説明

画像読取装置および原稿読取方法

【課題】原稿の読み取りを行う際の効率を向上させる技術を提供すること。
【解決手段】画像読取装置は、操作部と、操作部の操作内容に応じて、原稿に対してそれぞれ異なる処理を実行する複数の動作モードの中から一つの動作モードを設定する設定部と、操作部からの読取実行要求により原稿を読み取る読取部と、設定部によって設定された設定動作モードの違いによって、読取実行要求の前に読取部に読取準備動作を実行させるか否か(S100,S105)を制御する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像読取装置および原稿読取方法に関し、詳しくは、画像読取装置において読取開始時間を短縮可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像読取装置において読取開始時間を短縮する技術として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。その従来技術文献においては、各種設定操作後、原稿の読取開始要求前に黒レベル(暗レベル)の補正を行うことにより、読取開始要求から読取開始までの読取開始時間を短縮する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−116436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術文献のように、原稿の読取開始要求前に黒レベルの補正を行うことにより読取開始時間を短縮できるものの、必ずしも黒レベルの補正を行う必要のない場合がある。例えば、各種設定操作後に、読取解像度等の読取条件を設定し直すことが多いモードがある場合、原稿の読取開始要求前に黒レベルの補正を行うことによって却って効率が低下する虞がある。
本発明は、原稿の読み取りを行う際の効率を向上させる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される画像形成装置は、操作部と、前記操作部の操作内容に応じて、原稿に対してそれぞれ異なる処理を実行する複数の動作モードの中から一つの動作モードを設定する設定部と、前記操作部からの読取実行要求により原稿を読み取る読取部と、前記設定部によって設定された設定動作モードの違いによって、前記読取実行要求の前に前記読取部に読取準備動作を実行させるか否かを制御する制御部とを備える。
【0006】
上記画像形成装置において、前記制御部は、前記設定動作モードが第1動作モードである場合、前記読取実行要求の前に前記読取部に前記読取準備動作を実行させ、前記設定動作モードが第2動作モードである場合、前記読取実行要求の後に前記読取部に前記読取準備動作を実行させるようにしてもよい。
【0007】
また、上記画像形成装置において、前記複数の動作モードは、読取データの出力先がそれぞれ異なる動作モードを含むようにしてもよい。その際、前記複数の動作モードは、FAX送信モード、コピーモード、およびスキャンモードを含み、前記制御部は、前記FAX送信モードを前記第1動作モードとして制御し、前記コピーモードおよび前記スキャンモードを前記第2動作モードとして制御するようにしてもよい。
【0008】
また、上記画像形成装置において、前記操作部の操作内容に応じて、所定の動作モードを前記第1動作モードおよび前記第2動作モードのいずれかに属する動作モードとして登録する登録部を備えるようにしてもよい。
【0009】
また、上記画像形成装置において、前記操作部の操作内容に応じて、前記読取部による読取条件を変更する変更部と、前記動作モード設定後に前記読取条件が変更される頻度を、前記動作モード毎に記憶する記憶部とを備え、前記制御部は、前記頻度が低い動作モードを前記第1動作モードとして制御し、前記頻度が高い動作モードを前記第2動作モードとして制御するようにしてもよい。
【0010】
また、上記画像形成装置において、前記読取準備動作は、前記読取部の光源を点灯させない非点灯動作を含むようにしてもよい。その際、前記非点灯動作は、読取データを補正するための黒データ取得動作およびアナログフロントエンド調整のための暗レベル取得動作を含むようにしてもよい。
【0011】
また、上記画像形成装置において、前記読取準備動作は、白データ取得動作および光量調整動作を含むようにしてもよい。
【0012】
また、上記画像形成装置において、前記読取部が前記読取実行要求前に前記読取準備動作を実行してから前記読取実行要求までの経過時間を計時する計時部を備え、前記制御部は、前記経過時間が所定時間以上である場合、前記読取部に前記読取準備動作を再度実行させるようにしてもよい。
【0013】
また、上記画像形成装置において、前記操作部の操作内容に応じて、前記読取部による読取条件を変更する変更部を備え、前記制御部は、前記読取実行要求前に前記読取部に前記読取準備動作を実行させてから前記読取条件が変更された場合、前記読取部に前記読取準備動作を再度実行させるようにしてもよい。
