説明

画像読取装置、マルチファンクションプリンタ装置及び画像読取方法

【課題】モータ回転に同期した画像読取において、加減速読取時の読取位置のずれと読取センサの電荷の蓄積時間の変動による取得データの変動の影響とを最小限に抑えることである。
【解決手段】駆動源となるモータの駆動により第1方向に移動しながら、原稿の画像を光学的に読み取るために、前記第1方向と交差する第2方向に配列した複数の光電変換素子を備えた光学ユニットを備えた画像読取装置では、次のような読取を行う。即ち、前記第1方向に関する光学ユニットの位置情報を取得し、その位置情報の変化から光学ユニットの移動速度を算出する。そして、光学ユニットの移動速度に従って変化する、第1方向に関する画像の読取解像度に対応する各読取ラインの読取タイミング信号を生成し、その読取タイミング信号に基づいて生成される複数の光電変換素子に対する電荷の蓄積時間を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像読取装置及び画像読取方法に関する。本発明は、特に、画像原稿を光学的な読込んで画像処理を行う、例えば、マルチファンクションプリンタ装置のような画像読取装置及び画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ADF(オートドキュメントフィーダ)を備えたスキャナ装置のように画像原稿の読取途中でその原稿をスイッチバックできない構成では、メモリフルの状態等により原稿読取途中でその読取を停止する場合、読取ユニットを加減速して読取を行う必要がある。このため、従来より、以下のような加減速読取に対する提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている画像読取装置では、読取開始信号と駆動パルス信号とを同期させることで、ステッピングモータの加減速中にも一定の副走査間隔、つまり位置ずれを起こさない課題に対応してきた。また、特許文献2に開示されている画像読取装置では、一定のライン同期信号に対し、加速時に理想位置に近いライン同期信号を選択して、ライン同期信号に対し間引かれた読取タイミングを生成し、電荷の蓄積時間を固定して加速制御を実現してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−186694号公報
【特許文献2】特開平5−328059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来例では、読取ユニットを加減速して読取が必要な読取制御に関して、次のような問題があった。
【0006】
即ち、特許文献1のような読取開始信号と駆動パルス信号とを同期させた読取制御の場合、位置ずれは発生しないが、電荷の蓄積時間が増減することで、センサ特性により暗電流成分のデータ変動の影響が生じるおそれがある。
【0007】
一方、特許文献2のような一定のライン同期信号に対し、理想位置に近い間引かれた読取タイミングを生成し、電荷の蓄積時間を固定して加速制御を行う場合、電荷の蓄積時間は変動しないが、加減速時にある程度の位置ずれが発生する場合があり得る。
【0008】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、読取位置のずれと電荷の蓄積時間変動による取得する画像信号の変動の影響の両方を最小限に抑止可能な画像読取装置、マルチファンクションプリンタ装置及び画像読取方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の画像読取装置は、次のような構成からなる。
【0010】
即ち、原稿の画像を光学的に読み取る画像読取装置であって、第1方向に移動しながら、前記原稿の画像を読み取る、前記第1方向と交差する第2方向に配列した複数の光電変換素子を備えた光学ユニットと、前記光学ユニットを前記第1方向に移動させる駆動源となるモータと、前記第1方向に関する前記光学ユニットの位置情報を取得する取得手段と、前記位置情報の変化から前記光学ユニットの移動速度を算出する算出手段と、前記光学ユニットの移動速度に従って変化する、前記第1方向に関する画像の読取解像度に対応する各読取ラインの読取タイミング信号を生成する生成手段と、前記読取タイミング信号に基づいて生成される前記複数の光電変換素子に対する電荷の蓄積時間を切り換える切換手段とを有することを特徴とする。
【0011】
