説明

画像読取装置と画像形成装置

【課題】 原稿上に光沢の有無で作られたパターンを正しく抽出するために、装置構成の膨大化と装置のコストアップを招かないようにする。
【解決手段】 CPU38の制御により、光源24を画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こさない照射位置にして、画像読み取り面からハレーションが起きないときの画像を読み取り、光源24を画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす照射位置にして、画像読み取り面からハレーションが起きたときの画像を読み取り、光沢検知部35によって上記ハレーションが起きたときと起きないときの両画像に基づいて原稿の光沢部分を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原稿の画像を読み取る画像読取装置と、その画像読取装置を備えたファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機を含む画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードに代表されるマーキングと呼ぶ技術がある。
これは、特定パターンを印刷した原稿を読み取り、その読み取った画像から抽出したパターンから、そのパターンが示す情報を取り出す技術である。
この技術は、現在もさまざまな用途に使われている。
例えば、商品のラベルや出版物には、関連ホームページへ誘導するためのバーコード(QRcode)が多くみられる。
【0003】
また、オフィスの文書にも、コピー機でのコピー許可、あるいは禁止を指示する地紋が使われている。
バーコードは原稿の局所面積を特定のパターンで占有するタイプであり、地紋は多数の小さな点や線で構成したパターンをコンテンツと重ね合わせるタイプであるが、いずれも、ラベル、出版物、文書を見る利用者にとって、“じゃまなもの”であると言える。
【0004】
なぜなら、人間が見て理解するコンテンツ(文字や図形)と、機械に理解させるためのパターンを同じページ内に混在させているからである。
そこで、文書のコンテンツ中のバーコードや地紋のようなパターンを“じゃまなもの”でなくするためには、例えば、パターンを目立たない色のトナー(インク)で印刷すればよい。
【0005】
近年、ファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機を含む画像形成装置の電子写真プロセスにおいて、透明なトナーの使用が可能になっており、ここでは、この透明なトナーを利用して文書のコンテンツ中のバーコードや地紋のようなパターンを“じゃまなもの”でなくすることを考える。
【0006】
まず、透明トナーでパターンを印刷すれば、バーコードや地紋のようなパターンを“じゃまなもの”でなくすることはできるが、新たにパターンの抽出について課題が生じてしまう。
すなわち、人間が見ても見えない透明なトナーのパターンは、原稿の画像を読み取る画像読取装置(スキャナ)に読ませても読み取れないという課題である。
【0007】
これは通常の画像読取装置が、人間が観察するのと同じ見栄えの画像を得るように設計されているからである。
したがって、この設計を多少なりとも変更しないと、上記課題は解決できない。
そこで従来、次のような技術が上記課題を解決するためのものとして提案されている。
【0008】
(1)透明トナーに特殊な材を混ぜる技術
原稿に紫外線に対して蛍光を発する蛍光インクによって画像を形成し、その原稿に紫外線を照射し、蛍光インクによって励起した光によって蛍光インクで形成された画像を検知する技術(例えば、特許文献1参照)や、原稿に不可視光に吸収域を有する記録材料を用いて不可視画像を形成し、その原稿に赤外線を含む不可視光を照射し、光が吸収された部分によって不可視画像を検知する技術(例えば、特許文献2参照)などがある。
【0009】
(2)透明トナーにより光沢を生じさせる技術
透明トナーを塗布した領域は平滑性が高まり光沢が生じ、塗布しない領域は用紙が持つ低い平滑性が維持され光沢が生じない。
そこで、正反射光を検知することにより、両領域で2値のパターンが観測する技術(例えば、特許文献3)がある。この技術によれば、特定の角度からだと人間にも見えてしまうが、“じゃまなもの”というほどでもなくなる。
【0010】
(3)また、正反射光より乱反射光を検知した方が、原稿の色(原稿によって吸収される波長)を精度よく読み取ることができるので、乱反射光を受光するCCDを備え、乱反射光のみを検知する技術(例えば、特許文献4)がある。
乱反射光の光量は、原稿の色(用紙自体または付着したトナーやインクの色)によって増減するが、光沢の度合いによっても増減する。
【0011】
図9に示すように、原稿の色が同じなら、図9の(b)に示す原稿の光沢のある光沢領域は、図9の(a)に示す原稿の光沢のない非光沢領域に比べ、入射光に対する乱反射光の光量が小さくなるという原理がある。
この原理を利用して、用紙の地肌(トナーやインクが付着していない部分)の光沢パターンを読み取るのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述の(1)の技術では、蛍光インクで印刷した領域と、印刷していない領域とでパターンを形成すれば、受光の異なる2値のパターン画像を検知できるが、蛍光インクそのものも透明なので、“じゃまなもの”にはならないが、画像読取装置に非可視波長域までカバーした特殊な照明や受光素子を設ける必要があり、画像読取装置の製造が高コストになるという問題があった。
【0013】
また、(2)の技術では、光沢のパターンを読み取るためのものではないが、正反射光用受光素子を使えば、光沢パターンを読み取ることができる。
しかし、画像読取装置に専用の受光素子を設ける分、画像読取装置のシステムが膨大となり、画像読取装置の製造が高コストになるという問題があった。
【0014】
さらに、(3)の技術では、特定の照明光量(通常の85%)でスキャンし、得られた画像の輝度値の度数分布(ヒストグラム)から、光沢領域と非光沢領域の輝度値を特定しているので、画像読取装置に特殊な照明や受光素子を設ける必要はなく、画像読取装置の製造が高コストとなるという問題はなくなる。
【0015】
しかし、用紙の多様性に対応できないという新たな問題が生じる。
つまり、用紙の白色度によっては、正しくパターンが検出できない場合がある。
白色度が高い用紙では、パターンを検出できたとしても、白色度が低い用紙では、光沢領域と非光沢領域の輝度値が接近しすぎて、弁別できないのである。
【0016】
