説明

画像読取装置

【課題】プッシュスキャンを実施する上で,画像データの安全性を向上させた画像読取装置を提供すること。
【解決手段】MFP100は,ユーザによるプッシュスキャン指示を受け,画像データの送信先PCを選択する(S101)。その後,原稿を読み取り(S103),その原稿の画像データを一時的に保存する(S104)。そして,画像データの送信が可能な状態となった後,所定の条件を満たすまで,読み取った画像データの送信を遅延する。つまり,送信先PCが使用状態であると判断するまで待機し(S121:YES),使用状態となったところで画像データの送信を開始する(S123)。あるいは,所定の遅延時間が経過するまで待機した後,画像データの送信を開始するとしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,原稿を読み取る画像読取装置に関する。さらに詳細には,原稿を読み取った後,その読み取った原稿の画像データを,指定された外部装置に送信する機能を有する画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,画像読取装置では,ユーザが画像読取装置を操作することで,原稿の読み取りと,読み取った画像データの外部装置への送信とを連続して行う,いわゆるプッシュスキャンと呼ばれる技術がある。このプッシュスキャンを実施する際,実施を指示したユーザが画像読取装置の場所から外部装置(例えば,パーソナルコンピュータ(PC))の場所まで戻るのに時間を要することが考えられる。そのため,読み取った画像データを外部装置へ送信した後に,第三者にその画像データを盗み取られるおそれがある。そこで,例えば,特許文献1には,読み取った画像データを送信する際にパスワードを付加することでセキュリティ機能を強化した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−87025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の画像読取装置には,次のような問題があった。すなわち,特許文献1のように,画像データにパスワードを付与した場合であっても,画像データの受け渡しは原稿の読み取り後に即時に行われる。そのため,外部装置は,プッシュスキャンを指示したユーザが不在の状況で画像データを受け取る可能性が高い。このことから,画像データの持ち去りや不正消去が容易な状況にあることは否めない。
【0005】
本発明は,前記した従来の画像読取装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,プッシュスキャンを実施する上で,画像データの安全性を向上させた画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた画像読取装置は,原稿を読み取る読取部と,読取部で読み取った原稿の画像データの送信を指示する指示部と,指示部からの指示を契機に,読取部で読み取った原稿の画像データを,指定された外部装置へ送信する送信部と,送信部による画像データの送信が可能であるときに,送信先の外部装置が使用状態であると判断するまで送信部による送信を遅延させる第1遅延処理を行う遅延部とを備えることを特徴としている。
【0007】
本発明の画像読取装置は,原稿の画像データの送信を指示し,その指示を契機に原稿の画像データを外部装置に送信する。そして,画像データを送信する際,画像データの送信が可能な状態となった後,第1遅延処理によって,所定の条件を満たすまで画像データの送信を遅延する。つまり,本発明の画像読取装置では,読み取った後に即時に画像データを送信せず,ユーザが外部装置に戻った可能性が高いと判断できる時間まで待機し,その後に画像データを送信する。これにより,送信先の外部装置の前にユーザが不在の状況で画像データを受け取る可能性が低くなり,第三者の画像データへの不正アクセスが抑制される。
【0008】
具体的に,第1遅延処理では,外部装置が使用状態であると判断したことを条件に画像データを送信する。「使用状態である」状態とは,ユーザが外部装置を操作していることが認識できる状態であり,例えば,スクリーンセーバが解除された状態(つまり,スクリーンセーバが動作していない状態)が該当する。すなわち,送信先の外部装置が使用状態であれば,送信相手(送信者が自身の外部装置を指定した場合には送信者本人)が外部装置の前にいる可能性が高いと判断できる。そこで,外部装置が使用状態となるまで画像データの送信を遅延することで,その外部装置を使用している送信相手の下に確実に画像データが届くことが期待できる。
【0009】