また他の発明によれば、駆動源となるモータの駆動により第1方向に移動しながら、原稿の画像を光学的に読み取るために、前記第1方向と交差する第2方向に配列した複数の光電変換素子を備えた光学ユニットを備えた画像読取装置における画像読取方法であって、前記第1方向に関する前記光学ユニットの位置情報を取得する取得工程と、前記位置情報の変化から前記光学ユニットの移動速度を算出する算出工程と、前記光学ユニットの移動速度に従って変化する、前記第1方向に関する画像の読取解像度に対応する各読取ラインの読取タイミング信号を生成する生成工程と、前記読取タイミング信号に基づいて生成される前記複数の光電変換素子に対する電荷の蓄積時間を切り換える切換工程とを有することを特徴とする画像読取方法を備える。
【発明の効果】
【0012】
従って本発明によれば、光学ユニットの移動位置に従って変化する、画像の読取解像度に対応する各読取ラインの読取タイミング信号を生成し、その信号に基づいて生成される複数の光電変換素子に対する電荷の蓄積時間を切り換える。これにより、光学ユニットの加減速及び速度変動時の読取動作においても、画像の読取動作における位置ずれや光電変換素子への電荷の蓄積時間の変動を抑えることができ、結果として、良好な画像読取を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の代表的な実施例であるマルチファンクションプリンタ(MFP)装置の概観斜視図である。
【図2】図1で示したMFP装置の上部に備え付けられた画像読取装置の断面図である。
【図3】画像読取装置の制御回路の構成を示すブロック図である。
【図4】画像読取装置のCISユニットを加速しながらカラー画像原稿を読取る時の読取同期信号を生成するタイミングの一例を示す図である。
【図5】画像読取装置のCISユニット或いはCCDセンサを加速しながらモノクロ画像原稿を読取る時の読取同期信号を生成するタイミングの一例を示す図である。
【図6】画像読取装置のCISユニットを減速しながらカラー画像原稿を読取る時の読取同期信号を生成するタイミングの一例を示す図である。
【図7】光学ユニットを加減速して画像原稿を読取る時の処理を示すフローチャートである。
【図8】光学ユニットを加減速して画像原稿を読取る時の処理の別の例を示すフローチャートである。
【図9】光学ユニットが速度変動する場合に画像原稿を読取る時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。
【0015】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0016】
図1は本発明の代表的な実施例であるマルチファンクションプリンタ装置(以下、MFP装置)100の概観斜視図である。
【0017】
MFP装置は、接続されたホスト(不図示)からの画像データに基づいて、記録用紙などの記録媒体に画像を記録する以外に、メモリカードなどに格納された画像データに基づいた記録や画像原稿を光学的に読取って複写することができる。
【0018】
図1において、(a)は原稿カバー103が閉じられた状態を示しており、(b)は記録媒体の載置トレー101、排紙トレー102、及び原稿カバー103が開けられた状態を示している。
【0019】
また、コンタクトイメージセンサ(CIS)ユニットを搭載する読取部8は画像原稿を読取り、R成分、G成分、B成分のアナログ輝度信号を出力する。カードインタフェース9は、例えば、デジタルスチルカメラ(不図示)で撮影された画像ファイルを記録したメモリカードなどを挿入して、操作部4の所定の操作に従い、そのメモリカードから画像データを読み込むのに使用される。また、MFP装置100にはLCD110のような表示部が設けられている。LCD110は操作部4による設定内容の表示や機能選択メニューの表示や画像の表示などのために用いられる。
【0020】
なお、画像原稿の自動読取のために、ADF(オートドキュメントフィーダ)を備えた構成とすることもできる。その場合、ADF(不図示)は原稿カバー103の上部に設けられる。
【0021】
図2は図1で示したMFP装置の上部に備え付けられた画像読取装置の断面図である。
【0022】
図2に示すように、画像読取装置200は本体部210と読取対象となる原稿220を押さえつけ外部からの光を遮光する圧板230とから構成される。圧板230は原稿カバー103の裏面にセットされている。本体部210には光学ユニット240、光学ユニット240と電気的に接続された回路基板250、光学ユニット240を走査させる際のレールとなるスライディングロッド260、原稿台ガラス270が備えられる。光学ユニット240には原稿220に光を照射し、その反射光を受光して電気信号に変換するするコンタクトイメージセンサ(CIS)ユニット300が内蔵される。画像読取の際には原稿台ガラス270上に置かれた原稿220を光学ユニット240が矢印Bの第1方向(副走査方向)に移動することにより原稿220に記録された画像の読取を行う。
