説明

界面活性剤およびそれを用いた洗浄方法

【課題】従来よりも洗浄力が高められた新規な界面活性剤、ならびに当該界面活性剤を用いた洗浄方法を提供する。
【解決手段】芳香環と、芳香環に結合した、酸素原子を含む直鎖状の2つ以上の連結部と、各連結部の末端に、四級アンモニウム基を介して結合された直鎖状の疎水性基とを含む化学構造を有する界面活性剤、ならびに、当該界面活性剤を用いて基材を洗浄するステップと、加圧流体溶媒を用いて前記基材から界面活性剤を除去するステップとを含む洗浄方法。界面活性剤は、下記一般式(I)で表わされる化学構造を有することが好ましい。


(式中、Aは酸素原子を含む直鎖状の連結部、Bは直鎖状の疎水性基、R及びR’は炭素数1〜16の炭化水素基、mは2〜4の整数である。なお、m個の芳香環以外の部分において、A、B、R、R’はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な界面活性剤およびそれを用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤として、1つの親水性基および1つの疎水性基を有する化合物が汎用されているが、近年、2つの親水性基および2つの疎水性基を含む、「ジェミニ界面活性剤」と呼ばれる2量体界面活性剤が知られている。ジェミニ界面活性剤は、きわめて近接した2つの親水性基の束縛から生じる独特の物性、および、結果として生じるミセル特性を有していることから、洗剤、柔軟剤、乳化剤、相間移動触媒、殺生物剤として、ならびに、スキンケアローション、ヘアコンディショニング組成物および化粧品組成物における成分、鉱石の浮遊選鉱、油井採掘など、様々な分野での利用が検討されている。このようなジェミニ界面活性剤として、たとえば特表2003−505339号公報(特許文献1)、特開2007−176844号公報(特許文献2)などに記載されたジェミニ界面活性剤が挙げられる。
【0003】
また従来より、衣服の洗浄方法の1つとしてドライクリーニングが利用されている。このようなドライクリーニングに関し、たとえば特表2004−515560号公報(特許文献3)に記載されたようなドライクリーニングシステムや特表2006−527788号公報(特許文献4)に記載されたような洗浄組成物が知られている。具体的には、たとえば特許文献3では、有機溶剤溶媒および加圧流体溶媒を利用したテキスタイル洗浄システムが考案されており、そのシステムで使用する有機溶媒として、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテルを代表するポリグリコールエーテルのような特定のタイプの有機溶媒、または類似の溶媒あるいはそれらの溶媒の混合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−505339号公報
【特許文献2】特開2007−176844号公報
【特許文献3】特表2004−515560号公報
【特許文献4】特表2006−527788号公報
【特許文献5】特開2001−278846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献3に開示されたようなドライクリーニングシステムでは、不溶性粒子の汚れと溶媒に可能な油およびグリースからなる汚れを除去することができるが、水性汚れは溶媒に難溶なため除去することが難しい。また、特許文献3に開示されたドライクリーニングシステムでは、共同溶媒として水を含有させたとしても、水性汚れを効果的に除去するためには、有機溶媒と共同溶媒を相分離する割合にする必要があるため、水性汚れは実質的には水洗によって除去されている。
【0006】
このため、溶媒に可溶な油およびグリースからなる汚れと、水性汚れを同時に除去できるドライクリーニングが望まれている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、従来よりも洗浄力が高められた新規な界面活性剤、ならびに当該界面活性剤を用いた洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の界面活性剤は、芳香環と、芳香環に結合した、酸素原子を含む直鎖状の2つ以上の連結部と、各連結部の末端に、四級アンモニウム基を介して結合された直鎖状の疎水性基とを含む化学構造を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の界面活性剤は、下記一般式(I)で表わされる化学構造を有するものであることが好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
(上記一般式(I)中、Aは酸素原子を含む直鎖状の連結部、Bは直鎖状の疎水性基であり、RおよびR’は互いに独立して選ばれる炭素数1〜16の炭化水素基、mは2〜4の整数である。なお、m個の芳香環以外の部分において、A、B、R、R’はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。)
本発明の界面活性剤はまた、下記一般式(II)で表わされる化学構造を有するものであることが好ましい。
【0012】
【化2】

