説明

画像読取装置及び画像形成装置

【課題】各色成分の画像データの画質の劣化を軽減しつつ読取位置のずれを容易に解消する。
【解決手段】ラインセンサは、ライン周期に基準移動速度を乗算した結果の基準ライン距離分の幅を有し、副走査方向に隣接して並列に配置され、画像読取部の移動速度を所定の高速移動速度に切り替える指示が受け付けられると、原稿読取処理において、読取制御部は、高速移動速度を基準移動速度で除算した結果(移動速度比)でライン周期を除算した結果(高速読取時点灯周期)をライン周期から減算した期間が経過した時点を点灯開始時点として、高速読取点灯周期の間移動速度比で乗算した強度で発光素子を点灯させ、画像データ合成部は、移動速度比が1以上3未満の場合先頭からの2センサの画像データを1ライン分遅延させて3番目のセンサの画像データと合成し、移動速度比が3以上の場合何れも遅延させることなく合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の読取処理における原稿に照射する点灯光の点灯周期を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スキャナ等の画像読取装置は、原稿を載置するためのコンタクトガラス、RGB各色の点灯光を発生する3種類のLED(Light Emitting Diode)や、RGB各色の色成分を含む白色光を発生させる白色LEDを備えた光源、原稿の反射光を光電変換して結像するCCD等を備えて構成されている。
【0003】
画像読取装置は、コンタクトガラスに載置され原稿の読み取り指示が受け付けられると、光源によりコンタクトガラス上に載置された原稿を照射し、原稿の主走査方向1ライン分の反射光をCCDで光電変換して結像することで、原稿の主走査方向1ライン分の読み取りを終了すると、原稿に対する副走査方向に光源及びCCDを移動させ、副走査方向に隣接する次のラインの読み取りを行う。一方、原稿を自動的に副走査方向に搬送することによって、主走査方向1ライン分ずつ原稿を読み取る画像読取装置も存在する。
【0004】
ここで、CCDは、例えばRGB3色の各色成分に対応付けられた3種類のラインセンサを副走査方向に並列して構成され、原稿の主走査方向1ライン分の読取周期であるライン周期に従って、原稿から反射される反射光を各ラインセンサで受光し、当該受光した反射光に基づいて各ラインセンサに対応する色成分の画像データを生成し、当該生成された各色成分の画像データを合成することで原稿の1ライン分の画像データを生成する。
【0005】
ただし、各色成分の画像データを合成する場合、各ラインセンサは副走査方向に並列に配置されているため、各ラインセンサで生成される各色成分の画像データが原稿の同一ラインで反射された反射光を受光して生成された画像データとなるように、各ラインセンサで画像データを生成するタイミングのずれを調整しながら合成する必要がある。
【0006】
例えば、下記特許文献1では、副走査方向にずらして配置されたRGB3色の各色成分に対応付けられた3種類のラインセンサと、各ラインセンサに対応付けて配設されたRGB3色の各色の点灯光を発生する3種類のLEDと、を備え、各ラインセンサが相対的に副走査方向に略整数ライン分ずれた位置で画像の読み取りを開始するように、各ラインセンサの蓄積期間(ライン周期)に対する各LEDの点灯タイミングを制御する画像読取装置が提案されている。
【0007】
また、ライン周期を変動させることなく、光源及びCCDを原稿の副走査方向に相対的に移動させる際の移動速度を調整して、生成される画像データの画質を調整する画像読取装置も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−322990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ライン周期を変動させることなく、光源及びCCDを原稿の副走査方向に相対的に移動させる際の移動速度を調整して、生成される画像データの画質を調整する画像読取装置に対して上記特許文献1に記載の技術を適用すると、以下に示す問題を生じることがあった。
【0010】
例えば、高画質で読み取ることよりも高速に原稿を読み取ることが優先される場合等、光源及びCCDを高速に移動させる指示が当該画像読取装置になされた場合に、ライン周期内に原稿の副走査方向に相対的に移動する距離が移動速度の調整前に比して長くなり、つまり、ライン周期内に光源部から光が照射される原稿における副走査方向の距離(副走査方向幅)が増大し、当該増大した副走査方向幅分からの反射光が各ラインセンサに入射され、当該増大した副走査方向幅で平均化された1ライン分の画像データが生成されることによって、移動速度の調整前に比して、生成された1ライン分の画像データの画質が劣化する傾向にあった。
【0011】