また,本発明の画像読取装置は,送信対象のユーザを指定する相手指定部と,送信先の外部装置にログインユーザを問い合わせる問合部とを備え,遅延部による第1遅延処理では,相手指定部にて指定されたユーザが問合部によって得られたログインユーザと一致する場合には,送信先の外部装置の使用状態を判断し,一致していない場合には,送信先の外部装置の使用状態を判断しないとよい。すなわち,送信相手となるユーザがログインしていない状態で画像データを送信してしまうと,第三者に画像データが渡ってしまうことが考えられる。そこで,送信先の外部装置のログインユーザを確認した上で,送信の可否を判断する。すなわち,送信対象のユーザが送信先の外部装置のログインユーザでなければ,外部装置の使用状態の判断を行わず,それに伴って画像データの送信を待機する。これにより,安全性がより向上する。
【0010】
また,遅延部による第1遅延処理では,送信先の外部装置が使用状態となるまで送信先の外部装置の使用状態を繰り返し判断するとよい。すなわち,送信先の外部装置の使用状態の判断を,一回だけではなく,リトライを可能にすることで,画像データが送信される可能性が高くなる。
【0011】
また,上記の画像読取装置では,遅延部が制限時間内に送信先の外部装置が使用状態であると判断できなかったことに応じて,画像データを削除する削除部を備えるとよい。すなわち,送信が取り消された画像データを画像読取装置が保有し続けることは,画像データの漏洩の危険を招く。また,メモリの無駄が多くなる。そのため,送信が取り消された画像データをメモリから削除することで,これらの問題の回避が期待できる。
【0012】
また,本発明の別の画像読取装置は,原稿を読み取る読取部と,読取部で読み取った原稿の画像データの送信を指示する指示部と,指示部からの指示を契機に,読取部で読み取った原稿の画像データを,指定された外部装置へ送信する送信部と,送信部による画像データの送信が可能であるときに,所定の遅延時間が経過するまで送信部による送信を遅延させる第2遅延処理を行う遅延部とを備えることを特徴としている。
【0013】
上記の画像読取装置は,原稿の画像データの送信を指示し,その指示を契機に原稿の画像データを外部装置に送信する。そして,画像データを送信する際,画像データの送信が可能な状態となった後,第2遅延処理によって,所定の条件を満たすまで画像データの送信を遅延する。つまり,本発明の画像読取装置では,読み取った後に即時に画像データを送信せず,ユーザが外部装置に戻った可能性が高いと判断できる時間まで待機し,その後に画像データを送信する。これにより,送信先の外部装置の前にユーザが不在の状況で画像データを受け取る可能性が低くなり,第三者の画像データへの不正アクセスが抑制される。
【0014】
具体的に,第2遅延処理では,所定の遅延時間の経過を条件に画像データを送信する。すなわち,送信者が自身の外部装置で画像データを受け取る場合,所定の遅延時間が経過するまで送信を待機することで,送信者が外部装置の前まで戻れる可能性が高くなる。そこで,遅延時間が経過するまで画像データの送信を遅延することで,その外部装置を使用している送信者の下に画像データが届くことが期待できる。なお,「所定の遅延時間」は,送信指示前にユーザによって入力されたものであってもよいし,あらかじめユーザごとに設定されたものであってもよいし,装置に設定された1つの固定値であってもよい。
【0015】
また,本発明の画像読取装置は,画像データの送信を指示するユーザを指定する指示者指定部と,送信先の外部装置にログインユーザを問い合わせる問合部とを備え,遅延部による第2遅延処理では,指示者指定部にて指定されたユーザと外部装置にログインしているユーザとが一致する場合には,遅延時間の経過を待って遅延終了とし,一致しない場合には,遅延時間の経過前に遅延終了とするとよい。すなわち,画像データの送信を指示する送信者と送信先の外部装置にて画像データを受信する受信者とが異なる場合には,送信者が外部装置に戻るまでの時間を考慮する必要がない。そのため,送信者と受信者とが異なる場合には即時に送信する方が好ましい。
【0016】
また,上記の画像読取装置は,画像読取装置が多数のユーザによって使用されているか否かを判断する判断部を備え,遅延部による第2遅延処理では,判断部にて多数のユーザによって使用されていると判断された場合には,遅延時間の経過を待って遅延終了とし,判断部にて多数のユーザによって使用されていないと判断された場合には,遅延時間の経過前に遅延終了とするとよい。多数のユーザが使用していない状況としては,例えば,あらかじめ指定された夜間の時間帯,最後にスキャンがあった時刻からの経過時間が一定時間以上,画像読取装置に現在接続している外部装置の数が所定置以下,がある。すなわち,画像読取装置が多数のユーザによって使用されていない場合には,画像データを持ち去られる危険性が低い。そのような場合は,即時に画像データを送信することで,早期に画像データを利用可能になる方が好ましい。
