説明

界面強化処理ガラスフィラー及びフェノール樹脂成形材料

【課題】ガラスフィラーとフェノール樹脂との密着性を高めることで成形品の機械的強度を向上させることができる界面強化処理ガラスフィラーとそれを用いたフェノール樹脂成形材料を提供する。
【解決手段】 ガラスフィラー表面の少なくとも一部が樹脂組成物により被覆処理されてなる界面強化処理ガラスフィラーであって、前記樹脂組成物は、レゾール型フェノール樹脂(A)、アミン系シランカップリング剤(B)、及び、窒素含有化合物(C)を含有することを特徴とする界面強化処理ガラスフィラー、及び、この界面強化処理ガラスフィラーと、マトリックス樹脂としてフェノール樹脂を含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面強化処理ガラスフィラー及びそれを含有するフェノール樹脂成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂成形材料は耐熱性、寸法安定性、耐薬品性、成形性等に優れ、自動車部品や産業機械部品或いは家電製品等の基幹産業分野で長期に渡り使用されてきた実績がある。さらに、金属部品をガラスフィラーで強化した高強度のフェノール樹脂成形品に置換することで、コストダウン、大幅な軽量化が可能になることから、積極的な代替検討が行なわれている。
【0003】
しかし、今後更に金属代替を進めるためには、従来のフェノール樹脂成形材料より更に高強度を有することが必要となってくる。高強度を達成するための手段の1つとしてガラスフィラーとマトリックス樹脂との界面強化が挙げられ、ガラスフィラーをカップリング剤で処理しマトリックス樹脂との密着性を向上させる方法が数多く提案されており、通常の市販されているガラスフィラーにはこれらの処理が施されている。しかしながら、これらの方法による強度向上効果にも限界があり、更に金属代替検討を進めるためには、ガラスフィラーとフェノール樹脂との密着性を更に高める必要がある。ガラスフィラーとフェノール樹脂との密着性を向上させる試みは以前から数多くなされており、例えば、ガラス繊維にフェノール樹脂とカップリング剤とを付着させた繊維を配合してフェノール樹脂を強化する方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、上記方法により得られる高密着性においても更なる向上が期待されていた。
【0004】
また、ガラスフィラーへの窒素含有化合物の処理としては、ガラス繊維とフェノール樹脂のぬれ性の向上を目的として、ガラス繊維にヘキサミンを付着させた繊維を配合して成形品を強化する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら上記方法では、ガラスフィラー表面へのぬれ性や表面近傍でのフェノール樹脂の硬化性の向上は期待できるが、密着力の向上による界面強化を期待したものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−007883号
【特許文献2】特開2001−329073号
【特許文献3】特開2001−329465号
【特許文献4】特開2002−220783号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フェノール樹脂成形材料による金属代替検討を進めるに当たり必要不可欠な要素となる高強度を付与するためになされたものであり、ガラスフィラーとフェノール樹脂との密着性を高めることで成形品の機械的強度を向上させることができる界面強化処理ガラスフィラーとそれを用いたフェノール樹脂成形材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記[1]〜[10]に記載の本発明により達成される。
[1]ガラスフィラー表面の少なくとも一部が樹脂組成物により被覆処理されてなる界面
強化処理ガラスフィラーであって、上記樹脂組成物は、レゾール型フェノール樹脂(A)、アミン系シランカップリング剤(B)、及び、窒素含有化合物(C)を含有することを特徴とする界面強化処理ガラスフィラー。
[2]上記レゾール型フェノール樹脂(A)が、25℃において、レゾール型フェノール樹脂の固形分100重量部に対して、純水100重量部以上を混合しても、懸濁や白濁を起こさない水溶性(水倍率1倍以上)を有しているものである上記[1]に記載の界面強化処理ガラスフィラー。
[3]上記窒素含有化合物(C)が、単独での沸点或いは分解温度が100℃以上である上記[1]又は[2]に記載の界面強化処理ガラスフィラー。
[4]上記樹脂組成物において、上記窒素含有化合物(C)の配合量が、上記レゾール型フェノール樹脂(A)の固形分100重量部に対して0.1〜50重量部である、上記[1]ないし[3]のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
[5]上記界面強化処理ガラスフィラーは、上記ガラスフィラー100重量部に対して、上記樹脂組成物0.005〜10重量部により被覆処理されてなる上記[1]ないし[4]のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
[6]上記界面強化処理ガラスフィラーにおいて、上記ガラスフィラーを被覆している上記樹脂組成物中のアミン系シランカップリング剤(B)の量が、上記ガラスフィラー100重量部に対して0.001〜0.5重量部である、上記[1]ないし[5]のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
[7]上記ガラスフィラーが、平均粒子径1〜500μmのガラスビーズ又はガラスバルーンである上記[1]ないし[6]のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
