説明

画素データ生成装置、画像表示装置、レーダ装置、画素データ生成方法及び画素データ生成プログラム

【課題】レーダ装置等の画像表示装置が備える画素データ生成装置において、周方向を考慮した補間データを画素抜け部分に漏れなく描画できる構成を提供する。
【解決手段】レーダ装置の画像表示装置が備える画素データ生成装置は、エコー強度計算部と、補間内容生成部と、を備える。エコー強度計算部は、スイープラインS1上のサンプルデータと、スイープラインS2上のサンプルデータと、をXY直交座標系の画素データにそれぞれ変換する。補間内容生成部は、XY直交座標系のX軸又はY軸に平行な補間対象ライン上にある注目画素と、同一の補間対称ライン上にある対応画素と、の間に位置する対象画素の画素データを生成する。この対象画素の画素データは、スイープラインS1上の画素データとスイープラインS2上の画素データとに基づいて生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、前記発信源からの距離に応じて生成される画素データを、XY直交座標系の画素データとして生成する画素データ生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置等の信号処理装置は、ユーザが直感的に物標との位置関係を把握できるように、自機(アンテナ)の位置を基準に当該物標をプロットした画像を表示器に表示する。ここで、前記表示器においては画素が格子状(マトリクス状)に配列されているのが通常であるので、物標を画像にプロットする等の場合、画素の位置はXY直交座標系で取り扱われる。従って、上記のような信号処理装置では、表示器への表示のために、XY直交座標系の画素データを生成することが一般的に行われている。例えば、船舶等に用いられるレーダ装置は、回転するアンテナから所定の周期で(所定角度ごとに)電波を出力し、その電波の反射波から得られるデータを直交座標に逐次プロットしていくことで、自船と周囲に存在する物標の位置関係を表示器に視覚的に表現する。
【0003】
しかしながら、上記のレーダ装置により得られる情報は、電波の送信方向に対応して自船(中心)から放射状に引かれた直線上に分布するため、中心からの距離が大きくなればなるほど、隣り合う直線間の隙間が大きくなる。従って、電波の送受信により得られた情報を表示器へ単純に表示した場合、中心位置から離れた部分で画素抜けが生じ、表示画面の見た目を損なう原因となる。そのため、レーダ装置では、このような画素抜け部分を検出して補間処理を行うことがある。この種のレーダ装置を開示するものとして特許文献1がある。
【0004】
特許文献1は、以下のように構成されるレーダ装置を開示する。即ち、レーダ装置は、画像メモリと、LAST検出手段と、画素抜け検出手段と、補間手段と、を備える。前記画像メモリは、受信データを極座標から直交座標に座標変換して記憶する。前記LAST検出手段は、前回スイープラインデータθn-1上の任意のサンプル点iと、前回スイープラインデータθn-1及び今回スイープラインデータθn上の複数の近接サンプル点との各対応画素の一致判断を行う。そして、前記LAST検出手段は、サンプル点iの対応画素が他のサンプル点の各対応画素の全てと一致しない場合に、該サンプル点iをLASTサンプル点として検出する。前記画素抜け手段は、前記他のサンプル点の各対応画素が、LASTサンプル点の対応画素に対してスイープ回転側に接する隣接画素に一致するか否かを検出する。そして、画素抜け検出手段は、前記検出を行った結果、何れも一致しない場合に、該隣接画素に対応するサンプル点が存在しない画素抜け状態があったものとして検出する。補間手段は、画素抜け検出時に該隣接画素を補間画素として、近傍画素のデータで補間する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−352211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画素抜け部分は、アンテナの回転速度、アンテナが電波を出力する周期及び表示する画像の倍率等のパラメータによって、その発生位置や大きさが様々に変化するため、適切に検出されないことがある。この点、特許文献1は、LAST判定された画素に隣接する箇所の画素抜けを検出することができるものの、アンテナ(スイープ)の回転方向に連続して画素抜けが生じているような場合等に、画素抜け部分を検出できないおそれがあった。
【0007】
近年、レーダ装置等の表示器は、その画素数の増加により精密な画像表現が可能になっている。そのため、従来の画素数の画面では発生しなかったような画素抜けが生じる場合があった。このような画素抜け部分を漏れなく補間する方法として、隣り合う直線(スイープライン)の間をX軸方向又はY軸方向で1画素ずつ補間する方法が考えられる。この方法であれば、画素抜け部分に漏れなく補間データを描画することができる。
【0008】
ところで、滑らかなレーダ画像を表示するためには、補間処理で描画された画素と、スイープラインのサンプルデータに基づいて描画された画素と、の間に違和感がないように補間データを生成する必要がある。この点、X軸方向又はY軸方向で1画素ずつ補間する方法は、画素を補間していく方向(X軸方向又はY軸方向)と画素の連続性を考慮する画素の方向(周方向)とが異なるため、補間データの描画と並行的に補間データを生成することが難しかった。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーダ装置等の画像表示装置が備える画素データ生成装置において、周方向を考慮した補間データを画素抜け部分に漏れなく描画できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、以下のように構成される画素データ生成装置が提供される。即ち、画素データ生成装置は、第1の方位に向けて発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第1スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて第1画素データを生成する。また、前記第1の方位とは異なる第2の方位に向けて前記発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第2スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて第2画素データを生成する。画素データ生成装置は、前記第1画素データと前記第2画素データとを含む複数の画素データを、XY直交座標系の画素データとして生成する。そして、画素データ生成装置は、画素データ変換手段と、補間画素データ生成手段と、を備える。前記画素データ変換手段は、前記第1画素データと前記第2画素データとをXY直交座標系の画素データにそれぞれ変換する。補間画素データ生成手段は、XY直交座標系のX軸又はY軸に平行な補間軸上にある注目画素としての第1画素と、同一の前記補間軸上にある対応画素としての第2画素と、の間に位置する補間対象画素の画素データを生成する。この補間対象画素の画素データは、前記第1スイープライン上の画素データと前記第2スイープライン上の画素データとに基づいて生成される。
【0012】
これにより、第1スイープライン上の画素データと第2スイープライン上の画素データとを反映して補間対象画素の画素データを生成することができる。また、X軸又はY軸に平行な方向で補間処理を行うので、画素抜け部分に漏れなく画素データを生成することができる。
【0013】
前記の画素データ生成装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記補間画素データ生成手段は、前記注目画素の画素データと、前記対応画素の画素データと、を含む複数の画素データに基づいて前記補間対象画素の画素データを生成する。
【0014】
これにより、補間軸上の注目画素と対応画素に基づいてシンプルな処理で補間対象画素の画素データを生成することができる。
【0015】
前記の画素データ生成装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記補間画素データ生成手段は、第1参照画素の画素データと、第2参照画素の画素データと、を含む複数の画素データに基づいて前記補間対象画素の画素データを生成する。前記第1参照画素は、前記第1スイープライン上の第1画素であって、前記注目画素とは異なる画素である。前記第2参照画素は、前記第2スイープライン上の第2画素であって、前記対応画素とは異なる画素である。
【0016】
これにより、第1スイープライン及び第2スイープライン上の画素であって、補間軸上に位置しない画素の画素データを考慮して補間対象画素の画素データを生成することができる。
【0017】
前記の画素データ生成装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記補間画素データ生成手段は、前記注目画素の画素データと、前記対応画素の画素データと、第1参照画素の画素データと、第2参照画素の画素データと、の少なくとも何れかを含む複数の画素データに基づいて前記補間対象画素の画素データを生成する。前記第1参照画素は、前記第1スイープライン上の第1画素であって、前記注目画素とは異なる画素である。前記第2参照画素は、前記第2スイープライン上の第2画素であって、前記対応画素とは異なる画素である。
【0018】
これにより、画素抜けが生じている部分に応じて柔軟に補間対象画素の画素データを生成することができる。
【0019】
前記の画素データ生成装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記補間画素データ生成手段は、第1等距離画素の画素データと、第2等距離画素の画素データと、を含む複数の画素データに基づいて前記補間対象画素の画素データを生成する。前記第1等距離画素は、前記第1スイープライン上で、前記発信源に対応する基準位置から前記補間対象画素までの距離と略等距離に位置する画素である。前記第2等距離画素は、前記第2スイープライン上で、前記基準位置から前記補間対象画素までの距離と略等距離に位置する画素である。
