画素回路、電気光学装置および電子機器
【課題】電気光学素子を高い精度で所期の階調に制御する。
【解決手段】駆動トランジスタTDRは、ゲートの電位VGに応じた駆動電流IDRを生成する。電気光学素子Eは、駆動電流IDRに応じた階調となる。駆動制御トランジスタTELは、駆動トランジスタTDRのソースと電気光学素子Eとの間に介在する。初期化トランジスタTRSは、駆動トランジスタTDRのソースと初期化電位VRSが供給される給電線34との間に介在する。駆動トランジスタTDRのゲートがデータ信号X[j]に応じた電位VDATAに設定される書込期間Hにおいて、駆動制御トランジスタTELが非導通状態になるとともに初期化トランジスタTRSが導通状態となり、書込期間Hの経過後の駆動期間HDRにおいて、駆動制御トランジスタTELが導通状態になるとともに初期化トランジスタTRSが非導通状態となる。
【解決手段】駆動トランジスタTDRは、ゲートの電位VGに応じた駆動電流IDRを生成する。電気光学素子Eは、駆動電流IDRに応じた階調となる。駆動制御トランジスタTELは、駆動トランジスタTDRのソースと電気光学素子Eとの間に介在する。初期化トランジスタTRSは、駆動トランジスタTDRのソースと初期化電位VRSが供給される給電線34との間に介在する。駆動トランジスタTDRのゲートがデータ信号X[j]に応じた電位VDATAに設定される書込期間Hにおいて、駆動制御トランジスタTELが非導通状態になるとともに初期化トランジスタTRSが導通状態となり、書込期間Hの経過後の駆動期間HDRにおいて、駆動制御トランジスタTELが導通状態になるとともに初期化トランジスタTRSが非導通状態となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子などの電気光学素子を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学素子に供給される駆動電流をトランジスタ(以下「駆動トランジスタ」という)のゲートの電位に応じて制御する画素回路が従来から提案されている。また、特許文献1には、Nチャネル型の駆動トランジスタのソースと電気光学素子の陽極との間にトランジスタ(以下「駆動制御トランジスタ」という)を介挿した構成が開示されている。駆動トランジスタのゲートを書込期間にて階調データに応じた電位に設定し、書込期間の経過後の駆動期間にて駆動制御トランジスタを導通させることで階調データに応じた駆動電流が電気光学素子に供給される。
【特許文献1】特開2004−191932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、駆動トランジスタのゲートとソースとの間には容量(ゲート容量)が付随する。したがって、駆動制御トランジスタが非導通の状態にある書込期間でゲートの電位を階調データに応じた電位に変化させると、ゲートの電位の変動量に応じてソースの電位も変化する。駆動電流は駆動トランジスタのゲート−ソース間の電圧に応じた電流量に制御されるから、駆動トランジスタのソースの電位がゲートの電位の変動量に依存する従来の構成においては、各電気光学素子の階調を高精度に制御することが困難であるという問題がある。例えば複数の画素回路に同じ階調が指定された場合であっても、直前のフレームにおける各画素回路の駆動トランジスタのゲートの電位(すなわち直前のフレームにて指定された階調)に応じて各画素回路における電気光学素子の実際の階調が相違して利用者に階調のムラと知覚されるという問題がある。以上の事情を背景として、本発明は、電気光学素子を高い精度で所期の階調に制御するという課題の解決をひとつの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、本発明に係る画素回路は、ゲートの電位に応じた駆動信号を生成する駆動トランジスタと、駆動信号に応じた階調となる電気光学素子と、駆動トランジスタのソースと電気光学素子との間に介在する第1スイッチング素子(例えば図3の駆動制御トランジスタTEL)と、駆動トランジスタのソースと所定の電位が供給される給電線との間に介在する第2スイッチング素子(例えば図3の初期化トランジスタTRS)とを具備し、駆動トランジスタのゲートがデータ信号に応じた電位(例えば図2の電位VDATA)に設定される書込期間において、第1スイッチング素子が非導通状態になるとともに第2スイッチング素子が導通状態となり、書込期間の経過後の駆動期間において、第1スイッチング素子が導通状態になるとともに第2スイッチング素子が非導通状態となる。
【0005】
以上の態様においては、第2スイッチング素子が導通状態になることで書込期間にて駆動トランジスタのソースが所定の電位に維持される。したがって、例えば直前のフレーム期間における階調に拘わらず、電気光学素子を高い精度で所期の階調に制御することが可能となる。また、第1スイッチング素子が非導通状態となることで書込期間における電気光学素子の誤動作が防止される。
【0006】
なお、本発明における駆動信号は、有機発光ダイオード素子などの電流駆動型の電気光学素子を利用した電気光学装置においては電流信号(例えば図3の駆動電流IDR)であるが、電圧の印加によって駆動される電気光学素子を採用した電気光学装置においては電圧信号とされる。
【0007】
本発明の好適な態様において、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とは、導電型が相異なるトランジスタであり、各々のゲートには共通の制御信号が供給される。本態様によれば、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが個別の信号によって制御される構成と比較して画素回路の構成や制御が簡素化される。
【0008】
本発明の好適な態様において、給電線は、駆動トランジスタのドレインが接続された電源線である。本態様によれば、電源線とは別個の配線(例えば図3の給電線34)に第2スイッチング素子が接続された構成と比較して画素回路の構成が簡素化される。
【0009】
本発明の電気光学装置は、画素回路と制御回路とを具備し、画素回路は、ゲートの電位に応じた駆動信号を生成する駆動トランジスタと、駆動信号に応じた階調となる電気光学素子と、駆動トランジスタのソースと電気光学素子との間に介在する第1スイッチング素子と、駆動トランジスタのソースと所定の電位が供給される給電線との間に介在する第2スイッチング素子とを含み、制御回路は、駆動トランジスタのゲートがデータ信号に応じた電位に設定される書込期間において、第1スイッチング素子を非導通状態に制御するとともに第2スイッチング素子を導通状態に制御し、書込期間の経過後の駆動期間において、第1スイッチング素子を導通状態に制御するとともに第2スイッチング素子を非導通状態に制御する。以上の構成によれば、本発明に係る画素回路と同様の効果が奏される。
【0010】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。電子機器の典型例は、電気光学装置を表示装置として利用した機器である。本発明に係る電子機器としてはパーソナルコンピュータや携帯電話機が例示される。もっとも、本発明に係る電気光学装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)としても本発明の電気光学装置を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置(表示装置)の構成を示すブロック図である。同図に示すように、電気光学装置100は、複数の画素回路Pが配列された素子アレイ部10と、各画素回路Pを駆動するための周辺回路(選択回路22,制御回路24,データ供給回路26,電源回路28)とを具備する。
【0012】
素子アレイ部10には、X方向に延在するM本の選択線12と、各選択線12に対をなしてX方向に延在するM本の制御線14と、X方向に交差するY方向に延在するN本の信号線16とが形成される(MおよびNの各々は2以上の自然数)。各画素回路Pは、選択線12と信号線16との各交差に対応して配置される。したがって、素子アレイ部10の全体では、X方向およびY方向にわたって縦M行×横N列のマトリクス状に画素回路Pが配列する。
【0013】
選択回路22は、M本の選択線12の各々(各行の画素回路P)を順番に選択するための選択信号Y[1]〜Y[M]を生成して各選択線12に出力する手段(例えばMビットのシフトレジスタ)である。図2に示すように、第i行(i=1〜M)の選択線12に供給される選択信号Y[i]は、ひとつのフレーム期間F(F1,F2,……)のうち第i番目の書込期間(水平走査期間)Hにてハイレベルとなり、書込期間H以外の期間にてローレベルを維持する。
【0014】
図1の制御回路24は、制御信号Z[1]〜Z[M]を生成して各制御線14に出力する。図2に示すように、第i行の制御線14に供給される制御信号Z[i]は、選択信号Y[i]がハイレベルとなる書込期間Hの経過後から次の書込期間Hの開始前までの所定の期間(以下「駆動期間」という)HDRにてハイレベルを維持し、駆動期間HDR以外の期間(書込期間Hを含む)にてローレベルとなる。