また、当該画像読取装置におけるライン周期が短期間に設定されている場合には、各ラインセンサで生成される画像データに対応する原稿における読取位置のずれを解消するために、当該短期間のライン周期内に各LEDの点灯タイミングを制御するための高度な機構を設ける必要があった。
【0012】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、所定のライン周期を変動させることなく、光源部及び受光部を原稿の副走査方向に相対的に移動させる際の移動速度を調整して、受光部で生成される画像データの画質を調整する画像読取装置に対して、受光部で生成される各色成分の画像データの画質の劣化を軽減しつつ、当該各色成分の画像データに対応する原稿における読取位置のずれを容易に解消することができる画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、発光素子の点灯光を原稿に照射する光源部と、前記点灯光のRGB3色の各色成分に対応付けられた3種類のラインセンサを備え、予め定められた前記原稿の1ライン分の読取周期であるライン周期に従って、前記点灯光が照射された際に前記原稿から反射される反射光を前記ラインセンサで受光し、当該受光した反射光に基づいて、前記原稿における当該ラインセンサに対応する色成分の1ライン分の画像データを生成する受光部と、を備えた画像読取部と、
前記原稿の副走査方向に前記画像読取部を相対的に移動させながら前記発光素子を点灯させ、前記画像データを前記受光部に生成させる原稿読取処理を行う読取制御部と、
前記原稿における前記各ラインセンサに対応する色成分の1ライン分の画像データを合成して、前記原稿における1ライン分の画像データを生成する画像データ合成部と、
前記原稿読取処理における前記画像読取部の移動速度を、予め定められた基準移動速度よりも高速な予め定められた高速移動速度に切り替える指示を受け付ける速度受付部と、
を備え、
前記ラインセンサは、前記ライン周期に前記基準移動速度を乗算した結果である基準ライン距離分の副走査方向幅を有し、それぞれ副走査方向に隣接して並列に配置され、
前記読取制御部は、前記速度受付部によって前記高速移動速度に切り替える指示が受け付けられると、前記速度受付部で受け付けられた前記高速移動速度を前記基準移動速度で除算した結果である移動速度比で前記ライン周期を除算して、当該除算した結果を高速読取時点灯周期として定め、前記原稿読取処理において、前記ライン周期から前記高速読取時点灯周期を減算した期間が前記ライン周期における開始時点から経過した時点を点灯開始時点として、前記発光素子を前記点灯開始時点から前記高速読取点灯周期の間、前記点灯光の強度を前記移動速度比の分だけ乗算した強度に変更して点灯させ、
画像データ合成部は、前記速度受付部によって前記高速移動速度に切り替える指示が受け付けられると、前記原稿読取処理において、前記移動速度比が1以上であって3未満の場合には、副走査方向の先頭及び2番目に配置された前記ラインセンサで生成された2色の前記画像データを1ライン分遅延させて、副走査方向の3番目に配置された前記ラインセンサで生成された1ライン分の画像データと合成し、前記移動速度比が3以上の場合には、前記3種類の前記ラインセンサで生成された3色の1ライン分の画像データを何れも遅延させることなく合成する画像読取装置である。
【0014】
この発明では、速度受付部により、原稿読取処理における画像読取部の移動速度を高速移動速度に切り替える指示が受け付けられると、読取制御部による原稿読取処理において、ライン周期から高速読取時点灯周期を減算した期間がライン周期における開始時点から経過した時点を点灯開始時点として、発光素子が当該点灯開始時点から高速読取点灯周期の間、点灯光の強度が移動速度比の分だけ乗算した強度に変更されて点灯される。
【0015】
したがって、ライン周期を変動させることなく、画像読取部を原稿の副走査方向に相対的に移動させる際の移動速度を高速移動速度に調整する場合、光源部がライン周期内に原稿の副走査方向に相対的に移動する距離は移動速度比に応じて増大するが、発光素子の点灯期間が移動速度比に応じた高速読取時点灯周期が示す期間に短縮されるとともに、各ラインセンサにおける反射光の受光時間と当該反射光の強度の積で示される受光量が移動速度の調整前に比して大きく軽減されることが回避される。
【0016】
つまり、ライン周期内に光源部から光が照射される原稿における副走査方向の距離(副走査方向幅)が移動速度の調整前に比して等しく維持され、当該副走査方向幅から反射される反射光の受光量が移動速度の調整前に比して大きく軽減されることが回避されるため、当該副走査方向幅分からの反射光が各ラインセンサに入射されて生成される1ライン分の画像データが、移動速度の調整前に比して、画質が劣化することを回避することができる。
【0017】
