説明

画像高精細化方法と撮像装置

【課題】魚眼レンズ等で得られる全方位画像の正像変換においても、高精細画像を容易に安価に得ることができる画像高精細化方法と撮像装置を提供する。
【解決手段】ディジタルカメラに設けられ個々の画素を構成する撮像素子が縦横に複数形成された撮像デバイス1と、撮像デバイス1に対して所定の等しい角度傾斜して各々配置された2枚の平行透明板であるガラス板22,23を備える。ガラス板22,23を各々独立に、撮像デバイス1表面に対して直交する軸を中心に回転させるアダプタ16である駆動装置を備える。アダプタ16を制御して所定の周期で撮像素子の画素に対して複数の異なる光線を入射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディジタルカメラ等に用いられ、固体撮像素子により得られる画像の解像度を向上させる画像高精細化方法と撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像の高精細化技術として、ハイビジョンカメラ等の高精細化技術の研究がなされ、その技術は大きく2つに分かれる。1つの流れはデバイスにおける撮像素子密度の上昇であり、他の1つは、複数のCCDによる複数の画像を元に1つの高精細な画像を作る方法(多板化技術)である。前者の技術進歩は非常に速く、現在、横4000ピクセル、縦3000ピクセル、総ピクセル数が1200万画素を有するものが出ている。
【0003】
固体撮像素子としては、一般に、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS等の半導体の単位撮像素子を2次元状に配置した撮像デバイスがある。この撮像デバイスは、撮像素子の各画素(ピクセル)毎に入射する光の量を取得するものである。従って、固体撮像素子は、撮影する物体を銀塩写真のようにフィルムの分子構造レベルに精細に撮影することができるものではなく、被写体を微小な区画に分けて、各区画を撮像素子の画素毎に切り取って光の量として捉えるものである。いわば物体を点の集合として描写するものである。また、カラー写真を撮る場合には、撮像素子は光の三原色のRGB色のそれぞれの量を取得する必要があり、カラー画像の1ピクセルは、撮像素子の1画素とは必ずしも対応せず、1ピクセルを複数の画素で表現することが一般的である。そして、ディジタルカメラ等では、各画素で取得した光の量は、ディジタルデータとして数値化してメモリに記憶される。
【0004】
また、撮影される画像の精細度は単位面積あたりの画素(ピクセル)数、画素の密度により決まる。単位面積あたりの画素が多ければ高精細な画像、即ち緻密な画像を得ることが出来る。今日のCCDやCMOS素子は、技術の進歩と共に、単位面積あたりの画素数は年を追って増加している。
【0005】
その他の高精細化技術として、特許文献1に開示されているように、機械的に各撮像素子に入射する光の被写体の領域を、透明な平行平板を揺動させて、入射光の光路を各撮像素子の半ピッチ分移動させ(画素ずらし)、イメージセンサである固体撮像素子の実際の画素数に対して、より高精細化することができる撮像装置が提案されている。特許文献2には、同様の方法により、撮像した画像データの各フレームを加算して出力し、縞模様の撮影時に発生するモアレを抑制したものが開示されている。同様に、特許文献3に開示された撮像装置は、透明平行平板を複数設けて、各々揺動させて解像度を向上させるようにしたものである。
【0006】
また、二次元的に画素ずらしを行う方法として、特許文献4に開示されているように、透明な平行平板を、その面方向であって互いに直交する2軸で支持して揺動させる方法も提案されている。その他、二次元的に画素ずらしを行う方法として、特許文献5に開示されているように、1枚の平板ガラスを、1つの支持部と2つの作動部で支持し、2つの作動部を適宜に作動させるようにして、作動部によりガラスを傾斜させ、撮影レンズと撮像素子との間に設置したガラスを任意な角度に正確に傾斜させることができるようにした撮像装置も提案されている。
【0007】