【0015】
図1のデータ供給回路26は、各画素回路Pの階調を指定する階調データGDに基づいてデータ信号X[1]〜X[N]を生成して各信号線16に出力する。データ供給回路26は、各々が別個の信号線16に対応するN個の信号生成部261を含む。N個の信号生成部261には出力制御信号LPが供給される。図2に示すように、出力制御信号LPは、選択信号Y[1]〜Y[M]の各々が規定する書込期間H内にてハイレベルとなる。
【0016】
第j段目(j=1〜N)の信号生成部261は、図2に示すように、選択信号Y[i]がハイレベルとなる書込期間Hにて出力制御信号LPがハイレベルに遷移すると、データ信号X[j]を、第i行に属する第j列目の画素回路Pの階調データGDに応じた電位VDATAに設定し、次に出力制御信号LPがハイレベルに遷移するまで当該電位VDATAを維持する。すなわち、第i行の書込期間Hの終点(選択信号Y[i]がローレベルに遷移する時点)において、データ信号X[j]は、第i行に属する第j列目の画素回路Pの階調データGDに応じた電位VDATAとなる。
【0017】
電源回路28は、電気光学装置100にて使用される各種の電位を生成する回路である。電源回路28は、高位側の電源電位VELと低位側の電源電位VCTと所定の初期化電位VRSとを生成する。初期化電位VRSは任意の定電位(例えば電源電位VCTと同電位)である。電源電位VELは電源線31に供給され、電源電位VCTは電源線32に供給される。初期化電位VRSは給電線34に供給される。
【0018】
次に、図3を参照して、各画素回路Pの具体的な構成を説明する。なお、同図においては第i行に属する第j列目のひとつの画素回路Pのみが代表的に図示されている。図3に示すように、画素回路Pは電気光学素子Eを含む。本形態の電気光学素子Eは、相互に対向する陽極と陰極との間に有機EL(Electroluminescence)材料の発光層が介在する有機発光ダイオード素子である。電気光学素子Eは、発光層に供給される駆動電流IDRの電流量に応じた強度で発光する。電気光学素子Eの陰極は電源線32(電源電位VCT)に電気的に接続される。
【0019】
駆動電流IDRの経路上(電源線31と電気光学素子Eの陽極との間)にはNチャネル型の駆動トランジスタTDRが配置される。駆動トランジスタTDRは、ゲート−ソース間の電圧に応じて駆動電流IDRの電流量を制御する手段である。駆動トランジスタTDRのドレイン(D)は電源線31(電源電位VEL)に接続される。
【0020】
駆動トランジスタTDRのゲートとドレイン(電源線31)との間には容量素子Cが介在する。また、駆動トランジスタTDRのゲートと信号線16との間にはNチャネル型の選択トランジスタTSLが配置される。選択トランジスタTSLは、駆動トランジスタTDRのゲートと信号線16との電気的な接続(導通/非導通)を制御するスイッチング素子である。第i行に属する各画素回路Pの選択トランジスタTSLのゲートは第i行の選択線12に対して共通に接続される。
【0021】
駆動トランジスタTDRのソース(S)と電気光学素子Eの陽極との間(すなわち駆動電流IDRの経路上)にはNチャネル型の駆動制御トランジスタTELが配置される。駆動制御トランジスタTELは、駆動トランジスタTDRのソースと電気光学素子Eの陽極との電気的な接続を制御するスイッチング素子(第1スイッチング素子)である。駆動制御トランジスタTELが導通することで駆動電流IDRの経路が確立するから、駆動制御トランジスタTELは、電気光学素子Eに対する駆動電流IDRの供給の可否を制御する手段として機能する。
【0022】
駆動トランジスタTDRのソース(S)と給電線34との間には初期化トランジスタTRSが配置される。初期化トランジスタTRSは、駆動トランジスタTDRのソースと給電線34との電気的な接続を制御するスイッチング素子(第2スイッチング素子)である。初期化トランジスタTRSの導電型は、駆動制御トランジスタTELとは反対のPチャネル型である。
【0023】
第i行のn個の画素回路Pの各々における駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとは第i行の制御線14に対して共通に接続される。駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとは導電型が反対であるから両者は相補的に動作する。すなわち、駆動制御トランジスタTELが導通する期間においては初期化トランジスタTRSが非導通状態となり、駆動制御トランジスタTELが非導通状態を維持する期間においては初期化トランジスタTRSが導通する。
【0024】
以上の構成において、図2に示すように書込期間Hにて選択信号Y[i]がハイレベルに遷移すると(すなわち第i行の選択線12が選択されると)、選択トランジスタTSLが導通する。したがって、書込期間H内に出力制御信号LPがハイレベルに遷移すると、データ信号X[j]の電位VDATAが選択トランジスタTSLを経由して駆動トランジスタTDRのゲートに供給されるとともに、電位VDATAに応じた電荷が容量素子Cに蓄積される。すなわち、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは階調データGDに応じた電位VDATAに設定される。
【0025】
書込期間Hの終点にて選択信号Y[i]がローレベルに遷移すると、選択トランジスタTSLが非導通状態となって駆動トランジスタTDRのゲートは信号線16から電気的に絶縁されるが、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは、書込期間Hの経過後においても容量素子Cによって電位VDATAに維持される。
【0026】
一方、図2に示すように、書込期間Hの開始前から終了後までにわたって制御信号Z[i]はローレベルに設定されるから、駆動制御トランジスタTELが非導通状態に維持されるとともに初期化トランジスタTRSが導通する。駆動制御トランジスタTELが非導通状態に制御されることで電気光学素子Eに対する電流の供給は完全に停止する。したがって、電気光学素子Eは消灯する。また、初期化トランジスタTRSが導通することで、駆動トランジスタTDRのソースには、給電線34から初期化トランジスタTRSを介して初期化電位VRSが供給される。すなわち、駆動トランジスタTDRのソースは、書込期間H内にて初期化電位VRSに維持される。
【0027】
図2に示すように、書込期間Hの経過後の駆動期間HDRにて制御信号Z[i]がハイレベルに設定されると、初期化トランジスタTRSが非導通状態に遷移することで駆動トランジスタTDRに対する初期化電位VRSの供給が停止する。したがって、駆動トランジスタTDRのソースの電位は、駆動期間HDRの開始前に設定された初期化電位VRSから、駆動トランジスタTDRの抵抗値(直前の書込期間Hにて設定された電位VG)と電気光学素子Eの抵抗値とに応じた電位に変化する。また、ハイレベルの制御信号Z[i]によって駆動制御トランジスタTELは導通する。したがって、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VG(電位VDATA)に応じた電流量の駆動電流IDRが、電源線31から駆動トランジスタTDRと駆動制御トランジスタTELとを経由して電気光学素子Eに供給される。電気光学素子Eは、駆動電流IDRの電流量に応じた強度(すなわち電位VDATAに応じた強度)で発光する。
【0028】
次に、図4を参照して、画素回路Pが初期化トランジスタTRSを含まない構成(以下「対比例1」という)を本形態との対比のために検討する。対比例1においては、書込期間Hにて駆動制御トランジスタTELが非導通状態に制御されることで駆動トランジスタTDRのソースは電気的なフローティング状態となる。
【0029】
いま、図4の部分(a)のケースAと同図の部分(b)のケースBとを想定する。ケースAは、第1行の画素回路Pに対し、フレーム期間F1にて最高の階調GHが指定されるとともに直後のフレーム期間F2にて低階調側の中間的な階調GMが指定された場合である。ケースBは、フレーム期間F1にて最低の階調GLが指定されるとともにフレーム期間F2にて階調GMが指定された場合である。
【0030】
ケースAにおいて第1行の画素回路Pに供給される電位VDATAは、フレーム期間F1では階調GHに対応した高位側の電位VHに設定され、フレーム期間F2では階調GMに対応した電位VMに設定される。一方、ケースBにおいて第1行の画素回路Pに供給される電位VDATAは、フレーム期間F1では階調GLに対応した低位側の電位VLに設定され、フレーム期間F2では階調GMに対応した電位VMに設定される。階調GMは低階調側の中間調であるから、電位VHと電位VMとの相違は電位VMと電位VLとの相違よりも大きい(VH−VM>VM−VL)。すなわち、フレーム期間F2の書込期間Hにおける電位VGの変化の方向と変化量とはケースAとケースBとで相違する。
【0031】