また、画像データ合成部により、移動速度比が1以上であって3未満の場合には、副走査方向の先頭及び2番目に配置されたラインセンサで生成された2色の画像データを1ライン分遅延させて、副走査方向の3番目に配置されたラインセンサで生成された1ライン分の画像データと合成し、移動速度比が3以上の場合には、3種類のラインセンサで生成された3色の1ライン分の画像データを何れも遅延させることなく合成される。
【0018】
このため、当該画像読取装置におけるライン周期が短期間に設定されている場合であっても、例えば、各ラインセンサに対応する色成分の点灯光を発生させる発光素子の点灯期間を各ラインセンサ間の副走査方向のずれ幅に応じて調整する等の高度な制御を行うことなく、各ラインセンサで生成される画像データに対応する原稿における読取位置のずれを解消することができる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置で生成される画像データに基づいて動作を行う動作部と、
を備えた画像形成装置である。
【0020】
この発明では、画像形成装置において、請求項1に記載の発明における効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、所定のライン周期を変動させることなく、光源部及び受光部を原稿の副走査方向に相対的に移動させる際の移動速度を調整して、受光部で生成される画像データの画質を調整する画像読取装置に対して、受光部で生成される各色成分の画像データの画質の劣化を軽減しつつ、当該各色成分の画像データに対応する原稿における読取位置のずれを容易に解消することができる画像読取装置及び画像形成装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例としての複写機の概略構成図
【図2】原稿及び受光部の構成の一例を示す説明図
【図3】ライン周期に従って各ラインセンサで生成される画像データの一例を示す説明図
【図4】複合機の電気的な構成を示すブロック図
【図5】発光素子の点灯周期と受光部で生成される画像データの関係の一例を示す説明図
【図6】原稿読取処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る画像形成装置の一例としての複写機について図面を参照しながら説明する。図1は、当該複写機の概略構成図である。
【0024】
図1に示すように、複写機1は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(黒)の各色別に画像形成部2M、2C、2Y、2K(これらを総称して画像形成部2と示す)が本体内に並設されている。
【0025】
画像形成部2は、用紙に対するカラー画像の形成(印刷)を行うものであり、画像形成部2M、2C、2Y及び2Kは、それぞれ、例えばアモルファスシリコンからなる感光体ドラム3、この感光体ドラム3の周囲に配設された帯電部4、露光部5、現像部6及び感光体クリーニング部7を備えている。
【0026】
帯電部4は、感光体ドラム3の表面全体を均一に所定電位に帯電させるものである。露光部5は、後述の画像データ記憶部40(図4参照)等から送信されてきた画像データに基づき生成されたレーザービームを感光体ドラム3の表面に照射し、該感光体ドラム3の表面上に静電潜像を形成するものである。
【0027】
現像部6は、感光体ドラム3に形成された静電潜像に対してトナー供給部61から供給されるトナーを付着させることで、トナー像として静電潜像を顕在化させるものである。
【0028】
感光体クリーニング部7は、後述する中間ベルト10へのトナー画像の一次転写終了後、中間ベルト10に転写されずに感光体ドラム3の表面に残ったトナーを除去するものである。
【0029】
画像形成部2M〜2Kの下方には、感光体ドラム3の表面に顕在化したトナー像の一次転写を行うための一次転写ローラ9及び中間ベルト10が配設されている。中間ベルト10は、所定のベルト体からなり、各感光体ドラム3と対向配置された一次転写ローラ9によって感光体ドラム3に押圧された状態で、駆動ローラ11〜13によって無端回転するように構成されている。
【0030】
感光体ドラム3上に形成される各色のトナー像は、無端回転される中間ベルト10上に、それぞれタイミングを合わせて、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの順に転写されて重ね合わされる。これにより中間ベルト10上にC、M、Y、Kの4色からなるカラー画像が形成される。
【0031】
駆動ローラ13と対向する位置には、中間ベルト10を介して2次転写ローラ14が設けられている。2次転写ローラ14は、後述の制御部33(図4参照)からの転写バイア
スによって中間ベルト10上のカラー画像を用紙へ転写するものである。
【0032】