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、原稿上に光沢の有無で作られたパターンを正しく抽出するために、装置構成の膨大化と装置のコストアップを招かないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は上記の目的を達成するため、光源に対して原稿の画像読み取り面を画像読み取りの副走査方向へ搬送しながら上記画像読み取り面に上記光源から光を照射して上記画像読み取り面からの反射光に基づいて上記原稿の画像を読み取る画像読取装置において、上記光源を上記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こさない照射位置にして、上記画像読み取り面からハレーションが起きないときの画像を読み取り、上記光源を上記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす照射位置にして、上記画像読み取り面からハレーションが起きたときの画像を読み取る読取手段と、上記読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きたときと起きないときの両画像に基づいて上記原稿の光沢部分を検知する光沢検知手段を設けた画像読取装置を提供する。
【0018】
また、上記のような画像読取装置において、上記原稿の搬送時、上記光源から照射した光に対して上記画像読み取り面が画像読み取りの副走査方向に曲面状になるようにする手段を設けた画像読取装置にするとよい。
さらに、上記のような画像読取装置において、上記読取手段は、上記ハレーションを起こさない照射位置を上記光源の通常の位置とし、上記ハレーションが起きたときの画像を読み取る際に、上記光源を上記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす予め設定された照射位置まで画像読み取りの副走査方向へ移動させる手段を含むようにするとよい。
【0019】
また、上記のような画像読取装置において、上記読取手段は、上記原稿のもう一方の画像読み取り面の画像を読み取る第2読取手段と、上記第2読取手段に対して上記原稿の画像読み取り面を反転させる原稿反転手段と、上記光源を上記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす照射位置にして、上記画像読み取り面からハレーションが起きたときの画像を読み取った後、上記原稿反転手段によって上記原稿の画像読み取り面を反転させ、上記第2読取手段によって上記画像読み取り面からハレーションが起きないときの画像を読み取る手段を含むようにするとよい。
【0020】
さらに、上記のような画像読取装置において、上記読取手段は、上記光源に対して上記原稿の画像読み取り面を反転させる原稿反転手段と、上記光源を上記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす照射位置にして、上記画像読み取り面からハレーションが起きたときの画像を読み取った後、上記原稿反転手段によって上記原稿の画像読み取り面を反転させ、上記画像読み取り面からハレーションが起きないときの画像を読み取る手段を含むようにするとよい。
【0021】
また、上記のような画像読取装置において、上記原稿反転手段によって原稿を反転させる際の原稿の搬送スピードを一時的に高速化する手段を設けるとよい。
さらに、上記のような画像読取装置において、上記ハレーションが起きたときの画像について画像読み取りの副走査方向のライン間隔を補正する補正手段を設けるとよい。
また、上記のような画像読取装置において、上記光沢検知手段は、上記読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きたときと起きないときの両画像の反射率の差分が所定値以上有る部分を上記原稿の光沢部分として検知する手段を含むようにするとよい。
【0022】
さらに、上記のような画像読取装置において、上記読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きたときの画像の反射率に対する出力特性と、上記読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きないときの画像の反射率に対する出力特性との差異を補正する手段を設けるとよい。
【0023】
また、上記のような画像読取装置において、上記読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きたときの画像の反射率に対する出力特性と、上記第2読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きないときの画像の反射率に対する出力特性との差異を補正する手段を設けるとよい。
さらに、上記のような画像読取装置を備えた画像形成装置も提供する。
【発明の効果】
【0024】
この発明による画像読取装置と画像形成装置は、原稿上に光沢の有無で作られたパターンを正しく抽出するために、装置構成の膨大化と装置のコストアップを招かないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図2に示す画像読取装置の画像処理に係る機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施例である画像形成装置の機構部を示す概略構成図である。
【図3】図2に示す画像読取装置の搬送ドラムと光源を含む周辺部分の拡大図である。
【0026】
【図4】同じく図2に示す画像読取装置の搬送ドラムと光源を含む周辺部分の拡大図である。
【図5】図1に示す処理部による光沢検知処理を示すフローチャート図である。
【図6】図1に示す光沢検知部における光沢領域識別処理の説明に供する画像例を示す図である。
【0027】
【図7】リニアリティの近似直線のグラフの図である。
【図8】図1に示す処理部による他の光沢検知処理を示すフローチャート図である。
【図9】原稿の光沢領域と非光沢領域における反射光の様子の一例を示す図である。
【図10】ブック原稿に光を照射したときに生じるハレーションの説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図2は、この発明の一実施例である画像形成装置100の機構部を示す概略構成図である。
この画像形成装置100は、コピー機能、プリンタ機能、ファクシミリ通信とインターネットを介した通信を含む通信機能を含む複数の機能が一体となって構成された複合機であり、画像形成装置100の本体の上部に、画像読取装置(スキャナ)1を搭載している。また、手前側上面に図示を省略した操作部を備えている。
【0029】
この画像読取装置1は、自動原稿給送部(オートドキュメントフィーダー:ADF)2と読取部3とからなる。
ADF2は、ピックアップローラ10、搬送ドラム11を含む搬送ローラ群12などを駆動し、原稿トレイ13に載ったシート状の原稿Pが等速で読取部3のシート原稿用ガラス22の位置を通過するように搬送する。画像を読み取られた原稿Pは排紙トレイ14に搬送されて排紙される。
【0030】
読取部3は、上側に、コンタクトガラス20と基準白板21とシート原稿用ガラス22を配置している。
コンタクトガラス20は、ブック原稿読み取りモード(「圧板読取モード」ともいう)時に原稿P′をセットするためのものである。
このブック原稿読み取りモードとは、基準白板21及びコンタクトガラス20上に置かれた原稿P′に対して第1キャリッジ23と第2キャリッジ26を走行移動させながら原稿P′の画像を読み取るモードである。
【0031】
シート原稿用ガラス22は、シート原稿読み取りモード(「シートスルー読み取りモード」ともいう)時に搬送されてくる原稿Pを読み取るためのシート原稿読み取り位置に設けたものである。
