説明

画像読取装置及び画像形成装置

【課題】例えば光沢度のような性質の異なる複数種の原稿の自動搬送にも対応して、良質な画像読取を行うことを可能にする。
【解決手段】画像読取装置は、画像形成装置の本体の直上に配置されたスキャナ20と、スキャナ20の上面に配置された自動原稿搬送装置(ADF)30とを備える。ADF30の原稿押さえ部材39とスキャナ20の第2コンタクトガラス22との対向領域の所定位置に設定される、原稿の読取基準位置(光源23からの光が照射される位置)が、ユーザの選択指示に応じて、原稿の性質、例えば光沢の有無により可変とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿画像を光学的に読み取る画像読取装置、及びこれが適用された画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置では、一般に、画像形成動作を行う装置本体の上に、原稿画像を光学的に読み取るスキャナと、原稿を自動的にスキャナの原稿読み取り位置へ搬送する自動原稿搬送装置とが装備されている。スキャナは、原稿が手置きされる場合において原稿読取領域となる第1コンタクトガラスと、原稿が自動搬送される場合において原稿読取領域となる第2コンタクトガラスと、光源を搭載した移動枠と、CCD等の撮像素子とを備える。該移動枠は、手置きモードのときは原稿読取走査のため移動されつつ、また自動搬送モードのときは予め設定された読取基準位置に停止された状態で、第1又は第2コンタクトガラスを介して原稿に光を照射する。原稿からの反射光は、移動枠やスキャナ筐体内に配置された反射鏡及びレンズを通して、撮像素子に導かれる。
【0003】
上記自動搬送モードにおいては、原稿読取時における原稿の浮きやぶれが可及的に生じないようにすることが望ましい。このため、自動原稿搬送装置には、第2コンタクトガラスの上方に対応する位置に、ガイド部材やローラ部材が備えられている。さらに、特許文献1には、原稿厚さの相違に対応できるよう、ローラ部材と第2コンタクトガラスとの間の隙間を調整する隙間調整手段を設けることが開示されている。
【特許文献1】特開2003−207856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、自動原稿搬送装置は、スキャナ筐体に対して回動自在に取り付けられる。従って、両者間には取り付け誤差等に基づく位置ずれが生じてしまうことがある。かかる位置ずれが存在する状態で、自動搬送モードにて原稿を読み取った場合、本来の読取基準位置とは異なる位置で原稿に光を照射することとなり、画像が薄くなったり、カブリが生じたり、或いは画像のぼやけが発生することがある。このような位置ずれに起因する読取不良には、特許文献1の隙間調整手段では対応できない。
【0005】
また、原稿の性質によっては、例えば光沢度が高い原稿と、光沢度が低い乃至は無い原稿とでは、光反射特性が相違する。このことから、移動枠を固定的に設定された一つの停止位置で停止させて光の照射並びに反射光に受光を行った場合、光沢度が異なる原稿の双方について、良質な画像読取が行えないことがあった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであって、自動原稿搬送装置とスキャナ筐体との取り付け誤差等に対応でき、また、例えば光沢度のような性質の異なる複数種の原稿の自動搬送にも対応して、良質な画像読取を行うことができる画像読取装置、及びこれが適用された画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る画像読取装置は、自動的に原稿を所定の原稿読取領域へ搬送する自動原稿搬送手段と、前記原稿の光像を受光する撮像手段と、前記原稿読取領域において定められた読取基準位置で前記原稿に光を照射すると共に、その反射光を前記光像として前記撮像手段へ導く光学系と、前記読取基準位置を変更させる位置設定手段と、特定の性質を有する第1原稿に対応した第1読取モード、又は該第1原稿とは異なる性質を有する第2原稿に対応した第2読取モードのいずれかの選択を受け付けるモード選択手段と、前記読取基準位置が、前記モード選択手段における選択に応じて、前記第1読取モードに対応して設定された第1基準位置、又は前記第2読取モードに対応して設定された第2基準位置のいずれかに変更されるよう、前記位置設定手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