【0017】
また,上記の画像読取装置は,遅延時間をユーザによって設定可能な設定部を備えるとよい。すなわち,遅延時間を自由に設定できることで,ユーザごとに適切な遅延時間を設定可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,プッシュスキャンを実施する上で,画像データの安全性を向上させた画像読取装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態にかかる複合機の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態にかかる複合機の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】第1の形態にかかるプッシュスキャン処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】第2の形態にかかるプッシュスキャン処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】遅延時間設定画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,本発明にかかる画像読取装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,ユーザが画像読取装置を操作することで,原稿の読み取りと,読み取った原稿の画像データの外部装置への送信とを連続して行う,プッシュスキャン機能を有する複合機(MFP:Multi Function Peripheral )に本発明を適用したものである。
【0021】
[MFPの全体構成]
実施の形態のMFP100は,図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部10と,原稿の画像を読み取る画像読取部20とを備えている。また,画像読取部20の前面側には,液晶ディスプレイからなる表示部41と,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群42とを備えた操作パネル40が設けられ,この操作パネル40により動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。
【0022】
画像形成部10は,パーソナルコンピュータ(PC)等の情報端末装置から送られてくる画像データや画像読取部20で読み取った原稿の画像データを基に画像を形成し,当該画像を用紙に印刷する。画像形成方式は,電子写真方式であってもインクジェット方式であってもよい。また,カラー画像に対応するものであってもモノクロ画像専用であってもよい。本形態のMFP100は,電子写真方式のカラー画像形成装置とする。
【0023】
画像読取部20は,原稿台にセットされた原稿を読み取って画像データを作成する。また,画像読取部20は,MFP100の最上部となる位置に,原稿の自動搬送を行うADF(Auto Document Feeder)を備えており,複数枚の原稿を連続して読み取ることができる。
【0024】
また,MFP100は,ユーザが画像読取装置を操作することで,原稿の読み取りと,読み取った原稿の画像データの外部装置への送信とを連続して行う,プッシュスキャン機能を有している。プッシュスキャンの詳細手順については後述する。
【0025】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,図2に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM34と,ASIC35と,ネットワークインターフェース36(送信部の一例)と,FAXインターフェース37とを備えた制御部30を有している。また,制御部30のASIC35は,画像形成部10,画像読取部20,操作パネル40等と電気的に接続されている。
【0026】
CPU31は,MFP100における画像読取機能,画像形成機能等の各種機能を実現するための演算を実行し,制御の中枢となるものである。ROM32には,MFP100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。NVRAM(Non Volatile RAM)34は,不揮発性を有する記憶手段であって,各種設定ないし画像データ等を保存する記憶領域として利用される。