【0032】
このシート原稿読み取りモードとは、基準白板21を読み取る場合は第1キャリッジ23と第2キャリッジ26を基準白板21まで移動させて読み取り、原稿Pを読み取る場合は第1キャリッジ23と第2キャリッジ26をシート原稿読み取り位置に停止させた状態で、シート原稿読み取り位置に原稿Pを搬送させながら原稿Pの画像を読み取るモードである。
【0033】
基準白板21は、シェーディング補正時の補正データを得るために読み取る部材であり、画像の読み取り方向の主走査方向に設けられた均一濃度のほぼ白色の部材である。
読取部3の内部には、第1キャリッジ23、第2キャリッジ26、レンズ29、CCD30、スキャナモータ31、処理部32を有する。
【0034】
第1キャリッジ23は、光源24とミラー25を有し、画像の読み取り方向の副走査方向に移動可能である。
第2キャリッジ26は、ミラー27,28を有し、同じく画像の読み取り方向の副走査方向に移動可能である。
【0035】
光源24はランプであり、図2では図示を省略したランプ安定器からの駆動電圧の印加によって点灯し、所定角度で原稿P,P′の画像読み取り面を照射する照明である。
光源24から照射された光は、基準白板21、あるいは原稿P,P′の画像読み取り面で反射し、3枚のミラー25,27,28とレンズ29を経由して、光電変換素子であるCCD30に入射する。
第1キャリッジ23と第2キャリッジ26は、非動作時にはシート原稿読み取りモード時の読み取り位置に待機する。
【0036】
そして、ブック原稿読み取りモードでは、第1キャリッジ23と第2キャリッジ26がステッピングモータ等のスキャナモータ31のモータ駆動により、原稿P′の画像読み取り面とCCD30との間の距離を一定に保ちながら副走査方向に移動して基準白板21及びコンタクトガラス20上に置かれた原稿P′の画像読み取り面を読み取る。
【0037】
一方、シート原稿読み取りモードでは、第1キャリッジ23と第2キャリッジ26をシート原稿読み取り位置に停止させたまま、ADF2によって搬送されてくる原稿Pの画像読み取り面を読み取る。
CCD30には、図示を省略した公知のクロックドライバ,タイミング信号生成部,信号処理部を含んでいる。
【0038】
CCD30は、入射した光の入射光量に対応した電圧を出力し、処理部32に画像データとして渡す。上記CCD30で原稿Pの表面の画像を読み取った場合、裏面の読み取りについては、原稿の表裏を反転する原稿反転機構16による再度所定の位置での読み取り、もしくは、表面の読取位置よりも搬送方向下流側の裏面の読取位置に配設されたCIS(Contact Image Sensor)15により、原稿Pの裏面の画像面を読み取ることができる。
CIS15は、LED(発光ダイオード)を光源とし、リニアセンサで画像を直接読み取り、処理部32に読み取った画像の画像データを渡す。
【0039】
次に、書込ユニット4は、レーザ出力ユニット41、結像レンズ42、ミラー43等で構成されている。
レーザ出力ユニット41の内部には、レーザ光源であるレーザダイオード及びモータにより高速で定速回転する図示を省略したポリゴンミラー(回転多面鏡)が備わっている。
【0040】
レーザ出力ユニット41は、処理部32からの画像データに基いてレーザビームを照射し、そのレーザビームは定速回転するポリゴンミラーで偏向され、結像レンズ42を通ってミラー43で折り返され、感光体ドラム44の帯電面に集光されて結像される。
この偏向されたレーザビームは、感光体ドラム44が回転する方向と直交する方向(主走査方向)に露光走査され、図示を省略した画像処理部のセレクタにより出力された画像データをライン単位で書き込み記録して主走査が行われる。
【0041】
この主走査を感光体ドラム44の回転速度と走査密度(記録密度)に対応する所定の周期で繰り返すことにより、感光体ドラム44の帯電面に静電潜像が形成される。
なお、図示を省略するが、感光体ドラム44の一端近傍のレーザビームが照射される位置にビームセンサが配置されていて、ここから主走査同期信号が発生するようになっている。この主走査同期信号に基づいて、主走査方向の画像記録タイミングの制御と、画像信号の入出力を行うための制御信号を生成する。
【0042】
感光体ドラム44の静電潜像が現像ユニット45を通過することにより、感光体ドラム44上にトナー画像が形成される。
一方、画像を形成するための転写紙(用紙)は、第1給紙トレイ51,第2給紙トレイ52又は第3給紙トレイ53に積載されていて、それぞれ、第1給紙装置54,第2給紙装置55,第3給紙装置56によって給紙され、縦搬送ユニット50によって感光体ドラム44に当接する位置まで搬送される。
【0043】
なお、実際には各給紙トレイ51〜53のうちのいずれか1つが選択され、そこから転写紙が給紙される。
そして、給紙された転写紙を搬送ベルト(転写ベルト)46により感光体ドラム44の回転と等速で搬送しながらその一方の第1面に感光体ドラム44上のトナー画像を転写し、さらに、そのトナー画像を定着ユニット47により定着して、機外の排紙トレイ57に排出する。
【0044】
また、転写紙の両面にトナー画像を形成する場合には、第1面にトナー画像が形成された転写紙を排紙トレイ57側に搬送せず、図示を省略した分岐爪によって経路を切り替え、一旦両面搬送パス49に搬送する。その後、その転写紙を再び給紙して、感光体ドラム44に形成されたトナー画像を他方の第2面に転写し、その後、定着ユニット47によりそのトナー画像を定着した後、排紙トレイ57に排出する。
【0045】
なお、排紙ユニット48は、ステープルモードを行わない場合は、排紙トレイ57に転写紙を排紙する。
このようにして、この画像形成装置100は、転写紙の両面に画像を形成する場合には両面搬送パス49を動作させるようになっている。
【0046】
次に、図2に示した画像読取装置1の画像処理に係る機能構成を説明する。
図1は、図2に示した画像読取装置1の画像処理に係る機能構成を示すブロック図である。
処理部32は、マイクロコンピュータによって実現され、画像処理部33と34、光沢検知部35、およびCPU38を有する。
【0047】
光沢検知部35は、差分演算部36とメモリ37を備えている。
画像読取装置1は、CCD30で得られた画像のアナログ電気信号を画像処理部33へ送る。
画像処理部33では、公知なので図示を省略したアナログ信号バッファとAC結合を介して画像のアナログ電気信号をアナログ処理を行うアナログ処理部分に入力する。
【0048】
同じく公知なので図示を省略したアナログ処理部分は、ラインクランプ、S&H、ゲイン処理部、及びA/D変換部の順で処理を実施し、原稿P、P′の画像のデジタル画像データを得る。
その得られた原稿P、P′の画像のデジタル画像データ(画像データ)は専用の画像処理IC、フィールドメモリを使って、シェーディング補正とライン間補正を含む各種の画像処理を行う。
【0049】
上記シェーディング補正処理は、読み取り系、特に光学系の読み取りムラを補正する画像処理であり、光源24を含む照明系の光源の照明ムラ、光学レンズの周辺光量落ち、CCD30の画素毎の感度ムラを補正し、読み取り系の出力画像データにおける全画素データのダイナミックレンジが等しくなるようにする処理である。
【0050】