この構成によれば、原稿の自動読取のときも、従来とは異なり読取基準位置を固定化せず、原稿の性質に応じて適した位置に読取基準位置に変更することができるので、各種の原稿種別に対応した光学的原稿読取を行わせることができる。また、第1基準位置及び第2基準位置を、自動原稿搬送手段の取り付け誤差等を加味して設定しておくことにより、前記取り付け誤差等の影響を受けないようにすることができる。
【0009】
上記構成において、前記光学系は、光源を搭載した移動枠を含み、前記位置設定手段は、前記移動枠を移動させることによって、前記読取基準位置を変更させることが望ましい(請求項2)。この構成によれば、原稿の手置き読取のために通常備えられている移動枠を利用して、新たな機構を付加することなく第1基準位置又は第2基準位置に前記読取基準位置を設定することができる。
【0010】
上記構成において、前記第1原稿が高光沢度を有する原稿であり、前記第2原稿が低光沢度を有する原稿であることが望ましい(請求項3)。この構成によれば、原稿の光沢度に応じた適切な位置に前記読取基準位置を設定できるので、光沢度の相違に拘わらず良質な画像読取を行わせることができる。
【0011】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の画像読取装置と、前記撮像手段から出力される受光データに基づき、前記原稿画像に対応する画像を用紙に形成する画像形成動作を行う装置本体とを備えることを特徴とする(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像読取装置乃至は画像形成装置によれば、原稿種別に対応して読取基準位置を設定し光学的原稿読取を行わせることができるので、原稿の性質の相違に拘わらず良質な画像読取を行わせることができる。従って、原稿画像に忠実な画像形成を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す概略断面図である。画像形成装置1は、画像形成動作を行う装置本体MBと、装置本体MBの上面に載置された画像読取装置RDと、装置本体MBの左側面に配置された後処理装置FDと、画像読取装置RDに付設された操作パネルOPとを備えている。
【0014】
装置本体MBは、画像読取装置RDで読み取られた原稿Dの画像情報に基づき形成されたトナー画像を、用紙Pに転写・定着して排出するもので、本体ボディ10内に、給紙部11、画像形成部12、定着部13、用紙搬送路14、用紙排紙部15及び制御回路基板16(制御手段)等が収納されて構成されている。
【0015】
給紙部11は、本体ボディ10の下部に配置され、画像形成される用紙Pを画像形成部12へ供給する。給紙部11は、多数枚の用紙Pを積層状態で貯留する複数の給紙カセット111と、各給紙カセット111から用紙Pをそれぞれ送り出す給紙ローラ112とを備える。なお、給紙部11は、ユーザが用紙を手差しで給紙する手差し給紙部を含んでいても良い。
【0016】
画像形成部12は、トナー画像を生成し、該トナー像を用紙Pに転写するものであり、感光体ドラム121、帯電装置122、露光装置123、現像装置124、図略のクリーニング装置及び転写ローラ125を含んでいる。
【0017】
感光体ドラム121は、軸心回りに時計方向へ回転可能に設けられ、回転しながらその周面に静電潜像およびトナー像が形成される。帯電装置122は、感光体ドラム121の周面に一様な電荷を付与する。露光装置123は、この一様な電荷が形成された感光体ドラム121の周面に、画像読取装置RDで読み取られた原稿画像の画像情報に基づく光線を照射して静電潜像を形成させる。現像装置124は、感光体ドラム121の周面に形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成させる。前記クリーニング装置は、用紙Pに対するトナー像の転写処理後の感光体ドラム121周面に残留している残留トナーを取り除いて清浄化する。転写ローラ125は、感光体ドラム121に当接されてニップ部を形成し、該ニップ部を通過する用紙Pにトナー像が転写されるよう、バイアス電圧を発生する。
【0018】
