説明

画像読取装置

【課題】特定の1色のみを受光する光源変換素子を要することなく、裏面画像での反射光による裏写りの影響を抑制することが可能な技術を開示する。
【解決手段】画像読取装置1は、予め定められた読取領域に位置する原稿Mの一方面に向けて光を出射する光源41と、原稿の他方面に向けて光を出射する光源31と、光源31から出射され原稿で反射した光、及び、光源41から出射され原稿を透過した光の両方を受光する受光部42と、光源31と光源41とに互いに補色の関係を有する異なる色の光を原稿にそれぞれ出射させ、受光部に当該受光部の受光結果に基づく画像読取データを出力させる読取制御部11と、を備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿に光を照射し、その反射光の受光結果に基づき画像読取データを出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ、ファクシミリ装置やコピー機などの画像読取装置では、原稿の読取対象面である表面の画像を読み取る際に、裏面の画像が透けて表面の画像と共に読み取ってしまう、いわゆる裏写りが発生することがある。特に、原稿の一方面読取用の光源及び受光素子と、他方面読取用の光源及び受光素子とが原稿を介して対向配置される両面読取方式では、一方面読取用の光源から照射され原稿の一方面画像で反射した光だけでなく、他方面読取用の光源から照射され原稿を透過した光も、一方面読取用の受光素子にて受光されるため、裏写りの影響が顕著に現れる。
【0003】
そこで、従来、両面読取方式において裏写りを防止することを目的とした画像読取装置がある(特許文献1参照)。この従来の画像読取装置では、一方面読取用と他方面読取用との一対の密着型イメージセンサが、原稿を介して対向配置されており、各密着型イメージセンサは、光源と光源変換素子とをRGB各色毎に有している。各色の光源変換素子は、当該色の光源に対応した感度をもつ、換言すれば、当該色の光のみを受光する。両面読取時には、一方面読取用の光源と他方面読取用の光源とから互いに異なる色の光が発光され、その発光した各光源に対応した光源変換素子の出力のみが有効にされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−166213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の画像読取装置では、特定の1色のみを受光する光源変換素子を利用する必要がある。また、同画像読取装置では、同じ光源変換素子に、それに対応する光源から出射され原稿の表面画像で反射した光だけでなく、同光源から出射され裏面画像で反射した光もそのまま受光されるため、裏面画像で反射した光による裏写りの影響を抑制できないという問題がある。
【0006】
本明細書では、特定の1色のみを受光する光源変換素子を要することなく、裏面画像での反射光による裏写りの影響を抑制することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される画像読取装置は、予め定められた読取領域に位置する原稿の一方面に向けて光を出射する第1発光部と、前記原稿の他方面に向けて光を出射する第2発光部と、前記第1発光部から出射され前記原稿で反射した光、及び、前記第2発光部から出射され前記原稿を透過した光の両方を受光する受光部と、前記第1発光部と前記第2発光部とに互いに補色の関係を有する異なる色の光を前記原稿にそれぞれ出射させ、前記受光部に当該受光部の受光結果に基づく画像読取データを出力させる読取制御部と、を備える。
【0008】
上記画像読取装置では、前記第1発光部、及び、前記受光部としての第1受光部を有する第1読取デバイスと、前記第2発光部、及び、前記第2発光部から出射され前記原稿で反射した光、及び、前記第1発光部から出射され前記原稿を透過した光の両方を受光する第2受光部を有する第2読取デバイスと、を備え、前記読取制御部は、前記第1発光部と前記第2発光部とに互いに補色の関係を有する異なる色の光を前記原稿にそれぞれ出射させ、前記第1受光部に、当該第1受光部の受光結果に基づく前記原稿の一方面の画像読取データを出力させ、前記第2受光部に、当該第2受光部の受光結果に基づく前記原稿の他方面の画像読取データを出力させる両面読取処理を実行する構成でもよい。
【0009】