【0014】
また、上記画像形成装置において、前記制御部は、前記読取実行要求前に前記読取部に前記読取準備動作を実行させてから他の前記動作モードが設定された場合、前記読取部に前記読取準備動作を再度実行させるようにしてもよい。
【0015】
また、上記画像形成装置において、前記操作部の操作内容に応じて、前記読取部による読取条件を変更する変更部を備え、前記制御部は、前記読取実行要求前に前記読取部に前記読取準備動作を実行させてから他の前記動作モードが設定された場合であって、かつ前記読取条件が変更された場合、前記読取部に前記読取準備動作を再度実行させるようにしてもよい。
【0016】
また、本明細書によって開示される原稿読取方法は、原稿に対してそれぞれ異なる処理を実行する複数の動作モードと、ユーザからの読取実行要求により前記原稿を読み取る読取部とを備えた画像読取装置における原稿読取方法であって、ユーザの選択に応じて前記複数の動作モードの中から一つの動作モードを設定する設定工程と、設定された動作モードの違いによって、前記読取実行要求の前に前記読取部に読取準備動作を実行させるか否かを判定する判定工程と、前記判定工程の後に、前記読取部によって前記原稿を読取る読取工程とを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、設定部によって設定された設定動作モードの違いによって、読取実行要求の前に読取部に読取準備動作を実行させるか否かが制御する。そのため、原稿の読み取りを行う際の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る複合機の外観斜視図
【図2】原稿読取部の要部拡大断面図
【図3】複合機の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図4】実施形態1における原稿読取処理の流れを示すフローチャート
【図5】実施形態2における原稿読取処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
次に本発明の実施形態1について図1から図4を参照して説明する。
【0020】
1.複合機の構成
実施形態1では、本発明に係る画像読取装置をスキャナ機能、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を備えた複合機1に適用した例を示す。図1は、複合機1の外観斜視図であり、図2は、原稿読取部3の要部拡大断面図である。
【0021】
複合機1は、図1に示すように、用紙に画像を印刷する画像形成部38(図3参照)を収容した本体部2を備え、その上方に原稿を読み取る原稿読取部(読取部の一例)3を備えている。原稿読取部3の前側には、操作パネル4(操作部の一例)が設けられ、操作パネル4により動作状態等の表示や、ユーザによる操作の入力が可能となっている。
【0022】
原稿読取部3は、図2に示されるように、フラットベッド部6とその上方を開閉可能に覆う原稿カバー部7とを備えている。フラットベッド部6の上面には、透明な長方形状をなす、第1プラテンガラス8と第2プラテンガラス9とが並んで設けられている。原稿カバー部7は、ADF(自動原稿供給装置)11、原稿トレイ12、排出トレイ13を備えている。ADF11は、原稿トレイ12に載置された原稿を一枚ずつ搬送して、その原稿を第2プラテンガラス9に対向する位置に搬送した後、排出トレイ13上に排出する。
【0023】
第1プラテンガラス8の下側には、読取ヘッド14が設けられている。この読取ヘッド14は、CIS(Contact Image Sensor)やCCD等のイメージセンサ15、レンズ等からなる光学素子16、光源としての蛍光灯17を備えている。イメージセンサ15は、主走査方向(紙面に直交方向)に一列に並んで配置された複数のフォトダイオードを備えており、蛍光灯17より原稿に光を当てたときの反射光を光学素子16を介して個々のフォトダイオードで受光し、画素毎に反射光の光強度を電気信号に変換して出力する。
【0024】
原稿の読み取りは、原稿を第1プラテンガラス8上に載置して行う場合と、ADF11を利用する場合とがある。前者の場合、読取ヘッド14が副走査方向(図2の矢線A方向)に移動され、その際に主走査方向(図2の紙面に直交する方向)に1ラインずつ原稿の読み取りが行われる。また、後者の場合には、読取ヘッド14が第2プラテンガラス9に対向する位置に固定され、原稿がADF11の駆動によって第2プラテンガラス9に対向する位置に搬送されたときに、原稿の読み取りが主走査方向に1ラインずつ行われる。
【0025】
2.複合機の電気的構成
次に、複合機1の電気的構成について説明する。図3は、複合機1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【0026】