定着部13は、用紙Pに転写されたトナー像を、該用紙Pに定着させる定着処理を施す。定着部13は、例えば内部に発熱体を備えた定着ローラ131と、その周面がこの定着ローラ131の周面に当接される加圧ローラ132とを含む。
【0019】
用紙搬送路14は、用紙Pを給紙部11から画像形成部12及び定着部13を経て、用紙排紙部15若しくは後処理装置FDに向けて用紙Pを搬送する。用紙搬送路14には、画像形成部12による画像形成タイミングに合わせて用紙Pを停止・搬送するレジストローラ対141と、用紙Pを用紙排紙部15に向けて排出させる第1排紙ローラ対142と、本体ボディ10の左側面に設けられた用紙排出口144を通して用紙Pを後処理装置FDに向けて送り出す第2排紙ローラ143対とを備えている。用紙排紙部15は、画像形成後の用紙Pを受け取る部位であり、ここでは所謂胴内排紙型の用紙排紙部を例示している。
【0020】
制御回路基板16は、画像形成装置1の各部の動作を電気的に制御するマイクロプロセッサ(MPU)や各種電子部品等が搭載された基板である。この制御回路基板16の機能については、図4を参照して、前記MPU等を機能構成で示した制御部60として後記で詳述する。
【0021】
図2も参照して、画像読取装置RDは、装置本体MBの直上に配置されたスキャナ20と、スキャナ20の上面に配置された自動原稿搬送装置(以下、ADF)30とを備えている。ADF30は、その一側辺においてスキャナ20の筐体に対して回動自在に取り付けられている。図1及び図2では、ADF30が閉じられた状態を示しているが、原稿が手置きされる場合は、ADF30は前記回動の支持点を支点として上方へ開かれる。
【0022】
スキャナ20は、原稿Dの画像を光学的に読み取るものである。スキャナ20は、筐体構造を有し、その上面に、原稿が手置きされる場合において原稿読取領域となる第1コンタクトガラス21と、原稿DがADF30で自動搬送される場合において原稿読取領域となる第2コンタクトガラス22とが嵌め込まれている。
【0023】
スキャナ20の筐体内部には、光源23、第1反射ミラー24、第2反射ミラー25、第3反射ミラー26、集光レンズ27(以上、光学系)、イメージセンサ28(撮像手段)、第1移動枠291及び第2移動枠292が収納されている。
【0024】
光源23は、第1コンタクトガラス21に載置された原稿、若しくは第2コンタクトガラス22を通過する原稿Dに、光学読取のための光を照射する。第1〜第3反射ミラー24〜26及び集光レンズ27は、原稿Dからの反射光を原稿Dの光像として、イメージセンサ28の受光面に結像させる光学系である。イメージセンサ28は、例えばCCD(charge coupled device)等の二次元撮像センサやRGBラインセンサであり、原稿Dの光像を光電変換してアナログ電気信号を出力する。このアナログ電気信号は、ディジタル電気信号に変換され、所定の画像処理が施された後、画像形成用のディジタル画像データとして制御回路基板16へ入力される。
【0025】
第1移動枠291及び第2移動枠292は、ステッピングモータ等からなる図略の移動枠駆動部(位置設定手段)の駆動によって、互いに連係しながら異なる移動速度でスキャナ20の筐体内部を移動する。第1移動枠291には光源23及び第1反射ミラー24が搭載され、第2移動枠292には第2反射ミラー25及び第3反射ミラー26が搭載されている。ここで、第1移動枠291は、第2移動枠292の2倍の速度で移動する。従って、両移動枠291、292が図2に実線で示す位置(ホームポジション)に存在している状態でも、図2に二点鎖線で示す任意の位置に移動した状態でも、光源23からイメージセンサ28へ至る光路長は一定に維持される。
【0026】
ADF30は、スキャナ20の原稿読取領域(第2コンタクトガラス22)へ原稿Dを自動搬送するもので、原稿排紙テーブル31、原稿給紙テーブル32、給紙ローラ33、レジストスイッチ34、レジストローラ対35、タイミングスイッチ36、分離コロ37、排紙ローラ対38及び原稿押さえ部材39を備える。
【0027】