上記画像読取装置では、前記読取制御部は、前記第1発光部と前記第2発光部とに互いに補色の関係を有する異なる色の光を前記原稿にそれぞれ出射させ、前記第1受光部だけに当該第1受光部の受光結果に基づく前記原稿の一方面の画像読取データを出力させる片面読取処理を実行する構成でもよい。
【0010】
上記画像読取装置では、前記第1発光部及び前記第2発光部のそれぞれは、複数の色の光を出射する構成であり、前記読取制御部は、前記第1発光部及び前記第2発光部のそれぞれから前記複数の色の光を時分割で出射させ、且つ、前記第1発光部と前記第2発光部とで同時期に互いに補色の関係を有する光を出射させる構成でもよい。
【0011】
上記画像読取装置では、前記第1発光部は、ブルー、グリーン、レッドの3色の光を出射する構成であり、前記第2発光部は、シアン、マゼンタ、イエローの3色の光を出射する構成である。
【0012】
上記画像読取装置では、前記第2発光部は、ブルー、グリーン、レッドの光をそれぞれ出射する3つの発光素子を有する構成であり、前記読取制御部は、ブルー及びグリーンの発光素子を点灯させてシアンの光を、グリーン及びレッドの発光素子を点灯させてイエローの光を、レッド及びブルーの発光素子を点灯させてマゼンタの光をそれぞれ前記第2発光部から出射させる構成でもよい。
【0013】
なお、この発明は、制御装置、制御方法、画像読取方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定の1色のみを受光する光源変換素子を要することなく、裏面画像での反射光による裏写りの影響を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1の画像読取装置1の概略的な内部構成図
【図2】画像読取部24の概略的な構成図(原稿無し)
【図3】画像読取装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図4】画像読取に関する制御処理を示すフローチャート
【図5】原稿Mが存在する場合における画像読取部24の概略的な構成図
【図6】読取デバイスの発光タイミング及び読取データの出力タイミングを示すタイムチャート
【図7】読取対象面の画像に基づく読取データ出力結果を示す説明図
【図8】非読取対象面の画像に基づく読取データ出力結果を示す説明図
【図9】実施形態2の読取デバイスの発光タイミング及び読取データの出力タイミングを示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
実施形態1を図1から図8を参照しつつ説明する。以下の説明では、図1,図2,図6中の符号Xが付された方向が画像読取装置1の前方向であり、符号Yが付された方向が右方向であり、符号Zが付された方向が上方向であるものとする。また、図6、図7、図8、図9中のR、G、B、C、M、Yはレッド、グリーン、ブルー、シアン、マゼンタ、イエローをそれぞれ意味し、図7、図8の上段に示すように、各色には互いに異なる各種のハッチングがそれぞれ対応付けられている。なお、画像読取装置1の一例としては、スキャナ単体、ファクシミリ装置、コピー機、スキャナ機能及びコピー機能等の複数機能を有する複合機などが挙げられる。
【0017】
1.画像読取装置の機械的構成
図1は画像読取装置1の概略的な内部構成図である。画像読取装置1は、原稿トレイ2と、本体部3と、排出トレイ4と、を含む。この画像読取装置1は、原稿トレイ2に載置された原稿Mを本体部3内に搬送しつつ、その搬送中の原稿M上の画像を、本体部3内に設けられた画像読取部24により読み取り、その画像が読み取られた原稿Mを排出トレイ4に排出するシートフィードスキャナである。なお、原稿Mは、紙製に限らずプラスチック製などでもよい。
【0018】
原稿トレイ2は、前側が下方に傾斜した状態で、本体部3の後側に設けられている。原稿トレイ2の左右の両端部には、図示しない一対のガイドが左右方向に移動可能に設けられている。一対のガイドは、例えばユーザにより押し広げられ、又は押し狭められることにより、一対のガイド間の距離が原稿の左右方向の幅と等しくなるよう調整可能であり、それらのガイドの間に1または複数の原稿Mが配置される。
【0019】
本体部3の内部には、原稿トレイ2の前端から排出トレイ4の後端まで延びる搬送経路22が設けられている。また、この搬送経路22の周辺に、ピックアップローラ20と、分離パッド21と、フィードローラ23と、画像読取部24と、排出ローラ25と、フロントセンサ26、リヤセンサ27とが設けられている。
【0020】