また、複写機1は、画像形成部2C,2M,2Y,2Kへ向けて給紙を行う給紙部15を備えている。給紙部15は、各サイズの用紙を収納する給紙カセット151、用紙が搬送される経路である搬送路152、及び、搬送路152中の用紙の搬送を行う搬送ローラ153等を備え、給紙カセット151から1枚ずつ取り出された用紙を画像形成部2C,2M,2Y,2K、すなわち2次転写ローラ14の位置へ向けて搬送する。尚、給紙部15は、2次転写処理された用紙を定着部16へ搬送し、この定着処理された用紙を複写機本体上部の用紙排出トレイ17へ排出する。
【0033】
搬送路152における2次転写ローラ14より下流側の適所には、定着部16が設けられている。定着部16は、用紙に転写されたトナー像を定着させるものである。定着部16は、ヒートローラ161及び圧ローラ162からなり、ヒートローラ161の熱によって用紙上のトナーを溶かし、圧ローラ162によって圧力をかけてトナーを用紙上に定着させる。
【0034】
また、複写機1は、除電クリーニング18を備えている。除電クリーニング18は、中間ベルト10上の残留トナーを除去するものである。除電クリーニング18は、図略のクリーニング電極及びクリーニングブラシからなり、クリーニング電極によってトナーの帯電電荷と逆極性のクリーニングバイアスをクリーニングブラシに印加し、これによる静電気力によって中間ベルト10上のトナーをクリーニングブラシに移動させることでトナー除去を行う。
【0035】
複写機本体の上部には、原稿給送部24と原稿読取部20とが設けられている。
【0036】
原稿給送部24は、原稿を載置するための原稿載置部25と、画像読み取り済みの原稿を排出するための原稿排出部26と、原稿載置部25に載置された原稿を1枚ずつ繰り出して原稿読取スリット23に対向する位置へ搬送し、原稿排出部26へ排出するための給紙ローラや搬送ローラ(図示せず)等からなる原稿搬送機構27を備える。
【0037】
原稿搬送機構27は、さらに原稿を表裏反転させて原稿読取スリット23と対向する位置へ再搬送する用紙反転機構(図示せず)を備え、原稿の両面の画像を、原稿読取スリット23を介してスキャナ部21から読取可能にしている。
【0038】
また、原稿給送部24は、その前面側が上方に移動可能となるように本体部2に対して回動自在に設けられている。原稿給送部24の前面側を上方に移動させて原稿台22の上面を開放することにより、原稿台22の上面に読み取り原稿、例えば見開き状態にされた書籍等を操作者が載置できるようになっている。
【0039】
原稿読取部20は、露光ランプやCCD(Charge Coupled Device)等からなる本発明に係る画像読取部としてのスキャナ部21と、ガラス等の透明部材により構成された原稿台22及び原稿読取スリット23とを備える。
【0040】
露光ランプは、本発明にかかる光源部の一例を構成するものであり、主走査方向にライン状に配列された、本発明にかかる発光素子としての複数の白色LED(Light Emitting Diode)を用いて構成されている。尚、白色LEDは、従来から光源に用いられている冷陰極蛍光管等に比して、極めて短時間で点灯及び消灯することができ、さらに、消費電力が低いという利点を有している。
【0041】
CCDは、本発明にかかる受光部の一例を構成するものであり、図2(a)に示すように、RGB3色の各色成分に対応付けられた3種類のラインセンサSr,Sg,Sbを備えている。
【0042】
各ラインセンサは、主走査方向のライン状に配列された複数の受光素子REを備え、副走査方向に所定距離(基準ライン距離)Dの幅を有し、それぞれ副走査方向に隣接して並列に配置されている。また、各ラインセンサの表面には、各ラインセンサに対応付けられた色成分の光のみを透過させるためのカラーフィルタが取り付けられている。
【0043】
各ラインセンサは、受光素子REの受光面に集光された各ラインセンサに対応付けられた色成分の光を光電変換することにより、原稿におけるRGB3色の各色成分の主走査方向の1ライン分に応じた画像データを生成する。
【0044】
このようなスキャナ部21による原稿読取方法としては、原稿台22上に載置された原稿を読み取るフラットベッド読取モードと、原稿を原稿給送部24によって搬送して、その搬送途中で原稿を読み取るADF読取モードがある。
【0045】
フラットベッド読取モードでは、スキャナ部21は、露光ランプの白色LEDを点灯して原稿台22上に載置された原稿を照射し、原稿面から反射される主走査方向1ライン分の反射光をCCDの各ラインセンサで受光して主走査方向1ライン分の画像データを生成する。そして、スキャナ部21は、図略の駆動部によって副走査方向に移動して、上記と同様に、隣接する次のラインに対応する画像データを生成する。
【0046】