複合機1は、CPU31、ROM32、RAM33、NVRAM(不揮発性メモリ)34、ASIC(特定用途用集積回路)35、ネットワークインターフェイス36、ファクシミリインターフェイス37、タイマ38等を含む制御装置30を備えている。
【0027】
ROM32には、複合機1を制御するための各種制御プログラムや各種設定、初期値等が記憶されている。RAM33は、各種制御プログラムが読み出される作業領域として、あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として用いられる。ASIC35は、画像形成部38、原稿読取部3、操作パネル4等と接続されている。CPU31(設定部、制御部の一例)は、ROM32から読み出した制御プログラムに従って、その処理結果をRAM33又はNVRAM34に記憶させながら、ASIC35を介して複合機1の各構成要素を制御する。
【0028】
ネットワークインターフェイス36には、コンピュータ等が接続され、このネットワークインターフェイス36を介して相互のデータ通信が可能となっている。また、ファクシミリインターフェイス37は、電話回線(図示せず)に接続され、このファクシミリインターフェイス37を介して外部のファクシミリ装置等とファクシミリデータの通信が可能となっている。タイマ(計時部の一例)38は、CPU31の制御に伴う各種の時間計測を行う。
【0029】
3.原稿読取処理
次に、図4を参照して、本実施形態における原稿読取処理を説明する。図4は、原稿読取処理の流れを示すフローチャートである。原稿読取処理は、所定の制御プログラムにしたがってCPU31の制御により実行される。また、原稿読取処理は、ユーザが、原稿読取を行うにあたって、操作パネル4の操作ボタン4Bを操作して複合機1の複数の動作モードの中から一つの動作モードを選択した場合に、開始される。
【0030】
なお、本実施形態において、上記複数の動作モードには、原稿読取部3によって読み取られた読取データの出力先の違いに応じて、読取データを印字出力する「コピーモード」、読取データをメモリ、例えば内部メモリであるNVRAM34あるいは外部メモリ等に記憶する「スキャンモード」、および、読取データを外部に送信出力する「Fax送信モード」が含まれる。
【0031】
また、上記動作モードは、CPU31が、ユーザによる読取実行要求の前に原稿読取部3に読取準備動作を実行させる「第1動作モード」と、読取実行要求の後に原稿読取部3に読取準備動作を実行させる「第2動作モード」とに分類される。「第1動作モード」には、例えば、「Fax送信モード」が属し、「第2動作モード」には、例えば、「コピーモード」および「スキャンモード」が属する。 CPU31は、FAX送信モードを第1動作モードとして制御し、コピーモードおよびスキャンモードを第2動作モードとして制御する。
【0032】
このように、読取データの出力先の違いによって、読取準備動作を行うタイミングを異ならせるため、原稿の読み取りを行う際の効率を向上させることができる。これは、読取データの出力先の違いによって読取設定(読取条件)が変更される頻度が異なるからである。例えば、「Fax送信モード」では、読取設定が変更される頻度が少なく、読取実行要求の前に読取準備動作を実行しても、その後、読取設定の変更に応じて読取準備動作を再実行する確率が低いためである。
【0033】
なお、各動作モードの「第1動作モード」および「第2動作モード」の何れに属するかの設定は、複合機1の出荷時に固定値として設定されてもよい。あるいは、使用時に、ユーザによる操作パネル4の操作内容に応じて、CPU(登録部の一例)31の処理によって登録されるようにしてもよい。この場合、ユーザの意図を汲み取った、より効率的な原稿の読み取りができる。
【0034】
さらに、CPU31は、FAX送信モードを第1動作モードとして制御し、コピーモードおよびスキャンモードを第2動作モードとして制御する。そして、そのような制御状態で、さらに、CPU31は、操作パネル4の操作内容に応じて、所定の動作モードを第1動作モードおよび第2動作モードのいずれかに属する動作モードとして登録し、それ以後、登録情報にしたがって各モードを制御するようにしてもよい。
【0035】
また、読取準備動作には、例えば、読取データを補正するための黒データ取得動作、白データ取得動作、およびアナログフロントエンド(AFE)調整のための暗レベル取得動作、光量調整動作等が含まれる。この内、黒データ取得動作、AFE調整のための暗レベル取得動作は、原稿読取部3の蛍光灯(光源)17を点灯させない非点灯動作である。
【0036】