ライン間補正処理は、画像データにおける画像読み取りの副走査方向のライン間隔を補正する補正処理であり、例えば、3ラインのCCD30を使用した場合、RGBの原稿P、P′の読み取り位置が異なっているため、同一位置を読み取るのが最も遅い色に合わせるように他の2色に対しては、それぞれフィールドメモリに入力して、読み出しのタイミングを変えて、つまり、電気的な遅延を与えて3色光の読み取り位置を合わせる処理である。
【0051】
また、第1キャリッジ23と第2キャリッジ26の速度変更による変倍のときは上記ライン間隔も変わるため、フィールドメモリの読み出しタイミングを変えて、遅延量をその都度変更している。
【0052】
さらに、第1キャリッジ23と第2キャリッジ26の移動は、図示を省略した操作部、もしくは原稿サイズ検知などで得られた原稿サイズ情報に基づき、ブック原稿読み取りモード又はシート原稿読み取りモードの際に、原稿P、P′の画像読み取り面や基準白板21に対する第1キャリッジ23と第2キャリッジ26の往復動作を実施し、その往復動作時の移動速度は同様に入力された変倍率などに応じてCPU38がスキャナモータ31に制御信号を送り、スキャナモータ31の回転速度を制御することで変化させている。
【0053】
この画像読取装置1の処理部32は、シート原稿読み取りモードでは、原稿Pを画像読取りの副走査方向へ搬送しながら、図3に示すように、搬送ドラム11に沿って湾曲した背景板60上を通過することにより、光源24から照射した光Lに対して原稿Pの画像読み取り面が画像読み取りの副走査方向に曲面状になるように移動する。
【0054】
そして、光源24を画像読み取り面に照射した光Lによってハレーションを起こさない照射位置にして(光源24からの光Lが図中の通常読取位置にして)、光源24の画像読み取り面を照明し、その反射光を縮小光学系によりCCD30に導いて、原稿Pの表面の画像をハレーションを起こさない状態でライン単位に読み取ることができる。
【0055】
また、光源24を画像読み取り面に照射した光Lによってハレーションを起こす照射位置に移動させて(光源24からの光Lが図中の光沢検知位置に照射される位置から光沢検知位置になる位置まで移動させて)、光源24の画像読み取り面を照明し、その反射光を縮小光学系によりCCD30に導いて、原稿Pの表面の画像をハレーションを起こした状態でライン単位に読み取ることができる。
【0056】
一般に管灯、及びLEDを用いたスキャナ光源を用いて斜めから原稿に照射する画像読取装置では、上述のように精度よく読み取れることを理由として、原稿に反射した光のうち原稿からの反射光が多い方向、つまり正反射方向では読み取らず、原稿に対して、垂直な方向の反射光(乱反射光)を読み取るのが一般的である。
【0057】
しかし、斜めから照明した場合であっても、図10に示すように、例えば、本など綴じ部分を読み取るとき、綴じて原稿台よりも遠くの位置にある屈曲部分Aに光源70から照射した光Lが、ある特定の角度において、正反射光が原稿台の面の垂直方向に射出する。
その結果、正反射光が直接、CCD30に取り込まれ、その光量は通常の原稿を読み取っているときの反射光の光量よりも大きすぎるために、画像上で白抜け(ハレーション)を起こす。
【0058】
このハレーション現象は、図9で説明したように、非光沢部分よりも表面が滑らかな光沢部分のほうが、より正反射光が強く出ることで、顕著に出る。
そこで、この実施例の画像形成装置100では、画像上でこのハレーションを検知することで原稿Pの光沢部分と非光沢部分を識別するため、画像上で確実にハレーションを発生させることを目的とし、背景板60を設けることにより、原稿Pを敢えて屈曲させた状態で読み取らせている。
【0059】
さらに、図2に示した原稿反転機構16によって原稿Pの表裏を反転させることにより、一旦画像読み取りの副走査方向の正方向に搬送した原稿を、原稿Pの裏面を光源24側にして副走査方向の負方向に搬送させることにより、CCD30によって原稿Pの裏面の画像をハレーションを起こした状態でライン単位に読み取ることができる。
【0060】
また、原稿の表面の裏面の画像については、上記のように原稿Pの表面を読み取ると共に、原稿Pの裏面の画像をCIS15によって同時に読み取り、原稿Pの表面の画像をCIS15によって読み取ると共に、上記のように原稿Pの裏面を読み取ることができる。
このCIS15によって読み取られた画像データは、画像処理部34によって上記画像処理部33と同様の処理が施されて光沢検知部35へ送られる。
【0061】
そして、図1のCPU38がCCD30、CIS15、スキャナモータ31を含む各部を制御することにより、上記光源を上記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こさない照射位置にして、上記画像読み取り面からハレーションが起きないときの画像を読み取り、上記光源を上記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす照射位置にして、上記画像読み取り面からハレーションが起きたときの画像を読み取る読取手段の機能を果たす。
【0062】
また、図1の光沢検知部35が、上記読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きたときと起きないときの両画像に基づいて上記原稿の光沢部分を検知する光沢検知手段の機能を果たす。
さらに、図3に示した背景板60が、上記原稿の搬送時、上記光源から照射した光に対して上記画像読み取り面が画像読み取りの副走査方向に曲面状になるようにする手段に相当する。
【0063】
また、図1のCPU38がCCD30、CIS15、スキャナモータ31を含む各部を制御することにより、上記ハレーションを起こさない照射位置を上記光源の通常の位置とし、上記ハレーションが起きたときの画像を読み取る際に、上記光源を上記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす予め設定された照射位置まで画像読み取りの副走査方向へ移動させる手段の機能も果たす。
さらに、図2のCIS15は上記原稿のもう一方の画像読み取り面の画像を読み取る第2読取手段に相当する。
【0064】
また、図1のCPU38がCCD30、CIS15、スキャナモータ31を含む各部を制御することにより、上記第2読取手段に対して上記原稿の画像読み取り面を反転させる原稿反転手段と、上記光源を上記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす照射位置にして、上記画像読み取り面からハレーションが起きたときの画像を読み取った後、上記原稿反転手段によって上記原稿の画像読み取り面を反転させ、上記第2読取手段によって上記画像読み取り面からハレーションが起きないときの画像を読み取る手段の機能も果たす。
【0065】
さらに、図2に示した原稿反転機構16が上記読取手段は、上記光源に対して上記原稿の画像読み取り面を反転させる原稿反転手段に相当する。
また、図1のCPU38がCCD30、CIS15、スキャナモータ31を含む各部を制御することにより、上記光源を上記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす照射位置にして、上記画像読み取り面からハレーションが起きたときの画像を読み取った後、上記原稿反転手段によって上記原稿の画像読み取り面を反転させ、上記画像読み取り面からハレーションが起きないときの画像を読み取る手段の機能も果たす。