駆動トランジスタTDRのゲートとソースとの間には容量(ゲート容量)が付随する。したがって、対比例1のもとで書込期間Hにて駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGが電位VDATAに変化すると、図4に示すように、電気的なフローティング状態にあるソースの電位VSは電位VGに連動して変化する。ケースAにおいてフレーム期間F1とフレーム期間F2との間における電位VGの変化量はケースBにおける電位VGの変化量よりも大きく(VH−VM>VM−VL)、フレーム期間F1とフレーム期間F2との間における電位VGの変化の方向はケースAとケースBとで反対であるから、ケースAにおけるフレーム期間F2内の電位VSは、ケースBにおけるフレーム期間F2内の電位VSよりも低電位となる。フレーム期間F2内の電位VGはケースAとケースBとで同等であるから、図4に示すように、ケースAにおける駆動トランジスタTDRのゲート−ソース間の電圧VGS_AはケースBにおける電圧VGS_Bと比較して大きい(VGS_A>VGS_B)。したがって、フレームF2において同じ階調GMが指定されているにも拘わらず、ケースAにおいてはケースBと比較して電流量の大きい駆動電流IDRが電気光学素子Eに供給される。
【0032】
以上に説明したように対比例1においては、各フレーム期間Fにおける電位VSが直前のフレーム期間Fにおける電位VGに影響されるから、電気光学素子Eの階調(駆動電流IDRの電流量)は直前のフレーム期間Fにて指定された階調に応じて相違する。すなわち、電気光学素子Eを階調データGDに応じた所期の階調に忠実に制御することが困難であるという問題がある。なお、以上においてはひとつの画素回路Pにおける電気光学素子Eの階調がケースAとケースBとで相違することを説明したが、ひとつの画素回路Pに対してケースAのように階調が指定されるとともに別の画素回路Pに対してケースBのように階調が指定された場合には、フレーム期間F2における電気光学素子Eの階調が各画素回路Pで相違する(すなわち階調のムラが発生する)という問題がある。
【0033】
これに対して本形態においては、駆動トランジスタTDRのゲートが電位VDATAに設定される書込期間Hにおいて、図2に示すように、初期化トランジスタTRSが導通することで駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは初期化電位VRSに維持される。すなわち、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは、駆動期間HDRの開始前に、書込期間Hにおける電位VDATAに依存しない初期化電位VRSに初期化される。したがって、図2に示すように、フレーム期間F1にて階調GHが指定されるケースA(部分(a))および階調GLが指定されるケースB(部分(b))の何れにおいても、フレーム期間F2にて画素回路Pに指定される階調が同じ(階調GM)である以上、駆動トランジスタTDRのゲート−ソース間の電圧(VGS_A=VGS_B)や駆動電流IDRの電流量さらには電気光学素子Eの階調は、ケースAとケースBとで略同等となる。すなわち、各フレーム期間Fにおける電気光学素子Eの階調は、直前のフレーム期間Fにて指定された階調に影響されない。
【0034】
以上に説明したように、本形態によれば、各電気光学素子Eを忠実に所期の階調に制御できる。したがって、例えば、フレーム期間F1にて複数の画素回路Pに別個の階調が指定された場合であっても、フレーム期間F2にて各々に同じ階調が指定されたならば、各画素回路Pの電気光学素子Eは有効に均一化される。すなわち、素子アレイ部10における階調のムラを有効に抑制することが可能である。
【0035】
ところで、駆動期間HDRにおける電気光学素子Eの階調を高精度に制御するという観点のみからすると、例えば図5に示すように、図3の画素回路Pから駆動制御トランジスタTELを省略した構成(以下「対比例2」という)も採用され得る。対比例2においては、駆動トランジスタTDRのソースと電気光学素子Eの陽極とが常に接続される。
【0036】
対比例2のもとで書込期間Hに初期化トランジスタTRSを導通させると、駆動トランジスタTDRのソースと給電線34とが初期化トランジスタTRSを介して電気的に接続される。初期化トランジスタTRSのソース−ドレイン間には抵抗(オン抵抗)が付随するから、初期化トランジスタTRSが導通した状態において、駆動トランジスタTDRのソースは、初期化トランジスタTRSのソース−ドレイン間の電圧だけ初期化電位VRSよりも高位となる。したがって、初期化電位VRSを低位側の電源電位VCTと同電位に設定した場合であっても、実際には初期化トランジスタTRSのソース−ドレイン間の電圧に応じた電流が電気光学素子Eに供給される。すなわち、対比例2においては電気光学素子Eが書込期間Hにて発光(誤発光)するという問題がある。
【0037】
これに対して本形態においては、書込期間Hにて駆動制御トランジスタTELが非導通状態に設定されるから、書込期間Hにおける電気光学素子Eの誤発光を有効に防止することが可能である。したがって、対比例2と比較して電気光学素子Eの階調を高精度に制御できるという利点がある。
【0038】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本形態において作用や機能が第1実施形態と共通する要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0039】
図6は、画素回路Pの構成を示す回路図である。同図に示すように、本形態の初期化トランジスタTRSは、駆動トランジスタTDRのソースと電源電位VELが供給される電源線31との間に介在して両者の電気的な接続を制御する。駆動制御トランジスタTELおよび初期化トランジスタTRSの各々は第1実施形態と同様の制御信号Z[i]によって制御される。すなわち、書込期間Hにて初期化トランジスタTRSが導通することで駆動トランジスタTDRのソースは電源電位VELに維持される。したがって、第1実施形態と同様の作用および効果が奏される。
【0040】
第1実施形態の画素回路P(図3)では、初期化トランジスタTRSが導通する書込期間Hにおいて、電源線31から駆動トランジスタTDRと初期化トランジスタTRSとを経由して給電線34に至る経路に電流が流れる。これに対して本形態においては、初期化トランジスタTRSが導通することで駆動トランジスタTDRのソースおよびドレインの双方が電源線31に接続されるから、書込期間Hにて駆動トランジスタTDRや初期化トランジスタTRSに電流は流れない。したがって、第1実施形態と比較して各画素回路Pにおける消費電力が低減されるという利点がある。また、本形態においては、第1実施形態の給電線34を電源線31や電源線32とは個別に形成する必要がないから、第1実施形態と比較して画素回路Pの構成の簡素化(さらには画素回路Pの高精細化)が実現される。
【0041】
<C:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0042】
(1)変形例1
以上の形態においては書込期間Hの開始前から経過後までにわたって初期化トランジスタTRSを導通させる構成を例示したが、初期化トランジスタTRSを導通させる時期(すなわち制御信号Z[i]をハイレベルに設定する時期)は適宜に変更される。例えば、書込期間Hの開始後から当該書込期間Hの経過後までの期間にわたって初期化トランジスタTRSを導通させることで駆動トランジスタTDRのソースに初期化電位VRSを供給してもよい。すなわち、書込期間Hにて駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGが確定する時点(すなわち書込期間Hの終点)にて駆動トランジスタTDRのソースが所定の電位(ゲートの電位VGに依存しない電位)に維持される構成が、本発明においては好適に採用される。
【0043】
(2)変形例2
画素回路Pを構成する各トランジスタの導電型は適宜に変更される。例えば、駆動制御トランジスタTELをPチャネル型として初期化トランジスタTRSをNチャネル型とした構成や、選択トランジスタTSLをPチャネル型とした構成が採用される。
【0044】
また、駆動トランジスタTDRをPチャネル型としてもよい。すなわち、図7に例示するように、電気光学素子Eの陽極を電源線31(電源電位VEL)に接続するとともにPチャネル型の駆動トランジスタTDRのドレインを電源線32(電源電位VCT)に接続した構成が採用される。駆動制御トランジスタTELは駆動トランジスタTDRのソース(S)と電気光学素子Eの陰極との間に介在し、初期化トランジスタTRSは駆動トランジスタTDRのソースと給電線34(初期化電位VRS)との間に介在する。また、図8に例示するように、図7における初期化トランジスタTRSを駆動トランジスタTDRのソースと電源線32(駆動トランジスタTDRのドレイン)との間に介在させた構成も採用される。図7および図8の何れの構成においても、書込期間Hにて初期化トランジスタTRSを導通させることで、駆動期間HDRにおける駆動トランジスタTDRのソースは、直前のフレーム期間Fにおける電位VGとは無関係に所定の電位(図7の初期化電位VRSや図8の電源電位VEL)に設定される。したがって、以上の各形態と同様の効果が奏される。