【0023】
なお、CISユニットの代わりに、CCDセンサが用いられても良い。また、CISユニットやCCDセンサには複数の光電変換素子が列状に備えられており、それら光電変換素子の配列方向は副走査方向に交差する(本実施例では直角であるが必ずしも直角である必要はない)第2方向となっておりその方向は主走査方向と呼ばれる。いずれにしても、CISユニットやCCDセンサにより、画像原稿を走査してRGBのアナログ信号を出力する。従って、光学ユニット240が副走査方向に移動する一方で主走査方向に複数の光電変換素子を電気的に走査することにより各ラインのアナログ画像信号が得られる。
【0024】
光学ユニットには原稿に光を照射するための光源としてLEDが備えられている。CISユニットを用いる場合には色の3原色に対応して赤色LED、緑色LED、青色LEDが備えられる。一方、CCDセンサを用いる場合には白色LEDが備えられ、そして、カラーフィルタによりRGB色成分に分光される。
【0025】
図3は画像読取装置(スキャナ)の制御回路の構成を示すブロック図である。
【0026】
なお、図3において、既に図1〜図2において説明した構成要素には同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0027】
CISユニット300から出力されたRGBアナログ信号はAFE(アナログフロントエンド)デバイスに入力され、A/D変換されてRGBデジタル信号が出力される。
【0028】
図3から分かるように、MFP装置全体の制御はCPU400により実行される。CPU400はROM401に格納された制御プログラムをRAM402を作業領域として用いて実行し、MFP装置全体の制御を実行する。また、CPU400は画像記録部500の動作も制御し、コピー(複写)動作が指示された場合には、画像読取装置で読み込んだ画像データを画像記録部500に転送して、画像を記録させる。
【0029】
画像記録部500はインクジェット記録ヘッドを駆動し、インク液滴を記録紙のような記録媒体に吐出して記録を行う構成となっている。なお、この他にも、例えば、電子写真方式を用いたレーザビームプリンタ、或は昇華型プリンタなどを画像記録部に用いることができる。しかしながら、これらのプリンタについては公知なので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0030】
さて、MFP装置100の一部を構成する画像読取装置200の画像読取動作はASIC301により制御される。以下、ASIC301の種々の機能ブロックについて説明する。
【0031】
読取デバイス制御部303は、CISユニット300及びAFE302へ制御信号を出力し、CISユニット300からのRGBアナログ信号をAFE302経由でRGBデジタル信号として取り込む。そして、読取データ処理部304にRGBデジタル信号を転送する。読取データ処理部304では、RGBデジタル信号に基づく画像データの並べ替えやパッキング等の処理を実行する。
【0032】
読取データ処理部304では、DIV切換読取制御部305で生成されるライン単位又は蓄積時間単位の内部割り込み信号に従いデータ処理を行う。DIV切換読取制御部305では、1〜Nラインに設定された外部トリガ同期信号(EXT_TRG)内の内部タイマ同期信号(SH)パルスの数の切換と画像データの取り込みスタート、終了の制御を行う。
【0033】
DCモータ310はCISユニット300を含む光学ユニット240を副走査方向に走査するための駆動源である。また、スライディングロッド260に沿って一定間隔でスリットが設けられたエンコーダスケール(不図示)が設けられている。一方、光学ユニット240にはエンコーダ311が設けられ、光学ユニット240の移動に伴って、エンコーダスケールを読み取り、エンコーダパルスを出力する。
【0034】
DCモータ制御部306は、エンコーダ制御部307での処理に従い、DCモータ310へのイネーブル信号、そのモータ速度と回転方向の情報を持つ位相信号を出力し、モータドライバ309を介したDCモータ310のフィードバック制御を行う。エンコーダ制御部307は、エンコーダ311から得られるエンコーダパルス(ENC_A/ENC_B)信号からCISユニット300の位置情報に相当するトリガパルス(ENC_TRG)信号を生成する。また、エンコーダパルスの時間間隔に基づく(即ち、位置情報の時間変化に基づく)速度情報から所定速度で割り込みやトリガ信号を生成する。
【0035】
