説明

画像読取装置

【課題】光学系ユニットの内部に安定した清浄な空気の流れを供給し、光学部材への塵埃の付着を積極的に防止し、光学部材をメンテナンスフリーとする。
【解決手段】ファンモータ57はフィルタ58を介して装置本体の内部の空気を光学ユニットカバー53内に取り込んで、矢印に示すような経路でスリット49、50の間及びガイド板40の開口40aから光拡散板45に向けて空気を噴出する。これにより、スリット49、50の間と光拡散板45の周辺に空気の強い流れが形成されるため、フィルムFの表面に付着した塵埃の除去、光拡散板45上の塵埃の除去がなされる。除去された塵埃は空気と共に開口から外部に排出される。更に、矢印に示される空気の強い流れによって光学ユニット28の光学部材に付着した塵埃も取り除かれ、光学部材がメンテンナンスフリーとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに形成された画像を読み取る画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は特許文献1、2に開示されている。図3は特許文献1による従来例1の構成図を示している。この従来例1では、フィルムFを読み取る際に光が通過する光拡散板1に塵埃等が付着した時に、装置本体2の内部の光拡散板1の汚れを検知する手段を付設し、この検知された光拡散板1の汚れを払拭し得る図示しない掃除具を備えている。
【0003】
装置本体2の内部において、フィルムFを供給するサプライトレイ3とフィルムを排出するレシーブトレイ4の間に搬送機構5、副走査機構6が設けられ、副走査機構6の上方に光学ユニット7が設けられている。
【0004】
図4は副走査機構6の要部拡大図を示している。第1のローラ対8と第2のローラ対9の間には、主走査方向にそれぞれ開口10a、11aを有する一対のガイド板10、11が、フィルムFの通路の上下両側に配置されている。ガイド板10の上方にスリット12、13が設けられており、下方のガイド板11の開口11aに光拡散板1が取り付けられ、更に光拡散板1の下方にはフィルタ14を介してランプ15が配置されている。
【0005】
ランプ15と光学ユニット7の間に、ランプ15から出射され光拡散板1を透過する光の強度を測定する手段を付設し、フィルムFを搬送しない状態で、ランプ15から光拡散板1に向けて光束を出射し、透過光の強度を測定する。その測定値を、未使用の光拡散板1を取り付けた状態で測定した透過光の強度と比較し、相対値が或る一定値を下回ると検知するような手段を設けることで、光拡散板1の汚れの検知ができる。
【0006】
また、フィルムFを搬送機構5により搬送する場合と同様に、薄い形状の掃除具をガイド板10、11の間に挿入し、この掃除具を光拡散板1の表面に接触させることで、光拡散板1上の汚れを拭き取ることができる。
【0007】
しかし、スリット12、13に付着した塵埃を除去するためには、図5に示すようにスリット12、13を副走査機構6から外した状態でなければならない。
【0008】
従来例2では、装置本体2を分解することなく、スリット12、13に付着した塵埃を除去できるようになっている。図6は図4の側面方向から見た従来例2の断面図であり、スリット12、13に付着した塵埃を除去する手段を示している。スリット12、13の一端には、中空管16が配置され、装置本体2の外部に連通されており、中空管16の空気注入口16aにブロア17のノズル18を挿入されている。
【0009】
ノズル18から中空管16を介してスリット12、13に、ブロワ17で発生した高圧の空気を強く噴射すると、略筒状に構成されたスリット12、13の内側に強い空気の流れが形成され、スリット12、13の内側に付着した塵埃は除去される。更に、スリット12、13から光拡散板1に向けて強い空気の流れが生じ、光拡散板1に付着した塵埃も除去され、除去された塵埃は装置本体2の隙間から外部に放出される。
【0010】
【特許文献1】特開平10−210202号公報
【特許文献2】特開2000−154496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上述の従来例1、2では、塵埃が光学部材に付着する度に装置本体2を分解したり、掃除具やブロア17を用いて塵埃を除去する必要がある。特に、保管状態の悪いフィルムFの読み取りを行った場合には、光学部材に付着した塵埃を頻繁に除去する必要がある。掃除具やブロア17を用いて頻繁に塵埃を除去することは、掃除具やブロア17の劣化を早め、また、装置本体2を分解する際に内部機器を破損してしまう虞れがある。