また、特許文献6に開示されているように、光学的に透明な電極と配向膜とを設けた複数の基体の間隙内に液晶が注入された位相変調光学素子と、光学的に透明な複屈折媒体とからなる素子を複数個組み合わせた光学装置が開示されている。この光学装置は、位相変調光学素子を設けて光の位相を変化させて偏光面をずらし、更に複屈折媒体によって入射光を選択的に屈折させ、二次元の画素ずらしを行い、解像度を向上させることが可能な装置である。その他、機械的画素ずらし機構を用いないものとして、特許文献7に開示されているように、小容量の記憶装置を用いて高解像度画像を実現することが可能な装置も提案されている。
【0008】
これらの高精細化方法は、透明な平行平板を撮像素子の受光面に対して平行に配置するとともに、撮像に際して、所定の周期で光路をその素子の1/2画素分移動させ、見かけ上2倍以上の画素数と同様の精細度を得ることができるものである。
【特許文献1】特開昭61−75679号公報
【特許文献2】特開平6―98263号公報
【特許文献3】特開平6―261236号公報
【特許文献4】特開平3―231589号公報
【特許文献5】特開平7―236086号公報
【特許文献6】特開平7―36054号公報
【特許文献7】特開平10―294900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記背景技術の画素ずらしによる高精細化技術は場合、全方位画像としての特徴に着目して研究しているものではなく、既存の通常画像を高精細化するものであり、魚眼レンズ等による全方位画像を対象にした高精細化の技術は存在していない。
【0010】
一方、魚眼レンズやパノラマ撮像レンズ等の全方位画像は、通常のレンズでは撮影し得ない360度の画像を1枚の像面上に映すことが可能である。全方位の情報を1枚の画像に収めることが出来ることから、この全方位画像を基にして通常カメラで撮影したと同様な画像を画像処理(以下、この画像処理を「正像変換処理」と称する)を用いて得ることが出来る。この場合、広範囲の画像情報を1枚の画像に収めているため、相対的に正像変換に利用される画像の単位面積当たりのピクセル数は少ないものにならざるを得ない。そのため、正像変換された画像は精細度の低いものにならざるを得ず、高精細化の必要性が大きい。
【0011】
さらに、上記背景技術の画素ずらしを利用した高精細化方法は、機械的にガラス板を1軸または2軸方向に正確に揺動させる制御は難しいものであり、ビデオカメラ等の動画撮影には適用し難いものである。また、上記背景技術の電気的光学的に像をシフトする方法は、光学素子の構成や制御が複雑になり、コストがかかり容易に利用できるものではない。
【0012】
本発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、魚眼レンズ等で得られる全方位画像の正像変換においても、高精細画像を容易に安価に得ることができる画像高精細化方法と撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、ディジタルカメラの画像高精細化方法において、個々の画素を構成する撮像素子を2次元状に配置して形成された撮像デバイスと撮像レンズの間に、所定の等しい角度傾斜した2枚の平行透明板を設け、この平行透明板を、前記撮像レンズの光軸を軸として回転させて、前記各撮像素子に対して、同一被写体の異なる画像を入射させて、前記撮像素子により前記2枚の平行透明板の所定の角度毎に異なる画像情報を取得し、取得した各画像を合成して一つの高精細画像を得る画像高精細化方法である。
【0014】
前記2枚の平行透明板の回転角のみを制御することで、n2倍(但し、nは2以上の任意の整数)の高精細画像を得るものである。
【0015】
またこの発明は、ディジタルカメラに設けられ個々の画素を構成する撮像素子を2次元状に配置し形成した撮像デバイスと、この撮像デバイスに対して所定の等しい角度傾斜して各々配置された2枚の平行透明板と、この平行透明板を各々独立に、前記撮像デバイス表面に対して直交する軸を中心に回転させる駆動装置とにより構成され、前記駆動装置を制御して前記平行透明板を介して、前記撮像デバイスに同一被写体の異なる画像を入射させ、前記各撮像素子に高解像度の画像情報を得る撮像装置である。