【0066】
さらに、図1のCPU38がスキャナモータ31を含む各部を制御することにより、上記原稿反転手段によって原稿を反転させる際の原稿の搬送スピードを一時的に高速化する手段の機能を果たす。
また、図1のCPU38が、上記ハレーションが起きたときの画像について画像読み取りの副走査方向のライン間隔を補正する補正手段の機能を果たす。
【0067】
さらに、図1の光沢検知部35は、上記読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きたときと起きないときの両画像の反射率の差分が所定値以上有る部分を上記原稿の光沢部分として検知する手段の機能も果たす。
また、図1の光沢検知部35は、上記読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きたときの画像の反射率に対する出力特性と、上記読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きないときの画像の反射率に対する出力特性との差異を補正する手段の機能も果たす。
【0068】
さらに、図1の光沢検知部35は、上記読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きたときの画像の反射率に対する出力特性と、上記第2読取手段によって読み取った上記ハレーションが起きないときの画像の反射率に対する出力特性との差異を補正する手段の機能も果たす。
【0069】
次に、上記画像読取装置1における光沢検知処理を説明する。
図3は、図2に示した画像読取装置1の搬送ドラム11と光源24を含む周辺部分の拡大図である。
図5は、図1に示した処理部32による光沢検知処理を示すフローチャート図である。
図6は、図1に示した光沢検知部35における光沢領域識別処理の説明に供する画像例を示す図である。
【0070】
ユーザからの指示、もしくは自動開始などにより、光沢検知読取が命令されると、図5に示すように、図1のCPU38は、まず、通常読み取りと同様に図2の光源24を点灯し(ステップ(図中「S」で示す)1)、図2の第1キャリッジ(図5中には「キャリッジ」と記載する)23を基準白板21の下に移動し、基準白板21を読み取り、その画像データ(基準白板画像データ)を取得する(S2)。
【0071】
次に、キャリッジを移動させて、図2の光源24を画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす照射位置である光沢検知位置に移動させる(S3)。
次に、原稿Pを搬送すると、図3に示す曲面状の背景板60により、光源24から照射した光に対して原稿Pの画像読み取り面(表面)が画像読み取りの副走査方向に曲面状になるように屈曲させるため、この状態で原稿Pに光を照射すると、画像読み取り面(表面)の光沢領域では正反射成分が強く出て、ハレーションを起こした状態の表面の画像データ(表面ハレーション画像データ)を取得する(S4)。
【0072】
なお、原稿P上のハレーションを起こす照射位置は、使用する光源と、自動原稿搬送装置の光学系の構成によってそれぞれ異なるため、画像読取装置1の設計段階で調べて設定しておく。
【0073】
次に、原稿Pの表面の画像読み取り面を読み取った後、図2の光源24を消灯する(S5)。
そして、裏面も光沢検知するか否かを判断し(S6)、原稿Pの裏面に対しても光沢検知が対象となっている場合(S6でYの場合)は、図2に示した原稿Pの搬送方向下流側に配置されているCIS15により、原稿Pの裏面を通常に読み取り、その画像データ(通常画像データ)を取得する(S7)。このCIS15で取得した画像データはとくにハレーションを起こしていない通常状態の画像となる。
【0074】
また、原稿Pの裏面に対しても光沢検知が対象となっていない場合(S6でNの場合)は、上記の裏面読取のステップ7の処理は実施せず、その後、原稿Pを排紙口前の原稿反転機構16に搬送し、原稿反転機構16によって原稿Pの表裏面を反転させる(S18)。
【0075】
次に、表裏が反転した状態で原稿Pが再度光源24の方へ搬送していくが、上述のように裏面も読取対象となっている場合には、この裏面に対しても、光沢検知位置において、光源24を点灯し(S9)、図2の第1キャリッジ(図5中には「キャリッジ」と記載する)23を基準白板21の下に移動し、基準白板21を読み取り、その画像データ(基準白板画像データ)を取得する(S10)。
【0076】
次に、キャリッジを移動させて、図2の光源24を画像読み取り面(原稿の裏面)に照射した光によってハレーションを起こす照射位置である光沢検知位置に移動させる(S11)。
【0077】
次に、原稿Pを搬送すると、図3に示す曲面状の背景板60により、光源24から照射した光に対して原稿Pの画像読み取り面(裏面)が画像読み取りの副走査方向に曲面状になるように屈曲させるため、この状態で原稿Pに光を照射すると、画像読み取り面の光沢領域では正反射成分が強く出て、ハレーションを起こした状態の裏面の画像データ(裏面ハレーション画像データ)を取得する(S12)。
【0078】
次に、原稿Pの裏面の画像読み取り面を読み取った後、図2の光源24を消灯する(S13)。
そして、図2に示した原稿Pの搬送方向下流側に配置されているCIS15により、原稿Pの裏面を通常に読み取り、その画像データ(通常画像データ)を取得する(S14)。このCIS15で取得した画像データはとくにハレーションを起こしていない通常状態の画像となる。
その後、光沢領域識別処理を実行する(S15)。
【0079】
次に、この光沢領域識別処理について説明する。
上記各ステップ(S4、S7、S12、S14)で取得した画像データは、図1に示した光沢検知部35のメモリ37に保存しており、原稿Pの表面の光沢領域の検知には、上記表面ハレーション画像データと表面の通常画像データの2つを使って、また、原稿Pの裏面の光沢領域の検知には、上記裏面ハレーション画像データと裏面の通常画像データの2つを使って、それぞれ差分演算部36によって演算処理をし、その演算処理結果に基いて光沢領域を検知する。
【0080】
上記演算処理の内容については、例えば、図6の(a)に示す原稿Pの画像は、図中点線枠内部分で示す光沢塗布部分(光沢のあるパターン)の画像を含み、図中の(n,m)は原稿P上の主走査方向n画素目、副走査方向mライン目の画素位置である。
また、図6の(b)に示す原稿PのD(n,m)は、図2のCIS15で読み取ったとき、又は光源24の光Lが通常読取位置に照射される位置でCCD30で読み取ったときの反射光レベルを示している。
【0081】
さらに、図6の(c)に示す原稿PのH(n,m)は、光源24の光Lが光沢検知位置に照射される位置でCCD30で読み取ったときの反射光レベルを示している。この場合、原稿Pの画像読取り面はハレーションを起こしており、光沢塗布部分は光沢を帯びている。
また、後述するリニアリティ差分値P0(D(n,m))として(D(n,m)+P0(n,m))−H(n,m)の演算結果をP(n,m)とする。
【0082】