ピックアップローラ20は、原稿トレイ2の前側に配置され、原稿トレイ2に載置された1または複数枚の原稿Mを、摩擦力により、本体部3の内部へと引き込む。分離パッド21は、ピックアップローラ20に対向するように配置され、摩擦力により、複数枚の原稿Mを1枚ずつ分離する。これにより、原稿Mが1枚ずつ本体部3の内部へと搬送される。
【0021】
フィードローラ23は、ピックアップローラ20等よりも搬送経路22の下流側に設けられ、図示しないモータにより駆動され、搬送経路22上に存在する原稿Mを前方へと搬送する。画像読取部24は、フィードローラ23よりも搬送経路22の下流側に設けられ、そのフィードローラ23による搬送中の原稿Mの画像を読み取る。
【0022】
排出ローラ25は、画像読取部24よりも搬送経路22の下流側に設けられ、画像読取部24にて画像読取処理がされた原稿Mを、本体部3の外部に送り出す。排出トレイ4は本体部3の前側に設けられ、その排出トレイ4に、本体部3の外部に送り出された原稿Mが積層される。なお、搬送経路22、ピックアップローラ20、フィードローラ23、排出ローラ25が搬送機構28を構成する。
【0023】
フロントセンサ26は、原稿トレイ2の前端側に設けられ、原稿トレイ2上に配置されている原稿Mの有無を検知し、その検知結果に応じた検知信号SG1を出力する。リヤセンサ27は、搬送経路22途中に存在する原稿Mの有無を検知し、その検知結果に応じた検知信号SG2を出力する。なお、フロントセンサ26、リヤセンサ27は、例えば、圧力センサなどの接触式センサでも、光学センサや磁気センサなどの非接触式センサでもよい。
【0024】
2.画像読取部の構成
図2は画像読取部24の概略的な構成図である。画像読取部24は、上面用読取デバイス30と下面用読取デバイス40とが搬送経路22を挟んで対向配置された構成とされている。両読取デバイス30,40は、搬送経路22の搬送方向においてお互いに相対移動不能に設けられており、両読取デバイス30,40の間の領域が読取領域である。なお、両読取デバイス30,40は、第1読取デバイス及び第2読取デバイスの一例であり、CIS(Contact Image sensor)であることが好ましい。
【0025】
上面用読取デバイス30は、搬送経路22の上側に配置されており、搬送中の原稿Mの一面、換言すれば上面の画像を読み取る。具体的には、上面用読取デバイス30は、上面用光源31、上面用受光部32、基準部材33、プラテンガラス34がキャリッジ35に搭載された構成とされている。上面用光源31は、第1発光部の一例であり、例えば複数の発光チップが左右方向に沿って配列されている。各発光チップは、例えば発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光素子を1または複数有し、レッド、グリーン、ブルーの光を時分割でも同時でも出射することができるよう構成されている。なお、上面用光源31は、発光素子以外に、投光レンズなどの光学系を備える構成でもよい。
【0026】
上面用受光部32は、第1受光部の一例であり、図示しない複数の受光素子が左右方向に沿って配列されている。各受光素子は、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタで構成されており、レッド、グリーン、ブルーの光だけでなく、下面用光源41からのシアン、マゼンタ、イエローの光も受光可能である。要するに、上面用受光部32の各受光素子は、特定の色のみを通過させるフィルタを有する必要がない。プラテンガラス34は、搬送経路22に沿って配置されている。上面用光源31は、プラテンガラス34を介して搬送経路22内を搬送される原稿M、または、下面用読取デバイス40の基準部材43に光L1を照射する。上面用受光部32は、原稿Mまたは基準部材43からの反射光L2、及び、下面用光源41から出射された光L3を受光可能である。
【0027】
下面用読取デバイス40は、搬送経路22の下側に配置されており、搬送中の原稿Mの他面、換言すれば下面の画像を読み取る。具体的には、下面用読取デバイス40は、下面用光源41、下面用受光部42、基準部材43、プラテンガラス44がキャリッジ45に搭載された構成とされている。下面用光源41は、第2発光部の一例であり、例えば複数の発光チップが左右方向に沿って配列されている。各発光チップは、例えば発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光素子を1または複数有し、シアン、マゼンタ、イエローの光を時分割でも同時でも出射することができるよう構成されている。なお、下面用光源41は、発光素子以外に、投光レンズなどの光学系を備える構成でもよい。