原稿排紙テーブル31は、読取処理後の原稿Dが排紙されるテーブルであり、原稿給紙テーブル32は、読取が行われる原稿Dが載置されるテーブルである。給紙ローラ33と分離コロ37とは互いに当接して対をなし、原稿給紙テーブル32上の原稿Dを一枚ずつ捌きながら、第2コンタクトガラス22へ向けて原稿Dを搬送する。レジストスイッチ34及びレジストローラ対35は、原稿Dが原稿読取位置に搬送される前に、原稿Dの斜め送りを規制して原稿先端を整える役目を果たす。タイミングスイッチ36は、搬送中の原稿Dの先端及び後端タイミングを検出する。排紙ローラ対38は、読取処理後の原稿Dを原稿排紙テーブル31へ排紙させる。
【0028】
原稿押さえ部材39は、第2コンタクトガラス22と所定の隙間を置いて対向配置され、原稿Dを第2コンタクトガラス22に対して浮きやブレのない状態で通過させための押さえ部材である。ここでは、平板状の原稿押さえ部材39を例示しているが、プラテンローラを代わりに用いるようにしても良い。なお、この原稿押さえ部材39と第2コンタクトガラス22との対向領域の所定位置に、原稿Dの読取基準位置(光源23からの光が照射される位置)が設定される。後記で詳述するが、本実施形態では、この読取基準位置を原稿Dの性質、具体的には光沢の有無により可変とした点に特徴を有する。
【0029】
原稿給紙テーブル32に載置された原稿Dを読取る自動読み取りモードにおいては、光源23を搭載する第1移動枠291と第2移動枠292とは、第2コンタクトガラス22の下方位置のホームポジションで不動とされる。なお、該ホームポジションは、後述の読取基準位置の調整に応じて僅かにシフトされ得る。かかるホームポジションにおいて、ADF30によって1枚ずつ搬送される原稿Dに、第2コンタクトガラス22の背面より光源23にて光が照射される。その反射光は、第1〜第3反射ミラー24〜26及び集光レンズ27を通して、原稿Dの光像としてイメージセンサ28に導かれる。
【0030】
一方、第1コンタクトガラス21にユーザが手置きした原稿を読取る手動読み取りモードにおいては、第1移動枠291は、原稿に光を照射しつつ、前記移動枠駆動部による駆動力を受けて、右方向に一定速度で移動する。また、第2移動枠292も、第1移動枠291の1/2の速度で右方向に移動する。原稿からの反射光は、同様にイメージセンサ28に導かれる。このような読み取り動作の後、第1移動枠291及び第2移動枠292は、左方向に一定速度で移動され、ホームポジションに戻される。
【0031】
図1に戻って、後処理装置FDは、後処理される用紙Pを受け入れる搬入口41、用紙搬送部42、後処理用の中間トレイ43、用紙搬出口44及びスタックトレイ45等を備える。用紙搬送部42は、後処理の種別に応じて用紙を適所に搬送する。中間トレイ43は端綴じや中綴じなどのステイプル処理等が行われる処理トレイである。スタックトレイ45は、用紙搬出口44から搬出された用紙の集積枚数に応じて矢印方向に上下動可能に構成されている。この他、図略のパンチ孔の穿孔部等が設けられている。
【0032】
操作パネルOPは、ユーザが当該画像形成装置1に対する操作指示情報を入力するためのものであり、スタートキー51、テンキー52、液晶タッチパネル等からなり操作入力の受付並びに状態表示を行う表示部53、及びモード選択スイッチ54(モード選択手段)を備えている。
【0033】
モード選択スイッチ54は、ADF30を用いた自動原稿読取において、少なくとも特定の性質を有する第1原稿に対応した第1読取モード、又は該第1原稿とは異なる性質を有する第2原稿に対応した第2読取モードのいずれかの選択を受け付けるものである。例えば、モード選択スイッチ54は、光沢を持つ(高光沢度)厚紙原稿と、光沢の無い(低光沢度)普通紙原稿との選択を受け付ける。
【0034】
光沢度が高い原稿と、光沢度が低い乃至は無い原稿とでは、光反射特性が相違する。また、原稿の厚さも、光反射特性に影響を与えることもある。このため、自動原稿読取において、光源23が搭載された第1移動枠291を固定的に設定された一つの読取基準位置で停止させて光の照射並びに反射光に受光を行った場合、光沢度が異なる原稿の双方について、良質な画像読取が行えないことがある。さらに、ADF30は、スキャナ20の筐体に対して回動自在に取り付けられが、両者間には取り付け誤差等に基づく位置ずれが生じてしまうことがある。この場合、読取基準位置が固定的であると、装置別の読取バラツキが生じることとなる。
【0035】