【0045】
(3)変形例3
階調データGDに応じた電位VDATAが信号線16から選択トランジスタTSLを経由して直接的に駆動トランジスタTDRのゲートに供給される構成(すなわちゲートの電位VGが信号線16の電位VDATAと同電位に設定される構成)は必ずしも必要ではない。例えば、特開2005−99773号公報に開示されるように、選択トランジスタTSLと駆動トランジスタTDRのゲートとの間に容量素子が介在する構成において、容量素子のうち選択トランジスタTSL側の電極に信号線16から電位VDATAを供給することで駆動トランジスタTDR側の電極の電位(すなわち駆動トランジスタTDRのゲートの電位VG)を設定してもよい。すなわち、本発明の好適な態様に係る駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは、書込期間Hにて信号線16の電位VDATAに応じて設定される。
【0046】
以上の各形態においては、信号線16の電位VDATAを時分割で各行の画素回路Pに供給するために各画素回路Pの選択トランジスタTSLを順次に導通させる構成を例示したが、例えば画素回路Pが単列のみに配列する構成(例えば電子写真方式の画像形成装置における露光装置(ラインヘッド))においては、各画素回路Pを行単位で選択するという動作が原理的に不要であるから、各画素回路Pの選択トランジスタTSLは省略される。
【0047】
(4)変形例4
以上の各形態においては駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとが共通の制御信号Z[i]で制御される構成を例示したが、駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとが別個の信号で制御される構成も採用される。したがって、駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとが逆導電型である必要は必ずしもない。もっとも、第1実施形態のように駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとで制御線14(制御信号Z[i])を共用する構成によれば、各々について配線が個別に形成される構成と比較して、電気光学装置100における配線数が削減されるとともに制御回路24の構成や動作が簡素化されるという利点がある。
【0048】
(5)変形例5
有機発光ダイオード素子は電気光学素子の例示に過ぎない。本発明に適用される電気光学素子について、自身が発光する自発光型と外光の透過率を変化させる非発光型(例えば液晶素子)との区別や、電流の供給によって駆動される電流駆動型と電圧の印加によって駆動される電圧駆動型との区別は不問である。例えば、無機EL素子、フィールド・エミッション(FE)素子、表面導電型エミッション(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子、LED(Light Emitting Diode)素子、液晶素子、電気泳動素子など様々な電気光学素子を本発明に利用することができる。
【0049】
<D:応用例>
次に、本発明に係る電気光学装置を利用した電子機器について説明する。図9ないし図11には、以上に説明した何れかの形態に係る電気光学装置100を表示装置として採用した電子機器の形態が図示されている。
【0050】
図9は、電気光学装置100を採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する電気光学装置100と、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。電気光学装置100は有機発光ダイオード素子を電気光学素子Eとして使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0051】
図10は、電気光学装置100を適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する電気光学装置100とを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置100に表示される画面がスクロールされる。
【0052】
図11は、電気光学装置100を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す斜視図である。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002と、各種の画像を表示する電気光学装置100とを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった様々な情報が電気光学装置100に表示される。
【0053】
なお、本発明に係る電気光学装置が適用される電子機器としては、図9から図11に例示した機器のほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る電気光学装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、電子写真方式の画像形成装置において露光により感光体ドラムに潜像を形成する露光装置としても本発明の電気光学装置は利用される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。
【図2】電気光学装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】画素回路の構成を示す回路図である。
【図4】対比例1に係る電気光学装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】対比例2に係る画素回路の構成を示す回路図である。
【図6】第2実施形態に係る画素回路の構成を示す回路図である。
【図7】変形例に係る画素回路の構成を部分的に示す回路図である。
【図8】変形例に係る画素回路の構成を部分的に示す回路図である。
【図9】本発明に係る電子機器の形態(パーソナルコンピュータ)を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る電子機器の形態(携帯電話機)を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る電子機器の形態(携帯情報端末)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
100……電気光学装置、P……画素回路、10……素子アレイ部、12……選択線、14……制御線、16……信号線、31,32……電源線、34……給電線、22……選択回路、24……制御回路、26……データ供給回路、28……電源回路、E……電気光学素子、TDR……駆動トランジスタ、TSL……選択トランジスタ、TEL……駆動制御トランジスタ、TRS……初期化トランジスタ、VRS……初期化電位。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子などの電気光学素子を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学素子に供給される駆動電流をトランジスタ(以下「駆動トランジスタ」という)のゲートの電位に応じて制御する画素回路が従来から提案されている。また、特許文献1には、Nチャネル型の駆動トランジスタのソースと電気光学素子の陽極との間にトランジスタ(以下「駆動制御トランジスタ」という)を介挿した構成が開示されている。駆動トランジスタのゲートを書込期間にて階調データに応じた電位に設定し、書込期間の経過後の駆動期間にて駆動制御トランジスタを導通させることで階調データに応じた駆動電流が電気光学素子に供給される。
【特許文献1】特開2004−191932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、駆動トランジスタのゲートとソースとの間には容量(ゲート容量)が付随する。したがって、駆動制御トランジスタが非導通の状態にある書込期間でゲートの電位を階調データに応じた電位に変化させると、ゲートの電位の変動量に応じてソースの電位も変化する。駆動電流は駆動トランジスタのゲート−ソース間の電圧に応じた電流量に制御されるから、駆動トランジスタのソースの電位がゲートの電位の変動量に依存する従来の構成においては、各電気光学素子の階調を高精度に制御することが困難であるという問題がある。例えば複数の画素回路に同じ階調が指定された場合であっても、直前のフレームにおける各画素回路の駆動トランジスタのゲートの電位(すなわち直前のフレームにて指定された階調)に応じて各画素回路における電気光学素子の実際の階調が相違して利用者に階調のムラと知覚されるという問題がある。以上の事情を背景として、本発明は、電気光学素子を高い精度で所期の階調に制御するという課題の解決をひとつの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、本発明に係る画素回路は、ゲートの電位に応じた駆動信号を生成する駆動トランジスタと、駆動信号に応じた階調となる電気光学素子と、駆動トランジスタのソースと電気光学素子との間に介在する第1スイッチング素子(例えば図3の駆動制御トランジスタTEL)と、駆動トランジスタのソースと所定の電位が供給される給電線との間に介在する第2スイッチング素子(例えば図3の初期化トランジスタTRS)とを具備し、駆動トランジスタのゲートがデータ信号に応じた電位(例えば図2の電位VDATA)に設定される書込期間において、第1スイッチング素子が非導通状態になるとともに第2スイッチング素子が導通状態となり、書込期間の経過後の駆動期間において、第1スイッチング素子が導通状態になるとともに第2スイッチング素子が非導通状態となる。