【0027】
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,MFP100の各構成要素(例えば,画像形成部10を構成する露光装置の点灯タイミング,用紙の搬送路を構成する各種ローラの駆動モータ(不図示),画像読取部20を構成するイメージセンサユニットの移動用モータ(不図示))を制御する。
【0028】
ネットワークインターフェース36は,インターネット等のネットワークに接続され,PC等の情報処理装置との接続を可能にしている。FAXインターフェース37は,電話回線に接続され,相手先のFAX装置との接続を可能にしている。そして,ネットワークインターフェース36やFAXインターフェース37を介して他の情報処理装置とジョブのやりとりを行うことができる。
【0029】
本形態では,ネットワーク60を介して,MFP100とPC101,102とが接続されている。このPC101,102が,プッシュスキャンを実行する際の,送信先の外部装置となりえる。なお,MFP100と接続する外部装置は,PC101,102に限るものではない。
【0030】
[プッシュスキャン処理]
続いて,MFP100のプッシュスキャン処理について説明する。MFP100のプッシュスキャン処理では,原稿を読み取った後,即時に画像データを送信せずに,所定の条件を満たすまで画像データの送信を遅延させる。以下の説明では,画像データの送信を遅延させる条件が異なる2つの形態のプッシュスキャン処理について説明する。なお,このプッシュスキャン処理は,制御部30の各構成要素が動作することによって実現される。
【0031】
[第1の形態]
始めに,第1の形態のプッシュスキャン処理(読取部,指示部,送信部,遅延部(第1遅延処理),相手指定部,問合部,削除部の一例)について,図3のフローチャートを参照しつつ説明する。本プッシュスキャン処理は,ユーザの操作パネル40の操作等によるプッシュスキャン実行指示を受け付けたことを契機に実行される。
【0032】
まず,送信先となるPC(以下,「送信先PC」とする)の選択を受け付ける(S101)。送信先PCの受け付けは,例えば,MFP100に登録されているPC名を表示部41に列挙し,ユーザに送信先PCを選択させる。あるいは,現在MFP100に接続されているPCを検知し,その結果を列挙して選択させてもよい。あるいは,送信先PCのIPアドレスを直接入力させてもよい。
【0033】
次に,送信相手の認識情報(以下,「送信相手ID」とする)の入力を受け付ける(S102)。送信相手IDとしては,例えば,送信相手が送信先PCにログインするためのユーザIDやパスワードが該当する。
【0034】
その後,ユーザのスキャン開始指示を契機に,画像読取部20による原稿の読み取りを開始する(S103)。スキャン開始指示は,例えば,スタートキーの押下が該当する。原稿を読み取った後は,その原稿の画像データをRAM33に一時的に保存する(S104)。
【0035】
画像データの保存後は,S101で選択された送信先PCに対して,ログイン中のユーザの識別情報(以下,「ログインユーザID」とする)を問い合わせる(S105)。そして,取得したログインユーザIDが,S102で入力された送信相手IDと一致するか否かを判断する(S106)。すなわち,送信先PCが送信相手の権限で使用されているか否かを確認する。
【0036】
ログインユーザIDと送信相手IDとが一致しない場合には(S106:NO),制限時間が経過したか否かを判断する(S107)。そして,制限時間内であれば(S107:NO),S105に戻って再度ログインユーザIDを問い合わせる。すなわち,ログインユーザIDと送信相手IDとが一致しない状況では,意図しないユーザに画像データを送信してしまう可能性が高い。そのため,このような状況では,後述する送信先PCの使用状態を判断せず,それに伴って画像データの送信を待機する。なお,一回の判断で画像データの送信を取り消してしまうと画像データが送信される可能性が低くなってしまう。そこで,制限時間内ではリトライを可能にして画像データが送信される可能性を高める。
【0037】
また,制限時間を経過してしまった場合(S107:YES)には,S104で保存した画像データをメモリから削除する(S108)。そして,プッシュスキャン処理が取り消された旨を送信先PCに通知し(S109),本処理を終了する。すなわち,長期間,送信先PCの状態を問い合わせ続けると,MFP100の処理負荷やネットワーク60への負荷が大きい。また,MFP100を使用する他ユーザへのストレスが大きい。また,ログインユーザIDと送信相手IDとが一致しない状況が長期間続く場合には,送信相手が不在であったり,誤った送信先PCあるいは送信相手IDを入力してしまっていることが考えられる。そのため,所定の制限時間を経過した場合には,プッシュスキャン処理を取り消し,MFP100の負荷や他のユーザのストレスの軽減を図る。