【0012】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、光学部材に常に清浄な空気の流れを供給し塵埃の付着を積極的に防止することにより、光学部材がメンテナンスフリーとなる画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するための本発明に係る画像読取装置の技術的特徴は、画像を有するフィルムをフィルム供給部から搬送機構により搬送し、搬送経路に配置した光透過部材を介して光源からの光を前記フィルムに照射し、前記フィルムの画像を光学部材を備えた読取光学系により読み取りを行う画像読取装置において、前記読取光学系を画像読み取りに際して光束を通過するスリットを除いてカバーにより密閉し、空気供給手段から前記カバー内に空気を供給して、前記スリットから空気を排出することにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像読取装置によれば、読取光学系内に常に清浄な空気の流れを供給することにより、光学部材への塵埃の付着を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を図1、図2に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例の画像読取装置の構成図である。装置本体21の下部にフィルム供給部開口22が設けられ、フィルムFを積み重ねて収納するサプライトレイ23が、装置本体21に挿着されている。また、装置本体21の上部には同様にフィルム排出部開口24が設けられ、読み取られたフィルムFを受け入れるためのレシーブトレイ25が、装置本体21に挿着されている。
【0016】
サプライトレイ23とレシーブトレイ25の間に搬送機構26、副走査機構27が設けられ、副走査機構27の上方には光学ユニット28が配置されている。また、ファンモータ29がエアフィルタ30を介して装置本体21の筐体に取り付けられている。
【0017】
搬送機構26には、フィルムFをサプライトレイ23からレシーブトレイ25に導くガイド板31、32が、点Cを中心として円弧状に所定の間隙で設けられている。ガイド板31、32の円弧の中心部には、回転搬送部33が点Cを中心に自在に回動できるように設けられ、回転搬送部33にはフィルムFを吸着する吸盤34が付設されている。吸盤34は点Cからの距離を自在に調節できるように設定されており、またサプライトレイ23からフィルムFを吸着して持ち上げ、ガイド板31、32によるフィルム搬送経路の終端でフィルムFを解放するようにされている。
【0018】
副走査機構27には、回転搬送部33の吸盤34により搬送されたフィルムFの前端を受け入れる第1のローラ対35、36と、これらの第1のローラ対35、36により搬送されたフィルムFを受け入れる第2のローラ対37、38とが設けられている。例えば、第1のローラ対35、36は図示しない駆動モータにより駆動され、上部のローラ35、37の間には、それらに接触するプーリ39が介在されている。また、第2のローラ対37、38は第1のローラ対35、36に従動し、フィルムFをレシーブトレイ25に排出するようにされている。
【0019】
図2は副走査機構27と光学ユニット28の拡大図を示している。第1のローラ対35、36と第2のローラ対37、38の間には、一対の平面ガイド板40、41が、フィルムFをそれぞれ上下から挟むように通路を形成しており、これらのガイド板40、41はそれぞれ開口40a、41aを有している。
【0020】
ガイド板40、41の下方には、リフレクタ42付きのランプ43が設けられ、上方への光路上には、熱吸収フィルタ44、ガイド板41の開口41aに取り付けられた光拡散板45、ガイド板40に設けられた開口40aが順次に配置されている。ガイド板40の開口40aの出口方向には、スリット支持部46、47が光学ユニット28の光学基台48の下方に固定され、スリット支持部46、47の下部に設けられたスリット49、50が、ガイド板40の開口40aの近傍に付設されている。また、スリット支持部46、47の外側にはスリットカバー51、52が配置されている。
【0021】
光学ユニット28の光学基台48には開口48aが設けられ、更に光学ユニット28の光学ユニットカバー53の内部には、反射ミラー54が配置され、反射ミラー54の反射方向にはレンズ55、CCD56が配列されている。CCD56の後方の光学ユニットカバー53には、空気を光学ユニットカバー53内に吸引するためのファンモータ57が固定され、その後部にエアフィルタ58が取り付けられている。
【0022】
ファンモータ57による送風は、光学ユニットカバー53の内部、光学基台48の開口48a、スリット支持部46、47の間、スリット49、50の間を通って、ガイド板40の開口40aから光拡散板45に向けて噴出されるようになっている。
【0023】
フィルムFに記録された画像を読み取る際には、搬送機構26の吸盤34が位置aから位置bに下降し、サプライトレイ23に積層された1枚のフィルムFを吸着して位置cまで上昇する。次に、回転搬送部33の回動によりフィルムFをガイド板31、32によって作られる経路に沿って位置dまで搬送し、フィルムFの先端を第1のローラ対35、36に挿入する。そして、吸盤34は位置eに移動した後にフィルムFを解放し、回転搬送部33は最初の位置に戻る。