【0005】
以上の態様においては、第2スイッチング素子が導通状態になることで書込期間にて駆動トランジスタのソースが所定の電位に維持される。したがって、例えば直前のフレーム期間における階調に拘わらず、電気光学素子を高い精度で所期の階調に制御することが可能となる。また、第1スイッチング素子が非導通状態となることで書込期間における電気光学素子の誤動作が防止される。
【0006】
なお、本発明における駆動信号は、有機発光ダイオード素子などの電流駆動型の電気光学素子を利用した電気光学装置においては電流信号(例えば図3の駆動電流IDR)であるが、電圧の印加によって駆動される電気光学素子を採用した電気光学装置においては電圧信号とされる。
【0007】
本発明の好適な態様において、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とは、導電型が相異なるトランジスタであり、各々のゲートには共通の制御信号が供給される。本態様によれば、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが個別の信号によって制御される構成と比較して画素回路の構成や制御が簡素化される。
【0008】
本発明の好適な態様において、給電線は、駆動トランジスタのドレインが接続された電源線である。本態様によれば、電源線とは別個の配線(例えば図3の給電線34)に第2スイッチング素子が接続された構成と比較して画素回路の構成が簡素化される。
【0009】
本発明の電気光学装置は、画素回路と制御回路とを具備し、画素回路は、ゲートの電位に応じた駆動信号を生成する駆動トランジスタと、駆動信号に応じた階調となる電気光学素子と、駆動トランジスタのソースと電気光学素子との間に介在する第1スイッチング素子と、駆動トランジスタのソースと所定の電位が供給される給電線との間に介在する第2スイッチング素子とを含み、制御回路は、駆動トランジスタのゲートがデータ信号に応じた電位に設定される書込期間において、第1スイッチング素子を非導通状態に制御するとともに第2スイッチング素子を導通状態に制御し、書込期間の経過後の駆動期間において、第1スイッチング素子を導通状態に制御するとともに第2スイッチング素子を非導通状態に制御する。以上の構成によれば、本発明に係る画素回路と同様の効果が奏される。
【0010】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。電子機器の典型例は、電気光学装置を表示装置として利用した機器である。本発明に係る電子機器としてはパーソナルコンピュータや携帯電話機が例示される。もっとも、本発明に係る電気光学装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)としても本発明の電気光学装置を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置(表示装置)の構成を示すブロック図である。同図に示すように、電気光学装置100は、複数の画素回路Pが配列された素子アレイ部10と、各画素回路Pを駆動するための周辺回路(選択回路22,制御回路24,データ供給回路26,電源回路28)とを具備する。
【0012】
素子アレイ部10には、X方向に延在するM本の選択線12と、各選択線12に対をなしてX方向に延在するM本の制御線14と、X方向に交差するY方向に延在するN本の信号線16とが形成される(MおよびNの各々は2以上の自然数)。各画素回路Pは、選択線12と信号線16との各交差に対応して配置される。したがって、素子アレイ部10の全体では、X方向およびY方向にわたって縦M行×横N列のマトリクス状に画素回路Pが配列する。
【0013】
選択回路22は、M本の選択線12の各々(各行の画素回路P)を順番に選択するための選択信号Y[1]〜Y[M]を生成して各選択線12に出力する手段(例えばMビットのシフトレジスタ)である。図2に示すように、第i行(i=1〜M)の選択線12に供給される選択信号Y[i]は、ひとつのフレーム期間F(F1,F2,……)のうち第i番目の書込期間(水平走査期間)Hにてハイレベルとなり、書込期間H以外の期間にてローレベルを維持する。
【0014】
図1の制御回路24は、制御信号Z[1]〜Z[M]を生成して各制御線14に出力する。図2に示すように、第i行の制御線14に供給される制御信号Z[i]は、選択信号Y[i]がハイレベルとなる書込期間Hの経過後から次の書込期間Hの開始前までの所定の期間(以下「駆動期間」という)HDRにてハイレベルを維持し、駆動期間HDR以外の期間(書込期間Hを含む)にてローレベルとなる。
【0015】
図1のデータ供給回路26は、各画素回路Pの階調を指定する階調データGDに基づいてデータ信号X[1]〜X[N]を生成して各信号線16に出力する。データ供給回路26は、各々が別個の信号線16に対応するN個の信号生成部261を含む。N個の信号生成部261には出力制御信号LPが供給される。図2に示すように、出力制御信号LPは、選択信号Y[1]〜Y[M]の各々が規定する書込期間H内にてハイレベルとなる。
【0016】
第j段目(j=1〜N)の信号生成部261は、図2に示すように、選択信号Y[i]がハイレベルとなる書込期間Hにて出力制御信号LPがハイレベルに遷移すると、データ信号X[j]を、第i行に属する第j列目の画素回路Pの階調データGDに応じた電位VDATAに設定し、次に出力制御信号LPがハイレベルに遷移するまで当該電位VDATAを維持する。すなわち、第i行の書込期間Hの終点(選択信号Y[i]がローレベルに遷移する時点)において、データ信号X[j]は、第i行に属する第j列目の画素回路Pの階調データGDに応じた電位VDATAとなる。
【0017】
電源回路28は、電気光学装置100にて使用される各種の電位を生成する回路である。電源回路28は、高位側の電源電位VELと低位側の電源電位VCTと所定の初期化電位VRSとを生成する。初期化電位VRSは任意の定電位(例えば電源電位VCTと同電位)である。電源電位VELは電源線31に供給され、電源電位VCTは電源線32に供給される。初期化電位VRSは給電線34に供給される。
【0018】
次に、図3を参照して、各画素回路Pの具体的な構成を説明する。なお、同図においては第i行に属する第j列目のひとつの画素回路Pのみが代表的に図示されている。図3に示すように、画素回路Pは電気光学素子Eを含む。本形態の電気光学素子Eは、相互に対向する陽極と陰極との間に有機EL(Electroluminescence)材料の発光層が介在する有機発光ダイオード素子である。電気光学素子Eは、発光層に供給される駆動電流IDRの電流量に応じた強度で発光する。電気光学素子Eの陰極は電源線32(電源電位VCT)に電気的に接続される。
【0019】
駆動電流IDRの経路上(電源線31と電気光学素子Eの陽極との間)にはNチャネル型の駆動トランジスタTDRが配置される。駆動トランジスタTDRは、ゲート−ソース間の電圧に応じて駆動電流IDRの電流量を制御する手段である。駆動トランジスタTDRのドレイン(D)は電源線31(電源電位VEL)に接続される。
【0020】
駆動トランジスタTDRのゲートとドレイン(電源線31)との間には容量素子Cが介在する。また、駆動トランジスタTDRのゲートと信号線16との間にはNチャネル型の選択トランジスタTSLが配置される。選択トランジスタTSLは、駆動トランジスタTDRのゲートと信号線16との電気的な接続(導通/非導通)を制御するスイッチング素子である。第i行に属する各画素回路Pの選択トランジスタTSLのゲートは第i行の選択線12に対して共通に接続される。
【0021】
駆動トランジスタTDRのソース(S)と電気光学素子Eの陽極との間(すなわち駆動電流IDRの経路上)にはNチャネル型の駆動制御トランジスタTELが配置される。駆動制御トランジスタTELは、駆動トランジスタTDRのソースと電気光学素子Eの陽極との電気的な接続を制御するスイッチング素子(第1スイッチング素子)である。駆動制御トランジスタTELが導通することで駆動電流IDRの経路が確立するから、駆動制御トランジスタTELは、電気光学素子Eに対する駆動電流IDRの供給の可否を制御する手段として機能する。
【0022】