[8]上記ガラスフィラーが、平均繊維径1〜50μmのガラス繊維である上記[1]ないし[6]のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
[9]上記界面強化処理ガラスフィラーが、ガラスフィラー表面の少なくとも一部を上記樹脂組成物で被覆処理した後、80〜150℃の温度で乾燥処理されてなるものである上記[1]ないし[8]のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
[10]上記[1]ないし[9]のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラーと、マトリックス樹脂としてフェノール樹脂を含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の界面強化処理ガラスフィラーは、ガラスフィラーとマトリックス樹脂であるフェノール樹脂との密着力を向上させることができるという効果を有するものである。そして、本発明の界面強化処理ガラスフィラーを用いた本発明のフェノール樹脂成形材料の成形品は、機械的強度に優れるという効果を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の界面強化処理ガラスフィラーと、これを含有するフェノール樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」ということがある)について詳細に説明する。
本発明の界面強化処理ガラスフィラーは、ガラスフィラー表面の少なくとも一部が樹脂組成物により被覆処理されてなる界面強化処理ガラスフィラーであって、上記樹脂組成物は、レゾール型フェノール樹脂(A)、アミン系シランカップリング剤(B)、及び、窒素含有化合物(C)を含有することを特徴とする
【0010】
以下、各成分について説明する。
<レゾール型フェノール樹脂> 本発明に用いられるレゾール型フェノール樹脂(以下、単に「レゾール樹脂」ということがある)について説明する。
本発明に用いられるレゾール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とをアルカリ性触媒下で反応させて得られるものである。
【0011】
ここで用いられるフェノール類としては特に限定されないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール、フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール、p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体、および1−ナフトール、2−ナフトール等の1価の多環フェノール類、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。通常、フェノール、クレゾールが多く用いられる。
【0012】
また、アルデヒド類としては特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。通常、ホルムアルデヒドが多く用いられる。
【0013】
上記フェノール類とアルデヒド類とを反応させる際に用いられるアルカリ性触媒としては特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン等の第1級アミン、ジエタノールアミン等の第2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン等の第3級アミン等のアミン系化合物、あるいは、炭酸ナトリウム、ヘキサメチレンテトラミン等のアルカリ性物質等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0014】
本発明に用いられるレゾール樹脂を合成する際の、上記フェノール類(P)とアルデヒド類(F)との反応モル比(F/P)としては特に限定されないが、0.8〜3.0とすることが好ましい。
反応モル比が上記下限値より小さいと、レゾール樹脂中に未反応フェノール類が多く含有されるようになる。一方、上記上限値より大きいと、未反応アルデヒド類の含有量が多くなる。いずれの場合も歩留まりが低下し、未反応成分の除去に工数を要するようになる。
【0015】
本発明に用いられるレゾール樹脂は、上記フェノール類、アルデヒド類を反応させたものを用いることができるが、このほかにも、各種アルキルフェノール、芳香族炭化水素、メラミン、アニリン、エポキシ化合物のほか、カシューナットオイル、亜麻仁油、エノ油、桐油等の植物油脂、ロジンを含む各種テルペン類、各種変性シリコーンオイル等により変性したものを用いることもできる。
【0016】
本発明に用いられるレゾール樹脂は、合成したものが液状である場合は、そのままの形態で用いるか、水や有機溶剤で希釈して用いることができる。また、合成したものが半固
形状〜固形状である場合は、水や有機溶剤に溶解して用いることができる。
【0017】
本発明に用いられるレゾール樹脂の水溶性は特に限定されないが、25℃において、レゾール樹脂固形分100重量部に対して、純水100重量部以上を混合しても、懸濁や白濁を起こさない水溶性(水倍率1倍以上)を有していることが好ましく、純水300重量部以上を配合しても、懸濁や白濁を起こさない水溶性(水倍率3倍以上)を有していることがさらに好ましい。
これにより、本発明のレゾール樹脂において、例えば、使用時の水による希釈、洗浄時の水洗など、水を使用した取り扱いを容易にすることができる。上記下限値量未満の純水を添加することで懸濁や白濁を起こすような水溶性では、上記取り扱い時に水を使用することが難しくなり、このような場合はメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤を使用しなければならず、環境衛生面の問題が避けられない。
【0018】