読取同期信号生成部314は、エンコーダ制御部307やSP(ステッピング)モータ制御部308からの駆動トリガに基づき、読取解像度の1ライン又は複数ラインとなる基準の外部トリガ同期信号(EXT_TRG)を生成する。また、読取同期信号生成部314は内部にカウンタ(不図示)を有し、内部タイマ同期信号(SH)パルスの数をカウントし、設定数分、外部トリガ同期信号(EXT_TRG)に同期した内部タイマ同期信号(SH)を出力する。
【0036】
ASIC301の外部に備えられたRAM402は、シェーディングデータ及び画像原稿読取時の画像データを格納するためにも用いられる。なお、このような役割は、例えば、ASIC301内部にSRAM等を内蔵メモリとして設けることにより、その一部或いは全てを果たすように構成しても良い。
【0037】
なお、光学ユニット240を副走査方向に駆動する駆動源として、DCモータの代わりにステッピングモータ(SPモータ)313を用いても良い。その場合、SPモータ313を制御するためにSPモータ制御部308はモータドライバ312へ駆動情報を出力すると同時にステップパルスに相当する駆動トリガ(SP_TRG)を出力する。このステップパルスの数や周期が位置情報や速度情報になる。一点鎖線で囲んだSPモータ313とモータドライバ312とSPモータ制御部308を含む構成はDCモータ310とエンコーダ311とモータドライバ309とDCモータ制御部306とエンコーダ制御部307を用いたフィードバック制御の代替構成である。
【0038】
次に、上記構成のMFP装置、特に、画像読取装置において実行される画像読取動作について説明する。以下の説明では、DCモータとエンコーダを用いたフィードバック制御を行う構成を用いるとしている。
【0039】
図4は画像読取装置のCISユニットを加速しながらカラー画像原稿を読取る時の読取同期信号を生成するタイミングの一例を示す図である。
【0040】
図4において、ENC_A(B)は、エンコーダ制御部307へ入力されるエンコーダ信号出力を表している。例えば、立ち上がりの片エッジサンプリングの場合には、パルスの立ち上がりをエンコーダ311でフィルタリングして、ノイズ除去後、エンコーダパルス(ENC_TRG)として出力する。または、両エッジサンプリングの場合も同様に、エンコーダパルス(ENC_TRG)として出力する。なお、図4〜図6において、片エッジ、両エッジサンプリングも同一図で示すために、合わせて記載してあるが、特に各々の相関関係は無い。
【0041】
図4によれば、エンコーダパルス(ENC_TRG)の数がカウントされ、副走査読取解像度の1ラインとなる基準の外部トリガ同期信号(EXT_TRG:読取タイミング信号)が生成される。さらに、外部トリガ同期信号(EXT_TRG)に同期して、設定数分、内部タイマ同期信号(SH)が生成される。
【0042】
図4に示す例では、CISユニット300がカラー画像原稿を読取る場合を想定し、エンコーダパルス(ENC_TRG)に同期する内部タイマ同期信号(SH)数をDCモータ310の加速時に4から3に変更する場合を図示している。また、図4には設定数のDIV切換動作を、設定された速度情報を基に生成される加速制御トリガ信号(UP_TRG)のタイミングで切り換える場合を図示している。なお、切換時のトリガについては、速度検出トリガ(SPD_TRG)に基づく速度情報割り込みに対してDIV切換レジスタに設定する構成も考えられる。
【0043】
さらに、図4には、CISユニット300のLED点灯パターン(LED)とその点灯色に対する取得データ(DATA)のタイミング信号の例を2パターン示している。なお、これらのパターンに対応した信号INT_SHDIVは、RGB単位の割り込み信号の例である。
【0044】
図5は画像読取装置のCISユニット300或いはCCDセンサを加速しながらモノクロ画像原稿を読取る時の読取同期信号を生成するタイミングの一例を示す図である。
【0045】
図4に示した例と同様にこの例でもエンコーダパルス(ENC_TRG)をカウントし、副走査読取解像度の1ラインとなる基準の外部トリガ同期信号(EXT_TRG)を生成する。外部トリガ読取同期信号(EXT_TRG)に同期して、設定数分、内部タイマ同期信号(SH)を生成する。図5に示す例では、エンコーダパルス(ENC_TRG)に同期する内部タイマ同期信号(SH)数をDCモータ310の加速時に2から1に変更する場合を図示している。また、図5には設定数のDIV切換動作を、設定された速度情報を基に生成される加速制御トリガ信号(UP_TRG)のタイミングで切り換える場合を図示している。なお、切換時のトリガについては、速度検出トリガ(SPD_TRG)に基づく速度情報割り込みに対してDIV切換レジスタに設定する構成も考えられる。
【0046】