以上に鑑みて本実施形態では、原稿の光沢の有無等の原稿性質に応じて予め最適な読取基準位置情報を取得して画像形成装置1に記憶させておき、モード選択スイッチ54で選ばれた原稿種別に応じて読取基準位置、すなわち第1移動枠291の位置を微調整する。前記読取基準位置情報の取得は、例えば画像形成装置1の製造ラインにおいてADF30が組み付けられた後に行うことができる。これにより、ADF30とスキャナ20との取り付け誤差や機械的誤差の問題も解消することができる。
【0036】
図3は、前記読取基準位置情報の取得方法を説明するための、画像読取装置RDの要部模式図である。例えば、国際照明委員会(CIE)が推奨するL表色系で示される色度、光沢度、及び坪量が次の通りである白紙の第1原稿、第2原稿を準備する。
(1)第1原稿:厚紙光沢有り
色度=L:95、a:0、b:0、光沢度=40程度、坪量=120g/m
(2)第2原稿:普通紙光沢無し
色度=L:95、a:0、b:0、光沢度=10以下、坪量=80g/m
【0037】
これら第1原稿、第2原稿をADF30に通紙しつつ、第1移動枠291(光源23による読取光Lの照射位置)を所定ピッチで複数回移動させ、それぞれの出力値を比較することにより、各々の原稿における第1移動枠291の基準位置(読取基準位置)を特定する。
【0038】
具体的には、タイミングスイッチ36が原稿の先端を検知してから100ms後の画像データが、測定メモリに記録されるように設定しておく。そして、読取基準位置が図3の“A0”の位置、つまり原稿読取領域の一端部寄りの位置になるように、光源23(第1移動枠291)を位置設定する。しかる後、第1原稿をADF30に通紙させて読取光Lの照射を行わせ、読取基準位置A0における画像データを取得する。さらに、読取基準位置A0の左方に例えば0.5mmピッチで設定された読取基準位置A1、A2、A3・・・においても同様に、それぞれ第1原稿をADF30に通紙させて画像データを取得する。このようにして得られた複数の画像データの比較を行い、例えば8ビット(256階調)データで最も白に近いデータが取得された読取基準位置を第1原稿に対する読取基準位置として特定する。
【0039】
次に、同様にして第2原稿をADF30に通紙させて、読取基準位置A0、A1、A2、A3・・・における画像データをそれぞれ取得する。そして、得られた複数の画像データの比較を行い、最も白に近いデータが取得された読取基準位置を第2原稿に対する読取基準位置として特定する。必要に応じて、他の原稿種別に対しても同様な処理を行い、読取基準位置情報を取得する。
【0040】
図4は、画像形成装置1の電気的構成を示すブロック図である。ここでは、制御回路基板16を機能的に制御部60として示している。また、図1の装置本体MBに備えられている給紙部11、画像形成部12、定着部13及び用紙搬送路14を、画像形成部100として総括的に示している。
【0041】
制御部60(制御手段)は、画像形成制御部61、読取制御部62及び読取基準位置記憶部63を備えている。また、スキャナ20には、第1移動枠291及び第2移動枠292を駆動する、ステッピングモータ等からなる移動枠駆動部201(位置設定手段)が備えられている。
【0042】
画像形成制御部61は、画像形成部100を構成する装置本体MBの各部を制御して、イメージセンサ28から出力される受光データに基づき、原稿Dの画像に対応する画像を用紙Pに形成させる。また、後処理指示が与えられている場合、画像形成制御部61は、後処理装置FDの動作を制御して、所定の後処理を実行させる。
【0043】
読取制御部62は、スキャナ20及びADF30による原稿読取動作を制御する。読取制御部62は、その具体的機能の一つとして、移動枠駆動部201に駆動パルスを与え、第1移動枠291及び第2移動枠292の移動制御を行う。本実施形態では、ADF30を用いた自動原稿読取において、操作パネルOPのモード選択スイッチ54で原稿種別に応じた読取モードが設定されたとき、読取基準位置がその原稿種別に対して設定されている位置に第1移動枠291及び第2移動枠292が位置するように、読取制御部62は移動枠駆動部201を制御する。
【0044】