ここで、読取準備動作では、例えば、読取ヘッド14を白基準板20(図2参照)に対向する位置まで移動させる。そして、光量調整動作では、読取ヘッド14の蛍光灯17から白基準板20に対して光を照射して、明レベルの調整を行う。AFE調整のための暗レベル取得動作では、蛍光灯17を点灯せずに、イメージセンサ15からの信号を受けて、暗レベルの調整を行う。白データ取得動作では、光量調整動作で明レベルが調整された状態で蛍光灯17を点灯して白データを取得する。一方、黒データ取得動作では、AFE調整で暗レベルが調整された状態で蛍光灯17を点灯させないで黒データを取得する。また、取得された白データおよび黒データに基づいて、例えば、シェーディングデータが作成される。
【0037】
さて、原稿読取処理において、CPU31は、ます、ユーザによる操作パネル4の操作内容に応じて、すなわち、ユーザによる動作モードの選択に応じて、原稿に対してそれぞれ異なる処理を実行する複数の動作モードの中から一つの動作モードを設定する。そして、今回の原稿読取処理において、ユーザによって、読取実行要求の前に読取準備動作を行う動作モードが選択されたかどうか、すなわち、読取実行要求の前に読取準備動作を行う動作モードが設定されたかどうかを判定する(ステップS100)。言い換えれば、設定された動作モード(設定動作モード)が「第1動作モード」であるかどうかを判定する。
【0038】
読取実行要求前に読取準備動作を行う動作モードが設定されたと判定された場合、すなわち、設定動作モードが「第1動作モード」である場合(ステップS100:YES)、CPU31は、デフォルトの読取設定で、原稿読取部3に上記読取準備動作を実行させるとともに(ステップS105)、タイマ(計時部の一例)38に計時を開始させる(ステップS110)。そして、ステップS115の処理に移行する。なお、ここで、読取設定は「読取条件」に相当する。また、デフォルトの読取設定とは、例えば、カラー/モノクロの設定がモノクロ、解像度が200dpiである。
一方、読取実行要求前に読取準備動作を行わない動作モードが設定されたと判定された場合、すなわち、設定動作モードが「第2動作モード」である場合(ステップS100:NO)、読取設定変更メニューを、例えば、操作パネル4の表示部4Aに表示して、動作モード変更および読取設定変更を受け付ける(ステップS115)。
【0039】
次いで、CPU31は、動作モードが変更されたかどうかを判定する(ステップS120)。動作モードが変更されたと判定した場合(ステップS120:YES)、ステップS100の処理に戻る。その際、ステップS115において「第1動作モード」である他の動作モードが設定された場合(ステップS100:YES)、CPU31は原稿読取部3に読取準備動作を再度実行させる(ステップS105)。この場合、動作モードが変更された場合であっても、変更された動作モードが「第1動作モード」である場合のみ、読取実行要求前に読取準備動作が再実行される。そのため、原稿の読み取りを行う際の効率を向上させることができる。
なお、これには限定されず、「第2動作モード」に変更された場合にも、読取実行要求前に読取準備動作が再実行されるようにしてもよい。
【0040】
なお、ステップS115において「第1動作モード」である他の動作モードが設定された場合であって、かつ読取条件(読取設定)が変更された場合、ステップS100を介してステップS105において原稿読取部3に読取準備動作を再度実行させるようにしてもよい。この場合、動作モードが変更されても読取条件が変更されない場合には読取準備動作の再実行が必要でない場合を除外できる。すなわち、動作モード変更のみでは読取準備動作が再実行されないため、原稿の読み取りを行う際の効率を向上させることができる。
【0041】
一方、動作モードが変更されていないと判定した場合(ステップS120:NO)、ユーザによる操作パネル4の操作によって、読取実行要求がなされたかどうか、言い換えれば、読取実行スタートボタンが押されたかをどうか判定する(ステップS125)。
【0042】
いまだ読取実行要求がなされていないと判定した場合(ステップS125:NO)、ステップS115の処理に戻る。一方、読取実行要求がなされたと判定した場合(ステップS125:YES)、読取準備動作が既に実行されているかどうか、すなわち、読取準備動作が読取実行要求前に実行されているかどうかを判定する(ステップS130)。
【0043】
読取準備動作が読取実行要求前に実行されていないと判定した場合、(ステップS130:NO)、読取準備動作を実行する、すなわち、読取実行要求の後に読取準備動作を実行する(ステップS145)。次いで、原稿読取部3を制御して読取動作を行わせる(ステップS150)。一方、読取準備動作が既に実行されていると判定した場合、(ステップS130:YES)、読取準備動作の実行時と比較して、読取設定が変更されているかどうかを判定する(ステップS135)。なお、読取設定の変更は、ステップS115の表示にしたがったユーザによる操作パネル4による操作内容に応じて、CPU(変更部の一例)31が、原稿読取部3による読取条件を変更することによって行われる。
【0044】
