った原稿の画像データは,RAM33に一時的に記憶される。
【0043】
次に,S102で読み取った原稿の画像データを解析し,その画像データに原稿の折れ込みに相当する箇所を抽出する(S103)。原稿に折れ込みが存在する場合,その原稿の画像データには,図6に示すように,原稿の画像データ9中の4隅のいずれかに,折り目に相当する直線91が存在する。原稿が折り込まれた隅部では次の原稿あるいは前の原稿の隅部が読み取られており,次の原稿あるいは前の原稿の隅にあたる直角部と直線91とによって直角三角形の画像90が形成される。そのため,この直角三角形の画像90があるか否かを判断し,直角三角形の画像90がある場合には,その画像90を折れ込みとして抽出できる。
【0044】
さらに,折れ込みが谷折りの場合には,直角三角形の画像90の長辺91(折り目)と共通の長辺を有する直角三角形の画像92が存在する。そのため,直角三角形の画像90と隣接する領域に直角三角形の画像92があるか否かによって,抽出された折れ込みが谷折りか山折りかを判断できる。さらに,画像90と画像92とはほぼ同じ図形となる。そのため,画像90と画像92との面積を比較し,同等の範囲であれば谷折りであると判断してもよい。
【0045】
MFP100では,原稿の折れ込みを判断するための折れ込み判断設定として,山折りを折れ込みとするのか,谷折りを折れ込みとするのか,それとも両方とも折れ込みとするのかの設定をあらかじめ記憶している。S101では,この折れ込み判断設定も取得する。そして,S103では,折れ込み判断設定にて折れ込みとすることが設定された折りの折れ込みのみを抽出する。換言すると,折れ込み判断設定にて折れ込みとしないことが設定された折りの折れ込みは抽出しない。
【0046】
次に,S103の解析の結果,折れ込みが抽出されたか否かを判断する(S104)。折れ込みが抽出された場合には(S104:YES),折れ込みに関する情報(折れ込み情報)をファイルに登録するか否かを判断する(S105)。すなわち,原稿の折り込みには,ユーザが意図的に折り込んだものと,意図せずに折り込まれたものとがある。S105ではこれを区別する。本形態では,折れ込み情報をファイルに登録するか否かの設定である登録設定が記憶されていない場合には,折れ込み情報をファイルに登録するか否かをユーザに問い合わせる。問い合わせの結果は,登録設定として記憶する。すなわち,S105でのユーザへの問い合わせは,ブックスキャン処理中,1回のみであり,その後は,記憶されている登録設定に従う。なお,あらかじめブックスキャン処理の開始前や開始直後(S101)に登録設定がなされた場合には,その登録設定を読み出してもよい。
【0047】
折れ込みに関する情報をファイルに登録する場合には(S105:YES),折れ込みが抽出された画像データに対する折れ込み情報を作成する(S106)。折れ込み情報としては,折れ込みの有無,さらには折れ込みの位置に関する情報が含まれる。折れ込みの位置としては,右上,右下,左上,左下の4分類からなる相対位置情報が作成される。折れ込みに関する情報をファイルに登録しない場合には(S105:NO),S106の処理を回避する。
【0048】
S106の後,あるいは折れ込みに関する情報をファイルに登録しない場合(S105:NO),あるいは折れ込みが抽出されなかった場合には(S104:NO),S102で読み取った原稿に対するスキャン情報を作成する(S107)。スキャン情報としては,S102で取得した画像データが含まれる。また,S106にて作成した折れ込み情報がある場合には,スキャン情報にその折れ込み情報が含まれる。
【0049】
次に,次ページの原稿があるか否かを判断する(S108)。次ページの有無は,ユーザに問い合わせて判断する。なお,所定時間内にスタートキーが押下され次の原稿の読み取りが指令された場合に,次のページが有ると判断してもよい。次のページが有る場合(S108:YES),すなわち原稿の読み取りを継続する場合には,S102に移行して次のページの原稿を読み取る。
【0050】
次のページが無い場合には(S108:NO),これまで作成したスキャン情報を利用して,読み取った画像データを全て記憶するファイルを作成するファイル作成処理を実行する(S109)。ファイル形式としては,一般的なファイル形式(例えば,PDFファイル)であっても,専用のファイル形式であってもよい。
【0051】
ここで,S109のファイル作成処理について,図7のフローチャートを参照しつつ説明する。ファイル作成処理では,先ず,何も登録されていない初期状態のファイルを作成する(S120)。ファイルは,画像データを記憶する画像データ領域(画像領域に相当)と,画像データ以外の領域を記憶するヘッダ領域(非画像領域に相当)とを有する。
【0052】