駆動トランジスタTDRのソース(S)と給電線34との間には初期化トランジスタTRSが配置される。初期化トランジスタTRSは、駆動トランジスタTDRのソースと給電線34との電気的な接続を制御するスイッチング素子(第2スイッチング素子)である。初期化トランジスタTRSの導電型は、駆動制御トランジスタTELとは反対のPチャネル型である。
【0023】
第i行のn個の画素回路Pの各々における駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとは第i行の制御線14に対して共通に接続される。駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとは導電型が反対であるから両者は相補的に動作する。すなわち、駆動制御トランジスタTELが導通する期間においては初期化トランジスタTRSが非導通状態となり、駆動制御トランジスタTELが非導通状態を維持する期間においては初期化トランジスタTRSが導通する。
【0024】
以上の構成において、図2に示すように書込期間Hにて選択信号Y[i]がハイレベルに遷移すると(すなわち第i行の選択線12が選択されると)、選択トランジスタTSLが導通する。したがって、書込期間H内に出力制御信号LPがハイレベルに遷移すると、データ信号X[j]の電位VDATAが選択トランジスタTSLを経由して駆動トランジスタTDRのゲートに供給されるとともに、電位VDATAに応じた電荷が容量素子Cに蓄積される。すなわち、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは階調データGDに応じた電位VDATAに設定される。
【0025】
書込期間Hの終点にて選択信号Y[i]がローレベルに遷移すると、選択トランジスタTSLが非導通状態となって駆動トランジスタTDRのゲートは信号線16から電気的に絶縁されるが、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは、書込期間Hの経過後においても容量素子Cによって電位VDATAに維持される。
【0026】
一方、図2に示すように、書込期間Hの開始前から終了後までにわたって制御信号Z[i]はローレベルに設定されるから、駆動制御トランジスタTELが非導通状態に維持されるとともに初期化トランジスタTRSが導通する。駆動制御トランジスタTELが非導通状態に制御されることで電気光学素子Eに対する電流の供給は完全に停止する。したがって、電気光学素子Eは消灯する。また、初期化トランジスタTRSが導通することで、駆動トランジスタTDRのソースには、給電線34から初期化トランジスタTRSを介して初期化電位VRSが供給される。すなわち、駆動トランジスタTDRのソースは、書込期間H内にて初期化電位VRSに維持される。
【0027】
図2に示すように、書込期間Hの経過後の駆動期間HDRにて制御信号Z[i]がハイレベルに設定されると、初期化トランジスタTRSが非導通状態に遷移することで駆動トランジスタTDRに対する初期化電位VRSの供給が停止する。したがって、駆動トランジスタTDRのソースの電位は、駆動期間HDRの開始前に設定された初期化電位VRSから、駆動トランジスタTDRの抵抗値(直前の書込期間Hにて設定された電位VG)と電気光学素子Eの抵抗値とに応じた電位に変化する。また、ハイレベルの制御信号Z[i]によって駆動制御トランジスタTELは導通する。したがって、駆動トランジスタTDRのゲートの電位VG(電位VDATA)に応じた電流量の駆動電流IDRが、電源線31から駆動トランジスタTDRと駆動制御トランジスタTELとを経由して電気光学素子Eに供給される。電気光学素子Eは、駆動電流IDRの電流量に応じた強度(すなわち電位VDATAに応じた強度)で発光する。
【0028】
次に、図4を参照して、画素回路Pが初期化トランジスタTRSを含まない構成(以下「対比例1」という)を本形態との対比のために検討する。対比例1においては、書込期間Hにて駆動制御トランジスタTELが非導通状態に制御されることで駆動トランジスタTDRのソースは電気的なフローティング状態となる。
【0029】
いま、図4の部分(a)のケースAと同図の部分(b)のケースBとを想定する。ケースAは、第1行の画素回路Pに対し、フレーム期間F1にて最高の階調GHが指定されるとともに直後のフレーム期間F2にて低階調側の中間的な階調GMが指定された場合である。ケースBは、フレーム期間F1にて最低の階調GLが指定されるとともにフレーム期間F2にて階調GMが指定された場合である。
【0030】
ケースAにおいて第1行の画素回路Pに供給される電位VDATAは、フレーム期間F1では階調GHに対応した高位側の電位VHに設定され、フレーム期間F2では階調GMに対応した電位VMに設定される。一方、ケースBにおいて第1行の画素回路Pに供給される電位VDATAは、フレーム期間F1では階調GLに対応した低位側の電位VLに設定され、フレーム期間F2では階調GMに対応した電位VMに設定される。階調GMは低階調側の中間調であるから、電位VHと電位VMとの相違は電位VMと電位VLとの相違よりも大きい(VH−VM>VM−VL)。すなわち、フレーム期間F2の書込期間Hにおける電位VGの変化の方向と変化量とはケースAとケースBとで相違する。
【0031】
駆動トランジスタTDRのゲートとソースとの間には容量(ゲート容量)が付随する。したがって、対比例1のもとで書込期間Hにて駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGが電位VDATAに変化すると、図4に示すように、電気的なフローティング状態にあるソースの電位VSは電位VGに連動して変化する。ケースAにおいてフレーム期間F1とフレーム期間F2との間における電位VGの変化量はケースBにおける電位VGの変化量よりも大きく(VH−VM>VM−VL)、フレーム期間F1とフレーム期間F2との間における電位VGの変化の方向はケースAとケースBとで反対であるから、ケースAにおけるフレーム期間F2内の電位VSは、ケースBにおけるフレーム期間F2内の電位VSよりも低電位となる。フレーム期間F2内の電位VGはケースAとケースBとで同等であるから、図4に示すように、ケースAにおける駆動トランジスタTDRのゲート−ソース間の電圧VGS_AはケースBにおける電圧VGS_Bと比較して大きい(VGS_A>VGS_B)。したがって、フレームF2において同じ階調GMが指定されているにも拘わらず、ケースAにおいてはケースBと比較して電流量の大きい駆動電流IDRが電気光学素子Eに供給される。
【0032】
以上に説明したように対比例1においては、各フレーム期間Fにおける電位VSが直前のフレーム期間Fにおける電位VGに影響されるから、電気光学素子Eの階調(駆動電流IDRの電流量)は直前のフレーム期間Fにて指定された階調に応じて相違する。すなわち、電気光学素子Eを階調データGDに応じた所期の階調に忠実に制御することが困難であるという問題がある。なお、以上においてはひとつの画素回路Pにおける電気光学素子Eの階調がケースAとケースBとで相違することを説明したが、ひとつの画素回路Pに対してケースAのように階調が指定されるとともに別の画素回路Pに対してケースBのように階調が指定された場合には、フレーム期間F2における電気光学素子Eの階調が各画素回路Pで相違する(すなわち階調のムラが発生する)という問題がある。
【0033】
これに対して本形態においては、駆動トランジスタTDRのゲートが電位VDATAに設定される書込期間Hにおいて、図2に示すように、初期化トランジスタTRSが導通することで駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは初期化電位VRSに維持される。すなわち、駆動トランジスタTDRのソースの電位VSは、駆動期間HDRの開始前に、書込期間Hにおける電位VDATAに依存しない初期化電位VRSに初期化される。したがって、図2に示すように、フレーム期間F1にて階調GHが指定されるケースA(部分(a))および階調GLが指定されるケースB(部分(b))の何れにおいても、フレーム期間F2にて画素回路Pに指定される階調が同じ(階調GM)である以上、駆動トランジスタTDRのゲート−ソース間の電圧(VGS_A=VGS_B)や駆動電流IDRの電流量さらには電気光学素子Eの階調は、ケースAとケースBとで略同等となる。すなわち、各フレーム期間Fにおける電気光学素子Eの階調は、直前のフレーム期間Fにて指定された階調に影響されない。
【0034】
以上に説明したように、本形態によれば、各電気光学素子Eを忠実に所期の階調に制御できる。したがって、例えば、フレーム期間F1にて複数の画素回路Pに別個の階調が指定された場合であっても、フレーム期間F2にて各々に同じ階調が指定されたならば、各画素回路Pの電気光学素子Eは有効に均一化される。すなわち、素子アレイ部10における階調のムラを有効に抑制することが可能である。
【0035】
ところで、駆動期間HDRにおける電気光学素子Eの階調を高精度に制御するという観点のみからすると、例えば図5に示すように、図3の画素回路Pから駆動制御トランジスタTELを省略した構成(以下「対比例2」という)も採用され得る。対比例2においては、駆動トランジスタTDRのソースと電気光学素子Eの陽極とが常に接続される。