<窒素含有化合物> 本発明に用いられる窒素含有化合物としては、脂肪族または脂環族の第1級、第2級または第3級アミン、芳香環を有する脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、含窒素芳香複素環化合物、イミダゾ−ル類、スルフェンアミド類、チアゾ−ル類、アゾ化合物などの複素環式化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
このようなものとして、例えば、トリエチルアミン、トリエタノ−ルアミン、n−ブチルアミン、ジフェニルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、アニリン、メチルアニリン、1−アミノアダマンタン、4−アミノジフェニルアミン、1−ナフチルアミン、オクタデシルアミン、ジフェニルアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミンであり、イミダゾ−ル類、スルフェンアミド類、チアゾ−ル類、アゾ化合物としては、2−メチルイミダゾ−ル、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾ−ル、2−ヘプタデシルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾ−ル、2−フェニル−4−メチルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾ−ル、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾ−ル、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾ−ル、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾ−ル、2−メチルイミダゾリン、2− フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリンスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モリホリノチオ)ベンゾチアゾール、ヘキサメチレンテトラミン、ジアザビシクロウンデセン、キヌクリジン、ピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、環状ポリアミンなどが挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
中でも、単独での沸点或いは分解温度が100℃以上のものが好ましい。これら窒素含有化合物のいずれかを1種類または2種類以上組み合わせて用いて良い。単独での沸点或いは分解温度が100℃未満であると、後述する乾燥処理工程にて窒素含有化合物が脱離することにより効果が得られないことがあり、また、気泡としてガラス表面に残存する事により界面強度が低下する場合もある。このような理由で上記上限値を有するものが好まし
いと考えられるため、単独での沸点或いは分解温度が100℃未満であってもレゾール型フェノール樹脂(A)との反応性が高いために乾燥処理後に残存する化合物については使用できる。
【0019】
<窒素含有化合物の含有量> 本発明に用いられる窒素含有化合物の含有量としては、上記樹脂組成物において、レゾール型フェノール樹脂の固形分100重量部に対して0.1〜50重量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜5重量部である。経済的には上記範囲内で少量である程有利である。
【0020】
<アミン系シランカップリング剤> 本発明に用いられるアミン系シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3(又は2)−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンの加水分解縮合物、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、両末端にアルコキシシリル基を持ったアミノシラン等が挙げられる。これらアミン系シランカップリング剤のいずれかを1種類または2種類以上組み合わせて用いて良い。
【0021】
<アミン系シランカップリング剤の含有量> 本発明に用いられるアミン系シランカップリング剤の含有量としては、界面強化処理ガラスフィラーにおいて、上記ガラスフィラーを被覆している樹脂組成物中のアミン系シランカップリング剤(B)の量が、ガラスフィラー100重量部に対して0.001〜0.5重量部であることが好ましい。含有量が上記下限値未満では被覆処理による強度向上効果が小さいことがあり、上記上限値を越えると強度に対する効果が得られないことがあったり、特性にバラツキが生じたり、作業性が悪化したりする場合もあり、さらに経済的に不利となる。
【0022】
<樹脂組成物の量> 本発明の界面強化処理ガラスフィラーにおいて、レゾール型フェノール樹脂とアミン系シランカップリング剤と窒素含有化合物とを含有する樹脂組成物によるガラスフィラーの処理量としては特に限定されないが、界面強化処理ガラスフィラーは、ガラスフィラー100重量部に対して、樹脂組成物0.005〜10重量部により被覆処理されてなるものが好ましい。更に好ましくは、0.05〜1重量部の被覆処理がなされたものである。
処理量が上記下限値未満では、被覆処理による強度向上効果が小さいことがあり、上記上限値を越えると、樹脂組成物自体の機械的特性が界面強化処理ガラスフィラーを含有した成形材料の機械的特性に影響するようになり、強度に対する効果が得られない場合がある。
【0023】
上記処理量は、用いるガラスフィラーの比表面積によって適切な処理量が変化し、ガラスフィラー表面に、樹脂組成物にて5〜150nm程度の厚みの処理層を形成することが好ましい。
【0024】