【0038】
一方,ログインユーザIDと送信相手IDとが一致する場合には(S106:YES),その送信先PCに対してスクリーンセーバが動作中であるか否かを問い合わせる(S121)。すなわち,スクリーンセーバが動作中ということは,送信先PCでは一定時間以上入力作業が行われていない,もしくは送信相手が不在になる際にスクリーンセーバを動作させた状況等であることを意味する。このことから,送信相手が送信先PCの前にいる可能性が低い。そのため,スクリーンセーバが動作中の場合には(S121:YES),S107に移行し,スクリーンセーバが解除されるまで動作判断を繰り返す。
【0039】
一方,スクリーンセーバが動作していない場合には(S121:NO),送信先PCで入力操作が行われており,送信相手が送信先PCの前にいる可能性が高い。そこで,S104で保存した画像データを送信先PCに送信する(S123)。送信後は,その画像データをメモリから削除し(S124),本処理を終了する。
【0040】
以上詳細に説明したように第1の形態のプッシュスキャン処理では,原稿を読み取り,画像データの送信が可能になった状態で,画像データの送信を待機する。そして,送信先PCのスクリーンセーバが動作していないことを条件に,画像データの送信を開始する。すなわち,送信先PCでスクリーンセーバが動作してなければ,送信相手が送信先PCの前にいる可能性が高い。そこで,送信先PCのスクリーンセーバの動作が解除されるまで画像データの送信を遅延する。これにより,送信先PCが,送信者が不在の間に画像データを受け取る可能性が低くなり,送信先PCを使用している送信相手の下に確実に画像データが届くことが期待できる。
【0041】
なお,図3に示したプッシュスキャン処理では,スクリーンセーバが動作中であれば送信先PCが使用状態であると見做し,スクリーンセーバの動作状況によって画像データの送信可否を判断しているが,送信先PCの前に,送信相手がいることを確認する判断材料としては,スクリーンセーバの動作に限るものではない。例えば,送信先PCの音楽プレイヤ等の特定のアプリケーションが動作している状況に応じて判断する方法や,スクリーンセーバが動作していない場合であっても,送信先PCの入力部(マウスやキーボード)等の操作を検知したことに応じて判断する方法等が考えられる。
【0042】
また,送信先PCのスクリーンセーバとしては,スクリーンセーバの解除にパスワードの入力を要求する認証機能付きスクリーンセーバであるとよい。認証機能付きスクリーンセーバであれば,第三者によるスクリーンセーバの解除が制限される。従って,第三者による画像データの持ち去りが困難になる。その結果,プッシュスキャンを指示したユーザ自身が画像データを受け取る場合であっても,送信先PCに戻るまでに第三者にスクリーンセーバを解除され,画像データが持ち去られてしまう危険を低減できる。
【0043】
[第2の形態]
続いて,第1の形態のプッシュスキャン処理(読取部,指示部,送信部,遅延部(第2遅延処理),指示者指定部,問合部,判断部,設定部の一例)について,図4のフローチャートを参照しつつ説明する。本プッシュスキャン処理は,ユーザの操作パネル40の操作等によるプッシュスキャン実行指示を受け付けたことを契機に実行される。なお,第1の形態と同様の処理については同じステップ番号を付している。
【0044】
まず,送信先PCの選択を受け付ける(S101)。次に,プッシュスキャンの実行を指示したユーザの識別情報(以下,「送信者ID」とする)の入力を受け付ける(S201)。送信者IDとしては,例えば,送信者が送信先PCにログインするためのユーザIDやパスワードが該当する。
【0045】
その後,画像データの送信を遅延させる遅延時間を設定する(S202)。遅延時間の設定は,表示部41に図5に示すような遅延時間設定画面を表示し,ユーザに設定を促す。本形態の遅延時間設定画面では,遅延時間を設定するか否か,さらには遅延時間を設定する場合には遅延する時間(遅延時間)を設定する。
【0046】
その後,ユーザのスキャン開始指示を契機に,画像読取部20による原稿の読み取りを開始する(S103)。原稿を読み取った後は,その原稿の画像データをRAM33に一時的に保存する(S104)。
【0047】
画像データの保存後は,S101で選択された送信先PCに対して,ログインユーザIDを問い合わせる(S105)。そして,取得したログインユーザIDが,S201で入力された送信者IDと一致するか否かを判断する(S206)。すなわち,送信先PCが送信者の権限で使用されているか否かを確認する。