読取基準位置記憶部63は、図3に示す如き手法で取得された読取基準位置情報を、原稿種別に関連付けて記憶する。図5は、読取基準位置記憶部63に格納される読取基準位置情報テーブル70の一例を示す表形式の図である。ここでは、「普通紙光沢無し」、「厚紙光沢有り」、「厚紙光沢無し」、「普通紙色付き」といった原稿種別ごとに、読取基準位置A0、A1、A2、A3・・・が定められている例を示している。読取制御部62は、モード選択スイッチ54で原稿種別の選択指示が与えられた場合、この読取基準位置情報テーブル70を参照して、原稿種別に応じて予め設定された制御信号S0、S1、S2、S3・・・を移動枠駆動部201に与える。
【0045】
続いて、上記の通り構成された画像形成装置1の動作を、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。コピー動作等の、画像形成のためのスタンバイ状態とされると、読取制御部62は、第1移動枠291及び第2移動枠292をデフォルト位置(ホームポジション)に位置させる(ステップS1)。既にホームポジションに位置しているときは、特に動作を行わない。
【0046】
次に読取制御部62は、ADF30の原稿給紙テーブル32に原稿Dが載置されたか否かを判定する(ステップS2)。ADF30による原稿給紙が行われず、例えば原稿を手置きするためにADF30が開けられた場合は(ステップS2でNO)、従来通りのマニュアル読取モードが実行される。一方、原稿給紙テーブル32に原稿Dが載置されたことが原稿センサ等で検出されると(ステップS2でYES)、読取制御部62は、操作パネルOPのモード選択スイッチ54から読取モードの選択指示(例えば光沢有り、無しの選択)が与えられているか否かを確認する(ステップS3)。
【0047】
読取モードの選択指示が与えられている場合(ステップS3でYES)、読取制御部62は、読取基準位置記憶部63の読取基準位置情報テーブル70を参照して、第1移動枠291及び第2移動枠292の移動が必要か否かを判定する(ステップS4)。第1移動枠291及び第2移動枠292の現状位置(読取基準位置)に対して、設定された読取モードの読取基準位置が相違する場合(ステップS4でYES)は、移動枠駆動部201を動作させて、第1移動枠291及び第2移動枠292を所定の読取基準位置へ移動させる(ステップS5)。なお、読取モードの選択指示が与えられていない場合(ステップS3でNO)、及び第1移動枠291及び第2移動枠292の移動が不要である場合(ステップS4でNO)は、ステップS4乃至ステップS5はスキップされる。
【0048】
この状態で読取制御部62は、操作パネルOPから原稿読取の指示操作を待つ(ステップS6)。読取指示操作が与えられない場合は(ステップS6でNO)、ステップS3に戻って処理を繰り返す。一方、読取指示操作が与えられると(ステップS6でYES)、読取制御部62は、ADF30及びスキャナ20を動作させて、原稿Dの画像読取を実行させる(ステップS7)。このとき、モード選択スイッチ54で与えられた読取モードに応じて読取基準位置が調整されているので、良質な画像読取を行わせることができる。
【0049】
その後、画像形成制御部61は、読み取られた画像データに基づいて、画像形成部100を動作させて用紙Pに画像を形成する(ステップS8)。さらに、画像形成制御部61は、後処理指示が与えられている場合(ステップS9でYES)、後処理装置FDを動作させて、指示通りの後処理を実行させるものである(ステップS10)。
【0050】
以上説明したような、本実施形態に係る画像読取装置RD乃至は画像形成装置1によれば、例えば光沢の有無等の原稿種別に対応して読取基準位置を設定し光学的原稿読取を行わせることができるので、原稿の性質の相違に拘わらず、カブリ、ぼやけを防止し、フレア光の影響を受けることなく、良質な画像読取を行わせることができる。従って、原稿画像に忠実な画像形成を行わせることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態に係る画像形成装置1を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような実施形態を取ることができる。
【0052】
[1]上記実施形態では、画像形成装置の一例として原稿Dのモノクロ複写動作を行う画像形成装置1を例示した。言うまでもなく、本発明は、カラー複写機、ファクシミリ装置又はこれらの複合機等の他の画像形成装置にも適用することができる。
【0053】
[2]上記実施形態では、専ら光沢の有無に応じて読取モード(読取基準位置)が設定される例を示した。これに限らず、原稿の厚さ、透光度、色、腰の強さ、紙の材質、再生紙か否か等に応じて、読取基準位置を調整するようにしても良い。