【0013】
(上記一般式(II)中、R1およびR4は互いに独立して選ばれる炭素数1〜4の炭化水素基、R2およびR5は互いに独立して選ばれる炭素数1〜4の炭化水素基、R3およびR6は互いに独立して選ばれる炭素数8〜16の炭化水素基、RA、RB、RCおよびRDは互いに独立して選ばれる炭素数1〜16の炭化水素基である。n、oは、互いに独立して選ばれる1〜5の整数である。)
本発明の界面活性剤は、以下の構造式(1)〜(3)のいずれかで表わされるものであることが、好ましい。
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
本発明はまた、上述した本発明の界面活性剤を用いて基材を洗浄するステップと、加圧流体溶媒を用いて前記基材から界面活性剤を除去するステップとを含む洗浄方法についても提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来よりも洗浄力が高められた新規な界面活性剤が提供され、このような界面活性剤を用いることにより、溶媒に可溶な油およびグリースからなる汚れと、水性汚れを同時に除去できるドライクリーニングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の含酸素ジェミニ界面活性剤によるミセル形成を、炭化水素のみからなるジェミニ界面活性剤の場合と比較して模式的に示す図である。
【図2】洗浄試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の界面活性剤は、芳香環と、芳香環に結合した、酸素原子を含む直鎖状の2つ以上の連結部と、各連結部の末端に、四級アンモニウム基を介して結合された直鎖状の疎水性基とを含む化学構造を有することを特徴とする。本発明の界面活性剤は、まず、1つの親水性基および1つの疎水性基を有する汎用的な界面活性剤とは異なり、2つ以上の親水性基および2つ以上の疎水性基を有する化学構造を有することを大きな特徴とする。また本発明の界面活性剤は、酸素原子を含む連結部が芳香環に結合されていることも大きな特徴とするものである。
【0021】
従来、ジェミニ界面活性剤として、2つの親水性基および2つの疎水性基を有し、2つの親水性基が炭化水素系の連結部(−(CH2x−)で連結された化学構造や、酸素原子を含む連結部(たとえば、−(CH2CH2O)nCH2CH2−)で連結された化学構造のものが知られている。本発明の界面活性剤は、連結部が芳香環に連結されていることで、芳香環に適宜の官能基を導入することで特性が変化するように制御しやすく、また、連結部の酸素原子を有する部分(たとえばエチレンオキサイド部分)の結晶性を下げ、汚れ成分(たとえば後述する実施例で用いた有機溶剤であるDPNB(ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル)など)に対する溶解性を向上できるといった利点がある。
【0022】
また図1は、本発明の含酸素ジェミニ界面活性剤(連結部が2つの場合)によるミセル形成を、炭化水素のみからなるジェミニ界面活性剤の場合と比較して模式的に示す図である。図1(a)には、本発明の含酸素界面活性剤が、2つの親水性基および2つの疎水性基を有するいわゆるジェミニ界面活性剤として実現された場合のミセル形成、図1(b)には炭化水素のみからなるジェミニ界面活性剤の場合のミセル形成を模式的に示している。図1(a)、(b)に比較して示されるように、含酸素ジェミニ界面活性剤の場合、2つの親水性基が外側となるように配置されてミセルが形成される際に、炭化水素のみからなるジェミニ界面活性剤の場合と比較してより密に親水性基が配置される(すなわち、会合数が小さくなる)。このため、炭化水素のみからなるジェミニ界面活性剤と比較して、より多くのイオンが解離し、水を引きつけることができ、結果として高い洗浄能力を示すことができる。
【0023】
本発明の界面活性剤において、芳香環としては、たとえば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセンなどが挙げられ、溶剤への溶解性の観点からは、ベンゼンが特に好ましい。
【0024】
連結部以外に芳香族環に導入し得る官能基としては特に制限されるものではなく、たとえば、F、Cl、Brなどのハロゲン、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。官能基の芳香環への導入は、従来公知の適宜の方法で行うことができ、特に制限されるものではない。
【0025】
本発明の界面活性剤は、以下の一般式(I)で表わされる化学構造を有するものであることが好ましい。なお、一般式(I)中、Aは酸素原子を含む直鎖状の連結部、Bは直鎖状の疎水性基、RおよびR’は互いに独立して選ばれる炭素数1〜16の炭化水素基である。なお、m個の芳香環以外の部分において、A、B、R、R’はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
【化6】