読取設定が変更されていると判定した場合(ステップS135:YES)、読取準備動作を再度実行する(ステップS145)。ここで、読取準備動作を再度実行するのは、読取設定として、例えば、解像度が異なると、読取準備動作で行われる処理も異なるからである。具体的には、解像度が600dpiの場合は、白基準板を読み取った際に主走査方向の約5000画素分のデータを取得する読取準備動作を行い、解像度が300dpiの場合は、白基準板を読み取った際に主走査方向の約2500画素分のデータを取得する読取準備動作を行う。また、読取設定として、例えば、カラー読取が設定された場合は、白基準板をカラーで読み取ってデータを取得する読取準備動作を行い、モノクロ読取が設定された場合は、白基準板をモノクロで読み取ってデータを取得する読取準備動作を行う。このように、読取設定に応じて異なる読取準備動作を行うことで、実際に原稿を読み取り生成される読取データの補正をより適切に行うことができる。
【0045】
一方、読取設定が変更されていないと判定した場合(ステップS135:NO)、タイマ38の計時値が所定時間、例えば1分を超えているかどうか判定する(ステップS140)。なお、計時値の所定時間は、動作モードに応じた値に設定されてもよい。
【0046】
タイマ38の計時値が所定時間を超えていると判定した場合(ステップS140:YES)、読取準備動作を再度実行する(ステップS145)。一方、タイマ38の計時値が所定時間を超えていないと判定した場合(ステップS140:NO)、原稿読取部3を制御して読取動作を行わせる(ステップS150)。ここで、タイマ38の計時値が所定時間を超えている場合に読取準備動作を再度実行するのは、読取準備動作を実行してからの経過時間が長いと、原稿読取部3の周辺温度が変化するため、周辺温度の変化による影響を低減するためである。
なお、ステップS120の処理は削除されてもよい。すなわち、読取準備動作が実行された後において動作モードが変更された場合であっても、動作モード変更に伴う、読取実行要求前の読取準備動作を再実行するかどうかの判断は行われなくでもよい。
【0047】
4.実施形態1の効果
上記したように、実施形態1では、CPU31は、設定した動作モードが、ユーザによる読取実行要求の原稿読取部3に読取準備動作を実行させる「第1動作モード」であるか、読取実行要求の後に原稿読取部3に読取準備動作を実行させる「第2動作モード」であるかを判定する。そして、設定動作モードが「第1動作モード」であると判定した場合、読取実行要求の前に原稿読取部3に「読取準備動作」を実行させる。通常、上記読取準備動作は、読取データの所定の品質を確保するために、動作モードに関わらず読取動作の実行前に実行されるものである。そのため、動作モードの違いによって読取実行要求前に読取準備動作を実行させる場合とさせない場合とで切り分け、「第1動作モード」に属する動作モードに関しては、読取実行要求前に読取準備動作を実行し、「第2動作モード」に属する動作モードに対してのみ読取実行要求の後に読取準備動作を実行する。
【0048】
すなわち、実施形態1では、全ての動作モードに対して読取実行要求の前に読取準備動作が実行されない。例えば、黒レベルの補正は、「第2動作モード」に属する動作モードに対して読取実行要求の後に実行される。そのため、読取動作の実行前に黒レベルが再補正される回数が低減される。一方、「第1動作モード」に属する動作モードに関しては、読取実行要求前に読取準備動作が実行されるため、読取開始要求から即座に読取動作を開始することができ、読取開始時間を短縮することができる。そのため、原稿の読み取りを行う際の効率を向上させることができる。
【0049】
<実施形態2>
次に実施形態2について図5を参照して説明する。図5は、実施形態2における原稿読取処理の流れを示すフローチャートである。なお、フローチャートの大部分は図4のものと同様であるので、図4のフローチャートと共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
実施形態2においては、CPU31は、「第1動作モード」あるいは「第2動作モード」として事前に一度設定された動作モードのモード属性を、読取条件が変更される頻度に応じて設定変更する。言い換えれば、CPU31は、読取条件が変更される頻度に応じて、どの動作モードで読取実行要求の前に読取準備動作を実行するかを設定変更する。
【0051】
そのため、実施形態2においては、図5のステップS150において読取動作が行われた後において、動作モード毎の読取設定変更頻度DB(デーダベース)を更新する(ステップS210)。読取設定変更頻度DBは、例えば、NVRAM34内に設けられる。なお、今回の読取実行において読取設定が変更されなかった動作モードの読取設定変更頻度DBの更新はされない。
【0052】