【0028】
下面用受光部42は、第2受光部の一例であり、図示しない複数の受光素子が左右方向に沿って配列されている。各受光素子は、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタで構成されており、シアン、マゼンタ、イエローの光だけでなく、上面用光源31からのレッド、グリーン、ブルーの光も受光可能である。要するに、下面用受光部42の各受光素子は、特定の色のみを通過させるフィルタを有する必要がない。プラテンガラス44は、搬送経路22に沿って配置されている。下面用光源41は、プラテンガラス44を介して搬送経路22内を搬送される原稿M、または、上面用読取デバイス30の基準部材33に光L3を照射する。下面用受光部42は、原稿Mまたは基準部材33からの反射光L4、及び、上面用光源31から出射された光L1を受光可能である。
【0029】
基準部材33及び基準部材43は、白色基準板に限らず灰色基準板などでもよく、また、図2に示すようにプラテンガラス34,44に埋設された構成以外に、プラテンガラス34,44の前面または背面に配置された構成でもよい。上面用読取デバイス30は、下面用読取デバイス40が有する基準部材43を用いてシェーディング補正等に必要な白基準データを取得し、下面用読取デバイス40は、上面用読取デバイス30が有する基準部材33を用いてシェーディング補正等に必要な白基準データを取得する。
【0030】
また、本体部3には、この他に、電源スイッチや各種設定ボタンからなり、ユーザからの操作指令等を受け付ける操作部5や、液晶ディスプレイからなり、画像読取装置1の状況や画像読取部24が原稿を読み取った画像を表示する表示部6を含む(図3参照)。
【0031】
3.画像読取装置の電気的構成
図3は画像読取装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。画像読取装置1は、画像読取装置1の各部を制御する制御回路10を含む。制御回路10は、中央処理装置(以下、CPU)11、ROM12、RAM13を備え、これらにバス14を介して操作部5、表示部6、アナログフロントエンド(以下、AFE)15、点灯回路16、搬送機構28に含まれる各ローラを駆動する駆動回路17、読取デバイス30、40、フロントセンサ26、リヤセンサ27などが接続されている。
【0032】
ROM12には、画像読取装置1の動作を制御するための制御プログラムなど、各種のプログラムが記憶されており、CPU11は、ROM12から読み出した制御プログラムに従って各部の制御を行う。なお、制御プログラムが記憶される媒体は、ROM12以外に、CD−ROM、ハードディスク装置、フラッシュメモリ(登録商標)などの不揮発性メモリであることが好ましい。
【0033】
点灯回路16は、読取デバイス30,40に各々接続されており、CPU11からの命令に基づいて、光源31,41の点灯及び照射時間を制御する信号を各読取デバイス30、40に送信する。読取デバイス30、40は、点灯回路16から信号を受け取ると、光源31、41を点灯し、照射時間に亘って光源31、41を発光させる。その際、読取デバイス30、40は、CPU11からの命令に基づいて、搬送経路22内を搬送される原稿M又は基準部材33、43から反射される反射光を受光部32、42にて受光し、受光部32、42が受光した受光量に応じたアナログ信号である読取電圧をAFE15に出力する。
【0034】
AFE15は、読取デバイス30、40に各々接続されており、CPU11からの命令に基づいて、読取デバイス30、40から出力される読取電圧をデジタル信号である読取データに変換するA/D変換回路を有している。AFE15は、予め定められた分解能B(例えば、8ビットであるならば0から255の階調)を有している。AFE15は、読取デバイス30、40から出力された読取電圧を8ビット(0〜255)の読取データにA/D変換を行う。そして、AFE15によってA/D変換された読取データは、バス14を介してRAM13に記憶される。
【0035】
4.制御回路が実行する制御処理
図4は制御回路10、換言すれば、CPU11が実行する、画像読取に関する制御処理を示すフローチャートである。
【0036】