ここで、P0(D(n,m))はCIS15で取得した画像と光沢検知位置で取得した画像との光学系の差異で生じるレベル差であり、これについては、事前に画像読取装置1の製造や工程の段階で、特定のグレースケールチャート(非光沢)を上記光沢検知位置で読み取らせ、CIS15での読み取り画像、光沢検知位置での読み取り画像を取得し、図7の通常読取画像リニアリティの近似直線と光沢検知位置読取画像リニアリティの近似直線で示すように、その特定の各反射率(例えば、20ポイント)での各出力値、およびその近似直線の情報を図1のメモリ37に格納しておく。
【0083】
これらのリニアリティの近似直線の情報で、例えば、反射率(画素レベル)Xでの差分値は即ち、同じ反射率(画素レベル)XをCIS15で読み取らせた画像と光沢検知位置面でCCD30を含む縮小光学系で読み取らせた画像との元々の光学系の差に相当する差異や屈曲による読取面からの浮きによるレベル変化P0(X)となる。
すなわち、上記(D(n,m)+P0(n,m))は、原稿PをCIS15で読み取ったある部分の反射光レベルのD(n,m)が光沢検知位置で読み取らせた場合のハレーションを起こさない状態での反射光レベルの予測値となる。
【0084】
そして、予測値(D(n,m)+P0(n,m))に対して、実際に光沢検知位置で読み取らせた画像部分の反射光レベルのH(n,m)との差分、(D(n,m)+P0(n,m))−H(n,m)がほぼ0になるとハレーションが起きていないと判断できる。
また、光沢部分は光学系の差であるP0(D(n,m))に加えて、ハレーションによるレベル変化が加わるため、差分(D(n,m)+P0(n,m))−H(n,m)は0ではなく、特定の値をもつ。
【0085】
この特定の値がα×D(n,m)以上になった場合に、光沢部分のハレーションによるレベル変化が加わっていると判断し、その(n,m)の画素を光沢画素と判断し、光沢画素を1にする。
一方、特定の値がα×D(n,m)以上でない場合は、ハレーションによるレベル変化ではなく、単純に光学系の差によるものと判断し、非光沢画素を0として、2値化処理を行う。
【0086】
上記α×D(n,m)は即ち、反射光レベルのD(n,m)に対するハレーション発生によるレベル変化量の最小値であり、αはハレーションの度合に応じて決定する補正係数であり、光沢を誤検知しないように予め設計しておく。
よって、上記2値化処理後の演算結果は、図6の(d)に示す原稿Pの画像中のG(n,m)において、光沢領域、非光沢領域を識別することができる。
なお、画像取得時にメモリ37に保存する際にデータ量が膨大となり、保存や演算処理に時間がかかる場合は上記検知の精度が落ちない範囲で圧縮処理等を実施してもよい。
【0087】
また、光沢検知位置での画像読み取りは原稿Pの画像読み取り面が屈曲しているため、取得したハレーション画像はCCD30のRGBライン間隔が、通常の画像よりも広くなっている。
そこで、光沢検知部35は、ハレーション画像に対して通常のライン間補正の読み出しタイミングではなく、上記屈曲に応じたライン間補正の読み出しタイミングを事前に適用し、上記演算処理を実施する。
【0088】
上記読み出しタイミングは、自動原稿搬送装置の光学系、形状、CCD30の構成によって広がるライン間隔が異なるため、ハレーション発生位置と同様に設計段階で決定しておく。
こうして、光沢検知部35によって検知した光沢領域の情報を、CPU38は用途に応じて、その位置情報などを画像や表にして結果を出力する。
【0089】
次に、上記演算に用いる式を列挙する。
P(n,m)=(H(n,m)+P0(D(n,m))−D(n,m)
P(n,m):画像読み取りの主走査方向n画素目と副走査方向mライン目の画素の反射光レベルの差分演算後の値
【0090】
D(n,m):画像読み取りの主走査方向n画素目と副走査方向mライン目の画素の反射光レベル(ハレーションを起こしていない通常読取画像)
H(n,m):画像読み取りの主走査方向n画素目と副走査方向mライン目の画素の反射光レベル(ハレーションを起こした読取画像)
P0(X):予め求めた専用の非光沢チャートで抽出した画素の反射光レベルXでの工学系の差異によるリニアリティ差分値
【0091】
|P(n,m)|≧|α×D(n,m)|の場合、G(n,m)=1(光沢画素)
|P(n,m)|<|α×D(n,m)|の場合、G(n,m)=0(非光沢画素)
G(n,m):画像読み取りの主走査方向n画素目と副走査方向mライン目の画素の光沢判定結果を示す値
α:ハレーションの度合いに応じて決定する閾値補正係数
【0092】
次に、全ての原稿を読み取ったか否かを判断し(S16)、読み取ってなければ(S16でNの場合)、最初の処理に戻って上述の処理を繰り返し、他の読取原稿においても、光沢検知読取が対象の場合は通常のシートスルー複数枚原稿読取と同様に順次各原稿を搬送していき、光沢領域と非光沢領域の識別を行う。
また、全ての原稿を読み取ったと判断したら(S16でYの場合)、キャリッジを光沢検知位置からホームポジションに戻し(S17)、この光沢検知処理を終了する。
【0093】
次に、上述の処理では、自動原稿搬送装置2にCIS15と原稿反転機構16の両方が設けられた画像読取装置1について説明したが、CIS15がない自動原稿搬送装置が設けられた画像読取装置についても実施可能である。
【0094】
そこで、図2に示した画像読取装置1について、CIS15とそのCIS15による画像読み取りの機能を用いない場合の実施例を説明し、CISがない自動原稿搬送装置が設けられた画像読取装置での実施例の説明に代える。
図4は、図2に示した画像読取装置1の搬送ドラム11と光源24を含む周辺部分の拡大図である。図8は、図1に示した処理部32による他の光沢検知処理を示すフローチャート図である。
【0095】
ユーザからの指示、もしくは自動開始などにより、光沢検知読取が命令されると、図8に示すように、図1のCPU38は、まず、通常読み取りと同様に図2の光源24を点灯し(ステップ(図中「S」で示す)21)、図2の第1キャリッジ(図5中には「キャリッジ」と記載する)23を基準白板21の下に移動し、基準白板21を読み取り、その画像データ(基準白板画像データ)を取得する(S22)。
【0096】
次に、通常読み取りと同様にキャリッジを通常読取位置に移動させて、図2の光源24を画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こさない照射位置である通常読取位置に移動させ、原稿Pの表面を読み取り、ハレーションを起こさない画像データ(通常画像データ)を取得する(S23)。
【0097】
この原稿Pの搬送で、図3に示す曲面状の背景板60により、光源24から照射した光に対して原稿Pの画像読み取り面(表面)が画像読み取りの副走査方向に曲面状になるように屈曲させるため、この状態で原稿Pに光を照射すると、その照射位置によっては正反射成分が強く出て、ハレーションを起こしてしまうが、図4に示すように、曲面状の背景板60の通常読取位置に光源24からの光Lを照射するようにすれば、シート原稿用ガラス22と原稿Pが平行になっている状態で読み取られるため、この位置ではハレーションは起きない。
【0098】
原稿Pの通過後、光源24を消灯し(S24)、表面のみ光沢検知するか否かを判断する(S25)。