【0027】
本発明の界面活性剤において、連結部Aは、芳香環に2つ以上結合されていればよいが、mが2から3以上に増加する場合の界面活性の向上の度合が、mが1から2に増加する場合よりも相対的に小さいことから、上記一般式(I)におけるmの上限値は2であることが好ましい。本発明の界面活性剤は、2つの連結部Aが芳香環に結合された(すなわち、上記一般式(I)におけるm=2)、いわゆるジェミニ界面活性剤として実現されることが好ましい。
【0028】
本発明の界面活性剤における連結部Aは、酸素原子を含む直鎖状の部分である。連結部Aが酸素原子を含むことで、後述するように本発明の界面活性剤を用いてドライクリーニングを行った際に、ドライクリーニングのすすぎ工程に通常用いられる炭酸ガスとの親和性を向上させることができ、洗浄能力が高まるという利点がある。
【0029】
本発明の界面活性剤は、以下の一般式(II)で表わされる化学構造を有するものであることが好ましい。
【0030】
【化7】

【0031】
上記一般式(II)において、連結部Aは、−C(=O)O(R1O)n2−、−C(=O)O(R4O)o5−で表わされる。本発明の界面活性剤は、このように連結部Aが−C(=O)O(R1O)n2−、−C(=O)O(R4O)o5−で実現されることで、洗浄剤の溶媒成分(たとえば後述する実施例で用いた有機溶剤であるDPNB(ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル)など)に対し良好な溶解性を示すという利点がある。なお、連結部Aは、全体として直鎖状であればよく、本発明の効果を阻害しない範囲で分枝構造を一部に含んでいてもよい。
【0032】
一般式(II)におけるR1およびR4は、炭素数1〜4(好ましくは2)の炭化水素基であり、互いに同一でも互いに異なっていてもよく、独立に選ばれる。R1およびR4の炭素数が2を超える場合には、親水性が低下する傾向にある。
【0033】
また、一般式(II)におけるR2およびR5は、炭素数1〜4(好ましくは2)の炭化水素基であり、互いに同一でも互いに異なっていてもよく、独立に選ばれる。R2およびR5の炭素数が2を超える場合には、親水性が低下する傾向にある。
【0034】
また、一般式(I)におけるRおよびR’、一般式(II)におけるRA、RB、RCおよびRDは、炭素数1〜16の炭化水素基であり、互いに同一でも互いに異なっていてもよく、独立に選ばれる。RおよびR’の炭素数が16を超える場合には、汚れ成分に対する溶解性が低下する傾向にある。
【0035】
また、一般式(II)におけるn、oは、1〜5の整数、好ましくは2〜3の整数であり、互いに同一でも互いに異なっていてもよく、独立に選ばれる。n、oが5を超える場合には、親水性が過剰に高くなる傾向にある。
【0036】
また上記一般式(II)において、疎水性基Bは、R3、R6で表わされる。R3およびR6は、互いに独立して選ばれる炭素数8〜16(好ましくは12〜14)の直鎖状の炭化水素基である。疎水性基Bの炭素数が7以下である場合には、界面活性が失われる傾向にあり、また、疎水性基Bの炭素数が17以上である場合には、汚れ成分への溶解性が低下する傾向にある。なお、直鎖状の疎水性基Bは、全体として疎水性を発揮し得るのであれば、一部に分枝構造を含んでいてもよい。
【0037】
本発明の界面活性剤の好適な具体例としては、下記構造式(1)で表わされる化合物(以下、「I−3EO−12」と呼称する。)、下記構造式(2)で表わされる化合物(以下、「P−3EO−12」と呼称する。)、下記構造式(3)で表わされる化合物(以下、「T−3EO−12」と呼称する。)などを挙げることができるが、本発明の界面活性剤は勿論これらに限定されるものではない。
【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
本発明の界面活性剤を製造する方法については特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の合成方法を組み合わせて製造することができるが、たとえば以下の手順にて好適に製造することができる。以下の合成スキームは、たとえば、連結部Aが−C(=O)O(CH2CH2O)2CH2CH2−(すなわち、一般式(II)中、R1、R2、R4、R5がいずれも炭素数2の炭化水素基であり、n、oが共に2である場合)で実現され、疎水性基Bが−(CH211CH3(すなわち、一般式(II)中、R3、R6が炭素数12の炭化水素基)で実現された、上記構造式(1)〜(3)のいずれかで表わされる化合物を製造する場合を例に挙げたものである。
【0042】
【化11】

【0043】
上記反応スキーム1に示される反応によって、まず、ベンゼン環に2つの連結部が結合された中間体を合成する。上記反応は、窒素雰囲気中、溶媒としてトルエンを用い、まずN(C253の存在下で0℃にした後、50℃で反応させる。その後、NaHCO3水溶液とNaCl水溶液を用いて分液操作を行い、Na2SO4で脱水後、ヘキサン:酢酸エチル4:3でカラムクロマトグラフィーにかけて、所望の中間体を得ることができる。
【0044】
【化12】