一方、ADF読取モードでは、スキャナ部21は、原稿読取スリット23と対向する位置に移動して、原稿給送部24による原稿の副走査方向への搬送動作と同期して、原稿読取スリット23を原稿が通過するときに、露光ランプの白色LEDを点灯して原稿を照射し、原稿面から反射される主走査方向1ライン分の反射光をCCDの各ラインセンサで受光して主走査方向1ライン分の画像データを生成する。そして、原稿が原稿給送部24によって副走査方向に搬送されることにより、上記と同様に、副走査方向に隣接する次のラインに対応する画像データを生成する。
【0047】
尚、スキャナ部21が原稿に対して相対的に副走査方向に移動する際の移動速度である基準移動速度Vb及び各ラインセンサで原稿の1ライン分を読み取る周期であるライン周期Tbは、基準移動速度Vb及びライン周期Tbの乗算した結果が、基準ライン距離Dに等しくなるように予め定められている。尚、以下の説明においては、特筆しない限り、フラットベッド読取モードによって原稿の読み取りを行うことを前提に説明を行う。
【0048】
具体的には、例えば、図2(b)に示すように、スキャナ部21は、原稿に対して基準移動速度Vbで副走査方向に移動しながら、原稿の副走査方向0〜L1の範囲から反射される反射光を受光して主走査方向1ライン分の画像データを生成すると、更に副走査方向に移動し、副走査方向に隣接して並ぶ原稿の副走査方向L1〜L2の範囲に対応する画像データを生成する。
【0049】
つまり、スキャナ部21は、図3に示すように、原稿の読み取りを開始してからライン周期Tbが経過するまでの間、白色LEDを点灯して基準ライン距離Dの分だけ副走査方向に移動し、ラインセンサSrで原稿の読み取り範囲(図2(b)における原稿の副走査方向0〜L1の範囲、図3における0〜L1の網掛部)における反射光に基づいて画像データを生成する。
【0050】
続いて、スキャナ部21は、更にライン周期Tbが経過するまでの期間で、ラインセンサSgによって当該読み取り範囲(図2(b)における原稿の副走査方向0〜L1の範囲、図3における0〜L1の格子部)における反射光に基づいて画像データを生成し、更にライン周期Tbが経過するまでの期間で、ラインセンサSbによって当該読み取り範囲(図2(b)における原稿の副走査方向0〜L1の範囲、図3における0〜L1の斜線部)における反射光に基づいて画像データを生成する。
【0051】
そして、スキャナ部21は、ラインセンサSrで生成された1ライン分の画像データをライン周期Tbの2倍の期間遅延させ、ラインセンサSgで生成される1ライン分の画像データをライン周期Tb遅延させて、ラインセンサSbで生成される1ライン分の画像データと合成することによって、原稿における同一の範囲を読み取った1ライン分の画像データを生成する。
【0052】
図4は、複写機1の電気的な構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、複写機1は、ネットワークI/F(インターフェース)部30、画像データ記憶部40、ユーザインターフェース部50、記録部60、クリーニング部70及び制御部33を備えている。
【0053】
ネットワークI/F部30は、LAN等のネットワークを介して接続されたPC等の情報処理装置(外部装置)との間における種々のデータの送受信を制御するものである。
【0054】
画像データ記憶部40は、ネットワークI/F部30を介してPC等から送信されてきた画像データを一時的に記憶するものである。
【0055】
ユーザインターフェース部50は、複写機1のフロント部に設けられ、ユーザによる各種指示入力が行われる入力キーとして機能したり、所定の情報を表示したりするものである。
【0056】
記録部60は、本発明に係る動作部の一例を構成するものであり、上記画像形成部2、転写部61、定着部16及び給紙部9を備え、画像データ記憶部40に記憶されるなどした画像データに基づいて用紙に対する画像印刷を行うものである。転写部61は、上記の中間ベルト10、駆動ローラ11〜13及び2次転写ローラ14等を備えてなり、中間ベルト10を介して感光体ドラム3上のトナー像を用紙に転写するものである。
【0057】
クリーニング部70は、上記除電クリーニング18、感光体クリーニング部7等からなるものである。
【0058】
制御部33は、各種制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、データを一時的に保管する機能や作業領域としての機能を有するRAM(Random Access Memory)、及び上記制御プログラム等をROMから読み出して実行するマイクロコンピュータなどからなり、上記各機能部に対する各種制御信号の送受信を行い、複写機1全体の動作制御を司るものである。
【0059】
また、制御部33は、読取制御部34と、速度受付部35と、光源駆動制御部36と、画像データ合成部37として機能する。
【0060】