<ガラスフィラーの材質> 本発明に用いられるガラスフィラーの材質としては、特に限定されないが、Aガラス、Eガラス、Sガラス、Dガラス、高弾性率ガラス、石英ガラス等を用いることができる。中でも強度向上及びコストの面からEガラスを用いることが好ましい。
【0025】
<ガラスフィラーの形態> 本発明に用いられるガラスフィラーの形態としては、特に限定されないが、例えば低アスペクト比のガラスフィラーとして、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シリカ、ガラス粉末などが挙げられ、高アスペクト比のガラスフィラーとして、ガラス繊維などが挙げられる。
これらの中でも、低アスペクト比のガラスフィラーとしては、平均粒子径1〜500μmのガラスビーズ又はガラスバルーンであることが好ましい。これにより、得られる成形材料の均質性が向上し、安定な品質を有する成形材料を得る事ができる。
また、高アスペクト比のガラスフィラーとしては、平均繊維径1〜50μmのガラス繊維であることが好ましい。これにより、得られる成形材料の均質性が向上し、安定な品質を有する成形材料を得る事ができる。
【0026】
本発明において用いられる樹脂組成物には、必要に応じて、尿素等のホルマリンキャッチ剤や、各種界面活性剤等の化合物、ウレタン樹脂等のエマルジョンを添加することもできる。また、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を添加することもできる。
また、乳酸、蓚酸、塩酸、硫酸、ホウ酸等で、レゾール樹脂合成時に用いたアルカリ性触媒を中和することも可能である。
【0027】
<被覆処理法> 上記ガラスフィラーをレゾール樹脂、アミン系シランカップリング剤、窒素含有化合物を含有する樹脂組成物で被覆処理する方法は特に限定されないが、例えば、レゾール樹脂、アミン系シランカップリング剤、窒素含有化合物の全てを溶解した樹脂組成物溶液を調製しておき、ガラスフィラーにその樹脂組成物溶液を噴霧する方法、ガラスフィラーを樹脂組成物溶液中に浸漬する方法等をフィラー形態に合わせて適宜用いることができる。また、予めアミン系シランカップリング剤により処理されたガラスフィラーを用いる場合は、レゾール樹脂、窒素含有化合物を溶解した樹脂組成物溶液を調製しておき、同様の処理方法を用いることができる。
【0028】
<乾燥条件> 上記方法にて被覆処理されたガラスフィラーの乾燥方法としては、特に限定されないが、温度が80〜150℃での各種乾燥処理が好ましい。温度が上記下限値未満であると溶媒の除去効率やアミン系シランカップリング剤の反応率が低下し、上記上限値を超えるとレゾール樹脂の硬化が進行し過ぎ、成形材料のマトリックス樹脂との反応性が低下するために密着性の低下に繋がることがある。
【0029】
<効果の推察> 以上に説明したような、ガラスフィラー表面の少なくとも一部が、レゾール樹脂、アミン系シランカップリング剤、窒素含有化合物を含有する樹脂組成物で被覆処理されてなる本発明の界面強化処理ガラスフィラーを用いることにより、成形材料に配合した場合に成形品の機械的強度を向上させることができる。この理由は明らかではないが、以下のように推測される。
通常、ガラスフィラー表面には密着性を向上させるためにカップリング剤処理がなされているが、フェノール樹脂成形材料の場合は、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂との割合や硬化剤として使用されるヘキサメチレンテトラミンの量によってマトリックス樹脂の極性が様々に変化するため、カップリング剤処理だけでは全般的なフェノール樹脂に対して密着性が良好なガラスフィラーを得ることはできなかった。
また、従来技術の一つであるノボラック型フェノール樹脂、アミン系シランカップリング剤、ヘキサメチレンテトラミンを含有する組成物による被覆処理では、ノボラック型フェノール樹脂と成形材料のマトリックス樹脂との反応性が低いため、被覆処理に用いた樹脂とマトリックス樹脂との間において密着性が良好なガラスフィラーを得ることはできなかった。
本発明の界面強化処理ガラスフィラーは、被覆処理時に樹脂組成物中に含まれるアミン系シランカップリング剤がガラスフィラー表面のシラノール基と選択的に反応することで、表面が改質されたガラスフィラーとなり、樹脂組成物の残りの成分が表面改質されたガラスフィラーの表面とマトリックス樹脂との間に高い密着性を付与するものと推察される。
具体的には、ガラスフィラーと樹脂組成物との界面では、レゾール樹脂の強い酸性を有
するフェノール性ヒドロキシル基とアミン系シランカップリング剤の強い塩基性を有するアミノ基との酸塩基相互作用による密着性に加え、さらに窒素含有化合物を含有する事でガラスフィラーと樹脂組成物との親和性が高くなり、界面の密着強度が高まると推測される。また、樹脂組成物とマトリックス樹脂との界面では、レゾール樹脂がマトリックス樹脂との反応性の高いメチロール基を有した状態で付着していることにより、それがマトリックス樹脂と化学結合をなす事で界面の密着強度が高まると推測される。このような作用効果により、本発明の界面強化処理ガラスフィラーを用いた成形材料の成形品において、機械的強度を大きく向上することができると考えられる。
【0030】
本発明で用いる樹脂組成物には、上記理由から反応性の低いノボラック型フェノール樹脂よりも反応性の高いレゾール樹脂を用いるほうが好ましい。これにより、本発明の界面強化処理ガラスフィラーにおいて、樹脂組成物とマトリックス樹脂とが高い密着性を有する界面を得ることができる。
【0031】
次に、本発明の成形材料について説明する。
本発明の成形材料は、上記界面強化処理ガラスフィラーと、マトリックス樹脂としてフェノール樹脂とを含有することを特徴とする。
本発明の成形材料において、上記界面強化処理ガラスフィラーの含有量は、特に限定されないが、成形材料全体に対して30〜70重量%であることが好ましい。更に好ましくは45〜60重量%である。界面強化処理ガラスフィラーの含有量が上記下限値未満になると、機械的強度が低くなることがあり、上記上限値を超えると、必然的にフェノール樹脂の含有量が減少するために成形材料化段階での作業性や成形性を低下させることがある。