【0045】
続く反応スキーム2で示される反応によって、上述のようにして得られた中間体を疎水性基Bとなる三級アミンと反応させる。反応は、アセトニトリルの存在下、還流しながら80℃で96時間行い、ヘキサンで洗浄し、酢酸エチルで洗浄し、さらにエーテルで洗浄した後、10重量%水溶液を調製して活性炭で濾過後、凍結乾燥、その後に真空乾燥を行うことで、上記構造式(1)〜(3)のいずれかで表わされる本発明の界面活性剤が製造できる。
【0046】
本発明はまた、上述した本発明の界面活性剤を用いて基材を洗浄するステップと、加圧流体溶媒を用いて前記基材から界面活性剤を除去するステップとを含む洗浄方法についても提供する。本発明の洗浄方法は、上述した本発明の界面活性剤を用いること以外は、たとえば特表2004−515560号公報(特許文献3)に開示された発明と同様にして行うことができる。本発明の洗浄方法によれば、上述したような本発明の界面活性剤を用いることで、溶媒に可溶な油およびグリースからなる汚れと、水性汚れを同時に除去できるドライクリーニングができるという格別の効果が奏される。
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
<実施例1>
反応スキーム1に示したように、窒素雰囲気中、溶媒としてトルエンを用い、まずN(C253の存在下、iso型のフタロイルクロリド25g(0.123mol)とクロロエトキシエトキシエタノールを41.5g(0.246mol)とを0℃で、次に50℃で72時間反応させた。その後、NaHCO3水溶液とNaCl水溶液を用いて分液操作を行い、Na2SO4で脱水後、ヘキサン:酢酸エチル4:3でカラムクロマトグラフィーにかけて、Rf値0.35のiso型の中間体を得た。
【0049】
次に、反応スキーム2に示したように、得られた中間体を、アセトニトリルの存在下、還流しながら80℃で96時間N,N−ジメチルドデシルアミンと反応させた。その後、ヘキサンで2日間洗浄し、酢酸エチルで2日間洗浄し、さらにエーテルで2日間洗浄した後、10重量%水溶液を調製し、活性炭で濾過し、2日間凍結乾燥させ、80℃で2日間の真空乾燥を行った。
【0050】
得られた化合物について元素分析を行ったところ、理論値はC=64.48、H=10.15、N=3.13、O=14.31、Cl=7.93であるのに対し、C=64.71、H=10.55、N=3.12、O=13.00、Cl=8.62という結果が得られた。
【0051】
また、LC−MS(液体クロマトグラフ質量分析計)(LCMS 2010A((株)島津製作所)を用いてカチオン部分の質量分析を行ったところ、理論値はm/z=411.62であるのに対し、m/z=411.75という結果が得られた。
【0052】
さらに、13C−NMR(DMSO−d6)では以下の結果が得られた。14.18、22.20、22.26、26.15、28.82、28.98、29.13、29.23、29.29、31.58、51.11、62.64、64.36、64.54、64.76、68.64、69.90、69.95、129.96、130.00、133.99、165.26。
【0053】
以上より、実施例1の結果、上記構造式(1)で表わされるI−3EO−12が合成されたことが確認された。
【0054】
<実施例2>
Phthaloyl型のフタロイルクロリドを用い、反応スキーム1で示した反応後のカラムクロマトグラフィーにおいてRf値0.44のPhthaloyl型の中間体を得、これを反応スキーム2で示した反応に用いたこと以外は実施例1と同様にした。結果、実施例1と同様にして、上記構造式(2)で表わされるP−3EO−12が得られたことが確認された。
【0055】
<実施例3>
Tere型のフタロイルクロリドを用い、反応スキーム1で示した反応後のカラムクロマトグラフィーにおいてRf値0.36のTere型の中間体を得、これを反応スキーム2で示した反応に用いたこと以外は実施例1と同様にした。結果、実施例1と同様にして、上記構造式(3)で表わされるT−3EO−12が得られたことが確認された。
【0056】
(評価試験)
実施例1で得られたI−3EO−12を用いて、以下の洗浄試験を行った。
【0057】
まず、以下の組成の洗浄液1〜8を調製した。なお、汚れ成分として有機溶剤であるDPNB(ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル)を用い、比較のための界面活性剤の従来例としてDTAB(ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド)を用いた。各成分の数値は重量%を示している。
【0058】
洗浄液1:水/I−3EO−12/DPNB=14.4/3.3/82.3
洗浄液2:水/I−3EO−12/DPNB=17.5/7.5/75.0
洗浄液3:水/I−3EO−12/DPNB=6.7/2.9/90.5
洗浄液4:水/I−3EO−12/DPNB=12.0/4.6/83.3
洗浄液5:水/DPNB=95.5/4.5
洗浄液6:水/DPNB=11.0/89.0
洗浄液7:水/DTAB/DPNB=11.6/4.7/83.7
洗浄液8:水/DTAB/DPNB=5.9/2.4/91.7
洗浄液9:水/P−3EO−12/DPNB=14.8/3.5/81.7
洗浄液10:水/P−3EO−12/DPNB=11.5/4.5/84.0
洗浄液11:水/T−3EO−12/DPNB=11.5/4.5/84.0
100mlの蓋付きのビーカーに各洗浄液を収容し、水溶性汚染布((株)八木製)を入れて15分間ビーカーを回して洗浄し、さらに5分ごとに攪拌し、合計で1時間洗浄を行った後、1日間放置した。
【0059】
次に、繊維をDPNB20gに移して15分間すすいだ後、ろ紙でDPNBをある程度拭き取った後、超臨界二酸化炭素ポンプ(PU 2090 CO2(日本分光製))を用い、耐圧容器内に繊維を収容し、12MPa、室温(25℃)、流量5ml/minの条件で、液化炭酸ガスを用いたすすぎの工程を行った。
【0060】
すすぎ後の各繊維について、測色計(CM−3600d、Konica−Minolta製)を用いて、汚染されていない元の白布を基準にして、白色光(D56)を光源として色差ΔE*abを3回測定し、平均値を算出した。この色差の値が低いほど洗浄効果が高いことを示す。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
また図2は、洗浄液1〜4についての洗浄試験の結果を示すグラフである。図2中、白い丸で繋がれた線分は、DPNBおよび水が1相となる状態を保持できる組成の境界であり、黒い丸は、洗浄液1〜4の各プロットである。図2から、DPNBが主成分で1相となる洗浄溶液組成において良好な洗浄が行えるという結果が分かる。
【0063】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環と、
芳香環に結合した、酸素原子を含む直鎖状の2つ以上の連結部と、
各連結部の末端に、四級アンモニウム基を介して結合された直鎖状の疎水性基とを含む化学構造を有する、界面活性剤。
【請求項2】
下記一般式(I)で表わされる化学構造を有する、請求項1に記載の界面活性剤。
【化1】