CPU11は、ユーザによる操作部5での操作や外部機器からの指示信号の受信に基づき、画像読取の開始指示を受け付けた後、上記制御プログラムに従って図4に示す読取制御処理を実行する。CPU11は、まずフロントセンサ26からの検出信号SG1に基づき原稿トレイ2上に原稿Mが有ると判断した場合、駆動回路17を介して搬送機構28の駆動を開始させる(S1)。これにより、原稿トレイ2上に配置された原稿Mが1枚、搬送経路22に沿って搬送される。
【0037】
CPU11は、原稿Mの搬送開始後、光量調整処理を実行する(S2)。光量調整処理では、読取デバイス30,40の光源31,41について、各々の発光色ごとに光量調整が行われる。具体的には、CPU11は、光源31,41を時分割で各1色ずつ発光させ、その発光タイミングに同期して、基準部材33,43からの反射光を受光部32、42にて順次受光させる投受光動作を、読取デバイス30,40に実行させる。そして、CPU11は、各発光色について、受光部32,42からの受光信号に応じた読取データに基づき、光源31,41の発光量を所定の目標量に近づくように調整する。
【0038】
CPU11は、光量調整処理の実行後、上記画像読取の開始指示に関する情報に基づき両面読取が指定されているかどうかを判断し(S3)、両面読取が指定されていれば(S3:YES)、上面用及び下面用の補正データ生成処理を実行する(S4)。補正データ生成処理では、CPU11は、光源31,41が発光していないときの受光信号に応じた読取データに基づき黒基準データを取得し、上記投受光動作時の受光信号に応じた読取データに基づき白基準データを取得する。そして、黒基準データ及び白基準データに基づきシェーディング補正時に用いる補正データを生成し、例えばRAM13に記憶する。
【0039】
CPU11は、補正データ生成処理の実行後、両面読取処理を実行する(S5)。両面読取処理では、CPU11は、リヤセンサ27からの検出信号SG2に基づきリヤセンサ27にて原稿Mが検知されたと判断した場合、その検知タイミングをトリガーとして、読取デバイス30,40の光源31,41を同時発光させ、原稿Mからの反射光を受光部32、42にて受光させる投受光動作を実行させて原稿の画像読取を実行させる。このときCPU11は読取制御部として機能する。
【0040】
図5は、読取領域に原稿Mが存在する場合における画像読取部24の概略的な構成図である。同図中に符号G1は、原稿Mの上面に形成された上面画像であり、符号G2は、原稿Mの下面に形成された下面画像である。図6は、上面用読取デバイス及び下面用読取デバイスの発光タイミング及び読取データの出力タイミングを示すタイムチャートである。なお、図6に示すように、各読取デバイス30,40は、同期信号の立ち上りエッジから所定時間t1経過するごとに、3色の光について順次投受光動作を実行し、一の色成分のラインの読取データを、次の色成分の投受光動作に同期したタイミングで出力する。そして、出力された3色成分のラインの読取データに基づき1本のカラーラインの読取データが生成される。
【0041】
図7は、読取対象面の画像に基づく読取データ出力結果を示す説明図であり、図8は、非読取対象面の画像に基づく読取データ出力結果を示す説明図である。読取対象面とは、各読取デバイス30,40から見て、原稿Mの対向面、換言すれば表面であり、非読取対象面とは、各読取デバイス30,40から見て、原稿Mの非対向面、換言すれば裏面である。図7及び図8の最上段には、B、C、G、Y、R、Mが付されたハッチング部分が示されており、このハッチング部分は、読取対象面及び非読取対象面の各画像色を意味する。
【0042】
ハッチング部分の下には、各画像色での各色光の反射光や透過光に基づく読取データの出力値、換言すればRGBの光成分の光量を示す。例えば「R光のみ」欄には、各画像色にレッド光のみを反射或いは透過させたときの読取データの出力値が示されている。「C光のみ」欄には、各画像色にシアン光のみを反射或いは透過させたときの読取データの出力値が示されている。「R光+C光のみ」欄には、各画像色にレッド光及びシアン光を反射或いは透過させたときの読取データの出力値が示されている。
【0043】
原稿Mの両面の画像を同時期に読み取るためには、上面用光源31と下面用光源41とを同時期に発光させることになる。このため、図5に示すように、下面用受光部42は、下面用光源41から出射され下面画像G2で反射した光L3Aだけでなく、下面用光源41から出射され上面画像G1で反射した光L3B、更には、上面用光源31から出射され原稿Mを透過した光L1Cも受光し得る。このように反射光L3B及び透過光L1Cが下面用受光部42に受光されることにより、下面用読取デバイス40は、読取対象である下面画像G2だけでなく、上面画像G1も読み取ってしまう、いわゆる裏写りが発生するおそれがある。