【0032】
<マトリックス樹脂> 本発明の成形材料でマトリックス樹脂として用いるフェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂の単独或いは二種類以上配合して用いることができる。好ましくはヘキサメチレンテトラミンが硬化剤となるノボラック型フェノール樹脂である。
ノボラック型フェノール樹脂は、特に限定されるものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等が挙げられるが、フェノールノボラック樹脂が成形性、コスト面で好ましい。レゾール型フェノール樹脂も特に限定されるものではないが、例えば、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂等が挙げられるが、材料化段階での作業性、得られた成形品の特性が良好であるジメチレンエーテル型レゾール樹脂を使用するのが好ましい。
【0033】
<硬化剤> 本発明の成形材料においてノボラック型フェノール樹脂を用いる場合は、通常、ヘキサメチレンテトラミンを使用する。ヘキサメチレンテトラミンの含有量は、ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対し、10〜20重量部が好ましい。更に好ましくは14〜18重量部である。上記上限値を超えると、未反応へミサメチレンテトラミンが残存し強度に影響を与えることがあり、上記下限値未満では硬化が不十分となることがある。
【0034】
<マトリックス樹脂の配合量> 上記フェノール樹脂の含有量は、ヘキサメチレンテトラミンを使用する場合はそれも含めて、成形材料全体に対して25〜50重量%であることが好ましい。上記上限値を超えると十分な機械的強度を有する成形品が得られないことがある。また、上記下限値未満では成形材料化段階での作業性が低下し、また流動性に乏しく成形性を低下させる可能性があるため、上記範囲が望ましい。
【0035】
<その他の配合> 本発明の成形材料には、上記界面強化処理ガラスフィラー以外に、
各種充填材や多価アルコールなどを配合することができる。
各種充填材としては特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ウォラストナイト等の無機粉末充填材等を単独或いは二種類以上配合して用いることができる。
多価アルコールとしては特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールから選ばれるものを用いることが好ましい。
【0036】
次に、本発明の成形材料の製造方法について説明する。
本発明の成形材料は、通常の方法により製造することができる。すなわち、上記配合物を所定の配合割合で混合し、更に着色剤、離型剤、硬化触媒等を加え、加熱ロール、コニーダ、二軸押出機等を使用して溶融混練した後、冷却、粉砕することにより得られる。
本発明の成形材料は、圧縮成形、移送成形、射出成形などの通常の成形方法により成形することができる。このようにして得られた成形品は、優れた機械的強度を有していることから、自動車用、汎用機械用、家庭電化製品用及びその周辺機器用等の金属部品の代替に適用できる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に記載に何ら限定されるものではない。実施例及び比較例に用いた各原料は以下のとおりである。
【0038】
(1)レゾール型フェノール樹脂:住友ベークライト社製PR−940C(固形分:68重量%、水倍率:5倍)
(2)レゾール型フェノール樹脂:住友ベークライト社製PR−53074(固形分:75重量%,水倍率:2倍)
(3)レゾール型フェノール樹脂:住友ベークライト社製PR−961A(固形分:64重量%,水倍率:10倍以上)
(4)アミン系シランカップリング剤:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(CA1と略す)
(5)アミン系シランカップリング剤:N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(CA2と略す)
(6)アミン系シランカップリング剤:N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(CA3と略す)
(7)窒素含有化合物:ヘキサメチレンテトラミン(沸点:280℃)
(8)窒素含有化合物:トリブチルアミン(沸点:216℃)
(9)窒素含有化合物:2−エチル−4メチルイミダゾール(沸点:273℃)
(10)ガラスビーズ:ユニオン社製UB−13L、平均粒子径45μm
(11)ガラス繊維:日東紡績社製カットファイバー、平均繊維径11μm
(12)フェノール樹脂成形材料のマトリックス樹脂:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト社製PR−51305)
(13)フェノール樹脂成形材料のマトリックス樹脂:ジメチレンエーテル型レゾール樹脂(住友ベークライト社製PR−53529)
(14)硬化剤:ヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミンと略す)
(15)硬化助剤:酸化マグネシウム
(16)離型剤:ステアリン酸カルシム
(17)着色剤:カーボンブラック
【0039】
実施例の界面強化処理ガラスフィラー及び比較例の各種処理ガラスフィラーの配合について、表1、表2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
1.界面強化処理ガラスフィラーの調製
[実施例1]