【0024】
ここでランプ43が点灯し、第1のローラ対35、36はフィルムFを更に搬送し、ガイド板40、41を経て第2のローラ対37、38の間にフィルムFを挿入する。フィルムFがガイド板40、41の間を通過する際に、ランプ43から出射されリフレクタ42で集光された光束は、熱吸収フィルタ44と光拡散板45とを透過してフィルムFに入射する。フィルムFを透過した光束は、スリット49、50の間を通過した後に光学ユニットカバー53内に入り、反射ミラー54で反射され、レンズ55を透過してCCD56に入射する。CCD56においてフィルムFの画像が読み取られ、読み取りが終了したフィルムFは第2のローラ対37、38によりレシーブトレイ25に排出される。
【0025】
この間、ファンモータ29はエアフィルタ30を介して清浄な外気を装置本体21の内部に供給し、装置本体21の内部の空気がフィルム供給部開口22及びフィルム排出部開口24を介して外部に排出されるという空気の流れが形成される。
【0026】
更に、ファンモータ57はフィルタ58を介して装置本体21の内部の空気を光学ユニットカバー53内に取り込んで、図2の矢印に示すような経路でスリット49、50の間及びガイド板40の開口40aから光拡散板45に向けて空気を噴出する。これにより、スリット49、50の間と光拡散板45の周辺に空気の強い流れが形成されるため、フィルムFの表面に付着した塵埃の除去、光拡散板45上の塵埃の除去がなされる。除去された塵埃は、空気と共にフィルム供給部開口22及びフィルム排出部開口24から外部に排出される。
【0027】
更には、フィルムFの表面に付着した塵埃の除去がなされると同時に、図2の矢印に示される空気の強い流れによって、光学ユニット28の光学部材に付着した塵埃も取り除かれ、光学部材がメンテンナンスフリーとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例の画像読取装置の構成図である。
【図2】副走査機構と光学ユニットの拡大図である。
【図3】従来例1の画像読取装置の構成図である。
【図4】従来例1の副走査機構の要部拡大図である。
【図5】従来例1の塵埃を除去するためにスリットを取り外した状態の副走査機構の要部拡大図である。
【図6】従来例2の側方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0029】
21 装置本体
22 フィルム供給部開口
24 フィルム排出部開口
26 搬送機構
27 副走査機構
28 光学ユニット
29、57 ファンモータ
30、58 エアフィルタ
33 回転搬送部
34 吸盤
40、41 ガイド板
43 ランプ
45 光拡散板
48 光学基台
49、50 スリット
53 光学ユニットカバー
54 反射ミラー
55 レンズ
56 CCD
F フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を有するフィルムをフィルム供給部から搬送機構により搬送し、搬送経路に配置した光透過部材を介して光源からの光を前記フィルムに照射し、前記フィルムの画像を光学部材を備えた読取光学系により読み取りを行う画像読取装置において、前記読取光学系を画像読み取りに際して光束を通過するスリットを除いてカバーにより密閉し、空気供給手段から前記カバー内に空気を供給して、前記スリットから空気を排出することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記スリットの近傍に前記光透過部材を配置したことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記空気供給手段は前記カバーに取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記空気供給手段はフィルタを通した清浄な空気を供給することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記空気供給手段はファンモータとしたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記光透過部材は光拡散板としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−150815(P2007−150815A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343486(P2005−343486)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】