【0036】
対比例2のもとで書込期間Hに初期化トランジスタTRSを導通させると、駆動トランジスタTDRのソースと給電線34とが初期化トランジスタTRSを介して電気的に接続される。初期化トランジスタTRSのソース−ドレイン間には抵抗(オン抵抗)が付随するから、初期化トランジスタTRSが導通した状態において、駆動トランジスタTDRのソースは、初期化トランジスタTRSのソース−ドレイン間の電圧だけ初期化電位VRSよりも高位となる。したがって、初期化電位VRSを低位側の電源電位VCTと同電位に設定した場合であっても、実際には初期化トランジスタTRSのソース−ドレイン間の電圧に応じた電流が電気光学素子Eに供給される。すなわち、対比例2においては電気光学素子Eが書込期間Hにて発光(誤発光)するという問題がある。
【0037】
これに対して本形態においては、書込期間Hにて駆動制御トランジスタTELが非導通状態に設定されるから、書込期間Hにおける電気光学素子Eの誤発光を有効に防止することが可能である。したがって、対比例2と比較して電気光学素子Eの階調を高精度に制御できるという利点がある。
【0038】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本形態において作用や機能が第1実施形態と共通する要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0039】
図6は、画素回路Pの構成を示す回路図である。同図に示すように、本形態の初期化トランジスタTRSは、駆動トランジスタTDRのソースと電源電位VELが供給される電源線31との間に介在して両者の電気的な接続を制御する。駆動制御トランジスタTELおよび初期化トランジスタTRSの各々は第1実施形態と同様の制御信号Z[i]によって制御される。すなわち、書込期間Hにて初期化トランジスタTRSが導通することで駆動トランジスタTDRのソースは電源電位VELに維持される。したがって、第1実施形態と同様の作用および効果が奏される。
【0040】
第1実施形態の画素回路P(図3)では、初期化トランジスタTRSが導通する書込期間Hにおいて、電源線31から駆動トランジスタTDRと初期化トランジスタTRSとを経由して給電線34に至る経路に電流が流れる。これに対して本形態においては、初期化トランジスタTRSが導通することで駆動トランジスタTDRのソースおよびドレインの双方が電源線31に接続されるから、書込期間Hにて駆動トランジスタTDRや初期化トランジスタTRSに電流は流れない。したがって、第1実施形態と比較して各画素回路Pにおける消費電力が低減されるという利点がある。また、本形態においては、第1実施形態の給電線34を電源線31や電源線32とは個別に形成する必要がないから、第1実施形態と比較して画素回路Pの構成の簡素化(さらには画素回路Pの高精細化)が実現される。
【0041】
<C:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0042】
(1)変形例1
以上の形態においては書込期間Hの開始前から経過後までにわたって初期化トランジスタTRSを導通させる構成を例示したが、初期化トランジスタTRSを導通させる時期(すなわち制御信号Z[i]をハイレベルに設定する時期)は適宜に変更される。例えば、書込期間Hの開始後から当該書込期間Hの経過後までの期間にわたって初期化トランジスタTRSを導通させることで駆動トランジスタTDRのソースに初期化電位VRSを供給してもよい。すなわち、書込期間Hにて駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGが確定する時点(すなわち書込期間Hの終点)にて駆動トランジスタTDRのソースが所定の電位(ゲートの電位VGに依存しない電位)に維持される構成が、本発明においては好適に採用される。
【0043】
(2)変形例2
画素回路Pを構成する各トランジスタの導電型は適宜に変更される。例えば、駆動制御トランジスタTELをPチャネル型として初期化トランジスタTRSをNチャネル型とした構成や、選択トランジスタTSLをPチャネル型とした構成が採用される。
【0044】
また、駆動トランジスタTDRをPチャネル型としてもよい。すなわち、図7に例示するように、電気光学素子Eの陽極を電源線31(電源電位VEL)に接続するとともにPチャネル型の駆動トランジスタTDRのドレインを電源線32(電源電位VCT)に接続した構成が採用される。駆動制御トランジスタTELは駆動トランジスタTDRのソース(S)と電気光学素子Eの陰極との間に介在し、初期化トランジスタTRSは駆動トランジスタTDRのソースと給電線34(初期化電位VRS)との間に介在する。また、図8に例示するように、図7における初期化トランジスタTRSを駆動トランジスタTDRのソースと電源線32(駆動トランジスタTDRのドレイン)との間に介在させた構成も採用される。図7および図8の何れの構成においても、書込期間Hにて初期化トランジスタTRSを導通させることで、駆動期間HDRにおける駆動トランジスタTDRのソースは、直前のフレーム期間Fにおける電位VGとは無関係に所定の電位(図7の初期化電位VRSや図8の電源電位VEL)に設定される。したがって、以上の各形態と同様の効果が奏される。
【0045】
(3)変形例3
階調データGDに応じた電位VDATAが信号線16から選択トランジスタTSLを経由して直接的に駆動トランジスタTDRのゲートに供給される構成(すなわちゲートの電位VGが信号線16の電位VDATAと同電位に設定される構成)は必ずしも必要ではない。例えば、特開2005−99773号公報に開示されるように、選択トランジスタTSLと駆動トランジスタTDRのゲートとの間に容量素子が介在する構成において、容量素子のうち選択トランジスタTSL側の電極に信号線16から電位VDATAを供給することで駆動トランジスタTDR側の電極の電位(すなわち駆動トランジスタTDRのゲートの電位VG)を設定してもよい。すなわち、本発明の好適な態様に係る駆動トランジスタTDRのゲートの電位VGは、書込期間Hにて信号線16の電位VDATAに応じて設定される。
【0046】
以上の各形態においては、信号線16の電位VDATAを時分割で各行の画素回路Pに供給するために各画素回路Pの選択トランジスタTSLを順次に導通させる構成を例示したが、例えば画素回路Pが単列のみに配列する構成(例えば電子写真方式の画像形成装置における露光装置(ラインヘッド))においては、各画素回路Pを行単位で選択するという動作が原理的に不要であるから、各画素回路Pの選択トランジスタTSLは省略される。
【0047】
(4)変形例4
以上の各形態においては駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとが共通の制御信号Z[i]で制御される構成を例示したが、駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとが別個の信号で制御される構成も採用される。したがって、駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとが逆導電型である必要は必ずしもない。もっとも、第1実施形態のように駆動制御トランジスタTELと初期化トランジスタTRSとで制御線14(制御信号Z[i])を共用する構成によれば、各々について配線が個別に形成される構成と比較して、電気光学装置100における配線数が削減されるとともに制御回路24の構成や動作が簡素化されるという利点がある。
【0048】
(5)変形例5
有機発光ダイオード素子は電気光学素子の例示に過ぎない。本発明に適用される電気光学素子について、自身が発光する自発光型と外光の透過率を変化させる非発光型(例えば液晶素子)との区別や、電流の供給によって駆動される電流駆動型と電圧の印加によって駆動される電圧駆動型との区別は不問である。例えば、無機EL素子、フィールド・エミッション(FE)素子、表面導電型エミッション(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子、LED(Light Emitting Diode)素子、液晶素子、電気泳動素子など様々な電気光学素子を本発明に利用することができる。
【0049】
<D:応用例>
次に、本発明に係る電気光学装置を利用した電子機器について説明する。図9ないし図11には、以上に説明した何れかの形態に係る電気光学装置100を表示装置として採用した電子機器の形態が図示されている。
【0050】
図9は、電気光学装置100を採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する電気光学装置100と、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。電気光学装置100は有機発光ダイオード素子を電気光学素子Eとして使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0051】