【0054】
[3]上記実施形態では、操作パネルOPに読取モードを選択させるモード選択スイッチ54を設けた例を示したが、かかるモード選択を、画像形成装置1とデータ通信可能に接続されたパーソナルコンピュータや携帯端末機等で行わせるようにしても良い。
【0055】
[4]上記実施形態では、原稿が手置きされる場合において原稿読取領域となる第1コンタクトガラス21と、原稿DがADF30で自動搬送される場合において原稿読取領域となる第2コンタクトガラス22とを備えたスキャナ20を例示した。しかし、本発明は、手置き読取部が存在しないスキャナ装置にも適用できる。また、上記実施形態では、第1移動枠291及び第2移動枠292の移動により読取基準位置を調整する例を示したが、これに限らず、例えば光源の投光角や反射ミラーの反射角を調整する方法により読取基準位置を調整するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
【図2】図1の画像形成装置に具備されている画像読取装置の拡大図である。
【図3】読取基準位置情報の取得方法を説明するための、画像読取装置の要部模式図である。
【図4】画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】読取基準位置情報テーブルの一例を示す表形式の図である。
【図6】画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 画像形成装置
MB 装置本体
RD 画像読取装置
FD 後処理装置
OP 操作パネル
10 本体ボディ
12、100 画像形成部
16 制御回路基板(制御手段)
20 スキャナ
201 移動枠駆動部(位置設定手段)
21 第1コンタクトガラス
22 第2コンタクトガラス(原稿読取領域)
23 光源
28 イメージセンサ(撮像手段)
291、292 第1移動枠、第2移動枠
30 自動原稿搬送装置(ADF:自動原稿搬送手段)
54 モード選択スイッチ(モード選択手段)
60 制御部(制御手段)
61 画像形成制御部
62 読取制御部
63 読取基準位置記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動的に原稿を所定の原稿読取領域へ搬送する自動原稿搬送手段と、
前記原稿の光像を受光する撮像手段と、
前記原稿読取領域において定められた読取基準位置で前記原稿に光を照射すると共に、その反射光を前記光像として前記撮像手段へ導く光学系と、
前記読取基準位置を変更させる位置設定手段と、
特定の性質を有する第1原稿に対応した第1読取モード、又は該第1原稿とは異なる性質を有する第2原稿に対応した第2読取モードのいずれかの選択を受け付けるモード選択手段と、
前記読取基準位置が、前記モード選択手段における選択に応じて、前記第1読取モードに対応して設定された第1基準位置、又は前記第2読取モードに対応して設定された第2基準位置のいずれかに変更されるよう、前記位置設定手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記光学系は、光源を搭載した移動枠を含み、
前記位置設定手段は、前記移動枠を移動させることによって、前記読取基準位置を変更させるものであることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第1原稿が高光沢度を有する原稿であり、前記第2原稿が低光沢度を有する原稿であることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の画像読取装置と、
前記撮像手段から出力される受光データに基づき、前記原稿画像に対応する画像を用紙に形成する画像形成動作を行う装置本体と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−88638(P2009−88638A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251909(P2007−251909)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】