次いで、読取設定変更頻度DBの値にしたがい、どの動作モードで読取実行要求の前に読取準備動作を実行するかを設定変更する(ステップS215)。本実施形態では、CPU31は、読取設定変更頻度が低い動作モードを「第1動作モード」に設定変更し、読取設定変更頻度が高い動作モードを「第2動作モード」に設定変更する。なお、当初の設定に変更がない場合は設定変更されない。
ここで、読取設定変更頻度とは、所定期間に読取設定変更が実行される回数であり、例えば、例えば、一日の間に解像度が変更される回数である。そのため、この所定期間は、ステップS100からステップS210までの処理を行い、所定期間後に、所定期間内の頻度に応じてステップS215が実行される。
【0053】
5.実施形態2の効果
上記したように、実施形態2では、読取設定変更頻度に応じて動作モードを、読取実行要求の前に読取準備動作を実行する「第1動作モード」とするか、あるいは読取実行要求の後に読取準備動作を実行する「第2動作モード」とするかが決定される。その際、読取設定変更頻度が低い動作モードが「第1動作モード」に設定され、読取設定変更頻度が高い動作モードが「第2動作モード」に設定される。そのため、読取設定変更頻度が高い動作モードにおいて読取実行要求前に「読取準備動作」を実行すると、読取実行要求後に読取準備動作を再実行する確率が高くなるため、読取設定変更頻度が高い動作モードを「第2動作モード」に設定することによって、そのような再実行を抑制できる。一方、読取設定変更頻度が低い動作モードでは、読取実行要求前に読取準備動作を実行しても、読取実行要求後に読取準備動作を実行する確率は低い。そのため、読取設定変更頻度が低い動作モードでは、読取実行要求前に読取準備動作を実行しておくことによって、読取実行要求から読取動作終了までの時間を短縮することができる。よって、より効率的に原稿を読み取ることができる。
【0054】
なお、各動作モードの「第1動作モード」および「第2動作モード」の何れに属するかの登録設定に関して、例えば、ユーザが登録しない場合は、読取設定変更頻度によって変更する機能をONにし、ユーザが登録した場合は、読取設定変更頻度によって変更する機能をOFFにするようにしてもよい。あるいはユーザによる登録機能を省略してもよい。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
(1)上記各実施形態では、読取実行要求前に実行する読取準備動作として、黒データ取得動作、白データ取得動作、アナログフロントエンド(AFE)調整のための暗レベル取得動作、および光量調整動作を実行する例を示したが、これに限られない。その他の動作を実施するようにしてもよい。
【0057】
あるいは、読取実行要求前に実行する読取準備動作として、蛍光灯(光源)17を点灯させない非点灯動作である、黒データ取得動作、およびAFE調整のための暗レベル取得動作のみを実行し、蛍光灯(光源)17を点灯させる必要のある白データ取得動作および光量調整動作は、読取実行要求後に実行する読取準備動作としてもよい。この場合、蛍光灯17を点灯させるための電力の無駄な使用を抑制できる。すなわち、動作モードが選択されても必ずしも読取実行要求がされるとは限られない。そのため、動作モードが選択されても読取実行要求がされなかった場合には、「第1動作モード」の動作モードが選択されたことを条件に、蛍光灯17を点灯させる必要のある準備動作を実行すると、電力の無駄となる。
【0058】
(2)上記各実施形態では、設定動作モードが「第1動作モード」の場合に読取実行要求前に読取準備動作を実行する例を示したが、これに限られず、設定動作モードが「第1動作モード」の場合であっても読取実行要求前に読取準備動作を実行しないようにしてもよい。
【0059】
(3)動作モードとしては、読取データの出力先がそれぞれ異なる動作モードに限られない。例えば、カラー読取モード/モノクロ読取モード、高画質読取モード/高生産読取モード等も含まれる。この場合、例えば、モノクロ読取モードおよび高生産読取モードが「第1動作モード」とされ、カラー読取モードおよび高画質読取モードが「第2動作モード」とされる。
【符号の説明】
【0060】
1…複合機、3…原稿読取部、4…操作パネル、17…蛍光灯、31…CPU、34…NVRAM、38…タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、
前記操作部の操作内容に応じて、原稿に対してそれぞれ異なる処理を実行する複数の動作モードの中から一つの動作モードを設定する設定部と、
前記操作部からの読取実行要求により原稿を読み取る読取部と、
前記設定部によって設定された設定動作モードの違いによって、前記読取実行要求の前に前記読取部に読取準備動作を実行させるか否かを制御する制御部と、
を備えた画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置において、
前記制御部は、
前記設定動作モードが第1動作モードである場合、前記読取実行要求の前に前記読取部に前記読取準備動作を実行させ、