水/メタノール=1/9の重量比での混合溶媒100重量部に対して、レゾール型フェノール樹脂としてPR−940Cを固形分として2重量部、アミン系シランカップリング剤としてCA1を1.2重量部、窒素含有化合物としてヘキサミンを0.1重量部添加し、攪拌装置により溶媒に溶解した樹脂組成物溶液を作製した。
この樹脂組成物溶液を、ガラスビーズ100重量部に対してアミン系シランカップリング剤が0.06重量部となるように配合したものを常温にて混練して、100℃で30分間加熱乾燥処理を行い、界面強化処理ガラスビーズ1を得た。
【0043】
[実施例2]
実施例1において、レゾール型フェノール樹脂としてPR−53074を配合する以外は実施例1と同様にして界面強化処理ガラスビーズ2を得た。
【0044】
[実施例3]
実施例1において、レゾール型フェノール樹脂としてPR−961Aを配合する以外は実施例1と同様にして界面強化処理ガラスビーズ3を得た。
【0045】
[実施例3]
実施例1において、アミン系シランカップリング剤としてCA2を配合する以外は実施例1と同様にして界面強化処理ガラスビーズ4を得た。
【0046】
[実施例5]
実施例1において、アミン系シランカップリング剤としてCA3を配合する以外は実施例1と同様にして界面強化処理ガラスビーズ5を得た。
【0047】
[実施例6]
実施例1において、窒素含有化合物としてトリブチルアミンを配合する以外は実施例1と同様にして界面強化処理ガラスビーズ6を得た。
【0048】
[実施例7]
実施例1において、窒素含有化合物として2−エチル−4−メチルイミダゾールを配合する以外は実施例1と同様にして界面強化処理ガラスビーズ7を得た。
【0049】
[比較例1]
実施例1において、レゾール型フェノール樹脂と窒素含有化合物を配合しない以外は実施例1と同様にしてシランカップリング剤処理ガラスビーズを得た。
【0050】
[比較例2]
実施例1において、窒素含有化合物を配合しない以外は実施例1と同様にしてレゾール樹脂処理ガラスビーズを得た。
【0051】
[比較例3]
実施例1において、レゾール型フェノール樹脂の代わりにマトリックス樹脂として用いるノボラック型フェノール樹脂を用い、窒素含有化合物としてヘキサミンを0.35重量部配合する以外は実施例1と同様にしてノボラック樹脂処理ガラスビーズを得た。
【0052】
[実施例8]
水/メタノール=1/9の重量比での混合溶媒100重量部に対して、レゾール型フェノール樹脂としてPR−940Cを固形分として6重量部、アミン系シランカップリング
剤としてCA1を3.6重量部、窒素含有化合物としてヘキサメチレンテトラミンを0.3重量部添加し、攪拌装置により溶媒に溶解した樹脂組成物溶液を作製した。
この樹脂組成物溶液を、ガラス繊維100重量部に対してアミン系シランカップリング剤0.18重量部となるように添加して含浸処理し、100℃で30分間加熱乾燥処理を行い、界面強化処理ガラス繊維1を得た。
【0053】
[実施例9]
実施例8において、レゾール型フェノール樹脂としてPR−53074を配合する以外は実施例8と同様にして界面強化処理ガラス繊維2を得た。
【0054】
[実施例10]
実施例8において、レゾール型フェノール樹脂としてPR−961Aを配合する以外は実施例8と同様にして界面強化処理ガラス繊維3を得た。
【0055】
[実施例11]
実施例8において、アミン系シランカップリング剤としてCA2を配合する以外は実施例8と同様にして界面強化処理ガラス繊維4を得た。
【0056】
[実施例12]
実施例8において、アミン系シランカップリング剤としてCA3を配合する以外は実施例8と同様にして界面強化処理ガラス繊維5を得た。
【0057】
[実施例13]
実施例8において、窒素含有化合物としてトリブチルアミンを配合する以外は実施例8と同様にして界面強化処理ガラス繊維6を得た。
【0058】
[実施例14]
実施例8において、窒素含有化合物として2−エチル−4−メチルイミダゾールを配合する以外は実施例8と同様にして界面強化処理ガラス繊維7を得た。
【0059】
[比較例4]
実施例8において、レゾール型フェノール樹脂と窒素含有化合物を配合しない以外は実施例8と同様にしてシランカップリング剤処理ガラス繊維を得た。
【0060】
[比較例5]
実施例8において、窒素含有化合物を配合しない以外は実施例8と同様にしてレゾール樹脂処理ガラス繊維を得た。
【0061】
[比較例6]
実施例8において、レゾール型フェノール樹脂の代わりにマトリックス樹脂として用いるノボラック型フェノール樹脂を用い、窒素含有化合物としてヘキサミンを1.05重量部配合する以外は実施例8と同様にしてノボラック樹脂処理ガラス繊維を得た。
【0062】
2.成形材料の製造
得られたガラスフィラーを含有する成形材料の実施例及び比較例の配合について表3、表4に示す。上記ガラスフィラーがガラスビーズであるものについては表3に、上記ガラスフィラーがガラス繊維であるものについては表4に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
[実施例15]
成形材料全体に対して、マトリックス樹脂としてノボラック型フェノール樹脂とヘキサミンの混合物を47重量%(ノボラック型フェノール樹脂40重量%、ヘキサミン7重量
%)、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラスビーズ1を50重量%、硬化助剤、着色剤、離型剤、各々1重量%を配合し、予備混合した。この混合物を回転速度の異なった105℃の加熱ロールで溶融混練して、シート状に冷却したものを粉砕して顆粒状の成形材料を得た。
【0066】
[実施例16]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラスビーズ2を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0067】
[実施例17]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラスビーズ3を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0068】