さらに、図5には、光学ユニット240にCISユニットを用いる場合と、CCDセンサを用いる場合のそれぞれについて、LED点灯パターン(LED)とその点灯色に対する取得データ(DATA)のタイミング信号の例を示している。なお、これら場合それぞれに対応した信号INT_SHDIVは、RGB単位の割り込み信号の例である。
【0047】
また、CISユニットに対する光源はRGB3原色のLEDであるが、CCDセンサに対する光源は白色LEDであり、図5では“W”として示されている。
【0048】
図6は画像読取装置のCISユニットを減速しながらカラー画像原稿を読取る時の読取同期信号を生成するタイミングの一例を示す図である。
【0049】
図4に示した例と同様にこの例でも、エンコーダパルス(ENC_TRG)がカウントされ、副走査読取解像度の1ラインとなる基準の外部トリガ同期信号(EXT_TRG)が生成される。さらに、外部トリガ同期信号(EXT_TRG)に同期して、設定数分、内部タイマ同期信号(SH)が生成される。図6に示す例では、CISユニット300がカラー画像原稿を読取る場合を想定し、エンコーダパルス(EXT_TRG)に同期する内部タイマ同期信号(SH)パルスの数をDCモータ310の減速時に3から4に変更する場合を図示している。また、図6には設定数のDIV切換動作は、設定された速度情報を基に生成される減速制御トリガ信号(DOWN_TRG)のタイミングで切り換える場合を図示している。なお、切換時のトリガについては、速度検出トリガ(SPD_TRG)に基づく速度情報割り込みに対してDIV切換レジスタに設定する構成も考えられる。
【0050】
さらに、図6でも図4と同様に、CISユニット300のLED点灯パターン(LED)とその点灯色に対する取得データ(DATA)のタイミング信号の例を2パターン示している。なお、これらのパターンに対応した信号INT_SHDIVは、RGB単位の割り込み信号の例である。
【0051】
図7は画像読取装置の光学ユニットを加減速しながら画像原稿を読取る時の処理を示すフローチャートである。
【0052】
まず、ステップS10では操作部4の所定の操作キーを操作してコピー又はスキャン(画像読取動作)動作を開始する。次に、ステップS20では、選択されたスキャン/コピー時の読取モード(解像度)を設定し、さらに、ステップS30では。加減速パターンテーブルの選択を行う。なお、テーブルを用いる代わりに所定条件から加減速パターンを算出しても良い。そして、ステップS40では、DCモータの駆動を開始する。
【0053】
DCモータの駆動により光学ユニットが移動を開始し加速され、ステップS50では、設定速度、又は設定位置、又は設定タイミングに達したなら読取トリガを発行し、読取動作を開始する。ステップS60では、画像読取が最終読取ラインになったかどうかを調べる。ここで、それが最終読取ラインでないと判別された場合、処理はステップS70に進み、更に読取一時停止要因が有るかどうかを調べる。読取一時停止要因としては、装置各部の処理速度のアンバランスによるバッファフル状態などがある。ここで、読取一時停止要因がないなら、処理はステップS60に戻り、画像読取を続行する。これに対して、読取一時停止要因が有る場合、処理はステップS80に進み、画像原稿の読取処理を継続しながら減速処理を開始する。
【0054】
ステップS80では減速処理開始後、減速時の1〜Nラインの外部トリガ同期信号(EXT_TRG)に同期した内部タイマ同期信号(SH)パルスの数を切り換える(以下、DIV切換)。そして、ステップS90では、光学ユニットの移動速度が設定されたDIV切換速度(所定の閾値)になるまで読取処理を継続し、そのDIV切換速度にまで減速すると、処理はステップS100に進み、設定条件に従い、低速時の読取DIV制御に切り換える。また、LED点灯パターンも切り換える。
【0055】
その後、ステップS110では、減速停止処理を実行するとともに画像原稿の読取処理を一時停止する。続いて、ステップS120では、読取一時停止要因が解除されたどうかを調べ、その要因が解除するまで読取処理一時停止を継続したまま処理を待ち合わせる。そして、その要因が解除されると、処理はステップS130に進み、光学ユニットの加速処理を開始し、読取処理も再開する。
【0056】
その加速処理開始後、ステップS140では光学ユニットが加速時のDIV切換速度に達したかどうかを判別する。ここで、光学ユニットが加速時のDIV切換速度(所定の閾値)に達した場合、処理はステップS150に進み、設定条件に従い、高速(定速)時の読取DIV制御に切り換える。また、LED点灯パターンも切り換え、読取処理を継続する。その後、処理は、ステップS60に戻る。これに対して、光学ユニットが加速時のDIV切換速度に達していないなら、DIV切換速度に達するまで、現在の設定で画像読取を継続する。
【0057】