【0016】
前記撮像デバイスには、広角の撮像レンズが接続され、前記撮像デバイスと前記撮像レンズとの間に、前記2枚の平行透明板が設けられたものである。特に、前記撮像レンズは、360度全周を撮影可能なパノラマ撮像レンズである。
【0017】
前記駆動装置は、前記2枚の平行透明板をそれぞれ独立に回転させる機構と、この機構を回転させるモータと、このモータを制御するソフトウェア制御装置とにより構成されているものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、ディジタルカメラ等の固体撮像素子を用いた撮像装置において、厚みが一定かつ傾きが等しい平行透明板をレンズと撮像デバイスの間に挿入し、その平行透明板を撮像レンズの光軸を軸として回転させることにより、画像情報を取得し、その画像情報を利用して、簡単に画像の精細化を行うことができる。これにより、高価な装置を必要とせず極めて安価に画像の高精細化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。まず、本発明における原理を図1に示す。ここでは、CCDあるいはCMOSの撮像デバイス1に、画素を構成する個々の撮像素子A,B,C,Dが集積化されている。撮像デバイス1の光入射方向前方には、図示しない魚眼レンズからの撮像光が入射する平行透明板であるガラス板2が位置している。ガラス板2は厚みが一定のものである。図1では、ガラス板2を撮像デバイス1に対して平行に置かれた状態をαとし、ガラス板2が矢印に示す方向に傾けた状態をβとする。また、a,b,c,dは、撮像素子A,B,C,Dに垂直に入射する光線を示す。入射光線a,b,c,dは、ガラス板2を挿入する前に撮像素子A,B,C,Dに入射している光線であり、この垂直な光線a,b,c,dは、ガラス板2をαの状態に挿入してもガラス板の厚みが一定である限り挿入する前と同様に撮像素子A,B,C,Dに入射する。従って、光線a,b,c,dは撮像素子A,B,C,Dで受光される。
【0020】
次に、αの状態にあったガラス板2を揺動し、βの状態にする。この時、傾きの角度を適当に制御することにより、撮像素子A,B,C,Dには、光線a,b,c,dの間の光線で、α状態では受光されていなかった図1に破線で示す光線a’,b’,c’,d’を受光することが出来る(図1の屈折量は、説明の都合上その量を実際以上に大きくしている)。即ち、まず、ガラス板2のα状態で光線a,b,c,dの画像を取得し、ついでガラス板2の状態βで光線a’,b’,c’,d’の画像を取得し、これら2つの画像を合成することにより高精細画像を得ることが出来る。
【0021】
ここで、図1では、光線a,b,c,dあるいはa’,b’,c’,d’が撮像デバイス1に対して垂直に入射する場合を示している。しかし、実際のレンズでは図2に示すごとく、レンズにより集光された垂直光を含む光線の束(光束)が撮像デバイス1の撮像素子A,B,C,Dに集束されて入力され、それが画像情報として取得される(図2は簡単のため光束の表示はb,b’についてのみ表示している)。従って、実際は、図2(a)に示すように、光束の広がりの最大角度ψを考慮した場合の画像の変移量を考える必要がある。
【0022】
まず、ガラス板2を挿入した時、光の収束位置が移動する。ガラス板2を撮像デバイス1に対して平行に挿入したとき、ガラス板2の厚みをd、ガラス板の屈折率をnt、空気の屈折率をni、光束の広がりの最大角度をψとすると、光束の収束位置の光軸方向の移動量sは、
【数1】

で与えられる。すなわち、ガラス板2を挿入する前と同じ画像情報を得るためには、撮像デバイスの位置を挿入前に位置からsだけずらせる必要がある。この量の例について、nt=1.5、ni=1.0、またψ=1°〜10°の場合を図3に示す。
【0023】