前記設定動作モードが第2動作モードである場合、前記読取実行要求の後に前記読取部に前記読取準備動作を実行させる、画像読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像読取装置において、
前記複数の動作モードは、読取データの出力先がそれぞれ異なる動作モードを含む、画像読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像読取装置において、
前記複数の動作モードは、FAX送信モード、コピーモード、およびスキャンモードを含み、
前記制御部は、前記FAX送信モードを前記第1動作モードとして制御し、前記コピーモードおよび前記スキャンモードを前記第2動作モードとして制御する、画像読取装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記操作部の操作内容に応じて、所定の動作モードを前記第1動作モードおよび前記第2動作モードのいずれかに属する動作モードとして登録する登録部を備える、画像読取装置。
【請求項6】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記操作部の操作内容に応じて、前記読取部による読取条件を変更する変更部と、
前記動作モード設定後に前記読取条件が変更される頻度を、前記動作モード毎に記憶する記憶部とを備え、
前記制御部は、前記頻度が低い動作モードを前記第1動作モードとして制御し、前記頻度が高い動作モードを前記第2動作モードとして制御する、画像読取装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記読取準備動作は、前記読取部の光源を点灯させない非点灯動作を含む、画像読取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像読取装置において、
前記非点灯動作は、読取データを補正するための黒データ取得動作およびアナログフロントエンド調整のための暗レベル取得動作を含む、画像読取装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記読取準備動作は、白データ取得動作および光量調整動作を含む、画像読取装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記読取部が前記読取実行要求前に前記読取準備動作を実行してから前記読取実行要求までの経過時間を計時する計時部を備え、
前記制御部は、前記経過時間が所定時間以上である場合、前記読取部に前記読取準備動作を再度実行させる、画像読取装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記操作部の操作内容に応じて、前記読取部による読取条件を変更する変更部を備え、
前記制御部は、前記読取実行要求前に前記読取部に前記読取準備動作を実行させてから前記読取条件が変更された場合、前記読取部に前記読取準備動作を再度実行させる、画像読取装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記制御部は、前記読取実行要求前に前記読取部に前記読取準備動作を実行させてから他の前記動作モードが設定された場合、前記読取部に前記読取準備動作を再度実行させる、画像読取装置。
【請求項13】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の画像読取装置において、
前記操作部の操作内容に応じて、前記読取部による読取条件を変更する変更部を備え、
前記制御部は、前記読取実行要求前に前記読取部に前記読取準備動作を実行させてから他の前記動作モードが設定された場合であって、かつ前記読取条件が変更された場合、前記読取部に前記読取準備動作を再度実行させる、画像読取装置。
【請求項14】
原稿に対してそれぞれ異なる処理を実行する複数の動作モードと、ユーザからの読取実行要求により前記原稿を読み取る読取部とを備えた画像読取装置における原稿読取方法であって、
ユーザの選択に応じて前記複数の動作モードの中から一つの動作モードを設定する設定工程と、
設定された動作モードの違いによって、前記読取実行要求の前に前記読取部に読取準備動作を実行させるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程の後に、前記読取部によって前記原稿を読取る読取工程と、
を含む、原稿読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−80991(P2013−80991A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218417(P2011−218417)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】