原稿Pの表面のみ光沢検知でなければ(S25でNの場合)、裏面を読み取ったか否かを判断し(S37)、読み取ったなら(S37でYの場合)S28へ進み、読み取ってなければ(S37でNの場合)原稿Pを排紙口前の原稿反転機構16に搬送し、原稿反転機構16によって原稿Pの表裏面を反転させ(S38)、S21〜S25で原稿Pの裏面を読み取り、ハレーションを起こさない画像データ(通常画像データ)を取得する。
【0099】
一方、原稿Pの表面のみ光沢検知するなら(S25でYの場合)、原稿Pを排紙口前の原稿反転機構16に搬送し、原稿反転機構16によって原稿Pの表裏面を反転させる(S26)。このときは裏面から表面にするためだけの原稿搬送になるため、この期間のみ生産性維持のために原稿Pを痛めない範囲で原稿搬送のスピードを高速化するように図1のCPU38からスキャナモータ31に制御信号を送る(S27)。
【0100】
この後、原稿Pを反転し(S28)、再度表面での読み取りになるが、上記同様に光源24を点灯し(S29)、図2の第1キャリッジ(図5中には「キャリッジ」と記載する)23を基準白板21の下に移動し、基準白板21を読み取り、その画像データ(基準白板画像データ)を取得する(S30)。
【0101】
次に、キャリッジを移動させて、図2の光源24を画像読み取り面(原稿の裏面)に照射した光によってハレーションを起こす照射位置である光沢検知位置に移動させ、原稿Pを搬送すると、図3に示す曲面状の背景板60により、光源24から照射した光に対して原稿の画像読み取り面(表面)が画像読み取りの副走査方向に曲面状になるように屈曲させるため、この状態で原稿Pに光を照射すると、画像読み取り面の光沢領域では正反射成分が強く出て、ハレーションを起こした状態の画像データ(ハレーション画像データ、この場合は表面のハレーション画像データ)を取得する(S31)。
【0102】
次に、図2の光源24を消灯し(S32)、表面のみ光沢検知するか否かを判断する(S33)。
原稿Pの表面のみ光沢検知でなければ(S33でNの場合)、裏面を読み取ったか否かを判断し(S39)、読み取ったなら(S39でYの場合)S34へ進み、読み取ってなければ(S39でNの場合)原稿Pを排紙口前の原稿反転機構16に搬送し、原稿反転機構16によって原稿Pの表裏面を反転させ(S40)、S29〜S33で原稿Pの裏面を読み取り、ハレーションを起こした画像データ(ハレーション画像データ、この場合は裏面のハレーション画像データ)を取得する。
【0103】
一方、原稿Pの表面のみ光沢検知するなら(S33でYの場合)、また、裏面の画像を読み取ったなら(S39でYの場合)、光沢領域識別処理を実行する(S34)。この光沢領域識別処理は、上述と同様なので、ここではその説明を省略する。
【0104】
なお、ここでの光沢領域識別処理についても、事前に画像読取装置の製造や工程の段階で、特定のグレースケールチャート(非光沢チャート)を上記光沢検知読取で読み取らせ、通常読取位置での読取画像、光沢検知位置での読取画像を取得し、図7に示すようにその特定の各反射率(図では20ポイント)での各出力値を光沢検知部35のメモリ37内に格納しておく。
【0105】
次に、全ての原稿を読み取ったか否かを判断し(S35)、読み取ってなければ(S35でNの場合)、最初に戻って上述の処理を繰り返し、読み取ったら(S35でYの場合)、キャリッジを光沢検知位置からホームポジションに戻し(S36)、この光沢検知処理を終了する。
【0106】
このようにして、原稿反転動作が増えるため、CIS15と原稿反転機構16の両方が設けられた自動原稿搬送装置に比べると、その生産性は劣るが、CISがない自動原稿搬送装置についても1回のジョブで自動的に複数回読取をすることで、光沢領域識別が可能である。
【0107】
この実施例の画像形成装置では、その画像読取装置によって、システムの膨大化、装置のコストアップを抑えつつ、現状のメカ構成で、光沢の有無で作られたパターンを正しく抽出することができる。
また、原稿搬送時の読取面直上の背景板を曲面状にすることで、読取原稿を敢えて屈曲させた状態で読み取らせることにより、画像上で確実にハレーションを発生させることができる。
【0108】
さらに、曲面状の背景板でのシートスルー原稿搬送時の際に、ハレーションが起こる位置までキャリッジを移動させ、その位置で読取を実行することにより、ハレーション発生時の画像を確実に取得することができる。
【0109】
また、原稿の光沢、非光沢部分を識別するためには、ハレーション発生時の画像のほかに比較用に通常の読み取りの画像を同時に取得しないといけないが、CISと原稿反転機構を用いて、同一原稿に対して、ハレーション発生時読取画像データ、通常のCISでの読取画像データを取得することで、ユーザが2回読取ジョブを行うことなく、一回の読取ジョブで2つの画像を取得することができる。
【0110】
さらに、原稿の光沢、非光沢部分を識別するためには、ハレーション発生時の画像の他に通常読取の画像を同時に取得しないといけないが、CISを使わずに、原稿反転機構で原稿反転を複数回行い、同一原稿面に対して、1度のジョブ中にハレーション発生時読取画像データ、通常の読み取りでの読取画像データを取得することで、ユーザが2回読取ジョブを行うことなく、一回の読取ジョブで2つの画像を取得することができる。
【0111】
また、従来の原稿搬送装置は原稿反転から原稿の読み取りの間に一時的に搬送スピードを高速化させているが、表面のみ光沢検地する場合には、再度表面で原稿搬送するために、原稿反転機構を2回行うが、1回目反転から2回目反転の間は読取を行わない原稿搬送のみになるため、生産性維持のためにこの期間は原稿搬送のスピードを原稿を痛めない範囲で高速化することができる。
【0112】
さらに、通常の読み取りよりも遠くの位置で屈曲した状態で原稿を読み取ることになるため、画像上のRGBのライン間隔が通常読み取り時よりも長くなる。
通常のメモリ等を使って、このライン間隔を補正するが、ハレーション発生時の読取時はこのハレーション発生時用の補正設定に自動的に切り替えることにより、ラインずれを補正することができる。
【0113】
また、ハレーション発生時画像と通常画像を差分演算をすることにより、ハレーション発生時と通常時との差異、すなわちハレーション発生部分を検知することにより、どの部分が光沢部分かを検知することができる。
【0114】
さらに、画像読取装置で原稿を読み取り、差分演算をするにあたり、CISによる読み取りと光沢検知位置での縮小光学系での読み取りでは光学系が違うため、元々の原稿の反射率に対する出力特性(リニアリティ)に差異が生じており、光沢検知の差分演算の結果に対して、光沢、非光沢の判定をするのに上記を考慮しないと判定の精度が落ちる。
【0115】
そこで、専用の非光沢チャートをCISおよび光沢検知位置での読み取りでそれぞれ読み取らせることにより、それらの光学系でのリニアリティの差を出力し、光沢検知部のメモリに格納することで、光沢検知の精度を上げることができる。
【0116】
また、画像読取装置で原稿を読み取り、差分演算をするにあたり、通常読取位置での読取と光沢検知位置での読取では光学系が違うため、元々の原稿の反射率に対する出力特性(リニアリティ)に差異が生じており、光沢検知の差分演算の結果に対して、光沢、非光沢の判定をするのに上記を考慮しないと判定の精度が落ちる。