厳密に考えると移動量sは光束の広がりの最大角度ψに依存する。しかし、光束の広がりが10度程度であれば、実効的には約1%程度の誤差で、束の広がり最大角度ψに拘わらず一定のところに移動すればよいといえる。
【0024】
さらに、式(1)で与える移動量sだけ撮像デバイス1を移動させた状態で、図2(b)に示すように、ガラス板2をθi傾けた場合の画像の撮像面方向の変移量D(図2(b)において、ガラス板2を傾けないときの結像点Bを有する平面βに平行で、距離sだけ離れた平面β’上の点Cからの点C’への移動量)は、簡単な計算によって、
【数2】

として与えられる。画像変移量Dはガラス板2の挿入位置には依存せず、レンズと撮像デバイス1の間のどこにおいてもこの原理は適用できる。式(2)について、ψ=0°、10°、20°、屈折率nt=1.5 (ガラス)、ni=1.0(空気)とした場合の、ガラス板の傾きθiとD/dとの関係を図4に示す。
【0025】
ψ=0°の場合の画像変移量(即ち、光束を考えない図1における垂直光線a,b,c,dあるいはa’,b’,c’,d’の画像変移量)は、例えばCCD撮像デバイスの横方向の長さを12.8mm、その方向の撮像素子数が4992とした場合、ピクセルの間隔は2.564μmとなる。ここで、各ピクセル間の丁度中央の画像情報を取得すると仮定すると、画像変移量D=1.282μmとなる。角度を1°傾けてこの変移量を得るためにはガラス板の厚みd=220.3μmが必要であり、また、角度を2°傾けて得る場合のガラス板の厚みはd=110.1μm必要となり、具体的に実現できる数値である。
【0026】
式(2)より解るごとく、ガラス板2の傾きを一定にしても、厳密には画像変移量Dは、光束広がりの最大角度ψに依存して変化する。ψ=20°とすると、ガラス板の傾きθiが大きくなるとψによる違いが大きい。しかし、図4からわかるように、ψ=10°程度であれば最大5%程度の誤差で一定、即ち垂直光線と考えて実効的には問題がない。
【0027】
垂直光ではない場合は、ガラス板挿入以前の画像位置と、ガラス板挿入による画像位置とは異なる。従って、その量により基本的には挿入によって得られる画像には、たとえガラス板2を傾けない場合でも歪が発生する。この量は図4から、垂直光から3°傾いた入力光の場合本来の位置より、d=200μmの場合には、3.5μm程度画像が変移する。
【0028】
以上により、本発明における方法は、撮像デバイス1への入射角度が垂直に近く、且つできるだけ光の最大広がり角度ψが少ない光線を用いて画像を得るカメラシステムに対して適用できる。
【0029】
以下、この発明の一実施形態について、図5〜図14を基にして説明する。この実施形態で実際の撮像デバイス1における撮像素子10の配置は、図5に示すごとく2次元配置になっている。この上にガラス板を挿入し、図1あるいは、図2に示すようにα状態からβ状態に傾けた時に、A’,B’,C’,D’点の画像情報がA,B,C,D点に変移するだけではなく、撮像デバイス平面上の全ての点の情報が式(2)で与える変移量Dだけ左方向に変移する。その中で、図6の□の位置ある画像情報が、対応する撮像素子10にて画像情報として取得される。この画像の変移操作は方向(図6では左方向)、と、その大きさ(変移量D)が決まっており、ベクトルとして表現される。例えば、図7(a)のように画像変移ベクトルをD→、D→、D→(以下、この明細書では各ベクトルを便宜上このように表す。)として表現したとすると、実際は、図7(b)の画像変移操作を示すものであり、△、◇、□で示す各位置の画像を3枚得ることを意味する。
【0030】
図7(a)で示すベクトルによる画像では実際は均一に画像を高精細化することができないことは自明である。均一な高精細な画像を得るためには、撮像素子10の2次元配列を考慮して、必要な画像情報位置を明確にして、それに必要なベクトルを生成する必要がある。
【0031】
実際に4倍の高精細画像を作る場合の例を以下に示す。各撮像素子10の間隔を、横方向p、縦方向qとする場合、必要なベクトルは、図8に示すD→、D→、D→である。D→は長さがp/2で、横方向の撮像素子の並び方に平行なベクトル、D→は、D→と直交し、長さq/2のベクトル、D→は2つのベクトルD→、D→と45度の角度をなし、長さ(p+q1/2/2なるベクトルである。従って、ベクトルD→、D→、D→を作り出すことによって必要な画像情報を得ることができる。