【0048】
ログインユーザIDと送信者IDとが一致しない場合には(S206:NO),S104で保存した画像データを送信する(S123)。すなわち,ログインユーザIDと送信者IDとが一致しない状況では,送信者は送信者以外のユーザに画像データの送信を望んでいる可能性が高い。そのため,このような状況では,遅延時間の経過を待たずに,即時に画像データの送信を送信する。送信後は,その画像データをメモリから削除し(S124),本処理を終了する。
【0049】
一方,ログインユーザIDと送信者IDとが一致する場合には(S206:YES),画像データの送信を遅延する必要があるか否かを判断する(S221)。すなわち,MFP100が多数のユーザに使用されている可能性が低い状況や,送信者が遅延送信を望まない状況では,送信を遅延させる必要はない。多数のユーザに使用されている可能性が低い状況としては,例えば,あらかじめ定められた夜間の時間帯,MFP100の使用頻度が低い(例えば,最後のスキャン処理から一定時間以上経過している),S101で選択した送信先PCしかMFP100に接続されていないことが考えられる。これらの状況では,画像データを他人に持ち去られる可能性が極めて低い。また,送信者が遅延送信を望まない状況としては,S202の遅延時間設定で,遅延送信しないことが選択されたことが考えられる。そして,遅延の必要がないと判断した場合には(S221:NO),即時に画像データを送信する(S123)。
【0050】
一方,遅延の必要があると判断した場合には(S221:YES),画像データの送信準備が完了した時点から計時を開始した時間が,S202で設定した遅延時間を経過したか否かを判断する(S222)。画像データの送信準備が完了した時点としては,例えば,S104での画像データの保存が完了した時点,S206でのログインユーザIDと送信者IDとが一致したことを確認した時点が該当する。遅延時間の経過前の段階では(S222:NO),遅延時間が経過するまで待機する。
【0051】
一方,遅延時間を経過した場合には(S222:YES),送信者が送信先PCの場所まで戻り,送信先PCの前にいる可能性が高い。そこで,S104で保存した画像データを送信先PCに送信する(S123)。送信後は,その画像データをメモリから削除し(S124),本処理を終了する。
【0052】
以上詳細に説明したように第2の形態のプッシュスキャン処理では,原稿を読み取り,画像データの送信が可能になった状態で,画像データの送信を待機する。そして,遅延時間の経過を条件に,画像データの送信を開始する。すなわち,遅延時間が経過するまで待機することで,送信者が自身のPCに戻れる可能性が高くなる。そこで,遅延時間が経過するまで画像データの送信を遅延する。これにより,送信者が戻るまでの間に第三者に画像データを持ち去られる可能性が低くなり,送信者の下に画像データが届くことが期待できる。
【0053】
また,第2の形態のプッシュスキャン処理では,画像データの送信を遅延するにあたって,送信先PCの使用状態を問い合わせる必要はない。つまり,単に時間の経過を待つだけでよい。そのため,構成がシンプルであり,ネットワーク60への負荷も少ない。
【0054】
なお,図4に示したプッシュスキャン処理では,遅延時間をユーザが自由に設定できるが,この遅延時間はあらかじめ設定された固定時間であってもよい。また,送信者IDごとにあらかじめ登録された時間であってもよい。
【0055】
また,第1の形態および第2の形態を含む本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,複合機(MFP)に限らず,コピー機,スキャナ等,画像読取機能を備えるものであれば適用可能である。また,画像形成部の画像形成方式は,電子写真方式であっても,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。また,画像の送信先の外部装置についても,PCに限るものではない。例えばサーバ,携帯情報端末であってもよい。
【0056】
また,MFP100は,第1の形態によるプッシュスキャン処理と,第2の形態によるプッシュスキャン処理との,少なくとも一方の実施が可能であればよい。また,第1の形態によるプッシュスキャン処理と,第2の形態によるプッシュスキャン処理との,両方の実施が可能であり,選択的にいずれか一方の処理が実行されてもよい。
【0057】
また,MFP100から送信される画像データにパスワードを付与してもよい。すなわち,画像データの内容を表示する際にパスワードの入力を要求することで,画像データの安全性がより高まる。