【0020】
これにより、周方向に違和感がない画像を表示することができる。
【0021】
前記の画素データ生成装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記補間画素データ生成手段は、前記第1等距離画素の画素データ及び前記第2等距離画素の画素データと、前記補間対象画素と前記第1等距離画素との間の第1距離及び前記補間対象画素と前記第2等距離画素との間の第2距離と、に基づいて前記補間対象画素の画素データを生成する。
【0022】
これにより、参照画素から補間対象画素までの距離が補間対象画素の画素データに反映されることになるので、画像を滑らかなものにすることができる。
【0023】
前記の画素データ生成装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記補間画素データ生成手段は、前記第1等距離画素の画素データと、前記第2等距離画素の画素データと、を前記第2距離と前記第1距離で按分して前記補間対象画素の画素データを生成する。
【0024】
これにより、補間対象画素に近い画素の画素データの内容が補間対象画素の画素データに大きく反映されることになるので、周方向の連続性をより一層高めることができる。
【0025】
前記の画素データ生成装置においては、以下のように構成されることが好ましい。前記補間画素データ生成手段は、前記補間軸上にある前記補間対象画素の画素データを順次算出する。そして、前記補間軸を当該補間軸に直交する方向へ順次移動させる。
【0026】
これにより、X軸方向又はY軸方向で行われる補間処理を連続的かつ効率的に行うことができる。
【0027】
前記の画素データ生成装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、画素データ生成装置は、補間軸設定手段を備える。前記補間軸設定手段は、前記第1スイープライン又は前記第2スイープラインの何れか一方又は両方の方位に基づいて、前記補間軸をX軸に平行な方向に設定するかY軸に平行な方向に設定するかを決定する。
【0028】
これにより、第1スイープライン又は第2スイープラインの方位に基づいて、補間対象画素の画素データを適切に生成できるように補間軸を設定することができる。
【0029】
前記の画素データ生成装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記補間軸設定手段は、前記第1スイープラインの向き又は前記第2スイープラインの向きがX軸と平行に近いか否か又は前記第1スイープラインの向き又は前記第2スイープラインの向きがY軸と平行に近いか否かに基づいて前記補間軸の向きを決定する。
【0030】
これにより、スイープラインの向きがX軸方向又はY軸方向に平行に近くなることで、補間対象画素の画素データが適切に生成されなくなる事態を防止できる。
【0031】
本発明の第2の観点によれば、前記の画素データ生成装置と、前記画素データ生成装置で生成された画素データに基づいて画像を表示する画像表示手段と、を備える画像表示装置が提供される。
【0032】
本発明の第3の観点によれば、前記の画像表示装置と、探知信号を生成する探知信号生成手段と、前記探知信号を発射するとともに、物標からのエコー信号を受信するアンテナ手段と、を備えるレーダ装置が提供される。
【0033】
本発明の第4の観点によれば、以下のステップを含む画素データ生成方法が提供される。即ち、画素データ生成方法は、第1画素データ生成ステップと、第2画素データ生成ステップと、画素データ変換ステップと、補間画素データ生成ステップと、を含む。前記第1画素データ生成ステップでは、第1の方位に向けて発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第1スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて第1画素データを生成する。前記第2画素データ生成ステップでは、前記第1の方位とは異なる第2の方位に向けて前記発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第2スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて第2画素データを生成する。前記画素データ変換ステップでは、前記第1画素データと前記第2画素データとをXY直交座標系の画素データにそれぞれ変換する。補間画素データ生成ステップでは、XY直交座標系のX軸又はY軸に平行な補間軸上にある注目画素としての第1画素と、同一の前記補間軸上にある対応画素としての第2画素と、の間に位置する補間対象画素の画素データを、前記第1スイープライン上の画素データと前記第2スイープライン上の画素データとに基づいて生成する。
【0034】
これにより、第1スイープライン上の画素データと第2スイープライン上の画素データとを反映して補間対象画素の画素データを生成することができる。また、X軸又はY軸に平行に補間処理を行うので、画素抜け部分に漏れなく画素データを生成することができる。
【0035】
本発明の第5の観点によれば、以下のステップを含む画素データ生成プログラムが提供される。即ち、画素データ生成プログラムは、第1画素データ生成ステップと、第2画素データ生成ステップと、画素データ変換ステップと、補間画素データ生成ステップと、を含む。前記第1画素データ生成ステップでは、第1の方位に向けて発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第1スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて第1画素データを生成する。前記第2画素データ生成ステップでは、前記第1の方位とは異なる第2の方位に向けて前記発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第2スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて第2画素データを生成する。前記画素データ変換ステップでは、前記第1画素データと前記第2画素データとをXY直交座標系の画素データにそれぞれ変換する。補間画素データ生成ステップでは、XY直交座標系のX軸又はY軸に平行な補間軸上にある注目画素としての第1画素と、同一の前記補間軸上にある対応画素としての第2画素と、の間に位置する補間対象画素の画素データを、前記第1スイープライン上の画素データと前記第2スイープライン上の画素データとに基づいて生成する。
【0036】
これにより、第1スイープライン上の画素データと第2スイープライン上の画素データとを反映して補間対象画素の画素データを生成することができる。また、X軸又はY軸に平行に補間処理を行うので、画素抜け部分に漏れなく画素データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーダ装置の構成を概略的に示したブロック図。
【図2】X軸方向での画素抜け検出を説明する図。
【図3】X軸方向での補間データの生成を説明する図。
【図4】補間データの生成における重み付け処理を説明する図。
【図5】仮想注目画素を設定して行う補間処理を説明する図。
【図6】オフセット範囲での補間データの生成及び描画を説明する図。
【図7】開始位置近傍の重なり処理を説明する図。
【図8】補間データの生成処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るレーダ装置10の構成を概略的に示したブロック図である。
【0039】
図1に示す本実施形態のレーダ装置10は、レーダアンテナ1と、画像表示装置(画像表示手段)2と、を備える。
【0040】
レーダアンテナ1は、パルス状の電波である探知信号を送信(放射)できるとともに、この送信した電波の反射波であるエコー信号を受信可能に構成されている。このレーダアンテナ1は、所定の周期で水平面内を回転しており、この回転周期より小さい周期で前記探知信号が方位を異ならせながら繰り返し出力されている。このレーダアンテナ1は、探知信号生成装置(図略)を備えており、探知信号生成手段としても機能している。
【0041】
画像表示装置2は、受信部11と、A/D変換部12と、スイープメモリ13と、画素データ生成装置5と、表示器19と、を主要な構成として備えている。
【0042】
受信部11は、レーダアンテナ1が受信した反射波を検波し、増幅してA/D変換部12に出力する。A/D変換部12は、受信部11から送られてきたアナログ信号を適宜のデジタル信号に変換する。
【0043】
スイープメモリ13は、A/D変換部12によってデジタル信号に変換された1スイープ分の受信データを記憶可能に構成されている。なお、ここでいう「スイープ」とは、探知信号を送信してから次の探知信号を送信するまでの一連の動作をいい、「1スイープ分の受信データ」とは、探知信号を送信した後、次の探知信号を送信するまでの期間に受信したデータをいう。
【0044】
電波は直進する性質を持っているので、1スイープ分の受信データは、自船を起点にしてレーダアンテナ1の向きに引いた1本の直線上における状況を表す。また、レーダアンテナ1が当該直線の向きに探知信号を送信したときに、自船に近い物標によるエコー信号は早いタイミングで受信され、遠い物標によるエコー信号は遅いタイミングで受信される。従って、1スイープ分の受信データには、前記直線上に物標があるか否かの情報、及び、物標があった場合は当該物標が自船からどれだけ離れているかを表す情報が含まれている。前記スイープメモリ13には、1スイープ分の受信データを時系列順で記憶することができる。
【0045】