【0032】
図9にはそれぞれのベクトルにより得られる画像と、それに基づいての高精細画像取得法を示している。ベクトルD→により□位置の画像情報(図9(b)に示す画像情報)、D→ベクトルで表現される画像情報の変移操作により◇の位置にある画像情報(図9(c)に示す画像情報)、またベクトルD→で表現される画像情報の変移操作により△の位置の画像情報(図9(d)に示す画像情報)が各々得られる。図9(b),(c),(d)の3枚の画像情報を、図9(a)に示す元の画像(ガラス板を撮像デバイスに平行に挿入して得られる○印位置の画像)に対して、図9(e)に示す□、◇、△のそれぞれの位置に挿入する操作を行うことによって、四倍の高精細化を実現することができる。この方法は倍率を大きくした場合も全く同様である。
【0033】
次に、9倍の高精細化の場合のベクトル構成を図10に示す。ベクトルの組み合わせは1通りではなく、図10では2通りを示している。図10(a)では撮像素子10が素子間距離pで正方形に並べられているとすると、各ベクトルのなす角度は全て45°、長さはD→、D→、D→、D→は、(2/3)p、また、D→、D→、D→、D→は、(21/2/3)pなるベクトルの組を生成すればよい。また図10(b)においては、ベクトルのなす角は全て45°、長さはD→、D→、D→、D→は(1/3)p、また、D→、D→、D→、D→は、(21/2/3)pなる組のベクトルの組を生成すればよい。これらのベクトルにより得られたそれぞれの画像情報を逆向きに移動した位置で合成することにより高精細化した画像を得る。
【0034】
図11には、16倍画像を得るためのベクトルの組の1例を示す。撮像素子10の配置を正方形とした時、ベクトルD→、D→、D→、D→はそれぞれ直交し、長さはp/4、また、ベクトルD→、D→、D→、D→は、それぞれ直交し、D→、D→、D→、D→に対して45°の角度をなし、長さが(21/2/4)p、ベクトルD→、D11→、D13→、D15→は、縦軸、横軸とそれぞれ角度θ=tan−1(1/2)、長さが(51/2/4)p、D10→、D14は、縦軸、横軸に平行で、長さがp/2、また、ベクトルD12→は縦軸横軸と45°をなし、長さがp/(21/2)である。
【0035】
次に、ベクトルを生成する具体的方法について述べる。例えば、図8の4倍化の場合は、まず、式(2)におけるni、nt、ψ、dを決め、
【数3】

を与えるそれぞれの回転軸回りの角度である回転角度θ1、θ2、θ3を求め、ガラス板を傾ける方向を図12に示す様に、ベクトルD→、D→、D→のそれぞれの方向に対して直角な軸(1),(2),(3)(軸の位置は問わない)を回転軸として回転角度θ1、θ2、θ3を実現すればよい。
【0036】
この高精細化アダプタを装着した一実施形態としてディジタルカメラの概略構成を図13(a)に示す。魚眼レンズ12と、撮像デバイス1を内蔵したカメラ本体14との中間にアダプタ16を装着し、その中にガラス板20を設け、画像情報の変移ベクトルを実現する。
【0037】
図13(b)に示すアダプタ16は、1枚のガラス板20を持ち、そのガラス板20を必要とするベクトルの方向に対応する箇所を特定し、その箇所を1軸方向に上下することによって、ベクトルの長さに対応する角度を得る構造である。図13(b)の方式は、上記背景技術と同様にガラス板の上下運動を必要とし、上下運動を正確に制御は難しい。
【0038】
そこで、図13(c)に示す様に、光軸に対する傾き角度δを同一、かつ固定とし、互いに独立に回転する2枚のガラス板22,23を用いると良い。入射光線に対する画像情報の変移量Dは、2枚のガラス板22,23が作るそれぞれのベクトルの合成として与えられる。図13(c)では、2枚のガラス板22,23を、撮像光学系の光軸Lに対する所定の傾きδは同一で固定してあるため、ベクトルの長さは一定である。従って回転によって必要ベクトルを作る必要があり、全てのベクトルを作ることは不可能になるが、上下動は不要であり、回転のみにのみによってベクトルを作り出せるため制御が極めて簡略化される。