【0058】
また,MFP100が画像データの送信を遅延させる条件として,MFP100のメモリがフルであるか否かを追加してもよい。すなわち,メモリの空き容量が少ない場合には,遅延送信するために画像データを記憶し続けると,MFP100の他の処理に支障を来すおそれがある。そこで,メモリフルの状況では,他の遅延条件よりも優先して,即時送信とするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 画像形成部
20 画像読取部
30 制御部
40 操作パネル
41 表示部
100 MFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取る読取部と,
前記読取部で読み取った原稿の画像データの送信を指示する指示部と,
前記指示部からの指示を契機に,前記読取部で読み取った原稿の画像データを,指定された外部装置へ送信する送信部と,
前記送信部による画像データの送信が可能であるときに,送信先の外部装置が使用状態であると判断するまで前記送信部による送信を遅延させる第1遅延処理を行う遅延部と,
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載する画像読取装置において,
送信対象のユーザを指定する相手指定部と,
送信先の外部装置にログインユーザを問い合わせる問合部とを備え,
前記遅延部による前記第1遅延処理では,前記相手指定部にて指定されたユーザが前記問合部によって得られたログインユーザと一致する場合には,送信先の外部装置の使用状態を判断し,一致していない場合には,送信先の外部装置の使用状態を判断しないことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する画像読取装置において,
前記遅延部による前記第1遅延処理では,送信先の外部装置が使用状態となるまで送信先の外部装置の使用状態を繰り返し判断することを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載する画像読取装置において,
前記遅延部が制限時間内に送信先の外部装置が使用状態であると判断できなかったことに応じて,前記画像データを削除する削除部を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
原稿を読み取る読取部と,
前記読取部で読み取った原稿の画像データの送信を指示する指示部と,
前記指示部からの指示を契機に,前記読取部で読み取った原稿の画像データを,指定された外部装置へ送信する送信部と,
前記送信部による画像データの送信が可能であるときに,所定の遅延時間が経過するまで前記送信部による送信を遅延させる第2遅延処理を行う遅延部と,
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項5に記載する画像読取装置において,
画像データの送信を指示するユーザを指定する指示者指定部と,
送信先の外部装置にログインユーザを問い合わせる問合部とを備え,
前記遅延部による前記第2遅延処理では,前記指示者指定部にて指定されたユーザと前記外部装置にログインしているユーザとが一致する場合には,前記遅延時間の経過を待って遅延終了とし,一致しない場合には,前記遅延時間の経過前に遅延終了とすることを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
請求項6に記載する画像読取装置において,
前記画像読取装置が多数のユーザによって使用されているか否かを判断する判断部を備え,
前記遅延部による前記第2遅延処理では,前記判断部にて多数のユーザによって使用されていると判断された場合には,前記遅延時間の経過を待って遅延終了とし,前記判断部にて多数のユーザによって使用されていないと判断された場合には,前記遅延時間の経過前に遅延終了とすることを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載する画像読取装置において,
前記遅延時間をユーザによって設定可能な設定部を備えることを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−252086(P2010−252086A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99911(P2009−99911)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】