次に,最初に読み取られた原稿のスキャン情報を取得する(S121)。そして,分割モードの設定がなされているか否かを判断する(S122)。分割モードの設定は,S101で取得した初期設定に含まれる。
【0053】
分割モードの設定がなされている場合には(S122:YES),S102で取得した画像データを解析し,左側のページと右側のページとに分割する(S123)。見開き原稿を読み取った場合,図6に示すように,その画像データ9の中央を縦断する黒色領域93(「綴じ部」に相当)が存在する。左側のページと右側のページとの分割は,例えばこの黒色領域93を抽出し,黒色領域93を境界として左側のページの画像データ9Lと右側のページの画像データ9Rとに分割することができる。あるいは,原稿の画像データ9の左右方向の寸法に基づいて,画像データを左右2等分に分割してもよい。
【0054】
さらに,スキャン情報に含まれる折れ込み情報を変更する(S124)。すなわち,分割した結果,折れ込みがなくなる画像のページについては,折れ込み無しに変更する。また,分割した後は,折れ込み位置として左右の情報は不要であるため,折れ込み位置の情報を上下左右の4分類から上下の2分類に変更する。
【0055】
S124の後は,分割後の画像データごとに,スキャン情報を作成する。そして,右開きか左開きかの設定に基づいて,分割後の2つのスキャン情報を,ページ順に,S120で作成したファイルに登録する(S125)。また,S125では,スキャン情報に折れ込み情報が含まれる場合には,その折れ込み情報をページ番号と対応付けて一時的に記憶する。
【0056】
一方,分割モードの設定がなされていない場合,すなわち非分割モードの場合には(S122:NO),スキャン情報に含まれる画像データを,1ページ分のデータとして,S120で作成したファイルに登録する(S141)。すなわち,実際の原稿では2ページ分となる見開き原稿であったとしても,1ページ分の画像データとして扱う。また,S141では,スキャン情報に折れ込み情報が含まれる場合には,その折れ込み情報をページ番号と対応付けて一時的に記憶する。
【0057】
S125の後,あるいはS141の後,次のページのスキャン情報があるか否かを判断する(S126)。次のページのスキャン情報がある場合には(S126:YES),S121に戻り,そのページについてのファイルへの登録を行う。
【0058】
次のページのスキャン情報がない場合には(S126:NO),ファイルのヘッダ情報を作成する(S127)。具体的には,図8に示すように,S120で作成したファイル7は,画像データ以外の情報を記憶するヘッダ領域70と,これまで読み取った原稿の画像データを記憶する画像データ領域71とを有する。そして,S127では,ページごとの折れ込み情報の内容をヘッダ領域70に書き込む。折れ込み情報は,折れ込みの有無とページ番号とが対応付けられた情報であり,さらに折れ込みが有る場合には位置情報も付加される。この折れ込み情報は,画像データ領域71以外の領域であるヘッダ領域70(非画像領域の一例)に書き込まれるため,画像には影響しない。これにより,折れ込みに関する情報が書き込まれたファイルが完成する。S127の後,ファイルを閉じ,S109のファイル作成処理を終了する。
【0059】
S109の後は,そのファイルを所定の記憶装置に出力する(S110)。所定の記憶装置としては,MFP自身のNVRAM34,USBインターフェース38に接続されるフラッシュメモリ,あるいはネットワークインターフェース36を介して接続するPC等が該当する。S110の後は,ブックスキャン処理を終了する。
【0060】
なお,上記のブックスキャン処理では,各ページの折れ込み情報をファイルのヘッダ領域に纏めて書き込んでいるが,折れ込み情報の書き込み先はヘッダ領域に限るものではない。例えば,図9に示すように,画像データを記憶するファイル75が,ファイル全般に関するを記憶するヘッダ領域76と,ページごとに画像データを記憶する画像データ領域(図9中の781,782,783)と,各ページの画像データごとに画像データ以外のデータを記憶する非画像領域(図9中の771,772,773)とを有するファイル形式であれば,折れ込み情報を各ページの非画像領域にそれぞれ書き込むようにしてもよい。この場合,S125あるいはS141にて画像データをファイルに登録する際に,折れ込み情報も画像データと合わせて登録すればよい。
【0061】
具体的に,例えばPDFファイルを作成する場合には,PDFファイルにしおり情報を書き込むエリアが有る。このしおり情報を書き込むエリアに,折れ込み情報を書き込むことができる。
【0062】
[ビューワ]
続いて,ブックスキャン処理によって作成されたファイルに記憶されている画像データを表示するビューワについて説明する。ビューワは,MFP100に組み込まれているものであってもよいし,PC等の情報処理装置に組み込まれているものであってもよい。
【0063】