【0044】
しかし、本実施形態では、図6に示すように、下面用光源41がレッド光を出射するとき、上面用光源31は、シアン光を出射する。そして、レッドとシアンとは補色関係にあるので、レッド光とシアン光との合成光は、無彩色、より具体的には白色に近い光として下面用受光部42にて受光される。ここで、透過光L1Cは、原稿Mを透過する際に光量が減衰し、下面画像G2からの反射光L3Aに比べて光量が低いため、R成分のラインの読取データに対して両者の光の補色関係による影響は小さい。
【0045】
即ち、図7の「R光+C光」欄及び「R光のみ」欄に示すように、下面用受光部42が透過光L1C及び反射光L3Aを受光したときの読取データの出力値の高低傾向は、下面用受光部42が反射光L3Aのみを受光したときの読取データの出力値の高低傾向に近い。従って、下面用読取デバイス40は、原稿Mの下面画像G2を読み取ることができる。
【0046】
一方、反射光L3Bは、透過光L1Cと同様、原稿Mを透過する際に光量が減衰するため、読取データに対して両者の光の補色関係による影響は大きい。即ち、図8の「R光+C光」欄及び「R光のみ」欄に示すように、下面用受光部42が透過光L1C及び反射光L3Bを受光したときの読取データの出力値は、下面用受光部42が反射光L3Aのみを受光したときの読取データの出力値に比べて、画像色ごとの高低差が軽減され、加法混色により白色に近い色とされる。従って、下面用読取デバイス40が、原稿Mの上面画像G1を読み取ること、即ち裏写りを抑制することができる。
【0047】
以下同様に、下面用光源41がグリーン光を出射するとき、上面用光源31はマゼンタ光を出射し、グリーンとマゼンタとは補色関係にあるので、やはり下面用読取デバイス40は、グリーン成分のラインの読取データについて、裏写りを抑制しつつ、原稿Mの下面画像G2を読み取ることができる。また、下面用光源41がブルー光を出射するとき、上面用光源31はイエロー光を出射し、ブルーとイエローとは補色関係にあるので、やはり下面用読取デバイス40は、ブルー成分のラインの読取データについて、裏写りを抑制しつつ、原稿Mの下面画像G2を読み取ることができる。また、上面用読取デバイス30についても同様に、各色成分のラインの読取データについて、裏写りを抑制しつつ、原稿Mの上面画像G1を読み取ることができる。なお、上面用読取デバイス30では、発光色はシアン、イエロー、マゼンタであるが、上面用受光部32の読取データは、加法混色により生成することが好ましい。
【0048】
CPU11は、両面読取処理の実行後、画像データ補正処理を実行する(S6)。CPU11は、上記両面読取処理での読取データを上記補正データに基づき補正を施し、例えば画像読取装置1と通信可能に接続された図示しない端末装置や印刷装置に出力する。CPU11は、画像データ補正処理の実行後、本制御処理を終了する。
【0049】
CPU11は、片面読取が指定されていれば(S3:NO)、下面用のみの補正データ生成処理を実行する(S7)。補正データ生成処理の内容はS4と同じである。次に、CPU11は、片面読取処理を実行する(S8)。片面読取処理では、上記両面読取処理と同様に、図6に示すように2つの光源31,41を発光させつつ、上面用受光部32のみ停止したり、受光結果を無効化したりする。これにより、片面読取において、下面用読取デバイス40は、各色成分のラインの読取データについて、裏写りを抑制しつつ、原稿Mの下面画像G2を読み取ることができる。
【0050】
5.本実施形態の効果
本実施形態によれば、一方の光源から出射され原稿Mで反射した光、及び、他方の光源から出射され原稿Mを透過した光の両方が受光部にて受光され、その受光量に応じた受光結果が出力される。また、一方の光源と他方の光源とで互いに補色の関係を有する異なる色の光が原稿Mにそれぞれ出射される。このため、一方の光源から見て、当該一方の光源から出射され原稿Mの裏面画像で反射した光と、他方の光源から出射され原稿Mを透過した光とが、両方とも受光部に受光され、且つ、両光は補色の関係を有するので無彩色として受光部に受光される。従って、特定の1色のみを受光する光源変換素子を要することなく、裏面画像での反射光による裏写りの影響を抑制することができる。
【0051】