図10は、電気光学装置100を適用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する電気光学装置100とを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置100に表示される画面がスクロールされる。
【0052】
図11は、電気光学装置100を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す斜視図である。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002と、各種の画像を表示する電気光学装置100とを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった様々な情報が電気光学装置100に表示される。
【0053】
なお、本発明に係る電気光学装置が適用される電子機器としては、図9から図11に例示した機器のほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る電気光学装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、電子写真方式の画像形成装置において露光により感光体ドラムに潜像を形成する露光装置としても本発明の電気光学装置は利用される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。
【図2】電気光学装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】画素回路の構成を示す回路図である。
【図4】対比例1に係る電気光学装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】対比例2に係る画素回路の構成を示す回路図である。
【図6】第2実施形態に係る画素回路の構成を示す回路図である。
【図7】変形例に係る画素回路の構成を部分的に示す回路図である。
【図8】変形例に係る画素回路の構成を部分的に示す回路図である。
【図9】本発明に係る電子機器の形態(パーソナルコンピュータ)を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る電子機器の形態(携帯電話機)を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る電子機器の形態(携帯情報端末)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
100……電気光学装置、P……画素回路、10……素子アレイ部、12……選択線、14……制御線、16……信号線、31,32……電源線、34……給電線、22……選択回路、24……制御回路、26……データ供給回路、28……電源回路、E……電気光学素子、TDR……駆動トランジスタ、TSL……選択トランジスタ、TEL……駆動制御トランジスタ、TRS……初期化トランジスタ、VRS……初期化電位。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートの電位に応じた駆動信号を生成する駆動トランジスタと、
前記駆動信号に応じた階調となる電気光学素子と、
前記駆動トランジスタのソースと前記電気光学素子との間に介在する第1スイッチング素子と、
前記駆動トランジスタのソースと所定の電位が供給される給電線との間に介在する第2スイッチング素子と
を具備し、
前記駆動トランジスタのゲートがデータ信号に応じた電位に設定される書込期間において、前記第1スイッチング素子が非導通状態になるとともに前記第2スイッチング素子が導通状態となり、
前記書込期間の経過後の駆動期間において、前記第1スイッチング素子が導通状態になるとともに前記第2スイッチング素子が非導通状態となる
画素回路。
【請求項2】
第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とは、導電型が相異なるトランジスタであり、各々のゲートには共通の制御信号が供給される
請求項1の画素回路。
【請求項3】
前記給電線は、前記駆動トランジスタのドレインが接続された電源線である
請求項1または請求項2の画素回路。
【請求項4】
画素回路と制御回路とを具備し、
前記画素回路は、
ゲートの電位に応じた駆動信号を生成する駆動トランジスタと、
前記駆動信号に応じた階調となる電気光学素子と、
前記駆動トランジスタのソースと前記電気光学素子との間に介在する第1スイッチング素子と、
前記駆動トランジスタのソースと所定の電位が供給される給電線との間に介在する第2スイッチング素子とを含み、
前記制御回路は、
前記駆動トランジスタのゲートがデータ信号に応じた電位に設定される書込期間において、前記第1スイッチング素子を非導通状態に制御するとともに前記第2スイッチング素子を導通状態に制御し、前記書込期間の経過後の駆動期間において、前記第1スイッチング素子を導通状態に制御するとともに前記第2スイッチング素子を非導通状態に制御する
電気光学装置。
【請求項5】
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とは、導電型が相異なるトランジスタであり、各々のゲートは共通の制御線に接続され、
前記制御回路は、前記制御線に対する制御信号の供給によって前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を制御する
請求項4の電気光学装置。
【請求項6】
前記給電線は、前記駆動トランジスタのドレインが接続された電源線である
請求項4または請求項5の電気光学装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6の何れかの電気光学装置を具備する電子機器。
【請求項1】
ゲートの電位に応じた駆動信号を生成する駆動トランジスタと、
前記駆動信号に応じた階調となる電気光学素子と、
前記駆動トランジスタのソースと前記電気光学素子との間に介在する第1スイッチング素子と、
前記駆動トランジスタのソースと所定の電位が供給される給電線との間に介在する第2スイッチング素子と
を具備し、
前記駆動トランジスタのゲートがデータ信号に応じた電位に設定される書込期間において、前記第1スイッチング素子が非導通状態になるとともに前記第2スイッチング素子が導通状態となり、
前記書込期間の経過後の駆動期間において、前記第1スイッチング素子が導通状態になるとともに前記第2スイッチング素子が非導通状態となる
画素回路。
【請求項2】
第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とは、導電型が相異なるトランジスタであり、各々のゲートには共通の制御信号が供給される
請求項1の画素回路。
【請求項3】
前記給電線は、前記駆動トランジスタのドレインが接続された電源線である
請求項1または請求項2の画素回路。
【請求項4】
画素回路と制御回路とを具備し、
前記画素回路は、
ゲートの電位に応じた駆動信号を生成する駆動トランジスタと、
前記駆動信号に応じた階調となる電気光学素子と、
前記駆動トランジスタのソースと前記電気光学素子との間に介在する第1スイッチング素子と、
前記駆動トランジスタのソースと所定の電位が供給される給電線との間に介在する第2スイッチング素子とを含み、
前記制御回路は、
前記駆動トランジスタのゲートがデータ信号に応じた電位に設定される書込期間において、前記第1スイッチング素子を非導通状態に制御するとともに前記第2スイッチング素子を導通状態に制御し、前記書込期間の経過後の駆動期間において、前記第1スイッチング素子を導通状態に制御するとともに前記第2スイッチング素子を非導通状態に制御する
電気光学装置。
【請求項5】
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子とは、導電型が相異なるトランジスタであり、各々のゲートは共通の制御線に接続され、
前記制御回路は、前記制御線に対する制御信号の供給によって前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を制御する
請求項4の電気光学装置。
【請求項6】
前記給電線は、前記駆動トランジスタのドレインが接続された電源線である
請求項4または請求項5の電気光学装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6の何れかの電気光学装置を具備する電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−233461(P2008−233461A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72027(P2007−72027)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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