ブックスキャン処理によって作成されたファイルには,折れ込み情報が記憶されている。そのため,折れ込み情報を読み出すことで,折れ込みがあるページの頭出しが可能になる。例えば,図10に示すように,ビューワ8の画像表示領域80外に,折れ込みがあるページの一覧画面81を表示する。そして,一覧画面81に表示されているページが選択された場合,その選択されたページに対応する画像を表示するように構成する。
【0064】
また,折れ込み情報としては,折れ込みの位置も記憶されている。そのため,ビューワ8は,折れ込みの位置によって,一覧画面81に表示される内容を変えることができる。例えば,「右上」,「左下」等の位置の情報を,ページ情報の文字列に組み込むことができる。また,上側に位置する折れ込みと,下側に位置する折れ込みとで,文字の大きさが異なるように表示できる。また,例えば,上側(あるいは下側)に位置する折れ込みのページ番号のみを表示するようにできる。
【0065】
以上詳細に説明したように本形態のMFP100は,ブックスキャンモードでの原稿の読み取りの際,読み取った原稿に折れ込みが有るか否かを判断する。そして,原稿に折れ込みがあった場合,読み取った原稿に折れ込みがあることを示す情報を,その読み取った原稿の画像データを記憶するファイルの非画像領域に書き込む。これにより,原稿の内容を電子化するにあたって,原稿に付けられた折れ込みの情報を,その原稿の画像データを記憶するファイルに引き継ぐことができる。さらに,折れ込み情報は,ファイルの非画像領域に書き込まれるため,ファイルの画像データ領域に記憶される画像データへの影響は少ない。つまり,画質への影響は少ない。
【0066】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,MFPに限らず,複写機,スキャナ,FAX等,画像読み取り機能を備えるものであれば適用可能である。また,書籍の読み取り専用のスキャナであってもよい。
【0067】
また,実施の形態の画像読取部2は,原稿の読取面を下側にし,FBガラス11の下側にあるイメージセンサ15によって原稿を下側から読み取っているが,画像読取部2の構成をこれに限るものではない。例えば,カメラを原稿の上側に配置し,原稿を上側から読み取ってもよい。また,原稿を上側から読み取る構成では,例えば,原稿の載置台を基点として所定の高さに紙があるか否かによって折れ込みがあるか否かを判断してもよい。
【0068】
また,実施の形態では,MFP100自身(画像読取装置自身)が折れ込みの有無を判断し,折れ込み情報を反映したファイルを作成しているが,折れ込みの有無の判断やファイルの作成はMFP100以外の装置が行ってもよい。例えば,スキャナとPCとを有するシステムの場合,スキャナが見開き原稿の読み取りを行い,PCが折れ込みの有無の判断とファイルの作成とを行うように構成してもよい。また,PCが折れ込みの有無の判断とファイルの作成との一方を行い,他方をスキャナが行うように構成してもよい。
【0069】
また,実施の形態では,折れ込みを抽出した際,すなわちスキャン情報を作成する前に折れ込み情報をファイルに含ませるか否かを判断し(S106),折れ込み情報が不要な場合には折れ込み情報を書き込まないようにしているが,折れ込み情報を無効にする方法としてはこれに限るものではない。例えば,折れ込みを抽出した際にはその折れ込み情報をスキャン情報に含むものとし,折れ込み情報をファイルに書き込む際(S127)に,折れ込み情報を含ませるか否かを判断し,折れ込み情報が不要な場合には折れ込み情報をファイルに書き込まないようにしてもよい。
【0070】
また,実施の形態では,折れ込みの位置として,上下左右の相対位置情報が作成されるが,座標等の絶対位置情報を作成してもよい。また,相対位置情報と絶対位置情報との両方を作成してもよい。
【0071】
また,実施の形態では,折れ込みの位置に基づく分類を行っているが,折れ込みの分類は位置に限るものではない。例えば,折れ込みの面積(図6中の直角三角形の画像90の面積)に応じて大中小に分類してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 画像形成部
2 画像読取部
11 FBガラス
20 ADF
30 制御装置
100 MFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取る読取部と,
前記原稿の隅に折れ込みがあるか否かを判断する判断部と,
前記読取部にて読み取った原稿の画像データを記憶する画像領域と,前記画像データ以外のデータを記憶する非画像領域とを有するファイルを生成し,前記判断部にて折れ込みがあると判断された場合,読み取った原稿に折れ込みがあることを示す情報である折れ込み情報を,前記非画像領域に書き込む生成部と,
を備えることを特徴とする画像読取システム。
【請求項2】