画素データ生成装置5は、表示器19に表示される画像を構成する画素データを生成するためのものであり、画素を生成するためのプログラムが図略の記憶部に記憶されている。本実施形態の画素データ生成装置5について具体的に説明する。画素データ生成装置5は、エコー強度計算部14と、表示用画像メモリ15と、描画アドレス発生部16と、画素抜け検出部31と、補間アドレス発生部32と、補間内容生成部33と、を備えている。
【0046】
エコー強度計算部14は、スイープメモリ13から1スイープ分の受信データを時系列順に読み出して振幅を順次計算することで、当該受信データ中に等間隔で設定された複数のポイントでのエコー強度をそれぞれ算出する。これは、実質的には、レーダアンテナ1から探知信号を送信した時点から一定の時間間隔をあけて複数設定された時刻のそれぞれにおいて、反射波のエコー強度を検出することに相当する。
【0047】
エコー強度計算部14で取得されたエコー強度のデータ群(以下、このデータ群を「1スイープ分のエコー強度データ群」と呼ぶことがある。)は、表示用画像メモリ15へ時系列順に出力され、順次記憶される。なお、1スイープ分のエコー強度データ群を表示用画像メモリ15の画像データのうち何れの画素に記憶させるかは、描画アドレス発生部16によって決定される。
【0048】
表示用画像メモリ15は、表示器19に画像を表示するための複数の画素データからなる画像データ(ラスタデータ)を記憶可能に構成されている。表示用画像メモリ15が保持する画像(以下、表示用画像と称する。)は、多数の画素が縦横に格子状(m画素×n画素のマトリクス状)に並べられることで表現されている。
【0049】
この表示用画像メモリ15に格納された表示用画像のデータは、適宜のタイミングで読み出されて表示器19に表示される。表示用画像メモリ15には、エコー強度の情報等を前記画素データとして画素毎に記憶することができる。
【0050】
画素データ変換手段(画素位置計算部)としての描画アドレス発生部16は、エコー強度計算部14で得られた1スイープ分のエコー強度データ群を構成するエコー強度データのそれぞれについて、対応する表示用画像上の画素の位置(アドレス)を求めることができる。この描画アドレス発生部16には、探知信号を送信したときのレーダアンテナ1の角度θを表す信号が入力される。描画アドレス発生部16は、レーダアンテナ1の角度θ及びレーダレンジ等に基づき、エコー強度の各データに対応する画素の位置を以下の方法で計算する。
【0051】
即ち、レーダアンテナ1から探知信号を送信してから時間tが経過した時点でエコー信号が返ってきた場合、その時間tの間に、レーダアンテナ1と物標との間の距離rを電波が往復したことになる。従って、水平な平面内でレーダアンテナ1を原点とする極座標系を定義すると、レーダアンテナ1が探知信号を送信してから時間tが経過したときのエコー強度に対応する物標の位置は、当該探知信号の送信時の所定の方位基準(例えば北)からのアンテナ角度をθとして、上記の極座標系で(r,θ)=(c×t/2,θ)と表すことができる。ただし、cは光速である。また、上記極座標系においてアンテナ角度θは、レーダアンテナ1が所定の方位(北方向)を向いているときに0°となり、レーダアンテナ1が通常回転する方向が正となるように定められる。なお、所定の方位としては、船体の座標系(船首基準)を用いることもできる。
【0052】
一方、表示用画像メモリ15で保持される表示用画像は、上記のとおり、格子状(マトリクス状)に配列された画素によって表現される。本実施形態では、表示用画像における各画素の位置を、画像の左上隅を原点とし、右方向にX軸をとり、下方向にY軸をとるXY直交座標系で取り扱うこととしている。
【0053】
そして、描画アドレス発生部16は、前記表示用画像においてエコー強度の情報を記憶させるべき画素の位置を算出する。具体的には、この画素の位置(X,Y)は、上記XY直交座標系における自船(レーダアンテナ1)の位置を(Xs,Ys)とした場合、以下の式(1)に従って計算される。
【数1】

ただし、tは、レーダアンテナ1が探知信号を送信した時点からの経過時間である。kは、表示器19の表示領域のサイズ及びレーダレンジ等を考慮して定められる定数であり、θはアンテナ角度である。なお、(X,Y)は、前記表示用画像を構成する画素の位置(アドレス)を特定するものであるため、X及びYの計算結果において、小数点以下の端数は適宜丸められる。
【0054】
本実施形態では、1スイープ分のエコー強度データ群を構成する各データが、エコー強度計算部14から表示用画像メモリ15へ時系列順に出力される。そして、描画アドレス発生部16は、それぞれのエコー強度データに対応する画素の位置(X,Y)を式(1)に従って順次求めて表示用画像メモリ15へ出力する。従って、1スイープ分のエコー強度データ群を処理する場合、描画アドレス発生部16としては、上記の式においてθを一定とし、tをゼロから増大させながら(X,Y)を繰り返し計算していくことになる。
【0055】
上記の計算により、1スイープ分のエコー強度データ群に対応する表示用画像上の画素をXY直交座標系で表した位置(X,Y)は、自船の位置(Xs,Ys)を基準とした角度θの直線上となる。なお、以下の説明では、この直線を「スイープライン」と称することがある。
【0056】
従って、前記描画アドレス発生部16は、前記直線上の点(スイープライン上の点)に対応する、表示用画像における画素の位置(X,Y)を求める機能を有しているということができる。また、描画アドレス発生部16は、極座標で表現されるスイープライン上の点(r,θ)を、XY直交座標系での画素の位置(X,Y)に変換する、座標変換部としての機能を有しているということができる。
【0057】
描画アドレス発生部16による計算結果として得られる画素の位置(X,Y)は、tがゼロから増大するに伴って自船の位置(Xs,Ys)から離れていくように順次移動し、その移動軌跡が1本の直線(前記スイープライン)を描くことになる。1スイープ分のエコー強度データ群は、前記表示用画像において1本の前記スイープラインを描くように、計算された位置の画素に画素データとして記憶される。
【0058】
また、以後の説明では、表示用画像メモリ15に記憶される前記表示用画像の画素にエコー強度の情報を画素データとして記憶させることを、当該画素に「描画する」(又は、画素を「埋める」)と表現する場合がある。
【0059】
探知信号を1回送信する毎にレーダアンテナ1の角度θが変更されるため、これに伴ってスイープラインの角度も変化する。以下の説明では、アンテナ角度がθnのときのサンプルデータに基づくスイープラインを第1スイープラインとしての「スイープラインS1」と称する。また、アンテナ角度がθn-1(ただし、θn>θn-1)のときのサンプルデータに基づくスイープラインを第2スイープラインとしての「スイープラインS2」と称する。
【0060】
画素抜け検出部31は、画像データに存在する画素抜けを検出するためのものである。この画素抜け検出部31は、スイープラインS1上の画素の位置と、スイープラインS2上の画素の位置と、に基づいて、スイープラインS1とスイープラインS2との間に発生する画素抜けを検出する。
【0061】
画素抜け検出部31は、スイープライン上の画素の位置を記憶するための対応画素位置記憶メモリ(記憶部、第2画素位置記憶メモリ)40を有している。この対応画素位置記憶メモリ40は、RAM等の適宜のハードウェアで構成されている。なお、この画素抜け検出部31による画素抜け検出の詳細については後述する。
【0062】
補間アドレス発生部32は、画素抜け検出部31によって画素抜けと判定された部分に相当する画素の位置(表示用画像メモリ15でのアドレス)を示す補間用のアドレスを生成する。
【0063】
補間画素データ生成手段としての補間内容生成部33は、画素抜け検出部31によって画素抜けと判定された部分を埋めるべき内容(補間データ)を生成する。補間データは、補間アドレス発生部32によって生成された補間用の補間アドレスに基づいて表示用画像メモリ15に書き込まれ、これにより補間が行われる。なお、補間内容生成部33による補間データの生成の詳細については後述する。
【0064】
表示手段としての表示器19は、CRT又はLCD等によって構成されるラスタスキャン式の表示装置である。表示用画像メモリ15から読み出された表示用画像の画像データが、この表示器19によって表示される。
【0065】
以上の構成のレーダ装置10において、エコー強度計算部14は、レーダアンテナ1から探知信号を送信したときのエコー信号に基づいて、1スイープ分のエコー強度データ群を得る。また、描画アドレス発生部16は、探知信号送信時のレーダアンテナ1の角度θに基づいて、1スイープ分のエコー強度データ群を表示用画像メモリ15に記憶させる複数の画素の位置を(XY直交座標系で)順次求める。
【0066】
そして、以上の結果に基づき、表示用画像メモリ15が保持する表示用画像において角度θのスイープラインがあたかも描画されるかのように、前記エコー強度データ群を構成する各データが、表示用画像メモリ15に画素データとして記憶される。以上の処理をレーダアンテナ1の角度θを少しずつ変更しながら繰り返すことで、表示用画像メモリ15の画像データに、自船の位置を基準とするスイープラインを1本ずつ描くことができる。
【0067】
こうして得られた画像データは、表示用画像メモリ15から適宜のタイミングで読み出され、他の情報との合成処理等が適宜行われた上で表示器19に表示される。この結果、多数のスイープラインが放射状に描かれた画像が表示器19に表示され、ユーザは当該画像を見ることで、自船とその周囲の物標との位置関係を知ることができる。レーダアンテナ1の回転に伴って表示用画像メモリ15の画像には新しいスイープラインが繰り返し描画され、この結果、表示器19に表示される画像も随時更新されていく。
【0068】
次に、本実施形態のレーダ装置10の画素抜け検出及び補間処理について説明する。図2は、X軸方向での画素抜け検出を説明する図である。
【0069】
本実施形態の画素抜け検出部31による画素抜けの検出は、隣り合うスイープラインの間に生じる画素抜けを、表示用画像メモリ15において画素が配列される方向(X軸方向)で検出するものである。