【0039】
図13(c)に示すアダプタの方式による画像変移ベクトルの実現法を図14に示す。図14(a)に示すように、必要とする画像変移ベクトルをD→とし、アダプタ16a、アダプタ16bで作られるベクトルをD→、D→としたとき
【数4】

として合成が出来る。図14(a)における△ABCは、
【数5】

であるため、二等辺三角形である。この2つのベクトルD→、D→でA点まで変移させることの出来る画像位置を図14(b)に示す。A点(即ち1つの撮像素子が存在する位置)から半径2r内に存在する画像位置にある画像情報をA点の撮像素子に変移させることができる。このことから、角度を正確に作り出すことができるのであれば、rを大きくとれば、全ての倍率を1つの2枚ガラスアダプタにより実現することが出来る。
なお、
【数6】

の場合には、ガラス板挿入以前にA点で得られていた画像をガラス板2枚挿入によって、得ることができなくなるため、必ず、式(3)は成立しなければならない。
【0040】
次に、この発明の他の実施形態を、図15を基にして説明する。この実施形態では、カメラ本体31は、撮像デバイスを収容し、それにより撮影された情報を外部に取り出すためのインタフェースを実装している。カメラ本体31には、全方位画像を撮影するための魚眼レンズや360度の全方位パノラマ撮像するパノラマ撮像レンズ32と、パノラマ撮像レンズ32を本体に装着するためのレンズマウント部33である。このレンズマウント部33に対してパノラマ撮像レンズ32を装着する際に、パノラマ撮像レンズ32の最先端部と撮像デバイスとの間で、レンズマウント部33内に存在するスペース部分に、歯車を有し回転できる構造とした傾斜ガラス板34を装着する。傾斜ガラス板34は、光軸に対して所定角度傾斜し、伝達歯車35を介して駆動歯車36と連結して、レンズ系の光軸と同軸の軸を中心として回転可能に設けられている。駆動歯車36は駆動モータ37により駆動することにより、傾斜ガラス板34を目的とする任意の角度に、すなわち、任意の方向に変移ベクトルを設定する。
【0041】
この実施形態では、2枚の傾斜ガラス板によって、必要な変移ベクトルを実現する。そのため、上述の傾斜ガラス板34とまったく同じ構造をもつ傾斜ガラス板38を上述のレンズマウント部33内の空間に傾斜ガラス板34と近接して実装し、伝達歯車39、駆動歯車40、さらに駆動モータ41を用いて任意の角度に制御する。
【0042】
駆動モータ37,41は同一のパソコン等のプログラムで制御される制御装置42と制御インタフェース43,44によって接続され、パソコン内に存在するソフトウェアにより、それぞれの傾斜ガラス板34,38の角度を制御し、必要な変移ベクトルを合成する。
【0043】
さらに、カメラ本体31とも制御インタフェース45で接続され、角度設定後、撮影の指示を出すことによって、変移ベクトル生成し、撮影を連動させ動画像を作成することも可能となる。
【0044】
なお、この発明の画像高精細化方法と撮像装置とは、上記実施形態に限定されるものではなく、撮像装置の構造は適宜選択可能なものであり、平行透明板の回転方法適宜のモータやその他の駆動素子を選択し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の原理図である。
【図2】入射光の光束を考慮した場合の屈折状況を説明するための概念図(a)と、変移量D、結像点移動量を説明する概略図(b)である。
【図3】光束広がり最大角度と撮像デバイス移動量との関係を示すグラフである。
【図4】ガラスの傾きと画像変移量との関係を示すグラフである。
【図5】撮像デバイス構造を示す概念図である。
【図6】この発明において1方向の変移により得られる画像についての説明図である。
【図7】この発明を解りやすく説明するためのベクトル合成表示を示す説明図である。
【図8】この発明において画像4倍化を行う場合のベクトル組を示す図である。