読取制御部34は、ユーザインターフェース部50を介して原稿の読取要求が受け付けられると、上記のように原稿の副走査方向にスキャナ部21を相対的に移動させながら白色LEDを点灯させ、画像データをCCDに生成させる原稿読取処理を行うものである。
【0061】
速度受付部35は、読取制御部34による原稿読取処理におけるスキャナ部21の移動速度を、予め定められた基準移動速度Vbよりも高速な予め定められた高速移動速度Vhに切り替える指示を、ユーザインターフェース部50等を介して受け付けるものである。
【0062】
例えば、原稿を通常通りに読み取る場合に比して生成される画像データの画質は低減されるが高速に原稿を読み取ることができる高速読取モードによって原稿読取処理を行わせる指示がユーザインターフェース部50等を介して入力されると、速度受付部35は、予め定められた基準移動速度Vbよりも高速な当該高速読取モードに対応する予め定められた高速移動速度Vhに切り替える指示がなされたものとして当該入力を受け付ける。
【0063】
光源駆動制御部36は、読取制御部34による制御の下、スキャナ部21の白色LEDの点灯を制御するものである。例えば、光源駆動制御部36は、読取制御部34から受信した、白色LEDを点灯させる期間を示すオン信号と白色LEDへの電流の供給を停止して白色LEDを消灯させる時期を示すオフ信号とで構成される駆動信号におけるオン信号の比率(デューティ比)に基づいて白色LEDの点灯期間を制御し、当該駆動信号の振幅の大きさで示される所定量の電流を白色LEDに供給して、白色LEDの点灯光の強度を所定の強度に制御する。
【0064】
画像データ合成部37は、上記の通り、原稿読取処理において各ラインセンサで生成されたRGB3色の各色成分の1ライン分の画像データを合成して、原稿における1ライン分の画像データを生成するものである。
【0065】
また、読取制御部34は、速度受付部35によって高速移動速度Vhに切り替える指示が受け付けられると、高速移動速度Vhを基準移動速度Vbで除算した結果である移動速度比Rvでライン周期Tbを除算して、当該除算した結果を高速読取時点灯周期として定め、原稿読取処理において、ライン周期Tbから高速読取時点灯周期を減算した期間がライン周期Tbにおける開始時点から経過した時点を点灯開始時点として、白色LEDを当該点灯開始時点から高速読取点灯周期の間、点灯光の強度を通常時に比して移動速度比Rvの分だけ乗算した強度に変更して点灯させる。
【0066】
これに合わせて、画像データ合成部37は、速度受付部35によって高速移動速度Vhに切り替える指示が受け付けられると、原稿読取処理において、移動速度比Rvが1以上であって3未満の場合には、ラインセンサSr,Sg(図2参照)で生成されたRG2色の色成分の画像データを1ライン分遅延させて、ラインセンサSb(図2参照)で生成された1ライン分の画像データと合成し、移動速度比Rvが3以上の場合には、3種類のラインセンサSr,Sg,Sbで生成された3色の1ライン分の画像データを何れも遅延させることなく合成する。
【0067】
つまり、スキャナ部21及び制御部33を備えて、本発明に係る画像読取装置の一例が構成されている。
【0068】
以下では、原稿読取処理の動作について図2、図5及び図6を用いて詳述する。
【0069】
図6に示すように、原稿読取処理が開始され、速度受付部35によって基準移動速度Vbの2倍の高速移動速度Vhに切り替える指示が受け付けられると(S1)、読取制御部34は、当該高速移動速度Vhを基準移動速度Vbで除算して移動速度比Rv(=2)を算出し(S2)、ライン周期Tbを当該移動速度比Rv(=2)で除算して、高速読取時点灯周期Tb/2を算出する(S3)。
【0070】
そして、読取制御部34は、図5に示すように、ライン周期Tbから高速読取時点灯周期Tb/2を減算した期間Tb/2がライン周期Tbにおける開始時点から経過した時点を点灯開始時点として、当該点灯開始時点から高速読取点灯周期Tb/2の間、点灯光の強度を通常時に比して移動速度比Rvに相当する2倍の強度に変更して、光源駆動制御部36を介して白色LEDを点灯させる(S4)。
【0071】
次に、画像データ合成部37は、移動速度比Rvが1以上であって3未満であるため(S5;YES)、原稿読取処理の開始時点からライン周期Tbが経過した時点において、ラインセンサSrで生成された原稿の副走査方向L1〜L2の範囲(図2)における反射光のR成分に対応する画像データ(図5におけるRv=2列の網掛部)とラインセンサSgで生成された原稿の副走査方向0〜L1の範囲(図2)における反射光のG成分に対応する画像データ(図5におけるRv=2列の格子部)とを1ライン周期Tb遅延させるために、当該画像データをRAMに一旦記憶して退避させる(S6)。
【0072】