【0070】
以下、X軸方向に画素抜けを検出する場合で説明する。即ち、表示用画像にスイープラインS1を描くためにエコー強度等の情報を書き込むべき画素は複数あるが、そのうちの1つの画素に注目し、この画素を注目画素(第1画素)とする。この注目画素は、描画アドレス発生部16によって、アンテナ角度θn等に基づいて求めることができる。次に、スイープラインS2を描く際にエコー強度が書き込まれた複数の画素の中から、前記注目画素とY座標が同一である画素(言い換えれば、注目画素にX軸方向で対応する画素)を探す。そして、見つかった画素を対応画素(第2画素)とする。本実施形態においては、スイープラインS1が第1スイープラインに該当し、スイープラインS2が第2スイープラインに該当する。
【0071】
次に、注目画素と対応画素の位置関係を調べる。即ち、注目画素と対応画素がX軸方向で隣接している又は重なり合っている場合には、そのX軸方向に画素抜けが生じていないと判定する。一方、注目画素と対応画素とに挟まれた1以上の画素(中間画素)が存在している場合には、画素抜けが生じている(前記中間画素が画素抜け部分である)と判定する。
【0072】
また、本実施形態では、スイープラインS1は現在処理している(描画しようとしている)今回スイープラインである。また、スイープラインS2は、スイープラインS1の直前に処理(描画)した前回スイープラインであり、スイープラインS1とは異なる方位を向いたスイープラインである。今回処理しているスイープラインS1(今回スイープライン)は、次回に処理するスイープラインとの関係では前回スイープラインとなる。そこで画素抜け検出部31は、今回スイープラインを表示用画像に描画する際に描画アドレス発生部16で計算した画素の位置(X,Y)を、次回のスイープライン描画時の画素抜け検出で使用するために、対応画素位置記憶メモリ40に記憶することとしている。なお、本実施形態の画素抜け検出方法及び補間データ(画素データ)の生成方法は、2つのスイープラインが時間的に連続していない場合又は互いに隣接していない場合であっても、2つのスイープラインの方位が異なっていれば、当該スイープライン間の画素抜け部分の補間処理に適用できることは勿論である。
【0073】
画素抜け検出部31は、前記注目画素のY座標を対応画素位置記憶メモリ40のインデックスに指定して記憶内容を参照することにより、前記対応画素のX座標を取得する。そして、注目画素のX座標と対応画素のX座標との差分を計算することで、両画素の間に挟まれた中間画素の有無を判定する。なお、画素抜け検出方向がY軸方向である場合には、前記対応画素位置記憶メモリ40にはX座標のインデックスが付けられ、当該X座標に対応するY座標が記憶されることになる。
【0074】
次に、X軸方向で画素抜けを検出する例を具体的に説明する。図2は前記表示用画像の一部を概念的に示したものであり、1つのマス目が1つの画素に対応している。図2に示すように、複数の画素が縦横に並べられて表示用画像が構成されており、スイープラインS2が描画された画素と、スイープラインS1が描画される画素と、が模式的に示されている。
【0075】
上述したとおり、表示用画像にスイープラインを形成するための画素の描画は、自船に相当する画素の位置(Xs,Ys)に近い画素から順次行っていく。そして、画素が1つ描画されるごとに、当該画素を注目画素として上記の画素抜け検出を行う。このように、スイープラインS1の画素が1つ描画されるごとに画素抜け検出処理を行うことで、スイープラインS1とスイープラインS2との間に生じている画素抜けを漏れなく検出することができる。
【0076】
以下、図2の画像において(Xd,Yk)の画素を注目画素とする場合を例にして説明する。スイープラインS1上の点に対応する画素の位置を描画アドレス発生部16が計算した結果として(Xd,Yk)が得られると、画素抜け検出部31は、当該画素(注目画素)のY座標の値、即ちYkをインデックスとして指定して、対応画素位置記憶メモリ40の内容を参照する。対応画素位置記憶メモリ40には、Ykに対応するX座標の値として、スイープラインS2の描画時のX座標であるXbが記憶されている。これにより、注目画素に対応する対応画素の位置(Xb,Yk)を得ることができる。
【0077】
次に、画素抜け検出部31は、注目画素と対応画素のX座標の差分を計算する。今回の例では、差分の値が2以上(Xd−Xb=2)であるので、両画素が隣接しておらず、かつ重なっていないこと(言い換えれば、両画素に挟まれる1つ以上の画素が存在すること)が判る。従って、画素抜け検出部31は、画素抜けがあると判定する。
【0078】
画素抜けの判定後、対応画素位置記憶メモリ40の記憶内容が更新される。即ち、注目画素のY座標(Yk)をインデックスとして指定して、当該Y座標に対応する対応画素位置記憶メモリ40の記憶内容を、注目画素のX座標(Xd)で上書きする。これにより、対応画素位置記憶メモリ40が指す画素の位置が、図2の白抜き矢印で示すようにX軸方向に移動することになる。
【0079】
次に、(Xc,Yl)の画素を注目画素とする場合について説明する。この場合、インデックスとしてYlを指定して対応画素位置記憶メモリ40の記憶内容が参照されると、注目画素にX軸方向で対応する画素(対応画素)のX座標がXbであることが判る。両画素のX座標の差分値を計算すると、Xc−Xb=1であるので、両画素は隣接していることになる。従って、画素抜け検出部31は、画素抜けがないと判定する。
【0080】
本実施形態では、画素抜け検出部31が画素抜けありと判定した場合、当該画素抜け検出部31は画素抜け数を併せて出力する。この画素抜け数は、注目画素と対応画素との間に挟まれる画素(中間画素)の数を意味するものであり、前記のX座標の差分値から1を減じることで得ることができる。画素抜け数がゼロの場合は、画素抜けが検出されなかったことを意味する。
【0081】
なお、Y軸方向に画素抜けを検出する場合も、X軸方向に画素抜けを検出する方法と同様の処理によって画素抜けを検出することができる。即ち、画素抜けの検出方向がY軸方向である場合、スイープラインS1を描くために書き込むべき画素群から画素を1つ選んで注目画素とする。また、スイープラインS2を描くために書き込まれた画素群から、前記注目画素とX座標が同一である画素(注目画素にY軸方向で対応する画素)を探し、これを対応画素とする。そして、注目画素と対応画素とに挟まれた1以上の画素が存在すれば、当該画素(中間画素)の部分が画素抜けであると判定するのである。
【0082】
本実施形態において、画素抜けの検出は、レーダアンテナ1の角度(スイープラインの角度であるスイープ角度)θに応じて切り替えるように構成されている。即ち、画素抜けの検出方向をX軸方向とするかY軸方向とするかをスイープ角度によって自動的に切り替えるのである。より具体的には、スイープ角度θが−45度(315度)から45度までの範囲及び135度から225度までの範囲では、X軸方向で画素抜けの検出を行う。また、前記スイープ角度が45度から135度までの範囲及び225度から315度までの範囲では、Y軸方向で画素抜けの検出を行う。この画素抜けの検出方向の決定は、図略のスイープ角度判定部によって行う。また、この決定にあたって参照されるスイープ角度としては、スイープラインS1の角度θn及びスイープラインS2の角度θn-1のうち何れか一方又は両方を用いることができる。以上に示した処理によって検出された中間画素が補間対象画素として補間処理される。
【0083】
次に、補間データの生成処理の詳細について説明する。図3(a)は、X軸方向に補間処理を行う様子を説明する図であり、図3(b)は、図3(a)の破線の楕円で囲われた部分の様子を拡大した図である。
【0084】
画素抜け検出部31によって、スイープラインS2とスイープラインS1との間で検出された中間画素は、X軸方向のライン(補間対象ライン)ごとに補間処理される。
【0085】
補間内容生成部33によって、補間対象ライン(補間軸)の位置が設定されると、画素抜け検出部31によって検出された中間画素に対して画素ごとに補間処理が行われる。以下、図3(b)を参照しながら、画素ごとに行われる補間処理について説明する。図3(b)に示す例では、画素抜け検出部によって求められた対応画素の座標は(XA,YA)であり、注目画素の座標は(XB,YA)である。
【0086】
補間データを生成する対象となる画素(以下、対象画素と称する)は、対応画素から注目画素に向かって1画素ごとに移動する。図3(b)の例では、補間データが生成されるたびに、対象画素のX座標の値がインクリメントされて対象画素が右隣りに移動する。生成された補間データは、表示用画像メモリ15に出力され、補間アドレスに基づいて適宜の位置に書き込まれる。この処理が対応画素の右隣りの画素から注目画素の左隣りの画素まで繰り返される。補間対象ライン中の全ての中間画素の補間データが生成されると、補間対象ラインが次の行に移動する。図3(b)の例では、補間対象ラインの位置を示すY座標の値がデクリメントされて補間対象ラインが一行上に移動する。
【0087】
本実施形態では、対象画素の補間データは、スイープラインS2上にある参照画素の内容(前回参照データ)と、スイープラインS1上にある参照画素の内容(今回参照データ)と、に基づいて設定される。スイープラインS2の参照画素(第2等距離画素)及びスイープラインS1の参照画素(第1等距離画素)は、開始位置(スイープラインの始点)に対する対象画素の位置を考慮して設定されたものであり、対象画素に周方向で対応する画素である。なお、本実施形態において、「周方向で対応する画素」とは、スイープラインの始点を中心として対象画素を通過する仮想的な円を考えたときに、この仮想的な円とスイープラインの交点(参照点)の位置に基づいて設定される画素のことを意味する。
【0088】