さてステップS60において、画像読取が最終読取ラインに達したと判別された場合、処理はステップS160に進み、減速停止処理実行し、その後読取処理を終了する。
【0058】
なお、ステップS60の処理は、加減速動作中にも実行する処理としても良い。
【0059】
なお、本発明は以上のような処理によって限定されるものではない。例えば、次のような処理も可能である。
【0060】
図8は画像読取装置の光学ユニットを加減速しながら画像原稿を読取る時の処理の別の示すフローチャートである。なお、図8において、図7で既に説明したのと同じ処理ステップには同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0061】
図8と図7とを比較すると分かるように、この処理で特徴的な部分は、ステップS90aとステップS140aとである。
【0062】
ステップS90aでは、光学ユニットの位置が設定されたDIV切換位置に達するまで或いは減速処理の開始後、設定時間が経過するまで読取処理を継続し、そのDIV切換位置に達するかその設定時間が経過すると、処理はステップS100に進む。
【0063】
また、ステップS140aでは、光学ユニットが加速時のDIV切換位置に達したかどうか、或いは、加速処理の開始後、設定時間が経過したかどうかを判別する。ここで、光学ユニットが加速時のDIV切換位置に達するか、或いは、設定時間が経過した場合、処理はステップS150に進み、設定条件に従い、高速(定速)時の読取DIV制御に切り換える。また、LED点灯パターンも切り換え、読取処理を継続する。その後、処理は、ステップS60に戻る。
【0064】
図9は画像読取装置の光学ユニットの移動速度が変動する時に画像原稿を読取る時の処理の例を示すフローチャートである。画像読取中の光学ユニットの移動速度の変動は、例えば、超高解像度で画像を読み取るために低速で光学ユニットが移動する場合や、ADFにより画像原稿を給紙しながら読取を行う場合などに発生しやすい。また、画像原稿が、例えば、白紙部分、線画部分、文字部分、自然画部分が混在しており、それらの領域毎に読取速度を変更するような読取モードでも光学ユニットの移動速度は変動する。
【0065】
なお、図9において、図7で既に説明したのと同じ処理ステップには同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0066】
図9と図7とを比較すると分かるように、この処理で特徴的な部分は、ステップS210〜ステップS270の処理である。
【0067】
ステップS60では、画像読取が最終読取ラインになったかどうかを調べ、それが最終読取ラインでないと判別された場合、処理はステップS210に進む。
【0068】
ステップS210では、光学ユニットの加減速又は定速駆動制御を継続する。この駆動制御は、意図した加減速制御と意図しない要因による速度変動を含む。続いて、ステップS220では、光学ユニットが減速したかどうかを調べる。ここで、減速が検知されると処理はステップS230に進み、光学ユニットが減速時のDIV切換速度に達したかどうかを判別する。
【0069】
ここで、光学ユニットが減速時のDIV切換速度に達したと判断される場合、処理はステップS240に進み、設定条件に従い低速時の読取DIV制御に切り換える。また、LED点灯パターンも切り換え、読取処理を継続し、さらに処理はステップS60に戻る。これに対して、光学ユニットがまだ減速時のDIV切換速度に達していないと判断される場合、処理はそのままステップS60に戻り読取処理を継続する。
【0070】
さて、光学ユニットの減速が検知されない場合、処理はステップS250に進み、光学ユニットが加速したかどうかを調べる。ここで、加速が検知されると処理はステップS260に進み、光学ユニットが加速時のDIV切換速度に達したかどうかを判別する。ここで、光学ユニットが加速時のDIV切換速度に達したと判断される場合、処理はステップS270に進み、設定条件に従い、高速(定速)時の読取DIV制御に切り換える。また、LED点灯パターンも切り換え、読取処理を継続し、さらに処理はステップS60に戻る。これに対して、光学ユニットがまだ加速時のDIV切換速度に達していないと判断されると、処理はそのままステップS60に戻り読取処理を継続する。また、光学ユニットの加速も検知されない場合、処理はステップS60に戻り読取処理を継続する。
【0071】
従って、以上説明した実施例に従えば、光学ユニットの加減速時や速度変動発生時の画像読取において、光学ユニットの速度或いは位置、或いは、所定タイミングで1〜Nラインの外部トリガ同期信号に同期した内部タイマ同期信号のパルス数を切り換える。これにより、光電変換素子に電荷を蓄積する時間変動を所定範囲に抑え、高精度な画像読取を実現することができる。