[実施例18]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラスビーズ4を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0069】
[実施例19]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラスビーズ5を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0070】
[実施例20]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラスビーズ6を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0071】
[実施例21]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラスビーズ7を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0072】
[実施例22]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラス繊維1を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0073】
[実施例23]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラス繊維2を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0074】
[実施例24]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラス繊維3を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0075】
[実施例25]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラス繊維4を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0076】
[実施例26]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラス繊維5を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0077】
[実施例27]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラス繊維6を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0078】
[実施例28]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処理ガラス繊維7を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0079】
[比較例7]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーに代わりに、ガラスフィラーとしてシランカップリング剤処理ガラスビーズを配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0080】
[比較例8]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーに代わりに、ガラスフィラーとしてレゾール樹脂処理ガラスビーズを配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0081】
[比較例9]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーに代わりに、ガラスフィラーとしてノボラック樹脂処理ガラスビーズを配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0082】
[比較例10]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーに代わりに、ガラスフィラーとしてシランカップリング剤処理ガラス繊維を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0083】
[比較例11]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーに代わりに、ガラスフィラーとしてレゾール樹脂処理ガラス繊維を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0084】
[比較例12]
実施例15において、界面強化処理ガラスフィラーに代わりに、ガラスフィラーとしてノボラック樹脂処理ガラス繊維を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0085】
[実施例29]
実施例15において、マトリックス樹脂としてジメチレンエーテル型レゾール樹脂を47重量%配合し、ヘキサミンを配合しない以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0086】
[比較例13]
実施例15において、マトリックス樹脂としてジメチレンエーテル型レゾール樹脂を47重量%配合し、ヘキサミンを配合せず、界面強化処理ガラスフィラーに代わりに、ガラスフィラーとしてシランカップリング剤処理ガラスビーズを配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0087】