【図9】この発明において4倍の画像の合成法を示す概念図である。
【図10】この発明により9倍化画像取得のためのベクトル組の例を示す図である。
【図11】この発明により16倍化画像を合成するために必要なベクトルの組を示す図である。
【図12】この発明により4倍化画像合成を行うために必要な変移量、角度の説明図である。
【図13】この発明の一実施形態のディジタルカメラ画像の高精細化装置の構成例である。
【図14】この発明の2枚ガラスによる変移ベクトルの合成法を示す概念図である。
【図15】この発明の他の実施形態の、パノラマ撮像レンズを装着したディジタルカメラ画像高精細化装置の構成例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0046】
1 撮像デバイス
10 撮像素子
12 魚眼レンズ
14 カメラ本体
16 アダプタ
20,22,23 ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタルカメラの画像高精細化方法において、個々の画素を構成する撮像素子を2次元状に配置して形成された撮像デバイスと撮像レンズの間に、所定の等しい角度傾斜した2枚の平行透明板を設け、この平行透明板を、前記撮像レンズの光軸を軸として回転させて、前記各撮像素子に対して、同一被写体の異なる画像を入射させて、前記撮像素子により前記2枚の平行透明板の所定の角度毎に異なる画像情報を取得し、取得した各画像を合成して一つの高精細画像を得ることを特徴とする画像高精細化方法。
【請求項2】
前記2枚の平行透明板の回転角のみを制御することで、n2倍(但し、nは2以上の任意の整数)の高精細画像を得ることを特徴とする請求項1記載の画像高精細化方法。
【請求項3】
ディジタルカメラに設けられ個々の画素を構成する撮像素子を2次元状に配置し形成した撮像デバイスと、この撮像デバイスに対して所定の等しい角度傾斜して各々配置された2枚の平行透明板と、この平行透明板を各々独立に、前記撮像デバイス表面に対して直交する軸を中心に回転させる駆動装置とにより構成され、前記駆動装置を制御して前記平行透明板を介して、前記撮像デバイスに同一被写体の異なる画像を入射させ、前記各撮像素子に高解像度の画像情報を得ることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
前記撮像デバイスには、広角の撮像レンズが接続され、前記撮像デバイスと前記撮像レンズとの間に、前記2枚の平行透明板が設けられたことを特徴とする請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像レンズは、360度全周を撮影可能なパノラマ撮像レンズであることを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記駆動装置は、前記2枚の平行透明板をそれぞれ独立に回転させる機構と、この機構を回転させるモータと、このモータを制御するソフトウェア制御装置とにより構成されていることを特徴とする請求項3記載の撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−290266(P2009−290266A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137683(P2008−137683)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月14日 富山県立大学主催の「卒業論文発表会」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月8日 電気関係学会北陸支部学生会発行の「平成19年度北陸地区 学生による研究発表会 講演論文集」に発表
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【出願人】(591082915)株式会社立山システム研究所 (8)
【Fターム(参考)】