【0072】
なお、以上説明した実施例では、画像記録部と画像読取装置とを内蔵したマルチファンクションプリンタ装置を例として説明したが、本発明は画像読取装置単体でスキャナ装置を構成する場合にも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を光学的に読み取る画像読取装置であって、
第1方向に移動しながら、前記原稿の画像を読み取る、前記第1方向と交差する第2方向に配列した複数の光電変換素子を備えた光学ユニットと、
前記光学ユニットを前記第1方向に移動させる駆動源となるモータと、
前記第1方向に関する前記光学ユニットの位置情報を取得する取得手段と、
前記位置情報の変化から前記光学ユニットの移動速度を算出する算出手段と、
前記光学ユニットの移動速度に従って変化する、前記第1方向に関する画像の読取解像度に対応する各読取ラインの読取タイミング信号を生成する生成手段と、
前記読取タイミング信号に基づいて生成される前記複数の光電変換素子に対する電荷の蓄積時間を切り換える切換手段とを有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記光学ユニットは光源としてLEDを用い、
前記切換手段は、前記光学ユニットの移動が減速時、或いは、加速時に、前記LEDの点灯パターンを切り換えることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記電荷の蓄積時間の切換は、前記読取タイミング信号に同期して生成される前記電荷の蓄積時間に応じた同期信号のパルス数を変更することによりなされることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記光学ユニットの移動速度が減速時、或いは、加速時に、予め定められた閾値に達したどうかを判別する判別手段をさらに有し、
前記切換手段は、前記判別手段により前記光学ユニットの移動速度が前記予め定められた閾値に達したことが判別された場合に、前記電荷の蓄積時間の切換を行うことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記光学ユニットの移動速度が減速時、或いは、加速時に、前記光学ユニットが予め定められた位置に達したどうか、或いは、予め定められた時間が経過したかどうかを判別する判別手段をさらに有し、
前記切換手段は、前記判別手段により前記光学ユニットの位置が前記予め定められた位置に達したか、或いは、前記予め定められた時間が経過したことが判別された場合に、前記電荷の蓄積時間の切換を行うことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記モータはDCモータであり、
前記取得手段は、
前記光学ユニットの移動する方向に沿って設けられたスケールと、
前記スケールに予め定められた間隔で設けられたスリットを読み取り、前記光学ユニットの位置に対応するエンコーダパルスを出力するエンコーダとを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記モータはステッピングモータであり、
前記取得手段は、前記ステッピングモータに対するステップパルスから前記光学ユニットの位置情報を取得することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に画像読取装置を用いたマルチファンクションプリンタ装置。
【請求項9】
駆動源となるモータの駆動により第1方向に移動しながら、原稿の画像を光学的に読み取るために、前記第1方向と交差する第2方向に配列した複数の光電変換素子を備えた光学ユニットを備えた画像読取装置における画像読取方法であって、
前記第1方向に関する前記光学ユニットの位置情報を取得する取得工程と、
前記位置情報の変化から前記光学ユニットの移動速度を算出する算出工程と、
前記光学ユニットの移動速度に従って変化する、前記第1方向に関する画像の読取解像度に対応する各読取ラインの読取タイミング信号を生成する生成工程と、
前記読取タイミング信号に基づいて生成される前記複数の光電変換素子に対する電荷の蓄積時間を切り換える切換工程とを有することを特徴とする画像読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−115579(P2013−115579A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259509(P2011−259509)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】