[実施例30]
実施例15において、マトリックス樹脂としてジメチレンエーテル型レゾール樹脂を47重量%配合し、ヘキサミンを配合せず、界面強化処理ガラスフィラーとして界面強化処
理ガラス繊維1を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0088】
[比較例14]
実施例15において、マトリックス樹脂としてジメチレンエーテル型レゾール樹脂を47重量%配合し、ヘキサミンを配合せず、界面強化処理ガラスフィラーに代わりに、ガラスフィラーとしてシランカップリング剤処理ガラス繊維を配合する以外は実施例15と同様にして成形材料を得た。
【0089】
3.特性評価
特性評価に使用した試験片の成形方法および評価方法は以下のとおりである。
【0090】
試験片は、上記実施例及び比較例で得られた成形材料を用い、移送成形により作製した。成形条件は、金型温度175℃、硬化時間3分間とした。
【0091】
測定方法は下記のとおりである。
曲げ強さ:JIS K 6911に準拠して測定した。
【0092】
表3、表4の結果より、実施例はいずれも、本発明の界面強化処理ガラスフィラーを配合した本発明の成形材料であり、この成形品は、曲げ強さにおいて、従来実施されていたシランカップリング剤で処理されたガラスフィラー、シランカップリング剤とレゾール型フェノール樹脂とで処理されたガラスフィラー、シランカップリング剤とノボラック型フェノール樹脂とヘキサミンとで処理されたガラスフィラーを用いた比較例より高い機械的強度を示した。この傾向は、マトリックスフェノール樹脂がノボラック型だけでなくレゾール型であっても同様であった。
上記結果はマトリックス樹脂が同じであれば、ガラスフィラー表面への被覆処理以外は同じであるため、機械的強度の向上はガラスフィラーとマトリックス樹脂との密着性の向上による界面強化に起因するものと考えられる。
【0093】
以上の結果から、本発明の界面強化処理ガラスフィラーを用いることで、ガラスフィラーとフェノール樹脂との密着性が高まり、フェノール樹脂成形材料の成形品の機械的強度が向上することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の界面強化処理ガラスフィラーは、フェノール樹脂成形材料の成形品の機械的強度を向上させることができる。そして、本発明のフェノール樹脂成形材料は、機械的強度に優れた成形品を得ることができるものであり、自動車用、汎用機械用、家庭電化製品用及びその周辺機器用等の金属部品の代替として好適に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィラー表面の少なくとも一部が樹脂組成物により被覆処理されてなる界面強化処理ガラスフィラーであって、前記樹脂組成物は、レゾール型フェノール樹脂(A)、アミン系シランカップリング剤(B)、及び、窒素含有化合物(C)を含有することを特徴とする界面強化処理ガラスフィラー。
【請求項2】
前記レゾール型フェノール樹脂(A)が、25℃において、レゾール型フェノール樹脂の固形分100重量部に対して、純水100重量部以上を混合しても、懸濁や白濁を起こさない水溶性(水倍率1倍以上)を有しているものである請求項1に記載の界面強化処理ガラスフィラー。
【請求項3】
前記窒素含有化合物(C)が、単独での沸点或いは分解温度が100℃以上である請求項1又は2に記載の界面強化処理ガラスフィラー。
【請求項4】
前記樹脂組成物において、前記窒素含有化合物(C)の配合量が、前記レゾール型フェノール樹脂(A)の固形分100重量部に対して0.1〜50重量部である、請求項1ないし3のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
【請求項5】
前記界面強化処理ガラスフィラーは、前記ガラスフィラー100重量部に対して、前記樹脂組成物0.005〜10重量部により被覆処理されてなる請求項1ないし4のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
【請求項6】
前記界面強化処理ガラスフィラーにおいて、前記ガラスフィラーを被覆している前記樹脂組成物中のアミン系シランカップリング剤(B)の量が、前記ガラスフィラー100重量部に対して0.001〜0.5重量部である、請求項1ないし5のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
【請求項7】
前記ガラスフィラーが、平均粒子径1〜500μmのガラスビーズ又はガラスバルーンである請求項1ないし6のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
【請求項8】
前記ガラスフィラーが、平均繊維径1〜50μmのガラス繊維である請求項1ないし6のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
【請求項9】
前記界面強化処理ガラスフィラーが、ガラスフィラー表面の少なくとも一部を前記樹脂組成物で被覆処理した後、80〜150℃の温度で乾燥処理されてなるものである請求項1ないし8のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラー。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の界面強化処理ガラスフィラーと、マトリックス樹脂としてフェノール樹脂を含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。

【公開番号】特開2011−241267(P2011−241267A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113017(P2010−113017)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】