尚、画像データ合成部37は、原稿読取処理の開始時点からライン周期2Tbが経過した時点において、ラインセンサSbで生成された原稿の副走査方向L1〜L2の範囲(図2)における反射光のB成分に対応する画像データ(図5におけるRv=2列の斜線部)と、上記のRAMに一旦記憶した原稿の副走査方向L1〜L2の範囲の反射光のR成分に対応する画像データ及び原稿の副走査方向0〜L1の範囲の反射光のG成分に対応する画像データとを合成して、当該合成された画像データを1番目の原稿の主走査方向1ライン分の画像データとして生成する(S7)。つまり、原稿の副走査方向0〜L2の範囲のうち、基準ライン距離Dに相当する何れかの範囲における反射光に基づいて、原稿の主走査方向1ライン分の画像データが生成される。
【0073】
そして、読取制御部34は、原稿全体に対応する画像データが生成されることによって、原稿の読み取りが完了するまでの間、ステップS1で受け付けられた高速移動速度Vhでスキャナ部21を副走査方向に移動させて、ステップS4からステップS7の処理を繰り返し実行する(S8)。
【0074】
同様にして、速度受付部35によって基準移動速度Vbの4倍の高速移動速度Vhに切り替える指示が受け付けられた場合(S1)は、読取制御部34は、当該高速移動速度Vhを基準移動速度Vbで除算して移動速度比Rv(=4)を算出し(S2)、更に、ライン周期Tbを当該移動速度比Rv(=4)で除算して、高速読取時点灯周期Tb/4を算出する(S3)。
【0075】
そして、読取制御部34は、原稿読取処理において、ライン周期Tbから高速読取時点灯周期Tb/4を減算した期間3Tb/4がライン周期Tbにおける開始時点から経過した時点を点灯開始時点として、当該点灯開始時点から高速読取点灯周期Tb/4の間、点灯光の強度を通常時に比して移動速度比Rvに相当する4倍の強度に変更して、光源駆動制御部36を介して白色LEDを点灯させる(S4)。
【0076】
この場合、画像データ合成部37は、移動速度比Rvが3以上であるため(S5;NO)、ラインセンサSrで生成された原稿の副走査方向L3〜L4の範囲(図2)における反射光のR成分に対応する画像データ(図5におけるRv=4列の網掛部)と、ラインセンサSgで生成された原稿の副走査方向L2〜L3の範囲(図2)における反射光のG成分に対応する画像データ(図5におけるRv=4列の格子部)と、ラインセンサSbで生成された原稿の副走査方向L1〜L2の範囲(図2)における反射光のB成分に対応する画像データ(図5におけるRv=4列の斜線部)と、を何れも遅延させることなく合成して、当該合成された画像データを1番目の原稿の主走査方向1ライン分の画像データとして生成する(S7)。つまり、原稿の副走査方向0〜L4の範囲のうち、基準ライン距離Dに相当する何れかの範囲における反射光に基づいて、原稿の主走査方向1ライン分の画像データが生成される。
【0077】
このように、本構成によれば、ライン周期Tbを変動させることなく、スキャナ部21の移動速度が基準移動速度Vbよりも移動速度比Rvの倍率で高速に設定され、1ライン分の画像データに対応する原稿における副走査方向の範囲が、スキャナ部21の移動速度が基準移動速度Vbに設定されている場合に比して、移動速度比Rvの倍率で拡大されると、当該拡大された範囲のうち移動速度比Rv分の1の範囲(基準ライン距離Dに相当する範囲)で平均化された画像データが原稿の主走査方向1ライン分の画像データとして生成され、各ラインセンサで生成される各色成分の画像データに対応する原稿における読取範囲のずれが解消される。
【0078】
このため、ライン周期Tbが短期間に設定されている場合であっても、例えば、各ラインセンサに対応する色成分の点灯光を発生させるLEDの点灯期間を各ラインセンサ間の副走査方向のずれ幅に応じて調整する等の高度な制御を行うことなく、各ラインセンサで生成される画像データに対応する原稿における読取位置のずれを解消することができる。
【0079】
また、本構成によれば、ライン周期Tbを変動させることなく、スキャナ部21を原稿の副走査方向に相対的に移動させる際の移動速度を高速移動速度Vhに調整する場合、露光ランプがライン周期Tb内に原稿の副走査方向に相対的に移動する距離は移動速度比Rvに応じて増大するが、白色LEDの点灯期間が移動速度比Rvに応じた高速読取時点灯周期が示す期間に短縮されるとともに、点灯光の強度が移動速度比Rvの分だけ乗算した強度に変更され、各ラインセンサにおける反射光の受光時間と当該反射光の強度の積で示される受光量が移動速度の調整前に比して大きく軽減されることが回避される。
【0080】
つまり、ライン周期Tb内に露光ランプから光が照射される原稿における副走査方向の距離(副走査方向幅)が移動速度の調整前に比して等しく維持され、当該副走査方向幅から反射される反射光の受光量が移動速度の調整前に比して大きく軽減されることが回避されるため、当該副走査方向幅分からの反射光が各ラインセンサに入射されて生成される1ライン分の画像データが、移動速度の調整前に比して、画質が劣化することを回避することができる。