次に、参照画素の位置の更新について説明する。図3(b)に示すように、補間対象ラインが設定されることによって、開始位置(Xs,Ys)から対応画素(XA,YA)までの距離RAと、開始位置(Xs,Ys)から注目画素(XB,YA)までの距離RBと、が定まる。補間対象ラインが設定されると、補間内容生成部33は、距離RAに基づいてスイープラインS1上に半径情報対応画素を設定する。スイープラインS1の半径情報対応画素は、スイープラインS2上の対応画素に周方向で対応する画素であり、注目画素よりもスイープラインの始点側に位置している。また、補間内容生成部33は、距離RBに基づいてスイープラインS2上に半径情報対応画素を設定する。スイープラインS2の半径情報対応画素は、スイープラインS1上の注目画素に周方向で対応する画素であり、対応画素よりもスイープラインの終点側に位置している。
【0089】
スイープラインS2の参照点は、対象画素が注目画素に近づくに伴って、対応画素から半径情報対応画素の方向(スイープラインの始点から離れる方向)に移動する。一方、スイープラインS1の参照点は、対象画素が注目画素に近づくに伴って、半径情報対応画素から注目画素の方向(スイープラインの始点から離れる方向)に移動する。このように、各スイープラインの参照点は、対象画素の移動に同期してスイープライン上を一方向に移動するようになっている。
【0090】
補間処理は対象画素を右へ1画素単位で移動させながら行うので、対象画素の移動に伴って移動する参照点の移動量も一定になる。この移動量は、RBからRAを引いた距離と、注目画素から対応画素までの距離と、に基づいて算出することができる。対象画素が1画素移動するときに、参照点がスイープライン上を移動する移動量をMとすると、次式のように表現することができる。
【数2】

ただし、図3(b)の例では、dx=XA−XBである。
【0091】
対象画素が1画素移動するたびに、式(2)で求めた移動量Mだけ参照点を移動させる。図3(b)の例では、それぞれのスイープライン上を、スイープラインの始点から離れる方向に、参照点を移動量Mだけ移動させる。このように、移動量を加算するという簡単な処理によって、対象画素の位置に対応した参照点の位置を正確に求めることができる。参照画素は、更新された参照点に基づいて対象画素の移動のたびに再設定される。
【0092】
上述したように、補間データは、スイープラインS2の参照画素の内容を示すデータと、スイープラインS1の参照画素の内容を示すデータと、を合成して生成される。補間データの画素の内容を決定する処理について説明する。図4は、補間データの生成における重み付け処理を説明する図である。
【0093】
本実施形態の補間データは、各スイープラインの参照画素のデータに重み付け処理を行って生成される。この重み付け処理は、対象画素に近い参照画素の内容が強く反映されるように行われる。例えば、図4に示すように、スイープラインS1の参照画素から対象画素までの距離が、スイープラインS2の参照画素から対象画素までの距離より短い場合は、スイープラインS1の参照画素の内容が強く反映されるように重み付けされる。
【0094】
具体的に説明する。図4に示すように、スイープラインS2の参照画素から対象画素までの距離(第2距離)と、スイープラインS1の参照画素から対象画素までの距離(第1距離)と、の比をW:1−Wと考える。ここで、スイープラインS2の参照画素の画素データをeAとし、スイープラインS1の参照画素の画素データをeBとする。図4の例では、対象画素の画素データeiは、次式によって表現することができる。
【数3】

この式において、Wは対象画素の画素データを生成するための重み付け係数と言うことができる。
【0095】
上述したように、対象画素の移動に伴ってそれぞれの参照画素も移動する。従って、W:1−Wの比についても、対象画素の移動ごとに算出する必要がある。ここで、対象画素は1画素単位で移動するので、Wは一定の値で増加又は減少していくことになる。対象画素が1画素移動するたびに変化する値を増減値Wrと表現すると、Wrは、以下のように表現することができる。
【数4】

【0096】
対象画素が1画素移動するたびに、増減値WrをWに加算することで、新しい位置に移動した対象画素に対応した重み付け係数Wを得ることができる。なお、Wの初期値は0である。
【0097】
そして、式(3)にeA、eB及びWを代入することで、対象画素の画素データeiを算出することができる。このように生成された画素データeiは、補間内容生成部33から表示用画像メモリ15に転送されて記憶される。対象画素の移動のたびに、以上の処理を繰り返すことで、参照画素のデータが反映された補間データが画素抜け部分に漏れなく描画される。
【0098】
次に、対応画素又は注目画素を仮想的に設定する場合について説明する。表示器19の表示範囲には限界があるので、スイープラインの終点近傍のように開始位置(Xs,Ys)から離れた領域では、スイープラインS2上で対応画素を算出できない場合や、スイープラインS1上で注目画素を算出できない場合がある。この場合、本実施形態では、上述した補間データの生成及び補間処理を行うために、対応画素又は注目画素を仮想的に設定している。図5を例にして、仮想的に注目画素を設定する場合について説明する。図5は、仮想注目画素を設定して行う補間処理を説明する図である。
【0099】
図5に示すように、スイープラインの終点近傍では、対応画素は表示器19の表示範囲内の画素として求めることができるものの、注目画素のあるべき位置が表示範囲外にあるため、注目画素を求めることができない場合がある。注目画素が決まらなければ中間画素の設定及び補間データの生成を行うことができないので、本実施形態では、仮想的な注目画素として仮想注目画素を設定し、この仮想注目画素に基づいて画素抜けの検出及び補間データの生成を行う。
【0100】
本実施形態において、仮想注目画素の位置は、注目画素の本来あるべき位置が表示器19の表示範囲からはみ出している場合に、表示器19の表示領域(あるいは表示用画像メモリ15の領域)における最端部の画素であって、注目画素のあるべき位置に最も近い画素の位置として求められる。なお、仮想注目画素は常に、注目画素の本来あるべき位置と、対応画素と、の間に位置する。また、参照画素のあるべき位置が表示範囲外にある場合も、それぞれのスイープライン上にある最遠点画素の画素データを使用する等、適宜の方法で参照画素を仮想的に設定する。
【0101】
図5の場合においては不要であるが、スイープラインの角度によっては、対応画素として仮想対応画素を設定する必要が生じる。この場合についても、上記の仮想注目画素と同様に設定すればよい。なお、仮想対応画素及び仮想注目画素の設定方法は、スイープライン上で最も遠い位置にある画素(画面に表示されるスイープラインの半径)に基づいて設定する等、適宜変更することができる。
【0102】
補間後の画像の見た目を良好にするには、補間処理は、スイープラインS2とスイープラインS1の間の細長い領域の全体にわたって抜けなく行うことが求められる。従って、上述したように、開始位置(Xs,Ys)から離れた領域(表示器19の表示範囲の縁に位置する部分)で補間処理を行うためには、仮想対応画素又は仮想注目画素を設定しなければならないことがある。仮に、スイープラインの向きにかかわらず対応画素及び注目画素を常にX軸方向で対応するように定めるものとすると、スイープ角度がX軸方向に平行に近くなる45度から135度までの範囲及び225度から315度までの範囲では、仮想注目画素又は仮想対応画素を設定しなければならない場合が多くなってしまう。仮想対応画素及び仮想注目画素は、補間データの欠落を防止するために、本来あるべき位置の画素とは異なる画素にやむなく設定されるものであるので、補間データの品質の観点からも、その数はできるだけ少ないことが好ましい。
【0103】
本実施形態では、以上の事情を考慮し、仮想対応画素又は仮想注目画素が多くなる範囲では方位を一時的にオフセットするオフセット処理を行っている。次に、オフセット処理について説明する。図6(a)は、45度から135度までの範囲にスイープ角度があるときの補間処理を説明する図である。図6(b)は、225度から315度までの範囲にスイープ角度があるときの補間処理を説明する図である。
【0104】
図6に示すように、本実施形態では、45度から135度までの範囲がオフセット範囲Aに、225度から315度までの範囲がオフセット範囲Bに、それぞれ設定されている。
【0105】
スイープ角度θが更新されると、補間内容生成部33は、スイープ角度θがオフセット範囲A又はオフセット範囲Bに入っているか否かを判定し、オフセット範囲に入っている場合は、スイープ角度θをいったんオフセットする。なお、オフセット範囲A又はオフセット範囲Bに入っているか否かの決定は、図略のスイープ角度判定部によって行う。この決定にあたって参照されるスイープ角度としては、スイープラインS1の角度θn及びスイープラインS2の角度θn-1のうち何れか一方又は両方を用いることができる。
【0106】
オフセット範囲Aでの補間データの生成処理について説明する。図6(a)に示すように、オフセット範囲Aでは、スイープ角度に+90度のオフセット(補正)がいったん加えられた上で、90度ズレた領域に補間データを一時的に生成し、この補間データを元の領域(オフセット範囲A)に書き戻すようにしている。なお、角度オフセット後のスイープラインに基づいて一時的に補間データを生成する方法としては上述と全く同様であり、対応画素及び注目画素はX軸方向で対応するように決定される。
【0107】
以上の角度オフセットにより、オフセット範囲Aで生成される補間データは、注目画素又は対応画素を仮想的に設定しなければならない場合が少ない135度から225度までの範囲で補間データを生成した場合と同様の結果になるのである。一時的に生成された補間データは、あるべきデータの位置となるように補間アドレスの変換(90度の画像回転処理)がされた上で、表示用画像メモリ15に書き込まれる。
【0108】