両面読取方式では、一の読取デバイスから出射され原稿を透過した光が他の読取デバイスの受光部に受光されることがあり、このとき、裏写りの影響が顕著に現れる。これに対して、本実施形態によれば、両面読取時において、一方の光源と他方の光源とで互いに補色関係を有する異なる色の光が原稿Mにそれぞれ出射されるため、読取デバイス30及び読取デバイス40の両方において裏面画像での反射光による裏写りの影響を抑制することができる。
【0052】
また、片面読取処理では、上面用光源31を、下面用光源41の発光色の補色の光で発光させるため、上面用光源31を発光させない構成に比べて、裏面画像での反射光による裏写りの影響を抑制することができる。また、複数色の画像読取において、特定の1色のみを受光する光源変換素子を要することなく、裏面画像での反射光による裏写りの影響を抑制することができる。
【0053】
本実施形態によれば、例えば2色の光を出射する構成に比べて、読取デバイス30及び画像読取デバイス40においてカラー画像の読取を精度よく行うことができる。
【0054】
<実施形態2>
図9は実施形態2を示す。実施形態1との相違は、上面用光源の構成及び発光制御にあり、その他の点は実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0055】
本実施形態の上面用光源は、下面用光源41と同様に、レッド、グリーン、ブルーの3色光を時分割及び同時に発光することができる。CPU11は、上記図4の両面読取処理や片面読取処理において、図9に示すように上面用光源及び下面用光源41を発光制御する。下面用光源41の発光制御は、図6と同じであるが、上面用光源の発光制御は図6とは異なる。
【0056】
CPU11は、下面用光源41にレッド光を出射させるとき、上面用光源にグリーン光及びブルー光を出射させる。グリーン光とブルー光を混色することにより、シアン光を作ることができるからである。また、CPU11は、下面用光源41にグリーン光を出射させるとき、上面用光源にレッド光及びブルー光を出射させる。レッド光とブルー光を混色することにより、マゼンタ光を作ることができるからである。更に、CPU11は、下面用光源41にグルー光を出射させるとき、上面用光源にグリーン光及びレッド光を出射させる。グリーン光とレッド光を混色することにより、イエロー光を作ることができるからである。各色光の適切な光量割合は例えば実験により求めることができる、
【0057】
本実施形態によれば、上面用光源を、下面用光源41と共通の構成とすることができ、また、コスト削減も可能になり得る。
【0058】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0059】
(1)上記実施形態では、搬送機構28により搬送中の原稿Mの画像を読み取るシートフィードスキャナを例に挙げた。しかし、例えば搬送機構を備えない画像読取装置など、所定の位置に静止している原稿の両面または片面を読み取る構成でもよい。具体的には、原稿Mが固定配置され、画像読取部が画像読取をしつつ移動する、いわゆるフラットベットタイプでもよい。このタイプの場合、読取領域は画像読取部と共に移動する。
【0060】
(2)上記実施形態では、複数のローラを有する搬送機構28を例に挙げた。しかし、回転駆動されるベルトを備える搬送機構などでもよい。
【0061】
(3)上記実施形態では、一対の読取デバイス30,40が搬送経路22を挟んで対向配置された画像読取部を例に挙げた。しかし、一対の読取デバイスは厳密に対向配置されている必要はなく、互いに相手の光源からの光が自己の受光部にて受光可能な位置関係であればよい。
【0062】
(4)上記実施形態では、一対の読取デバイス30,40を備えて、原稿の両面読取と片面読取とを実行可能な画像読取装置24を例に挙げました。しかし、読取デバイスを1つだけ備え、片面読取のみ実行可能な画像読取装置でもよい。このような画像読取装置では、読取デバイスに対して搬送経路を挟んで略対向する位置に光源を配置し、当該光源から、読取デバイスの発光色と補色関係を有する光を発光させる構成にすればよい。
【0063】
(5)上記実施形態では、片面読取処理では、2つの光源31,41の両方を発光させた。しかし、片面読取において、上面用光源31の発光の有無を、ユーザが選択できるようにしてもよい。例えば、片面のみ画像が形成された原稿Mを読み取りたい場合や、光源の発光による電力消費を抑制したい場合には、上面用光源31を発光させるモードを選択することが好ましい。
【0064】
(6)上記実施形態では、3色の光によりカラー読取が可能な画像読取装置1を例に挙げた。しかし、1色、2色、または4色以上の光を利用して画像読取を行う画像読取装置でもよい。