【0081】
尚、上記実施形態では、露光ランプは、複数の白色LEDを用いて構成されているものとして説明したが、これに限定する趣旨ではなく、RGB3色の各色の点灯光を発生させるLED、つまり、赤色LED、緑色LED及び青色LEDの3種類のLEDを用いて構成されていてもよい。そして、これに合わせて、読取制御部2は、原稿読取処理において、当該3種類のLEDを同タイミングで点灯及び消灯するように構成してもよい。
【0082】
尚、上記の実施形態では、本発明に係る画像形成装置の一例として複写機を例に説明したが、これに限らず、本発明に係る画像読取装置を備えた、スキャナ、ファクシミリ、又は、コピー機能、スキャナ機能、或いはファクシミリ機能等を兼ね備えた複合機等の画像形成装置であっても構わない。
【0083】
また、本発明は上記の実施形態の構成に限られず種々の変形が可能である。前記図1乃至図6に示した構成及び処理は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を前記実施形態に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0084】
1 複写機(画像形成装置)
21 スキャナ部(画像読取部)
33 制御部
34 読取制御部
35 速度受付部
37 画像データ合成部
60 記録部(動作部)
D 基準ライン距離
Rv 移動速度比
Sr,Sg,Sb ラインセンサ
Tb ライン周期
Vb 基準移動速度
Vh 高速移動速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子の点灯光を原稿に照射する光源部と、前記点灯光のRGB3色の各色成分に対応付けられた3種類のラインセンサを備え、予め定められた前記原稿の1ライン分の読取周期であるライン周期に従って、前記点灯光が照射された際に前記原稿から反射される反射光を前記ラインセンサで受光し、当該受光した反射光に基づいて、前記原稿における当該ラインセンサに対応する色成分の1ライン分の画像データを生成する受光部と、を備えた画像読取部と、
前記原稿の副走査方向に前記画像読取部を相対的に移動させながら前記発光素子を点灯させ、前記画像データを前記受光部に生成させる原稿読取処理を行う読取制御部と、
前記原稿における前記各ラインセンサに対応する色成分の1ライン分の画像データを合成して、前記原稿における1ライン分の画像データを生成する画像データ合成部と、
前記原稿読取処理における前記画像読取部の移動速度を、予め定められた基準移動速度よりも高速な予め定められた高速移動速度に切り替える指示を受け付ける速度受付部と、
を備え、
前記ラインセンサは、前記ライン周期に前記基準移動速度を乗算した結果である基準ライン距離分の副走査方向幅を有し、それぞれ副走査方向に隣接して並列に配置され、
前記読取制御部は、前記速度受付部によって前記高速移動速度に切り替える指示が受け付けられると、前記速度受付部で受け付けられた前記高速移動速度を前記基準移動速度で除算した結果である移動速度比で前記ライン周期を除算して、当該除算した結果を高速読取時点灯周期として定め、前記原稿読取処理において、前記ライン周期から前記高速読取時点灯周期を減算した期間が前記ライン周期における開始時点から経過した時点を点灯開始時点として、前記発光素子を前記点灯開始時点から前記高速読取点灯周期の間、前記点灯光の強度を前記移動速度比の分だけ乗算した強度に変更して点灯させ、
画像データ合成部は、前記速度受付部によって前記高速移動速度に切り替える指示が受け付けられると、前記原稿読取処理において、前記移動速度比が1以上であって3未満の場合には、副走査方向の先頭及び2番目に配置された前記ラインセンサで生成された2色の前記画像データを1ライン分遅延させて、副走査方向の3番目に配置された前記ラインセンサで生成された1ライン分の画像データと合成し、前記移動速度比が3以上の場合には、前記3種類の前記ラインセンサで生成された3色の1ライン分の画像データを何れも遅延させることなく合成する画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置で生成される画像データに基づいて動作を行う動作部と、
を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−119899(P2012−119899A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267257(P2010−267257)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリュ−ションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】