図6(b)に示すように、オフセット範囲Bでは、−90度のオフセットが加えられた状態で補間データの生成処理が一時的に生成され、この補間データが元の領域(オフセット範囲B)に書き戻される。この処理は、オフセット角度が異なる以外は、オフセット範囲Aで行われる処理と同様である。なお、オフセット範囲Bにおいて−90度でオフセットするのは、+90でオフセットした場合、オフセットした角度が360度を超える場合があるからである。−90度でオフセットすることにより、スイープ角度が360度を超えた場合を考慮することなく、補間データを生成することが可能になっている。このように、補間対象ラインは、角度に応じてX軸方向に平行な方向か、Y軸方向に平行な方向か、が補間内容生成部33によって決定されている。本実施形態では、補間内容生成部33が補間軸設定手段として機能している。
【0109】
以上の処理によって、仮想注目画素及び仮想対応画素の数を効果的に低減しつつ、周方向に連続性を有する補間データを全周にわたって生成することができる。
【0110】
次に、自船の位置(基準位置)に近い範囲で行う重なり処理について説明する。図7(a)は、1つの画素に2つのスイープラインが通過している様子を示した模式図である。図7(b)は、スイープラインのサンプルデータごとに用意される構造体変数の内容を示した模式図である。
【0111】
図7(a)に示すように、自船位置(Xs,Ys)近傍では、1つの画素を複数の直線が通過し、白丸で示す複数の極座標系のデータ(サンプルデータ)が1つの画素に重なって入力されることになる。このような画素では、それぞれのサンプルデータに基づく複数の画素データを平均化処理することが好ましい。そこで本実施形態では、画素に入力された複数のデータに基づいて代表値を決定し、この代表値を前記画素データとして記憶するようになっている。なお、本実施形態において、代表値は、1つの画素に重なる複数のデータの最大値と最小値の合計を2で割ったものが用いられる。
【0112】
本実施形態において、代表値の決定は、図7(b)に示すような構造体変数を用いて行う。この構造体変数は、Maxと、Minと、フラグと、を有する。Maxは同一画素内のサンプルデータの最大値であり、Minは同一画素内のサンプルデータの最小値である。フラグは、重なり処理を行うべきか否かを示すフラグである。この構造体変数は、スイープラインのサンプルデータの数だけ用意され、Y座標の値をインデックスとしてサンプルデータごとにアクセスされる。即ち、構造体変数は、各Y座標における画素の重なり状態を管理しているということができる。
【0113】
フラグの判定(重なり判定)について説明する。上述してきたように、画素抜けは対応画素と注目画素との間に挟まれる画素がある場合に生じ、対応画素が注目画素と隣接する場合には画素抜けが生じることがない(図2を参照)。対応画素はスイープラインS2のサンプルデータに基づいて描画される画素であり、注目画素はスイープラインS1のサンプルデータに基づいて描画される画素である。このことを考えれば、対応画素のX座標の値と注目画素のX座標の値とが一致する場合は、スイープラインS1に基づく画素データと、スイープラインS2に基づく画素データと、の2つの画素データが同一画素内に存在することになる。即ち、対応画素のX座標の値と注目画素のX座標の値とが一致する場合に、重なり処理を行えばよいのである。
【0114】
以上を考慮し、本実施形態では、対応画素のX座標の値と注目画素のX座標の値とが一致する場合に、前記フラグが立つようになっている。この重なり判定は、スイープラインのサンプルデータが入力されるたびに行われ、最大値、最小値又はフラグの値が適宜更新される。
【0115】
ここで、レーダアンテナ1の回転方向全周にわたって上述の重なり判定を行った場合について考える。本実施形態では、対応画素と注目画素のX座標の値が一致するか否かを重なり判定の基準にしている。そのため、スイープライン間のX軸方向の距離が重なり判定に影響を与えることになる。例えば、45度から135度まで、及び、225度から315度の範囲では、スイープラインS1の画素とスイープラインS2の画素が実際には重なっているにもかかわらず、対応画素と注目画素のX座標の値が一致しないために、重なっていると判定されないことがある。上記の角度範囲では、隣接するスイープライン間において対応画素と注目画素とをX軸方向で対応させるように決定した場合と、Y軸方向で対応させるように決定する場合と比較して、両画素間の距離が長くなるためである。
【0116】
そこで、本実施形態では、前述したオフセット範囲A及びオフセット範囲Bにおいては、オフセット処理が行われた後の補間データの生成処理と同時に重なり処理を行っている。即ち、オフセット範囲A及びオフセット範囲Bでは、方位がオフセットされた状態で重なり判定を行っているのである。これによって、特別な処理を行うことなく、オフセット範囲の重なり判定を精度良く行うことが可能になっている。
【0117】
次に、補間データの生成処理及びオフセット処理の流れについて説明する。図8は、補間データの生成処理を説明するフローチャートである。なお、上述したオフセット判定は、図8のフローが開始される前に行われる。このオフセット判定でオフセットする必要があると判定された場合は、オフセットされた状態で図8のフローが開始されることになる。
【0118】
補間データの生成処理が開始されると、対象画素が1画素移動するときの参照画素の移動量Mを算出する(S101)。それとともに、Wの増減値Wrを算出する(S101,S102)。
【0119】
次に、対象画素の位置を示すX座標の値をインクリメントする(S103)。なお、補間対象ラインが新しいラインに移動した直後は、対応画素のX座標の値が初期値として設定されており、この値に1を足す処理がS103の処理で行われる。
【0120】
次に、S103の処理でインクリメントされたX座標の値が補間対象画素であるか否かを調べる(S104)。ここでいう補間対象画素とは、補間対象ライン中の中間画素のことを意味する。このS104の処理で、X座標の値が注目画素のX座標の値と一致した場合は、補間対象ラインの全ての中間画素の補間データが生成されたと判断し、このフローを終了する。X座標の値が注目画素のX座標の値と一致しない場合は、補間対象ラインに補間を行うべき画素が未だ存在していると判断し、S105の処理に移行する。
【0121】
S105の処理では、補間内容生成部33は、S101の処理で算出した移動量を加算して各スイープラインの参照点の位置を求める。次に、補間アドレス発生部32は、参照点の位置に基づいて参照画素をスイープラインごとに設定する(S106)。補間内容生成部33は、スイープラインS1及びスイープラインS2の参照画素の画素データをそれぞれ取得する(S107)。
【0122】
次に、補間内容生成部33は、S102の処理で算出した増減値Wrを重み付け係数Wに加算する(S108)。そして、スイープラインS1の参照画素の画素データと、スイープラインS2の参照画素の画素データと、S108の処理で取得した重み付け係数Wと、を式(3)に代入して、対象画素の画素データeiを求める(S109)。S109の処理が終了すると、S103の処理に戻る。そして、S104の処理で、対象画素が補間対象画素ではないと判定されるまで、S103からS111までの処理をループする。
【0123】
上述したように、S104の処理で対象画素が補間対象画素ではないと判定されると、補間対象ラインの画素抜け部分の補間データの生成が全て完了したことになる。このフローの処理によって生成された補間データは表示用画像メモリ15に出力され、補間アドレスに基づいて適宜の位置に書き込まれる。なお、フロー開始前にオフセット処理されている場合は、補間アドレスを適宜変換した上で、表示用画像メモリ15に補間データを書き込む。
【0124】
以上のフローを補間対象ラインが更新されるたびに繰り返すことによって、スイープラインS1とスイープラインS2との間の画素抜け部分が、周方向を考慮した補間データ(画素データei)によって漏れなく描画されるのである。
【0125】
以上に説明してきたように、本実施形態のレーダ装置10は、描画アドレス発生部16と、補間内容生成部33と、を備えており、各部は以下のように機能する。即ち、描画アドレス発生部16は、エコー信号に基づく情報を含むスイープライン上の点に対応する画素の位置をXY直交座標系で求める。補間内容生成部33は、スイープラインS1上の画素である注目画素と、スイープラインS2上の画素であって、前記注目画素にX軸方向で対応する対応画素と、の間の対象画素に補間データを描画する。そして、補間内容生成部33は、スイープラインS2上であって、対象画素と周方向で対応する参照画素の画素内容と、スイープラインS1上であって、対象画素と周方向で対応する参照画素の画素内容と、に基づいて補間データを生成する。更に、補間内容生成部33は、対象画素がX軸方向に1画素単位で移動すると、参照画素の位置を対象画素の移動に対応させて移動させる。
【0126】
これにより、画素数が多い表示器19であっても、X軸方向で補間データを描画するので、スイープライン間の画素抜け部分に漏れなく補間処理を行うことができる。また、対象画素の移動に伴って適切な位置に移動する参照画素の画素内容に基づいて対象画素の補間データが生成されるので、周方向に違和感がない滑らかな画像を表示器に表示できる。
【0127】
また、レーダ装置10は、対象画素が、対応画素から注目画素に向かって一方向に移動する。
【0128】
これにより、参照画素の位置も一方向に(不可逆的に)移動させればよくなるので、X軸方向で行われる補間処理を連続的かつ効率的に行うことができる。
【0129】
また、補間内容生成部33は、スイープラインS2の参照画素及びスイープラインS1の参照画素のうち、対象画素に近い位置にある方の画素内容の影響が大きくなるように、補間データを生成する。
【0130】
これにより、対象画素に近い位置の画素内容が補間データに大きく反映されることになるので、補間データの周方向の連続性を高めることができる。
【0131】