【0065】
(7)上記実施形態では、制御回路10は、1つのCPU11を備え、その1つのCPU11により画像読取処理が実行される構成であった。しかし、複数のCPU11により上記制御処理が実行される構成でもよい。例えば光源に関する処理、受光部に関する処理、画像データ補正処理のうち、一部の処理または全部の処理を別々のCPUに実行させる構成でもよい。また、制御回路10は、汎用性のあるCPUで構成したものに限らず、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)や、FPGA(Field−Programmable Gate Array)などの専用回路で構成したものでもよい。
【符号の説明】
【0066】
1:画像読取装置 11:CPU 24:画像読取部 28:搬送機構 30,40:読取デバイス 31,41:光源 32,42:受光部 M:原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた読取領域に位置する原稿の一方面に向けて光を出射する第1発光部と、
前記原稿の他方面に向けて光を出射する第2発光部と、
前記第1発光部から出射され前記原稿で反射した光、及び、前記第2発光部から出射され前記原稿を透過した光の両方を受光する受光部と、
前記第1発光部と前記第2発光部とに互いに補色の関係を有する異なる色の光を前記原稿にそれぞれ出射させ、前記受光部に当該受光部の受光結果に基づく画像読取データを出力させる読取制御部と、を備える画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記第1発光部、及び、前記受光部としての第1受光部を有する第1読取デバイスと、
前記第2発光部、及び、前記第2発光部から出射され前記原稿で反射した光、及び、前記第1発光部から出射され前記原稿を透過した光の両方を受光する第2受光部を有する第2読取デバイスと、を備え、
前記読取制御部は、前記第1発光部と前記第2発光部とに互いに補色の関係を有する異なる色の光を前記原稿にそれぞれ出射させ、前記第1受光部に、当該第1受光部の受光結果に基づく前記原稿の一方面の画像読取データを出力させ、前記第2受光部に、当該第2受光部の受光結果に基づく前記原稿の他方面の画像読取データを出力させる両面読取処理を実行する、画像読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像読取装置であって、
前記読取制御部は、前記第1発光部と前記第2発光部とに互いに補色の関係を有する異なる色の光を前記原稿にそれぞれ出射させ、前記第1受光部だけに当該第1受光部の受光結果に基づく前記原稿の一方面の画像読取データを出力させる片面読取処理を実行する、画像読取装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記第1発光部及び前記第2発光部のそれぞれは、複数の色の光を出射する構成であり、
前記読取制御部は、前記第1発光部及び前記第2発光部のそれぞれから前記複数の色の光を時分割で出射させ、且つ、前記第1発光部と前記第2発光部とで同時期に互いに補色の関係を有する光を出射させる、画像読取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像読取装置であって、
前記第1発光部は、ブルー、グリーン、レッドの3色の光を出射する構成であり、
前記第2発光部は、シアン、マゼンタ、イエローの3色の光を出射する構成である、画像読取装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像読取装置であって、
前記第2発光部は、ブルー、グリーン、レッドの光をそれぞれ出射する3つの発光素子を有する構成であり、
前記読取制御部は、ブルー及びグリーンの発光素子を点灯させてシアンの光を、グリーン及びレッドの発光素子を点灯させてイエローの光を、レッド及びブルーの発光素子を点灯させてマゼンタの光をそれぞれ前記第2発光部から出射させる、画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−249242(P2012−249242A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121696(P2011−121696)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】