【0117】
そこで、専用の非光沢チャートを通常読取位置、および光沢検知位置での読み取りでそれぞれ読み取らせることにより、それらの光学系でのリニアリティの差を出力し、光沢検知部のメモリに格納することで、光沢検知の精度を上げることができる。
さらに、この実施例の画像形成装置は、上記のような画像読取装置を備えることで、自動的に光沢部分を検知し、その部分に対して透明トナー等を使った印刷や、電子透かし処理などを実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
この発明による画像読取装置と画像形成装置は、ファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機においても適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1:画像読取装置 2:ADF 3:読取部 4:書込ユニット 10:ピックアップローラ 11:搬送ドラム 12:搬送ローラ群 13:原稿トレイ 14:排紙トレイ 15:CIS 16:原稿反転機構 20:コンタクトガラス 21:基準白板 22:シート原稿用ガラス 23:第1キャリッジ 24:光源 25,27,28:ミラー 26:第2キャリッジ 29:レンズ 30:CCD 31:スキャナモータ 32:処理部 41:レーザ出力ユニット 42:結像レンズ 43:ミラー 44:感光体ドラム 45:現像ユニット 46:搬送ベルト(転写ベルト) 47:定着ユニット 48:排紙ユニット 49:両面搬送パス 50:縦搬送ユニット 51:第1給紙トレイ 52:第2給紙トレイ 53:第3給紙トレイ 54:第1給紙装置 55:第2給紙装置 56:第3給紙装置 57:排紙トレイ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【特許文献1】特開2005−170007号公報
【特許文献2】特開2001−265181号公報
【特許文献3】特開平06−070097号公報
【特許文献4】特開2010−102032号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源に対して原稿の画像読み取り面を画像読み取りの副走査方向へ搬送しながら前記画像読み取り面に前記光源から光を照射して前記画像読み取り面からの反射光に基づいて前記原稿の画像を読み取る画像読取装置において、
前記光源を前記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こさない照射位置にして、前記画像読み取り面からハレーションが起きないときの画像を読み取り、前記光源を前記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす照射位置にして、前記画像読み取り面からハレーションが起きたときの画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段によって読み取った前記ハレーションが起きたときと起きないときの両画像に基づいて前記原稿の光沢部分を検知する光沢検知手段を設けたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記原稿の搬送時、前記光源から照射した光に対して前記画像読み取り面が画像読み取りの副走査方向に曲面状になるようにする手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記読取手段は、前記ハレーションを起こさない照射位置を前記光源の通常の位置とし、前記ハレーションが起きたときの画像を読み取る際に、前記光源を前記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす予め設定された照射位置まで画像読み取りの副走査方向へ移動させる手段を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記読取手段は、前記原稿のもう一方の画像読み取り面の画像を読み取る第2読取手段と、前記第2読取手段に対して前記原稿の画像読み取り面を反転させる原稿反転手段と、前記光源を前記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす照射位置にして、前記画像読み取り面からハレーションが起きたときの画像を読み取った後、前記原稿反転手段によって前記原稿の画像読み取り面を反転させ、前記第2読取手段によって前記画像読み取り面からハレーションが起きないときの画像を読み取る手段を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記読取手段は、前記光源に対して前記原稿の画像読み取り面を反転させる原稿反転手段と、前記光源を前記画像読み取り面に照射した光によってハレーションを起こす照射位置にして、前記画像読み取り面からハレーションが起きたときの画像を読み取った後、前記原稿反転手段によって前記原稿の画像読み取り面を反転させ、前記画像読み取り面からハレーションが起きないときの画像を読み取る手段を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記原稿反転手段によって原稿を反転させる際の原稿の搬送スピードを一時的に高速化する手段を設けたことを特徴とする請求項4又は5記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記ハレーションが起きたときの画像について画像読み取りの副走査方向のライン間隔を補正する補正手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記光沢検知手段は、前記読取手段によって読み取った前記ハレーションが起きたときと起きないときの両画像の反射率の差分が所定値以上有る部分を前記原稿の光沢部分として検知する手段を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記読取手段によって読み取った前記ハレーションが起きたときの画像の反射率に対する出力特性と、前記読取手段によって読み取った前記ハレーションが起きないときの画像の反射率に対する出力特性との差異を補正する手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記読取手段によって読み取った前記ハレーションが起きたときの画像の反射率に対する出力特性と、前記第2読取手段によって読み取った前記ハレーションが起きないときの画像の反射率に対する出力特性との差異を補正する手段を設けたことを特徴とする請求項4記載の画像読取装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の画像読取装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−186515(P2012−186515A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46123(P2011−46123)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】