また、レーダ装置10は、補間データを描画する方向とスイープラインの向きとが平行になるときの方位を含む方位範囲がオフセット範囲A及びオフセット範囲Bとして予め設定されている。そして、スイープラインの方位がオフセット範囲A又はオフセット範囲Bにある場合は、スイープラインがオフセット範囲から出るように方位をオフセットする。補間内容生成部33は、方位をオフセットした状態でオフセット補間データを生成し、オフセットを解除した状態でオフセット補間データを対象画素に描画する。
【0132】
これにより、補間データを適切に生成できる範囲で生成した補間データに基づいて、オフセット範囲A及びオフセット範囲Bの画素抜け部分を補間できる。例えば、スイープラインの向きが補間データを描画する方向に近くなる範囲では、注目画素と対応画素の間隔が大きくなり、特にスイープラインの終点近傍では注目画素又は対応画素の何れかが画像の表示範囲外になってしまうことがある。このような範囲をオフセット範囲に設定することで、特別な処理を行うことなく、注目画素及び対応画素をともに表示範囲に収めることができ、補間データを適切に生成するための処理を簡素化できる。
【0133】
また、レーダ装置10は、注目画素及び対応画素の座標が一致する場合は、注目画素及び対応画素が示す位置の画素を重なり画素と判定する重なり判定を行う。この重なり判定は、スイープラインの方位がオフセット範囲A又はオフセット範囲Bにある場合は、方位をオフセットした状態で行われる。
【0134】
これにより、注目画素と対応画素のX座標の値を調べるという簡単な処理によって重なり画素を検出することができる。また、オフセット範囲A又はオフセット範囲Bではオフセットした状態で重なり判定が行われることになるので、方位によって重なり判定を行う基準が大きく異なることを防止できる。具体的には、スイープラインS2とスイープラインS1が同じように1つの画素を通過する場合でも、重なり画素と判定される場合と判定されない場合がある。例えば、スイープラインの向きが補間データの描画を行う方向に近くなるオフセット範囲A及びオフセット範囲Bでは、注目画素と対応画素の間隔が大きくなるために当該画素を重なり画素と判定されないことがある。本実施形態ではこの範囲がオフセット範囲A及びオフセット範囲Bに設定されているので、方位が変わっても重なり処理の判定基準が大きく異ならなくなっている。
【0135】
以上に示したように、本実施形態のレーダ装置10の画像表示装置2が備える画素データ生成装置5は、描画アドレス発生部16と、補間内容生成部33と、を備える。描画アドレス発生部16は、スイープラインS1(第1スイープライン)上の画素データと、スイープラインS2(第2スイープライン)上の画素データと、をXY直交座標系の画素データにそれぞれ変換する。補間内容生成部33は、XY直交座標系のX軸又はY軸に平行な補間対象ライン上にある注目画素と、同一の補間対称ラインにある対応画素と、の間に位置する対象画素の画素データを生成する。この対象画素の画素データは、スイープラインS1上の画素データとスイープラインS2上の画素データとに基づいて生成される。
【0136】
これにより、スイープラインS1上の画素データとスイープラインS2上の画素データとを反映して対象画素の画素データを生成することができる。また、X軸又はY軸に平行な方向で補間処理を行うので、画素抜け部分に漏れなく画素データを生成することができる。
【0137】
また、本実施形態の画素データ生成装置5は、以下のように構成される。即ち、補間内容生成部33は、スイープラインS1の参照画素の画素データと、スイープラインS2の参照画素の画素データと、を含む複数の画素データに基づいて対象画素の画素データを生成する。スイープラインS1の参照画素は、注目画素とは異なる画素である。スイープラインS2の参照画素は、対応画素とは異なる画素である。
【0138】
これにより、スイープラインS1及びスイープラインS2上の画素であって、補間対象ライン上に位置しない画素の画素データを考慮して対象画素の画素データを生成することができる。
【0139】
また、本実施形態の画素データ生成装置5は、以下のように構成される。即ち、補間内容生成部33は、スイープラインS1の参照画素の画素データと、スイープラインS2の参照画素の画素データと、を含む複数の画素データに基づいて対象画素の画素データを生成する。スイープラインS1の参照画素は、スイープラインS1上で、基準位置(Xs,Ys)から対象画素までの距離と略等距離に位置する画素である。スイープラインS2の参照画素は、スイープラインS2上で、基準位置(Xs,Ys)から対象画素までの距離と略等距離に位置する画素である。
【0140】
これにより、周方向に違和感がない画像を表示することができる。
【0141】
また、本実施形態の画素データ生成装置5は、以下のように構成される。即ち、補間内容生成部33は、スイープラインS1の参照画素の画素データ及びスイープラインS2の参照画素の画素データと、対象画素とスイープラインS1の参照画素との間の第1距離(1−W)及び対象画素とスイープラインS2の参照画素との間の第2距離(W)と、に基づいて対象画素の画素データを生成する(図4を参照)。
【0142】
これにより、参照画素から対象画素までの距離が対象画素の画素データに反映されることになるので、画像を滑らかなものにすることができる。
【0143】
また、本実施形態の画素データ生成装置5は、以下のように構成される。即ち、補間内容生成部33は、スイープラインS1の参照画素の画素データと、スイープラインS2の参照画素の画素データと、を第2距離と第1距離で按分して対象画素の画素データを生成する(図4を参照)。
【0144】
これにより、対象画素に近い参照画素の画素データの内容が対象画素の画素データに大きく反映されることになるので、周方向の連続性をより一層高めることができる。
【0145】
また、本実施形態の画素データ生成装置5は、以下のように構成される。補間内容生成部33は、補間対象ライン上にある対象画素の画素データを順次算出する。そして、前記補間対象ラインを当該補間対象ラインに直交する方向へ順次移動させる。
【0146】
これにより、X軸方向又はY軸方向で行われる補間処理を連続的かつ効率的に行うことができる。
【0147】
また、本実施形態の画素データ生成装置5は、以下のように構成される。即ち、画素データ生成装置5は、補間軸設定手段として機能する補間内容生成部33を備える。補間内容生成部33は、スイープラインS1又はスイープラインS2の何れか一方又は両方の方位に基づいて、補間対象ラインの方向をX軸に平行な方向に設定するかY軸に平行な方向に設定するかを決定する。
【0148】
これにより、スイープラインS1又はスイープラインS2の方位に基づいて、対象画素の画素データを適切に生成できるように補間対象ラインを設定することができる。
【0149】
また、本実施形態の画素データ生成装置5は、以下のように構成される。即ち、補間内容生成部33は、スイープラインS1の向き又はスイープラインS2の向きがX軸方向と平行に近いか否か又はスイープラインS1の向き又はスイープラインS2の向きがY軸方向と平行に近いか否かに基づいて補間対象ラインの向きを決定する。
【0150】
これにより、スイープラインの向きがX軸方向又はY軸方向に平行に近くなることで、対象画素の画素データが適切に生成されなくなる事態を防止できる。
【0151】
以上に本発明の実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0152】
画素データ生成装置5は、以下のように構成することもできる。即ち、補間内容生成部33は、注目画素の画素データと、対応画素の画素データと、を含む複数の画素データに基づいて対象画素の画素データを生成する。これによっても、補間対象ライン上の注目画素と対応画素に基づいてシンプルな処理で対象画素の画素データを生成することができる。
【0153】
また、画素データ生成装置5は、以下のように構成することもできる。即ち、補間内容生成部33は、注目画素の画素データと、対応画素の画素データと、スイープラインS1の参照画素の画素データと、スイープラインS2の参照画素の画素データと、の少なくとも何れかを含む複数の画素データに基づいて対象画素の画素データを生成する。これによって、画素抜けが生じている部分に応じて柔軟に対象画素の画素データを生成することができる。
【0154】
また、上記実施形態の構成では、オフセットすることによってオフセット範囲の補間データを生成しているが、予め設定された角度範囲に応じて補間データを生成する方向をX軸方向とY軸方向の間で自動的に切り替えるように構成することもできる。即ち、レーダ装置10が、スイープラインS1の角度又はスイープラインS2の角度に応じて、補間データを生成する方向を自動的に切り替えるのである。この構成によっても、注目画素及び対応画素をともに表示範囲に収めることができ、補間データを適切に生成するための処理を簡素化できる。
【0155】
また、画素抜け検出についても、オフセット範囲A及びオフセット範囲Bを設定し、画素抜けを検出するように構成してもよい。
【0156】
上記実施形態では、参照画素の画素データに基づいて対象画素の補間データを生成しているが、この構成に限定される訳ではない。例えば、スイープライン上のエコー情報を示すサンプルデータに基づいて、対象画素の位置に対応する補間データを生成することもできる。この場合、スイープライン上で隣接するサンプルデータを線形補間し、対象画素の位置に対応する参照データを算出することが好ましい。
【0157】
また、上記実施形態では、記憶部として対応画素位置記憶メモリ40が採用されているが、記憶部の構成は適宜変更することができる。例えば、複数のカウンタによって、対応画素(第2画素)の画素位置を記憶する構成とすることもできる。この構成で用いられるカウンタは、前記表示用画像のサイズがm画素×n画素だった場合、mとnのうち大きい方の値の数だけ用意すれば十分である。例えば、画素抜け検出方向がX軸方向である場合、複数の画素位置記憶メモリにはY座標のインデックスが付けられ、それぞれの画素位置記憶メモリには、当該Y座標に対応するX座標が記憶される。従って、この構成においても、画素抜け検出時には、Y座標を指定してカウンタの内容を参照することで、当該Y座標に対応するスイープライン(スイープラインS2)の画素のX座標の値を容易に取得することができる。