請求項1に記載する画像読取システムにおいて,
前記生成部は,前記読取部で読み取った原稿の画像データを,一方のページの画像データと他方のページの画像データとに区別し,2ページ分の画像データとして前記ファイルに書き込む分割モードの際,折れ込みがあるページに折れ込みがあることを示す前記折れ込み情報を前記非画像領域に書き込むことを特徴とする画像読取システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する画像読取システムにおいて,
前記判断部は,折れ込みが山折りか谷折りかを区別し,あらかじめ定めた一方の折りである場合に,折れ込みがあると判断することを特徴とする画像読取システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する画像読取システムにおいて,
前記判断部にて折れ込みがあると判断した場合に,その折れ込みの位置を特定する特定部を備え,
前記折れ込み情報には,前記特定部にて特定した折れ込みの位置に関する情報である位置情報が含まれることを特徴とする画像読取システム。
【請求項5】
請求項4に記載する画像読取システムにおいて,
前記特定部は,前記位置情報を,前記読取部で読み取った原稿の画像を2つに分割し,2ページ分の画像としてファイルを生成する分割モードでは上下の2分類で特定し,前記読取部で読み取った原稿の画像を分割せず,1ページ分の画像としてファイルを生成する非分割モードでは上下左右の4分類で特定することを特徴とする画像読取システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する画像読取システムにおいて,
前記非画像領域に前記折れ込み情報を書き込むか否かをユーザに確認する確認部を備え,
前記生成部は,前記確認部にて前記非画像領域に前記折れ込み情報を書き込まないことが確認された場合,前記折れ込み情報を前記非画像領域に書き込まないことを特徴とする画像読取システム。
【請求項7】
請求項6に記載する画像読取システムにおいて,
前記確認部は,前記判断部にて折れ込みがあると判断された場合に,前記非画像領域に前記折れ込み情報を書き込むか否かをユーザに確認することを特徴とする画像読取システム。
【請求項8】
請求項7に記載する画像読取システムにおいて,
原稿が複数枚あり,各原稿の折れ込み情報を前記非画像領域に書き込む場合,
前記確認部は,その原稿群のうちのある原稿に折れ込みがあってユーザに確認を行った後は,前記ある原稿以外の原稿に折れ込みがあると判断されたとしてもユーザに確認は行わず,
前記生成部は,前記ある原稿の折れ込みに対応して前記非画像領域に前記折れ込み情報を書き込むことが確認された場合には,その後に読み取られた前記ある原稿以外の原稿に対する前記折れ込み情報も前記非画像領域に書き込み,前記ある原稿の折れ込みに対応して前記非画像領域に前記折れ込み情報を書き込まないことが確認された場合には,その後に読み取られた前記ある原稿以外の原稿に対する前記折れ込み情報も前記非画像領域に書き込まないことを特徴とする画像読取システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載する画像読取システムにおいて,
前記判断部は,原稿の画像データのうち原稿の隅部に対応する箇所に直角三角形の画像がある場合には,折れ込みがあると判断することを特徴とする画像読取システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1つに記載する画像読取システムにおいて,
原稿が複数枚あり,各原稿の折れ込み情報を前記非画像領域に書き込む場合,
前記生成部は,前記ファイルの1つの前記非画像領域に,各原稿の折れ込み情報を書き込むことを特徴とする画像読取システム。
【請求項11】
請求項1から請求項9のいずれか1つに記載する画像読取システムにおいて,
原稿が複数枚あり,各原稿の折れ込み情報を前記非画像領域に書き込む場合,
前記生成部は,前記ファイルの各原稿の画像データに対応する個々の前記非画像領域に,各原稿の折れ込み情報をそれぞれ書き込むことを特徴とする画像読取システム。
【請求項12】
原稿を読み取る読取部と,
前記原稿の隅に折れ込みがあるか否かを判断する判断部と,
前記読取部にて読み取った原稿の画像データを記憶する画像領域と,前記画像データ以外のデータを記憶する非画像領域とを有するファイルを生成し,前記判断部にて折れ込みがあると判断された場合,読み取った原稿に折れ込みがあることを示す情報である折れ込み情報を,前記非画像領域に書き込む生成部と,
を備えることを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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