(上記一般式(I)中、Aは酸素原子を含む直鎖状の連結部、Bは直鎖状の疎水性基であり、RおよびR’は互いに独立して選ばれる炭素数1〜16の炭化水素基、mは2〜4の整数である。なお、m個の芳香環以外の部分において、A、B、R、R’はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
下記一般式(II)で表わされる化学構造を有する、請求項2に記載の界面活性剤。
【化2】

(上記一般式(II)中、R1およびR4は互いに独立して選ばれる炭素数1〜4の炭化水素基、R2およびR5は互いに独立して選ばれる炭素数1〜4の炭化水素基、R3およびR6は互いに独立して選ばれる炭素数8〜16の炭化水素基、RA、RB、RCおよびRDは互いに独立して選ばれる炭素数1〜16の炭化水素基である。n、oは、互いに独立して選ばれる1〜5の整数である。)
【請求項4】
以下の構造式(1)〜(3)のいずれかで表わされる、請求項3に記載の界面活性剤。
【化3】

【化4】

【化5】

【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の界面活性剤を用いて基材を洗浄するステップと、加圧流体溶媒を用いて前記基材から界面活性剤を除去するステップとを含む、洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−122006(P2011−122006A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278707(P2009−278707)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)社団法人 繊維学会,平成21年度繊維学会年次大会 繊維学会予稿集2009,平成21年 6月10日発行 (2)The Society of Fiber Science and Technology,Japan,THE 10TH ASIAN TEXTILE CONFERENCE ATC−10 The Sun Rises From the East;Asian Textile Renaissance (社団法人 繊維学会,第10回アジアテキスタイル会議 ATC−10 要旨集 ザ サンライズ フロム ザ イースト;アジアン テキスタイル ルネサンス),平成21年 9月 7日発行
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】