【0158】
また、演算によって、対応画素及び注目画素の画素位置を逐次算出する構成とすることもできる。例えば、三角関数を用いて対応画素及び注目画素の画素位置を算出する構成や、Bresenhamの描画アルゴリズムの考え方を利用して画素位置を算出する構成を採用することもできる。
【0159】
上記実施形態のレーダ装置10の構成は、舶用機器以外にも適用することが可能である。
【0160】
上記の実施形態では本発明をレーダ装置に適用した例を説明したが、本発明はレーダ装置に限定されない。即ち、方位を異ならせて送信された探知信号のエコーに基づく情報を、画素がマトリクス状に配列されて構成される表示器に表示する画像表示装置であれば、本発明を適用することができる。この種の画像表示装置としては、例えばスキャニングソナー装置を挙げることができる。
【符号の説明】
【0161】
10 レーダ装置
16 描画アドレス発生部(画素データ変換手段)
19 表示器(表示手段)
33 補間内容生成部(補間画素データ生成手段)
S1 スイープライン(第1スイープライン)
S2 スイープライン(第2スイープライン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方位に向けて発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第1スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて生成される第1画素データと、
前記第1の方位とは異なる第2の方位に向けて前記発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第2スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて生成される第2画素データと、
を含む複数の画素データを、XY直交座標系の画素データとして生成する画素データ生成装置において、
前記第1画素データと前記第2画素データとをXY直交座標系の画素データにそれぞれ変換する画素データ変換手段と、
XY直交座標系のX軸又はY軸に平行な補間軸上にある注目画素としての第1画素と、同一の前記補間軸上にある対応画素としての第2画素と、の間に位置する補間対象画素の画素データを、前記第1スイープライン上の画素データと前記第2スイープライン上の画素データとに基づいて生成する補間画素データ生成手段と、
を備えることを特徴とする画素データ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画素データ生成装置であって、
前記補間画素データ生成手段は、
前記注目画素の画素データと、
前記対応画素の画素データと、
を含む複数の画素データに基づいて前記補間対象画素の画素データを生成することを特徴とする画素データ生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画素データ生成装置であって、
前記補間画素データ生成手段は、
前記第1スイープライン上の第1画素であって、前記注目画素とは異なる第1参照画素の画素データと、
前記第2スイープライン上の第2画素であって、前記対応画素とは異なる第2参照画素の画素データと、
を含む複数の画素データに基づいて前記補間対象画素の画素データを生成することを特徴とする画素データ生成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画素データ生成装置であって、
前記補間画素データ生成手段は、
前記注目画素の画素データと、
前記対応画素の画素データと、
前記第1スイープライン上の第1画素であって、前記注目画素とは異なる第1参照画素の画素データと、
前記第2スイープライン上の第2画素であって、前記対応画素とは異なる第2参照画素の画素データと、
の少なくとも何れかを含む複数の画素データに基づいて前記補間対象画素の画素データを生成することを特徴とする画素データ生成装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の画素データ生成装置であって、
前記補間画素データ生成手段は、
前記第1スイープライン上で、前記発信源に対応する基準位置から前記補間対象画素までの距離と略等距離に位置する第1等距離画素の画素データと、
前記第2スイープライン上で、前記基準位置から前記補間対象画素までの距離と略等距離に位置する第2等距離画素の画素データと、
を含む複数の画素データに基づいて前記補間対象画素の画素データを生成することを特徴とする画素データ生成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画素データ生成装置であって、
前記補間画素データ生成手段は、
前記第1等距離画素の画素データ及び前記第2等距離画素の画素データと、
前記補間対象画素と前記第1等距離画素との間の第1距離及び前記補間対象画素と前記第2等距離画素との間の第2距離と、
に基づいて前記補間対象画素の画素データを生成することを特徴とする画素データ生成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画素データ生成装置であって、
前記補間画素データ生成手段は、
前記第1等距離画素の画素データと、
前記第2等距離画素の画素データと、
を前記第2距離と前記第1距離で按分して前記補間対象画素の画素データを生成することを特徴とする画素データ生成装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の画素データ生成装置であって、
前記補間画素データ生成手段は、
前記補間軸上にある前記補間対象画素の画素データを順次算出し、
前記補間軸を当該補間軸に直交する方向へ順次移動させることを特徴とする画素データ生成装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の画素データ生成装置であって、
前記第1スイープライン又は前記第2スイープラインの何れか一方又は両方の方位に基づいて、前記補間軸をX軸に平行な方向に設定するかY軸に平行な方向に設定するかを決定する補間軸設定手段を備えることを特徴とする画素データ生成装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画素データ生成装置であって、
前記補間軸設定手段は、
前記第1スイープラインの向き又は前記第2スイープラインの向きがX軸と平行に近いか否か又は前記第1スイープラインの向き又は前記第2スイープラインの向きがY軸と平行に近いか否かに基づいて前記補間軸の向きを決定することを特徴とする画素データ生成装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の画素データ生成装置と、
前記画素データ生成装置で生成された画素データに基づいて画像を表示する画像表示手段と、
を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像表示装置と、
前記探知信号を生成する探知信号生成手段と、
前記探知信号を発射するとともに、物標からのエコー信号を受信するアンテナ手段と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項13】
第1の方位に向けて発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第1スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて第1画素データを生成する第1画素データ生成ステップと、
前記第1の方位とは異なる第2の方位に向けて前記発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第2スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて第2画素データを生成する第2画素データ生成ステップと、
前記第1画素データと前記第2画素データとをXY直交座標系の画素データにそれぞれ変換する画素データ変換ステップと、
XY直交座標系のX軸又はY軸に平行な補間軸上にある注目画素としての第1画素と、同一の前記補間軸上にある対応画素としての第2画素と、の間に位置する補間対象画素の画素データを、前記第1スイープライン上の画素データと前記第2スイープライン上の画素データとに基づいて生成する補間画素データ生成ステップと、
を含むことを特徴とする画素データ生成方法。
【請求項14】
第1の方位に向けて発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第1スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて第1画素データを生成する第1画素データ生成ステップと、
前記第1の方位とは異なる第2の方位に向けて前記発信源から発射された探知信号のエコー信号に基づいて、第2スイープライン上に前記発信源からの距離に応じて第2画素データを生成する第2画素データ生成ステップと、
前記第1画素データと前記第2画素データとをXY直交座標系の画素データにそれぞれ変換する画素データ変換ステップと、
XY直交座標系のX軸又はY軸に平行な補間軸上にある注目画素としての第1画素と、同一の前記補間軸上にある対応画素としての第2画素と、の間に位置する補間対象画素の画素データを、前記第1スイープライン上の画素データと前記第2スイープライン上の画素データとに基づいて生成する補間画素データ生成ステップと、
を含むことを特徴とする画素データ生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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